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第1章 太陽光エネルギー

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第1章 太陽光エネルギー
第1章 太陽光エネルギー
1.1
太陽光エネルギー導入の基本的な考え方
太陽光発電は、太陽からの光エネルギーを直接電気に変換する再生可能エネルギー
です。本市の平均日射量は約13MJ/m2・日で全国トップクラスにあり、太陽光発電を導
入する上で条件のよい地域です。本市では平成15年度から住宅への太陽エネルギー導
入に対して支援制度を設けており、市民への積極的な導入促進を図っています。
また、太陽光発電設置の目的には、地球温暖化防止のほか、エネルギーコスト削減、
防災対策等が考えられるため、環境配慮のみならず、設置目的を明確化し、費用対効
果も検討した上で、地域特性である太陽光エネルギーを利用した太陽光発電の導入を
推進し、目標を定めて促進していくとともに、併せて、エネルギー変換効率が40~60%
と高く、二酸化炭素の排出削減効果も期待できる太陽からの熱エネルギーの利用につ
いても推進していきます。
《市民・事業者による導入》
《公共施設への積極的導入》
《災害対策等》
一般家庭への導入・市民立共同発電
公共施設への導入
マイクログリッドの構築
導入コスト:約1,860~2,580万円(20~30kW)
年間発電量:約22,400kWh/年
CO2削減量:9.5t-CO2/年
■他の新エネルギーと組み合わ
せたマイクログリッドの構築
導入コスト:約250万円(3.5kW)
年間発電量:約3,900kWh/年
CO2削減量:1.6t-CO2/年
地球温暖化防止
電力の負荷平準化
災害時の非常用電源
環境教育への活用
(1)公共施設での積極的な太陽光エネルギーの利用
本市では、
「学校施設耐震化整備計画」に併せ、平成22年度までに市立小中学校7
校(計140kW)、公民館などの文化施設3箇所(計47.25kW)
、上下水道施設1箇所へ
太陽光発電を導入しました。この太陽光発電による年間発電電力量は233,730kWhで
あり、約75.73t-CO2の二酸化炭素を削減できます。
また、「環境・新エネルギーに関するアンケート」
(以下「アンケート」という。
)
の調査結果によると、太陽光発電は「本市が導入すべき新エネルギー」であると考
えられています。
このことから、今後も、公共施設の整備等に併せ、さらなる太陽光発電の導入を
進めることで、二酸化炭素排出量の削減とともに、市民への普及啓発による意識の
向上を図り、環境と共生するまちづくりを推進します。
- 12 -
(2)市民・事業者による太陽光エネルギーの導入
平成21年11月より太陽光発電の新たな買取制度が開始され、太陽光発電設備から
の余剰電力(自家消費分を差し引いた余りの電気)に対し、太陽光発電設備容量や
太陽光以外の自家発電設備の併設状況等に応じた新たな買取単価が適用となりまし
た。住宅用太陽光発電単独で、かつ太陽光発電設備容量が10kW未満の場合の買取単
価は48円/kWhとなり、余剰電力を売電することで初期費用の回収がしやすくなり、
太陽光発電は家庭で身近に取り組める環境保全対策及びエネルギー対策となりまし
た。
本市では、平成15年度から太陽光発電導入のための支援を行ってまいりましたが、
今後も支援制度の充実や情報提供を積極的に行い、住宅用太陽光発電の導入を推進
します。
また、アンケート調査の結果によると「市民、事業者、行政が協働で行う市民共
同発電」への参加意向について、3割以上の市民、事業者があると回答しています。
地域におけるこのような取組を推進することにより、市民・事業者の環境保全の
意識の醸成を図ります。
(3)不測の事態(災害時等)に備える太陽光発電の利用
本市は、東海地震防災対策強化地域及び「南関東地域直下の地震対策に関する大
綱」の対象地域に指定されており、災害対策の強化や、市民防災意識の向上など、
より一層の災害への取り組み強化が必要となっています。
太陽光発電は、災害等により電気の送電が止まった場合に、非常用電源としての
活用も期待できることから、不測の事態(災害時等)における電源確保対策の一つ
として、災害時の指定避難所への太陽光発電の導入促進が考えられます。
また、長期的な取り組みとして、太陽光発電や他の新エネルギーと組み合わせた
「地域エネルギー自給システムの構築」も視野に入れ、災害に強く、安全・安心に
暮らせるまちづくりを推進します。
太陽電池
買電
パワー
コンディショナー
接続箱
太陽電池
分電盤
売電
平常時負荷
充電
放電
自立運転時負荷
据置型鉛蓄電池
図1.1-1 防災型太陽光発電システム(系統連系)イメージ
出典:JEMA 公共用・産業用太陽光発電システム計画ガイドブック
- 13 -
1.2
プロジェクト
(1)公共施設等への積極的な太陽光発電の利用
市内の公共施設等へ計画的に太陽光発電システムを導入することにより、市民に
対するインセンティブを高めるとともに、災害など不測の事態における電源確保対
