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巻頭言 ・危険ゼロへの現場力アップ 神谷明文 基礎講座 ・加圧下の爆発

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巻頭言 ・危険ゼロへの現場力アップ 神谷明文 基礎講座 ・加圧下の爆発
TIIS ニュース No.241
TIISニュース 2010年07月10日発行
【編集・発行】
社団法人産業安全技術協会
〒350-1328 埼玉県狭山市広瀬台2丁目16番26号
TEL.04-2955-9901 FAX.04-2955-9902
ホームページ http://www.ankyo.or.jp
【印刷】株式会社パイオニアメディアクリエイツ
CONTENTS
巻頭言 ............................................................................... 3
・危険ゼロへの現場力アップ
神谷明文
基礎講座 ............................................................................. 4
・加圧下の爆発性ガス雰囲気中における放電火花の点火限界
TIIS紹介 ............................................................................. 6
・機械安全に関する産業安全技術協会の取組(3)
̶̶リスクアセスメントとリスク低減化方策の文書化̶̶
安全衛生フォーラム ........................................................... 9
・経年設備の事故とリスク評価
訪問記..............................................................................
12
・日立造船株式会社
検定だより ......................................................................
13
・平成21年度のアンケート調査結果報告
海外だより ......................................................................
15
・イギリスの健康安全研究所(HSL)を訪ねて
講習会の案内 ...................................................................
16
・安全技術講習会等のお知らせ
会員の声 ..........................................................................
17
表紙写真:安 全 い ろ は歌留多
「いろはかるた」はそれぞれの郷土に合わ
せて、また、目的に合わせて読替がなされて
おります。
写真
(上)は、労働者の安全啓発に活用さ
れた例であり、日立造船株式会社が昭和30
年代に配布したカルタです。日立造船株式
会社様のご了解をいただいて、4回に分け掲
載いたします。今回は第3回に当たり、夏の
青空模様の台紙に貼り付けてみました。
今一度、働く人の安全と健康のためにご
一読頂ければ幸いです。なお、拡大したコ
ピーは大阪産業安全技術館
(入場無料)で見
ることが出来ます。
・ISO/TC94/SC6 眼及び顔面保護具規格の動向と
製品試験の汎用化実施について
村上 渉
協会からのお知らせ ........................................................
18
・平成22年度第1回理事会及び通常総会の報告
・第2試験棟増築
・関西事務所だより
・室井良樹 氏が「厚生労働大臣表彰」において「功績賞」の栄誉
・新入会員
ISO9001 認 証 取 得
JQA-QM3877検 定 部
2
TIIS ニュース No.241
巻頭言
危険ゼロへの現場力アップ
社団法人 産業安全技術協会 副会長
日立造船株式会社 常務取締役
み たに
神谷 明文
当協会の副会長を務めさせていただいております日立造船(株)の神谷でございます。当協会と
は関西支部時代も含め長年にわたるご縁で、会員の皆様方には大変お世話になっており感謝申し
上げます。ものづくり会社に携わる者の一人として、安全衛生に対する思いに触れさせていただき
たいと思います。
T I I SニュースN o .239の表紙より4回にわたり安全衛生の「いろは歌留多」が掲載されています。
これは表紙の裏面に記載されているように昭和30年代に作成されたものでありますが、改めて一つ
ひとつを読んでみると昔も今も危険防止に対する「安全衛生への道しるべ」への内容は、多少の表現
に違いはあっても「安全の基本」は変わることなく現在でも十分に啓発できるものであります。
しかしながら、近年、生産現場では、生産工程の多様化・複雑化、新たな機械設備の導入、作業の効
率化や作業者の多能化等により十分な教育訓練がなされないままに、安全を作業者の自己判断に
任せきりとしているケースも散見されます。また団塊の世代が退職時期を迎えるなど、生産現場で
は若い世代の災害が増加傾向にあると言われています。これらはベテラン指導者からの安全技量
を含む仕事のノウハウの伝承、作業者の熟練の不足など、また、ゆとり教育なども相俟って若年層
の危険に対する感受性が薄れている現象が懸念されるところであります。
これらのことに対応していくには、若年層の経験不足を補い危険に対する感受性を高めるため
に、多くのヒヤリハット事例を分析し活用できる体制を作り上げ、現場を中心に現場を見て、現場
で考える。危険防止のための危険予知やリスクアセスメントに積極的に取り組み、現場で発生する
諸課題を主体的に発見し、自ら危険要因を見出し、解決する力を養う「現場力」を鍛える必要がある
と思います。
この安全に強い現場力を鍛えるためには、作業者個人の経験や能力のみに依存することなく日
常の作業の中で潜在する危険を具体的に示し、一定条件下で意図的に災害が発生し得る状態を作
り出す。そこで生じる現象を疑似的に体験・体感することで「視て、聞いて、感じる」というプロセス
を経て、身近な危険を直感的に理解し、危険に対する感受性を向上させることが「安全は自分自身
が責任者である」という認識に繋がり、現場力向上の一助になると考えます。
従来の座学を中心とした安全衛生教育が知識の習得に適している一方で、頭の中だけでなく経
験として学ぶ体験型・体感型教育が現場においては必要とされます。また、若年作業者の経験不足
等を補い一人ひとりの危険に対する安全意識の向上をはかるとともに、同種災害に対する繰り返
し災害防止への安全技量の伝承にも繋がるものであります。
これらのことから、当協会で実施されている化学物質の爆発・火災、静電気用品等の帯電、配線用
器具の防爆、衛生保護具などに係わる危険性評価や安全性能試験及び検定等の業務は危険防止に
直接関連する「安全の先取り」
「安全の視える化」であり、安全、安心がクローズアップされる中で当
協会の役割は将来にわたり大変重要、不可欠であります。
