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国への提言事項(第 101 回中部圏知事会議) 1 地震対策等の推進

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国への提言事項(第 101 回中部圏知事会議) 1 地震対策等の推進
国への提言事項(第 101 回中部圏知事会議)
1
地震対策等の推進について····································· 1
2
「農林水産業・地域の活力創造」のための施策の推進について ····· 7
3
子ども、ひとり親家庭及び重度障害者(児)に対する支援について · 8
4
高規格幹線道路ネットワーク整備等について····················· 9
5
安全・安心で持続可能なエネルギー体系の構築と
再生可能エネルギー等の導入促進について······················ 10
6
農業の競争力のある経営転換への支援について ·················· 12
7
直轄事業負担金制度改革について······························ 13
8
電源立地地域対策交付金制度(水力発電施設周辺地域交付金相当分)
の交付期間の恒久化等について································ 14
9
定期予防接種の見直しについて································ 15
10
肝炎治療特別促進事業の円滑な実施等について ·················· 17
11
地域医療提供体制の整備に対する支援について ·················· 18
12
デフレ経済からの本格的な脱却と持続的な経済成長の実現
について ··················································· 19
13
地域を支える有料道路の維持・更新にかかる枠組みの改正
について ··················································· 20
14
総合的な流木対策の推進について······························ 21
15
森林整備法人の経営改善の支援について························ 22
16
医療人材の確保対策について·································· 23
17
リニア中央新幹線の東京・大阪間早期全線整備について ·········· 25
18
新たな高速鉄道と在来線が連携した幹線鉄道ネットワーク
の高い機能発揮ができる環境整備の推進について ················ 26
19
災害廃棄物処理計画に対する支援について ······················ 27
20
「地方目線」の少子化対策について···························· 28
21
中山間地域等の農業振興施策の充実・強化について ·············· 32
22
農林水産物・食品の輸出拡大に向けた環境整備について ·········· 33
23
我が国とブラジルの交流促進のための査証免除について ·········· 35
24
漂流・漂着物に対する総合対策の確立について ·················· 36
25
国民体育大会の開催及び選手の育成・強化について ·············· 37
26
多文化共生社会づくりの推進について·························· 39
27
エネルギーインフラの整備について···························· 40
28
中部国際空港の機能強化(完全 24 時間化)の実現について ······· 41
29
北陸新幹線の早期全線整備について···························· 42
30
治安諸対策の推進について···································· 44
31
国内航空ネットワークの充実について·························· 45
32
高速・貸切バスの安全確保対策について························ 46
33
豚流行性下痢(PED)対策について·························· 47
1 地震対策等の推進について
平成24年8月に国が公表した南海トラフ巨大地震による被害想定では、
発生頻度は極めて低いとされているが、最悪の場合で約32万人の死者数が
推計された深刻な内容となっている。
平成25年12月に「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する
特別措置法」が施行され、地震防災対策の推進がより具体性を増してきてい
る。
南海トラフ地震は、ひとたび発生すれば甚大な被害をもたらすことが予想
され、中部圏知事会としても、住民の生命を確実に守り、被害を最小限にと
どめるための地震・津波対策を推進していくことが必要である。
一方、我が国はプレート境界に位置することから、南海トラフ地震以外に
も、各地において地震・津波の発生が想定されており、地震・津波対策を強
化する必要がある。
ついては、次の事項について特段の措置を講じられるよう提言する。
1 総合的な地震・津波対策の推進
(1) 南海トラフ地震防災対策推進基本計画に基づき、災害応急対策活動に
当たる部隊の活動規模、緊急輸送ルート、防災拠点等を具体的に定める
計画について早期に策定し、大規模な広域防災拠点等についての位置づ
けを明確にするとともに必要な整備を行うこと。
(2) 南海トラフ地震の被害想定を踏まえ、地震防災上緊急に整備すべき施
設等の整備を重点的に進めるための財政支援等の措置を講ずること。
(3) 地震・津波対策における新たな構造基準を早期に策定すること。
(4) 学校、医療施設及び高齢者等が利用する社会福祉施設等の高台移転や
津波避難ビル等の避難施設の建設等の津波対策に係る財政支援、規制緩
和の措置を講ずること。
(5) 太平洋側のみならず、日本海側も含め早急に地震・津波に関する観測
体制の充実・強化を図るとともに、地震・津波に関する調査・研究を推
進すること。
2 災害に強い地域づくりの推進
沿岸部における津波避難路の整備等と併せて、沿岸部からの企業や住居
等の移転の受け皿となる内陸部の地域づくりを行い、これらを繋ぐ地域間
1
の連携軸を形成して、災害に強い地域づくりを実現し、安全・安心で魅力
ある地域づくりを推進する。そのための規制の緩和や税制・財政等の支援
措置を講じること。
3 基幹的広域防災拠点の整備
大規模災害の発生時に、国と地方の関係機関が連携して被災地への支援
が迅速に実施できるよう、救援物資等の輸送拠点や現地対策本部の機能等
を有する基幹的広域防災拠点を整備すること。
4 海外からの支援の活用及び検証並びに日米間の防災協力体制の整備
(1) 南海トラフ地震等大規模災害では、国内の応援部隊では不足すること
が予測され、海外の応援部隊を積極的に活用する必要があり、海外から
の支援の受入れについて、全国的な訓練を実施した上で検証を行うこと。
(2) 特に東日本大震災において「トモダチ作戦」により大きな成果を上げ
た米軍とは、綿密な連携を取ることができるよう、防災協定を結ぶなど
日米間の協力体制を整備すること。
5 新たな広域応援体制の確立
(1) 東日本大震災における広域応援では、国の各府省、全国知事会、全国
市長会・全国町村会が所管ごとに個別の応援を決定・指示したため、効
率的・効果的な応援の支障となった。
大規模災害では、国が広域応援における主導的な役割を果たす必要が
あることから、広域応援の実施に対応する専属組織を内閣府などにおい
て平時から設置し、地方自治体による応援を含む全ての被災地への応援
の調整・指示を一元的に行うこと。
(2) 地方自治体による支援では、都道府県がその管内の市町村等と連携し
て同一の被災地に対して集中的な応援を行い成果を上げたことから、そ
の体制整備の支援を行うとともに、地方が応援に要した経費の全額を国
が負担する制度を創設すること。
6 建築物等の耐震化の促進
(1) 住宅・建築物の耐震化は、住宅・建築物の倒壊から住民等の生命を守
るだけでなく、負傷者や避難者を減少させ、発災後の応急対応や復興に
おける社会的負担を軽減する効果があることから、これを早急に進める
2
必要がある。
しかし、現行の補助制度については、住宅・建築物の耐震補強に対
する補助金の額が、補助対象限度額である耐震改修に要する費用(耐
震改修工事費に23%を乗じて得た額)の2分の1以内となっている
が、住宅に対する補助にあっては、補助対象者の書類準備の負担等が
大きく、また、事務処理が煩雑となることから小規模な市町村では対
応できないため、これを改正し、一部の地方自治体で実施している定
額補助制度を考慮した制度とすること。
(2) 高齢者世帯における木造住宅の耐震化を推進するため、高齢の親と別
居する子どもが親の住宅の耐震補強を行う場合には、その費用を子ども
の所得税から控除する制度を創設すること。
(3) 災害時に避難所等となる学校施設や病院の耐震化対策及び地盤対策
を強化すること。
7 災害に強い道路ネットワーク等の整備促進
国全体としてのリスク分散や、被災時のバックアップ機能を高めること
による災害に強い国土づくりを進めるうえで、高規格幹線道路など主要幹
線道路は重要な役割を果たすことから、所要の整備予算を速やかに確保し、