策の一環として、災害時の指定非難所に独立電源(既存の電力系統に依存しない)
として利用可能な太陽光発電の導入を図ります。
また、子供たちが目にする場所に太陽光発電を設置することで、環境教育の場と
して活用し、エネルギーへの関心を高める効果が期待されます。
【新庁舎】
平成25年5月供用開始予定の新庁舎では、太陽光発電及び地中熱利用の導入が予定されて
おり、太陽光発電で旧庁舎のエネルギー消費量の約6.5%、地中熱で約0.8%の削減を見込ん
でいます。
年間一次エネルギー消費量〔GJ/年〕
0
10,000
20,000
30,000
40,000
50,000
現行
モデル
新庁舎
モデル
削減
-27.3%
0.5%
6.5%
1.1%
3.6% 4.9% 3.6% 5.1%
0.8%
太陽光発電
クール・ウォームピット
自然換気
CO2濃度制御
断熱・庇
1.2%
照明制御
地中熱利用
全熱交換器
機器の高効率化
図 1.2-1 新庁舎におけるエネルギー消費量削減計画
資料:甲府市
次に、太陽光発電の導入が考えられる本市の公共施設を示します。各施設への設
置に当たっては、屋根の形状、面積、耐荷重等の検討が必要ですが、本市における
設置事例から、概ね20~30kWの太陽光発電システムの設置が可能と考えられます。
NEDOフィールドテスト事業における太陽光発電システムのイニシャルコスト
より86万円/kW(30kW)~93万円/kW(20kW)とした場合、1施設当たりの概算工事
費は出力20~30kWで1,860~2,580万円となります。
- 14 -
既に導入済みの施設及び平成23年度導入予定施設の位置を下図に示します。
北新小学校
表1.2-1
平成22年度末市内公共施設における太陽光発電設備設置状況
施設数
(箇所)
A
公民館(市民センター)
10
小学校
25
中学校
11
高校・専門学校
2
総合市民会館
1
市立図書館
1
悠遊館
10
障害者センター
1
福祉センター
4
保育所
5
リサイクルプラザ
1
上下水道局
1
甲府市浄化センター
1
市立甲府病院
1
中央卸売市場
1
甲府市勤労者福祉センター
1
農業センター
1
合計
77
施設等
千塚小学校
朝日小学校
笛南中学校
H22以前
設置箇所
B
2
6
1
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
11
総出力
kW
35.25
120
20
0
0
0
12
0
0
0
0
25
0
0
0
0
0
212.25
A‐B
8
19
10
2
1
1
9
1
4
5
1
0
1
1
1
1
1
66
※突然の災害により長時間停電になった場合でも、太陽光発電システ
ムに備わっている自立運転機能を活用することで、電力を使うこと
が可能となります。
停電時に太陽光発電による電力を使用できる、自立運転機能を使う
ためには「自立運転コンセント」が必要で、現在、自立運転コンセ
凡
例
太陽光発電設備を導入済みの施設
ントを備えた太陽光発電機種は、88.3%に上っています。
出典:太陽光発電の賢い使い方(環境省)
平成 23 年度に太陽光発電設備を導入予定施設
図 1.2-2 太陽光発電設備設置済み(予定)施設
この地図は、国土地理院発行の 20 万分の 1 地形図(甲府)を使用したものです。
- 15 -
【太陽光発電街路灯】
太陽光発電街路灯は、技術が確立しており、比較的取り組みやすい新エネルギーであるとと
もに、環境教育の教材としての利用も考えられます。現在は、家庭用コンセントが付属された
災害時対応型の太陽光発電街路灯もあることから、新エネルギー導入促進のシンボルとする
他、災害対策として県道や市道沿いへの導入を検討します。
本市では、市道にLEDを利用した街路灯の設置計画があります。今後は、ソーラーLE
D街路灯を設置することにより、2年に1回の交換が10年に1回程度となり、環境負荷の高
い水銀を用いた蛍光灯の削減、災害による停電時の光源としての利用の他、市民の目に付く
所に設置することによる環境教育効果が期待されます。
表1.2-2 太陽光発電式白色LED街灯(8w)の例
電源部
太陽光パネル(12V、43W)
定格点灯電力
8W(蛍光灯 30W 相当)
蓄電池
密閉式ディープサイクル蓄電池
(12V、34Ah)
制御部
開発制御基盤
照明部
高輝度白色 LED
ランプ寿命
70,000hr(約 15 年)
照度(3.5m)
1lx 範囲(7m×20m)
消費電力
12v 仕様 8W
適材適所
午前9時から午後3時ま
で、日射の当たる場所
本体価格
650,000 円/基
設置費等
200,000~250,000 円/基
蓄電池
50,000 円/10 年毎
出典:メーカーパンフレット
- 16 -
(2)地域における共同発電の推進
現在、全国各地で太陽光発電や風力発電などの「市民共同発電所」の設置に向け
た取組みが行なわれています。これは市民や事業者の方々の寄付や出資によって、
太陽光発電設備等を公共施設や商業施設などに設置して、クリーンなエネルギーを
