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こちら - 薬学類・創薬科学類
日本薬学会北陸支部平成23年度第 1 回総会及び第123回例会 プログラム・講演要旨集 主催:日本薬学会北陸支部 日時:平成23年11月27日(日)8時30分∼17時40分 会場:金沢大学自然科学講義棟 日本薬学会北陸支部平成 23 年度第 1 回総会及び第 123 回例会 主催:日本薬学会北陸支部 日時:平成 23 年 11 月 27 日(日)8 時 30 分∼17 時 40 分 会場:金沢大学自然科学講義棟 (103 講義室,104 講義室, レクチャーホール,アカデミックプロムナード) (〒920-1192 金沢市角間町) ◎ 日本薬学会北陸支部平成 23 年度第 1 回総会・学術奨励賞授与式 12:50∼13:20 (レクチャーホール) ◎ 特別講演 (レクチャーホール) 尾 13:25∼14:10 紀之 (金沢大学医薬保健研究域医学系機能解剖学分野) 「動物モデルを用いた疼痛メカニズムの解明」 ◎ 学術奨励賞受賞講演 (レクチャーホール) 14:15∼14:55 小川数馬 (金沢大学医薬保健研究域薬学系臨床分析学研究室) 「転移性骨腫瘍の核医学診断・治療を目的とした薬剤の開発研究」 宝田剛志 (金沢大学医薬保健研究域薬学系薬物学研究室) 「間葉系幹細胞に由来する各種細胞の機能制御に関する研究」 ◎ 教育シンポジウム (アカデミックプロムナード) 「薬学 6 年制実務実習の 1 年目の成果」 10:00∼15:00 18演題 (討論時間11:15∼12:15) ◎ 大学院優秀発表賞応募講演 (103, 104講義室) ◎ 優秀ポスター賞応募発表(アカデミックプロムナード) 14演題 12演題 8:30∼10:45 10:00∼15:00 (討論時間10:50∼12:00) ◎ 一般講演(103, 104講義室) ◎ 28演題 15:00∼17:30 休憩室(第101講義室,アカデミックプロムナード) ◎ 大学院優秀発表賞と優秀ポスター賞の発表と表彰式 (103講義室) 17:30∼17:40 (表彰式にいないと受賞できません) 同日,日本病院薬剤師会北陸ブロック第22回学術大会が大講義室A,Bで開催されます. 2 ● 発表要領および連絡事項 ① 座長,演者の方は,該当セッションの開始前に受付を行ってください. 大学院優秀発表賞応募講演および一般講演 ② 大学院優秀発表賞応募講演は1演題につき,発表10分,質疑応答5分(計15分/名),一般 講演の発表時間は,1演題につき,発表8分,質疑応答2分(計10分/名)とします.発表は 時間厳守でお願いします. ③ 大学院優秀発表賞応募講演および一般講演の演者は,発表開始前に,例会事務局が用意したパ ソコンに発表ファイルをダウンロードし,動作の確認等を行ってください. ④ 大学院優秀発表賞応募講演発表者は,第 1 部門は 8 時 15 分までに,第 2 部門は 9 時 15 分まで に,また一般講演発表者は 12 時から 12 時 50 分の間に各々の発表会場のコンピュータに発表 ファイルをダウンロードしてください. ⑤ 発表には液晶プロジェクタを使用します.例会事務局では Windows 版ラップトップコンピュー タのみを用意します ⑥ Windows 版 PowerPoint でスライドファイルを作成し,それを「PowerPoint スライドショー」 形式で保存した USB メモリーを各自ご持参ください. ⑦ PowerPoint 2003 以降のバージョンで発表スライドを作成された場合,PowerPoint 2003 で映 写できるように変換してください. ⑧ Macintosh 版 PowerPoint で作成した場合は,当日,Macintosh ラップトップコンピュータと外 部ディスプレー(液晶プロジェクタ)専用接続コネクタを各自ご持参ください(事務局では用意 しませんのでご注意ください) . 教育シンポジウムおよび優秀ポスター賞応募発表 ⑨ 教育シンポジウムの討論時間はポスター番号が奇数の場合,11 時 15 分から 11 時 45 分まで, ポスター番号が偶数の場合,11 時 45 分から 12 時 15 分までになります.示説時間の最初に各々 1 分で発表の要旨をお話しください.その後各自のポスター前で閲覧者と対応をしてください. ポスターは 10 時までに掲示し,15 時まで展示してください. ⑩ 優秀ポスター賞応募発表者はポスターを 10 時までに掲示し,15 時まで展示してください.討論時 間の 10 時 50 分から 12 時までの間,ポスター前で閲覧者と対応をしてください. ⑪ ポスター発表演題は,タイトル部分が 90 x 20 cm,発表部分が 120 x 160 cm のポスターボー ドに掲示願います.ポスター番号と掲示用ピンは事務局で用意してあります. その他 ⑫ 大学院優秀発表賞と優秀ポスター賞について,発表と表彰式の席上に不在の場合は受賞を無効 とされます. ⑬ 日本薬学会北陸支部例会は薬剤師研修センターの集合研修会の対象とし,希望者には研修認定 薬剤師制度の受講シールを配布します. ⑭ 当日は大学の生協食堂が 11 時 00 分∼13 時 30 分の間のみ営業します.会場のまわりには昼 食を取る場所がありませんのでご注意ください. ⑮ 上記の件に関するお問い合わせは,金沢大学医薬保健研究域臨床薬物情報学研究室 日本薬学会北陸支部第 123 回例会事務局までお願いします. 電話:076-264-2833; ファックス:076-234-4212; e-mail: [email protected] 3 プ ロ グ ラ ム 12:50∼13:20 平成 23 年度総会・学術奨励賞授与式 (レクチャーホール) 特別講演 (レクチャーホール) 13:25∼14:10 座長:荒井國三(金沢大院薬) 「動物モデルを用いた疼痛メカニズムの解明」 尾 紀之(金沢大学医薬保健研究域医学系機能解剖学分野) 学術奨励賞受賞講演−1 (レクチャーホール) 14:15∼14:35 座長:木津治久(北陸大薬) 「転移性骨腫瘍の核医学診断・治療を目的とした薬剤の開発研究」 小川数馬 (金沢大学医薬保健研究域薬学系臨床分析学研究室) 学術奨励賞受賞講演−2 (レクチャーホール) 14:35∼14:55 座長:新田淳美(富山大院薬) 「間葉系幹細胞に由来する各種細胞の機能制御に関する研究」 宝田剛志(金沢大学医薬保健研究域薬学系薬物学研究室) 大学院優秀発表賞応募講演 第1部門 (生物系・医療系) (104 講義室) 8:30∼9:45 1 8:30∼10:45 座長:中西猛夫(金沢大院薬) シグマ受容体を標的とした癌イメージング剤の合成・評価 ○神原弘弥1, 小川数馬1, 柴 和弘2, 北村陽二2, 小阪孝史2, 黄檗達人1, 小谷 明1 ( 1金沢大院医, 2金沢大学際科学実験センター) 2 水酸化多環芳香族炭化水素のメダカとウニの胚発生に及ぼす影響 ○川部季美¹, Mohamed Nassef², 大嶋雄治², 鈴木信雄 3, 笹山雄一 3, 服部淳彦 4, 中野 4 3 淳¹, 鳥羽 陽¹, 亀田貴之¹, 早川和一¹(¹金沢大院薬,²九州大農,3 金沢大臨海, 東医歯大教養) 脳脊髄液からのL-glutamate排出輸送解析 ○ 櫻井達彦 1,赤沼 伸乙 1,立川 正憲 2, 久保 義行 1, 細谷 健一 1 (1 富山大院薬, 2 東北大院薬) 4 GABABR1サブユニットによる脂肪細胞のleptin発現調節 ○中村由香里,檜井栄一,宝田剛志,高畑佳史,米田幸雄 4 (金沢大院薬) 5 網膜 Müller 細胞における taurine 輸送機能 ○安藤大介 1, 赤沼伸乙 1, 立川正憲 2, 久保義行 1, 細谷健一 1 (1 富山大院薬, 2 東北大院薬) 9:45∼10:45 6 座長:中島美紀 (金沢大院薬) In vitro 蛍光イメージング(QTLI)法を用いた MRP2 機能変動評価 − 肝代謝を考慮した 薬物間相互作用予測への応用− ○池永美穂,中西猛夫,福田 元,白坂善之,玉井郁巳 7 (金沢大院薬) 健常成人のミゾリビン消化管吸収に対する遺伝と食塩摂取の影響 ○深尾美紀¹,渡邉ひとみ¹,石田和也¹,田口雅登¹,橋本征也¹,松倉裕喜²,宮脇利男³ (¹富山大院薬,²済生会高岡病院小児科,³富山大院医小児科) 8 ヒトがん細胞における 5-アミノレブリン酸(ALA)誘導性プロトポルフィリンⅨ蓄積機構 の解明 ○小川哲郎,柳原千泰,中西猛夫,白坂善之,玉井郁巳 (金沢大院薬) 9 トランスポーターを介した薬物-ジュース間相互作用機構 ○七里 恵,白坂善之,森 貴則,中西猛夫,玉井郁巳 (金沢大院薬) 第2部門 (化学系・物理系) (103 講義室) 9:30∼10:45 1 座長:佐々木陽平 (金沢大薬) フコシダーゼ阻害活性を有するポリヒドロキシピペリジン誘導体の合成研究 ○ 坂 知樹 1,湊大志郎 1,杉本健士 1,松谷裕二 1,中川進平 2,山下侑子 2,加藤 敦 2, 足立伊佐雄 2,Peter G. Kirara3,尾野村治 3,豊岡尚樹 4(1 富山大院薬,2 富山大病院薬 剤部,3 長崎大院薬,4 富山大院理工) 2 (±)-Lycoflexine,(±)-Lycoposerramine-Q の全合成研究 ○伊藤直哉,稲垣冬彦,岩田 隆,向 3 [2.2]パラシクロファン骨格を有する面不斉ホスフィン触媒の開発 北垣伸治,○太田有羽,高橋亮平,向 4 智里(金沢大院薬) 銅塩/アミンを用いた 1,4-ビスアレンの[2+2]環化付加反応 北垣伸治,○梶田幹人,成田 集,向 5 智里 (金沢大院薬) 智里 (金沢大院薬) 68 Ga 標識 PET 骨イメージング薬剤開発のための基礎検討 ○高井健一郎 1,小川数馬 1,黄檗達人 1,北村陽二 2,柴 (1 金沢大院医,2 金沢大学際科学実験センター) 5 和弘 2,小谷 明1 優秀ポスター賞応募発表 (アカデミックプロムナード) (討論時間:10:50∼12:00) P-1 ミッドカイン再発現誘導を介した合成レチノイド Am80 による中枢神経再生効果 ○加藤彩香 1,郡山恵樹 2,荒井國三 1,加藤 P-2 10:00∼15:00 聖 2(1 金沢大院薬,2 金沢大院医) 癌化学療法薬誘発アロディニアに及ぼす5-HT1A受容体作用薬ザリプロデンの効果 ○坂本歩美,安東嗣修,倉石 泰(富山大院薬) P-3 皮膚糸状菌誘発掻痒反応へのプロテアーゼとプロテアーゼ活性化受容体2の関与 ○高山祐輔 1,安東嗣修 1,山腰高子 2,清水忠道 2,佐野文子 3,倉石 泰 1 (1 富山大院薬, 2 富山大院医皮膚科,3 琉球大農) P-4 蚊アレルギー性掻痒反応へのlangerin陽性樹状細胞とIL-18の関与 ○高木あゆ美,安東嗣修,原田絢子,倉石 泰(富山大院薬) P-5 神経障害性疼痛マウスの静的アロディニアと動的アロディニアに対するアミトリプチリ ンの作用態度とその作用発現メカニズム ○田中真衣,佐々木淳,倉石 泰(富山大院薬) P-6 がん細胞におけるATR-Chk1経路亢進に関する解析 ○藺上圭子,井村真由美,若杉光生,松永 司(金沢大院薬) P-7 RapamycinによるCD4+T細胞,CD8+T細胞増殖抑制効果の相違に関する解析 ○安岡知香,猪部 学,松永 司(金沢大院薬) P-8 アミノ酸加熱分解生成物Trp-P-1による肝細胞毒性発現機構の解析 ○ 山縣由佳,佐久間勉,亀井美穂,留場麻衣,近藤佐千子,河崎優希,櫻井宏明, 根本信雄(富山大院薬) P-9 マウスCYP3Aの酵母内発現系の構築と基質特異性の解析 ○立石裕樹,佐久間勉,河崎優希,櫻井宏明,根本信雄(富山大院薬) P-10 マウス脳および肝シトクロム P450 の発現解析ならびにカンナビジオールによる誘導 ○ 蒋 融融1,前田千佳子1,小川梨少1,山折 (1北陸大薬, 2 九州保福大薬) P-11 新規酸触媒O-ベンジル化反応の開発 ○藤田 光,山田耕平,国嶋崇隆(金沢大院薬) 6 大1,山本郁男 2,渡辺和人1 P-12 人参の本草考証∼中国古代の人参の原植物について∼ ⃝坂本郁穂,御影雅幸(金沢大院薬) 教育シンポジウム (アカデミックプロムナード) 「薬学 6 年制実務実習の 1 年目の成果」 (討論時間:11:15∼12:15) 座長:松下 S-1 10:00∼15:00 良(金沢大院薬),清水 栄(金沢大院薬) 福井県における薬剤師会主導型「薬局実務実習協力体制」の評価と再構築 ○木村嘉明1,上田泰之1,千知岩祐次1,嶋田千穂1,福岡美紀1,梅木誠一郎1,西田敦 司1,中村裕幸1,野辺久美代1,山内辰朗1,小林昌巳1,森中裕信1,山下 泉1,廣部 満1,政田幹夫1,2,3(1福井県薬剤師会薬学生実務実習運営委員会,2 福井県病院薬剤師会, 3 S-2 福井大学病院薬剤部) 薬局実務実習1年を振り返って ○北山朱美,橋本昌子,三浦智子,今村信雄,神田哲雄,渡辺誠治,吉藤茂行 (石川県薬剤師会薬局実務実習委員会・WG) S-3 薬局実務実習における富山県薬剤師会の取組み 浜野邦彦,藤森毅至,○永野康已(富山県薬剤師会薬学教育推進委員会) S-4 薬局実務実習 2 年目における富山大学薬学部の試み ○今村理佐 1,岡崎史泰 1,藤 S-5 金沢大学における多施設型薬局実習への取り組み 〇大 賀津夫 1,2,荒井國三 1,2,神田哲雄 2,永長智愛 1,2,山島 糸 2,木村和子1, 松下 良1,清水 2 S-6 秀人 1,永野康已 2(1 富山大院薬,2 富山県薬剤師会) 栄1,石 純子1,坪井宏仁1,菅 幸生1,吉田直子1(1金沢大院薬, アカンサス薬局) 実務実習先の 2 局を比較して学んだこと-総合病院隣接と住宅地域の調剤薬局との違い ○和田惇子1,石川雄大1,前田憲邦 2,中田美由貴 3,藤 秀人 4,新田淳美1 (1富山大院薬薬物治療学,2 チューリップ牛島薬局,3 西尾薬局下堀店,4 富山大学院薬医 学薬学) S-7 薬局実習で漢方薬と抗菌薬の併用例を通して学んだこと ○北山祥平 1,平野旬美 2,今村理佐 1,藤 S-8 秀人 1(1 富山大院薬,2 ふれあい新湊薬局) 患者さんの「なぜ」を考える ○吉村真理1,嶋田千穂 2(1北陸大学薬,2福井調剤薬局) 7 S-9 薬局実習を体験して ○ 大島鉄矢1,○砂川直美1(共同演者),中川加代子 2,山崎眞津美1(1北陸大学薬, 2 S-10 クスリのアオキ高岡京田店) 市中薬局における在宅医療関連実習 ○三尾明日香1,針田昌子 2,藤沢美和 2 (1金沢大薬,2 菜の花薬局) S-11 薬局実習での実務体験と症例報告 ○ 御勢智香1,橋本篤子 2,梶山恵美子 2,山本志保子 2,藤井洋子 2 (1金沢大薬,2 玉川町薬局) S-12 病院実務実習の取り組み ○ 谷本定子,矢口邦子,板井進悟,長田幸恵,前田大蔵,崔 吉道,宮本謙一 (金沢大学附属病院薬剤部) S-13 病棟業務実習の評価と改善 ○ 砂田結希乃,宮東利恵,谷村裕香里,角 佳亮,宮東剛文,小堀 勝,西尾浩次 (金沢医科大学病院薬剤部) S-14 薬学教育6年制における実務実習 ○ 1 ∼福井県で行った複数施設協働型実習∼ 1 萱野勇一郎 ,中村敏明 ,白波瀬正樹 1,佐野正毅 2,荒木隆一 3,寺尾文恵 4,竹内哲夫 5, 斉藤孝次 6,内田博友 7,三田村康浩 8,加納みゆき 9,高嶋孝次郎 2,濱 一郎 10,平賀貴志 11, 政田幹夫 1 (1 福井大病院薬,2 福井県済生会病院薬,3 市立敦賀病院薬, 4 春江病院, 5 福井 社会保険病院薬, 6 福井赤十字病院薬, 7 公立小浜病院薬, 8 中村病院, 9 福井循環器病院, 国立病院機構福井病院薬, S-15 11 10 福井県立病院薬) 富山大学薬学部・病院実務実習23年度1期における成果 ○ 新田淳美,宮本嘉明,宇野恭介(富山大院薬) S-16 北陸大学生の金沢医科大学病院薬剤部におけるアドバンスト病院実習の試み ○中川輝昭1,宮本悦子1,多田昭博1,野村政明1,尾山 治1,西尾浩次 2,宮東利恵 2, 山本康彦 2,高桑直子 2,高橋喜統 2(1北陸大薬臨床薬学教育センター,2 金沢医科大学病 院薬剤部) S-17 金沢大学附属病院の病棟における実務実習を終えて ○小嶋崇弘,○滝沢佑太(共同演者)(金沢大薬) S-18 金沢大学附属病院における病院実習 ○野口絢加,○寺口 敦(共同演者)(金沢大薬) 8 一般講演 一般講演−I (104 講義室) 15:00∼17:10 15:00∼15:50 I-1 喫煙行動に及ぼすセロトニントランスポーター遺伝子多型の影響 ○大本まさのり,平腰 I-2 座長:杉浦智子 (金沢大院薬) 都,光本 泰秀(北陸大薬) マウス全 CYP3A 分子種の mRNA 発現量の比較解析 栗本夕夏,○佐久間勉,宅間祐太郎,池松怜美,河崎優希,櫻井宏明,根本信雄 (富山大院薬) I-3 培養ヒト腸上皮細胞を用いたミゾリビンの消化管吸収機構解析 ○横田 I-4 篤,森川真圭,石田和也,田口雅登,橋本征也(富山大院薬) 海馬スライス培養系における持続的な NMDA 誘発細胞死に対する内在性アセチルコリンの 抑制効果 ○稲田千香子,Le Thi Xoan,趙 I-5 琦,常山幸一,松本欣三(富山大和漢研) 内側血液網膜関門におけるL-dopaの輸送解析 ○ 大貫理沙 1,赤沼伸乙 1,2,立川正憲 3,久保義行 1,2,細谷健一 1,2 (1 富山大薬,2 富山大院薬,3 東北大院薬) 15:50∼16:40 I-6 座長:深見達基(金沢大院薬) 血液網膜関門を介した hypoxanthine 排出輸送機構 ○ 五月女達也 1,赤沼伸乙 1,2,立川正憲 3,久保義行 1,2,細谷健一 1,2 (1 富山大薬,2 富山大院薬,3 東北大院薬) I-7 血液網膜関門薬物輸送におけるin vivo-in vitro相関性 ○福井恵理 1,赤沼伸乙 1,2,立川正憲 3,久保義行 1,2,細谷健一 1,2 (1 富山大薬,2 富山大院薬,3 東北大院薬) I-8 脳神経系におけるアクチン結合性転写活性化因子MKL2新規スプライスバリアントの同定 と機能解析 ○庄司しずく,袴田知之,石川 充,久保友喜美,津田正明,田渕明子 I-9 (富山大院薬) タイプⅡピレスロイド Deltamethrin 投与による BDNF 遺伝子発現変化と抗うつ効果の解析 ○大瀬京平 1,高崎一郎 2,斉藤 顕宜 3,山田光彦 3,福地 守 1,田渕明子 1,津田正明 1 (1 富山大院薬,2 富山大生命科学先端研究センター・遺伝子実験施設,3 国立精神・神経 医療研究センター 精神保健研究所) 9 I-10 インスリンおよび持効型インスリンアナログのマウス脳機能に対する作用特性の検討 ○細尾脩史,恒枝宏史,森 規彦,和田 努,笹岡利安 16:40∼17:10 I-11 (富山大院薬) 座長:若杉光生(金沢大院薬) 小胞体膜上に存在するABCタンパク質P70R(ABCD4)の存在状態の解析 ○上杉泰介,柏山共範,今中常雄 (富山大院薬) I-12 癌アポトーシスイメージングを目的とした放射性プローブの開発 ○柴田知美 1,小川数馬 1,北村陽二 2,黄檗達人 1,浅野智哉 2,柴 和弘 2,小谷 明1 (1 金沢大院薬・臨床分析科学,2 金沢大学学際科学実験センター) I-13 pH滴定による薬物のアルブミン結合におけるCaの影響 ○勝野次乃,黄檗達人,小川数馬,小谷 明(金沢大院薬) 一般講演−II (103 講義室) 15:00∼17:20 15:00∼15:50 II-1 (+)-Indicanoneの全合成研究 向 II-2 座長:山田耕平(金沢大院薬) 智里,○小川久美子,林佑次郎,稲垣冬彦(金沢大院薬) 毒ガエルアルカロイド239Qおよび類縁体の合成 ○浦田統子 1,王 旭 1,Ralph A. Saporito2,手塚康弘 3,門田重利 3,豊岡尚樹 1 (1 富山大院工,2John Carroll University,3 富山大和漢研) II-3 ラムノシダーゼ阻害活性が期待されるポリヒドロキシイミノ糖の合成研究 岡城 徹 1,○伊福翔平 1,中川進平 2,加藤 敦 2,足立伊佐雄 2,豊岡尚樹 1 (1 富山大院工,2 富山大病院薬剤部) II-4 o-ヒドロキシ桂皮酸型ジアジリン誘導体の合成と光反応 ○猪ノ口裕二,山本章人,大井睦美,千葉順哉,友廣岳則,畑中保丸(富山大院薬) II-5 新規な末端修飾エチニルピリジンオリゴマーの合成開発 ○阿部 肇,鈴木理仁,牧田浩樹,井上将彦(富山大院薬) 15:50∼16:40 II-6 座長:黄檗達人(金沢大院薬) 銅塩を用いた1-アルキン,アルデヒド,アミンの三成分連結反応を経る1,3-二置換アレン の合成 北垣伸治,○小水美佳,向 智里(金沢大院薬) 10 II-7 塩基を用いるフルオロメチルヒドラゾン誘導体の脱フッ素置換反応 ○八島 II-8 淳,谷口剛史,石橋弘行(金沢大院薬) 鉄触媒とヒドリドを用いたC-H酸素酸化を経る単純アルケンからの1,4-ジオールの合成 ○橋本卓磨,谷口剛史,石橋弘行(金沢大院薬) II-9 フルオロニトロベンゼンの光化学反応 -光反応経路に対する溶媒の影響 ○山崎利徳,福吉修一,徳村邦弘,中垣良一(金沢大院薬) II-10 フルタミドおよび関連化合物の光反応 -多様な反応経路と溶媒効果 ○渡邉友里江,宇田川周子,福吉修一,徳村邦弘,中垣良一(金沢大院薬) 16:40∼17:30 II-11 座長:中道範隆(金沢大院薬) 転写制御因子 Pax5 による骨芽細胞分化成熟化調節 ○藤田弘幸,檜井栄一,米田幸雄(金沢大院薬) II-12 褐色脂肪細胞分化に対するTGF-β スーパーファミリーGrowth Differentiation Factor 5の作用 ○高田紗矢,檜井栄一,米田幸雄(金沢大院薬) II-13 ミクログリア細胞における骨制御因子 Runx2 の発現 ○中里亮太,宝田剛志,米田幸雄(金沢大院薬) II-14 神経系前駆細胞に発現する神経性ニコチン型アセチルコリン受容体の機能解析 ○北島聖也,宝田剛志,米田幸雄(金沢大院薬) II-15 骨制御因子 Runx2 のアストロサイトにおける発現 ○藤川晃一,宝田剛志,米田幸雄(金沢大院薬) 大学院優秀発表賞・優秀ポスター賞の発表と表彰式(103 講義室) 17:30∼17:40 11 第 22 回 日本病院薬剤師会北陸ブロック学術大会 プログラム 平成 23 年 11 月 27 日(日) 9:30 金沢大学(角間キャンパス) 開会挨拶 政田幹夫 (福井県病院薬剤師会会長) 9:35 一般口演(発表 8 分,質疑応答 2 分) 一般口演①(9:35∼10:25) 座長 渡辺享平(福井大学病院) 古俵孝明(福井大学) 1.