緊急輸送路となる道路ネットワーク等の整備や橋梁等の耐震対策を促進す
ること。
8 原子力発電所の安全確保及び防災対策の強化
(1) 原子力発電施設に係る新規制基準については、現在も続く福島第一原
子力発電所事故の原因究明の検証結果を踏まえるとともに、絶えず国内
外の最新の知見を収集し、新たに得られた知見については、その都度、
適切に規制基準に反映させること。
断層調査・評価を含む原子力発電施設の新規制基準への適合性に係
る審査に当たっては、設備運用のソフト面も含め、規制基準を厳格に
適用するとともに、幅広い分野の専門家の意見やこれまでに蓄積され
たデータなど科学的・技術的知見を最大限活用し、公平・公正な結論
を導き出すこと。
特に断層調査・評価にあたっては、現在の原子力規制委員会の有識
者会合の構成を見ると、委員の専門分野に偏りがあるので、構造地質
学や地震研究など幅広い分野の専門家による体制を整備し、国として
3
責任を持って評価すること。
また、運転期間の延長に係る審査に当たっては、審査の方法や進め
方について明確にした上で厳正な審査を行うこと。
なお、政府の要請により停止している浜岡原子力発電所については、
政府が停止要請をした文書において実施するとしている事業者の対策
について、厳正な評価、確認を行い、その結果を文書により提示する
こと。
(2) 原子力規制委員会は、高い独立性や専門性、徹底した情報公開による
透明性などの確保に努めるとともに、地方公共団体等の幅広い意見に真
摯に耳を傾け、真に国民の理解と信頼が得られる組織とすること。
特に、
「国内外の多様な意見に耳を傾け、孤立と独善を戒める」とい
う組織理念を達成するため、組織の健全性や信頼性を評価する機関を新
たに設置するなど、改善できる仕組みを構築すること。
(3) 今後、高経年化等により見込まれる原子炉の廃止措置については、厳
格な審査の下、安全確保に万全を期すとともに、使用済燃料やその再処
理に伴い発生する高レベル放射性廃棄物、原子炉の解体に伴い発生する
廃棄物の最終処分方法を早期に確立すること。
(4) 原子力防災対策については、実効性のある原子力防災・避難体制を確
立するため、渋滞抑制対策・避難用バスの確保、スクリーニング・除染
の実施体制並びに自衛隊等の実行部隊の参集体制など具体的な方策が
定まっていない事項について、明確な方針を示すこと。また、プルーム
通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する地域(PPA)の導
入等、原子力災害対策指針で今後検討を行うべき課題とされたものにつ
いて早期に検討を進め、指針を改定すること。加えて、
「緊急時防護措
置を準備する区域(UPZ)
」外の地域においても、UPZ内における
対応と同様、防護措置の実施の判断基準(OIL:運用上の介入レベル)
に基づく防護措置を実施する旨、指針に記載されていることから、当該
地域において必要となる事前対策の内容について具体的に示すこと。
また、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEE
DI)情報の信頼性向上を図るとともに、その活用方法、緊急時モニ
タリングの実施手法、安定ヨウ素剤の配布や備蓄・補充等の手法等に
ついては、関係地方自治体の意見を取り入れ、実効性のある体制の整
備に引き続き努めること。
さらに、
「予防的防護措置を準備する区域(PAZ)
」及び「緊急時
4
防護措置を準備する区域(UPZ)
」の設定に伴い、環境放射線モニタ
リング体制や原子力防災の資機材の整備のほか、それらの維持管理に
係る費用の増大が見込まれることから、引き続き放射線監視等交付金
や原子力発電施設等緊急時安全対策交付金を増額するとともに、UP
Z外の地域での対策に要する経費も含め、所要の財政措置を講じるこ
と。
なお、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金については、防災資
機材の効率的な整備を行うため、都道府県から市町村に対する間接交
付を認めるなど、運用の改善を図ること。
(5) オフサイトセンターの移転等の整備に伴い発生する経費については、
確実に財政措置を講じること。
なお、移転により使用しなくなる既存のオフサイトセンターについ
ては、国において立地道府県に負担のない合理的な整理方法の検討を
行うこと。
(6) 県境を越える広域避難を円滑に実施するため、避難手段やスクリー
ニング要員・資機材、並びに要配慮者を含む避難先の確保などに係る
国としての基本的な考え方と有事における支援の具体的な内容を早急
に示すとともに、避難先や避難手段の確保に係る地方自治体間の調整
について、国が主体的な役割を果たすこと。
(7) 原子力発電所の安全対策に対する、国、地方公共団体、住民、原子
力事業者など関係者間の情報共有を図るために必要な措置を講ずるこ
と。
(8) 上記(1)~(7)の措置等を講じるに当たっては、国民に対し、
その過程も含めて徹底的に情報を開示するとともに、説明会やシンポ
ジウムを開催し、国民の理解を得るよう最大限の努力をすること。ま
た、原子力事業者が住民へ十分な説明を行うよう指導を強化すること。
9 被災者生活再建支援法の適用拡大
一部地域が被災者生活再建支援法の適用対象となるような自然災害が発
生した場合には、法に基づく救済が被災者に平等に行われるよう、全ての
被災区域が支援の対象となるよう見直すこと。
10 大規模災害に対応した生活再建の支援制度の創設
被災者生活再建支援基金では対応できない大規模災害においては、特
5
別立法等による対応を行うこと。
11 地籍調査の推進
(1) 南海トラフ地震等による大規模災害から速やかな復旧・復興を図るた
め、地籍調査の迅速かつ重点的な実施を可能とする制度が求められてい
ることから、国庫補助率の引上げ等、制度の拡充を図ること。
(2) 公共事業等による用地測量の成果を活用することで、地籍調査未実
施地域における地籍整備が図られるため、この取組が促進されるよう
各公共事業において補助制度を拡充すること。
6
2 「農林水産業・地域の活力創造」のための施策の推進について
国では、平成25年12月に、我が国の農林水産業・地域の活力創造に向
けた政策改革のグランドデザインとなる「農林水産業・地域の活力創造プラ
ン」
(以下「プラン」という。
)をとりまとめ、農林水産業を産業として強く
していく政策(産業政策)と多面的機能を発揮するための政策(地域政策)
を車の両輪として、農業・農村全体の所得を今後10年間で倍増させること
を目指し、政策を再構築することとしている。
豊かな自然環境に恵まれた中部圏において、プランに基づく政策を推進し、
「強い農林水産業」
、
「美しく活力ある農山漁村」を創り上げていくためには、
国が地方と十分に協議・調整のうえ、地域の実情に応じた施策の構築や、財
政措置等が必要である。
ついては、次の事項について特段の措置を講じられるよう提言する。
1 農産物の「国内外の需要拡大」や「付加価値向上」
、農業の「生産現場
の強化」
、及び農業・農村の「多面的機能の維持・発揮」のため、プラン
に掲げる目標の達成に向けた具体的な施策について、新しい「食料・農業・
農村基本計画」に位置付けるとともに、必要な財政措置を講じ、各種施策
を総合的かつ計画的に実施すること。
2 地域材の安定的・効率的な供給体制の構築とその利用拡大のため、平成
26年度に終了する森林整備加速化・林業再生事業の実施期間の延長と基
金の積み増しや、木材利用ポイント事業の継続など、
「林業の成長産業化」
に向けた施策の充実・強化を図ること。
3 漁業者の所得・経営力の向上や、持続可能な漁業・養殖業の展開のため、
資源管理・漁業経営安定対策など、
「水産日本の復活」に向けた施策の充
実・強化を図ること。
7
3 子ども、ひとり親家庭及び重度障害者(児)に対する支援
について
乳幼児・子ども及び障害者(児)の福祉の増進並びに保護者の経済的負担
の軽減など子ども・子育て及び障害者(児)支援の観点から全国の地方自治
体が実施している乳幼児・子ども、ひとり親家庭及び重度障害者(児)の医
療費助成事業は、対象年齢や受給者負担金、所得制限等の制度内容がそれぞ
れ異なっている。また、各地方自治体の大きな財政負担にもなっている。
医療は、国民の生命、健康を保障するものであることから、当該助成は、
本来、社会保障政策全体の中に位置づけられるべきものであり、国、県、市
町村が統一した制度の下に一体となって取り組む必要がある。
なお、現在の地方単独医療費助成は、国の医療制度を補完するものである
が、国は、いわゆる「現物給付」方式を採用している市町村に対して、国民
健康保険療養給付費負担金等の減額措置を行い、市町村の国民健康保険特別
会計を圧迫している。
ついては、子ども、ひとり親家庭及び重度障害者(児)の健康管理の取り
組みへの支援のため、次の事項について特段の配慮を講じられるよう提言す
る。
1 全国の地方自治体がそれぞれ独自の方式で実施している乳幼児・子ども、
ひとり親家庭及び重度障害者(児)の医療費助成事業については、国、県、
市町村が統一した制度の下に一体となって取り組めるよう、国において新
たな助成制度を創設すること。
2 いわゆる「現物給付」方式を採用している市町村に対する国民健康保険
療養給付費負担金等の減額措置を直ちに廃止すること。
8
4 高規格幹線道路ネットワーク整備等について
アジア経済の力強い成長などアジアダイナミズムを取り込み、産業の力を
高めていくためには、太平洋側と日本海側及び東日本と西日本を結ぶ中部圏
の地勢を踏まえた広域的な交通基盤整備の推進など、将来を見据えた施策の
