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「公共サービス改革基本方針」の策定に関する意見

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「公共サービス改革基本方針」の策定に関する意見
平成 18 年8月
「公共サービス改革基本方針」の策定に関する意見
大 阪 商 工 会 議 所
わが国の財政は、国と地方ともに危機的な状況にあり、早急に簡素で効率的な行政を
実現する必要がある。こうした中、先般、公共サービス改革法が成立し、異例のスピー
ドで施行されたことは高く評価できる。これまで国や地方公共団体が独占的に実施して
きた事業分野において、官民が対等な立場で競争入札に参加し、価格・質の両面で最も
優れた者がそのサービスの提供を担う制度が確立したことを歓迎したい。幸い、景気は
息の長い拡大局面が続いており、積極経営に乗り出す企業も増加しつつある。攻めの経
営へと舵を切り始めた民間事業者にとって、法施行により広がるビジネスチャンスは、
大いなる追い風となる。
元来、大阪では、進取の気性に富む優れた企業家たちが、自立自助の気概を持ち、創
意工夫を凝らしながら、自らの社会や街づくりを担ってきた。こうした「企業家精神」
は、公共サービス改革法の理念に合致するものであり、今後、幅広い分野において官業
の民間開放が推進されることへの期待は大きい。
かかる観点から、大阪商工会議所は、国に対して下記のとおり要望する。
記
1.国の行政機関等関連の公共サービスに関して
(1)官民競争入札又は民間競争入札の対象とすべきと考えられる公共サービス
①不動産登記、商業・法人登記関連業務
法務局、地方法務局で行われている不動産登記、商業登記等の登記事務につい
ては、不動産登記法、商業登記法により、登記所に勤務する法務事務官のうち法
務局又は地方法務局の長が指定する登記官が実施することと規定されている。登
記の窓口業務におけるサービス改善・コスト削減を図るため、民間事業者が登記
業務を担えるよう規制を緩和されたい。
②車検関連業務
自動車検査独立行政法人が行っている車検(いわゆるユーザー車検を含む)の
審査業務については、類似業務を民間事業者が実施する事例も存在するものの、
自動車検査独立行政法人法では、同法人が行う審査業務等の民間事業者への委託
は認められていない。車検業務におけるサービス改善・コスト削減を図るため、
自動車検査独立行政法人法に規定する審査業務を含め、同法人が実施する業務を
包括的に民間開放されたい。
-1-
③肥料・農薬の検査関連業務
肥飼料検査所並びに農薬検査所は、農林水産省が所管する独立行政法人で、前
者は肥料・飼料及び土壌改良資材の品質保全等、後者は農薬の品質の適正化及び
安全性等の確保を図ることを目的に検査等を実施している。こうした検査業務は、
食の安全・安心に対する消費者の関心の高まりとともに、近年、民間事業者が急
速に分析技術を向上させている分野である。この技術・ノウハウの有効活用を目
指し、有識者等によるチェックを義務付ける等安全性を担保した上で、食品等の
検査業務を民間開放されたい。
④CIQ(関税・入国審査・検疫)関連業務
グローバル化の進展に伴い、国境を越えた人的移動が年々活発になっている。
しかし、わが国の空港ではピーク時に国際線ゲートが混み合う等、CIQの体制
整備が十分とは言えない状況にある。CIQは、空港の国際競争力強化に向けて
より一層の体制拡充が望まれる分野である反面、治安・衛生の維持・管理に関わ
る業務でもあることから、国の責任の下、公務員が担うべきであるとする意見も
根強い。
ついては、出国審査業務の補助(外国語対応の混雑整理、窓口業務の補助等)
、
税関関連の相談・問合せ業務や、外国人在留総合インフォメーションセンターの
運営業務等、まずは、国の外郭団体等に随意契約で委託されている周辺業務等を
対象に民間開放を図られたい。
⑤観光(国際交流)関連業務
現在、政府が推進する「ビジット・ジャパン・キャンペーン」では、2010
年までに 1,000 万人の訪日外国人誘致を目標に掲げており、2005年の実績は
673 万人となっている。同キャンペーンは、社団法人日本ツーリズム産業団体連
合会、社団法人日本観光協会、独立行政法人国際観光振興機構等を構成団体とす
る実施本部が、国からの事業委託を受けて実施しているが、国際観光の振興にお
いては、長年民間事業者で培われてきたノウハウの蓄積が大きい。
