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ビルメンテナンス業の労災防止対策で徹底すべきこと
労働安全衛生講習会における東京労働局・小山安全専門官の講演要旨 「ビルメンテナンス業の労災防止対策で徹底すべきこと」 日時:平成23年6月2日(木)14時~15時 会場:ビルメンテナンス会館3階 講師:東京労働局安全専門官 小山秀雄氏 1 年代別の事故の特徴⇒加齢に伴って事故は転落・墜落から転倒へ ビルメンテナンス業では「転倒」と「転落、墜落」と「動作の反動、無理な動作」だけ で 70%を超えている。ここまで極端にこの3つの型が多いのは他の業種ではない。日常生 活でも起きる災害が多い。 この型は、年代別に特徴的な傾向がある。「転倒」が一番多いのは 50 代以降の年代であ る。40 代から下では「墜落、転落」が一番多い。 こうした違いがどうして生じるか、高年齢者と若年者ではどこが違うか。簡単に言えば、 反射神経が違う。若い方だとよろけたりつまずいたりしてもケガをしないのに、高齢にな ると同じ動作をしても転んでしまうということがある。反射神経やバランス感覚などが鈍 くなるとどうしても転倒が増える。したがって、転倒災害というのは年齢に比例する。 40代まで「墜落、転落」が一番多い原因の一つは、墜落、転落するような作業を若い 人にさせるということがある。また、年をとった人は逆に危ないと思い、こういう作業を 避けるということも考えられる。作業機会が少なければ災害も数字的には減る。ただ、高 齢の方でも階段からの転げ落ちるという形の墜落、転落はある。 「動作の反動、無理な動作」は重い荷物を持ち上げるなどが該当する。50 代まで 10 数パ ーセントであるが、60 代、70 代以上になると逆に減る。これについても、高齢になると重 い物を持ち上げられないので、高齢者自身はじめから避ける、あるいは高齢者にさせない ということが考えられる。 事故の型と年代別災害発生件数 (平成17年~平成22年 合計数) 事故の型 20代以下 30代 40代 50代 60代 70代以上 年代毎 年代毎 年代毎 年代毎 年代毎 年代毎 件数 件数 件数 件数 件数 の比率 の比率 の比率 の比率 の比率 の比率 総計 件数 割合 転倒 36 16.9% 53 16.5% 73 24.3% 294 35.3% 683 49.3% 152 52.4% 1291 38.5% 墜落、転落 76 35.7% 122 37.9% 91 30.3% 198 23.8% 307 22.2% 79 27.2% 873 26.0% 動作の反動、無理な動作 33 15.5% 51 15.8% 55 18.3% 124 14.9% 136 9.8% 11 3.8% 410 12.2% 激突 16 7.5% 16 5.0% 26 8.7% 60 7.2% 60 4.3% 19 6.6% 197 5.9% 9 4.2% 25 7.8% 14 4.7% 56 6.7% 74 5.3% 6 2.1% 184 5.5% 19 8.9% 12 3.7% 15 5.0% 14 1.7% 21 1.5% 4 1.4% 85 2.5% 5 2.3% 7 2.2% 4 1.3% 24 2.9% 23 1.7% 2 0.7% 65 1.9% はさまれ、巻き込まれ 切れ、こすれ 飛来、落下 激突され 6 2.8% 4 1.2% 18 2.2% 28 2.0% 5 1.7% 61 1.8% 13 6.1% 10 3.1% 7 2.3% 9 1.1% 7 0.5% 4 1.4% 50 1.5% 崩壊、倒壊 2 0.9% 7 2.2% 3 1.0% 13 1.6% 15 1.1% 3 1.0% 43 1.3% 高温・低温の物との接触 5 2.3% 2 0.6% 2 0.7% 9 1.1% 13 0.9% 3 1.0% 34 1.0% 有害物等との接触 3 1.4% 7 2.2% 3 1.0% 3 0.4% 5 0.4% 21 0.6% 感電 1 0.3% 2 0.2% 3 0.2% 6 0.2% 踏み抜き 3 0.9% 4 0.1% 1 0.0% 20 0.6% 10 0.3% 交通事故(道路) 1 0.3% おぼれ その他 1 分類不能 合計 224 0.5% 1 0.3% 1 0.3% 322 6 2.0% 300 0.1% 5 0.6% 5 0.4% 4 0.5% 5 0.4% 833 1 1 1386 2 290 0.7% 3355 2 事故の型と経験年数の関係⇒新入社員に対する安全教育の徹底を! 下の表は、経験年数と事故の件数を表したものである。経験年数 1 カ月から2カ月以内 が 127 件、1 年以内が 805 件である。経験年数が 1 カ月以上という人は多少慣れてきた人 が該当する。そういう人が災害に遭う確率が高い。 これはどういうことかと言えば、1 カ月くらいたってある程度作業に慣れ、緊張感が薄れ たときに、気の緩みと経験不足が重なって災害に遭うと考えられる。 また、1 年以内も多い。全体で約 3,300 件の災害のうち、約 800 件が勤続年数 1 年以内 の従業員で発生している。1 年以内の従業員の災害を減らすことができれば、おそらく 1 年 以上の従業員の災害も減っていくものと思われる。また、従業員も勤続年齢を重ねること でいい意味で作業に慣れ、災害を危険予知できるようになったり危なさに敏感になる。 その意味で、労働災害を減らすためには、まず新入社員教育を一生懸命やって欲しい。 