着実な推進が必要である。
そのためには、国の「日本再興戦略」に掲げる大都市の国際競争力の強化
に資する大都市圏の環状道路ネットワークや重要な空港・港湾と高規格幹線
道路とを連絡する地域高規格道路、及び中部圏全域の基幹的な道路を早期に
整備することが重要である。
また、東日本大震災においては、高速道路がいち早く機能を復旧し、物資
の輸送などに大きな役割を果たした。中部圏では、今後、南海トラフ巨大地
震などによる広域被害が懸念されるため、被災時に機能する高規格幹線道路
ネットワークの確保・強化を図ることがより重要となっている。
ついては、次の事項について、特段の措置を講じられるよう提言する。
1 「日本再興戦略」に掲げる大都市の国際競争力の強化に資する、大都市
圏の環状道路ネットワークや重要な空港・港湾と高規格幹線道路とを連絡
する地域高規格道路等の早期整備を図ること。
2 太平洋側と日本海側及び東日本と西日本を結ぶ中部圏の地勢を踏まえ
た広域的な交通基盤の確保・強化、並びに南海トラフ巨大地震などの被災
時に、高速道路の代替迂回路機能を確保・強化するため、高規格幹線道路
ネットワークの早期整備を図ること。
9
5 安全・安心で持続可能なエネルギー体系の構築と再生可能エネ
ルギー等の導入促進について
東日本大震災と福島第一原子力発電所における事故を発端として、我が国
のエネルギー政策は大きな転換点を迎えている。エネルギーは国民生活や経
済活動に欠くことのできない重要な基盤であることから、早期に安全・安心
で持続可能なエネルギー体系を構築する必要がある。
政府は、本年4月、我が国のエネルギー政策の中期的な指針を示すエネル
ギー基本計画を閣議決定し、
「再生可能エネルギーについては、2013 年から
3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく」と
しているが、将来のエネルギーミックスについては明示されておらず、我が
国のエネルギーをめぐる将来像は、未だに確立していない状況にある。
また、化石燃料の燃料費の増加を背景として、電気料金の値上げの動きは
全国に広まっており、本年5月には、中部電力の規制部門の値上げも実施さ
れた。
ついては、安全・安心で持続可能なエネルギー体系の構築及び国民生活の
安定や日本経済の復興に必要不可欠な電力の安定供給と適正な電気料金の維
持に向け、次の事項について特段の措置を講じられるよう提言する。
1 我が国の成長戦略や環境への適合に留意しつつ、安全面、コスト面、国
民負担等を総合的に考慮し、将来のエネルギーミックスを早急に国民に示
すこと。
2 再生可能エネルギーの導入を加速するため、固定価格買取制度を効果的
に運用するとともに、各地域での導入状況を的確に把握できるよう、事業
主体や設置場所など設備認定の状況をより詳細に公表すること。また、円
滑に導入できるよう規制改革を推進すること。
3 再生可能エネルギーやコージェネレーション等の分散型エネルギーと
ITや蓄電池等を組み合わせたエネルギーマネジメントシステムの普及
や、電力需要の抑制(ピークカット)対策などの省エネルギー対策の強化
等により、効率的なエネルギー利用を推進すること。
10
4 国民負担の低減や国際競争力の確保を図るため、電気料金の適切な水準
を維持するための対策を講ずること。また、電力システム改革の実施に当
たっては、電力の安定供給に支障を来たすことのないよう、法律等の制度
整備を慎重かつ着実に進めるとともに、小売の全面自由化などについては、
電気料金決定過程を透明化し、真に国民の目線に立って行うこと。
5 エネルギーの需給構造の改革を実現するため、産学官の連携によるエネ
ルギー技術の開発を促進すること。
11
6 農業の競争力のある経営転換への支援について
米消費の減少や国の米政策の見直しにより、米価が下落することが予想さ
れる中で、組織形態の見直しや農地の集積・集約化による規模拡大等により、
効率的で収益性の高い農業経営への転換を図る必要がある。
国では、新たに農地の中間受け皿として、都道府県段階に農地中間管理機
構を整備し、その活動を支援することで、担い手への農地の集積と集約化を
更に加速していくこと、また、人・農地プランの話合いの中で機構にまとま
って農地の貸付けを行った地域や機構への貸付けに伴って離農又は経営転
換する者等に対して協力金を支払うこととしている。
また、米の直接支払交付金が平成26年度から半減されることは、多くの
農業者の収入減少につながるものであり、農業経営に与える影響が大きい。
ついては、意欲ある担い手農家が、計画的に営農を進めていけるよう、次
の事項について特段の措置を講じられるよう提言する。
1 地域単位での集積・集約のため新設された地域集積協力金をはじめとす
る機構集積協力金については、必要な予算を確保し、要件を満たした場合
は必ず支給されるようにすること。
2 農地中間管理事業を活用し、認定農業者や集落営農組織が規模拡大に取
り組む際の、農地の受け手に対する支援を充実すること。
3 農家が意欲をもって計画的に営農を進めていけるよう、米政策の見直し
で削減された交付金の総額を確保し、特に地域の裁量により活用できる産
地交付金について更なる増額と、客観的方法による配分を行うこと。
12
7 直轄事業負担金制度改革について
直轄事業負担金制度について、維持管理に係る負担金は平成22年度から
一部が廃止され、さらに平成23年度からは全廃されたところである。
しかしながら、依然として新設及び改築に係る直轄事業負担金は残された
ままであり、地方分権の推進の観点から重要な課題である。
ついては、次の事項について特段の措置を講じられるよう提言する。
直轄事業負担金制度については、国と地方の役割分担等の見直しや地方へ
の権限と財源の一体的な移譲と併せ、制度の廃止など抜本的な改革を速やか
にかつ確実に進めること。
その際には、社会資本整備の着実な実施にも配慮すること。
13
8 電源立地地域対策交付金制度(水力発電施設周辺地域交付金
相当分)の交付期間の恒久化等について
水力発電施設が所在する市町村が対象となる電源立地地域対策交付金制
度の水力発電施設周辺地域交付金相当分について、発電施設周辺自治体は本
交付金を活用し、公共用施設整備等の住民の利便性向上のための事業や地域
活性化事業等に活用している。
こうした中、国においては、従来最大30年間であった交付期間を10年
間延長し最大40年間とする一方で、交付単価を従来より概ね5分の4に引
き下げるなど本交付金制度を平成23年度から改正したところであり、これ
により本交付金は国全体で約2割減額となったところである。
しかしながら、水力発電は、再生可能なエネルギーとして、また、発電時
に地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギー
として、我が国のエネルギー政策に重要な役割を果たしており、人々の生活
や経済の発展に欠かすことができない「電気」の安定的な供給のためには、
水力発電施設所在市町村の持続的・安定的な発展と地域の活性化は不可欠で
ある。
ついては、次の事項について提言する。
「電源立地地域対策交付金制度の水力発電施設周辺地域交付金相当分」に
ついて、交付期間の恒久化を図ること。また、交付単価及び最低保証額の引
き上げ等の交付水準の改善を図ること。
14
9 定期予防接種の見直しについての提言
平成 24 年5月、
厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会は、
子宮頸がん、
ヒブ、小児用肺炎球菌、水痘、おたふくかぜ、B型肝炎、成人用肺炎球菌の
7ワクチンの定期接種への位置付け及び定期接種の費用負担の検討等につい
て、第二次提言を取りまとめた。
これを受け、国は、平成 25 年4月から、子宮頸がん、ヒブ、小児用肺炎球
菌の3ワクチンを定期接種に位置付けるとともに、A類の定期接種の接種費
用の9割を地方交付税措置した。
また、国は、平成 26 年 10 月から、水痘、成人用肺炎球菌の2ワクチンを
定期接種に位置付ける予定である。
しかし、予防接種部会で広く接種を促進していくことが望ましいとされ、
予防接種による予防効果が認められているおたふくかぜ及びB型肝炎の2ワ
クチンの定期接種化が実現されていない。
また、予防接種は、個人の生命・健康を守るとともに、それによる医療体
制の確保や社会経済活動の維持など社会防衛の両面の性格を有するものであ
り、疾病の予防、あるいは重症化を防止することにより医療費の軽減につな
がるものでもあることから、自治体の財政力等や個人の所得格差によって接
種できないケースが生じないよう、等しく接種機会を保障するため、全額国
庫負担とすべきである。
なお、平成 24 年から全国的に風しんの流行が発生し、平成 25 年は、風し
んが全数報告疾患となった平成 20 年以降で、最も多い患者報告数となった。
この流行は、過去に定期予防接種の機会のなかった世代や、定期予防接種制
度の変更のため接種率が低下した世代を中心として感染が拡がっており、先
天性風しん症候群の発生の防止を目的とした風しんの抗体検査や抗体を有し
ていない者に対するワクチン接種の促進を図る必要がある。
そこで、次の事項について特段の措置を講じられるよう提言する。
1 おたふくかぜ及びB型肝炎の2ワクチンについても、速やかに定期接種
に位置付けること。
2 定期接種化された予防接種に係る費用については、全国一律に予防接種
が推進されるよう国において全額財源措置を行うこと。
15
3 風しんをはじめとする定期接種対象疾病が流行した際には、定期接種の
