...

PRACTICE REPORT 2015

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

PRACTICE REPORT 2015
PRACTICE REPORT 2015
山梨県リフレッシュ講習会
担当指導員:鈴木良和
2015年1月25日日曜日
指導のねらい
1.認知・判断を高めるファンダメンタルの指導法
・ミニバス向けファンダメンタルドリルへの認知判断の負荷の足し方
・認知判断の負荷をフローに保つ負荷の上げ方
・認知判断の領域を超えたアダプタビリティ能力
2.チームオフェンスの組み立て方
・小さいチームがペイントに侵入する回数を増やす
・フェイズオフェンスのドリルの組み立て
① 認知・判断・実行への気づき
認知.
『多く発見する』
判断.
『最適なものを判断する』
実行.
『素早く実行する』
② WHYから指導する
認知.
WHY
『なぜそれを選んだのか?』
判断.
HOW
WHAT
『どの選択肢が良かったか?』
実行.
『より良い選択肢を実行』
③ 対面パスの認知・判断・実行ドリル
バスケットボールやサッカーのように、相手に応じて技術を使い分けなければならないスポーツ
のことをオープンスキルのスポーツといいます。陸上や新体操、水泳やスケートのように相手に応
じて技術を使い分ける必要がないスポーツのことをクローズドスキルのスポーツといいます。
オープンスキルのスポーツは、認知・判断・実行という順番にスキルは発揮されます。日本では
実行の練習が多く、認知と判断を磨く練習が少ないと言われています。ヨーロッパでは認知と判断
を磨く練習を重視しているという情報がたくさん入ってきています。
今回、対面のパス練習で単なる実行練習と認知判断を入れたドリルとの違いを紹介しました。
①単純なシグナルに応じて技術を使い分ける
②複数のシグナルに対して技術を使い分ける
③実際のディフェンスに対して技術を使い分ける
というような段階を踏みながら、徐々に認知しなければならない情報を少しずつ増やし、判断の質
を高め、実行のスキルも磨いていくことが重要です。
④ レイアップかパスかの認知と判断
単なるレイアップ練習を、認知と判断を伴って練習するドリルをご
紹介しました。レシーバーの手のシグナルで状況を変えて、それに対
応する練習です。
レシーバーは手を後ろで組んでいる状況で待っています。ドライブ
プレーヤーがドリブルからレイアップにいくワンステップ目に、レシ
ーバーは〇か×の手を出します。ドライブプレーヤーはそのシグナルを
判断してパスを出すか、レイアップに行くかを選んでもらいました。
普段、普通にレイアップ練習をすれば問題なく決められると思いま
すが、こういった認知と判断の負荷が入った瞬間にレイアップの確率
まで下がってしまいます。
バスケットボールの試合では、常に最後まで技術を使い分けられる
状態でプレーしなければなりません。逆にパスの練習としても、突然
変わる状況に対応して素早くパスを選択できなければなりません。
単なるレイアップ練習も、単なる対面パスも簡単に出来るようにな
ったら、こういった認知と判断に負荷をかけて練習していきましょう
!
⑤ドリブルドリルの認知と判断
ドリブル練習にも認知と判断の負荷を足すことが出来ます。今回紹介したのはコ
ーンのドリブルドリルと、1on1のドライブコースを選ぶ練習です。
ディフェンス役の選手は、コーンに対してジグザグに進んでいきます。左右自由
に選んで良いので、オープンステップのフットワークを使いながら進む練習を紹介
しました。
オフェンス役の選手はドリブルでオープンステップでフロントチェンジをしてい
くのですが、ディフェンス役の選手が進んだ方と逆に進まなければならないという
ルールです。
こうすることで、顔を上げて前の人の動きを追い続けないといけなくなります。
最後は、ディフェンス役の選手はどちらかのウイングまでいき、コーンのどちら
かを通ってディフェンスに行きます。
オフェンス役の選手はディフェンスと逆のコーンで、ディフェンスが通った方と
逆にドライブをしていきます。
こうすることで、常にコートの奥を見ながら1on1をする習慣も身につけること
が出来ます。
⑥ 上下のパスの判断
午後のメインテーマである認知と判断のトレー
ニングです。最初は手前と奥を同時に認知、判断
するためのトレーニングです。
ボールを持っている選手がドリブルをスタート
したら、もう一人のオフェンスはダミーディフェ
ンスをかわしゴールに向かいます。
ボールマンのダミーディフェンスは、手を上げ
るか、下げるかするので、ドリブラーはディフェ
ンスの手を感じて、上がっていればバウンドパス
、下がっていればストレートパスを出します。
レベルが上がってきたら、レシーバーの走るコ
ースがダミーの手前だったらインサイドハンドか
らパス、ダミーの奥だったらアウトサイドハンド
からパスを出すというように、認知と判断に負荷
をかけていきましょう!