今後とも当協会の更なる発展に向け、会員の皆様の多大のご指導、ご鞭撻をお願いいたします。
3
TIIS ニュース No.241
◆加圧下の爆発性ガス雰囲気中における
放電火花の点火限界
る。混合気の気圧を常圧(絶対気圧P =0.1MPa)から増
一般の防爆電気機器では、爆発性ガス雰囲気とし
で極小値に達し、その後は上昇傾向を示す。
て、常温及び常圧(大気圧)下における爆発性ガスを想
図2は、図1の結果から気圧をパラメータにして、回
定しており、IE C規格においても常温常圧下での点火
路インダクタンス−最小点火電流の関係でプロット
限界が示されています。
したもので、回路インダクタンスが100m H以下では
技術の進歩は、生産工程において特殊な雰囲気、例
常圧と同様な勾配を示している。
加していくと、点火限界は最初低下するが、ある気圧
えば、加圧下の爆発性ガス雰囲気中でセンサー等の電
気機器を使用する場合も想定されます。このような機
2.抵抗回路における点火限界
器の開発には、基本的なデータとして、加圧下の点火
図3は、抵抗回路における気圧と最小点火電流の関
限界が必要になります。
係を測定した結果である。この場合も誘導回路の場合
こ こ で は、一 例 と し て、過 去 の 研 究 報 告(1)の 中 か
と同様に、最小点火電流は、最初、気圧の上昇と共に低
ら、加圧下の爆発性ガス雰囲気中における放電火花の
下して極小値に達し、その後は気圧の増加に連れて増
点火限界についてのデータを紹介します。
大する。しかし、1.1M P a以上では、最小点火電流が大
きくならない傾向が見られる。
実験は、メタンを可燃性ガス、空気を支燃性ガスと
図4は、図3の結果から気圧をパラメータにして、電
した爆発性混合ガスを、0.1∼1.5M P a(絶対圧)まで加
源電圧−最小点火電流の関係でプロットしたもので
圧したときの放電火花による点火限界を測定してい
ある。
る。点火試験装置にはI E C型火花発生装置を用い、火
花発生回路は直流電源(鉛蓄電池)を使用した誘導回
3.容量回路における点火限界
路、抵抗回路及び容量回路である。
図5は、容量回路における気圧と最小点火電圧の関
点火限界の決定は、火花発生装置で連続3,000回の
係を測定した結果である。この場合は、誘導回路又は
開閉火花を発生させ、3,000回以内の火花で点火した
抵抗回路の場合のように、或る気圧で極小値となるこ
回路電流 I e(誘導回路及び抵抗回路の場合)又は電源
とはなく、気圧と共に最小点火電圧が減少して次第に
電圧(抵抗回路の場合)
E e を求め、次に、回路電流又は
飽和値に近づく傾向を示す。また、キャパシティの大
電源電圧のみを減少させて3,000回の火花で点火しな
きい回路では、気圧上昇による変化が見られなくなる。
い回路電流 I m又は電源電圧E m を求め、
I e とI m 又は
図6は、図5の 結 果 か ら 気 圧 を パ ラ メ ー タ に し て、
Ee とEm の算術平均値を最小点火限界としている。
キャパシティ−最小点火電圧の関係でプロットした
なお、加圧(0.3及び0.5M P a)下での最小点火限界濃
ものである。
度を測定し、常温常圧下のメタン−空気混合気体の最
[図2、図4及び図6中の点線は、IEC60079-11に示された
小点火限界濃度(8.3∼8.5%(体積比))と変わりがない
常温常圧下の試験ガスⅡAにおける点火限界を示す。]
ことを確認して、実験は濃度を8.3∼8.5%で測定して
((社)産業安全技術協会 参与 市川健二)
いる。
[参考文献]
1.誘導回路における点火限界
4
(1)田中隆二:加圧下のメタン−空気混合気中におけ
図1は、直列誘導回路における電源電圧E =24Vの場
る本質安全防爆電気回路の基礎的研究、労働省産業安
合の気圧と最小点火電流の関係を測定した結果であ
全研究所研究報告(RIIS-RR17-7)、Mar., 1969
TIIS ニュース No.241
10000
10000
L
S
24V
1000
A(IEC60079-11)
最小点火電流(mA)
最小点火電流(mA)
R
0.1mH
3mH
100
1000
0.1MPa
0.3MPa
100
95mH
0.5∼1.3MPa
1000mH
10
0
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8
絶対気圧(MPa)
図1.誘導回路における混合気圧力の影響
10
0.1
1
10
インダクタンス(mH)
100
1000
図2.加圧下の混合気に対する誘導回路火花による点火限界
10000
10000
R
S
E
最小点火電流(mA)
1000
48V
100
210V
10
0
0.2
0.4
0.6 0.8
1
絶対気圧(MPa)
A(IEC60079-11)
1000
P=1.3MPa
100
P=0.5MPa
120V 72V
1.2
1.4
10
10
1.6
図3.抵抗回路における混合気圧力の影響
100
電源電圧(V)
1000
図4.加圧下の混合気に対する抵抗回路火花による点火限界
1000
1000
R
E
S
A(IEC60079-11)
最小点火電圧(V)
0.3μF
最小点火電圧(V)
最小点火電流(mA)
P=0.1MPa
24V
0.1μF
0.05μF
100
1.0μF
0.2
P=0.3MPa
P=1.1MPa
100μF
0
100
P=0.5MPa
10μF
10
P=0.1MPa
0.4
0.6
0.8
絶対圧力(MPa)
1
図5.容量回路における混合気圧力の影響
1.2
10
0.01
0.1
1
10
キャパシタンス(μF)
100
1000
図6.加圧下の混合気に対する容量回路火花による点火限界
5
TIIS ニュース No.241
TIIS紹介
◆ 機械安全に関する産業安全技術協会の
取組(3)
1. 文書化のメリット
̶̶リスクアセスメントとリスク低減化方策の文書化̶̶
安全基準に関する指針(平成19年7月に改正)」
(以下、
労働安全衛生法の下で公表された「機械の包括的な
「指針」)に準拠してリスクアセスメントとリスク低減
前回までに、機械安全におけるリスクアセスメント
化方策を行うことは、機械設備に起因する労働災害の
とリスク低減化方策の実施は労働安全衛生法第28条
リスクレベルを減じることが出来るという第一義的
の2で規定されている一方、世界的には最早変えるこ
な目的だけでなく、国際化をも可能にすることを前回
との出来ない流れであることを述べました。
「これは、
では述べさせて頂きました。しかし、実施するだけで
大変だ!」と思われた方がいらっしゃるかも知れませ
はやはり不足で、その計画、実施過程や結果を文書化
んが、筆者の経験では、大なり小なり、あるいは、意識
することも非常に大事なことです。そして、文書化す
しないまでも、多くは機械類の設計製造や設備の導入
ることで、さらに以下のようなメリットのあることが
設置段階などで、これに類似のことは実施されている
お分かり頂けると思います(図1)。
と感じています。逆に実施しないことには自分たちが
① 論理的・網羅的に実施出来たのか否か、自ら確認出
設計製造した機械類を怖くてお客さんに使って頂く
ことが出来ないし、事業者の方は従業員(使用者)に使
来ること。
