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小児リウマチ性疾患の診察法

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小児リウマチ性疾患の診察法
小児感染免疫 第
回日本小児感染症学会学術集会のモーニングセミナー“
−
−
”
小児リウマチ性疾患の診察法
森 雅 亮*
要旨 小児期のリウマチ性疾患には,成人で経験されるリウマチ性疾患すべてがみら
れるが,その病態の表現型は成人と大きく異なり,決して小児リウマチ性疾患は成人
疾患の「小型化」でない.小児リウマチ性疾患の治療戦略を考えるうえで基本となる
のは,早期診断と早期の炎症徹底抑制によって標的臓器の破壊を未然に阻止するとい
う考え方である.本稿では,小児リウマチ性疾患の診察法について,小児リウマチ疾
患の代表的な
疾患である
,
について具体的に述べた。リウマチ性疾患患児
が健常児と変わりなく「普通の生活」を送れるためにはどのようにすべきかを常に念
頭に置いて診療に携わっていくことが肝要である.
は じ め に
小児期にみられるリウマチ性疾患は,若年性特
ての診察と考え方について述べる.
Ⅰ.小児リウマチ性疾患の診察と考え方
発性関節炎(
:
)
,全
小児期のリウマチ性疾患には,成人で経験され
身性エリテマトーデス(
るリウマチ性疾患すべてが認められる.しかし,
:)
,若年性皮膚筋炎,混合性結合組織
その病態の表現型は成人と大きく異なり,決して
病,抗リン脂質抗体症候群,血管炎症候群(高安
小児リウマチ性疾患は成人疾患の「小型化」でな
病,結節性多発動脈炎,川崎病など)
,シェーグレ
いことは忘れてはならない.小児リウマチ性疾患
ン症候群,ベーチェット病,全身性強皮症などが
病期が小児期の分だけ長期に
の特徴としては,
あり,いずれの疾患も全身性慢性炎症性疾患の特
成人
わたり,その時期が成長期にあたること,
徴を有し,長期予後を見据えた全身性アプローチ
経過が
例と比較して多臓器に障害が及ぶこと,
を必要とし,早期かつ正確な診断と治療法の構築
薬剤の効
進行性で臓器障害の程度が重いこと,
が求められている.小児リウマチ性疾患の治療戦
果,副作用に小児特有のものがあること,などが
略を考えるうえで基本となるのは,早期診断と早
あげられる.小児のこのような特徴を鑑みると,
期の炎症徹底抑制によって標的臓器の破壊を未然
早期に診断して積極的な消炎療法を行う
に阻止するという考え方である.
(早期介入)が予後を大きく左右する
本稿では,まず総論的に小児リウマチ性疾患の
といっても過言ではない.この結果,リウマチ性
特徴と考え方について触れ,小児リウマチ性疾患
疾患患児が健常児と変わりなく通学,進学,就職
のなかで代表的な
疾患である
,
につい
を迎えられ,成人してからは結婚,挙児までに至
*
横浜市立大学医学部小児科
〔
〒 − 横浜市金沢区福浦
−〕
成長期の小児
炎症+組織破壊+線維化
害を起こす.症状としては,まず弛張熱が出て,
発熱時にピンク∼赤色の発疹(リウマトイド疹)
臓器機能不全
が出現する.熱型(弛張熱)は極めて特徴的で,
それに発疹を伴えば本症の可能性は大きい.関節
炎は同時または遅れて発症し,膝,肘などの大関
早期診断・早期消炎治療
普通の生活へ
(通学,進学,就職,結婚,挙児など)
図 小児リウマチ性疾患の治療の考え方
節に炎症を起こす.弛張熱が
∼
週間続き炎症
が高度に進行すると,心膜炎を起こして心 液が
溜まったり,肝臓や脾臓が腫大してくる.検査所
見としての特徴は,全身型には疾患特異的な検査
項目はないため,感染症,白血病などの悪性腫瘍,
他の発熱性疾患(不明熱)を除外する.また,発
症と同時に身長が伸びなくなり,骨粗鬆症が進行
る「普通の生活」を送れるようになれば,それが
する.検査としては,赤沈値,血清アミロイド
,
小児リウマチ医の本望である(図).
