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第1章 ∼現状 - 福岡市アイランドシティ
第1章 ∼現状∼ 1.次世代ロボット市場への期待 21世紀を迎え,ロボットに関する研究開発は,これまでの産業用ロボット主 体から,身の回りの日常生活に関連する分野への転換期を迎えており,新しいロ ボットの研究開発が日進月歩で進められている。また,本格的な少子・高齢社会 を迎えるにあたり,従来人間の手で行われてきた市民生活支援活動においても, ロボット技術の発展に伴い,生活,ビジネス,教育,エンタテインメント,医療 介護,防災レスキューなどの諸領域でロボットが活躍することについての期待が 高まっている。 <将来のロボットの市場規模予測> 2001年5月に報告された「21世紀におけるロボット社会創造のための技術戦略調査報告書」((社)日本機械工 業連合会,(社)日本ロボット工業会)では,今後の社会・経済環境の変化を考慮しつつ,我が国ロボット産業 の市場規模ごとの国際競争力を踏まえ,以下の5分野を重要なニーズ分野として特定し,その市場規模と概要を 以下のように推計している。 ① ① 生活分野 生活分野 ‥2010年:1.5兆円,2025年:4.1兆円 ※教育,家庭内バーチャルトレーニング,エンタテインメント型リハビリテーションシステム, コミュニケーション支援及び生活支援システム ② 福祉分野 ② 医療・ 医療・ 福祉分野 ‥2010年:2,600億円,2025年:1.1兆円 ※予防,診断,治療,リハビリテーション,医療施設内の省力化・インテリジェント化,医学教育 ③ ③ 公共分野 公共分野 ‥2010年:2,900億円,2025年:9,900億円 ※災害の発生観測・予測,災害の発生防止,災害の対処作業 ④ ④ バイオ産業分野 バイオ産業分野 ‥2010年:900億円,2025年:3,600億円 ※自動分析技術,自動合成装置,バイオ工場 ⑤ ⑤ 製造業分野 製造業分野 ‥2010年:8,500億円,2025年:1.4兆円 ※人間機械協調生産システム,エコファクトリ,ネットワーク対応工場 【兆円】 9 2025年:約8兆円 (予測) 8 7 2010年:約3兆円 (予測) 6 生 活 分 野 5 4 2000年のロボット市場規模 約6,600億円 医療・福祉分野 3 公 共 分 野 2 バイオ産業分野 1 0 1995年 製 造 業 分 野 2000年 2010 年 ※2000年の自動車市場規模:約12兆円 1 2025 年 2.ロボット関連産業における企業の役割 人々の生活空間で活躍するロボットは,使用されるシーンが様々であり,それぞ れ場面,使う側の個性やニーズに合わせてカスタマイズしていく必要がある。 生活や医療・福祉などの分野におけるロボットの市場を拡大させるためには, 「ロボット総合開発メーカー」・・・ベースとなるハード,ソフトウエアの開発 「中小製造メーカー」 ・・・多様なハードウエアの開発 「ソフト開発系ベンチャー」 ・・・多様なアプリケーションソフトの開発 それぞれが相互に連携し,市場のニーズに合わせた開発を行っていくことが不可欠 である。 ◆ロボット関連産業における企業の役割 大 生活,医療・福祉, 教育,防災分野の市場 産業用分野の市場 2015年頃の予測 2015年頃の予測 産業用分野の市場 中小製造メーカー 多様なハードウエア の開発 市 2004年現在の状況 ロボット総合開発メーカー 場 ベースとなるハード,ソフトウエア の開発 ソフト開発系ベンチャー 多様なアプリケーション ソフトの開発 生活,医療・福祉, 教育,防災分野の市場 2004年現在の状況 小 少 社会生活密着度 2 多 3.福岡市のポテンシャル 福岡市における様々なポテンシャルを活かしつつロボットの産業振興を図って いく必要がある。 (1)福岡市の風土 「福岡市科学技術振興ビジョン」でも述べられているように,福岡市の風土 として,進取の気性に富み,何でも新しいものに興味を持ち,いったんチャレ ンジし始めるとすぐに夢中になってしまう情熱やひたむきさがある。新しい取 り組みに興味を持って果敢にチャレンジし,成果が得られるまでひたむきに取 り組む「あたらしもん好きで,すぐのぼせる」風土は,新しい技術の結晶であ るロボットの研究開発にとって強みである。 また,福岡・博多の文化等を継承しつつ,外部から入ってくる新しい(異質 な)人・物・情報を抵抗なく受入れ,活用できるものは共存という形でうまく 調和させながらいつの間にか自らの力や資源に変えていく多面性や許容性は, 人間の生活空間での活躍を目指し,新たなパートナーとなりつつあるロボット にとっては強みとなる。 実際,上川端商店街や川端中央商店街における実証実験では,商店街および 各店舗とも積極的にご協力いただき,また,市民の反応としてもロボットに対 して親和的であり,スムーズな実験の推進を可能としている。 (2)アジアの交流拠点都市としての地域性 福岡市は古くから大陸との交流によって栄え,現在も商業流通や観光などの ビジネス交流をはじめ,学術や文化・芸術など市民交流も盛んであり,“アジ アへのゲートウェイ!∼日本で最もアジアに近い都市∼”として存在している。 日本はロボットに関しては世界的にも先進国であり,今後のアジアのマーケッ トを睨んだとき,アジアとの交流拠点である福岡市の位置づけは重要である。 3 (3)福岡市の産業構造 全ての製品は,使われる=消費されることで商品化が進展・拡大する。次世 代ロボットについても同様であるが,人間と空間を共有することではじめて活 躍することが可能となる次世代ロボットについては,産業分野でのその対象は, 第3次産業がメインとなると考えられる。 福岡市においては,現在,事業所数及び従業員数ともに人口50万人以上の大 都市の中で,第3次産業の占める割合が最も高く,また,事業所数については 約30年間以上約9割という高い割合を維持しており,ロボットを使う側の産業に 特化し,ロボット利用(ニーズ)の創出をより期待できる産業構造が定着して いる。 ◆人口50万人以上の都市における第3次産業の従業員数および事業所数が占める割合 人口50万人 以上の市区 町村 福 岡 全産業 市 75,136 事業所数 第3次産業 事業所数 67,065 順 占める割合 位 89.26 1 全産業 従業員数 第3次産業 従業者数 814,260 占める割合 707,248 熊 本 市 30,642 26,815 87.51 2 311,671 263,169 仙 台 市 48,728 42,626 87.48 3 554,534 471,273 札 幌 市 77,605 67,717 87.26 4 860,508 729,570 鹿 児 島 市 29,229 25,375 86.81 5 266,563 225,631 北 九 州 市 52,225 45,176 86.50 6 466,989 353,798 千 葉 市 30,097 26,019 86.45 7 392,307 325,402 神 戸 市 75,750 65,429 86.37 8 737,868 593,919 船 橋 市 16,491 14,132 85.70 9 183,203 149,533 広 島 市 55,411 47,310 85.38 10 571,918 453,949 新 潟 市 28,376 24,145 85.09 11 283,733 226,690 岡 山 市 31,058 26,141 84.17 12 319,639 254,387 横 浜 市 117,000 97,750 83.55 13 1,347,684 1,064,573 さ いた ま 市 37,290 31,050 83.27 14 416,690 345,172 特 別 区 部 587,024 484,367 82.51 15 7,134,941 5,844,337 名 古 屋 市 141,085 116,011 82.23 16 1,455,469 1,152,578 大 阪 市 232,804 191,101 82.09 17 2,427,045 1,906,049 京 都 市 86,836 70,312 80.97 18 751,909 592,397 堺 市 31,948 25,840 80.88 19 300,529 216,340 川 崎 市 43,058 34,561 80.27 20 499,176 374,821 八 王 子 市 19,038 15,166 79.66 21 211,912 164,185 相 模 原 市 22,424 17,831 79.52 22 228,608 164,426 浜 松 市 30,527 23,109 75.70 23 309,137 202,840 東 大 阪 市 31,164 21,031 67.48 24 255,313 164,390 「 統計でみる市区町村 のすがた 2004」 (2004年 6月刊行,総務省統計局) ※「事業所数 」,「 従業員数」 2001年総務省統計局「 事業所 ・企業統計調査報告 」 ※「人口総数 」 2000 年総務省統計局「国勢調査報告」 人口総数 順 位 86.86 1 1,341,470 84.44 84.99 84.78 84.64 75.76 82.95 80.49 81.62 79.37 79.90 79.59 78.99 82.84 81.91 79.19 78.53 78.79 71.99 75.09 77.48 71.92 65.61 64.39 5 2 3 4 19 6 10 9 13 11 12 15 7 8 14 17 16 21 20 18 22 23 24 662,012 1,008,130 1,822,368 552,098 1,011,471 887,164 1,493,398 550,074 1,126,239 527,324 626,642 3,426,651 1,024,053 8,134,688 2,171,557 2,598,774 1,467,785 792,018 1,249,905 536,046 605,561 582,095 515,094 ◆福岡市における第3次産業の従業員数および事業所数が占める割合の推移 89.00 88.28 87.83 88.46 88.52 88.35 88.66 89.26 88.44 87.00 86.86 85.00 84.73 84.70 83.00 83.16 81.38 81.00 事業所数 80.13 従業者数 79.00 77.75 77.00 77.68 1972年 1975年 1978年 1981年 ※ 総務省統計局 「事業所・企業統計調査報告」よ り集計 4 1986年 1991年 1996年 2001年 (4)理工系など優秀な人材の豊かさ 福岡市は理工系学部のある大学をはじめ,多数の教育機関や研究機関の立地 により多くの技術シーズの集積(知の集積)があり,人材の豊かな街である。 また,良好なビジネス・生活環境により,東京・大阪等の他地域からU・J・ Iターン人材が集まる都市でもある。 また,医療分野でも,九州大学医学部付属病院先端医工学診療部において, 我が国初のロボット手術トレーニングセンターが開設され,世界的なロボット 医学教育研究開発拠点を目指している。 ◆大学・学生数の都市別比較 学校数(校) 学生数(人) 大学 短大 大学 短大 札 幌 市 11 9 52,613 5,885 仙 台 市 10 5 46,681 1,302 さいたま市 2 2 14,637 1,386 千 葉 市 7 5 26,427 2,111 東 京 23 区 73 46 444,161 28,804 横 浜 市 9 11 79,799 4,148 川 崎 市 3 3 28,987 1,125 名古 屋 市 15 12 78,828 4,796 京 都 市 23 13 130,117 8,006 大 阪 市 6 11 26,515 7,020 神 戸 市 17 7 64,382 4,290 広 島 市 11 9 31,165 3,089 北九 州 市 9 6 22,431 3,362 福 岡 市 12 10 77,724 5,673 合 計 208 149 1,124,467 79,997 ※2003年度学校基本調査(5月1日現在) ◆理工系学部のある大学・短大 ●九州大学 (理学部 工学部 芸術工学部 等) ●福岡大学 (理学部 工学部 等) ●福岡工業大学 (工学部 情報工学部) ●九州産業大学 (工学部 情報科学部) ●東和大学 (工学部 4学科) ●福岡工業短期大学 (情報システム関連2学科) ・・・等 ※福岡県庁ホームページ (福岡県企業立地のご案内より抜粋) ◆人口千人あたりの学生数 ◆福岡都市圏での理系の学校数及び学生数 学校数 学生数 理 系 大 学 12 29,433人 理 系 短 期 大 学 7 2,493人 専 修学 校( 情報 系) 19 6,457人 計 38 38,383人 ※ 「アジアのビジネス 交流拠点福岡 (福岡市)」 より 5 (5)ロボットの研究開発に関わる要素の集積 九州地域における産業用ロボットの生産は出荷額ベースで 1,110億円に上り, 特に福岡市周辺エリアには,世界有数の製造用ロボットメーカーやロボットベ ンチャー企業をはじめとして多数のロボット部品関連中小企業が集積しており, ロボットの研究開発に必要な要素が既に存在する。 また,九州の半導体関連産業の集積は目覚ましく,2000年のICの生産金額 は約1.4兆円と日本の3割,世界の1割を占め,半導体の世界的生産拠点となっ ている。加えて,福岡県に集積するLSI設計開発の知的集積,産業集積を核 に,アジア地域の中核となる設計開発拠点を目指す『シリコンシーベルト福岡 プロジェクト』(中核推進組織:福岡県システムLSI設計開発拠点推進会議)の下,福岡市内へ 『福岡システムLSI総合開発センター』が設置(2004年11月)されるなど, 本市にはシステムLSI研究・開発に資する環境も整っている。 Ⅱ.九州の経済と産業 7.九州の次世代産業(3) ①ロボット産業 ∼ロボット産業,ナノテク分野∼ 我が国は,産業用ロボットの分野において世界一 の地位を築いており,製造業を中心として多くの ロボットが稼働している。また,最近では,ペッ ト型や二足歩行型などの民生用分野におけるパー ソナルロボットが登場しており,さらには,福 祉・介護や災害救助など幅広い分野での開発に関 心が高まっているなど,ロボットの市場も急速に 成長していくことが期待されている。 九州における産業用ロボット の生産は,出荷額 ベースで1,110億円(全国比16%(2000年))に上 り,世界有数の製造用ロボットメーカーである安 川電機やロボットベンチャーであるテムザックを はじめとして,多数のロボット部品関連中小企業 が集積している。九州地域には,九州大学や九州 工業大学をはじめとする大学・高専等に100人を超 えるロボット研究者が存在し,産学連携による次 世代ロボットの開発が期待されている。 産業用ロボット生産の地域別シェア(出荷額ベース) 東北 4% 中国 3% その他 1% 関東 39% 近畿 10% 九州 16% 中部 27% ※ 九州の 経済概況2004よ り(九州経済産業局 国際部) ◆九州における主な半導体関連企業の分布図 ※ 「アジアのビジネス 交流拠点福岡 (福岡市)」 より 6 (6)ソフト系IT産業の集積 ロボットは広範な要素技術の集大成であり,様々なハード(パーツ)の結合 体であるが,ロボットの作動やサービス提供には多種多様なソフトウエアの開 発が必要であり,人々の生活空間の中で活躍が期待されているロボットにとっ てアプリケーションの開発は重要である。 福岡市においては,企業数110社,従業員数約6,500人を抱える日本屈指の情 報関連産業の集積地である「福岡ソフトリサーチパーク」地区(6.3ha)を有し ている。 また,福岡市におけるソフト系IT産業の事業所数は全国第5位であり,特 に,ターミナル駅を中心に分析したデータによると,JR博多駅周辺及び西鉄 天神駅周辺の1km圏内には,ソフト系IT産業の集積が形成されているところ である。 <大都市におけるソフト系IT産業事業所数の推移> 順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 17 19 20 都市名 2004年 3月 9,810 2,752 1,322 1,127 2003年 9月 3月 9,847 9,933 2,743 2,738 1,302 1,292 1,141 1,103 2002年 9月 3月 9,938 9,876 2,710 2,690 1,272 1,259 1,123 1,143 2001年 9月 3月 9,845 9,713 2,677 2,646 1,251 1,240 1,151 1,137 東京都23区 大 阪 市 名 古 屋 市 横 浜 市 福 岡 市 1,012 1,000 1,042 1,044 1,011 1,004 900 886 900 923 908 917 札 幌 市 536 541 512 514 520 528 仙 台 市 509 498 518 547 509 513 広 島 市 川 崎 市 396 394 380 389 389 387 京 都 市 395 399 395 388 397 385 神 戸 市 394 402 400 416 419 424 さい た ま市 240 263 252 262 252 263 北 九 州 市 231 234 236 237 230 234 千 葉 市 193 190 195 192 195 199 平 均 1,416 1,417 1,421 1,425 1,414 1,413 2000年 1999年 伸び率 9月 3月 9月 9,266 8,744 8,377 17.1 2,555 2,370 2,275 21.0 1,202 1,152 1,110 19.1 1,109 1,091 1,046 7.7 966 926 886 809 25.1 903 513 509 388 369 409 238 198 874 500 501 386 344 378 232 193 803 478 472 367 317 354 236 190 783 431 467 349 291 322 224 160 14.9 24.4 9.0 13.5 35.7 22.4 3.1 20.6 1,374 1,319 1,247 1,189 19.1 ※出展:ソフト系I T産業の実態調査 国土交通省 (7)デザイン事業所の集積 次世代ロボットは人との共存が求められ,単なるツールではなく人間のパ ートナーたることが要求される。