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Title 親への移行期にある娘のとらえる母親との関係性
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親への移行期にある娘のとらえる母親との関係性 : 再構
築の過程とその要因
富岡, 麻由子; 高橋, 道子
東京学芸大学紀要. 第1部門, 教育科学, 56: 137-148
2005-03-00
URL
http://hdl.handle.net/2309/2075
Publisher
東京学芸大学紀要出版委員会
Rights
東京学芸大学紀要1部門 56
pp . 137 ∼ 148, 2005
親への移行期にある娘のとらえる母親との関係性:再構築の過程とその要因
富岡 麻由子*・
橋 道子**
臨床心理学
(2004年10月29日受理)
源として果たす役割は大きく,心理的適応や母親役割
1.問題と目的
の受容に影響するとされている(Cohler & Grunebaum,
就職や結婚など,個人のライフサイクルの中で生起
1981;Levinson, 1996)。その他,親への移行期に関わ
する変化の過程は,人生移行と呼ばれる(山本, 1992)。
らず,母親との関係性が,女性のアイデンティティ形
そのなかでも,安定していた人間−環境システムの均
成や自尊感情(Josselson, 1996),心理的適応(北村・
衡 が 大 き く 破 れ る よ う な 危 機 的 移 行 ( Wapner &
無藤, 2001)に影響を及ぼしたり,親への移行期の娘
Demick, 1992)の場合には,認知の仕方,社会的関係
は自らの育児を経験しつつ,被養育体験の振り返りを
のとり方,自己概念などの再構成をし,新しく均衡の
行うと考えられている(Levinson, 1996)。つまり,サ
取れた生活世界の構造を作り上げなければならない
ポートの面だけではなく,被養育体験に対するとらえ
(山本, 1992)。「親への移行期」とは第1子の誕生によ
等,母親との関係性の様々な側面は,親への移行期の
り夫婦が新婚期から養育期へライフサイクル上で推移
女性にとって重要な意味をもつものであるといえる。
する時期をさす。この時期においては,親役割の獲得
娘の結婚,母親の老年期など,母親と娘の関係には
とともに配偶者との関係調節,生活習慣の変化,夫と
いくつかの「ライフサイクル」と呼ばれる時期があり,
妻の出生家族との関係性の再構築などの多くの課題に
娘と母親それぞれ個人の変化だけではなく,その関係
直面すると考えられ(Carter&McGoldrick, 1980),親
性にも大きな変化をもたらす(Fischer, 1981)。娘の結
への移行は危機的なものになる可能性が高い。
婚と最初の出産により,互いの評価が高まり接触や相
徳田(2002)は,協力者の語りをもとに,女性が母
互援助が増すなど,母親と娘の関係はより親密になる
親になる経験を獲得と喪失という2つの側面から検討
ことを明らかにしたFischer(1981)や,娘の結婚・出
した。その結果,子どもの誕生による家族や友人との
産,母の子離れ期への移行など,母親と娘のライフサ
新たな関係性の生成とともに,関係の狭まりを同時に
イクルの進展にしたがって,相互評価や交流パターン
体験していることが報告された。関係性に関する語り
に変化が見られ,価値観の類似や親密性が増加するこ
が子育てによる獲得と喪失の両面で言及されているこ
とを見出した春日井(1997)の研究などがある。娘と
とは,この時期の女性にとって関係性の変化と連続性
母親の関係性の発達的移行についての研究では,上記
の問題が,非常に重要な主題ととらえられている可能
のような相互援助の頻度や共通の活動の有無,価値観
性を示すと徳田は指摘する。女性は結婚や出産,育児
の共通性等から母親と娘の関係性を説明するもの
といった出来事によって,自己や周囲との関係性の再
(Thompson & Walker, 1984;春日井, 1997;北村,
構成を求められると考えられるが,本研究では親への
2001;島谷, 2002)が多数を占めるのが現状である。
移行期にある女性と出生家族の関係性に着目する。
そこで,サポートや接触のあり方の理解に続き,本研
親への移行期の女性とその出生家族に関わる研究と
究では感情の変化,体験の意味づけ,新たな関係性の
しては,育児サポートを扱った研究が多くなされてい
構築など,娘の主観的とらえに焦点を当てることで,
る。出生家族とりわけ母親が物理的・心理的サポート
親への移行期にある娘と母親の関係性を検討する。
* 日本音楽学校幼児教育科(142-0042 東京都品川区豊町2-16-12)
** 東京学芸大学(184-8501 小金井市貫井北町4-1-1)
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東 京 学 芸 大 学 紀 要 第1部門 第56集(2005)
家族計画・出産などの生活現象に関する問題につい
ち,第二子をまだ出産しておらず,かつ実の母親が存
て,個人のプロセスを丁寧に追跡し,綿密に意識面を
命している女性と設定した。知人の紹介から依頼をし
探求する必要性は以前から指摘されており(中山,
た結果,18名の協力者がえられた。協力者の平均年齢
1990, 1992),徳田(2004)は出産や育児経験の主観的