⑦ デロンステップ
1on1の抜き技の最後として、デロンウィリアムス
という選手の小さいスキップステップのテクニック
を紹介しました。
ディフェンスは、バッドスタンスの瞬間、重心移
動の瞬間は動けません。小さなスキップモーション
で相手の重心移動を作り、その逆をつくようにドラ
イブします。
相手があまり動かなかったらそのままチェンジオ
ブペースで抜き去ります。
ポイントは、高くジャンプしないこと(低空飛行
で移動すること)と、左右どちらにも蹴りだせるス
タンスをキープすることです。小さなスキップの最
後に、少し加速するような感じを見せれると効果的
です。
⑧ SDDLメソッド
1on1の能力を高めることは、ジュニア期の指導者の重
要な役割です。バスケットボールはオープンスキルのスポ
ーツなので、ディフェンスを想定してない反復練習だけで
は1on1はレベルアップしません。
シャドー→ダミー→ディシジョンメイク→ライブの順
番にドリルを発展させる方法をご紹介しました。
経験が少ない選手達を一日も早くバスケットボールとい
うゲームの中で成長させるためには、ドリルの組み立ての
工夫が必要になります。
ドリルは工夫をして、短い時間で中身の濃い練習になる
ようにしていきましょう!
⑨影分身ドリル(アダプタビリティ)
認知と判断を磨く練習を紹介してきましたが、バスケットボールには見て判断して行動する領域を
超えた能力が必要な場面があります。それが、「アダプタビリティ」です。
「アダプタビリティ」とは、相手の咄嗟の対応、状況の変化に対して瞬時に対応する身体の能力で
す。このアダプタビリティ能力に焦点を当てた練習を午前の最後に紹介しました。一人目を抜いた後
にすぐに次のディフェンスが出てくるドリルです。
1人目は思いっきり抜きましょう。そして、抜き去るつもりで加速した時に出てくる2人目のディ
フェンスに対応できるかどうかが課題になってきます。
ディフェンスに不意にコースに入られたときなどに対応できる身のこなしとボールハンドリングの
感覚を磨いておくことが重要です。
この練習は、いつ、どのタイミングでディフェンスがアクションを起こしてきても、オフェンスは
その逆をつけるようにしておくのが目的です。そのためには、脳が初めからその技術を使うと準備し
た状態で反復練習をしてもあまり効果がないのです。ドライブで思いきり抜き去るぞ!と加速してい
る状況ですら途中でどんなタイミングでも素早く切り返せなければならないのです。
二人目のディフェンスの反応の距離を変えたり、一人目のディフェンスが最初のドライブに反応す
るケースを練習したりと、色々と刺激を変えて練習してみましょう!
⑩ カップリングスキップ
午後のウォーミングアップでカップリングス
キップを行いました。カップリングスキップは
、上半身と下半身を別々にコントロールするた
めのコーディネーショントレーニングです。
1.
2拍子で拍手しながらスキップ
2.
1拍子で拍手しながら2ステップスキップ
このトレーニングで上半身と下半身の神経回
路を分断しておけば、新しい技術の学習が早く
なります。
3.
前・上・後ろの3拍子で拍手しながら2ス
テップスキップ
4.
3拍子で拍手しながら2ステップスキップ
レベル1から徐々に難しくなるようにメニュ
ーを紹介していきました。
5.
2拍子で拍手しながら3ステップスキップ
6.
1拍子・2拍子・3拍子と拍手のリズムを変
えながら2ステップスキップ
コーディネーショントレーニングは、出来る
ようになったものを何回も繰り返すというやり
方ではなく、常に少し難しいレベルにチャレン
ジし続けることが重要です。
次のレベル設定を参考に、クリアできたら次
のレベルにどんどん進んでいきましょう!