従って,次世代ロボットが普及する要件の 1つには“デザインの高度化”が必要であるが,福岡市は,13大都市中第4 位となるデザイン事業所の集積を有している。 順 位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 特定 サ ー ビ ス 産 業 実 態 調 査《デザイン 業 編 》 事業所数(所) 従業者数(人) 年間売上高(百万円 ) 都市名 2000年 1998年 2000年 1998年 2000年 1998年 13大都市別計 1,408 1,568 8,626 10,072 124,695 141,255 東京都(23区) 398 431 3,131 3,160 57,744 61,919 大阪市 339 388 2,040 2,622 26,178 30,926 名古屋市 240 280 1,429 1,949 16,361 26,849 福岡市 172 195 930 1,152 13,309 10,932 北九州市 54 56 199 222 1,909 1,413 札幌市 50 45 223 221 1,982 2,163 京都市 50 58 210 234 2,068 2,403 仙台市 33 38 171 188 1,914 1,628 横浜市 24 20 100 98 1,366 967 広島市 23 31 112 138 1,285 905 神戸市 14 16 52 63 428 538 千葉市 9 8 *** *** *** *** 川崎市 2 2 *** *** *** *** ※出典:特定サービス産業実態調査(経済産業省) 7 4.福岡市における“ロボット”への取り組み (1)福岡市の政策におけるロボット関連産業振興の位置づけ 福岡市の最上位計画である総合計画の体系をなす「新・基本計画」において, 計画の目標年次である2015年の望ましい姿として,「家庭や医療・福祉などの 身近な日常生活の場面で,ロボットの活躍の場が広がっている」姿を描き,今 後の成長と産業集積が期待できるものとして,ロボット関連分野を掲げ,科学 技術の振興と関連産業の振興を図るものとしている。 また,基本計画を受けて具体的な事業を示す「政策推進プラン」において, 「ロボット関連産業の振興」を,政策的な優先度が最も高く,優先的な資源配 分を行う「重点事業」としており,「科学技術の振興と産学官連携の推進」に おける大きな柱の1つと位置づけている。 福岡市総合計画 基本構想: (将来にわたる福岡市の都市づくりの目標と基本理念) (1987年制定) 基本計画: (基本構想の都市像達成に向けた概ね15年間の長期計画) 「新・ 基本計画」 (第8次基本計画)(2003年策定) 「政策目標12:福岡の知性と感性を活かし,知識創造都市となる」 ○2015年の望ましい姿 災害救助や医療・福祉,家庭など,ロボットの活躍の場が広がっています。 ○科学技術の振興と産学官連携の推進 大学,研究機関,民間企業などの研究開発機能の強化などにより,今後の成長分野であり,産業集積に つながる,ロボット分野において,科学技術の振興を図るとともに,産学官連携による関連産業の振興 を図ります。 「政策目標17:先進的モデル都市・アイランドシティを創造する」 ○新しい産業集積拠点の形成 科学技術の情報発信機能の整備 ロボットなどをテーマとして,産業技術の振興や科学技術の体験,人々の交流,研究・学習の場を提供 する機能の整備を検討します。 実施計画: (基本計画の実現に向けた4年間の事業を示す中期計画) 「政策推進プラン」 (新・基本計画第1次実施計画) ( 2004年策定) ロボット関連事業については,政策的な優先度が最も高く,優先的な資源配分を行う「重点事業」として, 位置づける。 「政策目標12 :福岡の知性と感性を活かし,知識創造都市となる」 ○科学技術の振興と産学官連携の推進 ◇科学技術の振興事業 ロボット振興など「福岡市科学技術振興ビジョン」におけるリーディングプロジェクトを推進し,青少 年の科学技術教育の充実,人材育成など,同ビジョンに掲げる基本目標を達成し,本市産業・経済の活 性化,市民生活の質的向上につなげていきます。 ・科学技術情報発信拠点の形成 次世代の科学技術を担う人材育成機能を有した科学技術に関する情報発信拠点の形成をめざします。 ◇ロボット関連産業の振興 「ロボットに出会うまち福岡」の実現へ向け,大学等研究機関の集積,情報関連産業の集積「ロボット 開発・実証実験特区」認定といった本市の特性を活かし,ロボット関連産業の振興を図ります。 ・ロボット関連の情報提供・交流・教育・研究の複合施設「ロボスクエア」を拠点とした事業展開 ・企業,研究者等のネットワーク形成:「次世代ロボット研究会」 ・ロボット開発実証実験誘致,実験サポート ・生活に密接に関わる分野でのアプリケーションソフト開発促進 ・子どもを中心とした市民のロボットに接する機会の創出 「政策目標17:先進的モデル都市・アイランドシティを創造する」 ○新しい産業集積拠点の形成 ◇IT・ロボット関連産業集積拠点の形成 次代を見据えた都市活力向上のため,今後の成長が期待されるロボット関連産業の集積拠点の形成を 図ります。実証実験環境整備(ロボット実証実験拠点,オフィス入居施設) 8 さらに,「福岡市科学技術振興ビジョン」では,ビジョンの実現を先導する 「リーディングプロジェクト」として,「ロボスクエアの設立とロボット産業 の振興」を位置づけている。 このように福岡市では,ロボット関連産業の高い成長可能性を踏まえ,次世 代を担う新産業として振興を図ることとしている。 部門別計画 福岡市科学技術振興ビジョン 科学技術振興に向けた基本理念,基本目標,施策展開等を示した長期計画( 2002年策定) 基本目標1 「こどもの夢づくり」 =青少年の科学教育充実 基本目標5 「あたらしもん挑戦都市づくり」 =情報発信,先進モデル都市 失敗を恐れない先取性とチャレ ンジ精神に溢れた「あたらしもん好き」の気質を活かし, 先端技術のテストマーケットシティ(挑戦都市)をめざし ます。 リーディングプロジェクト(1) ロボスクエアの設立とロボット産業の振興 最新ロボットの研究開発・実証実験を行う「ロボットに出会うまち・福岡」宣言を行い,九州システム情 報技術研究所(ISIT)等を活用し,将来のロボット産業の振興につなげていく。 リーディングプロジェクト(2) 科学技術情報発信拠点「サイエンスシップ」の設立促進 ITやロボット実証実験などをテーマとして,新産業技術の振興や,子供達の夢を育む科学技術の体験, 人々の交流,研究・学習の場を提供するなど科学技術の複合施設を目指す。 9 (2)具体的な取り組み内容 福岡市においては,次世代ロボットに特化した取り組みを他都市に先駆けて 進めている。 年 2002年 内 容 ★「ロボカップ2002福岡・釜山大会」開催(6月) ★ロボット体験スペース「ロボスクエア」オープン(7月) ★「福岡市次世代ロボット研究会」設立(9月) 2003年 ★「ロボット開発・実証実験特区」提案(1月) ★「ロボット産業振興会議」設立(6月) ★「ロボット関連産業立地需要調査」アンケート実施(7月) ★「ロボット関連産業シーズ・ニーズ整理調査」実施(7月) ★「ロボット開発・実証実験特区」認定申請(10月) ★「2003国際ロボット展」出展(11月) ★「ロボット開発・実証実験特区」認定(11月) 2004年 ★地域再生計画(①アジアビジネス交流拠点都市構想 ②ロボット共存 都市・福岡構想 ③公共空間を活用した賑わい創出構想)提案(1月) ★ロボット公道実証実験サポート開始(2月)∼日本初∼ ★「START!!ロボットに出会うまち ・福岡」実施(2月) ★ 「世界ロボット会議」開催(2月) ★地域再生推進のためのプログラム決定:「ロボット実証実験における 特定実験局開設」〔総務省〕(2月) ★「ロボットと学ぶ科学教室」実施(4月∼10月) ★地域再生計画(九州・アジアの賑わいの都「福岡」)認定申請(5月) ★地域再生計画(九州・アジアの賑わいの都「福岡」)認定(6月) ★ロボット保険(施設賠償責任保険)に加入(7月) ★「福岡市ロボット関連産業振興構想検討委員会 」設立(7月) ★早稲田大学ヒューマノイド研究所との協定締結,及び同研究所福岡分室 設置(11月) 2005年 ★ロボット実証実験用特定実験局開設(1月) ★ロボット実証実験用の特定実験局電波を使った実証実験実施(3月) 10 ア.ロボカップ2002 福岡・釜山大会 2002年6月に開催した大会を契機とし,福岡市におけるロボット関連事業が スタートした。 