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感染防御の最前線 ー粘膜免疫系ー 消化管、ひ尿生殖器、呼吸器、乳腺

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感染防御の最前線 ー粘膜免疫系ー 消化管、ひ尿生殖器、呼吸器、乳腺
動物科学特論161117
腸管免疫と腸内細菌
新藏 礼子
感染防御の最前線 ー粘膜免疫系ー
消化管、ひ尿生殖器、呼吸器、乳腺
全身免疫系と独立して粘膜免疫系がある。
粘膜面は、外界とたった一層の上皮細胞で隔てられている、
もっとも外敵が侵入しやすい場所である。(消化器系、呼吸器系、乳腺、泌尿生殖系)
常に局所的免疫はonの状態。
ただし、腸管免疫系では食べ物や常在細菌に対する反応は抑制されていて、
アレルギーや有害な免疫反応=炎症が起こらないようコントロールされている。
腸管粘膜リンパ組織特有のシステムとリンパ球循環
抗菌ペプチド
パイエル板の中で刺激を受けた
リンパ球は、全身循環に入った後、
M細胞
バクテリア
再び全身の粘膜に帰っていく。
(粘膜特異的homing)
腸上皮間
2量体IgA
リンパ球
B細胞
樹状細胞/マクロファージ
T細胞
上皮細胞
IgA
パイエル板
M細胞
B細胞領域
IgA産生
形質細胞
胚中心
IgA
IgM
B
B
T
HEV
B
T
活性化
ヘルパーT
輸出リンパ管
T細胞領域
胸管
血流
(血流から)
粘膜固有層
腸管上皮の機能(バリア、吸収、センシング)
腸内細菌
腸管腔
分泌因子
SIgA
腸上皮細胞
2
1
3
4
5
6
7
粘膜固有層
IgA二量体
pIgR
IgA産生細胞
(クラススイッチ+, 突然変異++)
腸管IgA二量体の働き
・侵入してきた細菌と結合して
分泌されるときに一緒に排除する。
・粘膜上皮の上にバリアを形成して
細菌の接触を防ぐ。
・補体の活性化など、炎症反応を
誘導しない。
腸管では経口免疫寛容もしくは積極的免疫応答の誘導が選択される。
(相反する免疫応答)
日常、ウルシを食べているアメリカ原住民の子供は、ウルシと接触しても
一般的に見られる接触過敏症は起こらない。----経口免疫寛容(oraltolerance)
経口免疫寛容
抗原
抗体産生
T細胞応答
食餌性抗原、常在細菌
粘膜IgA+,血清抗体はごく少
(局所の免疫応答はある)
粘膜のT細胞応答なし
抗原への再暴露 反応なし
積極的免疫応答
病原菌、ウイルス、毒素
(常在細菌が大量に体内に侵入)
粘膜IgA++,血清中に特異的抗体
粘膜と全身でT細胞応答あり
メモリー応答
もしT細胞が免疫寛容にならないと、炎症性細胞を刺激して炎症性腸疾患が起きる。
局所の樹状細胞が副刺激分子を出すか出さないか、でT細胞の反応性が選択される。
腸内細菌叢
叢(そう)=草むら、 フローラ=お花畑
腸内に存在する細菌は無秩序に住みついている
のではなく、それぞれのテリトリーを保ちながら
全体として集団を作っている!
多い人では2,000種類、100兆個の細菌. (ヒトの体を構成する細胞が約60兆個)
糞便の約半分が細菌あるいはその死骸
(約1.5 kg)
腸内細菌叢
•  最も身近に存在する宇宙!
分離培養可能な細菌は全体のたった20-30%
ヒトと細菌間、細菌と細菌間の相互作用もほとんど
明らかになっていない。
•  生涯の伴侶
一度成立して安定となった腸内細菌叢は、個人に
特有のパターンをとり、健康なら生涯にわたり
大きく変化しない。 ヒトの腸内細菌叢
4つの大きな
phylum(門)
1. Firmicutes
2. Bacteroidetes
3. Proteobacteria
4. Actinobacteria
培養できない腸内細菌叢を
解析する手段は?
1.  16S rRNA遺伝子解析
2.  メタゲノム解析
細菌由来rDNAの構造
23S rDNA
16S rDNA
5S rDNA
約120bp
約2,900bp
約1,500bp
500
0
1,500 bp
1,000
- 3’
5’V1 V2 V3
V4
保存領域
V5
V6
V7 V8
V9
可変領域
細菌の種類で遺伝子が違う。
私たちが食べ物から栄養を摂るのに
腸内細菌の助けが必要である。�
腸内細菌が作った
物を腸から吸収する。
善玉
beneficial
悪玉
日和見
opportunistic non-beneficial
健全な
腸内フローラ
Dysbiosis (バランスの悪い腸内フローラ)は
様々な病気と関連がある。
がん
炎症性腸疾患(IBD)
関節リウマチ
アレルギー
肥満
心血管疾患
糖尿病
自閉症
15�
善玉菌の代表�乳酸菌�
乳酸菌の仲間�
乳酸菌が陣地をひろげていると
病原菌は腸内にすみつくことが
できない。=感染防御�
代謝産物の乳酸や酢酸が
腸のぜん動を促し、便秘を
防ぐ。�
ビタミンを合成する。�
コレステロールも処理します!�
発がん性物質を分解する。�
ヌカミソ
新しいヌカに塩を加え野菜をつける。まず、大腸菌 や枯草菌が増殖する。
このままでは腐るが、まもなく乳酸菌類が増殖して
腐敗菌、雑菌を抑えつける。
乳酸発酵
人間は昔から乳酸菌を好んで
食べてきた。�
動物性乳酸菌により
作られた食品�
植物性乳酸菌により
作られた食品�
腸内細菌叢の成立
• ヒトは、生まれた瞬間から細菌の洗礼を受ける.
