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事業主体 一般社団法人 団地再生支援協会 コーディネート業務に関する

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事業主体 一般社団法人 団地再生支援協会 コーディネート業務に関する
コーディネート業務に関する事業報告書「記載様式」
事業主体 一般社団法人
対象住宅
団
地
団地再生支援協会
K団地
築 40 年を経過したK団地では、建物や屋外の老朽化と共に居住者の高齢化が進み、将来
に向けた団地管理・運営の担い手の世代交代や団地活力の向上が課題となっている。今
事業概要
後さらなる高経年化に伴い発生が予想される空家に対し、適切なリフォームの実施によ
る住宅流通促進、共同施設整備等による生活環境の向上、ブランディングによる魅力づ
け等を通して、若い世代の転入による活力の向上や、資産価値の維持・向上等に取組む。
1.対象住宅団地の概要
K団地は、鎌倉市の古都の景観を形成する風致地区に指定される丘陵緑地の谷あいに立地し、周辺を
深い緑に囲まれた潤いある静かな環境である。鎌倉市の市域は、戸建て住宅を中心に寺社が混在する市
街地となっており、当該団地に類する大規模住宅団地は殆ど立地していない。
2.事業の背景と目的
平成 26~27 年度にかけて K 団地では、これまで団地の維持・管理活動とコミュニティー(自治)活
動の双方を同時に担ってきた「管理自治会」を再編し、区分所有者共有の資産としての団地の維持・管
理・保全や資産価値向上を図る「管理組合」と、良好なコミュニティー形成のための自治活動の主体と
しての「自治会」とに分割し、それぞれの主体が担うべき役割の明確化と、組織体制の充実を図ること
となった。
また今後管理組合員(区分所有者)の高齢化の進展により、特に維持・管理活動の担い手不足が懸念
されることから、上記「管理組合」による維持・管理業務について管理会社への一部委託も含めて、今後
の管理業務の在り方を検討することとなっている。
一方、平成 26 年度末より、
(一社)団地再生支援協会では「平成 26 年度 住宅団地型既存住宅流通促
進モデル事業」の採択を受け、上記の状況を鑑みつつ、住民による任意組織「住みたい K 団地研究会(住
み研)
」を窓口に、適宜協議を行いながら補助事業の実施を試みてきた(活動概要参照)。
しかしながら、一部の住民からなる任意組織との協議のみで補助事業を進めることが、管理自治会と
の方針の違いを顕在化させ、加えて情報の行き違いや誤解等による軋轢を生むこととなり、また管理自
治会自体も上記体制移行期間による多忙を極めていることから、平成 27 年度残りの補助事業期間におい
ては、一旦 K 団地との共同研究としての作業を取りやめ、(一社)団地再生支援協会の任意研究として
の作業(調査・研究)とすることとなった。
1
3.事業の内容
(1)事業概要・手順と取組み体制
1)検討の基本方針
こうした状況を踏まえて、団地再生支援協会の今後の検討の進め方に関する基本方針を、以下のよう
に想定した。
① 今後「管理組合」が検討する団地資産の維持・管理に関する基本方針を想定し、それらの支援、一助
となるよう最大限の留意を図りつつ、平成 23 年度から継続してきた検討の成果を元に、新たな団地
の組織体制に対応できるよう見直した案(ケーススタディ)の作成を行う。
② 既存住宅の賃貸や売買による流通促進を目的とし、
「住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業(国交
省)」を活用して平成 26 年度より進めていた検討作業については、具体のインスペクションや住宅
リフォーム工事、共同施設整備への補助金適用が難しくなったことを踏まえ、以下のように進め方
を見直す。
・ 平成 25 年度からの検討内容のうち、上記モデル事業の主旨に沿った内容のものについて、任意研究
として検討を継続する(中長期ビジョンの再整理、少子高齢化等の課題に対応した団地管理・運営
のあり方の提案、専用部リフォームルール運用方法の提案…etc)。
・ 平成 26、27 年度に予定されていた検討内容のうち、来年度以降の活動継続につながる内容のもの、
団地資産の管理・運営に資するものについて、任意研究として検討を継続する(既存住宅活用意向
調査の分析、団地共用施設等のあり方検討、資産価値維持・向上や情報化に向けた検討・提案、リ
フォームモデルプランの検討・提案、団地のブランディング戦略の提案…etc)
【検討の取組み体制】
国土交通省
事務事業者
住宅瑕疵担保対策室
(一社)住宅瑕疵担保
責任保険協会
相談・指導
指導
K団地管理自治会
+
住みたいK団地研究会
(住み研)
<補助事業作業チーム>
・団地再生支援協会(主査;奥茂)
・団地再生事業協同組合
・(株)市浦ハウジング&プランニング
連携・指導
鎌倉市関係部局
窓口;建築住宅課
2
2)これまでの検討内容と平成27年度検討項目について
平成 23~24 年度
意向調査
進め方検討
「これからの団地を考えるためのアンケート」
アンケート結果を踏まえ、進め方協議
実施
平成 25 年度(マンション管理適正化推進事業)
・少子高齢化等の課題に対応した団地管理・
・中長期ビジョン検討
運営の在り方検討
50 年後を見据えた団地の将来ビジョン共有
・ライフラインの老朽化調査(VP給排水管)
・専有部リフォームルール:専有区画内の
配管更新等
平成 26~27 年度検討:住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業(任意研究)
・ 既存住宅活用意向調査の分析
〔平成 25 年度からの継続検討〕
⇒集計結果に分析を加え区分所有者等に
・ 中長期ビジョンの再整理:※1
報告できる体裁にとりまとめる
・ 少子高齢化等の課題に対応した団地管
・ 団地共用施設等のあり方検討
理・運営のあり方の提案※1
⇒意向調査を踏まえた方針検討・提案
・ 専有部リフォームルール運用方法の提
・ 資産価値の維持・向上や情報化に向けた
案:※2
検討・提案
※1:管理組合が今後行う検討と重複する
可能性があるため、進め方等に関し随時幹
事会に諮るとともに、これまでの成果を今
後の検討主体と共有する工夫を行う。
※2:平成 25 年成果及を踏まえたK団地ル
ール案(住み研案)を前提とした、ルール
の運用方法については、考え方を整理し新
たな「管理組合」に対する提案として取り
まとめる。
⇒流通促進策、資産取引情報の蓄積等
・ リフォームモデルプランの検討・提案
⇒「勝手にモデルプラン」の提案
・ 団地ブランディング戦略の提案…
⇒HP の作成、IT 情報化対応方策等
3
3)具体の検討内容イメージ等
〔平成 25 年度からの継続研究〕
〇中長期ビジョンの再整理
平成 25 年度の検討結果をベースに、最新の状況や情報(アンケート結果も考慮)を加味して再
整理、再構成し、内容を分類して「自治会」
、
「管理組合」各々に対する提案書としてとりまとめる。
(来年度に新体制下での報告会の実施を想定)
〇少子高齢化等の課題に対応した団地管理・運営のあり方の提案
国の標準管理規約改定の方針に準拠しつつ、管理会社と組合の役割分担や連携の考え方について、
管理組合で行う見直しに役立つよう、あくまで提案として整理する。(議論のたたき台、管理会社へ
の説明、市への協力要請資料等)
〇専用部リフォームルール案の作成・提案
国の標準管理規約改定の方針に準拠しつつ、管理会社と組合の役割分担や連携の考え方について、
