...

第 9 章 生命維持技術 - JAXA Repository / AIREX

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

第 9 章 生命維持技術 - JAXA Repository / AIREX
84
宇宙航空研究開発機構特別資料
第9章
1.
JAXA-SP-12-015
生命維持技術
序論
/制御、微粒子・微生物管理、騒音管理、有
害ガス管理等の設計手法に焦点を当て、仕様
我が国初の有人宇宙長期滞在対応モジュ
の設定根拠に関する説明を与えると共に、シ
ールで あ る「 き ぼう 」の 、典 型的 な 有 人 宇 宙
ステムとしてそれらをどのようにして実現
技術である生命維持技術について総括的説
しているかについて述べる。また、キャビン
明を行 う( 第 1 図 の船 内 実 験 室と 船 内 保 管 室
内空気循環に代表されるような開発段階に
が生 命 維 持 環 境 を有 す る )。 ま ず 、 生 命 維 持
おける設計変更への対応の仕方、有害ガス管
技術の 全 体 像 と「 きぼ う 」が 対応 し て い る 範
理や騒音管理に代表される開発当初は設計
囲の関 係 を 整 理 し、国 際協 力 の中 で ど の よ う
上破綻をきたしていた問題をどのように解
に所掌 範 囲 が 決 めら れ た か に つ い て 述 べ る 。
決していったかについて解説し、我が国にお
次 に 、温 湿 度 制 御 、大 気 成 分 と圧 力 の 管 理
ける生命維持技術の 蓄 積 状 況 につ い て 示 す。
第1図
2.
ISS(左図 ) と 「きぼう」(右図)
生 命維 持 技 術 と 「き ぼ う 」 所 掌 範 囲
が有していない機能、そして、破線四角の機
能については、軌道上で国際宇宙ステーショ
第 2 図に 、生 命維 持 技 術 の 全体 像 と「 き ぼ
ン(ISS)に結合されるまでは「きぼう」側
う」が 対 応 し て い る 機 能 範 囲 の 関 係 を 示 す 。
で機能を持ち、その後は同機能を停止するも
図中、太 実 線 の 四角 は「 き ぼ う」が 有 し て い
のを表している。
る生命 維 持 機 能 、細 実 線 の 四 角 は 「 き ぼ う 」
当 初 、「 き ぼ う 」 に は 全 て の 生 命 維 持 機 能
This document is provided by JAXA
国際宇宙ステーション日本実験モジュール「きぼう」で獲得した有人宇宙技術
85
を付与 す る こ と が検 討 さ れ て いた が 、ISS 本
整の過程で現在の機能範囲に限定すること
体側に よ る 集 中 制 御 ・ 管 理 が 好 ま し く 、「 き
になった。上記の破線四角の機能付与と停止
ぼう」の 機能 は 実験 モ ジ ュ ー ルと し て の も の
はその調整過程で生じたものである。
に集中 す べ き で ある と い う 観 点か ら 、国 際 調
第2図
3.
生 命 維 持技術機能範囲
生 命維 持 系 の 技 術仕 様 と 設 計 根 拠
( 1) キャビ ン 空 気 温 度制 御
過酷な宇宙での外部温度環境に対し、キャ
「 きぼ う 」の 生命維 持 系 に 対 する 代 表 的 な
ビン空気温度の効率的かつ安定な制御を実
仕様と そ の 設 定 根拠 を 第 1 表 に示 す 。長 期 滞
現する ため 、 受動熱 制御 系 による 保温 効 果、
在型で あ る こ と から 、基本 的 に地 上 と 同 等 の
並びに、能動熱制御系による最終排熱という
環境を 与 え る も のと な っ て お り、従 来の 軌 道
熱的連携作動を採った。
上 設備(米 国 の スカ イ ラ ブ 、ロシ ア の ミ ー ル)
( 2) キャビ ン 空 気 湿 度制 御
に比し 、軌道 上 で格 段 に 快 適 な活 動 環 境 を 搭
湿度制御は受動的制御とし、所与のキャビ
乗員に 与 え る 。特 徴的 な も の とし て 、我 が 国
ン空気温度に対する除湿能力が過度になら
の宇宙 開 発 で は 初め て の 、有 害ガ ス 濃 度 、低
ぬよう 、熱 交 換器の 冷却 水 温度を 設定 し た。