機会がなかった年齢層等に対して、地方交付税措置を伴う定期接種を実施
するとともに、国の責任において、任意接種分を含めたワクチンの必要量
の確保に努めること。
4 子宮頸がん予防ワクチンの副反応については、国の責任において、効果
と副作用に関する情報をわかりやすく提供するとともに、副作用の原因解
明及び副作用が起きやすい人の分析を早急に進め、積極的勧奨の再開の是
非について判断すること。
16
10 肝炎治療特別促進事業の円滑な実施等について
国では、肝炎治療特別促進事業として、B型・C型慢性肝炎等に対するウ
イルス性肝炎の根治を目的とするインターフェロン治療及びB型慢性肝疾
患に対する核酸アナログ製剤治療への助成制度を実施している。
しかし、肝炎治療特別促進事業については、平成 20 年4月から7年間の
時限措置となっており、肝炎患者等の経済的負担軽減のためには、平成 27
年度以降も継続的な実施が必要である。
また、対象医療については、これまでも随時、拡充されているが、肝炎治
療に有効と認められる新たな治療法や、患者団体等から要望がある、肝炎の
鎮静化や発がんの抑止を目的としたインターフェロン少量長期投与療法や、
肝機能を改善し、肝炎の鎮静化を目指す肝庇護療法等の有効性について検討
した上で、さらなる拡大を図る必要がある。
一方、過去の集団予防接種の注射器使い回しや、肝炎ウイルスが混じった
血液凝固因子製剤等の投与による薬害肝炎の感染者の救済については、訴訟
で原因が認められれば、症状に応じて国から給付金が支払われるが、因果関
係の証明が困難等の理由により、提訴できない感染者や制度を知らない対象
者も多く、救済は進んでいない。
そこで、次の事項について特段の措置を講じられるよう提言する。
1 肝炎治療特別促進事業の時限措置を撤廃し、今後も継続すること。
2 対象医療については、新たな治療法等の有効性を速やかに検討し、拡大
を図ること。
3 感染被害者への救済制度のさらなる周知や公平な補償、救済を図ること。
17
11 地域医療提供体制の整備に対する支援について
近年の産科・小児科等の診療科における深刻な医師不足や救急患者の増加
による救急医療機関の疲弊など、地域医療は様々な課題に直面している。国
においては、平成 24 年2月に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」
において、病院・病床機能の分化・強化、在宅医療の推進など、今後の見直
しの方向性を示し、平成 26 年度予算において「医療・介護サービスの提供
体制改革のための新たな財政支援制度」を創設し、在宅医療や医療従事者等
の確保等に対する予算措置等が行なわれたところである。
こうした中、地域医療を維持する上で重要な、救急医療、周産期医療等の
不採算部門の運営費助成や設備整備助成である「医療提供体制推進事業費補
助金」については、平成 23 年度、平成 24 年度に引き続き、平成 25 年度も
大幅な減額調整(各都道府県の事業計画に対し内示率は一律、運営費 69.6%、
設備整備費 65.2%、全体では 69.3%)がされ、医療提供体制の整備の推進
及び関係機関の事業の実施に支障を来たしていることから、次の事項につい
て、特段の措置を講じられるよう提言する。
「医療提供体制推進事業費補助金」は、地域医療を維持するうえで必要不
可欠な補助金であることから、各都道府県の事業計画規模を踏まえた予算措
置を行うこと。
18
12 デフレ経済からの本格的な脱却と持続的な経済成長の実現
について
政府・日銀において「大胆な金融政策」
、
「機動的な財政政策」及び「民間
投資を喚起する成長戦略」が進められた結果、行き過ぎた円高の是正や株価
の回復、実質 GDP の上昇など、日本経済は再生に向けた兆しを見せている。
一方で、中小企業・小規模事業者や、農林水産業等の地域産業においては、
原材料費や電気・燃料費の増加の影響等により、
景気回復の実感に遅れが見ら
れる。また、消費税引き上げの影響についても、引き続き注視が必要な状況
にある。
政府・日銀においては、引き続き、海外の経済情勢や為替の動向に注視し
つつ、デフレ経済からの本格的な脱却と、都市・地方がともに持続的な経済成
長を実現するため、次のような方策を講じられるよう提言する。
1 大胆な為替・金融政策に加え、当面は柔軟な姿勢で財政健全化に臨むと
ともに、財政出動を拡大し、名目 GDP を高めることを目指した経済対策を
検討・実施すること。
2 電気・燃料費等の増加に対する負担軽減措置など、中小企業・小規模事業
者や農林水産業等の地域産業に対する支援策を早急に講じること。また、
消費税の引き上げについても、その影響に適切に対処すること。
3 「日本再興戦略」に盛り込まれた施策の着実な実施とともに、第 2 弾の
成長戦略においては、地方産業競争力協議会の検討を踏まえ、更なる規制
改革や、地域イノベーションの支援など地方に視点を置いた戦略について
反映をさせること。また、国家戦略特区については、対象地域や特例措置
の追加を検討すること。
19
13 地域を支える有料道路の維持・更新にかかる枠組みの改正に
ついて
我が国の有料道路制度は、道路整備の促進のため、利用者に対して直接
負担を求めるものである。しかし、世界的な動きに目を向けると、整備目的
としてだけではなく、ロードプライシングのように交通流動を管理する手段
として、料金に新たな役割が与えられるようになってきている。また、老朽
化する道路施設の更新も含め、健全に維持できるよう適切に対応することが
重要になってきている。
平成26年の通常国会では高速道路の橋・トンネル等の更新等の費用を捻
出するため道路整備特別措置法等が改正されるとともに、国土幹線道路部会
において渋滞課金の議論が始められた。今後は、地方有料道路についても道
路を継続的に機能させながら日常の維持管理、修繕および更新が行えるよう
な新たな仕組みに変えていく必要がある。
ついては、有料道路制度の新たな仕組みづくりに向け、次の事項について
提言する。
1 地方有料道路についても大規模修繕や更新に加え、日常の維持管理にか
かる費用の確保が課題となっていることから、高速道路に関する道路整備
特別措置法等の改正に引き続き、地域の実情も踏まえた維持・更新費用の
確保や交通流動を管理するための手段として料金徴収の目的を幅広く捉え
た新たな仕組みを構築すること。
2 新たな制度の構築に向けて、料金徴収期間経過後も適正な水準で維持修
繕できるよう、限定的な事例に留まっている道路整備特別措置法第15条に
ついて、地方分権の観点からの適用要件の見直しや届出制への変更による
制度の緩和をすること。
20
14 総合的な流木対策の推進について
近年、台風や集中豪雨等による大きな出水により発生流出した流木等は、
河川の流水を阻害し、人家や田畑への被害を拡大するとともに、海岸に大量
に漂着し、海岸保全施設の機能障害、定置網の損傷など多岐にわたる大きな
被害を生じさせている。
国では、これまで、林野庁と国土交通省による「ダム貯水池における流木
流入災害の防止対策」や、国土交通省による「神通川流域における流木対策」
について検討がなされてきた。
また、国土交通省では、ハード・ソフトの両面から総合的に土砂の流出や
流木による被害を軽減し、自然環境豊かで災害に強い地域づくりを実施する
「里山砂防」が推進されているところである。林野庁においても、渓流沿い
に堆積又は倒伏している危険木等の除去、林内での安定化等が計画的に実施
できる「流木防止総合対策」などの森林保全・整備施策が推進されており、
上流域における両者の連携した流木対策が期待される。
一方、上流域における流木対策は広範囲にわたり長い期間を要することか
ら、これと併行して中・下流域での流木対策を進める必要があるが、中・下流
域での流木対策として最も効果的とされるダム湖における流木捕捉施設の
設置については、強度や回収処理方法等の問題があるため、今後の研究開発
が望まれるところである。
ついては、関係省庁による緊密な連携・協力のもと総合的な流木対策の検
討と推進を図るとともに、次の事項について特段の措置を講じられるよう提
言する。
1 ダム湖における流木の安全な捕捉施設と効率的な回収処理方法の早期
開発と整備の推進を図ること。
2 渓流等における流木対策施設整備の推進を図ること。
3 災害発生源となるおそれのある荒廃森林の整備の推進を図ること。
21
15 森林整備法人の経営改善の支援について
林業公社等の森林整備法人は、分収造林事業を推進することにより国の拡
大造林施策を担い、森林の適正な管理を通じた公益的機能の発揮に寄与する
とともに山村の振興に大きく貢献してきた。
しかしながら、立木を伐採するまで収入が得られないため事業に要する借
入金と利子負担が累増し、全国での借入金は約1兆円に及んでいる。
また、木材価格の低迷等による採算性の悪化も懸念されることから、経営
改善への取組は、森林整備法人自らの努力や県・市による支援策だけではも
はや限界に達している。
こうした中、平成20年11月に国と地方の代表によって「林業公社の経
営対策等に関する検討会」が設置され、平成21年6月に示された報告書に
基づき国による一定の支援策拡充が図られたところであるが、未だ抜本的な
解決策とは言い難く、次の更なる支援措置を講じられるよう提言する。
1 株式会社日本政策金融公庫について、既往債務の償還期限を伐採時期に
合わせた償還とする資金制度を創設するとともに、利子負担を軽減する措
置を行うこと。
なお、地方自治体が林業公社等から債務を引き受けた場合においても、
同様の措置を講じること。
2 森林整備法人への利子補給及び無利子貸付に係る県の利子負担分に対