利用することにより、市民等が環境保全活動に参加できる仕組みであり、アンケー
ト調査の結果では、3割以上の市民及び事業者が市民共同発電への参加意向がある
と回答しています。
本市では、既に「市民立共同発電所」として2箇所に太陽光発電施設が設置され
ており、今後とも地域住民や事業者に呼びかけ、導入拡大を図ることが考えられま
す。
※財団法人広域関東圏産業活性化センター
による「グリーン電力基金事業」は、平
成22年度で終了となります。
※
図 1.2-3 甲府市南部市民センターにおける協働の一例
資料:山梨県県民生活課
甲府市では、平成18年に山城
自治会連合会、NPO法人みど
りの学校、甲府市の3者協働
で、南部市民センターに太陽
光発電システム(5.25kW)を
設置しました。
山城市民立共同発電所「甲府市南部市民センター」
(NPO法人みどりの学校ホームページ)
- 17 -
本市では「甲府市地球温暖化対策導入促進奨励金制度」
(住宅用太陽光発電システ
ム設置に対する世帯あたりへの奨励金制度)を設けており、現在の奨励金制度利用
状況は、
「甲府市都市計画マスタープラン」における「都市居住ゾーン」及び「郊外
居住・産業ゾーン」での申請件数が多い状況です。
平成22年12月、新たに「甲府市地球温暖
化対策地域協議会」と「山宮保育園」が協
働で「山宮地区太陽光発電・地域協働プロ
ジェクト」を立ち上げました。プロジェク
トでは、山宮保育園に9.03kWの太陽光発電
を導入します。日常的に保育園で使用する
凡例
電気を補うだけでなく、子どもたちや保護
住宅用太陽光
発電設置件数
者、地域住民の環境意識を高めるとともに、
環境教育の場として利用することも考えら
少
れています。
【甲府市都市計画マスタープランにおけるまちづくりの方針】
《歩いて暮らせる便利なまち》
都市居住
ゾーン
都市居住ゾーン
■中心市街地の外側に広がる既成市街地にお
いて、
「住宅市街地区域」や「住工共存区域」
など、地域の特性に応じて、狭隘道路の解消
多
や住宅の耐震化推進、地区計画や景観計画の
導入など、多様なまちづくり手法・制度を活
用しながら、質の高い居住環境を備えた、歩
いて暮らせる、安全で利便性の高い都市居住
環境の形成を進める。
《地域産業が持続的に成長・発展するまち》
郊外居住・産業
ゾーン
郊外居住・
産業ゾーン
■土地利用制度を活用して、市街地の外側に広
がる市街化調整区域や非線引き都市計画区
域について、食糧自給や食の安全にも配慮
し、まとまりのある集団的農地の保全を図り
つつ、田園環境と調和したゆとりある郊外居
住環境を計画的に整えるとともに、地域経済
や雇用の安定に向けて、産業構造の変化に対
応した地域産業の振興や環境と調和した新
規産業の立地に向けた環境整備の検討を進
める。
図 1.2-4 住宅用太陽光発電設置件数分布図
- 18 -
1.3
長期的な取り組み
(1)地域エネルギー自給システムの構築
本市は、東海地震防災対策強化地域及び「南関東地域直下の地震対策に関する大
綱」の対象地域にも指定されており、様々な災害を想定した予防対策の強化や、市
民防災意識の向上など、災害対策への取り組み強化が必要となっています。
災害時のエネルギー確保という観点から、将来的には、太陽光発電、バイオマス
発電やその他の新エネルギーとの連携によるマイクログリッドの構築、電気自動車
への蓄電を活用した地域エネルギー自給システムを構築することが考えられます。
図 1.3-1 マイクログリッドのイメージ
出典:「マイクログリッドの導入のすすめ」社団法人日本電機工業会
■「マイクログリッド」とは、新エネルギー(太陽光や風力、バイオマスなどの分散型エネル
ギー)で発電された電力を送電線網で結び、電力の貯蔵設備や監視・制御装置を組み合わせ
て、一定地域内の電力を効率的に賄う電力供給システムのことで、火力発電所からの電力を
使用する、大規模集中型の発電・送電システムにほとんど頼らないシステムです。
■市全域でエネルギーの地産地消を
目指し、マイクログリッド構築の
モデル地区を徐々に増やすこと
で、エネルギーの省力化が図られ
るとともに、既存の送電網に頼ら
ない災害に強いまちづくりの推進
が図られます。
【需要施設】
市有施設、一般家庭、事業所
農業利用、災害対策電源、貯蔵等
- 19 -
【スマートシティーの構築】
■大型電力供給施設と各家庭を電力網で結び、IT制御により電力網内の電力供給を最適化
する送配電システムのモデル導入
■各家庭へのスマートメーターの設置
■各家庭での省エネルギー対策
■大型電力供給施設として新エネルギー(バイオマス発電施設、風力発電等)を組み込み、
災害に強いまちづくりを推進
1.4
実施スケジュール
2010 2011
(H22)(H23)
2020(H32)
2015(H27)
太陽光エネルギーの導入
公共施設等への積極的な太陽光発電の利用
地域における共同発電の推進
地域エネルギー自給システムの構築
図 1.4-1 太陽光発電導入の実施スケジュール
- 20 -
2030(H42)
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