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第3 問題作成部会の見解
英語(リスニング) 第3 問題作成部会の見解 1 問題作成の方針と形式 大学入試センター試験(以下「センター試験」という。)の外国語「英語(リスニング)」は、高 等学校の基礎的学習の達成度を判定することを基本方針として、高等学校学習指導要領(以下「学 習指導要領」という。)に準拠し、コミュニケーションを重視する英語教育の成果を問うものとし た。本年度入試における基本方針は、学習指導要領が改訂されたことに伴い、「外国語を通じて、 言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図る」、 という外国語教育の目的に基づくものである。出題に当たっては、新学習指導要領の中の、「情報 や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を養う」という点に配 慮した。 第1問~第4問までの問題内容は、次のとおりである。 ⑴ 第1問 比較的平易な英語(語数約 30)を聞いて、必要な情報を正しく把握することができるか否か を見る(イラストを使用する問い、計算を伴う問いも含む)。 ⑵ 第2問 比較的平易な対話(語数約 30)を聞いて、場面、目的、言語の働きなどを理解し必要な情報 を得、相手の最後の発話に対する適切な受け答えを判断する力を測る。 ⑶ 第3問 ① 第3問A 対話(語数約 50)を聞いて、情報、場面、話し手の意向などを的確に把握できるか否かの 判断力を測る。 ② 第3問B 対話(語数約 150)を聞いて、視覚的情報(ちらし、ポスター、一覧表など)も交えながら、 発話者達の様々な見解や発話の意図を理解できるかどうかを見る。 ⑷ 第4問 ① 第4問A まとまりのあるモノローグ(語数約 200)を聞いて、要点や概要を把握して考え判断できる か否かを測る。 ② 第4問B あるテーマについて三人が議論している会話を聞き、様々な見方や考え方の共通点や相違点 を把握し、最終的な話し合いの主旨を判断できる思考力を試している。 2 各問題の出題意図と解答結果 追・再試験の問題作成方針、問題形式は本試験と同じであるが、難易度に関しては受験者が本試 験の出題形式と内容を知り得る状況にあることに鑑み、追・再試験の方を若干難しくするよう配慮 した。構成する四つの大問の出題意図及び解答結果は、次のとおりである。 ⑴ 第1問 この大問の出題意図は、比較的平易な英語を聞いて、内容を理解できるか否かを見るものであ る。イラストを用いた問1と問6は、視覚情報の助けもあるため、さほど難しくはなかったもの と思われる。また問4は計算を伴う内容で計算自体は平易なものであったが、対話の状況がやや ―271― 捉えづらかったために、難しく感じられたかもしれない。易から難への配列という意味では、順 当な配置であったと思われる。 ⑵ 第2問 この大問の出題意図は、比較的平易な対話を聞いて、場面、目的、言語の働きなどを理解し、 適切に反応することができるか否かを見ることにある。話される英語そのものは比較的平易なも のであるが、正答を導くためには、発話が行われている状況や二人の関係(夫婦、親子、友人、 同僚など)を類推する力が求められる。対話は全てA・B二者間のA-B-Aの短い形式をとっ ており、それぞれの発話も長いものではない。しかしながら、状況を瞬時に把握して適切な発話 を探す、というこの設問では、実際の英語でのコミュニケーションに求められる資質が試されて いると言える。 ⑶ 第3問 ① 第3問A 第3問Aの出題意図は、比較的平易な対話を聞いて、その場面や話者の意図を理解できるか どうかを問うものである。状況設定は、問 14(友人の送別会の話題)、問 15(マグカップを得 るためにシールを集めている友人との会話)、問 16(衣類の整理をめぐる家族の会話)と比較 的身近なものだったので、受験者にとっては取り組みやすいものであったと思われる。 ② 第3問B 第3問Bの出題意図は、視覚情報を見ながら比較的長い対話を聞き、その場面や話者の意図 を理解する能力を問うものである。「対話の場面」が明確に表示されており、状況設定は「子 ども連れの夫婦が、動物園でイベント表を見ながら行動予定を決める」という内容であった。 四人の登場人物・多種のイベント・開始時刻・所要時間などの情報が次々と出てくるので、落 ち着いて取り組まなければ戸惑うことになったかもしれない。 ⑷ 第4問 ① 第4問A 第4問Aの出題意図は、対話以外の少し長いまとまりのある話を聞いて、要点や概要をつか むことができるか否かを見ることである。内容は奨学金を得ての留学が決まった学生の心の動 きを語ったものであった。 ② 第4問B 「学習指導要領」の改訂に伴い、討論形式の問題をリスニングの問題として初めて導入した ものである。