値によって,炎症の程度を調べる.白血球数
Ⅱ.若年性特発性関節炎(
)
.病態と分類
は,滑膜炎による関節の炎症を長期間繰り
が著明に増加し,
万以上しばしば
∼
万になり,
特に好中球が
∼%を占める.リウマトイド因
子(),抗核抗体()は一般に陰性であり,
他の自己抗体も出現しない.赤沈値も
も高
返す結果,関節軟骨および骨破壊が進行し関節拘
が病態形成の核となってい
値である.
−/
縮や障害を引き起こす原因不明の慢性の炎症性疾
ることは判明している).
病状が進行すると,血清フェリチン値の上昇,
患である).以前は若年性関節リウマチ(
:
)と称されていたが,米
尿中β−ミクログロブリン値の上昇をみる.全身
国と欧州の間でみられた疾患名の混乱や本疾患の
型
は経過中に約
%の例が突然死することが報
本質的な病態観察から最近では
の名称が定着し
告されてきたが),これはマクロファージ活性化
てきている.これまで臨床型が全身症状の有無,
)
への病態転換による.
−/
−
症候群()
炎症関節数および発症
週間以内の病型により全
の単独サイトカイン過剰状態である全身型病態
身型,多関節型(罹患関節が
関節以上)
,少関
β,
α,
−
など他の炎症
から,
γ,
−
節型(
関節以下)の
型に分類されてきたが
性サイトカインのさらなる過剰状態が加わること
(表
),最近では客観的な指標に富む,病型に応
により
という新しい病態が形成され,全身
じた標準的な治療法の確立を目的とした分類が求
細胞の
と
の進行,血管内皮細胞
められるようになってきた).
の活性化と破綻に伴う凝固線溶系の破綻,播種性
本疾患は病態の異なる「全身型」(弛張熱,発
血管内凝固症候群の進行,多臓器不全への進展な
疹,関節症状などの全身症状を主徴とする)
,
「関
どが相まって急激な死がもたらされる.
節型」
(関節滑膜の炎症による関節の腫脹・破壊・
治療であるが,本疾患は非ステロイド性抗炎症
変形を引き起こし機能不全に陥る)の
群に大別
薬(
)のみでは
%近くが寛解に至るこ
されるため,ここではこの
病型について順次解
とがなく,これまでステロイド薬の効果に依存す
説する
)
.いずれにせよ,関節所見の確実な診察
が基本であることに相違はない(表
).
.
「全身型」
る以外なかった.シクロスポリン(
),メトト
レキサート()などを併用することが多いが,
それぞれ単独では治療効果はなく,本質的にはス
全身型は,弛張熱,関節炎,発疹,心膜炎,肝
テロイド薬しか奏効する薬剤はない.ステロイド
脾腫などの全身症状が前面にでるが,長期経過の
薬の種類,量,投与方法(内服,静脈注射,パル
なかで多数の箇所に関節炎が進行し,関節機能障
ス療法,リポ化ステロイドの使用など)
,内服の分
小児感染免疫 表
の診断・分類基準(
*基準)
.全身型関節炎
週間以上続く弛張熱を伴い,次の項目の一つ以上の症候を伴う関節炎.
)一過性の紅斑
)全身のリンパ節腫脹
)肝腫大または脾腫大
)漿膜炎
.少関節型
発症
カ月以内に
∼
カ所の関節に限局する関節炎.
つの型を区別する.
(
)持続型:全経過を通して
関節以下の関節炎.
(
)進展型:発症
カ月以降に
関節以上に関節炎がみられる.
.多関節炎(リウマトイド因子陰性)
発症
カ月以内に
カ所以上に関節炎が及ぶ型で,リウマトイド因子が陰性.
.多関節炎(リウマトイド因子陽性)
発症
カ月以内に
カ所以上に関節炎が及ぶ型で,リウマトイド因子が
カ月以上の
間隔で測定して
回以上陽性を示す型.
.乾癬関連関節炎
以下のいずれか.
)乾癬を伴った関節炎.
)少なくとも次の
項目以上を伴う例.
(
)指関節炎.
(
)爪の変形.
(
),
親等以内に乾癬の例がいること.
.付着部炎関連関節炎
以下のいずれか.
)関節炎と付着部炎
)関節炎または付着部炎で,少なくとも以下の
項目以上を伴う例.
(
)仙腸関節の圧痛または炎症性の脊椎の疼痛.
(
)−
陽性.
(
),
親等以内に
−
関連疾患患者がいる例.
(
)しばしば眼痛,発赤,羞明を伴う前部ぶどう膜炎.
(
)
歳以上で関節炎を発症した男児.
