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2-(2) 現代舞台芸術の公演 - 独立行政法人 日本芸術文化振興会

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2-(2) 現代舞台芸術の公演 - 独立行政法人 日本芸術文化振興会
2-(2) 現代舞台芸術の公演
《中期計画の概要》
(2) 現代舞台芸術の公演
ア オペラ公演
年間 13 公演程度
イ バレエ公演
年間 6 公演程度
ウ 現代舞踊公演 年間 4 公演程度
エ 演劇公演
年間 9 公演程度
(3) 青少年等を対象とした公演
イ 青少年等を対象とした鑑賞教室等を年間 3 公演程度実施
ウ 社会人などに配慮した企画等の実施、各鑑賞事業の連携協力の強化
(4) 伝統芸能の公開及び現代舞台芸術の公演の実施に際しての留意事項等
ア 適切な鑑賞者数の目標の設定
イ 外部専門家等の意見の聴取、アンケート調査の実施
ウ 国、地方公共団体、芸術団体、企業等との連携協力
エ 各地の文化施設等における公演の実施
オ 舞台芸術等の国際交流に資する公演等の実施
《年度計画》
2 現代舞台芸術の公演
(2) 現代舞台芸術の公演
① オペラ 13 公演(本公演 11、鑑賞教室等 2)
② バレエ 8 公演(本公演 6、鑑賞教室等 2)
③ 現代舞踊 4 公演
④ 演劇 8 公演
⑤ その他 1 公演
(3) 青少年等を対象とした公演
イ 青少年を対象とした鑑賞教室等の公演
オペラ 2 公演・バレエ 2 公演
ウ 新たな観客層の育成を図るため、主催公演のなかで社会人や親子を対象とした企画等を実施する。
なお、新たにこどものためのバレエ劇場「しらゆき姫」(新国立劇場)を実施する。
エ 実施に当たっては、各鑑賞事業の連携協力を強化するなど充実に努める。
(4) 伝統芸能の公開及び現代舞台芸術の公演の実施に際しての留意事項等
ア 外部専門家等の意見を聴取するとともに、アンケート調査を適宜実施し、公演事業に反映させる。
イ 国、地方公共団体、芸術団体、企業等と連携協力し、共催、受託などによる公演等の実施に努める。
ウ 国、地方公共団体、教育委員会等と連携協力を図り、全国各地の文化施設等において公演を実施す
る。
エ 国等との連携協力を図り、舞台芸術等の国際交流に資する公演等の実施に努める。
《実
績》
1.公演実績
分 野
オペラ
バレエ
現代舞踊
演 劇
その他
小 計
青少年等鑑賞教室
合 計
公演数
11公演
6公演
4公演
8公演
2公演
31公演
4公演
35公演
回数
50 回
39 回
17 回
123 回
3回
232回
16回
248回
日数
50日
35日
17 日
115日
3日
220日
12日
232日
入場者数(入場率)
71,271 人(85.0%)
44,965 人(69.1%)
5,338 人(71.4%)
48,942人(76.9%)
3,359 人(62.5%)
173,875人(77.1%)
18,845人(92.0%)
192,720人(78.4%)
目 標
67,820人(81.1%)
50,200人(77.7%)
5,560人(76.9%)
46,500人(76.5%)
2,790人(77.8%)
172,870人(78.6%)
18,300人(88.9%)
191,170人(79.5%)
2.現代舞台芸術の公演に際しての留意事項等
(1) 外部専門家等の意見聴取、アンケート調査の実施
① 外部専門家等の意見聴取
各部門の専門委員に各公演についてのレポートを送り、意見の聴取を行った。
② アンケート調査の実施
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概ね満足との回答(回答
数)
6,983 人
93.4%( 6,519 人)
オペラ
3,852 人
92.7%( 3,569 人)
バレエ
367 人
95.4%( 350 人)
現代舞踊
1,546 人
91.3%( 1,412 人)
演劇
125 人
86.4%( 108 人)
その他
12,873 人
92.9%(11,958 人)
合 計
(2) 国、地方公共団体、芸術団体、企業等との連携協力
①平成 21 年度(第 64 回)文化庁芸術祭主催 3 公演、協賛 3 公演を実施した。
②地域招聘公演(オペラ1公演)を実施した。
③新国立劇場合唱団による外部出演を 12 公演実施した。
(3) 全国各地の文化施設等における公演
全国で 10 公演(バレエ 3 公演、現代舞踊 3 公演、演劇 1 公演、鑑賞教室 1 公演、その他 2 公演)実
施した。
(4) 舞台芸術等の国際交流
海外においてバレエ 1 公演を実施した。
21 年度は、海外劇場に統計資料を送るなどの協力活動を行った。また、海外から多くの団体の訪問を
受入れ、新国立劇場の海外での認知度を高めることができた。今後とも諸外国及び各国の劇場との国際
文化交流の一層の発展を図り、引き続き推進していく。
ジャンル名
回答数
《自己点検評価》
○ 良かった点・特色ある点
経済状況の大変悪い中、全体として目標人数を達成することができた。
オペラにおいては、バイエルン州立歌劇場との共同制作による「ヴォツェック」の上演や、ニーベルン
グの指環 4 部作の再演の完了は、新国立劇場にとって大変意義深いものであった。
バレエにおいては、ロシアのモスクワボリショイ劇場にて「牧阿佐美の『椿姫』
」を日露共同上演事業と
して上演し高い評価を得ることができた。また「アンナ・カレーニナ」では現代バレエの上演という意義・
必要性をアピールすることができた。
現代舞踊においては、金森穣「Noism09」が、新潟のりゅーとぴあとの共同制作にて上演を行うことが
でき、地方との連携において成果を上げた。
演劇においては、超大作の「ヘンリー六世」が大変な好評を得、昨年の「焼肉ドラゴン」に引き続き、
読売演劇大賞を受賞した。
また、青少年を対象とした鑑賞公演等においても、今年はこどものためのバレエ劇場をレパートリーに
加えることができ、より一層の充実を見た。
《20年度評価結果への対応》
「バレエと現代舞踊は観客層が分かれており、入場者数を上げるためにも、両者のジョイントした公演
を企画することが望まれる」という意見については、両ジャンルが共同する公演は、芸術面、集客面でも
シナジー効果が期待できる。そのため、バレエと現代舞踊の両ジャンル振付家の作品を新国立劇場バレエ
ダンサーが踊る公演「Dance to the Future」を新たに企画し、初回公演は 2009/2010 シーズンの 22 年 5
月(小劇場)を予定している。
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2-(2)-① オペラ
《制作方針》
① スタンダードな作品の上演
名作と呼ばれるような代表的な作品を上演し、それをレパートリーとして蓄積し、繰り返し上演していく
ことで、オペラを市民生活に普及・定着させる。
② 上演機会の少ない優れた作品の上演
優れた作品ながら、さまざまな理由で日本では上演される機会の少なかった作品にも積極的に取り組む。
③ 日本の作曲家の作品の上演
欧米の名作ばかりではなく、日本の作曲家のオリジナル作品の上演にも積極的に取り組み、レパートリー
として蓄積していく。
《実
績》
公演名
期 間
会 場
回数
日数
楽劇「ニーベルングの指環」第1日「ワルキューレ」
(全3幕・ドイツ語上演)
「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
(全4幕・ロシア語上演)(新制作)
「チェネレントラ」
(全2幕・イタリア語上演)(新制作)
「オテロ」
(全4幕・イタリア語上演)
「魔笛」
(全2幕・ドイツ語上演)
「ヴォツェック」
(全3幕・ドイツ語上演)(新制作)
「トスカ」
(全3幕・イタリア語上演)
楽劇「ニーベルングの指環」第2日「ジークフリート」
(全3幕・ドイツ語上演)
楽劇「ニーベルングの指環」第3日「神々の黄昏」
(序幕付全3幕・ドイツ語上演)
コンサート・オペラ「ポッペアの戴冠」
(全3幕・イタリア語上演)
「修禅寺物語」
(全1幕・日本語上演)(新制作)
4/3~4/15
オペラ劇場
5/1~5/10
オペラ劇場
6/7~6/20
オペラ劇場
9/20~10/6
オペラ劇場
10/29~11/3
オペラ劇場
11/18~11/26
オペラ劇場
12/2~12/13
オペラ劇場
2/11~2/23
オペラ劇場
3/18~3/30
オペラ劇場
5/15~5/17
中劇場
6/25~6/28
中劇場
5回
5日
4回
4日
6回
6日
6回
6日
4回
4日
4回
4日
5回
5日
5回
5日
5回
5日
2回
2日
4回
4日
7,458人(83.2%)
7,400人(82.6%)
5,627人(78.5%)
5,700人(79.5%)
9,664人(89.9%)
8,700人(80.9%)
8,238人(80.7%)
8,300人(82.6%)
6,553人(91.4%)
5,900人(82.3%)
5,842人(81.5%)
5,500人(76.7%)
8,126人(90.7%)
7,700人(85.9%)
7,596人(84.8%)
7,120人(79.5%)
7,573人(84.5%)
7,120人(79.5%)
1,537人(81.4%)
1,580人(83.7%)
3,057人(84.4%)
2,800人(77.3%)
小 計
11公演
50回
50日
71,271人(85.0%)
67,820人(81.1%)
高校生のためのオペラ鑑賞教室「トスカ」
(全3幕・イタリア語上演)
こどものためのオペラ劇場「ジークフリートの冒険 指
(オペラ「ニーベルングの指環」による・
環をとりもどせ!」
全1幕・日本語上演)
7/10~7/16
オペラ劇場
6回
6日
10,484人(98.6%)
9,900人(93.2%)
7/24~7/26
中劇場
6回
3日
4,498人(84.6%)
4,600人(84.9%)
小 計
2公演
12回
9日
14,982人(93.9%)
14,500人(90.4%)
合 計
13公演
62回
59日
86,253人(86.5%)
82,320人(82.6%)
(1) 楽劇「ニーベルングの指環」第1日「ワルキューレ」(全3幕・ドイツ語上演)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
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入場者数(入場率)
上:実績/下:目標
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
4 月 3 日(金)~15 日(水)
5回
5日
7,458人(83.2%)
7,400人(82.6%)
○ 開演時間 3日(金)・9日(木)17:00開演、6日(月)・12日(日)・15日(水)14:00開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S席26,250円、A席21,000円、B席14,700円、C席8,400円、D席5,250円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
2001~2004 年にかけて初演され、大きな話題を呼んだ「ニーベルングの指環」四部作の 2 作目「ワ
ルキューレ」の再演。再演に当たっては、四作各プロダクションの規模が巨大であるため、いわゆるチ
クルス上演/一括上演を断念し、2009 年前半 2 作、2010 年後半 2 作を上演することとした。
○ 外部専門家等意見
それぞれ皆役柄を心得た歌唱と演技でこの作品を盛り上げていた。それは取りも直さず、指揮のダン・
エッティンガーの「リング」に対する深い洞察力と音楽的スケールの大きさ、さらに歌手達とオーケス
トラをまとめ上げる力量に負うところ大であろう。
劇場が新国立劇場であり、客は日本人である事も良く考えたうえで、舞台を作った事が理解できた。
舞台装置は大編成のオーケストラの音を飛び越して歌を観客にとどかせなければならぬ歌手達のことを
考えて、出来るだけ舞台前で歌えるように考えられていたし、さらに壁や天井をうまく利用して、声を
客席へ返すように、それでいて、客を飽きさせないような、最大限に舞台機構を利用してダイナミック
な動きをあちこちに展開させ、長い作品を最後まで客の目と耳を捕らえて離さなかったのは見事という
ほかなかった。指揮者のダン・エッティンガーは若さあふれる、生き生きとして迫力あるそれでいて繊細
さもあわせもった素晴らしい音楽を聴かせてくれた。
キース・ウォーナー演出の「ワルキューレ」は、今回の再演においても期待を裏切らない素晴らしい
出来であった。
「ラインの黄金」から比較的近い日程で見ることができたので、その気分を失うことなく、見ること
ができた。こうした作品を持っていることに誇りすら感じる。その価値をもっと広く世界にアピールし
てもよいと思う。作品上演だけの出入り(採算)でその価値を測るのではなく、別の観点からも文化的
な価値と意義について示すことの大切さをこうした作品に出合うと特に感じた。都市の創造性は、こう
した点にこそ現れるのではないか。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。回答数 159 人。
回答者の 87.4%が概ね満足と答えた(139 人)。
(主な意見・感想等)
・ 素晴らしかったです!!迫力あふれるオーケストラと歌手の皆さんに圧倒されました。装置もはっ
きりとした色調が曲にとても合っていて激しさをよく表現していました。照明がそこに強弱や陰影を
与えることで作品に深みが加わりとてもわかりやすく、入り込みやすい流れになっていると感じまし
た。音楽も勢いのあるところとしっかりしたところの違いが素晴らしかったと思います。光と闇の差
し方も美しかったし、希望や夢への憧れをとても美しい色で表わしていて忘れられません。前回の「ラ
インの黄金」に引き続き人間くさい神々も魅力にあふれ、愛や名誉に悩み苦しむ姿にひきつけられま
した。
・ 非常に良かった。第 3 幕が特によくできていたと思う。ジークリンデの歌手の歌には感動した。今
後もいろんな役で新国立劇場に登場してほしい。
【特記事項】
ドイツ語上演につき、字幕により歌詞の日本語訳を表示した。
4 月 12 日(日)終演後にバックステージツアーを実施し、20 人の参加者を得た。
オペラパレスホワイエに、09/10 シーズンオペラセット券についてのパネルを展示した。
アカデミック・プランを実施し、144 名の入場者を得た。
日本ワーグナー協会の協力を得た。
(2) 「ムツェンスク郡のマクベス夫人」(全4幕・ロシア語上演)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
4
回
4
日
5,627 人(78.5%)
5月1日(金)~10日(日)
○ 開演時間 1日(金)・7日(木)18:30開演、4日(月・祝)・10日(日)14:00開演
- 78 -
目 標
5,700 人(79.5%)
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S席23,100円、A席18,900円、B席12,600円、C席7,350円、D席4,200円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
若杉芸術監督の企画の柱の一つである、20 世紀オペラの上演。英国ロイヤルオペラで大きな話題を呼
んだプロダクションをレンタルしての上演であるが、現在世界で最も活躍している演出家の一人、リチ
ャード・ジョーンズのオペラ演出を日本で初めて紹介する。
○ 外部専門家等意見
演出のリチャード・ジョーンズはこの作品を 2004 年にイギリスのロイヤルオペラで制作しこの度の
再演となったが、改めて彼の才能の奥深さが認識された。
指揮のミハイル・シンケヴィチはすでにこの作品は読みつくしているようで、各々の役(歌手)の心
理描写を表現の中に反映させながら手堅くまとめていた。オーケストラもその要求に良く応えていた。
歌手達もカテリーナ役のステファニー・フリーデの体当たり的な歌唱と演技をはじめボリス役のワレ
リー・アレクセイエフの確固たる存在感、セルゲイ役のヴィクトール・ルトシュクの熱演、それに日本
人歌手達の脇を固めた布陣はこの上演を盛り上げた大きな要因であった。
最後に、「軍人たち」や本作品あるいは「黒船」「修禅寺物語」等々、意欲的でまた企画性のあるシー
ズン・プログラムを提供してくれた若杉芸術監督の幅広い見識を評価したい。
演出も舞台も素晴らしく感動的なものであった。1950 年のソ連に時代設定をもっていったリチャー
ド・ジョーンズの演出はこのような事件が起こるべくして起こるような、日々の生活の単調さ、倦怠を表
現するのに相応しかったと思う。舞台装置は上手く考えられていて、しきりの壁を動かして場面を転換
させたり、小道具を上手に使って、いろいろな用途につかったり、出演者の手で舞台転換がなされたり、
効果的に照明を使ったりで、観客の目をひきつけ、緊張の糸をゆるめないことに成功していた。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。回答数 490 人。
回答者の 88.4%が概ね満足と答えた(433 人)。
(主な意見・感想等)
・ 暗いストーリーにふさわしい、素晴らしい音楽。若きショスタコーヴィチが共産主義独裁時代にこ
んな社会批判や、皮肉をよく作曲したものだと、彼の芸術性に改めて驚きました。
・ 歌手陣の充実、特にカテリーナ役のフリーデは体当たりの演技と充実した歌唱がすばらしい。舞台
装置も奇をてらわず好感がもてた。そして今最も充実していると思われる東響。音楽の進行がとても
充実しているのでストーリーの展開が迫真せまるものとなっている。今シーズンはすべての作品を見
てきたが、今回のショスタコーヴィチが最高の出来ではないだろうか。
・ インパクト強すぎて、言葉もありません。CD で聴くのと、生の公演との違いを本日の公演ほど実
感したことはありませんでした。
【特記事項】
ロシア語上演につき、字幕により歌詞の日本語訳を表示した。
指揮を予定していた若杉弘オペラ芸術監督が体調不良のため降板。代わってミハイル・シンケヴィチが
指揮を務めた。
4 月 19 日(日)にオペラトークを実施し、147 人の入場者を得た(オペラパレス ホワイエ、入場料 1,000
円)。
登壇者:ミハイル・シンケヴィチ(指揮)
、亀山郁夫(ゲスト:ロシア文学者、東京外国語大学学長)、
新井鷗子(司会:音楽構成作家)、井上裕佳子(通訳)
演奏者:小濱妙美(カテリーナ役カヴァー)
、畠山茂(ボリス役カヴァー)
、中嶋克彦(ボロ服の男役
カヴァー)、木下志寿子(ピアノ)
5 月 4 日(月・祝)終演後にバックステージツアーを実施し、20 人の参加者を得た。
オペラパレス ホワイエに、09/10 シーズンオペラセット券についてのパネルを展示した。
(3) 「チェネレントラ」(全2幕・イタリア語上演)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
6 月 7 日(日)~20 日(土)
6回
6日
9,664 人(89.9%)
8,700 人(80.9%)
○ 開演時間 7日(日)・14日(日)・17日(水)・20日(土)14:00開演、10日(水)18:30開演、12日(金)19:00開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
- 79 -
○ 入場料金 S席23,100円、A席18,900円、B席12,600円、C席7,350円、D席4,200円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
「セビリアの理髪師」に次ぐロッシーニの人気オペラであり、また、新国立劇場においては比較的上
演機会の少ないベルカントオペラを、世界でも超一流の歌手をキャスティングし、伝統的名舞台として
有名な故ポネルのプロダクションをレンタルして上演する。
○ 外部専門家等意見
指揮のデイヴィッド・サイラスはやや速めのテンポで全体を引っ張り、緊張感のある音楽作りであっ
た。
ポネル自身が舞台美術をも担当していたことが、この舞台を美しく、手際よく進行させ、観る者をあ
きさせず楽しませてくれた重要な要素となっていると強く感じた。
今回特に素晴らしいと感銘を受けたのは、演出家ポネルの舞台を文字通り、再演、再現した再演演出
家他のスタッフ達の見事な手腕である。彼らの綿密な再現作業が実を結び、新国立劇場の舞台に花開き、
我々に大きな感動を与え、楽しませてくれたのであろう。舞台上で歌い、演ずる出演者達も皆生き生き
と舞台の中で素晴らしい演技と歌唱で観客を楽しませてくれた。つまりこの演出が出演者へも上手く浸
透していて、出演者の持てる力も最大限に生かした結果といえるかもしれない。ドン・ラミーロ、ダン
ディーニ、ドン・マニフィコ、アリドーロ役の男声陣も皆それぞれ自分の個性を発揮しながらアンサン
ブルも素晴らしい出来であったと思うが、私はなんと言っても、クロリンダ役の幸田浩子とティースベ
役の清水華澄に大きな拍手を送りたい。他の外国人ソリストの中でも全然見劣りしない立派な歌唱と演
技を見せてくれた。そして男声コーラスも素晴らしく楽しい演技と合唱を聴かせてくれた。彼らのこの
舞台への貢献も忘れてはならないであろう。彼らが扱う赤いバラや、絨毯等の小道具も実に効果的に上
手く利用されていて感心させられた。デイヴィッド・サイラス率いる東フィルの演奏も秀逸で、今回の
公演の成功に大いに力があったと思う。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。回答数 636 人。
回答者の 97.5%が概ね満足と答えた(620 人)。
(主な意見・感想等)
・ とても素晴らしいの一言!!カサロヴァとシラグーザ、この 2 人のロッシーニ歌いの顔ぶれでも
すごいのに、さらにデ・シモーネ、デ・カンディア、グロイスベッグが加わり、1 幕の 5 重唱はう
れしくて涙が出ました。カサロヴァの「昔、あるところに王様が」は、低音から高音まで絶妙なコ
ントロールでした。2 幕の難しいアリアも完璧!!!世界一流の 5 人に混ざって、いじわる姉さん
の幸田さん、清水さんもコミカルに健闘でした。今回 3 公演分チケットを購入しているのであと 2
回楽しみです。
・ 最高でした!!ポネルの演出は映像もステージも観ていますが、アサガロフさんの改訂はもっと
素晴らしい!!楽しいだけでなくリリカルで深みもありました。人生のなんたるかを教えてくれる
よう。すごく良かったです。歌手もコーラスも衣装も背景もすべて良い!!!オケもガンバってい
ました!
【特記事項】
イタリア語上演につき、字幕により歌詞の日本語訳を表示した。
5/30(土)オペラトークを実施し、112 人の入場者を得た(オペラパレスホワイエ、入場料 1,000 円)。
登壇者:デイヴィッド・サイラス(指揮、ピアノ)
、水谷彰良(ゲスト:音楽研究家)、新井鷗子(司
会:音楽構成作家)
演奏者:五郎部俊朗(ドン・ラミーロ役カヴァー)
、森山京子(アンジェリーナ役カヴァー)、志村文
彦(ドン・マニフィコ役カヴァー)、佐藤泰弘(アリドーロ役カヴァー)
6/14(日)終演後にバックステージツアーを実施し、20 人の参加者を得た。
オペラパレスホワイエに「修禅寺物語」公演情報をパネルで展示した。
大使鑑賞プログラムを 6/7(日)に実施し、アメリカ、イタリア、ドイツ、フランス、ベルギー、イギ
リスの大使が公演を鑑賞した。
(4) 「オテロ」(全4幕・イタリア語上演)(新制作)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
9 月 20 日(日)~10 月 6 日(火)
6回
6日
入場者数(入場率)
8,238 人(80.7%)
- 80 -
目 標
8,300 人(82.6%)
○ 開演時間 20 日(日)・23 日(水・祝)・26 日(土)・3 日(土)14:00 開演、29 日(火)・6 日(火)18:30 開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S 席 26,250 円、A 席 21,000 円、B 席 14,700 円、C 席 8,400 円、D 席 5,250 円、Z 席
1500 円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
ヴェルディの最高傑作「オテロ」を2003年6月以来6年ぶりに上演する。前回は英国ロイヤル・オペラか
らのプロダクション・レンタルによる上演であったが、今回は演出にイタリアの映画監督マリオ・マルト
ーネを起用し、新国立劇場独自のプロダクションを新制作する。
○ 外部専門家等意見
今シーズンオープニング公演最終日の第 3 幕の幕がそろそろ開こうかという時に、いっこうに開幕す
る気配が無いのに、観客も不審に思い始めたころ、場内アナウンスが入り、第 3 幕開幕まであと 20 分
少々時間がかかる旨を知らされた。あんなにエネルギッシュで素晴らしい音楽を作りだしていた、マエ
ストロの身体の調子が悪くなったとは夢にも思わなかった。指揮者リッカルド・フリッツァに替わって、
音楽ヘッドコーチ石坂宏が慌しく準備を整え、3 幕から棒を振って見事最後まで演奏し終り無事千秋楽
の幕を下ろしたことには感心すると同時に思わず感動して拍手をしている自分に気がついた。開場して
10 年、わが新国立劇場も多く経験をつんできて、ちょっとのことでは動じないようで頼もしい限りであ
る。今回の「オテロ」に関しては冒頭の嵐を乗り越えて戦いに勝って凱旋するオテロの登場が少人数で
客席からの出と言う演出であったが、何かしょぼい、淋しい演出であったのがやや、不満と言えば不満
であった。
舞台全面に水をはって、中央にオテロの家を配置した舞台の構成は、よく考えられたものだと感心し
た。
主役 3 名の歌手もとても好演で、十分満足のいくものだった。新シーズンの幕開けとして期待にこた
えるものだったといえる。途中降板となってしまったが、指揮者は音楽の魅力をオーケストラからよく
引き出していたと感じた。急遽代役を任された指揮者も、満足できる内容で安心した。
昨今はやりの「よみかえ」的雰囲気のステージングを意識させられた上演であった。
シーズン開幕公演にふさわしい重量級の演目を選んだこと、確保の難しいオテロ役に世界的なヘルデ
ンテノールを招いたことは大いに評価できる。
マリオ・マルトーネ演出の舞台は、水と火を効果的に用い、モンタージュなど映画的な手法も意欲的
でわかりやすいものだったが、後半は広い舞台をもてあましたように感じられた。リッカルド・フリッ
ツァはスピード感ある指揮で、
「アイーダ」のときよりも説得力があり、やはり優秀な指揮者なので、今
後も継続的に登場させてほしい。オテロ役のステファン・グールドはさすがに力強い声でこの役にふさ
わしい。イアーゴ役のルチオ・ガッロは思ったより丁寧に歌っていた。タマール・イヴェーリ(デズデ
ーモナ)も清純な声がよく、代役という以上の存在感を発揮していた。6 公演のうち 4 公演が土日祝に
合わせたマチネーで、平日夜は 2 公演。お客さんはよく入っていたし、長尺のオペラの場合、休日マチ
ネー中心の方が現代の生活スタイルに合って定着しつつあるのだろうと感じた。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。回答数 454 人(配布数 8,238 人、回収率 5.5%)。
回答者の 86.4%が概ね満足と答えた(426 人)。
(主な意見・感想等)
・ シーズンスタートにふさわしい、超ド級のイタオペ。古典的でありつつ、新しい要素を取り入れた
ステージで繰り広げられる声の競演!イアーゴに翻弄されてこわれていくオテロの哀しさがとても
良く表現されていた。オケもヴェルディのシルクのような音色を出せていた。
・ 水と照明をうまく使った舞台。緊張感ある歌唱!キレのあるオーケストラとすべてがよかった!