② 残留リスク情報を容易に提供出来ること(使用者
への安全・安心の提供)。
用させることも出来ないはずです。
重要なことは、実施したリスクアセスメントやリス
③ 第三者への説明責任の遂行が容易になること。
ク低減化方策が論理的、かつ、網羅的であることを自
④ 国際化しやすくなること(国際規格への整合化に
ら確認し、そして、その結果を使用者や第三者が容易
よる海外マーケットへの進出)。
に理解し、活用出来る情報として文書化されているか
これらメリットを享受するために作成する文書は
どうかです。
多くの人に分かり易く、使い易いものでなければ意味
今回は、その文書化について述べたいと思います。
がありません。
(目的)
労働災害のリスクレベルの低減下
文書化のメリッ卜
①論理的・網羅的に実施出来た
のか否かの確認
労
働
安
全
衛
生
法
指
針
︵
=
国
際
規
格
︶
リ
ス
リク
スア
クセ
低ス
減メ
化ン
方ト
策・
文
書
化
②残留リスク情報の提供(使用
者への安全・安心提供)
③第三者への説明責任の遂行
④国際化(国際規格のへの整合
化による海外マーケッ卜進出
の容易さ)
図1 文書化のメリット
6
TIIS ニュース No.241
2. 国際規格に基づく文書化
る。供給者適合宣言は、規制又は非規制を問わず、
欧州機械指令では、機械類のほとんどが供給者適合
単独で使用してもよいし、他の適合性評価手段と組
宣言(又は、適合宣言)とその裏付けとなる支援文書に
よるCEマーキングが可能です。
さ ら に 欧 州 以 外 で もC Eマ ー キ ン グ の 合 理 性 や
WTO/TBT協定に基づく規格そのものの標準化のた
めに前記適合宣言と支援文書が世界的に通用するよ
み合わせて使用してもよい。
(注)責 任 者 は 適 合 宣 言 の 時 点 で、社 内 文 書(職 務 権
限、組織、人事配置など)などで裏付け出来るようにし
ておくべきです。
うになってきたのではないでしょうか。日本国内を含
め、前回で取り上げたB R I C (
s ブラジル、ロシア、イン
ド、中国)やV I S T A(ベトナム、インドネシア、南アフ
リカ、トルコ、アルゼンチン)などには有効なものだと
思います。ここでは、適合宣言と支援文書作成に参考
6項(適合宣言書の内容)
:
6.1 適合宣言の発行者は、適合宣言の受領者が次
の事項を識別するのに十分な情報を、適合宜言書が
含んでいることを確実にしなければならない。
となる規格JISQ17050-1[1]とJISQ17050-2[2]を紹介し
− 適合宣言の発行者(注1)
ます。詳しくは原本を参照頂くとして、それらの適用
− 宣言の対象(注2)
範囲、などポイントを以下の通り枠内に抜粋し、筆者
− 適合を宣言する根拠とした規格又は他の規定
が(注)として必要と思う箇所に下線を付し補足しま
す。
な お、こ れ ら のJ I S規 格 は、そ れ ぞ れ 国 際 規 格 の
要求事項
− 適合宣言の発行者を代表する署名者又は代理
署名者
ISO/IEC17050-1[3]、ISO/IEC17050-2[4]に整合した規
(注1)企業名、住所など
格なので、前記J I S規格を取り上げることで国際規格
(注2)対象となる機械類の名称、型式、製造日など
につながるものとして扱いました。
以上の他、適合宣言書の様式、適合宣言書に含めなけ
【JISQ17050-1からの抜粋】
ればならない事項がJISQ17050-1に定められています。
1項(適用範囲)
:
分野を問わず、ある対象の規定要求事項(注)への
【JISQ17050-2からの抜粋】
適合を証明することが望ましいか又は必要な場合
1項(適用範囲)
:
の、供給者適合宣言に対する一般要求事項を規定す
この規格はJ I S Q17050-1が取り扱う供給者適合宣
る。この規格における供給者適合宣言の対象には製
言書を実質的に裏付けるための支援文書(注)に対
品、プロセス、マネジメントシステム、人又は機関
する一般要求事項を規定する。
がある。この規格は、適合宣言を行うための個別の
対象を限定するものではない。
(注)支援文書は、関係当局の要求に応じ必要な範囲
で利用可能でなければなりません。関係当局以外の第
(注)規定要求事項とは、一般的に仕向け地の国家規
三者にも利用可能であることが推奨されています。ま
格(J I S規格、A N S I規格など)、地域規格(例E N規格な
た、保管期限は関係法令で最低保管期限が定められて
ど)、国際規格(例I S O規格/ I E C規格など)、団体規
いる場合は、それを遵守することはもちろんですが、
格、及び、二者間で合意した仕様、社内規格など、参照
顧客やその他の利害関係者の要求も考慮しなければ
出来るものでなければなりません。
なりません。
4項(適合宣言の目的)
:
5項(支援文書の内容)
:
識別された対象物が宣言書中の規定要求事項に適
5.2b) その他の関連情報(注1)
合しているという保証を与えること、並びにその
5.3 適合宣言の有効性に影響を与える何らかの
適合及び宣言の責任者(注)を明確にすることであ
「変更」があればこれを文書化しなければならない。
(注2)
7
TIIS ニュース No.241
(注1)その他の関連情報の例として、リスク分析が要求
されていますが、これに関しては3項で述べます。
施記録の様式には一つの解答というものはありませ
ん。組織内部の多くの方の知識を集めて議論しながら
(注2)供給者では設計変更の手順が必要です。その手順
経験を積み重ねてP D C Aのサイクルを回すことで精
に合わせて適合宣言/支援文書の見直しの手順を含め
度の向上を図って行くべきものだと思います。まずは
なければなりません。手順がないと混乱するかも分か
一定の手順に従って実行してみることが重要です。
りませんが、ISO9000のマネジメントシステムをお持
文書類を効率的に作成すること、すなわち、1回の文
ちの組織にとっては問題のないことだと思います。
書化で本稿の2項と3項をカバーできれば文書化のメ
リットを早く享受出来るようになります。
以上、JISQ17050-1/-2の要求事項のポイントを抜粋
しかしながら、日々の業務をこなしておられる方々
しましたが、お気づきのように機械の設計製造過程で
にとっては、今までとは少し違う手順で文書化を行わ
新たに手間暇をかけて作成するような文書類はないよ
なければならいため、経験がないと、なかなか思うよ
うに思えます。ほんの少し工夫するだけで、設計段階で
うにはかどらないと思います。
作成可能な文書ばかりだと思います。
協会では、このような方々にリスクアセスメントと
リスク低減化、ならびに、文書化を効率的に進めること
3. リスクアセスメントとリスク低減化方策の文
書化
が出来るよう支援させて頂きます。次回は、支援の具体
的な内容と手順について述べさせていただきます。
リスクアセスメントやリスク低減化方策における
文書化は、規格化されていないのが現状です。おそら
く、個々の組織の事情、機械類の多様性を考えると、標
準化は難しいのかも分かりません。
線香花火
夏といえば花火。夜空に咲く打ち上げ花火を思
い浮かべることが多いと思いますが、おもちゃ花
とはいえ、その実例が中央労働災害防止協会から「機
火の代表格である線香花火もまた趣があります。