する特別交付税の措置率を更に引き上げること。
3 長伐期施業等に対応するため必要となる分収造林契約の変更を円滑に
推進するため、契約相手方の一定数の同意で契約変更が可能となるよう所
要の制度見直しを行うこと。
22
16 医療人材の確保対策について
医師確保対策については、これまで、全国知事会において、医師の地域偏
在や特定の診療科における偏在の改善に関する種々の要望を行なってきたと
ころ、国においては、医師不足県の大学医学部や自治医科大学の入学定員の
暫定的な増員を認めるとともに、産科医療補償制度が運営されるなど、一定
の進展が図られていることは、評価するものである。
しかしながら、診療科偏在やへき地における医師不足問題に関しては、依
然として、具体的かつ効果的な対策が提示されていない。地方においては、
へき地医療機関ばかりでなく、救急医療等を担う中核病院においても医師不
足が深刻であり、軽症患者の時間外診療の増加による勤務医の疲弊などがみ
られるほか、分娩を取り扱う産科施設が急速に減少するなど病院診療科の休
止・廃止も相次いでおり、地域医療の崩壊が危惧される事態となっている。
また、看護職員確保対策については、離職率の高止まりなどから、依然と
して看護職員の不足が地域医療の課題の一つとなっている。更に新人看護職
員の確保も厳しい状況となる中、結婚・出産・育児等により離職した未就業
看護職員の再就業は即戦力として大いに期待されるところである。
平成16年度の新臨床研修制度の導入に伴う、地方における医師不足の拡
大問題や、今般の看護職員不足の問題など、国においては、医療人材の確保
が国民の健康と生命に直結する最重要の課題であることに鑑み、地域の実情
に十分配慮し万全を期して対応されることを強く要望するとともに、次の事
項について早急に対策を講じられるよう提言する。
1 医師確保対策
(1) 病院・診療所の管理者となる要件にへき地医療や周産期医療など地域
医療で特に必要性の高い分野における一定期間の診療経験を追加する
など、抜本的な対策に取り組むこと。
(2) 地域における医師の効果的な配置については、県が中心となって、地
域の医療関係者等との協議により調整していくこととされているが、国
において、その前提となる配置基準や調整指針等を策定すること。
(3) 女性医師が増加している現況に鑑み、産休・育休後も継続して働き続
けることができるよう、働きながらの育児に対する支援策の充実等、勤
23
務環境の整備に努めること。
(4) 救急患者を受け入れる病院に軽症患者が過度に集中し、病院勤務医の
負担を増大させていることから、「かかりつけ医」の普及や救急医療の
受診のあり方について、国民の意識改革につながるような、全国的なキ
ャンペーンを実施すること。
(5) 医学部入学定員の増員に伴って、各県が創設した奨学金制度について、
国の十分な財政支援策を講ずること。
2 看護職員確保対策
(1) 未就業看護職員の把握が困難な状況のなか、現在、国で「看護師復職
支援のための届出制度」が検討されているが、離職による未就業看護職
員を含めた看護職員の実態把握を確実に行える制度にするとともに、再
就業促進に活用できるような方策を講じること。
(2) 未就業看護職員が働きながら実務研修を受けるOJT研修や多様な
勤務形態の導入・拡充を支援する制度の創設など、看護職員の再就業を
促進する方策を講じること。
24
17 リニア中央新幹線の東京・大阪間早期全線整備について
リニア中央新幹線は、東京・名古屋・大阪間の時間距離を大幅に短縮し、
関東、中部、近畿の各地域間の交流・連携を一層強化し、わが国の新たな国土
の大動脈として、経済社会を支え、東京・大阪間の多重系化による災害に強
い国土の形成、ゆとりある生活の実現に大きく貢献するとともに、内陸部に
おける発展を促進する極めて重要な社会基盤である。
また、持続可能な地域の形成、エネルギー問題、環境問題においても、優
れた特性をもつ大量高速輸送機関として期待されている。
国家的プロジェクトであるリニア中央新幹線は、
平成 23 年 5 月に全国新幹
線鉄道整備法に基づく整備計画が決定され、東海旅客鉄道株式会社に対して
建設の指示が出されている。東京都・名古屋市間においては環境影響評価の
手続を経て、本年内にも全国新幹線鉄道整備法に基づく工事実施計画の認可
が見込まれるが、リニア中央新幹線の整備は、東京・大阪間を直結すること
で初めてその機能を十分に発揮し、効果を得ることができる事業である。
そこで、リニア中央新幹線の東京・大阪間の早期全線整備に向けて、次の
事項を強く提言する。
1 環境影響評価や、全国新幹線鉄道整備法に基づく工事実施計画の申請・
認可など、必要な手続を着実に進め、早期着工を図ること。
2 技術開発等による大幅なコストダウンに努めるとともに、全線同時開業
のための具体策を早急に検討し、方策を示すこと。
3 名古屋・大阪間についても概略ルート及び駅の概略位置を早期に公表し、
環境影響評価の手続に着手すること。
4 リニア中央新幹線の早期建設のため、農地転用に関する行政手続等につ
いて、整備新幹線と同様に取り扱うこと。また、大深度地下使用に関する
行政手続きが円滑に進められるよう、所要の措置を取ること。
5 今後のリニア中央新幹線の推進にあたっては、地域の発展に資するよう、
駅設置に関することなど地域の意向を十分反映させること。
駅周辺のまちづくりに関する支援など、地域の活性化に資するための施
策を積極的に講じること。
25
18 新たな高速鉄道と在来線が連携した幹線鉄道ネットワーク
の高い機能発揮ができる環境整備の推進について
広域的な地域間の交流・連携を強化し地域の活性化を図る観点から、リニ
ア中央新幹線や北陸新幹線といった高速交通体系を形成する新幹線の整備が
進められている。
これらは、わが国の新たな国土の大動脈として、経済社会を支え、東京・
大阪間の多重系化による災害に強い国土の形成、ゆとりある生活の実現に大
きく貢献するとともに、
国土の発展を促進する極めて重要な社会基盤である。
今後、こうした新たな高速鉄道である新幹線の整備効果を十分発揮させる
ためには、
在来線との結節性の強化及び在来線の機能強化を図り、
より早く、
便利に、快適に国内を移動できる幹線鉄道ネットワーク環境を整えていく必
要がある。また、幹線鉄道ネットワークは、地域特性を活かした産業や観光
の振興など、独自の魅力を発揮する地域づくりに取り組んでいくうえでも重
要であることから、次の事項を提言する。
1 幹線鉄道ネットワークが全体として高い機能を発揮するため、新幹線と
在来線の接続改善や、在来線における鉄道会社相互間の直通列車の乗り入
れ、列車運行本数の増加、電化及び複線化などの機能強化を推進すること。
2 北陸新幹線が敦賀まで整備された際、北陸と中京との良好なアクセス環
境を確保するため、敦賀駅での乗り換え利便性の低下を回避するための対
策を講じること。
26
19 災害廃棄物処理計画に対する支援について
我が国は世界有数の地震国であり、大規模な地震が発生した場合、膨大な
量の災害廃棄物が発生し、それが復旧・復興の妨げとなれば、国民生活や国
内外の産業・経済に多大な影響を与える。
国は、東日本大震災を踏まえ、大規模災害時における廃棄物処理を適正か
つ迅速に行うための基本的事項をまとめた災害廃棄物対策指針を策定した。
同指針では、地方自治体は地域防災計画と整合をとりながら災害廃棄物処理
計画の策定を行うこととされている。
大規模災害からの速やかな復旧・復興を進めるためには、各県で広域処理
体制の構築を含め、災害廃棄物を適正かつ迅速に処理する実効性のある災害
廃棄物処理計画を策定する必要がある。
併せて、地方自治体が災害廃棄物の適正かつ迅速な処理を行うためには、
国有地などの円滑な活用を図り、災害廃棄物の仮置場を確保することも必要
である。
ついては、次の事項について特段の措置を講じられるよう提言する。
地方自治体が国の災害廃棄物対策指針に基づいて、災害廃棄物処理計画の
策定や廃棄物処理施設の耐震化などが円滑に行えるよう、財政措置を含め、
必要な支援を行うとともに、災害廃棄物の適正かつ迅速な処理を行えるよう、
国有地などの活用のために必要な措置を講じること。
27
20 「地方目線」の少子化対策について
現在、我が国の少子化はとどまる気配はなく、国の閉塞感につながる危機
的な状況に直面している。これまで保育サービスの拡充など子育て支援の充
実を中心とした対策が講じられてきたが、今後は、子育て家庭に対する総合
的な支援策の着実な推進とともに、出産や子どもの成長に合わせた多様な働
き方が可能となる雇用環境の整備や、未婚化・晩婚化対策などの取り組みの
抜本的な強化を図っていく必要がある。
また、少子化の要因やその課題、必要な対策などは地域ごとに大きく異な
ることから地方が創意工夫を活かし、雇用対策から結婚、妊娠・出産、子育
てを通じた「地方目線」
「当事者目線」の対策を集中的に展開していくこと
が必要である。
政府においては、新たに「地域少子化対策強化交付金」を創設し、対策に
取り組んでいるところであるが、将来きたるべき国家的危機を回避するため、
今が少子化対策を国策の中心に据えて、その抜本的な強化に取り組む、最後
のチャンスといえるので、以下の事項について提言する。
1 持続した少子化対策を講じるための安定した財源の確保
出生率を回復させた諸外国の例なども参考にしながら、未来への投資と
して、少子化対策を講じるための財源をさらに確保すること。
また、各地域が創意工夫して、
「子ども・思春期」
「結婚」
「妊娠・出産」
「子育て」のライフステージごとに、働き方も含め、
「地方目線」
「当事者