は31.1歳(23∼35歳),子どもの平均月齢は20ヶ月
側面に着目することの重要性を指摘し,日々の子育て
(12∼29ヶ月),子どもの性別は男児10名,女児8名で
経験を個人が人生のなかでどのように意味づけている
あった。いずれも東京近郊に在住し,家族構成はすべ
のかを語りから検討している。人生の危機的移行とし
て核家族世帯であった。協力者の属性を表1に示す。
て親になる経験をとらえ,その体験が当事者にとって
表1 協力者の属性
どのような意味をもつのか,個人がどのように認知の
仕方や周囲との関係の取り方を調整していくのかを解
明していくことは,親への移行についての理解を深め
ると考えられる。
では,親への移行期の体験や,母親との関係性に対
する娘のとらえは,どのように探ることができるだろ
うか。Harveyら(1988)は個人の人生での出来事につ
いての意味付けや帰属について知りたい場合には,質
問紙や観察では得ることが難しい目に見えない認知,
思想や感情を検討するために,面接でのSelf-Reportを
用いることが適当だと述べている。また,質的研究法
は「被験者にとってのある事物の意味」などの質的デ
ータを扱えることが利点であるといえる(水野, 2004)。
本研究では,目的と先行研究の問題を考慮し,質的
研究法を採用する。グラウンデッド・セオリー・アプロ
面接手続き
ーチ(以下,GTA)(Strauss & Corbin, 1990)は,特
2003年8月から12月にかけて行った。
定の文脈における具体的経験に根ざした理論を,帰納
16名については協力者の各家庭で,2名は自宅外で面
的に構築することを目的とする質的研究法である。こ
接を行い,協力者の了解を得て録音した。「結婚され
の方法では既存の理論からあらかじめ導き出されてい
て,妊娠して出産,お子さんを育てて行くなかで,お
るカテゴリーに基づいて内容を分類していくのではな
母様との関係で変わったと思うこと,お母様に対する
く,データ自体から意味や概念を抽出し,カテゴリー
気持ちや考え方の面で変わったことがあるとすれば,
化の作業を行ない,それらを統合して仮説の生成を行
それはどのようなことですか?」と尋ね,協力者とそ
なっていく。GTAを用いることで,演繹的方法では
の母親の関係に関する内容の半構造化面接を行なった
対応することが難しかった,親になる体験の個人にと
(1人あたり40分∼130分)。調査者は発話の内容を確
っての意味やその多様性にアプローチすることが可能
認するためや,より具体的な情報を引き出すための問
だと思われる。したがって本研究では,個人の語りを
いを織り交ぜながら,協力者の自発的な会話を促すこ
GTAを用いて分析し,親への移行期の娘が母親との
とに努めた。
関係性において,出産や育児などに関わる様々な体験
をどうとらえ,意味づけし,母親への感情や関係性の
2.2 分析の手続き
取り方を変化させ再構築するのかを,探索的に検討す
2.2.1 分析単位と分析対象
分析析単位と分析対象の特定の過程では,具体的に
ることを目的とする。
以下の作業を行なった。
A)面接の内容を録音したものを文字化し,トランス
2.方法
クリプトを作成した。
B)トランスクリプトを,語られた題材と語りの流れ
2.1 面接調査
調査協力者
親への移行期に関する過去の研究
(Russell, 1974;Fischer, 1981;Belsky & Rovine, 1990)
を参照し,協力者は既婚で,出産後9ヶ月から3年経
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を考慮して区切った(エピソード)。このエピソ
ードを概念のラベル付けを行なう際の単位とした。
C)エピソードの中で,母親や,協力者と母親の関係
富岡・
橋:親への移行期にある娘のとらえる母親との関係性
について言及されている部分を抜き出したところ,
うものであった。このカテゴリーで留意すべき点とし
エピソード数は409であった。内容から分類した
て,他のカテゴリーとのカテゴリー生成の方法の違い
がある。「変化のきっかけとなる体験カテゴリー」や
結果以下のような語りが見られた。
a.母親への感情や態度,母親との関係性の変化の
「感情・関係性の変化カテゴリー」は,協力者が変化
のきっかけや変化の内容と認識し,語りのなかで述べ
きっかけになった体験についての語り。
b.以前との対比とともに述べられた,変化した
ている内容についてのものである。それに対して「変
母親への感情や態度,関係性の変化について
化のプロセスカテゴリー」は,協力者自身が認識し語
の語り。
ったこととともに,変化のプロセスの表われと考えら
c.母親に対する新しい感情,新しい関係性の生起
れる,すなわち暗に行なっている心理的作業と解釈で
きる発話も含めてカテゴリー作成を行なった。以下に
についての語り。
d.母親への感情や態度の変化,母親との関係性
一例を示す。
の変化のプロセスについての語り。
(例)…私もあまり小さい頃怒られたことがない。自由
以上の語りを含むエピソードを抜き出し分析の対象
奔放に育てられていたんで,それがうちの母は凄いな
とした。ひとつのエピソードに複数の種類の語りが含
ぁって。自分だったらもっと怒っちゃうかなぁとかね。
まれることもあった。ここで抜き出されたエピソード
あんまり大きな変化はないですけど,尊敬する気持ち
数は287であった。
は強くなった。