速空気 循 環 、 騒 音 に 関 す る 規 定 が 挙 げ ら れ 、
また、微小重力下での凝縮水回収は水分離機
長期宇宙滞在に必要な仕様値が明確化され
による吸引方式で実現した。
ている 。
( 3) 有害ガ ス 濃 度 制 御
これらの要求へのシステム対応を以下に
説明す る 。
有害ガス管理がされた材料を使用する。機
器とサブシステムレベルに有害ガス規定を
This document is provided by JAXA
86
宇宙航空研究開発機構特別資料
課し、要 す れ ば 脱ガ ス 処 理 を 行う 。最 終 的 に
は打上前にシステムレベルで有害ガスを測
JAXA-SP-12-015
(5) 船内空 気 循 環 風 速制 御
機器や部分モジュールの各種基礎試験に
定、規 定 を 満 た すこ と を 確 認 した 。
加え、フライトモジュールで最終確認として
( 4) 大気 圧 制御
の風速計測を実施。
機 器レ ベ ル だ け でな く 、モ ジ ュー ル レ ベ ル
で最終検査としての圧力調整試験を実施し
て作動 確 認 を し た。
( 6) 騒音制 御
防振・防音材等による機器及びサブシステ
ムでの減音化や、システム消音器等による最
終騒音対策を採った。
第1表
「 き ぼ う」 生命維持系の主要仕様
注記 1:Spacecraft Maximum Allowable Concentration の略。
一 般に 日 本の 産 業衛 生 法 よ り 厳し い 。
注記 2:Colony Forming Unit の 略 、 微 生物 の多さの単位。
4.
重 要課 題 と そ の 解決
ISS 本体側の開発が長期化すると共に、各種
設計変 更が 行 われ 、「きぼ う」は その 影 響を
「 きぼ う 」は 、我 が国 初 の 有 人宇 宙 施 設 で
強く受けることになった。本項では、ISS 側
あり、当 初か ら 種々 の 開 発 上 の困 難 を 伴 う 重
設計変 更へ の 対応を 含め た 重要課 題に 関 し、
要課題 が 識 別 さ れた 。か つ 、国 際的 に 決 め ら
有人宇宙技術特有の代表的な幾つかの事項
れた当初の打上げ期日に間に合わせること
について述べる。
が必須 で あ っ た こと に よ り 、早 い 段 階か ら 各
種の基 礎 試 験 を 行い 、その 成 果を 設 計 に 取 り
込み つ つ 開 発 を 行 っ て い た 。 し か し な が ら 、
4.1 船 内実 験 室 の 空調能 力 問 題
船内実験室キャビン空気の温調試験(第 3
This document is provided by JAXA
国際宇宙ステーション日本実験モジュール「きぼう」で獲得した有人宇宙技術
87
図)にお い て 、設 定し た キ ャ ビン 空 気 温 度 に
能力を低下させる、②重量軽減のため、空気
到達するまでの時間が予期した時間より遥
調 和 装 置 ( THC) の 冷 却 能 力 に は 、 キ ャ ビ
かに長 い と い う 問題 が 生 じ た ( 第 4 図 )。
ン空気熱容量に比し大きな余裕が与えられ
ていないことから、空調時のキャビン空気温
度の時間変化が極端に小さくなる、の二点が
複合したものであった。
ま た 、 問 題 の 背 景 要 因 と し て 、 a ) THC
の開発当時には、宇宙用部品として認定され
た CPU は 8 ビットのものしかなく、制御パ
ラメ-タ値の選定の仕方によっては、温度制
御ロジックの差分化における有効数字を十
分にとることが難しかった。b)システムの
温調試験に先立ち最大排熱能力の確認を行
う THC 単体試験では、オープンループの供
給空気に対する THC 出口での返送空気温度
の変化のみに注目したものであったため、冷
第3図
温 調 試 験の 空 気 循 環 系と 空 調 装 置
却すべき船内実験室内キャビン空気の熱容
量の影響が反映されず、THC 単体試験では
問題が顕在化しなかった、の二点が挙げられ
直 接 の 原 因 は 、 ① 空 気 調 和 装 置 ( THC)
る。
の温度 制 御(PID 制 御 )ロ ジ ック に 、温 度 差
最終的には、原因を踏まえての制御パラメ
