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参考4 技術者に関する資格制度についての調査・分析
平成18年度文部科学省科学技術関係人材養成等委託成果報告書 技術者に関する資格制度についての調査・分析 平成19年3月 社団法人 日本技術士会 本報告書は、文部科学省の科学技術関係人 材養成等委託費による委託業務として、社団 法人日本技術士会が実施した平成18年度 「技術者に関する資格制度についての調査・ 分析」の成果を取りまとめたものです。 従って、本報告書の著作権は、文部科学省 に帰属しており、本報告書の全部又は一部の 無断複製等の行為は、法律で認められたとき を除き、著作権の侵害にあたるので、これら の利用行為を行うときは、文部科学省の承認 手続きが必要です。 目 次 まえがき------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 1 1.調査の目的、体制等 (1)業務課題---------------------------------------------------------------------------------------------------- 2 (2)調査の目的------------------------------------------------------------------------------------------------- 2 (3)実施項目---------------------------------------------------------------------------------------------------- 2 (4)調査期間---------------------------------------------------------------------------------------------------- 2 (5)調査体制---------------------------------------------------------------------------------------------------- 2 2.実施項目ごとの調査方法及び調査結果等 2.1 技術者団体及び有識者等に対する調査(実施項目①) 2.1.1 調査方法------------------------------------------------------------------------------------------- 4 2.1.2 調査対象------------------------------------------------------------------------------------------- 7 2.1.3 収集したデータの整理・分析及び調査・分析のための課題------------------------ 10 (1)関係技術者団体等へのヒアリングで収集した意見等------------------------------------------ 10 (2)日本技術士会の支部・部会へのアンケートにより収集した意見等------------------------ 16 (3)現行技術士制度の課題の要点------------------------------------------------------------------------ 23 (4)技術士分科会など審議会での論点等--------------------------------------------------------------- 24 2.2 課題の検討に必要な調査項目の整理及び現行制度に関する現状分析(実施項目②) (1)調査方法--------------------------------------------------------------------------------------------------- 26 (2)調査項目の分類・整理--------------------------------------------------------------------------------- 26 (3)現行技術士制度の分析--------------------------------------------------------------------------------- 27 2.3 類似の技術者資格等に関する調査(実施項目③) (1)調査方法--------------------------------------------------------------------------------------------------- 32 (2)調査対象--------------------------------------------------------------------------------------------------- 33 (3)収集したデータの整理・分析------------------------------------------------------------------------ 33 2.4 類似の海外の技術者資格に関する調査(実施項目④) 2.4.1 調査方法------------------------------------------------------------------------------------------ 42 2.4.2 米国のPE制度--------------------------------------------------------------------------------- 42 2.4.3 イギリスにおける技術者制度--------------------------------------------------------------- 50 2.4.4 ドイツにおける技術者制度------------------------------------------------------------------ 53 2.4.5 フランスにおける技術者制度--------------------------------------------------------------- 55 2.4.6 海外の技術者資格との対比------------------------------------------------------------------ 59 2.5 現行制度の課題及び改善の方向性に関する分析(実施項目⑤) (1)比較検討--------------------------------------------------------------------------------------------------- 66 (2)課題の抽出------------------------------------------------------------------------------------------------ 68 (3)海外の資格制度に関して参考となる事項等------------------------------------------------------ 71 (4)課題改善の方向性についての考察------------------------------------------------------------------ 73 (5)課題と方向性のまとめ--------------------------------------------------------------------------------- 81 おわりに------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 84 (添付)参考データ等------------------------------------------------------------------------------------------ 85 ま え が き 人材、技術など「知」をめぐる世界的な大競争時代を迎える中、我が国は少子高齢化の 進展・人口減少を迎えており、科学技術関係人材の質と量の確保をめぐる懸念が高まって いる。 このような中、科学技術創造立国の実現を目指す我が国としては、基盤技術の強化とと もに、イノベーションによる産業フロンティア創出と産業の国際競争力の観点から、質が 高く、かつ、十分な数の技術者の育成・確保が極めて重要な課題となっている。 これらの背景から、文部科学省では、科学技術に関する高等な専門的応用能力をもって 計画、設計等の業務を行う技術者に対し、 「技術士」の資格を付与する技術士制度を運用す るとともに、APEC 域内における有資格技術者の移動を促進するための「APEC エンジニ ア相互承認プロジェクト」に積極的に関与しているところである。一方で、同様に技術者 に関する資格のひとつである建築士制度について、その質の確保の観点から平成18年1 2月13日国会において建築士法等の一部改正案が成立するなど、技術者資格のあり方や 質の確保の方策等に関して課題も生じてきている。 このような現状を踏まえ、本調査・分析では、機械部門から原子力・放射線部門まで幅 広い分野の技術者が取得可能な資格である技術士制度について、その課題を明らかにし、 技術者資格の制度改善や運用に反映させ、資格の取得促進、質の確保・向上を図ることに より、社会における技術者の活用促進、技術者の育成を図ることを目的としている。 本委託調査・分析業務では、技術者における資格制度や運用のあり方の検討に活用する ことを目的とし、下記の実施項目について調査・分析を実施したものである。 ① 技術者団体及び有識者等に対する調査 ② 技術士制度に関する制度・運用上の課題の検討に必要な調査項目 の整理及び現行制度に関する現状分析 ③ 類似の技術者資格等に関する調査 ④ 類似の海外の技術者資格に関する調査 ⑤ 現行制度の課題及び改善の方向性に関する分析 1 1.調査の目的、体制等 (1)業務課題 「技術者に関する資格制度についての調査・分析」 (2)調査の目的 機械部門から原子力・放射線部門まで幅広い分野の技術者が取得可能な資格である技術 士制度について、他の技術者に関する国家資格及び海外の技術者資格等を調査し、比較検 討等を行うとともに、これらデータを基に現行制度の課題の抽出及び改善の方向性の分析 を行う。 調査・分析の結果は、技術士資格取得促進方策、技術士の資質向上・公益性の確保方策、 技術士の活用促進方策等、技術士資格の制度改善や運営に反映させるための検討に資する 材料として活用するための報告書として取りまとめることを調査の目的とする。 (3)実施項目 調査・分析は、次の5つの実施項目について実施した。 ① 技術者団体及び有識者等に対する調査 ② 技術士制度に関する制度・運用上の課題の検討に必要な調査項目の整理及び現行 制度に関する現状分析 ③ 類似の技術者資格等に関する調査 ④ 類似の海外の技術者資格に関する調査 ⑤ 現行制度の課題及び改善の方向性に関する分析 (4)調査期間 平成 19 年2月1日∼平成 19 年3月31日 (5)調査体制 本件調査・分析業務を実施するにあたり、日本の技術士制度及び海外の技術者資格制度 等に造詣の深い、社団法人日本技術士会(以下、日本技術士会という)会員、外部の有識 者、及び日本技術士会事務局員からなる委員会を設置した。 2 (外部有識者) 業務項目 氏名 所属・職名 (1. (3)項に 対応。以下同じ) 大中 逸雄 森 正志 大武 通伯 大阪産業大学 客員教授 (財)建築技術教育普及センター 情報・普及部長 ①②⑤ (社)日本建築士会連合会 教材開発委員長 (主任研究員) 氏名 所属・職名 業務項目 ①②⑤ 西野 文雄 畑尾 成道 ①②④⑤ 田村 保 和作 幹雄 日本技術士会 会員 平泉 哲史 ①②③⑤ 太田 芳雄 園部 隆夫 竹下 功 日本技術士会 専務理事・事務局長 吉井 博 同 事務局 事業部長 西村 文夫 同 事務局 総務部長 浅井 三郎 同 事務局 事業部担当部長 ①②③⑤ (研究員) 氏名 秋山 誠 三上 彰久 武田 啓二 所属・職名 日本技術士会 事務局 事業部担当次長 同 事務局 事業部担当参事 同 事務局 技術士試験センター 試験監理室次長 3 業務項目 ①②③⑤ ①②③④⑤ ①②④⑤ 2.実施項目ごとの調査方法及び調査結果等 2.1 技術者団体及び有識者等に対する調査(実施項目①) 有識者、関係者(団体)等に対し、現行技術士制度について、どのようなことを課題とし て認識しているか、また課題の改善についてどのように考えているかを把握するため、聞取 り調査を実施した。 聞取り調査にあたっては、平成 12 年の技術士法改正以降、科学技術・学術審議会技術士 分科会において行われた議論の論点、技術者団体がまとめた提言や提言をまとめるにあたっ て行われた議論の論点についての調査を含めるとともに、関連のデータを収集した。 調査対象としては、学識経験者等の有識者、技術士を活用する側の産業界(企業及び関係 技術者協会) 、官公庁のほか、関係学会や経団連などから、主な有識者及び関係者(機関・団 体)とした。 また、日本技術士会の支部・部会に対しては、技術士制度の課題等についてアンケート調 査を実施した。 聞取りや収集したデータを基に、技術士の資格取得促進、資質向上・公益性の確保、活用 促進等の観点から、出された問題点や提案された改善策などを整理・分類し、1項の(3) の実施項目②から⑤の調査・分析を行うための課題として整理した。 2.1.1 調査方法 聞取り調査は、本委員会の日本技術士会会員と日本技術士会事務局員により、面談による 調査を行った。調査にあたっては、聞取りのための調査票を準備した。 また、日本技術士会の支部・部会には、下記の聞取り調査票の①のうち1.の項目につい て文書によるアンケート調査を行った。 (聞取りの調査票) ①現行技術士について「課題として認識していること」等について 1.技術士資格取得促進、技術士の資質や公益性の確保、技術士の活用促進など現 行の技術士制度に関して、 (1)どのようなことを課題として認識していますか。 (2)課題として認識していることについて、その背景、法令や運用等との関連な どを示してください。 (3)課題の解決のためには、どのような改善等の方策があるとお考えですか。ま た、その改善によりどの程度の効果が期待できると考えますか。 2.過去に(平成 12 年の技術士法改正以降) 、技術士制度についての提言などをま とめたものがありますか。 (1)提言の内容 (2)提言をまとめるにあたっての議論の論点等 3.過去に(平成 12 年の技術士法改正以降) 、技術士分科会など政府審議会の場で、 改善提案等を出されたことがありますか。 (1)委員会等の名称及びその時期 (2)改善提案等の内容と背景等 4.上記に該当しない場合等 (1)技術士制度そのものについて必要性を感じていない(よく理解していない) ので、上記項目について具体的な意見等は持ち合わせていない。その場合は、 必要性を感じない理由等をお聞かせください。 (2)技術士制度に関係が深い団体、企業、官庁、有識者等 (3)その他、ご意見等 4 ②具体的な個別の事項についての意見等 上記の「課題として認識していること」のほか、技術士制度に関する次の各事項につい ての状況やご意見等があれば聴取する。 状況・意 見等 事項 1 技術士資格の必要性(顧客から見た満足度等) 2 技術士資格取得のメカニズム 3 技術士資格の取得促進 1 技術士の数(充足の程度など) 技術士の活用促進 4 1 企業内での処遇等 2 業務独占的な活用(名称独占との関連) 5 資格の取得要件(学歴・実務経験) 6 技術士 CPD 7 技術部門等(総合技術監理) 技術士の登録情報 8 1 活用のために必要な情報 2 登録情報(資格)の更新 9 公益確保(技術士及び会の役割、罰則) 10 技術者の国際化(流動化・APEC エンジニア) 11 技術士会の役割など 12 建築士法の見直しとの関連 13 その他 5 現行技術士制 度との関係等 ③調査の視点等 技術士制度について、①技術士の資格取得促進、②活用促進、③資質向上・公益性の確 保、④技術士会の役割という観点から、改善すべき課題等について広く意見を聴取した。 また、聞取りを実施する際、次のような点について留意することとした。 (ヒアリングにおける留意点) 取得促進、活用促進、資質向上や公益確保など、技術士制度に関する課題等について、意 見等を聴取する際の留意点として、次のようなことがあげられる。該当するような事項があ れば、その背景や理由を聞く。 (例示) 技術者個人 1. 資格の要件や試験のレベル、受験のしやすさはどうか 2. 社内での能力評価、仕事に役に立つか 3. 自己の能力開発、能力証明にふさわしい資格か 4. 業務内容の変化に資格の仕組みが適しているか 5. 技術士資格について認識されているか 6. 受験する技術者のレベルはどうか 会社(業界) 7. 業務上の資格として必要か 8. 社内の技術者育成、人材育成、能力評価などに適しているか 9. 技術士制度についての認識があるか(資質向上・公益確保の責務、APEC エンジニア など) 10. 博士号を有している人材はどのように評価(活用)されているか 11. 業界で技術士を活用する仕組み(技術士についての業界内の認識)があるか、あるい は仕組みにふさわしいか 12. 活用が進んでいる場合、能力維持や技術者情報の提供等の観点から、更新が必要かど うか(必要であれば、更新条件は何か) 卒業生(技術者教育) 13. 技術者を目指す卒業生のレベルはどうか(技術者、技能者の違いに認識があるか) 14. 優秀な技術者となるにふさわしい卒業生の数はどうか 15. 修了学科と実際に携わる仕事に一貫性があるか(業界で必要とする数とのアンバラン ス) 社会(行政、会など) 16. 何のための資格なのか(位置づけや性格などが明確か) 17. 技術の進展、複雑化・融合化への対応、技術者の流動化への対応ができているか 18. 資格取得、活用促進、資質向上などについて、日本の技術力アップという観点からど うあるべきか 19. 資格を活用する仕組みのうえで、技術者個人の能力向上・能力評価、国際的な競争力 の向上はできているか 20. 活用する側での技術士資格取得の奨励はされているか 21. 技術士会の役割等について 他の資格 22. 有資格者の情報はどのようにフォローされているのか 23. 資格取得後の能力維持はどのようにされているのか(更新の有無・条件) 6 2.1.2 調査対象 聞取り調査については、主に、技術士を活用する側が認識している課題を把握するため、 技術士の部門毎の業界の技術者団体を対象に実施することとした。また、1. (3)項の実施 項目③の国内の技術者資格についての聞取り調査の際にも、技術士制度についてどのような 認識を持たれているかを聴取した。 予備的な聞取り調査を含め、次の24の団体等について聞取り調査を実施した。日本技術 士会の支部及び部会については、文書によるアンケート調査を実施した。 (順不同) 1954 年に中小企業庁の指導のもとに設立され、その後中小企業支援法に 基づき、中小企業診断士(現在:約 18,000 人)の試験及び更新研修等を (社)中小企業 実施する機関として経済産業大臣の指定または登録を受けている。中小企 診断協会 業診断士相互の連携を緊密にし、資質の向上に努めるとともに、中小企業 の振興に寄与することを目的としている。 1972 年に労働安全衛生法に基づいて創設され、労働安全コンサルタント (現在:約 4,000 人) ・労働衛生コンサルタント(現在:約 3,300 人)の 名称の下に、 事業者の求めに応じ、 報酬を得て安全衛生診断や指導を行う。 (社)日本労働 もっとも得意な分野を示すものとして労働安全コンサルタントには、機 安全衛生コンサ 械・電気・化学・土木・建築、労働衛生コンサルタントには、保健衛生・ ルタント会 労働衛生工学の区分がある。労働大臣が行う高度の試験に合格し、労働省 の名簿の登録を受けて開業し、労働者の安全の水準向上を図るため、事業 場の安全について診断及びこれに基づく指導を行うことを業とする。 水道及び下水道に関する技術の改善向上、調査、研究、情報の収集並びに (社)全国上下 上下水道コンサルタント業の健全なる発展を図り、もって、上下水道の施 水道コンサルタ 設整備に貢献することにより、広く社会公共の福祉の増進に寄与すること ント協会 を目的としている。 全国の地質調査業者の組織する団体をもって構成し、地質調査業の進歩改 (社)全国地質調 善を図り、その経済及び社会的地位を向上させ、もって公共の福祉に寄与 査業協会連合会 することを目的としている。 建設業振興基金は、建設産業の近代化・合理化を図るために中小建設業の 金融の円滑化、建設産業の構造改善・情報化の推進、建設業経理士試験、 (財)建設業振 建設業経理事務士検定や建築及び電気工事施工管理技術検定等の諸事業 興基金 を実施し、建設産業の振興に寄与することを目的としている。国と建設業 者団体等からの拠出によって設立された公益法人である。 清水建設(株) 建築・土木等建設工事の請負(総合建設業) 都道府県ごとに設立されている建築士会をもって組織し、建築士の品位の (社)日本建築 保持及びその業務の進歩改善を図り、広く社会公共の福祉増進に寄与する 士会連合会 ことを目的としている。 (社)情報サー 産業界としては「情報処理技術者試験」が毎年 60 万人規模の受験者があ ビス産業協会 り、最大規模の国家試験として著名である。その試験制度を運用している (独)情報処理 のは(独)情報処理推進機構、産業界等における技術者のレベルアップと活 推進機構(情報 用を企図しているのが(社)情報処理サービス産業協会の構造となってい 処理技術者試験 る。 センター) 事業用電気工作物の工事、維持、運用の保安の監督に従事しようとする者 (財)電気技術 並びに一般用及び自家用電気工作物の工事に従事しようとする者に対し 者試験センター 試験を実施し、合わせて電気技術者の資質の向上、維持を図り、もって我 7 が国の電気保安の確保に寄与することを目的としている。電気技術者試験 センターは国の指定を受け経済産業大臣が実施する電気技術者試験の実 施に関する事務を行う機関である。 (社)化学工学 化学工学の学術的水準の進展を支え、人材を育成し、それらの成果を社会 会(日揮技術士 に有機的に還元するための中心的学会として活動することを重要な務め としている。 会) 鉄鋼メーカー61 社、商社 60 社、団体 6 を傘下に組織された業界団体で、 その役割は鉄鋼の生産、流通、消費及び貿易を促進し、もって我が国の経 済発展と国民の生活に寄与することを目的としている。鉄鋼に係る調査研 (社)日本鉄鋼 究、技術開発及び普及、環境・安全に係る調査研究と対策の促進、労働及 連盟 び経営の改善合理化に係る調査研究、標準化の推進、取引の合理化、貿易 振興、政府・関係機関への産業政策や税制改正などへの意見表明・答申等 を行っている。 文部科学省の認可を受けた学術団体で、熱処理技術の基礎から最先端まで の分野にわたり、 研究・調査・教育を事業とし、会員相互間および関連 学協会との情報交換・提携を図ることによって、学術技術の 発展に寄与 (社)日本熱処 することを目的としている。(1)研究発表会および学術講演会の開催、(2) 理技術協会 学会誌および学術図書の刊行、(3)内外関連学協会との連絡ならびに協力、 (4)熱処理に関する研究調査、(5)研究の奨励および研究業績の表彰などを 行っている。 業界として認定している唯一技術的な資格は「繊維製品品質管理士」であ (社)日本衣料管 る。現在は民間資格となっているが、認定試験を開始した 1982 年 11 月か ら 1997 年 11 月までは通商産業大臣認定資格であった経緯がある。同試験 理協会 を運営・実施しているのが(社)日本衣料管理協会である。 