事故の型と経験年数の関係 経験年 おぼ 数 れ 0ヶ月 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月 7ヶ月 8ヶ月 9ヶ月 1 1 1 1 1 1 10ヶ月 11ヶ月 0年合計 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年 22年 23年 24年 25年 26年以上 総計 その 他 0 6 2 1 2 1 1 1 1 1 2 はさ まれ、 交通 巻き 事故 込ま 激突 (道 れ 感電 激突 され 路) 2 10 4 7 7 6 5 4 6 2 5 2 60 19 19 17 15 13 11 6 3 5 6 1 2 3 1 3 1 1 1 2 1 5 14 7 5 8 3 6 2 6 2 5 63 28 12 14 8 13 10 8 5 8 5 7 2 1 3 2 2 2 1 3 2 10 10 8 7 5 4 2 1 2 1 1 1 2 5 2 13 8 5 3 2 4 2 1 4 2 1 2 1 1 2 2 8 9 2 3 2 1 1 1 3 1 1 1 1 1 1 1 1 1 3 1 1 2 2 1 1 高温・ 低温 の物 切 墜 との れ、こ 落、 接触 すれ 転落 転倒 1 1 1 1 2 3 2 3 5 2 4 2 2 2 11 27 17 20 11 13 22 11 19 8 15 8 16 42 39 33 32 20 32 25 20 14 19 5 27 182 9 107 8 107 7 86 8 50 3 47 4 42 3 42 5 28 3 20 1 32 1 15 13 12 1 7 1 19 9 1 9 6 5 1 13 3 1 4 1 102 69 50 1 30 27 25 1 16 13 18 7 1 12 5 4 5 3 2 2 2 3 2 3 1 1 3 297 163 139 117 89 82 65 57 45 32 47 28 23 16 19 17 5 5 8 4 6 3 4 1 1 4 11 14 0 6 4 410 1 0 1 0 0 20 184 1 2 6 197 2 61 4 50 0 34 動作 の反 動、 無理 飛 崩 踏み な動 来、 分類 壊、 抜き 作 落下 不能 倒壊 1 285 873 1,291 1 5 21 15 4 9 9 8 8 7 6 5 5 3 3 1 2 2 1 1 3 1 2 1 1 1 2 有害 物等 との 接触 2 1 1 1 1 2 1 1 15 10 11 8 3 7 2 3 1 1 3 3 1 12 8 4 4 3 2 2 1 7 5 3 2 1 1 1 1 2 2 1 2 1 1 1 1 1 2 1 2 1 65 0 10 0 43 合計 42 127 95 79 83 60 86 55 66 37 52 23 805 449 374 302 213 200 158 141 112 77 113 63 47 43 37 47 18 22 18 11 30 10 9 1 4 9 0 42 21 3,355 3 事故の型別と起因物との関係⇒高所や階段作業時の安全基準の作成を! 上記した3つの主要な事故の型と起因物との関係を表したものが下表である。 「墜落、転落」の起因物は、 「階段、さん橋」が 320 件、 「はしご等」が 309 件と、この 2つで墜落転落の7割を占める。ここで言う、 「はしご等」とは、脚立、踏み台などであり、 例えば電球交換などを行う作業である。 墜落・転落災害の防止のためには、はしごや脚立の作業でご自分の会社の安全基準を是 非とも作ってもらう、あるいは見直してもらうことが必要である。 階段は上ってもいいけど、下りるなという話しがある。上っているときは足を踏み外し 墜落転落、転倒、動作の反動、無理な動作と起因物の関係 起因物 その他の一般動力機械 動力伝導機構 1 動力機械 エレベータ、リフト ゴンドラ その他の乗物 その他の動力運搬機 トラック フォークリフト 乗用車、バス、バイク 鉄道車両 2 もの上げ装置、運搬機械 その他の装置、設備 その他の電気設備 その他の溶接装置 その他の用具 はしご等 手工具 人力クレーン等 人力運搬機 人力機械 送配電線等 電力設備 3 その他の装置 その他の仮設物、建築物、構築物等 屋根、はり、もや、けた、合掌 開口部 階段、さん橋 建築物、構築物 作業床、歩み板 足場 通路 4 仮設物、建築物、構築物等 その他の危険物、有害物等 その他の材料 金属材料 木材、竹材 5 物質、材料 荷姿の物 機械装置 6 荷 水 その他の環境等 立木等 7 環境等 その他の起因物 起因物なし 分類不能 9 その他 合計 墜落、転 落 動作の反 動、無理 な動作 転倒 総計 2 2 1 1 1 2 2 8 5 10 2 4 10 2 8 2 2 2 2 1 1 3 2 8 1 4 1 26 3 3 12 1 1 5 23 1 57 1 28 309 74 15 7 1 3 1 43 35 115 2 1 124 334 13 1 45 1 15 1 1 22 10 6 33 9 1 1 14 1 366 201 25 15 16 320 57 23 5 11 472 85 18 3 148 114 137 1 499 1 33 20 9 940 18 4 1 19 86 6 92 113 7 120 10 14 2 1 21 1 21 50 2 73 873 1 15 2 1 10 11 3 1 4 1518 1 24 24 81 15 20 501 191 169 6 535 25 106 1 14 2 1 3 1 652 38 26 9 108 3 120 1291 30 158 5 193 410 2574 ても手をつくことができる。上っているときは軽傷で済むが、下りているときにさらに下 3 に足を踏み外すと重傷になる。物を両手に持っている、大きな物を持って階段を下りてい る時は特に大きなケガの危険がある。 はしごや脚立等を使用した高所作業や階段の上り下り時の作業の場合の安全基準を作成 し、従業員にその基準を守らせ、注意させるよう教育を徹底していただきたい。 4