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「柏原延行」のMarket View #32 お金を使わない理由

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「柏原延行」のMarket View #32 お金を使わない理由
情報提供資料
投資のヒントをお届けします。
コラム
「柏原延行」の Market View
2016年11月7日
#32 お金を使わない理由(企業編)
皆さま こんにちは。
アセットマネジメントOneで調査グループ長を務めます柏原延行です。
前回のコラム「#31 お金を使う理由」では、わが国経済に関して、公的需要は切れ目のない財政出動によ
り、景気を下支えする可能性が高いことをご説明した上で、脆弱さが残る民需のうち、「家計(個人)」につい
て考えてみました。
結論としては、雇用者全体が受け取る給与の総額が(既に)増加し始めていることが重要であり、失業率
の低下を受け、時給の改善傾向が鮮明になれば、個人消費の増加が期待できるとの考え方をご説明しました。
それでは、本日のコラムでは、民需のもうひとつの柱である企業が「お金を使う理由」について、皆さまと一緒に
考えたいと思います。
極めて単純化すれば、経済成長を測るひとつの基準であるGDPとは、「政府、企業、個人などが使うお金の
総額」です。企業が使うお金を考えた場合、新聞等において、皆さまも「企業の設備投資が増加or減少した」
との報道をしばしば見かけられると思います。しかし、企業が使うお金は、設備投資以外にもあるのに、なぜ設
備投資が経済成長を語る上での重要な事項として、報道の対象になるのでしょうか?
例えば、企業は自社が売る製品などを生産するためにも、お金を使います。本コラム「#29 生産性が大
事!!」の銀職人の例でいうと、「(売るための)銀のアクセサリー(1,200円)」を作成するためには、「原材料
である銀地金(1,000円)」の購入が必要です。しかし、この使ったお金はGDPにカウントされません。なぜなら、
銀職人の生み出した価値(付加価値)は200円(1,200-1,000)であり、(ダブルカウントを避け)GDPは付
加価値ベースで計算されるからです。
(極めてではなく)単純化すれば、GDPとは「政府、企業、個人などが、ダブルカウントを除いて使うお金の
総額」です(支出面からのGDP)。そして、原材料購入費等のダブりの部分は「中間消費」と呼ばれます
(これに対して、個人消費は最終消費となります)。
※巻末の投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項を必ずお読みください。
商 号 等 / アセットマネジメントOne株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第324号
加入協会/ 一般社団法人投資信託協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
1
したがって、企業が使うお金の中では、原材料購入費や人件費などではなく、企業が最終消費者である
「(何年も利用できる)生産設備などへの投資(設備投資)」が経済成長を考える上で、重要となるわけ
です。
わが国において、GDPのうち個人が消費として使うお金は約6割、企業が設備投資として使うお金は約1割
の大きさを占めます。この数字だけを見ると、個人消費は設備投資の約6倍の大きさであり、設備投資の増加
や減少はあまり問題にならないようにも思われます。
しかし、お金を使う額がある程度安定している個人消費(生活費はあまり大きくは増やしたり、減らしたりでき
ませんね)と比較して、投資したり、しなかったりすることに加え、1つの投資案件の額が大きい場合もあり、設
備投資に使う金額は振れ幅が大きいです。したがって、全体に占める割合は小さいものの、振れ幅が大きいた
め、経済成長に与える影響が大きくなります。このため、設備投資は経済成長を予測する上で、重要な要素
となるわけです。
それでは、我が国における今後の設備投資の動向をどのように考えるべきでしょうか。
日銀は、企業の設備投資計画について継続的にアンケート調査を実施しています。直近調査の9月分では、
全規模・全産業ベースで前年度比+4.6%とプラスですが、アベノミクスが始まった2013年度以降では、最も弱
い数字となっており、民需の中の設備投資が脆弱な状況にあることが窺えます(図表1)。
図表1:設備投資計画(日銀短観)
2005年3月~2016年9月:四半期
(前年度比、%)
10
2005∼2015年度の
8
平均
6
2013年度
4
2014年度
2
0
2015年度
-2
2016年度
-4
3月
6月
9月
12月
実績
調査
調査
調査
調査
見込み
実績
出所:NEEDS-FinancialQUESTのデータを基にアセットマネジメントOneが作成。
※データは、ソフトウェアを含む設備投資額(除く土地投資額)。
※横軸に初回調査(3月調査)から実績が確定する翌年6月調査回を取り、毎年度の設備投資計画について、
調査回毎の前年度比の足取り(修正パターン)をグラフで示したもの。
※上記図表は、将来における設備投資計画、実績見込み、実績の推移を示唆、保証するものではありません。
※巻末の投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項を必ずお読みください。
2
それでは、このように企業が設備投資にお金を(あまり)使わない理由、すなわち民需の中の設備投資が
脆弱な状況をどのように解せばいいのでしょうか。
まず、金融緩和により全体としては(マクロ的には)、企業は低い金利でお金を調達できるはずです。
加えて、企業の業績が回復傾向にあることもあり、企業の保有する現金は増加を続けています(図表2)。
図表2:企業の保有する現金
(兆円)
2000年~2015年:年次
250
240
230
220
210
200
190
180
170
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年)
出所:日本銀行のデータを基にアセットマネジメントOneが作成。