この語りからは,自分の育児と母親の育児を比較す
2.2.2 カテゴリーの作成
るという心理的作業が変化の過程で行なわれていると
A.「変化のきっかけとなる体験カテゴリー」の作成
解釈することができる。このような内容も概念化し,
①上述の a を「母親に対する感情や態度,関係性の
最終的に「変化のプロセスカテゴリー」を作成した。
変化のきっかけと娘が考えるもの」として,これらを
含むエピソードを抜き出し概念化した。概念化のプロ
2.2.3 感情・関係性の再構築の過程の分析
セスには基本的に「比較を行うこと」と「問いを発す
どのようなきっかけから母親への感情や,関係性が
ること」の2つの分析手順があると言われている
変化したのかを明らかにするために,各協力者のトラ
(Strauss & Corbin, 1990)。ここで発せられた問いは,
ンスクリプトを参照し,各カテゴリーに該当する語り
「協力者は変化のきっかけとなる体験として何を語っ
の有無を評定した。すなわち一連のエピソードの中で
ているのか」というものであった。協力者が変化の要
各カテゴリーに含まれる内容が関連して出現する場合,
因として認識し,語っている内容を分析の対象として
あるきっかけから,母親への感情や関係性に変化が生
いる。
まれたことを表している過程とみなした。この変化の
②得られた概念を整理し,類似する特徴を持つ概念
過程を「関係性の再構築の過程」として分析し,特徴
をカテゴリーとして統合し,新たなカテゴリーが産出
的なものを中心に検討した。
されなくなるまでカテゴリー化の作業を行った。カテ
ゴリーの定義を精緻化し,最終的に「変化のきっかけ
3.結果
となる体験カテゴリー」を作成した。
B.「感情・関係性の変化カテゴリー」の作成
3.1 作成されたカテゴリー
上述の b と c を「娘のもつ母親に対する感情や態
A.変化のきっかけとなる体験カテゴリー
度,母親との関係性の変化の内容」として統合した。
「変化のきっかけとなる体験カテゴリー」(表2)は,
「協力者は母親への感情,関係性の変化の内容として
母親への感情や,母親との関係性が変化した要因とし
何を語っているのか」という問いのもと,協力者が変
化として認識し語った内容を対象として概念化を行い,
て協力者が挙げた内容を概念化しまとめたものである。
「共有体験」,「新しい家族の形成」,「出生家族の親と
「感情・関係性の変化カテゴリー」を作成した。
離れること」,「夫の親との接触・関係形成」,「母親の
C.「変化のプロセスカテゴリー」の作成
サポート」,「母親の過去の体験を知ること」,「母親の
上述の d を,母親に対する感情や態度,関係性の
変化のプロセスとして協力者が語ったものを含むエピ
ソードを抜き出し概念化した。ここでの問いは「協力
者は変化のプロセスとして何を語っているのか」とい
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変化」,「祖母としての母親に接すること」,「育児によ
る人格変化」の上位カテゴリーが生成された。
東 京 学 芸 大 学 紀 要 第1部門 第56集(2005)
− 140 −
富岡・
橋:親への移行期にある娘のとらえる母親との関係性
のカテゴリーとした。
B.感情・関係性の変化カテゴリー
関係性の変化については,「関係性の結束の強さの
「感情・関係性の変化カテゴリー」(表3)は,協力
変化」,「関係性のポジティブ・ネガティブな変化」,
者が以前と比較して変化したと考えている母親に対す
る感情,母親との関係性のとらえの内容について概念
「母親との関係性の獲得・強化」が生成された。母親
化したものである。感情や評価の変化について,「母
との関係性の結束が弱まることは,必ずしも否定的変
親への感情の変化」,「母親への評価の変化」が生成さ
化ととらえられていないことから,関係性の肯定的・
れた。「感情」と「評価」は類似した内容とも考えら
否定的変化と,関係性の結束の強さとは別の次元の変
れるが,「母親への感情の変化」の内容は,より母親
化と考え,「関係性のポジティブ・ネガティブな変化」
に対する情緒的な体験と考えられ,母親の人格や育児
と「関係性の結束の強さの変化」を別個に作成した。
に対する肯定的・否定的評価とは異なると考え,別個
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東 京 学 芸 大 学 紀 要 第1部門 第56集(2005)
理解」,「比較」が生成された。「新しい家族の独立性
C.変化のプロセスカテゴリー
「変化のプロセスカテゴリー」(表4)では,母親へ
の意識」は,「変化のきっかけとなる体験カテゴリー」
の感情や評価,関係性が変化した過程として協力者が
の「新しい家族の形成」とは異なり,何らかのきっか
挙げた内容や,語りから変化の過程に推測される心理
けにより,新しい自分の家族の自律性が強く意識され
的作業を抽出しカテゴリーとしてまとめた。その結果,
た経験についての語りに基づいたものである。
「振り返り」,「新しい家族の独立性の意識」,「新しい
「感謝の強まり・生起」,「尊敬の強まり・生起」,「親
3.2 関係性の再構築の過程
娘が,出産・育児に関わる様々な経験をどのように
意味づけし,母親への感情や関係性を変化させている
しみの強まり・生起」があったと報告した。
また,共有の体験から「母親の育児に対する肯定的
のかを,「関係性の再構築の過程」として分析した。