・ オテロは、原作の完成度が高く、音楽的に限界を感じる場面があるが本日の公演の心理的な表現が
舞台と音と一体となって聴くものにせまる内容であった。イヴェーリさんの歌唱に満足です。
【特記事項】
平成 21 年度(第 64 回)文化庁芸術祭協賛公演
東海旅客鉄道(株)より特別協賛を得た。
オペラトークを実施した。
(9 月 6 日(日)午前 11:30~午後 1 時、オペラパレスホワイエ、入場者数 157 名、料金 1,000 円)
登壇者:R・フリッツア(指揮)
、M.マルトーネ(演出)
歌 唱:水口聡(オテロ役カヴァー)、小林厚子(デズデーモナ役カヴァー)
司会進行:新井鷗子
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10 月 17 日(土)終演後バックステージツアーを実施した。
ロビーにて故若杉弘オペラ芸術監督の追悼展示を行った。
イタリア語上演につき、字幕により歌詞の日本語訳を表示した。
(5) 「魔笛」(全2幕・ドイツ語上演)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
4
回
4
日
6,553
人(91.4%)
5,900
人(82.3%)
10月29日(木)~11月3日(火・祝)
○ 開演時間 31日(土)・1日(日)・3日(火・祝)14:00開演、29日(木)18:30開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S席21,000円、A席15,750円、B席10,500円、C席6,300円、D席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
モーツァルトの名作オペラ。新国立劇場通常公演の初シーズンに制作されたミヒャエル・ハンペ演出
による美しく豪華なプロダクションの 4 回目の上演。
○ 外部専門家等意見
ミヒャエル・ハンペの演出のこのオペラ「魔笛」は品良く、美しく仕上がっていたように感じた。特
にポータルアーチと全てのアーチとバックドロップの絵が素晴らしく、美しい宇宙の中で物語が進んで
いるという印象を強く感じた。
夜の女王は見事な歌唱だった。彼女に代表されるように、日本人歌手のレベルの高さを示した公演だ
った。こうしてレパートリー化され、繰り返し上演される作品では、積極的に日本人歌手の出演機会を
設けて欲しいものだと感じた。
98 年 5 月新国立劇場初上演以来続いているこのミヒャエル・ハンペの演出作品はまさにこの劇場の機
能を縦横に駆使した舞台造りで、しかもこの物語に相応しい独特の味わいあるものである。おそらく大
人から子供まで楽しめる作品ではなかろうか。そのような意味からも長く大切に続けたいものである。
ただ、衣裳について少し気になった点がある。民衆(合唱)の中にソフト帽やハンチング等を着用し
ていた男性が散見されたが、いやにこの場面だけが現実味があり、全体の雰囲気にそぐわない感じがし
たのが残念であった。パパゲーノ役のマルクス・ブッターが役柄を手中におさめた歌と演技で秀逸であ
ったし、パミーナ役のカミラ・ティリングも確かさのある歌と表現力が認められたが、タミーノ役のス
テファノ・フェラーリが風邪でも引いたのか高音も含め全体に声の響きが乏しくやや精彩を欠いていた
のが気になった。他の日本人歌手達は各々の役柄をよく把握した歌と演技であった。
○ アンケート調査(全日程実施)
回答数 301 人(配布数 6,553 人、回収率 4.6%)
。回答者の 89.7%が概ね満足と答えた(270 人)
。
(主な意見・感想等)
・ 新国立劇場版の「魔笛」は初見でしたが本当に素晴らしくて感動しました!皆さんの美声の競演に
も舞台装置の宇宙的・壮大な広がりにもうっとりしました。ストーリーも以前、拝見した時には今
一つわかりにくかったのですが今回は楽しみながらモーツァルトのすごさを改めて感じました。と
ても哲学的ですが彼独特の死生観が表現されているのでしょうね。また観たいです!
・ ハンペさん、演出素晴らしかったです。また日本に来て下さいね!美術・衣装も大変美しかった。
歌手の皆さん、カヴァーの方、スタッフの皆さんお疲れ様です。私にとって日本で見た最高の「魔
笛」でした。
・ 言葉にするのが難しい位すっごく素敵で何度もウルウルしてしまいました。歌(キャスト)はもち
ろん舞台・演出そしてマエストロどれをとっても良かったです。静岡から来て良かったです。お疲
れ様でした。
【特記事項】
平成 21 年度(第 64 回)文化庁芸術祭協賛公演
11 月 1 日(日)終演後バックステージツアーを実施した(参加者 40 名)。
ロビーにて故若杉弘オペラ芸術監督の追悼展示を行った。
ドイツ語上演につき、字幕により歌詞の日本語訳を表示した。
(6) 「ヴォツェック」(全3幕・ドイツ語上演)(新制作)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
- 82 -
目 標
11 月 18 日(水)~26 日(木)
4回
4日
5,842 人(81.5%)
5,500 人(76.7%)
○ 開演時間 21日(土)・23日(月・祝)・26日(木)14:00開演、18日(水)19:00開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S席23,100円、A席18,900円、B席12,600円、C席7,350円、D席4,200円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
故若杉オペラ芸術監督が、
“時代を画したオペラ”の1本に挙げた 20 世紀の名作オペラを、バイエル
ン州立歌劇場との共同制作により上演する。なお、キャスティングは新国立劇場独自に行った。
○ 外部専門家等意見
前々から評判の高かった公演だけに平日の公演なのに客席は上々の入りであった。評判に違わず素晴
らしい良い舞台であり、オペラであった。平成 21 年度文化庁主催公演であり、今シーズン 2 作目の新
制作作品に相応しい素晴らしいオペラ公演となった。さらに今回の上演プロダクションはバイエルン州
立歌劇場との共同制作によるものだそうで画期的な試みでわが国のオペラ制作のある行き方を示唆する
きわめて意義のある公演であった。前 3 幕を休憩なしに一気に畳み込むような演出も大きな成果を上げ
ていたと思う。新国立劇場が世界に誇れる舞台機構と世界に誇れる舞台で働く技術者達のまじめな取り
組みの確かさが、この舞台の成功に大いに寄与していることも改めて感じいった。
出演者はみな全て好演の一語に尽きるが、全編ほぼ出ずっぱりのマリーの子供役中島健一郎の好演は
特に印象に残る素晴らしいものであり、この公演の成功の一翼をになうものであった。
舞台中央の薄汚れた白い箱と舞台一面の水、それらを囲む薄い膜、それだけで構成されている。非常
にシンプルな舞台空間ではあるが、それらが音楽によって先導され、舞台照明と呼応することで、実に
豊かな空間を作りだしていたのには感心した。
これほど音楽以外の音が聞こえてくる演出作品はなかった。物語を説明的に演出するようなこともあ
まりなく、初めてみる人にとっては親切な演出だとはいえないのかもしれない。視覚的な演出効果が全
面に出て、そうした点から物足りなさを感じられる人がいることも想像できる。しかし、そうした批判
を超えて、この演出作品には大きな魅力を感じる。
期待通りの、いやそれ以上の迫力ある見事な上演であった。
ヴォツェック役のトーマス・ヨハネス・マイヤーの鬼気迫る歌唱と演技、大尉役のフォルカー・フォ
ーゲルのキャラクターテノール的な表現の巧みさ、マリー役のウルズラ・シュタイネンの役柄を把握し
た的確さ、それに互して医者役の妻屋秀和、アンドレス役の高野二郎、マルグレート役の山下牧子も立
派に存在感を示していた。さらに特筆すべきは、マリーの子供役の中島健一郎の大人顔負けの卓越した
演技力であった。
指揮のハルトムート・ヘンヒェンは密度の濃いアナリーゼに立脚した表現力でオーケストラをコント
ロールしていたし、かなり複雑な音の塊を鮮明に解析した快演であった。
○ アンケート調査(全日程実施)
回答数 226 人(配布数 5,842 人、回収率 3.9%)
。回答者の 82.7%が概ね満足と答えた(187 人)
。
(主な意見・感想等)
・ 演出も美術もレベルが高く、本物のアートを観た!と、思いました。オペラはやはり総合芸術であ
ると感じた次第です。
・ 素晴らしいオペラを観ることができて大変よかったです!演出も素晴らしく、これからもポピュラ
ーな作品に加えて斬新なものもやっていただきたいです。水を使った演出が音楽と合わさって良かっ
たです。
・ 演出のすごさに圧倒されました。ビューヒナーの世界観を的確に表現されていたと思います。歌手
のみなさんも難しい歌を自分のものにされていたと思います。若杉さんの指揮でなかったことは悲し
いですが、ヘンヒェン氏の指揮は素晴らしい音楽を聴かせてくれました。
【特記事項】
平成 21 年度(第 64 回)文化庁芸術祭主催公演
主催 文化庁芸術祭執行委員会・新国立劇場
オペラトークを実施した。
(11 月 7 日(土)午前 11:30~午後 1 時、オペラパレスホワイエ、入場者数 168 名、料金 1,000 円)
登壇者:ハルトムート・ヘンヒェン(指揮)、アンドレアス・クリーゲンブルク(演出)
歌 唱:荻原潤(ヴォツェック役カヴァー)
、並河寿美(マリー役カヴァー)
、成田勝美(鼓手長役カ
ヴァー)、小埜寺美樹(ピアニスト)
司会進行:長木誠司
ロビーにて故若杉弘オペラ芸術監督の追悼展示を行った。
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ドイツ語上演につき、字幕により歌詞の日本語訳を表示した。
(7) 「トスカ」(全3幕・イタリア語上演)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
12 月 2 日(水)~13 日(日)
5回
5日
8,126 人(90.7%)
7,700 人(85.9%)
○ 開演時間 5日(土)・8日(火)・13日(日)14:00開演、2日(水)・11日(金)18:30開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S席23,100円、A席18,900円、B席12,600円、C席7,350円、D席4,200円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
2003 年 11 月以来 6 年ぶり、通常公演においては 4 回目となる上演。マダウ=ディアツによる華麗で
写実的なプロダクションは、
「高校生のためのオペラ鑑賞教室」においても人気の、定番ともいえる舞台。
○ 外部専門家等意見
今回の演出のアントネッロ・マダウ=ディアツ氏はオペラをよく知っている演出家の一人だと思うし、
今回も感心もし、安心もして観ていた。
指揮者フレデリック・シャスランのオーケストラから引き出すダイナミックなサウンドは、川口直次
のデザインによる壮麗豪華な舞台と相侯って聴衆をオペラ「トスカ」の世界に引き込んでいく迫力ある
内容であった。世界的に親しまれている名作オペラにしては大変めずらしい、ステージに現れる人物は
たった一人だけの女性トスカ役のイアーノ・タマーは役柄を把握した歌唱と演技を見事に表現していた。
それに対してカヴァラドッシ役のカルロ・ヴェントレはエンジンがかかるのが遅いのかやや不調の出
だしであったし、高音を伸ばすのがテノールの醍醐味と勘違いしているのでは?と思うところも見受け
られた。スカルピア役のジョン・ルンドグレンの悪役ぶりは、この役をレパートリーにしているらしく、
さすがに板についた歌唱と演技であった。その他各々の歌手達も良く役柄に合った歌唱と演技でこの作
品を盛り上げていた。
○ アンケート調査(全日程実施)
回答数 618 人(配布数 8,126 人、回収率 7.6%)
。回答者の 93.4%が概ね満足と答えた(577 人)
。
(主な意見・感想等)
・ まずは、美術と衣裳の美しさに目を奪われました。大聖堂や聖アンジェロ城といったローマに実在す
る名所を実際にいるかのように感じることができ、トスカの世界に引き込まれました。カヴァラドッシ
の愛ゆえに嫉妬するトスカ、スカルピアの策に翻弄されるトスカの心の動きがとても伝わってきました。
・ 視覚的・音楽的に100パーセント満足。これほどのトスカ公演には滅多に巡り合えないと思う。歌手
は粒ぞろい、演技も良く、ドラマに引き込まれた。
【特記事項】
12 月 5 日(土)終演後バックステージツアーを実施した(参加者 41 名)。
バレエ「くるみ割り人形」の宣伝のロビー展示を行った。
イタリア語上演につき、字幕により歌詞の日本語訳を表示した。
(8) 楽劇「ニーベルングの指環」第2日「ジークフリート」(全3幕・ドイツ語上演)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
2 月 11 日(木・祝)~23 日(火)
5回
5日
7,596 人(84.8%)
7,120 人(79.5%)
○ 開演時間 11日(木・祝)・14日(日)・20日(土)・23日(火)14:00開演、17日(水)16:00開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S席26,250円、A席21,000円、B席14,700円、C席8,400円、D席5,250円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
2001~2004 年にかけて制作された「ニーベルングの指環」の再演プロジェクト第3弾。
○ 外部専門家等意見
3 作目になって、指揮のダン・エッティンガーと演出のキース・ウォーナーの意図したコンセプトが
理解できたように感じて、楽しめる公演となった。幕を追うごとに舞台での演奏と演技に引き込まれて
行き、時間の経つのも忘れるほどであった。膨大で長いこのオペラは圧倒的に二人の出演者の対話で進
- 84 -
められていく部分が多く、ともすると集中するのがつらくなることもあるが、それを視覚的に大道具の
動きや、照明や特殊効果を巧みに利用して、観客の目を集中させることにも留意して楽しませてくれた。
今回はミーメ役のヴォルフガング・シュミット、ブリュンヒルデ役のイレーネ・テオリンがすばらしか
った。さらに最近特に感じるが、劇場スタッフの手際や心配りが客席から心憎いまでに感じられさらに
公演を盛り上げているように思う。
こうしたレベルの高いオペラを鑑賞できるところに新国立劇場の意義があると感じる。
まず際立っていたのは、オーケストラの力演と安定した技術。東フィルは不安定な日もあったような
話も聞いたが、楽日のこの日はたくましい響きで、素晴らしい出来だった。エッティンガーの指揮は、
動きのある部分とそうでない部分の差を大きくつけたものだが、問題は後者の処理であった。ウォーナ
ーのポップな演出とずれていたように思う。歌手はジークフリート役のフランツを初めとして重量級で、
世界的に見てもかなりの高水準、前回の上演を上回っていた。ブリュンヒルデのテオリンは、この日は
荒さが目立った。長丁場であり、休憩の長さはしかたのないところ。午後開演で、終演時間は適切なも
のだったと思う。
2001 年「東京リング」として話題をさらってから、はや 9 年の歳月が過ぎているが、内容の充実さ、
新鮮さは今もって失われていない。特に 2003 年以来 7 年ぶりとなる“ジークフリード役のクリスティ
アン・フランツと“さすらい人”役のユッカ・ラジライネンの健在ぶりは特筆に価する。
“ミーメ”役の
ヴォルフガング・シュミットがやや声にゆれを感じさせ不安さもあったが、ともかくあのオーケストラ
の厚い響きに負けぬ迫力と声量はさすがである。また、
“ファフナー”役の妻屋秀和の存在感も見落とす
ことのできない歌唱であった。
指揮のダン・エッティンガーは今回再演の序夜「ラインの黄金」から引き続いての指揮であるが、こ
の壮なる「リング」を細部に亘り行き届いた統制とバランスを保った表現力は見事である。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。
回答数 681 人(配布数 7,596 人、回収率 9.0%)
。回答者の 91.6%が概ね満足と答えた(624 人)
。
(主な意見・感想等)
・ 前回聴いた時より更に完成度が増していてすばらしかった。歌手も指揮もすばらしかった。演出も
演技も細やかで「ジークフリート」でこんなに泣けたのは初めて!特にジークフリートの演技は繊細さ
と大胆さを兼ねそなえて秀逸!
・ ダン・エッティンガー指揮の東フィルがダイナミックでそして悲しみを秘めたワーグナーの音楽を
よく響かせてくれていたと思います。指輪シリーズの中にあってどちらかといえば音楽は地味な作品だ
と思うのですが現代の料理工房といった演出や森のささやきの舞台など見た目でも楽しませてくれま
した。もちろんジークフリート役のクリスティアン・フランツさんが十分な活躍でしたし、ファフナー
の妻屋さん、森の小鳥の安井さんも良演でした。
・ 素晴らしい歌手が揃っていて、とても良い公演だと思った。演出も現代風ではあるが、不思議な魅
力があり、今日は 2 回目の観劇となった。めったに見られない新国立劇場の舞台装置をフルに活動して
いて他の劇場では見ることのできない素晴らしいプロダクションに感動した。
【特記事項】
2 月 14 日(日)終演後にバックステージツアーを実施し、19 人の参加者を得た。
2010/2011 シーズンラインアップの展示を行った。
本公演はドイツ語上演につき、字幕により歌詞の日本語訳を表示した。
協力:日本ワーグナー協会
(9) 楽劇「ニーベルングの指環」第3日「神々の黄昏」(序幕付全3幕・ドイツ語上演)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
3月18日(木)~30日(火)
5回
5日
7,573人(84.5%)
7,120人(79.5%)
○ 開演時間 21日(日)・27日(土)・30日(火)14:00開演、18日(木)・24日(火)16:00開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S席26,250円、A席21,000円、B席14,700円、C席8,400円、D席5,250円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
2001 年~2004 年にかけて制作された「ニーベルングの指環」の再演プロジェクトの最後を締めくく
る上演。
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○ 外部専門家等意見
今回も「ジークフリート」に続き、東フィルが大健闘だった。エッティンガーの指揮も、停滞する箇
所は少なめだった。公演時間の設定には疑問がある。10 時には出られるように、開演時間を早めてもよ
いのではないか。歌手陣は「ジークフリート」同様、高水準である。特に今回はハーゲンに日本人でな
く、ヨーロッパ系のスメギを起用したのがよかった。一回のシーズンにワーグナー2 本というのは、再
演であっても歌劇場にとって大きな負担だろうとは思うが、今回は凸凹も少なく、成功していた。
「指環」第 2 日の「ジークフリート」に続き連続出演しているクリスティアン・フランツとイレーネ・
テオリンに加えて今回初登場のダニエル・スメギ、アレクサンダー・マルコ=プルメスター、カティア・
リッティングの充実した歌手連による第 3 日の本公演は、この「指環」4 部作の悼尾を飾るに相応しい
内容であった。特にこの歌手連に負けぬ存在感を示していたのは横山恵子、島村武男をはじめ脇を支え
た日本人歌手連であることも忘れてはならない。
○ アンケート調査(全日程で実施)
回答数 577 人(配布数 7,573 人、回収率 7.6%)
。回答者の 92.4%が概ね満足と答えた(533 人)
。
(主な意見・感想等)
・ リングの最後の超大作で特にジークフリート後のフランツさんがこの長い間 2 演目続けて熱唱な
さったのには感動いたしました。それにブリュンヒルデ役のテオリンさんは歌唱の素晴らしさはも
ちろん、美しく華のある舞台姿に最後は涙がでました。6 時間半は見る側にとっても楽しく感激し
ながらも大変つかれますのに歌手の皆さま方の熱演にはただただ頭の下がる思いです。このような
レベルの高い神々の黄昏に又、お目にかかれたら嬉しいと心から思っております。
・ 日本でこれだけ素晴らしい演出が完成したのは嬉しいです。赤い槍のようなとねりこの樹。ノル
ン達のおりなすテープ。ギービヒ家の場合のあとのスクリーンに出る羊は犠牲となるジークフリー
トを表しているのか。だんだん哀れな顔になっていって最後ではたしか赤い十字架でクロスされて
いたのではなかったか。ソリスト達も声量があり、ワーグナー歌いの声を満喫できた。
【特記事項】
3 月 21 日(日)終演後にバックステージツアーを実施し、40 人の参加者を得た。
2010/2011 シーズンラインアップの展示を行った。
本公演はドイツ語上演につき、字幕により歌詞の日本語訳を表示した。
協力:日本ワーグナー協会
(10) コンサート・オペラ「ポッペアの戴冠」(全3幕)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
2回
2日
1,537 人(81.4%)
1,580 人(83.7%)
5月15日(金)~17日(日)
○ 開演時間 15日(金)18:00開演、17日(日)14:00開演
○ 会
場 中劇場
○ 入場料金 S席12,600円、A席10,500円、B席8,400円、C席6,300円、D席4,200円、Z席1,500円
当日学生割引=50%引(D席・Z席を除く)
○ 制作意図
若杉芸術監督が、
「オペラ史を画したオペラ」の1本に位置づける本作を、バッハを始めとする様々な
バロック作品の演奏で国際的に名声を博しているバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)との共同により、
中劇場においてコンサート・オペラのスタイルで上演する。
○ 外部専門家等意見
本公演はまた一つの成果を得た上演であった。特にその成果を上げた要因に字幕処理の効果があった。
心理描写に合わせたボカシの手法を入れたり、一定の並び語句を破っての表出であったりで、まさに映
像技術を駆使していた点である。ただ、第二幕の重要なポッペアの殺害の場面で字幕のトラブル発生は
残念であった。機器や操作が複雑になればなるほどその危険性は高くなる事を感じた。
新国立劇場として取り上げるべき意義のある公演となったと思う。
古楽器によるバッハ・コレギウム・ジャパンの管弦楽の演奏は素晴らしかった。指揮者鈴木雅明率い
るこのオーケストラと歌手達の奏でる音楽は美しく、感動的であった。ただ、演出的には納得できるも
のではなかったように思う。今回のこの公演は時間的にもかなり長い作品全幕をつねに暗い照明のなか、
スポットの中での演唱になってしまったのは非常に辛い感じがした。歌手達はみな全て素晴らしい歌を
聴かせてくれていたし、熱演でもあったと思うにつけ、なおさらもっとじっくり、歌う表情や演技を明
るい照明の舞台で観たかったように思った。
芸術監督が新国立劇場に導入したオペラ作品をコンサート形式で上演するという試みは大変面白く、
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今回も期待して出かけた。こうして形式的にも時代的にも幅広い企画を行っているところが最近の新国
立劇場の魅力だと感じている。
全体としては大変すっきりとした感じで仕上がった秀作だという印象を受けた。一定の予算の中で、
舞台の構成も衣裳もよく考えられたものとして感心した。
字幕のように文字を背景に写し出すという演出も今回の特徴の一つで、細かなニュアンスをさまざま
な方法によって伝えようという意図は、十分に伝わってきた。
○ アンケート調査(全日程で実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。回答数 257 人。
回答者の 87.5%が概ね満足と答えた(225 人)。
(主な意見・感想等)
・ このようなコンサート形式をはじめて見ました。とてもインパクトがあり、よかったと思います。出
演者が人形のようで美しく、字幕が驚くべき芸術となりました。素晴らしいと思います。よくやってい
ただきました。
・ なかなか聴く機会の少ない古楽器でのオペラを観ることが出来、とても良い機会でした。コンサート
形式というのがぴったりでしたし、字幕もとてもよい効果になっていて楽しみました。とてもよい時間
を過ごせました。
・ バロックオペラとてもよかった。字幕の演出もユニーク。舞台上が少し暗すぎ、若干読みづらいとこ
ろもあったけれど、十分楽しめた。今後もヘンデルや初期モーツァルトなどどんどん取り上げていって
ほしいです。
【特記事項】
イタリア語上演につき、字幕により歌詞の日本語訳を表示した。
中劇場 ホワイエに、09/10 シーズンオペラセット券についてのパネルを展示した。
共催:バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)
特別協力:クリスティ・デジタル・システムズ日本支社
(11) 「修禅寺物語」(全1幕・新制作)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
4回
4日
3,057 人(84.4%)
2,800 人(77.3%)
6月25日(木)~28日(日)
○ 開演時間 25日(木)・26日(金)18:30開演、27日(土)・28日(日)14:00開演
○ 会
場 中劇場
○ 入場料金 S席15,750円、A席12,600円、B席8,400円、C席6,300円、D席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
若杉芸術監督の企画上、重要な位置づけを占める日本オペラ。昨シーズンは日本初のグランドオペラ
であり戦前初演された「黒船」を取り上げたのに続き、2 シーズン目の今シーズンは、
「夕鶴」とともに
戦後の創作オペラの先駆となった本作を上演する。もともと新歌舞伎をオペラ化した作品であるため、
歌舞伎界の大御所、坂田藤十郎を演出に迎え、可能な限り歌舞伎調を導入した舞台を目指した。
○ 外部専門家等意見
この公演は珍しく中劇場で上演された。舞台の中へ吸い込まれるように、近く、親しみ易く、溶け込
んでいけるように感じた。
今年は清水脩作曲の「修禅寺物語」が取り上げられたが、もっと早くに新国立劇場の舞台で公演され
てもよかったようにも思った。視覚的には私の観た 27 日の組の衣裳、とくにかつらの衣裳の身頃があ
ってないように見えるのが気になって仕方無かったことと、夜叉王の衣裳が何故か木村俊光を貧相にみ
せてしまっていて、この役としての迫力ある凄さの表現を出し切ることが出来なかった原因ともなって
いたように思う。
新国立劇場にとって邦人オペラの上演はひとつの柱になるべき重要なテーマである。若杉弘芸術監督
の「より強く歌舞伎色を打ち出したい」という希望から、演出に坂田藤十郎が起用された。坂田の演出
は文字通りに歌舞伎的に演出し、日本古来の美意識を底に反映したもの。オペラ上演で一度はこうした
試みを行うのはきわめて有意義である。残念なことに予定されていた若杉が指揮することは叶わなかっ
たが、代役をつとめた外山雄三が東京交響楽団を的確に指揮し、
「和」の美感に根差したオペラを理想的
な形で表現していた。
昨年の「黒船」に続いて日本の作品を取りあげたことは大いに評価したく思う。
- 87 -
中劇場を選択したことも、興収的には厳しいだろうが、芸術的には正しいことと考える。作曲者が意
図した響きの明快な輪郭は、この大きさでこそ生きたように思う。
○ アンケート調査(全日程で実施)
入場時に配布、出口回収。回答数 187 人。
回答者の 81.8%が概ね満足と答えた(153 人)。
(主な意見・感想等)
・ 日本語の美しさの再発見。意味がわかるので安心して見ることができる。日本のオペラも良いですね!