三人の生徒が、3週間の理想の旅行について自らの希望を語り合うという内容で あり、それぞれの発話者の語る内容を正確に理解し、三人の意見の共通点や相違点を把握する ことが求められた。 3 出題に対する反響・意見等についての見解 「英語(リスニング)」の試験に対して高等学校教科担当教員並びに教育研究団体から意見・評価 をいただいた。いずれも好意的な受け止め方をしていただいたことに感謝するとともに、部会とし て今後とも努力を重ねていく所存である。どちらからも同様の意見・評価をいただいているので、 以下では高等学校教科担当教員からいただいた意見・評価の要点を挙げ、当分科会の見解を述べて おきたい。 高等学校教科担当教員の評価、意見・要望・提案等 ⑴ 評価の総括 ① 範囲 ―272― 英語(リスニング) 高等学校学習指導要領及び教科用図書に基づいており、高等学校段階における「聞く」の領 域を中心とした学習の成果を問うものとして、おおむね適切であった。 ② 内容 学校での会話、買い物や旅行など、生徒の身近な暮らしや、社会での暮らしに関わる場面が 多く、高等学校学習指導要領に示されている「言語の使用場面」の観点からも、十分配慮され ていた。使用された表現に関しては、“Oh. ” “Well. ”などに加えて、“No way. ” “Not quite. ” “Hang on!”など、日常の英語コミュニケーションにおいてよく耳にする様々な表現が会話の 中に組み込まれており工夫されていた。会話の流れについては、やりとりの中に発話者の個性 が感じられるようなものもあり、受験者にとっては親しみやすかったと思われる。 第3問Bは、今年度大きな変更が施された。視覚情報(動物園のイベント表)と、言語情報 (聞き取った内容)とを合わせて解答する問題で、図の空欄を埋めるだけでなく、会話の内容 を問う問題が加わった。生徒に親しみのある身近な暮らしの場面での会話であった。 第4問にも大きな変更があった。以前のBの問題形式がAとなり、今年度のBは、3人の生 徒の話し合いを聞いて解答する新たな形式の問題となった。対話や討論などを聞いて情報や考 えを捉える力の重要性が述べられている高等学校学習指導要領の趣旨を反映した良問であっ た。 ③ 分量 スクリプトの語数については、本試験とほぼ同じで、各設問の趣旨・目的に即したおおむね 適切な分量であった。 センター試験のリスニングでは、第2問を除き、質問文が問題用紙に印刷されている。その ため、選択肢の語数と合わせ、その分量はリスニングテストとしての妥当性を考える上で一つ の視点になる。 10 語以上の質問文は昨年度と同じ3問であった。聞き取りのポイントが把握しやすいよう 配慮がなされている。選択肢の平均語数を大問ごとに見ると、イラストや数値が中心の第1問 を除き、新形式の第4問B(3. 9 語)が最も短く、最も長かったのは、第4問A(7. 3 語)で あった。選択肢の語数が 10 語以上のものはなく、読解の負担をかけすぎないようにする工夫 が認められる。 ④ 表現 発話速度は、実際のコミュニケーションで話される速度に近く、高等学校におけるリスニン グ指導の実態を考慮した適切な速度であった。音声は明瞭で聞き取りやすかった。解答時間に ついても、質問に応じて適切な時間が与えられていた。 ⑵ 意見・要望・提案等 ① 今回の試験は、いずれの問題も適切な分量であったと考えられるが、試験時間の制約上これ 以上増えることのないように今後も配慮していただきたい。また、リスニングテストにおいて 読解の負担をかけ過ぎない工夫を続けていただきたい。 ② 第2問については、短い中で即座に状況をつかまなくてはならないので、引き続き対話の流 れが自然で、かつ受験者の実体験に即した内容であるよう配慮していただきたい。第3問B、 第4問については、文章量の多い英文を聞くことになるので、文の構造・語彙・パラグラフ構 成に配慮し、引き続き質問が主要な内容に関するものであるようにしていただきたい。また、 同一大問内で、難易度の違う問題をバランス良く配していただきたい。 ③ 今後とも、日常使われる自然な表現や、受験者が将来経験するであろうコミュニケーション の場面を取り入れていただきたい。その際、高等学校の授業で扱う表現・場面からかけ離れる ―273― ことのないように配慮していただきたい。 ④ 言語の使用場面、言語の働きに配慮した、より自然な音声となるようお願いしたい。 当分科会では、いただいた上記の御意見等は、妥当かつ適切なものであると考える。①~④のい ずれに対しても、その趣旨に沿って努力を重ねていく所存である。 4 まとめと今後の課題 「学習指導要領」の改訂に伴い、今年度からはコミュニケーションを一層重視した設問を心掛け た。新しい出題形式として導入した3B及び4Bについては、基本路線を踏襲しつつ、テーマの設 定や内容について一層の吟味を重ね、更に良い問題を作題していくよう努めたい。 ―274―