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レーザー光の反射強度を活用した地理情報取得に関する研究(第1年次)

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レーザー光の反射強度を活用した地理情報取得に関する研究(第1年次)
レーザー光の反射強度を活用した地理情報取得に関する研究(第1年次)
実施期間
平成15年度∼平成17年度
地理地殻活動研究センター
地理情報解析研究室 長谷川 裕之 神谷 泉
1.
はじめに
航空レーザー測量は、地面の形状や建物の高さを計測するために広く用いられるようになってきている。近
年のレーザースキャナーでは、距離と共に反射パルス強度を計測できるようになっている。航空写真や一般の光
学センサーと異なり、レーザースキャナーは自分でレーザー光を照射する能動型センサーであるため、天候や建
物の影などにデータ品質が左右されず、地物を分類するのに有効な情報を得ることが出来る。しかし、反射強度
を利用した研究はほとんどなされていない。そこで、本研究では、第一に航空機搭載レーザースキャナーの反射
強度の特性を明らかにすることとしている。第二に、上述したような航空レーザー測量の利点を用い、かつ航空
写真など光学的な情報を組み合わせて利用することにより、地理情報の取得手法を開発することとしている。
2.
研究内容
本年度は、航空機搭載型レーザースキャナーを取り外して地上に設置し、材質の異なるターゲット(反射
板)にレーザー光を照射して反射強度を計測した。1番目の実験として、ターゲットの材質を一種類に固定し、
距離を変化させて計測を行うことにより、反射強度と計測距離の関係を調べた。2番目の実験として、複数種類
のターゲットに対して、入射角を変化させてレーザー光を照射し、反射強度を調べることで、地物ごとの反射強
度と角度の関係について実験を行った。
3.
得られた成果
コンクリートをターゲットとして、距離
を変化させて反射強度を計測した。計測距
離は60m∼80mとし、各距離において、
10秒間の計測を行い、各20万パルスの
計測データを得た。得られた反射強度と距
離の関係を図1に示す。ただし、縦軸は反
射強度の絶対値ではなく Digital Number(計
測カウンターの数値)である。各計測距離
における反射強度値は10秒間の計測の平
均値である。またエラーバーは各距離にお
ける計測の標準偏差を表している。塵や水
蒸気による大気中でのレーザー光の減衰を
無視すると、反射強度は計測距離の2乗に
図1 レーザー反射強度と計測距離の関係。ターゲットはコ
反比例するはずである。今回の実験では、
ンクリート。照射角度は0度に固定。
計測距離が非常に短いため、誤差は反射強度にのみ含まれていると仮定して、反射強度(I)は計測距離(d)
の逆2乗に比例するとしてgnuplotを用いて回帰曲線を計算した結果、 I = 1.68 × 10
7
d 2 + 9530 と
いう結果が得られた。この回帰曲線は、図1に実線で示されている。計測距離が長い場合に回帰曲線と実際の計
測結果のずれが大きく、この結果だけからでは反射強度が計測距離の2乗に反比例する仮定は間違っているとい
うことは出来ない。
反射強度とレーザー照射角度の関係を求める実験では、道路や建物などの塵情報を抽出することを想定して、
アスファルト(新)、アスファルト(旧)、コンクリート、レンガ、瓦、土、砂利、芝の8つの対象物について
ターゲット(反射板)を作成し、ターゲットを上下方向に傾けることで入射する角度が変化するようにして実験
を行った。ターゲットの大きさは1m四方である。実験で得られた反射強度と照射角度の関係を図2に示す。レ
ンガ、芝、砂利、アスファルト(旧)では、角度に関わらず反射強度はほぼ一定であると見なすことが出来る。
一方、コンクリート、土、瓦、アスファルト(新)の場合、照射角度が大きくなるにつれて反射強度は減少する。
これらのターゲットは、照射するレーザー光の波長に比べて表面が十分に荒い。反射強度は拡散成分のみの後方
散乱を観測していると考えると、反射強度は余弦関数の2乗に比例して減少する。そこで、レーザー光の反射強
度は表面散乱のうち拡散成分のみにより決定されると仮定し、各地物の観測結果に対して I
= a * cos 2 θ + b
の形の反射特性モデルをあてはめて仮定が正しいかどうかの推定を行った。しかしながら、角度と反射強度の関
係が上記の式を満たすのは、15−20度までであり、それより入射角が大きくなると、上記の式に当てはまら
なかった。
4.
結論
地上に設置した航空機搭載型レーザースキャナーを使って、各種の地物からなるターゲットにレーザー光を
照射し、レーザー反射強度と距離の関係、レーザー反射強度と角度の関係について考察を行った。その結果、レ
ーザー反射強度が距離の2乗に反比例して減少するという仮定は棄却されなかった。これによって、航空レーザ
ー測量によって得られたデータの距離依存性を補正することが出来、土地被覆分類の精度を向上させることが出
来る。
角度とレーザー反射強度については全ての地物に共通する特性を見つけることは出来なかった。このためレ
ーザー測量によって得られた
データの角度依存性を簡単な
手法で補正することは出来な
いと考える。
今後は今回の地上実験で得
られたデータを元にして航空
レーザー測量データの補正を
行い、補正後のデータから土
地被覆を分類し、道路や建物
などを抽出するための具体的
な手法を開発する予定である。
図2 レーザー反射強度とレーザー入射角の関係。距離は 70mに固定。
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