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多元計算解剖学ニュースレター No.8

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多元計算解剖学ニュースレター No.8
多元計算解学 NEWS LETTER
第 8号
多元計算解学
News Letter
2016/11
多元計算解剖学の夏
サマーワークショップ 2016
科研費・新学術「多元計算解剖学」
サマーワークショップ 2016 報告
今年で第2回となる多元計算
2.企画セッション
解剖学サマーワークショップが
2-1 領域全体を意義づける
2016 年 8 月 30~31 日に大阪南
ストーリー構築
港のコスモスクエア国際交流セ
以下に、具体的に行われた討
論の一部を紹介します。
審査所見、諮問委員コメント
科研費・採択時の審査コメン
トと国際シンポジウムにおける
諮問委員のコメントを参加者と
ンターで開催されました。計画
2-2 学理、成果の体系化
班、公募班から 40 名弱の研究者
2-3
共有しました。これらのコメン
若手育成(若手の国際
トを踏まえた上で、本ワークシ
が集まり、本領域の最終ゴール、 コミュニティにおけるプレゼン
学理構築、若手育成等について
ス強化。トップ雑誌・会議への
ョップの議論を進めるべきと考
討論しました。ワークショップ
積極的参戦の意欲向上。独自の
議論されました。コメントを見
の様子を 3 ページ目図1に示しま
方向性探求による多様性向上)
直し、領域全体を意義付けるス
す。具体的な項目は、以下のと
えて、ワークショップの最初に
トーリー構築、および、国際連
おりです。
2-4 国際連携
携および国際的な文脈における
1.科研・審査委員、諮問委
2-5
意義付けの重要性を改めて認識
員 の コ メ ン ト 分 析
1-1
領域申請時の審査委員
コメントの共有・分析とこれま
成果共有・還元(各討
論項目において、これまでの成
しました。
果取りまとめ、および数値目標
領域ストーリー
を含む最終目標の具体化)
各計画研究代表者から、領域
での対応、問題点等
3.公募班からの提言セッシ
を意義付ける共通ストーリーの
ョン
提案がなされました。多元計算
1-2
本領域・諮問委員コメ
ントの共有・分析(今後の方
領域に関するあらゆる提言、連
針・対応についての詳細は、企
携の提案等を発表しました。
画セッションで議論)
解剖学は、従来の計算解剖学に
時間、空間(スケール)、機
能、病理の4つの軸を統合する
ことを目指しています。
2
多元計算解学 NEWS LETTER | 第 8 号
医学的観点からは、動物も含
た。 その後、2013 年度終了の
くための戦略など、自身の目標
め た 病 理 画 像 ・ MRI 画 像 ・
新学術領域「計算解剖学」にお
について強い決意を語りました。
μCT・遺伝子情報(NPS)のデー
ける学理が紹介され、それを発
タベースに基づく“がん浸潤・成
展させた学理のシナリオが示さ
長・進行の時空間病理解剖モデ
れました。
ル(膵臓、肺)”(本谷班、仁木
しかし、多元計算解剖学の本
班、橋爪班等)、胚子・胎児の
質をとらえていないのではない
世界的な標本集である京都コレ
かという意見が出て、再度、練
クションや小児の移植症例に基
り直すことになりました。各研
づく胚子~胎児~小児の成長過
究班からは、学理に関連するエ
程の時間軸統合解剖モデル(清
ポックメイキングな論文 20 本が
水班、橋爪班等)、組織像・μ
紹介され、それぞれの立場か
CT・術前術後 CT・超音波・筋力
ら、学理構築に必要な項目が示
実測値などを総合した関節疾
されました。
患・ALS 用の筋骨格機能解剖モ
デル(佐藤班、藤田班等)、シ
ミュレーションや臓器3D スキ
ャンを統合した肺機能解剖モデ
ル(木戸班、仁木班等)、等の
提案がなされました。
公募班からの提言セッション
では、主に、各テーマの説明と
計画班や他の公募班との連携提
案がなされました。その中で、
羽石先生からは、計画班の強い
リーダシップを望む意見がなさ
れました。公募研究を有効に領
域に取り組むために、領域代表
や計画研究代表者らの強いトッ
プダウンの主導があってもよい
のではないかという意見があり
ました。領域内で優れた連携を
興味深い議論として、本谷先生
表彰する制度を設けるなど、領
が、16~17 世紀における、天文
域内連携促進の提案もなされま
学の学理構築の例を紹介しまし
した。
た。天文学が占星術から派生し
て、学問として確立するのに貢
献した人物として、ケプラーは
成果共有・還元、海外連携に
ついても、意欲的な計画の発表
および活発な討論がなされまし
工学的側面では、種々のスケ
有名であるが、ブラーエを知る
ール・モダリティの画像をシー
人は少ない(報告者も知らなか
ムレスに位置合わせする統一的
った)。ブラーエはケプラーが
枠組み(森班等)、腫瘍・臓
天体運動の法則を見出すのに重
器・筋骨格の多元計算解剖モデ
要な役割を果たした天体データ
ルを融合した手術ロボット誘導
の観測と収集を行いました。ブ
の枠組み(小林班等)、等が提
ラーエの収集したデータなくし
案された。臨床的な観点を中心
てケプラーの法則は見出されな
としたストーリーは充実してき
かったであろうと言われており、
た印象を受けたが、一方で、森
ブラーエはデータ科学の重要性
先生より、基礎手法を核とした
が認識されている現代において
以上、2016 年の多元計算解剖
ストーリーの必要性が叫ばれま
再評価されるべきです。多元計
学サマーワークショップの報告
した。
算解剖学は、数百年前の天文学
を行いました。計画研究は、こ
の黎明期と同じ状況であると言
れから3年目から4年目という
学理
増谷先生より、「学理」の定
義として,東北大学・花輪先生
のホームページより、「一つの
学問として成立しうる理論体
た。食事や非公式の情報交換会
では、多様な交流が行われ、い
くつかの新たな連携も誕生した
ようであり、本サマーワークシ
ョップは、有意義な討論、交流
の場となりました。3 ページ目図
2に食事時の様子を示します。
密な討論の後の食事の場で、実
際に新しい連携が生まれました。
えます。現代において、我々が、 最も成果をあげていくべき時期
新しい学問を創成するという意
を迎えます。本ワークショップ
欲を新たにする逸話でした。
その他の話題
がそれを加速するものであると
信じます。来年度のサマーワー
クショップは、新たな公募班も
系」の紹介がなされました。単
若手のセッションでは、本領域
迎えての後半戦のキックオフに
なる「理論」ではなく「体系」
における有望な若手研究者がそ
なり、おもしろい連携研究成果
としている点でこの定義を参考
れぞれ、トップジャーナルでの
の報告とさらに建設的な討論を
にすべきと意見がなされまし
論文採択、実臨床まで持ってい
期待したいです。
多元計算解学 NEWS LETTER | 第 8 号
図 1 サマーワークショップの様子
図 2 食事の様子
執筆 奈良先端大学 佐藤嘉伸
編集 事務局補佐 松岩
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