・ 素晴らしかったです。字幕をついついみてしまいましたが、見なくてもわかるくらいセリフが明確で
お芝居を見ているようでした。夜叉王の最後のところなど、ゾクゾクしました。娘だと気づいてハッと
なりつつも面にむいてしまうサガのようなものを感じて本当にすごかったです。また、さすが坂田藤十
郎さんの演出だと思いました。女性の姿が美しく、歌舞伎のように美的な動きがオペラととてもマッチ
していて感動でした。また、やはり日本人なのであのような格好が似合うというか男性は格好よく女性
は美しく見えて日本人によるオペラの良さを感じました。
【特記事項】
字幕により歌詞を表示した。
指揮を予定していた若杉弘オペラ芸術監督が体調不良のため降板。代わって外山雄三が指揮を務めた。
6 月 6 日(土)オペラトークを実施し、64 人の入場者を得た(オペラパレス ホワイエ、入場料 1,000
円)。
登壇者:坂田藤十郎(演出)、大賀寛(日本オペラ協会総監督)
、神山彰(司会:明治大学教授)
演奏者:福井敬(源左金吾頼家)、横山惠子(夜叉王の娘かつら)、矢田信子(ピアノ)
6 月 27 日(土)終演後にバックステージツアーを実施し、20 人の参加者を得た。
オペラパレスホワイエに、歌舞伎の「修禅寺物語」をパネルで展示した。
《数値目標の達成状況》
【目標入場者数の達成状況】実績71,271人/目標67,820人(達成度105.1%)
《自己点検評価》
○ 良かった点・特色ある点
オペラの正統的伝統を守りつつ、普遍的名作から 20 世紀作品までラインアップを組むという故若杉監
督の方針の下、21 年度中の新制作公演においては、ショスタコーヴィチの 20 世紀オペラの傑作「ムツェ
ンスク郡のマクベス夫人」、豪華出演陣による「チェネレントラ」、清水脩作曲の日本オペラを坂田藤十郎
が演出した「修禅寺物語」、シーズンオープニング公演となったヴェルディの最高傑作「オテロ」、バイエ
ルン州立歌劇場との共同制作公演となった、アルバン・ベルク作曲の「ヴォツェック」の 5 演目を上演し
た。すべてにおいて、意欲的な取り組みであったが、バイエルン州立歌劇場との共同制作で上演した「ヴ
ォツェック」など、海外で好評を得たオペラを日本で楽しむ機会を提供できたことは、特に新国立劇場に
とって意義深いことであった。再演公演では、トーキョーリングの再演となる「ニーベルングの指環」の
3 作品「ワルキューレ」「ジークフリート」「神々の黄昏」をはじめ、「魔笛」「トスカ」と過去のレパート
リーの中から 5 演目を選んで上演した。再演ではあるが充実した歌手を配し、興行的にも順調に推移して
いる。
制作体制はさらなる充実をみせており、本年度においては、バイエルン州立歌劇場との共同制作も行う
ことができた。世界の一流歌劇場との連携を通じ、ノウハウの共有や人的交流が促進された。予算につい
ても厳しい財政状況の中、公演水準の維持に努めた。
芸術監督の不在にもかかわらず、予定された企画を優れた水準で実現したことは制作体制の努力の賜物
である。
《20年度評価結果への対応》
「(「軍人たち」について)これは海外で高い評価を得た演出家による舞台を上演したもので、今後はこ
ういう企画をさらに増やしていってほしい。また制作段階からのコープロダクション(共同制作)も世界
的な傾向であり、新国立劇場も積極的にこの分野に進出する必要があるだろう」という意見については、
海外で既に上演された作品の再演は「軍人たち」のように非常に有意義なものである。共同制作に関して
は、21 年 11 月にバイエルン州立歌劇場との共同制作により「ヴォツェック」を上演した。
「「椿姫」
「リゴレット」
「蝶々夫人」とスタンダードな演目の再演が続いたが、確実に集客を期待できる
演目でもあり、初心者獲得のためにも毎年レパートリー公演として再演することも検討してほしい」とい
う意見については、スタンダードな演目の重要性は認識しており、2009/2010 シーズンでは、「トスカ」、
「魔笛」、
「カルメン」等を再演する予定である。
- 88 -
2-(2)-② バレエ
《制作方針》
① バレエ・レパートリーの充実
多様化する観客のニーズに対応するレパートリーの充実に努めながら、海外有数の劇場と比肩する芸
術的水準での舞台制作を目指す。同時に、再演の要望の高いスタンダードな演目を多彩なキャストで上
演し、バレエファン層の拡大を図る。
② 国内外の振付家による創作バレエの上演
質の高い創作バレエを企画、上演して、新国立劇場オリジナル作品のレパートリー化を図る。
《実
績》
期 間
会 場
公演名
回数
日数
入場者数(入場率)
上:実績/下:目標
5/19~5/24
オペラ劇場
6/26~6/30
オペラ劇場
10/12~10/18
オペラ劇場
12/20~12/26
オペラ劇場
1/17~1/23
オペラ劇場
3/21~3/28
中劇場
5回
5日
7回
5日
7回
7日
8回
7日
6回
6日
6回
5日
6,864人(76.6%)
7,100人(79.2%)
7,686人(61.3%)
9,300人(74.1%)
8,571人(68.3%)
9,500人(75.7%)
10,667人(74.4%)
11,500人(80.2%)
7,172人(66.7%)
8,500人(79.1%)
4,005人(67.2%)
4,300人(79.1%)
6公演
39回
35日
44,965人(69.1%)
50,200人(77.7%)
5/20
オペラ劇場
4/4~4/5
中劇場
1回
1日
3回
2日
1,343人(75.1%)
1,400人(78.3%)
2,520人(91.7%)
2,400人(87.3%)
小 計
2公演
4回
3日
3,863人(85.2%)
3,800人(83.8%)
合 計
8公演
43回
38日
48,828人(70.1%)
54,000人(78.1%)
「白鳥の湖」(牧阿佐美版・全4幕)
ローラン・プティの「コッペリア」(全2幕)
「ドン・キホーテ」(全3幕)
「くるみ割り人形」(全2幕)(新制作)
「白鳥の湖」(牧阿佐美版・全4幕)
ボリス・エイフマンの「アンナ・カレーニナ」
小 計
中学生のためのバレエ「白鳥の湖」(全4幕)
こどものためのバレエ劇場「しらゆき姫」(新制作)
(1)「白鳥の湖」(牧阿佐美版・全4幕)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
5 月 19 日(火)~24 日(日)
5回
5日
6,864 人(76.6%)
7,100 人(79.2%)
○ 開演時間 19日(火)・21日(木)・22日(金)19:00開演・23日(土)・24日(日)14:00開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S席10,500円、A席8,400円、B席6,300円、C席4,200円、D席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
新国立劇場は、バレエの代名詞とも称せられる「白鳥の湖」を 2006 年に牧阿佐美版で新制作した。
端正で格式のある舞台と好評を博した本舞台の再演にあたっては、新国立劇場バレエダンサーの主役に
加え、ゲストとしてボリショイ劇場のスヴェトラーナ・ザハロワ、アンドレイ・ウヴァーロフを迎えて
- 89 -
公演の充実を図る。
○ 外部専門家等意見
公演内容は十分満足のいくものであった。オデットは厚木三杏であったが、細身ではかなげに見え、
白鳥の悲しみがよく伝わった。ジークフリードの逸見智彦は、ルックスが良く、ちゃんと高貴な王子に
見えるところがよい。もっとも感心したのはコールドの場面だ。単に一糸乱れぬというだけでなく、幻
想的とも言うべき全体の美しさに目を奪われた。新国立のダンサー個々の技術水準がいかに高いものに
なっているかがよくわかった。美術と衣装も特筆される。
ザハロワはいつものように正確で美しい踊りを見せてくれたし、ウヴァーロフも高いジャンプを含む
魅力的なプリンスを演じた。寺島・山本(中学生バレエ)
、厚木・逸見の二組とも、よく釣り合いが取れ
ていた。パ・ド・トロワはトレウバエフが特に傑出していた。ルースカヤは湯川と本島がそれぞれ緩急
のある曲に合わせて、メリハリのある踊りをした。
「白鳥の湖」再演は、外来のゲストのザハロワ、ウヴァーロフをはじめ、寺島ひろみ(中学生バレエ)、
厚木三杏、真忠久美子と取り揃え、実力あるソリストを適宜配置するなど、どの日を見るか観客に自由
に選択してもらう配役が組まれていた。私は厚木三杏と逸見智彦の日を観た。安定した構成感があり、
安心して物語の世界に入って行ける。ナショナルのバレエ団の代表的なレパートリーの在り方としては
これで良いと思う。独特のプロローグも含めて、何度も上演するうちに自ずと風格が備わり、牧版を海
外に輸出するようになるかも。厚木と逸見はぴたりと息が合っており、また厚木、逸見を支えたソリス
ト、コール・ド・バレエの出来もすばらしかった。
○ アンケート調査 (全日程実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。回答数 399 人。
回答者の 96.2%が概ね満足と答えた(384 人)。
(主な意見・感想等)
・ 物語に引き込まれ、共に笑い悲しみながら観ていました!八幡さんの道化がすごく印象に残ってい
ます。
小柄な体のどこからエネルギーがでるのかと不思議なくらい高い跳躍!道化そのものと思うほ
どの表情!!いじけたり、盛り上げたり、楽しんだり。メリハリのある踊り、目が離せなくなります!
プロローグがあることで、どんな人でもストーリーが明確になったと思います。白鳥のオブジェが並
んでいるのもストーリーの一貫性が感じられるような。白鳥のコールド!!ぴったりそろっていて美
しかった!
・ 今日来て本当に良かったです。形容しがたいザハロワの美しいオデットに、又ウヴァーロフの王子
はなんと魂のこもった表現を見せてくれたことでしょう!人間離れした美人化身をこの地につなぎ
とめようとしているようでした。
バレエプランの中にもあたたかい血の通った心を持った王子の登場
で牧版「白鳥の湖」のドラマがいつもより深く見え、最後は泣いてしまいました。2 人とともにコー
ルドも白の美しさを増していました。
・ しなやかな白鳥と強い黒鳥のギャップがとてもあり、良かったです。スヴェトラーナ・ザハロワさ
んの踊りに心から感動し、涙が出ました。こんな素敵な舞台をありがとうございます。
・ ウヴァーロフの包容力ある王子が麗しいザハロワのオデットをやさしく見つめる 1 幕 2 場、そし
て愛の勝利のラストシーンに酔いしれました。衣装もシックで民族舞踊が新鮮に見え、とりわけスペ
インの女性の踊りの音のとり方が小気味よかったです。主役の 2 人は別の演目でも見てみたいです!
【特記事項】
来シーズンバレエラインアップのパネル展示、および、
「コッペリア」出演ダンサーインタビューの動画
放映を行った。
5 月 23 日(土) 終演後にバックステージツアーを実施し、20 名の参加者を得た。
アカデミック・プランを実施し、S 席 38 名・B 席 126 名の入場者を得た。
各国大使鑑賞プログラムを実施し、インドネシア・マレーシア・カナダ・ポルトガル・ニュージーラン
ド・オマーンの大使が公演を鑑賞した。
(2) ローラン・プティの「コッペリア」(全2幕)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
7 回
5日
7,686 人(61.3%)
9,300 人(74.1%)
6月26日(金)~30日(火)
○ 開演時間 26日(金)・29日(月)・30日(火)19:00開演、27日(土)・28日(日)14:00・18:30開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S席 10,500円、A席 8,400円 B席 6,300円、C席 4,200円、D席 3,150円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
- 90 -
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
ローラン・プティの新演出振付による「コッペリア」は、1976 年に国立マルセイユ・バレエ団に誕生し
た。それまで世界中で上演されていた「コッペリア」が 19 世紀のどこか懐かしい時代精神を体現するバ
レエだとすると、プティの「コッペリア」は現代に生きる人々が主人公、時代を超越した人生と愛がテー
マとしてくっきり浮き上がる。彼独特のユーモアやフランス流の洒落た仕掛けも健在で、何度見ても感動
的なラストが待ち受けている。新国立劇場は、日本のバレエ団として 2007 年 5 月に初演し、この度は再
演となる。
○ 外部専門家等意見
小野絢子は後半少々ミスがあったように見えたが、可愛らしいスワニルダを演じていた。人形になり代
わったシーンの演じ分けも巧みだった。フランツの八幡顕光も小柄ながら瞬発力のある動きが印象的。再
演を重ね、良質なレパートリーを作っていくのは、一方において良いことであると思う。が、一方では日
本の振付家による独創的なコッペリアを創出し、世界に発信していこうという野心も、新国立劇場には期
待したい。全く新しい「○○版コッペリア」となれば当然興行的にはリスクがあるだろう(もちろん作品
の内容面でも)が、ナショナルシアターはそういう「意味のあるリスク」には寛容であってほしい。
1975 年に発表されたこのバレエは、従来のコッペリアのストーリーを画期的な演出で再構築した優れた
作品で、30 数年経った今日でも全く古さを感じさせない素晴らしい作品だ。作品の素晴らしさを遺憾なく
発揮するのは、やはり優れたダンサーの表現力に寄るものだ。優れた主役 3 人を取り巻くスワニルダの友
人や衛兵・娘達もとても楽しげに踊っているのが好印象を持たせてくれた。作品の長さも一幕・二幕休憩
を挟んで 2 時間程度で心地いい。
原作第 3 幕のディヴェルティスマンをそぎ落とし、休憩を含めて 2 時間に縮めたこの作品は、振付と製
作面でスピードと機知に富んだものになっており、本物の蝋燭やシャンペン(発泡酒)を使用し、手の一
振りでタキシードに衣裳がえし、マッチの火を人形に吹き消させて観客の意表をつく。スワニルダの本島、
寺島、小野はいずれも踊り・表情をふくめての演技、ともに十分期待に応え、タマラ・ロホに比してさほ
ど遜色があるようには思えない。フランツも全キャストともよくやった。小野・八幡が初役なのに健闘し
た。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。回答数 471 人。
回答者の 96.4%が概ね満足と答えた(454 人)。
(主な意見・感想等)
・ 26 日、27 日昼と連続して見せていただきました。プティのコッペリアは初めてだったのですがと
てもユニークで充分楽しめました。特に主役の方々の表現は素晴らしかったです。それと、コッペリ
アの友人たちは愛くるしいバレリーナたちでまたまた感動しました。いつもながら、新国のレベルの
高さに驚きです!
・ 江本さんのオペラ劇場主役デビュー!おめでとうございます!若さあふれるフランツでとても役に
あって素敵でした。テクニックだけでなく、女性のサポートもかなりうまくてびっくりしました。こ
れからも注目したいと思います。今日のマチネに続き、マイレンさん面白すぎです。何度吹き出しそ
うになったことか!!衛兵の振り付けを消化しつくして、良い意味で彼独特の役になっている気がし
ました。
・ 小野さんと八幡さんのペアは「アラジン」以来でしょうか。キュートでおてんばで魅力的なスワニ
ルダになっていました。コッペリウスといえばボニーノさんの恋がありますがイリインさんもまた一
味違ったコッペリウスを好演!!八幡さんの身も軽く、群舞もよくまとまって素敵なステージに仕上
がっていました。
「コッペリア」は新国立劇場のバレエ定番の 1 つになったと思いますので DVD も出
してほしいです!
・ タマラさんのスワニルダとてもかわいかったです!マクミラン作品から、プティの作品まで何でも
こなしてしまうところが本当にすごい! スワニルダの友人たちもスワニルダに負けないくらい舞台
の中でとても生き生きして見えました。1 幕の衛兵と娘の踊りの時にマイレンさんと一緒に出てきた
のは川村さん、見ていてとても楽しかったです!プティのコッペリアはやっぱり凄い!!!
【特記事項】
来シーズンバレエラインアップのパネル展示、及び「ドン・キホーテ」出演ダンサーインタビューの動
画放映を行った。
(3) 「ドン・キホーテ」(全3幕)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
- 91 -
目 標
10 月 12 日(月・祝)~18 日(日)
7回
7日
8,571 人(68.3%)
9,500 人(75.7%)
○ 開演時間 15日(木)・17日(土)・18日(日)14:00開演、12日(月・祝)16:00開演、13日(火)・14日(水)・
16日(金)19:00開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S席10,500円、A席8,400円、B席6,300円、C席4,200円、D席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
新国立劇場は、1999 年 3 月に当時ボリショイ劇場バレエ芸術監督だったアレクセイ・ファジェーチ
ェフ氏を招聘して「ドン・キホーテ」を初演し、再演のたびに好評を博している。この度は、新国立劇
場ダンサーに加えて、シーズン・ゲストダンサーのスヴェトラーナ・ザハロワと相手役にアンドレイ・
ウヴァーロフ(ボリショイ劇場)を招聘。また、脇を固めるソリスト陣は、新国立劇場の個性あふれる
ダンサー達が活躍する作品とする。
○ 外部専門家等意見
この作品は純粋に踊りを観せるためにのみ構成されており、事実、スパニッシュ風など実にヴァリエ
ーション豊かなバレエが堪能できる。バレエファンにとってはそれで十分なのだろう。キトリを踊った
本島美和は、抜きん出た技量の高さは感じさせないが、容姿が華やかで観客の心を捉えるものがある。
女性陣ではほかに、森の女王を踊った堀口純が印象的だった。感心したのはバジル役の福岡雄大。今シ
ーズンから契約ソリストとなり、この公演が主役デビューとのことだが、端整かつダイナミックな踊り
は器の大きさを感じさせる。
寺田亜沙子はまずまずの出来であった。川村・芳賀組は大変よかった。特に川村には余裕さえ感じら
れた。本島・福岡も良かったが、福岡はサポートが芳賀に比べると少し劣るかなと思った。ところが福
岡は自分のソロ部分、特に三幕のそれは素晴らしかった。堀口、厚木の森の女王、さいとう、高橋のキ
ューピッドも良かった。第 1、第 2 のヴァリエーションも見応えがあったし、全幕を通じて、キャラク
ターの諸役もよく持ち場をこなした。この水準を維持して欲しい。
キトリのザハロワ、バジルのウヴァーロフの完璧な演技に魅了される。共に素晴らしいスタイルとル
ックスでそのスター性で圧倒される。まわりを固める新国立劇場バレエ団のダンサー達はそれぞれにき
ちっとしたテクニックで好感が持てるが、2 人のスターの前ではまだ大人と子供の違いほどに見えてし
まうのも事実だ。新国立劇場バレエ団のお行儀の良さは、それはそれで得難い価値があると思う。
○ アンケート調査(全日程実施)
回答数 853 人(配布数 8,571 人、回収率 10.0%)
。回答者の 96.0%が概ね満足と答えた(819 人)
。
(主な意見・感想等)
・ 華やかで情熱的な新国のドン・キホーテ楽しませていただきました。ザハロワさん、ウヴァーロ
フさんの輝きはもちろんのことコールドの美しさや新国ソリスト陣の層の厚さは絶品です。他のバ
レエ団を圧倒してると思います。
・ 寺田さん、デビューおめでとうございます。笑顔がとっても素敵でステージで華やかに見えまし
た。初めてのソロとは思えないような自信に充ち溢れたステージだったとおもいます。新国バレエ
団、1 つの家族のようなまとまりがあり今後も素晴らしいステージを作り上げてくれることを期待
しています。12 日のザハロワは期待通りの GREAT なステージ!今回の寺田さんは期待を上回るス
テージでした。帰路の満足度は今回のほうが高いかも!!