械設備のリスクアセスメントマニュアル機械設備製
江戸時代に藁に火薬を付け香炉に線香のように
[5]、
[6]、
造者用」
および、
「同別冊」
として公表されてい
立てて遊んだことから線香花火という名がつきま
ます。これらマニュアルは非常に参考になりますので
した。関東では全体が和紙の紙縒りでできている
一読をお奨めします。例えば、両マニュアルとも、指針
「長手」と呼ばれるもの、関西では手に持つ部分が
の別図(機械の製造を行う者による危険性又は有害性
藁でできていて先端に黒色の火薬がついている
等の調査及びリスク低減の手順)のステップごとに必
「すぼて」と呼ばれるものが一般的です。
要な情報を引用しながら解説されています。
点火直後の火の玉「牡丹」、威勢よく火花が飛び
また、マニュアル別冊では、リスクアセスメントの
散る「松葉」、火花が長く散る「柳」、最後の消え行く
実例を挙げ、記録の様式と記入例などが記述されてい
姿「散り菊」と表情を変えます。火薬の量0.06から
ます。
0.08gの世界で起こる現象は神秘的で、儚く繊細
これらを参考に、まずは実行してみることが重要で
な美しさはとても心に響きます。
す。なぜなら、リスクアセスメントの手法やリスク評
多くの花火の中でもわびさびを感じさせてくれ
価、それに基づくリスク低減化方策、そして、それら実
るのは線香花火なのかもしれません。
[1] JISQ17050-1:2005(適合性評価−供給者適合宣言−第1部:一般要求事項)
[2] JISQ17050-2:2005(適合性評価−供給者適合宣言−第2部:支援文書)
[3] ISO/IEC17050-1:2004 Conformity assessment - Supplier's declaration of conformity - Part 1: General
requirements
[4] ISO/IEC17050-2:2004 Conformity assessment -- Supplier's declaration of conformity - Part 2:
Supporting documentation
[5] http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/dl/100524-1.pdf
[6] http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/dl/100524-2.pdf
8
TIIS ニュース No.241
安 全 衛 生 フ ォー ラ ム
2.設備の事故要因
◆経年設備の事故とリスク評価
1.はじめに
最近のわが国の製造設備による事故は、経年設備の
日本の製造業の設備は、統計的にみると設備年齢が
増加に伴う設備・機器の劣化など設備要因によるもの
15年以上となっており、アメリカの設備と比較して
が多いが、その背景に熟練技術者の不足などに伴う安
も古い設備が多いと言われている。これら経年設備の
全管理技術の低下、生産の効率化のための設備の過酷
中には、老朽化したものも多く、それにともなう摩耗、
な使用など人的または経済的要因が挙げられる。 亀裂、破損などによる故障や事故が増加する傾向にあ
経年設備の事故については、化学や鉄鋼などの設備
る。
について報告される場合が多い。高圧ガス保安協会の
設備・機器は、一定の耐用年数が近づけば交換する
データによると、高圧ガス設備での災害は、年々増加
ことを考える必要があるが、経済的に考えると、点検・
しており、平成16年107件、平成17年124件、平成18年
検査を通して、できるだけ長期間設備の使用を考える
163件、平成19年241件、平成20年257件と毎年増加し
のは必然であろう。一部の家電製品のように機器が故
てきている。図1は、平成16年から平成20年までに発
障しても交換すればあまり影響が出ないものは、故障
生した高圧ガス設備における漏えい、破断、火災など
するまで使用しても差し支えないと思われるが、製造
の災害の原因別の発生件数である。
設備のように故障によって大きな災害が発生したり、
高圧ガス設備による災害の発生要因のうち、設備の
設備が長期間使用できず大きな経済損出が出ること
腐食、劣化、点検不良など設備自体の破損・故障によ
が考えられる場合には、設備・機器の計画的な点検、検
るものが最も多く占め、この要因による災害も年々増
査及び交換が必要となってくる。
加して行く傾向にある。たとえば、平成20年において
ここでは、経年した設備・機器による事故事例など
は、腐食などの設備要因による災害は全体の約55%
から、これら設備・機器の安全を確保する上での問題
を占めており、次いで運転・工事ミスによるもの(約
点、リスク評価のあり方などについて考えてみたい。
32%)、設 計・構 造 不 良 に よ る も の(約9%)、管 理・操
作・整備不備によるもの(約4%)となっている。
160
平成16年
17年
18年
19年
20年
140
発生件数
120
100
80
60
40
20
0
備
良
良
作
操
劣
・
・
食
腐
工
・
・
化
設
事
基
点
構
・
ミ
準
検
計
ス
不
不
不
造
・
転
運
理
管
図1 高圧ガス設備における漏えい、破断、火災などの災害の原因別の発生件数(平成16∼20年)
9
TIIS ニュース No.241
3.老朽化機器・部材による事故事例
(4)蒸留缶の亀裂
化学工業などのプラント産業での爆発・火災災害の
発生年月:平成12年12月
うち、老朽化した設備・機器による災害は、それほど
死傷者数:死亡1、負傷1
多くは報告されていないが、主な事例を次にあげる。
発生状況:
真空蒸留装置で粗脂肪酸を蒸留して脂肪酸を製
(1)配管の亀裂
造する工程において、誤って蒸留終了後も加熱を続
発生年月:平成17年6月
けたため、蒸留缶内部の脂肪酸残滓が熱分解した。
死傷者数:0
蒸留缶内部の圧力が上昇し、老朽化して亀裂が入っ
発生状況:
ていた蒸留缶から分解ガスが噴出し、引火・爆発し
製鉄所において、約40年前に建設されたコーク
た。
ス炉につながる鋼鉄製配管(直径約1m、厚さ8m m)
が老朽化のため亀裂が入り、その部分からメタン
と水素の混合ガスが漏れ出したため、引火し火災と
なった。
(2)配管エルボの開口
発生年月:平成14年8月
死傷者数:0
発生状況:
フッ素樹脂の重合槽で重合作業が終了したので、
未反応のモノマーをコンプレッサーで吸引し、モノ
写真1 水素脆性による配管の破断例
マー回収タンクに回収していた。コンプレッサーに
つながる回収配管(40A)のエルボ部分が腐食して
開口していたため、コンプレッサーの運転時に空気
が侵入し、回収タンク内でモノマーと空気が反応し
て安全弁から噴出し、引火爆発した。
4.対策上の留意事項
経年設備の災害を防止する上で重要なことは、設
備・機器・部材について検査・補修・交換などのメンテ
ナンスを如何に適切に行うかにかかっているが、事故
事例からみると設備・機器の破損・故障は、設備本体
(3)ガスケットの損傷
よりむしろ配管、バルブなど付属機器やその部材で
発生年月:平成3年7月
発生することが多く、それらの老朽化による事故防止
死傷者数:0
は、それ程容易ではないものと思われる。
発生状況:
設備のリスクを評価するというリスクアセスメン
第一種圧力容器(2.1mφ、容積10m 3)に無水マレ
トの観点から見れば、つぎのような事項に留意する必
イン酸と触媒等を仕込み、水素を導入して水素添加
要があろう。
反応をさせていたとき、原料供給配管のフランジ接
合部のガスケット(26c mφ、幅2c m、厚さ0.3c m)が
(1)危険性の大きい設備・機器の洗い出し
経年劣化により損傷しており、そこから水素が噴出
経年設備において磨耗、亀裂などによる破損や
して、火災となった。
故障が発生する対象機器には、設備本体のほか回転
機、攪拌機などの機器類、配管、タンク及びその部
材など多種にわたっている。したがって、経年設備・
10
TIIS ニュース No.241
機器が破損・故障が発生したときに、大きな人的被
5.おわりに
害が出すおそれのある設備や設備復旧に多大の費
機械のリスク評価においては、機械メーカは設計
用や間接的に経済的な損害をこうむる恐れのある
時、製造時などにおいて、危険源の同定、リスクの見積
設備・機器を洗い出しておく必要があろう。また、そ
もり(事故の起こりやすさ、被害の大きさ)、防護措置
れらの設備・機器の破損等によりどの程度の被害が
まで行い、一定のリスクレベルまで低減しておく必要
発生するか、その事故の大きさを推定しておくこと
がある。わが国の厚生労働省のリスク評価の指針にお
望ましい。どの設備・機器類が大きな事故の因子に
いては、機械ユーザ(事業者)についても同様なリスク
なるかは、経験上判断できる場合が多いと思われる
評価を実施することが求められている。同指針では、
が、F T A(故障の木解析)のような故障分析手法の
経年化した機械設備についても設備の変更時、作業方
活用もリスクのランク付けに役立つものと思われ
法の変更時のほか、
「前回の検査から一定の期間が経
る。
過し、機械設備等の経年による劣化などリスクに変化
を生じ、または生じるおそれがある場合」は、リスク評
(2)破損・故障の起こりやすさの把握
価を行うこととなっている。
リスクの大きい設備、機器、部材は、点検・検査に
経年設備についてのリスク評価は、原則としてユー
より、その磨耗・亀裂などの劣化・損傷程度が把握
ザ側で行うものであるが、機器・部材の検査、交換など
でき、ある程度事故の起こりやすさを想定できる場
において、メーカ側との情報交換が必要であり、互い
合が多い。そのときの設備・機器の損傷程度により、
の協力により経年設備のリスクの低減化を実施して
次の検査時期や使用可能期間などが推定されるも
行くことが重要であると思われる。
のと思われるが、対象とした設備・機器の使用可能
(産業安全技術協会 顧問 森 繁)
な期間は、設備の使用頻度、運転条件によっても異
なってくるだろう。設備・機器の使用期間の判定は、
検査技術の程度によっても大きく異なってくるも
のであり、目視のような簡単な検査手法よりも、よ
り高度な非破壊検査技術を用いることにより、検査
期間の延長、ひいては長期の設備・機器の使用が考
えられる。
(3)機器・部材の劣化・損傷状況の文書化
設置された設備の使用期間は、数十年と長いものが
多く、それらの機器・部材の摩耗、亀裂、腐食などの劣
化・損傷状況は、長期間にわたって継続的に測定デー
タを把握しておく必要がある。現場サイドでの熟練技
術者の不足など労働者が減少するなか、経験の浅い労
働者でも設備・機器の劣化状況を容易に把握できるよ
う、それらのデータを文書化し、できればデータ処理
化しておく必要がある。機器・部材の補修・交換は、こ
れらのデータに基づき、危険度の高い機器・部材から
順に実施していくことが望ましい。
11
TIIS ニュース No.241
◆日立造船株式会社
産業安全技術館の管理・運営に当たっています。
この度大阪市にある日立造船(株)の本社を訪問す
本誌の表紙に安全いろはカルタが紹介されていま
る機会がありましたので、会社の概要と産業安全への
すが、これは日立造船(株)が昭和30年代に安全の啓
関わりについて紹介させて頂きます。
蒙のため、社内に配布したものといわれています。ま
日立造船(株)は社名からすると造船が主な事業で
た、日立造船(株)の常務取締役神谷明文氏には当協
あるように思われる方もいるかと思いますが、お聞き
会の副会長をお願いしています。
すると、かって「造船業陸に上がる」と言われたごと
日立造船(株)は、環境、エネルギーなどの先端の分
く、現在では造船部門は全て手放して環境装置・工場
野に於いて、ますます存在感を発揮していくものと期
設備・精密機械・産業機械・発電設備・内燃機関・圧力
待しています。
容器・鉄骨構造物・建設機械などの製造販売が主な事
多くの事業品目の内、
筆者の印象に残ったいくつかの
業となっています。また、
「日立」の名を冠した社名と
製品写真をカタログから抜粋して以下に紹介します。
こ
なっていますが、
(株)日立製作所を中心としたグルー
れらの写真から先端技術に基づく多様な製品が生み出
プの会社ではないとのことでした。
されていることが見て取れます。
日立造船(株)の本社は、大阪市住之江区南港のポー
トタウンにあり、そこは大阪湾の一部を埋めたてて作
られた人工の島だそうで、ひときわ目立っている大阪
ワールドトレードセンタービルの近くにあります。8
階の会議室からの眺めはすばらしく、大阪湾を一望に
見渡すことができます。
日立造船(株)の歴史は古く(明治14年創立)、また、
安全との関わりの強い会社でもあります。振り返りま
有機EL製造装置
バイオマスガス化装置
すと、戦後の日本における経済発展の陰には産業災
害が多く発生していました。このようなときに日立造
船(株)は、創業80周年の記念事業として関西に産業
安全の研究と啓蒙の中心となる施設として「産業安全
センター」を建設し、国へ寄付したいとの申し出を行
い、昭和36年2月25日に「大阪産業安全センター」が竣
工落成し、建物及び施設一式が国へ寄付されました。
センターはその後、労働省産業安全研究所付属「大阪
風力発電機
シールド掘進機
産業安全博物館」となり、平成8年に新装改築され「大
阪産業安全技術館」へと衣替えして現在に至っていま
す。いまでもその使命と機能は創立当初といささかも
変わってはいません。当産業安全技術協会は、昭和47
年に関西支部を設置し、同時に関西事務所を開設して
大阪産業安全センターの事業を継承した経緯があり、
日立造船(株)とは浅からぬ因縁があります。現在当協
会は大阪産業安全技術館の管理業務から完全に撤退
しており、代わって、
「中央労働災害防止協会」が大阪
12
舶用エンジン
TIIS ニュース No.241
◆平成21年度のアンケート調査結果報告
平成21年度も顧客満足についてのアンケート調査
を実施しましたので、その結果を報告します。
アンケート調査は、平成20年度と同様に顧客満足
を評価する質問(Q12)として「当協会の検定業務は総
合的に見て満足できるものですか」とし、その結果に
関係すると考えられる10の要因系の質問を設定し、回
答は「非常に満足(評価点5)」、
「ほぼ満足(評価点4)」、
「どちらともいえない(評価点3)」、
「やや不満(評価点
2)」及び「大変不満(評価点1)」の5択方式で行った。
1.調査の目的
当協会の検定業務への取組に対して顧客(申請者)