評価」が起こると語った協力者が6名いた。その変化
特徴的な語りのパターンに着目し,例を紹介しつつそ
のプロセスでは,育児の大変さ,母親の自分への心情
の結果を以下に示す。例中の【
の理解などの「新しい理解」(9名)や,過去の母親
】は,下位カテゴリ
ー名であり,下線部はその内容に該当する語りである。
の「振り返り」(8名),母親と自分の「比較」(7名)
が見られた。
例1.共有体験から育児の大変さを理解し,母親の
A. 共有体験による母親への感情・評価の変化
18名全ての協力者が,「母親への感情の変化」や
「母親への評価の変化」のきっかけとして,
「共有体験」
育児を肯定的に評価するようになる
協力者D:家事に関しては,ある程度自分でやるよ
を挙げていた。特に「親としての共有体験」や「子育
うになって大変なんだというのがわかったけれど,子
ての困難・苦労の共有体験」を要因とする変化が多く,
育てに関してはわからなかった。それで子育てをやっ
13名の協力者がこの2つを報告していた。共有の体験
て,親って大変だなぁって思う【育児の大変さの理解】
。
によって10名が「母親への感情の変化」,すなわち
で,いろんな子育ての仕方もあるんだし,うちの母が
− 142 −
富岡・
橋:親への移行期にある娘のとらえる母親との関係性
やってきたことも,自分がこういうふうに思える,親
「夫の親との接触・関係形成」による「母親の人格・
って大変だなぁって思えるってことは,親の自分を育
価値観に対する否定的評価」をするようになった協力
てる育て方も間違ってなかったんだなぁって思う【母
者は2名おり,いずれも「夫の親と自分の母親の比較」
親の育児に対する肯定的評価】。
を行っていた。
例2.育児の共有体験からその大変さを理解し,母
親の育児を振り返る。母親と自分の育児環境を比較し
例4.出生家族との別居により,母親との間に個人
としての関係性を獲得し,関係性の結束が弱まる
協力者L:娘だったときと,結婚して家を出る【出
て,母親に対する尊敬の気持ちが強まる
協力者K:母は3人子どもを産んでいる。子育てっ
生家族の親と離れること】と,親子の関係が変わるん
ていうのは大変だなぁと思う【育児の大変さの理解】。
だよね。いったん結婚して出ちゃうと,娘だけど娘じ
それを3人もしていたっていうのは,親として凄いな
ゃない【個人としての関係性】。距離を置くみたいな
ぁと思う【尊敬の強まり・生起】。自分が同じ現状だ
ところがある【関係性の結束の弱まり】。私も結婚し
ったらやってけない【自分と母親の育児の比較】。す
てからはそんな母親母親っていう感じでもなかったし,
ごいなぁと。自営業なんだけれども,途中でお店手伝
お姑さんもできるから【夫の親との接触・関係形成】,
ったりとか,凄く大変だっただろうなぁ【過去の母親
意識がそっちの方にも向く。自分の母親だけじゃなく
の振り返り】。
て。
例5.夫の両親との関係を形成し,比較することに
B.共有体験による母親との「同士」としての関係性
よって母親に対する新しい理解がされ,母親に対して
否定的な評価を持つようになる
の獲得
「共有体験」によって,
「母親との関係の獲得・強化」
協力者F:主人の方と両親と私の両親はかなりタイ
の,「同じ経験をしたもの同士としての関係性」が起
プが違うんで【夫の親と自分の母親の比較】,お互い
こることが示された。「親同士」の関係の獲得を示し
のいいところと悪いところが見えて,自分なりのカル
た協力者が10名,「妻同士」の関係の獲得が1名の計
チャーショックを受けていたんだと思うんですけど。
11人が,「共有体験」から「同じ経験をした者同士と
凄く,両親の今まで見えていなかった,いやだな,と
しての関係性」を獲得したと語っていた。
思うような面が見えたところがあって。なんかこうけ
例3.親としての共有体験から,同じ親同士として
ち臭いなぁと思ったりだとか,なんかこう,もうちょ
っと積極的にすればいいのにとか,そういうネガティ
の関係を獲得する
協力者G:(同じ親としての経験をすることで関係
ブな部分が自覚されて【夫の親と自分の母親の比較・
は)ちょっと質が変わったと思う。…(略)やっぱり
母親の人格・価値観に対する否定的評価】。父はリタ
同じ立場と言うのかな。今までは親と子の立場だった
イヤして,いつ見ても2人でゴロゴロテレビ観てるみ
のが,親は私の立場からの親,私は息子に対しての親
たいな印象があると,主人の両親はまだ現役で仕事し
という立場で,同じ価値観が多少…。親っていう1ジ
ているので,なんかこうもったいない【夫の親と自分
ャンルにくくると,同じグループに入ることができた
の母親の比較・母親の人格・価値観に対する否定的評
価】。
【親同士の関係性】。
協力者J:親と子どもの関係…。(略)結局子どもに
とってお母さんは私で,あたしにとってお母さんはお
母さんなんだけど。今まではあたしをお母さんって呼
D.育児による人格変化からの母親に対する感情・評
価の変化
んでくれる存在がなかったわけだから。この子にとっ
「母親に対する評価の変化」と「母親への感情の変
て私は母親,母親に対して,子どもなんだけど,ひと
化」,すなわち「母親の人格・価値観に対する肯定的
りの母親,母親どうしとして接することができる【親
評価」と「いたわり・サポートの感情の強まり・生起」
同士の関係性】。
の要因として,「育児による人格変化」を挙げる協力
者が3名いた。このような変化を示した協力者の数は