2003年,イタリアで開催された世界大会では,九州大学と福岡大学の合同 チーム“Fusion”が中型ロボットリーグで優勝を果たした。 ○ロボカップとは RoboCupは,日本の研究者らによって提唱された,自律移動ロボットによるサッカーを 題材として,ロボット工学と人工知能研究を融合させた国際的なランドマーク・プロジェ クトです。「2050年,人間のサッカー世界No.1チームに勝てる,自律型ロボットチームを 作る」という壮大な夢を目標に,世界35カ国・地域から3,000名以上の研究者や学生がこ の研究に参加しており,年々その数を増やしています。1997年に名古屋で第1回世界大会 を開催し,その後パリ,ストックホルム,メルボルン,シアトルと世界大会は毎年開催さ れ,福岡・釜山大会で第6回を迎えました。現在では,サッカーだけでなく,大規模災害へ のロボットの応用としてレスキュー,次世代の技術の担い手を育てるジュニアなどが組織 されています。 ○ロボカップの将来 1960年代にアメリカで提唱されたアポロ計画は「人間を月に送り込み,安全に帰還させ る」という目的を果たす過程において,航空宇宙技術やエレクトロニクス,ソフトウェア の分野に大きな功績を挙げました。ロボカップの目的も,単に強いサッカーロボットを作 ることにあるのではなく,その過程で派生する技術を様々な分野に活用することにありま す。 開催年 ジャパンオープン 開催地 世界大会開催地 できごと 回 都市名 国名 参加規模 回 都市名 1992年 RoboCup発足 1995年 RoboCup構想発表 1997年 1 名古屋 日本 10カ国40チーム -- --------- 1998年 4足ロボットリーグが実機リー グに加わる 2 パリ フランス 20カ国63チーム 1 東 京 1999年 ヒューマノイドリーグの概要 が発表される 3 ストックホルム スウェーデン 35カ国120チーム 2 名古屋 2000年 ヒューマノイドリーグのデモ ンストレーションが行われる 4 メルボルン オーストラリア 19カ国110チーム 3 函 館 2001年 5 シアトル アメリカ 22カ国119チーム 4 福 岡 2002年 6 福岡・釜山 日本・韓国 29カ国188チーム -- --------- 2003年 7 パドマ イタリア 34カ国277チーム 5 新 潟 2004年 8 リスボン ポルトガル 37カ国346チーム 6 大 阪 2005年 9 大阪 日本 --------- -- --------- ドイツ --------- 7 北九州 2006年 1 0 ブレーメン 2050年 人間のサッカー世界チャンピオンにヒューマノイドリーグのチームが勝つ 11 イ.ロボット体験スペース「ロボスクエア」 福岡市におけるロボットに関する産学官及び市民の交流の場, ・ロボットを通じて未来への夢を育み,科学技術への理解を深める場所 ・ロボット最新技術研究の場所 ・ロボット関連産業が成長する場所 として設置した。 人々の生活の中で活躍するロボットに特化した拠点は世界的にも珍しいも のであり,モデルとなるものである。 ◆施設・事業概要 名 称 ロボスクエア 設 立 2002年7月20日 運営主体 ロボスクエア運営委員会 住 所 福岡市博多区下川端町 3-1 博多リバレイン地下2階 ホームページ www.robosquare.org 床面積 230坪 開館時間 10時∼20時(休み1月1日,維持管理のため臨時休館する場合があり ) 入場料 無料 入場者数 120,339人(331人/日)2003年度(2003年4月1日∼2004年3月31日) 1.ロボット展示・販売ゾーン (1) ロボット展示コーナー ○最新のヒューマノイドロボットなどの展示 ヒューマノイドをはじめ,生活に関連したロボットの展示し,来場者が 体験できる。 <展示ロボット> PINO(ZMP) HOAP(富士通オートメーション) TMSUK1号・3号・4号(テムザック) レスキューロボット(日本SGI) 歩行支援ロボット「楽歩」(日立製作所) AIBO(ソニー) 留守番ロボット「番竜」(テムザック) お掃除ロボット(東芝) 対話ロボット「イフボット」「ハローキティロボ」(ビジネスデザイン研究所) チラシ配りロボット「モスペン君1号」,ティッシュ配りロボット「モスペン君 2号」(コンピー) ○ロボットライブショー 来場者が実際に動くロボットを見学できるとともに,ヒューマノイド工房の 研究開発成果発表の場である。 ・定期ライブ(毎週土・日曜日 各2回 13:00∼ 15:00∼) AIBO(ダイエーホークスの応援歌に合わせたダンスショー) PINO(ラジオ体操) はじめロボット(パフォーマンス) キューブ(パフォーマンス) ・体験ライブ(毎週日曜日 各2回 14:00∼ 16:00∼) TMSUK4号,番竜 ・出張サービス ロボット工作教室・ロボットライブショー(海の中道海浜公園) 2003年10月22日∼24日 ロボット展示(第44回日本児童青年精神医学会総会) 2003年10月30日 ロボットライブショー(市立こども病院) 2003年11月 1日 ロボットライブショー (糟屋地区・県中学校アイディアロボットコンテスト) 2004年4月15日∼10月14日 ロボットと学ぶ科学教室(福岡市内小学校75校) 2004年9月1日 ロボットライブショー(国立病院九州がんセンター小児病棟) 2004年9月29日∼10月1日 ロボットライブショー(第63回癌学会学術総会) ○その他 パソコン上でデザインしたロボットの切り絵工作 12 (2) 販売コーナー ○ロボットの予約販売 ハローキティロボの予約販売 その他ロボットの販売先紹介 ○ロボットグッズや教材などの販売 ロボットに関する携帯ストラップやぬいぐるみ,ロボット工作の教材など の販売 (3) ロボット情報コーナー ○ロボット開発の歴史や仕組みを映像で解説 ○ロボット関連の書籍館内閲覧 2.ロボット工房ゾーン (1) ヒューマノイド工房 九州大学の大学院生によるロボットの研究開発 (2) ベンチャー工房 ベンチャー企業の研究・開発・新産業創出の支援 福岡発ロボットベンチャー「JAPANROBOTECH」入居 (3) 共有工房 ロボット工作機械を設置 マシニングセンター,フライス盤,汎用旋盤,卓上ボール盤 他 3.ロボット体験ゾーン (1) ロボスクエア主催教室 ○ロボット工作教室 簡単でおもしろい動物や人型のロボットを作成 ○プログラミング教室 AIBOを使ったプログラミングを学ぶ (2) 民間企業による教室 ○ロボット塾 ロボカップジュニア競技会参加を目標に,ロボットを本格的に学ぶ ○レゴブロック工作教室 (3) ロボット関連セミナー,研究会等の開催 ○次世代ロボット研究会の開催 4.オフィスゾーン ロボスクエア運営委員会事務局 13 ウ.福岡市次世代ロボット研究会 ロボット産業に関わり又は関心を持つ民間企業,研究機関等の幅広い情報 交換の場,新しいビジネスにつながる出会いの場,シーズとニーズのマッチ ングの場として設立。 ロボットに関わり又は関心のある団体・個人であれば,事業所の所在地に よる制限など,特段の参加資格設定は行っておらず,会費も無料であること から,幅広い分野からの参加をいただき,自由な情報交換の場となっている。 1.趣 旨 ・将来的にみると,生活分野,医療福祉分野等 の新分野におけるロボットの市場が伸びるこ とが予想されている。 ・こうした高い成長性を秘めたロボット産業を 本市産業の次世代を担う新産業として振興す ることは,将来にわたって都市活力を維持・ 発展させ豊かな市民生活の提供につながるも のである。 ・民間企業の優れた技術力,大学等の研究機関の先進的な研究成果等を相互に活用するこ とで新たなビジネスを展開し,もって本市の都市特性にあったロボット産業の振興につ なげるため,産学官の意見交換の場として本研究会を設立するもの。 2.研究会の役割 ロボット産業に関わりを持つ民間企業,研究機関等の幅広い情報交換を行い,新しいビ ジネスにつながる出会いの場,シーズとニーズのマッチングの場とする。 3.概 要 (1)構成メンバー 座 長 長田 正 福岡市顧問 九州大学名誉教授 ロボスクエア運営委員会委員 ロボット産業振興会議企画運営委員会委員 副座長 長谷川 勉 九州大学教授 ロボスクエア運営委員会委員 ロボット産業振興会議企画運営委員会委員 副座長 橋爪 誠 九州大学教授 ロボット産業振興会議企画運営委員会委員 メンバー ロボットに関心のある大学等研究者,企業 など 約140社・団体(2005年3月現在) (2)内容 ・ロボット関連の要素技術,製品等の幅広い情報交換 ・大学等研究機関から研究内容の実用化に向けての発表,技術移転の促進 ・企業から最新の業界動向,製品発表,製品化への課題やニーズ提案など (3)その他 ・四半期に1回,年4回程度開催 4.成 果 平成16年NEDO((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公募した《次世代 ロボット実用化プロジェクト》へ,本研究会メンバーにて構成したコンソーシアムの提案 したロボット開発が採択された。 ☆研究テーマ☆ 「ロボットコンテンツを用いたコンテンツ指向ロボットの研究開発」 ☆コンソーシアムメンバー☆ 機 関 名 九州大学大学院 (株)ネットワーク応用技術研究所 (有)桐木工作所 (財)九州システム情報技術研究所 役 割 システム情報科学研究院の長谷川勉教授が研究開発責任者(研究代表)。 汎用ネットワークロボットの設計に関する研究開発を担当。 音声対話システムに関する研究開発を担当。 移動ロボット機構部の設計・開発を担当。 ロボットコンテンツ及びロボット機能の研究開発を担当。 14 エ.ロボット産業振興会議 福岡県,北九州市とともに,県および2政令指定都市が一体となり,ロ ボット関連産業と学術研究機関の集積を活用し,新たな基幹産業の創出を目 指すための組織として,産学官による「ロボット産業振興会議」を設立した。 研究開発の推進,情報発信,産業化の推進及び社会的機運の醸成を図るとと もに,本会議を中心とした連携の下,全国に先駆けて設けたロボット特区に おいてロボット開発・実証実験を推進している。 ◆ロボット産業振興会議役員等名簿 ( 平成16年 4月1日 現 在) 【 顧 問 】 職 名 顧 問 団体・役 職 名 【企画運営委員会】 職 名 氏 名 委員長 鈴 木 正 徳 株式会社 テムザック 代表取締役社長 高本 陽一 福岡県知事 麻生 渡 株式会社 安川電機開発研究所 所長 宮原 範男 北九州市長 末 吉 興 一 九州工業大学 教 授 大川 不二夫 福岡市長 山崎 広太郎 九州工業大学 教 授 辻 輝生 九州大学 名誉教授(福岡市顧問 ) 長田 正 九州大学 教授 橋爪 誠 九州大学 教授 長谷川 勉 職 名 副会長 氏 名 高西 淳夫 九州経済産業局長 【 役 員 】 会 長 団体・ 役職名 早稲田大学 教授 団体・役 職 名 氏 名 委 員 株 式 会 社 安 川 電 機 取 締 役 会 長 中山 眞 財団法人九州システム情報技術研究所 所長 牛島 和夫 九州工業大学 教授 大川 不二夫 産業技術総合研究所評価部 主席評価役 谷江 和雄 九州大学 教授 長 谷 川 勉 三洋電機株式会社 コンシューマ企 業ク ゙ループ ライフソリューションス ゙カ ン 豊嶋 ハ ゚ニー エナジ ーアプライアンスビ ジ ネスユニット 技術開発部長 フラウンホーファ研究機構 AIS 研究所 所長 ソニーコンピュータサイエンス研究所 取締役副所長 北 野 宏 明 早稲田大学 教授 高 西 淳 夫 明 トーマス・ クリスタラー ソニーコンピュータサイエンス研究所 取締役副所長 北野 宏明 福岡県工業技術センター 所 長 細川 純 ◆福岡におけるロボット関連事業の連携 国等 ・特区申請 ・要望等 要望等 連携 ロボット関連事業 を推進する自治体 神奈川 , 岐阜, 大阪 など 福岡県 (ロボット産業振興会議) 【情報発信】 【産業化の推進】 【研究開発の推進】 【社会的機運の醸成】 国際ロボット見本市 世界ロボット会議 北九州市 福岡市 15 オ.「ロボット開発・実証実験特区」 福岡市は「ロボット開発・実証実験特区」の認定を受け,これにより,公 道でのロボット歩行等実験が可能となった。2004年2月21日には,全国に先駆 けてロボット公道実験が上川端商店街(福岡市博多区)で実施され,以降数 多くの実験が行われている。 なお,屋内外の実験を様々な形でサポートする「ロボット特区ふくおか」 を推進している。 「ロボット開発・実証実験特区(ロボット特区)」の認定について 1.特区の意義 21世紀を迎え,ロボットに関する研究開発は,これまでの産業用ロボット主体か ら,身の回りの日常生活に関連する分野への転換期を迎えており,新しいロボットの研 究開発が日進月歩で進められています。また,本格的な少子・高齢社会を迎えるに当た り,従来人間の手で行われてきた市民生活支援活動においても,ロボット技術の発展に 伴い,生活,ビジネス,教育,エンタテインメント,医療介護,防災レスキューなどの 諸領域でロボットが活躍することについての期待がますます高まっています。 こうした状況を背景としながら,地域経済の持続的発展のためには世界に通じる独創 的な技術やノウハウを活かした新産業の創出が必要不可欠であるとの認識の下,ロボッ ト実用化に向けた研究開発拠点の形成,新たなロボット産業創出を目指し,地域経済の 活性化を図るものです。 2.特区の目標 ロボット特区では,次のような目標の実現を図り,福岡市がロボットに関する研究開 発拠点になることを目指しています。 (1)ロボット産業創出に向けた研究開発拠点の形成 人間共存型ロボットの開発に携わる企業や学術研究機関の研究開発実施を支援・促 進し,当該特区でのロボットの研究開発実施についてインセンティブを強化すること 等を通じて,ロボット研究開発の拠点形成を図ります。 (2)ロボット開発に向けた実証実験の展開 商店街等を始めとした中心市街地の公道空間,市庁舎広場などの市有空間,病院・ 商業施設などの私有空間などにおいて,適度な人の往来がある環境の下,歩道歩行, 段差認知・段差歩行等のロボット実証実験が行えます。ロボット実証実験等で得られ た知見は,今後,ロボットを人間の生活領域において活用するうえでの,標準規格, 安全基準,登録制度,補償制度など必要なルールづくりに役立つと期待されます。 (3)ロボット関連研究者の集積促進 ロボット関連企業,大学及び研究機関の研究開発部門が行うロボット実験のフィー ルドして,福岡市エリアを活用いただくため,ロボスクエアの活用などによる実験環 境整備を行い,全国からの研究者集積を目指します。 (4)青少年のロボット科学教育の振興 実証実験の実施により,新しいロボットが市民のみなさまの目に触れることから, これを通じて,市民の科学技術に対する関心の向上,青少年の科学技術教育の振興を 行います。公道等での実証実験の見学やロボット操作体験等,特区ならではの科学教 育を推進します。 16 3.特区で行う具体的な事業 (1)ロボット公道実験円滑化事業(特定事業) ロボット製造技術の向上等に向け,公道等一般環境下でのロボット制御等の実験を 望む企業等が,商店街等においてロボットを稼働させることにより,ロボットのハー ド又はソフト面における課題を検証できます。また,当該実験により,現在の社会イ ンフラ,社会システム等においてロボットを受け入れる際の課題検証も期待されます。 (2)ロボット情報発信拠点「ロボスクエア」の運営(関連事業) ロボット実証実験を行うための中核施設として,研究者の研究スペースの提供,ロ ボットの保管・メンテナンス,青少年の科学技術教育や市民とロボットの交流などを 推進します。 (3)「次世代ロボット研究会」を中心としたロボット研究交流の促進(関連事業) 福岡市において,「次世代ロボット研究会」を中心として,最新のロボット研究紹 介や,参加企業や研究機関の意見交換を通じ,ロボット市場を新たに開拓するための ロボット製品等の開発を目指します。 (4)実験支援事業の実施(関連事業) ロボット実証実験を行う商店街等において,ロボット実証実験を円滑に行うことが できるように,空き店舗等を活用した保管場所・充電施設の確保等を行うなど実験支 援事業を実施します。 (5)ロボット実証実験デモンストレーションの実施(関連事業) ロボット関連企業・研究機関の関係者を特区に招いて,実証実験のデモンストレー ションを行うとともに,屋外で活動可能なロボットを集めて,展示・デモを同時に行 います。 (6)ロボット産業振興会議による振興施策の推進(関連事業) ロボット関連企業をはじめとする産業界,大学をはじめとする学術研究機関及び行 政が一体となった「ロボット産業振興会議」の推進体制の下,「世界ロボット会議」 (2004年2月25日),「国際ロボット見本市2004」(2004年2月26∼28日)を開催する ほか,ロボット要素部品の開発や人間の生活領域において活躍する新しいロボットの 研究開発を推進します。 4.特区の経済的社会的効果 ロボット関連企業の創出及び新規参入件数 製造品出荷額等の増加額 雇用創出人数 実証実験の実施件数 実証実験により実用化されたロボット数 ロボット関連の発表学術論文・引用学術論文数 実証実験の過程で得られた知見に関する特許等の申請件数 企業・大学等の研究機関の立地件数 17 約100社 約450億円 約1,900人 約250件 約50体 約100本 約50件 約10件 ロボット特区ふくおか ∼ロボットに出会うまち・福岡∼ 1.目 標 ロボットとの融合による豊かな社会を見据え,ロボット研究開発拠点都市,ロボット 情報集積・発信都市 福岡の形成をめざします。 2.具体的事業・本市のサポート内容 ロボット実証実験の推進 【屋外実験】 (1)「ロボット開発・実証実験特区」の活用 国の構造改革特区である「ロボット開発・実証実験特区」の認定により,公道でのロ ボット実証実験を行うことができます。 サポート内容 ①実証実験を行う際の公的機関等への手続きがスムーズに出来るよう事前調整致 します。 ②実証実験を行うには,実験実施地域の方々のご理解が重要です。