今後管理組合で行う見直しに役立つよう、あくまで提案として整理する(議論のたたき台、管理会社
への説明資料への活用等を想定)。
〔平成 26~27 年度における新規研究〕
〇既存住宅活用意向調査の分析
アンケート集計結果を分析し、①現時点での入居者の居住状況や課題、今後の意向等、②既存住
宅の流通や生活環境改善に対する意向等、③共同施設整備に対する意向等
を分析・整理し、今後
の団地運営や資産活用に資する資料として整理する(来年度に新体制下での報告会の実施を想定)。
〇団地共用施設等のあり方検討
上記意向調査の結果を踏まえ、集会所(生活支援施設)
、駐車場、その他の団地共用施設(防災施
設、モビリティ、
)等のあり方に関し、他の事例紹介も含めて提案書としてとりまとめる(来年度に
新体制下での報告会の実施を想定)。
〇資産価値の維持・向上や情報化に向けた検討・提案
昨今既に始まっている既存住宅の流通状況やリフォームの状況を整理すると共に、上記意向調査
の結果も踏まえ、資産価値の維持・向上や情報化(ブランディングも含む)に向けた取り組みの提
案を行う(来年度に新体制下での報告会の実施を想定)。
〇リフォームモデルプランの検討・提案(「勝手にリフォームモデル」
)
リフォームルールに基づき、典型的なタイプの住戸に関して数タイプずつ(想定ユーザーや価格
帯)のリフォーム検討を行い、「勝手にリフォーム提案」(図面、スケッチパース、概算コスト等)
を行う。(来年度に新体制下での報告会の実施を想定)。
〇団地ブランディング戦略の提案
資産価値の維持・向上や情報化の提案に基づき、具体の団地ブランディングに向けた方策(団地
HP の公開や IT メディアを活用した情報発信、市との連携関係の構築等)について、他の団地での
取り組み事例を紹介しつつ提案書として整理する(来年度に新体制下での報告会の実施を想定)。
4
(2)事業の具体的な内容と成果
Ⅰ.K団地における中長期の再生課題
ここでは、これまで明らかとなったK団地の現状を整理すると共に、中長期の再生を視野に入れた
場合の課題を整理する。
①アンケートにおいて区分所有者が指摘する課題
現状(頂いたご意見)
団地内のコ ・団地内のコミュニティ形成として、継
ミュニティ
続的に居住している高齢世帯と、比較
形成につい
的新しく入居してきた若手世代とのギ
て
ャップを感じる。
・若い世帯が入居したとしても共働き世
帯が多く、自治体活動への参加も難し
いと感じる。世代を超えたコミュニケ
ーションが取りにくい。
課題
・比較的若い世代を自治会活動に参加で
きるような働きかけや配慮が必要。
・新しい魅力付けの方法として、ボラン
ティアや必要に応じて専門業者などを
利用して、福祉関連施設や児童用の施
設等を一体的に展開するといった提案
等もあった。
自治会活動
等について
・高齢化に伴い、順番制となっている階
段委員が負担。
・これまで自主管理で行ってきた管理業
務をアウトソーシングする等、住民の
負担軽減が必要。
バリアフリ
ー・エレベ
ーターにつ
いて
・高齢化にともない、5 階の住居まで歩
くのが難しい(やむなく退居を検討し
ている方も)
。
・一人暮らしの高齢者にも生活できる環
境整備が必要。
(エレベーター設置や見
守り等)
・エレベーターは、費用(イニシャルだ
けでなく管理費等も含め)や技術的な
問題があるので無理に設置せずに両側
手すりの設置などの次善の策を検討す
べきとの意見もあった。
駐車場に
ついて
・貸し駐車場の待機者が常時10名程度 ・若い世代が転入しやすくするためには、
いる。
駐車場の有無は重要。
・車を所有してない方が駐車場を所有し ・ただし、駐車場増設に対して、K団地
ており、常時駐車されているわけでは
の一番の魅力である自然環境を犠牲に
ない(親族が来訪した時等、年に何回
なることへは反対意見もあり、カーシ
か使用している)。
ェアリング等の検討が必要か。
・利用されていない駐車場への対応が求
められる。
K団地の魅
力について
・豊かな緑
・落ち着いた雰囲気
・この良好な環境で住み続けることがで
きるように団地を維持していきたい。
・自然環境の魅力をいつまでも残したい。
・高経年になっても歴史的な高級感がで
るような団地として、建物や自然環境
等を維持していくことが必要である。
5
②これからの団地を考える上での、中長期課題の取りまとめ
課題項目
短期的課題
中長期
的課題
検討課題の内容
〇将来像の確認
区分所有者それぞれが持っている団
地の将来像に対する思いの交換と共
通認識の構築
・団地の将来像については、区分所有者
それぞれ多用な意見を持つため、アン
ケート等で得られた各々の思い等につ
いて情報共有し、それらをディスカッ
ションし、共有する機会を設ける。
〇リフォームルール策定
専有部リフォームのルールの確定や
運用、実施方法の検討
・先進事例を参考に、専用部における給
排水管や防水層改修のルールの確定を
行う。
・同様に、そのルールの具体的運用方法
について検討する。
〇耐震性の診断・確認
建物が有する耐震性を確認し、売買等
の際に提供する情報として整備
・PC 造の標準設計として、建物が基本
的に有している耐震性に関する情報
を、大成建設から収集する。
・必要となる耐震診断の内容と、費用概
算を行う必要がある。
〇団地の将来像の検討
体系的かつ順序立てた再生計画の検
討
・団地の将来像を見据え、大規模改修、
建替え、複合型団地再生など、さまざ
まなレベルの再生メニューを比較検討
し、その可能性を把握しておく必要が
ある。
〇生活支援の仕組みの検討
生活を出来るだけ長く継続していけ
るための、団地ならではの仕組みづく
りの検討
・高齢者、単身者が多くなるなかで、互
助的な生活支援や安否確認等の仕組み
や、福祉・生活支援ソフトの導入を検
討する必要がある。
・同時に市の福祉部局、民生部局等と協
議し、公的な支援や NPO 団体等の支
援、協力が得られないか検討する必要
がある。
〇バリアフリー化の検討
住棟、屋外のバリアフリー化改修等の
検討
・大規模改修等による再生計画を担う、
屋外バリアフリー改修や住棟バリアフ
リー改修の検討を行う。
〇新たな管理運営体制への移行
団地を将来へ引き継いで行くための
環境整備
・徐々に世代交代が進み、新たな管理運
営体制へ移行していくための、管理組
合、自治会等のあり方を検討する必要
がある。
・現状の分割登記の土地を合筆登記し、
財産の継承、所有権移転のための環境
整備に必要な項目を検討する必要があ
る。
6
7
・緑豊かな環境を評価しているが、交通の便、買い
物の便が悪いと感じている。
・住戸面積の広さ、陽当たりや風通しを評価してい
るが、EV がないこと、設備が時代遅れであるこ
とを課題と感じている。
・管理自治会活動は評価している人もいれば、課題
と感じている人もいる。
・約 35%の方が、住み替えたい又は何れは住み替
える可能性があると考えている。
・団地の今後のあり方は、様々な考え方があり、大
多数を占める意見はない。
・修繕・改修の費用の考え方は様々である。
・キッチン、トイレ、浴室などの水廻りのリフォー
ムは、約 70%の世帯が行っているが、浴室の防
水層のリフォーム、給水、ガスのリフォームは約
20%の世帯しか行っていない。
<居住者の意向-アンケート結果>
〇物-建物は築 40 年を経過しており、これまで策
定している長期修繕計画では、大幅な機能UP
の改修工事は想定しておらず、新築マンション
に比べ、設備等が見劣りしている部分がある。
〇人-世帯主の平均年齢は約 70 歳となり、高齢化
が進んでおり、建物の管理運営、自治会活動に支
障を生じる可能性がある。
・金-団地の将来像によっては、将来大規模修繕積