・ 初めてのドン・キホーテでしたが、非常に堪能しました。キトリのしなやかさ、軽やかさ、愛ら
しさ、優美さが、体全部を使って表現されていて、目を奪われました。バジルの空間を感じさせる
程の大きな踊り、驚嘆しました。どこを見ればよいか困る程の楽しい舞台をありがとうございまし
た。
【特記事項】
平成 21 年度(第 64 回)文化庁芸術祭協賛公演
協賛 キリンホールディングス(株)
後援 朝日新聞社
ロビーにて新国立劇場バレエ団のロシア・ボリショイ公演レポート&「くるみ割り人形」宣伝展示を行
った。
(4) 「くるみ割り人形」(全2幕)(新制作)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
- 92 -
目 標
12 月 20 日(日)~26 日(土)
8回
7日
10,667 人(74.4%)
11,500 人(80.2%)
○ 開演時間 25 日(金)・26 日(土)14:00 開演、20 日(日)16:00 開演、21 日(月)・22 日(火)・24
日(木)19:00 開演、23 日(水・祝)14:00/19:00 開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S 席 12,600 円、A 席 10,500 円、B 席 7,350 円、C 席 4,200 円、D 席 3,150 円、Z 席 1,500
円 高齢者(65 歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=
20%引、当日学生割引=50%引 ※各種割引は D 席・Z 席を除いた全席が対象
○ 制作意図
新国立劇場が年末に上演してきた「くるみ割り人形」(ワイノーネン版)は、ロシアのマリインスキー
劇場との交渉により劇場開場翌年1997年12月に初演された作品である。その契約期間終了にあたり、牧
阿佐美改芸術監督の改訂振付による新国立劇場版を新制作する。
○ 外部専門家等意見
金平糖の精を演じたさいとう美帆をはじめ、小野絢子、堀口純ら、いずれも容姿が美しく、確かな技
量を感じさせる。精密さとダイナミズムを兼ね備えたトレウバエフも魅力的。トレパックや中国の踊り
も良く、全体的に観客の満足度はかなり高かったのではないか。プロローグとエピローグに現代の新宿
をもってきたが、やや意図が曖昧に感じられた。むしろ、クララの「日常」の描写が薄まり、別世界へ
の移行が効果的でなかったように思う。ツォンベックにより新たに制作された装置は、とくに雪の国や
おとぎの国がすばらしい。
新制作の「くるみ割り人形」は始まりと終りが現代で、街頭の風景がいきいきと描かれ、意表をつか
れたが、中味はクラシシズムに溢れ、原振付を尊重し、新しい振りも工夫してあって見応えがあり、オ
ラフ・ツォンベックの時代考証が行き届いた装置衣裳とともに、国立劇場にふさわしい権威のある良い
作品となっている。主役金平糖の精に抜擢された小野絢子は小柄だが、最後のコーダの部分で少しばか
り崩れたが、端正な踊りと挙止動作で場面を盛り上げた。観たもう一人、川村美樹はさらに見事な金平
糖を演じた。王子の山本隆之、芳賀望も良かった。
ひとつひとつの踊りが丁寧に作りかえられていた。特に花のワルツなどは、全く別のバレエの一場面
に見えるくらいにダンスの質が変えられていたと思う。
○ アンケート調査(全日程実施)
回答数 601 人(配布数 10,667 人、回収率 5.6%)
。回答者の 93.7%が概ね満足と答えた(563 人)
。
(主な意見・感想等)
・ 楽しみにしていました。前回までのバージョンも本当に美しく愛らしくて大好きでしたがやはり、
オリジナルというのは特別な感覚がありますね。美術・照明も美しくてあっという間にクララと一
緒に夢の世界へ入り込んでしまいました。まだまだ拝見する予定なので日々、どう変化するかそれ
もまた楽しみです。モダンなクリスマスプレゼント、ありがとうございました。
・ いつもながら、コール・ド・バレエが見事だった。息詰まるような緊張感のあるパ・ド・ドゥも
見事だった。我が国のクラシックバレエの水準が世界に誇れるレベルにあることを感じさせてくれ
た。涙をもよおす程、素晴らしい時間を過ごすことができた。
・ 出演者のバレエ技術の高さはもとより、今までのくるみ割り人形とは一味違う演出に新鮮さを感
じたり、舞台衣装の華やかさや美術にも感銘を受けました。
【特記事項】
バレエシリーズ協賛 花王(株)
、コスモ石油(株)
ロビー展示としてクリスマス展示を行った。
(5) 「白鳥の湖」(牧阿佐美版・全4幕)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
6回
6日
7,172 人(66.7%)
8,500 人(79.1%)
1月17日(日)~23日(土)
○ 開演時間 22日(金)・23日(土)14:00開演、17日(日)16:00開演、
19日(火)・20日(水)・21日(木)19:00開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S席10,500円、A席8,400円、B席6,300円、C席4,200円、D席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
新国立劇場は、バレエの代名詞とも称せられる「白鳥の湖」を 2006 年に新制作した。端正で格式の
- 93 -
ある舞台と好評を博した本舞台の再演にあたっては、新国立劇場バレエダンサーの主役に加え、ゲスト
1組を招いて公演の充実を図る。
○ 外部専門家等意見
初演時プロローグを加え、オデット姫がロートバルトによって白鳥に変えられるのが斬新に思えた記
憶があるが、今回改めて観ると 1 幕 2 場の湖畔のシーンで白鳥がはじめて登場するあの神秘性が薄れる
気がしてならなかった。分かりやすさを取るか、白鳥の神秘性を優先するかという問いが課せられてい
るように思えた。
ザハロワの体調不良で不出演となったのは、新国立劇場ではおそらく初めてのことと思う。ピンチ・
ヒッターとして初日の主役を務めたのは厚木三杏で、その踊りは正確で良かった。責任を十分に果たし
た。ウヴァーロフのサポートはよかったが、ソロでは好調とはいえないと思う。たとえば、1 幕終わり
の王子のソロは憂いを漂わせて踊るのが適当と思うが、あまりそのような風情はなかったように見えた。
その点では山本隆之のほうが良かった。20 日の小野絢子は初役であるが、体の線や姿勢も大変よくて、
健闘した。
オデットは、さいとう美帆。気品もあり正確な踊り。気のせいかオディール時のほうが表情豊かで伸
びやかに見える。王子ジークフリードはマイレン・トレウバエフ。踊り自体も良いが、ただ佇んでいて
も身体に何か表情が宿っているようなところが魅力的だ。第 3 幕のさまざまな踊りも、いつもながら高
い技術で楽しませる。ルースカヤも素敵な彩を添えており、これを採り入れたのは良い選択だと感じる。
渋く、しかし決して地味ではない上品なセンスの美術や衣装(このプロダクションの美点のひとつ)で
表象されているように、全体に大人っぽい、抑制の効いた白鳥に仕上げたいというのが演出意図だった
のかもしれない。
今回はザハロワの降板というアクシデントがあり、そのリカバリーをどうするか、新国立劇場バレエ
団の真価が問われる事態となったが、日本人バレリーナたちが分担し、カンパニーの総力を傾けてみご
とに乗り切ったのはさすがであった。特に 3 幕の民族舞踊の出来を評価しておきたい。日本の民間のバ
レエ団では、どうしても手抜きになるところだが、新国立劇場バレエ団はそこを着実にかためており、
その差はすでに歴然たるものとなってきている。
○ アンケート調査(全日程実施)
回答数 676 人(配布数 7,172 人、回収率 9.4%)
。回答者の 86.7%が概ね満足と答えた(586 人)
。
(主な意見・感想等)
・ ザハロワの白鳥をとても楽しみにしていただけに、残念でしたが実際観て少し控え目な日本人キャ
ストの白鳥の姿に心打たれました。素晴らしかったです。4 幕まであっという間でした。素晴らしい
ひとときをありがとうございました!
・ 厚木さんのオデットに感動しました。野鳥の会会員からみてもまさに白鳥の羽ばたきでした。水鳥
らしい腕の動きにうっとりです。気品や強さもあって、大好きな白鳥でした。涙がこぼれそうになり
ました。今日は厚木さんを観ることができて良かったです。白鳥の群舞もきれいでした。王子はブラ
ボー以外ありません。
・ 大好きな山本さんと小野さん。
「くるみ割り人形」に続いての競演を楽しみに伺いました。もう素晴
らしい白鳥デビューでしたね!お二人ともおっとりとした優美な点が王子と王女にぴったりです。
「白
鳥の湖」はたくさんのバージョンがあり、ラストのパターンもいろいろですが、踊りそのものはとて
もシンプルで飾りのようなものをなくし、すっきりとした感じがします。その分、ダンサーの方々の
技術も表面化しやすく難しいのでしょうね。新国立はソリスト級の方々はもちろん、コールドの皆さ
んもテクニックが本当に素晴らしいので舞台上のどこに目をやっても楽しませて下さいます。オーケ
ストラ、照明も毎度ながら感動しました。明日も拝見します。
・ 世界のさまざまなバレエ団の白鳥の湖を何十回となく見たが今夜の公演の出来はその中でも出色で
あったと思う。演出もユニークな箇所が多く、振り付けにも随所に新規性があって見ごたえがあり、
感動した。素晴らしい夜を過ごすことができて感謝したい。出演された方々の踊りは完璧に思えた。
日本にかくも見事なバレエ団ができたことに誇りを覚える。
【特記事項】
1 月 22 日(金)終演後にバックステージツアーを実施し、40 人の参加者を得た。
2010/2011 シーズンラインアップ&「アンナ・カレーニナ」の展示を行った。
(6) ボリス・エイフマンの「アンナ・カレーニナ」
(全 2 幕)(新制作)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
6回
5日
4,005 人(67.2%)
4,300 人(79.1%)
3月21日(日)~28日(日)
○ 開演時間 22日(月・祝)・27日(土)・28日(日)14:00開演、21日(日)16:00開演、
- 94 -
27日(土)18:00開演、26日(金)19:00開演
○ 会
場 中劇場
○ 入場料金 S席10,500円、A席8,400円、B席6,300円、C席4,200円、D席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はD席・Z席を除いた全席が対象
○ 制作意図
新国立劇場は、これまでも他に先駆けたバレエ公演を様々な企画で実施してきたが、この度は現代ロ
シアを代表する振付家ボリス・エイフマン(サンクトペテルブルグ国立アカデミー・バレエ劇場芸術監
督)の現代創作バレエ「アンナ・カレーニナ」を本邦初演する。
世界のバレエ界が注目しているエイフマンの舞台は、ロシア現代演劇にも刺激を与えたといわれるほ
どのインスピレーションに溢れ、
『バレエ小説』とも評されている。ダンサーの一挙手一投足が観客から
至近距離にある新国立劇場中劇場にうってつけの作品と考える。
○ 外部専門家等意見
役の踊りは緩急取り混ぜ、且つ難しくて複雑なパと体位、難しいリフトが豊富に織り込まれており、
初めて踊る日本人のキャストがこれを自分のものにするのには、大変な努力が必要であったことと想像
でき、賞賛を贈りたい。勿論ロシア人キャストは、既に何度もこれを踊っているからだろうが、素晴ら
しいものであった。コールドバレエの踊りは圧倒的にスピードの速いものが多く、パターンも楽しめる
ものであるが、新国立バレエのダンサーはそれをよくこなしたと思う。装置・衣裳・照明もよく検討さ
れて製作されており、感心した。また長さも休憩を入れて二時間以内とし、最適であったと思う。新国
立劇場バレエ団の実力が、充実した現時点において、エイフマン作品を導入・上演したことについて、
新国立劇場のマネジメントに敬意を表します。
全 2 幕で完結されるこの物語は、主役のダンスと群舞とのバランスが良く観ているものをどんどん引
き込む素晴らしい作品だった。チャイコフスキーの様々な曲を主体に、数曲だけ他のものを加えた曲の
選択も、この作品のオリジナルとして作曲されたように思えるほど、それぞれの場面にフィットし、作
品創造過程の並々ならぬ緻密な計画・計算を感じ取ることが出来た。ズミナヴェッツがボディファンデ
ーション姿になり、バレエ団女性ダンサーも同じ姿になったとき、大人と子供程の身体的な違いを見せ
つけられた感じがした。特にズミナヴェッツが大きなダンサーだったためその違和感がぬぐい去れない。
○ アンケート調査(全日程実施)
回答数 252 人(配布数 4,005 人、回収率 6.3%)
。回答者の 97.2%が概ね満足と答えた(245 人)
。
(主な意見・感想等)
・ トルストイの時代の作品が、現代風の振付とぴったり合っていて、興味深く拝見いたしました。ア
ンナ役のニーナ・ズミエヴェッツさんの強靭なバネ、力強い踊りが目に焼きつきました。アンナ、カ
レーニン、ヴロンスキー3人の複雑な人間関係が上手く描かれ、どんどん引き寄せられました。衣装
もシンプルながら美しく、センスが良いと思います。それから、群舞の迫力が申し分なく、新国立の
底力を改めて感じさせました。ダンサーたちの息づかいが2階席のうしろまで聞こえるほどなのに、
難しくハードな振付をしっかりこなしていて素晴らしい!!特にアンナの最期の場面は圧巻でした。
・ 人間の愛憎、苦しみがすごく伝わってくる、緊張感のある演目で、ドキドキしました。ダンサー達
の一つ一つの動きがとてもすごくて、感動しました。美しい装置と照明にうっとりしました。
・ 振付もすばらしかったのですが、バレエ団全体のレベルが上がったことがよくわかりました。また
見たい作品です。
・ 厚木さんの高い身体能力、演技、表現力には感心しました。アンナの移ろいゆく感情、葛藤の表現
が素晴らしかったと思います。厚木さんと山本さんのペアは、ずっと観てみたかったペアです。二人
のコンビネーションも良かったと思います。短い時間の中で、あらゆる人間の感情が凝縮されており、
とても充実した時間でした。
【特記事項】
「カルミナ・ブラーナ」の展示を行った。
《数値目標の達成状況》
【目標入場者数の達成状況】実績44,965人/目標50,200人(達成度89.6%)
《自己点検評価》
○ 良かった点・特色ある点
古典バレエから現代の演出振付家の作品までバラエティに富んだ舞台を上演した。
バレエでは、
再演が 4 演目あり舞台の充実が際立った。5 月と 1 月に上演された
「白鳥の湖」
は 2004/ 2005
- 95 -
シーズンから毎シーズン上演している定番であるが、キャストや制作スタッフの変化もつけ、新たに楽し
める「白鳥の湖」であった。1 月の「白鳥の湖」は、キャストの急遽交代というハプニングはあったが、
厚木三杏、川村真樹が代役を務め、バレエ団の層の厚さを証明できた。19 年の初演以来の再演となる「コ
ッペリア」はローラン・プティの色褪せない魅力が証明された舞台となった。「ドン・キホーテ」は、再演
を重ね、バレエ団の信頼感、チームワークの良さが見える舞台となった。また新制作は 2 演目であった。
牧芸術監督の改訂振付による「くるみ割り人形」では古典の新たな魅せ方を示す好企画であった。またロ
シアを代表する振付家ボリス・エイフマンによる「アンナ・カレーニナ」では、バレエの一つの方向性であ
る現代バレエの上演の意義・必要性をアピールできた。
また、特筆すべきは、日本人振付家初のボリショイ劇場での演目となった、牧阿佐美の「椿姫」を、新
国立劇場バレエ団が上演することができたことであろう。日本人ならではの繊細で現代感覚あふれる新国
立劇場バレエを、本場ロシアのボリショイ劇場を通じ、世界に示すことができた。
新国立劇場バレエ団は、設立 12 年目を迎え、ソリスト、コール・ド・バレエともに、引き続き一層の
充実を示した。特に「くるみ割り人形」では、ゲストダンサーを招聘せずに全 8 回バレエ団のダンサーを
キャスティングし、一定の成功を収めたのは収穫だった。
厳しい財政状況の中ではあるが、効率的な公演制作手法等マネジメントの精緻化を図ることにより予算
のスリム化を徹底した結果、制作費の節約を図ることができた。
《20年度評価結果への対応》
「「ライモンダ」は収支・入場者数が目標に達しておらず、今後一層効果的な広報・営業活動等の検討を
望む」という意見については、「ライモンダ」は、作品の完成度の高さを評価され、20 年 8 月米国政府か
らの招待でワシントンケネディセンター公演を実施した経緯のある公演であるが、公演の収支・入場者数
の目標未達成については、前回上演からの期間が短かったことや、主役が初役であったことなどの要因が
挙げられるが、それらを総合的に検討し、今後の公演計画と実施に資するように努力する。
- 96 -
2-(2)-③ 現代舞踊
《制作方針》
特徴あるスタイルを持つ振付家による新国立劇場ならではの斬新な企画で、ダンスが持つ自由な発想や
身体表現の可能性を追求して、現代舞踊の裾野を広げる。
《実
績》
期 間
会 場
公演名
ダンステアトロンNo.17「勅使川原三郎 鏡と音楽」
ダンスプラネットNo.30「金森穣 Noism09 ZONE
~陽炎 稲妻 水の月」
ダンスプラネットNo.31「平山素子 Life Casting
―型取られる生命―」
ダンスプラネットNo.32「近藤良平 トリプルビル」
合 計
回数
日数
入場者数(入場率)
上:実績/下:目標
9/25~9/27
中劇場
6/17~6/21
小劇場
11/5~11/8
小劇場
2/5~2/11
小劇場
3回
3日
5回
5日
4回
4日
5回
5日
1,261人(45.9%)
2,100人(76.4%)
1,485人(87.9%)
1,230人(76.9%)
1,125人(83.2%)
1,000人(78.1%)
1,467人(86.8%)
1,230人(76.9%)
4公演
17回
17日
5,338人(71.4%)
5,560人(76.9%)
(1) ダンステアトロンNo.17「勅使川原三郎 鏡と音楽」
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
3回
3日
1,261 人(45.9%)
2,100 人(76.4%)
9月25日(金)~27日(日)
○ 開演時間 25日(金)19:00開演、26日(土)18:00開演、27日(日)15:00開演
○ 会
場 中劇場
○ 入場料金 S席6,300円、A席5,250円、B席4,200円、C席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65 歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引は Z 席を除いた全席が対象
○ 制作意図
美の新しい形を求め続ける勅使川原三郎による 3 年ぶりの大型作品を新国立劇場中劇場で企画し、舞
台における新たな可能性を世界に向けて発信する。特に勅使川原三郎が考える音楽の視覚化を実現でき
るよう制作し、「オリジナリティーとは何か」を世界に向け提示する。
○ 外部専門家等意見
「問題意識」や「オリジナリティー」ばかりが重視され、もはや美の追求など時代遅れになったかの
ような現代芸術(ダンスに限らず)にあって、勅使川原コンテンポラリーダンスの領域においては、こ
のクラスのアーティストは他に(ほとんど)いないのだから、ぜひ続けていってほしい。氏は一貫して
自らの美意識に忠実であり続けており、そこに彼の真価があるように思われる。客席後方に空席が目立
ったのが何より残念だった。
「コンテンポラリーダンスファン」という狭い枠にとらわれず、さまざまな
階層やコミュニティに向けて広報を行ってほしい。
今回の「鏡と音楽」も、本当によく出来ている。文句のつけようがないほどに細部までしっかりと行
き届いている。ところが、なんとなく満足できない感じが残った。それは意外性に欠けたからではない
だろうか。
勝れた振付でも、そして細部は異なっていても、同じ範疇の踊りが長く続くと観客の方が疲れてくる
場合がある。かなりのコンテンポラリーの理解者でなければ分かりにくい世界かもしれない。一時間半
という長丁場の中で、あれだけの体力的にもたいへんな踊りを長時間、ほとんど崩れることなく踊られ
たダンサーの方がたには敬意を表したい。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。
回答数 68 人(配布数 1,261 人、回収率 5.4%)。回答者の 95.6%が概ね満足と答えた(65 人)。
(主な意見・感想等)
- 97 -
・ 鉛の様に重厚な場面からピアノ曲の透明な場面への転換や穏やかな音色から騒々しい音への急激な
変化は、そこにあるはずの踏み込むべき地面が無くなる様な感覚になりました。振り付けは同じでも
踊り手一人ひとりの動きに弾力があったり、鋭利だったりと個性が見えて興味深かったです。色彩豊
かな動きの数々に人の身体とはこんなにも饒舌で様々な音楽を奏でるものかと感銘を受けました。
・ 秀逸!これまでの勅使川原さんの公演の中で文句なくNO.1だと思います。ダンスを軽々と越えた
ダンス。神の啓示に似たものを感じました。音楽から生まれたような動き、美しい照明。ハッとさせ
てミニマムな舞台装置。いうまでもありませんが悩みを抱えた人間1人1人に自由な魂をもっていかに
生きるかを教えてくれるそんな私の心に染み入る他者の身体でした。もっとたくさんの大切な人に知
らせたいと思う舞台だった。
(2) ダンスプラネットNo.30「金森穣 Noism09 ZONE ~陽炎 稲妻 水の月」
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
5回
5日
1,485 人(87.9%)
1,230 人(76.9%)
6月17日(水)~21日(日)
○ 開演時間 17日(水)・18日(木)・19日(金)19:00開演、20日(土)・21日(日)15:00開演
○ 会
場 小劇場