テモゾロミドワークシートの電子カルテ化とチーム医療における運用 ササヤマキヨシ ○笹山 潔 1,光田幸彦2,鍋島千佳3,室井令子3,藤本直也1,新田圭子1, 船戸元子1,森正昭1 (浅ノ川総合病院 1 薬剤部,2脳神経外科,3看護部) 2.NSAIDs 併用時,非併用時におけるペメトレキセドの副作用発現頻度の比較 イセキ マ リ コ ○井関真理子,前田康裕,五十嵐弘幸,伊藤妃佐子,佐野正毅,高嶋孝次郎 (福井県済生会病院 薬剤部) 3.好中球減少症を起こした化学療法施行患者における栄養指標の変動に関する検討 イワキナオコ ○岩城尚子,林誠,杉村勇人,山谷明正,相宮光二 (金沢医療センター薬剤部) 4.高齢者糖尿病患者における理解度の評価と効果的な教育ツールの作成 サ ト ウカズヤ ○佐藤一哉1,池上陽久1,岩 幹茂1,村田麻巳子1,野原安寿子1,木澤元之1,但田敏 恵1,手丸理恵2 (南砺市民病院 1 薬剤科,2内科) 5.プレガバリン使用状況からみる減量要因の考察と漸増により副作用を軽減し得た一例 イガラシ カズ ヒコ ○五十嵐一彦1,髙尾知里1,梅下翔1,宇夛裕基1,今井富紀子1,小池伸彦 2, 河原昌美1 (金沢市立病院 1 薬剤室,2内科) 一般口演②(10:30∼11:10) 座長 塚本仁(福井大学病院) 佐野正毅(福井県済生会病院) 6.非心原性脳梗塞の 2 次予防における抗血小板薬の処方状況 ナカネ ノ リ オ ○中根論士,高嶋孝次郎,佐野正毅,笠松依子,向畠卓哉 (福井県済生会病院薬剤部) 7.当院手術室薬剤師による PCA ポンプの薬剤調製業務の取り組みについて ヒ ラ キ シ ョウ コ ○平木祥子1,桶谷純子1,飛山繭子1,小池田玲子1,曽我亜紀子1,谷村裕介1, 佐々木利佳1,成徳理代1,橋本あかね1,岡田隆史1,土田英昭 2,西尾浩次1 (金沢医科大学病院 1 薬剤部,2麻酔科) 12 8.東日本大震災における薬剤師の活動状況と問題点 アオヤギ テ ツ ジ ○青柳哲冶,安藤和也,坂口純子,大森丈,谷澤範彦,渋谷貞一,笠川益夫, 吉村はるみ,小川純也,斉藤孝次 (福井県赤十字病院薬剤部) 9.災害派遣医療救護班における処方と後方支援に関する考察 ワ キ ダ マサユ キ ○脇田真之1,6,竹中久善 2,6,渡部有貴 3,6,三谷和恵 4,6,今村理佐 5 (1 射水市民病院薬剤科,2 厚生連高岡病院薬剤部,3 富山大学附属病院薬剤部, 4 南砺中央病院薬剤科,5 富山大学医学薬学研究部,6 富山県病院薬剤師会会報編集委員会) 教育シンポジウム(日本薬学会北陸支部 第 123 回例会と合同開催) (11:15∼12:15 ポスター閲覧・討論 アカデミックプロムナード) 12:15∼13:00 昼食・休憩 13:00∼13:45 基調講演 座長 政田幹夫(福井大学病院) 日本病院薬剤師会の最近の動向について 日本病院薬剤師会 副会長 13:45 パネルディスカッション 座長 中村敏明(福井大学病院) 崔 吉道(金沢大学病院) ① 神戸中央市民病院における病棟専従薬剤師の業務(仮題) 13:50∼14:20 ② 射水市民病院における取り組み(仮題) 14:25∼14:40 ③ 金沢大学医学部附属病院における取り組み(仮題) 14:45∼15:00 ④ 福井県済生会病院における取り組み(仮題) 15:05∼15:20 ⑤ 総合討論 15:25∼15:55 15:55 閉会挨拶 次年度主管県病院薬剤師会 16:00 北田光一 終了予定 13 会長 特別講演 (レクチャーホール) 動物モデルを用いた疼痛メカニズムの解明 金沢大学医薬保健研究域医学系機能解剖学分野 尾 紀之 1. 内臓の痛み 痛みは重要な警告系であるが,強い痛みや慢性痛は私たちを苦しめる.痛みの中でも内臓の痛み は,我々が医療機関を受診する大きな理由となっているが,内臓がからだの内部にあってアプロー チが難しいこと,皮膚とは異なり,組織の損傷が必ずしも痛みを引き起こさず,痛みを起こす 適 刺激 が皮膚のものとは異なること,などから皮膚の痛みに比べて,その研究が立ち遅れていた. また,欧米では結腸,直腸の研究が内臓痛の先行研究として進んでいたが,日本人にとって馴染み 深い胃の痛みについては大きく立ち遅れていた.そこで,我々は,胃の痛みの解明に取り組んでい る. 1-1)胃の知覚神経が痛みを受容するメカニズム バルーン伸展による定量性再現性のある胃の痛みの動物モデルを開発し,迷走神経と大内臓神経 に含まれる胃の知覚神経の性質を電気生理学的に調べた.その結果,大内臓神経には強い機械刺激 に反応する高閾値機械受容器が含まれ,バルーン伸展による急性の胃の痛みは大内臓神経が受容・ 伝達していた.また胃の一次知覚神経の機械刺激の受容には,MAP キナーゼのリン酸化が関わって いた. 1-2)胃の疾患に伴う痛みのメカニズム 実験的に潰瘍や炎症を作成しそれに伴う痛みを解析した.潰瘍や炎症による胃の痛みには,電位 依存性ナトリウムチャネルの興奮性の亢進を介した,神経成長因子による胃の知覚神経の感作が関 与していた.上腹部の痛みなど症状を呈するものの明らかな病変の無い機能性の疾患として,機能 性胃腸症(FD)が問題となっている.反復した水回避ストレスは胃に組織学的な病変を起こさないも のの胃の痛覚を亢進させ,しかも,CRF(副腎皮質刺激ホルモン放出因子)拮抗薬はストレス後の 亢進した胃の痛みを抑制した.ストレスでみられた胃の痛覚過敏には CRF が関与し,機能性胃腸症 のメカニズムとして重要と考えられた. 2. 痛みを受容伝達する基礎的メカニズム 痛みの受容伝達や調節に関わるメカニズムは,対象となる組織や臓器,疾患によって異なる.我々 は,顎関節症,三叉神経因性疼痛,癌性疼痛,薬剤性神経因性疼痛,筋痛,骨折痛などさまざまな 動物モデルを作成し,それに伴う痛みのメカニズムの解明に携わってきた.抗がん剤シスプラチン による神経因性疼痛には,ATP の受容体である P2X3, 2/3 や酸受容体 ASIC3 の発現の亢進が関わっ ていた.末梢動脈疾患(PAD)に伴う痛みの動物モデルを開発したが,本モデルの痛みにも P2X3, 2/3 や ASIC が関与していた.また筋筋膜性疼痛症候群に特徴的な,筋硬結を伴う持続性の筋痛を示す 動物モデルを開発した.筋の変性・再生に伴う神経成長因子の発現や,脊髄マイクログリアの活性 化が筋痛に関与していた. 3. 内臓の痛みから筋骨格系を含めた深部組織の痛みのメカニズムの解析へ, 14 近年の分子生物学の発展により,皮膚の痛覚神経の興奮やその変化に関与する分子が急速に解明 されつつある.それに伴い,これら分子の関連遺伝子やその産物を標的とした新しい痛みの治療法 が提唱されている.しかし筋骨格系や内臓など深部組織の痛みの研究は,現状では皮膚の痛みの知 見の後追いの感が否めない.内臓や筋骨格系の痛みは頻度が高く,疾患や加齢に伴って見られるの で臨床的にも重要であり,今後は皮膚での知見を踏まえつつ,皮膚とは異なった特徴のある筋骨格 系や内臓などの深部組織の痛みのメカニズムを明らかにすることが重要と考えている. 15 学術奨励賞受賞講演 (レクチャーホール) 1. 転移性骨腫瘍の核医学診断・治療を目的とした薬剤の開発研究 金沢大学医薬保健研究域薬学系臨床分析学研究室 小川数馬 前立腺癌,乳癌などの癌は骨に転移し易く,その多くは激しい痛みを伴うために患者の quality of life は著しく損なわれる.この疼痛の緩和のための治療法として,副作用が少なく,一回の投与で 複数の部位に長期間の効果が期待できる,放射性薬剤を用いた内部照射療法(内用療法)が期待さ れ,その薬剤の一つとして,2007 年に国内でも 89Sr が承認され成果をあげている.この内用療法 に用いる放射性薬剤としていくつかの化合物が検討されているが,中でも rhenium-186 (186Re, 半 減期 91 時間)の標識化合物は,186Re が治療に適した β− 線と診断に適した γ 線を同時に放出する ことから,腫瘍への放射能の分布を確認しながら治療することができ,その利用が注目されている. 実際,これまでに,造骨部位に高い親和性を有するビスホスホネートの一つである 1-hydroxyethylidene-1,1-diphosphonate (HEDP)と 186Re とが直接配位した錯体 186Re-HEDP が開発さ れ,臨床研究が進められている.しかしながら,186Re-HEDP は錯体の安定性が乏しく,生体内で解 離して 186 ReO4− が生成するため,血液クリアランスの遅延,胃への放射能集積が起こり,問題とな る.そこで,本研究では,生体内で安定で,骨腫瘍部位に高く集積する 186 Re 標識薬剤の開発を計 画した. 我々は,標的分子への親和性に関与する部位と,それとは独立して放射性核種を安定に保持する 部位とを具備する二官能性放射性薬剤の概念を提唱し,造骨部位に高い親和性を有することが期待 さるビスホスホネート誘導体を母体化合物として,この化合物の標的分子への親和性に関与する部 位とは独立して,186Re と安定な錯体を形成する mercaptoacetylglycylglycylglycine (MAG3)を配 位子とした 186 Re-MAG3 錯体を結合した[[[[(4-hydroxy-4,4-diphosphonobutyl)carbamoylmethyl] carbamoylmethyl]carbamoylmethyl]-carbamoylmethanethiolate] oxorhenium(V)(186Re-MAG3-HBP) を設計,合成した.その結果,186Re-MAG3-HBP は,既存の化合物である 186 Re-HEDP よりも高い生体 内安定性を示し,その安定性と高いハイドロキシアパタイトへの結合親和性に基づく,優れた骨特 異的な体内放射能分布を示した.次いで,得られた 186Re-MAG3-HBP の転移性骨腫瘍に対する治療効 果を評価するため,乳癌細胞 MRMT-1 をラットの脛骨に注入して転移性骨腫瘍モデルを作製し, 186 Re-MAG3-HBP を投与して,経時的に腫瘍の大きさを測定した.その結果,186Re-MAG3-HBP 投与群で は,非治療群と比較して有意な癌の増殖抑制作用が認められた.また,von Frey filament test による痛み検定の結果,186Re-MAG3-HBP 投与群は,非投与群に対して有意な疼痛緩和効果を示した. 以上の結果は,転移性骨腫瘍の内用療法を目的とした 186 Re 標識放射性薬剤の開発に基礎的な成 果をおさめたものであり,今後の内用療法の研究に有益な情報を提供するものと考えられる. 16 2. 間葉系幹細胞に由来する各種細胞の機能制御に関する研究 金沢大学医薬保健研究域薬学系薬物学研究室 宝田剛志 個体が構築されるまでの発生と成長段階だけでなく,損傷や病態による組織欠損の修復には,組 織中に存在する体性幹細胞が重要な役割を果たしている.その一つである間葉系幹細胞は,自己複 製能とともに,骨芽細胞,軟骨細胞,脂肪細胞等への多分化能を有する原始細胞である.骨関節組 織を構成する骨芽細胞および軟骨細胞は,それぞれ骨密度の恒常性や関節の維持を担うとともに, 骨粗鬆症を主とする骨代謝性疾患や,関節リウマチ・変形性関節症などの関節疾患の病態発症に深 く関与する細胞種である.一方,脂肪細胞は脂肪組織を構成し,肥満やメタボリックシンドローム との関連性が近年注目されている. 多様な細胞の集団である組織においては,細胞同士が協調して機能するシステムを構築するため に,細胞間連絡を媒体する情報伝達物質は非常に重要な役割を果たすと考えられる.それ故,細胞 に対して特異的あるいは重点的に作用する物質を新たに同定することは,各細胞の分化・機能の制 御機構の理解に止まらず,疾患の予防または病態に対する理解を深める上で,重要な手がかりにな ると思われる.この細胞間ネットワーク形成には,ホルモン分泌に代表される「エンドクライン」, サイトカイン等の分泌による「オート・パラクライン」 ,および神経伝達物質放出に伴う「ニュー ロクライン」が関与する.間葉系幹細胞由来細胞群の機能制御機構に関しては, 「エンドクライン」 や「オート・パラクライン」に関する知見は多く見受けられるが,「ニューロクライン」シグナル 分子に関する解析は,ほとんど行われていないのが現状である.そこで本研究では,グルタミン酸, γ-アミノ酪酸(GABA)あるいはアドレナリンに注目して,間葉系幹細胞に由来する各種細胞種の 「ニューロクライン」シグナル分子による機能制御の可能性を追究した. ○間葉系幹細胞の機能制御 間葉系幹細胞のモデル細胞として C3H10T1/2 細胞およびマウス骨髄由来間葉系幹細胞を使用し解析 を行った.その結果,グルタミン酸が間葉系幹細胞に発現するシスチン/グルタミン酸アンチポー ターに作用することにより,グルタチオン濃度変動を介して幹細胞の自己複製能および骨芽細胞へ の分化能を抑制すること,および間葉系幹細胞には機能的なβ2 アドレナリン受容体が発現し,そ の活性化により細胞の酸化ストレスに対する抵抗性が上昇することを見出した. ○骨芽細胞の機能制御 骨芽細胞のモデル細胞として MC3T3-E1 細胞およびマウス頭蓋骨由来初代培養骨芽細胞を使用し解 析を行った結果,骨芽細胞に発現するシスチン/グルタミン酸アンチポーターにグルタミン酸が作 用すると,骨芽細胞の増殖性が抑制されること,閉経後骨粗鬆症モデルマウスの骨組織では,シス チン/グルタミン酸アンチポーターのサブユニットである xCT が高発現すること,および骨芽細胞 に xCT を強制発現させると骨芽細胞の分化能が顕著に抑制されることを見出した.さらに,骨芽細 胞には GABA 受容体サブタイプである GABAB 受容体が発現し,破骨細胞分化決定因子である RANKL の発現制御を通じて,骨リモデリングを制御する事実を見出した. ○軟骨細胞の機能制御 軟骨細胞の解析は,モデル細胞である ATDC5 細胞,およびラット肋軟骨由来初代培養軟骨細胞を使 用して行った.その結果,軟骨細胞には NMDA 受容体が発現し,その受容体の活性化は軟骨細胞の 17 成熟化を促進させることを発見した.また,軟骨細胞には D-セリン合成酵素である Serine racemase が発現すること,および軟骨細胞自身が D-セリンを合成・放出して NMDA 受容体の内在性調節因子 として作用することを見出した.また,軟骨細胞に対してアドレナリンは,β2 アドレナリン受容 体の活性化に伴う転写制御因子 Sox6 の発現抑制を介して,分化・成熟過程を抑制することを見出 した. ○脂肪細胞の機能制御 脂肪細胞の機能解析を行うにあたり,3T3-L1 細胞やマウス胎児由来繊維芽細胞を人為的に脂肪細胞 に分化誘導させて解析を行った結果,脂肪細胞には GABAB 受容体が発現し,抗肥満ホルモンである レプチンの発現を正に制御することを見出した. 以上より,間葉系幹細胞および由来細胞種において,ニューロクラインシグナル分子による機能制御機 構が存在する事実が明らかとなった.本研究成績は,これら細胞の増殖・分化メカニズムの解明だけでなく, 細胞機能破綻に起因する疾患への治療学的アプローチの重要な足掛かりになると考えられる.今後,間 葉系幹細胞由来の各種細胞種におけるニューロクライン分子の生理学的および病態生理学的重要性を 認識することにより,各種疾患治療に新たな展望をもたらすことが期待される. 18 大学院優秀発表賞応募講演 第1部門(生物系・医療系) (104 講義室) 1 シグマ受容体を標的とした癌イメージング剤の合成・評価 ○神原弘弥 1,小川数馬 1,柴 和弘 2,北村陽二 2,小阪孝史 2,黄檗達人 1,小谷 明1 (1 金沢大院医学系研究科,2 金沢大学際科学実験センター) シグマ受容体は種々のヒト癌細胞に過剰発現しているため,癌イメージングの有望な標的となり得 る.我々はこれまでに(+)-pIV (Fig. 1)がシグマ受容体に対し非常に高い親和性を有することを見出し てきた.さらに,(+)-[125I]-pIV の癌移植マウスにおける体内分布実験を行った結果,(+)-[125I]-pIV は高い癌集積を示すことを報告してきた.この 125I を 76Br に代替し,高感度かつ定量性に優れる PET イメージングへの応用を目指し,(+)-pBrV (Fig. 1)を合成し評価を試みた.本研究では 76Br に比べ長 半減期を持つ 77Br を用い基礎検討を行った.親和性実験の結果,(+)-pBrV はシグマ受容体に対し高い 親和性示した.体内分布実験の結果,(+)-[77Br]-pBrV は高い腫瘍集積性を有することも確認された. さ ら に , 過 剰量 の シ グマ リ ガ ンド に よ り受 容体 を 阻 害 する こ と で (+)-[77Br]-pBrV の癌集積は有意に低下し,(+)-pBrV の癌集積は受容体特 異的なものであることが示された.以上の結果より,放射性臭素標識 (+)-pBrV は,シグマ受容体を標的とした癌イメージング剤として有用で ある可能性が示された. 2 水酸化多環芳香族炭化水素のメダカとウニの胚発生に及ぼす影響 ○ 川部季美 1, Mohamed Nassef2, 大嶋雄治 2, 鈴木信雄 3, 笹山雄一 3, 服部淳彦 4, 中野 淳 1, 鳥羽 陽 1,亀田貴之 1, 早川和一 1(1 金沢大院薬, 2 九州大農, 3 金沢大臨海, 4 東医歯大教養) 重油に汚染された海水で孵化したヒラメ稚魚に生ずる脊柱湾曲の原因はこれまで不明であった.そこ で演者らは,酵母 two-hybrid 法を用いて解析した結果,水酸化多環芳香族炭化水素(OHPAH)類の中に 強いエストロゲン様活性或いは抗エストロゲン活性を示すものがあること見出し,OHPAH が骨代謝を調 節する因子の一つとしてエストロゲンの受容体を介して骨代謝に影響する可能性を指摘した.本研究で は,in vivo における OHPAH の作用を調べるため,メダカ及びムラサキウニの受精卵を用いて解析した. 試験物質は,酵母 two-hybrid 法によりエストロゲン活性を示した 4-hydroxybenz[a]anthracene ( 4-OHBaA ) と そ の 親 物 質 で あ る benz[a]anthracene ( BaA ), 抗 エ ス ト ロ ゲ ン 作 用 を 示 し た 3-hydroxybenzo[c]phenanthrene (3-OHBcP)とその親物質である benzo[c]phenanthrene (BcP)とし た.メダカの受精卵にナノインジェクション法を用いて,10-8∼10-10 M の試験物質の含有油滴をマイク ロキャピラリーにより投与し,定期的にメダカの胚を立体顕微鏡で観察した.ウニ胚の実験では,受精 膜の形成を確認後,卵を 5 群に分け,4 種類の試験物質(10-8 M)を海水に添加し,エタノールを添加 した対照群と比較した.その結果,メダカの胚発生では,致死率は 4-OHBaA > BaA,3-OHBcP > BcP と, いずれも PAH より OHPAH のほうが高かった. さらに PAH 及び OHPAH 投与群において孵化遅延が観察され, 孵化率は BaA > 4-OHBaA,BcP > 3-OHBcP であり,PAH よりも OHPAH のほうが低かった.また,ムラサキ ウニの胚発生においても,PAH 及び OHPAH を添加することにより,運動性の低下が観察され,特に発生 遅延は,OHPAH により引き起こされた.以上より,重油の毒性の本体は PAH ではなく,その水酸化代謝 物(OHPAH)類であり,メダカ及びウニの初期胚発生を攪乱している可能性が高いことがわかった. 19 3 脳脊髄液からの L-glutamate 排出輸送解析 ○ 櫻井達彦 1,赤沼伸乙 1,立川正憲 2, 久保義行 1, 細谷健一 1 (1 富山大院薬, 2 東北大院薬) 【目的】酸性アミノ酸である L-glutamate (L-Glu) は,生体内において興奮性神経伝達物質として重 要な役割を持っている.