立金が大幅に不足する可能性がある。
〇社会-人口減少、少子高齢化の進展により、鎌倉
市において空屋が多数生じており、K団地にお
いても現在空屋が 20%程度生じている。
※ここでの空家とは、セカンドハウスとしての
利用など、常時生活をしていない住戸も含む。
<団地の課題>
・310 戸、22 棟、昭和 47 年竣工(築 40 年)
・鎌倉駅から 1.5km
・階段室型5階建、プレキャストコンクリート造
・風致地区により、高さ 5 階(15m)以下、既存緑
地の保全等が条件
・北下がりの斜面地
・維持管理状態は良好
<計画諸元・立地特性・建物の状況>
<管理運営・自治会>
・マンションの管理運営を自主管理方式としている
・管理組合と自治会を兼ねた運営をしている
管理・運営の再生
(自主管理のシス
テムの見直し)
コミュニティの再生
(居住者同士の
つながりの再生)
住宅環境の再生
(建物・屋外環境
の再生)
検討の視点
団地の目標・将来像
「若い人からお年寄までが、仲良く、
そして長く住み続けられる、緑豊かなK団地づくり」
<必要な検討のイメージ>
〇自治会と管理組合活動を分けて行うことが望ま
しいか検討する
〇管理組合活動の一部を管理会社に委託すること
を検討する
〇管理組合活動に対する第 3 者的な専門家の協力体
制を検討する
〇団地指向者向け賃貸・転売住戸のリニューアルイ
メージについて検討する
○団地の中長期的な維持・管理のための資金計画を
検討する
〇管理運営におけるこれまでの経緯をまとめ、情報
の共有化を図る
<必要な検討のイメージ>
〇区分所有者の団地の将来に対する共通認識をもつ
ため、団地の将来像等について、話し合いを持つ
〇高齢者、単身者が多くなる中で、互助的な生活支
援や安否確認等のしくみや、福祉・生活支援ソフ
トの導入を検討する
・カーシェアリング、電動カートシェアリング
・高齢者の見守りサービス等
○管理組合で一階住戸を買い取り、高齢者向け住戸
として利用する手法を検討する
(空き住戸活用、高齢者住替移転促進)
〇集会所を世代間交流の場として活用するために、
利用規約の改定や改修・建替えの検討を行う
〇若年層の入居促進を図るため、子育て環境の整備
を検討する
・集会所を利用した子育て支援サービスの提供
(自主保育制度の導入等の検討)
<必要な検討のイメージ>
〇一括建替、一部建替、改修等様々なレベルの再生
手法を検討する
〇グレードアップ改修の内容を検討する
・EV の設置、外断熱改修、サッシの性能向上、太陽
光パネル導入等を検討する
〇先進事例を参考に専用部における給排水間や防水
層改修など専用部のリフォームのルールの検討を
行う
〇給排水などライフラインの劣化診断とこれに基づ
く更新範囲、ルールを検討する
〇緑豊かな屋外環境をゾーンごとに特徴付け、特色
ある屋外環境に改修することを検討する
〇住棟、植栽、舗装、擁壁その他工作物を含めた団
地の長期修繕計画を見直す
Ⅱ.資産価値の維持・向上や情報化に向けた検討・提案
ここでは、K団地内で昨今既に始まっている既存住宅の流通状況やリフォームの状況を整理すると共
に、意向調査の結果も踏まえ、資産価値の維持・向上や情報化(ブランディングも含む)に向けた取り
組みの提案を行う(来年度に新体制下での報告会の実施を想定する)。
1)K団地における既存住宅の流通状況
①「非居住の所有者」の状況と可能性
平成 27 年 5 月に実施した居住者アンケートによれば、既に主たる居住場所が団地外の住宅となってい
る「非居住の所有者」は 25 世帯(回答対象世帯数の 10.7%)、うち 9 世帯(非居住の所有者の 36.0%)
は親族への転貸やその他の賃貸用住宅として活用中となっている。
「非居住の所有者」のうち 11 世帯(非居住の所有者の 44.0%)の住宅は、
「書斎や趣味室(6 世帯)」
、
「週末住居やセカンドハウス(4 世帯)
」として用いられており、現在のところ主たる居住場所ではない
ものの、これを補完する住宅として用いられており、いわゆる「空家」とはなっていないが、空家予備
群とみる事ができる。
非居住の所有者のうち残りの 5 世帯(非居住の所有者の 20.0%)は、特に賃貸住宅等、他の世帯の居
住の用途に供していない、非居住のいわゆる「空家」となっている状況にあると判断される。
図 2-1
団地に非居住の所有者の利用用途
団地に非居住の所有者の利用用途(25世帯)
書斎や趣味室(11世帯)
週末住居やセカンドハウス(4世帯)
親族への転貸やその他賃貸(9世帯)
上記のことから、非居住の「空家」として、今後賃貸や売買による活用による既存住宅流通により、
新たな居住者の転入を図る事が見込まれる住宅数は 5 戸(回収率による補正で約 6.3 戸)である。
また、現在は主たる居住場所を保管する住宅として用いられており、まだ「空家」とはなっていない
ものの、将来の所有者の状況等により、賃貸や売買による活用により、新たな居住者の転入を図る事が
見込まれる潜在的な住宅数は 11 戸(回収率による補正で約 13.8 戸)とみる事ができる。
それらを合算した空家予備群を含む将来活用すべき「空家」の数は 16 戸(回収率による補正で約 20.1
戸)となり、全戸数の約 6.5%を占めている。
8
②売買による住宅の流通状況
不動産流通情報データベース(REINZ)による、K団地における成約物件の取引情報(平成 20 年以
降)を見ると、売買成約件数は 24 件となっている(下表参照)。
表 2-1
REINZ による成約物件の取引状況
No. 取引年 取引価格(万円) 面積(㎡)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
計
H20
H20
H20
H20
H21
H22
H22
H22
H22
H23
H23
H23
H23
H23
H24
H24
H24
H24
H24
H25
H25
H26
H26
H26
㎡単価(万円) 年別価格計 年別面積計 年別単価
1100
75.84
1180
75.82
1500
75.84
1200
71.58
1300
75.82
1300
75.84
1250
75.82
1450 102.53
950
75.84
1450 102.53
1580
75.84
1000
75.84
1480 102.53
1250
75.84
1300
75.84
1380
75.84
1300
87.56
1200
75.84
1380
75.82
1380
75.82
1330
75.84
1340
75.82
1800
75.82
970
75.84
31370 1907.55
14.5
15.6
19.8
16.8
17.1
17.1
16.5
14.1
12.5
14.1
20.8
13.2
14.4
16.5
17.1
18.2
14.8
15.8
18.2
18.2
17.5
17.7
23.7
12.8
16.4
4980
1300
299.08
75.82
16.7
17.1
4950
330.03
15.0
6760
432.58
15.6
6560
390.9
16.8
2710
151.66
17.9
4110
227.48
18.1
型別の取引状況をみると、2LDK が 1 件(4.2%)、3LDK が 20 件(83.3%)、4LDK が 3 件(12.5%)
である。
成約取引の㎡単価は、平成 20 年~26 年トータルで平均 16.4 万円/㎡、年別の㎡単価の推移をみると、
平成 22 年の 15.0 万円から平成 26 年の 18.1 万円となっており、近年単価は漸増傾向にある事が分かる。
図 2-2
年別平均㎡単価(万円)の推移