○ 入場料金 A席5,250円、B席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65 歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引は Z 席を除いた全席が対象
○ 制作意図
高水準な舞台芸術を創作し、さらに多くの人々に現代舞踊をアピールするため、りゅーとぴあ新潟市
民芸術文化会館と共同制作を行い、りゅーとぴあ専属カンパニー Noism09 の新作上演を東京及び新潟
で行う。
○ 外部専門家等意見
一般的なコンテンポラリー・ダンスの観客が東京圏で
「1000 人いるかいないか」
などといわれるなか、
特定のスターについたこれらのファンにどうやってこのジャンル全体に関心を持ってもらい、観客のす
そ野を広げていけるかを是非考えてもらいたいところだ。公演はたいへん充実したものであった。アフ
タートークはさながら「金森ファンの集い」のようだ。金森のようにきちんと言葉で話せるアーティス
トであれば、こういう機会を設けるのはメリットが大きいと感じた。
金森穣のプログラムの中の本作品の考え方についての説明は同種のものと比べ、比較的明確である。
第一部 ACADEMIC は振付、すべてのダンサーの動き、とくに体の伸びなど素晴らしかった。第二部の
NOMADIC はいろいろ変化に富んでいて、面白いけれども、二部全体ではやや dull な感じがあると、い
わざるを得ない。第三部 PYSCHIC はまた、なかなかにすぐれていると思う。作品全体としては優れて
いるといえる。
始めの作品 ACADEMIC は幕が開いた瞬間、若く才能のある金森穣がその先にどの様な方法で振りを
創って行くのか興味を注がれたが、ついにその先は明確な方向性が見えずに終わってしまった。対して
2 作目は NOMADIC。作品はどうかというと麿赤兒率いる大駱駝艦を彷彿とさせる。しかしあの大駱駝
艦の原始的で圧倒的なエネルギーはそこにはなく、訓練によってそぎ落とされた肉体からこぼれ落ちる
フリーなエネルギーは借りてきた猫のごとく居心地の悪そうな状況が曲を変えても延々と続く。最後の
作品に至っては意味不明。
公演の企画は期待感を持たせ、宣伝等も努力がみられてよかったと思う。コンテンポラリー作家の現
在の状況を提示することは作品の出来、不出来にかかわらず今日の舞踊芸術を紹介するかけがえのない
価値あるものと信ずる。今後もどんどんやってほしい。
「ACADEMIC」は、彼がヨーロッパでしっかりと身につけてきたものの集大成だった。良い仕上がり
で非常に見ごたえがあった。
「NOMADIC」のルーズさは、前の「ACADEMIC」というテーゼに対するア
ンチテーゼとして、また金森がヨーロッパで身につけてきたものから自由になりたい苛立ちとして、私
は理解できた。「PYSCHIC」で、彼がどのような飛躍を見せるかを期待したのだが、残念ながら結果を
出すことはできなかったと思う。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。回答数 203 人。
回答者の 95.6%が概ね満足と答えた(194 人)。
(主な意見・感想等)
・ とても素晴らしかったです。久しぶりに金森さんの踊る姿を観ることができて良かったです。今
回の作品はものすごい完成度を感じました。今までの金森さんとは違う印象でした。とても楽しそ
うに踊られていて良かったと思います。
- 98 -
・
金森さんのダンスは初めて観た。バッハの無伴奏ヴァイオリン曲の鳴り響く中繰り広げられる体
の動きはストイックなのにとてもエロティックだった!美しい!身動ぎもせず、舞台に集中してし
まった。すごい緊張感。第 2 部の「Nomadic」では一転!す・素晴らしい!ファッションも選曲も
センス良い!ダンスのみならず視覚的にも音的にも見事だった!第 3 部の「Psychic」は、麗しい
バッハの音楽を背景にした格闘技のよう。それに何だかルネ・マグリットを思い出したりして。
【特記事項】
新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあとの共同制作で実施した。
毎公演終了後に金森穣・井関佐和子によるアフタートークを開催した。
マスコミ対象に公開リハーサルを実施した。
⇒4 月 10 日(金)14:00 B リハ室(公開リハ)、オケリハ室(会見)、関係者 25 名参加
新潟公演を実施した。(新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ)
⇒6 月 5 日(金)19:00 開演、6 月 6 日(土)・7 日(日)17:00 開演
総座席数 2,604 席、入場者数 1,291 人、入場率 49.6%
(3) ダンスプラネットNo.31「平山素子 Life Casting-型取られる生命-」
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
4回
4日
1,125 人(83.2%)
1,000 人(78.1%)
11月5日(木)~8日(日)
○ 開演時間 A プログラム:9 月 6 日(土)18:00 開演/7 日(日)15:00 開演/8 日(月)19:00 開演
Bプログラム:9月13日(土)18:00開演/14日(日)・15日(月・祝)15:00開演
○ 会
場 小劇場
○ 入場料金 A席5,250円、B席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65 歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引は Z 席を除いた全席が対象
○ 制作意図
第 7 回朝日舞台芸術賞、キリンダンスサポートを得た「Life Casting―型取られる生命―」を改定再
演し全国公演として展開する。そして新国立劇場の現代舞踊の質の高さをアピールし今後のネットワー
クも広げることを意図する。
○ 外部専門家等意見
第 1 部「un/sleepless」では、平山は振付のみだが、構成力があり理知的なアプローチが印象的。“感
性”に頼りきらず、理詰めで振付けていく作家は、日本のコンテンポラリーダンス界にはあまり多くない。
それだけに貴重な資質の持ち主と感じる。第 2 部「Twin Rain」は、さまざまな象徴やメタファーがうま
く効いたナルシスティックな作品だ。まず渡辺晃一の美術が秀逸。決して大掛かりな作品ではないにも
かかわらず、イメージの広がりはスケール感がある。出演ダンサーの手の石膏像を展示するのは面白い
試み。また本劇場に限ったことでもないが、最近チラシやパンフレットの活字が小さすぎることが多い
ように感じる。
「un/sleepless」では平山素子の多彩な振付要求にダンサー達がよく応えている。激しい動きや難し
いポーズが色々と織り混ざったこの振付をかなり高い精度でこなしたことは賞賛されてよい。「Twin
Rain」は振付・踊りの努力は認めるけれども、たいへん感銘を受けるというわけではなかった。装置、
美術、照明はともになかなか良い。
一つ目は切り取られ型取られた一瞬を彫造を用いて意味深くし、それに対して流れる時間をダンスす
る。二つ目はその流れの時間に変容する連鎖をダンスする。
再演ではこの 1 部と 2 部が入れ替わったが、
なぜ入れ替えたのだろうか。それによって初演が持っていたテーマがどこかへ行ってしまった。
初演では、平山素子のソロ「Twin Rain」があり、その後に群舞「un/sleepless」を持ってきた。今回
はそれを逆にして群舞「un/sleepless」から始めた。スピーディーにこなされた動きの連鎖は、ダンス
の醍醐味をたっぷりと味あわせてくれるものだった。最後の「Twin Rain」を彼女自身が踊って終わりに
することで、作品の意図がよりはっきりした。前半のダンス部分の大改訂も含めて、再演は大成功だっ
た。
○ アンケート調査(全日程実施)
回答数 31 人(配布数 1,125 人、回収率 2.8%)。回答者の 90.3%が概ね満足と答えた(28 人)。
(主な意見・感想等)
・ 待望の再演ありがとうございます。 un/sleeplessとても素晴らしい作品に生まれ変わったと思い
ます。50分がとても短いものに感じられました。前回公演時には、混沌とした感じがありましたが
今回は洗練されていて引き込まれました。
- 99 -
・ ダンスの公演を見たのが初めてでしたが衝撃でした。頭のてっぺんからつま先までがあのような
動き方ができることに驚きました。官能的で切なくて鳥肌が立ちました。
【特記事項】
平成 21 年度(第 64 回)文化庁芸術祭協賛公演
バレエシリーズ協賛 花王(株)
、コスモ石油(株)
全国公演として兵庫・松本公演を行った。
○兵庫公演
主催:兵庫県・兵庫県立芸術文化センター、協賛:キリンホールディングス(株)、後援:朝日新聞社
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール、11 月 14 日(土) 公演数 1 回
入場料:A 席 5,000 円、B 席 4,000 円、有料入場者数 384 名 総席数 800 名 有料入場率 48.0%
○松本公演
主催:まつもと市民芸術館・信濃毎日新聞社・NBS 長野放送、協賛:キリンホールディングス(株)
後援:朝日新聞社・松本市・松本市教育委員会
会場:まつもと市民芸術館 実験劇場、11 月 27 日(金)公演数 1 回
入場料:一般 3,500 円、高校生以下 2,000 円、有料入場者数 173 名 総席数 360 名 有料入場率:48.1%
(4) ダンスプラネットNo.32「近藤良平 トリプルビル」
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
5回
5日
1,467 人(86.8%)
1,230 人(76.9%)
2月5日(金)~11日(木・祝)
○ 開演時間 6日(土)・7日(日)・11日(木・祝)15:00開演、5日(金)・10日(水)19:00開演
○ 会
場 小劇場
○ 入場料金 A席5,250円、B席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はZ席を除いた全席が対象
○ 制作意図
幅広いジャンルで活躍中の近藤良平を起用し、振付家・ダンサーとして、その両方での魅力を引き出
す公演として、新国立劇場ならではのダンスへの視点も盛り込みながら、コンテンポラリー・ダンスを
より身近に観客に感じてもらう。
○ 外部専門家等意見
実力折り紙つきの個性的ダンサーを起用し、
「振付家としての近藤良平」に焦点を当てたプログラムに
なっている。彼にとっても大きなチャレンジだし、
「お手並み拝見」とばかりに待ち構える批評家や観客
の視線も意識するだろうから、ふつうならば気負いが先に立つところかもしれない。だが、全体として
は彼らしいラテンな遊び心に満ちた舞台となった。
2 作品目の「damp squib」は面白い。新国立劇場のコンテンポラリー・ダンスの中では異質とも言え
るユーモア、ばかばかしさを牛の形を借りて人間の生態を映したようなおもしろさがある。このばかば
かしさを本当の意味でばかばかしいと思わせないのは、ひとえに彼の音楽性にあると思う。コンテンポ
ラリー・ダンスは元々多種多様なものがあるはずだが、ともすると一つ二つの流行の方向に流れてしま
う傾向がある。これからも色々な方向の作品を取り上げられるよう、或いは新国立から流れを創り出す
よう期待している。
「牧神の午後への前奏曲」を踊った二人は呼吸もよく合っているし、振付も味のあるものであった。
「damp squib」も、音楽・踊り両面のアイデァが面白い。
「Lemon Tree」は、近藤自身もおどるので、
興味を持ったが、やや内容に冗長なところがある、もう少し短く纏めることが可能なら、引き締まった
のではないか。
コンドルズの舞台は、コント仕立ての合間にダンスがちらほら見えるという方法で進められることが
多い。それに対して、このトリプルビルは近藤良平の舞踊創作者としての真価を見せたところに大きな
意味があった。
○ アンケート調査(全日程実施)
回答数65人(配布数1,467人、回収率4.4%)。回答者の 96.9%が概ね満足と答えた(63人)。
(主な意見・感想等)
・ 胸がしめつけられたり、笑ったり、酔いしれたり、気持ちのいそがしい、そして夢のような時間で
した。
・ 牧神は素晴らしかった。すばらしい身体能力の人が、近藤良平のコンタクト・ダンスを踊るとこう
なるんだ、と!音楽のセッションのように相手をよく見て、服を着たり脱いだりも おもしろかった。
- 100 -
小道具から、セットまでとても凝っていたし!もう一度みたい。
・ 何度見ても、ダンスの公演はやっぱりまず単純に、からだの自由さに驚かされます。気付かされる、
という感じもします。
「意味不明です」と良平さんが言っていましたが、その不明さを考えずに見たり、
考えて見たり、どちらも何かが確かに刺激されているのがわかって、とても楽しかったです。
《数値目標の達成状況》
【目標入場者数の達成状況】実績5,338人/目標5,560人(達成度96.0%)
《自己点検評価》
○ 良かった点・特色ある点
現代舞踊では、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館との共同制作が意義深かった金森穣「ZONE ~陽炎
稲妻 水の月」を行い、公演が開催された両劇場を賑わすものとなった。また「鏡と音楽」は、美の新しい
形を求め続ける勅使川原三郎による3年ぶりに大型作品であった。前回の公演で第7回朝日舞台芸術賞を得た
「Life Casting~型取られる生命」を平山素子が改定再演、新国立劇場のみならず、兵庫・松本でも公演を
行った。「トリプルビル」は幅広いジャンルで活躍中の近藤良平を起用し、新たな新国立劇場ファンを開拓
できた。営業面でも健闘し、これらの意義あるプロダクションを下支えした。
○ 見直し又は改善を要する点
目標入場者数を達成できなかった公演があり、営業・宣伝等の工夫改善に努力して、現代舞踊の観客層の
拡充を図っていく必要がある。
《20年度評価結果への対応》
「現代舞踊では、世界の動向などを指し示すようなテーマ性のある企画を打ち出すことが望まれる」とい
う意見については、もともと、現代舞踊は、自由で豊かな身体表現を重視しながら、自らを取り巻く時代と
世界を意識した作品創りを志向する芸術であるため、どの舞台も、世界の動向を意識したテーマ性をもつと
言える。また、開場以降の各シーズン・ラインアップ作成にあたっては、振付家を単独選定するだけではな
く「舞姫と牧神達の午後」
「ダンス・エキジビション」などのダンスコンサートをシリーズ化したり、ストラ
ヴィンスキーの作品発表 100 年を記念する“ダンスとストラヴィンスキー音楽”などのテーマを示して観客
の興味を喚起しているところである。今後も、新国立劇場でしか舞台化できない現代舞踊作品の創造をめざ
す。
- 101 -
2-(2)-④ 演劇
《制作方針》
① 新作の上演
現代舞台芸術とは常に時代と向き合うという視点から、独自の新作上演を積極的に企画し、発信する。
② 海外の才能との積極的な交流
広く才能のある海外の演劇人や集団との共同作業により、現代演劇として意義のある優れた作品を企
画し、上演する。
③ 全国公演の積極的な展開
《実
績》
公演名
「夏の夜の夢」
「ヘンリー六世」三部作
第一部 百年戦争
「ヘンリー六世」三部作
第二部 敗北と混乱
「ヘンリー六世」三部作
第三部 薔薇戦争
シリーズ・同時代【海外編】
vol.2「シュート・ザ・クロウ」
シリーズ・同時代【海外編】
vol.3「タトゥー」
現代能楽集「鵺」
「象」
合 計
期 間
会 場
5/29~6/14
中劇場
10/27~11/23
中劇場
4/10~4/26
小劇場
5/15~5/31
小劇場
7/2~7/20
小劇場
3/5~3/30
小劇場
8公演
回数
日数
入場者数(入場率)
上:実績/下:目標
15回
15日
10回
10日
10回
10日
10回
10日
15回
15日
15回
15日
20回
17日
28回
23日
7,896人(55.3%)
10,500人(73.5%)
6,901人(87.5%)
5,500人(76.5%)
6,566人(83.1%)
5,500人(76.5%)
6,573人(83.1%)
5,500人(76.5%)
3,468人(70.9%)
3,600人(75.0%)
3,833人(78.0%)
3,600人(75.0%)
4,870人(74.7%)
4,900人(76.6%)
8,835人(94.4%)
7,400人(82.6%)
123回
115日
48,942人(76.9%)
46,500人(76.5%)
(1) 「夏の夜の夢」
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
5 月 29 日(金)~6 月 14 日(日)
15 回
15 日
7,896 人(55.3%)
10,500 人(73.5%)
○ 開演時間 29 日(金)・2 日(火)・4 日(木)・5 日(金)・9 日(火)・12 日(金)19:00 開演、30 日(土)・31 日(日)・
6 日(土)・7 日(日)・13 日(土)・14 日(日)13:00 開演、3 日(水)・10 日(水)・11 日(木)14:00 開演
○ 会
場 中劇場
○ 入場料金 S席6,300円、A席5,250円、B席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65 歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引は Z 席を除いた全席が対象
○ 制作意図
2007 年、英国から RSC(ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー)名誉アソシエート・ディレクター
のジョン・ケアードを演出に迎え、日本のベストキャスト陣とともに上演、大好評を博した「夏の夜の夢」
を再演し、広い観客層に届ける。
○ 外部専門家等意見
2007 年の再演であり、定評のある公演がこのように再演を果たすというのは喜ばしい。特に新国立劇
場では常にそうしたレベルの高いものがかかっているという感じを一般客にアピールするうえでも意義
深い公演である。二面の回し舞台を最後に回しきって舞台裏を見せるジョン・ケアード演出もよいし、
麻実れい(ティターニア、ヒポリタ)と村井国夫(オベロン、シーシウス公爵)
、チョウソンハ(パック)
というメイン・キャストもよい。音楽(イローナ・セカッチ)もよい。ただし、もろ手を挙げて絶賛す
- 102 -
るわけにはいかない。客席の雰囲気は、その手の叩き方から判断すると、3 割ほどは十分楽しんだが、
それ以外はそれほどでもなかったという感じがした。一番の問題点は、職人たちのドラマが初演も再演
もまったくおもしろくないところにあるだろう。芝居全体が 3 時間 15 分もかかるということにも問題
がある。全体にじっくりとやりすぎていて、テンポがないのだ。ダンサーやシンガーのユニットがもっ
と生かされればよかった点も残念に思う。
新国立劇場の中劇場は、演劇としてはほとんど大劇場的な空間を持ち、演劇上演を基準にした場合、
その適不適については議論があったとも仄聞しているが、しかし近代劇の枠を離れてより広く考えてみ
るならば、その空間性をどう生かすかは、演劇のさまざまな可能性を探るためにも興味深い課題を提出
していると思われる。その意味で、ピランデルロ「山の巨人たち」
、コルネイユ「舞台は夢」から、今回
のシェイクスピア「夏の夜の夢」再演へと続いた演劇 08/09 シーズンの中劇場公演の企画は、広い舞台
空間でこそ可能な、演劇の本質としての幻想性を強調して、鮮明な印象を残した。
ジョン・ケアード演出の舞台の印象は初演の時とほとんど変わらず、夢幻劇の浮遊性にいま一つ欠け
ている。
今回の公演では、主として若い観客たちで広い中劇場がほとんど埋まっていたことが印象的だった。
終演後、楽しいものを見たという、軽く高揚した表情で若い観客たちが帰って行く様子は、好ましい
劇場風景として記憶に残った。演劇好きの彼らに長く記憶に残る上質の舞台を提供するのも新国立劇場
に期待される仕事の一つであり、演劇の幻想性へ集中した中劇場企画は、その期待によく応えるもので
あったことが確かめられた。
再演の今回は、前回以上に軽やかな印象を与える舞台となった。一言で言えば、「一夜の夢芝居」。し
かも、それが「演劇のための演劇」ともなっているという趣向だ。一つには、演出の焦点を、アマゾン
の女王とアテネの公爵&ティターニアとオーベロンに置くのではなく、むしろ脇役だったパック(チョ
ウソンハ)とボトム(吉村直)に当てたことが大きい。彼らの存在を強く打ち出すことによって、舞台
は、
「夏の夜の夢」が本来持っていた「祝祭劇」的雰囲気を濃厚に漂わせるものになったからである。も
ちろんそれは、チョウと吉村が見事にこれに応える演技を見せてくれたことにもよる。おそらくこの 2
人がいなければ、この舞台の面白みは半減したはずだ。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。回答数 112 人。
回答者の 94.6%が概ね満足と答えた(106 人)。
(主な意見・感想等)
・ 初演を観て、ぜひもう一度観たいと思っていた作品です。再演もまた素晴らしく、終始笑顔で観
劇させて頂きました。シェイクスピア作品に触れる機会があまりなく、
「難解」というイメージがあ
りましたが、この作品はとても明るくて楽しくて、“演劇の面白さ”というものを再認識させてくれ
ました。そしてソンハさんのパックが本当に大好きです!! 最高でした。
・ 一夜の儚い夢を見た気がした。前半は妖精たちの動き、ダンスに圧倒され、あっという間に時間
が過ぎていった。3 幕 2 場からの森に迷い込んだ 4 人の若者のかけ合いが非常に小気味よかった!
・ 妖精たちの住む森は、本当に夢の世界を見ているようでした。パックは動きもセリフも面白く、
何度も笑いました。たくさんのイタズラも、勘違いも、夢と思えばまた楽し、とそんな風に思わせ
てくれた、素敵な作品でした。演者の皆様、ありがとうございました!!