目線」で、きめ細かな少子化対策が継続的かつ柔軟に実施できるよう、地
域少子化対策強化交付金を継続・拡充すること。
2 少子化対策に関する総合的な目標設定
少子化対策を長期的に取り組むべき重点的な政策課題として位置づけた
上で、その本気度を国民に伝えるために、少子化対策に関するわかりやす
い政策目標を設定し、PDCAサイクルを回すことで、取組の進捗状況を
「見える化」すること。また、目標を設定するにあたっては、国民に対し
て個人単位の目標ではないこと等を丁寧に説明すること。
その上で、国民が「安心して結婚し、妊娠・出産・子育てができる」と
期待できるよう、少子化対策に関する取組を促進させるための税制の検討
を含め、できうる限りの取組を進めること。
28
3 子ども・思春期、結婚、妊娠・出産
(1)ライフプラン教育の推進
子ども・思春期からのライフプラン教育を行う中で、親子や友人、地域
との関係の在り方を含め、多様な家族観や、医学的な見地からみた妊娠・
出産の時期、中絶による母体への影響などについても学べるように配慮す
ること。
また、社会の変化に対応し、一人ひとりが主体的に進路を選択・決定で
きる能力や勤労観・職業観を身に付け、自立した社会の担い手として育つ
よう、子どもの発達の段階に応じたキャリア教育を行うこと。
(2)未婚化・晩婚化対策
少子化の大きな要因の一つとなっている未婚化・晩婚化について、個人
の意思を尊重しつつ、これまでの対策が弱かった現状をふまえ、例えば出
会いの場を構築する地方への財政的支援や、政府広報を活用した結婚ポジ
ティブ・キャンペーンなどにより社会全体で結婚を応援する機運づくりを
進めるなど、国が主体となった積極的な対策を講じること。
(3)企業と若者をつなぐための事業
若者が結婚し、子育てできるようにしていくためには経済的な基盤が重
要であることから、安定的な雇用(正規雇用)に向けて、若者がスキルや
職業観・意識を身に着ける必要がある。また、正規雇用の若者でも、3年
以内の離職者が約3割(大卒)となるなど、大きな問題となっているが、
就職活動時のミスマッチの要素が大きく、学生、企業の相互理解が重要で
ある。 このため、不安定就労の未然防止のため、インターンシップや若者
への企業からの情報発信の制度を充実させること。
(4)産前産後から子育てに至るまで切れ目のない支援体制づくり
働く女性の妊娠・出産については、さまざまな法律で権利が保護されて
いるものの支援制度が十分活用できていない状況がある。働く女性が安心
して妊娠・出産し、夫婦で子育てしながら仕事を継続できるよう、企業等
に対して、マタニティ・ハラスメント、パタニティ・ハラスメント防止の
取組と、支援制度の整備や支援制度を利用しやすい職場風土の醸成に関す
る働きかけを強めること。
また、産科退院後の悩みや孤立からの育児不安の軽減を図るため、国に
29
おいて産後ケアにかかるモデル事業が開始されたところであるが、例えば、
フィンランドの家族支援のしくみであるネウボラのように地域で妊産婦や
家族を支えるような取組を行う地方を支援するなど、産前・産後からさら
に子育てまで切れ目なく支援ができるようなしくみづくりを推進すること。
(5)不妊・不育症治療への支援の拡充
① 特定不妊治療の見直しについて、引き続き、広く国民に対して周知を
図るとともに、第2子以降の治療における助成通算回数の制限について
見直しを行うこと。また、例えば、凍結融解胚移植など治療効果の高い
治療法についての助成の引き上げるとともに、特定不妊治療に対する医
療保険適用など経済的支援の拡充を図ること。さらに、不育症に対する
公的助成制度を創設すること。
② 男性不妊治療を行う場合は特に医療費が高額となることから、男性不
妊治療に対する経済的支援の拡充を図ること。また、男性不妊について
の知識の普及と啓発に取り組むこと。
③ 治療機関における相談支援の充実を図るため、不妊症看護認定看護師
資格の取得について支援すること。
④ 不妊治療と仕事を両立するため、不妊治療のための休暇が取得しやす
くなるよう、治療に関する正しい知識の普及を通じて周囲の理解を促進
しながら、企業における休暇制度の導入を働きかけること。
(6)周産期医療体制の充実
産婦人科医や小児科医の不足や地域偏在の深刻化、あるいは医師の高齢
化が進む中、安心して妊娠出産に臨める医療環境の実現が必要である。地
方レベルの取組には限界があり、今後、社会保障制度改革国民会議等の議
論も踏まえ、産婦人科及び小児科医の養成・確保対策、診療報酬制度の改
善等、国レベルの対策をしっかりと講じること。
(7)NICU長期入院児等の在宅医療にかかるレスパイトへの財政措置の
拡大
NICU長期入院児等の在宅移行を促進するため、家族の要請に応じて
重症児を一時的に受け入れるレスパイト病床の確保、運営等への財政措置
を拡充すること。また、自宅に訪問看護師が訪問する訪問型レスパイトや、
病院に訪問看護師が訪問するオープン型レスパイトなど、家族の支援を目
30
的とする訪問看護の実施等に対する財政措置を創設すること。
4 育児
(1)保育環境等の充実
① 待機児童が増えている都市部のみならず、子どもが減っている地域に
おいても、質の確保された幼児教育・保育が受けられる支援体制の充実
が重要なため、教育・保育の施設整備および人材確保等による量の確保
にあわせて、教育・保育に従事する職員の配置基準および処遇の改善、
さらに資質向上などの質の改善に早期に着実に取り組むこと。
② 同時入所に限定せず、第2子、第3子の保育料を軽減または無料化す
ること。
③ 小学校入学後の子どもを持つ親が安心して働けるよう、放課後児童指
導員の給与を含めた処遇改善など必要な財源措置を講ずるとともに、小
規模な放課後児童クラブ等に対しても支援を充実させること。
(2)男性の育児参画の推進について
第2子以降の出生に影響を及ぼすといわれている「男性の育児参画」に
ついて、ポジティブ・キャンペーンを実施すること。また、地方における
男性の育児参画を推進する取組を支援すること。
(3)仕事と家庭の両立支援や子育て支援制度の充実
改正次世代育成支援対策推進法については、恒久化を検討すること。
また、取組企業の拡大を図るため、中小企業が取り組みやすい認定基準
を設定することや、制度広く周知するとともに、新たな経済的優遇措置を
創設すること。
さらに、行動計画策定指針については、
「結婚支援」や「ライフプラン教
育」など少子化対策の動向をふまえた内容を盛り込み、各主体の計画的な
取組を促すこと。
31
21 中山間地域等の農業振興施策の充実・強化について
今般の国の農政改革により、40 年以上続けられてきた米の生産調整手法や
助成内容が大幅に見直されるなど、農家経営や地域農業への大きな影響が予
想される。
特に、今回の改革は、経営規模の拡大やコストの低減を進めるといった「農
業の競争力強化」を強く打ち出しており、農地の条件に恵まれず大幅なコス
ト削減が困難な中山間地域等の農業の持続的な発展や、人々が農村に暮らし
続けることができる農業を実現するための施策については、更なる充実強化
が必要となっている。
ついては、中山間地域農業の維持・発展のため、次の事項について特段の
措置を講じられるよう提言する。
1 国の農政改革に伴う農業・農村への影響について、地域別の詳細な分析
を行い、結果を早急に公表するとともに、我が国の農地の4割を占める中
山間地域において、持続的発展が可能な農業の姿を早期に示すこと。
2 中山間地域において、地域の実情に合わせた新たな作物の導入や機械・
施設等の整備、付加価値化を高める6次産業化の取組などを加速していく
ための支援策を強化すること。
32
22 農林水産物・食品の輸出拡大に向けた環境整備について
国では「農林水産業・地域の活力創造プラン」において、今後 10 年間で倍
増するグローバルな「食市場」の獲得を目指して、2020 年に農林水産物・食
品の輸出額を1兆円とする目標を掲げ、国別・品目別輸出戦略を策定して輸
出促進を一体的に展開することとしており、官民が一体となり国際的なマー
ケットに向けて、高品質で「安全・安心」な我が国の農林水産物をアピール
していく必要がある。
特にアジア地域は、経済発展に伴う富裕層の増加等により魅力あるマーケ
ットとして成長しているものの、農林水産物・食品の輸出に関する事務手続
が、煩雑で長期にわたるものがあり、輸出に取り組もうとする事業者にとっ
て、大きな支障や、輸出断念につながる事例が見受けられる。
また、輸出先国によっては、現地検疫官を招いての園地検査や病害虫の調
査、輸出時の封入確認など厳しい対応が求められるため、事業者や産地の負
担となり、輸出のチャンスを狭める結果となっている。
ついては、国別・品目別輸出戦略が効果的なものとなり、農林水産物・食
品の輸出が拡大するよう、次の事項について特段の措置を講じられるよう提
言する。
農林水産物・食品の輸出拡大の障壁になっている輸出先国の検疫条件等の
規制緩和に取り組むこと。
33
23 我が国とブラジルの交流促進のための査証免除について
既に世界では66ヶ国地域、中南米では12ヶ国が短期査証免除になって
いるが、我が国とブラジルは自治体交流や企業進出も含めて多種多様なチャ
ンネルにて交流があり、世界最大の日系人コミュニティ(約150万人)
、
つまり「日本応援団」が存在するにもかかわらず、商用の数次査証が認めら
れているだけという状況となっている。
国際的な政治経済において、益々存在感を増大させている新興国ブラジル
を、我が国にとって真の重要なパートナーとして関係を深化させることは、
今後の我が国の経済成長等において極めて有効である。今後、ブラジルでの