分量の「 切 り 落 とし 」に よ る 風量 調 整 弁 角 度
ータの吟味・変更を行うことで問題を解決し
設定の 不 適 切 性 があ り 、こ れ が THC の 温 調
た。
第4図
キ ャ ビ ン空 気温調試験結果の一例
This document is provided by JAXA
88
宇宙航空研究開発機構特別資料
4.2 騒 音問 題
JAXA-SP-12-015
機器(第 6 図)が搭載されているが、循環量
船内 実 験 室 と 船内 保 管 室 には NC-50 と い
を増やす(即ち、騒音が増大)ことにつなが
う厳し い 騒 音 要 求が 課 さ れ て いる が 、開 発 初
る性能や機器の小型化( 質量とサイズ)に関
期にお け る 騒 音 予測 で は 、 例 えば 500Hz 付
する相反した要求の中で、全ての要求を満た
近で 10dB 以 上 の逸 脱 を 示 し てお り 、実 に 要
すための設計及び管理が必要となり、以下の
求され る エ ネ ル ギの 約 8 倍( 騒 音エ ネ ル ギ は
対策を 講じ た (概し て列 挙 の順に 効果 大 )。
3dB 毎 に 倍 加 ) を 示 し 破 綻 し て い た ( 第 5
その結果、第 7 図 のように騒音要求を達成し
図 )。 船内 実 験室 に は 騒 音 源 と な る 数 多 く の
た。
第5図
船 内 実 験室 内騒音予測解析
(1) シ ス テ ム レ ベ ル の 詳 細 熱 解 析 を 実 施
し余剰冷却用機器を減らす(騒音源の
低 減: 第 6 図の ①)
( 2) シ ス テ ム エ ア ダ ク ト へ の 膨 張 型 サ イ
レ ンサ 設 置 (音 を反 射 音 で 消 す)
(3) 減 音パ ネ ルの 追 加( 2 種 類 の 空気 の 振
動系を持つ通気孔を設け、逆位相によ
り音波を打消す.:②等)
( 4) 防音パネルの追加( ダンパ構造による
音響エネルギの低減:空調・熱ラック)
( 5) ダンパの追加(騒音発生源からの音響
エネルギの遮断:③のマウント部)
(6) 断 熱 材 兼 防 音 材 の コ ー テ ィ ン グ の 使
用(音の閉じ込め:④)
This document is provided by JAXA
国際宇宙ステーション日本実験モジュール「きぼう」で獲得した有人宇宙技術
第6図
船 内 実 験室搭載機器の一例
第7図
船 内 実 験室 の最終騒音状況
89
This document is provided by JAXA
90
宇宙航空研究開発機構特別資料
4.3 循 環風 速 問 題
JAXA-SP-12-015
対する試験検証を全て実施するとコス
「きぼう」のキャビン空間には、時速
0.5km 程 の 非 常 に ゆ っ く り と し た 循 環 空 気
流れが 求 め ら れ てい る ( 第 1 表 )。開発当初
ト及び時間が膨大になる。
⇒(1) に準じる。
(3) 微 小 重 力 下 で 船 内 の 凹 凸 空 間 に 対 し 、
識 別 さ れ た 主 要 課 題 ( 以 下 の ( 1) ~ ( 4))
隈なく低速流れを実現する手法の確立
に 対し 、下 記 開 発手 法 を 採 る こと に よ り 、風
が必要である。
速規定を完全に満たす快適で安全な有人環
⇒吹出口(ディフューザ)の性能評価
境を達 成 し た ( 第 12 図 ~ 第 13 図)。
基礎試験(第 8 図)、ECLSS チャンバ
(1) 船 内 実 験 室 と 船 内 保 管 室 を 結 合 し た
(船内実験室自然対流抑制構造を有
軌道上形態での地上試験実施は構体の
する部分モデル)でのキャビン風速分
強 度面 か ら 困 難 であ る 。
布評価基礎試験(第 9 図、第 10 図)、
⇒ 信頼 性 の高 い 解析 手 法 を 確 立し 、こ
実機船内実験室の風速分布最終確認
れ を用 い た解 析 検証 を 採 用 す る。
試験を段階的に実施し、解析と試験手
(2) 軌 道 上 各 種 運 用 状 態 で の 空 気 循 環 に
第8図
法を併行して確立する。
デ ィ フ ュー ザ性能評価基礎試験
This document is provided by JAXA
