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大学でのノートについて

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大学でのノートについて
第1章
大学でのノートについて
●ノートを取らないと・・・
大学の授業で、教員が板書したこと以外のことをノートに取ることができない
学生が年々増えているのだそうです。もちろん、わが新入生諸君については
そんな心配はないと期待していますが、実は本学でも、オリエンテーションなど
が終わって、いよいよ授業が本格的に始まったとたん、「どうやってノートを取っ
たらいいのかわかりません」と悲鳴をあげた学生は決して少なくないのです。
では、大学でノートを取れないと、どういうことになるのでしょうか? ほぼ間
違いなく成績はひどいものでしょうし、いくつかの科目は単位が取れないという
悲惨なことにもなりかねません。なぜなら、大抵の場合、成績の最大の根拠とな
る定期試験の答えやレポートに書くべき重要項目はノートの中にあるからで
す。
ですから、大学を順調に卒業するためには、一刻も早く「そのようなノート」が
取れるようになることが絶対に必要だということを今肝に銘じておいてください。
それに、あなた方が社会人になった時、仕事のためのノートは大学時代のノー
トよりはるかに重要性を増します。
というわけで、ノート取りにあまり自信のない人は授業が本格的に始まる前に、
「そのようなノート」の“取り方”を知っておく必要があります。実践は、本番の授
業を通じて“修業”を重ねていくしかありませんが・・・。
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「そのようなノート」とは、もうおわかりのように、授業の大事な部分の骨子・要
旨・要約・概要などが後で見てよくわかるノートのことです。期末試験の時に“頼
みの綱”となるべきノートのことです。
しかし「そのようなノート」を取るのは、それほど簡単なことではありません。創
意工夫と技術、それに相当の努力が不可欠だからです。
その理由は、大学の授業が高校のそれとは大分様子が違うからです。従っ
て、ノートも高校までのとはほとんど“別のもの”にならざるを得ません。
大学の授業は「講義」と「演習」に大別されます。割合からすると「講義」の方
が断然多いのですが、その「講義」のノートが問題なのです。
「講義」というのは、90分間の“講演”だと考えるとわかり易いでしょう。教員が
「今日は○○について話します」とテーマを提示して、ひたすらしゃべり続ける
のが“基本型”です。
90分ぶっ通しではさすがにしんどいので、合い間に余談やらジョークらしき
ものを入れたりはしますが、何といっても学問の講義ですから、眠気を誘うよう
な話の方が多くなるのは当たり前です。
ここで最大の問題となるのは、先生たちの板書がまるであてにできないこと
です。もちろん中には、丁寧に板書してくれる奇特な先生も居ないわけではあ
りません(注)が、少数派どころか希少派です。テーマとキーワードだけとか、余
談に出て来た難解語の字解きぐらいしか書かない先生の方が多いのです。こ
んな板書だけをノートに写してみても何の役にも立ちません。
こうした“講演”が1日数科目、週に10数科目、それが1科目あたり原則として
15 回あります。それらを耳で聞いただけで、要点を理解し、記憶できるような学
生は本学には来ません。どうしても、こつこつノートを取り貯めるしかないので
す。
そこで、講義を聴きながら、要点を理解し、ノートにメモして行く「技術」が必
要になるわけです。実際にやってみると、これがなかなか大変な作業です。
話を聴きながら、話の筋(ストーリー)を理解しながら、要点を聞き分けながら、
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それを素早くメモしながら、しかも流れについていくという、極めて高度な“ひと
り時間差プレー”の連続―これこそが大学でのノート取りの極意です。
しかも、そのノートは後で見て、教員が話した内容を正確に復元できるもので
ないと役に立たないのですから、まったく大変です。慣れないうちは、メモして
いる間に話に置き去りにされますが、あきらめないで挑戦し続けるしかありませ
ん。最初のコツは、ここは大事な所だな!と思ったら、何が何でもそこのメモを
完成させることです。その間に話は先に行ってしまいますが、半分は耳に入っ
ているはずなので、そこも大事かどうかの判断はつくはずです。もし、大事そう
だったら、後で教員や友人に聞くことです。そうやっているうちに、どんどん上
達します。
注:筆者自身は、チョークで手や服が汚れるのも厭わず、可能な限り丁寧に板書をしていま
す。なぜかといえば①教えたいことを正確に伝えたい。間違ったノートを取られたくないので、