今後、より効果的・効率的なキャンペーン展開を図るため、同キャンペーンの
実施本部が実施している業務については、包括的な民間開放を促進されたい。
⑥国立美術館・博物館・劇場の関連業務
公立美術館・博物館・劇場の業務委託については、平成 15 年の地方自治法改正
で導入された指定管理者制度を活用した先行事例があり、経費・サービスの質の
両面において一定の成果を上げている。国立美術館・博物館・劇場についても、
その文化的意義を堅持する一方、民間事業者の有する収益向上のノウハウや、マ
ーケティング能力を活用することで、経営の健全化を図るとともに、より多くの
国民が楽しめる施設とすべきである。ついては、独立行政法人国立美術館、独立
行政法人国立博物館、独立行政法人日本芸術文化振興会については、施設の管理
運営業務のみならず、展示企画等の本業分野も含めた幅広い範囲で民間事業者に
業務委託されたい。
-2-
⑦公園施設管理関連業務
公園施設については、都市公園法によりその設置者である地方自治体・国が管
理者となることが規定されている。その民間開放については、都市公園内に設置
される「公園施設」の設置に関して、公園管理者自らが設置・管理することが不
適当又は困難である場合、および公園管理者以外の者が設置・管理することが都
市公園の機能増進に資すると認められる場合のみ、許可されることになっている。
地域住民のニーズに応じたまちづくりを推進し、都市の賑わいを創出するため
には、公園管理においても、小売、娯楽、スポーツ、観光等の分野において独自
のノウハウを有する民間事業者を有効活用することが望まれる。ついては、民間
事業者も公園管理者の役割を担えるよう改めるとともに、公園施設の設置許可要
件を緩和されたい。
⑧政府広報関連業務
政府広報については、テレビ、ラジオ、新聞・雑誌広告、出版物、インターネ
ット等のメディア毎に民間委託されているものの、包括的な事業の民間開放は実
施されていない。広報・宣伝においては、放送とインターネット等異種メデイア
の組み合わせや、同じ素材を様々な媒体(ゲーム、アニメ等も含む)に活用する
メディアミックスの手法が効果的であり、まさに民間事業者が培ってきた知見、
ノウハウの活用が望まれる分野である。政府広報においても包括的な民間開放を
進められたい。
⑨知財人材の育成関連業務
独立行政法人工業所有権情報・研修館は、特許に関する公報並びに審査資料の
収集や閲覧をはじめ、特許情報の提供、知財の人材育成等を行っている。とりわ
け「中小・ベンチャー企業における知財人材の育成」等民間事業者を対象にした
研修事業については、民間コンサルタント会社等代替機能を担う存在が数多く存
在する。同法人がその機能を担うべき必然性は薄れていることから、同法人が実
施する研修事業を中心に民間開放を進められたい。
(2)政府が構ずべき規制改革等の措置
①国家公務員の人員配置の流動化
国家公務員の定員は、法律によって省庁毎に細かく定められており、柔軟な人
員配置ができず、公共サービスの民間開放推進を妨げる一つの要因になっている。
今後は、その時々の状況に応じて国家公務員の適正な人員配置ができるよう、法
律を見直されたい。
②民間との人事交流
官民の人事交流については、天下り防止の観点から、公務員が現職と関連する
民間事業者の業務に従事することを禁じている。しかし、公共サービスの民間開
放を進めていく過程では、官の持つノウハウを民に伝えるため、一定期間、民間
事業者で公務員を現職と関連の深い業務に従事させることが必要である場合も考
えられる。官民の人事交流を推進するための規制緩和を図られたい。
-3-
③民の創意工夫の発揮
公共サービスの民間開放にあたっては、民の創意工夫が最大限発揮できるよう、
以下の点に留意されたい。
・落札者の選定にあたっては、価格だけでなく、事業の質を評価するよう配慮
すること。
・提供されるべき公共サービスの要求水準は、アウトプット指標等を用いて必
要な限度で示すことを基本とし、具体的な仕様等の特定は必要最小限にとど
めること。
・民間事業者の落札者が安心して組織体制の整備や投資を行えるよう、最低5
年程度の契約期間を確保すること。
・経営努力により予算に比べ収支が改善した場合、あるいは目標以上の成果を
達成した場合には、その利益が受注者側に帰属するような仕組みを整えるこ
と。
・民間事業者の落札者が、その後、官から不当に不利益な扱いを受けたときは、
申し立ての機会が与えられること。
・受注する民間事業者が規模のメリットを追求しやすいよう、類似業務につい