• 最初の洗礼が、母親の産道内細菌、空気中の
細菌、母親・看護婦さんの手指、ベッドのシーツ
などの附着菌
• これらが自分の好きなところに住みつき増殖し、
生涯を共にする.
• 腸内細菌叢は安定で、通過菌(口から入れただ
け)では定着できない。
ヒト腸内細菌叢の成立と維持
誕生
~離乳期
菌数の増加
多様性(種類)の増加
小児期
成人
死
菌数の安定化
コアとなる細菌叢の安定化
影響する因子
1.  母親からの伝搬
2. 衛生環境
3. 食事
4. 抗生剤 など
PhysiolRev2010;90:859-904.SekirovI,etal
動物は皆、腸内細菌の助けを借りて生きている。
(積極的に良い腸内細菌を口から取り入れている。)�
セルロースを分解する腸内細菌�
あかちゃんが
おかあさんの
便をなめる。�
ねずみの糞食
ビタミンなどの補給�
ユーカリの毒を
消す腸内細菌�
悪玉菌優勢な状態はいろいろな病気の原因になる。
腸内に住み着いた細菌の種類によって(
)が異なる。�
病気
大腸がん
炎症性腸疾患
アレルギー
花粉症
喘息
糖尿病
高脂血症
自己免疫
認知症
など
脂身ではなく
赤みの肉が
動脈硬化の原因。
そのわけは、、、
動脈硬化�
脂身ではなく
赤みの肉が
動脈硬化の原因。
そのわけは、、、
赤みの肉の成分
L-カルニチン�
腸内細菌が
TMAという物質を
産生する。�
吸収されたTMAが
肝臓でTMAOに代謝
される。�
動脈硬化�
無菌マウスに高脂肪食を与えても肥満にならない!
無菌マウス
Bäckhed F et al. PNAS 104:979,2007.
無菌マウスに腸内細菌叢を成立させると?
GF: 無菌マウス
(8週から10週齢)
CONV-R:産まれたとき
腸内細菌を移入
脂肪組織が42%増加、 皮下脂肪が47%増加、 酸素消費が35%増加
CONV-D:成長後、腸内細菌を
移入して2週間
餌の摂取量は
逆に低下傾向! 精巣上体周囲の脂肪織
Proc Natl Acad Sci USA 101:15718-15723,2004
日本の炎症性腸疾患患者数
(Inflammatory Bowel Disease)
潰瘍性大腸炎
重症
軽症・中等症
クローン病
縦走潰瘍 縦走潰瘍
19万名を越える!
厚生労働省難治性疾患(いわゆる難病)の中で
一番患者数が多い!
しかも、10-30歳台の若い患者が多い
IBD患者は欧米諸国に多い。
28�
IBD患者数は日本でも増大
現在、20万人以上
潰瘍性大腸炎
(人)
クローン病
89,945名
90,000
(人)
25,287名
25,000
80,000
20,000
70,000
60,000
15,000
50,000
40,000
10,000
30,000
20,000
5,000
10,000
0
’77
’81
’85
’89
’93
年度
’97
’01
’05
0
’77
’81
’85
’89
’93
’97
’01
’05
年度
厚生労働省情報統計部16・17年度報告、難病情報センター特定疾患医療受給者証交付件数
29�
ヨーロッパの子供とアフリカの子供の
腸内細菌叢は大きく違う。
アフリカの村の
痩せ型の子供の腸内細菌叢
IBD患者がいない。
ヨーロッパの
肥満型の子供の腸内細菌叢
30�
PNAS Fillipo et al.(2010)
病気と健常人の双子の腸内細菌叢解析
健常人
潰瘍性大腸炎
大腸クローン病
回腸クローン病
Artificial sweeteners induce glucose intolerance b
Jotham Suez,, Tal Korem,, David Zeevi,, Gili Zilberman-Schap
Adina Weinberger,, Yael Kuperman,, Alon Harmelin,, Ilana Ko
11週
15週
0
Nature
(2014) doi:10.1038/nature13793
人工甘味料or水だけ
抗生物質あるなし
糖負荷検査
血糖値
マウスの実験
Nature 514:7521, 2014
Artificial sweeteners induce glucose intolerance b
Jotham Suez,,腸内細菌が存在すると、
Tal Korem,, David Zeevi,, Gili Zilberman-Scha
ノンカロリー人工甘味料で耐糖能異常が起こる。
Adina Weinberger,, Yael Kuperman,, Alon Harmelin,, Ilana Ko
11週
15週
0
Nature (2014) doi:10.1038/nature13793
人工甘味料or水だけ
抗生物質あるなし
糖負荷検査
血糖値
マウスの実験
Nature 514:7521, 2014
Figure
4: Acute saccharin consumption impairs glycaemic control in
腸内細菌の違いが影響するが、人でも人工甘味料は有害である。
humans by inducing dysbiosis.
