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第3.6節 繰り返し計算 - 内閣府経済社会総合研究所
第 3.6 節 繰り返し計算 第 3.5 節の説明における、サブモデルに外生変数として用いた各部門の生産額 と、均衡産出量モデルによって導かれた各部門の生産額は、厳密に言えば整合 的ではなく一致しない。上の価格モデルで国産品価格が変化しているから、そ れに対応して最終需要ベクトルが変化するはずであるからである 5。そこで、サ ブモデルに外生変数として用いた各部門の生産額と、均衡産出量モデルによっ て導かれた各部門の生産額が一致するまで、繰り返し計算を実施した。 繰り返し計算を行う為、最終需要部門がコブ=ダグラス型効用関数と一定の 予算を制約として行動すると仮定した。コブ=ダグラス型効用関数とは以下の ような関数である。 n u = α ∏ Fi βi (16) i ただし、 u は効用水準、 Fi は i 財の(実質)最終需要額である。効用関数の関数 形がコブ=ダグラス型であると仮定した場合、分配率(名目シェア)が一定に なるから、最終需要部門では各財・サービスに対する名目最終需要シェアが一 定になる6。 具体的なシミュレーションの繰り返し計算は以下のような手続きに従って行 った(図 9)。まず第一に、素材別サブモデルでリサイクル関連部門の価格及び 中間投入係数及び輸入係数、外生的に与えた輸入品価格、屑・スクラップ価格 を求める。第二に、推定したリサイクル関連部門の価格及び中間投入係数及び 輸入係数、外生的に与えた輸入品価格、屑・スクラップ価格をさらに、均衡価 格モデルに入力して国産品価格を求める。推定した国産品価格から国内需要価 格を求める。第三に、サブモデル及び均衡価格モデルに対応した実質最終需要 額を計算する。第四に、推定した実質最終需要額から均衡産出量を求める。そ して、サブモデルで与えた生産額 X1 と均衡産出量モデルで決定した生産額 X1 が 一致しているか比較し、大きな乖離がなければそこで計算を終了し、もしも大 きな乖離があるならば再度、サブモデルに推定した生産額を外生変数として入 力する。この計算手順を繰り返すことによって、最終的にはサブモデルに外生 5 この点については内閣府経済社会総合研究所が主催した「21 世紀の日本を考える国際フォーラム」にお いてイーストアングリア大学(University of East Anglia)、地球環境に関する社会経済研究所(Center for Social and Economic Research on the Global Environment(CSERGE))の Research Fellow であるティン チ氏(Robert Tinch)に指摘されたものである。 6 最終需要部門である家計消費支出部門、政府最終消費支出部門、総固定資本形成部門、輸出部門によっ て最終需要額とその構成の決定メカニズムは異なっているはずであるから、それを一括りにすることは、 厳密に言えば問題がある。ここでは繰り返し計算のプログラムを構築していく初期段階のモデルとして、 上のような単純化した仮定を置いたものである。最終需要部門別に支出シェアを決定するプログラムの開 発は今後の課題であると考えている。 29 変数として用いた各部門の生産額と、均衡産出量モデルによって導かれた各部 門の生産額を一致させる。これが一致したならば、CO2 排出量を前節の(15)式に 基づいて計算する。この研究プロジェクトでは五素材同時リサイクル・シミュ レーションを実施しているが、その際に上記の繰り返し計算を実施した。 引用・参考文献 宮沢健一編(1991) 『経済学入門シリーズ 産業連関分析入門』、日本経済新聞社、 第 5 版、初出 1975 年。 黒田昌裕(1984)『実証経済学入門』、日本評論社。 30 あらかじめ設定しておく変数 外生変数(2) バージン財とリサイクル財の需要量(生産額)合計, 補助金,税率,廃棄物発生量 Step 1 素材別サブモデル 外生変数(1) 輸入品価格 p m1 , 輸入係数 M̂ 1 サブモデルで決定した サブモデルで決定した 変数(1) 変数(2) 国産品価格 p d1 ,中間投入係数 A11 , 生産額 X1 ,屑価格 p s , A12 , A 21 , A S1 ,輸入係数 M̂ 1 外生変数(3) 中間投入係数 外生変数(4) 粗付加価値デフレーター A 22 ,輸 入 係 数 p V ,粗付加価値率 V2 M̂ 2 ,輸入品価格 p m2 Step 2 均衡価格モデル 均衡価格 モデルで決定した変数 外生変数(5) 国産品価格 p d2 名目最終需要合計 Step 3 実質最終需要ベクトルの決定,中間投入係数行列,輸入係数行列の編成 Step 4 均衡産出量モデル 均衡産出量モデルで決定した変数 NO 生産額 X1 , X 2 サブモデルで与えた X1 と 均衡産出量モデルで決定した X1 は一致しているか? YES Stop 図 9 リサイクル・モデル・シミュレーションの繰り返し計算フロー 31 32