国際宇宙ステーション日本実験モジュール「きぼう」で獲得した有人宇宙技術
91
(4) 自 然 対 流 の 影 響 を 除 去 し た 地 上 循 環
風 速試 験 の 実 現 が困 難 で あ る 。
⇒事前詳細解析で自然対流を排除す
る 試験 条 件 と 手 法( 稼働 機 器 の種 類 と
運用状態を含む試験形態の吟味と内
第9図
壁 への 断 熱 材 設 置等 )を 検 討 し、こ れ
キャビン風速分布評価基礎試験
を 試験 に 反 映 ( 第 11 図 )。
(ECLSS チャンバ)
0.053
0.050
0.049
0.045
0.057
0.033
0.037
0.036
0.041 0.041 0.042
0.045
0.038
0.054
0.473
0.084
0.038 0.036
0.033 0.042
0.043
0.108
数値は風速[m/s]
0.398
0.080
0.052
0.044
0.064
0.071
0.087
0.051
0.037
0.072
0.040
0.072
0.037
0.101
0.065
0.061 0.111 0.100
0.036
0.041
0.113
0.061
0.098
0.093 0.098
0.082
0.235
0.193
0.048
0.055 0.048 0.059
0.051 0.056 0.080
0.085
0.072 0.088
0.039 0.096
0.093
0.123 0.076
0.048
0.113
0.135
0.100
0.053
0.044
0.083
0.071
0.087 0.080 0.059
0.077
0.046
0.070
0.081
0.073
0.048
0.028
0.045
単 位:m/s
第 10 図
第 11 図
キ ャ ビン 風速分布評価基礎試験
フ ラ イト 品 試 験 に おけ る自然対流の影響解析結果
This document is provided by JAXA
92
宇宙航空研究開発機構特別資料
第 12 図
JAXA-SP-12-015
実 機 軌道 上 風 速分布解析結果の一例
第 13 図
実 機 軌道 上風速分布予測結果
This document is provided by JAXA
国際宇宙ステーション日本実験モジュール「きぼう」で獲得した有人宇宙技術
4.4 有 害ガ ス 問 題
93
軌道上で「きぼう」のハッチを最初に開
キャビン空間の有害ガスを抑制すること
く時( 地上で最後にハッチを閉め 60 日以内)
は有人 宇 宙 特 有 の開 発 事 項 で ある 。対象 と な
のΣT<3 が要求であるが、ΣT の開発当初の
る有害 ガ ス は SMAC( Spacecraft Maximum
解析予測値は 100 を超え、大きな問題とな
Allowable Concentration) で種 類 と 許 容 濃
った。 その た め、以 下の 開 発方針 を採 っ た。
度が定 義 さ れ て おり 、 そ の 数 は 200 種 を 超
その結果、有害ガスの影響が船内実験室より
える、総 相 対 濃 度規 定 値 Σ T は 次 式 で 定 義 さ
大きい船内保管室(容積が小さいため)を例
れてい る 。
にとると、第 14 図のように打上げに問題の
∑ T = ∑ (ガス種 i の濃度 ガス種 i の許容濃度)
ないレベルまでΣT 値を低減できた(Σ T≒
i
第 14 図
0.45)。
船 内 実験 室 の 有害ガス濃度予測曲線
( 1) 不 明 気 体 種 の 明 確 化 に よ る T 値 低 減
を実施し、打上げ時の「有害ガス発生
(不明気体に対する許容濃度は小さい
が枯れた」状態を解析予測する。
ため、明確化による結果として許容濃
( 5) 実 機 の 打 上 げ コ ン フ ィ ギ ュ レ ー シ ョ
度 が増 加 )
ンでの有害ガス試験を実施し、上記(1)
( 2) 有 害 ガ ス 発 生 試 験 条 件 と 実 機 温 度 環
~ ( 4) の 仕 上 げ と し て の 確 認 を 行 う 。
境 との 整 合 化(高 温 に 曝さ れ ない 場 合、
発 生量 の 少 ない 室温 で の 測 定 実施 )
5.