【特記事項】
5 月 28 日(木)にアトレ会員のゲネプロ招待を実施した(参加者 30 名)。
6 月 3 日(水)マチネ終演後、シアタートークを実施し、約 300 名の参加者を得た(中劇場)。
登壇者=ジョン・ケアード(演出)、鵜山仁(芸術監督)
、村井国夫、麻実れい、チョウソンハ(出演者)
、
堀尾正明(司会)
全国公演として富山公演を実施した(6 月 27 日(土)14:00 開演、オーバード・ホール、総座席数 1,806
席、入場者数 912 人、入場率 50.5%)。
バックステージツアーを実施した(5 月 31 日(日)終演後 20 名参加、6 月 10 日(水)終演後 19 名参加)。
(2) 「ヘンリー六世」第一部「百年戦争」/第二部「敗北と混乱」/第三部「薔薇戦争」
○ 期間、回数、日数及び入場者数
《第一部》
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
10 月 27 日(火)~11 月 23 日(月・祝) 10 回 10 日
6,901 人(87.5%) 5,500 人(76.5%)
《第二部》
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
10 月 27 日(火)~11 月 23 日(月・祝) 10 回 10 日
6,566 人(83.1%) 5,500 人(76.5%)
- 103 -
《第三部》
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
10 月 27 日(火)~11 月 23 日(月・祝) 10 回 10 日
6,573 人(83.1%) 5,500 人(76.5%)
○ 開演時間
第一部:31 日(土)・7 日(土)・14 日(土)・21 日(土)・23 日(月・祝)11:00 開演、2 日(月)・9 日(月)
・
16 日(月)14:00 開演、27 日(火)・5 日(木)18:30 開演
第二部:3 日(火・祝)・10 日(火)
・17 日(火)14:00 開演、31 日(土)
・7 日(土)
・14 日(土)・
21 日(土)・23 日(月・祝)15:00 開演、28 日(水)
・12 日(木)18:30 開演
第三部:4 日(水)・8 日(日)・11 日(水)・18 日(水)14:00 開演、31 日(土)
・14 日(土)
・21 日
(土)
・23 日(月・祝)19:00 開演、29 日(木)・19 日(木)18:30 開演
○ 会
場 中劇場
○ 入場料金 S 席 7,350 円、A 席 5,250 円、B 席 3,150 円、Z 席 1,500 円、
三部特別割引通し券(S 席)19,500 円
高齢者(65 歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引は Z 席を除いた全席が対象
○ 制作意図
新国立劇場ならではの大型企画で、鵜山仁芸術監督による 3 シーズン目の「人はなぜ戦うのか」とい
うテーマの先陣をきる企画。鵜山は就任時に四つの指針を掲げているが、そのひとつ「大きな物語」の
再生、つまり古典の読みなおしにあたる意欲的な企画となる。
14 世紀からヨーロッパを揺るがせた英仏百年戦争、また、15 世紀イギリス史上名高い薔薇戦争の史
実をもとに、英仏を舞台にした、シェイクスピアの作品中、唯一三部に渡る壮大な歴史劇。この作品の
持つ普遍的な人類の愛憎、戦闘の様相と現代の我々の社会との接点を探りながら、さまざまな人間の生
き様に焦点を当てる魅力的な試みである。公演形態も毎日日替わりで一、二、三部を上演し、土曜日に
は三部作一挙上演も実施し、世界的にもまれな「ヘンリー六世」の三部作一挙上演を、人気、実力を兼
ね備えた強力なキャスト、スタッフの総合力により制作し、話題作となろう。
○ 外部専門家等意見
日本の現代劇の積み重ねと、いま現在の力量を見事に映し出した舞台だったといってもいいだろう。
役者では、善意のヘンリー六世を演じた浦井健治が面白い。善意・無能故、彼自身が、彼を取り巻くむ
き出しの人間模様を映し出す「鏡」となるからだ。そして、これまでの聖女ジャンヌとは一転、野卑な
ジャンヌを演じたソニン、はたまた女の葛藤をまざまざと生きてみせた中嶋朋子の王妃マーガレットが
鮮やかだ。島次郎の装置も見事だが、せっかくの本水をもっと使ってほしかった。新国立ならではの大
作。しかもこれだけの役者をそろえての上演は、そうそう望めることではないだろう。
今回の『ヘンリー六世』三部作の一挙上演は、20 年 12 月のコルネイユ『舞台は夢』につづいて、新
国立劇場中劇場公演として、強く記憶に残る舞台となった。
シェイクスピア初期三部作の一挙上演の企画を知ったときには、率直に言えば、かなりの危惧の念を
懐いた。だが本上演の演出は、複雑な歴史の推移を鮮やかに整理、構造化し、視覚化することによって、
予備知識のない日本の観客に、百年戦争から薔薇戦争への数十年のイギリス王家の抗争と興亡、さらに
それを突き動かす王侯貴族たちの情念の躍動を無理なく楽しむことを、可能にした。
演出とともに舞台美術もまた、中劇場独自の非伝統的な舞台特性をよく使いこなして、劇世界の視覚
化に大きく寄与していると思われた。特に水とその反射の活用、大きく拡がる布の表現力は、多義的で
多屈的な世界の在り方を暗示していて、印象的だった。
また 40 人近い出演者たちも、それぞれの役柄の要求に的確に応えて、劇の構造を支えていた。筋の
展開上重要な台詞が聞き取れないケースが一部にあって残念だった。
今回もまたパンフレットの充実ぶりが目立った。翻訳者を含む三人の専門家の寄稿は、それぞれ異な
った角度から平易な言葉で作品周囲の諸事情を解きほぐして、観客の理解を支えるものだったし、また
冒頭の対談は、世代の異なる二人の演出者の肩肘張らない言葉から二つの時代の違いが自ずと浮かび上
がって、興味深い読み物になっていた。特に、作品理解のための各種図解と各部毎の解説は、予備知識
を持たぬ観客のためによく配慮されていて、出色の出来ばえだった。
一言、楽しかった。肩が凝らないシェイクスピア劇がそこに在った。道具らしい道具がほとんどない
空間は我々が居る観客席をも巧みに舞台として組みこんでいた。よくある手法であるが、今までみたも
のにない一体感があふれていた。
○ アンケート調査(全日程実施)
回答数 225 人(配布数 20,040 人、回収率 1.1%)
。回答者の 88.4%が概ね満足と答えた(199 人)
。
(主な意見・感想等)
・ シェイクスピア作品の面白さを満喫。変化があり、歴史の動きがあり、チャンバラありで、思っ
- 104 -
ていた内容よりはるかに親しみやすく、且、現代性に富んでいた。
おかたい舞台かと思ったが、セリフがこじゃれていて笑えた。
第一部からすっかり引き込まれました。歴史好き、シェイクスピア好きなので、今回の公演は嬉
しいものです。出演されるのも過去、さまざまな作品に於いてすばらしい演技で魅せて下さった方々
なのでワクワクします。明日が二部、少し間があってから三部を拝見します。キャストの皆様が色々
な役を演じ分けられるのを確認するのも又楽しみです。個人的には研修所ご出身の三人のファンな
のですごーく嬉しいです。
・ 大勢の登場人物、各々がメリハリのきいたセリフで、キャラクターを明確に表現していたと思い
ます。第三部だけの観劇でしたが、人の愚かさ、そして昔から変わらない人間の世界が表現されて
いたと思います。シェイクスピアの初期の作品を観るのは初めてですが、名セリフの多さ、スピー
ディな展開、彼の作品の魅力の全てが凝縮されています。演出も工夫されていましたし、照明効果
が印象的でした。
・ 二日目です!昨日の第一部同様、スピード感にあふれ、息つく間もなくドラマにひきこまれてし
まいました。ストーリーそのものは暗い歴史を背景に、裏切りや策略の大安売りといった体で、悲
しくなってきますが「演劇」として観てみると非常に面白いです!他人をおとしいれた者がまわり
まわってちゃんとその罰を受け、次から次へ人がふり落されていく!人間とは本当に小さい生き物
だなあと感じました。
・
・
【特記事項】
平成 21 年度(第 64 回)文化庁芸術祭主催公演
シアタートーク(11 月 3 日(火・祝)
)を中劇場で実施した。500 人の入場者を得た。
登壇者:鵜山仁、浦井健治、中嶋朋子、中井美穂(司会)
制作発表を行い、超大作の貴重な上演であることを強く印象付けた。
出演者の浦井健治、中嶋朋子が第 44 回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した。
第 17 回読売演劇大賞において、最優秀作品賞、最優秀演出家賞(演出=鵜山仁)、杉村春子賞(浦井健
治)、優秀男優賞(岡本健一)、優秀女優賞(中嶋朋子)、優秀スタッフ賞(美術=島次郎、照明=服部基)
の各賞を受賞した。
演出の鵜山仁が平成 21 年度(第 60 回)芸術選奨文部科学大臣賞(演劇部門)を受賞した。
(3) シリーズ・同時代【海外編】Vol.2「シュート・ザ・クロウ」(イギリス)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
4 月 10 日(金)~26 日(日)
15 回
15 日
3,468 人(70.9%)
3,600 人(75.0%)
○ 開演時間 10 日(金)・14 日(火)・16 日(木)・17 日(金)・21 日(火)・23 日(木)・24 日(金)19:00 開演、11 日
(土)・12 日(日)・18 日(土)・19 日(日)・25 日(土)・26 日(日)13:00 開演、15 日(水)・22 日
(水)14:00 開演
○ 入場料金 A席4,200円、B席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65 歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引は Z 席を除いた全席が対象
○ 制作意図
昨年の「シリーズ・同時代」に続く第二弾【海外編】
。現在を写す最前線の日本初演の海外戯曲と日本
の若手演出家(劇作家)との新たな出会いを企画した。海外戯曲は芸術監督のもと毎月一度開かれてい
た現代戯曲研究会で取り上げたものから選考。イギリス、北アイルランドのオーウェン・マカファーテ
ィの普遍的な人間を描くユーモアのある温かい会話劇が演出の田村孝裕の作風と相通じ、魅力的なコラ
ボレーションを生み出すだろう。
○ 外部専門家等意見
シリーズ・同時代[海外編]Vol.2 としての公演だが、海外の現代演劇を日本に紹介してくれる大変
よい企画である。演劇を通して同時代を考えるという知的な発信を行い得ており、同時並行的に、新国
立劇場が主宰する現代戯曲研究会の座談会をプログラムに連載したり、番外連続リーディング上演を行
ったりと積極的な取り組みを続けていることは高く評価されるべきであろう。公演それ自体も、キャス
トも演出(田村孝裕)も美術もすばらしく、小劇場の空間にマッチした質の高い公演となった。
ただ、あえて、ないものねだり的なことを言うなら、この企画が単なる勉強・研究・紹介(あるいは
海外文化の消化吸収といった受け身の方向)にとどまらず、もう一歩踏み込んで、非常に特徴的である
がゆえにある意味で難解な北アイルランドの労働文化に根差したこの作品を、日本人が今、日本でやる
積極的な意味が見えてくるともっとよい。
まさに、せりふの洪水。4 人の男が工事中のビルの中でタイルを張りつつ、しゃべくりまくる。その
- 105 -
台詞の量たるや半端ではない。さぞや役者たちも大変だったろうと思うが、これが実に面白い。
もちろん、これは、口語、俗語をふんだんに取り入れ、こなれた日本語に仕上げた翻訳者たち(浦辺
千鶴・小田島恒志)の力にもよるが、断然、評価したいのは演出の冴え。新人、柄本の新鮮な魅力を引
き出し、平田、板尾、阿南のよさをも見事にブレンド、濃密なカクテルを創ってくれたのは、ひとえに
田村孝裕演出の手腕だろう。段差を生かした工事中のビルの雰囲気をうまく作り出した美術・衣装の伊
藤雅子にも拍手を贈りたい。
『シュート・ザ・クロウ』は、しがない現場労働者の日常を描いて、主題的にはむしろ地味であり、
また演劇的にも格別の仕掛けで観客を驚かすことはないが、それだけに<私たちの現在>と<海外の現
在>との間にある<共通性>だけではなく、<違い>が自ずと見えてきて(また Vol.1 の『昔の女』と
の比較でドイツ語圏と英語圏の<違い>も見え)たいへん興味深いものがあった。
作家を招待してのスペシャル・シアター・トークは、今回もたいへん興味深いものであった。ぜひ今
後も続けて、内容も更に踏み込んだものにして行ってほしい。抽象度の高い音楽に比べ、演劇は言葉と
身体所作によって特定の文化に強く結び付けられている芸術であるだけに、海外の舞台に対する作家の
率直な評価、意見を引き出せれば(それが当たっているかどうかは別に)たいへん意味があるだろう。
題名は原題の片仮名読み以外に他の方策はなかったものか、やや残念だった。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時に配布、出口又郵送回収。回答数 106 人。回答者の 89.0%が概ね満足と答えた(94 人)。
(主な意見・感想等)
・ 仕事に一生懸命だった自分、家族に充分に接してやれなかった自分、もうすぐ定年が近づいてき
た自分、いろんな仕事仲間がいた自分、仕事で孤絶した生活が殆ど日常だった自分、これらを各々
感じた劇でした。楽しく深く真面目に見ました。
・ まずは開演前からの出演者のタイル貼りに意表をつかれ、舞台(セット)の使い方が飽きさせず、
また出演者個々の演技が冴え、魅了されました。楽しかったです。
・ 四人のタイル職人の芝居であるが、各々個性の強い面が会話や演技から受けとることが出来て、
観る者を舞台に引き付ける。タイルを盗むことにより一儲けしようと企むのだが、その金の使い道
は、四人共結構真面目のようである。一方、四人の職人の中では、ピッツィを演じた阿南健治に最
も強烈な印象を受けた。いずれにしても、タイル職人という地味な仕事に人生のほとんどを任して
しまうというのも、収入が余り多くないということを合わせて考えると、中々つらいものであると
いわざるを得ない。人の生き方を考えさせられる作品であった。
・ 男の人のストーリーだなあ・・・と思いました。私も働いていますが、仕事に対する考え方は今回の
ストーリーとは正直全く違っています。何が良いとか悪いとかいうわけではありませんが、思考回
路が男と女でちがうのは、やはり本当なのかも、と色々なお芝居を主人と観て話をするとしみじみ
感じます。
【特記事項】
関連イベントを各種実施した。
⇒サイン入りタイルプレゼント~劇中で使用のタイルに出演者のサインを入れ抽選(毎公演 10 名)
⇒特別展示(小劇場ロビー)
①「世界のタイル博物館 ヨーロッパのタイル」展
②「未公開舞台美術模型展示」
③「公演情報展示」
⇒関連戯曲販売
⇒フライデーパブ~公演期間中の金曜日終演後、小劇場ブッフェをパブにした。
アカデミック・プランを実施し、A 席 74 名の入場者を得た。
4 月 11 日(土)にシアタートーク特別編を実施し、約 240 人の入場者を得た(小劇場)。
登壇者:オーウェン・マカファーティ(作家)、田村孝裕(演出)、浦辺千鶴、小田島恒志(翻訳)、
平川大作、鵜山仁(司会)
4 月 12 日(日)終演後にシアタートークを実施し、250 人の入場者を得た(小劇場)
。
登壇者:田村孝裕(演出)、板尾創路、柄本佑、阿南健治、平田満(出演者)
、堀尾正明(司会)
協力:ブリティッシュ・カウンシル/タイル提供:INAX
美術・衣裳の伊藤雅子が第 17 回読売演劇大賞優秀スタッフ賞を受賞した。
(4) シリーズ・同時代【海外編】Vol.3「タトゥー」(ドイツ)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
5 月 15 日(金)~31 日(日)
15 回
15 日
3,833 人(78.0%)
- 106 -
目 標
3,600 人(75.0%)
○ 開演時間 15日(金)・19日(火)・21日(木)・22日(金)・26日(火)・28日(木)・29日(金)19:00開演、
16日・23日・30日(土)・17日・24日・31日(日)13:00開演、20日・27日(水)14:00開演、
17日(木)・18日(金)・22日(火)・24日(木)・25日(金) 19:00開演
○ 会
場 小劇場
○ 入場料金 A席4,200円、B席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65 歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引は Z 席を除いた全席が対象
○ 制作意図
若手演出家 3 名を起用した「シリーズ同時代【海外編】」の最終作品としての上演。まだ日本未上演の
海外の同時代作品を日本のそれぞれ異なる方法論を持った同時代演出家が演出するという刺激的なコラ
ボレーション。
「タトゥー」ではドイツの最前線で活躍するデーア・ローアーと日本の注目株岡田利規と
いう、互いに言葉や文体に独特の感覚を持つ二人を起用。言語や文化を超えてどのようなものを観客に
提示して来るのか、日本人の俳優が岡田とともにこの難解ともいえる作品にどのような答えを出すのか、
という期待を含めた新国立劇場らしい実験的な企画である。
○ 外部専門家等意見
シリーズ・同時代【海外編】の締めくくりとして、ベルリン在住の現代美術作家・塩田千春の装置(イ
ンスタレーションのようで、それ自体すばらしかった)が、若い演出家の現代的感性とうまく拮抗した
公演だった。ドイツで注目されている新鋭劇作家の出世作を、同時代的話題性というよりは、演劇的手
法の実験として展開した公演と見た。試みとしては志が高く、おもしろいものであったが、果たして一
般客にどう受け入れられたかという点では疑問符がつく。演出家岡田利規の手法は、公演の成果として
は問題点が残る。新国立劇場が小劇場出身の若手演出家の起用をする際には今後十分慎重になるべきで
はないかと考えさせられた。
この手の戯曲を効果的に演出するには、もっと大胆な抽象力とテンポの速い演出が必要だが、残念な
がら、それがこの舞台には欠けていた。わずか1時間半の上演時間にもかかわらず、倍以上の上演時間
に感じられてしまうのは、そのためでもある。
ただし、崩壊した家族を象徴する塩田千春のインスタレーションは面白い。舞台での演技とは独立し
た世界を構成し、それのみでこの作品世界の核心にある家族の崩壊と荒廃した世界を十分に表現してい
る。
「昔の女」
「シュート・ザ・クロウ」に続く同時代演劇・海外編として、とうぜんフランス戯曲の登場
が予期されたところにドイツ戯曲の再登場は意外だったが、結果的には、やや保守的な観のあった「昔
の女」に対しドイツ同時代演劇の実験的な側面を提示する「タトゥー」の登場は、現代戯曲研究会の協
力の下に行われたレパートリー選択の妥当さを示すものとなった。
舞台について言えば、言語の意味と所作の亀裂表現が、年長の演技者と若手の演技者との間で、差が
ある印象があった。また戯曲が意図した(らしい)ドイツ社会の暗部の無残さは日本の舞台では穏やか
な日常風景の中へ溶け込んだが、その是非は翻訳劇上演の基本問題だろう。結末に残った物足りなさも、
そこに関連するのかも知れない。
スペシャル・シアタートークは議論が戯曲と演出の核心に近づき、特に著者の発言が率直で、前 2 回
に比べても更に興味深かった。こうした企画の続行を是非期待したい。
今回完結のパンフレットの座談会は、70 年代以降の西欧演劇の大きな動向を分かりやすく、しかし正
確に示して、特に小劇場の観客層にはたいへん有益なものとなった。
○ アンケート調査
入場時に配布、出口又郵送回収。回答数 85 人。回答者の 82. 4%が概ね満足と答えた(70 人)。
(主な意見・感想等)
・ 同時代シリーズ(日本3、海外3)のなかで最高に面白かったです。原作・美術・演出の力が見事
に融合していました。シリーズの中で初めて「また観たい」と思いましたし、「だだっ広い…」と
いう空間のムダを感じずにすみました。「エンジョイ」ではじめて岡田作品を観た時は宇宙人が話
しているようにおもえましたが、今は「岡田語ファン」です。
・ 今回のシリーズ3作品拝見しました。すべてが大変刺激的なものでした。岡田さんの演出は「友達」
に続き2回目です。すごく独特の空間で展開し、無機質でロボット的で感情が(一見)ない人間の会
話で、その中から個々の思いをくみ取るのが難しかったです。現代だからこその演出という感じが
しました。時たまフッと激した台詞があると空気の流れが変化したりするのが面白かったです。一
般的な台詞からは離れていくと却って言葉が音声として表現されてくると思いました。
【特記事項】
5/17(日)にシアタートーク特別編を実施し、約 210 人の入場者を得た(小劇場)
。
- 107 -
登壇者:デーア・ローアー(作)、岡田利規(演出)、三輪玲子(翻訳)
5/20(水)終演後にシアタートークを実施し、250 人の入場者を得た(小劇場)。
登壇者:岡田利規(演出)、吹越満、柴本幸、鈴木浩介、内田慈、広岡由里子(出演)
公演期間中、舞台美術を担当する現代美術作家塩田千春氏の作品をホワイエに展示した。
協力:ドイツ文化センター
(5) 現代能楽集「鵺」
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
7 月 2 日(木)~20 日(月・祝)
20 回
17 日
4,870 人(74.7%)
4,900 人(76.6%)
○ 開演時間 4 日(土)・5 日(日)・11 日(土)・12 日(日)・18 日(土)~20 日(月・祝)13:00 開演、
7 日(火)・9 日(木)・15 日(水)14:00 開演、2 日(木)・3 日(金)・10 日(金)・17 日(金)19:00 開演、
8 日(水)・14 日(火)・16 日(木) 14:00・19:00 開演
○ 会
場 小劇場
○ 入場料金 A 席 5,250 円、B 席 3,150 円、Z 席 1,500 円
高齢者(65 歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引はZ席を除いた全席が対象
○ 制作意図
鵜山芸術監督の第 2 シーズンを締めくくる作品として、現在もっとも注目を集める作家のひとりである
坂手洋二に新作を依頼した。
今シーズンのテーマの一つでもある「劇場の中の劇場」を、能という形式を借りて描き、この大きなテ
ーマを、観客にさらに深く提示する作品となった。
○ 外部専門家等意見
企画としては理想的で贅沢だ。4 つの別々の生き物が一体となっているという鵺のありようを、坂東三
津五郎、田中裕子、村上淳、たかお鷹の 4 人という贅沢な配役で示すというキャスティングも完璧だった。
とくに田中裕子と三津五郎の演技は見事である。美術(堀尾幸男)ほかスタッフワークもすばらしい。プ
ログラムも内容が充実している。戯曲そのものも、鵺を退治した源頼政を中心に能の「鵺」を基盤とした
第 1 部、現代日本を舞台とする第 2 部、現代アジアを舞台とした第 3 部と野心的な展開となっており、
そのために坂手はベトナムに取材に行ったとも聞く。ただ、客席にやや空席が目立ったのが気になった。
坂手の戯曲に力が入っていることは確かだが、あまりにあれこれ積み込みすぎて戯曲の面白さとして熟し
ていないのではないだろうか。
刺激的な新作に出会った。照明の技巧を中心とする舞台形象は他の追随を許さない。現代演劇界のトッ
プに立つ坂手洋二と鵜山仁の競い合いは充分楽しむことが出来た。
今回の舞台を戯曲の面から見れば、<鵺>という主題を中心に三つの時代と状況から世界を立体的かつ
複合的に捉えようとする際に、総じて場面場面の勢いとムードに頼ることに自足していて、対象の真実に
迫ろうとする真摯さに欠けると思われた。その上で言えば、新国立劇場小劇場から今までにない新しい空
間を生み出した美術と、その空間の下で三つの分立する部それぞれに、無理とこだわりのないそれぞれの
演劇空間を成立させて行った演出の自在さとによって、全体としてそれなりに楽しめる舞台にはなってい
た。だがその分、<能>の伝統を引受け、かつそれに対峙するはずの<現代能>という<名乗り>の意味
は、不分明のままになった。
戯曲の不十分さを補って舞台を成立させるに力のあったのは、美術、演出と並んで、主演の三俳優の好
演だった。特に三つの部を通じて<女>の演技は、しばしば無論理に流れる戯曲の台詞を身体の内発的で
しなやかな動きで受け止め、更にそれを演劇的なうねりへと転換して行って、印象的なものがあった。
それに対し第一部の<家臣>の台詞は、その内容がほとんど聞き取れなかった。既に戯曲を読んでいる
関係者には理解可能と思えても、初めて聞く観客にはまったく理解不能な場合があることに留意してほし
い。また同じ俳優による第三部の<青年>の演技にも内面が欠如していて、他の三人の演技者との間に明
らかな落差が感じられた。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。
回答数 92 人(配布数 4,870 人、回収率 1.9%)。回答者の 74.7%が概ね満足と答えた(68 人)。
(主な意見・感想等)
・ すごい。第一幕の鬼気迫る演技にふるえました。歌舞伎役者のすごさをまざまざと見せつけられ
ました。たかおさんも迫力がありました。現代にもどって再会の場面のところも面白かったし、第
三幕の海外の話も面白かった。色々な装置や仕掛けや照明を使って、お客さんを楽しませるアイデ
ィアにあふれていて良かった。
- 108 -
・ 「鵺」とは人間の悪の象徴、業の深さといったものだと思います。鵜山監督の素晴らしい演出で、
世阿弥の能をベースにしながら、新たな世界を切り拓いてくれました。水、水辺がテーマの演劇は
多い。しかし全く水を使わずに、水―今回は川辺―の感じを豊かに表現している美術、照明に感心
致しました。また、装置(小舟、台)の使い方もおもしろいと思いました。鵺に込められた(多義
的な)人間の心の奥底にある情念の妖しさと、水面のうごめくような表情が芝居の流れと相まって
効果を上げていたのではないでしょうか。4 人の役者さんのセリフ、身体表現ともにシンプルで強
い感じがしました(特に田中裕子さん、三津五郎さん)。たかお鷹さんの存在感も素晴らしかったで
す。また音楽は重くならずにシャレた雰囲気を出していて、大人の楽しめるお芝居であったと思い
ます。
【特記事項】
7 月 15 日(水)終演後にシアタートークを実施し、約 300 人の入場者を得た(小劇場)。
登壇者:鵜山仁(演出)
、坂東三津五郎、田中裕子、たかお鷹、村上淳(出演)
NHK の収録が行われた。
⇒7 月 10 日(金)カメラ・リハーサル、7 月 11 日(土)本番収録