年別平均㎡単価(万円)の推移
18.5
18.0
17.5
17.0
平均16.4万円
16.5
16.0
15.5
15.0
14.5
14.0
平成20年
平成21年
平成22年
平成23年
平成24年
9
平成25年
平成26年
③売買による一般的な取引価格の傾向
成約取引の㎡単価を、住戸規模(㎡)別に見てみると、取引事例の多い 3LDK は、平均㎡単価が約 17
万円(16.99 万円/㎡=56.1 万円/坪)であるものの、最低 12.5 万円/㎡~23.7 万円/㎡まで非常に幅
広く分布している。
㎡単価が幅広く分布している理由としては、物件毎の階数や取引状況(リフォーム済みか現状渡しか
等)、売却者の事情等(早く処分するかじっくり上客を探すか等)によるものと考えられる。
サンプルは少ないものの、
平均の㎡単価が総じて近似曲線上に分布すると仮定すると、単価は概ね 14.0
万円/㎡~18.0 万円/㎡に分布し、規模の小さなもの(2LDK)は比較的高く、規模の大きなもの(4LDK)
は比較的安い単価での取引であることが想定される(下図赤の破線を参照)。
また、㎡単価が 20~24 万円程度と比較的高な住宅は、リノベーション(スケルトンリフォーム)、あ
るいはフルリフォームが施されて、内装設備等が一新されたもの、㎡単価が 12~14 万円程度と比較的
廉価な住宅は、ほぼ現状渡しだったのではないか…と想定される。
図 2-3
住戸規模と㎡単価の分布
住戸規模(㎡)と㎡単価(万円)の分布
24.0
22.0
20.0
3LDK 75.8㎡
平均16.99万円
18.0
想定近似曲線
16.0
14.0
4LDK 102.5 ㎡
16.5 万円/㎡
12.0
65
70
75
80
85
90
95
100
105
現在不動産情報サイトで募集されている売買用住宅が1件みられる(未成約 H28.1 月時点)。この住
宅は4LDK 102.5 ㎡と大型であるが㎡単価は 16.5 万円で、上記グラフ上にプロット(赤丸)すると、
15.0~16.0 万円/㎡程度での成約が推計される。
<販売中の住宅物件の事例>
・
4LDK
102.53 ㎡
5 階建ての住戸(階数は不明)
・
不動産情報サイトでの中古住宅の売買単価は、16.5 万円/㎡である(未成約)。
<不動産情報サイトの情報;SUUMO より>
10
④買取再販(中古リノべーション再販)による住宅の流通
本事業実施中に、民間不動産業者による買取再販事例が1件発生した。その取引事例の内容は以下の
通りとなっている。つまり現状渡しで 10.5 万円/㎡で買取が成立し、フルリフォームの結果、24.9 万円
/㎡の中古住宅商品として再生(リノベーション)された事になる。それらは何れも上記実績分布グラ
フを外れた範囲になっており、
〈安く買いリノベーションして高く売る…〉というリノベーション買取再
販事例の特性を図らずも示している。しかしそれは同時に、他に類例が少ない魅力的なリノベーション
(フルリフォーム)が達成できれば、資産価値を大きく向上させる事が可能である事を示しており、住
民の資産活用に向けたモチベーションともなり得る。
<買い取り再販の事例>
・ 3LDK
75.84 ㎡
5 階建て 5 階住戸
・ 約 800 万円(10.5 万円/㎡)で不動産事業者が現状買取(H27 年 2 月)
・ 同不動産業者が、既存内装設備の撤去後、スケルトンリフォームを実施
・ 若年世帯向け 1L・LDK
75.84 ㎡にリノベーションした(工事費約 600 万円)
・ 東京 R 不動産サイトに取り上げられ、物件情報が公開される
・ 約 1890 万円(24.9 万円/㎡)で売買成立(H27 年 9 月)
・ 購入者は 40 代男性単身世帯
リフォーム後
リフォーム前
11
2)これからの既存住宅流通の可能性
①賃貸住宅としての可能性
平成 27 年 5 月に実施した居住者アンケートによれば、既に主たる居住場所が団地外の住宅となってい
る「非居住の所有者」25 世帯(回答対象世帯数の 10.7%)のうち 9 世帯(非居住の所有者の 36.0%)
は親族への転貸やその他の賃貸用住宅として活用中となっている。
これは所有権をそのままに団地外に居住し、団地内の住宅が賃貸住宅として活用されている状況を示
している。今後は、現在は非居住のまま「書斎や趣味室」、「週末住居やセカンドハウス」、「その他」と
なっている住宅(16 世帯)も、将来は賃貸住宅として活用される可能性がある。また、現に自己居住の
住宅であっても、何らかの事情(施設への入居や入院等)により賃貸住宅としての活用が模索される可
能性もある。
現時点で賃貸募集されている団地内の住宅事例が無い事から、どの程度の家賃相場での活用が可能か
についての具体像は不明である。一方、賃貸物件の募集サイトで示されている賃貸住宅として活用され
る場合のポテンシャルは、以下のような状況と考えられる。
<賃貸住宅としてのポテンシャルの試算>
・ 3LDK
75.84 ㎡
5 階建ての住戸を想定
・ 不動産情報サイトによると、当該団地での賃貸住宅の場合、3 階南向きの場合で家
賃約 136,500 円(下限値 1,800 円/㎡を採用)となる(H28 年 1 月)。
・ 近隣で募集中の賃貸住宅(築 11 年 3 階建て 2 階 65.5 ㎡)の家賃が 122,000 円(1,860
円/㎡)である事からも、上記試算が概ね妥当な内容であると推定される。
・ しかしながら賃貸住宅として活用する際には、設備の改修や内装(クロス等)の改
修等、最小限のリフォームが必要となるため、その賃貸化に伴うコストも忘れてはな
らない。
<不動産情報サイトの情報;マンション.navi より>
12
②高齢者シェアハウスとしての活用の可能性
高齢化が進んでいる本団地の状況に鑑みた場合、高齢者ができるだけ長く住み続けられる為の取り組
みが必要となる。平成 27 年 5 月に実施した居住者アンケートによれば、身体的状況のため既に団地外に
転出した高齢者のなかでも「できればもっと長く住み続けたかった」との意見がみられた。同アンケー
トでは、管理自治会による“生活環境向上の取り組み”のアイデアとして、
「シェアハウス制度」を提案し
(下図参照)
、それに対する意見を求めた。これは以前、団地の中長期のあり方についての意見交換会を
実施した際に、若い住民の中から出された意見であり、団地管理自治会自らが高齢者の居住継続の問題
に対する解決策を求めるニーズが存在する事を示している。
<アンケートで示した「シェアハウス制度」>
アンケートの結果、
「検討する必要がある(積極的に評価)」が 76 世帯(29.6%)と、約 3 割と少なく
ない世帯が、何らかの解決策が必要と考えている事が分かった。うち 63 世帯は理由として「高齢単身が
多く、見守りあいの面でこうした取り組みが必要」としており、必要と考えている世帯の多くが高齢者
の居住継続、見守りあいの必要性を認識しているものと判断できる。
管理自治会が空き家を取得するためには、①資金調達や売買契約のためには法人化が望ましい
加え、シェアハウスとして運営するためには、②シェアハウス改修のための投資が必要
理・運営する仕組みが必要
するお世話役が必要
④従前の住宅の対処や家賃の手当てが必要
事に
③継続的に管
⑤共同生活をコーディネート
等、乗り越えなければならない課題は多い。しかしながら、具体的な試算やシミ
ュレーションを行い、また具体の仕組みづくりを検討する事で、310 戸の団地自体が居住継続の仕組み
の附帯に取り組む意義は大きい。
また、地元金融機関や一般社団法人 JTI 移住・住みかえ支援機構(http://www.jt-i.jp/)等の協力を得
