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国内における森林関連のクレジット

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国内における森林関連のクレジット
システム認証事業本部
国内における森林関連のクレジット
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------温室効果ガス(GHG)の削減対策として森林が注目を浴びています。京都議定書の第一約束期間(1990-2012
年)では国土の 3 分の 2 を占める森林により、日本の目標である 1990 年比でGHG排出量マイナス 6%のうち、
3.8%分が削減されることとなっていますa。また、2009 年 3 月に初めて行われた「オフセット・クレジット(J-VER)
制度」の取引では間伐材を利用することにより発生したクレジットbが売買されました。
今回は最近注目されつつある国内における森林関連のクレジットについてご紹介いたします。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------J-VER制度は、2008 年 11 月に環境省がカーボン・オフセットの普及を図るため、国内のプロジェクトで削減・吸
収された温室効果ガスを自主的なカーボン・オフセットのクレジットとして用いることを認証する制度として創設し
ましたc。この制度は検証機関から認証を受けていることが特徴です。
2009 年 3 月に J-VER 制度における第 1 号取引が高知県と株式会社ルミネ(以下ルミネ)の間で行われました。
まず高知県が県内森林組合で集めた間伐材をチップ状にし、住友大阪セメント株式会社に提供。本来であれば
化石燃料の使用により排出されていたGHG排出量の削減分について自主的なカーボン・オフセットに用いられ
るクレジット(J-VER)として認証を受けました。県は発行されたクレジットの一部である 899 トンを 330 万円でルミ
ネに売却し、ルミネで
は社員の通勤等によ
り排出されたGHGを
オフセットするのに利
用しています。高知
県では売却利益を林
道の整備や林業の担
い手確保に利用する
定です。(図 1)d,e,f
図 1.高知県とルミネでの J-VER 制度における第 1 号取引
g
(出所:日経BP社ECO JAPAN/日経エコロジーレポー30.Apr.2009 )
京都議定書では、森林によるCO2 吸収を促進する手法として「新規植林(過去 50 年来森林がなかった土地に
植林)」、「再植林(90 年以来一度も森林でなかった土地に植林)」、「森林経営」という3つが示されていますh。
日本では土地の確保を考えると新たな森林の造成は難しく、「森林経営」によるCO2 の吸収活動に期待が寄せ
られていますf。「森林経営」は、植栽、下刈り、除・間伐といった森林整備や管理の作業を指します(図 2)。間伐
を一度行えば、10 年程度は手入れをしなくても良い状態に森林が保たれるため、整備されている森林の面積を
効率的に増やすことができます。このため間伐は植栽や下刈などに比べると推奨されているのです i 。
しかし実際には、国産材木の価格低下、林業の担い手の減少・高齢化などにより十分な手入れは行われていな
いのが現状です。3.8%の目標達成のためには、2007 年度から6年間にわたり、毎年 20 万haの追加的な間伐
等の森林整備を実施する必要がありますj。
植栽
下刈り
図 2.京都議定書で 「森林経営」と見なされる作業
除・間伐
h
(出所:林野庁 )
国内での森林によるCO2吸収を後押しするように、この春から新たに J-VER 制度の中で、積極的に促進支援
すべきプロジェクト種類を載せたである”ポジティブリスト”に森林吸収源のものが 3 つ追加されました。現在、森
林関連のプロジェクトは、すでに認定されているエネルギー分野の「No.0001 化石燃料から未利用林地残材へ
のボイラー燃料代替」と合わせて合計 4 つになります(表 1)。
表 1:J-VER における森林関係のプロジェクト (林野庁 k)
新しく森林吸収源のプロジェクトが追加されたということは、企業や団体におけるGHG削減のための信頼性の高
いプロジェクトの選択肢が増えたことになりますf。また、これらのプロジェクトが今後広まることにより、国内にお
ける林業や地方の活性化、そして森林の整備・保全が進むことが期待されますa。
農林水産省によるとこうした森林によるCO2 の吸収は気候変動対策として国民に広く認識されているとのことで
すl。J-VERにおる森林吸収源プロジェクトは、自主的な取組として、消費者に受け入れられやすい方法で自社の
GHG排出量をオフセットしたいときに有効だと思われます。
気候変動対策の有力な方法の一つとして、森林によるCO2 の吸収が広く認識されています。しかしクレジットを
生み出す森林吸収源プロジェクトが世界で広く利用されているとは言えません。例えば、カーボンクレジットを生
み出す温室効果削減プロジェクトスキームとして国連の下で広く運用されているCDMでは、いまだに 3 件の新規
植林・再植林プロジェクトしか登録されていませんm。国連の元ではなかなか活発にならない森林吸収源プロジェ
クトを国内のJ-VERの元で活性化することは、林業や地方の活性化、そして森林の整備・保全に大いにつ な
がると期待されますa。また、CDMにおける新規植林・再植林プロジェクトの審査を行う立場であるビューローベリ
タスも、国内での森林吸収源プロジェクトの発展に大いに寄与したいと考えております。
営業統括部 事業開発部 地球環境グループ 丸山奈緒子
参考文献
a
環境省(2009)森林による二酸化炭素吸収量をカーボン・オフセットに用いられるクレジットに(
b
他で実現したGHGの排出削減・吸収量のこと(環境省(2009)「オフセット・クレジット(J-VER)」パンフレット(
c
環境省(2008) オフセット・クレジット(J-VER)制度の創設について
d
全国新聞ネット(2009/3/16)CO2排出枠、初の取引 高知県、ルミネに売却
e
吉田 祐子(2009)㈱ルミネ カーボン・オフセット試行事業への参加について、OECC会報56号/17page(
f
西日本新聞(2009)高知県、間伐材燃料で温暖化防止 国内排出量取引の第1号に
g
花澤裕二(2009)森林関連で独自性出すJ-VER 国内産のオフセット用排出枠/日経BP社
h
林野庁、(2)京都議定書での森林吸収の考え方
I
j
k
l
m
)
林野庁、森林吸収源対策について
林野庁、京都議定書目標達成に向けて
気候変動対策認証センター(2009) オフセット・クレジット(J-VER)制度におけるポジティブリスト(
農林水産省(2004)地球温暖化対策における森林吸収源対策(
)
)
財団法人 国際緑化推進センター(2008) CDM 植林技術指針調査事業 平成 19 年度報告書(
)
)
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