⑪ 股関節トレーニング
股関節は球状関節で、右図のように最も大きな可動域を持
っています。右下の図を見ても分かるように、股関節の周り
には色々な向きに色々な筋肉がついていて、様々な方向に運
動できるようになっているのです。
しかし、日常生活の中ではこれらの筋群はほとんど活躍し
ておらず、歩行やダッシュ、ジャンプなど前後方向に足を動
かすような動作にしか使われていません。バスケットボール
で使うようなフットワークは非日常的な動作なので、普段使
われてないまま眠っている筋群を動員できるかどうかで動き
の質はかなり変わってきます。
単なる筋力の強さや身体の大きさで海外の選手達にアドバ
ンテージがあるのなら、日本の選手達はこういった使われに
くい筋群も動員するような身体運用のレベルアップ、動きの
質の向上で世界に対抗していきたいと考えています。
⑫ サークルルールドリル
オフボールの選手の認知と判断のトレーニングです。
両ウイングにコーンを置き、2人はコーンの前に立ちます。
ボールマンはコーンの右か左か好きな方を選んでドライブコー
スを決めます。
コーンの右側にドライブをしたら、オフボールマンはサークル
ルールで右に合わせて動きます。
コーンの左側にドライブをしたら、オフボールマンはサークル
ルールで左に合わせて動きます。
右に抜くか、左に抜くかの簡単な認知と判断ですが、オフボー
ルの選手はそれに基づいてすぐに対応を変えられなければなりま
せん。こういった単純で分かりやすい合わせの認知判断から導入
していくと、徐々に試合中の合わせの動きが良い判断になってい
きます。
⑬ 速攻時の1on1のコンセプト
午後のチームオフェンスの練習では、なるべくリバウ
ンドや速攻まで取り入れて練習をしたかったので、速攻
の場面の1on1をまずは練習しました。
まず、速攻の場面で1on1になった場合、ペイントエリ
アに侵入する際にミドルラインを跨ぐようにして侵入す
ると効果的です。ディフェンスが自分とリングの間にい
るとレイアップを邪魔されます。
このコースをとることでディフェンスをリングの下に
したままレイアップに行きやすくなりますし、ディフェ
ンスの反応の逆をついても、どちら側でもバックボード
を利用してレイアップに行きやすくなるのです。
バスケットボールは、オフェンスとディフェンスのつ
ながりの部分を大事に練習する必要があります。
⑭ チームオフェンスの分類と特徴
チームオフェンスは大きく分けて4つに分類され、それぞれに特徴があります。
オフェンスの種類
特徴
ジュニア期の指導にとって
フリーランスオフェンス
自由なオフェンス。何をやっても良い。
みんなが自由すぎるため、良い判断の基準
が学習しにくかったり、かえって不自由に
なったりする。
モーションオフェンス
自由な中に制限があるオフェンス。パスの回
数やボールの展開についてなどのチームルー
ルを守りつつ、あとは選手が自分で自由に判
断する
自由な発想は育みやすいが、意図した状況
が演出しにくく、練習したことと実戦とが
つながりにくい
オプショナルフェイズオフェ
ンス
制限の中に自由があるオフェンス。場面ごと
に選択肢が与えられており、ディフェンスの
状況などによってプレーを選択していく
選択肢を多くすると過負荷で難しいオフェ
ンスになるが、選択肢を少なくすると子ど
もたちにとっても学習しやすく、良い判断
の基準なども学ばれやすい。認知判断のト
レーニングには最適。
セットオフェンス
プレーが限定されたオフェンス。意図したチ
ャンスを演出するために、緻密に動きが組み
立てられる。
一つ一つのプレーの精度が高くなければ成
功しないため、育成期には不向きであり、
選択の自由が全くない場合は判断の機会を
奪うリスクもある。
⑮ 今回のオフェンスの狙い
今回は、認知と判断を磨きやすいオプショナルフェイズオフェンスを題材に、オフェンス
の組み立て方をご紹介しました。
県内に大きな選手が少ないという状況をお聞きしたので、小さいチームでもペイントに侵
入して得点を取ることが増えるように、フェイズオフェンスの優先順位を整理し、プレーを
選択するようにオフェンスを組んでみます。
ドイツなどでも、中学生年代ではオプショナルフェイズオフェンスを使って判断力を磨い
ているクラブもあるようです。小学生には少し難しいかもしれませんが、応用次第では小学
生でもオフェンスの学習に使えると思います。
まずは、オフェンスのスペーシングを決めなければなりません。今回は、4アウトのスペ
ーシングでトライアングルオフェンスを題材に選びました。プリンストンオフェンスの要素
も取り入れて、小さいチームでもバックカットを多用してペイントへの侵入を増やしていく
のが狙いです。それを相手が守ってきたら、アウトサイドからのピックやハンドオフプレー
を使ってさらにペイントへの侵入を狙います。
⑯-1 オプショナルフェイズオフェンスの組み立て
まずは、一番たくさん狙ってほしいプレーを選びます。小さいチ