文部省所管の学術研究法人団体で、非破壊検査法に関する調査・研究を行 (社)日本非破壊 い、技術水準の向上・普及を図り、もって学術文化の発展に寄与することを 目的としている。1952 年創立され、1955 年「社団法人 日本非破壊検査協 検査協会 会」として発足。非破壊検査技術者数は総件数で 64,000 件を超えている。 2006 年 3 月に経済産業省が発表した「新経済成長戦略」で情報分野と共 (財)バイオイ に重点分野とされている「バイオ」の見地から(社)バイオインダストリー ンダストリー協 協会での技術士活用の方策についてヒントを得られることを期待し訪問 会 を行なった。 経済産業省の地域産業活性化施策である「産業クラスター計画」を広域首 都圏(東京都・神奈川県・埼玉県)で推進している(社)首都圏産業活性化 (社)TAMA 協会 協会(通称「TAMA協会」)を選んだ。TAMA協会は経営工学(物流、 (首都圏産業活 生産管理等)を初めとして数十人の技術士を「TAMAコーディネータ」 として登録し経済産業省関東経済産業局直轄で地域中小企業の活性化に 性化協会) 寄与していることから、更なる技術士の活用への指針を得られることを目 論んだ。 都内中小企業の経営の安定と発展のため、中小企業への下請取引の紹介・ あっせん・育成指導等を行い、地域経済の振興に寄与することを目的とし て、1966 年、東京都により財団法人東京都下請企業振興協会として設立 (財)東京都中 された公益法人である。1983 年度には、財団法人東京都中小企業振興公 小企業振興公社 社に名称を変更した。2000 年度に「中小企業支援法」に基づく、中小企 業支援センターの指定並びに「新事業創出促進法」に基づく、中核的支援 機関の認定を受け、都の地域における総合支援機関として総合相談事業等 を開始している。その後、2001 年度には、東京都商工指導所、2002 年度 8 には、城東・城南・多摩の各地域の中小企業振興センターが都から移管さ れ、経営全般にわたる支援に加え、技術支援も公社が担うことになった。 また、2003 年度に財団法人東京都勤労福祉協会との統合、東京都知的財 産総合センター事業を開始し、2006 年度には、社団法人東京産業貿易協 会の解散に伴い、国際化支援事業等を継承し、事業の拡大を図ってきてい る。 2002 年 1 月に政府の総合雇用対策の一環として設立された。独立して創 業を考えている人や、新たな分野への技術進出を検討中の事業主に、創業 や新分野進出(以下、創業等)全般の相談や公的助成・支援制度の紹介か ら、創業等に必要となる人材の育成および課題となる技術的課題解決に至 (独)雇用能力 るまで、継続的な支援をすることにより雇用の創出と促進を図ることを目 開発機構・創業 的としている。厚生労働省の施策として独立行政法人 雇用・能力開発機 構が設置し、職業能力開発総合大学校が運営する公的機関である。上記目 支援センター 的を果たすために、 (1)相談援助、 (2)情報提供、 (3)公開講座・交流会、 (4)起業家養成セミナー、 (5)技術的課題解決、以上 5 つの業務を効率 的に連携させ、創業等を模索する方々のワンストップセンターを目指して 活動している。 国土交通省 ― 東京都 ― 会員数は 1,658 社・団体等。わが国の代表的な企業 1,346 社、製造業やサ 日本経済団体連 ービス業等の主要な業種別全国団体 130 団体、地方別経済団体 47 団体な 合会 どから構成されている。 (2006 年 5 月 24 日現在) 弁理士法に基づき 1922 年に設立された弁理士に関する我が国唯一の法人 である。2001 年に弁理士法が全面改正され、それまでの「弁理士会」か ら「日本弁理士会」へ名称を変更された。日本弁理士会は、弁理士の使命 及び職責に鑑み、弁理士の品位を保持し、弁理士業務の改善進歩を図るた 日本弁理士会 め、会員の指導、連絡及び監督を行うことを目的とし、研修を通した会員 の能力研鑚と向上、産業財産権制度の研究と普及活動など多様な活動をし ている。また、弁理士の登録に関する事務を行っている。 日本国憲法の制定にともない戦後の司法制度が改革されるなかで制定さ れた「弁護士法」に基づいて1949年に設立され、全国52の弁護士会 と個々の弁護士、外国法事務弁護士などで構成される連合組織である。弁 護士は各地の弁護士会に入会すると同時に日弁連にも登録しなければな りません。つまり日本全国すべての弁護士が所属する集まりが日弁連であ る。日弁連は、国家機関からの監督を受けない独自の自治権を有し、弁護 日本弁護士連合 士の品位を保持し、弁護士事務の改善進歩を図るため、全ての弁護士及び 52弁護士会を指導・連絡・監督する唯一最高の機関である。日弁連は、 会 このような自治機関として、弁護士の登録、資格審査、懲戒など弁護士の 身分に関する業務はもとより、人権擁護に関する様々な活動、各種法律改 正に関する調査研究・意見提出などの活動、消費者被害救済や公害・環境 問題への取り組み、刑事手続き改善のための活動や当番弁護士制度、市民 に開かれた司法とするための司法改革運動などに積極的に取り組んでい る。 9 2.1.3 収集したデータの整理・分析及び調査・分析のための課題 上記の方法等により、関係技術者団体のヒアリング等で収集したデータを、2.2項以降 の調査・分析のための課題として、聞取りの調査票の13の項目別に、 「出された意見」と「問 題点や考慮すべき点等」をキーワードで整理すると、凡そ次のとおりとなる。 また、日本技術士会の支部及び部会に対し、技術士資格取得促進、技術士の資質向上や 公益性の確保、技術士の活用促進など現行の技術士制度に関して、アンケートした回答 の要点を整理した。 (1)関係技術者団体等へのヒアリングで収集した意見等 ヒアリング結果 問題点や考慮すべき点等 1.技術士資格の必要性(顧客から見た満足度) ①建設業法で必要な人数以外には不要 ・建設業における技術的資格としては必要 ・工事の監理技術者として認めている一級施工管理技士が 十分いる(加えて、他の資格を認めるなどの要望がある) ・建設関連の公益法人に PM(プロジェクトマネジメント)能力のあ る技術士が必要とされる。そのためには 20 部門の技術 士にその能力(試験での確認)が必要である。 ②建設以外では、東京都中小企業振興公社、TAMA 協会では、 専門家として貴重な資格であり、多くの人材(技術士) が必要 ・技術士資格の必要性の PR ・技術士資格の認知度の向上 ・技術士の定義と役割の明確化 (他の専門資格との差異の明確 化) ・技術士の既活用機関への全部 門の説明 ・他の資格との共有拡大(例え ば、 優良環境事業所の認定にお いて、AAA の認定の際のテクニカルア ドバイザーに技術士資格者があ たる) ・活用する側の要求に応じた能 力(試験の方法等を含む) 2.技術士資格取得のメカニズム ①取得は自己研鑽、自己啓発、名誉資格との感覚 ②難しい試験、取得が困難との認識 ③試験が実業務と乖離(知識追求) ・業務独占資格と異なるので現業に則した内容把握が困難 ・技術士は狭い領域の範囲の専門家 ・技術士は先端技術を追求している印象が強い ④他資格との試験の一部免除の拡大 ・例えば、高度情報処理技術者などは一次試験の一部免除 ⑤受験者の若返りの方策が必要 ・技術士資格の業務独占化 ・試験内容の見直し (実地試験の重要性の見直し) ・関連分野の他資格者の優遇措 置(一部試験免除) ・産業界や企業が欲している人 材像に適した試験 ・受験者及び有資格者の若年化 3.技術士資格の取得促進 ①上記2.の「技術士資格取得のメカニズム」で示した意 見 ・技術士の地位向上が必要 ・技術士の権限が狭い (資格権限に社会的ニーズが乏しい) (他の資格との共有拡大) ・組織として技術士資格の取得を推奨するようになってい ない(業務独占的な関連がない場合や公務員の場合な ど) ・関連資格と受験における免除科目の一部共有化(試験の 10 ・技術士の権限・活用の拡大 ・他の資格との連動性(業務) の確保 ・他の資格との試験の一部免除 ・地方での受験環境の整備 ・受験費用の見直し 一部免除)の推進 ・試験内容において実務経験、実務知識を有効に発揮でき る試験方式(論文試験形式はきつい試験との認識) ②地方での受験環境を整えて技術士増加を期待(名義借り の問題発生) ③受験費用が高い 3−1.技術士の数(充足の程度等) ①増やすべき(認知度アップの為にも) ・高度情報処理技術者と相互認証等を行なえば技術士の数 が増えて知名度も上がる ・技術士の試験日程等を協会職員に知らしめるよう協力 ②業務独占(建設・建築)との関係 ・業務独占資格が優先されてくる傾向が強い ・業務独占資格は資格取得人数が減ることはないが、技術 士資格は数の確保に努力が必要 ・設備資格において有効度は増しているが、建築士法改正 運用状況と今後の動向に左右されよう ③充足感がある(建設コンサルタント業務) ④平成 12 年の技術士法改正後の技術士の増加の検証が必 要 ・技術士数の増加方法 ・一次試験(又は一部)免除に よる技術士の増加 ・試験日程等の PR ・建築基準法の改正、建築士法 の改正の動向に注目 ・業務独占資格が増える現状に 対し、 技術士資格の有効性の発 展、推進 ・技術士法改正後の増加の検証 4.技術士の活用促進 ①技術士会会員の増加要、技術士は PR 不足 ・建設以外での技術士の位置づけの明記が必要 ・部門の活用の PR 必要(例えば、経営工学部門のプロジェ クトマネジメントの有用性など) ②自治体での認知度アップが必要 ・発注者が技術士を評価し活用する仕組み ・技術士による社会への PR(提案等) ・地質技術者の社会資本整備貢献度(コスト構造改革、 リスク削減等)の発注者への提言・発注者との研究・ 発表会等による存在感の PR ・発注者支援としての顧問制度等での活用(顧問弁護士 のような) ③各企業のニーズによる。技術士の活動実態が見えにく いので、実態を PR することが活用促進につながる ・当協会の傘下企業は中小企業が多いので熱処理各企業 のニーズに上がってこない。大企業出身者に多い資格 ではないか(熱処理技術協会) ・技術士の必要性は感じている。特に学校の先生方と異 なり、産業界での実務経験を持っていることが創業相 談に役立つケースがある(雇用能力・開発機構) ・初歩的な相談も多いため、技術士の専門分野も大切で あるが、同時に技術周辺の知識も大切で、人・もの・ 金についても助言できる技術士が望まれる(同上) ・現在の技術士は登録コーディネータとして多数必要 ( TAMA 協会) ・ITスキル標準で定義されている「IT アーキテクト」 が情報技術者試験の試験区分にないため認定ができな い。技術士がそれに相当するなら補完関係ができる 11 ・会員の増加策 ・技術士の活動実態についての PR、技術士自身の PR ・技術士活用機関への全分野の PR (技術士の技術部門別の有用性の 検討と提言方策) ・技術士を活用する仕組みの構築 ・建設以外での活用策 (情報サービス産業で ITC とは別 の技術者の最高峰を「技術士」 と位置づけをする PR 活動) (法曹界への技術士活用 PR) ・資格所管省庁の交流と資格活用 情報の共有化 ・専門分野のみならず周辺知識の 拡大 ・技術士補の位置づけ ・生物工学以外の、環境、情報分野の技術士を活用可能 (バイオ関連業界) ・繊維製品品質管理士の研修講師に活用(繊維業界) ・技術鑑定に絡む裁判や係争で弁護士と技術士が組むこ とは十分考えられる ④他資格との共有化、国等の施策への対応等 ・業務独占資格としての専門資格取得者が増えて行く現 状を考えると、資格管轄官庁同士(例えば、文科省と 国交省の連動など)の資格の活用共有化が必要と思わ れる ・建築士の法改正に伴う専門分野の種分けや受験資格と いう大学等の教育内容、システムにまで踏み込んだ活 用システムが必要 ・ゼネコンにおいては、技術レベルの評価、信用度等に 有効 ・設計ミスへの対応として第三者評価を検討されており 活用が考えられる ・工事の監理技術者として一級施工管理技士を基本に他 の資格も認めている。高難度の技術士である必要はな い。技術士資格を目指す必要性が少ない。技術士補は、 資格取得途中の資格でかつ実務経験の無い人もいて活 用は難しい 4−1.企業内での処遇等 ・企業によって異なるが、一般的には、必要性が低いた め、業務成績・昇進に直結していない場合が多い ・資格が業務と連動している場合には、処遇制度(手当 て等)に反映されているケースがある ・技術士を含め資格取得者には一時金を支給している企 業は比較的多い ・企業における必要性・認知度ア ップ(特に建設以外) 4−2.業務独占的な活用(名称独占との関連) ①業務独占でない為メリット無い ・品質確保に必須として業務独占を要求すべき(会員化・ CPD 義務が必要) ②業務の独占化が必要 ・業務の独占化に向けての法的な仕組みも必要 ・コンサルタント業務を規制する職業法を導入すべき ③実務経験の豊富な人が役立つことから、現場(実務) 経験を数多く有している人の方が、特定会社のみの経 験者よりも有用(雇用・能力開発機構) ④若い人が資格をとれるような受験要件とすべき(東京 都中小企業振興公社) ⑤専門資格者の養成と認定における技術士資格保有者へ の認定拡大 ・業務独占の検討 ・品質確保との連携活用 ・職業法の導入 ・有資格者の若年化 ・新しい資格と技術士の連動性の 確保 5.資格の取得要件(学歴・実務経験) ①技術士にマークシート方式は不適 ②一次試験はコンピュータ化し随時受験できる体制とす べき 12 ・一次試験のコンピュータ化 ・一次・二次試験問題の見直し ③学生時代から学科などの一部を受験できるシステムを ・取得要件、特に一次試験免除の 措置 採用し、1 級、2 級、3 級などの資格レベルを設けては ・選択科目の名称の産業界で普及 どうか。 (実務経験に伴うレベル分けを考慮して) している表記への変更 ④受験資格について実務経験をどう取り込んでゆくか ⑤資格取得要件の一部の共通化 ⑥専門資格としては難易度が高くても仕方がないのでは ・大学、専門学校などの教育機関 にも受験資格の一部を考慮(学 ⑦難易度が高いこととその資格の効果が対をなせばよい 科試験の一部前倒し受験など) ⑧一次試験問題が基礎から逸脱し難い ⑨部門毎の合格率の格差が大きすぎるもっとハードルを 下げるべき ⑩高度情報処理技術者試験の合格者には技術士一次試験 免除を希望 技術士試験の選択科目の名称と IT スキル標準のキャリ アフレームワークの「職種」とのマッピング要 6.技術士 CPD ①CPD は必要 ②技術者のモチベーションアップに有効と考えるが、強 制するものではなく、自主的なもの。更新制度を設け ておくことは受皿として必要 ③プロポーザルの指標と考え得るが、CPD と能力との関係 の明確化が必要である。学協会での基準の統一も必要 ではないか ④CPD の義務化すべき ・RCCM では CPD を更新の要件としている。技術士も義務 化を考えないとアンバランスだ ・現場に出ている監理技術者に講習を義務付けている ⑤CPD の更新が必要 ・協会間で CPD の相互認定をすべき ・企業内 CPD も認証を受ければ関係機関の共有のものと すべき ・専門資格と技術士資格保有者の教育、実習などの CPD の共有化 ・技術士会の CPD 費用(登録・証明書発行)が高すぎる ・CPD の義務化 ・技術士の能力レベルの維持と向上 ・更新制度と関連付けた CPD の実 績管理 ・CPD の関連機関における広域的 認証 ・CPD 費用の見直し 7.技術部門等(総合技術監理部門) ①現在の科学技術に技術部門・選択科目を合わせて見直 すべき ・部門・選択の統廃合が必要 ・技術士の分類では時代に合わなくなってはいないか? 最近の創業を見ると、境界領域や複合領域の相談も多 い(バイマス→生物・環境・機械、情報家電→情報・ 電気・電子等々) ・衣料業界では素材・染色・縫製の3分野を理解しなく てはならない。繊維部門の選択科目では狭い 技術士は専門分野における先端技術志向と解釈してい る ②総合部門が必要とのインセンティブが無い ・技術士の定義が不明な中で総合技術監理部門は更にイ メージが湧かない ・経営工学のプロジェクトマネジメントは総合技術部門だ 13 ・技術部門・選択科目の統廃合 ・時代に合った技術部門への再編 ・技術部門が産業界の区分との相 違 ・技術士の技術分野が狭い ・民間企業が期待している人材像 と技術士との乖離 ・総合部門の位置づけ、活用の検 討 ・技術士の定義と総合監理部門の 位置づけ不明確 ・20 部門の試験内容 ③20 部門にプロジェクトマネジメント能力を期待 ・建築士資格にもプロジェクトマネージャとしての資格が規定さ れることから、技術士資格においても統括資格(総合 監理部門)が広く要求される ④専門分野における資格と技術士資格の違いを明確にす べき ⑤総合技術監理部門は、技術者のいない自治体でのアド バイザーとしての活用が考えられる ・自治体での総合部門活用(顧問 制度など) 8.技術士の登録情報 ・PE ゆえ個人登録可能とすべき ・技術士会への加入を前提とした情報の公開 ・登録方法の見直しと情報の公開 8−1.活用のために必要な情報 ①直接的に必要としない(鉄鋼連盟、熱処理技術協会) ・技術士データベース構築 ②何ができるかの詳細情報。相談検索などに技術士デー タベースがあれば便利(中小企業振興公社) ・大学・JABEE との連携 ③技術士補の活躍の場が無い ・技術士補の位置づけ ・技術補の魅力が無い。大学と連携して技術士へ誘導す る仕組みが必要だ(JABEE 認定の検証が必要、インター ン制度の導入、補のネーミングの再考「一級・二級な ど」 ) 8−2.登録情報(資格)の更新 ①更新制は必要 ・登録更新(CPD 活用による更新) ・CPD 等で更新すべき ・定期的な更新試験と CPD や協会 ・5年程度での更新試験。CPD や協会活動等による更新試 活動等による更新試験免除 験免除 ②建築ほどに更新の必要性を感じない(業務独占でもな いので) 9.公益確保(技術士及び会の役割、罰則) ・品質確保への技術士活用検討 ①品質確保のために技術士の活用を義務化すべき ・業務責任、品質確保のために技術士の活用を法的に規 ・コンプライアンス等の CPD 教育 定することも必要 ②公益確保は重要なことと認識。個人情報保護、秘密厳 ・技術士の権限拡大と技術士法の 守が公的支援機関として必須要件 罰則規定の見直し ・公益確保の観点は、公社でも必須の要件。コンプライ アンスも必須 ③技術士法の責任・罰則規定などを弁護士法などを研究 し改正・強化すべき ・建築士の社会的責任に関する罰則規定が厳しくなった ように、技術士においても社会的権限の拡大とともに 罰則は厳しくなるべき ・地方で名義借りの問題が新聞に出ており倫理などへの 対応が気になる ・一級施工管理技士の試験に倫理の項目はない。必要性 の議論はしている 14 10.技術者の国際化(流動化・APEC エンジニア) ①二国間の相互承認の推進が無いと APEC エンジニアの価 ・APEC エンジニアの活用 値が半減する ・APEC エンジニアがプロジェクトマネージャになれるなどのイン ・二国間相互承認の促進 センティブが必要 ・法改正後の検証 ・APEC エンジニアの CPD 更新は有益である ・APECに限定しているが、ヨーロッパや米国のPE 等との共同認証にまでいけば意味はより高い ・JICA等で技術士の資格が評価されている現状は望 ましい ②相互承認は信用確保が難しい ・発注量減の中で海外進出として期待できるが、国内で の活用には不安有り ・海外資格の認定はできるが建設方法が異なるので活用 は難しい ③アジア・オセアニア各国とのビジネス情報交換 ・海外での受験 ・情報処理技術者試験の問題をベースに「アジア共通統 一試験」が開始されたが、初級レベル ・優良環境事業所の認定及び AAA 認定取得へのテクニカルアドバ イザーへの技術士有資格者の就任を推進 ④法改正の主旨(技術士の確保など)に照らして現状を 検証すべき 11.技術士会の役割など ・大学との連携 ①大学との連携が必要だ(PR、カリキュラムなど) ・技術士会活動の見直し(若手・ ・資格取得に前向きな大学と連携必要 企業内技術士対応) ②若手の技術士が活躍できる場の設定・入会促進が必要 ・企業内技術士が行事に参加しやすい環境改善(開催時 ・費用の見直し(会費・受験費用・ CPD 費用)と透明性 間など)が必要 ・技術士会への加入が業務推進のための前提であるとい ・技術士の PR ・技術士活用の提言・PR(品質確 う仕組みが必要 保・コスト低減など)の支援 ・品質確保へ技術士を活用する場合の技術士数の調査が ・政府機関等への PR 必要 ・技術士の全部門の PR ③技術士の PR が必要(新聞発表、賞等) ・技術士の個人別技術情報の公開 ・技術士の資質向上の情報の無料発信 ・会費・受験費用が高すぎる ・高い CPD 費用の説明が必要 ④行政への働きかけが重要。例えば業界を指導する経済 産業省、内閣府知的財産本部等へのPRが必要 ・技術部門ごとに技術士の必要性を官・民などへ提言・ PR するのを支援すべき ・現在活用している技術士の部門だけでなく全部門の紹 介が必要 ・品質確保へ技術士を活用する場合の技術士数の調査が 必要 ⑤中小企業の技術振興に寄与する存在でありたい ・技術士自身での問題解決ではなく人脈等を通じた幅の 広いコーディネーションを望む 15 12.建築士法の見直しとの関連 ①資格と業務責任、罰則規定の明確化 ・倫理徹底に基づく技術士 PR ・倫理委員会などでの制裁の明確化が必要 ・倫理規定の明確化と徹底、技術 ②倫理委員会などでの会員への教育(CPD の活用)の徹底。 士行動規範の PR 13.その他 ・プロポーザル業務が増大し、中核都市では総合評価方 式(受注者の価格と技術を評価)を大学の先生に依頼 し審査できる体制を整えつつある(下水道事業団) ・ 「大学発ベンチャー支援」等技術士ならではの公的支援 策(文科省の施策メニュー)の紹介 ・技術士(情報工学)と IT スキル標準と整合がとれれば 情報処理技術者試験と共存できる ・技術分野が細分化されている状態に危惧を感じている。 企業の人事政策で期待されている人材像と相違してい るのではないか ・衣料業界で理想的な人材のイメージは、イタリアに多 く見られる「モデリスト」 。デザイン、パターン(型紙) 、 マーケットの総てに明るいプロフェッショナル ・技術士試験の方式に記述式が多いことから採点基準の 数値化が不明瞭になることを懸念 ・建築士資格は業務独占資格であり資格受験者を増やす ことに関しては、特に努力をすることはないが、資格 保有者に対する教育においては、専門分野、倫理等に 対し、社会的責任を担う技術者として徹底して行く ・発注者責任懇談会で土木設計資格の創設の発言が出た が議論は進んでいない。土木学会から資格活用の要望 がある ・技術士の活用場面の拡大(総合 評価方式の審査など発注者支援 など) ・産学連携による中小企業向け文 科省事業の周知 ・各業界に於ける技術者像の形成 ・資格保有者への教育と訓練。CPD システムの徹底と活用 (2) 日本技術士会の支部・部会へのアンケートにより収集した意見等 技術士資格取得促進、技術士の資質向上や公益性の確保、技術士の活用促進など現行の技 術士制度に関する課題や提案等(主なもの)を次に示す。 ○資格取得促進 (社会的認知) 1. 医師、弁護士のように技術士資格に対する、社会での認知度・ステータス・処遇の向上 が必要である。 (有資格者数) 2. わが国の産業界には 250 万人とも 300 万人とも言われる技術者のうち技術士は僅か 5 万 人に過ぎない。少なくとも技術者全体の 20%の技術士で、指導的役割を果たすべきであ る。制度活用のためには絶対数が足りない。30∼40 歳代の若手技術者への取得促進が望 まれる。 (業務独占資格) 3. 現行技術士の資格を名称独占だけでなく、業務上の優位性が必要であり、職業資格に法 改正すべき。少なくとも安全管理、品質管理に携わる技術者は技術士( 「公益確保の責務」 を負った人材)であることを義務付ける法令がほしい。 (公的活用) 4. Auditor のような公益に関わる局面での技術士の活用をより強力、継続的に働きかける。 