すなわち、全体的に考えた場合、企業はお金を使おうとすれば、使うことができる状況です。
それでは、企業にとって、設備投資は必要ないのでしょうか。
日銀によるアンケート結果によれば、企業の設備に対する余剰感(大企業・製造業)は、2009年3月調
査を頂点とて、急速に縮小し、不足感が生じる時期が視野に入っているように思えます(図表3)。
図表3:生産・営業用設備判断DI(大企業・製造業)
(%ポイント)
50
2000年3月~2016年9月:四半期
40
余剰
30
20
10
0
不足
-10
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年)
出所:日本銀行のデータを基にアセットマネジメントOneが作成。
※上記図表は、将来における企業の保有する現金および生産・営業用設備判断DI(大企業・製造業)の推移を示唆、保証するものではありません。
※巻末の投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項を必ずお読みください。
3
このように、企業はお金を使うことができ、かつ使う理由があるにも関わらず、設備投資の増加は勢いを欠く状
況です。
過去最高益(2016年9月中間連結決算)を更新したある企業の決算説明会資料を見ると、自社工場
のIoT化が足元の収益性改善に早くも効果を発揮している旨の記載がありました(IoT(Internet of
Things:モノのインターネット)とは、インターネットに様々なモノを接続することです)。
たしかに、足元の設備投資は脆弱さが残るものの、今後はIoTのような技術革新の積極的な有効利用
を行う企業が増え、競争力強化に繋がる設備投資が活性化することを期待したいと考えます。
また、将来の話として、わが国では少子高齢化により他の先進国以上に労働力が減少したが、それ故、「民
間主導の効率化・省力化投資が進み、それがわが国の企業の国際競争力の強化に繋がった」、「省力化投
資により雇用機会が減少したが、労働力が減少したわが国では他の先進国比大きな問題とならなかった」とい
つかご説明できる日が来ることに期待して、今回のコラムは筆を置かせていただきます。
アセットマネジメントOneでは、業界No1の質と量を実現する積極的な情報発信に努めたいと考えます。
是非、弊社の新しいホームページ等をご覧いただければと考えます。
なお、コラムの過去分に関しては、以下をご参照ください。
・2016年10月以降
http://www.am-one.co.jp/report/marketreport/3/
・上記以前
http://www.mizuho-am.co.jp/report/column-list/ctg/041
(2016年11月4日9:00執筆)
※巻末の投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項を必ずお読みください。
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投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項
【投資信託に係るリスクと費用】
● 投資信託に係るリスクについて
投資信託は、株式、債券および不動産投資信託証券(リート)などの値動きのある有価証券等(外貨建資産には為替リ
スクもあります。)に投資をしますので、市場環境、組入有価証券の発行者に係る信用状況等の変化により基準価額は
変動します。このため、購入金額について元本保証および利回り保証のいずれもありません。
● 投資信託に係る費用について
[ご投資いただくお客さまには以下の費用をご負担いただきます。]
■お客さまが直接的に負担する費用
購入時手数料 :上限4.104%(税込)
信託財産留保額:上限0.5%
公社債投信およびグリーン公社債投信の換金時手数料:取得年月日により、1万口につき上限108円(税込)
その他の投資信託の換金時手数料:ありません
■お客さまが信託財産で間接的に負担する費用
運用管理費用(信託報酬):上限 年率2.6824%(税込)
※ 上記は基本的な料率の状況を示したものであり、成功報酬制を採用するファンドについては、成功報酬額の加算
によってご負担いただく費用が上記の上限を超過する場合があります。成功報酬額は基準価額の水準等により変
動するため、あらかじめ上限の額等を示すことができません。
■その他費用・手数料
上記以外に保有期間等に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)等でご確認ください。
※上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。
費用の料率につきましては、アセットマネジメントOne株式会社が運用するすべての投資信託のうち、徴収するそれぞれ
の費用における最高の料率を記載しております。
※税法が改正された場合等には、税込手数料等が変更となることがあります。
【ご注意事項】
●当資料は、アセットマネジメントOne株式会社が作成したものです。
●当資料は、情報提供を目的とするものであり、投資家に対する投資勧誘を目的とするものではありません。
●当資料は、アセットマネジメントOne株式会社が信頼できると判断したデータにより作成しておりますが、その内容の完
全性、正確性について、同社が保証するものではありません。また掲載データは過去の実績であり、将来の運用成果を保
証するものではありません。
●当資料における内容は作成時点のものであり、今後予告なく変更される場合があります。
●投資信託は、
1.預金等や保険契約ではありません。また、預金保険機構および保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。加
えて、証券会社を通して購入していない場合には投資者保護基金の対象ではありません。
2.購入金額について元本保証および利回り保証のいずれもありません。
3.投資した資産の価値が減少して購入金額を下回る場合がありますが、これによる損失は購入者が負担することとなり
ます。
【当資料で使用している指数について】
ございません。
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