一方,高濃度の L-Glu はニューロンに毒性を及ぼすことが知られており,その 細胞外液中濃度の上昇によって神経変性疾患を引き起こす可能性が考えられる.生理的には,脳間質液 (ISF) 中の L-Glu 濃度は低濃度 (1∼3 µM) であり,この維持機構として,アストロサイト,ニューロ ン,脳毛細血管内皮細胞による L-Glu 取り込みが知られている.また,脳脊髄液 (CSF) 中の L-Glu 濃 度 (11 µM) は脳 ISF 中濃度より高く,脳 ISF 中濃度上昇および神経細胞の機能異常を引き起こす可能 性が示唆される.従って,本研究では,CSF 中からの L-Glu 消失経路の解明を目的とした. 【方法】ラット CSF からの[3H]L-Glu 排出を解析するため,[3H]L-Glu をラット脳室内に投与した後, CSF 中に残存する[3H]L-Glu を測定し,残存率を解析した.また,ラットから単離した脈絡叢を用いて, ラット脈絡叢における[3H]L-Glu 取り込みを解析した.免疫染色法によって,ラット脳室における興奮 性アミノ酸輸送担体 (EAAT1, 2) の発現および局在を解析した. 【結果・考察】ラット脳室内における[3H]L-Glu の消失速度定数は 0.194 min-1 であり, bulk flow マ ーカーである[14C]D-mannitol より 5 倍高い値であった.さらに,[3H]L-Glu の消失は,非標識 L-Glu 同 時投与によって有意に阻害された. ラット単離脈絡叢における[3H]L-Glu 取り込みは時間依存性を示し, 非標識 L-Glu 共存下において,その取り込みは有意に阻害された.ラット単離脈絡叢での取り込み解析 で得られた L-Glu 排出クリアランス値は,ラット脳室内投与法で得られた排出クリアランス値の 1%未 満であり,これらの結果から,CSF 中からの L-Glu 排出に対する血液脳脊髄液関門 (BCSFB) の寄与は 小さいことが示唆された.また,免疫組織学的解析の結果では,EAAT1 および EAAT2 が脳室の上衣細胞 に発現していることが示唆された.以上の結果から,L-Glu が CSF 中から消失する主要な経路は,BCSFB を介する循環血液中への排出ではなく,上衣細胞による取り込み輸送であることが示唆された. 4 GABABR1 サブユニットによる脂肪細胞の leptin 発現調節 ○ 中村由香里,檜井栄一,宝田剛志,高畑佳史,米田幸雄 (金沢大院薬・薬物学) 【目的】γ-アミノ酪酸(GABA)は中枢神経系の多くの部位で抑制性伝達物質として働いているが,近年 我々はそのシグナルを受容する GABA 受容体(GABAR)が骨芽細胞や軟骨細胞に機能的に発現する事実を見 出した.また,これらの細胞と同じ間葉系幹細胞を起源とする脂肪細胞においても,GABABR を形成する サブユニットのうち GABABR1 が発現することを本学会第 120 回例会にて報告した. そこで今回は GABABR1 欠損マウスを用いて,脂肪細胞に発現する GABABR1 の機能的役割の解明を試みた. 【方法】野生型マウス および GABABR1 欠損マウスから単離した初代培養脂肪細胞(EF 細胞)について,RT-PCR 法により脂肪細 胞関連遺伝子の発現検討を行った.また,野生型および GABABR1 欠損マウスから摘出した内臓脂肪組織 についても同様の検討を行った.さらに,ELISA 法による血中 leptin 濃度の測定と食餌摂取量の比較も 行った. 【結果】摂食行動に重要な leptin の mRNA 発現には EF 細胞および内臓脂肪組織ともに,GABABR1 欠損マウスにおいて有意な減少が観察された.さらに,GABABR1 欠損マウスでは血中 leptin 濃度の有意 な減少が確認されただけでなく,摂食量には GABABR1 欠損マウスで有意な増加が見られた. 【考察】脂肪 組織において発現が認められる GABABR1 サブユニットは,leptin の発現調節に重要な役割を果たす可能 性が示唆される. 20 5 網膜 Müller 細胞における taurine 輸送機能 ○安藤大介 1, 赤沼伸乙 1, 立川正憲 2, 久保義行 1, 細谷健一 1 (1 富山大院薬, 2 東北大院薬) 【目的】網膜における活発な神経活動は,神経細胞容積の増加および細胞外液中浸透圧の減少を誘発す ることが知られており,シナプス周囲の空間が減少することからニューロンの興奮性亢進を惹起する可 能性がある.このため,網膜細胞間隙液中の浸透圧の調節は網膜の機能維持において重要である. Taurine は網膜に高濃度(約 12 mM)存在し,細胞内外に輸送することで細胞容積の調節と細胞内外の 浸透圧バランスを維持する有機浸透圧調節物質である.また,網膜グリア細胞である Müller 細胞は網 膜細胞間隙液中に存在する低分子の量的調節を担う.そこで本研究では,Müller 細胞における taurine の細胞膜透過機構の解明を目的とした. 【方法】条件的不死化ラット Müller 細胞株(TR-MUL5 細胞)を用い,[3H]taurine の輸送特性を解析し た.Taurine transporter(TauT/Slc6a6)mRNA の発現は,RT-PCR 法にて解析した. 【結果・考察】TR-MUL5 細胞への[3H]taurine 取り込みは,Na+,Cl-および濃度依存性(Km=38 μM) を示した.この取り込みは,β-alanine および hypotaurine 等の TauT 基質存在下において,有意に阻 害された.RT-PCR 解析によって,TR-MUL5 細胞において TauT mRNA の発現が示された.一方,TR-MUL5 細胞からの[3H]taurine 排出は低浸透圧条件下で有意に増加した.さらに,低浸透圧条件下において [3H]taurine 排出は,sphingosine-1-phosphate 共存下にて有意に増加し,この[3H]taurine 排出の増加 は容積感受性アニオンチャネル(VSOAC)特異的阻害剤によって有意に阻害された.以上のことから, Müller 細胞内への taurine 取り込みは TauT を介すること,Müller 細胞外への taurine 排出は低浸透圧 条件下において増加し,その過程に VSOAC が関与することが示唆された. 6 In vitro 蛍光イメージング(QTLI)法を用いた MRP2 機能変動評価−肝代謝を考慮した薬物間 相互作用予測への応用− ○池永美穂,中西猛夫,福田 元,白坂善之,玉井郁巳(金沢大院薬・薬物動態学) 肝細胞胆管側膜に発現する薬物排出型輸送体 MRP2(ABCC2)は,様々な薬物やその代謝物の胆汁への排 泄を担うため,MRP2 上での薬物間相互作用は薬物の肝蓄積性を高め肝障害の原因となりうる.我々はこ れまでに,胆管腔を形成するサンドイッチ培養肝細胞(SCH)を用いた MRP2 輸送活性の評価法として,細 胞内で加水分解されて MRP2 蛍光基質 5(and)-carboxy-2 -7 -dichloro-fluorescein (CDF)へ変換され る CDF Diacetate (CDFDA)を用いた MRP2 輸送機能の定量的可視化 (Quantitative Time-Lapse Imaging(QTLI)) 法を提唱してきた (Nakanishi et al., Drug Metab. Dispos. 26:171-179 (2011)). 本発表では,SCH が薬物代謝活性を in vitro 評価系として維持していることを利用し,肝細胞内で生成 される代謝物による MRP2 への影響評価への応用性を検討した.肝細胞内で MRP2 基質 estradiol 17β-glucuronide (E17G)へとグルクロン酸抱合代謝を受ける estradiol (E2)をモデル化合物として用 い,評価を行った.E2 を曝露したラット SCH における rMrp2 輸送活性は,蛍光顕微鏡下で CDF の胆管腔 移行を経時的に観察することで測定した.また,rMrp2 を介した CDF 輸送は rMrp2 発現ベシクルを用い て測定した.rMrp2 を介した CDF 輸送は,E2 存在下(300 µM)では変化しなかったが,E17G によっては濃 度依存的に減少し,IC50 値は約 60 µM であった.E2 を曝露した SCRH において,E17G が検出され,この 時 CDF の胆管腔移行性が有意に減少した.さらに,CDF の胆管腔移行性は E2 の曝露時間や濃度に依存的 に減少した.E2 および E17G は CDFDA からの CDF 生成には影響せず,胆管腔中移行性低下は肝細胞内で 生成した E17G による rMrp2 機能阻害により生じることが強く示唆された.以上の結果より,QTLI は肝 細胞内代謝物による MRP2 上での薬物間相互作用評価が可能であり,肝における代謝物が未同定な物質 に対しても,薬物誘導性肝障害予測系としての応用性が示された. 21 7 健常成人のミゾリビン消化管吸収に対する遺伝と食塩摂取の影響 ○深尾美紀 1,渡邉ひとみ 1,石田和也 1,田口雅登 1,橋本征也 1,松倉裕喜 2,宮脇利男 3 (富山大院薬 1,済生会富山病院小児科 2,富山大学小児科 3) 【背景・目的】核酸類似薬物であるミゾリビンの免疫抑制作用は血中濃度と密接に関連するが,経口投 与後の薬物血中濃度には大きな個体差が存在する.ミゾリビンは生体内でほとんど代謝を受けず主に腎 臓から排泄されるため,患者の腎機能がミゾリビンの体内動態の変動要因と考えられてきたが,消化管 吸収過程もミゾリビンの体内動態の個体差の一因として考えられている.本研究では,ミゾリビンの消 化管吸収に対するトランスポーターの遺伝的多型と食塩摂取の影響を評価した. 【方法】日本人健常成人男性 30 名を対象として,ミゾリビン 150 mg を服用後 12 時間までの尿中排泄 速度からバイオアベイラビリティおよび消失速度定数を算出した.また,末梢血から得られた DNA を用 いて,concentrative nucleoside transporter 1 (CNT1) G565A 変異,breast cancer resistance protein (BCRP) C421A 変異,および multidrug resistance-associated protein 4 (MRP4) G2269A 変異の遺伝 子診断を行った. 【結果・考察】CNT1 565-A/A 遺伝子を有する被験者におけるミゾリビンのバイオアベイラビリティの平 均値(75.4%)は,CNT1 565-G/G 遺伝子を有する被験者のもの(90.1%)と比較して有意に低かった.一方, ミゾリビンのバイオアベイラビリティに対する BCRP C421A 変異と MRP4 G2269A 変異の影響は認められ なかった.また,バイオアベイラビリティの低い被験者 8 名を対象として,ミゾリビンの消化管吸収に 対する食塩負荷の効果を追加検討した結果,7 名でバイオアベイラビリティの増加が認められた.以上 の結果より CNT1 G565A 変異はミゾリビンのバイオアベイラビリティの個体差の一因であることが明ら かになった.また,食餌に含まれる食塩の量によって,ミゾリビンのバイオアベイラビリティが変動す る可能性があると推定された. 8 ヒトがん細胞株における 5-アミノレブリン酸(ALA)誘導性プロトポルフィリンⅨ蓄積機構の解明 ○小川哲郎,柳原千泰,中西猛夫,白坂善之,玉井郁巳(金沢大院薬・薬物動態学) 5-アミノレブリン酸 (5-aminolevulinic acid, 以下 ALA)は,投与後,代謝物であるプロトポルフィ リンⅨ (以下,PPⅨ) が腫瘍組織選択的に蓄積することから,光線力学療法薬として利用されている. しかし,PPⅨ蓄積性はがん種や悪性度によって異なり,PPⅨ蓄積機構は十分に理解されていない.本研 究では,光線力学療法の有効性予測を目的とし,ヒトがん細胞株における PPⅨ蓄積規定因子の探索を行 った.まず,種々のヒトがん細胞株において,ALA 曝露後の PPⅨ蓄積量,ALA の取り込み,PPⅨ生合成 (ALA 代謝),ならびに PPⅨ消失(代謝および排出)を速度論的に解析した.がん細胞株における ALA の 取り込み速度は細胞内 PPⅨ生合成速度と比較して有意に高く,PPⅨ生合成が律速段階であることが示唆 された.しかし,がん細胞株間の PPIX 蓄積量の差を PPⅨ生合成,代謝,細胞外排出の内,1過程のみ で説明することは困難であった.従って,細胞内 PPIX 蓄積性は PPIX 生合成,代謝および細胞外排出の 3 者のバランスにより決定されるものと考えられた.得られた三つのパラメーター(PPⅨ生合成,代謝, 細胞外排出)を組み合わせ,細胞内 PPIX 蓄積性予測を試みた.5 種のがん細胞から得られたパラメータ ーを基準細胞の値で正規化し算出された PPⅨ蓄積性指標(PPⅨ Accumulation Index, 以下 PAI)は, 基準細胞の PPⅨ蓄積量で正規化された各々の細胞の相対的 PPⅨ蓄積量と有意に相関した.以上の結果 より,PPXI の見かけの蓄積性は細胞毎に規定因子が異なり,その相対的関係で考える必要のあることが わかった.また,本研究で定義した PAI は ALA を曝露した細胞内 PPⅨ蓄積量を予測する上で有用な指標 であることが示唆され, 本指標を用いた ALA による腫瘍選択的な PPⅨ蓄積性予測への応用が期待される. 22 9 トランスポーターを介した薬物-ジュース間相互作用機構 ○七里 恵,白坂善之,森 貴則,中西猛夫,玉井郁巳(金沢大院薬・薬物動態学) フルーツジュース (FJ)は,その併用により薬物吸収動態を変動させるため,医薬品の有効性や安全 性などに多様な影響を及ぼす可能性が示唆されている.これら薬物吸収動態変動はグレープフルーツジ ュース (GFJ)をはじめ,オレンジジュース (OJ) やアップルジュース (AJ) など異なる FJ によっても 観察されており,各 FJ と種々消化管機能間の多様な相互作用により生じると推察されている.そこで 本研究では,FJ による薬物吸収動態変動の発生機序を解明することを目的として,薬物吸収に関与する 消化管トランスポ− タ− に着目し,各 FJ およびその成分のトランスポーターに対する作用機構の違い について検討を試みた.まず,フェキソフェナジンのラット小腸膜透過性に対する FJ の影響を評価し たところ,いずれの FJ によっても吸収性が低下したが,ピタバスタチンの膜透過性は GFJ により上昇 した.有機アニオントランスポーター (Oatp)および P 糖タンパク質 (P-gp)発現細胞を用いた in vitro 実験により,フェキソフェナジンの膜透過性変動は各 FJ による Oatp 阻害に起因し,ピタバスタチンの 膜透過性変動は P-gp 阻害に起因していることが示唆された.また,ヒト OATP および P-gp に関しても 検討を行ったところ,いずれの薬物もラットと類似した結果が得られた.一方,各 FJ が異なる成分を 有していることを考慮すれば,相互作用を引き起こす原因成分は FJ 間で異なっていることが推察され る.そこで,薬物− FJ 間相互作用に関わる原因成分の考察を行うために,FJ 中成分の濃度解析とそれ ら成分による OATP 阻害効果を評価した.その結果,GFJ および OJ による OATP 阻害はそれぞれ naringin および hesperidin に起因することが示唆された.AJ については,phlorizin の関与が示唆されたが, その影響の程度から他の成分との複合的な効果であると考察された.以上より,(i) 関与するトランス ポーター,(ii) 各 FJ による阻害効果,(iii) FJ 中の原因成分などの違いが,種々FJ による多様な薬 物吸収動態変動に関与することが示唆された. 23 第2部門(化学系・物理系) (103 講義室) 1 フコシダーゼ阻害活性を有するポリヒドロキシピペリジン誘導体の合成研究 ○坂 知樹 1,湊大志郎 1,杉本健士 1,松谷裕二 1,中川進平 2,山下侑子 2,加藤 敦 2, 足立伊佐雄 2,Peter G. Kirira3,尾野村治 3,豊岡尚樹 4 (1 富山大院薬, 2 富山大病院薬, 3 長崎大院薬, 4 富山大院工) 【背景・目的】L-フコースを特異的に加水分解する糖代謝酵素であるフコシダーゼは,細菌の細胞壁の 強度維持に関与していることから,フコシダーゼ阻害剤が新たな作用機序の抗菌薬となる可能性が示唆 されている.そこで,新規フコシダーゼ阻害剤の開発を目的とし,L-フコースを擬態したポリヒドロキ シピペリジン誘導体を合成し,その活性評価を行った. 【結果】L-アラニン (1) を出発物質として,数工程にて共通中間体 6 を調製し,続く変換により十数 種のポリヒドロキシピペリジン誘導体を合成した.フコシダーゼ阻害活性を測定した結果,1-C 位にベ ンゼン環を有する 1-C-(p-chlorophenyl)propyl 体 7a および 1-C-(p-trifluoromethylphenyl)propyl 体 7b の IC50 値は,44 nM および 43 nM であり,現時点で最強のフコシダーゼ阻害剤である DFJ (89 nM) を上回る強力な阻害活性が認められた. 2 (±)-Lycoflexine,(±)-Lycoposerramine-Q の全合成研究 ○伊藤直哉,稲垣冬彦,岩田 隆,向 智里(金沢大院薬) Lycoflexine (1)及び lycoposerramine-Q (2)は,4 環性構造を有する lycopodium アルカロイドであ る.今までに 1 の全合成が二例報告されているが,2 の全合成は全く報告されていない.今回我々は, メチル基に変換可能なエキソメチレンを側鎖に有するジエンイン体 4 を用いて Pauson-Khand 反応(PKR) を行った後,エキソメチレン部を立体選択的に還元できれば,1,2 の A,B 環部及び 15 位に相当するメチ ル基を一挙に構築することが可能となり,効率的な標的天然物群の合成に繋がると考え,その全合成研 究に着手した.文献既知のアルコール体 3 から 4 工程で合成した 4 の PKR を行い二環性骨格を構築後, Wilkinson 触媒を用いた水素添加により,縮環部の水素と六員環上のメチル基が目的の立体化学を有す る閉環体 5 を二工程収率 70%で得ることに成功した.5 から 11 工程の化学修飾を経て,標的天然物群 の共通合成中間体となる三環性化合物 6 を合成した.現在,1 及び 2 への誘導を検討中である. 24 3 [2.2]パラシクロファン骨格を有する面不斉ホスフィン触媒の開発 北垣伸治,○太田有羽,高橋亮平,向 智里(金沢大院薬) 【目的】[2.2]パラシクロファンは環上に置換基を有すると面不斉を生じる.我々はこの構造的特性を 活かした,多点認識型の酸-塩基複合型有機分子触媒の創製を計画し,立体的嵩高さと空間的自由度を 与えるスペーサーを介して各種酸性官能基(XH)を pseudo-オルト位に配置したホスフィン触媒 1 を設計 した. 【実験・結果】[2.2]パラシクロファンを出発原料として,既存の手法により光学分割を行った後,ブロ モアルコール体 2 の両官能基を足掛りに光学活性なホスフィン触媒 1 を合成した.各種触媒 1 をイミン 3 とメチルビニルケトン 4 のアザ Morita-Baylis-Hillman 反応に適用したところ,酸性官能基が水酸基の場 合に,最高不斉収率 70%でアリルアミン体 5 が得られた. 4 銅塩/アミンを活用した 1,4-ビスアレンの[2+2]環化付加反応 北垣伸治, ○梶田幹人, 成田 集, 向 智里 (金大院薬) 【目的】ビスアレン誘導体は加熱により分子内の 2 つのアレン間で[2+2]環化付加反応を起こし,ビシ クロ[n.2.0]アルカジエン化合物を与えることが知られている.しかし,アレン間を二原子で連結した 1,4-ビスアレンでは,一般に形式的な[3,3]-シグマトロピー転位によるテトラエン体の生成が主とな る.我々は本反応系で[2+2]環化付加反応を優先させる反応条件の探索を行った. 【実験・結果】種々検討の結果,ジオキサン還流化に銅塩とアミンを共存させるとテトラエン体 3 の生 成が抑制され,所望の環化体 2 が優先して得られることを見出した.安価で良好な結果を与えた臭化銅 (II)とジイソプロピルアミンを用いる条件を採用し,R1∼R4 の位置に置換基を有する各種ビスアレンの [2+2]環化付加反応に適用したところ,最高収率 81%で対応する環化体 2 が得られた. 25 5 68 Ga 標識 PET 骨イメージング薬剤開発のための基礎検討 ○高井健一郎 1,小川数馬 1,黄檗達人 1,北村陽二 2,柴 和弘 2,小谷 (1 金沢大院医,2 金沢大学際科学実験センター) 明1 【目的】近年,ポジトロン放出(PET 用)核種である 68Ga がその優れた物理的性質から注目を集めている (t1/2 = 68 min, ジェネレーター産生核種).