地域の方々へ の事前調整を致します。 【屋内実験】 (2)「ロボスクエアなど」の活用 ロボット体験スペース,情報交流の場として2002年7月に福岡市が設置した 「ロボスクエア」及びロボスクエアが入居している「博多リバレイン」内にて屋内実 験が可能です。 サポート内容 「博多リバレイン内」にて実験を行う際,ビル管理者やビル内店舗関係者等との事前 調整を致します。 ロボット展示・PR (1)ロボスクエアでの展示・PR サポート内容 ①「ロボスクエア」にて展示が出来ます。(無料) ②展示いただいた場合は,PRパネル・チラシの設置,購入申込みの取り次ぎ等を 致します。 ③ロボスクエアでのイベントや出張サービスに積極的に活用させていただきます。 設 備 の 提 供 (1)工作機械 (2)実験ピット サポート内容 サポート内容 ロボスクエア内の工作機械を 使用することが出来ます。(無料) 充電,調整などのスペースとして ロボスクエアを活用出来ます。(無料) そ の 他 ロボット保険(施設賠償責任保険) サポート内容 実証実験中に発生した事故により損害を与えた場合(対人・対物) の補償の一部となるよう,損害保険の保険料の負担,加入手続きを 行います。 18 ◆『ロボット開発・実証実験特区』実験実績 実験日 年 月 実験回数 うち 道路 実験場所 日 2003 1 2 2 5 ロボスクエア 1 2004 1 1 5 16 29 30 博多リバレイン 4 1 9 20 博多リバレイン 2 2004 2 21 上川端商店街 1 2004 2 21 上川端商店街 1 2004 7 福岡市役所 3 2004 7 2 5 6 8 9 12 14 博多リバレイン 実験主体 使用 許可 対象 実験ロボット 早 稲 田 大 学 藤 江 研 究 室 0 九 州 大 学 長 谷 川 研 究 室 歩行支援ロボット「ラッポ 」 ㈱日立製作所 早 稲 田 大 学 藤 江 研 究 室 0 九 州 大 学 長 谷 川 研 究 室 歩行支援ロボット「ラッポ 」 ㈱日立製作所 0 早 稲 田 大 学 藤 江 研 究 室 九 州 大 学 長 谷 川 研 究 室 歩行支援ロボット「ラッポ 」 1 ㈱日立製作所 テムザックⅣ号 1 ㈱テムザック 巡 回 警 備 ・ 案 内ロ ボ ッ ト 「 T 63 ア ル テ ミ ス 」 0 ㈱テムザック 巡 回 警 備 ・ 案 内ロ ボ ッ ト 「 T 63 ア ル テ ミ ス 」 4 0 1 6 20 21 22 26 上 川 端 商 店 街 5 5 2004 7 2 6 27 28 29 30 上 川 端 商 店 街 5 早 稲 田 大 学 藤 江 研 究 室 5 九 州 大 学 長 谷 川 研 究 室 歩行支援ロボット「ラッポ 」 ㈱日立製作所 2004 8 2 7 28 上川端商店街 2 2 ㈱テムザック 2004 9 9 10 上 川 端 商 店 街 5 2004 1 0 1 8 19 20 21 22 上 川 端 商 店 街 5 2004 1 1 9 10 11 12 上 川 端 商 店 街 5 アトリウムガー デンステージ階 9 10 13 16 段 7 0 3 3 鏡天満宮階段 8 0 川端中央商店街 入口横断歩道 4 4 1 3 14 15 16 17 博 多 こ と ぶ き 橋 渡り口 1 8 19 7 7 早 稲 田 大 学 高 西 研 究 室 6 8 7 8 汎用2足歩行ロボット 「 W L − 1 6R 」 巡 回 警 備 ・ 案 内ロ ボ ッ ト 「 T 63 ア ル テ ミ ス 」 早 稲 田 大 学 藤 江 研 究 室 5 九 州 大 学 長 谷 川 研 究 室 歩行支援ロボット「ラッポ 」 ㈱日立製作所 早 稲 田 大 学 藤 江 研 究 室 5 九 州 大 学 長 谷 川 研 究 室 歩行支援ロボット「ラッポ 」 ㈱日立製作所 早 稲 田 大 学 藤 江 研 究 室 5 九 州 大 学 長 谷 川 研 究 室 歩行支援ロボット「ラッポ 」 ㈱日立製作所 1 1 2 9 30 12 2004 1 11 26 1 2 6 12 2 3 5 12 8 13 14 12 12 7 8 上川端商店街 6 9 10 7 早 稲 田 大 学 高 西 研 究 室 汎用2足歩行ロボット 「 W L − 1 6R 」 2005 2 2 1 22 博多リバレイン 2 0 早 稲 田 大 学 藤 江 研 究 室 歩行支援ロボット「ラッポ 」 2005 3 19 アイランドシ ティ 1 0 福岡市 レスキューロボット「援竜」 75 43 19 20 ロボット手術を高度先進医療として承 認する。 文部科学省の設置する「高度先端医 療開発センター」 において臨床試験と して行われるロボット手術については, 健康保険法に基づく個別の承認を必 要せずに,特定承認保険医療機関に おける高度先進医療として,迅速に 認められることとする。 構造改革特区構想提案書 提出。( 2003.6.27) 【根拠法令等】電波法第4条及び電 波法施行規則第6条 【概要】ロボットの実証実験を行うこ とのできる特別区域を設定し,区域 内においては,ロボット関係事業者 が5GHz帯の短期実験無線局を開 設する場合は免許不要とし,ロボッ トをその周波数帯で操作することが できることとする。 【要望事項】5GHz帯無線局開設の 免許不要化 【内容】5GHz帯の無線局を開設す る場合は免許不要化とする。また, ロボット実証実験特区においては, 「電波有効利用研究会」(総務省総 合通信基盤局)の最終報告で示され ている「短期実験局」の特例の優先 的設定を求める。 ・電波法の特 例 【根拠法令等】道路交通法施行令第 1条及び施行規則第1条 【要望事項】歩道等におけるロボッ トの通行等の容認 【内容】「歩行補助車等」の範囲を 拡大すること等により,福岡市が認 めるロボットが歩道等を通行するこ とができるようにする。 【概要】ロボットの実証実験を行うこ とのできる特別区域を設定し,区域 内においては,ロボット関係事業者 がロボットを歩道等で通行させるこ とができることとする。 ・道路交通法 の特例 構造改革特区構想提案書 提出。( 2003.1.15) 各省庁の回答(2003.7) 「ロボット開発・実証実験特区」の 認定に加え,情報関連産業,大学等 の集積などロボット研究・開発に高 いポテンシャル,モチベーションを 有している本市域を,国レベルで検 討されるロボット共存社会実現へ向 けた施策のテストフィールド(試行 場所)として,また,複数省庁で研 究開発されるロボットの実証実験場 として活用する。あわせて,ロボッ ト間の相互通信等のため,特定実験 局を簡易に開設可能とし,ロボット 研究開発拠点形成や新産業の創出を 図る。 ○ロボット共存都市・福岡構想 地域再生計画 第1次提案 (2004.1.15) 【特例措置を講ずべき法令等の名称及び条 項】 道路交通法第77条第 1項 【特例措置を講ずべき法令等の現行規定】 道路において工事若しくは作業,工作物の設 置,露店等の出店又は一般交通に著しい影響 を及ぼすような通行の形態や方法により道路 を使用する行為等で都道府県公安委員会が 定めるものをしようとする者は,警察署長の許 可を受けなければならない。特例措置の内容 地方公共団体が,特区内の道路においてロ ボットの歩行又は移動を伴う実証実験を行うこ とにより企業,大学等の研究開発の促進を図 る必要があると認めて内閣総理大臣の認定を 申請し,その認定を受けたときは,そのような 実験について道路使用許可の手続が円滑化 するよう,当該実験が許可対象行為であること を明確化するため,道路交通法第77条第1項 第4号に基づく都道府県公安委員会規則の改 正を行うよう,都道府県警察に対し通達を発出 する。 ・ロボット公道実験円滑化事業(103) 構造改革特別区域基本方針 (2003.7.4) 実験局に係る申請から免許 までの期間短縮及び特定実 験局開設者の経済的負担の 軽減により,電波の逼迫対 策の推進及び産業の活性化 に資するため,既設無線局 への混信が発生しないこと 等を前提として,免許期間 を短期間(1∼2年)に限 定した特定実験局制度を実 施する。 地域再生推進のため のプログラム決定 (2004.2.27) 周波数等告示(2004.3.30) 2004年 1月 14日改正 道路交通法第77条第1項第 4 号に基づく福岡県公安委員会 規則の改正 2004年 2月 21日 第 1回公道実証実験 (日本初) 上川端商店街 公道実証実験 1ワット 12.8GHz∼12.9GHz 100ミリワット 100ミリワット 100ミリワット 100ミリワット 45.625GHz∼46.125GHz 48.4GHz∼48.7GHz 49.3GHz∼49.8GHz 51.35GHz∼52.35GHz 100ミリワット 39.625GHz∼40.375GHz 1ワット 1ワット 5005MHz∼5025MHz 1ワット 2ワット 2537.5MHz∼2557.5MHz 32.05GHz∼33.25GHz 10ワット 415.55MHz∼417.45MHz 及び 460.05MHz∼461.95MHz 21.45GHz∼21.5GHz 等価等方 輻射電力 使用可能周波数範囲 陸上使用に限る。 