2014 年サッカーW杯開催、2016 年リオデジャネイロオリンピック開催等の
「黄金の 10 年」を迎え、他国が南米最大のブラジルマーケットに急速に攻
勢をかけることが予想される中、我が国が一層の交流促進を行い、需要を取
り込むことが我が国経済全体や各地域社会の発展、我が国の成長戦略の一つ
である観光立国の推進など様々な方面に寄与し、大きな効果をもたらすこと
は必至である。特に、昨年、2020 年オリンピックの東京開催が決定したとこ
ろ、2016 年開催国であるブラジルとの交流促進は、東京オリンピックの成功
に貢献するものと考える。
また、日系人の方々が、ふるさとに里帰りをしたい、あるいはその子弟の
みなさんにも日本を知っていただいて日本のファンでいてもらう、そのよう
な草の根の絆が、我が国が行っているクールジャパン等にも通じるだけでは
なく、本来の国家安全保障や世界における我が国のプレゼンスの発揮につな
がるものである。
ついては、次の事項について特段の措置を講じられるよう提言する。
1 我が国とブラジルの一層の交流促進のため、二国間において査証免除協
定締結の実現を図ること。
2 当面の措置として、ブラジル人に対する観光、親族訪問等を目的とした
短期滞在数次査証交付の早期導入を実施すること(観光、親族訪問等の目
34
的で日本に滞在する場合、一定の審査条件(収入等)を課したうえで、最
低でも1年若しくは3年有効の短期滞在数次査証を交付)
。
また、日本人に対する観光、親族訪問等を目的とした短期滞在数次査証
の有効期間を90日から3年に延長するようブラジル政府に働きかける
こと。
3 その上で、直近でタイやマレーシアに対して実施したように、短期滞在
数次査証交付を1年間程度実施した後、ブラジルとの間で査証免除という
ステップへ進むこと。
35
24 漂流・漂着物に対する総合対策の確立について
日本海沿岸では、
毎年冬季を中心に対岸諸国のものと思われる大量のポリタ
ンク、木材等や貨物船の遭難・荷崩れによる積荷などの漂着物の処理に苦慮
している。
これらの処理にあたっては、
地方自治体が原因の究明及び処理方法の決定、
処理費用の求償交渉などを行っているが、単独の取り組みには限界がある。
また、中部圏各地の海岸等には、漁業や住民の生活に大きな影響を与える
大量のごみや流木等が漂流・漂着しており、その処理に苦慮している。
このようなことから、漂流・漂着物問題の早期解決を図るため、次の事項
について早急に対策を講じられるよう提言する。
1 日本海沿岸諸国に対し、廃棄物の適正処理、漂着物の原因の究明とその
防止策、監視体制の強化などを国において働きかけること。
2 外国や外国籍の船舶などが漂着物の原因者である場合、処理費用の求償
等について国際的に調整する国レベルの漂着物対策調整機関を設立する
こと。
3 漂流・漂着物の処理に係る補助事業の採択基準を緩和するなど、実効あ
る制度とすること。
4 漂着の未然防止や漂着物の処理等に要する経費について、法に基づき、
十分かつ恒久的な財政措置を講ずること。
併せて、漂着の未然防止に要する経費については、漂流物や河川ごみの
回収・処理についても財政措置の対象とすること。
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25 国民体育大会の開催及び選手の育成・強化について
国民体育大会については、2013年3月に(公財)日本体育協会により
「21世紀の国体像 ~ 国体ムーブメントの推進 ~ 」が取りまとめられる
など、国民体育大会の充実・活性化に向けた改革が進められている。
一方で、スポーツ基本法においては、
「国民体育大会は、公益財団法人日本
体育協会、国及び開催地の都道府県が共同して開催」し、
「国は、国民体育大
会の円滑な実施及び運営に資するため、これらの開催者である公益財団法人
日本体育協会及び開催地の都道府県に対し、必要な援助を行うもの」とされ
ている。
しかし、国民体育大会の開催経費は、大部分が開催地の都道府県と会場地
となる市町村の負担となっており、全国的に財政状況が厳しい中、開催地の
地方自治体においては施設整備を含む大会運営に関わる人的・財政的負担は
依然として大きなものとなっている。
こうしたことから、開催地の地方自治体の意見を十分に反映した新しい形
での魅力ある国民体育大会の実現、及びスポーツ基本法に定める共同開催の
理念に基づき、開催地の地方自治体への財政支援の強化が急務である。
また、2020年東京オリンピックの開催決定は、多くの国民に夢と希望
をもたらすものであり、
スポーツに対する国民の関心の高まりも期待される。
今後、国民体育大会のみならずオリンピックで活躍できる選手の育成・強化
がますます重要となってくる。ついては、次の事項について提言する。
1
開催地の地方自治体の実情に応じた大会運営ができるよう、施設基準の
弾力的な運用など簡素・効率化を進めること。加えて、魅力ある国民体育
大会とするため、地方自治体の独自性を生かすとともに、トップアスリー
トが参加しやすい大会となるよう環境整備を図ること。
また、これらの実現に向け共同主催者3者(文部科学省、
(公財)日本
体育協会、開催都道府県)による検討を進めること。
2 開催地の都道府県内に適当な施設がなく、競技会場の選定が難しい競技
については、会場地のローテーション化や競技会場の固定化の検討を進め
ること。なお、その際には、当該競技会場地となる地方自治体に、人的財
政的負担が生じることのないよう措置を講じること。
37
3 大会運営費に対する支援を充実するとともに、施設整備費に対し、社会
資本整備総合交付金やスポーツ振興くじ(toto)助成など必要な予算を確
保すること。また、競技の特性上、開催可能な都道府県が限られる冬季大
会については、更なる支援の充実・拡大を図ること。
4 東京オリンピック開催決定を契機に、インフラ整備等の投資については、
東京だけでなく地方も重視し、オリンピック開催の効果が日本全体に波及
するように努めること。
また、競技力向上に向けた各種大会や外国人選手のキャンプなどを国内
各地に分散させるなど、最高レベルの競技を身近に感じることで、スポー
ツの裾野が広がり、選手の育成・強化につながるように努めること。
5 オリンピック競技種目のうち、国民体育大会で未実施の競技種目を新た
に導入するに当たっては、当該競技種目の普及度合いや競技施設、宿泊施
設の不足など地方の実情を総合的に勘案するとともに、新たに地方に人
的・財政的負担が生じないよう措置すること。
38
26 多文化共生社会づくりの推進について
我が国には多くの外国人住民が暮らしており、社会経済のグローバル化の
進展などを背景に、中部9県では、在留外国人数が約45万人(平成25年
12月末現在)に達し、全国的にも在留外国人が極めて多い地域となってい
る。
こうした外国人住民は、我が国の経済活動を支える上で大きな力となって
いる一方で、労働、教育等の分野で様々な課題が顕在化している。
国においても、このような状況を踏まえ、平成26年3月に新たな行動計
画である「日系定住外国人施策の推進について」を策定するとともに、種々
の環境整備を進めているが、依然として様々な課題が存在している。
また、震災復興・オリンピック関連で労働力の不足が見込まれる中、外国
人労働者の受入れ拡大の方針が示されたが、技能実習生を含めた外国人の就
労環境の適正化に向けた取組を引き続き進める必要がある。
外国人住民と日本人住民が相互に理解し合い、安心して快適に暮らせる多
文化共生社会づくりの推進に向け、次のとおり提言する。
1 「日系定住外国人施策の推進について(平成26年3月31日)
」に盛
り込まれた、外国人の子どもに対する教育の充実、外国人の雇用の安定な
どの施策を着実に実施すること。
2 中長期的な視点に立った、外国人全般の受入れの方針及び外国人の日本
社会への適応に向けた施策に係る体系的・総合的な方針を策定すること。
39
27 エネルギーインフラの整備について
重要なエネルギーインフラのひとつであるガスパイプライン網は、ガス事
業者等がそれぞれの経営判断から、
沿線需要の伸びにあわせて構築してきた。
このため、都市間を結ぶ広域パイプラインは、国内各地で部分的な整備が
行われており、わが国のエネルギー供給に関するビジョンを欠いたまま、ネ
ットワークが寸断されている状況にある。
現在、都市間パイプラインとして、新たに「三重滋賀ライン」が整備され、
また「富山ライン」等が整備中であるが、中部圏において日本海側と太平洋
側を結ぶパイプラインのネットワークは未整備である。
南海トラフ巨大地震等を想定したエネルギー供給リスクの分散、バックア
ップ機能強化のためには、国として広域的なパイプライン網を構想すべきで
あり、中部圏においては「三重滋賀ライン」の北進と「富山ライン」の南進
による、広域パイプラインの整備が急務である。
ついては、中部圏におけるエネルギーインフラの整備を進めることについ
て、次のとおり提言する。
1 南海トラフ巨大地震等、災害リスクに備えた国土強靭化の観点から、L
NGパイプラインの整備について、国が主体的に整備構想を策定すること。
2 ガスパイプラインの整備について、規制緩和や許認可手続きの迅速化・
簡素化を行うこと。
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28 中部国際空港の機能強化(完全 24 時間化)の実現について
我が国が、景気回復に向けた動きを確固たるものにし、今後更なる成長
を実現するためには、日本の成長エンジンである当地域が、アジア新興国の
成長等を取り込み、一段と国際競争力を高め、我が国経済を牽引していく必