C.新しい家族の形成・夫の親との関係形成による変化
「新しい家族の形成」をきっかけにして,「関係性の
結束の弱まり」(4名),「個人としての関係の獲得」
(2名),「母親の人格・価値観に対する否定的評価」
(5名),などが起こることを示す例が多く見られた。
− 143 −
多いとはいえないが,変化の例を提示する。
例6.育児によっておおらかになったことから,母
親の人格に対して肯定的に評価するようになる
協力者D:(以前は)できれば親みたいにはなりた
くないなぁと思っていたほうなので。そんなにうちの
東 京 学 芸 大 学 紀 要 第1部門 第56集(2005)
母はものごとをはっきり言わなかったりする…。私は
【祖母としての母親に接すること】。自分はあまり昔と
そういうのがいやだったし。いろいろ,イヤなところ
変わっていないつもりでもやはり親は年とっている。
が目についてたかもしれない。前はイヤなところも多
…(略)。いたわる気持ちっていうのはやっぱり子ど
かった。今は,あんまりイヤなところっていうより,
もができてから。子どもが大きくなるまで元気でいて
いいところをみるようになった【母親の人格・価値観
欲しいなあと【いたわり・サポートの気持ちの強ま
に対する肯定的評価】。(母親のいいところを見るよう
り・生起】。
協力者P:親になってからですね,やっぱり自分の
になったのは?)やっぱりおおらかになるんじゃない
かなあ自分が。毎日の中でピリピリはするけれども,
親を意識するのは。(略)…自分が親になってから結
基本的な性格はおおらかになるんですよ【育児による
構年とったな,という方で意識する。この先どうなっ
人格変化】。子どもはごはんポロポロポロポロこぼす
ちゃんだろうじゃないけど。まだ50,されど50。年が
し。そんなのもいちいち怒らないじゃないですか母親
心配【いたわり・サポートの気持ちの強まり・生起】。
は。前だったら怒ったかもしれない。…(略)待つよ
やっぱり昔とは動きが違う。子どもを見ててもらう姿
うになりますよね。忍耐強くなる。
を見て【祖母としての母親に接すること】,ああー年
とったなぁ,じゃないけど。自分で遊んでもらった時
例7.育児の経験により我慢強く気長な性格になり,
とは全然違う。ちょっと辛そうだなって【いたわり・
母親に対して優しさ,長い目で見る感情が生まれる
協力者E:(自分自身子育てで)我慢強くはなりま
サポートの気持ちの強まり・生起】。自分の子どもを
したよね。こらえ性が出てきたというか。言ってぽん
見てると。ちょこまか行っちゃうんで。もし子どもが
と返ってこないとイライラする方で。もういいよわか
いなかったらそこまでは思っていなかったんじゃない
んないなら,みたいなところが昔はあったんですけど。
ですか。
やっぱり今はなんとなく少しは気が長くなって。そう
いうところはでてきた【育児による人格変化】。こっ
F.親の心情の理解と母親への頼る・甘える気持ち
ちも年とってるし,あっち(母親)も年とってる,わ
「母親のサポートを受けること」(5名),親として
かんないところはあるだろうみたいな。…(略)気が
の体験という「共有体験」(1名)などがきっかけと
長くなったというのが一番生きてますね。優しいって
なり,「頼る・甘える感情の強まり・生起」を語った
いうか,長い目で見れるようになったというか【いた
協力者が8名あった。その変化のプロセスでは「新し
わり・サポートの感情の強まり】。それも大げさなん
い理解」すなわち「親としての心情・愛情の理解」
ですけど…。余裕を持って見られるようになった。母
「母親の自分に対する心情・愛情の理解」があった(4
名)。
のことに関しても,他のことに関しても。
例9.親になる共有体験から,頼られるとうれしい
E.祖母としての母親,母親の老いを知ることによる
という親の心情,母親の愛情を理解し,頼る・甘える
気持ちが強まる
いたわりの感情の生起
母親への感情の変化として,10名が「いたわり・サ
協力者G:(頼る気持ちについて)子どもとして甘
ポートの感情の強まり・生起」を語った。「祖母とし
えてあげられるうちが幸せなのかなぁと。親も子ども
ての母親に接すること」や「母親の老い」によって
に頼られるのは,全然オッケーみたいですよ。親はね。
「いたわり・サポートの感情の強まり・生起」が引き
親は頼られるとうれしいみたい【親の心情・愛情の理
解】ですよ。(親は頼られるとうれしいと感じたの
起こされると報告した協力者は6名であった。
例8.祖母としての母親に接することで,母親の老
は?)結婚してもそんな風にはあんまり考えなかった
ので,やっぱり子どもができてからですよね。自分も
いを感じ,いたわり・サポートの気持ちが強まる
協力者G:(いたわる気持ち)ありましたけど,自
こうやって頼られるので。頼られるとかわいいですよ
分の家庭ができてから,自分の親も年とったんだなぁ。
ね【親としての体験;親の心情・愛情の理解】。やっ
…(略)。子どもが成長して行くと考えると,じゃあ
ぱり私がいいの?ってなりますね。親の気持ちもわか
この子が成人する時は親はどうなんだろうというのは,
るから,子どもは子どもでいてほしいというのも【親
子どもが生まれなかったら考えなかった。子どもとし
の心情・愛情の理解】。…(略)。
て親を見てるから。小学校,中学高校と同じ感覚でず
例10.親からのサポートを受けることで,親の頼
っと延長線。でも着実に親は50代から60代になってい
られたいという心情,親の自分への愛情を理解,母親