ームでも、ガード陣がコートを縦に突破できると合わせのプレーや
キックアウトからのノーマークショットを増やすことが出来るので
、ガード陣が縦の突破を狙いやすいように、ウイングの選手達はコ
ーナーダウンのスペーシングからスタートです。
こうすることで、ガード陣は広いスペースを1on1しやすくなりま
す。ここから、ガードがパスを狙って目が合ったら、コーナーとポ
ストは同時にウイングとハイポストにフラッシュしてきます。
ウイングにエントリー出来たら、ハイポストの選手はスクリーン
をセットし、UCLAカットを狙います。ここで、スクリーンがうまく
いき、1がノーマークになってパスを受けてシュートにいけるプレ
ーがチャンス①です。
逆サイドの選手は、ディフェンスがヘルプによりにくくなるよう
にスクリーンなどをかけあってスペースを空けておきましょう。
⑯-2 オプショナルフェイズオフェンスの組み立て
1にパスが入らなければ、1はボールサイドコーナーに切れ
ます。ウイングの選手は次にハイポストを狙います。ハイポス
トにパスが入ったら、手渡しパスをもらうように5に向かって
走っていきます。その時、ディフェンスがファイトオーバーの
ポジションに入ろうと動いたらすかさず裏を取りましょう。こ
のプレーがチャンス②です。
ここにもパスが入らなければ、5は1on1を狙いつつ1にパス
を出します。1は、ディフェンスの位置に応じてゴールへバッ
クドアプレーを選んでもOKです。ウイングに上がった場合は、
5からパスを受けた後に5がピックにはいりましょう。
この際に、先ほど逆サイドに切れた4は、コーナーでスペー
スをとっている2に対してスクリーンをセットし、3もスタッ
ガードスクリーンをセットするなどすると、1と5の2on2が攻
めやすくなり、ピックに対して1がドライブを選んだ時にパス
のチャンスが増えることもあります。
⑯-3 オプショナルフェイズオフェンスの組み立て
次に、ウイングにパスが入らなかった場合のパターンです。
このように、狙ったプレーがだめだったら次はこれというのが
整理できていると、ジュニア期の選手達も迷わずオフェンスを
選んでいくことができます。
5のハイポストにパスを入れます。ウイングの4に入らない
という前提なので、ディフェンスがディナイをしてきてますか
ら、5にパスが入ったら自動的にバックドアカットを狙います
。それがハイポストエントリーのチャンス①です。
それにパスが入らなかったら4は切れて逆サイドのウイング
にスクリーンをセットします。その間、すかさず1は5から手
渡しパスを受けにいきます。ここで1にボールが渡って攻める
のがチャンス②です。
⑯-4 オプショナルフェイズオフェンスの組み立て
そのプレーでもチャンスにならなかったら、1はウイングに
開きます。5は1on1を狙いつつ、1にパスを戻したらピックに
いきます。これがチャンス③です。
オプショナルフェイズオフェンスの練習方法は、このように
チャンスの①・②・③というように、時系列順にチャンスを
整理し、まずはディフェンス無しでこのそれぞれのチャンスの
プレーを確認していきます。分かってきたらダミーディフェン
スをつけて、そのディフェンスがわざとそれぞれのチャンスを
演出します。それにも慣れてきたら、徐々にディフェンスがラ
ンダムでチャンスの状況を変えます。その中でオフェンスがデ
ィフェンスを見てそれぞれのチャンスを選んでプレーできるよ
うになれば、効果的なオフェンスを作り上げることができるの
です。
指導のまとめ
最後のチームオフェンスの組み立てでは、それぞれのフェイズ(場面)ごとに、オプション(
選択肢)からプレーを選ぶというオフェンスを紹介し、その練習方法もご紹介しました。
こういったオフェンスを練習することは、①がだめなら②というように、ディフェンスにそ
のチャンスが守られているのかどうかでプレーを判断していくことで、ディフェンスを見て選ぶ
習慣を身につけさせることができます。それと同時に、オフェンスのスペーシングやプレーの選
択のタイミング、どのディフェンスがプレーの選択基準に影響するのかという「見る目」を磨く
ことなど、バスケットボールというスポーツを学ぶ上で非常に有益な学習になるのです。
何より、こういったオフェンスのレベルアップの土台にあるのは、午前中にご紹介した認知・
判断のレベルアップです。日本が世界と戦う上で、山梨県が他県を上回るうえで、判断力も兼ね
備えたファンダメンタルの育成は重要なポイントになると思います。ぜひ、引き続き各カテゴリ
ーで認知と判断を磨く練習を取り入れて頂けたら嬉しいです。
それでは、今回ご参加くださった指導者の皆さん、山梨県ジュニアオールスターの選手の皆さ
ん、ありがとうございました!
バスケットボールの家庭教師
http://basketballtutor.com
主な出版物
成功とは、
なりうる最高の自分になるために
ベストを尽くしたと自覚し、
満足することによって得られる
心の平和である
Fly UP