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イ タリア ミラノIFOMがん研究所
自主研究報告書 2009/04/08 京都大学医学部2回生 白石 達也 今回、海外の研究者の方と多くのつながりをもっておられる武田先生の紹介で約三か月間、 海外で日本人一人で研究をするという経験をさせていただきました。 その詳細そこで学んだものについて文書化しこの研修のまとめとするとともに、 次回海外に研修する人にとってわずかでも助けとなればいいと思います。 1、研修先 The FIRC Institute of Molecular Oncology (IFOM) <http://www.ifom-ieo-campus.it/> ガン研究を目的とした研究所である。今回はその中でとくにDNA修復に関する研究を行ってお られる Dana Branzei さんのチームにお邪魔させていただきました。 2、滞在期間 2009/01/08~2009/03/30 3、指導教官 Dana Branzei 先生、武田俊一先生、茂木章先生 4. 研修内容 研修先の チームリーダー である Dana Branzei さんは、酵母を用いて DNA 損傷の修復時にお けるメカニズム、特に SUMO 化と呼ばれる分子機構に注目した研究を行っておられました。そ のメカニズムの研究をさらに酵母だけではなく動物細胞でも行おうと、武田研の DT40 を用い た実験系を立ち上げようとされておられました。Dana さんが注目されている遺伝子のノックア ウト細胞の作成、さらにDT40における染色体断裂アッセイをイタリアで成功させることが主 な目的でありました。 5、動機 研究者の生活に興味があった。そして何よりも海外に興味があった。 6、生活、また感じたこと 日本人一人で海外に行き、海外で生活(もちろん、助けてくれる人はたくさんいるが)すること は、普通ではない。この普通ではない状態から得られたこと感じられたことはたくさんあったと 思う。その得られたことが少しでも文章として表現でき、また自分の血肉になればいいと思う。 ○まずはじめに○ 我々日本人は、日本でとったビザに加えて、イタリアで滞在許可証(英訳:permit of stay 伊訳: permesso di soggiorno)をとらなければならない。 書類の記入、準備のほとんどは ifom の事務の方がやってくれるので、申請書類を送るための切 手(marca da bolo という)の購入(タバッキというところでできる)をして、中央郵便局まで 持っていく。 英語も拙いイタリア語もあまり通じないと思ったほうがいいので、紙に用件を書いていくのがよ いだろう。 また、中央郵便局の場所も最初だとわかりにくいのでインターネットで調べていったほうがよい。 ○日常生活○ 住居 研究所に付属の寮を使わせてもらえました。 テレビ、ベッド、クローゼット、シャワールーム付き。平日に毎日清掃してもらえるので清潔で 快適な環境でした。洗濯機はなかったのでトイレ横の小さなタブで手洗いをしていた。 下着はともかくズボンとシャツの洗濯が思った以上に大変で洗濯機の偉大さを改めて痛感した。 とくに洗ったあと部屋干しする前にしぼるのだが、これがズボンだとなかなかうまくいかない。 脱水機能をとりいれるように提案した人は歴史の教科書に名を連ねてもいいくらいだと思う。 食事 平日のお昼は研究所付属の食堂またはバーで食べられる。タダ。しかも美味しい。 なので、平日の朝夕と休日のみ自炊すれば事足りる。 寮に共同のキッチンがあり、冷蔵庫、冷凍庫、オーブン、共有の食器類があるので困ることはな い。 食材は近くの巨大なスーパー(食料品のみでなく電化製品、 日用品も売っている) で購入できた。 イタリアの食料品の物価は安かったので日本より暮らしやすい。水2L入り6本パックが€1く らい。食品の種類も大変豊富でスーパーにいくだけで楽しめる。贅沢をしなければ、一月€20 くらいの支出で十分食費は賄える。食事については書き出すとキリがないくらいです。 日曜日だとたまにスーパー(ほかの店も)空いていないので土曜の夜には買い物にいったほうが いい。 ワインとチーズのコーナーだけは絶対に立ち寄るべきである。 ワインは日本の3分の1かそれ以下の値段らしく€6∼10くらい出せば僕のような学生でも これは美味しいとわかるくらいのワインが手に入る。 チーズは珍味としてゴルゴンゾーラチーズがお勧めである。 ←水2L入り6本。ダンベルにも使えます。 服 服装についてはコーディネートをいちいち考えるだけの服を日本からもってくるのが面倒くさ かったので洗濯だけちゃんとして同じ服を着まわしました。 おしゃれで有名なイタリアの人たち(イタリア人に限らずヨーロッパはおしゃれな人が多いと思 いますが)ですが研究所を見る限り、そんなに頑張っていません。一週間をとおして見ていると 同じ服をよく着まわしている人や適当なTシャツ一枚で過ごしている人も少なくありません。 かっこいい靴を履いている人は多いです。 観光地のドゥオモ周辺にはおしゃれな人がいっぱいいます(あくまで僕の感覚ですが)。おしゃ れというか綺麗です。服装だけでなく姿勢、雰囲気がよかったと思います。 安全面 安全面について、研究所の周辺からスーパーくらいの距離ならそんなに問題ではないが、遠出を するとき夜に出かけるときは気を抜けないと思う。