本研究では放射性ガリウムを用いた転移性骨腫瘍診断 PET 用 薬剤の開発を目的として,骨への輸送担体として骨に高親和性を示す酸性アミノ酸ペプチドと Ga-DOTA 錯体とを結合した化合物の設計,合成,評価を行った.尚,本研究では 68Ga より半減期が長く,取扱いが 容易な 67Ga(t1/2 = 3.3 day)を用いて基礎検討を行った. 【方法】DOTA-(Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14)を Fmoc 固相合成法により合成し 67GaCl3 と反応させることによ り,67Ga-DOTA-(Asp) n を得,これら化合物の緩衝液中での安定性,ハイドロキシアパタイト(HA)との結合 親和性,ノーマルマウスにおける体内放射能分布を評価した. 【結果及び考察】67Ga-DOTA-(Asp)n は緩衝液中で高い安定性を示し,HA との結合実験の結果,アスパ ラギン酸の結合数の増加に依存した HA への結合親和性を示した.体内放射能分布実験の結果, 67 Ga-DOTA-(Asp) n は投与後速やかに骨への高い集積を示し,非標的臓器への集積はほとんど観察され なかった.またアスパラギン酸の結合数によるマウスの体内放射能分布を比較すると HA 結合実験の結果 を反映して,結合数増加に依存した骨への放射能集積の増加を示した.更に,イメージングの指標とな る,血液に対する標的組織の比を算出した結果,67Ga-DOTA-(Asp)11, 14 は実際に臨床で使用されている 骨シンチグラフィ用薬剤である 99mTc-HMDP と比べても同等の標的組織/血液比を示した.以上の結果よ り,67Ga-DOTA-(Asp) n は PET 骨イメージング薬剤として有用である可能性が示された. 26 優秀ポスター賞応募発表 (アカデミックプロムナード) P−1 ミッドカイン再発現誘導を介した合成レチノイド Am80 による中枢神経再生効果 ○ 加藤彩香 1,郡山恵樹 2,荒井國三 1,加藤 聖 2 ( 金沢大院薬・臨床薬物情報学,2 金沢大院医・脳情報分子学) 1 損傷を受けた成体の中枢神経系は,新生期とは異なり再生が困難である.その理由のひとつは,成体 の中枢神経系では再生関連遺伝子発現プログラムが制限されており,神経栄養因子が不足することにあ る.このことから,新生期に豊富に存在する神経栄養因子の「再発現効果」は成体中枢神経系の再生を 可能にすると考えた.神経栄養因子のひとつであるミッドカイン (MK) は胎生期の神経細胞において軸 索伸長作用をもつが,成長に伴って発現が著しく低下する.しかし,成体中枢神経系における MK の作 用は不明である.一方, MK の遺伝子上流にはレチノイン酸応答配列が存在しており,レチノイドによ り MK の発現が誘導される.そこで本研究は創薬的観点から,非タンパク質であり脂溶性かつ低分子の 合成レチノイド Am80 の投与による MK の発現誘導を伴った中枢神経再生を試みた.具体的には網膜神 経節細胞株 (RGC-5) を用いて, Am80 により誘導される MK シグナルを精査し,in vivo の網膜-視神 経再生モデルで再現性を調べた.ラット網膜神経節細胞 (RGC) における MK 発現レベルは成長ととも に減少し,網膜組織片における軸索再生能の低下と一致した. Am80 は RGC-5 において濃度依存的に MK 発現を促進させ,軸索伸長を誘導した.また,その効果は MK の siRNA および抗体で抑制された. また,ウエスタンブロットによるシグナル解析により,その下流メカニズムとして神経細胞の生存・分 化を制御する PI3K/Akt/mTOR 経路との関与が示唆された.また,in vivo においても Am80 の硝子体内 投与により MK 発現と PI3K/Akt/mTOR 経路の活性化がみられた.これらのことより, Am80 が MK 由 来のシグナル経路により成体哺乳類の中枢神経を再生させることが示唆された.本メカニズムが難治性 中枢神経疾患治療薬の開発に貢献できることを期待する. P−2 癌化学療法薬誘発アロディニアに及ぼす 5-HT1A 受容体作用薬ザリプロデンの効果 ○坂本歩美,安東嗣修,倉石 泰(富山大院薬・応用薬理学) 【目的】現在,癌化学療法の副作用の一つである末梢神経障害性疼痛に対する治療法・治療薬は確立さ れていない.5-HT1A 受容体作用薬 xaliproden は,神経障害性疼痛に対して有効である可能性が最近報告 されている.そこで,本研究では,3 種の癌化学療法薬 paclitaxel(PXL) ,oxaliplatin(OXP) ,vincristine (VCN) )で誘発される機械的アロディニア(触刺激による痛み)に対する xaliproden の効果を検討し た. 【方法】実験には,雄性 C57BL/6 系マウスを用いた.抗癌薬は,単回腹腔内注射した.アロディニ アの評価は,細い von Frey filament(vFF,0.69 mN)で後肢足底を刺激して行なった.末梢神経活動 として,双極電極を用いて脛骨神経の活動を記録した.5-HT1A 受容体 mRNA の発現は RT-PCR 法により解 析した.Xaliproden は,各抗癌薬の投与後アロディニアが最大となる日(PXL と VCN は 14 日目,OXP は 10 日目)に単回経口投与した. 【結果・考察】Xaliproden(1 及び 3 mg/kg,p.o.)は,PXL 誘発の機械 的アロディニアを抑制した.一方,VCN 及び OXP 投与によるアロディニアは,xaliproden で殆ど抑制さ れなかった.3 種の抗癌薬投与により,vFF 刺激に対する脛骨神経の反応が増大した.Xaliproden は, PXL 投与マウスにおけるこの末梢神経活動を抑制したが,VCN 及び OXP 投与マウスでは,抑制しなかっ た.5-HT1A 受容体 mRNA は,後根神経節細胞には発現していたが皮膚には発現していなかった.以上の結 果から,xaliproden は,PXL 誘発末梢神経障害性疼痛を末梢レベルで抑制し,受容体の発現分布から一 次感覚神経への作用により疼痛抑制効果を発揮したと推察される. 27 P−3 皮膚糸状菌誘発掻痒反応へのプロテアーゼとプロテアーゼ活性化受容体 2 の関与 ○高山祐輔 1,安東嗣修 1,山腰高子 2,清水忠道 2,佐野文子 3,倉石 泰 1 (1 富山大院薬・応用薬理学,2 富山大院医・皮膚科,3 琉球大農) 【目的】皮膚糸状菌症(特に白癬)では,感染部に激しい掻痒を生じることがある.しかし,その掻痒 の発生機序は明らかとなっていない.我々は,これまでに,プロテアーゼ及び PAR2 プロテアーゼ活性 化受容体の痒み発生へ関与を報告してきた.皮膚糸状菌は,多くのプロテアーゼを産生・遊離すること が知られている.そこで,本研究では,皮膚糸状菌誘発掻痒反応へのプロテアーゼ及び PAR2 受容体の 関与を検討した. 【方法】実験には,主に雄性 ICR 系マウスを,一部の実験ではマスト細胞欠損マウス も用いた.皮膚糸状菌は Arthroderma vanbreuseghemii を用い,実験にはその抽出物(E-DEP)を使用 した.痒み反応の評価は,マウスの吻側背部に E-DEP を皮内注射した後の後肢による注射部位への掻き 動作をカウントすることにより行なった.セリンプロテアーゼ活性は特異的基質を用いて測定した. 【結 果・考察】E-DEP のマウスへの皮内注射により掻き動作が惹起されたが,熱処理した E-DEP では観察さ れなかった.E-DEP 誘発掻き動作は,セリンプロテアーゼ阻害薬 nafamostat mesilate と PAR2 拮抗薬 SLIGRL-NH2 で抑制されたが,H1 ヒスタミン受容体拮抗薬 terfenadine では抑制されなかった.また,マ スト細胞欠損マウスとその対照マウスで E-DEP がほぼ同程度の掻き動作を誘発した.E-DEP に,セリン プロテアーゼ活性及び,PAR2 受容体 N 末ペプチドを切断する活性(N 末ペプチド切断により PAR2 は活 性化される)が認められた.以上の結果より,E-DEP 誘発掻痒反応には,セリンプロテアーゼ及び PAR2 受容体が関与することが示唆される. P−4 蚊アレルギー性掻痒反応への langerin 陽性樹状細胞と IL-18 の関与 ○高木あゆ美,安東嗣修,原田絢子,倉石 泰(富山大院薬・応用薬理学) 【目的】蚊アレルギーによる痒みは,即時型アレルギーの痒みの発生機序の中心と考えられてきたマス ト細胞− ヒスタミン系の関与が小さいことを我々は見出してきた.Langerin 陽性樹状細胞は,抗原提示 細胞として表皮及び真皮内に存在し,免疫に重要な役割を果たしている.そこで,本研究では,蚊アレ ルギーによる痒みへの langerin 陽性樹状細胞と樹状細胞が産生・遊離する因子の一つである IL-18 の 関与を検討した. 【方法】実験には,雄性 ICR 系マウスを使用し,蚊の唾液腺抽出物(蚊アレルゲン) の反復皮内注射により感作マウスを作製した.蚊アレルギーによる痒み反応の評価は,マウス吻側背部 に蚊アレルゲンを皮内注射した後の後肢による注射部位への掻き動作をカウントすることにより行な った.Langerin,IL-18,caspase-1 の発現はウエスタンブロティングにより行なった. 【結果・考察】 樹状細胞を減少させる etretinate 及びナローバンド UVB の皮膚への処置は,蚊アレルギー性掻痒反応 及び皮膚における langerin の発現を減少させた.IL-18 の皮内注射が掻き動作を誘発し,蚊アレルギー による掻痒反応を抗 IL-18 抗体が抑制した.非感作マウスと比較して,感作マウスでは pro-IL-18 及び caspase-1 の発現が有意に増加したが,langerin 発現レベルは変わらなかった.初代培養したマウスの 後根神経節細胞と表皮ケラチノサイトに IL-18 受容体 mRNA が発現していた.以上の結果より,蚊アレ ルギー性掻痒は,少なくとも一部が,langerin 陽性樹状細胞が産生・遊離する IL-18 が,表皮ケラチノ サイトあるいは一次感覚神経に作用することで生じると示唆される. 28 P−5 神経障害性疼痛マウスの静的アロディニアと動的アロディニアに対するアミトリプチリンの 作用態度とその作用発現メカニズム 〇田中真衣,佐々木淳,倉石 泰(富大院医薬・応用薬理学) 三環系抗うつ薬アミトリプチリンは神経障害性疼痛の軽減を目的として使用される.神経障害性疼痛 動物モデルでも静的アロディニア(細い線維による皮膚の軽い凹み刺激で生じる疼痛反応)への有効性 が報告されているが,アミトリプチリンの作用態度および機序には未だ不明な点が多い.本研究では, 坐骨神経を部分結紮することで作製する神経障害性疼痛マウスを用いて,静的アロディニアと比較しな がら動的アロディニア(筆で皮膚を軽く擦る刺激で生じる疼痛反応)に対するアミトリプチリンの作用 態度を明らかにし,その作用発現機序についての検討を行った.神経結紮後 10 日目のマウスに 30mg/kg の用量のアミトリプチリンを経口投与すると,静的アロディニアは一過性に抑制されたが,動的アロデ ィニアは抑制されなかった.一方,30mg/kg の用量のアミトリプチリンを神経結紮後 10 日目から 19 日 目まで 1 日 2 回繰り返し投与すると,投与 3 日目から遅延性の抑制作用がみられ,静的・動的アロディ ニアの両方が有意に抑制された.6-Hydroxydopamine を髄腔内に投与しノルアドレナリン作動性神経終 末を変性させると,静的アロディニアに対するアミトリプチリンの急性抑制効果には影響はみられなか ったが,静的・動的アロディニアに対する遅延性抑制効果が消失した. 本研究から,アミトリプチリンは一過性に静的アロディニアを抑制するだけでなく,繰り返し投与す ることで,遅延性に静的・動的両アロディニアを抑制することが明らかとなった.また,遅延性の抑制 作用の発現には,脊髄後角に終末するノルアドレナリン作動性神経が重要な役割を果たすことが示唆さ れる. P−6 がん細胞における ATR-Chk1 経路亢進に関する解析 ○藺上圭子,井村真由美,若杉光生,松永 司(金沢大院薬・遺伝情報制御学) 【目的】DNA 損傷応答の一つである細胞周期チェックポイント機能の上流で中心的な役割を果たしてい るキナーゼに ATR (ataxia telangiectasia-mutated and Rad3-related) がある.ATR は複製ストレス によって活性化され,Chk1 (Checkpoint kinase 1) の 317 番目と 345 番目のセリン残基 (S317/S345) を リン酸化し,intra-S,G2/M 期のチェックポイントにはたらく.ATR による Chk1 リン酸化反応(ATR-Chk1 経路)には,Claspin や TopBP1 など多くの因子が必要であることが知られている.当研究室では,ヒト 由来培養がん細胞において紫外線照射後の Chk1 Ser345 リン酸化が著しく亢進していること,また ATR-Chk1 経路因子の細胞内レベルが増加していることを見出した.本研究では,この現象ががん細胞全 体に一般化できるのか検証し,細胞のがん化と ATR-Chk1 経路亢進との関係性を明らかにすることを目 的とした. 【方法】各種培養細胞に紫外線照射または DNA 損傷剤処理後,細胞溶解液を回収し,各特異抗体を用い てウエスタンブロッティングを行った.また,total RNA を回収し,半定量 RT-PCR 法および real-time PCR 法により mRNA 発現量を定量した. 【結果・考察】調べた 11 種類のヒトがん細胞株すべてにおいて,紫外線照射後の Chk1 Ser345 リン酸 化がヒト正常細胞に比べて著しく亢進しており,他の DNA 損傷剤であるエトポシド,シスプラチンや, DNA 複製阻害剤であるヒドロキシウレアを処理した場合も同様に亢進がみられた.また,これらのがん 細胞の多くでは ATR-Chk1 経路因子(ATR,Chk1,Claspin,TopBP1)の細胞内レベルが増加しており, これらは転写レベルによる増加であることがわかった.また,マウス胎児由来線維芽細胞の試験管内自 然がん化系においても,継代数の増加に伴う増殖速度の上昇に相関して,紫外線照射後の Chk1 S345 リ ン酸化と ATR-Chk1 経路因子の細胞内レベルの増加が確認された.以上の結果より,がん細胞でみられ る DNA 複製ストレス後の Chk1 S345 リン酸化の亢進は,ATR-Chk1 経路の因子の増加が主たる原因と考え られ,これらの因子の増加はがん細胞の高い増殖性を獲得するために必要なステップである可能性が示 唆された. 29 P−7 Rapamycin による CD4+T 細胞,CD8+T 細胞増殖抑制効果の相違に関する解析 ○安岡知香,猪部 学,松永 司 (金沢大院薬・遺伝情報制御学) 【目的】Rapamycin は免疫抑制剤として実用されており,IL-2 受容体 (IL-2R) シグナルを阻害し,T 細胞 増殖を抑制することが知られているが,CD4+T 細胞,CD8+T 細胞増殖に対する効果に違いがあるかどう かは十分に解析されていない.そこで,CFSE 蛍光色素を用いた in vitro T 細胞増殖評価により,CD4+T 細胞,CD8+T 細胞両者に対する rapamycin 効果を検討した. 【方法】CFSE 染色したマウスリンパ節 T 細胞を Concanavalin A (ConA),PMA/ionomycin (PMA/iono),抗 CD3 抗体により抗原非特異的に刺激した.刺激後 48hr の増殖量,rapamycin による増殖抑制効果,刺激 後 24hr の IL-2R 発現量を CD4+T 細胞,CD8+T 細胞各々について flow cytometry により解析した. 【結果・考察】CD4+T 細胞,CD8+T 細胞の rapamycin に対する感受性は,ConA,抗 CD3 抗体刺激時に は同等であったが,PMA/iono 刺激時には CD4+T 細胞に比べ,CD8+T 細胞は抵抗性を示した.この差の 原因をさらに検討するため,細胞分裂開始前の刺激後 24hr における IL-2R 発現量を CD4+T 細胞, CD8+T 細胞で比較したところ,PMA/iono 刺激時のみ CD8+T 細胞で有意に高い発現が認められた.実際 に,刺激後 48hr の増殖量も PMA/iono 刺激では CD8+T 細胞の方が高く,CD4+T 細胞よりも CD8+T 細胞 に,より強い活性化が誘導されることが明らかとなった.よって,強い活性化による IL-2R シグナルの亢進 が PMA/iono 刺激時の CD8+T 細胞における rapamycin 抵抗性の原因になっている可能性が考えられた. また,TCR 下流には PKCθ,Ca2+/CN,Ras/Raf/MAPK シグナルの 3 つの主要シグナル経路があり, ConA,抗 CD3 抗体はすべての TCR 下流シグナルを誘導するのに対し,PMA/iono 刺激は PKCθ, Ca2+/CN シグナルのみを誘導する.このことから,CD4+T 細胞,CD8+T 細胞では TCR シグナルに対する 依存性に相違があり,CD8+T 細胞は PKCθ,Ca2+/CN シグナルへの依存性が高く,CD4+T 細胞は Ras/Raf/MAPK シグナルへの依存性が高い可能性が考えられた. P−8 アミノ酸加熱分解生成物 Trp-P-1 による肝細胞毒性発現機構の解析 ○山縣由佳,佐久間勉,亀井美穂,留場麻衣,近藤佐千子,河崎優希,櫻井宏明,根本信雄 (富山大院薬) 【目的】食品のアミノ酸の加熱分解生成物であるヘテロサイクリックアミン類は,強い突然変異 原性を有している.マウス肝細胞初代培養系で,トリプトファン熱分解生成物である Trp-P-1 が 低濃度の条件下で強い肝細胞毒性を引き起こすことを観察したため,Trp-P-1 による肝細胞毒性 発現機構について詳しく調べた. 【方法】C57BL/6 雄性マウスの初代培養肝細胞を 48 時間培養し,Trp-P-1 を添加し,LDH assay, Hoechst33342 による核染色と pan-caspase inhibitor の Z-VAD fmk による核凝縮への影響, Caspase-3 活性測定,DNA ladder の検出,ミトコンドリア膜電位変化を調べる JC-1 染色を行った. 【結果・考察】肝細胞毒性を LDH assay で調べたところ,40 μM Trp-P-1 では処理開始後 3∼12 時間にかけて徐々に毒性が上昇した.Trp-P-1 曝露により,肝細胞の核は凝縮し,Z-VAD fmk 添加 で核凝縮を起こした細胞の割合は減少した.また,ミトコンドリアの膜電位の消失を確認した. さらに,Caspase-3 の活性は上昇したが,DNA ladder は検出されなかった.これらのことから, Trp-P-1 曝露でマウス肝細胞はアポトーシスを引き起こし,その誘因経路には Caspase-3 の活性 化の関与が考えられる.ミトコンドリアの膜電位の消失があったことから,アポトーシスは,ミ トコンドリアから放出されたシトクロム c が Caspase-9 を活性化し,その下流の Caspase-3 が活 性化することで起こっている,という可能性が考えられる. 30 P−9 マウス CYP3A の酵母内発現系の構築と基質特異性の解析 ○立石裕樹,佐久間勉,河崎優希,櫻井宏明,根本信雄(富山大院薬) 【目的】CYP3A4 はヒト肝の主たる P450 であり臨床薬の酸化的代謝の約半数に関わる重要な P450 である.マウスには 8 つの Cyp3a 遺伝子が存在し,その中でも Cyp3a11,Cyp3a41,Cyp3a44 の 3 分子種はヒト CYP3A4 と常在的および誘導的発現に関し類似点が多く,マウスにおける相同遺伝子 と考えられている.しかし,それらを含むマウス CYP3A 分子種の基質特異性については,ほとん ど解析されていない.そこでマウス CYP3A 酵母内発現系を構築し,代表的な CYP3A4 の基質を用い て基質特異性を解析した. 【方法】酵母はプロテアーゼ欠損型 S. cerevisiae BY4743 株を用いた.異なる選択マーカーを有 する2種の低温誘導発現ベクターを用い,マウス CYP3A とマウス NADPH-P450 還元酵素(CYPOR)を 酵母内に同時発現させ,ミクロゾーム画分を用いて酵素活性を測定した.解析対象とした P450 は, マウス肝の主要分子種である CYP3A11, 3A25, 3A41 および 3A44 である.基質にはヒト CYP3A4 の 指標基質として汎用されるテストステロンを用い,6β位水酸化酵素活性を測定した. 【結果・考察】酵母低温誘導発現系を用いることで,マウス CYP3A と CYPOR の同時発現に成功し, P450 の活性発現に十分と思われるレベルの CYPOR 活性も検出された.テストステロン 6β位水酸 化活性は,CYP3A11 では検出されたものの,CYP3A41,3A44 では検出されなかった.P450-電子伝 達系タンパク質のシトクロム b5 を添加することで CYP3A11 のテストステロン 6β位水酸化活性の 上昇が見られた.