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抗リン脂質抗体症候群 - せきぐちクリニック

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抗リン脂質抗体症候群 - せきぐちクリニック
せきぐちクリニック 2009年4月27日
抗リン脂質抗体症候群
少し前に、芸能人が、この病気のため流産をしたことがあったという告白があった病気で
す。以前、大学病院で出血と血栓という治療が相反することになった方がおられ、重症化
は免れないであろうとあせりを覚えたことがありました。
抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid
syndrome : APS)
具体的な症状(だいたいが血栓ができた結果
によるものと考えられております。)
静脈や動脈に血栓が作られ、流産を繰り返し
動脈血栓症:脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈閉塞症
(習慣流産)、脳梗塞や多発性硬化症などの中
枢神経の障害をおこすなど多彩な症状を呈し、
血液検査をすると、体の中の細胞にあるリン脂
質とそれに結合するタンパク質に対する抗体
(抗リン脂質抗体)が陽性となる病気をまとめ
たものです。APSは、「自己免疫性血栓症」つ
まり、自分自身が何らかの原因で、自分自身の
静脈血栓症:深部静脈血栓症(大腿部の深いとこ
ろを走る静脈がつまる)、肺梗塞、腎静脈血栓症
流産
肺高血圧症、心臓弁膜症
認知障害、記憶障害、てんかん、舞踏病、片頭痛
リン脂質とそれに結合するタンパク質に対して攻
横断性脊髄炎、多発性硬化症
撃を加える抗体を作り出す結果、いたるところ
網状皮斑、皮膚潰瘍、四肢壊疽(手足が壊死)
に血栓を作ってしまう病気ととらえられており
ます。40歳以下、とくに妊娠可能年齢の若年者
には、血栓症の危険因子として重要です。APS
は、基礎に病気を持たない場合(原発性APS)
や全身性エリテマトーデスを代表とする膠原病
に合併するもの(二次性APS)と分類すること
ができます。
腎動脈狭窄、腎糸球体病変、急性副腎不全
非アルコール性肝硬変
大腿骨頭無腐性壊死
メニエール症候群、鼻中隔穿孔
検査異常
どのくらいの頻度?
抗リン脂質抗体陽性(様々な種類あり)
古い統計結果ですが、
血小板減少
1997年の全国病院推定受療患者数は 3700名。
凝固異常(APTT延長)
血清梅毒反応生物学的偽陽性(梅毒でもないのに
梅毒反応がでる)
調査時の平均年齢は40.8 13.4歳。
男女の比率は、1:1.64とやや女性に多く、女性
直接クームス試験陽性
の推定発症年齢は20歳前半にピークがありまし
溶血性貧血
た。
抗ミトコンドリア抗体陽性
せきぐちクリニック通信 ページ 1
せきぐちクリニック 2009年4月27日
診断はどうするの?
治療はどうするの?
1999年に作られた札幌基準が、このたび、2006
治療は、血栓症はおきていないが、抗リン脂質抗体が
年に改訂分類基準(シドニー改変)として改訂さ
陽性の場合(血栓の一次予防)と、実際に、血栓症が
れました(下)。
おきてしまった方に、次に血栓症がおこらなくする場
抗リン脂質抗体症候群改訂分類基準(シドニー改
変)
合(血栓の二次予防)の2つに分けて考えられます。
血栓の一次予防には、以前は、少量のアスピリン(バ
イアスピリン®100mg)が使われていましたが、現在
1. 臨床所見
では、有効であるという確たる証拠がないため、生活
①血栓症:血管炎によらない、画像もしくは組織
学的に証明された血栓症。
習慣の是正が主体となります。具体的には、動脈硬化
②妊娠合併症
(脂質異常症)、喫煙などは是正し、妊娠可能女性に
の危険因子と呼ばれている高血圧、糖尿病、高脂血症
対しては、ピルの使用を禁止することなどです。
妊娠第10週以降、胎児に異常を認めない死亡
子癇、妊娠中毒症、あるいは胎盤機能不全による
妊娠第34週以前の早産
血栓の二次予防には、原則として、動脈に血栓ができ
た方には、抗血小板療法(アスピリン、チクロピジ
ン)を、静脈に血栓ができた方には、抗凝固療法
母体に異常がなく、妊娠第10週以前に3回以上、
連続した自然流産
(ワーファリン)を行います。
2. 検査基準
なお、とくに習慣流産など妊娠合併症に対する治療と
しては、ワーファリンは、奇形を起こすため禁忌とな
ループスアンチコアグラント陽性
りますので、少量のアスピリンとヘパリン1万単位皮
中等度以上の力価のIgGまたはIgM抗カルジオリピ
ン抗体陽性
中等度以上の力価のIgGまたはIgM抗β2ーGPI抗体
陽性
下注射(または低分子ヘパリン5千単位皮下注射)の
併用療法を行います。
治療の主体が、血栓を作りにくくするため、やはり出
血が心配要因として挙げられます。
診断法:
臨床所見①②の中で、1項目以上を認め、かつ、
検査基準の中の1項目以上が12週間以上の間隔で
2回以上あれば、APSと分類し、専門医が最終的に
APSとして矛盾しない判断します。
せきぐちクリニック通信 ページ 2
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