るということが,子どもが生まれると如実にわかる
に頼る・甘える気持ちが生起する
− 144 −
富岡・
橋:親への移行期にある娘のとらえる母親との関係性
協力者R:頼っていいし,頼られたいんだっていう
これに関連する結果として,共有体験から母親に対
【母親の自分に対する心情・愛情の理解】。元気は前よ
して「同士」としてのとらえが形成されることが明ら
りないんだけど,お互いにそういう…。親は自分が調
かになった。「同士」の関係性は多様であり,母親,
子が悪い時とか弱くなっている時に,自分を思ってい
妻,嫁,女性同士など,娘と母親を繋ぐ関係性は様々
る【母親の自分に対する心情・愛情の理解】。私が病
にとらえられているが,特に「親同士」の関係性の獲
気したりすると辛い。弱くなった時に頼りにしている,
得が多くの協力者の語りに見られた。「同じ親」とい
頼っていい存在と気付いた【頼る・甘える気持ちの強
う認識が,親への移行期の娘がとらえる母親との新し
まり・生起】。(いつから?)産んでから。すぐその気
い関係性を表す重要な枠組みとなるといえる。
が親にはあるんだとわかった。
4.2 出生家族から「離れる」ことによる変化
結婚によって出生家族に子どもとして属さなくなる
4.考察
こと,新しい家族を形成することによって,母親との
4.1 共有体験からの感情や関係性の肯定的な変化
結束が弱まった,もしくは個人と個人の関係になった
出産や子育てなど,母親と同じ体験をすることによ
という語りが見られた。これらは,いずれも方向性と
って,母親に対して肯定的な見方をするようになるこ
しては,親から「離れる」ことを表している。また,
とが示された。また,母親に対して親しみや感謝,尊
夫の親との関係を形成することによっても,母親から
敬など,肯定的な意味合いをもつ感情が生まれる,も
「離れる」ということが起こっていることがわかる。
しくは強まることが示された。このような見解は過去
親への移行期は,母親への情緒的親密度が高まる時期
の研究によっても得られており,
春日井(1997),Fischer
であると言われるが(Fischer, 1981; Cohler & Grunebaum,
(1981)は,母親と同じ役割をもつことによる同僚的視
1981)
,本研究の結果からは,自分の家族の自立性を意
点(=同士としての視点)の獲得によって,母親と娘
識し,
「離れる」関係性を形成する時期であることがう
の関係性が変化すると述べている。
かがえる。夫の両親との関係を形成していくことで,
本研究では,その過程で母親が自分(娘)を育てる
母親に対する否定的な評価が認識されるようになった
ときに感じたであろう苦労や自分への愛情を子育ての
という例が示されたが,これは親と子どもの関係から
経験によって理解したり,母親の育児を振り返って考
脱却することに加え,夫の親,すなわち同じ「親」と
えたり,娘自身が幼いころの母親の様子を振り返り,
しての比較対象を得ることにより,以前よりも親に対
母親と自分の育児環境の比較をする作業が行われてい
する客観的な視点を獲得しているからだといえる。子
ることが示された。春日井(1997)は,情緒的親密性
どもが生まれることによって,自分の母親だけでなく
の上昇には,類似性の認識が要因となるとしているが,
夫の両親と接する機会が比較的増えることが予想され,
逆に,差異性の認識も母親への肯定的感情に影響して
夫の両親とも新しい関係性を築いていくと考えられる。
いると思われる。
それによって,より自分の母親に対する客観的な見方
を獲得することが可能になると推測できるだろう。
結果で示した例2の協力者Kに着目すると,協力者
は母親と自分の育児を比較し,母親がかつてしていた
4.3 母親に対するいたわりの生起
ような育児は自分にはできないと述べている。このよ
うに母親と自分の育児や育児環境を比較し,母親の育
育児は気の長さや根気強さが求められる作業である
児をより優れたもの,大変なものと認識することによ
といい,育児による人格の変化を語った協力者がいた。
って,親しみ,尊敬や感謝などの肯定的感情をもつこ
育児を通して思い通りに行かない体験や待つ体験を繰
とになると考えられる。振り返りの作業は,母親の自
り返すことによる人格の成長があり,それによって母
分への育児という「過去の母」についてとともに,子
親に対していたわる気持ちやサポートが増えたと娘が
どもとしての「過去の自分」についても見られた。親
とらえていることが示された。成人期の親子関係は,
への移行期にある娘の心理的体験の特徴として,育児
親と子双方向からの援助がなされるようになる時期と
が母親にとって自分自身が受けた育児の再体験となる
いわれている(Mancini & Blieszner, 1989;落合・佐
という考えもある(Levinson, 1996)。被養育体験を振
藤, 1996)が,これは,子どもの独立と親の加齢とい
り返り,子どもとしての自分を再考する過程と,母親
う2つの要素が大きく影響しているといえる。「子ど
の心情や愛情を理解する過程があり,母親への感情を
もがいるから母親の老いを心配する気持ちが芽生えた
変化させていくと考えられる。
(協力者P)」という語りなど,子どもをもつというこ
− 145 −
東 京 学 芸 大 学 紀 要 第1部門 第56集(2005)
とが,母親の老いの認識を生む一つのきっかけになる
合,すなわち「頼らざるを得ない」という状況は,多
ことが伺えた。