人工甘味料を常用すると
人工甘味料を常用すると
耐糖能異常が起こる危険が
Jotham Suez,, Tal Korem,, David Zeevi,, Gili Zilberman-Schapira,, Christoph A.半数の健常人が耐糖能異常を
Thaiss,, Ori Maza,, David Israeli,, Niv Zmora,, Shlomit Gilad,,
Adina Weinberger,,
Yael Kuperman,, Alon Harmelin,, Ilana Kolodkin-Gal,, Hagit Shapiro,, Zamir Halpern,, Eran Segal & & Eran Elinav
増大する。
示した。
Nature (2014) doi:10.1038/nature13793
From
Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota
人工甘味料
非常用者
人工甘味料
常用者
Nature 514:7521, 2014
腸内の乳酸菌などの善玉菌を増やすために私たちができることは?
��������������������������������������食生活の改善�
1.乳酸菌を含む食品を摂取する。
��(胃酸で多くの菌は死んでしまうが、死んだ菌は
���腸内の乳酸菌のえさになる。)
2.乳酸菌のえさになる食物繊維やオリゴ糖を含む食品を
��食べる。もともと腸内に居る乳酸菌を増やす。)
��
��例:大豆やたまねぎ、納豆、 ヨーグルト類�
私たちが意識しなくても、
腸管のIgA抗体が腸内細菌をコントロールしている。
IgA抗体を飲むことで腸内細菌を
コントロールして病気を治す。�
宿主と
腸内細菌の
共生関係� 善玉菌�
免疫担当細胞、分子
・T細胞
治療薬候補
・IgA抗体
・自然免疫系�
良好�
病気
病気�
病気
�
健
康
度
XX
XX
XX
慢性炎症
免疫過剰
刺激
XX
悪化�
悪玉菌�
体外(腸管内)�
体内(粘膜下)�
大腸がん
炎症性腸疾患
アレルギー
花粉症
喘息
高脂血症
自己免疫
認知症
生まれたばかりの赤ちゃんの腸は無菌状態である。
免疫も未熟で、IgA抗体もほとんどない。
動物は母親の便をなめたり、母親に接することで腸内細菌を
受け取る。と、同時にお乳を飲むことで母親のIgA抗体を
腸に受け入れ、腸管粘膜のバリアを作る。
�
腸管やお乳のIgA抗体�
初乳には栄養もIgAも豊富�
多種類の細菌に強く結合するIgA
細菌にあまり結合しないIgA
腸管腔
ムチン層
腸上皮
粘膜固有層
IgA産生細胞�
2つのタイプのIgAを作る。
健康なマウスの腸管
質の悪いIgAしか作れない。
腸炎のマウスの腸管
炎症性腸疾患治療用の経口投与用
モノクローナルIgA抗体医薬の開発
飲むだけで腸内環境を整え病気を治す、
身体に優しい抗体医薬を作ります。�
多種類の細菌に強く結合するIgA
腸炎マウスの大腸炎は
多種類の菌に強く結合する
スーパーIgA抗体の経口投与で回復した。
健康なマウスの大腸�
腸炎マウスの大腸�
G23S 13週齢 大腸
抗体を経口投与した
W27抗体投与後
腸炎マウスの大腸�
善玉菌のじゃまをせずに腸内細菌をコントロールしている。�
スーパーIgA抗体�
大腸菌
Bacteroidetes Staphylococcus Escherichia
vulgatus
coli
aureus
2.5
3
2.5
2
2
乳酸菌 ビフィズス菌
EnterococcusLactobacillusBifidobacterium
faecalis
casei�
bifidum�
2.5
2.5
2
2
2
1.5
2
1.5
1.5
1.5
1
0.5
0.5
0.5
5
50
0.05
0.5
5
50
0.5
0.5
0
0
0.05
1
1
1
0.05 0.5
5
0
50 0.05
0.5
5
0
50 0.05
0.5
結合力
OD 405 nm
IgA抗体濃度(µg/ml)
5
1.8
1.8
1.6
1.6
1.4
1.4
1.2
1.2
1
1
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
50 0.05
0
0.5
5
50 IgA抗体は善玉菌と悪玉菌を見極めて、
悪玉菌が増えすぎないようにコントロールする。
スーパーIgA抗体
A
W27$
善玉菌
B
C
悪玉菌
D
E
������������������健康であるために、
・食生活を改善して腸内環境を整える。
・からだに備わっている免疫力(IgA抗体など)を
�低下させない。
日々、からだの声、とくにおなかの声に
耳を傾けてみてください。�
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