以上より,ヒトやラットと同様にマウス肝ミクロゾームにおいてもテストステ ロン 6β位水酸化酵素活性は CYP3A が担い,中でも CYP3A11 が関与している可能性が考えられる. P−10 マウス脳および肝シトクロム P450 の発現解析ならびにカンナビジオール による誘導 ○蒋 融融 1,前田千佳子 1,小川梨少 1,山折 大 1,山本郁男 2,渡辺和人 1 (1 北陸大薬,2 九州保福大薬) 【目的】シトクロム P450 (CYP)は,薬毒物やがん原物質などの異物の代謝,内因性物質の生合成 や酸化的代謝にもかかわる重要な酵素である.大麻主成分のカンナビジオール(CBD)はシトクロ ム P450(CYP)2B の発現を誘導することが知られている.しかし,その他の CYP 分子種に対する CBD の作用については不明な点が多い.本研究は,マウス脳および肝臓における種々の CYP 分子 種の発現ならびに CBD の影響を明らかにすることを目的とした. 【方法】マウス神経芽細胞腫として,C1300N18 (N18)細胞および NB2a 細胞を用いて,また ddY 系 雄性マウス(8 週齢)全脳から全 RNA を調製し,CYP P450 の発現量を解析した.さらに,ddY 系 雄性マウス(8 週齢)に CBD(120 mg/kg)を 3 日間,腹腔内投与後,肝を摘出した.肝から全 RNA およびミクロソーム画分を調製した.各種 CYP 分子量の mRNA 発現量はリアルタイム PCR 法により 定量した.CYP1,CYP2B および CYP3A の酵素活性の指標として,それぞれ 7-エトキシレゾルフィ ン O-脱エチル化酵素(EROD)活性,7-ベンゾキシレゾルフィン O-脱ベンジル化酵素(BROD)活性 および 7-ベンゾキシキノリン O-脱ベンジル化酵素(BQOD)活性を用いた. 【結果および考察】N18 細胞,NB2a 細胞およびマウス脳では CYP1B1 が最も高発現であった.二種 類の神経芽細胞では CYP1A1 および CYP1A2,マウス脳では CYP46A1 がその次に多く発現していた. CBD 投与により,マウス肝の CYP2B10 および CYP2B13 の mRNA 発現量がそれぞれ 17 および 10 倍増 加した.また,CYP1A2,CYP2C(2C29,2C37,2C38,2C39,2C50)および CYP3A(3A11,3A13,3A25, 3A44)の mRNA 発現量が 1.7-4.2 倍上昇した.また,CBD 投与により,EROD 活性には顕著な変化は なかったが BROD および BQOD 活性はそれぞれ約 22 および 2.2 倍上昇した.以上の結果から,CBD は CYP2B のみならず,CYP2C および CYP3A を発現誘導することが明らかとなった. 31 P−11 新規酸触媒 O-ベンジル化反応の開発 ○藤田光,山田耕平,国嶋崇隆(金沢大院薬) 【目的】塩基性条件下で不安定な化合物中のヒドロキシ基の保護に用いられる方法の一つに,酸触 媒 O-ベンジル化反応がある.この目的に主として使用されるベンジルトリクロロアセトイミダー トは熱と湿気に弱いため,より取扱いが容易な反応剤の開発が望まれる.今回我々は,室温下空 気中で安定な新規酸触媒 O-ベンジル化剤として,トリベンジルオキシトリアジン 1 を開発したの で報告する. 【結果】アルコール 2 に対して 1,4-ジオキサン中,モレキュラーシーブ 5A 共存下,1(0.6 equiv.) とトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH, 0.2 equiv.)を作用させると,O-ベンジル化反応が進 行し,対応するベンジルエーテル 3 が収率 89%で得られた.1 および TfOH を 0.35 equiv.ずつ用 いた場合でも 3 が収率 90%で得られたことから,1 を構成する3つのベンジル基が全て有効に利 用されていることが示された. P−12 人参の本草考証 ∼中国古代の人参の原植物について∼ ○坂本郁穂,御影雅幸(金沢大院薬) 【目的・方法】中国及び日本の公定書では,生薬「人参」としてウコギ科オタネニンジン Panax ginseng C. A. Meyer の根が規定されているが,宋代の本草書『図経本草』(1062)にある 4 種 の人参の附図のうち,3 種は明らかに P. ginseng と異なる植物である.そこで本研究では,宋 代以前の本草書の記載内容を調査し,中国古代の人参の原植物を考察した. 【結果・考察】 『説文解字』 (100 頃)に「出上党」とあり,人参は上党(現在の山西省)の植物 とされた.その後『本草経集注』 (500 前)に「生上党山谷及遼東…高麗即是遼東…不及上党者」 とあり,5 世紀末には遼東(朝鮮)産の人参も存在したが,上党産が良品とされた.また,同書 に「人参生一茎直上四五葉相対生花紫色」, 「薺 …所謂乱人参者」, 「薺 …根茎都似人参」と あり,これらは上党産人参についての記載だと考えられ,その形態(茎は 1 本直立し,4,5 枚 の葉が対生,花紫色)は薺 (キキョウ科 Adenophora trachelioides)に似るとされる.一方, 同書に「高麗人作人参讃曰三椏五葉背陽向陰」とあり,遼東産人参は 3 股に枝分かれし,5 枚の 葉をつけ,日陰で生息するとされ,P. ginseng の特徴と一致する.すなわち,良品とされた上 党産人参は Adenophora 属植物の 1 種であり,遼東産人参が P. ginseng であったと判断した. 以上,古来 P. ginseng は中国には自生品がなく,根の形状が類似した Adenophora 属植物を「人 参」としていたが,南北朝時代に朝鮮から P. ginseng が伝来し,2 種の人参が混在したと考証 した.これら 2 種の薬効の相違については本草学的な更なる検討が必要である. 32 教育シンポジウム 「薬学 6 年制実務実習の 1 年目の成果」 (アカデミックプロムナード) S−1 福井県における薬剤師会主導型「薬局実務実習協力体制」の評価と再構築 ○ 木村嘉明1,上田泰之1,千知岩祐次1,嶋田千穂1,福岡美紀1,梅木誠一郎1,西田敦司1, 中村裕幸1,野辺久美代1,山内辰朗1,小林昌巳1,森中裕信1,山下泉1,廣部満1 政田幹夫123 (1(社)福井県薬剤師会薬学生実務実習運営委員会,2福井県病院薬剤師会, 3 福井大学病院薬剤部) 福井県薬剤師会では,薬局実習を 1 薬局で完結することは極めて困難であると判断し,福井県独自の 「薬局実務実習協力体制」を構築した.今回は,この「薬局実務実習協力体制」について紹介するとと もに,実習生を対象に実施したアンケート結果を報告する.さらに,これらの結果を考慮して再構築し た「全体研修」についても報告する.アンケートより,実習生にとって「薬局実務実習協力体制」は, 実習項目によって差があったものの,概ね有意義であったとの結果を得た.福井県における薬剤師会主 導の取り組みは,一応の成果は認められるが,さまざまな課題もある.今後,さらに,「薬局実務実習 協力体制」の見直しを行い,さらなる充実に取り組む必要があると考える. S−2 薬局実務実習 1 年を振り返って ○北山朱美,橋本昌子,三浦智子,今村信雄,神田哲雄,渡辺誠治,吉藤茂行 ((社)石川県薬剤師会 薬局実務実習委員会・WG) 【目的】石川県薬剤師会は 6 年制実務実習の受入体制の充実化と指導方法の標準化を図り, 「薬局実務 実習教本」作成に始まり「薬局実務研修講座」「受入薬局研修会」の開催,医薬品卸見学,学校薬剤師 業務見学の計画,平成 22 年度Ⅰ期,Ⅲ期実習終了後の受入薬局アンケート調査を実施した.更に指導 薬剤師と実習生の両視点から問題点の抽出と評価が必要と考え大学に実習生アンケート結果の提供を 依頼.平成 23 年度第 1 回実務実習指導者研修会では明確化した問題点の共有と対応策の検討を目的に グループ討議を実施,1 年目の反省と指導方法を再検討したので報告する. 【方法】対象:平成 22 年度実務実習受入薬局 92 薬局(受入学生数 252 名)中 65 薬局参加. 受入 92 薬局を対象に行ったアンケート結果と大学が実習生に行ったアンケート結果に基づき,予め WGが 7 つの問題点を抽出しそれぞれの対応策を 7 グループに分かれて討議し発表した. 【結果・考察】 「モチベーション」 「自習の意味の取り違え」 「施設間の格差」 「コミュニケーション」等 参加者全員が問題点を共有し対応策を考案することで教授錯覚や不安感を解消.在宅医療や OTC,地域 保健は実習事例を紹介し指導方法の提案により 2 年目の実習に貢献できたと考える. 33 S−3 薬局実務実習における富山県薬剤師会の取組み 浜野邦彦,藤森毅至,○永野康已((社)富山県薬剤師会薬学教育推進委員会) 平成22年度富山県では73名(富山大学54名・北陸大学19名)の6年制薬学生に対し薬局実務 実習を行った.実務実習に対する取り組みの評価・総括を行う目的で,実習終了後に指導薬剤師に行っ たところ,いくつかの問題点が見えてきた.これをふまえて,平成23年度の富山県薬剤師会としての 実務実習への取組みについて改善を行ったので,併せて報告する. アンケートから見えた問題点 1)実務実習時間について 概ね 8 時間(休息含む)だったが,ばらつきも多く,平等性は担保できているのか 2)教えにくい課題について 実務実習に偏りがでないよう薬局で十分な実務実習を行うことが困難な課題について集中講義を座 学で行った. 「課題を補完できる」「息抜きになる」など概ね好評だった. しかし,実習を終えて,追加が必要な項目が出てきたり,もっと講義時間を伸ばしたりする必要がある など改善点が見えてきた. 3)薬局,薬剤師の負担について 実習前半で「かなり負担」と感じている薬剤師が多く,負担軽減のための方策を考える必要性が生じ た. 4)達成度について ほとんどが「ある程度満足している」と感じているが,それらの多くは学生や指導薬剤師の自己判断 によるものであるため,学生,指導薬剤師,大学教員を含んだ第三者を交えた意見交換の場を作る必要 性が生じた. 以上の問題点に対し,薬学教育推進委員会では平成23年度の対応策を検討し,今現在実施している. 今後も更に問題点を探り,改善し,実習が行いやすい環境を整えたいと考えている. S−4 薬局実務実習 2 年目における富山大学薬学部の試み ○今村理佐 1,岡崎史泰 1,藤 秀人 1,永野康已 2(1 富山大院薬,2 富山県薬剤師会) 【目的】薬局実務実習を円滑に実施するために,富山大学薬学部と富山県薬剤師会では,薬局実習スケ ジュールおよび評価用チェックシート(スケジュール表)を作成し,昨年の実務実習で使用した.初年 度の薬局実習終了後にとったアンケートによって「スケジュール表の記入方法がわかりにくい」や「他 の薬局でどのような指導が行われているか分からない」 , 「日報・レポートの作成が学生の負担となって いる」などの問題点が挙がったため,その対策として,スケジュール表の改訂や実習報告会,コンピュ ータの導入を行った.今回,これらの対策に関する有用性について,アンケートによる調査を行った. 【方法】本年度 1 期に実務実習を担当した指導薬剤師に対して「実習スケジュール管理」や「実習報告 会」など 14 項目について実習終了後にアンケート調査を実施した. 【結果】2010 年度版スケジュール表 では,指導薬剤師が,スケジュール表に実習予定項目を記載する方法をとっていたが,これでは,実際 に指導がなされたのか判断することができなかった.そこで,2011 年度版では,実施予定項目について 記載した後,実際に学生指導が行われたときは,チェックマークを加筆し,実習指導の有無を判別しや すいように改善した.昨年度と今年度のいずれの実習も担当した指導薬剤師に改訂版の利便性を調査し たところ,使いづらいという回答が 30%から 18%に減少した.実習報告会についてのアンケートでは, 薬局での指導内容や方法の違いが明らかになり,すべての指導薬剤師から実習報告会は適切であったと いう評価を得た.日報・レポートをコンピュータで作成することにより,読みやすくなり内容がよくな ったとの意見が多数あった.【考察】今回の変更は,指導薬剤師からよい評価を得ることができ,大学 側も実習の実態が把握できようになったと考えられる.今後は,学生の評価に関して,施設間の相違を 均一化するための検討をしていきたいと考えている. 34 S−5 金沢大学における多施設型薬局実習への取り組み 〇大 賀津夫 1,2,荒井國三 1,2,神田哲雄 2,永長智愛 1,2,山島 松下 良 1,清水 栄 1,石 純子 1,坪井宏仁 1,菅 糸 2,木村和子 1, 幸生 1,吉田直子 1 (1 金沢大院薬,2 アカンサス薬局) 【背景】金沢大学における 6 年制薬局実習は,地域薬局と契約後に地域薬局から委託される形で 学生全員がまずアカンサス薬局(薬剤師の卒前卒後教育を主目的とした NPO 法人運営の保険薬局, 認定実務実習指導薬剤師の大学教員も常駐)で 4 週間(薬局実習 I) ,その後委託元の地域薬局で 個別に 7 週間(薬局実習 II)の実習を行い,薬局実習 I と II で全ての実務実習モデル・コアカ リキュラムを網羅する多施設型薬局実習を石川県薬剤師会と連携し実施した. 【方法】5 年次 38 名の学生を 9 グループに分け,学生は 1 グループずつ薬局実習 I に(計 3 グル ープ) ,次にこの 3 グループは第 1 期の実習期間中に薬局実習 II に臨んだ.第 2 期,第 3 期も同 様に行った.薬局実習 I では主に保険調剤業務,また薬局実習 II では薬局実習 I で習得不十分で あった項目に加え,カウンター業務や地域での活躍,薬局製剤などの習得を目的とした.各期の 実習終了後,当該学生および指導薬剤師にアンケート調査を実施した.さらに,全実習終了後, 「学生− 指導薬剤師(薬局・病院)− 大学教員」合同のワークショップ形式による情報交換会を 開催,KJ 法による問題点の抽出と全体討議を行った. 【結果】多施設型薬局実習は大きなトラブルなく実施できた.アンケート結果および情報交換会 にて,今後の実習に向けた改善意見はみられたが,アカンサス薬局で全学生に一定量の均質な実 習を行えたことは,学生,地域薬局,大学各々にメリットがあることがわかった.また多施設型 薬局実習とすることで,学生はそれぞれの施設の特徴や違いも学べ,学習効果は高いと考えられ た.発表ではこれらの詳細,ならびに今後の薬局実習に向けた改善案も提示する. S−6 実務実習先の 2 薬局を比較して学んだこと -総合病院隣接と住宅地域の調剤薬局 との違い○和田惇子 1,石川雄大 1,前田憲邦 2,中田美由貴 3,藤 秀人 4,新田淳美 1 (1 富山大院薬・薬物治療学研究室,2 チューリップ牛島薬局, 3 西尾薬局下堀店,4 富山大院薬・医療薬学研究室) 【目的】富山大学では,平成 23 年度Ⅰ期に 30 箇所の薬局で実務実習が行われた.各薬局は,そ の業務内容や時間などが異なり,それぞれの特色を生かした薬局運営を行っている.そこで今回, 富山市中心部にあるチューリップ牛島薬局と,富山市住宅地域にある西尾薬局下堀店を比較し, 両薬局の違いを検討した. 【方法】チューリップ牛島薬局と西尾薬局下堀店の平均処方せん受給枚 数や薬局の業務,構造設備を比較した.また,そこで行われている薬局独自のサービスについて それぞれまとめた. 【結果】1 日当たりの処方せん受給枚数は,チューリップ牛島薬局が 170 枚, 西尾薬局は 100 枚程度であった.また,サービス面では,チューリップ牛島薬局は自動錠剤分包 機を設置する等の調剤の高速化を行い,西尾薬局下堀店では美容関連商品の充実強化やハンドマ ッサージなどのサービスを行っている. 【考察】チューリップ牛島薬局は,富山県がん診療地域連 携拠点病院に指定されている富山日赤病院の門前薬局であるので,県内全域の人を対象としてい る.一方,西尾薬局下堀店は,美容関連商品販売などを通してより身近な方々の健康維持に貢献 している.今回は 2 薬局での比較であったが,学生間で意見交換を行い,学んだことを共有する ことで,より充実した薬局実習を行うことができると考えられた. 35 S−7 薬局実習で漢方薬と抗菌薬の併用例を通して学んだこと ○ 北山祥平 1,平野旬美 2,今村理佐 1,藤秀人 1(1 富山大薬,2 ふれあい新湊薬局) 【目的】薬局実習を通して,疾患に対する最良な薬剤が必ずしも患者にとって最適な薬剤ではないこと を知り,薬剤師は,患者に薬剤の適切な使用法を説明し,薬剤の最大の効果を発揮させることが重要で あると学んだ.特に,漢方薬では添付文書上食間・食前服用とされているが,患者の服薬コンプライア ンスの維持または向上のために,食後に漢方薬を服用することを患者に服薬指導される機会があること を知った.しかし,従来食後に漢方薬は服用されないため,これらが食後投薬された場合,他の薬剤と の相互作用が発現する可能性が考えられる.そこで,今回,実習期間中に漢方薬の食後服薬を指導した 患者数及び過去の薬歴から漢方薬と抗菌薬による相互作用の発生の有無に関する調査,ニューキノロン 系抗菌薬やテトラサイクリン系抗生物質と鉱物生薬含有漢方薬との相互作用に関する論文調査を実施 した. 【方法】薬歴より,実習期間中に漢方薬が処方された患者の総数及び食後服用を指導した患者数を調査 した.さらに,漢方薬と抗菌薬との併用に着目して,過去の薬歴から,これらの相互作用によって抗菌 薬の効果減弱例の有無について調査した.また,漢方薬と抗菌薬の相互作用の論文報告の有無について, PubMed を用いて,検索した. 【結果】実習期間中に,漢方薬が処方された患者のうち, 「苦味で食事がおいしく摂れない. 」や「食前 は飲み忘れやすい. 」等の理由から,15 例中 5 例の患者に漢方薬の食後服用を指導した.また,過去の 薬歴より,バクシダール錠と釣藤散の併用ののちに,オゼックス錠に抗菌薬が変更され,漢方薬も中止 された症例が,1 例確認された.さらに,ニューキノロン系抗菌薬やテトラサイクリン系抗生物質と漢 方薬との相互作用の論文報告を調査したところ,白虎加人参湯エキスとの相互作用が 2 件検索されるの みであった. 【考察】本薬局実習を通して,薬剤師は,患者の QOL や服薬コンプライアンスの向上等のために,様々 な工夫を行っていることが分かった.漢方薬の食後投薬もその一つであり,実習期間中に漢方薬を服用 している約 33%の患者に, 「漢方薬の食後服用も可能」と服薬指導する機会があり,食前や食間以外の服 薬指導が想像以上に多いことに驚いた.しかし,漢方薬には種々の成分が含有されているため,通常と 異なる食後投薬を行うことで,未知の薬物間相互作用の原因となる可能性が考えられる.これまで,漢 方薬と他の薬剤との相互作用に関する研究は少なく,漢方薬をより有効に使用できるようにするため に,薬剤間の服用時間を空けるといった服薬方法の工夫や,漢方薬と他の薬剤との相互作用に関する研 究を行っていく必要があると考える.本実習を通して,大学では学べない医療現場での問題点や疑問点 など,薬剤業務以外にも貴重な経験や学習を行うことができた.今後,これらの課題について研究を行 い,漢方薬による治療について,新たな提案ができるようにしていきたい. S−8 患者さんの「なぜ」を考える ○吉村真理1,嶋田千穂2 (1 北陸大薬,2福井調剤薬局) 実習の服薬指導では実習前までのイメージと異なり,患者さんそれぞれに合った提案や説明こそが 基本であった.これができるためには,その背景の「なぜそうなったのか」を考える必要があった. コンプライアンスの不良の原因として,①服用方法が複雑で混乱する ②外食や外出で飲み忘れる ③人前で薬を飲むことに抵抗がある ④自分でも「なぜ」がわかっていない場合があった. また,在宅医療でもコンプライアンス不良の原因を考えた.その改善方法として,⑤整理整頓して 使いやすい環境づくりをすること.⑥患者さんだけでなく,ご家族やヘルパーさんにも解りやすい環 境にすることが大事であった. この実習を通して「もっと人の役に立ちたい」と感じた.そのためには,解決する方法として,患 者さんの背景の「なぜ」を考えることが重要であった.今はまだ「なぜ」を考える姿勢は身についな いが,より深く物事を理解し,その知識を応用できる能力を持つ薬剤師になりたいと感じた. 36 S−9 薬局実習を体験して ○ 大島鉄矢1,○砂川直美1(共同演者),中川加代子 2,山崎眞津美1 (1北陸大学薬,2クスリのアオキ高岡京田店) 【目的・方法】11 週間の薬局実習において,処方箋受付から処方箋監査,調剤,薬剤監査 服薬指導,調剤報酬算定,薬歴記載,調剤録の作成,レセプト請求など薬局業務を経験 した.ドラッグへ積極的に出て行きセルフメディケーションへのサポートを行なった.健康相談会に 参加した.在宅医療に参加し,退院時共同指導や在宅訪問を行なった.その他多彩な経験をした. 【結果・考察】 信頼される薬剤師になるには,患者が期待している以上の情報を提供できるだけの知識と経験を積む ことが大切であること.また,患者から信頼されるためのコミュニケーション能力を持つための会話力 の重要性も感じた.