(6) 「象」
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
3 月 5 日(金)~30 日(火)
28 回
23 日
8,835 人(94.4%)
7,400 人(82.6%)
○ 開演時間 6日(土)・7日(日)・13日(土)・14日(日)・20日(土)・21日(日)・22日(月・祝)・27日(土)・2
8日(日)13:00開演、9日(火)・16日(火)・23日(火)・30日(火)14:00開演、5日(金)・8日(月)・
9日(火)・11日(木)・12日(金)・15日(月)・16日(火)・18日(木)・19日(金)・23日(火)・25日
(木)・26日(金)・29日(月)・30日(火)19:00開演
○ 会
場 小劇場
○ 入場料金 A席6,300円、B席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65 歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引は Z 席を除いた全席が対象
○ 制作意図
鵜山芸術監督が今シーズンに掲げた「人はなぜ戦うのか」というシリーズテーマに沿った「戦後」と
いうものが風化しようとしていた時代に書かれ、今尚 40 年以上上演され続けている別役実の初期の代
表作「象」
。この不条理劇をいかに今現在上演するに値するものに仕上げるかという点が課題のひとつで
あり、モチーフとなっている原爆投下や被爆者という視点だけでは無く、現代にも広く通ずる、歴史の
風化、差別と被差別、生と死、という問題をも含む作品として提示する為、新国立劇場にて三作品目と
なる深津篤史に演出を依頼し、現代に相応しい、新しい視点から捉えた「象」の上演を目指す。
○ 外部専門家等意見
小劇場の舞台を大量の古着で埋め尽くし、原爆被災直後の遺体の山を想起させた演出(深津篤史)が
効果的。また、広島の海岸で穴から出たり入ったりする小蟹のイメージから、登場人物が舞台の奈落か
らセリに乗って古着の中から現れたり消えたりするという発想も、古着=遺体の中から現れた亡霊を思
わせて秀逸だった。原爆によるケロイドを見世物にした主人公(劇中では「病人」)を演じる大杉漣の演
技が、ユーモアとグロテスクとを絶妙に混ぜ合わせて圧倒的であった。端正で、醒めた知性を思わせる
男(甥)役の稲垣吾郎、温かさを感じさせる妻役の神野三鈴、看護婦役の奥菜恵らキャスト全般の演技
も優れていた。
別役実の「象」は、1975 年にオークランド(ニュージーランド)で英語上演され、1991 年にはロン
ドンで英語上演されるなど、海外の注目も高い。世界で唯一の被爆国である日本が世界に向けて発信し
ていく義務は大きく、その意味でも、今回、新国立劇場で優れた「象」の公演がなされたことは特筆に
値する。実在する「原爆一号」こと、吉川清がモデルであり、作品それ自体はかなり不条理で大胆な描
き方になっているものの、被爆の記憶を薄れさせないためにも、このような優れた上演を続けていく必
要がある。1962 年の初演以来、幾度となく再演されてきたものの、主要劇団での公演は 2005 年の燐光
群以来であり、新国立劇場でこの作品を取り上げた意義は大きい。
『象』は時代を越えて成立するまぎれもない傑作であることを感じた。空間を仕切るものがなく一面、
衣服をちりばめた舞台を、およそ日常的な動きを排したテンポで動く人物は、能の所作を思わせ、この
行動線はきっちりと成立して全体の劇空間を支配していた。
若い演出者の手による今回の舞台は、イメージの中の、もっとむきだしに対立し合う『象』とはやや
違うものだった。
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普通にやれば長くても2時間以内の舞台だろう。間、アドリブが多すぎる。戦後焼け野原を思わせる
池田ともゆきの美術は面白いが、肝心の演技・演出がしまりのないものであれば、その効果も半減する
ほかはない。稲垣の登用は、観客動員という点では効果あったといえるが、その動員が次につながるも
のになるためにはやはり舞台のでき、質が問題となる。動員と質的成果のバランスをどう取るかは難し
いことだが、そこでの工夫努力が崩れたらそれこそ新国立のアイデンティティーがなくなるだろう。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。
回答数 926 人(配布数 8,835 人、回収率 10.5%)
。回答者の 94.5%が概ね満足と答えた(875 人)
。
(主な意見・感想等)
・ 病院に勤めている関係で、病人や甥の様な、たくさんの人を見ます。両方の生き方を間近で見てい
るので、胸にせまるものがあり、同時に自身への問いかけも、改めて考えさせられました。結果を真
摯に受け止めようと思います。
・ 怖い話かと思ったけど笑える場面もあり、楽しかった。難しい内容でしたが、俳優さん達がすばら
しかった。
・ 原爆という重いテーマの脚本でしたが、ある意味で非常に軽やかに演出されているなという印象を
受けました。ただ、心に響くもの自体は重く、観させていただいて本当によかったと思っております。
キャストのみなさんも懸命に演じておられるのがすばらしかったです。
・ 舞台を観る前に原作を読んでみたのですが、難解でどうなるのかと思いましたが、理屈でなく「象」
の世界観を感じることができた気がしました。役者さん達がすばらしかったです。稲垣さんの独特な
声がすごく良かったです。とても重く、救いようのない話なのに、見終わって嫌な気分にならなかっ
たのは演出や役者さん達の力なのでしょうか。もう 1 回観たくなりました。
【特記事項】
3 月 6 日(土)、シアタートーク「日本の不条理劇」を小劇場で実施し、170 人の入場者を得た。
登壇者:別役実、大笹吉雄、深津篤史、鵜山仁
《数値目標の達成状況》
【目標入場者数の達成状況】実績48,942人/目標46,500人(達成度105.3%)
《自己点検評価》
○ 良かった点・特色ある点
2008/2009 シーズン鵜山芸術監督の 21 年度に入っての1本目は、20 年度から引き続きの企画である
“シ
リーズ同時代”海外編の 2 作目 3 作目「シュート・ザ・クロウ」、
「タトゥー」で幕を開けた。同時代の最
前線の海外戯曲を日本の若手が演出するという意欲的な作品群であった。次に、19 年に好評を得た「夏の
夜の夢」を再演した。続いて、坂手洋二の新作戯曲「現代能楽集 鵺」を芸術監督の演出にて上演した。
2009/2010 シーズンに入ってはテーマ「人はなぜ戦うのか」のもと、国立の劇場ならではの大型企画、
シェイクスピアの「ヘンリー六世(三部作)」を一挙に上演し、大変な好評を博し、数多くの評価を得た。
21 年度最後の作品は別役実の初期の代表作で 40 年以上上演され続けている「象」を深津篤史の演出によ
り上演した。
いずれも、意欲的な作品を上演した。同時代の演劇の状況および、古典の再評価による現代性の提示と
いう点で、昨年に引き続き、優れた構成であった。
「ヘンリー六世」や「象」の動員が好調な一方、観客動
員に課題を残す公演もあったが、新国立劇場演劇ならではの意義のある公演を行うことができた。なお、
21 年度も厳しい財政状況の中、舞台水準を維持しながら、予算のスリム化を図り、制作費の節約を行った。
《20 年度評価結果への対応》
「三島由紀夫「近代能楽集」の成果には疑問が残った。演出家同士の意識のすり合わせや、演出家と俳
優とのコミュニケーションへの配慮が必要だったのではないか」という意見については、二人の演出家が
同じ舞台を使って別の作品を競作する場合、演出家同士の意識のすり合わせは重要であり、そのためには
相当の時間とコミュニケーションを必要とする。今後もこの様な企画を立ち上げる場合は、作品、演出家、
美術家を含め、意思疎通により一層の配慮をして行きたい。
「若手劇作家と中堅演出家の組み合わせによる「シリーズ・同時代」の上演は、企画が先行している感
が否めない。創作の現場と劇場側との意思疎通を活発に行い、芸術監督が力を発揮しやすい方向で豊かな
創造環境を作り出せるよう、劇場側の制作体制を見直す必要があるのではないか」という意見については、
「シリーズ・同時代」は、鵜山芸術監督発案による、才能ある若手劇作家に対し作品発表の機会を提供す
るという側面も持った企画であり、ベテラン演出家と組んだことにより、作品のクオリティもより高いも
のとなり、その結果、蓬莱竜太氏が「まほろば」により岸田戯曲賞を受賞した事は喜ばしい成果であった。
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また、このシリーズが次年度の日本未発表の海外戯曲による「シリーズ・同時代 海外編」へとつながり、
現代戯曲研究会の研究成果の上演につながった。
劇場の制作体制に関しては、企画責任者である芸術監督とプランナー、現場スタッフ、そして制作担当
者との間にさらに綿密なコミュニケーションを取る事が出来るよう配慮し、今後も、芸術監督の意思が劇
場全体のスタッフに浸透し、さらに風通しの良い創造環境を構築すべく努力する。
「若い研究者、批評家を集め、ブレーンとしてのドラマトゥルグ(学芸部)を設置することを要望する」
という意見については、2010/2011 シーズンから新任予定の宮田慶子芸術監督の元に、新たな演劇関係者
グループによる「文芸委員会」を立ち上げ、宮田監督の企画立案に対してのサポート体制を制作部ととも
に固めていく方向で現在調整中である。
- 111 -
2-(2)-⑤ その他
《制作方針》
開場 10 周年を機に「ニューイヤー」の催しとして始められた。新国立劇場合唱団やバレエ団の完成度
の高い演奏・舞踊に加え、国内外一流オペラ歌手によるアリア歌唱が一挙に楽しめる贅沢な舞台を提供す
ることで、新年の華やかな幕開けを飾ると同時に、本年も観客に、劇場を楽しみ、公演への期待感を抱い
ていただくことを意図とする。
なお今年度は芸術祭祝典を文化庁より受託し、祝祭的な雰囲気にふさわしい作品を制作し、若手オペラ
歌手と招聘歌手で実施する。
《実
績》
期 間
会 場
公演名
「メリーメリー・ウィドウ~ちょっと陽気な未亡人」
「新国立劇場オペラ・バレエ
ニューイヤー オペラパレスガラ」
合 計
回数
日数
入場者数(入場率)
上:実績/下:目標
10/1
オペラ劇場
1/5~1/6
オペラ劇場
1回
1日
2回
2日
1,231人(68.7%)
1,160人(64.7%)
2,128人(59.4%)
2,790人(77.8%)
2公演
3回
3日
3,359人(62.5%)
2,790人(77.8%)
(1) 「メリーメリー・ウィドウ」~ちょっと陽気な未亡人~(全3幕・原語上演)(新制作)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
1回
1日
1,231 人(68.7%)
1,160 人(64.7%)
10月1日(木)
※年度計画外の公演
○ 開演時間 19:00開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S席5,000円、A席3,000円、B席2,000円、Z席1,500円
○ 制作意図
オペラ劇場での<芸術祭祝典>に相応しい、観客に楽しんでもらえる演目であること、しかも経費を
かけずに華やかな舞台を作ることをモットーに、オペレッタの名作「メリーウィドウ」と「こうもり」
を盛り込んだ「メリーメリー・ウィドウ」と題した祝祭用の筋立てとした。また、劇間にはオーケスト
ラの名曲演奏も挟み、飽きることない公演内容を制作した。
○ 外部専門家等意見
新国立劇場オペラ研修所から巣立った若い歌手たちの成長ぶりがこの機会に聞くことができるのは一
つの収穫である。
普段とは違うオペラ公演という意味では成功だった。そのことは多くの拍手によって証明されている。
価格設定も普段から比べればとても手頃で、それによって新しい観客の掘り起こしに役立った。
レハールの「メリー・ウィドウ」そのものは中劇場向きの規模の作品であると考えられるので、こう
した「祝祭版」にアレンジした形でのオペラ劇場での上演は、うまい工夫だった。
歌手たちも、強烈な個性を発揮するまでには至らなかったが、みな好感をもてる歌いぶり、演技ぶり
だった。ピットを使わずにオーケストラを後ろに下げ、歌手と客席の距離を近づけるのはミュージカル
などでも用いられているが、こうした上演には合っている。ただ、天井が高く、後方も「こうもり」の
装置を転用したために広く、オーケストラの音が上と後ろへ逃げてしまっていたのは改善の必要がある。
○ アンケート調査
入場時にステージノートに挟み込み配布、出口又は郵送回収。
回答数 43 人(配布数 1,231 人、回収率 3.5%)。回答者の 81.4%が概ね満足と答えた(35 人)。
(主な意見・感想等)
・ 楽しさ盛り上がる構成。シーズン開幕にふさわしい。1回公演はもったいない。
・ 研修所の成果が良く出ていた。
・ オペラやオペレッタの美味しいところと、クラシック名曲を素材とした上質のカクテル。年に1度
位行ってもよいのではないか。客層拡大につながる効果がある。
・ ホールオペラとしてももう少し舞台に華やかさが欲しい。
- 112 -
・
歌が聞こえにくかった。
【特記事項】
平成 21 年度(第 64 回)文化庁芸術祭祝典/国際音楽の日記念
主催:文化庁芸術祭執行委員会/新国立劇場
原語(ドイツ語・イタリア語)上演につき、字幕付で実施した。
(2) 「新国立劇場オペラ・バレエ ニューイヤー オペラパレス ガラ」
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
2回
2日
2,128 人(59.4%)
2,790 人(77.8%)
1月5日(月)~6日(火)
○ 開演時間 18:30開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 S席12,600円、A席10,500円、B席7,350円、C席4,200円、D席3,150円、Z席1,500円
高齢者(65 歳以上)・学生・生徒=5%引、ジュニア(中学生以下)=20%引、障害者=20%引、
当日学生割引=50%引 ※各種割引は D 席・Z 席を除いた全席が対象
○ 制作意図
開場 10 周年を機に「ニューイヤー」の催しとして始められた。新国立劇場合唱団やバレエ団の完成
度の高い演奏・舞踊に加え、国内外一流オペラ歌手によるアリア歌唱が一挙に楽しめる贅沢な舞台を提
供することで、新年の華やかな幕開けを飾ると同時に、本年も観客に、劇場を楽しみ、公演への期待感
を抱いていただくことを意図とする。
○ 外部専門家等意見
本年度の「ニューイヤーオペラパレスガラ」は前回から比べると、内容的にもまた構成面からもずい
ぶん考えられた公演であった。第 1 部の「グラン・パ・ド・フィアンセ」の 6 人の見事なアンサンブル
や「こうもり」からの“グラン・カフェ”もユーモアあふれるパフォーマンスは、新国立劇場バレエ団
の成長の証しでもあり、大いに楽しめるものであった。今宵の「ニューイヤーオペラパレスガラ」は大
いに楽しめた一夜であった。
バレエは、二演目すべてを以って新国立バレエ団の水準の高さを証明したと思う。オペラは、ノルマ・
ファンティーニ、ゾラン・トドロヴィッチの素晴らしい声量と歌唱力、見事な幸田浩子のコロラトゥー
ラ・ソプラノ、堀内康雄のバリトンと合唱団の声を聴かせてもらった。新年を祝うにふさわしい華やか
なイベントとなった。
新年をオペラ劇場で、というガラ公演も三回目となり、すっかり定着したと言えそうだ。バレエとオ
ペラの共演も、平素どちらかのジャンルを中心に見ている観客にとっては、新しいジャンルに触れる機
会ではあり、これがきっかけでさらに広いジャンルに関心を持つこともあるだろう。新国立劇場として、
こうした公演を継続して行っていくことは意義深いことである。特設サイトで公演内容の告知に力を入
れていることも評価したい。チケットの値段も適切であると思われる。既に新国立劇場に通い、アトレ
誌を定期購読する、あるいは新国立劇場のサイトを自主的にチェックしている観客への告知は充分だろ
う。オペラとバレエが同時に見られるという一種のお得感を強調するのであれば、舞台芸術に関心はあ
るもののまだ新国立劇場に来たことがない層、さらにはその存在をまだよくしらない一般層をへのプロ
モーションも行うと、新たな観客層の掘り起こしにつながるのではないだろうか。ニューイヤーガラは、
このような人たちにオペラ、バレエの魅力、新国立劇場の存在をアピールするいい機会だと思う。
バレエが第一部、オペラが第二部と分かれているが、完全に二分するのではなく、それぞれのジャン
ルが混在するようなパートがあってもいいし、また双方が共演できる作品を上演しても面白いのではな
いだろうか。
ニューイヤーのガラには、カンパニーの顔を紹介するという要素も欲しい。
新年にガラ公演を行うこと自体については大賛成である。ただ、昨年も書いたことだが、第 1 部「バ
レエ」、第 2 部「オペラ」という構成は、木に竹を接いだ印象がぬぐえない。もちろん、バレエ・ファン
にオペラのさわりを、またオペラ・ファンにもバレエに親しむ機会をもたらすという意味はあるだろう
が、それ以上の相乗効果を生み出すことがないのが残念である。前後半で分断するのではなく、バレエ
で「こうもり」を取り上げるのならばオペラでもその前後に「こうもり」の曲を入れるなど工夫の余地
は大いにあるのではなかろうか。新国立劇場ならではの独自色を打ち出すことを望みたい。歌手につい
てはノルマ・ファンティーニ、堀内康雄、幸田浩子、ゾラン・トドロヴィッチといった新国立劇場にな
じみ深い人たちがそれぞれの持ち味を発揮していた。
○ アンケート調査
入場時に配布、出口又は郵送回収。回答数 82 人。
- 113 -
回答者の 89.0%が概ね満足と答えた(73 人)。
(主な意見・感想等)
・ 毎年見せていただいてますが、今年が一番良かったです。歌手の方は皆様、得意の歌を聴かせて下
さいましたし、演出が少しあったことも華やかさを加えて良かったです。合唱団がステージにでて素
晴らしい歌を聴かせて下さり、新年の華やかな雰囲気で良かったです。
・ 舞台芸術の福袋!普段はオペラ中心でバレエもオペラの中で見る程度であるが、改めて見ると声な
しで身体表現だけで観客の心をかきたてるのはすごいことだ!オペラは 4 人がみな個性を発揮してい
て聴きごたえたっぷり。更にあのアンコールは人の心をわしづかみにする反則です。
【特記事項】
本公演はイタリア語上演につき、字幕により歌詞の日本語訳を表示した。
《数値目標の達成状況》
【目標入場者数の達成状況】実績3,359人/目標2,790人(達成度120.4%)
《自己点検評価》
○ 良かった点・特色ある点
21 年度は、昨年度に引き続きオペラとバレエのジャンル横断的な公演を実施した。
新春の企画として昨年に引き続き行われた「ニューイヤー オペラパレス ガラ公演」は、第 1 部のバレ
エではJ.カーターの「グラン・パ・ド・フィアンセ」及び「こうもり」からグラン・カフェを、第 2 部
ではオペラの名曲を集め、ガラコンサート形式で昨年の経験を生かしつつ行われた。
今年度は、文化庁より芸術祭祝典公演を受託し、
「メリーメリー・ウィドウ~ちょっと陽気な未亡人」を
上演した。
その他、芸術祭関連では、自主公演のうち、文化庁芸術祭主催公演として演劇「ヘンリー六世」、オペラ
「ヴォツェック」を実施した。また芸術祭協賛公演として、オペラ「オテロ」
・
「魔笛」
、バレエ「ドン・キ
ホーテ」、現代舞踊「平山素子 Life Casting –型取られる生命-」の計 4 演目を上演し、いずれも観客の
評判は高く、上演の成果が表れる舞台となった。
- 114 -
2-(2)-⑥ 青少年等を対象とした現代舞台芸術の公演
《制作方針》
青少年を対象とした鑑賞教室を実施し、新たな観客層の育成を図るとともに、現代舞台芸術の普及と理解を
図る。
《実
績》
期 間
会 場
公演名
高校生のためのオペラ鑑賞教室「トスカ」
(全3幕・イタリア語上演)
こどものためのオペラ劇場「ジークフリートの冒険
指環をとりもどせ!」
(オペラ「ニーベルングの指環」
による・全1幕・日本語上演)
中学生のためのバレエ「白鳥の湖」(全4幕)
こどものためのバレエ劇場「しらゆき姫」(新制作)
回数
日数
入場者数(入場率)
上:実績/下:目標
7/10~7/16
オペラ劇場
6回
6日
10,484人(98.6%)
9,900人(93.2%)
7/24~7/26
中劇場
6回
3日
4,498人(84.6%)
4,600人(84.9%)
5/20
オペラ劇場
4/4~4/5
中劇場
1回
1日
3回
2日
1,343人(75.1%)
1,400人(78.3%)
2,520人(91.7%)
2,400人(87.3%)
4公演
14回
12日
18,845人(92.0%)
18,300人(88.9%)
合 計
(1) 高校生のためのオペラ鑑賞教室「トスカ」(全3幕)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
6回
6日
10,484 人(98.6%)
9,900 人(93.2%)
7月10日(金)~16日(木)
○ 開演時間 10日(金)・13日(月)~16日(木)13:00開演、11日(土)14:00開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 全席指定2,100円、当日券 大人4,200円、高校生以下2,100円
○ 制作意図
2001~2003 年にかけて鑑賞教室で取り上げ、大好評を博した「トスカ」の久々の上演である。上演
経費が「蝶々夫人」等に比べてかさむため、今秋の本公演上演とパッケージにして上演を行う。
○ 外部専門家等意見
「トスカ」のように第 1 幕の最後に合唱が入って盛大に鳴り響く作品は、高校生にオペラの音楽の大
編成の快感を知ってもらい、以後の幕まで関心をもち続けてもらうのに適したものであると感じた。
マダウ=ディアツの演出はオーソドックスで空間の大きさがうまく表現され、初めて観るのには好適
である。歌手は、横山惠子は声の力と伸びはさすがだが、演技はもう少し弱さを出した方がトスカの必
死さが出るのではないか。また、井ノ上了吏と直野資はベテランだけに安定した演技だったが、声の若
さの不足は否定できなかった。
沼尻竜典の指揮は安直な効果狙いに走らず、音の綾を丁寧に紡ぎだしながら大きなクライマックスを
築く、質の高いものであった。
どの役の歌手も、その役柄を良く把握した演技と歌唱であったが、大山亜紀子の声に細かいヴィブラ
ートが多すぎて、やや聞きにくかったのと、カヴァラドッシ役の水口聡が疲れ気味か?声に艶がなく、
突っ張りすぎの声であったのが残念であった。毎回、音が出るまでの騒がしさに気をもむ状態が、歌い
出すと共に場内が舞台に集中していく空気を感じ、一安心する心地好い雰囲気はまた格別である。それ
から毎回のプログラムに掲載されている「劇場で働く人々」のイラストは大変気が利いている好企画で
ある。
多く聞こえてきたのは、歌手の力強さに対する感嘆の声であった。オーケストラピットを覗き込んで
いる人たちの興味深そうな姿もとても印象的であった。全員でなくても、そうして何かしら興味を持っ
てくれた人に対して、さらに興味を深めるようなサービスができたら良いと感じた。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時配布、出口又は郵送回収。回答数 2,142 人(配布数 10,484 人、回収率 20.4%)。
- 115 -
回答者の 97.5%が概ね満足と答えた(2,088 人)。
(主な意見・感想等)
・ 「トスカ」の音楽はとてもきれいで、その旋律を歌う、歌手の方々も、とても素晴らしかったで
す。迫力がありました。演技をしながら、歌えることは、本当にすごいなと思います。演技からは
悲しみも喜びも、とてもよく伝わってきました。本当に素晴らしかったです。また、舞台のセット
も本格的で、天井や肖像画など、本当の教会にあるようなもので、細部までとてもよく造られてい
たと思います。神秘的でした。歌声がとてもきれいで、とても感動しました。ありがとうございま
した。
・ 舞台の華やかさや繊細さがとても凄いもので見入ってしまった。歌声も芯を震わすような音で、
非常に心打たれた。
【特記事項】
助成:
(財)ロームミュージックファンデーション
協賛:ローム(株)
、損害保険ジャパン
本公演はイタリア語上演につき、字幕により歌詞の日本語訳を表示した。
(2) こどものためのオペラ劇場「ジークフリートの冒険 指環をとりもどせ!」(全1幕)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
6
回
3
日
4,498
人(84.6%)
4,600
人(84.9%)
7月24日(金)~26日(日)
○ 開演時間 11:30/15:00開演
○ 会
場 中劇場
○ 入場料金 全席2,100円
○ 制作意図
昨年に続き、通算 4 回目となる上演。冒頭のトヨタ製ロボットによるトランペット演奏をとりやめ、
当該部分の演出を手直ししての再演となった。
○ 外部専門家等意見
それなりの長さがあり、客席いじりは冒頭部分にしかないのにもかかわらず、子供たちが最後まで静
かに聴いていたことに感心した。子供に対してわざとらしい媚を売らないことが正解なのだろうと感じ
た。舞台脇にオーケストラがいて、演奏する姿を子供にみせているのはとてもよいことだし、演奏ぶり
もきちんとしていた。
歌手たちも好感のもてる歌いぶりであった。字幕がないのは子ども向けということで当然のことなの
であろうが、女性歌手陣は共通して、歌詞の聴きとりにくい箇所がいくつかあった。西洋音楽に日本語
を乗せる難しさが、女性の方がはっきりと出てしまうようだ。
今回の再演は初演時の公演より音楽的にも、台本的にもずいぶん刈り込まれてあり、すっきりした内
容になっていたように思われた。地方(国内外)での夏休み時期の公演も規模的には可能ではなかろう
か。
直野容子が良くそのキャラクターを表現していたし、経種廉彦も存在感を示していた。また、志村文
彦もバイ・プレイヤーとしてのキャリアを十分に発揮していた。米谷毅彦は身体的には立派で威厳もあ
ったが、歌唱表現にはその威厳さがやや不足しているように感じられた。セリフと歌のマイク・バラン
スが少々気になったのが残念であった。一層の研究を望みたい。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。
回答数 255 人(配布数 4,498 人、回収率 5.7%)
。回答者の 95.7%が概ね満足と答えた(244 人)
。
(主な意見・感想等)
・ こんなにきちんとした演出の素晴らしい作品とは正直思っていませんでした。子供が最初に触れた