て、団地独自の「リバースモーゲージ」の仕組みづくりを行い、従前の住宅の所有権を残しながら、そ
こを転貸してその家賃をシェアハウスの家賃に充当するような取り組みが必要であると考えられる。
このような方策が可能となれば、生活継続が難しくなった上階のお年寄りの住まいを賃貸化し、若年
世帯の賃貸入居を促進しつつ、高齢者同士が共助の暮らしを営める…という、新たな居住継続の途が拓
ける事となる。公的な生活支援やボランティア活動との連携により、このような試験的な取り組み(社
会実験)が実施される意義は大きい。
13
③相互賃貸住宅としての可能性
前出の「シェアハウス制度」よりも、より簡便に高齢者の生活環境を改善できる取り組みとして「相
互賃貸住宅制度」が考えられる。団地の入居世帯が増える訳ではないが、上層階に住む高齢世帯と、下
層階に住む若年世帯が居宅を交換し、相互に賃貸し合う事で、4、5 階居住における日常昇降の身体的負
担なしに、高齢者が居住を継続する事が考えられる。
<アンケートで示した「相互賃貸制度」>
アンケートの結果、
「検討する必要がある(積極的に評価)」の世帯が 54 世帯(21.0%)みられた。決
して大勢を占める意見では無いものの、その理由をみると「足の不自由な高齢者が長く住み続けられる
(37 世帯)」、「ひとり暮らしのこり者の見守りあいの面で(33 世帯)」であり、ニーズを持った高齢世
帯の存在が伺える。相互賃貸の対象世帯(上層階に居住する若い世帯)が存在し、了解し合える状況に
さえなれば、管理自治会での議決なしに運用する事が可能となるため、具体化の可能性はあると考えら
れる。
団地管理のうえでの一定のルール(紳士協定的なもの)は必要と考えられるが、基本的には個人間の
取り決めで交換すれば良いため、まずは親族間等で実現する先例ができれば、K団地ならではの取り組
みとして、実現する可能性はある。
このような方策が可能となれば、所有権を移転せずに居住環境を変えられる点で有効である反面、①
住宅の面積は同じ場合、低層階、高層階間での家賃差の評価とその対処(家賃差補填等)が必要
じく面積差がある場合にその対処(家賃差の補填等)が必要
③相互賃貸契約書に一方が死亡もしくは
何らかの理由で賃貸契約を解消する場合の方策を取り決めておく事が必要
ガイドラインを検討しておく事が望ましい。
14
②同
であり、団地での相互賃貸
Ⅲ.流通促進のための団地管理体制の見直し
1)検討の目的
高経年の団地・マンションでは、敷地や建物の維持管理の良否が大きく団地建物の価値を左右する。
また、新たな団地建物取得予定者にとっては取得予定の団地の維持管理が将来にわたって適正になされ
るか否かは重大な関心事である。
中古住宅の流通促進のための住戸(団地建物)インスペクション等ハード面については、基準、体制
とも整備が進んでいるところであるが、中古住宅の流通促進を図るためには、団地維持管理や運営など
のソフト面での団地評価が明示されることが必要である。
本調査では、こうした視点で新たに団地建物の取得を検討する方が、将来にわたっての団地建物の維
持保全、地域コミュニティ維持等の団地運営にたいして安心感を持てるように、K団地をモデルに、団
地管理や地域運営のための仕組みとルールの検討をすることを目的とする。
2)現在のK団地管理組織と検討課題
①管理組織の成立ち
K団地での管理組織の成立ちは下に示すとおりである。地域の環境保護のための自主組織から自治会
が成立、その後区分所有法の管理組合としての位置づけを持つにいたった経緯から、地域の自治組織と
しての側面と財産管理団体の性格を併せ持った組織となっている。
K団地管理組織(管理自治会)の成立までの歩み
(1972年)入居開始
(1976年) 5月裏山開発計画に対し〇〇居住環境を守る会」発足
(1976年) 11月「守る会」を発展させたK団地自治会発足
(1984 年) 区分所有法改正に伴いK団地管理自治会と改称
②現在の組織体制
現在の組織体制は、下図の通りである。管理実務については管理会社への委託を行っているが、これ
まで、年度予算の作成、長期修繕計画や管理細則他の計画・ルールの検討・作成、ルール運用等は、管
理自治会自らが行っており、自主管理的な色彩も持っている。
図 3-1 体制図
K団地管理自治会
総
会
幹事会
専門委員会
ダミー
資産委員会
駐車場委員会
植栽委員会
文化・体育委員会
防災委員会
大規模サポートチーム
広報委員会
アーカイブス
15
管理会社
・一般清掃・設備等の
管理実務の委託
③課題整理と管理自治会で進められている団地管理見直し方針
良好な団地敷地と建物の管理、適正な地域運営とコミュニティ維持の観点で、現在の団地管理を俯
瞰すると下記の課題が存する。
K団地では、こうした視点を踏まえ【管理自治会の「管理組合」と「自治会」への再編】、【建物及
び建物所有者の高齢化を踏まえた団地管理での管理会社役割の見直し・・管理会社へのアウトソース
範囲の拡大】が検討されている。
検討課題
① 資産管理団体である「管理組合」と地域のコミュニティ組織「自治会」一体化の課題
・高経年化に伴い、例えば「建替え検討」等に見られるように、区分所有者と賃借居住者の利益
が相反する課題が生じてくる可能性がある。こうしたことから、非居住区分所有者(=賃借居
住者)の増加により、合意形成が難しくなり、団地の敷地・建物の良好な維持・管理が損なわ
れる可能性がある。
・現在の管理自治会は強制加入組織である。自治会は個人の自主的な意思により参加すべき組織
であるが、管理組合と一体化していることにより強制加入となっており、理念上好ましくない。
(裁判判例でも、自治組織への強制加入は違法との判断が定着している。
② 区分所有者の高齢化と団地の管理・運営
・K団地には専門的な知見をもつ区分所有者も多く、自主的な計画策定と団地運営を進めてきた
が、これらを担ってきたメンバーを含み区分所有者の高齢化が進んでおり、管理会社との役割
分担の見直しが必要。
・高経年団地の再生には、当該団地だけでなく地域の中での団地の在り方、社会動向を踏まえた
団地価値の向上のための対応等、より広い視点が求められている。今後は、こうした視点を含
んで団地運営を考える必要があり、対応した団地運営の体制が必要
3)検討方針
上記課題への対応とK団地管理自治会での「管理組合」
「自治会」の分離方針を踏まえ、以下の3つ視
点で、団地組織の見直しを検討することとし、そのための「管理組合管理規約」、「自治会規約」の試案
を策定する。
①財産管理組織と自治コミュニティ組織の分離
K団地で進められている、区分所有法上の団地の敷地と建物の管理、団地のコミュニティ活動の双方
を担ってきた「管理自治会」を財産管理のための「管理組合」とコミュニティ活動のための「自治会」
の 2 本立て組織とする方針を踏まえ、以下に示す方向に沿って管理組合、自治会の規約を検討する。
図 3-2
管理自治会(強制加入)
構 成 員:区分所有者(A会員)
居住者(B 会員)
活動内容:敷地・建物管理
自治・コミュニティ活動
費
用:会費として使途を
区分せず一括徴収
管理組合(強制加入)
管理規約
構 成 員:区分(団地建物)所有者
活動内容:敷地・建物管理
費
用:管理費として徴収
現「管理自治会規約」
をもとに内容整理
自治会(任意加入)
自治会規約
構 成 員:団地居住者
活動内容:自治・コミュニティ活動
費
用:自治会費(加入者)
目的を踏まえて新た
に作成
16
②団地建物所有者の高齢化に対応した組織運営への対応
団地建物区分所有者の高齢化を踏まえ、団地運営に外部専門家の参画(現規約にあるアドバイザーと