薬の知識以外に栄養の知識,検査の知識,OTC 薬,健康食品,サプリメントに関す る知識の必要性も実感した.薬局薬剤師の活動の場として,在宅医療への関与や,医師や近隣の病院や 診療所との交流に積極的に取り組み,地域の住民を対象とした健康教室の開催などの大切さも実感し た.学校薬剤師としての役割や夜間救急センターでの夜間勤務に対する関与など,薬局薬剤師としての 業務範囲の広さを実感した. 服薬指導を通して患者との信頼関係の大切さ学んだこと,退院時共同指導および在宅医療を体験し, 特に緩和医療における医師や病院薬剤師や他職種との連携の大切さを経験したこと,住民を対象とした 健康相談会への関与等を通して,地域のかかりつけ薬局,かかりつけ薬剤師として目指す薬剤師像を描 くことが出来た. S−10 市中薬局における在宅医療関連実習 ○三尾明日香1,針田昌子 2,藤沢美和 2 (1金沢大薬,2 菜の花薬局) 金沢大学薬学部薬学科における 5 年次の薬局実習では,5 人グループでアカンサス薬局(NPO HEART) での 4 週間の保険調剤業務を中心とした基礎的な実習を行った後,1~2 人ずつに分かれ,市中薬局でそ れぞれ 7 週間の実習を行っている.私はアカンサス薬局での実習後,金沢市京町の菜の花薬局にて実習 を行った.具体的な実習内容としては,通常の調剤業務や服薬指導の他,患者の家を訪ねて薬学的管理 を行う在宅医療関連業務を行った.また,近隣施設との協力により訪問診察の見学や通所リハビリ,訪 問看護や訪問介護なども体験した.これらの実習を通して,薬剤師となるための基礎的な知識や心構え を身につけるとともに,在宅医療における薬剤師の役割を学び,薬剤師以外の職種が在宅患者にどのよ うに関わっているかについても学ぶことができた.今回は菜の花薬局での実習の様子と,実際に指導を 行った在宅医療の患者の症例を報告する. 37 S−11 玉川町薬局での実務体験と症例報告 ○ 御勢智香 1,橋本篤子 2,梶山恵美子 2,山本志保子 2,藤井洋子 2 (1金沢大薬,2 玉川町薬局) 金沢大学の薬局実習では,NPO アカンサス薬局(4 週間)と市中薬局(7 週間)のグループ実習を実施してい る.アカンサス薬局で基礎業務を身に着けた後,市中薬局でさらに実務経験を積み,医薬分業の重要性 を理解するとともに,倫理観を有し,適切な薬物療法を遂行できる薬剤師を目指して,積極的に薬局調 剤や服薬指導を行った.玉川町薬局(市中薬局)では,薬局調剤の一環として,漢方調剤を行っており, 生薬の秤量,分割,袋詰めなど,貴重な体験をすることができた.また,卸や夜間救急診療所の見学, 小学校の手洗い説明会,プール水検査を体験した.特に,小学校の手洗い説明会では,手洗いの重要性 を理解してもらうため,絵や音楽を用いて,工夫して説明した.今回は,玉川町薬局での実務体験と, 私が服薬指導させて頂いた患者の一例(サルコイドーシス・骨粗鬆症)について紹介する. S−12 病院実務実習の取り組み ○谷本定子,矢口邦子,板井進悟,長田幸恵,前田大蔵,崔 吉道,宮本謙一 (金沢大学附属病院薬剤部) 【はじめに】2010 年 5 月より薬学 6 年制病院実務実習が開始され,2010 年度は金沢大学を中心に年間 3 期 52 名(学外 14 名)の学生を受け入れた.当院では,これまでの大学院生を対象とした 7 ヶ月間の病 院実務実習の指導経験を生かし,モデルコアカリキュラムを準拠した実習内容となるよう受け入れ体制 を整備した.当院の取り組みと今後の課題について報告する. 【方法】実習は基礎薬剤業務実務実習(4 週間)と病棟実務実習(7 週間)で行われる.基礎薬剤業務 実務実習では,学生を 4∼5 名のグループに分け,一般調剤,注射薬調剤,一般・無菌製剤,DI,薬 剤管理,治験薬管理,TDM,外来化学療法,医薬品安全管理・副作用回避・中毒医療の実習をローテ ンションし,最終日に基礎実務実習の報告会を行う.病棟実務実習では,学生ごとに各病棟担当薬剤師 に付いてそれぞれの病棟で薬剤管理指導業務実習を行ない,最後に症例報告会が行われる.また基礎実 習から金沢大学教員も指導に当たり,報告会にも参加している. 【結果・考察】薬学 6 年制病院実務実習は,実践力のある薬剤師を養成するための参加型実務実習であ る.当院の基礎実務実習では,医薬品が適正かつ安全に投与するための基礎知識を修得し,病棟実習で は1対1の指導を行い,薬剤師が医療チーム一員としてどのようにかかわっているかその現状を見聞き し,体験する内容となっている.実習を終えた学生からは,今後の目標あるいは課題がより明確化し学 習意欲が高まったとの感想レポートがよせられた.当院では,どの指導薬剤師も日常業務をこなしなが ら指導にあたっている.また年度始めを中心に部内の移動があり,指導を担当する薬剤師の交代は避け られない.このような環境下,指導内容の標準化が課題であり,この問題に対してコアカリキュラムを 準拠したチェックリストを作成し,学生および指導者がこれを相互に確認しながら実習を勧め,実習の 標準化を図っている. 38 S−13 病棟業務実習の評価と改善 ○砂田結希乃,宮東利恵,谷村祐香里,角 佳亮,宮東剛文,小堀 勝,西尾浩次 (金沢医科大学病院薬剤部) 【目的】平成 23 年 3 月で,初年度の薬学教育 6 年生の実務実習が終了した.初年度の病棟業務実習を 振り返り,2 年目以降の実習をよりよいものにするために,学生と指導薬剤師の意見を取り入れ,病棟 業務実習に反映させることを目的とする. 【方法】病棟業務実習は,学生 2 名 1 組で内科病棟 9 日間,外科病棟 9 日間の全 2 コースとし,各コー スの最終日に症例報告会を実施した.実務実習を行った第 1 期から第 3 期の学生合計 120 名を対象に, 症例報告会,面談する患者数,指導薬剤師の助言が必要な項目などに関するアンケートを実施した.ま た,第 1 期と第 3 期終了後の計 2 回,10 名の病棟業務実習指導薬剤師で意見交換をした.更に,学生 120 名に各 SBOs の評価と指導薬剤師 10 名による到達度評価を(株)富士ゼロックス「実務実習指導・管 理システム」のデータにより比較した. 【結果及び考察】実習の改善点として,平成 23 年度は 1 コース,2 コースを連続して行い,1 コース目 は 10 日間,2 コース目は 8 日間とし,1 コース目に習熟し,確実に学習できる時間を設けることとした. 電子カルテの操作説明を各期の初日から病棟業務実習の初日へ変更し,指導薬剤師の指導の効率化を図 った.症例報告会は,情報共有の他に学生のモチベーションの向上及び維持に有用であったため,初年 度に引き続き 1 コース毎に 2 回実施することとした.指導薬剤師の助言が必要な項目として上位を占め た面談内容からの問題点抽出,SOAP の作成については,実習書を更新し,病棟業務実習初日に説明をす ることとした.実際の患者との関わりの中から症例に対する問題点・解決法の理解を深めることが重要 と考えられることから,学生の指導患者は少人数とし,面談回数を増やすこととした.到達度評価では, 学生の自己評価で「不十分」がみられた「患者・医療スタッフとのコミュニケーション」に時間をかけ る必要性が感じられた.指導薬剤師が学生に費やす時間は限られており,患者・医療スタッフとの関わ りを重視した実習をいかに効率よくサポートするかが今後の重要な課題と考える.また,認定実務実習 指導薬剤師の資格を持っていない薬剤師が指導に当たらなければならない現状となっており,実習指導 の教育を受けた認定実務実習指導薬剤師が指導できるよう,より多くの指導薬剤師の育成も同時に図る 必要がある. 39 S−14 薬学教育6年制における実務実習 ∼福井県で行った複数施設協働型実習∼ ○萱野勇一郎 1, 中村敏明 1, 白波瀬正樹 1, 佐野正毅 2, 荒木隆一 3, 寺尾文恵 4, 竹内哲夫 5, 斉藤孝次 6, 内田博友 7, 三田村康浩 8, 加納みゆき 9, 高嶋孝次郎 2, 濱 一郎 10, 平賀貴志 11, 政田幹夫 1 (1 福井大病院薬,2 福井県済生会病院薬,3 市立敦賀病院薬, 4 春江病院, 5 福井社会保険病 院薬, 6 福井赤十字病院薬, 7 公立小浜病院薬, 8 中村病院, 9 福井循環器病院, 病院薬, 11 10 国立病院機構福井 福井県立病院薬) 【目的】6 年制実務実習開始に先立って,福井県病院薬剤師会では 2007 年より薬科大学を持たない福井 県における実務実習のあり方について病院薬局長会議を重ねた.その結果,長期実務実習とは理想的な 病院の姿を見せるためにあるのではなく,様々な環境における薬剤師の考えや行動に接することで医療 における薬剤師について学ぶ場として位置づけた.そのためあえて 1 施設での完結型実習は行わず,複 数の実習施設で行う協働型実務実習(グループ実習)を実施したのでその概要について報告する. 【方法】病院実習期間 11 週のうち 1 施設あたり 5 週間ずつ 2 病院での実習を計画した.施設ごとに担 当 SBO を設けるのではなく,実施可能な SBO s をすべて担当した.5 週間のうち前後半のどちらかは必 ず福井大学病院が担当することとし,全ての SBO s を担当した.11 週目は県内の精神科病院,老健施 設の見学実習を計画した.実習終了時には県内の薬局実習を終えた薬局実習生と共に「実習で何を学ん だのか」をテーマに学生発表会を計画した. 【結果・考察】福井県病院薬剤師会として 2010 年度 36 名,2011 年度 41 名を実習生として受け入れた. 学生発表会のテーマは学生自身が印象に残った実習など自由に設定させたが,学生にとって発表会は実 習を振り返り,まとめるための良い機会となったようである.学生の意見には「複数の病院を経験する ことで,一か所の病院だけでは学べないことがあった.地域密着型と大病院では違う役割がある.」, 「実 習期間が短かった.やり残した感があった.」などの意見があった.学生発表会を通じて,指導者側に とっては学生の到達度評価のみならず,実習の進め方や日常業務の見直しが出来るなど,全ての参加者 にとって有意義であった.今回の複数施設協働型実習は移動の不便さなどの問題もあるが長期実務実習 のひとつのモデルになるものと考える. S−15 富山大学薬学部・病院実務実習23年度1期における成果報告 ○ 新田淳美,宇野恭介,宮本嘉明(富山大学院薬・薬物治療学) 富山大学薬学部では,23年度1期には富山県内の8病院(富山日本赤十字,砺波総合,県立中央, 高志リハビリ,富山市民,済生会富山,済生会高岡,八尾総合)にて5年生20名が実務実習を行いま した. 全ての病院薬剤部が,実務実習認定指導薬剤師の養成と実習受け入れの準備に多くのエネルギ ーを割いてくださっていることに感謝申し上げます.コアカリに従って十分な実習を行っていただき, 教員および学生からも有意義な実習を行っていただいたことへの感謝の言葉が寄せられています.一方 で,学生からは自分が実習を行った以外の他の病院の状況についての情報交換の希望が寄せられていま す.また,病院薬剤師の先生方からも,実習へのフィードバックを希望される旨のご要望が寄せられて います.個別には,実務実習(病院)を担当している私から相互に連絡させていただいていましたが, もっと情報交換の場を設けたく考えていました.そこで,今年よりポスター形式で実習報告書の作成を 学生に依頼し,学生相互や病院薬剤部の先生方にもご覧いただけるようにしました.ポスター形式で, 大学の模擬調剤室に掲示しておくことで,学内の教員・学生や病院・薬局の薬剤師の先生方にもいつで もご覧いただけるように致しました.本教育シンポジウムでは,その内容についてご紹介致します. 40 S−16 北陸大学生の金沢医科大学病院薬剤部におけるアドバンスト病院実習の試み ○ 中川輝昭1,宮本悦子1,多田昭博1,野村政明1,尾山 治1,西尾浩次 2,宮東利恵 2, 山本康彦 2,高桑直子 2,高橋喜統 2 (1北陸大薬臨床薬学教育センター,2 金沢医科大学病院薬剤部) 【目的・方法】北陸大学薬学部では,5 年次でのアドバンスト教育として,コース教育を実施している. コースには,高度医療薬剤師演習,健康医療薬学,東洋医薬学の3つのコースがあり,学生各自が進路 希望に応じた 1 つのコースを選択している.高度医療薬剤師演習は,金沢医科大学病院薬剤部で,11 週 間の実務実習に引き続いて, 「がん化学療法・緩和医療」「生活習慣病」 「感染制御」「褥創・栄養管理」 の 4 つから 1 つを選択し,4 週間の専門実習を実施している. 【結果・考察】平成 22 年度は 25 名,平成 23 年度は 16 名がこのコースを選択した.全員が 11 週間の 長期実務実習終了直後に継続して行われるため,モチベーションが持続していることや,指導薬剤師と の連携等もスムーズに実施されており,参加した学生の評価も高い.このアドバンスト病院実習も2年 目に入り,これまで参加した学生の感想では8割∼9割の学生にとっては有意義なアドバンスト実習で あった. S−17 金沢大学付属病院の病棟における実務実習を終えて ○小嶋崇弘,○滝沢佑太(共同演者) (金沢大薬) 金沢大学付属病院における実務実習の病棟実習で,病棟担当薬剤師が病棟グループ単位で学生とマン ツーマン指導を行うことで基礎知識を身につけると共に,実際の臨床の場において薬剤師が医療チーム の一員として患者,そして薬物科学療法にどのように関わるかを学ぶために行われた.病棟では薬剤の 管理や配薬などのスケジュールが決まっており,日々の業務はこれに基づいている.今実習では,胆肝 膵移植外科では FOLFOX を用いた大腸がんの術後補助化学療法,血液内科では R-CHOP を用いた悪性リン パ腫の化学療法の患者を受け持ち,副作用モニタリングを行った.これを SOAP 形式として発表した. 実務実習を終えて,医師,看護師,薬剤師といった医療従事者の連帯があって初めて高度な医療が成り 立つことを実際の医療現場を通して肌で感じることができ,薬剤師としての責任の重さを再認識した. S−18 金沢大学附属病院における病院実習 ○野口絢加,○寺口 敦(共同演者) (金沢大薬) 金沢大学附属病院における病棟実習では病棟担当薬剤師が学生と一対一で実習を行い,病棟グループ でも指導を行う.実習は学生が臨床の現場における薬剤師の働きを直に見学・体験し,薬剤師が医療者 の一員としてチーム医療の中でどのように薬物療法や患者,他の医療者と関わるかを学ぶために実施さ れた.病棟薬剤師について薬剤部での業務も学ぶことにより基礎を繰り返し学ぶこともできる.今回の 実習では皮膚科において水疱性類天疱瘡の薬物療法について疾病について知ることから始め,どのよう な薬が使われるか,ステロイド療法により出てくる問題の対処,臨床検査値から患者の病態を推測する かを学び,病棟実習のまとめとして症例報告を行い,SOAP を作成して発表した.実務実習から,薬剤師 の仕事は多岐に渡っており更なる専門的な知識が必要とされるだけでなく,チーム医療の中で薬剤師が 医療を担っていくには薬剤師としての視点の他に医師や看護師の視点からも学んでいくことが重要で あると感じた. 41 一般講演−I (104 講義室) I−1 喫煙行動に及ぼすセロトニントランスポーター遺伝子多型の影響 ○大本まさのり,平腰 都,光本泰秀(北陸大学薬) 【目的】喫煙行動の個体差には,遺伝的および内的環境要因が影響する.セロトニントランスポーター の機能的遺伝子多型(5-HTTLPR)もまた喫煙行動に影響することが示唆されており,統計的に明らかな 知見が数多く報告されている.しかし,それらの結果には一貫性がないことから,我々はメタアナリシ スの手法を用いて,喫煙行動に及ぼす遺伝的および内的環境要因の影響について検証した. 【方法】文献検索には PubMed を用い,記載内容に被験者の 5-HTTLPR の遺伝子多型,喫煙状態,平均年 齢,性別の割合および人種が明確に盛り込まれている文献を選択した.各臨床試験は,被験者が異なる 背景を有するため,オッズ比の統合に変量効果モデルを適用した.各オッズ比の統合値ならび均質性 (homogeneity)は統計的評価を行い,公開バイアス有無も確認した.各試験のオッズ比は,被験者の 特性との関係を重回帰分析によって検証した. 【結果】選択基準を満たした文献 8 報でメタアナリシスを行った.喫煙の開始と継続に 5-HTTLPR の遺 伝子多型による影響は検出されなかった.異質性および公開バイアスも認められなかった.重回帰分析 の結果では,喫煙の開始と継続に被験者の年齢が影響すること,また人種も喫煙の継続と関係すること が示唆された. 【考察】今回行ったメタアナリシスでは,5-HTTLPR の遺伝子型である S 型と L 型とで喫煙行動に差がな いという結果が示された.また,重回帰分析の結果からは,被験者の年齢や人種の割合が喫煙行動に影 響することが示唆された.解析対象となった臨床試験は,個々の被験者背景や試験方法が異なっている. 喫煙行動に及ぼす 5-HTTLPR の遺伝子多型の影響は,特に被験者の年齢や人種にも強く影響されていた ことが考えられる. I−2 マウスの全 CYP3A 分子種の mRNA 発現量の比較解析 栗本夕夏,○佐久間勉,宅間祐太郎,池松怜美,河崎優希,櫻井宏明,根本信雄 (富山大院薬) 【目的】CYP3A 遺伝子サブファミリーは肝の主たる P450 であり,薬物の酸化的代謝で大きな役割を担っ ている.ヒト CYP3A 遺伝子サブファミリーには4分子種(CYP3A4,5,7,43)が存在し,異なる調節を受 けていることが知られている.一方,マウスには8分子種(CYP3A11,13,16,25,41,44,57, 59)存在す るが,分子種間の発現比率や臓器分布など発現に関しては未解析な点が多く残されている.そこで,mRNA レベルでの比較解析を行った. 【方法】解析対象は ddY 系マウスとした.各種臓器よりトータル RNA 画分を調製し,TaqMan プローブを 用いたリアルタイム RT-PCR により mRNA 量を解析した.各 CYP3A 分子種の cDNA を含むプラスミド DNA を鋳型として検量線を作成し,各分子種の発現量を算出した. 【結果・考察】7週齢雌雄マウスの肝,腎,小腸,胃,肺,脳,大脳,小脳,脾臓,精巣,卵巣,精巣 上体,精囊,子宮での発現を解析したところ,どの分子種でも肝で最も高い発現を示し, 3A11,13,25,41,44 は小腸でもある程度発現が認められた.他の臓器ではいずれの分子種であってもほと んど発現していなかったが,腎では 3A11,41,胃で 3A13,精巣で 3A41 が低いものの発現していた.ど の分子種であっても雄より雌で多く発現しており,3A16,41,44 は雌特異的であった.肝での各分子種の 割合を求めると,雄では 3A11 が 67%,3A25 が 26%を占めていた.雌では 3A41 が 46%と最も多く,3A11 が 27%,3A25 が 14%,3A44 が 6.7%と続き,最近存在が確認された 3A57,59 は 1%未満であった.小腸で も雄より雌で多く発現しており,雌雄ともに 3A13,25 が 40%程度ずつを占めた.以上より,マウスでは 性や臓器により主分子種が異なり,代謝を担う CYP3A 分子種が性や臓器毎に異なる場合があると思われ る. 42 I−3 培養ヒト腸上皮細胞を用いたミゾリビンの消化管吸収機構解析 ○横田 篤, 森川真圭, 石田和也, 田口雅登, 橋本征也 (富山大院薬) 【目的】核酸類似構造を有するミゾリビンの免疫抑制作用は血中濃度と密接に関連するが,薬物 血中濃度には大きな個体差が存在する.ミゾリビンは体内で代謝されず,血漿中タンパク結合は 無いため,主に未変化体が尿中に排泄される.従って,腎機能が体内動態の変動要因であると考 えられてきた.一方,ミゾリビンは水溶性が高いにもかかわらず経口投与されるが,近年ミゾリ ビンの消化管吸収は必ずしも完全ではなく,バイオアベイラビリティ (消化管吸収率) の低い患 者の存在が示唆されている.本研究では,ヒト腸上皮由来の LS180 細胞を用いて,ミゾリビンの 消化管吸収機構を解析した. 【方法】プラスチックディッシュ上に培養した LS180 細胞を用いて,ミゾリビンの初期取り込み を評価した.また,定常状態におけるミゾリビンの細胞内/外濃度比 (C/M 比) に及ぼす Na+や ATP binding cassette (ABC) トランスポーター阻害剤の影響を評価した. 【結果・考察】LS180 細胞におけるミゾリビンの初期取り込みは,細胞外 Na+ の除去,および equilibrative nucleoside transporter (ENT) の 特 異 的 阻 害 剤 nitrobenzylmercaptopurine ribonucleoside (NBMPR) によって減少した.従って,ミゾリビンの細胞内取り込みには Na+共輸 送型の concentrative nucleoside transporter (CNT) に加え,促進拡散型の ENT が関与すると 考えられた.一方,定常状態におけるミゾリビンの C/M 比は,細胞外高 Na+条件においても約 0.2 であったことから,ミゾリビンが細胞外へ強く排出されていると考えられた.