がどのように受け止めているかの情報を得ること、得
られた情報を参考にして検定業務(品質マネジメント
システム)の改善を図ることを目的とした。
2.調査対象
Q2:事前相談に対する対応について
(事前相談の対応)
Q3:検定に関係する情報の発信について
(情報の発信)
Q4:検定手数料について
(新規検定/その他の手数料)
Q5:検定のスケジュール、進捗状況等の連絡について
(スケジュール等の連絡)
Q6:検定員は安心して検定を任せられる能力・知識を
持っている
(能力・知識の有無)
Q7:検定員は質問や要望に対して的確に答えてくれる
(質問への回答)
Q8:適否の判定、修正指示などは検定員間で統一がと
れている
(判定等の統一性)
当協会が行う12の検定品目に対して、平成21年4月
Q10:検定試験・検査の目標処理期間(修正等を要し
∼平成21年11月末までに2件以上の新規検定申請の
ない場合)を上記(Q9)のとおり設定しています
あった顧客を対象にした。
が、その期間は適切だと思いますか
対象になった顧客は93社で、検定品目はプレス機
械又はシャーの安全装置を除く11品目であったが、ゴ
ム、ゴム化合物又は合成樹脂を練るロール機の急停止
(目標処理期間)
Q11:目標処理期間は守られていると思いますか
(処理期間の順守)
装置については個別検定と型式検定を1品目、絶縁用
5.調査結果
保護具(電気用帽子)と保護帽を1品目、防じんマスク
回答の遅れたものもあったが、回答のあったすべ
と防毒マスクを1品目扱いとして調査対象の顧客を抽
てを集計した。回答は54件あり回答率は58.1%、防爆
出した。
電気と機械器具とに分けた場合の回答率は、それぞれ
検定品目を防爆構造電気機械器具(防爆電気)とそ
58.6%及び56.5%であった。
れ以外(機械器具)に分けると、防爆電気の対象顧客は
6.調査結果の分析と対応
70社で機械器具関係の顧客は23社である。
1)顧客満足(総合的な満足度)
3.調査方法・期間
顧客満足に対する評価点の平均値は3.79で平成
調査対象(顧客)の検定担当者あてにアンケート用
20年度より0.13低かったが「ほぼ満足できる」に近
紙及び返信用封筒を郵送して回答を求めた。
い評価が得られた。
アンケート用紙は平成21年12月10日に発送し、回答
(ポスト投函)期限を平成21年12月30日とした。
2)全体の姿
図1及び図2に示すように、電話の対応、能力・知識
4.アンケート調査の質問
の有無、質問への回答等の評価は高かったが、新規
要因系の質問は、平成20年度と同じ内容で次のとお
検定/その他の手数料、目標処理期間、スケジュー
りである。
(Q9は関係検定品目についての質問:省略)
ル等の連絡の評価は低く、この傾向及び評価点の平
Q1:電話の対応について(電話の対応)
均値は平成20年度とほぼ同じであった。
13
TIIS ニュース No.241
スケジュール等の連絡、目標処理期間、処理期間
目標処理期間、新規検定/その他の手数料及びスケ
の順守等については回答者によるばらつきが大き
ジュール等の連絡に対するもの多かった。
4)改善への取組
く評価が分かれていたが、能力・知識の有無、質問
への回答等はばらつきが小さく評価がほぼ同じで
分析結果による改善項目として、顧客満足への影
あった。
響が強く評価点の低かった「判定等の統一性」が挙
ばらつきの大きかった質問項目について防爆電
げられたが、言語データを含む分析結果では、防爆
気と機械器具で層別した結果、防爆電気においては
電気の目標処理期間についての評価が低く、意見・
評価が低く、機械器具関係は評価が高く評価が分か
要望も多かったことから、この2項目を取り上げて
れてばらつきが大きかったことが分かった。
平成22年度の重点取り組み事項とし、改善に取り組
3)言語データ
むこととした。
自 由 回 答 欄 の 意 見・要 望 等 は、評 価 の 低 か っ た
図1 質問ごとの評価点の分布
電話の対応
5.0
総合的な満足度
事前相談の対応
4.0
処理期間の順守
情報の発信
3.0
2.0
目標処理期間
新規検定の手数料
1.0
判定等の統一性
その他の手数料
質問への回答
スケジュール等の連絡
能力・知識の有無
図2 質問ごとの評価点の割合
評価5
総合的な満足度
評価4
評価5
処理期間の順守
評価4
評価4
目標処理期間
判定等の統一性
評価4
10%
評価2
評価1
評価2
評価3
評価2
評価3
評価2
評価4
評価5
0%
評価3
評価3
評価5
電話の対応
評価3
評価3
評価4
事前相談の対応
14
評価4
評価5
評価2
評価4
評価4
新規検定手数料
評価1
評価4
評価5
その他の手数料
評価2
評価3
評価5
評価5
評価2
評価2
評価4
能力・知識の有無
情報の発信
評価3
評価3
評価5
質問への回答
スケジュール等の連絡
評価3
評価3
評価4
20%
30%
40%
50%
60%
評価1
評価2
評価3
70%
80%
90%
100%
TIIS ニュース No.241
◆イギリスの健康安全研究所(H S L)を訪
ねて
H S Lにおいて検定試験が行われていたが、現在はE U
の検定規則であるPPE Directiveによって登録され
たB S Iなどの試験機関が検定を行っている。H S Lの
5月初旬にISO/TC94/SC15呼吸用保護具
(Respiratory
研究者は、規格のための試験法の開発、呼吸用保護具
Protective Devices)の分科会としてのWG1PG4試験
が人間の呼吸生理に及ぼす影響などの研究を行って
法(Test Methods)の会議が、イギリスの健康安全研究
いる。
所(Health and Safety Laboratory, HSL)
で開催され
5月の会議の折に、会議のメンバーがH S Lの中の呼
た。
吸用保護具の研究室を案内してくれた。試験用人頭に
場所はマンチェスターに近いバックストン市であ
潜水用のマスクを装着して加圧水槽に沈めて行う呼
る。現在はH S Lの研究棟はシェフィールドとバック
吸模擬実験では、呼気中の二酸化炭素濃度の連続測定
ストンの二ヶ所にあるが、バックストンの研究棟は
をしていた。EN規格で決められている二酸化炭素濃
2004年に、それまで分散していた試験研究施設を統
度の試験法とは異なる呼気の採取法をしていた。電動
合する目的で改築された大規模のものである。
ファン付き呼吸用保護具で問題になる騒音を測定す
H S Lの 歴 史 は 古 い。1911年 に 開 設 さ れ たH o m e
るための試験人頭にも、小さい部品に凝った作りをし
Offi ce Experimental Laboratoryが最初の組織であ
ていて興味がわいた。さすがに映画007の国である。
るとされている。1928年に創設されたシェフィール
今回の見学や資料を通じて、HSLが時代の流れに沿い
ド研究所は、かつての炭鉱地帯に立地しており、炭鉱
ながら、社会の要求を模索しながら充実した活動を維
の爆発災害の実験的な検証の記録写真が残されてい
持していると感じた。
る。
((社)産業安全技術協会 参与 松村芳美)
現在、HSLは労働者の健康安全分野の基準監督庁で
あるHealth and Safety Executive(HSE)の下部組織
で、労働安全衛生行政に対する技術的基盤を担って
