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有利な退職金の活用法 - 日本証券アナリスト協会

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有利な退職金の活用法 - 日本証券アナリスト協会
「有利な退職金の活用法」
本郷
尚
氏
公益社団法人 日本証券アナリスト協会
PB 教育委員会委員
税理士法人タクトコンサルティング 代表社員・税理士
(1) 税制上有利な退職金
代表者及びその家族が、会社から多額のお金を受け取るには、退職金が最も有利です。退
職金は、税法上(所得税、相続税、法人税)
、圧倒的に有利です。億単位の退職金に対する
税金が、所得税も相続税も 2 分の 1 以下になるのです。この有利な税制を活用して下さい。
代表者が生前にハッピーリタイヤメントして、退職金を受け取る方法もあります。相続税
対策として、家族が死亡退職金を受け取る方法もあります。さらに、会社が資産を処分し、
会社を解散、清算する時に、または、M&A をする時に、同時に退職金を受け取る方法もあ
ります。代表者やその家族が、会社から資金を引き出す方法として、この退職金の有利な
税制を活用しない手はありません。
(2) 退職金の特色
退職金の特色として、①金額が大きい、②税金が安い、③経費になる、が挙げられます。
退職金のこのシンプルな特色をフルに活用します。その前に、退職金の特色の基礎知識を
知っておいてください。
① 金額が大きい
退職金は桁違いに金額が大きくなります。中小企業の代表者の退職金は、一般的に、次の
計算式で求められます。
役員退職金=最終報酬月額×勤続年数×功績倍率
仮に代表者の最終報酬月額 300 万円、勤続年数 40 年、功績倍率 3 倍とすると、300 万円×
40 年×3 倍=3 億 6000 万円となります。
功績倍率については、
代表者で創業者の場合には、
一般的な相場として、2~3 倍(最大 3 倍)まで認められています。功績倍率を客観的に示
しておくのであれば、役員退職金規程を作成しておきます。規程を作成しておくことは重
要です。退職金の金額について、会社法上のトラブルを回避出来ます。特に死亡退職金の
場合は、
「本人は亡くなっている」という事実を念頭におくことが大切です。支払うのは、
会社(後継者)です。受け取るのは、奥様(未亡人)と、その家族です。退職金の受け取
りをめぐって相続人間の利害がぶつかり合うことがあります。生前に役員の退職金規程で、
しっかり決めておいてください。死亡退職金の受取人の順位も決めておいて下さい。役員
退職金規程で受取人を相続人のうちの一人に特定しておけば、相続人の間で死亡退職金の
受け取りを選定する必要もありません。役員退職金規程の作成は、重要です。事前準備の
一つとして、必ずチェックしておいてください。
② 税金が安い
退職金は、税制上、圧倒的に有利です。退職金が億単位の収入である場合であっても、所
得税等(所得税、住民税、復興特別所得税)は、退職金額の最大でも約 25%以下、通常約
22%前後で済みます。相続税においても、死亡退職金は課税対象とされるものの、法定相続
人 1 人に対して、500 万円の非課税規定があります。さらに奥様については、法定相続分(子
供がいる場合 2 分の 1)迄は、どんなに金額が大きくても非課税です。
所得税が 2 分の 1 以下になる理由
退職金は他の所得と比べて、税金は 2 分の 1 以下になります。その理由は、退職所得の金
額の計算方法にあります。
退職所得金額=(退職金支給額-退職所得控除額)×1/2
ポイントは、上記の計算式の 2 分の 1 にあります。退職金の支給額から控除額を差し引い
て、その残額に、さらに 2 分の 1 を掛けます。課税対象となる所得金額は、半分以下とな
る訳です。退職金が「長い間、勤め上げ、成果として得られた所得です。その年の 1 年だ
けの所得と同じように課税するのでは酷です。そこで、一時所得と同様に、所得を 2 分の 1
にして・・・」という配慮から、こうした制度が生まれました。次に、退職所得控除額は
次の算式で計算されます。
イ)勤続年数が 20 年以下の場合 ― 40 万円×勤続年数
ロ)20 年を超える場合 ― 800 万円+70 万円×(勤続年数-20 年)
仮に、退職金 2 億 4,000 万円、勤続年数 40 年ですと、
(2 億 4,000 万円-2,200 万円)×1/2
=1 億 900 万円。税金は、約 5,500 万円(所得税・住民税・復興特別所得税合計)となりま
す。退職金の仕組みと税金が、いかに安いかを理解頂いたかと思います。
③ 経費になる
支払う側の会社側は、合法的(株主総会の決議、又は取締役会の決議)かつ、税法上適正
額であれば、会社の経費(税法上の損金)になります。最終報酬月額、功績倍率及び勤続
年数から考えて、適正額であれば、億単位の退職金の支払も可能です。法人税の節税効果
は大きいです。法人税等(地方税等含む)を考えると、最大約 40%となります。代表者の
退職金の支払時期によって、会社の節税効果も大きくなります。莫大な退職金が経費にな
るとすると、支払う時期を考えます。大企業の役員退職金は、任期満了によるものが大半
ですが、中小企業の代表者の場合は、本人の意思によって、退職の時期を決める場合がほ
とんどです。代表者が交代する時、バトンタッチする時が一般的ですが、特別な時期、タ
イミングで退職金を利用する場合もあります。退職金を大きな経費(損金)として使う戦
略、戦術として、どう使うかの例示を紹介します。
イ) 資産の売却益が発生した時、その資金で退職金を支給して売却益と退職金を相殺させる。
ロ) 生命保険金が満期を迎えた時、または、事故等で保険金が入金した時、死亡退職金と相
殺する。
ハ) 会社を売却した時(M&A をした時)、同時に代表者が退職するので、株の売却価額と退
職金が連動されます。
上記、イ、ロ、ハ、は、会社の命運を左右させる時期でもあります。
退職金を上手に利用すれば、会社と個人で資金をしっかり確保することが可能になります。
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