少なくとも話の骨格やキーワードとその意味は板書します②学生を甘やかしたくない。プリン
トやパワーポイントは教員にとっても楽ですが、学生の頭に入って行かないのです。聴きなが
らノートに取る苦行を敢えて強制することで、この技能を身につけさせたい③眠気覚ましにな
るし、就職後に役立つ――と信じているからです。
●基本モデルを探そう
そうまでしてノートを取ることの目的はたった一つ。「講義内容の正確な復
元」です。それができてはじめて、あなたはその科目を“学んだ”ことになるわけ
です。それができないノートは、取る意味がありません。
ノートは、自分で色々と工夫を重ねて出来上がった自己流がいちばん!とは
必ず言われることですし、確かにその通りではあります。が、それは最終的に
そうだということで、いきなりはとても無理な話です。
手始めは各種スポーツと同じで、基本モデルを真似しそれに習熟するのが
早道です。ここで、その基本モデルを紹介しよう・・・と思いましたが、ふと気に
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なってインターネットの検索エンジン(Google,goo,Yahooなど)で『ノートの
取り方』を検索してみて驚きました。
有名な「コーネル大学式」の利用法をはじめ懇切丁寧な「ノートの取り方」“指
南”サイトが文字通りゴマン(5 万)とヒットしました。それぞれが心構えから文房
具、ページの使い方、メモのテクニック、整理法などについて薀蓄を傾けてい
るではありませんか。
ですから、無責任のようですが、筆者が下手な例示をするのはやめました。
皆さんは早速検索して、片端から読み漁り、気に入ったモデルを見つけてくだ
さい。ただ、どんな方法を採用するにせよ、以下の5点だけは鉄則として肝に
銘じておいてほしいのです。
①講義の要点を聞き分けながら、メモを取って行くことができないと、どんな
方式も役に立ちません。まず集中して聴くこと。
②ノートはA4サイズにすると、配布資料なども一緒に整理しやすい。
③ノートは見開きで使うこと。右側ページを授業のメモ専用とし、最上部に必
ず年月日、科目名、教員名を記入すること。
④左側ページは、右端に 5 センチ程度幅の見出し・キーワード欄を設け、右
ページの授業メモのテーマ、小見出しなどを後で書き込む。その左側余
白は後で調べた補足事項などの書き込み用スペースとする。
⑤ノートはケチらず、必ず授業ごとに新たな見開きから始めること。
●余談:新聞記者の取材メモ術
メモを素早く取る専門家は新聞記者たちです。彼らが大昔から使っている取
材メモ帖は、新聞社が自社の記者用に作った、手のひらサイズの何の変哲もな
い薄っぺらな上綴じのメモ帖です。
それを常にポケットに入れておき、取材先で聞いたこと、見たこと、気がつい
たこと、思いついたことなどをひたすら書き込むだけです。大きな字でほとんど
殴り書きですからページをどんどん食います。ちょっと変っているのは、ページ
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裏側には何も書かず、メモ帖の終わりまで行ったら、今度は裏表紙側から折り
返しで書いていくことです。その方が、読み返すのに楽なのです。
メモを読み返しながら記事を書くのですが、一番大変なのは取材対象の談
話を「・・・」の形で記事に挿入する場合でした。その人物が「話した通りに」、つ
まり一言一句正確に復元しなければならないのです。でないと、新聞掲載後に
「あんな言い方はしなかった」とクレームがつくからです。
ですから、取材が終わったらすぐにメモを見直し、記憶が薄れないうちに補
足しておくのが「正確な復元」のコツでした。記者仲間と一緒の時は突き合わせ
て正確を期します(大学でも友人とノートを突き合わせることは大事です)。
また、メモ帖はどんどんたまって行くので、まめに整理することが有効利用の
決め手となります。整理しておかないと、必要なときに探し出す(検索)のが大
変です。
表紙には必ず使用期間と主な内容の見出しを書いておき、時系列的に
10冊ずつ輪ゴムでまとめていました。ただ、サイズの小さいメモ帖は「一覧性」
に欠けるのと、冊数がどんどん増えるのが難点です。これを嫌っていわゆる「大
学ノート」を使う記者も多いのです。
「正確な復元」には、小型録音機が最強の武器ではないかと誰しも考えます。
記者たちももちろん使っています。しかし、これはあくまで補助手段、“保険”に
過ぎません。なぜって? 1時間の記者会見の録音を聞き直すには、1時間必
要だからです。ただ、すごく大事な記事のときは肝心の部分を早送りで探し当
てて聞き直すことはやります。
もし、90分授業を毎回録音したら、どうなるでしょうか? これを毎日3、4科
目分聞き直す時間があなたにあれば、ノートは完璧なものになるでしょうが、そ
うはいかないのが現実です。Good luck!
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