いる。労働安全衛生のための科学技術の確立と提供が
最も基本的な目的であるが、最近はH S Eのみでなく
民間に対するサービスも行っているとのことである。
2009年現在の職員数は科学技術関係スタッフ295名、
協力専門スタッフ89名、職員交代に備えた調整ポス
トを含めると412名の大所帯である。
写真1 HSLバックストン研究所の外観
本来、労働安全衛生のために必要な科学技術分野
は茫漠とした広がりを持つ。それは産業が導入するあ
らゆる技術や材料が労働者の健康と安全を損なう要
素となるためである。現在のHSLの技術分野には原子
力、人間工学からインフルエンザまで含まれている。
バックストンの研究所が人里はなれた石灰岩地帯の
丘の頂上に立地するのは、大規模な爆発や燃焼の実験
棟があることが理由と聞いた。
呼吸用保護具に関する分野には、数名の研究者は
写真2 二酸化炭素濃
度測定のための採気口
を付けた試験人頭
写真3 騒音測定のため
の試験人頭
いるが、業務としての検定は行っていない。かつては
15
TIIS ニュース No.241
講習会の案内
◆安全技術講習会等のお知らせ
会とK O S H Aとの協力関係、日本の機械安全に関する
当協会が平成22年7月以降に実施予定の安全技術講
動向についても紹介します。
(有料)
習会等は、以下のとおりです。ご関心のある方々は、是
日時:平成22年9月27日(月) 10:00∼16:00
非ご参加下さいますようご案内申し上げます。
場所:大阪
詳細が決まりましたら、当協会ホームページ、メー
日時:平成22年9月28日(火) 10:00∼16:00
ルマガジン等でお知らせします。なお、メールマガジ
場所:東京
ンの配信を希望される方は下記アドレスにメールマ
詳細な内容が決まりましたら、ホームページ、メー
ガジン配信希望とご記入の上、送信下さい。
ルマガジンでお知らせします。
ホームページ:http//www.ankyo.or.jp
メールマガジンアドレス:[email protected]
[初心者のための防爆電気設備入門]
この講習会は当協会が毎年恒例で実施しているも
[防爆構造電気機械器具の規格の国際整合化に係る講
ので、初心者の方々を対象に、防爆電気技術や知識を
習会(予定)]
基礎から応用まで分かり易く解説する講習会です。社
「電気機械器具防爆構造規格における可燃性ガス又
内における防爆電気技術者の養成や新人教育にご活
は引火性のものの蒸気に係る防爆構造の規格に適合
用いただきたく企画しました。
(有料)
する電気機械器具と同等以上の防爆性能を有するも
時期 平成22年10月予定(1日) 場所 東京、大阪
のの基準等について」についてパブリックコメント*)
が実施されました。パブリックコメントの結果を受け
[静電気災害・障害防止のための基礎知識]
て、通達等が出される予定ですが、通達が出された後、
静電気による火災・爆発及び生産障害等は、産業界
パブリックコメントにおいて引用された労働安全衛
のあらゆる分野で抱える重要な問題です。これらの静
生総合研究所技術指針「工場電気設備防爆指針(国際
電気による災害・障害を防止するためには、静電気の
規格に整合した技術指針2008)」について、講習会を
現象を理解し、防止対策を習得することです。本講習
予定しております。
(有料)
会では、静電気による災害・障害を防止するために、
詳細な内容が決まりましたら、ホームページ、メー
静電気現象を実演によって眼に見える形で理解して
ルマガジンでお知らせします。
いただくとともに、基礎から応用までの幅広い知識、
*)パブリックコメント(厚生労働省)
防止対策の考え方、静電気特性を評価するための測定
案件番号:495100096
技術について解説いたします。
(有料)
期 間:平成22年6月10日∼7月9日
時期 平成23年1月末予定(1日)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?OBJCD
場所 東京、大阪
=100495
[静電気測定技術実習セミナー]
[韓国における機械安全の技術的動向と防爆を含めた
16
静電気安全対策を実施する上で、静電気の測定は欠
TIISとの協力関係について(予定)]
かせません。特に現場における静電気の測定技術には
韓国KOSHA(Korea Occupational Safety and
特別なノウハウがあります。測定原理、測定器の使用
Health Agency)から機械安全の責任者を招聘し、躍
方法等を解説するほか、電位、静電容量及び電荷量の
進めざましい韓国産業界への機械の輸出に必須とな
測定を実習していただきます。
(有料)
る機械安全への対応と認証取得についての説明会を
時期 平成23年1月末予定(1日)
開催します。また、機械安全と防爆分野における当協
場所 東京、大阪
TIIS ニュース No.241
会員の声
◆ISO/TC94/SC6 眼及び顔面保護具規格
の動向と製品試験の汎用化実施について
良く安全でわかりやすい規格となるよう進言してい
株式会社トーアボージン
I S O / T C94/ S C6見直しの中、弊社担当委員も日夜
取締役副社長 村上 渉
模索を繰り返しながら努力を続けている最中です。グ
きたいと思っております。
ローバルな展開もこれからを見据えて極めて大事な
J I S T8141「遮 光 保 護 具」及 びJ I S T8147「保 護 め が
局面にきておりますが、今回は敢えて弊社が常日頃
ね」規 格 の グ ロ ー バ ル 化 を 基 本 に 国 際 規 格 で あ る
最重要視し、大切に取り組んでいます「別注品」
「改良
ISO/TC94/SC6眼及び顔面保護具[以下「ISO/TC94/
品」の対応について、使用者の安全をいかに護るかを
S C6」]に該当する部分を選定し、国際整合していく作
少し述べたいと思います。
業(I S O規格をJ I Sに整合化する際に修正、加筆、削除
各 製 品 の 部 分 的 問 題 点、指 摘 事 項 に 対 し、ど う 利
等をおこなう)が終了し、現時点では、IS O(国際標準
点に変えるか、使用者の要求をどう満足させるか、ま
化機構)において基の国際規格であるISO/TC94/SC6
た、変更による安全は確保できるか、広範囲に通用す
の見直し作業が進められています。
るか、ピンポイントの改良か、等いろいろな要素を解
この見直し作業においては、IS Oを主体として、定
決し、できる限りの要望に応えていきたいと考えてい
期的に各国で開催する国際会議やEメールのやりと
ます。
りなどで、世界各国からの意見を収集し、それを集約
例えば架線工事、配電盤検査等、電気関係で作業す
して規格化していくという作業になります。
る場合、防爆面を提案していますが、
『防爆』と言って
我が国においてもISO/TC94/SC6国内対策技術委
も弊社製品では金属を使用していないオールプラス
員会(ユーザー、メーカー、専門医、学識経験者などか
チック製防災面という程度です。しかし、実際の現場
らなる構成メンバー)を発足させ、弊社も参加し眼及
では非常に有効な場合もあります。電気をはじめ、高
び顔面保護具の性能向上に寄与するため、日本工業標
熱、薬品、飛来物、有害光線・・・広範囲な職場で場合に