軌 道上 運 用
( 3) ベ ーキ ン グ( 高 温曝 露 に よ る 脱ガ ス 処
理 )の 実 施
( 4) 有 害 ガ ス 発 生 量 の 経 年 変 化 把 握 試 験
2008 年 5 月の船内実験室の打上げに際し
実施さ れた 軌 道上チ ェッ ク アウト にお い て、
This document is provided by JAXA
94
宇宙航空研究開発機構特別資料
環境制 御 系 と し て、IMV フ ァン 、AAA フ ァ
ン、煙セ ン サ の 動作 が 地 上 解 析・試 験 結 果 と
一致し 、 正 常 で あ る こ と を 確 認 し た 。 更 に 、
JAXA-SP-12-015
( 1) 軌道上の ISS のキャビン空気は、低熱
負荷状態が続いている。
(2) そのため、THC 内では空気からの排熱
空 気 調 和 装 置 ( THC) に 関 し て は 、 キ ャ ビ
を抑制するように、CHX 側への風量配
ン空気 設 定 温 度 に対 す る THC 温 調 機能( 第
分を小さく(即ち、バイパス側への風
15 図)、キ ャ ビ ンフ ァ ン 回 転 数 、フィ ル タ 差
量が大きく)した状態とするよう、風
圧が正 常 で あ る こと も 確 認 さ れて い る。特 に、
量 調 整 弁 ( TCV) 開 度 の 制 御 が 自 動 的
第 15 図が 示 す よう に 、 4.1 項 で述 べ た 温 調
に行われる。
問題に 対 す る 処 置が 、軌道 上 でも 有 効 に 機 能
( 3) こ の 時 、 CHX 側 へ の 風 量 は 小 さ い も
のの、長時間経つと多くの水滴が CHX
してい る こ と が 分か る 。
尚、環 境制 御 系と し て の 不 具合 事 象 と し て、
内に発生する。
CHX 空 気出 口 側水 分 セ ン サ -及 び 水 分 離 機
(4) 従 っ て 、 こ の 状 態 か ら 、 CHX 側 風 量
(WS) で の 水 飛散 検 出 に よ る THC 自 動 停
が大きくなると水飛散が生じる。
止が発 生 し て い る。
という状況が把握されている。
対応としては、頻繁に水飛散検知を行う
一方、 THC 単体の地上試験においても、
CHX 側 水分 セ ンサ - は 、 水 滴量 が 微 小 で あ
水飛散現象が生じたため、TCV の開閉速度
ることからインヒビットをかけて運用し、
を落とすソフトウェア的処理により、地上で
WS 側 水 分 セ ン サ - は そ の ま ま の 状 態 で 運
の問題は解決された経緯がある。
用を続 行 し て い る 。そ の た め 、WS 側 水 分 セ
これらのことから、微少重力場の影響が地上
ンサ- の 水 飛 散 検知 に よ る THC の遮断は今
で想定した以上に大きいことが原因である
も発生 し て い る。同 事 象が 起 こる 詳 細 な 原 因
可能性が高いと考えられる。
は現時 点 で 不 明 であ る が 、
第 15 図
6.
軌 道 上に お けるキャビン空気の温調
ま とめ
維持技術を獲得した。その主なものを以下に
纏める 。
我が国初の長期滞在型有人宇宙構造物で
1) 生 命 維 持 技 術 の 全 体 像 を 把 握 す る と と
ある「 き ぼ う 」の 開 発 に お い て、種 々 の 生 命
もに、実験モジュールとして必要な所
This document is provided by JAXA
国際宇宙ステーション日本実験モジュール「きぼう」で獲得した有人宇宙技術
95
掌 範囲 を 把 握 ・ 決定 し た 。
2) 生 命 維 持 に 必 要 な 技 術 仕 様 内 容 と そ の
背 景を 確 認 ・ 獲 得し た 。
3) 有 害 ガ ス 濃 度 を 制 御 す る た め の 設 計 ・
管 理手 法 を 構 築 ・確 立 し た 。
4) 微 小 風 速 循 環 に 関 す る 設 計 と 試 験 手 法
を 確立 し た 。
5) 騒 音 抑 制 に 関 す る 設 計 と 管 理 手 法 を 確
立 した 。
6) 設 計 及 び 地 上 試 験 で は 、 重 力 の 影 響 を
従来の想定以上に精度よく取り込んだ
解析・評価を実施するとともに、適切
な影響評価試験を実施することが重要
で ある こ と が 分 かっ た 。
This document is provided by JAXA
Fly UP