陸上使用又は海上使 用に限る。 二周波方式の場合は この組合せに限る。 陸上使用に限る。 備考 電波法施行規則第7条第4号の規定に基づき,特定実験局が使用可能 な周波数等を次のように定め,平成16年7月1日から適用する。 使用可能期間 平成16年7月1日から 平成18年6月30日まで 使用可能周波数範囲(九州総合通信局管内分のみ抜粋) 【ロボット開発・実証実験特区】 (H15.11.28第3次認定申請(新規)) 「ロボット公道実験円滑化事業(103)」 のみで認定 【都道府県名】 福岡県 【区域の範囲】 北九州市及び福岡市の 全域 【概要】 産学官連携組織「ロボット産業振 興会議」を中心に福岡県並びに北九州市 及び福岡市が一体となった推進体制の下, ロボット関連企業及び大学等の頭脳集積 という地域特性を活かして,公道における ロボットの実証実験実施を円滑化すること 等により,人間の生活領域で活躍するロ ボットの研究開発を促進し,新たなロボッ ト産業の創出を図ることを 通じて,地域経 済の活性化ひいては我が国経済の再生 を図る。 【その他特例措置の番号】 なし 構造改革特別区域計画認定申請 (2003.10.7)同認定(2003.11.28) ・「高度先端技術開発センター」 において行われるロボット手術について,個別の審査を必要とせずに高度先進医療として承認するこ とは,その有効性,安全性,社会的妥当性等の観点か ら認められない。 ・厚生労働大臣の定める高度先進医療の承認に当たっては,中央社会保険医療協議会及び高度先進医療専門家会議の意見を聴き, その有効性,安全性,普及性,社会的妥当性等の観点か ら個別に審査が行われており,ロボット手術に対する高度先進医療の承認 についても,技術ごとに個別の承認を受ければ高度先進医療として認められる。 ・また,平成15年6月 27日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」においては,「保険診療と保険外 診療の併用の拡大」として,「特定療養費制度における高度先進医療について,一定の基準を満たした場合には,医療技術及び病院 ごとの個別の承認を必要とせず,迅速に認める仕組みについて検討し,結論を得て,平成15年度中に措置する。また,医療技術の 向上の観点から,高度先進医療への新技術の導入の迅速化を図ることにより,対象技術の範囲の拡大を促進する。」としており,今 後この基本方針に従って措置を行っていくものである。 ・特区として対応不可 5.03 ∼ 5.091GHz の 周波数帯は ,国 際 的に MLS(航空機の着陸システム)用に分配 され, 既に米国や欧 州などで利 用がされているが, 我が国では現在使用していないことから,期限 を定め暫定的に免許制で許 可を与えていると ころ。当該周波数を免許不要局として認めるこ とは,航空及び人命の安全上から困難。 さらに,電波有効利用技術の開発推進のた めの環境整備を図る観点から,実験無線局に 関し,電波有効利用政策研究会において検討 を進め,昨年12月に報告を受けたところ。 具体的には,既存無線局への 混信が発生し ないことを前提として, ・予め地域 や周波数帯域を特定し,空中線電 力 等を制限すること ・免許期間を1年程度の短期間に限定し,かつ, 停波の確実性を担保 等の措置を講じた実験無線局(以下「短期実 験局」という。)について,実験用周波数の確 保と免許手続きの簡素化を図る特例措置の検 討が適当である旨の報告を受けたところ。 報 告においては ,実験者や製 造メーカ等の 技術的能力を担保できる場合には,落成検査 の省略 の可能性を含め ,技術基準 への適合 性確認手続きを一層簡素化.迅速化することに ついて検討を進め,平成15年度(2003年度)中 に結論を得た上で,所要の 措置を講ずる予定。 ただし,実験局免許を不要化することについ ては,道路においては円滑な道路交通や事故 の防止を図るために自動車の運 転に免許取 得が不可欠であるのと同様に ,万が一誤 った 電波が発射された場合 ,他の無線通信に対し, 広範な地域において多大な支障を及ぼす懸念 があること,特に ,実験局は,今 までに存在し ない新しい送信方式について技術的に検証す る無線局でもあるので,混信を引き起こす可能 性が他の無線局よりも大きいことから,総務大 臣による措置の必要最低限 の事前審査が必 要であり,困難。 実道における歩行型・移動型ロボットの実証実 験が道路使用許可の対象行為であることを明 確化するため,所要の都道府県公安委員会規 則の改正を行うよう,特区地域を管轄する都 道府県警察に対し通達を発出する。 各省庁の回答(2003.2 ) ロボット開発・実証実験特区(経緯) 2005年 3月 実証実験開始 実証実験 継 続 実 施 中 カ.世界ロボット会議 世界的なロボット関連の研究者,国内の有識者および企業人をむかえ,新 たなロボット市場の創出等に関し議論を展開するとともに,「世界ロボット 宣言」を発信した。 【日 時】 【会 場】 【テーマ】 2004年2月25日(水)10:00∼17:00 ホテルオークラ福岡(福岡市博多区下川端町) 「次世代ロボットテクノロジーによる新市場創成」 ∼ロボットとの融合による豊かな社会を見据えて∼ 【プログラム】 1.基調講演 ・講師 植草 一秀 氏 早稲田大学大学院教授(前野村総合研究所主席エコノミスト) 演題 『ロボットと日本経済』 2.海外研究者による特別講演 ・講師 パオロ・ダリオ 氏(イタリア) 聖アンナ・バルデーラ研究所所長 聖アンナ大学院大学教授 演題 『バイオメディカル・ロボティクス:科学的,技術的,社会的,産業的可能性』 ・講師 マーク・レイバート 氏(アメリカ) ボストン ダイナミクス社長 演題 『動的脚式ロボットの未来』 3.パネリストによる講演 王 田苗 氏(中国) 北京航空航天大学教授 国家863計画ロボティクス専門グループ代表 北野 宏明 氏 ロボカップ国際委員会ファウンディング・プレジデント 科学技術振興機構 北野共生システムプロジェクト(ERATO-SORST)代表 髙本 陽一 氏 (株)テムザック代表取締役 石田 健蔵 氏 ソニー(株)エンタテインメントロボットカンパニー 開発設計部 統括部長 4.パネルディスカッション テーマ:「生活環境ロボットの普及と産業化の可能性について」 パネラー パオロ・ダリオ 氏, マーク・レイバート 氏 王 田苗 氏 北野 宏明 氏 髙本 陽一 氏 石田 健蔵 氏 コーディネーター 高西 淳夫 氏(早稲田大学教授 ロボット産業振興会議副会長) 5.会議アピール『世界ロボット宣言』 【世界ロボット宣言】 2004年2月25日,ロボットテクノロジーの発展とそれが人類への多大なる貢献を果たすこと を信じ,日本・福岡の地より「世界ロボット宣言」を世界へ発信する。 I.次世代ロボットへの期待 1.次世代ロボットは,人間と共存するパートナーである。 2.次世代ロボットは,人間の物理的かつ心理的サポートの両面を担う。 3.次世代ロボットは,安心安全な社会の構築へ貢献する。 II.次世代ロボットテクノロジーによる新市場創成へ向けて 1.「ロボット開発・実証実験特区」の有効活用などにより,技術的課題を解決する。 2.スタンダードの構築と環境整備により,ロボットの社会導入に関わる課題を解決 する。 3.公的機関におけるロボット導入促進などにより,一般普及を喚起する。 4.ロボットに関わる新技術の普及に努める。 5.中小・ベンチャー企業のロボット技術開発と,ロボット産業への参入を促進する。 官学はこれを積極的に支援する。 21 キ.ロボットと学ぶ科学教室 子どもたちが夢を育み,科学への興味をいだくきっかけになる場として, 福岡市内の小学校75校などに最先端二足歩行ロボット『ASIMO(アシモ)』が 訪問し,「ロボットと学ぶ科学教室」を実施した。 ◆ロボットと学ぶ科学教室の概要 1.実施期間 2004年4月25日∼10月19日 2.実施場所 (1)福岡市内小学校75校 4月25日∼4月28日 5月14日∼7月14日 9月10日∼10月19日 (2)博多リバレインアトリウムガーデン 5月1日∼5月5日 (3)ロボスクエア『ロボット・サマースクール2004』 7月17日∼8月29日 3.内容 (1)二足歩行ロボットの歴史(映像) (2)最先端二足歩行ロボット『ASIMO(アシモ)』の仕組み(参加・体験型) ・1分間の片足立ちの競争 片足でバランスをとる難しさを体験。ロボットがいかに上手にバランスを とっているかを理解。 ・決められた距離を後ろ向きで歩く ロボットは決められたことをするのが得意であることを理解。 ・オペレータによる操作 ロボットは人間がコンピュータから出した命令通りに動くのだということ を理解。 4.参加者数 (1)福岡市内小学校75校 延べ 45,532人 (児童数38,238人,保護者他7,296人) (2)博多リバレインアトリュームガーデン 延べ 5,800人 (3)ロボスクエア『ロボット・サマースクール2004』 延べ 20,000人 22 ク.