オペラがこの作品であったことを、心から幸せに思います。ありがとうございました。
・ オペラを初めて見ました。皆様ステキな声と楽しさがいっぱいでとても感激しました。ぜひまた観
に来たいです。
・ とてもおもしろかったです。劇の音がとってもキレイだった。
【特記事項】
共催:朝日新聞社
後援:朝日小学生新聞/渋谷区教育委員会/杉並区教育委員会/世田谷区/世田谷区教育委員会/
中野区教育委員会/東京都公立小学校長会/東京私立初等学校協会
特別協賛:京王グループ/全日本社会貢献団体機構
- 116 -
協賛:小学館/東京ガス(株)/東京コカ・コーラボトリング(株)
(3) 中学生のためのバレエ公演「白鳥の湖」
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
1回
1日
1,343 人(75.1%)
1,400 人(78.3%)
5月20日(水)
○ 開演時間 14:00開演
○ 会
場 オペラ劇場(オペラパレス)
○ 入場料金 中学生以下:1~3階席2,100円・4階席1,050円・Z席1,050円、
一般:1~3階席4,200円・4階席2,100円・Z席1,500円
○ 制作意図
新国立劇場では、教育普及事業として若い世代が優れたライブ公演鑑賞の機会を設け、舞台芸術の普
及、心豊かな文化的社会の構築、そして健全な青少年の育成に努めているが、学校単位に呼び掛けて中
学生に全幕バレエを通常の価格より安価な料金で提供する「中学生のためのバレエ」を 2008 年から開
始して、初回は「白鳥の湖」を上演した。第 2 回目となる今回も「白鳥の湖」で実施する。
○ 外部専門家等意見
この日のための良く整理されたプログラムとシアター・エチケットのパンフを配布し、さらに開幕前、
三輪先生の要を得た解説やデモンストレーション、マナーの注意もあって、十分以上の対応をされてい
た。当日の舞台もすぐれていたし、見せた生徒さんたちの心に、願わくは永く印象に残る舞台だったこ
とであろう。
○ アンケート調査(全日程実施)
入場時に配布、出口又は郵送回収。回答数 485 人。
回答者の 83.7%が概ね満足と答えた(406 人)。
(主な意見・感想等)
・ バレエを初めて見たんですけど、つま先で立ったり、回転したり、すばらしい技がいっぱい見る
ことができてうれしいです。話もよくわかって、とてもたのしいひと時でした。
(1 年女)
・ バレエとオーケストラの生演奏が合っていて、すばらしかった。また見たい。(1 年女)
・ 事前解説で、様々なバレエ用語を知り、とてもためになりました。(3 年男)
・ 言葉がないとつまんないと思ったけど、おもしろかった!(2 年女)
・ 一人一人が一生懸命にやっていて、とても感動しました。ダンスがとてもていねいだった。
(2 年
女)
・ 私は、初めてバレエを見て、とても感動した。また、こんな機会があったらまた見たい。
(2 年女)
・ 人の動きと音楽がよく合っていて、迫力もあってよかったと思う。また、音の強弱も凄かった。
(3 年男)
【特記事項】
協賛:コスモ石油(株)
(4) こどものためのバレエ劇場「しらゆき姫」(新制作)
○ 期間、回数、日数及び入場者数
期 間
回数
日数
入場者数(入場率)
目 標
3回
2日
2,520 人(91.7%)
2,400 人(87.3%)
4月4日(土)~5日(日)
○ 開演時間 4日(土)14:00/17:00開演、5日(日)14:00開演
○ 会
場 中劇場
○ 入場料金 全席2,100円
○ 制作意図
劇場があらゆる方々に芸術との出会いを約束する“開かれた場”となる役割は大変大きい。新国立劇
場では、これまでも教育普及事業として若い世代が優れたライブ公演鑑賞の機会を設け、舞台芸術の普
及、心豊かな文化的社会の構築、そして健全な青少年の育成に努めているが、今回は、優れたバレエ舞
台で子供の豊かな情感や感性を伸ばすと共に、子供と親・祖父母(保護者)が同じ劇場空間を共有する
ことで、新国立劇場での鑑賞機会やバレエの醍醐味を発見していただくことをめざす。
○ 外部専門家等意見
冒頭のかわいい観客たちのための三輪えり花先生のお話は簡よく要を得て、子供たちを童話の世界に
引き込んだし、つぎにビデオで、ダンサーの日々努力するさまを子供たちや随伴の大人に知ってもらう
機会を与えたのがよい。大人でも子供をバレエ教室・学校に通わせている家族でなければ、こういうこ
- 117 -
とは知る機会がほとんどないので、非常によい試みであった。しらゆき姫、小倉佐知子の振付は、物語
の本質を捉えてなかなか良く、ダンサーも研修生を含めて踊り、演技共ほぼ満足すべきものであった。
追加公演を含めて満員であったようで、嬉しいことである。このような作品も、バレエ普及のために、
地方にもって行けたらよい。
子供を対象にした公演は、舞踊では初めての試みである。この企画そのものをまず評価したい。子供
にもわかりやすいように、作品の上演前に映像と語りによりバレエの世界を説明するのも適切と思われ
る。また「しらゆき姫」は、親しみやすい物語であり、題材としても適切である。今回は台詞だけでは
なく、ダンスそのものの楽しさや美しさがより前面に出ていた点もよかった。今後も継続していくこと
で、子供たちにバレエに触れてもらう機会を提供し、バレエ鑑賞の楽しさを味わってもらい、将来の観
客層の拡大につながるだろう。
わかってもらうことを優先させたためであろうか、この「しらゆき姫」では冒頭にストーリーの説明
を入れた上に、ダンサーに台詞をしゃべらせるということまでやっていた。バレエは体の動きだけで物
語を伝える舞台芸術として、長い歴史を経て今の形を作ってきた。こどもたちが初めて出会うバレエと
しては、台詞を使わないという大原則だけは守っておいた方がよかったのではあるまいか。
○ アンケート調査
入場時に配布、出口又は郵送回収。回答数 115 人。
回答者の 97.4%が概ね満足と答えた(112 人)。
(主な意見・感想等)
・ 子供向けとは思えない、素晴らしいキャスティング、演出、舞台!!子供は感動して泣いていま
した。本当によかったです。<さいごのところがかんどうしました。またみたいです!>
・ ビデオでダンサーの一日を紹介してくれたの、とても良かった。どんな努力をして、舞台を作り
上げているかが、子供にもよくわかり、ただ、鑑賞するより、よく理解できました。<ビデオのバ
レエダンサーの一日がすごくよかった。しらゆき姫はすごくおもしろかったです。でも、もっと長
くてもかなり、あきなさそうです。すごくおもしろいので(バレエだけにして(かいせつをなくし
て)
)大人の人もふつうに見れて、こどもも見れるしらゆき姫(何週間のこうえん)をやってたらお
もしろそうだとおもいました。すごくおもしろかったです。また見に来たいです。>
・ セリフが付いていることが子供達にもとてもわかりやすく良かったです。何をしているのかなぁ
と思う所で解説があったことも子供が集中してみられた理由だと思います。またこのような機会を
別なプログラムでしていただけると嬉しいです。 <たのしかった。体がやわらかかった。しんじゃ
ったとおもってびっくりした。>
・ 子どもにも分かり易いようにセリフがあったり、工夫されていたので良かったです。初めて子ど
もにバレエを観せたので導入として、最適でした。ありがとうございました。<おもしろかったし、
きらきらのをみてうれしかったよ。>
【特記事項】
共催:朝日新聞社、後援:朝日学生新聞社、協賛:栄光ゼミナール・藤門商事(株)、協力:京王電鉄
《数値目標の達成状況》
【目標入場者数の達成状況】実績18,845人/目標18,300人(達成度103.0%)
《自己点検評価》
○ 良かった点・特色ある点
「高校生のためのオペラ鑑賞教室」は事業開始以来、着実に公演回数を増やし、12 回目を迎えた 21 年
度にも全 6 回を実施、有料入場者数は 1 万人を超え、有料入場率は 98.6%と、今年度もオペラ劇場におけ
る全主催公演中で最高の入場率を記録した。
「こどものためのオペラ劇場」は、再々演にもかかわらず有料入場者数は約 4,500 人、有料入場率も
84.6%に達し、相変わらずの好調を維持している。
「中学生のためのバレエ」は本編上演前にバレエの基礎の説明や、あらすじなどの説明をつけ好評を得
た。有料入場者数は約 1,300 人、有料入場率は 75.1%であった。
「こどものためのバレエ劇場『しらゆき姫』」では次世代を担うこどもたちが優れたバレエ芸術に親子で
触れられる機会を提供する目的で新制作上演された。有料入場者数は約 2,500 人、有料入場率は 91.7%と
大変好評を得た。
「高校生のためのオペラ鑑賞教室」、
「中学生のためのバレエ」と「こどものためのオペラ劇場」は、若
い観客に対する普及公演として、年々その意義は広く認められてきており、今年度はそれに加え、
「こども
のためのバレエ劇場」も開始された。どの公演も協賛企業等の支援を仰いでおり、事業継続のためには民
間からの支援が今後とも不可欠である。今後も、青少年を対象とする普及公演の拡充について、引き続き
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検討する。
《20年度評価結果への対応》
ニーズの把握と企画・実施方法の見直しについては、
「高校生のためのオペラ観賞教室」関西公演では、
事前に希望する高校へ出向き、先生及び生徒に鑑賞マナーや見どころ等、事前レクチャーを実施し、効果
をあげている。
事業のより一層の展開については、こどものためのバレエ劇場「しらゆき姫」及び「高校生のためのオ
ペラ鑑賞教室」は、毎年関東一円からの来場者を迎え、すでに定着した教育的芸術鑑賞の場となった。ま
た、第 2 回目の同鑑賞教室・関西公演も京都・大阪・兵庫に奈良が加わるなど、着実に評価を得ている。
オリジナル作品の提供については、高校生や中学生のための観賞教室における上演内容については、オ
リジナル作品に直接触れてもらう重要性に鑑み、カット等を行わない、通常公演と全く変わらない内容を
提供している。一方、小学生や就学前の児童などの低年齢層を対象とする「こどものためのオペラ劇場」
は、まず舞台公演に親しんでもらうことが重要であるとの意見もあり、オリジナル作品をそのまま上演す
ることについて慎重に検討する必要がある。
早期のきめ細やかな広報活動については、引き続き青少年等を対象とした公演のきめ細やかな周知をで
きるだけ多くの学校に行い、団体を中心に集客活動に努める。
「中学生のためのバレエ公演」の周知、集客活動については、公演のみならず、劇場自体への興味への
喚起をも含め、多感な世代が様々な舞台芸術へ関心を広めていくことを意識して展開を図る。
- 119 -
2-(2)-⑦ 現代舞台芸術の公演の実施に際しての留意事項等
《年度計画》
1 国、芸術団体等との連携協力に関する計画(国立劇場、新国立劇場等で実施するもの)
区分
公演名
劇場
期間
連携先等
地域招聘公演〈札幌室内歌劇場〉
新国立劇場
1月13日~17日
共催
札幌室内歌劇場
「月を盗んだ話」
小劇場
(4回)
新国立劇場
バッハ・コレギウ
共催
コンサート・オペラ「ポッペアの戴冠」
5月15日~17日
中劇場
ム・ジャパン
共同
新国立劇場
11月18日~26 バイエルン州立
オペラ「ヴォツェック」
制作
オペラ劇場
日
歌劇場
新国立劇場
りゅーとぴあ新潟
〃
現代舞踊「金森穣 Noism09」
6月17日~21日
小劇場
市民芸術文化会館
2 全国各地における上演に関する計画
区分
公演名
高校生のためのオペラ鑑賞教室
共催
関西公演「蝶々夫人」
共同
現代舞踊「金森穣 Noism09」
制作
受託
劇場
尼崎市総合文化センター
アルカイックホール
りゅーとぴあ新潟市民芸
術文化会館
兵庫県立芸術文化センタ
現代舞踊「平山素子 Life Cas ー
ting -型取られる生命-」
まつもと市民芸術館
期間(回数)
10月15日~16日
(2回)
6月5日~7日
(3回)
11月14日
(1回)
11月27日
(1回)
富山市芸術文化ホール
6月27日
受託
演劇「夏の夜の夢」
オーバード・ホール
(1回)
共催
三重大学レクチャーコンサート 三重大学
9月又は10月
※ 上記公演は原則としてすべて地方公共団体等との連携協力等により実施する。
3 国際交流公演等
公演等名称
ボリショイ劇場招待公演 「牧阿佐美の椿姫」
実施場所
ボリショイ劇場
(ロシア・モスクワ市)
連携先等
財団法人尼崎市
総合文化センター
財団法人新潟市
芸術文化振興財団
兵庫県、兵庫県立芸
術文化センター
まつもと市民芸術館
財団法人富山市民文
化事業団・富山市
三重大学
期間(回数)
9月18日~20日
(3回)
《実
績》
1.国、地方公共団体、芸術団体、企業等との連携協力
(1)平成 21 年度(第 64 回)文化庁芸術祭
区分
公演名
オペラ劇場: オペラ「ヴォツェック」
、
「メリーメリー・ウィドウ ~ちょっと陽気な未亡
主催公
人」
演
中劇場:演劇「ヘンリー六世」
協賛公 オペラ劇場:オペラ「オテロ」
、「魔笛」 、バレエ「ドン・キホーテ」
小劇場:現代舞踊「平山素子 Life Casting -型取られる生命-」
演
(2) 国・地方公共団体等との後援・協力
(オペラ)
・地域招聘公演 「月を盗んだ話」
新国立劇場小劇場、1 月 13 日・14 日・16 日・17 日、4 回、共催:札幌室内歌劇場
2.全国各地の文化施設等における公演
(バレエ)
「クラシックバレエハイライト 2010」三田公演
出演:新国立劇場バレエ団(ダンサー40 名)
- 120 -
三田市総合文化センター郷の音ホール 大ホール、1 月 31 日、1 回
主催:三田市総合文化センター指定管理者ジェイコム・グループ
後援:三田市、三田市教育委員会、サンテレビジョン、神戸新聞社、ハニーFM
「華やかなバレエの世界を楽しみましょう」村上・妙高公演
講師:豊川美惠子(バレエ研修所主任講師)
出演者:新国立劇場バレエ研修所研修生(第 5・6 期生)、同予科生、ゲストダンサー(井口裕之、
冨川祐樹、間辺朋美、加藤朋子、中村菜穂、益田裕子、丸澤芙由子、山田蘭)
村上市民ふれあいセンター、3 月 5 日 1 回、妙高市文化ホール 大ホール、3 月 7 日 1 回
主催:文化庁、(財)新潟県文化振興財団、新潟県地域分化芸術振興プラン実行委員会、村上市(5
日)
主管:(財)イヨボヤの里開発公社(5 日)
、(財)新井文化振興事業団(7 日)
(現代舞踊)
金森穣 Noism09「ZONE~陽炎 稲妻 水の月」新潟公演
演出・振付:金森穣、空間:田根剛、衣裳:三原康裕
出演:Noism09
金森 穣、井関佐和子、宮河愛一郎、高原伸子、山田勇気、藤井 泉、中野綾子、青木枝美、
櫛田祥光、真下 恵、藤澤拓也、ゲストダンサー=永野亮彦
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場、6 月 5 日~7 日 3 回
主催:
(財)新潟市芸術文化振興財団
共同制作:新国立劇場
「Life Casting -型取られる生命-」兵庫公演
構成・振付・演出・出演:平山素子
出演者:木下菜津子、高原伸子、池田美佳、西山友貴、柳本雅寛、平原慎太郎、中川賢
兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール、11 月 14 日 1 回
主催:兵庫県、兵庫県立芸術文化センター
協賛:キリンホールディングス(株)
後援:朝日新聞社
「Life Casting -型取られる生命-」松本公演
まつもと市民芸術館 実験劇場、11 月 27 日 1 回
主催:まつもと市民芸術館、信濃毎日新聞社、NBS 長野放送
後援:朝日新聞社、松本市、松本市教育委員会
協賛:キリンホールディングス(株)
(演劇)
「夏の夜の夢」富山公演
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:ジョン・ケアード
出演者:村井国夫、麻実れい、チョウ・ソンハ、細見大輔、石母田史朗、小山萌子、宮菜穂子、ほ
か
富山市オーバード・ホール、6 月 27 日 1 回
主催:
(財)富山市民文化事業団、富山市
共催:北日本新聞社、チューリップテレビ
新国立劇場・
(財)富山市民文化事業団 共同企画
(鑑賞教室)
高校生のためのオペラ鑑賞教室関西公演「蝶々夫人」
企画:若杉弘
作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
指揮:三澤洋史
演出:栗山民也
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
出演者:小濱妙美、並河寿美 (蝶々夫人)、水口聡、成田勝美(ピンカートン)、折江忠道、星野
淳(シャープレス)、大林智子、三輪陽子(スズキ)、松浦健、大野光彦(ゴロー)、島村武男
(ボンゾ)、黒田諭(神 官)、小林由樹(ヤマドリ)、佐々木昌子(ケート)、ほか
アルカイックホール(兵庫県尼崎市)、10 月 15 日、16 日 2 回
共催:
(財)尼崎市総合文化センター、文化庁
助成:
(財) ローム ミュージック ファンデーション
協賛:ローム(株)
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(その他)
「三重大学レクチャーコンサート~新進オペラ歌手が競う愛の讃歌」
講師:海老澤敏(オペラ研修所顧問)
ピアノ:小埜寺美樹(オペラ研修所講師)
歌手:糸賀修平(テノール 10 期) 岡昭宏(バリトン 10 期) 城宏憲(テノール 10 期)
中村真紀(ソプラノ 10 期) 上田純子(ソプラノ 11 期) 木村眞理子(ソプラノ 11 期)
三重大学講堂大ホール、10 月 18 日 1 回
主催:三重大学附属図書館
制作:新国立劇場
「国立新美術館クリスマスオペラコンサート」
ピアノ:マーティン・カッツ(オペラ研修所海外招聘講師)
歌手:糸賀修平、岡昭宏、城宏憲、高橋絵理、中村真紀(以上、研修第 10 期生)
上田純子、木村眞理子、駒田敏章、塩崎めぐみ、堀万里絵(以上、研修第 11 期生)
上田真野子、後藤春馬、高橋洋介、西村圭一、山田大智(以上、研修第 12 期生)
国立新美術館1階エントランス、12 月 18 日 1 回
主催:国立新美術館
制作:新国立劇場
楽器協力:スタインウェイ・ジャパン(株)
(新国立劇場合唱団外部出演公演)
「NHK 名曲アルバム」
「魔弾の射手」より「狩人の合唱」
指揮:渡邊一正
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団 40 名(男声のみ)
主催:日本放送協会
収録日: 5 月 17 日(日)
放送日:2009 年 秋以降
「コンサートスタイル・オペラ『椿姫』
」
ヴェルディ/歌劇「椿姫」より
指揮:チョン・ミュンフン
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団 56 名
6 月 25 日(木)東京オペラシティコンサートホール
26 日(金)サントリーホール
28 日(日)オーチャードホール
30 日(火)富山市オーバード・ホール
主催:東京フィルハーモニー交響楽団
※30 日公演のみ、主催:
(財)富山市民文化事業団、富山市
「東京芸術劇場 シアターオペラ プッチーニ『トゥーランドット』」
プッチーニ/歌劇「トゥーランドット」より
指揮:井上道義
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団 60 名
7 月 18 日(土)金沢歌劇座
25 日(土)東京芸術劇場大ホール
主催:
(18 日)金沢芸術創造財団、石川県音楽文化振興事業団
(25 日)東京芸術劇場(東京都歴史文化財団)
「ヴィラ=ロボス ブラジル風バッハ 全曲演奏会」
ヴィラ=ロボス作曲 「ブラジル風バッハ」より『第九番』
指揮:ロベルト・ミンチュク
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団 24 名
8 月 22 日(土)東京オペラシティコンサートホール
主催:東京オペラシティ文化財団
「午後のコンサート「劇場の音楽Ⅲ」」
プッチーニ/歌劇『蝶々夫人』より、ほか
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指揮:三澤洋史
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団 39 名
10 月 18 日(日)東京オペラシティコンサートホール
主催:東京フィルハーモニー交響楽団
「読売日本交響楽団 演奏会」
メンデルスゾーン/交響曲第 2 番〈賛歌〉、ほか
指揮:下野竜也
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団 80 名
10 月 17 日(土)サントリーホール
19 日(月)東京芸術劇場大ホール
主催:読売日本交響楽団
「読売日本交響楽団 演奏会」
シュニトケ/リヴァプールのために【日本初演】
、ほか
指揮:ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団 80 名
11 月 28 日(土)東京劇術劇場大ホール
30 日(月)サントリーホール
主催:読売日本交響楽団
「読売日響「第九コンサート」」
ベートーヴェン/交響曲第 9 番〈合唱つき〉
指揮:オスモ・ヴァンスカ
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団 80 名
12 月 21 日(月)東京芸術劇場大ホール
22 日(火)サントリーホール
23 日(水・祝)東京芸術劇場大ホール
25 日(金)サントリーホール
26 日(土)東京芸術劇場大ホール
27 日(日)横浜みなとみらいホール
主催:読売日本交響楽団
「第 53 回 NHK ニューイヤーオペラコンサート」
ヴェルディ/歌劇『オテロ』から二重唱「神かけて誓う」、ほか
指揮:沼尻竜典
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団 26 名
1 月 3 日(土)NHK ホール
主催:NHK、NHK プロモーション
「平成 21 年度「本物の舞台芸術体験事業」」
ヴェルディ/歌劇『椿姫』より「乾杯の歌」、ほか
指揮:三澤洋史
ピアノ:小林万里子
合唱:新国立劇場合唱団 30 名
1 月 13 日(水)鳥取県 鳥取市市立鹿野小学校
14 日(木)鳥取県 琴浦町立八橋小学校
15 日(金)鳥取県 鳥取県立皆生養護学校
18 日(月)山口県 防府市立華城小学校
19 日(火)山口県 防府市立佐波小学校
20 日(水)山口県 平生町立平生小学校
21 日(木)広島県 広島市立広島特別支援学校
22 日(金)広島県 安芸高田市立小田小学校
25 日(月)岡山県 備前市立吉永小学校
主催:文化庁、ほか
「第 782 回オーチャード定期演奏会」
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ロッシーニ/歌劇『ウィリアム・テル』ハイライト
指揮:アルベルト・ゼッダ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団 38 名
3 月 7 日(日)Bunkamura オーチャードホール
主催:東京フィルハーモニー交響楽団
「第 52 回東京オペラシティ定期シリーズ」
ロッシーニ/教会音楽「スターバト・マーテル」、ほか
指揮:アルベルト・ゼッダ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団 58 名
3 月 11 日(木)東京オペラシティコンサートホール
主催:東京フィルハーモニー交響楽団
3.舞台芸術等の国際交流
(バレエ)
「牧阿佐美の椿姫」
音楽:エクトール・ベルリオーズ、編曲:エルマノ・フローリオ、指揮:パーヴェル・ソローキン
振付:牧阿佐美
出演:
【マルグリット】スヴェトラーナ・ザハロワ(18,20 日)、堀口純(19 日)
【アルマン】デニス・マトヴィエンコ(18,20 日)、山本隆之(19 日)ほか
ロシア国立アカデミー・ボリショイ劇場、9 月 18 日~20 日、3 回
主催:財団法人新国立劇場運営財団/ロシア国立アカデミー・ボリショイ劇場
事業委託:文化庁
後
援:ロシア連邦文化省/在ロシア連邦日本大使館/在日本ロシア連邦大使館
《自己点検評価》
○ 良かった点・特色ある点
今年度、海外公演としては、ロシアのモスクワボリショイ劇場にて「牧阿佐美の『椿姫』」を日露共同上
演事業として上演した。
オペラ部門においては、昨年度に引き続き、文化庁の「舞台芸術の魅力発見事業」の一環として「高校
生のためのオペラ鑑賞教室『蝶々夫人』
」を尼崎市総合文化センター及び文化庁との共催で尼崎アルカイッ
クホールにて上演し、関西においてもオペラの普及に資することができた。
舞踊部門は、国内では「Noism09 『ZONE―陽炎 稲妻 水の月』」をりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会
館との共同制作として上演し、「平山素子『Life Casting -型取られる生命-』」を兵庫県立芸術文化セン
ター(兵庫県)とまつもと市民芸術館(長野県)にて上演した。また兵庫県三田市にて「クラシックバレ
エハイライト 2010」を実施した。
演劇部門においては、「夏の夜の夢」をオーバード・ホール(富山県)にて上演した。
また全国公演としては昨年に引き続き、オペラ研修所研修生が出演した三重大学でのレクチャーコンサ
ート、国立新美術館におけるクリスマスコンサートを実施した。
またバレエ研修所においては、新潟県村上市と妙高市において「華やかなバレエの世界を楽しみましょ
う」を上演、バレエを初めて見る初心者の方々にも大変好評を得た。
新国立劇場合唱団関係では、昨年に引き続き、「NHK ニューイヤーオペラコンサート」への出演をはじ
め、読売日本交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏会への出演等積極的に外部へ出演し、美し
いアンサンブルで聴衆を楽しませている。
また、文化庁の 21 年度「本物の舞台芸術体験事業」を受託、中国地方の小学校や養護学校を巡回、広
範な子供たちに生の歌声に触れる機会を提供することができた。
次年度以降も全国公演等の事業を推進し、全国にオペラ、バレエ、現代舞踊、演劇の魅力を伝えるとと
もに新国立劇場の認知度向上の一助としたい。
地域招聘公演においては北海道より札幌室内歌劇場を招聘しオペラ「月を盗んだ話」を上演、初めての
小劇場での公演となったが、大変意義深く、好評を得ることができた。
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