16 各省庁、県、市などの公共事業における評価、判定の技術アドバイザーとしての公的活 用など活用方策が具体化していない。企業や公共事業に関係する団体での、技術士によ る技術内容審査制度を法制化し、審査責任という一種の罰則規定を伴った権限をもたせ る。 (企業での認識) 5. 企業トップ及び企業の中に技術士資格に対する認識が無い。資格取得のメリットが明確 でないことや企業での評価が低いことから優秀な人材が資格取得を躊躇している。技術 士を保有することに企業がメリットを感じるようにすれば、企業内で取得促進の動きが 起こる。 (役割) 6. 技術士はこれができる、あれもできる、独占させろ、と声高に言うものではなく、技術 士であることに矜持を持って、自然に、周囲に認められて、なるほど、技術士とは、な かなかいい仕事をするねと無理なく仕事を受け、役割を果たせるべきものであると思う。 (大学との連携) 7. JABEE コース修了者に対する技術士受験への指導・支援の体制が不足している。JABEE 関 係者、大学事務局、大学教員など大学との連携を深めて、JABEE 過程の学生を含め修了者 に対する広報や指導体制を強化する。 (IPD 記録) 8. 修習技術者の登録促進と、受験をするような追跡調査が必要である。JABEE 履修修習技術 者のIPD研修記録を登録するなどの仕組みが必要である。第二次試験受験要件の確認 に資する。登録者への年次ごとの課題出題による報告書作成を義務付け、資質の向上を 予め実施することで第2次試験での障害を少なくする。 (合格率) 9. 技術士試験合格率のアップが必要である。一次試験は 30%以上、二次試験は 20%以上の合 格率。合格率は例えば一次試験は 50%、二次試験は 30%程度となるように調整する。合格 率に部門間の極端なばらつきがでないようにすべきである。また一次試験合格者のレベ ルは JABEE の認定校卒業者との整合を図るべきである。 (科目免除) 10. 経験豊富な技術者も現制度では若手と一緒に一次試験受験が必要(JABEE 卒業者は受験さ え不要)。学歴によっては(大学卒未満、理系以外) 、共通科目(数学、物理学、化学、 生物学、地学のうちの2科目選択)も受ける必要があり(免除されない) 、高度・経験豊 富な技術者であっても実質的に対応が困難である。一定の条件をつけて、こうした高度・ 経験技術者の一次試験の受験を免除する。 (他の資格) 11. 他の国家資格との相関が明確でない。他省庁管理下の国家資格の受験科目等の一部免除 等の措置を示すなどして、技術士資格取得の優位性を示す必要がある。 12. 一次試験の共通科目免除対象の国家資格が限られている。例えば、情報工学技術者の共 通科目免除の対象国家資格は全く無く、ソフト的能力が高い高度技術者であっても、 「文 系大卒者」等は数学・物理等の共通科目を受験しなければならない。対象国家資格の実 情にあった柔軟な見直しも必要である。 (部門・選択科目) 13. 環境保全のように社会的な関心、要求の高まりを受け、受験者の増加が考えられる分野 がある。しかし、技術部門/選択科目の内容や構成が重複する部分があるなど各部門の役 割が実態と合致していない。各技術部門が担う技術内容の区分を明確にすることが必要 である。部門、選択科目の見直しの中で検討すべきである。 (試験方法) 14. 技術士試験が難しいと云われる理由のひとつに論文方式がある。この方式は技術士の特 質を良く表しており、筆記試験からなくなっているが、堅持すべきである。大局的な視 17 点から問題の構成、内容の議論が必要と思われる。 15. 本年度からの二次試験制度の改革により、口頭試験の実質的な重要性が増している。口 頭試験で不合格となった人に対しては、次年度筆記試験は免除する制度を導入する。 16. 一次試験のコンピュータ化(何時でもどこでも受験) (その他) 17. 学校教育で早いうちから技術士の存在を取上げる。 18. APECエンジニアのみならず、米国や英国などのPEとの国際相互承認の早期実現が 不可欠である。国際相互承認が実現すれば、海外に出て仕事したいと考えている若手技 術者は興味を示すようになる。 19. 合格技術士のレベルを維持するのに必要なら、受験指導を積極的に支援するなどの方策 があろう。 20. 受験者への金銭的、労力的な負担が大きい。口頭試験の会場が東京のみであり、東京近 郊外の受験生への金銭的、労力的な負担を強いている。筆記試験会場と同じ会場で口頭 試験が行われるようにする。 21. 技術士会会員であることが義務づけられる事になれば、現在問題となっている会員数の 不足、退会者の続出も自ずと解決する。 ○資質向上 (CPD 推進、CPD の実効性) 1. 技術士には、技術者倫理、公益性確保、資質向上のための CPD 等は必須であり、当然担 保しなければならない事項であり、さらに CPD の増強、強化が求められる。 2. 環境保全に関わる業務は、業務遂行時に特に技術者倫理に関わる場面が多い。また、極 めて公益性とも深く関連している。しかし、これまで資質向上や公益性の確保に関する 適切な訓練、研鑽について、系統的、組織的な機会が少なかった。技術士法の改正によ り、資質向上や公益性の確保が掲げられたが、実際の支援体制(研鑽や研修の機会)が 遅れている。資格取得と資質向上等の研鑽は不可分のものとし、技術士会の CPD 講座等 の中で、 「資質向上や公益性の確保」に対する研鑽を計画的、系統的に取り扱う。 3. 技術士個々に求められるその人の専門性という意味での資質向上に対しては、技術士会 で行われている CPD 講座や部会の講演の受講ではあまり意味を成さないのではないか。 内容が教養程度の講座・講演が多い。知識を増やすという点では効果は認めるが、それ が資質向上と言えるのか疑問を感じる。技術士の資質向上はその人の業務遂行を通して もっとも効果的に行われるのではないか。現在の CPD のカウントはその辺に考慮の余地 があるように思う。 4. 活用に応じて要求される要素的知識・見識を体系化し、継続研鑽メニューとして提示する ことが必要となる。この仕組みも技術士会が整備・運用することにより、幅広い活用を進 めることが可能となる。 5. 継続研鑽を行い、第三者が確認するきちんとしたシステムが必要。また、公益性の確保 を継続研鑽の一部に組込むことも必要ではないか。また、技術士の有効期限がないので 資質上の問題もある。 6. 公的権限が与えられていない個人としての技術士という観点から、資質向上や公益性の 確保をさらに確実にするためには、少なくとも技術士が技術士団体に組織されている必 要がある。技術士は日本技術士会に所属することを法令規定する必要がある。これによ り、資質向上や公益性の確保を担保・支援できる下地ができる。また、日本技術士会が技 術士の資質向上や公益性の確保を確実にする仕組みを整備・充実することにより技術士 の確実な責務遂行に資することができる。 (CPD の活用) 7. CPD 制度を充実させ、一定時間の CPD を要件として、契約制度に取り込むことが考えら れる。その際、CPD の内容、質を上げることが必要です。 18 8. 支部でも CPD 普及に努めているが、CPD 登録者のメリットが見えないため、なかなか登 録者の拡大が進まない。 9. CPD の実践組と非実践組の両極化がすすむことに懸念。CPD 認定会員の法的な優位性を掲 げ、CPD 非登録者との優位性を顕著にするような仕組みを構築する。CPD 登録者の有効活 用の場が極めて少ない。CPD の「社会や公共での活用あるいは活用の仕組み」を積極的 に取り組む。 10. 業務に携わるにあたり、業務経歴と同様に、CPD 記録を必要書類として添付することを 義務づけることで公益の確保、品質の向上に繋がると考える。 (資格更新・CPD 義務化) 11. 技術士資格の更新制度の導入し、その条件に CPD を要求することで CPD の義務化を進め る。その際、倫理関係の CPD を要求することで倫理についても信頼性を確保する。 12. 現行制度が職業資格に法改正されれば、CPD は当然必須学習となり資質向上に努めざる を得なくなる。同時に公益性の確保に厳然たる行動をとることになる。 13. 技術士が社会的責任を自覚することは当たり前のこととである。日本の社会的土壌かも しれないが、技術士倫理よりも企業利益の方が優先するのは否定できない。自覚を呼び 覚ますためにも、技術者の倫理について、年一回程度の研修を義務付けてもよいのでは ないか。 14. 資質の向上は職務を通じて自身が築き上げるものである。CPD の義務化を法令化する必 要はないと思う。現在の日本技術士会で進めている CPD 推進で良いとの意見もある。 (地方での支援、関連団体との連携) 15. 支部においては部会、研究会等による CPD 活動を通じて研鑽を行っているが、良質でバ ランスのよい研鑽活動はなかなか困難である。本部等からの適当な講師派遣の斡旋と講 師料の補助が望まれる。 16. 各種学会との CPD 履修相互乗入れの強化など関連諸団体との連繋の強化 17. 深い専門分野については、技術士会は CPD の対象とせず、倫理を含めた共通的なテーマ を手がけるのが望ましい。専門的な CPD は、専門学会、企業の独自の研修で実施すべき である。 (その他) 18. 現行の CPD では金がかかる。非会員の登録・証明書発行費が高すぎる。CPD 費用の値下 げよりは、会費 2 万円の大幅値下げ。現行 CPD 登録制度の登録に関する労力が大きい。 ○公益性確保 (姿勢・自覚) 1. 企業のトラブルを防止して正常な生産活動に指導するためには、技術士の持つ技術者倫 理の徹底によりひいてはそれが公益性の確保につながるものである。 2. 公益性の確保:技術士個人がそれぞれの活動において、強い倫理観を持って対処すべき問 題として捉えるべきであるが、企業内においては、企業の利益と公益性の確保とは対立 することも多く、日ごろより、公益性優先の強い自覚が必要であろう。 3. 技術士は、 「国が/国民が/社会が、必要としている、又は必要となるものを提言し、実 行する責務がある。(それが出来なければ、国民の税金を使い・試験を実施し、試験制度 及び資格を維持してゆくのは税金の無駄遣いであり、もしそうであれば資格制度は無く すべき。) 国が/国民が/社会が、必要としていることから結果として公益となる。 (職業法的位置づけ) 4. 国交省を中心とする建設関連部門では業務の技術者資格として評価が進んできたが、他 部門についてはまだまだ認知度が低い。 「技術士ビジョン 21」に示されるように、 「公共 の安全、環境の保全、公益に関係の深い業務は、その責任者として技術士が担当する」 職業法的位置づけの場を、経済産業省など他省庁に積極的に働きかけ開発する。 5. 他の士業と違い、権利がないままに義務・責務ばかりが付加されるのではなく、公益性 19 の確保をうたうのであれば、それを担保するために技術士が行える業務活動を法律によ る規定すべきではないか。 (独立性の支援・罰則) 6. 会として会員の保護等の措置を明確に示すとともに、会員の責務を明確にする。 7. 公益性の確保には,技術士の独立性,自立性が必要である。企業内技術士の身分担保の ための組織化が当会の課題。 8. 社会に対する技術士の倫理性の保証 実行を待つシステムとするには、日本技術士会に 技術士の倫理審査機能を持たせ、倫理審査で黒と判定されたものは技術士資格を剥奪す るといったような強制力を持つ工夫が必要。このためには技術士法を改正する必要があ る。 (その他) 9. 公益性の確保では、小・中・高の教育現場に技術士も理科教育支援、技術者になる魅力 の講義などに出掛けることが重要である。人材育成面で公益性を発揮することは技術士 業務の必須項目と考える。 ○活用促進 (法的整備) 1. 職業法的資格活用を他省庁に浸透させる行動プランが欠如。国交省のみならず、 “ものづ くり産業”主管である経産省に活路を開く。法的に技術士の関与が義務づけられること に移行すれば、技術士の活用は莫大に促進される。 2. 契約審査委員会、事業計画・効果の評価委員会などでの委員への登用やその他の監査業 務の分野においても広い範囲で、適材適所に技術士を参画させるような法的措置が必要 である。 (公的活用) 3. 各省庁、県市町村へ技術士資格活用のアピール。特に公共性が高く、高度な能力を必要 とするものについては技術士が是非関与すべき。 「公共事業の品質確保に関する法律」に おける技術審査や技術評価に技術士を活用する。国、県あるいは地方自治体での審査会 等の委員選任枠を設け、技術士活用の場を拡大する。 4. 高度なプロジェクト等に総合技術監理部門技術士の活用を図るよう制度化することを国 等に具申すべきである 。 (企業内での理解の増進) 5. 企業内技術士は、企業にとって必要なものとは感じ取られていない面があった。むしろ、 技術者倫理に熟達した技術士には、企業の欠点を外に持ち出されてしまうのではないか と警戒する面があった。しかし、昨今の企業の不祥事は、企業にとってひとたび発生す るとその損失は大きく存在にかかわる状況にある。これからは、各企業はその防衛に注 意を払うものと考えられ、技術士の役割が期待されるようになると思う。 6. 各企業が自社内に保有する技術士を意識するようになれば、取引先にも技術士を求める 気運は生まれると思われる。 7. 上場している大会社には技術監査制度を義務づけ技術の面で法令違反がないか、宣伝に 偽りがないかについて報告義務を課す。その監査人には技術士を当てるという制度の導 入(財務監査は会計士、技術監査は技術士) 。 (活用の場の拡大) 8. 全ての業種、産業において管理者登録要件の確立。大学等教育機関に対する教員採用の 条件に、技術士の資格を追加する。 9. 独立技術士には技術者倫理、公益性確保、中立性をキーワードに公的業務への促進を公 的機関に働きかける。 10. 中小企業支援や防災・減災への協力・提言など活用場面は多い。逆に、そうした場面に技 術士が有効に活用されるよう、体制整備や仕組みつくりが必要になる。そのためにも少 20 なくとも相当数の技術士が必要であろうから、試験に合格し、文部科学省に登録した技 術士は、全員そうした体制に組み込まれるべきである。 11. Venture Business Coordinator などは独立技術士の活躍の場として有望であると思われ る。そのためには、技術だけでなく、経理、マーケティング、監理力などが必要。こう いった面を補強する技術者研修プログラムを整備、総合技術監理をこのような方向に活 用していくことも検討の価値ある。 (社会的評価の向上) 12. 技術士の社会的評価が広がれば、活用も進むと思われる。国や地方自治体の機関、大学 法人などでの技術士の地位を少なくとも博士程度にはすべき。知名度の低さが、活用促 進を妨げている。 (その他) 13. 総合技術管理部門の位置付けの不明確さと活用が不十分である。 14. 技術士補の活用。技術士補の役割が不明確。対象者の層がバラバラ(実務経験有無) 。名 称の変更(二級技術士) 。大学と連携してインターン(実務経験)の実施、JABEE から二 次試験への道筋を付ける。 15. 技術士の活用による官庁職員のスリム化と官庁技術職員の減員の補完。 16. 技術士は科学技術の広い分野をカバーする資格であるために、部門の偏りが生じるため、 所轄官庁を内閣府直轄にするのも一案。 ○そのほか (会員組織率) 1. 技術士の絶対数の増加を図るとともに、技術士会の会員のより一層の増加を図り、最終 的には技術士を単なる名称独占でなく職業独占とすべきである。 2. 技術士制度を改善・充実する上ためにも技術士会の会員拡大、組織的充実が不可欠と考 える 3. 技術士会自体の課題かもしれないが、会員が増えやすいような、会費設定がやはり望ま れると共に、地方支部の立場で言えば、活動が進めやすいような支部・県組織の制度化・ 支援、本部との情報格差の解消、などが、地域の会員拡大には重要な課題と認識してい ます。 4. 強引に非会員を会員にする仕組みをつくる。非会員が会員のメリット(会員としての充 実感、優越感、楽しみなど)を知り自主的に入会。 5. 合格者=日本技術士会会員(入会)の図式が欲しい。 (若い技術士) 6. 現状の技術士制度は定年後の運用に比重が高くなりすぎ、現役企業内技術者や若くして 独立した技術士の活用促進を阻害している面がある。 7. 若い企業内技術士の情報交換や発言機会の増加、企業内技術士の会費減額などにより、 会員数を増やすことが考えられる。処遇や外部評価は、自ずから付いてくるものと考え るべきで、こちらから要望するものではない。 8. 技術士の定年制も大切である。技術士としての活動は、出来なくても技術士の資格はい つまでもついて回るものとなっている。定年を申請して会費の停止、会報等の停止して、 とくに記念行事などには案内してもらうというような制度を考えるべきである。 (広報・提言・連携等) 9. 現在の社団法人日本技術士会が、 「ビジョン 21」の旗のもとに、改革の途にあるのは喜 ばしい。これを加速させ、実のあるものにするためには、一層の営業活動と積極的な提 言及び社会に出て活動することが必要。又マスコミを活用するとか議員さんを動かすと か、更には日本技術士会から議員さんを出すような活発さがあって良い。 10. 科学技術創造立国として、将来を見据えた技術もさることながら、所謂「基盤技術とは 何か、どれか」 「それを絶やさないための方策の提言」 「そのための支援」など、積極的 21 な活動を現在の技術士会に期待したい。技術士制度は社会の動きをもっと見据えたもの であるべき特に地球温暖化防止については、緊急の課題である。これに関して、技術革 新と人間社会について、技術者の立場からのディスカッションがあってもよいのではな いか。現在の部門を超えた議論が必要である 11. 産業界、学協会等では、多くの技術分野が連携して社会的な技術課題に取り組んでいる。 各部門と関連する省庁においては、技術士の理解と活用が十分に図られていない。また、 技術立国を標榜しているが、技術者に対する評価が低く、技術者育成についても長期的 視点にたった積極的な施策がとられてこなかった。監督官庁である文部科学省や日本技 術士会は、例えば定期的な「技術者育成・活用の連絡会」等を設置し、各省庁に技術士 の機能と役割を周知するとともに、社会の発展において技術士の有機的な活用が図られ るよう努めることが必要である。各分野の技術士を連携し、活用する仕組みを作ること により、中国、韓国、インド等に遅れをとることなく、技術立国として発展することが できる。 (その他) 12. 全体的な課題を列記する。 ・学校教育に、技術系では技術士資格を取得することを目標におく。JABEE 認定校を大学 評価の基準のひとつに加える。 ・産官学は、採用時、調達時において、技術士補、技術士資格保有者を優遇する。 ・産官学は、技術士資格保有者の継続教育を重視し、その実施状況を積極的に評価するこ と。 ・関係省庁は技術士の活用及び継続教育の推進に横断的な検討委員会を設置する。 ・継続研鑽の実施、登録、内容評価、監査実施など継続教育推進のための制度を整備する。 ・技術士再登録制度を設ける。例えば、5 年毎の再登録制度の実施により、再登録時には、 継続研鑽の状況が評価されるなど、資質維持が確保される。きちんとした継続研鑽をし ていない技術士は、再登録時に一定の継続研鑽を義務付けるなどのような再登録制度を 新たに設ける。 ・日本技術士会は技術士の公益確保の活動を積極的に推進するための制度を設ける。関係 省庁は、それを支援する。 13. 行政の場の技術士活用を促進するため、行政職単独の横の組織化を図る。現状では、事 務職が技術職を管理・支配する傾向が強く、これらの体系を切り崩すことが急務となる。 14. 技術士登録証は大臣名で発行〔文部省に登録なのだから〕。合格証は技術士会発行でも 構わない(試験委任機関だから)。 15. 登録事務に対する枠組みを構築し、登録事項の変更手続きを促進させる。このための追 跡費用は、会費と同等程度の資金を国が確保する(一部負担を非会員に課するなどの手段 を講ずる)。 16. 国際的な技術士の活用は今後、大いに進めるべき。そのため技術士の自己研鑽がしやす い環境を作るべき。 17. 国内で技術士の認知度や活動状況が知られていないのに、国際化活動は早計。 18. 最近の技術士会の余りにも実行が伴わないままの急展開についていけないと実感する。 実行が伴わない急展開や実行しても結果が出ない、または検証しないままの展開は企業 経営と同様、うまく行くはずがない。 19. 技術士全国大会を本部開催時は文部科学省の主な行事として、経済産業省などの他省庁 との協賛で開催する。 22 (3)現行技術士制度の課題の要点 上記(1)の関係技術者団体等へのヒアリングで収集した意見等をキーワードで整理した ものをもとに、現行技術士制度の課題(要点)を、別の視点で整理すると凡そ次のように示 される。 1.資格取得後の活用上の課題 ① 技術士の活用が進んでいる分野はあるものの、それ以外の分野では技術士の活用を図 るには技術士の数が少ない ② CPDの実施による技術者の能力の向上の有効性の実証 ③ CPDの有効性が実証できれば、技術者の評価や更新の条件として考えられる ④ 資格を有しているから活用(業法等に取りれるべき)すべきという意見と、優秀な有 資格技術者であればおのずと活用されるとの意見がある ⑤ 企業の人材育成プログラムの中に位置づけられていない(必要とされていない) ⑥ 高等の応用能力に加え技術士法に規定されている技術士の義務(公益確保、資質の向 上など)があるが、有資格者個人のレベルで昨今の不祥事の発生が防止できるかどう か 2.技術士資格の必要性 ⑦ 技術士資格が活用されている場合の有資格者の充足度 ・ 職域によっては、技術士の数は少ないものの、技術士以外の資格も同様に活用さ れており、全体としてはある一定レベル以上の技術者として充足 ・ 職域によっては、管理能力が高い技術者(技術士)を確保することが必要 ⑧ 業務資格として位置づけられていない場合、技術者個人・会社・業界として技術士資 格を必要としていない。 ・ 会社の人材育成に組み込まれていない ・ 業界で必要とされる他の資格が優先(他の資格を持っている技術者に対する技術 士資格の取得を奨励) ・ 技術士資格についての認識がない 3.受験のしやすさやレベル ⑨ 全般に、難しい試験とのイメージが先行している(動機がないと受験しない) ⑩ 業務資格として位置づけられていない場合、資格(試験)の目的が不明確 ⑪ 全般に、試験のレベルを下げたほうがいいとの意見はなく、受験しやすい試験の方法 (例えば、業務内容と試験内容とのマッチング) ⑫ 活用されている職域によっては、管理能力に関する試験問題が必要 4. 技術士会の役割 ⑬ 技術士会の活動を通して、技術士に対するステータスを高める(例えば、社会的な出 来事に対する専門家集団としての提言等) ⑭ 会員数の増加(メリット、動機付け) ⑮ 有資格者情報の管理(情報の伝達、CPDの啓発など) 5.国際的対応 ⑯ 海外技術者資格との相互承認を考える場合には、相手国の技術者が日本で必要とする 知識等を有していること、活用の程度(外国での活用の機会)が等しいこと 6.その他 ⑰ 中小企業の支援等に関する人材(最新の専門技術をフォロー) ⑱ 大学・企業との優秀な技術者の人材育成に係る連携 ⑲ 技術士の登録の際には、技術士事務所として登録しなければならない 23 (4)技術士分科会など審議会での論点等 平成 12 年の技術士審議会の報告書「技術士制度の改善方策について」の取りまとめ、及 び平成 12 年の技術士法の改正以降、技術士分科会で行われた議論や国の他の審議会等で技 術士制度についての施策が示されているもの、及び技術者協会や学会などから出された提言 等について、どのようなものがあるか調査した。主なものは次のとおりである。 1.技術士制度の改善方策について(平成 12 年 2 月 23 日、技術士審議会) 技術士審議会(現在、技術士分科会)は、科学技術創造立国の実現、経済活動のグローバリゼ ーションに対応していくこと、また、高度化、複雑化の著しい科学技術に対する信頼性や安全、 安心の確保の観点から、技術的実務能力はもちろんのこと、高い職業倫理を要件とする技術士資 格に対する期待が高まっていることを背景に、調査・審議を行い報告書を取りまとめた。 