しての「顧問」に加え、外部専門家を「管理組合理事」等への起用も可能とする。)ができるよう検討し、
そのために以下に留意して規約を策定する。
【留意点】
・ 外部専門家の起用に合わせ、理事等に起用する外部専門家の資質・資格を定める。
・ 起用する外部専門家が団地管理と利害相反が起きないように規定を整備する。
・ 監事の責任と権限を強化する。
③その他国交省で検討中の(新)標準管理規約への対応
現在、国土交通省で検討が進められている「マンション標準管理規約(単棟型のマンション)
」改正の
方向性に留意して、前項で挙げた専門家の参画以下の内容を管理規約に盛り込む。
【主な追加・修正項目】
① 専有部分の修繕に関する規定
専有部分の修繕について、これまで一律に会長(理事長)への届出・承認であった手続きを、
修繕・改修の内容(共用部分や他の専有部分への影響等)によって、
「事前申請+承認」、
「届出」
、
「不要」なものに区分し規約を改定
② 暴力団員の排除
「暴力団による不当な行為の防止に関する法律」に基づき、専有部分を賃貸する場合等暴力団
員の排除を念頭に管理組合による解約権等を明記。
③ 共用部分の管理
共用部分の保存行為について、区分所有者と管理組合の役割・行使等の規定を詳述。防犯、防
音、断熱性能向上のための窓ガラス等の改良について、計画修繕としての組合いの役割を明記
するとともに、区分所有者が行う道筋を明記。
④ 役員の利害相反行為の禁止と監事の役割強化
理事等の役員が管理組合の業務に係る際に利害相反行為を禁止する規定を明記。また、監事の
責任・権限を強化
⑤ 議決権の代理行使についての資格の厳格化
財産管理団体の議決であることに鑑み、総会などでの議決権の代理行使について、区分所有者
との利害関係の一致などを念頭に代理者の資格を厳格化。
⑥ 災害時・緊急時の対応
東日本大震災等の経験を踏まえ、災害等緊急時に総会を開かずに理事会決議に、応急的な修繕
等を可能とする規定を追加する等、災害時・緊急時の規定を追加
⑦ 帳簿類の作成・保管
帳簿類に長期修繕計画・修繕履歴等、建物の維持管理に必要な情報を追加
17
4)管理組合・自治会
規約(試案)
検討方針に従い、管理組合管理規約(現行管理自治会規約との新旧対象)、及び自治会規約の試案を作
成した。
5)今後の検討課題
財産管理団体として団地の敷地や建物を良好な状態に維持管理していく「管理組合」と地域コミュニ
ティを形成し暮らしやすい環境を形成していく「自治会」は、団地運営の両輪である。
現在の管理自治会を「管理組合」、「自治会」に区分したうえで、それぞれが役割を発揮して行くため
には、今後以下の事項等について十分な検討を重ね、区分所有者、居住者の合意形成を図っていくこと
が必要である。
① 「管理組合」
「自治会」活動の具体的な役割分担
団地運営の視点では、防災、団地内の美化等、財産管理とコミュニティの維持・形成の両
方に係る事項も多い。また、集会所の運営等についても実務的に2つの団体の利用の内容・
頻度等を踏まえてルール化必要である。
こうした点を踏まえ、団地運営の内容についての役割分担を定めていく必要がある。
② 管理費・自治会費
現在一括して管理費として徴収している費用を区分所有者から徴収する「管理費」と、自
治会加入者から徴収する「自治会費」に区分する必要がある。これまでの予算実績などを
踏まえ、額を定めるとともに、自治会費の徴収方法等も検討が必要
③ 連携のための仕組みづくり
2つの組織は、相互の連携と情報共有が必要。連絡調整の方法や仕組みを検討するととも
に、組織の分割により支障が生じないよう留意する必要がある。また、相互の組織の役員
の定数、等についても、区分所有者や居住者の負担等も踏まえてあり方について検討が必
要と考えられる。
④ 管理会社との契約内容
これまの団地管理の実績や経緯も踏まえながら、管理会社と管理組合との役割分担を必要
に応じて見直し、これに対応した委託契約の変更が必要である。
18
Ⅳ.専有部リフォームルールの活用
(1)リフォームルールの目的と経緯
1)目的
専有部リフォームについては次の 2 つの目的がある。
① 専有部内劣化部分の更新、補修
② 専有部内居住環境の改善
①は専有部内の劣化部分を基本的に現在の仕様に準じて補修、更新することとなり、内装の
更新、漏水等不具合箇所の補修、更新を指し、②は今の時代の生活スタイルに合った、間取り、設備
のグレードアップ改修を指す。K団地においては築 43 年を超える高経年住宅団地においては②のグレー
ドアップ改修が可能なリフォーム基準の作成が目的とされる。
2)経緯
平成 26 年度「住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業」による補助を受け、一般社団法人団地再生支
援協会の支援のもと、専有部分のリフォームに関する、禁止事項、届出事項、承認事項を明記し、申請
手順、必要書類を明記した、K団地リフォーム基準の素案作成が行われた。
(2)リフォームルールの活用に向けて
1)リフォーム基準素案の検討前提
前年度作成した素案に対し、K団地では今年度以降、多方面からの検討を行うため、検討組織づくり
を行っている。検討に当たっては、スケルトン改修のニーズが強まり様々な生活スタイルに合わせたリ
フォームが要求されていることを踏まえ、規制を前提とするのではなく、物理的制約の中でいかに実現
できるかを前提として検討していくことが重要となる。
また、検討組織の中に専門家も交えることが合理的で実効性のある基準となる。
2)リフォーム基準に関連する検討事項
リフォーム基準作成に関しては次のような関連事項の検討が必要となる。
① 管理区分、所有区分、費用負担区分の明確化
専有部分の明確化や、居住者によるリフォーム工事可能な部分について明確化する。
また、トラブルにより共用部にもかかわるリフォームの場合、その費用負担も明確にする。
各区分については、文字のみではなく、簡素な図面やイラスト等を用い、居住者や、単年度理事に
おいても分かり易くすることを心がける。
② 共用部分の整備
専有部分改修の自由度が高められ、機能性の高い住宅設備機器等の導入が可能となる共用部の整備
が必要となる。
③ リフォーム履歴の保存
従来の管理組合保管図面は新築当時のものであり、各戸で実施されたリフォームの履歴が残されて
いないものが多い。そのため居住者の入れ替わりに際し、新規のリフォームを行う場合、現状の状
態の把握が困難である。したがってリフォーム申請に際し、必要な図面を各住戸ごとに保存管理し
ていく。
④ 専有部リフォームの指針作り
K団地のような高経年の住宅団地やマンションでは、各住戸で行うリフォームに際し、内装や機器
の更新だけではなく、配管類の更新も必要になってくる。そのため機器の選定や設置方法、さらに
配管種別や配管方法について内装業者任せではなくきちんとした情報を居住者に伝えるために専門
家を活用しリフォームに関する指針を作る。
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⑤ リフォームモデルの作成
家族構成の変化等に伴い既存の間取りを変えるリフォームも増えてくるが、そのモデルとなるプラ
ン及び完成イメージを居住者に伝えることで、生活スタイルに合ったリフォームの参考や住まい方
の提案となる。
⑥ 管理規約の改定
管理区分等の明確化や、リフォーム基準の策定に伴い、管理規約の細則や運用指針の改定を検討し、
総会での承認を得る必要がある。
⑦ 居住者への広報活動
高経年集合住宅において、現代の生活スタイルに合った住環境とするためには各住戸において行う
リフォームがその機会となるが、内装だけではなく間取りや、配管類の更新も考慮したリフォーム