要がある。
また、リニア中央新幹線の開通による首都圏と直結した巨大都市圏の誕生
という大きなインパクトの活用や、首都圏への一極集中による弊害を是正す
る国の中枢機能の分担などに、適切に対応しなければならない。
このため、我が国の国際ゲートウェイの一翼を担う中部国際空港の機能強
化(完全 24 時間化)を実現することが不可欠である。
併せて、地域と国内外とを直結する航空ネットワークの維持・充実も不可
欠であることから、航空需要の拡大のため、エアポートセールスや、中部国
際空港利用促進協議会を中心としたインバウンド促進事業など様々な事業を
地域関係者が一丸となって積極的に進めているところである。
ついては、中部国際空港の機能強化(完全 24 時間化)の実現に向けて、次
の事項について特段の措置を講じられることを提言する。
1 国においては、我が国の中枢機能を分担することなどこの地域の将来の
姿を見据え、国が主体となって必要な調査検討を行うこと。
2 中部国際空港の完全24時間化につながるよう、ビジットジャパンキャ
ンペーンなどインバウンド旅客の増加に向けた施策を始めとする航空需
要の拡大の取組を推進すること。
3 空港利用者の利便性向上のため、道路・鉄道等アクセスの充実に取り組
むこと。
41
29 北陸新幹線の早期全線整備について
北陸新幹線は、高速交通体系の中軸として国土の均衡ある発展に不可欠な
ものであり、沿線地域の飛躍的な発展を図るうえで極めて大きな効果をもた
らすものである。
また、東日本大震災を契機に、災害時における交通機能の重要性が改めて
確認されたところであり、多重系の輸送体系の確立による災害に強い強靭な
国土づくりがこれまで以上に求められている。
このような観点から、大規模災害時等においては東海道新幹線の代替補完
機能を有するとともに、日本海国土軸の形成に必要不可欠な国家プロジェク
トである北陸新幹線に求められる役割がこれまで以上に大きくなっており、
東京・大阪間の全線を早期に整備する必要がある。
ついては、「整備新幹線の取扱いについて(平成23年12月26日政
府・与党確認事項)
」を早急に見直し、金沢・敦賀間の早期完成・開業及び
沿線住民の長年の悲願である北陸新幹線のフル規格による全線整備が一日
も早く実現されるよう、次の事項について格段の配慮をされるよう提言する。
1 今年度末までの金沢までの開業が確実に実現するよう、長野から白山総
合車両所までの整備を促進すること。
また、現在建設中の金沢・敦賀間について、工期の大幅な短縮を早急に
図り、早期完成・開業に向けて整備を促進すること。
2 このため、収支採算性に優れた北陸新幹線の事業費として十分な建設財
源を確保するとともに、さらなる新幹線整備を促進すべく、新幹線への公
共事業費の拡充・重点配分、貸付料の活用、必要に応じ借入金の検討等必
要な財源を確保され、整備スキームを見直すこと。
3 東海道新幹線の代替補完機能の確立による災害に強い国土づくりの重
要性等に鑑み、敦賀以西のルート決定に向け、沿線地域の意見を踏まえな
がら調査等を進め、大阪までのフル規格による整備方針を早期に明確化し、
あらゆる手段を尽くして大阪までの早期全通を図ること。
4 地方負担については、沿線の地方自治体に過度の負担が生じないよう、
コスト縮減や国家プロジェクトにふさわしい十分な財政措置を講ずると
42
ともに、各県への停車の配慮など負担に見合う受益の確保を図ること。
5 北陸新幹線開業に伴う並行在来線は、従来にはない長大な区間であり、
地域住民の交通手段であるとともに、国の物流政策や大規模災害時におけ
る物資輸送のリスク分散の観点から極めて重要な貨物鉄道の広域ネット
ワークの一部を担っている。こうした並行在来線の初期投資に係る地方負
担に対しては、財政措置が講じられたところであるが、既に経営が分離さ
れている第3セクターも含め、並行在来線が存続できるよう、引き続きこ
れまでの枠組みの見直し・再検証を行い、JRからの協力・支援のあり方
や並行在来線の赤字解消相当分も含まれている貸付料の活用など新しい
財源措置も含め、新たな仕組みを早急に構築するとともに、設備投資に係
る補助制度の拡充や予算枠の確保など、支援施策の充実を図ること。
6 以上、北陸新幹線の整備促進、並行在来線への支援、地方負担の軽減等
の諸課題に対応するため、公共事業費の拡充・重点配分、JRからの貸付
料の活用など、幅広い観点から十分な財源を確保すること。
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30 治安諸対策の推進について
近年の中部圏の治安情勢は、地方警察官の増員や諸施策の推進に伴い、刑
法犯認知件数が減少するなど、治安情勢を示す各種指標は改善傾向にあるも
のの、侵入盗や自動車盗のほか、恋愛感情等のもつれに起因する暴力的事案
等、住民に大きな不安を与える犯罪が多発している状況にある。
こうしたなか、住民の安全・安心を確保するためには、警察官による街頭
活動を強化し、各種犯罪の未然防止、徹底検挙を図る必要がある。
また、恋愛感情等のもつれに起因する暴力的事案について、被害者等関係
者の安全確保に万全を期すとともに、サイバー犯罪・サイバー攻撃の深刻化
等、新たな治安の脅威に対しても迅速かつ的確に対応していく必要があるが、
中部圏の警察官1人当たりの負担人口、刑法犯認知件数は、依然、全国平均
を大きく上回っていることから、体制の強化が必要不可欠である。
さらに、南海トラフ巨大地震等の発生により太平洋側を中心に甚大な被害
が予測される中部圏においては、東日本大震災を教訓とした大規模災害等に
備えた警察力の確保も共通の課題と認識している。
よって、治安維持に向けた取組を一層強化するとともに、災害発生時にお
いても安心して暮らせる安全な社会を確立するため、次の事項について特段
の措置を講じられるよう提言する。
警察活動における人的基盤の整備を図ること。
44
31 国内航空ネットワークの充実について
航空路線は、広域的な交通・物流を支える重要な役割を担っていることか
ら、羽田空港の発着枠の再配分などにあたり、国内線への配分を十分確保す
るとともに、羽田空港をハブとした国内航空ネットワークを充実することに
より、地方の活性化等を図ることが必要である。
ついては、次の事項について特段の措置を講じられるよう提言する。
1 羽田空港の発着枠の再配分にあたっては、国内航空ネットワークの維持
が図られるよう、国内航空路線とりわけ地方路線に係る評価を重視するこ
と。
2 羽田空港の発着枠を有効に活用し、羽田便の需要喚起、利用者利便の向
上を図るため、乗継割引運賃制度の拡充など、羽田乗継ぎの充実につなが
る適切な指導等を行うこと。
3 航空乗継利用促進協議会において、全国の関係自治体等が行う航空乗継
の利用促進活動に対して、協力・支援を行うこと。
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32 高速・貸切バスの安全確保対策について
平成24年4月、関越自動車道で乗客45人中、7人が死亡、38人が重
軽傷を負う高速ツアーバスの事故を受け、国においては、
「高速・貸切バスの
安全・安心回復プラン」を策定し、新高速乗合バスへの移行・一本化や交替
運転手の配置基準の強化などの事故防止策に取り組んでいるが、平成26年
3月、北陸自動車道で乗客24人中、1人が死亡、23人が重軽傷を負う高
速乗合バスの事故が発生している。
いうまでもなく、輸送の安全確保は、公共交通機関の運行において最優先
の課題であり、このような痛ましい事故が二度と発生しないよう、次のとお
り提言する。
「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」の着実な推進等による運送事
業者や旅行業者に対する指導や道路の安全対策、事故被害者への対応に加え、
平成26年3月に発生した高速乗合バス事故の原因究明を踏まえた更なる
対策等、実効性のある高速・貸切バスの安全確保対策を実施すること。
46
33 豚流行性下痢(PED)対策について
平成25年10月に7年ぶりの国内発生が確認された豚流行性下痢(PE
D)については、全国の養豚関係者による懸命の防疫対策にもかかわらず、
その発生が平成26年5月12日現在で37道県まで拡大するとともに、そ
の感染拡大経路は未だ解明されていない状況にある。
PEDが発生した道県では、
養豚農家及びと畜場に対して車両等の消毒等、
飼養衛生管理基準の徹底を強く指導するなど、PEDウイルスの侵入予防及
び拡散防止対策の強化に取り組んできた。
しかしながら、養豚関係者による官民あげての防疫対策の強化にもかかわ
らず、PEDの発生が沈静化に向かわない状況から、養豚農家やその関係者
からは、感染拡大への不安のみならず、経営への悪影響を懸念する声が大き
くなってきている。
ついては、PEDの一刻も早い沈静化により、我が国養豚産業の維持・発
展を図る必要があることから、次のとおり提言する。
1 養豚農家やと畜場等における防疫対策等の更なる強化と継続的な実施
に向け、
「消費・安全対策交付金」の十分な予算の確保を図ること。
2 ワクチンの安定的かつ継続的な供給体制を構築すること。
3 PEDにより経営に影響を受けた養豚農家等に対して、農林漁業セーフ
ティネット資金の特例措置(無利子化等)を設けるなど、的確かつ十分な
経営支援措置を講じること。
4 発生事例におけるウイルス遺伝子解析などの疫学調査を徹底して行い、
我が国への侵入経路や感染拡大の原因を究明すること。
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