2.技術士法の改正(平成 12 年 4 月 26 日公布、平成 13 年 4 月 1 日から施行) 技術士審議会の報告を受け、①グローバリゼーションに伴う技術者資格の相互承認の動きに対 応した国際的な整合性を図ること、②科学技術創造立国を目指すための、技術基盤の強化及び技 術革新を支える技術者の育成・確保を図ること、③技術が社会に及ぼす影響が益々大きくなって いることから、技術に携わる者が公共の安全、環境の保全等の公益の確保を図ることを目的とし て、技術士法の一部改正が行われた。 3.第 2 期「科学技術基本計画」 (平成 13 年 3 月 30 日、閣議決定) 第 2 章「重要政策」のⅡ. 「優れた成果の創出・活用のための科学技術システム改革」の4. 「優 れた科学技術関係人材の養成とそのための科学技術に関する教育の改革」の(2)技術者の養成・ 確保に、 「・・・技術者教育への外部認定制度(アクレディテーション・システム)導入・・・技 術者資格制度の普及拡大と活用促進・・・APEC 域内をはじめとする国際的な相互承認の具体 化・・・継続的な教育の充実・・・技術士等の資格付与・・・技術者の資質と能力の向上を図る システムの構築・・・」と記されている。 4.第 3 期「科学技術基本計画」 (平成 18 年 3 月 28 日、閣議決定) 第 3 章「科学技術システム改革」の1. 「人材の育成、確保、活躍の促進」の(3)社会のニー ズに応える人材の育成の③知の活用や社会還元を担う多様な人材の育成には、 (知的財産・技術経 営に係る人材の育成) 、 (科学技術コミュニケータの養成) 、 (新たなニーズに対応した人材育成) 及び(技術者の養成)に係る施策が示されており、 (技術者の養成)では「・・・また、技術士等 の技術者資格制度の普及拡大と活用促進を図るとともに、 ・・・技術者の継続的能力開発システム の構築、 ・・・」と記されている。 5.技術士分科会(同一般部会を含む)での議題、説明資料、参考資料等の主なもの (技術部門の見直し) ①諮問と答申 ・ 「技術士試験における技術部門の見直しについて」 (平成 13 年 4 月 13 日、科学技術・学術審 議会への諮問) ・ 「技術士試験における技術部門の見直しについて」 (平成 15 年 6 月 2 日、答申) ②検討課題、検討方法等 ・技術士制度における技術部門の見直しに関する基本的な考え方について ・技術部門の見直しに関するワーキンググループの設置について ・第二次試験必須科目における技術体系別出題について ③要望書など ・日本造船学会及び日本造船工業会からの要望 ・技術士における「船舶」技術分野に係わる要望 ・船舶技術士に係わる意見書 ・ 「技術士試験における技術部門の見直し」における原子力部門設置の要望(社団法人日本原子 力学会) ・ 「原子力」部門設置の必要性について 24 ・通信技術者向けの技術士資格の部門の新設要望について ・技術士部門における選択科目の追加に関する要望(地理情報システム(GIS)学会) ④プレゼンテーションなど ・工学と技術者の今後のあり方について(放送大学教養学部 中島尚正教授) ・海外の技術者資格の技術部門について(タキ・アソシエイツ技術士事務所 高城重厚代表) ・これからの技術者教育のあり方について(東京大学大学院 矢川元基教授) ・科学技術資格と創造性について(芝浦工業大学 武田邦彦教授) ・技術士の活動状況について(日本技術士会専務理事 堀内純夫委員) ・APECエンジニアにおける技術部門(タキ・アソシエイツ技術士事務所 高城重厚代表) ・企業が期待する今後の技術者像(株式会社東芝技術企画室 有信睦弘室長) ・JABEEの分野決定に関する基本方針と現況(日本大学教授 背戸一登委員) ・社団法人日本技術士会における技術部門の見直しに関する検討状況について (技術部門及び 選択科目の見直しに関する調査委員会 都丸徳治委員長代行) ⑤参考資料 ・ 衆議院科学技術委員会における「技術士法の一部を改正する法律」に対する付帯決議 ・ 技術士資格の公的活用、他の国家・公的資格取得上の特典 ・APECエンジニアの技術部門と各エコノミーの技術部門の対応関係 ・日本技術者教育認定基準(2002 年度版) (技術士第一次試験免除の在り方について) ・技術士技術部門とJABEE認定分野別認定要件の対応関係 ・日本技術者教育認定機構と他の認証評価機関との比較 ・日本技術者教育認定機構(JABEE)のスキーム及び最近の認定状況について(大橋委員、 小野田委員) ・日本技術者教育認定基準(2002−2003 年度版) ・技術士法の一部を改正する法律案に関する衆議院及び参議院委員会議録(抄) ・技術士第一次試験の免除に係る指定基準に関するパブリック・コメントの結果について(案) ・技術士第一次試験免除の指定について ・技術士第一次試験の試験問題の評価について (技術士 CPD など) ・修習プログラムについての考え方について ・技術士CPD(継続教育)について ・ 「技術士継続教育(CPD)実施方策検討委員会の検討結果について」 (平成 12 年 7 月 14 日) (総合技術管理部門の新設) ・総合的な技術的監理に関する部門の新設について (その他の議題や参考資料等) ・試験の実施方法等の改善についてなど技術士試験に関すること ・APECエンジニア特別委員会(仮称)の設置について ・日豪間の技術士資格の相互承認枠組み(仮訳) ・技術士資格の英訳について ・公益法人制度改革(技術士法改正関係) ・技術士ビジョン21について(平成 16 年 6 月、日本技術士会) ・科学技術と社会という視点に立った人材養成を目指して−科学技術・学術審議会人材委員会 第三次提言− 6.最近出されている要望等 ・通信技術の技術士部門新設に関して(電信電話工事協会ほか) ・通信技術者の技術士部門新設に関する陳情(電子情報通信学会) ・キーテクノロジーとしての制御工学(日本学術会議自動制御研究連絡委員会) 25 2.2 技術士制度に関する制度・運用上の課題の検討に必要な調査項目の整理及び現行制度 に関する現状分析(実施項目②) 上記2.1項で整理した課題を踏まえて、技術士制度及び運用の改善の必要性の有無を検 討するために必要な調査項目を分類・整理するとともに、現行の技術士制度について分析を 行う。 (1)調査方法 2.1項に示した、聞取りの調査票の13の項目別の「出された意見」と「問題点や考慮 すべき点等」をキーワードで整理したものをベースに、調査・分析のための課題として分類 整理し、さらに、 「問題点の背景や根拠」 、 「問題解決の方法への意見・視点等」 、 「制度及び運 用の改善の必要性」の観点から現状分析を行った。 (2)調査項目の分類・整理 技術士制度に関しての13の項目について調査・分析のための課題としてキーワードで整 理した。 事 項 1 2 3 4 5 6 7 8 9 調査・分析のための課題 技術士資格の必要性(顧客 から見た満足度) 技術士資格取得のメカニ ズム 技術士資格の取得促進 技術士の PR(認知度向上) 、資格の必要性、内容の明確化 に対する PR 業務独占の検討、試験内容の見直し、技術士年齢の若返り 方策 技術士の権限・活用拡大、受験費用見直し、地方での資格 の取得促進、他の資格との連動性の確保、新しい資格取得 への資格免除事項の拡大 1 技術士の数(充足の 技術士数の増加、建築基準法、建築士法の改正の動向に注 程度等) 目、業務独占資格が増える現状に対し技術士資格の有効性 の発展・推進 技術士の活用促進 会員の増加、建設部門以外の活用、技術士活用の仕組み構 築、技術士からの提言・PR、技術士自身の周辺知識の拡大、 技術士活動実態の PR、謝金が高額、技術部門別の有用性の 検討と提言方策、資格所管省庁の交流と資格活用情報の共 有化 1 企業内での処遇等 企業内における必要性・認知度向上 2 業務独占的な活用 業務独占の可能性、品質確保との連携活用、他の業務資格 (名称独占との関連) との関係発展 資格の取得要件(学歴・ 試験方法・内容の見直し、若返りの方策、更新制度とのリ 実務経験) ンク 技術士 CPD CPD の義務化、CPD 基準の統一、CPD 費用、CPD の関連機関 における広域的認証、能力レベルの維持と向上 技術部門等 総合技術監理部門の位置付けの明確化、総合技術監理部門 による自治体支援、技術部門・選択科目の統廃合、20 部門 に PM(プロジェクトマネジメント)能力付加、総合技術管理 部門の活用策 技術士の登録情報 登録方法の見直しと情報の公開 1 活用のために必要な 大学・JABEE との連携、技術士補の位置づけ 情報 2 登録情報(資格)の 登録更新(CPD の義務化) 更新 公益確保(技術士及び会の 品質確保への技術士活用、罰則規定の見直し 役割、罰則) 26 10 11 12 13 技術者の国際化(流動化・ 法改正後の検証、APEC エンジニアの活用 APEC エンジニア) 技術士会の役割など 大学との連携、技術士会活動の見直し、会費の見直し、技 術士活用の提言・PR の支援、政府機関等への PR 建築士法の見直しとの 倫理規定の明確化と徹底、 コンプライアンス等の CPD 教育、 関連 技術士行動規範の PR その他 技術士活用場面の拡大、資格保有者への教育と訓練、CPD システムの徹底と活用 (3)現行技術士制度の分析 2.1項の調査で入手したデータを基に、現行の技術士制度について、 「問題点の背景や根 拠」 、 「問題解決の方法への意見・視点等」 、 「制度及び運用の改善の必要性」の観点から現状 分析を行った。 出された課題や 改善提案等 問題点の背景や根拠 問題解決の方法への 意見・視点等 調査項目 ・官・民への説明・PR ・認知度 UP 1.技術士資格の必要性(顧客から見た満足度等) ・技術士の PR ・必要度・認知度が低い ・技術士の定義と ・技術士とは何かが不明確 役割 ・技術士の役割の定義と ・技術士の 明文化が必要 定義 2.技術士資格取得のメカニズム ・試験内容の 見直し ・実務からの乖離 ・技術部門、選択科目の ・試験内容 見直し の変更 ・関連分野の 他資格者の 優遇措置 ・産業各分野で認定されている ・高度情報処理技術者な ・一次試験 公的資格との相互認証の要 ど他の資格を有する技 免除の条件 望 術者に対する一次試験 見直し 一部免除(但し大学卒 の条件は必要) ・産業界や企業 が欲している 人材との相違 ・産業界に於いては人間力とマ ・口頭試問による人間力 ・二次試験の ネジメント力も必要 の評価 口頭試問 ・資格者の若年化 ・取得のインセンティブが無い ・若返り策の検討 ・試験の内容 等の見直し 3.技術士資格の取得促進 ・技術士の権限 拡大 ・技術士の地位が低い ・官・民への説明・PR ・民間でのメリットが無い ・資格が細分化され PE のよう な包括的権限無し ・資格のメリ ット ・業務の独占化 ・取得のインセンティブが無い ・業務独占の可能性 ・業務独占の 可能性 ・資格者の若年化 ・取得のインセンティブが無い ・若返り策の検討 ・業務独占の 可能性 ・受験費用見直し ・受験費用が高い ・受験費用の検討 ・受験費用 ・各種施策及び 省庁指針類の 定常的チェッ ・企業内に技術士が在籍してい ・技術士会本部に政策等 ても企業価値の評価を上げ に関するロビイストの る制度的な恩恵なし 設置 27 ・ロビイスト の勤務体制 と条件 ク体制 ・各種の政策や指針が公表され ても見逃すことがある 3−1.技術士の数(充足の程度等) ・技術士数の増加 ・法改正の目的が達成されてい ・全般的な取り組み(受 ・資格者の ない 験、認知度アップなど) 増加方法 4.技術士活用促進 ・会員の増加 ・発言力が無い ・建設部門以外 の活用 ・全般的な取組み(PR,諸 ・会員の増加 検討など) 方法 ・建設部門以外の活用が低い ・自治体で知られていない ・多方面への働きかけ ・資格活用の 仕組み ・産業界における ・情報サービス産業及び繊維業 ・各業界資格とのマッピ ・一次試験 技術士の位置づ 界で技術者の最高峰を技術 ングによる相互認証 免除の条件 け 士と位置づけされていない 見直し ・技術士活用機関 ・技術士の既活用機関で技術士 ・技術士を既に活用して ・技術士自身 への全分野の の他の部門が知られていな いる機関に技術士全部 による全部 PR い 門の説明 門の説明 ・法曹界への 技術士活用 PR ・技術鑑定に絡む裁判や係争で ・法曹界との共同勉強会 ・弁護士会 弁護士と技術士が組むこと 開催 における は十分考えられる 研修の方向 性と実態 ・技術士からの 提言・PR ・お願いでなく活用の場面を設 ・活用場面の設定検討、 ・技術士の 定し活用を提言していく姿 提言、PR 資質 勢が重要 ・技術士活用の 仕組み ・自治体などに技術士活用の仕 ・多方面への働きかけ ・資格活用の 組みがない、徹底していない ・活用の仕組み検討・提 仕組み 言 4−1.企業内での処遇等 ・企業内における ・資格取得が業務成績や昇進に ・企業内における技術士 ・資格活用の 必要性・認知度 直轄していない の役割検討・PR 仕組み ・企業によって処遇にバラツキ ・技術士会本部に政策等 ・ロビイスト ・企業内に技術士が在籍してい に関するロビイストの の勤務体制 ても企業価値の評価を上げ 設置 と条件 る制度的な恩恵なし 4−2.業務独占的な活用(名称独占との関連) ・業務の独占化 ・業務独占でないとメリットが ・独占業務の可能性検討 ・業務独占の 無い ・企業内における技術士 可能性 ・資格の活用 ・品質確保に技術士が重要な役 の役割検討・PR 割を果たす ・品確法における技術士 方法 ・コンサルタント業務を規制す の位置づけの整理検討 (品確法における技術 る法律(職業法)が無い ・周辺知識の拡大が必要 士の位置づけの自治体 への PR は効果大) ・職業法の導入検討 28 5.資格の取得要件(学歴・実務経験) ・一次試験免除の ・産業各分野で認定されている ・高度情報処理技術者な ・一次試験 措置 公的資格との相互認証の要 ど他の資格を有する技 免除の条件 望 術者に対する一次試験 見直し 一部免除(但し大学卒 の条件は必要) ・選択科目の名称 ・選択科目が産業界の職種/人 ・各業界における職種/ ・選択科目の を産業界で普及 材区分と相違している(情 人材像に合わせた選択 名称と内容 している表記に 報・生物・繊維) 科目と内容 の見直し する ・試験方法・内容 ・一次試験の受験者負担軽減 ・一次試験のコンピュー ・試験の方法 の見直し (コンピュータ化) タ化は受験者増へ直結 や内容の するので必要性大 見直しの ・二次試験の合格率に部門間で ・実務経験を試験に反映 可能性 差が大きい ・実務経験を有効に反映できる するための手段の具体 試験システムへの改善 策検討 ・若い人が資格をとれるような ・若返り方策検討 受験要件 6.技術士 CPD ・CPD の義務化 ・CPD 費用 ・資格の更新について検討 ・CPD の義務化の必要性検 ・CPD の義務 討 化の必要性 ・CPD 基準の見直し、統一 ・資格更新制 化 度との関連 ・CPD に公益確保、コンプ 性 ライアンス教育を ・建築士法改 正(定期講 習の受講義 務) ・CPD の登録・証明書費用が高 ・費用検討(他学協会と ・CPD 費用 い の連携など) ・CPD 費用の 透明性チェ ック要 ・更新制度と関連 ・資格の更新について検討 付けた CPD の 実績管理 ・CPD 及び業務実績による ・他の公的 免除制を含めた更新 資格の運用 制度の採用 実態 7.技術部門等(総合技術監理) ・技術部門・選択 ・技術部門・選択科目が現在の ・技術部門、選択科目の ・技術部門 科目の統廃合 科学技術に合っていない 見直し ・選択科目 ・技術変化や複合化に対応 ・民間企業が期待 ・選択科目が産業界の職種/人 ・各業界における職種/ ・選択科目の している人材像 材区分と相違している(情 人材像に合わせた選択 名称と内容 と技術士との 報・生物・繊維) 科目と内容 の見直し 乖離 ・技術士の技術 分野が狭い ・技術士の専門分野が選択科目 ・CPD による研鑽の義務づ ・ 「選択分野」 に限られ企業や産業界が求 け の定義 める広さと相違している 29 ・総合技術監理 部門の位置づ け ・総合技術監理部門のインセン ティブが無い ・総合監理部門で求められる技 術マネジメントは経営工学、 情報工学部門にも類似した 選択科目がある ・総合技術監理部門の活 ・総合技術 用検討 監理部門の あり方 ・活用が曖昧 ・総合部門の活用検討 ・総合監理部門は「部門」 ではなく改称する 8.技術士の登録情報 ・登録方法の見直 ・PE として個人登録できるよ ・法改正の検討 し う検討 ・技術士データベース ・技術士活用促進 ・何ができる人か分かりにくい 構築 ・登録方法の 変 更 ( PE と登録の 一貫性確 保) ・データベー スの有無 (技術士 活用方策 の一環) 8−1.活用のために必要な情報 ・大学・JABEE と ・大学・JABEE と連携して一次 ・大学、JABEE との検討会 ・大学、JABEE の連携 試験から二次試験へと誘導 議の設置 連携の可能 すべき 性 ・技術士補の位置 ・技術士補に魅力が無い。ネー ・技術士補活用の検討 づけ ミング。役割、権限が不明快 ・技術士増へ必要性大 ・技術士補の 活用方法 8−2.登録情報(資格)更新 ・登録更新(CPD ・CPD の義務化の検討 の義務化) ・義務化の可能性検討 ・CPD の義務 ・CPD 推進方策の検討脳 化の必要性 ・義務化の可能性を考え ると CPD の促進策が先 ・定期的な更新 試験 ・定期的な更新試験と ・CPD の義務 CPD や協会活動等による 化の必要性 更新試験免除 ・弁護士に登録更新があり 9.公益確保(技術士及び会の役割、罰則) ・品質確保への ・品確法で品質確保が必須ゆ ・技術士の活用方策の 技術士活用 え、技術士活用するよう働き 検討 かけるべき ・技術士の活用策の提言 ・資格の活用 方法 ・罰則規定の 見直し ・罰則規定の 程度 ・厳しい罰則規定などを検討 30 ・罰則規定の検討 ・倫理委員会における 検討 ・建築士法等の罰則強化 を参照(弁護士法等も 参考) ・地位向上・認知度アッ プ 10.技術者の国際化(流動化・APEC エンジニア) ・法改正後の検証 ・国際化(相互承認)への法改 ・技術士増加の経過整理、 ・法改正主旨 正のはず。その方向(技術士 検証と PR・提言 の増加)になっているか ・法改正の趣旨に沿った 方向への改善 ・APEC エンジニ ・APEC エンジニアの二国間相 ・二国間相互承認が進め ・APEC エン アの活用 互承認が進んでいない ば技術士増大への期待 ジニア活用 大 11.技術士会の役割等 ・大学との連携 ・技術士 PR を大学と連携 ・大学との検討会議開催 ・試験内容の検討についての大 など 学との連携 ・技術士会活動の ・若手技術士の活躍の場、入会 ・技術士会活動の見直し 見直し の容易な環境の醸成が必要 検討 ・中小企業への支援活動を促進 ・技術士会員増加への期 待大 ・政府機関・自治体への PR ・会費の見直し ・大学連携の 可能性 ・文科省予算 の中小企業 での活用 ・学・協会 活動の内 容 ・会費 2 万円は高い ・会費の見直し検討 ・会費 ・会費引き下げは、会員 増減に直結するので 検討の必要性大 ・技術士活用の ・技術士活用の場面設定を支援 ・技術士活用場面の検討 ・資格の活用 提言・PR の支援 する ・PR 方法 12.建築士法の見直しとの関連 ・倫理の徹底 ・姉歯事件対応として倫理委員 ・倫理委員会での検討 会などの毅然とした対応が 必要である。 ・倫理・罰則 規定 13.その他 ・技術士活用場面 ・業務独占資格とするために何 ・技術士活用場面の検討 の拡大 が必要か ・下水道事業団、中核都市にお いてプロポーザル、総合評価 方式の導入が行われつつあ り、技術士活用の場が広がっ ている ・資格の活用 ・PR 方法 ・産学連携による ・技術士活用を中小企業に求め ・技術士会本部に政策等 ・ロビイスト 中小企業向け ようとした場合経産省以外 に関するロビイストの の勤務体 文科省事業の の省庁の補助金、助成金制度 設置 制と条件 周知 を利用したい ・各業界に於ける ・情報サービス産業では技術者 ・各産業界で検討すべき 技術者像の のスキル標準が設定されて 事項か 形成 いる 31 2.3 類似の技術者資格等に関する調査(実施項目③) 技術士制度と同様に特定の技術や能力を有する者に与える国家資格等を対象に、2.2項 で整理した課題や調査項目について必要なデータを収集し、整理・分析を行った。 調査は、建築士、弁護士、弁理士のほか、技術的専門能力を有する技術者の国家資格・民 間資格を対象に、文献・インターネット調査、関係機関の聞取りにより実施した。 (1)調査方法 調査は、文献・インターネット調査を行うとともに、資格を所管している機関への聞取 り調査により実施した。聞取り調査は、本委員会の日本技術士会会員と日本技術士会事務 局員により、面談による調査を行った。調査にあたっては、聞取りのための調査票を準備 した。また、調査にあたっては、①技術士の資格取得促進 ②活用促進 ③資質向上・公 益性の確保 ④技術士会の役割に関して、他の資格との比較検討を行うため、2.2項で 整理した課題や調査項目に対比させて調査を行うこととした。 (聞取り調査票) 資格名称( 根拠とする法令等( ) ) 1 資格制度の目的 2 資格の定義(業務の定義) (業務独占・必置資格かどうかなど資格の必要性) 3 資格を付与する機関(主務官庁等) 4 資格を活用する機関(官庁等) (資格を要求している官庁・業務等) その他の関係機関(関係官庁など) 5 技術分野(資格の区分等) 6 有資格者の数等 7 資格取得の要件(受験資格等) 1 学歴・実務経験 2 3 試験の種類・方法 試験で確認するレベル等 4 受験者数、合格率など 8 他の資格との関係(受験科目の免除など) 9 資格取得後の管理 1 10 資格更新の要件等(登録情報の維持管理) 2 CPD の要件等 資格の活用状況と活用促進策 1 業務との関係(業務独占・名称独占) 2 企業等での処遇(資格者の充足の程度) 3 主な活用の方法等(活用している機関等) 4 活用のための施策等(技術者情報等) 11 12 公益・安全確保のための措置(要求事項や処罰) 資格取得促進のための方策 13 調査先の団体・機関の役割など 14 技術者(技術士制度)のあり方に関する意見等 15 その他 32 (2)調査対象 調査は、建築士、弁護士、弁理士のほか、特定の技術分野での技術的専門能力を有する 技術者の国家資格として電気主任技術者、情報処理技術者、施工管理技術者を、コンサル タント業務が主体で全ての技術分野に関係する中小企業診断士、労働安全衛生コンサルタ ントのほか、民間資格の非破壊検査技術者を対象に実施した。 記号 調査対象資格 資格の根拠法 資格管理機関等 A 建築士 建築士法 日本建築士会連合会 B 弁護士 弁護士法 日本弁護士連合会 C 弁理士 弁理士法 日本弁理士会 D 電気主任技術者 電気事業法 電気技術者試験センター E 情報処理技術者 情報処理の促進に関する法 (独)情報処理推進機構(情報 律 処理技術者試験センター:IPA) F 施工管理技術者 建設業法 G 中小企業診断士 H I (財)建設業振興基金 中小企業診断士の登録等及 中小企業診断協会 び試験に関する規則 労働安全衛生コン 日本労働安全衛生コンサルタ 労働安全衛生法 サルタント ント会 非破壊検査技術者 民間資格 日本非破壊検査協会 (3)収集したデータの整理・分析 上記調査の方法等に基づき入手したデータを、2.2項で整理した課題や調査項目と対 比させて整理・分析した。なお、関係の規定等(関連部分のみ)については、参考として 添付した。 