早稲田大学ヒューマノイド研究所福岡分室 ロボットに関する技術開発とロボット関連産業の振興に寄与し,その成果 を地域,社会に還元することを目的とし,相互の連携・協力を強化するため, ヒューマノイドロボット研究分野において世界トップレベルにある早稲田大 学ヒューマノイド研究所と協定を結び,ロボスクエア内に同研究所福岡分室 を設置した。 1.設置場所 ロボスクエア(博多リバレインB2F)内 2.活動内容 早稲田大学ヒューマノイド研究所の研究開発及び実証実験の推進拠点とし,また, 同研究所の教授及び学生らによる研究成果の地場企業・市民等への還元や啓発を行う 等,ロボット関連産業の振興に関し本市と連携・協力を行う。 3.期待される効果 ・世界トップレベルの研究者を核としたロボット研究者の集積 ・新たなロボット関連企業育成・進出 ・地元大学,関係機関及び地場企業との連携による研究活性化 ・『ロボットに出会うまち・福岡』の具現化 4.実証実験計画 2004年7月及び11月末∼12月中旬に,市内にて汎用2足歩行ロボット「WL−16R」の 実証実験を実施。以後も,分室を拠点とした実験を計画。 23 ケ.ロボット実証実験専用電波の確保 構造改革特区における「ロボット開発・実証実験特区」の提案や,地域再 生計画における「ロボット共存都市・福岡構想」の提案の中で,ロボット間 の相互通信等のための無線局開設の簡素化等について提案してきた結果,総 務省により「特定実験局制度」が創設され,ロボット遠隔操作等に必要な電 波に関する無線局開設における利便性が確保出来ることとなった。 福岡市は,特定実験局の免許を取得し,ロボット関連産業振興へ向けた基 礎データ,ノウハウ等を収集していくこととしている。 特定実験局制度 予め告示した周波数,空中線電力及び使用地域の範囲内であって,免許期間が1年か ら2年程度の短期間の実験局については,予備免許及び無線局検査の省略により,免許 手続きを大幅に緩和し,申請から免許付与までを1∼2週間程度で行えるようにするも の。 電波法施行規則第7条第4号の規定に基づき,特定実験局が使用可能な周波数等を次の ように定め,平成16年7月1日から適用する。 〔総務省告示(第285号)平成16年3月30日〕 ∼抜粋∼ 九州総合通信局管内分 のみ 使用可能期間 使用可 能地域 使用可能周波数範囲 等価等方 輻射電力 備考 平成16年7月1日から 平成18年6月30日まで 九州総 合通信 局管内 415.55MHzから417.45MHzまで 及び460.05MHzから461.95MHz まで 10ワット 二周波方式の場合はこ の組合せに限る。 陸上使用に限る。 2537.5MHzから2557.5MHzまで 2ワット 陸上使用又は海上使用 に限る。 5005MHZから5025MHZまで 1ワット 陸上使用に限る。 12.8GHzから12.9GHzまで 1ワット 21.45GHzから21.5GHzまで 1ワット 32.05GHzから33.25GHzまで 1ワット 39.625GHzから40.375GHzまで 100ミリワット 45.625GHzから46.125GHzまで 100ミリワット 48.4GHzから48.7GHzまで 100ミリワット 49.3GHzから49.8GHzまで 100ミリワット 51.35GHzから52.35GHzまで 100ミリワット 24 ◆特定実験局実験inアイランドシティ 【実施日時】 【実施場所】 【実験内容】 【実験装置】 【ロボット】 【実験主体】 2005年3月19日(土)公開実験10:00∼10:30 アイランドシティ菜の花祭り駐車場横広場 特定実験局開設による,専用電波(5015MHZ)を使用したロボット遠隔操作, 画像伝送実験。 ルート株式会社製 株式会社テムザック製 大型レスキューロボット T-52型「援竜」 福岡市 <免許概要> ①免許人名 :福岡市(市長 山崎 広太郎) ②無線局の目的 :通信実験用 ③電波の型式周波数及び空中線電力 :18M0X7W 5015MHz0.031W(等価等方輻射電力 ④免許の年月日 :2005年1月21日 ⑤免許の有効期限:2006年3月31日 ⑥移 動 範 囲 :九州総合通信局管内 0.16W) <無線装置> ①専用周波数対応:特定実験局用専用周波数にて利用可能。 ②汎用IP通信 :IP(インターネットプロトコル)により,画像,音声,制御 などの遠隔操作に利用可能。 ③高 速 通 信 :最大54Mbpsの通信速度が可能。 ④移 動 通 信 :モバイルIP技術により,端末は複数基地局間をハンドオー バーして移動通信可能。 ⑤高い安全性 :高度な暗号化と認証により,安全なデータ通信が実現。 大型レスキューロボット 25 T-52型「援竜」 コ.展示会等への出展 東京などで開催される展示会等へ出展を行い,福岡市のロボット関連産業 振興へ向けた取り組みをPRしている。 ◆「2003国際ロボット展」 これまでの開催(過去14回)で初めて民生用の『サービスロボット ゾーン』が設けられた事から,当該ゾーンに福岡市ブースを設置し, 「ロボット特区」の説明や「アイランドシティにおける“ロボットを活 用した”まちづくり」の紹介を行うと共に,ロボカップ2003イタリア・ パドヴァ大会中型リーグで優勝したFusionチーム(九州大学・福岡大学 合同チーム)のサッカーロボットも展示した。 ◆「国際ロボット見本市2004」 ロボット産業振興会議のブースの一部を活用し,福岡市の取り組みを 紹介した。 「2003国際ロボット展」における出展概要 福岡市におけるロボットに関する取り組みを紹介するため「2003国際ロボット展」に 出展した。 【 期 間 】 【 会 場 】 【 出展内容 】 2003年11月19日(水)∼22日(土) 東京国際展示場(東京ビッグサイト) 1.世界一のロボットを展示 九州大学・福岡大学合同チーム「Fusion」のサッカーロボット (ロボカップ2003イタリア・パドヴァ大会中型リーグ優勝) 2.「ロボット開発・実証実験特区」のご案内 3.3次元GISを活用したアイランドシティのまちづくりのご紹介 【 ワークショップ 】 日 時 2003年11月19日(水)13:00∼14:00 発表者 福岡市経済振興局新産業振興室長 武末 俊二 発表テーマ ∼ロボットと出会うまち・福岡∼ 発表概要 「ロボットと出会うまち」を目指す福岡市のロボット関連事業への 取り組み及びアイランドシティのまちづくりへの活用を含めた今後 の方向性の紹介。 ※参考 出展規模 : 総計117社 日 付 11月19日(水) 11月20日(木) 11月21日(金) 11月22日(土) 合 27団体 686小間 天気 来場者数(名) 晴れ 17,439 雨 21,798 晴れ 29,981 晴れ 29,231 計 --- 98,449 26 「国際ロボット見本市2004」における出展概要 【会 期】 2004年2月26日(木)∼28(土) 【会 場】 西日本総合展示場 新館(北九州市小倉北区) 【出展内容】 「ロボット産業振興会議」ブース内にて,福岡市のロボットに関する取り組みを紹介。 日 付 来場者数( 名) 2月26日(木) 6,430 2月27日(金) 8,296 2月28日(土) 11,852 合 計 26,578 27 5.福岡市がロボットをとおして目指すもの 福岡市は『ロボカップ2002福岡・釜山大会開催により構築されたネットワーク』 『福岡市科学技術振興ビジョン』『世界ロボット宣言』を礎とし,ロボット関連施 策の展開に取り組んでおり,そのキャッチコピーは【ロボットに出会うまち・福岡】 である。 これまでの具体的施策例としては《ロボスクエアの開設》《次世代ロボット研究 会設置》《ロボット実証実験サポート事業》が挙げられるが,今後も福岡市ならで はの施策立案・展開を期待するものであり,日本初となる公道ロボット実験を誘致・ サポートした福岡市の取り組みは,ロボット関連産業振興施策展開におけるモデル となり得るものである。 施策展開の結果【ロボットに出会うまち・福岡】が具現化すれば,施策展開面のみ でなく,ロボット製造における技術的側面(ロボットが人間と共存するための基 準)から社会規範(人間がロボットと共存するための基準)までをも含めたモデル が構築されることとなる。 これらのモデルが,日本初のロボット公道実験実施地名(博多区)にあやかり 『博多スタンダード』として広まることを期待する。 次章からは産業振興に関する「博多スタンダード」の構築につきフォーカスして 述べていくこととする。 28 世界ロボット宣言 福岡市科学技術振興 ビジョン ロボカップ 「ロボットに出会うまち・福岡」の実現 先進性 先進性 特化 特化 博多スタンダード=世界のロボットスタンダードに 博多スタンダード=世界のロボットスタンダードに ★「ロボスクエア」の開設 ★「次世代ロボット研究会」の設置 ★「ロボット実証実験サポート事業」の実施 世界・日本へ 世界・日本へ 新たなスタンダード 新たなスタンダード 産業振興 産業振興 暮らし 暮らし 生活 生活 29 学術 学術 研究 研究