何度かふらつきましたが決して安全ではない と感じました。地下鉄のホームで雰囲気と目つきの悪いかなり怖い男性がこっちに向かって近寄 ってきたこともありましたし、特にミラノの中央駅などに行けばどこからともなく視線を感じる こともありました。日本に比べて圧倒的に雰囲気は悪いと思います。歩いているだけで緊張しま す。ただこの緊張感があるからか老若男女問わず引き締まった姿勢の方が多かった。 女性の一人歩きは絶対にお勧めできない。 観光 観光地や店(服飾店など)には恵まれているので出歩くことに慣れれば楽しめると思う。 研究所の近くから24番トラムに乗れば30分ほどでミラノの中心部につく。またそこから地下 鉄に乗ってミラノ中央駅に行けば、ESやECに乗ってローマ、ヴェネツィアはもちろん、パス ポートを携帯していればスイスやフランスにもいける。 ガイドブックによっては情報が遅れているが、地下鉄にしろES、ECにしろ、自動券売機があ り英語も使えるのでとても便利である。 中央駅からの電車の時刻については trenitalia のページ < http://www.trenitalia.com/cms/v/index.jsp?vgnextoid=ad1ce14114bc9110VgnVCM10000080a3e 90aRCRD> また、観光先での宿を探すなら <http://www.hostels.com/> などが便利である。 観光先についてはいちいち書くのも読むのもめんどうだと思うので割愛します。 ただ美術館、歴史的な建造物を見ることはとても刺激になるといえます。 つまらないものもいっぱいありますが。歌劇場でオペラが見れなかったのが少し心残りです。 ○研究室での生活○ とても雰囲気が明るい。さすがはイタリア、と思わせられる。 研究室 研究棟に4フロアあり、 各フロアにラボが二つ、培養室が二つ、というのが基本的な作りである。 ひとつのラボに大体2チーム(1チームのところもあったが)で、実験器具については共同で使 う。また、エッペンドルフチューブなどの消耗品は廊下の棚に十分な備蓄があり誰でも自由に使 える。(正しい使い方ではないがコンビチップで模型を作っている人もいた)実験に必要な器具 で困ったことはないです。実験器具の使いかたがわからないときも誰でも聞けば快く答えてくれ た。こちらの拙い英語も一生懸命にききとってくれようとしてくれる。わからないときはわかる 人を呼びに行ってくれました。 働く時間は平日9時∼19時でお昼休みを間に一時間くらいとります。そしてたまにコーヒー (自販機なのだがとても美味しい)を飲んで一休みする。 ただあくまで基本的な時間であり、夜11時くらいまで働く人、休日に来ている人も珍しくはな い。「必要なら決めたことならやる」と言っておられた。休みをばっちりとることももちろんあ る。「本来楽しいことを楽しくなくなるまでやることはあまりほめられない。休みはきちんとと りましょう」といったことをダナさんも言っておられた。 毎週水曜日、金曜日にミーティング、プログレスがあり、また月に何度か外部の有名な研究者を 招いての講演があります。もちろんすべて英語です。毎回とても刺激的です。 ひとつ困ったことがあるとするならば、その研究室では僕以外の人は酵母をつかった実験を主に 行っており哺乳類の細胞をつかっておらず、実験でなにかトラブルが起こった場合具体的なアド バイスをあまり求められない。 僕はインターネットを多用していた。関連した論文をネットで探し、そこから必要な情報を抜き 出す。プロトコルが手元になくても、やることがわかっていればたいていの情報はインターネッ トで手に入る。僕は間抜けにもプロトコルがはいったファイルを日本に忘れてしまい、随分論文 に助けられた。 Nature< http://www.nature.com/nature/index.html> Mollecular and Cellular Biology<http://mcb.asm.org/> Cell <http://www.cell.com/> EMBO < http://www.nature.com/emboj/index.html> 7、日本に帰ってから。 日本はメシが不味いと思いました。 ・・・・ではなくて、このイタリアでの生活で得たものを具体化し、これからの僕の生活に活か していかなければ本当にもったいないと思いました。 今の僕はまだ、ただイタリアでの生活を見て経験してきただけです。 ひとつの実験について(僕の場合は chromatid break)論文を読む、実験方法について理解を深 め自分なりの考察を加え、さらにジュネーブまで学びに行ったことはとてもいい経験ですが、な ぜそこまでできたのか、もっといいやり方はなかったのか、などのことや日常の中でたくさんの 魅力的な人たちと関わりながら学んできたこと、日本とは違う平和ではない環境の中で得た感性 などをさらに深めていきたいと思います。 またほかにもあるが、これらのことを平和な日本に帰ったからといって失っていてはいけない。 無為なものにしてはならない。そうならないようにするために日本でなにをしていくべきかを自 分なりに考え、実行していこうと思います。 武田先生、ダナさんをはじめ、お世話になったたくさんの方々に感謝いたします。