.ほか
週間以上持続する小児期の原因不明の関節炎.
*
:国際リウマチ学会議
表
関節の診察法
割法,減量方法など,こまめに状況に対応し,効
・上肢:×=
下肢:×=
計:
数関節の診察
顎:
頸椎:∼
・視診:関節周囲の「くぼみ」の存在
・触診:「熱感」は手掌で包み込むように.
「疼痛」
「腫脹」
「可動域制限」は屈曲・伸
展で確認.
(股:屈曲・伸展+回内・回外・外旋で,頸
椎:周囲の筋肉の緊張度から)
果を得つつ副作用に留意する.副作用を恐れてス
テロイド薬の中途半端な使用はしないことが重要
であり,減量方法は極めて慎重に行う.最近,抗
レセプター抗体が本疾患に著効することが明
−
らかになり(現在,多施設治験終了),今後ステロ
イド薬に依存しない治療法の確立が期待される).
サイトカイ
また,前述した
に対しては,
活性化マク
ン除去を目的とした血漿交換療法,
ロファージの鎮静化を図るリポ化ステロイド・パ
−αによるミトコンドリア障害
ルス療法,
を阻止する
の点滴静注,が選択される)が,
われわれの経験では
の静注(
/
/日)と
治 療 は こ れ ま で, ア ス ピ リ ン を 基 本 と し た
リポ化ステロイド・パルス療法がまず試みるべき
を第一選択とし,難治例に対して疾患修
治療法だと思われる.
飾性薬剤(
)やステロイド剤にスイッチ
)
.
「関節型」
していく,いわゆる「ピラミッド方式」が支持さ
症状としては,肘,手首,膝,足首などの大関
れ多く使用されてきた).しかし,成長期にある
節が腫脹し,熱感をもち圧痛を有する.疼痛のた
患児にとってこの方式による関節予後は決して良
め,患児は関節を動かさなくなる.また,手指や
好なものでなく,持続する関節炎とそれに引き続
足指の小関節にも関節炎を起こすことがある.微
く関節拘縮の進行を阻止することが不可能であっ
熱が続く,食欲が落ちる,などの全身症状を伴う
た.当科では単剤大量使用による副作用の出現を
ことが多い.年齢は
歳以降の女児に多いが生
抑え,かつ炎症の早期抑制により関節予後を改善
後半年頃に発症する例もあり,年齢が小さいから
する目的で,約
年前より慢性関節炎の治療法
関節炎はない,とはいえない.検査値としては,
として
を中心とし,速効性薬剤と遅効性薬
炎症の度合いを調べるため,赤沈値,血清アミロ
剤を組み合わせた多剤少量併用療法を実施してい
が滑膜炎
イド
,,ヒアルロン酸,−
療法は早期に十分量の薬剤
る).この通称
や軟骨破壊の指標になる.
線や
を用いて,関
を用い効果を認めたら直ちに漸減にはいる方法で
節滑膜炎の様子を知り,骨破壊を検査する.なお
ある.この方法で約
%は
∼
週間で関節炎は
早期であれば関節破壊は乏しいので,
線では異
消失する.しかしその後
年間は内服を継続する
常は検出できない.関節型は
と
の出現
必要がある.
はすでに欧米では本症の基本
の有無により,以下の
亜型に分類される.
/週(おもに
∼
薬であり,わが国でも
∼
陽性型
/週)が用いられている).肝障害を起こす
血清検査で
が陽性であり,
は陽性のこ
例がわずかにあるが,他の副作用は経験していな
とも陰性のこともある.
歳以降の女児に多く,
/週以上を
い.わが国では
は一般的に
多関節に炎症を認めることが多いが,罹患関節が
使用することは少ない.
少数の場合もある.微熱,食欲低下などを伴う.
.治 療 戦 略
関節炎症は激しく,長期経過のなかで関節破壊・
全身型でも関節型でも,薬物治療が基本である.
拘縮を残し,関節予後は概ね不良である.初診時
使用する薬剤には
,
,ステロイ
炎症マーカーは著しく高値で,
線上病初期には
ド薬などがあるが,各薬剤には副作用が存在して
異常所見はみられないが軟骨・骨の破壊は
∼
年
おり,それが合併症として捉えられることも少な
に集積
で進行する.遺伝的背景として
−
くない.肝要なことは,薬剤を漫然と使用するの
性が認められ,成人の関節リウマチと極めて近似
ではなく,確固とした治療戦略をもって導入およ
した病態であり,関節予後の改善には早期診断・
び維持治療を行っていくことである.また,関節
早期治療が必要である.