ては所轄官庁の枠を超えて一括で市場化テストに付す制度を設けること。
④受託企業のコンプライアンス確保
公共サービスの落札者選定に際しては、当該企業の事業実施能力のみならず、
コンプライアンスの確保も重要となる。受託業務の再委託(第三者への丸投げ等)
制限や、入札企業間の談合に関する監視を徹底させ、その事業成果を数値化して
評価する仕組みを構築した上で、評価の低い企業については、公共サービスの入
札に制限を設ける等の措置を施す等、公共サービスを担うにふさわしい企業かど
うかを常に管理するべきである。
2.地方公共団体関連の公共サービスに関して
(1)地方公共団体が官民競争入札又は民間競争入札を実施するために政府が講ずべき
規制改革等の措置
①路線バス事業の範囲拡大
地方公共団体が運営する路線バス事業の民間委託については、道路運送法に基
づく自動車交通局長の通達により、路線距離又は使用車両数の2分の1までとさ
れている。路線バス事業にかかる人件費単価は、民間事業者よりも地方公共団体
の方が高額であるため、民間委託の範囲を拡大することで、運営コストの一層の
削減が可能となる。ついては、路線バス事業の民間委託範囲に関する規制を撤廃
し、全事業を民間事業者に開放されたい。
②地下鉄事業
地方公共団体が運営する地下鉄事業にかかる人件費単価は、民間事業者よりも
高額であるため、民間委託により運営コストの削減が可能となる。
鉄道事業法に基づき運営されている地下鉄事業を民間委託する場合は、地方公
共団体は第一種鉄道事業許可を廃止し、第三種鉄道事業許可を取得する一方、委
託先事業者は第二種鉄道事業許可を取得して列車運行を行うことになる。しかし、
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この方法では委託先事業者が車両等を譲り受ける必要があり、事業リスクが高く
なる懸念がある。ついては、事業用資産を地方公共団体が保有したままでの運行
委託が可能となるよう規制緩和を図られたい。
さらに、軌道法に基づき地下鉄事業を行っている場合は、第一種から第三種と
いう鉄道事業形態が認められておらず、事業委託についても明確な定めがない等、
規制内容が鉄道事業法とは異なる。鉄道事業法と規制内容を統一させることによ
り、軌道法に基づき地下鉄事業を行う地方公共団体の民間開放を促進されたい。
③徴税関連業務
地方税の徴税業務については、強制徴収等公権力の行使に当たる業務は徴税吏
員でなければ実施できないものの、補助的な業務については、一部民間事業者へ
の業務委託が可能となった。その一環として、少額滞納者を対象に納税期限の電
話連絡業務を民間委託する地方公共団体も存在するが、その後の督促業務につい
ては、弁護士法上の問題があり実施できない状況にある。
滞納税者を対象にした徴収業務については、弁護士法に特例措置を設けること
でより広範な業務を民間開放するとともに、税目毎の壁を取り除いた一括受注や、
徴税率に応じた成功報酬方式の導入等を図られたい。
④公営住宅の滞納家賃等に関する回収関連業務
公営住宅の滞納家賃等は民法上の私債権であり、法律上の争いのある事項とみ
なされることから、督促・回収等を担えるのは、公務員と弁護士に限られている。
滞納家賃等の回収率向上を図るため、弁護士法の特例措置を設けることにより、
サービサーをはじめとする民間事業者へ事業を開放されたい。
⑤固定資産税の課税における調査・評価業務
地方税法では、固定資産税の課税に関する実地調査・評価調書の作成を行う固
定資産評価員・固定資産評価補助員は、市町村長が選任すると規定されている。
この分野は、建設コンサルタント等の民間事業者が専門的な知見・ノウハウを有
しているものの、固定資産評価員・固定資産評価補助員のほとんどは市町村の職
員が担っており、各種の資料や地図の作成など部分的な業務が民間開放されてい
るにすぎない。包括的な事業委託が可能となるよう規制緩和を図られたい。
⑥旅券発行関連業務
旅券の発行業務は、旅券法の規定に基づき都道府県知事が行うことが規定され
ており、原則として民間事業者への業務委託は認められていない。しかし、補助
的な業務では民間委託が進んでおり、旅券発行業務の効率化、利用者利便の向上
を図るためには、旅券発行業務を含む包括的な民間開放が望まれる。旅券法に特
例措置を設けることにより、民間開放を促進する環境を整備されたい。
以 上
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