準調査会に協力して、規格等の国際化に努めるととも
よっては素材、機能、品質等、データ提示を要望され
に、ISO/TC94/SC6に関し、この委員会で集約したも
ることも多々あり、簡単に取得できない場合もありま
のを我が国の意見としてI S Oが主催する国際会議な
す。その人、その作業に最適であってもデータが無い
どにおいて発言しています。
と採用されないこともあり、その度に思うことは検定
これらが数年後規格化され、その後、JIS規格の整合
あるいはJIS規格による『恩恵』と『弊害』を痛切に感じ
化に取り組むというかたちになると思われます。
ることがよくあります。産業安全技術協会では、事業
現 状 の 段 階 で は、意 見 を 集 約 し、そ れ ら の 是 非 を
目的において「安全衛生保護具等に関する技術相談、
問う段階であり、新規格として決定しているものは
技術情報の開示、並びに技術指導、技術講習会等の実
無いですが、旧規格と新規格とでは、かなりの割合で
施」があります。
(公益社団法人化に向けての大きな
変更箇所があると思われます。理由として、現状ある
指針として掲げておられる)
ISO/TC94/SC6がかなり古いということと、見直し作
より働く人々の安全を護るため、必要性がある場
業に参加するなかで各国の意見を聞いていると、国あ
合、検定とか規格とかではなく、範囲を広げた、いわ
るいは人によって技術的なことや考え方などずいぶ
ゆる一般製品部門で使用者が安心して使える産業安
んと違うことがわかりました。
全技術協会による一般製品性能試験の実施に向けた
ISO/TC94/SC6の見直し作業及びその後のJIS整合
体制作りを熱望しています。今後の検討を切にお願い
化作業において、将来、現状のものと大きく変わると
して、会員の声を締めたいと思います。
しても、それらが我が国や、他の国にとっても、より
17
TIIS ニュース No.241
◆平成22年度第1回理事会及び通常総会
の報告
(理事)中山 剛(東京ガス(株))
平成22年度の当協会の第1回理事会及び通常総会
(理事)泥 正典((社)日本照明器具工業会)
が、5月28日(金)16時からK K Rホテル東京にて開催さ
(理事)中野秀司(星和電機(株)) れた。昨年と同様に、説明については理事会と総会を
(理事)酒井 潔(三菱電機(株))
新任役員
一元化した方式で、松井会長を議長として執り行わ
当日は来賓として厚生労働省労働基準局安全衛生
れ、次の議案が審議された。
部安全課長 田中正晴様が出席され、ご懇篤な祝辞を
第1号議案 平成21年度事業報告
頂いた。また、総会終了後、独立行政法人労働安全衛
第2号議案 平成21年度決算報告
生総合研究所理事長 前田豊様他多数の来賓の参加を
第3号議案 平成22年度事業計画(案)
得て、同ホテル内で懇親パーティが行われた。
第4号議案 平成22年度収支予算(案)
第5号議案 役員選任(案)
第6号議案 定款変更の案
その他
第3号議案において、平成22年度の事業実施に伴う
基本方針として、必要な設備投資は積極的に行うが、
効率の悪い組織や体制は改革していくなどのスク
ラップアンドビルトにより、安定した業務運営を図っ
ていくことが示された。
第5号議案において、本総会では役員改選の時期に
なっているが、次期の役員には、現理事の中で、辞退さ
総会で挨拶する田中正晴厚生労働省安全衛生部安全課長
れた方を除き、現役員および交代された方を候補者と
して、また、任期は2年であるが、2年以内に公益社団
法人に移行した場合は、公益社団法人移行登記の前日
までとすることが説明された。
第6号議案において、公益社団法人産業安全技術協
会への移行申請を公益法人認定委員会に行うこと及
び移行に伴う定款の変更(案)が説明された。
◆第2試験棟増築
昨年度の総会で認められた検定・試験施設の拡充計
画に基づき、平成22年度に第2試験棟(鉄骨2階建て、
延べ床面積500m2)を増築する計画を立て、本年度の
総会において予算処置が認められた。第2試験棟は本
年12月に竣工予定である。
上記の3議案を含め、何れの議案も原案通り異議無
く可決承認された。
◆関西事務所だより
なお、
役員のうち退任、
新任の方々は次の通りである。
○ 安全技術普及推進委員会の第1回委員会が、大阪
退任役員:
(理事)松田慶紀(東京ガス(株))
これは、関西事務所運営委員会(以下、推進委員会)
(理事)赤塚美津雄((社)日本照明器具工業会)
を改称したものであり、これまでと同様に、関西事
(理事)小川康恭((独)労働安全衛生総合研究所)
務所の業務の実施に強力と助言を行うことを目的
(理事)愛知後秀作(星和電機(株)) としている。
(理事)橋本光正(日本ペイント(株))
(理事)山口隆一(三菱電機(株))
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ガス(株)の協力を得て、下記のとおり開催された。
TIIS ニュース No.241
○ 第1回推進委員会の開催
日 時 平成22年6月2日(水) 14:00∼16:30
◆室井良樹 氏が
「厚生労働大臣表彰」
におい
て
「功績賞」
の栄誉
場 所 大阪ガス(株)
墜落防止器具を始めとす
議 題 (1)安全技術普及推進委員会規程について
る保護具関係の日本工業規
(2)防爆電気機器調査研究委員会報告
格(JIS)制定の専門委員、労
(3)平成22年度の事業計画について
働省委託研究の調査研究委
(4)その他
員等を務められ、日本安全
なお、委員には下記の9名(順不同、敬称略)が会長
帯研究会の前会長であり、
より委嘱され、徳山氏が委員長に選出された。
当協会の理事に長年ご就任
徳山勲男:
(株)トーアボージン、室井良樹:サン
頂いております室井良樹
コー(株)、梅津豊:
(株)大林組、沢山義秀:
(株)きん
氏(サンコー株式会社 代表取締役社長)が平成22年度
でん、倉智一吉:日立造船(株)、井上 均:藤井電工
「安全衛生に係る優良事業場、団体又は功労者に対す
(株)、草壁清:大阪ガス(株)、広瀬正夫:日本ペイン
る厚生労働大臣表彰」において、功績賞を受賞されま
ト(株)、中野秀司:星和電機(株)
した。この賞は労働安全衛生活動において指導的立場
○ 第1回防爆電気機器調査研究委員会が5月21日に
にあり、安全衛生水準の向上と発展に多大な貢献をし
開催され、昨年度実施した調査研究について報告さ
た個人にして対して授与されるものです。ここにご披
れた。
露させて頂くとともに、心よりお祝い申し上げます。
○ 安全教育映画会(6/24)、安全教育研究会(6/25)
が、
(株)P R Cの協力のもと大阪産業安全技術館に
◆新入会員
おいて、それぞれ開催された。安全教育研究会では
○入会申込(平成22年6月30日現在)
当協会の蒲池正之介東京事務所長が「爆発火災災害
のリスク低減のために(サブタイトル:やさしい静
会社名:八洲貿易株式会社
電気の基礎知識)」について講演を行った。
所在地:〒107-8484
東京都港区赤坂3-9-1
代表者:代表取締役社長 浅沼 兵衛
営業品目:F A・P A機器・分析計・産業機械等の輸
出入・販売・分析装置の設計・製作・シス
テム設計開発
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