型でも全身型でも,関節炎が活動期にあるときに
陽性型
は炎症にかかわらない部位の関節・筋の可動域を
血清検査で
が陽性.炎症関節は
カ所以
確保するリハビリテーションを,また関節炎の鎮
下の少数のことが多い.女児で抗核抗体陽性例は,
静が図れたら可能な限り早期に動かせなかった関
ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎)を
∼%に併発す
節のリハビリテーションを開始して関節の拘縮を
る.関節炎症は中等∼軽度で,初診時の炎症マー
防止することが必要である.また,生物学的製剤
カーは比較的低値である.眼科的予後にも留意す
を使用した次世代の治療戦略として,以下の治療
る必要がある.
が有望視されている.
血清因子陰性型
血清検査で
も
も陰性.炎症関節数は
少ないことが多い.
レセプター・モノクロー
)全身型∼抗
−
ナル抗体(トシリズマブ)による治療
の生物学的機能は,
−
レセプターと複
−
合体を形成し別な受容体である
に結合する
)
小児感染免疫 また約半数に他のリウマチ性疾患(シェーグレン
ことで発揮される ことから,この複合体形成を
症候群,抗リン脂質抗体症候群など)のオーバー
機能を遮断できるはずであ
阻止することで
−
の
ラップを認めるなど重症例が多い).小児
レセプター・モノクローナ
る.わが国で抗
−
長期予後を予測することは困難であるが,考えら
ル抗体(トシリズマブ)が開発され,これを
−
れる危険因子として,男児であること,腎組織所
)
機能遮断薬として用い,著しい効果を得た .
見が
分類でⅢ型以上であること,中枢神経
また,いくつかの例でステロイド薬の服薬中止が
異常を有すること,他のリウマチ性疾患を合併し
可能となった.本症におけるトシリズマブは近々
ていることなどがあげられる.さらに疾患活動性
に承認される見通しであり,今後全身型
の第
の激しい時期が成長期にあたることや,成人に比
一選択薬になるものと期待されている.
べ罹病期間が長いなどの小児例に独特な特徴もあ
)関 節 型
り,本症におけるこれらの特徴をすべて把握した
)
α
すでに市販されたインフリキシマブ(抗
モノクローナル抗体),現在小児の治験も進行して
)
α)
,すでに治験が終
いるエタネルセプト (
うえで治療法を選択していく必要がある.
.小児
の臨床症状と検査所見の特徴)
)臨 床 症 状
了したトシリズマブなどが,小児についても導入
初発症状として,発熱,全身倦怠感,皮膚の紅
される予定である.小児期の慢性関節炎は,前述
斑,関節痛,筋痛,出血傾向,腎炎による浮腫,
のように第一段階では
を,第二段階で けいれんなどが報告されているが,いずれも特異
少量パルス療法および
や
との
的な症状ではないので,診断までに時間を要する
併用療法を用いることにより,少なくとも
∼
ことがある.また経験的には,初発時の症状は再
%の患児が寛解に入る時代になった.しかし依
発時にも繰り返す傾向にある.これらの症状から
然として
∼%の患児は第三段階の治療を必要
診断はまず
を疑うことから始まり,以下の検
としており,これらの不応例が生物学的製剤の適
査所見により診断を確定する.
)検 査 所 見
応となるであろう.
インフリキシマブは製剤の約
%がマウス蛋白
血液検査により「病名診断」の確定を行うと同
に由来し,このため小児ではアナフィラキシーが
時に,
「活動性診断」を行う.血算では,白血球数
憂慮される.成人でのアナフィラキシーはまれで
以下),血小板数減少(∼
万/
減少(
/μ
あるとされており,今後の検討が必要である.エ
μ
)
,貧血傾向(ヘモグロビン
∼
/
)を示
タネルセプト(週
回の自己注射)は,
少
/
)しているが,
す.赤沈値は亢進(>
量パルス療法不応の関節型症例について現在治験
は陰性を呈する.もし
陽性であれば感
が進行中であるが,少なくとも
%以上の例で著
染症の併発を考慮する.血清補体価の低下〔<
効をみている.現時点では最も有望な薬剤である.