そこで,ABC トラ ンスポーターの基質である葉酸とミゾリビンの C/M 比に対する各種阻害剤の影響を評価したとこ ろ,葉酸の C/M 比はプロベネシド,パントプラゾールおよびミゾリビンによって増加した.一方, ミゾリビンの C/M 比はパントプラゾールによってのみ増加した.従って,ミゾリビンは ABC トラ ンスポーターによって排出されているが,その排出機構は葉酸と同一ではないと考えられた.以 上,ミゾリビンの消化管吸収には CNT および ENT が関与するものの,ABC トランスポーターがミ ゾリビンの吸収障壁として機能していると考えられた. I−4 海馬スライス培養系における持続的な NMDA 誘発細胞死に対する内在性アセチル コリンの抑制効果 ○稲田千香子 1,Le Thi Xoan1,趙 琦 1,常山幸一 2,松本欣三 1 (1 富山大学和漢医薬学総合研究所, 2 富山大医・病理診断学) 【目的】グルタミン酸(Glu) 受容体過剰刺激による興奮毒性は,高次神経機能障害の原因の一つ であり,興奮毒性の抑制はその予防や改善に有用と考えられる.近年,抗認知症薬であるコリン エステラーゼ(ChE)阻害剤が Glu 誘発の神経損傷に対して保護作用を示すことが報告されている が,発生した傷害の軽減や改善に関する報告はない.本研究では,海馬スライス培養系を用い, Glu 受容体過剰刺激で誘発した海馬神経細胞損傷に対する ChE 阻害薬の影響を調べ,神経損傷軽 減機構としてのコリン神経系の役割を検討した. 【方法】海馬スライスを培養し,その薬物処置による変化を Propidium Iodide (PI) 染色, Calcein-AM 染色,Western blotting 法,Nissl 染色により解析した. 【結果】1) N-methyl-D-aspartate (NMDA) を用いた Glu 受容体過剰刺激は海馬を持続的に傷害し ている.2) ChE 阻害薬は Glu 誘発神経損傷に対して抑制効果を示す. 【考察】内在性アセチルコリンが持続的な Glu 誘発神経損傷を抑制することが示唆された. 43 I−5 内側血液網膜関門における L-dopa の輸送解析 ○大貫理沙 1, 赤沼伸乙 1,2,立川 憲 3,久保義行 1,2,細谷健一 1,2 (1 富山大薬,2 富山大院薬,3 東北大院薬) 【目的】Parkinson 病治療薬である L-dopa はアミノ酸構造を有し,血液脳関門の中性アミノ酸輸 送担体である system L によって輸送されることが報告されている.網膜には循環血液から網膜へ の物質輸送を制限する血液網膜関門(BRB)が存在するが,Parkinson 病患者の網膜障害が L-dopa 投 与によって改善することが明らかになっており, L-dopa は BRB を介して輸送されることが示唆さ れる.本研究では,内側血液網膜関門(inner BRB)の実体である網膜毛細血管内皮細胞のモデル細 胞として TR-iBRB2 細胞を用いて,inner BRB を介した L-dopa 輸送機構を明らかとすることを目的 とした. 【方法】TR-iBRB2 細胞を用い,[3H]L-dopa の細胞内取り込み輸送特性を解析した.阻害実験では, 各種阻害剤共存下での[3H]L-dopa の細胞内取り込みへの影響を解析した. 【結果・考察】TR-iBRB2 細胞による[3H]L-dopa 取り込みは少なくとも 5 分まで直線性を示した. Na+-free 条件下では[3H]L-dopa の取り込みが低下したが,濃度依存性が示され,Km 値は 246 μM であった.[3H]L-Dopa 取り込みは,system L の基質とその特異的阻害剤である 2-aminobicyclo(2,2,1)-heptane-2-carboxylic acid で 60%以上阻害された.このことから,TR-iBRB2 細胞にお ける[3H]L-dopa の取り込みには,主に system L が関与していることが示唆された. I−6 血液網膜関門を介した hypoxanthine 排出輸送機構 ○五月女達也 1,赤沼伸乙 1,2,立川正憲 3,久保義行 1,2,細谷健一 1,2 (1 富山大薬,2 富山大院薬,3 東北大院薬) 【目的】Adenosine は受容体を介し様々な生理機能の調節に関与しており,虚血時の網膜において は,その網膜内濃度の急激な上昇が報告されている.Adenosine の代謝物である hypoxanthine は 代謝過程において H2O2 を産生するため,adenosine 濃度上昇に伴い hypoxanthine の網膜内濃度が 上昇する場合,網膜に強い酸化的ストレスをもたらす可能性があり,網膜からの hypoxanthine 排 出が重要となる.これまでに,我々は網膜グリアである Müller 細胞での adenosine 輸送における equilibrative nucleoside transporter (ENT) の寄与を明らかとした.そこで本研究では,Müller 細胞における adenosine 代謝および網膜からの hypoxanthine 排出輸送機構の解明を目的とした. 【方法】Müller 細胞内での adenosine 代謝は,条件的不死化ラット網膜 Müller 細胞株 (TR-MUL5 細胞) を用い,[3H]adenosine を取り込ませた後,細胞内および細胞外液を HPLC にて解析した. 網膜から循環血中への[3H]hypoxanthine 排出は,microdialysis 法を用いて解析した. 【結果・考察】HPLC 解析の結果,TR-MUL5 細胞に取り込まれた adenosine のほぼ全てが,3 時間 後には hypoxanthine として検出された.また,3 時間後の細胞外液においても hypoxanthine が 検出されたことから,hypoxanthine が細胞外に排出されていることが示唆された.In vivo にお け る hypoxanthine 排 出 解 析 に お い て , [3H]hypoxanthine は bulk flow マ ー カ ー で あ る [14C]D-mannitol に比べ 1.5 倍速く消失した.さらに,その消失は ENT の基質および阻害剤である nitrobenzylmercaptopurin riboside 存在下で有意に阻害された.以上のことから,adenosine は Müller 細胞において hypoxanthine へと代謝され,細胞外に排出された後,血液網膜関門の ENT を介し網膜から循環血液中へと排出されることが示唆された. 44 I−7 血液網膜関門薬物輸送における in vivo - in vitro 相関性 ○ 福井恵理 1, 赤沼伸乙 1, 2, 立川正憲 3, 久保義行 1, 2 , 細谷健一 1, 2 (1 富山大薬, 2 富山大院薬, 3 東北大院薬) 【目的】網膜は視覚を司る重要な神経組織であり, 循環血液中から網膜への物質移行は, 血液網 膜関門 (BRB) によって制限されている.従って, 網膜への薬物移行性の予測には, BRB における 輸送機構の解明が重要となる.我々は retinal uptake index (RUI) 法を用いて種々の化合物の 網膜移行性を明らかにした.しかし, より簡便な in vitro 輸送解析から, in vivo における BRB を介した薬物輸送を予測することは, 網膜への薬物送達において重要である.本研究では, Parallel Artificial Membrane Permeability Assay (PAMPA) および条件的不死化ラット網膜毛 細血管内皮細胞株 (TR-iBRB2 細胞) における薬物の膜透過性と in vivo における網膜薬物移行性 との相関性を解析し, 各解析系から in vivo における網膜への薬物移行性を予測する指標を得る ことを目的とした. 【方法】放射標識化合物を用いて, TR-iBRB2 細胞および PAMPA における透過速度を測定し, 脂溶 性 (n-octanol/Ringer 分配係数, DC) および RUI 値との比較解析を行った. 【結果・考察】受動拡散型化合物について, 両解析系における化合物の透過速度は DC の増加に伴 って上昇し, 透過速度と DC および RUI 値との間に相関性が示された.一方, 輸送担体介在型化合 物において, TR-iBRB2 細胞実験では, 透過速度と RUI 値との間に相関性が示されたが, PAMPA で は, 透過速度と RUI 値との相関性は示されなかった.以上の結果から, PAMPA では受動拡散型化 合物において, TR-iBRB2 細胞実験では受動拡散型化合物および輸送担体介在型化合物のいずれに おいても, 透過速度と RUI 値との間に相関性が示され, in vitro における薬物透過速度から in vivo における網膜薬物移行性を予測できることが示唆された. I−8 脳神経系におけるアクチン結合性転写活性化因子 MKL2 新規スプライスバリアントの同定と 機能解析 ○庄司しずく,袴田知之,石川 充,久保友喜美,津田正明,田渕明子 (富山大院薬・分子神経生物学) 【目的】Megakaryoblastic leukemia(MKL)は,アクチン結合能を有すると共に,転写因子 serum response factor(SRF)のコアクチベーターであり,形態変化と遺伝子発現をリンクさせるユニー クなたんぱく質である.我々はこれまでに,MKL が樹状突起形態に重要であることを明らかにし た.MKL ファミリーのうち MKL2 は前脳に高発現し,3 つのスプライスバリアントが報告されてい る.これら MKL2 スプライスバリアントの機能を脳神経系において解析しようとしたところ,これ までに報告のない新規のスプライスバリアントを発見した.本研究では,この新規スプライスバ リアントの組織や脳領域別の発現と機能の解析を行った. 【方法・結果】報告のある MKL2 スプライスバリアント 3 をマウス脳組織からクローニングしよう としたところ,新規バリアント(バリアント 4)を同定した.このバリアント 4 は,バリアント 3 に約 60bp のエキソンが1つ挿入されたものであった.また,マウス・ラットの臓器,ラット大脳 皮質初代培養ニューロン, ラット培養アストロサイトから mRNA を抽出し定量的 RT-PCR により mRNA 発現分布を解析した.その結果バリアント 4 は脳特異的かつニューロン選択的に発現し,大脳皮 質ニューロンの培養日数の経過や脳組織の発達と共に mRNA 量が増加する傾向にあることが明ら かとなった.一方でバリアント 4 の細胞内局在は,細胞質と核の両方に局在する傾向にあった. 現在,MKL2 バリアント間での機能性の違いについて解析中である. 45 I−9 タイプⅡピレスロイド Deltamethrin 投与による BDNF 遺伝子発現変化と抗うつ効果の 解析 ○ 大瀬京平 1,高崎一朗 2,伊原大輔 1,斉藤顕宜 3,山田光彦 3,福地 守 1,田渕明子 1, 津田正明 1(1 富山大院医薬・分子神経生物学, 2 富山大生命セ・遺伝子実験施設,3 国立精神・神経医療研究セ・精神保健研究所) 【背景】脳由来神経栄養因子BDNFは神経細胞の生存・維持や分化,可塑性に関わる分泌性タンパ ク質である.脳内でのBDNF発現変化は様々な神経疾患と関連があり,特にうつ病の患者の海馬に おいてBDNF発現量の低下が認められている.したがって,BDNF発現量を調節する化学物質は,う つ病の治療に繋がることが期待される.以前我々は,初代培養神経細胞においてタイプⅡピレス ロイドの1つであるdeltamethrin (DM) が強力なBDNF発現誘導能を有していることを明らかにし た.そこで本研究では,DMをマウスに投与し,BDNF遺伝子発現と抗うつ効果について解析を行っ た. 【方法・結果】雄性 C57BL/6J マウス (7週齢) に DM (10mg/kg) を腹腔内投与し,リアルタイム PCR 法により海馬における BDNF mRNA 発現解析を行った.その結果,投与後12時間で BDNF mRNA 発現量の有意な増加が確認できた.そこで DM (10mg/kg) 投与後12時間に注目して,抗うつ薬 の評価試験である強制水泳試験を行ったところコントロールと比べて無動時間が有意に短縮され た.以上の結果より,DM (10mg/kg) が抗うつ効果を有していることが示唆された.DM (10mg/kg) による抗うつ効果は,海馬における BDNF 発現を介している可能性が示唆される. I−10 インスリンおよび持効型インスリンアナログのマウス脳機能に対する作用特性の検 討 ○細尾脩史, 恒枝宏史, 森 規彦, 和田 努, 笹岡利安(富山大院薬・病態制御薬理学) 【目的】近年,血糖調節ホルモンのインスリンが脳内においても重要な役割を果たしていること が報告されている.しかし,インスリンおよび持効型インスリンアナログが記憶・学習や不安, うつの形成に及ぼす影響の多くは不明である.そこで,本研究ではヒトインスリンおよび持効型 インスリンアナログのマウス脳機能に対する作用特性を行動薬理学的に検討した. 【方法】ヒトインスリン,グラルギンおよびデテミルをマウス脳室内に投与し,Y-maze 試験およ びステップスルー型受動回避試験により記憶・学習機能に対する作用を検討した.また,高架式 十字迷路試験により不安関連行動を,強制水泳試験によりうつ様行動を評価した. 【結果】ヒトインスリンは記憶・学習機能を向上させ,その作用発現には至適濃度の存在が認め られた.また,ヒトインスリンは抗うつ作用も示したが,抗不安作用は認められなかった.一方, グラルギンは記憶・学習機能の亢進作用および抗うつ作用に加え,抗不安作用を示した.デテミ ルは記憶・学習機能を亢進させたが,抗不安および抗うつ作用は認められなかった. 【考察】脳におけるインスリンおよび持効型インスリンアナログの作用特性の差異に基づき,糖 尿病に伴う神経精神疾患の新しい治療法を開発できる可能性が示唆された. 46 I−11 小胞体膜上に存在する ABC タンパク質 P70R(ABCD4)の存在状態の解析 ○ 上杉泰介,柏山恭範,今中常雄 (富山大院薬学・分子細胞機能学) 【目的】P70R は ATP-binding cassette(ABC)タンパク質ファミリーに属し,ALDP1(ABCD1)や PMP70(ABCD3)等のペルオキシソーム膜 ABC タンパク質と同じ ABC タンパク質サブファミリーD に分類されている.我々は,P70R がペルオキシソームではなく小胞体(ER)膜上に存在すること を明らかにしてきた.しかしながら,P70R の機能については不明である.そこで本研究では,ER 膜上における P70R の機能を明らかにするため,P70R の存在状態について解析を行った. 【方法】CHO 細胞を用いて,ヒト P70R-mycHis 安定過剰発現株を作製した.P70R の細胞内局在は, 細胞分画後,得られた各画分について immunoblotting を行い解析した.また,P70R の存在状態 については,P70R-mycHis 過剰発現細胞について光反応性クロスリンカーである NHS-Diazirine (SDA)で反応後,UV 照射により化学架橋を行い,得られた P70R 複合体の分子量について,抗 P70R 抗体を用いた immunoblotting により解析した. 【結果】本研究によりヒト P70R-mycHis 安定過剰発現 CHO 細胞株を構築できた.また,P70R-mycHis 過剰発現細胞において P70R-mycHis が ER に局在することを確認することができた.さらに, P70R-mycHis 過剰発現細胞において P70R-mycHis は分子量約 200kDa の複合体を形成しており,P70R が ER 膜上でダイマーあるいは他のタンパク質と機能的複合体を形成している可能性が示唆され た. I−12 癌アポトーシスイメージングを目的とした放射性プローブの開発 ○柴田知美 1,小川数馬 1,北村陽二 2,黄檗達人 1,浅野智哉 2,柴 和弘 2,小谷 明1 (1 金沢大院薬・臨床分析科学,2 金沢大学学際科学実験センター) 【背景】アポトーシスイメージングにより癌治療の応答を評価することは,治療法や投与量の選 択に有用な情報を与える.近年,アポトーシスイメージング薬剤として 99mTc-HYNIC- Annexin A5 (Anx A5)が汎用されているが,肝臓や腎臓での非特異的放射能滞留が問題となっている.本研究 では,非標的臓器への放射能滞留の低減を目的として,4 ' -アミノメチル- N , N '-トリメチレ ンジベンゾヒドロキサムアミド[C3(BHam)2]を 99mTc の配位子とした 99mTc-[C3(BHam)2]-Anx A5 を作 製し,評価を行った. 【方法・結果】 C3(BHam)2 の Anx A5 への結合は 2-IT と EMCS を介して行い, 99m Tc-glucoheptonate との配位子交換反応によって 99mTc-[C3(BHam)2]-Anx A5 を 96%の放射化学的 純度で得た.ノーマルマウスの体内分布を 99mTc-HYNIC-Anx A5 と比較した結果,腎臓への高集積 は 99mTc-[C3(BHam)2]-Anx A5 で有意に低減された.また,担癌マウスにおける腫瘍集積を検討した 結果,コントロール群と比較して 5-FU 投与群では,99mTc- [C3(BHam)2]-Anx A5 の有意に高い放射 能集積を示した.以上の結果より,99mTc- [C3(BHam)2]-Anx A5 はアポトーシスイメージング剤と して有用である可能性が示唆された. 47 I−13 pH 滴定による薬物のアルブミン結合における Ca の影響 ○勝野次乃,黄檗達人,小川数馬,小谷 明(金沢大院薬・臨床分析科学) 【序】薬物のヒト血清アルブミン(HSA)結合は,薬物血中濃度を支配する第一要因であるため, これまで多くの研究が pH7.4 下 HSA− 薬物溶液中でなされてきた.しかし,血清中では Ca が 2.5mM も存在するため,Ca が HSA 結合を通して薬物の結合に影響を与えている可能性がある.そこで, 薬物として抗炎症薬の銅(Cu)− サリチル酸(sal)を取り上げ,非破壊測定である pH 法により検討 を加えた. 【実験】pH 滴定は 25℃,I = 0.1(KCl)下,50μM HSA+薬物+HCl 溶液 10mL について 0.1M KOH を用い,すべての組合せについて行った.解析は SUPERQUAD を用いて,Mp(HSA)q(drug)rHs 種の 総安定度定数 βpqrs を得た.SySS でシミュレーションし,pH と濃度依存性を得た. 【結果・考察】[Ca]/[HSA] = 1-3 混合系から 2Ca-HSA 錯体まで存在が確認でき,血清濃度でのシ ミュレーションから HSA は血清中大部分は 1Ca,少量の 2Ca 錯体で存在することが判明した.薬 物 Cu,sal の HSA,Ca-HSA に対する結合は Ca の有無によって異なることが,形成錯体種の薬物濃 度依存性から示された.従って,血清中の薬物のアルブミン結合を検討する上で Ca の存在を考え る(薬物のアルブミン結合を Ca 存在下で調べる)ことは必須と考えられた. 48 一般講演−II (103 講義室) II−1 (+)-Indicanone の全合成研究 向 智里,○小川久美子,林佑次郎,稲垣冬彦 (金沢大院薬) 2005 年に単離された(+)-indicanone はビシクロ[5.3.0]骨格を有する二環性化合物であり,一酸化窒 素産生抑制作用や INF-γ 活性を示すことが報告されている.Indicanone の全合成は未だ達成されてお らず,その絶対立体配置も決定されていない.今回我々は,indicanone の基本骨格であるビシクロ [5.3.0]骨格の構築に,独自に開発したアレンアルキン体の分子内 Pauson-Khand 型反応(PKTR)を適用で きれば,効率的な indicanone の全合成につながると考え,初の全合成およびその絶対立体配置の決定 を目指し本研究に着手した. (+)-リモネンを出発原料として文献既知のリン酸エステル体 1 へ誘導後,数工程の官能基変換を経て 2 を合成した.得られた 2 を 5mol%の[RhCl(CO)2]2 とトルエン中一酸化炭素気流下で加熱還流して PKTR を行ったところ速やかに閉環反応が進行し,標的天然物の indicanone が得られた. II−2 毒ガエルアルカロイド 239Q および類縁体の合成研究 ○浦田統子 1,王 旭 1,Ralph A. Saporito2,手塚康弘 3,門田重利 3,豊岡尚樹 1 (1 富山大院工,2John Carroll University,3 富山大和漢研) 【目的】我々は毒ガエルの皮膚抽出液に含まれるアルカロイド類が興味ある生物活性を示すことを明ら かにしてきた.1 今回最近同定された毒ガエルアルカロイド 239Q2 の全合成およびその類縁体の合成を 行うことを目的とする. 1, 97; Eur. J. Pharmacol. 2011, 658, 132. 2: 1: Mol. Pharmacol. 