が各住戸や建物の資産価値を高めることを伝える。その為のリフォームルールや、専有部のリフォ
ーム指針についても説明会等において理解を深めてもらうことが重要となる。
3)リフォーム基準の運用時における課題
リフォーム基準の運用に当たっては、申請から工事完了まで管理組合理事会で確認、承認すべき次の
ような事項があり、これらについての判断が求められる。
① 申請書類の審査
要求されている書類、要求事項が反映された計画図面となっているか確認判断し、施工業者への指
導が必要な場合、的確に指示する必要がある。
② 工事中の確認
設備工事等で共用部との取り合いや、共用部の工事も伴う場合等、管理組合における確認、検査が
必要となる場合がある。
③ 工事完了時の確認
工事完了時の竣工図や、施工前、工事中、完成時の各状況写真において申請通りの施工であるか確
認し、変更があった場合は変更完成図書の提出を求め確認する必要がある。またリフォーム履歴の
保存にも重要な図書となる。
4)リフォーム基準の運用に関する専門家の活用
リフォーム基準の運用に関しては上記のような課題が多く、これを建築の専門的知識のない居住者の
組織で作成、運用を含め取りまとめていくことは難しいと考えられる。したがって実効性のあるリフォ
ーム基準の作成、運用に関しては外部専門家の導入が必要となる。これには管理組合が直接外部の建築
設計コンサルタントに委託する方法と、現在管理業務委託されている管理会社に、定期的もしくは物件
単位別に委託する方法がある。外部の専門家の委託に当たっては基準の作成や、検査、確認の業務だけ
ではなく、次のような業務も委託することが望ましい。
①
管理組合で処理できる事務的な内容についてはその判断基準となるチェックリストの作成業務。
②
リフォーム工事を行う業者に対し、基準の順守を促す指導や、今後指定業者制度を取る場合、その
選定、講習等の業務。また居住者がわかりやすく、リフォーム会社に支持しやすいパンフレット、
冊子、ハンドブック等の作成。
③
リフォーム基準及び関連事項について住民への説明会の開催。
専有部のリフォーム基準の作成運用については以上のように管理組合内部だけでは処理できず、外部
委託が必要となる為、その経費の支出が生じ、予算化され総会での決議事項となる。
したがって団地、マンションの将来像を踏まえたリフォーム基準作成が各戸の資産価値はもちろん団
地、マンション全体の資産価値向上に大きく寄与すること、またその必要性を居住者に理解してもらう
ことが重要となる。
20
Ⅴ.団地活力の維持・向上のためのアンケート調査
(1)アンケート調査の実施概要
・
「団地活力の維持・向上のためのアンケート調査」は、K団地における居住状況等を把握するとともに、
団地活力の維持・向上にかかる今後の取り組みを模索することを目的として、K団地の区分所有者全
員(団地内居住者ならびに団地外に居住している方も含む)を対象に行った。
・本調査の実施概要について、以下に示す。
①調査日時
・平成 27 年 5 月実施(5 月 11 日回収〆切)
②調査対象
・K団地の区分所有者の全員を対象
③調査方法
・団地内居住者に対しては、階段毎に配布・回収
(各階段委員が配布し、居住者が各階段委員へ提出→各階段委員が管理事務所へ提出)
・団地外に居住している所有者に対しては、郵送による配布・回収
(郵送で送付し、所有者から管理事務所宛に調査票を郵送提出)
④調査票の回収結果
・配布数―――323 票(団地内居住者:283 票、団地外所有者:40 票)
・有効回収数―257 票
・有効回収率―79.6%
図 5-1
(2)団地内イベント(茶話会)の実施
・イベント名:茶話会~K団地についての茶飲み話~
・開催日
:平成 27 年 6 月 27 日(土)14:00~17:00
・場所
:K団地
・主催
:一般社団法人
・後援
:K団地
・主旨
:住人アンケートの結果報告、
管理事務所集会室
団地再生支援協会
管理自治会
モデル事業の概要説明など
・プログラム:スライドトーク・パネル展示
・参加人数
:約 30 人
図 5-2 茶話会の様子
21
茶話会チラシ
(2)アンケート調査の調査結果の概要
○団地活力の維持・向上のためのアンケート調査結果報告①
22
○団地活力の維持・向上のためのアンケート調査結果報告(K団地の今、K団地の近い将来)②
23
Ⅵ.K団地における共用施設等のあり方
(1)目的
K団地は建築後 40 年という長い歳月を経て、豊かな緑環境やコミュニティが熟成している。
これらはK団地における「貴重な資産」であり、このような資産を積極的に活用して団地活力の維持・
向上を図ることが求められる。
ここでは、団地内居住者がより快適・楽しく居住でき、また団地外の住民に魅力をアピールするよう
な取組みとして、K団地における「貴重な資産」を活用した共用施設等のあり方について検討する。
(2)K団地における共用施設等の魅力
1)K団地が織り成すみどり
K団地は築後 40 年を経過し、当初から豊かであった住環境はさらに熟成し、鎌倉の「緑の骨格」の一
部として溶け込むまでに至っている。当該敷地は、風致地区に該当し、風致条例により敷地面積 20%以
上の緑地が義務づけられているが、これを大きく上回る 36%もの緑地を確保している。
このようなK団地の持つ魅力を積極的に取り入れながら、将来に向けて豊かな環境を持続していくた
めの共用施設等のあり方について検討する。
図 6-1
緑の骨格(鎌倉特有の緑の構造)
資料:鎌倉市都市マスタープラン(2013.04.03)
図 6-2
K団地が織り成すみどり
24
2)K団地が持つ魅力的な共用施設等
K団地は、戸あたり敷地面積約 155 ㎡/戸という充実した居住環境のもとで、豊かな緑に囲まれなが
ら公園やプレイロット、緑地空間などが充実している。敷地内には2つの都市計画公園がある。
また、団地中心部には、集会所とバス停が設けられている。バス停及びロータリーはK団地の私有地
であり、ロータリー内部の花壇は市有地である。
団地全体として豊かな環境のもとで以下のような共用施設等がコミュニティ形成の場として機能して
いる。
図 6-3
K団地における共用施設等
25
<集会所の魅力付けの方向性(案)>
キッズスペース(子育て支援)では、K団
地のおじいちゃんおばあちゃんたちが交代
で子供たちをお世話
キッズスペースの隣は、高齢者向けの体
操教室やサロンなど高齢者見守りにつ
なげる空間づくり
子ども&おじいちゃんおばあちゃんがつ
ながる交流の場
もちろん、これまでのクラブ活動やボラ
ンティア活動、個人趣味活動もできる
スペースとして兼ねる
金魚
ウッドデッキ等をまわして開放性&公
園側との交流(金魚や昆虫)を導くイメ
ージ
26
■K団地グリーンツーリズム
(イメージ)
鎌倉のハイキングコースからちょっと寄り道…
グリーンツーリズムや団地見学を通して「K団地ファン」を広く市内外から呼び込む
K団地グリーンツーリズムコース
金魚
昆虫
桜並木
団地内に咲き誇るあじさい
団地マニアが好む「坂と団地」
「グリーン」活動の拠点基地で
BBQやハンモックで休憩
横浜緋桜(農水省登録品種)
K団地シンボルタワー
まるで山に居るような景観
27
シンボリックなアンテナ塔
Ⅶ.リフォームモデルプランの検討・提案(「勝手にリフォームモデル」)
(1)目的
不動産マーケットにおいて不人気な団地の一室を実際に流通させ、不動産商品としてのポテンシャ
ルを探る。
(2)現状
「築 40 年超、5 階建て、エレベーターなし」の共同住宅型の団地は、不動産マーケットにおいては
不人気物件と言われている。物件の流通には適正な価格で、投機的にではなく実需的にそこで生活す