/
,<
/
,総補体価()
<
以上より,関節型の若年性特発性関節炎は全体の
/
〕は一義的にループス腎炎の進行を表し,ルー
約
%は治療可能な疾患になったといえる.従来
プス腎炎を高頻度に伴うため著しい低補体血症は
の治療に無効な例には,上記の生物学的製剤が欧
の高い活動性を表すと考えてよい.高γ−グ
米では一般に用いられるようになったが,かなり
ロブリン血症(蛋白分画γ−グロブリン>%,
高価である点が課題といえる.
/
)も持続する炎症反応の
>
∼
Ⅲ.全身性エリテマトーデス()
)
.小児期
の特徴とその多様性
結果として認められる.尿検査では,低補体血症
が始まり
∼
カ月経過すると尿蛋白が出現するの
で初診時に尿検査で蛋白陽性であれば,病状はす
小児期発症
は,初発時∼
年の経過でルー
でに
∼
カ月前から始まっていたと考える必要が
プス腎炎が
%の症例でみられ,組織所見も発症
ある.発病初期には血尿を伴うこともある.自己
時からすでに
分類Ⅲ∼Ⅴ型の重症例が多く,
抗体検査では,染色型が均質型/斑紋型の混合核型
表
小児
の診断基準(
年厚生省診断
の手引き)
. 部(蝶形)紅斑
.円板状紅斑
.光線過敏症
.口腔内潰瘍
.関節炎
.漿膜炎(胸膜炎・心膜炎)
.腎障害(
/日以上の蛋白尿,細胞性円柱)
.神経障害
.血液学的異常
(溶血性貧血,白血球<
/μ
,リンパ球<
/μ
,
)
血小板<
万/μ
.免疫学的異常
(抗
抗体,抗
抗体,抗リン脂質抗体)
.抗核抗体陽性
.低補体血症
*∼
は
年
の改定基準,
は小児基準の
追加項目.
*診断は,観察期間に経時的にあるいは同時に,
項
目のうちいずれか
項目以上を満たす際になされる.
.小児
の診断の手引き(表
)
小児
の診断には,厚生省研究班の診断の手
の
基
引きが用いられる).これは成人
準()に,低補体血症を加えて
項目とし
たもので,
基準と同様に
項目以上をいずれ
かの時期に満たせば小児
である可能性が高
い.この診断基準と
基準を用いて実際の症
例を検討してみると,「小児
診断の手引き」
は
基準に比べて,特に初期の診断感度に優
れている(初診時の診断感度
%
%,特異
)
.なお,
年に
診断基
度
%
%)
準の小改訂が行われ),免疫異常の項において「
細胞陽性」は削除され,
「梅毒反応擬陽性」は「抗
リン脂質抗体陽性」へ変更された.
小児
は後述するように初診時の活動性が高
く,病態も極めて複雑である.したがって治療方
法を選択するにあたり,単に診断基準を満たした
だけの診断では不十分である.諸報告をもとに治
療選択を目指した「診断のための三段階プロセス」
をもつ抗核抗体の陽性を認め,抗
抗体高
を表
に掲げる).
値が診断に有用である.一方,成人で
特異性
まず,表
に示したような手順で小児
診
が高いとされる抗
抗体の陽性率は,小児では 断の手引きに即した「病名診断」と「活動性診断」
%と低い.
を行う(第
段階)
.第
段階として,全身諸臓
ループス腎炎は,腎生検所見で
分類Ⅲ型,
器(特に中枢神経系,腎,循環器,呼吸器など)
Ⅳ型であるメサンギウム領域のびまん性増殖性変
について,障害とその程度を把握するために個別
化を呈する例が約半数を占める.組織学的検索
臓器の検索を行う.第
段階ではオーバーラップ
(免疫学的蛍光法を含む)は,
の診断的価値
するリウマチ性疾患(特にシェーグレン症候群,
も高く,治療方針決定の重要因子となる.中枢神
抗リン脂質抗体症候群)の精査を行い,その存在
経系に対しては,脳波,頭部
または
,脳
と程度を明確にする.
血流シンチグラム()検査が重要である.
.治 療 戦 略
脳波所見では高振幅徐波をみるのが特徴的であり,
的確に治療を施行していくためには,以下のポ
では高頻度に大脳基底核に石灰化を認める.
イントを考慮したうえで症例に適した治療法を選
により前頭葉∼側頭葉にかけて脳血流低下
択する必要がある.