2004, 66, 1061; Curr. Chem. Biol. 2007, Toxicon 2008, 52, 858. 【結果】既知のピロリジン (1) から鍵中間体ケトン (2) とし,その立体選択的還元により,アルコー ル (3) および (4) を選択的に得た.さらにオレフィン (5),(6) に導き接触還元により 239Q (7)と エピ体 (8) の合成に成功した.側鎖の異なる類縁体の合成も行ったので併せて報告する. 49 II−3 ラムノシダーゼ阻害活性が期待されるポリヒドロキシイミノ糖の合成研究 岡城 徹 1,○伊福翔平 1,中川進平 2,加藤 敦 2,足立伊佐雄 2,豊岡尚樹 1 (1 富山大院工,2 富山大病院薬剤部) 【目的】グリコシダーゼは,様々な疾病と関わりがあることが知られており,ミグリトールのような αグルコシダーゼ阻害剤の研究が,盛んに行われている一方で,細菌細胞壁の構成糖であるフコースやラ ムノースのような L 糖の加水分解酵素を標的とした創薬研究は少ない.このような背景から今回,α-Lラムノシダーゼ阻害活性が期待される新規ピペリジン誘導体の合成を行うことを目的とする. 【結果】L-アラニン (1) を出発物質とし Z-オレフィン (2) を経由し環化体 (3) とした.次いでジヒ ドロキシル化,MOM 保護を行いピペリジン中間体 (4) を立体選択的に合成した.次に,陽極酸化により 6 位をメトキシ化後,アシルイミニウムイオンを経由し,アリル体 (5) を合成した.今後,5 のアリル 基を足がかりにして側鎖を構築し,脱保護を経て様々な誘導体を合成し,ラムノシダーゼに対する阻害 効果を検討する予定である. II−4 o−ヒドロキシ桂皮酸型ジアジリン誘導体の合成と光反応 ○猪ノ口裕二,山本章人,大井睦美,千葉順哉,友廣岳則,畑中保丸(富山大院薬) 難結晶性受容体の同定や構造解析に光アフィニティーラベル法は有用な手法の一つである.この方 法は混合系や複合系を含めあらゆる相互作用系に適用可能だが,ラベル効率が低いことから,しばし ばラベルフラグメントのハンドリングや解析が困難になる.以前,我々は標的タンパク質や細胞の新 規な蛍光ラベル化を報告した.この発蛍光性光クロスリンカーを用いたラベル法はイメージングのみ ならず構造解析の操作向上にも極めて有効である.最適化を目的に,一連の類似クロスリンカーを合 成し,その光反応性を検討したので報告する. このクロスリンカーはカルベン前駆体であるジアジリンとクマリン前駆体の o−ヒドロキシ桂皮酸 骨格を有する.ジアジリン基は n-π*遷移(360 nm 付近)により脱窒素を経てカルベンを生成すると 直ちに近傍の化学結合に挿入反応を起こす.o−ヒドロキシ桂皮酸は 290 nm 付近に吸収極大を持ちシ ス−トランス光異性化を起こすが,その際,ヒドロキシ基による分子内環化を経てクマリンを生成す る.この化合物によるクロスリンクは通常のフェニルジアジリン誘導体に比較して遅いことがわかっ た.そこで,誘導体をいくつか合成しその反応性を検討したところ,桂皮酸構造やその置換基はジア ジリンの脱窒素過程に影響を与えることが示唆された.また,クマリンラベルという観点から光異性 化/環化反応についても検討したので併せて報告する. 50 II−5 新規な末端修飾エチニルピリジンオリゴマーの合成開発 ○阿部 肇,鈴木理仁,牧田浩樹,井上将彦 (富山大院薬) 我々は,ピリジン環の2,6-位をアセチレン結合を介して連ねた「metaエチニルピリジンオリゴマー」(図上段) を,糖質を分子認識する人工 ホスト高分子として開発してきた.今回,その骨格の末端に新しい修 飾部位を加え,キラルならせん型高次構造の制御や評価を試みた.以 下の誘導体について,合成と測定結果を報告する. 末端に糖テンプレート部位を持つエチニルピリジンオリゴマー:末 端に脂肪族アルキンを持つオリゴマーを合成し,アジ基を持つグリコ シドと Huisgen 反応により結合させた(図中段).オリゴマー部位と糖 部位が共有結合により繋がったことで,分子内水素結合によるキラル ならせん構造が形成し,円二色性 (CD) で観測された. 末端にポルフィリンを導入したエチニルピリジンオリゴマー: ポ ルフィリン環を2枚,両末端に導入したオリゴマーの合成を試みた(図 下段).これはオリゴマー上にキラルならせん構造が形成したとき,2 枚のポルフィリン環の間の位置関係を反映した CD が現れることを期 待したものである. OR N R 1 n HO R2 O N 1 R = N (HO)3 N R 2 = -C(CH 3) 2OH Bu-n R1 = R2 = NH N Bu-n N HN Bu-n II−6 銅塩を用いた 1-アルキン,アルデヒド,アミンの三成分連結反応を経る 1,3-二置換アレン の合成 北垣伸治,○小水美佳,向 智里(金沢大院薬) 【目的】1,2-ジエン構造を持つアレン化合物は高い反応性を持ち,多彩な反応を引き起こすことから, 有機合成に広く用いられている.アレン合成法として,1-アルキンに対して安価な銅塩の存在下,パラ ホルムアルデヒドと第 2 級アミンを用いて一炭素増炭させる Crabbé 反応が知られており,その経済性 や操作の簡便性から頻用されている.しかしながら既存の Crabbé 反応では一置換アレン体しか合成で きない.そこで演者は Crabbé 反応を改良し,各種アルデヒドを用いる 1,3-二置換アレン体合成法の開 発に取り組むこととした. 【結果】各種アルデヒドとジシクロヘキシルアミンを過剰量用い,ヨウ化銅の存在下マイクロ波を照射 すると 1-アルキンから 1,3-二置換アレンが生成することを明らかにした.用いるヨウ化銅は触媒量で よく,特に脂肪族アレンにおいて経済的かつ効率的な合成法となった. 51 II−7 塩基を用いるフルオロメチルヒドラゾン誘導体の脱フッ素置換反応 ○八島 淳,谷口剛史,石橋弘行(金沢大院薬) 炭素-フッ素結合は非常に安定であり,一般的に不活性である.しかし近年,不活性な炭素-フッ 素結合を活性化する方法論が注目されており,金属触媒等を用いて,炭素-フッ素結合の還元や官 能基化する反応が多く報告されている. 今回我々は,フルオロメチルヒドラゾン誘導体 1 をメタノール環流中,塩基で処理することに よって,フッ素が全てメトキシドで置換された 2 のような化合物が得られることを見出した.本 反応は,モノフルオロ,ジフルオロおよびトリフルオロ化合物のいずれの場合においても進行す ることがわかった. II−8 鉄触媒とヒドリドを用いた C-H 酸素酸化を経る単純アルケンからの 1,4-ジオールの合 成 ○橋本卓磨,谷口剛史,石橋弘行 (金沢大院薬) 芳香環やアルキル基の不活性な C-H 結合を活性化して,直接官能基化する反応は,工程数の低 減などの点において優れた手法であり,近 年 精 力 的 に 研 究 が 行 わ れ て い る 分 野 で あ る .今回 我々は,酸素雰囲気下,鉄触媒とヒドリド試薬を用いるアルケンの酸化還元的な水和反応 1)にお いて,不活性なメチル基の直接酸化が同時に進行し,1,4-ジオールが 1 工程で得られることを見 出したので報告する. アルケン 1 を酸素雰囲気下,室温で触媒量のフタロシアニン鉄(Ⅱ) [Fe(Pc)] と NaBH4 で処理 すると,1,4-ジオール体 2 が得られた.さらに触媒量の 1-メチルイミダゾールやジメチルスルフ ィドを添加することで 1,4-ジオール体 2 の収率が向上することがわかった. 1) Okamoto, T.; Oka, S. J. Org. Chem. 1984, 49, 1589 52 II−9 フルオロニトロベンゼンの光化学反応 ‐光反応経路に対する溶媒の影響‐ ○山 利徳,福吉修一,徳村邦弘,中垣良一 (金沢大院薬) 【目的】芳香族ニトロ化合物は光照射によって光求核置換や光酸化還元などの多様な反応を起こ すことが知られている.その一方で,反応性の低い光脱離反応や光誘起ニトロ-ニトリト転位反応 に関しては体系的な理解がなされていない.そこで今回我々は,種々の溶媒(ベンゼン,アセトニ トリル,2− プロパノール)に溶解した m-,p-フルオロニトロベンゼンに光を照射し,これらの光 反応経路に及ぼす溶媒の影響を検討した. 【結果】ベンゼン中,溶存酸素の有無に拘わらず p-フルオロビフェニルが得られた.またベンゼ ン-d6 中 p-フルオロニトロベンゼンの光照射で p-フルオロビフェニル-2 ,3 ,4 ,5 ,6 -d5 の 生成が確認された.これらは反応の過程で二酸化窒素が脱離し,生じた p-フルオロフェニルラジ カルがベンゼンと反応した可能性を示唆している. またベンゼン・アセトニトリル中,溶存酸素存在下ではニトロ-ニトリト転位生成物が得られた. 一方,2-プロパノール中では m-,p-フルオロニトロベンゼンの両方でニトロ基の還元反応が主反 応となり,光誘起ニトロ-ニトリト転位反応は確認されなかった.以上のことから光誘起ニトロニトリト転位反応に対する光還元反応の優位性が示唆された. II−10 フルタミドおよび関連化合物の光反応 −多様な反応経路と溶媒効果− ○渡邉友里江,福吉修一,徳村邦弘,中垣良一(金沢大院薬) 【目的】芳香族ニトロ化合物は,光照射により光酸化還元や光求核置換など多様な光反応を起こ す.一方で,光誘起ニトローニトリト転位,光脱離といった反応は反応性が低く,体系的な理解 がなされていない.芳香族ニトロ化合物の一つであるフルタミドは,前立腺癌治療薬として用い られており,副作用の一つに光線過敏症が知られている.本研究では,フルタミドとその誘導体 に関して定常光照射実験を行い,その光反応機構を検討した. 【実験】超高圧水銀灯を光源として定常光照射実験を行い,照射後の溶液を GC-MS により分析し た.溶媒としてアセトニトリル,メタノール,2− プロパノールを用いた. 【結果と考察】アセトニトリル溶液の光照射では,光誘起ニトローニトリト転位と光脱離による と考えられる生成物が確認された.メタノールや 2-プロパノール溶液では,それらに加え,光酸 化還元によると考えられる生成物も確認された.詳細な反応機構について現在検討中である. 53 II−11 転写制御因子 Pax5 による骨芽細胞の分化成熟化調節 ○ 藤田弘幸,檜井栄一,米田幸雄(金沢大院薬・薬物学) 【目的】我々は,これまでに転写制御因子 Paired box (Pax)ファミリーの一つである Pax5 が骨 芽細胞の分化後期に発現すること,および Pax5 安定発現骨芽細胞株では同細胞の分化と成熟化が 促進されることを報告した.今回は,siRNA を用いたノックダウン法により,骨芽細胞分化成熟 化過程における Pax5 の生理学的役割について検討した. 【方法】骨芽細胞株 MC3T3-E1 細胞に Pax5-siRNA を導入後,分化誘導剤(ascorbic acid および -glycerophosphate)存在下で 7 日間培 養して,分化成熟の指標として alkaline phosphatase(ALP)染色を行った.また,Pax5-siRNA を 導入した MC3T3-E1 細胞から RNA を回収し,real-time PCR 法により骨芽細胞分化マーカーの発現 を比較検討した.対照群としては control-siRNA を導入した MC3T3-E1 細胞を使用した. 【結果】 Pax5-siRNA 導入細胞では,対照群と比較して ALP 染色性の著明な低下が観察された.しかしなが ら,Pax5-siRNA 導入は骨芽細胞分化のマスターレギュレーターである Runx2 の発現には有意な変 化 を 与え なか った のに 対し て, Pax5-siRNA 導入細 胞 では 骨芽 細胞 成熟 化マ ーカ ーで ある Osteocalcin と Osterix 発現の有意な低下がともに確認された.【考察】Pax5 はマスターレギュ レーターである Runx2 非依存的に,Osterix や Osteocalcin の発現制御を介して骨芽細胞の分化 成熟化を調節する可能性が示唆される. II−12 褐色脂肪細胞分化に対する TGF- スーパーファミリーGrowth Differentiation Factor 5 の作用 ○ 高田紗矢,檜井栄一,米田幸雄 (金沢大院薬・薬物学) 【目的】哺乳類では白色および褐色の 2 種類の脂肪組織の存在が周知である.その中でも,褐色 脂肪組織は余剰エネルギーを熱として発散させる働きがあることから,近年ヒト成人における生 理学的および病態生理学的重要性が示唆されている.本研究では,褐色脂肪細胞の分化および機 能を制御する内因性因子の探索を行った. 【方法】肥満モデル動物である ob/ob マウスから,白色 脂肪組織および褐色脂肪組織を摘出後,それぞれ RNA を抽出して,real-time PCR 法により TGFスーパーファミリーの遺伝子発現の検討を行った.さらに,褐色脂肪前駆細胞株 BFP 細胞の分化 成熟について,Oil Red-O 染色とマーカー遺伝子発現により解析した.【結果】ob/ob マウスの褐 色脂肪組織において,Growth Differentiation Factor 5(GDF5)発現の著明な上昇が認められた のに対して, 同マウスの白色脂肪細胞では GDF5 の発現上昇は観察されなかった. recombinant GDF5 を BFP 細胞に添加すると,その濃度依存的に細胞の Oil Red-O 染色性が著明に増加しただけでな く,褐色脂肪細胞マーカーの Uncoupling protein 1 の発現が有意に上昇した. 【考察】肥満状態 では褐色脂肪組織における GDF5 産生が亢進するとともに,GDF5 を介する褐色脂肪細胞の分化と 成熟が活性化される可能性が示唆される. 54 II−13 ミクログリア細胞に発現する骨制御因子 Runx2 の発現 ○中里亮太,宝田剛志,米田幸雄(金沢大院薬・薬物学) 【目的】ミクログリア細胞は中枢神経における免疫担当細胞としての役割が良く知られているが, 近年では様々な分子病態への関与が数多くの研究機関から報告されている.一方,我々はこれま で脳組織と骨関節組織間にシグナル共通性が存在する可能性を提唱しているが,この仮説は両組 織における未知機能や疾患発症機序に対する新たな知見をもたらすと期待される.したがって本 研究では,骨成熟のマスターレギュレーターである Runt related factor-2 (Runx2)に焦点を当 てて,脳内ミクログリア細胞における機能的発現の可能性を検討した. 【方法】新生仔マウス全脳 由来初代培養ミクログリア細胞,およびミクログリア細胞株 BV-2 細胞を用いて,各種 mRNA の発 現およびシグナル応答性を RT-PCR 法により検討した. また, タンパク質の発現は Western blotting 法により解析した. 【結果】RT-PCR 解析の結果,初代培養ミクログリア細胞および BV-2 細胞株に おいて,それぞれ Runx2 およびそのパートナータンパク質である Cbfb の mRNA 発現が認められた. 次いで,BV-2 細胞株を用いてシグナル応答性を検索したところ,1 mM ATP 添加後 3 時間目に Runx2 mRNA 発現の強い一過性上昇が観察されたが,この上昇は 6 時間以降 24 時間目までは認められな かった.これに対して,ミクログリア刺激効果のある PACAP(0.1 mM),LPS(0.1 mM),あるいは tunicamycin(10 M)では,いずれの場合も添加後 24 時間以内には有意な Runx2 mRNA 発現変化は 観察されなかった.また,Cbfb の mRNA 発現は,いずれの薬物添加や曝露時間によっても有意な 変動を示さなかった.BV-2 細胞株に 1 mM ATP を曝露すると,6 および 12 時間後に Runx2 タンパ ク質発現が著明に上昇したが,初代培養ミクログリア細胞の場合でも,1 mM ATP 添加後 6 時間目 に有意な Runx2 の mRNA 発現量上昇が確認された.【考察】Runx2 は骨関節系細胞だけでなく,脳 内ミクログリア細胞にも発現して,ATP 刺激に対する応答性を示すものと推察される. II−14 神経系前駆細胞に発現する神経性ニコチン型アセチルコリン受容体の機能解析 ○ 北島聖也,宝田剛志,米田幸雄(金沢大院薬・薬物学) 【目的】我々は増殖能と分化能を有する神経系前駆細胞が,グルタミン酸と GABA による相反性機 能制御を受ける事実を報告してきたが,今回は同前駆細胞における神経性ニコチン型アセチルコ リン受容体(nAChR)の発現解析とともに,nAChR シグナル入力による自己増殖能と多分化能の変 化について解析を行った. 【方法】胎生 18 日齢 Wistar 系ラットより全脳を摘出し,無菌条件下で 大脳皮質を切り出した.大脳皮質小片を酵素処理後,percoll を使用した密度勾配遠心分離法に より得られた下層フラクションから細胞を分取して,EGF 存在下で 12 日間浮遊培養した.下層フ ラクションから分取直後の細胞および培養 12 日目の細胞から,それぞれ Total RNA を回収して, 各種 nAChR サブユニットの発現を RT-PCR 法により検討した. 【結果】得られた前駆細胞を浮遊培 養すると,培養 12 日目までに大きな神経塊 (Neurosphere)の形成が認められた.培養 12 日目の Neurosphere について各種 nAChR サブユニットの mRNA 発現を解析した結果,α2,α3,α4,α5, α6,α7,α9,β2 および β4 サブユニットの発現は認められたが,β3 サブユニットの発現は 見られなかった.培養初期から nAChR アゴニストであるニコチンを 10 M の濃度以上で 12 日間持 続的に曝露した細胞では,MTT 還元能と神経塊総面積の有意な減少が観察された.次いで,ニコ チン存在下で 12 日間浮遊培養後,細胞を分散してからニコチン非存在下に接着培養したところ, MAP2 陽性細胞数の有意な上昇とともに,GFAP 陽性細胞数の有意な減少が認められた.【考察】神 経系前駆細胞には nAChR が発現して,ニコチンによる活性化に伴って細胞増殖能の低下とともに, その後の神経細胞への分化促進とアストログリア細胞への分化抑制を招来する可能性が推察され る. 55 II−15 演題名;骨制御因子 Runx2 のアストロサイトにおける発現 ○藤川晃一,宝田剛志,米田幸雄 (金沢大院薬・薬物学) 【目的】本研究では,アストロサイトにおける骨制御因子 Runx2 の発現調節メカニズムの詳細を 検討した. 【方法】ラット大脳皮質由来の初代培養アストロサイトに各種薬物を添加し,8 あるい は 24 時間後の Runx2 mRNA の発現変動を検討した.また,Runx2 のプロモーター解析を Luciferase アッセイにより検討した. 【結果】小胞体ストレスを惹起する tunicamycin の添加により,培養ア ストロサイトの Runx2 mRNA の発現が有意に上昇した.次いで,Runx2 promoter(P2-Luc)の Luciferase 活性の測定を行ったところ,P2-Luc(-4056∼+246)における Luciferase 活性は,小胞 体ストレス関連転写因子 XBP1 ベクターの共導入により有意に上昇した.この XBP1 の上昇効果は, P2-Luc(-2414∼+246)および P2-Luc(-1300∼+246)の deletion construct レポーターの場合にも 認められたが,P2-Luc(-26∼+246)の場合では認められなかった. 【考察】小胞体ストレス応答性 転写因子 XBP1 は,Runx2 プロモーターの-1300∼-26bp 上流領域に結合して,その転写を活性化 する可能性が示唆される. 56 金沢大学までのアクセス(公共交通) 祝日のため本数が少なくなりますので,ご注意下さい. ・JR 金沢駅より 金沢駅東口 6 番乗り場より 93,94 番「金沢大学(角間)」行き乗車,約 35 分(片道 350 円) ・香林坊,兼六園下より 香林坊 1 番乗り場(中央公園前),兼六園下(北鉄車庫)より 93,94,96 番「金沢大学(角間)」行き乗車, 約 25 分(片道 350 円) →「金沢大学自然研前」下車 自家用車でのご来場について 発表会会場へは車でお越し頂けます. 駐車場は「駐車場M」と「駐車場L」です. お車の運転,天候には特にご注意ください. 金沢大学までのアクセス 富山方面より:北陸自動車道金沢森本 IC から山側 環状道路へ 福井方面より:北陸自動車道金沢西 IC から兼六園 下方面,山側環状道路へ →「もりの里 1 丁目交差点(ショッピングセンタージャスコ角)」を角間方面へ 57 金沢大学角間キャンパス自然科学講義棟案内図 ・ 27 日は自然研の食堂のみ営業します. ・ 受付,講演会場,ポスター会場はすべて,自然科学本館 1F にあります.バス停,自然科学本館正面 玄関は G2F(地下 2 階相当)です.正面玄関から入って左手の階段を登って,1F に進んで下さい. ・ キャンパス内は所定の場所を除いて禁煙です. 58 発行日: 発 行: 発行者: 印刷所: 2011 年 11 月 21 日 日本薬学会北陸支部 支部長 渡辺和人 ヨシダ印刷株式会社 59