くの母親が体験することであると思われる。しかしそ
これに加わる要素として,子育てというケア役割の
れと同時に,出産後に母親に頼る理由として興味深い
遂行も,娘の母親に対する感情の変化に影響している
語りをしている協力者が数名いた。それは,親になる
のかもしれない。親になることによる人格発達が近年
共有体験から,「子どもに頼られるとうれしい」という
の発達研究のテーマとして取り上げられ(柏木・若
親の心情を理解したことから,親に甘える気持ちが強
松, 1994;氏家・高濱, 1994;氏家, 1996),子どもをも
まるというものであった。親同士という関係を形成し
つことで親の人格には様々な側面での発達がみられる
ながらも,子どもとして親と接することを「親孝行」
ことが明らかになっている。子育て役割の遂行は,親
と認識しているのは,子どもをもつことによって親と
の老人期における子どものケア役割の獲得に繋がって
しての心境を理解することによると思われる。また,
くると考えれば,「おおらかになった」,「気長になっ
親のサポートを受けることによって親の自分への愛情
た」と娘自身が感じた人格変化の影響が,娘(若い親)
を再認識することによるとも考えられるのである。こ
の母親への感情の再構築にも影響するということは重
のように,親への移行期の娘とその母親は,「同士と
要な示唆であるといえる。
しての関係」や「母親へのいたわりの感情」に表され
る,対等性をもった関係の構築を始めつつも,「サポ
ートを与える親と受け取る子としての関係」の側面も
4.4 いたわりと頼る気持ちの並存
母親に対して生起した感情として,サポートの気持
同時にもつ関係性を築いているのではないだろうか。
ち,いたわりの気持ちが報告されていた。これは,子
どもとして親の保護を受け,母親から娘に一方向的に
4.5 まとめと今後の課題
世話やサポートが与えられる関係からより相互援助的
本研究では,グラウンデッド・セオリー・アプロー
な親子関係が形成されていることを示唆している。し
チを用いて,親への移行期の娘が,出産・育児などの
かしそれと同時に,母親に頼る・甘える感情の強ま
体験を,母親との関係性のなかでどのように意味づけ
り・生起が報告されていることは注目すべき点である。
し,母親に対する感情やその関係性を再構築していく
心理的離乳の観点から児童期から青年期の子どもの
のかを検討した。その結果,娘の母親への感情,母親
親子関係の質を検討している落合・佐藤(1996)によ
との関係性はいくつかの特徴的な変化を示すことが明
ると,年齢が進んだ段階(大学院生)では,「子が親
らかになった。すなわち,親になる体験や日常の育児
から信頼・承認されている親子関係」と「親が子を頼
の困難など,母親との共有体験をもつことによって過
りにする親子関係」が多く見られたと報告した。子の
去の振り返りや,自分と母親の比較,新しい解釈や理
成長にしたがって親子関係はより対等になり,子ども
解が起き,娘のもつ母親への感情や評価が肯定的に変
が親に対して援助を行なう関係になると考える研究は
化すること,また共有体験によって娘は母親と「同士」
多く,落合・佐藤は,さらに年齢の進んだ成人期以降
としての関係を獲得したと考えていることが示された。
の親子関係においては,前述の関係がより強くなると
そして,新しい家族の形成や夫の親との関係形成によ
推測している。しかし,本研究の結果を考慮すると,
って母親との関係が弱まったり,母親に対しての評価
親への移行期の娘と母親の間では,母親と同じ役割を
が変化すること,個人と個人の関係性に変化したとと
獲得し対等性をもちながらも,育児の先輩として母親
らえていること,母親をいたわる気持ちをもつと同時
を頼りサポートを求める関係が形成されていると考え
に母親に頼る気持ちももっていることなどが明らかに
られる。青年期から成人期において親の援助や保護を
なった。
必要としない関係性,子が親を援助する関係を形成し
今後の課題としては,時間の経過によって,「同士」
ていたのが,親への移行期ではそれと平行的に物理
の関係性にはその後どのような発達的変化がみられる
的・心理的サポートを求めるという親子関係の再燃が
かを検討することがある。妻としての役割,嫁として
あるのではないかと推測される。
の役割など,どのような役割を中心として「同士」と
親への移行期にある娘が,母親のサポートを求める
しての関係が作られていくのかは,娘がライフサイク
ことについて,「親には頼りたくなかった。子どもが
ルの何処に位置し,何を課題としているかによって異
できてからは頼らざるを得ない(協力者P)」という
なってくると推測される。また,母親の加齢の認識は,
語りがあった。育児に対する周囲のサポート源として
子どもをもつことに影響されることが語りに示されて
母親の存在は身近であり,他の資源が少ないという場
いた。成人期中期から後期の,老親に対するケア役割
− 146 −
富岡・
橋:親への移行期にある娘のとらえる母親との関係性
の遂行という大きな課題と,子どもをもつ経験の関連
は検討していく余地がある。それらの知見を積み重ね
ていくことで,本研究の意義がより高まるものと思わ
れる。
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付記
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of Marriage and the Family, 51, 275‐290.