る人たちに購入してもらう必要があるが、しかし実態はその安価な物件価格のため、同じ手間を掛け
ても低い仲介手数料しか得られないことから不動産業者のなかには、
「団地には手を出さない」という
業者も少なくない。
物件自体にも問題がある。売りだされる物件の多くは、使い古された建設当時の内装や住宅設備の
まま販売、もしくは仕上げ材のみの更新を施した程度の、魅力ない状態で販売されている。団地とい
うだけで過小評価されているにも関わらず、購買層へのアピールが全くできていない。
(3)方法
区分所有建物の転売業を行っている複数の不動産業者を訪れ、モデル事業の内容を説明し協力を仰
ぐ。協力を承諾した業者に実際に販売中の物件を購入してもらい、リノベーションを施す。完成後は、
団地居住者へのお披露目と物件の販売を兼ねたオープンルームを実施。最終的に希望者に適正価格で
売却する。
(4)結果
複数社に説明を行った結果、うち 1 社が協力を快諾。その後、さっそく販売中の物件の内見に同行。
各物件の取引事例の調査や物件の現況調査などを実施し、適正価格のアドバイスなどを行った。
結
果、専有面積が約 75 ㎡、5 階建ての 5 階部分、リフォーム履歴なしという典型的な団地の購入に至
った。特筆すべきは、マーケットでもっとも不人気な 5 階部分であること。そして、駐車場の権利が
ないということである。
K団地は分譲戸数に対
し駐車場の数が少なく、
権利の有無で物件価格
に数百万円の差がある。
表示では駅からバス 15
分となるが実際は 20 分
以上かかり、その半分が
山道であるK団地では、
駐車場の権利なし物件
は安く購入できるが、販
売の難航も予想された。
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(5)ターゲット設定と間取り案の提案
リノベーションにあたり、購入者像を明確に想定し、それに従って間取りを決定、仕上げ材の選定、
デザインを決定する必要がある。日常業務として原状回復程度のリフォームしか行っていない業者に
たいし、調査、提案を行った。
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(6)解体工事後の現地調査
解体後に再度、現地調査を行い、現況の状態の確認、図面の修正等を行った。
(7)竣工とオープンルーム
1 ヶ月半の工事期間を経て竣工。オープンルームに向けて選定した家具、小物のレイアウト。近隣住
民にオープンルーム開催のチラシをポスティング。2015 年 10 月の週末に開催。
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(8) 販売
販売価格は、近年のリフォーム済み物件の相場の約 5 割増しで開始。多数の内見者が訪れ、約 1 ヶ月
後、指値なしで申し込み、成約に至った。
(9)まとめ
リノベーション後の物件を購入したのは 40 歳前後のシングル男性。ネックと思われた駐車場は、団地
外の月極め駐車場を借りることで解決。他の物件をいくつも内見し最終的に当物件の購入を決意。物件
購入にありがちな指値もなしに、満額での成約に至った。団地に一度も住んだことのない外部からの購
入者だった。
K団地には、同時期に同タイプの販売物件が他に 2 戸あった。原状回復程度のリフォームを施したそ
れらは、別の棟の 2 階部分と 4 階部分。それぞれ駐車場権利付きという好条件にも関わらず、販売価格
は 1200 万円台と 1400 万円台。実際の成約価格はさらに安いと思われる。団地には 4 タイプの住戸タ
イプが存在する。もっとも住戸数が多いのは当物件と同じ 70 ㎡台の住戸。次に 100 ㎡(4LDK)の大
型住戸とである。当然販売価格は 100 ㎡のタイプが高くなるが、当物件は 100 ㎡タイプの物件も含めた
成約事例のなかで、飛びぬけて高額で成約することに成功した。
また、当物件の購入者以外にもこの物件を内見した 30 代の若年夫婦が団地を気に入り、2016 年 2 月
に団地内の別棟の 5 階部分の物件を購入した。当初、団地は選択肢に入っておらず、近隣の戸建てを検
討していたこの夫婦は、内見後、K団地をとても気に入り、マーケットに物件が出てくるのを数か月待
ち購入した。当然、リノベーションが前提である。
K団地に限らず、共同住宅型の団地は自然豊かな住環境を享受できる。また管理状態もよく、40 年超
の経年を感じさせない。この試みは、現代のライフスタイルに合致しない内装を更新するだけで、外部
から若年層を呼び込める好事例となったといえる。
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Ⅷ.団地ブランディング戦略の提案
資産価値の維持・向上や情報化の提案に基づき、具体の団地ブランディングに向けた方策(団地 HP の
公開や IT メディアを活用した情報発信、市との連携関係の構築等)について、他の団地での取り組み事
例を紹介しつつ提案書として整理した。
1)「K団地 空室・海外滞在者向け宿泊貸出へ」提案書(抜粋)
2)「K団地
森の市場」提案書(抜粋)
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3.今後の取組み課題
高経年分譲団地における課題本事業を通して、以下の 3 つの課題がみえてきた。
①持続可能な体制づくり
団地住民の高齢化と共に、これまで団地運営・管理の主体であった人材の世代交代が必要となってい
る。組織の再編にかかっている段階では、住民の合意形成プロセスが構築されていないため、新たな取
組みへの合意形成がむずかしい。
②耐震診断の実施
高経年マンションの流通促進にあたっては、建物の基本性能を把握しておく必要がある。とくに耐震
性に関しては安全性や資産価値への影響が大きいが、耐震診断・耐震改修は、総会での合意形成がむず
かしく、資金調達面でのハードルが高い(とくに流通させる住戸の所有者にとってのメリットは大きい
が、他の住民にはその時点でのメリットは少ない)。
③管理組合活動と個人情報保護
マンション全体の資産価値を高めるためには、住戸専有部を含めた住宅の履歴情報を保持し、必要な
時に管理組合等から情報提供していくことが求められる。コミュニティ形成の視点からも高齢者の見守
りや、空き家情報の把握などの取組みを進めたいが、個人情報保護はネックとなる。個人情報に配慮し
つつ、管理組合活動を柔軟に展開できるような仕組みづくりが求められる。
4.次年度の取組みについて
今後、新しい管理体制への移行を待って、本事業の成果をベースに上記取組み課題についての検討・
実施をスタートする。
・専用部リフォームルールの運用方法の具体化を図るとともに、リフォームモデルプランの検討・提案
をすすめる。
・団地の魅力付けとして、団地共用施設等のあり方等の提案した内容の具体の実施に向けた取り組みを
すすめる。
・団地のブランディング提案の具体化に向けた取り組みをすすめ、情報発信等を含めたK団地の魅力づ
けをすすめる。
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■事業主体の概要・連絡先
設立時期
平成 21 年 11 月 5 日
代表者名
会
長
近藤
正一
連絡先担当者名
専務理事
石井
均
住所
〒101-0032
東京都千代田区岩本町 1-13-5
電話
03-5829-4138
連絡先
ホームページ
http://www.danchisaisei.org/
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