をしばしば認め,無症候性の血流異常の存在が示
病勢を早期に鎮静させて臓器障害の進行を阻
唆される.呼吸器に対しては,呼吸機能検査にて
止し,質の高い日常生活を長期にわたり患者に提
%
の低下を認め,胸部
線や心エコーにて
供することが治療目標であり,そのためには早期
それぞれ胸水,心 液貯留を認めることがある.
の積極的な治療で炎症を抑制する必要がある).
眼科的にはぶどう膜炎や眼底に綿花状白斑を認め
治療を「寛解導入療法」と「寛解維持療法
ることがあり,また治療薬として用いるステロイ
(後療法)
」に分けて考える.
ド薬による白内障や眼圧上昇などの精査が必要で
血液・血清学的な検査所見,ループス腎炎の
ある.
病理組織像,中枢神経・末梢神経障害や他の臓器
障害の有無などから軽症例,中等症例,重症例,
小児感染免疫 表
診断の手順
:
の診断
年厚生省小児全身性エリテマトーデス診断の手引き(表
)を満たす.
:全身の臓器障害の把握
中枢神経系;頭部
または
,脳波,脳血流シンチグラフィーなど
腎;尿所見,腎生検
呼吸器;胸部
,呼吸機能検査
循環器;心電図,心臓超音波検査
その他;負荷サーモグラフィー,眼科併診など
:オーバーラップするリウマチ性疾患の精査
各種自己抗体の検索
抗
−
抗体,抗
−
抗体,抗
抗体,抗
抗体,
抗カルジオリピン抗体,ループスアンチコアグラントなど
必要に応じて,口唇生検,唾液腺造影,シルマーテストなど
*
∼
の順で診断,全身臓器の検索,併発膠原病の精査を行う.
超重症例に分類し,初期治療の方法を選択する.
それぞれについて,経口プレドニゾロン,メチル
プレドニゾロン・パルス()療法),シク
)
ロホスファミド・パルス(
)療法
,その
併用などの選択肢があるが,重症性の判断や
療法導入に当たっては専門医への相談が欠かせな
い.病態によっては,血漿交換療法,二重濾過血
液浄化療法などのオプションもある.
ステロイド薬は炎症を抑制はするが,通常使
用量では免疫抑制作用はごくわずかで,
を治
癒に導く薬剤ではない.本質的にステロイド薬は
生理的物質であり,過剰量により全例に肥満,骨
粗鬆症,成長障害,尿糖陽性などの副作用がでる
ことが少なくない.
お わ り に
小児リウマチ性疾患の診察法について,小児リ
ウマチ性疾患の代表的な
疾患である
,
について具体的に述べた.小児リウマチ性疾患の
特徴を考慮すると,早期に診断して積極的な消炎
療法を行う「
」という考え方が
重要であって,リウマチ性疾患患児が健常児と変
わりなく「普通の生活」を送れるためにはどのよ
うにすべきかを常に念頭に置いて診療に携わって
いくべきである.
本内容は第
回日本小児感染症学会(高知)の
−
−
で講演した.
文 献
)
:
:−
)横田俊平:小児特発性関節炎の分類と治療戦略.
治療
:−,
)
:
(
)
:−
)横田俊平,森 雅亮,今川智之,他:若年性特発
性関節炎初期診療の手引き(
年).日児誌
:−,
)
:
(
−)
−/
−
:−
)
:
(
)
−
)
:
:
:−
)
:
−
−
−
:−
)
:
:−
)
:
(
)
−
)
:
:
:−
)横田俊平,森 雅亮:若年性関節リウマチに対す
る
治療法の新展開∼メトトレキサート
を中心とする
療法の試み.小児科
:−
)
:
(
)
−
)
:
:
:−
)横田俊平,宮前多佳子,中島章子,他:小児
の病型と治療.リウマチ科
:−,
)渡邊言夫:厚生省心身障害研究報告書.昭和
年度研究業績集.厚生省,,
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Ⅲ
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)黒澤るみ子,梅林宏明,今川智之,他:小児期発
症全身性エリテマトーデス
例の臨床的特徴と診
断における問題点.日児誌
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)宮前多佳子,中島章子,今川智之,他:小児期
ループス腎炎寛解維持の改善∼メチルプレドニゾ
ロン・パルス療法後の寛解維持療法における免疫
抑制剤導入の効果∼.リウマチ
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)黒澤るみ子,梅沢礼美,小林慈典,他:小児期発
症
の治療法の変遷とその効果についての検
討∼経静脈的シクロフォスファミド・パルス療法
の有効性について∼.リウマチ
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