本論文は,第2執筆者の指導のもとに,第1執筆者
水野将樹.(2004).青年は信頼できる友人との関係をどのよ
が東京学芸大学修士論文(平成15年度)としてまとめ
うに捉えているのか ─ グラウンデッド・セオリー・アプ
た内容を加筆修正したものです。ご協力くださいまし
ローチによる仮説モデルの生成 ─. 教育心理学研究, 52,
た方々に,深く感謝いたします。
− 147 −
東 京 学 芸 大 学 紀 要 第1部門 第56集(2005)
Mother-daughter relationships perceived by daughter in the transition to
parenthood: The process of reconstruction and the factors
Mayuko TOMIOKA*,Michiko TAKAHASHI**
Department of Psychology
This research examined daughters perceptions that how their relationships with their mothers changed in the
transition to parenthood. Eighteen daughters who were married and had first-born children were interviewed, and
the transcripts were classified into categories with a qualitative method, the Grounded Theory Approach. Three
categories were identified:“Opportunities to change the relationships”
“Change
,
of feelings and relationships”and
“Process of change”. As associations of these categories were analyzed, the results suggested some characteristic
changes and process of reconstruction of mother-daughter relationships and feelings. Daughters took
retrospective look at the past mothers, and they compared the way of raising children and circumstances of
childrearing. Then, they reevaluated their mother positively, and had feelings of deeper respect, intimacy and
appreciation for them. As the other reason for changing the feeling toward mother, some daughters uttered the
personality development. Second, daughters viewed their mothers in new ways: they saw their mothers as“peers”
who had the same experiences, and stood in the same position. As the factors of the changing, they referred to the
“common experiences”of birth and childrearing. Third, daughters felt deeper care and concern for their mothers.
Nevertheless at the same time, they became dependant on their mothers and expected more support because they
,
rediscovered their mothers affection. Feelings of care are also believed to be to seeing mothers as grandmothers
by daughter.
Key words:transition to parenthood, mother-daughter relationships, reconstruction of relationships, daughters’
perception
* Japan College of Music (2-16-12 Yutakacho, Shinagawa-ku, Tokyo, 142-0042, Japan)
** Tokyo Gakugei University (4-1-1 Nukui-kita-machi, Koganei-shi, Tokyo, 184-8501, Japan)
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