1 資格の取得促進 記 号 ヒアリング結果 1−①資格の必要性 建築の設計を行うために A 必要な資格 訴訟事件、非訟事件及び審査 B 請求、異議申立て、再審査請 求等行政庁に対する不服申 立事件に関する行為その他 一般の法律事務を行う 資格者が大幅に不足 C D E F 根拠となる 規定等 建築士法 弁護士法第三 条 (業務)第 4 条∼第 6 条の 2 事業用電気工作物の工事、維 法第四十三条 持及び運用に関する保安の 監督をさせる 情報処理に関する業務を行 法第七条 う者の技術の向上に資する ・施工技術の向上 建設業法第 27 ・知識の平準化、ボトムアップ 条 33 技術士制度との 対比 問題点や 考慮すべき点等 建築士は業務独占 資格 士法に左記の規定 が無い ・業務独占への展開 士法に左記の規定 が無い ・士法に業務規定が 無い 士法に左記の規定 が無い ・士法に業務規定が 無い 士法に左記の規定 が無い ・単一専門職種に 対し技術レベル ・士法に業務規定が 無い ・国交省の指導によ る業務独占 ・士法に業務規定が 無い G 中小企業支援法に基づき、 中小企業の振興に寄与する H 労働安全衛生法に基づき、 安全衛生診断や指導を行う 各工業分野におけるニーズ による(民間資格:協会認定) I 中小企業診断 士の登録等及 び試験に関す る規則(第 1 条、7 条、11 条) 労働安全衛生 法、81 条 JIS 1−②試験方法・内容の見直しの必要性 ・一次試験は学科試験、二次 建築士法 A 試験は製図の実技試験 ・学科試験合格は一級は翌 年、二級は翌々年まで有効 B ・法科大学院卒業者は予備試 司法試験法第 四条 験免除 ・5年間で3回まで受験が可能 C ・筆記と口述。筆記試験合格 弁理士法第 2 章(弁理士試 は翌年まで有効 験等) 省令 ・ 一次試験の結果は科目別に D 合否が決まり、4 科目すべ てに合格すれば第一種試 験又は第二種試験の一次 試験に合格となるが、一部 の科目だけ合格した場合 には科目合格となって、翌 年度及び翌々年度の試験 では申請によりその科目 の試験が免除される。 ・二次試験の場合、一回目が 不合格でも次年度の一次 試験が免除される。 ・筆記と実地。筆記試験合格 建設業法施行 F は翌年まで有効 令第 27 条の 7 筆記と口述試験 規則、第 2章 G (中小企業診 断士試験) 筆記と口述試験 労働安全衛生 H 法、第 87 条 レベル 1,2,3 により異なる JISZ2305 によ I (筆記及び実技試験) る 1−③受験費用 15,100 円 A B 一次:8,600 円 二次:11,500 円 ― の保持、技術の 平準化 ・実地試験を重視 士法に左記の規定 が無い 士法に左記の規定 が無い ― ・産業界のニーズ ・筆記合格の翌年 持越し不可 ・筆記合格の持越し 検討 ・科目別合格 ・合格科目の持ち 越し不可 ・科目別判定 ・合格科目の持越し 検討 ・筆記合格の翌年 持越し不可 ・筆記合格の持越し 検討 ・科目別合格 ・合格科目の翌年 度及び翌々年度 持ち越し不可 ・科目別判定 ・合格科目の持越し 検討 ・産業界のニーズ ・筆記合格の翌年 ・筆記合格の持越し 持越し不可 検討 ・科目別合格なし ・筆記合格の持越し 検討 ― ― ― ― ・一次 11,000 円 ・二次 14,000 円 司法試験管理 ・一次 11,000 円 委員会(法務 ・二次 14,000 円 大 轄)専 34 ・産業界のニーズ ― ・費用が高い 大臣所轄)専 権事項 ― C 12,000 円 D 9,700 円(第一種、第二種同 (財)電気技術 一) 者試験センタ ーの専権事項 5,100 円 (独)情報処理 ・一次 11,000 円 推進機構の専 ・二次 14,000 円 権事項 9,400 円 ― ・一次 11,000 円 ・二次 14,000 円 14,400 円(一次) ― ― 17,900 円(二次) 24,700 円 ― ― レベルにより異なる ― ― E F G H I 1−④資格者の増加方法 特になし A B C D E F G I ・一次 11,000 円 ・二次 14,000 円 ・一次 11,000 円 ・二次 14,000 円 ・施行規則第 6 条 (一部免除)同 様規定有り 弁護士の人数は「国の法支配 規定類は特に ― のレベルを表す」とされてお なし り法曹界は紛争解決型に移 行しつつあるため国の政策 として増員の方向にある。 法改正(H13 予備試験撤廃) 、 法施行規則第 ・施行規則第 6 条 選択科目の試験免除等で受 3 条 (一部免除)同 験者増加 様規定有り ・第一種合格者は各種の公的 ― ・施行規則第 6 条 資格の試験免除の特典あり。 (一部免除)同 ・企業においては試験合格者 様規定有り に一時金支給 顧客企業が客観的に技術レ 『システムイ ・企業に技術士が ベルを評価できる経済産業 ンテグレーシ 所属していても 省の登録制度『SI 登録』 、 『SO ョン登録制度 明示的に企業価 認定』において、情報処理技 の概要』H18.9 値を上げる施策 術者試験の合格者数が評価 経産省 がない 項目の一つとなっている 国交省の指導の下建設業法 ― ・施行規則第 6 条 にて規定 (一部免除)同 様規定有り 法改正(H13 科目の見直し 8 規則、第 2 章 ― 科目→7 科目、部門の一本 化) 各産業団体ニーズ ― ― 1−⑤大学・JABEE との連携 法科大学院卒業者は予備試 B 験免除 大学の中での知財の掘り起 C こし、知財管理 ― 司法試験法第 四条 ― 35 ― ― ・費用が高い ・費用が高い ・費用が高い ― ― ― ・試験免除の見直し ― ・試験免除の見直し ・試験免除の見直し ・ 『SI 登録』 『SO 認 定』において、 技術士の人数も 申請企業の審査 項目の一つとな るように明記 ・試験免除の見直し ― ― ― ・大学での活用 2.活用促進 2−①登録方法 氏名、生年月日、事務所など A を登録 日本弁護士連合会所轄の B 弁護士名簿に掲載 氏名、生年月日、事務所など C を登録 特になし D 登録制度なし E 氏名、生年月日、事務所など F を登録 氏名、生年月日、住所、勤務 G 地及び勤務先、登録番号及び 登録年月日(登録には 15 日 以上の実務を条件) 氏名、事務所の所在地その他 H 労働省令で定める事項 資格認証の発行 I 2−②資格の活用方法 建築物の設計を行うために A 必要な資格であり、公共建築 物の設計に関しても同様。建 築確認(公共発注の場合計画 通知)に際しても設計者の資 格要件適合が必要。 B 業務独占(訴訟事件、非訟事 件及び審査請求、異議申立 て、再審査請求等行政庁に対 する不服申立事件に関する 行為その他一般の法律事務 ) 特許庁から「知財人材の育 C 成」の要求有り 官庁、企業、水道局等自治体 D 機関、大学、研究所(事業用 電気工作物を設置する=高 圧線を引き込んでいる=総 ての組織) ①官公庁のIT調達 E ②教員採用試験の学科の一 部免除、警察官採用試験の 応募資格の対象 ― ・士法と同じ 弁護士法第七 条 (登録)第 17 条 ― ― ― ・個人登録の可否 ・士法に登録制は なし ・士法と同じ ・個人登録の可否 ― ― ・士法と同じ ・個人登録の可否 ・個人登録の可否 ・個人登録の可否 ・個人登録の可否 規則、第 7 条 ・士法に更新制度は なし 法、84 条 ・個人登録の可否 ・士法に更新制度は なし ・建築士法 ・建築基準法 ― 弁護士法第三 ・士法等で技術士 の役割を定義し 条 ていない ― ― ― ― ①『情報シス ①左記基本指針に テムに係る 技術士(情報工 政府調達の 学)も含まれて 基本指針』 いる。 2007.3.1 各 府省情報化 統括責任者 (CIO)連絡 会議決 ②都道府県条 ② ― 例 36 ・活用場面の設定 ・活用場面の設定 ・技術士の役割の定 義 ・活用場面の設定 ・活用場面の設定 ・活用場面の設定 ・ 「技術立国」 「新経 済成長戦略」 等に 基づく各種施策 及び省庁指針類 の定常的チェッ ク体制 F G I 建設業法第 27 条の規定 サポートメニューのパンフ レット作成 ― ― 中小企業支援 ― 法 (第 1 条、 7 条) 中小企業支援 事業の実施に 関する基準を 定める省令 (第 4 条) 各工業分野における検査 JIS 士法は名称独占 業務 (業務必須資 資格 (鋼構造物、橋梁、船舶、原 格) 子力、航空宇宙、ボイラー、 溶接構造物) 2−③業務独占の可能性 業務独占 A B 業務独占 C 業務独占 D 業務独占・必置資格 E 特になし F 業務独占 G H I 名称独占 名称独占 業務上必要 ・活用場面の設定 ― ― 同上 ・士法に左記の明記 ・業務独占の可能性 無し 検討 弁護士法第三 ・士法等で技術士の ・業務独占の可能性 役割を定義して 検討 条 いない (業務)第 4 ・士法に左記の明記 ・業務独占の可能性 条 無し 検討 法第四十三条 ・士法に左記の明記 ・業務独占の可能性 無し 検討 ― ・ 業務独占の可能性 ― 検討 ― ・士法は名称独占 ・業務独占の可能性 資格 検討 省令、第 4 条 ― ― (業務)法 82 条 ― ― JIS ― ・業務必須資格 3.資質向上・公益確保 3−①CPD の義務化の必要性 ― ・士法第 47 条の 2 ・CPD 義務化の可能 ・ (社)建築士会連合会、 (社) A (資質向上の責 性 建築家協会のほか、これら 務)がある。 2団体を含む関係団体の ・ガイドライン有り 協力による建築 CPD 運営 委員会が、それぞれ CPD システムを実施、運営して いる。 ・06年の建築士法改正によ り建築士は一定の期間ご とに、定められた講習を受 講することが義務付けら れた。 ・新規登録時、及び5年ごと 日弁連・倫理 ・士法第 47 条の 2 ・CPD 義務化の可能 B に研修受講の義務 研修規程 (資質向上の責 性 ・弁護士名簿に登録後5年ご 務)がある。 とに日弁連企画の倫理研 ・ガイドライン有り 修を受講しない場合は「懲 37 C D E F G H I 戒」処分 時間の規定は無い。会員研修 附則第 6 条 ・士法第 47 条の 2 ・CPD 義務化の可能 (法改正など)はほぼ 100% 施行規則附則 (資質向上の責 性 受講。新人研修は約 90%。 第 3 条 務)がある。 ・ガイドライン有り 義務研修(倫理)は 5 年に 1 度(1 日程度)100% 特になし ― ・士法第 47 条の 2 ・CPD 義務化の可能 (資質向上の責 性 務)がある。 ・ガイドライン有り 特になし 産業構造審議 ・士法第 47 条の 2 ・CPD 義務化の可能 但し、登録システムの構築に 会情報経済分 (資質向上の責 性 ついての議論あり 科会情報サー 務)がある。 ビス・ソフト ・ガイドライン有り ウェア小委員 会人材育成ワ ーキンググル ープ議事録 資格取得者は CPD グループの ― ・士法第 47 条の 2 ・CPD 義務化の可能 構成員となる。 (資質向上の責 性 務)がある。 ・ガイドライン有り 更新制度(5 年間で座学 5 回 規則(第 9 条、 ― ・CPD 義務化の可能 及び診断実務を 30 点(30 10 条) 性 日) ) 250CPD/5 年 生涯研修の手 ・士法第 47 条の 2 ・CPD 義務化の可能 引き (資質向上の責 性 務)がある。 ・ガイドライン有り 更新制度(5 年間) 5 年毎再認証 ― ・CPD 義務化の可能 性 3−②CPD 費用 ○(社)建築士会連合会の A CPD 制度の場合 ・システムの登録費 1,500 円 ○(社)建築家協会の CPD 制度の場合 ・CPD 費用の追加徴収無し (協会会費の中で運用) ○建築 CPD 運営会議の場合 ・登録手数料 1,000 円(初 年度のみ) ・CPD システム使用料 2,000 円(毎年) ・倫理研修の費用は不明 B ・弁護士による自主研修の 認定制度あり C 個人の能力アップ以外は 無料。登録・管理費用なし ・CPD 費用が高い? ○(社)建築士会 連合会の CPD 制度 の場合 ・費用は自己負担。 登録・証明書発 行 5,000 円(非 会員) ○建築 CPD 運営会 議の場合 ・費用は自己負担。 実績証明書発行 手数料 500 円 (/件) ・費用は自己負担。 ・CPD 費用が高い? 登録・証明書発 行 5 千円(非会 員) ・費用は自己負担。 ・CPD 費用が高い? 登録・証明書発 行 5 千円(非会 ― ― ― 38 D − ― E 特になし ― F − ― H 理論政策研修は有料 +実務経験 ― 員) ・費用は自己負担。 登録・証明書発 行 5 千円(非会 員) ・費用は自己負担。 登録・証明書発 行 5 千円(非会 員) ・費用は自己負担。 登録・証明書発 行 5 千円(非会 員) ― ・更新制度 3−③倫理・罰則規定 建築基準法、建築士法の改正 ・建築基準法 ・士法第 4 章(義 A があり罰則強化 ・建築士法第 8 務) 章 ・士法第 8 章(罰 則) ①弁護士法第 ・士法第 4 章(義 B ① 務) ・弁護士は、基本的人権を擁 一条 ・士法第 8 章(罰 護し、社会正義を実現する 則) ことを使命とする。 C D ・弁護士は、前項の使命に基 き、誠実にその職務を行 い、社会秩序の維持及び法 律制度の改善に努力しな ければならない ② 日本弁護士連合会所轄の弁 護士名簿に掲載された後、死 亡又は廃業申請以外に下記 の事由に相当しない限り資 格は維持される。 ・禁固以上の禁錮以上の刑に 処せられた者 ・弾劾裁判所の罷免の裁判を 受けた者 ・懲戒の処分により、弁護士 若しくは外国法事務弁護 士であつて除名された者 ・法に懲戒の種類(戒告、2 年以内の業務停止、業務の 禁止)があり、会則で 3 委員会(倫理・法・トラブ ル)が調査する ・業務停止は、特許庁が公告 している この法律又はこの法律に基 ・倫理 ・罰則規定の程度 ・倫理 ・罰則規定の程度 ②同第七条 第 5 章(責任) ・士法第 4 章(義 第 9 条(罰則) 務) ・士法第 8 章(罰 則) 法第四十四条 39 ・士法第 4 章(義 ・倫理 ・罰則規定の程度 ・倫理 E づく命令の規定に違反した ときは、その主任技術者免状 の返納を命ずることができ る。 特になし F − G 中小企業診断士倫理規定 H 義務(法、86 条) I 技術者倫理 4.学協会の役割 4−①会員の増加方法 建築士の信頼性、技術力の向 A 上等を踏まえ会員として登 録すべく努力 国策として弁護士の増加を B 図っている。法科大学院設置 がそのひとつ 弁理士=弁理士会の会員 C D 特になし E 特になし 務) ・士法第 8 章(罰 則) ・罰則規定の程度 ・士法第 4 章(義 務) ・士法第 8 章(罰 則) ― ・士法第 4 章(義 務) ・士法第 8 章(罰 則) 規則(第 6 条) ・士法第 4 章(義 務) ・士法第 8 章(罰 則) ・士法第 4 章(義 務) ・士法第 8 章(罰 則) 技術者倫理に ・士法第 4 章(義 該当する場合 務) 免許の取消 ・士法第 8 章(罰 則) ・倫理 ・罰則規定の程度 ― (社)日本建 ・士法では、技術 築士会への入 士=会員と明記 会を推進 無し 規定類は特に ・士法では、技術 士=会員と明記 なし 無し (入会及び退 ・士法では、技術 会)法第 60 条 士=会員と明記 無し ― ・士法では、技術 士=会員と明記 無し ・士法では、技術 ― 士=会員と明記 無し 4−②会費 都道府県建築士会によって − A 異なる(半数以上は1万から 1万5千円) 月額 14,000 円 B 日本弁護士連 合会会則 会費 2 万円/月 C ― 特になし D ― 特になし E ― 40 ・倫理 ・罰則規定の程度 ・倫理 ・罰則規定の程度 ・倫理 ・罰則規定の程度 ・倫理 ・罰則規定の程度 ・入会の義務化の可 能性 ・入会の義務化の可 能性 ・入会の義務化の可 能性 ・入会の義務化の可 能性 ・入会の義務化の可 能性 ・会費 2 万円/年 ・会費 2 万円/年 ・会費 2 万円/年 ・会費 2 万円/年 ・会費 2 万円/年 ・会費が高額・入会 する意義 G H I 会費 5 万円/年 会費 2 万 5 千円/年 個人会費 9 千円/年 4−③学協会の活動内容 会員の指導・連絡・監督・研 A 修、研究・普及・登録 B ①弁護士となるには、日本弁 護士連合会に備えた弁護 士名簿に登録されなけれ ばならない」とされてお り、日弁連は弁護士名簿の 登録、登録換及び登録取消 事務を行なう。 ②日弁連は「弁護士及び弁護 士法人の使命及び職務に かんがみ、その品位を保持 し、弁護士及び弁護士法人 の事務の改善進歩を図る ため、弁護士、弁護士法人 及び弁護士会の指導、連絡 及び監督に関する事務を 行うことを目的とする。 」 会員の指導・連絡・監督・研 C 修、研究・普及・登録(事務 局 60 名) 試験事務 D E G H I ①技術・人材の両面から、ソ フトウェア及び情報処理 システムの健全な発展を 支える戦略的なインフラ 機能を提供するプロフェ ッショナル集団として、日 本経済の発展に貢献 ②試験事務、試験のPR 会員研修・能力開発、経営支 援、調査・研究、人材情報提 供、出版 会員の指導・連絡、コンサル タント品位保持、業務の進 歩・改善 ― ― ― ・会費 2 万円/年 ・会費 2 万円/年 ・会費 2 万円/年 ― ・士法第 6 章 ①弁護士法第 ・士法第 6 章 八条 ②弁護士法第 四十五条 法第 60 条 ・士法第 6 章 ・技術士の活用方 法・PR 法第四十五条 ・士法第 6 章 ①(独)情報処 理推進機構 の事業方針 (ホームペ ージ) ②法第七条 2 ・士法第 6 章 ・技術士の活用方 法・PR ・技術士の活用方 法・PR 事業内容 (ホームペー ジ) 事業内容 (ホームペー ジ) ・士法第 6 章 学術調査・研究活動、教育普 事業内容 及、標準化、資格認証 (ホームペー ジ) 建築士法の改正 ・技術士の活用方 法・PR ・技術士の活用方 法・PR ・試験合格者の追跡 と技術士会への 入会勧誘 ・士法第 6 章 ・士法第 6 章 ・偽装問題を受けての罰則強化 ・建築士資格の設計図書への明示 41 ・人材情報(技術士 データベースな ど) ・人材情報(技術士 データベースな ど) ・人材情報(技術士 データベースな ど) ・建築基準法第 7 章 ・建築士法第 8 章 2.4 類似の海外の技術者資格に関する調査(実施項目④) 諸外国においても、法令や勅令などにより、我が国と同様に高度の技術的専門能力を有す る技術者に対して与える資格がある。 これらのうち、米、英、独、仏の技術者資格を対象として、文献やインターネットで予備 調査するとともに、各国における代表的な技術者団体等への現地でのヒアリング等の調査を 行い、2.2項で整理した調査項目を中心に、データを収集し、整理・分析を行った。 なお、海外の資格は、必ずしもわが国の技術士制度と同じようなメカニズムにはなってい ないので、現状の海外技術者の制度(資格)について、できる限り、広くデータを入手する こととした。 2.4.1 調査方法 米国においては、州の法令により、わが国と同様に高度の技術的専門能力を有する技術者 に対して与えるプロフェショナル・エンジニア PE の資格がある。 英国においては、ロイヤル・チャーターにより認められている技術者の資格制度がある。 独国や仏国では、わが国の技術士制度と全く同じような資格はないが、技術者として満た すべき必要な要件(資格)がある。 文献やインターネットによる予備調査を行い、各国における代表的な技術者団体等への現 地調査(面談)を行い、各国の技術者制度についてのデータを収集し、整理・分析を行った。 2.4.2 米国のPE制度 (1)調査対象 ① Virginia Board for Architects, Professional Engineers, Land Surveyors, Certified Interior Designers and Landscape Architects (APELSCIDLA Board) ② Professional Licensing Boards of Georgia ③ NCEES (National Council of Examiners for Engineering and Surveying) ④ NSPE (National Society of Professional Engineers) ⑤ ASCE (American Society of Civil Engineers) ⑥ Kajima Associates, Inc. (2)米国のPE制度 米国では各州がそれぞれの州法に基づいて、所定の資格試験(FE 試験、PE 試験)を実施し て、PE としての業務免許または資格名称使用の権限を与えており、その運営は各州の PE Licensing Board(名称は各州によって異なる)が担っている。①および②は Virginia 州お よび Georgia 州の PE Board である。③の NCEES は PE 資格の取得にあたって必須条件となる 2つの試験(FE 試験および PE 試験)の試験問題作成と各州への提供・採点を行っている機 関である。④の NSPE はすべての技術分野にわたって個々の技術者からなる米国では唯一の Engineers Society である。⑤は米国土木学会であり、PE との直接の関わりは無いものの、 正会員以上の会員資格取得の条件として、PE 資格もしくは同等以上の能力を保有することが 求められており、 土木技術者への CPD プログラムの提供なども行っている技術者団体である。 ⑥は PE 資格保有者を社員に有することが必須となる業務を行う民間企業である。 1. 米国 PE(Professional Engineer)の概要 ① 資格制度の目的 ・公共の福祉、安全、健康を守ること ・上述の目的を達成するために、PE の能力維持・向上を図ること ② 資格付与機関 ・各州の州法に基づいて、各州の PE Licensing Board(名称は各州によって異なる)が資 格付与を行う。 42 ・各州の PE Licensing Board は、PE 登録にあたって分野別ではなく単に PE として登録す る。そのため、分野別の PE 数などの情報を正確に把握していない。 ③ 技術分野 ・PE Agricultural、PE Architectural、PE Chemical、PE Civil、PE Electrical and Computer、 PE Environmental、 PE Fire Protection、 PE Industrial、 PE Mechanical、 PE Metallurgical、 PE Mining and Mineral、PE Naval Architecture and Marine Engineering、PE Nuclear、 PE Petroleum、PE StructuralⅠ、PE StructuralⅡ、PS ・10 年前に Aerospace Engineering が、4 年前に Industrial が試験を終了している。 ④ 有資格者総数 ・正確な統計資料は無いが、7 割は PE Civil で 40 万人という答えが返ってくる。 (414,000 人〔1995 年〕 (科学技術庁科学振興局作成資料による) ) ・PE Civil、PE Electrical and Computer、PE Mechanical が主要3部門で PE 登録者数の 大半を占める。その他の PE は圧倒的に少ない ・大学の工学系課程の卒業生は約 200 万人(その内、約 2 割が PE 資格取得している) ・女性は全体の約 2 割で、環境、バイオ関係で比率が高くなる。 ・最近の PE 登録者数:Virginia 州では最近の 5 年間では毎年 500 人程度増えている(2007 年現在 24,200 人) :Georgia 州では PE 登録者数はほぼ一定かやや微増程度である(2007 年現在 15,600 人) ⑤ PE 登録のために必要とされる条件 ・大学における工学課程を終了してしかるべき学位(Bachelor Degree)を有すること ・技術者として経験を有すること〔大学における工学課程の種別により 4 年(EAC/ABET 認 定プログラム卒業性の場合ほとんどの州での要求経験年数)∼20 年(州によっては大学 課程終了を要求しないところもある(Virginia 州) ) 〕 ・複数の推薦状(reference) (3∼5 人の推薦状が必要とされ、ほとんどの州では PE によ る推薦状を要求している) ・EIT(Engineer-In-Training)の称号を有すること(基本的には FE 試験に合格とほぼ同 義) ・PE 試験に合格すること ・ (各州によって個別に実施される試験(地震に関する分野、州法・規則に関するもの)に 合格することを要求する州もある) ⑥ PE 資格更新の有無とその条件 ・32 州で CPC(Continuing Professional Competency)が更新のための条件とされている。 ・ほとんどの州で2年毎の資格更新が義務付けられており、 CPC を要求する州の多くは15PDH (Professional Development Hours)/year が必要とされている。 ・CPC として認定されるプログラムに関する規定は州の PE 規定に示されている。 ・CPD 要件を厳しく要求している州(ニューヨークなど)がある一方で、PE からの申告が そのまま認められる州(ペンシルバニアなど)もあるなど審査レベルには差がある。 ・CPD の必要性の認識は高く、数年の内に全州で CPD が更新の際の要求事項となると予想 している。 (1990 年に 2 州で始まったもの) ⑦ PE としての業務分野 ・PE 試験の試験分野に関わらず PE としての能力さえ有していれば PE としての業務実施が 許される。 ・ただし、PE 登録時の資格要件と同等の資格要件が求められる。 ⑧ 業務独占・必置資格か否か ・公共事業(Public works) 、建築事業では図面に PE の印章(seal)が要求される(小規 模工事など発注金額などによっては除外規定あり) 。 (PE 部門限定される場合もある) ・PE として印章(seal)を押したものには、PE 個人に重い責任が伴う。 ・設計、コンサルタントなどエンジニアリング業務を行う場合には PE であることが要求さ 43 れる(ただし、民間企業の企業内技術者の場合など除外規定あり) ・Georgia 州では州交通局で PE を資格要件としている例がある。 ・連邦政府機関や公共企業(電力、通信系企業など)では PE は少ないが、技術者の評価は 高い。 ⑨ 州法違反に対する制裁規定 ・大半の州で、資格剥奪、資格停止、保護観察処分、厳重注意、罰金($500 程度)などの規 定がある。 ・告訴のケースもある。 ⑩ PE 登録料および更新料 ・州によって異なる。 ・Virginia 州(PE 登録:PE 受験費用、PE 更新:$80) ・Georgia 州(PE 登録:PE 受験費用、PE 更新:$50) ⑪ 協会への加入 ・任意(NSPE の会員数:約 45,000 人、正会員の会費$220/年) 2. PE および FE 試験について ① 試験の合格率(2006 年度の実績:EAC/ABET 認定の大学課程の学生/修了者の統計値、年 度による変動は小さい) ・FE 試験 初回受験者:64%∼83%、複数回受験者:25%∼50%(土木:初回受験者:73%、 複数回受験者:29%、電気:初回受験者:67%、複数回受験者:27%、機械:初回受験 者:81%、複数回受験者:32%) ・PE 試験 初回受験者:64%∼93%、複数回受験者:23%∼80%(土木:初回受験者:64%、 複数回受験者:30%、電気:初回受験者:64%、複数回受験者:23%、機械:初回受験 者:70%、複数回受験者:34%) ② 試験の内容 ・FE(FS) 8 時間(4 時間×2) 、180(170)問の多項(多肢)選択式、Reference 貸与 ・PE(PS) 8 時間(4 時間×2) 、80(100)問の多項(多肢)選択式、資料持込可:ただし、 PE Structural Ⅱのみ、8 問の記述式(各セッション 2 問を選択) ・土木、電気、機械については、午前に全般試験(breadth exam)午後に専門試験(depth exam)を実施する。 ③ 試験実施時期 ・FE/FS、PE(土木、化学、電気、環境、機械、構造ⅠⅡ) :春(4 月)と秋(10 月) ・PE(その他) :春(4 月)または秋(10 月)のいずれかで実施 ④ 試験実施機関 ・36 州で NCEES の下部機関である ELSES に試験の実施に関わる業務を依頼(Georgia 州) ・その他の州では独自に実施(入札等で試験実施委託業者を決める:Virginia 州) ⑤ 受験費用:州によって異なる ・Georgia 州(FE 試験:$140、PE 試験:$220、PE StructureⅡ試験:$490、州法試験:$85) ・Virginia 州(FE 試験:$30、PE 試験:$60) ⑥ FE 受験資格 ・ほとんどの州で EAC/ABET 認定プログラムでは学部の 4 年次で受験可 ・ほとんどの州で工学系、科学系学部卒業生が無条件で受験できるが、経験年数を要求す る州がある(学部によって Georgia 州:8 年、Virginia 州:6 年が必要とされる) 。 ・大半の州では受験回数の制限は無い(11 州で受験回数・受験期間に制限あり、Georgia 州:4 回、Virginia 州:3 年間) ・PhD は考慮されない。 ⑦ PE 受験回数の制限 ・大半の州で受験回数制限はない。 (15 州で受験回数・受験期間に制限あり) 44 ・Georgia 州は 4 回。ただし、12 時間の工学教育を終了すれば再受験が可能 ・Virginia 州は 3 年間のみ受験可能 3. 資格取得促進のための方策 ① PE Licensing Board ・資格取得促進を組織の目的としていないため、資格取得促進に関する役割は小さい。 (目 的は公共の福祉、安全、健康を守ることにあって、資格取得者を増やすことではない) ② NSPE ・資格取得者の社会的地位向上の関心が強く、資格取得者を増やすための方策には消極的 (に見える) ・Raise the Bar キャンペーンの方に強い関心がある。 (PE 取得のためのレベルを上げるこ とで資格のステータスを上げる) ③ NCEES ・FE 試験の受験奨励活動を各大学に実施するなど、受験者数を増やすための活動に積極的 である。 ・Finish It キャンペーンを行うなど、大学の工学系課程卒業後の FE 試験、PE 試験受験を 技術者としての一連の必須課程と捕らえる活動を行っている。 ・プロモーションキット(試験受験促進ビデオ、パワーポイント、配布用資料などが揃っ たもの)を用意して配布している。 ④ ASCE ・正会員となるには、PE または同等の能力を要求するように、PE 資格の認識度は高い。 ・PE 資格保有を原則として、ある特定の専門分野の免状(certificate)発行に意欲的で ある(現在、Water Resources Engineer の certification を発行しており、今後土質工 学、環境などの分野での発行を計画している) 。 (電気学会、機械学会でも同様の免状が 発行されている) ・会員サービスとして FE 試験および PE 試験受験者のための受験参考書、教育プログラム などを提供している。 ・CPD プログラムを提供している。 ・PE を基本的には技術者のスタートラインと捕らえており、技術者能力向上のためのプロ グラムは別途学会のスタンダードとして用意している。 ・PE レベルとして要求される教育課程のレベルアップを求める Raise the Bar キャンペー ンをおこなっている。 (PE 要件として求められる現状の大学の工学課程のレベルを上げ ることを求める) 4. 資格の最近の動向 ・NCEES の MODEL LAW(2006 年改定)の中で、2015 年 1 月を目途として以下を PE としての要求 事項としている。 (1) 学部卒業生で FE 試験合格者の場合には、4 年以上(工学課程により異なる)の実務 経験に加えて、 追加の 30 単位の大学専門課程もしくは大学院課程レベルと認定され る教育コースの終了を義務づける。 (2)修士課程卒業生で FE 試験合格者の場合には、3 年以上(工学課程により異なる)の 実務経験を必要とする。 (3) 博士課程卒業生で FE 試験合格者の場合には、2 年以上(工学課程により異なる)の 実務経験を必要とする。 ・ABET の認定プログラムは PE として必要な基礎的工学教育としては不足しているとの認識 から改定されたもの。 (ASCE の Raise the Bar の動きと同じ) ・例えば、医師や会計士の資格取得に要求される大学および大学院レベルの教育コースの要 求取得単位数 (PE の 1.5 倍から 2 倍の取得が必要) と比べても現状はあまりに貧弱である。 45 ・NSPE も各州の PE Licensing Board もこの趣旨に概ね賛成の意向。 5. PE に対する評価 ・米国土木学会の会員資格として PE もしくはそれと同等の能力を有することが要求されてお り、必ずしも PE である必要はないが PE の評価は重視している。PE を有することが必須要 件とされていた時代もある。 ・エンジニアの評価は低くない。技術面での能力は高いが、政策立案の面などで能力的に劣 る部分があるのは否めない。技術者の能力としてグローバルサステイナビリティも重要な キーワードである。具体的な例を挙げるとハリケーンカトリーナからの復興プラン立案で も土木技術者は技術的な側面からの責任を果たすだけでは不十分であるとの認識をもって いる。より上位の復興計画に関わる必要がある。 ・NSPE の会員であることは PE のステータスの中でもさらに高いものとなる(Best of Best) 。 いたずらな会員数の増加は質の低下に繋がる恐れもあり、単なる会員数の増加は会しては 目指していない。 ・NSPE は連邦政府機関に対して、技術者(PE)を代表する組織として認められており、技術 的な評価・分析等の要請を受けており、PE の評価は高い。 ・車の製造と橋の設計施工の違いについては、いずれも設計行為と製作行為を伴うが、同じ 仕様の製品を大量に製作・供給して、しかも安全と品質を確保する際に求められるライア ビリティと常にユニークなコンディションでの(同じものを2つと作る機会はない)橋の 設計施工に対するライアビリティの求められ方には自ずと違いがあるだろう、ということ である。後者の方が PE としてのコンダクト(行動規範、倫理規定遵守の姿勢)がより重視 される点が重要。 ・PE の会社における必要性も会社の仕事、会社のトップの認識等によって当然変わる。例え ばトップや上司が PE であれば、部下への動機付け、部下の意識も当然 PE 取得に向かいや すいし、評価にもつながる。インハウスエンジニアとしては PE の取得の義務付けがない場 合も多い(除外規定)ので会社ごとに異なるというのが実情。個人のインセンティブもそ れに応じて変わらざるを得ないのではないか。 ・PE には厳しい倫理規定と PE の責務に対する理解が求められているので、同じ仕事をする 場合でも、それらの責務・規定を反映した公衆の安全・福祉などに適った設計(倫理観に 基づいた設計)がされている。PE を持っていない場合には、それらが満足されているかど うかは怪しい。 ・医者や法律家などの評価や社会的な認知度に比べると PE の評価は低く、所得の面でも見劣 りがしているのが現状であり、 優秀な人材は高収入の得られる投資・金融業に流れている。 ・エンジニアリングファームとして PE が絶対に必要というわけではないが、顧客にとっては PE が沢山居ることの安心感は大きいこともあり、 PE は多ければ多いほど良いという面があ る。 ・一般的には法的に PE は必要でない場合もあり、その場合には会社として PE を採用するイ ンセンティブは働かないし、社員に取得を奨励することもない。 ・技術者 PE の地位向上のためには、それに見合った対価を得ることが必要である。 ・アメリカでは PE がシールを押すということは、PE がその図面に対して全責任を負うこと を意味しており、何らかの瑕疵に対してはそれぞれの法律に基づいた処分対象となる。日 本の場合には、建築士を除けば設計図書に対する責任の所在が必ずしも個人として意識さ れておらず、そこに大きな違いがあるのではないか。 ・個人のコンサルタントファームではエンジニアリング業務を行うためには PE が不可欠。ジ ョージア交通局では PE が要件とされているため PE が沢山居る。一方で、他の連邦政府機 関やジョージア電力では PE は少ないがエンジニアのレベルは高く、 エンジニアに対する外 部の評価も高い。 ・基本的には必要とされる場合には PE も増えるし、収入もそれに応じて増える。 46 ・一般における PE 資格に対する認識は低いが、橋や道路などがエンジニアによる仕事の成果 との認識は持っており、それに対する評価は低くはない(基本的には技術に対する認識は 高いが PE 資格については知らない) ・個人の PE としての評価は(資格などによるのではなく)その人のプロジェクトや仕事に対 する評価を高めることが重要であり、また在籍する会社の業務実績についても評価項目に なる。 ・アメリカでは個人が経歴書を書いて求職活動することもあるが、基本的には推薦状の評価 が重視される。 ・ジョージア州では、州の SPE(NSPE 支部)と ASCE ジョージア支部がエンジニアリングアラ イアンスを組織して州政府に対するロビー活動を行っている。 6. 各団体・機関の概要等 ○ASCE ・現在のメンバー資格は 5 段階になっていて、誰でもなれる会員のクラス(準会員) 、FE レ ベル(Engineers in training、 )PE レベル、Fellow レベル、Honorable レベルに分かれる。 ・ASCE では Guidelines for Engineering Grades(技術者資質の評価指針)を策定している。 これは一般的なエンジニアの専門能力を能力評価項目と各グレイドとしてマトリックス表 示したものである。これらの要求資質は具体的な要求資質の特徴を示すものであり、各グ レイドの最低レベルを示すものではない。最も新しい暫定版では 8 段階、12 項目のマトリ ックスで表示されている。FE レベル、PE レベル、その上(Specialty Certificate)の資 格(Licensure と Certification)との関係も示されている。会員個人の目標として位置づ けられるものでもあり、 PE を雇用する側の場合にはその PE の能力評価の位置づけとなり、 大手の企業で人事管理(評価)に使われる。ただし、中小企業でも利用価値は高い。 ・ASCE の code of Ethics は憲法に例えられるものであり頻繁に改定されるものではないが、 昨年贈収賄にからむ不正の全面的な拒否(zero tolerance)を盛り込んだ。この code of Ethics に違反すると最悪の場合には学会からの追放となり、月刊誌上で氏名が公表される。 過去には 1 年に数名程度が除名処分となっている。PE の場合には各州の州法違反による罰 則も同時に受ける。この code of Ethics には技術者の責任も明確に示されていて、公共の 福祉と安全、健康の実現を最優先し、エンジニアとしての責務を果たす上で持続性ある開 発の原則を守ることとされている。 ・反贈収賄に関する全世界的取り組みをすすめるプロジェクトをスタートさせており、World Bank と FIDIC の強力を受けている着実に進歩している。日本の関心・参加を今後実現させ たい。 ・エンジニアがめざす方向性を示すものとして、工学教育レベルを上げることを提案する Raise the bar プログラムの改善を進めている (2025 年のエンジニアリング教育への提言) 。 ○NSPE ・NSPE でも会員サービスとして CPD プログラムの提供をしている。学会や各種の協会、一般 企業でもプログラム提供しており、その内容、レベルはまちまちである。CPD の必要性に ついて NSPS は理解し、会員にも推奨・サポートしている。 ・日本の同様な組織である IPEJ との情報交換を積極的に行いたい。 ・倫理規定に関する教育・啓発は重要であると認識しており、倫理規定の遵守に関する相談 窓口としてホットラインを開設して会員がいつでも相談できる体制は整えている。 しかし、 組織的な対応を意図したものではない。 ・NSPE は PE の唯一のナショナルレベルの組織である。各州にはそれぞれの SPE があり、さ らにその下には地区組織がある。NSPE は上部組織として下部組織入会のためには NSPE 会 員であることが求められる。会費は年間 220 ドルである。 ・カナダの Canadian Council of Engineering では PE 試験と登録、会員活動を総括している 47 ので、IPEJ と似ている。 ・PE であることを条件として、より専門的な分野を対象とした集まりがいくつかあるが、NAE (national academy of engineering)など英国の仕組みをモデルとした特権階級的もので 組織の人数も少ない。 ○Virginia 州 Licensing Board ・技術分野の改廃や合格者のレベル設定、試験問題作成等に関する州のボードの関与は大き くないが、ボードを通して意見を述べる機会が用意されている。NCEES、NSPE、各種学会と 同様な立場にあるが、積極的に提言を行うことが期待されているものではない。 ・試験の実施は州内の 4 箇所で実施しており、試験の実際の監督業務は公募して実施業者を 決めている(3 年ごとに入札) 。それらは州独自で実施しており、NCEES の下部機関となっ ている ELSES へ委託していない。 ・倫理規定違反はしかるべきルールの下で厳格に処分され、資格停止や資格剥奪などの措置 が取られて違反者は PE としての仕事はできなくなる。 ○Kajima Associates, Inc.(主に、鹿島 USA に勤務の米人で PE の Lin 氏の意見) ・鹿島 USA には Mechanical の分野の PE が 2 名(ともにアメリカ人)在籍している。ほかに PE ではないが、機械系および電気系の技術者がそれぞれ 3 名、CAD 担当者が 3 名(担当分 野が固定されている)の体制である。個別のプロジェクト案件については、案件ごとに日 本からの応援を含めて対応している。 ・Lin さんは 1978 年にイリノイ州の PE を取得したあと、現在では仕事の必要性に応じて取 得州を増減した結果 24 州の PE 登録をしている。鹿島としては、仕事上必要となる州の PE 取得を Lin さんに求めており、 エンジニアリングの責任者として PE スタンプを最終的な図 面に押してもらうことになっている。それに対する Fee は負担している。 ・1978 年取得当時の試験は州ごとに試験問題の作成から実施、合否判定、PE の登録などを独 自に実施しており、PE 取得の難易度が州ごとに大きく異なっていた。ちなみにイリノイ州 は全米の中でも最も難しい州との評価であった。 ・現在の PE 試験は FE 試験とともに NCEES が作成・採点・合否判定などから最近ではその下 部組織である ELSES による試験の実施を行う州もある。そのため、全米各州での資格要件 のレベル差はなくなった点は評価できる。ただし、最近の PE 試験は多項選択式になってお り、昔に比べて試験の難易度が大きく下がっていると評価している(以前の PE 試験は記述 式であった) 。 ・Lin さんは会費に見合うメリットの享受は無いとの判断から NSPE には入っておらず、その 活動に多くを期待していないということである。 ・PE にとって CPD は重要なことであると認識している。更新時に要求される CPD だけで十分 ではないのは当然だが、PE として CPD を更新時の要件とすることで、CPD の必要性の意識 付けができることで不適格な PE 排除にも繋がるのではないか。 ・カリフォルニアでは電気と機械はそれぞれの PE のシールが要求されるが、他州では機械の PE のシールでよい。 ・NCEES の MODEL LAW で PE の要求事項として 30 単位が追加された点については知らないと のことだったが、PE の要求水準を高める方向性には賛成である。 ○Georgia 州 Professional Licensing Board ・2006 年の合格率は FE が 77%、PE が 64%である。ジョージア州の登録 PE 数は約 17000 人 でここ数年はコンスタントか微増という状況である。 ・PE の資格を有しており、その人が能力を有する分野であれば、PE 取得時の技術分野に限定 されない(何をやってもよい) 。 ・ボードメンバーは 5 年任期で再選無制限であり、PE が 6 名、PS が 2 名、その他が 1 名で構 48 成されている。PE の経歴書の評価を求められることもある。 ・試験の実施は 2004 年より ELSES に委託しており、試験のセキュリティ問題など種々の問題 から州ボードは開放された。 ・NCEES の MODEL LAW や MODEL RULES との同一性を確保するように努めたいが、ジョージア 州の州法規定が優先する。例えば、ストラクチャーの PE 登録のためには、ストラクチャー Ⅰを取得するか、シビル PE に経験 5 年を求めている。 ・エンジニアリング課程とテクニカルエンジニアリング課程の卒業生の FE の合格率には明瞭 な差があり、例えば、テクニカルエンジニアリング課程のサザンポリテックカレッジの FE の合格率が 40%以下であるのに対し、 エンジニアリング課程のジョージア大学では 100%、 ジョージア工科が 80%のような数字を残している。 ・NCEES の MODEL LAW 変更に関して 30 単位を要件とすることに、州ボードとしても賛成の方 向である。 もともと ABET のエンジニアリング課程の認証でも要求単位数を減らしているこ とに関して根強い反対がある。 ・CPD の動きとしては、CPD プログラムのプロバイダーが NCEES の認定を受けて、受講者の CPD 記録を NCEES に登録後、各州のライセンスボードが情報として引き出す、という方向 をめざしている。 ・ライセンシングボードとして PE のプロモーション活動を重要視してはいないが、PE やエ ンジニアリングに対する理解を求める活動はしている。 ・ジョージアの倫理規定は悪いことはするな式の規定だったが、修正議論が進行中である。 倫理規定違反に対しては改善命令・停止命令をだし、それに対して改善がなされない場合 には最高 500 ドルの罰金、登録停止、登録抹消などの措置がとられる。CPD では州法に対 する理解を要求している。 ・PE システムが急激に変化する社会、技術に対応できているとは思えないし、特にジョージ アは遅れているという認識である。 ・兵役義務を有すると PE で 5 ポイントを追加している。これは他州ではカウントされない。 ○National Council of Examiners for Engineering and Surveying ・ほとんどの FE、PE に関する統計、試験方法、試験問題の作成、採点などについては NCES のホームページに公開されている。 ・PE の登録情報については州のライセンスボードが管理しているものなので、NCEES として 情報をもっていない。 ・試験問題の作成ではボランティアによる試験問題作成委員会ができている。例えば土木だ と 100 人を超えるメンバーが年に2、3回の会合を持って問題作成にあたっている。メン バー数は土木が最も多く最も少ない原子力でも 20 人を数える。 ・試験問題作成委員会のメンバーの登録はボランティアベースだが、その選任の責任は NCEES が負いボランティア応募者の雇用者、発注者など関係者のヒヤリング結果をもとに決定す る。大半は PE であり一部 PE ではない Professor が含まれる。会合の参加のための交通費 と宿泊費、食費などは支給されるが、それ以外は無給。 ・試験問題作成のセキュリティ確保のため、メール等でやりとりする場合は暗号化を行うこ ととなっている。ただし、基本は集まって問題作成や内容検討等を行う。試験問題作成委 員会のためにNCEESの建物内に60 名程度収容可能なコンファランスルームが用意されてい る。必要に応じて別の都市でも開催する。 ・NCEES に 6 人の PE がおり、外注のコンサルタントの PE と併せて 12 名で試験問題のチェッ クに対応している。事前のチェックに加えて、試験後のチェックも重視しており、出題ミ スの数は少ない。出題ミスの場合には必要な場合には、複数項目の回答を正答とする場合 や全員を正解とする対応などもとられる。 ・合格点の設定には equating と呼ばれる手法を採用して毎年のレベルに変動がでないように している。 49 ・5 年から 7 年に 1 度の割合で、1000 人以上の PE を対象に試験問題の適否、現状の技術に対 する適合性などについての詳細なアンケートを実施して、PE として必要な能力の試験問題 となっているか、どのような技術に関する質問が必要かなどを決める資料としている。こ れらの見直しのための資料は、上記のボランティアベースの試験問題作成委員会にも提供 される。 ・インターネット利用による試験の実施についても検討はして居るが、現時点ではコストが 高すぎると判断している。4 月のボード(理事会)でも議題として挙がっているが、近い 将来の採用は難しいというのが認識。 ・PE ライセンスは取得すれば、しかるべき教育と技術的研鑽、経験を踏めばどの分野でも仕 事が可能であるとする州が多い。どの分野で PE 資格を実現するかに関する倫理規定は PE に責任を負わせている。 ・CPD のレコーディングサービスをやっている会社が紹介されている。 ・採点はすべて NCEES で実施して、州のライセンスボードに提供される。 ・NCEES の建物はセキュリティが厳しく、建物内への携帯電話、カメラなどの持込が禁止さ れている。また、建屋内の扉には 10 キーが設置されており、建物内には ID を持っている 職員が同行しない限り入れない。 ・日本の試験制度に強い興味を持っている。 2.4.3 イギリスにおける技術者制度 (1)調査対象 英国においては、以下の機関、団体、企業への訪問調査を行った。 ① Engineers Council, UK(EC-UK、英国技術者協会) ② Institute of Civil Engineers(ICE、土木技術者協会) ③ NK-UK(英国日本工営) (2)英国の技術者制度 1. ECUK について イギリスでは、1980年までは各専門の協会が個別に資格および教育プログラムの認定 を行っており、統一されたエンジニア資格制度が存在しなかった。しかし、教育の大綱化へ の対応、技術・技能者の能力・地位の向上、社会における役割および責任を保証するため、 当事首相のサッチャー氏が Royal Charter により、統一的な技術・技能者の資格および教育 プログラム認定を行う機関として1981年に設立した。 エンジニアリング関連機関などの活動に対する協力・調整、技能・技術者の知識・能力の 向上、産業界に対する技能・技術者の供給および技能・技術者の資質確保を目的としている。 この目的を達成するため、技能・技術者の資格認定、工学教育プログラムの認定、教育・ 訓練・実務経験の機会提供(斡旋) 、国際・海外工学系機関等との調整・協力などの活動を行 っている。 ( 「工学教育プログラム認定制度に関する基礎調査研究報告書 1999 年8月 国際 協力事業団」p11 より抜粋) ・民間の非営利機関である。 ・工学系の学会や協会の連合体である。 2. イギリスの技術者資格 英国の技術者資格には以下の3 種がある。 (1) チャータードエンジニア(CEng) (2)インコーポレートエンジニア(IEng) (3) エンジニアリング・テクニシャン(Eng Tech) 50 これらは名称独占資格であり、Chartered Engineer、 Incorporated Engineer、Engineering Technicianとそれらの略語はEC-UKに正規に登録された技術者、テクニシャンのみが使 用することができる。 3. イギリス技術者資格登録の方法 日本の技術士資格、米国のPEに相当する資格はチャータードエンジニアであるので、以下 チャータードエンジニア(CEng)について述べる。 (1) CEng 資格取得までの流れ(CEng 資格取得の方法) ① CEng の基準:UK-SPEC 2003年12月までは Standards and Routes to Registration 通称SARTOR がチャーター ドエンジニアの登録要件として規定されていた。SATORは1984年に制定され、1990年と1997 年に改定されている。2004年3月1日よりUK-SPECという基準に置き換えられたが、SARTOR の要件を満たす者はUK-SPECもクリアできるよう配慮されている。 ② 資格付与の体制 ロイヤルチャーターに基づき、ECUK は個々の技術者団体に対して、エンジニアへの登録、 教育プログラムの認定、継続教育方法の認定を行うライセンスを与えている。 技術者登録 に当たっては、登録審査のライセンスを与えられた個々の技術者団体の会員である必要が ある。CEng の審査をするライセンスを与えられている技術者団体は 32 ある。 ③ UK-SPEC では “Competence” という用語が用いられている。CEng になるには、 “Competence” を申請者が持ち合わせていることを所属する技術者団体に証明する必要 がある。 各技術者団体は UK-SPEC を会員登録や CEng 登録の審査に用いる。UK-SPEC に記述されてい るうち、教育要件、継続研鑽(Professional Development) 、業務経験(Professional Review) は、下記の通りである。 (i) 教育要件、 ・イギリスの多くの工学教育プログラムはチャータードエンジニアに必要な教育課程と してECUKからライセンスを受けた各技術者団体によって認定されている。プログラム の認定のポイントはプログラムの修了者が備える学習成果である。 ・認定されたBachelors degreeに加え認定されたMasters degreeが必要。 ・または、認定されたMEng degreeを取得していること。 が教育要件である ・ワシントンアコードまたは FEANI 認定の工学教育課程修了を以って教育要件を充足す ることができる。 ・IntPE の登録は教育要件と Professional Development の登録要件を満たす扱いにして いる。 上記の要件を満たさない場合でも、所属する技術者団体の例外規定に照らして審査を受 けることができるほか、その結果更に学歴が要求される場合はその取得について各技術者 団体が相談に乗ってくれる。 また、認定学位を得ることのできない者等については Engineering Council の実施する 試験を受けることによって教育要件を充足することもできる。 (ii) Professional Development (PD) ECUKではCPDという表現は使わず、Professional Development(PD)という用語を用いて いる。 51 CPD時間についての要求はない。たとえば講習会に参加していても寝ている場合もあるだ ろうし、時間を記録することは意味がないと考えている(SARTORではCPD時間について規定 されていた)。 CEng の登録希望者は、コンピテンスをどのように保持しているかについて説明を求めら れる。なお、CEng の登録希望者は ECUK のライセンスを受けた技術者団体の会員である必 要がある。 それはこれらの技術者団体が CEng に相応しい研鑽の機会を提供するからである。 (iii) 業務経験 (Professional Review) 業務経験の審査は提出された登録申請書とその添付資料によって行われる。 書類審査を終えた後、面接に進むのに相応しいかどうかを判断する。面接は所属する技術 者団体の 2 名の面接官によって行われる。審査は 6 ヶ月ほどかかる。 (2) CEng の登録部門 日本の技術士の様な登録部門ではなく、ECUKから審査のライセンスを与えた各技術者団体 のバリエーションが登録部門に該当する。 4. CPE 資格についての社会的な認知・浸透の程度 CEngは英国だけでなく、世界的に広く知られている。 5. 業務独占的な活用 (1) CEngとしての専管業務は無い。 貯水池の設計・点検、船員、品質管理、航空機整備、ガス工事、鉄道の信号、自動車整 備、圧力容器の設計等の安全にかかわる分野では、ライセンス保持者または許可を得た者 の関与が法により定められている場合がある。 (2) 英国旧植民地国における重要なエンジニアリング業務には、CEng の資格が要求される 場合が少なくない。 6. CEng を取得した後の義務等 (1) Competence を維持する義務 (2) 技術者団体に入会していない場合との違い(メリット) CEng になるには各技術者団体に入会する必要がある。ECUK では CEng に登録すると自己 の価値を高め評価が上がるとプロモーションしている。 (3) CEng の更新条件 CEng自体の更新はない。所属する各技術者団体に必要な年会費を納めることによる。複 数の技術者団体に加盟することはできない。 (4) 公益性の確保や技術者倫理などのための施策(制度) Guidelines For Institution Codes of Conduct が策定されている。 7. CEng のための施策等 ECUK は Professional Development Policy を設定する一方、各技術者団体では会議や講習 会、学会、研究、ウエブサイト、図書館等を通じて PD の機会を提供している。尚、現在は PD の妥当性確認は行っていないが、妥当性のチェックを希望する者のために自発的な登録の 手段を検討中である。 8. その他(関連データ等) (1) CEng の合格率 事前相談、申請相談などを通じて CEng の要件を満たすようなルートを指導するなど、受 52 からせるような指導をしている。 (2) CEng の数(技術分野別・年齢別・組織区分別) 2005年末で188,367名。うち、英国以外の登録者は34,118名である。 (3) FEANI のユーロエンジニアの資格に登録できる要件 CEng を前提としており、約 15,000 名が登録している。 2.4.4 ドイツにおける技術者制度 (1)調査対象 ドイツにおいては、以下の機関、団体への訪問調査を行った。 ① Verein Deutschen Ingnieure (VDI、ドイツ技術者協会) ② Japan External Trade Organization (JETRO、日本貿易振興会デュセルドルフセン ター) (2)ドイツの技術者制度 1. ドイツの教育制度 ドイツの教育は州単位で運営されており、連邦政府によるガイドラインとして教育基本法 が設けられている。 6∼18 歳までの 12 年間:義務教育 そのうち、6∼9 歳の 4 年間の基礎学校終了後は、下記の3つのコースを選択する。すなわ ち、10歳で人生の方向が決まることとなる。 (1)基幹学校(ハウプトシューレ) (5 年または 6 年制)に進学後、3 年間の職業訓練に進 むコース (2)実科学校(レアルシューレ) (6 年制)に進学後、職業専門学校やギムナジウムの高 学年に入るコース (3)ギムナジウム(9 年制)で大学入学資格(アビトゥア Abitur)取得後、大学に進学す るコース。 アビトゥアは、日本の大学入試とは異なり、大学入学資格の国家試験である。一度合格す れば、生涯有効。合格後は兵役(皆兵制)や職業訓練コースに進む等の選択肢があり、すぐ に大学に入学することは多くない。 日本のような大学別の入試は無いが、 いわゆる人気校はアビトゥアの成績優秀者を選ぶ等、 大学の学生選抜裁量も認められている。 大学大学には総合大学 Universität と専門大学(FH:ファッハホッホシューレ)がある。 大学の工学課程や FH を修了するとディプロム・エンジニア(Dipl.-Ing.)が取得でき、これ がドイツではエンジニア資格と考えられている。 なお、2010 年にはボローニャ宣言にそった教育システムに切り替えることになってお り、ドイツの大学もこれに沿ってヨーロッパ標準の規格作りに向かい本格的な改革が始まっ ている。従来の「ディプロム」は 2010 年までに Bachelor/Master(BA/MA)に移行すること とされており、各大学ではこれに準じた教育課程の変更を順次行っている。 2. Dipl.-Ing.について (1) 社会的な認知・浸透の程度 技術者として社会的に認められるにはディプロム・エンジニア(Dipl.-Ing.)取得が必要 であると一般には考えられている。 エンジニアに対する社会の信任は非常に厚く、その意味で社会的地位は高いといえる。 キャリアの面では、 エンジニアは高学歴・高収入を持ち合わせているとは見られていない。 医師、法律家、経済学者の方が上位にランクされる。しかし多くのエンジニアは指導的な立 場に就いており、実際には社会的な認識よりは実際の立場の方が良い場合が多い。 53 ディプロム・エンジニア(Dipl.-Ing.)の学位証書は社会的な認知を得ているが、ボローニ ャ宣言でカリキュラムが変更され、Bachelor/Master(BA/MA)の証書の認知度はまだ低い。 現在60∼65%のカリキュラムがBachelor/Master(BA/MA)を発行するようになってきてい る。 (2) エンジニアの数 約90万人。その3分の2以上が企業勤務で、大半が製造業や社会基盤整備の仕事に従事し ている。 (3) ディプロム・エンジニア(Dipl.-Ing.)としてのメリット ディプロム・エンジニア(Dipl.-Ing.)はエンジニア職に就くために必要なものである。 エンジニアは高い能力を持った従業員として評価され、幹部候補として扱われている。 (4) 業務独占 各州の州法によるが、Civil分野や、CEマーク等が必要な工業製品の上市にはエンジニア のサインが必要とされる場合が多い。 Civil分野では、 「工業会議所」に登録したエンジニアがサインする必要がある。電気製品 や機械製品はVDEやテュフ等の団体による認証が必要で、その認証にエンジニアのサインが 必要とされる。 (5) 「工業会議所」への登録 コンサルタントエンジニアとして自営を行う場合や、Civil業務に携わるエンジニアは、 「工 業会議所」への登録が必要である。 「工業会議所」は各州に1つある。登録にはディプロム・エンジニア(Dipl.-Ing.)の他、 防音や構造安全設計等の個別のトレーニングを受けた事の証明書と、プロフェッショナルと しての基本的な経験が必要である。なお、ボローニャ宣言を受けて変更された教育カリキュ ラムによってBachelor/Master(BA/MA)を取得した者が「工業会議所」に登録を申請してき た場合、これらの認知度が低いために各「工業会議所」からVDIに照会が寄せられること がある。 「工業会議所」の登録を維持するためには、継続的なトレーニングを受けた証明が必要で ある。VDIも、トレーニングプログラムを提供している。 「工業会議所」の管轄は建設省と経済省である。 (6) エンジニア団体への加入 エンジニア団体への加入は原則任意である。 VDIの会員は個人会員であり、会員数は約 13万2千人である。VDEの会員数は約3万人、 「工業会議所」の会員は約4万人であるがその 内半数はCivil業務に携わるために登録している者である。 エンジニア団体へ加入するメリットは、その団体の業務に参加できることである。たとえ ばVDIは推奨規則としての基準(VDI Standard)作りを行っているが、VDI Standardはドイ ツ工業規格(DIN)として取り入れられることがある等、制度作りに参加する事ができる点で ある。 (7)更新 ディプロム・エンジニア(Dipl.-Ing.)は修了資格であり、更新の概念にはなじまない。 「工業会議所」への登録は、更新が必要である。 (8) CPD ・日本の様なCPDは無い。 「工業会議所」の登録を維持するための継続トレーニングが該当しよう。これを怠ると、 「工業会議所」への登録が取り消されるという意味でペナルティが存在する。 ・大手企業では企業内トレーニングを継続的に実施している。 (9) 公益性の確保や技術者倫理などのための施策(制度)について VDI より「エンジニア倫理の基盤」という宣言文が出されている。 (10) 資格取得、活用促進のための啓蒙等の広告・宣伝 VDI では冊子、広報誌等を精力的に作成している他、近年ドイツでも危惧されている 子供たちの理科離れを食い止め、将来エンジニアを目指すようにさまざまな施策を講じ ている。 54 (11) FEANI FEANIで定めている登録要件以上の追加的要件は定めていない。CPDを要件とはしてい ない。ドイツにおける2006年のユーロエンジニア新規登録者は37人であった。類型の登録者 は1,000人に満たず、ユーロエンジニアはあまり広まっていないといえる。理由は、ドイツ 国内でユーロエンジニアであることの必要性が無いからと考えている。 2.4.5 フランスにおける技術者制度 (1)調査対象 仏国においては、以下の機関、団体、企業への訪問調査を行った。 ① (社)国際建設技術協会(IDI)欧州事務所 ② Counseil National des Ingenieurs et des Scientifiques de France (C.N.I.S.F. フランス国家技術科学者協会) (2)フランスの技術者制度 1. フランスの技術者制度を語るには、フランスの教育制度から入る必要がある。 フランスの教育制度には色々なルートがあるが、大まかにまとめると下記の様である。 (1) 義務教育:が 16 歳まで、その後 3 年間の高校(Lycee)を経て、大学入学資格国家試験バ カロレアが設けられている。 (2) バカロレア(通称 “Bac”) バカロレアには3つのセクションがある。 ① The general BaccalaurEat、普通バカロレア: 長期の高等教育を受けるためのもの。 普通バカロレアには (i) 自然科学系(Scientifique、“Bac S” )、(ii) 人文科学 系(Litteraire、“Bac L”)、(iii) 経済・社会科学系(Economique et sociale、 “Bac ES”) の 3 つの系がある。 一般的には、“Bac S”が最も難しい。“Bac S” 取得後、名門グランゼコールを経ることで就職にも有利と考えられている。 ② The technical BaccalaurEat、技術バカロレア: 短期の高等教育に進むためのもの。 ③ The professional BaccalaurEat、職業バカロレア:卒業後は就職を前提とする教育。 (3) 高等教育 フランスの高等教育は、大学(UNIVERSITES)、高等専門大学グランゼコール(GRANDES ECOLES)、その他専門学校に大別される。大学ごとの入学試験という制度はない。 ①大学(5年間) バカロレアに合格していれば、原則希望する大学に入ることができる。日本の様に、大 学毎の入試はない。 ただし、レベルの高い大学では途中で脱落する者も多い。 ②高等専門大学グランゼコール グランゼコールは大学と並行する別個の制度であり、バカロレア取得者のおよそ数%の、 いわゆる「エリート」が進学する。 バカロレア取得後、グランゼコール準備学級(クラス・プレパラトワール)に進み、2 年間(最長 3 年間)の受験勉強を行なう。その後、グランゼコールの入学資格試験 (Concours d'entree)を受験するが、非常に狭き門と言われている。 グランゼコールには、理系(ECOLES D’INGENIEURS)と文系(ECOLES DE COMMERCE ET DE GESTION)とがある。 バカロレア取得後理系に進学する場合は、大学か、グランゼコールの理系に通う。エン ジニア希望の場合は、通常グランゼコールの理系を選ぶ。 55 (4) “Ingenieur Diploma” は下記のいずれかの進路によって年間 25,000 名程度に付与され る。 ・グランゼコールによるもの(54%) ・グランゼコールの統合学習によるもの(29%) ・大学でのエンジニアリング課程によるもの(13%) ・グランゼコールまたは大学と企業研修とによるもの(4%) (5) ボローニャ宣言への対応 フランスのエンジニア教育は一般的には2+3のシステム(基礎教育 2 年間、3年間の工 学教育を経て修士) で行われているが、これはボローニャ宣言の3+2のシステム(学士3 年、修士2年)と異なっている。 そのため国内でも色々な議論がされている。 グランゼコールでもボローニャ宣言に合わせるべく、カリキュラムを変更中とのことであ る。 2. エンジニア資格取得の流れ フランスには Professional Engineer に相当する個人の技術者資格制度はなく、Bac+5 相 当のエンジアリング教育を "Commission des Titres d'Ingenieur"- French Accreditation Board for Engineer Titles ( CTI) によって認定された学校で修了して、"Ingenieur diplome de(+卒業した学校名)" として表示され学位を名乗る。 職業資格としての Professional Engineer というものはフランスにはない。 3. エンジニア資格の主務官庁・関係機関 CTI (The Engineering Title Committee) 主な業務 - エンジニア教育の問題の研究 - エンジニア教育課程の認証 - エンジニア教育課程の質の確保のための活動 認証制度は 1934 年から行われており、1934 年 10 月には CTI 設立にあたり法制化された。 CTIは関連する産、官、学の代表者等で構成されている。 4. 技術者の地位 18 世紀になり国作りのために役立つ技術者を養成する必要が認識されるようになった。 当時の大学は、神学、法学、医学が盛んであった。これらに対抗して、グランゼコールが 設立された。 グランゼコールは難関であり、卒業生はエリート思われているため、卒業生は良い職業に 就職でき、高い報酬を得ている. したがい、今日でもフランスの技術者は権威あるものと受け止められている。 5. CNISF (National Council of Engineers and Scientists of France). (日本土木学会によ る 2006 年 CNISF 訪問調査報告を参照) ①会員数と構成: 140 以上の団体がメンバーとなっており、技術者約 58 万人(ただし会 員は企業ないし同窓会などの団体でありその会員を計上) 1860 年、ナポレオン皇帝が 署名した「民間技術者協会の公益性の確認」に基づき発足した。 ②予算: 1mil ユーロ(1.4 億円) ③主な活動: National Public Debate (政府から任命された専門家がプロジェクト、交 通問題、環境問題、原子力発電所問題などに対して意見を述べる)、国家技術者勲章授 与、国会議員・産業界・研究所との朝食会、技術者年次総会の開催、法的保護保険の 実施、技術者サラリー調査の実施、月刊ニュースレター発刊、教育プログラム、継続 教育プログラムの実施など 56 ④ITC は CNISF の傘下にある。 6. フランスにおける技術者の社会的評価 (1) "Ingenieur diplome "を取得した者は管理職に就く可能性が高く、とくに有名なグラン ゼコール出身者はいわゆるエリートコースを歩んでいる。 エンジニアの出世頭は「理工科学校(エコール・ポリテクニーク)」や「鉱山学校(エ コール・ド・ミン)」といわれている。企業のトップにはエンジニアが多いが、MBA ホ ルダーの経営者と2頭体制をとることも多い。 (2) 土木学会による 2006 年 CNISF 訪問調査において、フランスの土木技術者については 「建 築家と比べて表に出ることは少ない。土木構造物は有名になっても構造計算を行った技 術者は表に出ないとのこと。有名なミオーの橋梁では、最後にかかわった建築家だけが 有名になって、何十年も前に構想していたコンクリートの技術者(ビルロージュ)は忘 れられているとのこと。フランスの土木技術者で個人として活動している人より、会社、 官庁などに勤めている人が大半。 平均年間給与水準で見ると、技術者全体の傾向と変 わらない。具体的には、大学卒業の新規採用者で 3 万ユーロ、30 歳以下で 34,697 ユー ロ、30∼44 歳で 52,000 ユーロ、45∼59 歳で 75,150 ユーロである。他の技術者と同水準 と言うこともさることながら、日本よりも高いことに気が付く。また最近の顕著な傾向 があるわけではなく安定した状態とのことであった。」と報告されている。 (3) フランスでは、「エンジニア」はまず、直接間接にモノを作ったり、社会に対してサー ビスを提供したりして、技術的な専門家としての高度な能力を職業的に発揮する事を意 味している。エンジニアは新製品をデザインし、製造上の責任を負い、プロジェクトを 管理する。 時にテクノロジーや適用手法を論じる。そこが、ガイドライン従う仕事を するテクニシャンと区別される所以であると、考えられている。 また、「エンジニア」 には通常バカロレアののち 5 年という比較的長い時間をかけて、科学、技術、時に経済 学をも包含するカリキュラムを経て修得するエンジニアリングの学位も意味している。 ・エンジニアの仕事には、エンジニアの学位がなくても就ける。 ・エンジニアの学位がある場合は管理的な地位に就く場合が多いが、そこでは技術的な 色彩がなくなるか、少なくとも技術的な割合は減少する。 (Committee of study on the Formations of engineers のサイトを和訳) 7. 業務独占的な活用 : ・エンジニアとしての仕事は法によって規制されているものではない。“Ingenieur diplome” という呼び名が法によって守られているにすぎない。仕事のライセンスではな い。 ・公的には独占業務はない。 ただし、たいていは個々の契約などによってエンジニアの関 与が求められる事が大半である。 ・クレーンの操作や機械のメンテナンス業務を行うには個々の免許が必要であるが、これら はエンジニアとしての仕事とは見られていない。 8. 技術者団体への加入 : ・大学やグレンゼコールで工学を学び、卒業するとたいていは大学ごとの同窓会に入る。 これら同窓会が CNISF の会員となっており、同窓会会員の地位向上等の役割を果たしてい る。 技術者個人は各同窓会に会費を支払うこととなる。 ・実質的には出身校でエンジニアのレベルが判断されている。 すなわち、"Ingenieur diplome de(+卒業した学校名)" として表示され学位を名乗るが、この学校名がモノを言 うとの事である。 57 ・CNISF では「フランス技術者目録」として、資格技術者に掲載を行なっている。 掲載の要件は、 ① CNISF の会員である同窓会に加盟している“Ingenieur diplome” ② CNISF の会員でない同窓会に加盟している“Ingenieur diplome” ただし、手続きは個人で CNISF の会員同窓会(通常は URIS)を介してなされる。 ③ “Ingenieur diplome”には満たない技術者教育を受け、専門がエンジニアリングで かつ経験がある者 : 科学教育のある認知技術者(IRS ingenieur reconnu d'origine scientifique ) として掲載される。 卒業資格、学校、協会名、専門分野等の情報が掲載され、CNISF のホームページから検 索できる。 専門分野としては下記の12分野が分類の対象となっている。 A 農業、農学、農業食料学、動植物資源 C 生科学、プロセス工学 D 生物工学、医療工学、衛生 E 宇宙地球工学、地学、地球物理学 F 物資学、金属工学、鉱学、資源鉱学 G 土木工学、都市計画、建築、環境、地方開発学、自然資源管理学、都市開発 H 電気、音響、自動、電子、光学 J 情報と数学、情報システム、マルチメディア M 機械工学、エネルギー工学、流体、機械原動機、熱学 N 産業工学、輸送、交通 P 経営工学、開発、リスク T テレコミュニケーション、ネットワーク 9. 資質や能力の維持・向上(CPD)のための施策(制度) : ・CPDというものはフランスにはない。 ・法律により企業は従業員の教育が義務付けられている (対象はエンジニアに限らない。) 10. 公益性の確保や技術者倫理などのための施策(制度) : Charte d'Ethique de l'ingenieur (12/05/2001) がある。 11. 資格取得、活用促進のための啓蒙等の広告・宣伝 : ・会の案内のパンフレット ・2 年に一度「技術者の実態調査」を行っている。最新版は 2006 年 6 月の調査。2006 Situation des ingenieurs (17e enquete du CNISF) の部分訳を添付する。 12. その他 (1) 技術者の数 上記調査 2006 Situation des ingenieurs (17e enquete du CNISF) によると、2005 年末における 60 合い未満の Ingenieur diplome 保有者は 585,200 名である。77%のエン ジニアが民間企業に就職している。その内訳は工業部門 49%、建設・公共事業部門 4.5%、 サービス部門が 44%で、うち 19.5%が企業向けサービス会社、情報エンジニアリングサー ビス会社、およびエンジニアリング会社である。 (2) FEANI のユーロエンジニア CNISF 訪問時には “Peanuts”とのコメントしか得られず、積極的な取得の推進を図って いるような印象はなかった。FEANI のホームページ http://www.feani.org/ によると、 2007 年 1 月現在、フランスのユーロエンジニアは 2,500 人と公表されている。 58 2.4.6 海外の技術者資格との対比 ○欧米の技術者資格制度の比較 No. 項目 国名 米 英 仏 独 1 技術者資 格称号 PE: Professional Engineer CEng: Chartered Engineer IEng: Incorporated Engineer EngTec: Engineering Technician ID: Ingenier Diplome Dipl.-Ing.(Diploma Engineer) 2-1 資格付与 団体/技 術者登録 協会 各州の Professional Engineer Licensing Board が資格付与 EC-UK(Engineering Council、 UK, 英国工学協会)が資格付与 前身は Council of Engineering Institutions and Engineers Registration Board CNISF (Conseil National Des Ingenieurs et Des Scientifiques de France,フラ ンス国家技術者・科学者協会) が登録管理 VDI (Verein Deutschen Ingnieure, The Association of Engineers in German, ドイツ 技術者協会)が登録管理 2-2 技術者協 会の目的 NSPE (National Society of Professional Engineers、全国 PE 協会) は全米の PE を代表す る唯一の組織として: PE 制度の普及・発展に寄 与し、 PE の地位向上を図るとと もにその法的権利を守り、 PE の能力維持・向上と倫理 観向上を図ることで、 公共の福祉、安全、健康を 守ること エンジニアリングに関す る活動への協力・調整、技 能・技術者の知識・能力の 向上、産業界に対する技 能・技術者の供給、技能・ 技術者の資質確保 各専門協会が過去におい て個別に行っていた資格 および教育プログラムの 認定の統一をはかる。 59 大学の同窓会が CNISF の 会員になっている。 ID 資格の登録を実施(フ ランス技術者目録) 次世代技術者の育成 ドイツの技術の位置づけ 技術革新の支援 2-3 技術者協 会の会員 NSPE:45,000 人(任意加入) EC-UK 傘下の専門協会の所属員 が会員 3 公的資格 認定制度 州法に基づく業務免許付 与および資格名称使用許 可 EC−UK は民間非営利団体 EC-UK は 1981 年に英国王 室から与えられた勅許 (royal charter)のもとに 認定・登録を行っている。 CEng, IEng, EngTech は名 称独占資格である。 資格が法によって規定さ れてはいない。 CTI (The Engineer Title Committee) :工学教育の 研究、工学教育課程の認 証、工学教育の質の確保、 1934 年に法によって設立。 連邦法として 15 の Engineer Law がある。連 邦政府教育・研究省または 州政府から資金援助 4 登 録 専 門・技術分 野 各州ごとに異なるが、PE の登録にあたって分野を 問わないことが多い。 EC-UK から登録・審査のラ イセンスを与えられた協 会・団体は 32 ある(2007 年 1 月現在)。 140 以上の団体が CNISF の メンバーである。 技術者登録分野は農業、鉱 山、土木、電気、機械等を 含む12分野 20 の技術分野および専門 分野 5 資格保有 者数また は協会登 録会員数 PE 資格保有者は約 400,000 人で Civil、 Mechanical, Electrical の 3 分野で 9 割以上を占め る。 工学系卒業生の 20%が PE を取得 女性の PE は 20%(環境や バイオ分野に多い。 ) NSPE 会員数:45,000 人 CEng: 188,367 IEng: 41,603 EngTech: 13,107 (2005 年 12 月 31 日現在) CEng の 70%は土木、電気、 機械 女性 CEng: 7,257 2005 年登録 CEng: 5,906 海外 CEng 登録: 34,118 (香港、豪州、米国) EC-UK は FEANI のメンバー で UK-EURINGs は 13,000 人 ID は 580,000 人(このうち 土木系は 70,000 人) 年間 25,000 人に ID が付与 される。 DI は 900,000 人, このう ち 2/3 は企業の被雇用者 であり、製造業や建設業に 従事。 VDI の会員は 132,000 人 (2004 年は 124,000 人) VDE(Verband der Elektotechnik)の会員は 約 30,000 人 エンジニアチャンバー会 員は 40,000 人 DI の登録管理は各州のエ ンジニアチャンバーが担 当 60 CNISF: 技術者個人 VDI: 技術者個人 6 資 格 登 録・更新要 件 学士(Bachelor)取得 技術者としての 4 年間以 上の実務経験 複数 PE の推薦状 EIT (Engineer-In-Training) の称号保有:FE 試験合格 と同等 PE テストに合格 2 年毎に更新 EC-UK のメンバー協会に属 すること。専門的技術力を 保障する UK-SPEC に基づ く評価、専門性を保持し社 会に責任をもって行動す ることを証明。 手続き:学士・修士の取得 >筆記試験>インタビュ ー>決定 ① Education(教育要件)、 ② PD(Professional Development、継続研鑽)、 ③ PR(Professional Review、業務経験) Competence(優位性、有能 性、力量)の提示・証明 UK-SPEC (2004 年) : Standard for Professional Engineering Competence の適用 (以前の SARTOR (Standards and Routes to Registration、 1984 年) の 改定版 年会費納入による更新、学 生にはメンバーフィーの 割引がある。 61 資格制度はない。大学の同 窓会への登録が基本的な 能力認証とされる。 CTI によって認定された学 校を修了し、ID+学校名を 名乗る。 バカロレア取得後、5 年以 上の研修経験が必要。 総合大学(Universitat) か専門大学(FH:ファッ ハホッホシューレ)を修了 すると Dipl.-Ing.が取得 できる。但し、DI は修了 資格 コンサルティングエンジ ニアや公共建設事業に関 わる場合は各州の工業会 議所への登録・更新が必 要。 基本的には学歴要件が必 要だが、例外的に専門技術 の経験による場合もある。 7 CPD 要件 32 州で CPC(Continuing Professional Competence)を更新条件と している。 15 PDM/年 (professional development hours)が必 要 8 資格保持 者による 業務独占 権 業務免許および資格名称 使用の許可 公益に関るコンサル業務 やエンジニアリング業務 では PE は不可欠 なし 業務独占ではないが特定分野 は法律により Engineer の資格 要件が定められている(ダム設 計と点検、船員、鉱山、航空機 メンテ、ガス施設、鉄道信号、 自動車メンテ、圧力容器等) 。 ID という称号は法に定められ ているが、これに公的な業務独 占権が付与されているわけで はない。多くの場合、業務契約 でエンジニアの関与が求めら れる。 Diploma Engineer は 技術者を 雇用する場合の条件となる。 土木工事や製造業は DE の関与 が法的に義務付けられている。 土木工事はエンジニアチャン バーに登録した技術者のサイ ンが必要。電気や機械製品の場 合は技術者協会が認定。 9 社会の認 知度 高いが医者や法律家、会計 士に比べると低い。 ASCE(土木学会)の会員に なるためには PE または同 等能力が必要。 高い:EC-UK の Royal Charter によって保護 世界的にも有名で外国人の登 録も多い。 グランゼコールは 18 世紀に設 立され、難関であり、その卒業 生はエリートである。フランス の技術者は権威あるものとさ れている。実際には出身校でエ ンジニアのレベルが評価され ているようである。 信用度は高い。高い資格条件と して位置づけられ経営幹部に なる可能性は高い。但し、学歴 や収入面で最高とはみなされ ていない。 (医者、弁護士、経 済人の社会的プレステージは 高い。 )多くの技術者は主導的 な立場にあるので高く見られ てしかるべきである。技術者資 格証明書はよく知られている。 かってICE(英国土木学会) では年間 5 日間、PR の前 には 30 日間と定めていた が、現在、数量規定はない。 62 CPD そのものの規定はな い。 法律により企業は従業員 教育の義務がある。 工業会議所へ登録する場 合は継続的トレーニング が条件である。研修は建設 省や経済省が担当。州によ って CPD 要件に差がある。 10 称号およ び協会会 員の便益 NSPE は全米唯一の PE 組織 であり、専門領域を超えた PE ネットワークが保持で きる。 求職活動・待遇向上の援助 継続教育に関する機会提 供 協会を通じて連邦政府、地 方政府への技術協力・政策 提言の機会 研修コースへの参加 会議への出席 発行雑誌の無料配布 フェロー技術者との議論 高報酬の可能性 キャリアーの改善・向上 所属機関での影響力の増 加 専門的地位の醸成 専門性と困難な仕事への 認定 生涯教育へのアクセス 信頼性の増加 National public debate への参加(政府から任命さ れた専門家が交通、環境、 原子力等に意見を述べ る。 ) 国家技術者勲章授与 国会議員・産業界・研究所 との朝食会 技術者年次総会への参加 法的保護保険の実施 技術者報酬額の調査 月刊ニュースレターの配 布 教育プログラム・継続教育 プログラムの実施 VDI へは任意加入である が、加入すればその団体の 業務に参加できる。 VDI 作成の規格がドイツ工 業規格(DIN)に取り入れ られることもある。 11 技術者の 義務・責任 技術者として能力の維持・ 向上を図ること 公共事業や建築事業では 図面に PE の seal(印章)が 要求される。 倫理規定の遵守:公衆の安 全・福祉にそった設計 CEng は新技術の開発・応 用、先進的な設計の促進、 効率的な生産技術、マーケ ティングの探求、導入す る。 教育、トレーニングにも有 能であること。 技術管理においてリーダ ーシップがとれること。 Guidelines for Institution of Codes of Conduct(公益性の確保や 技術者倫理)の遵守 公益性の確保や技術者倫 理の遵守 品質、信頼性、安全への責 任、社会的な責任 安全、危険、誤用に関する 文書による通知 代替案の提示 バランスとコンセンサス (パブリックダイアログの 追求) 職業倫理観の維持 63 12 特徴 工学教育レベルをあげる ことを提案する”Raise the bar“プログラムの改 善が進められている。 登録技術者の数が多い。学 歴要件だけでなく資格取 得へのいくつかのルート がある。 若い技術者の育成に熱心。 技術者行動規範の制定と 遵守、Integrity(公正)の 重視 健康、安全、治安の重視 教育制度が技術者資格や 能力の判定におおきく関 連している。 2006 年は VDI 創立 150 周 年記念(1856 年創設)で あり、そのスローガンは “Sachen machen= Let’s make things!” 最近 VDI の Philosophy と して Fundamentals of Engineering Ethics を発 行 技術移転の強化 若年層の理科・技術分野へ の啓蒙に熱心 13 関連機関 NSPE (National Society of Professional Engineers):すべての技術 分野にわたって個々の技 術者からなる米国では唯 一の Engineers Society NCEES (National Council of Examiners for Engineering and Surveying): PE 資格の取 得に必須条件となる2つ の試験(FE 試験および PE 試験)の試験問題作成と各 州への提供・採点を行って いる機関 NAE (National Academy of BNCIEA : British National Committee for International Engineering Affairs, 英 国工学国際委員会 JAB(Joint Accreditation Board) EAB(Engineering Accreditation Board) QAA (Quality Assurance Agency) CTI VDI Technology Center 64 Engineering) 14 教育制度 15 技能資格 16 FEANI (1951 年設 立、欧州に おける技 術者資格 の相互認 証制度)と の関連 PE 制度に ABET の工学教育 認定プログラムが組み込 まれており、PE 取得の要 件のひとつとされている が、必ずしも必須事項とは されていない。 ―適用外― 高校卒業後の大学進学統 一試験制度としてバカロ レア(通称 Bac)がある。 バカロレアには一般 Bac, 技術 Bac, 職業 Bac の 3 種類がある。 バカロレア取得後、大学進 学とは別にグランゼコー ル準備学級にすすみ、エリ ートコースといわれるグ ランゼコールに進学する 制度がある。 ドュアル・システム(現場+学 校)の重視:職場教育と一般教 育とは相互補完的位置づけ EngTech が相当。 クレーンの操作や機械のメイ ンテナンス業務には免許が必 要である。 職人のための国家資格である マイスター資格制度がある。審 査は各州の手工業会議所のマ イスター試験委員会が担当 EC-UK は FEANI のメンバーであ り、UK-EURINGs は 13,000 人。 FEANI 制度そのものに大きな関 心はまだないようである。 FEANI の認知度は高くなく、ド イツ市場への影響もあまりな い。累計登録者は 1,000 人弱で 2006 年の新規登録は 37 人であ った。言語障害の問題もある。 65 2.5 現行制度の課題及び改善の方向性に関する分析(実施項目⑤) 技術士資格取得促進方策、技術士の資質向上・公益性の確保方策、技術士の活用促進方策 等、技術士資格の制度改善や運営に反映させるための検討に資するとの観点から、2.2項 で整理した課題や調査項目について、2.1項から2.4項の調査結果に基づき比較検討等 を行い、現行の制度及び運用上の諸課題を抽出し、これらを改善していくにはどのような方 向性があるか、それぞれの課題について分析し、整理した。 (1)比較検討 項目 技術者団体及び他の資格等のヒアリ ングでの有用事項 現行の制度及び運 用上の諸課題 資格の活用方法を具体的に明示 ・名称独占資格で ・各資格の定義が法令で規定されてい あるため、法に 業務内容の記載 る。例えば、 ・弁理士法の第 4 条∼第 6 条の 2 に がない。 「業務」を明記(=資格の必要性) ・中小企業支援法の第 1 条、11 条 ・労働安全衛生法、81 条 現行技術士制度の 改善の方向性 ・名称独占資格とし ての技術士資格の 在り方(業務独占 の可能性検討) ・活用する法(職業 法、社会資本整備 基本法など)の制 定検討 ・資格の活用場面を 技術士自ら作成し 提言・PR していく 各工業分野からのニーズ ・ニーズの発掘 ・産業界のニーズ吸 上げ 資格取得 筆記試験合格者の翌年持越し ・現行法に記述無 ・司法試験、電気主任技術者試験に制 し 度あり ・筆記試験合格者の 翌年持越しの可能 性の検討 業界資格の認定 ・産業別資格取得 ・業界別資格を取得する方が企業にメ 者の取り込みが リット多い 十分でない ・一次試験の免除資格追加の要望あり ・試験制度の見直し ・大学等への前倒し資格試験の推進と ・無し 学科試験の共有化に伴う優遇処置 ・大学・JABEE との連 携方法の検討 大学との連携 大学関係へのアプ ・大学の中での知財の掘り起こし、知 ローチ、ロビイス 財管理 ト活動の不足 ・専門のロビイスト の設置 ・大学・JABEE との連携方法の検 討 66 活用促進 業界における技術者像 ・各業界における技術者の最高峰に技 術士を位置づける 企業内技術士の意味づけ 産業界へのアプロ ーチ、ロビイスト 活動の不足 企業内に技術士が 在籍していても企 業価値の評価を上 げる制度的な恩恵 なし ・専門のロビイスト の設置 技術士自身による提案とPR 技術士が他の部門 の技術分野に目を 広げていない 活躍の場面設定と提 言 ・受験費用 12,000 円(弁理士) ・二次 14,000 円 ・受験費用 9,400 円(施工管理技術者 ・経費の透明性、 試験)、15,100 円(建築士資格試験) 他資格との比較 検討 ・氏名、生年月日、事務所などを登録 ・同左 ・個人登録 ・受験費用の適正化 検討 ・特許庁から「知財人材の育成」の要 ・無し 求(日本弁理士会) ・更新による力量 ・更新制度 担保 ・活用促進 ・活躍の場面設定と 提言 ・力量の明確化 ・活用のリーフレッ ト 義務研修 ・義務化していな ・弁理士:日本弁理士会会則に基づき い。 5 年に 1 度(1 日程度)の倫理研修 (努力義務)あり、参加率は 100%。 他の研修は 90∼100% ・弁護士;日本弁護士連合会規則「倫 理研修規則」に基づき 5 年に 1 度の 倫理研修義務あり ・義務化の可能性検 討 ・登録制度との関連 性 ・専門のロビイスト の設置 ・個人登録の可否の 検討 資質向上・公益性の確保 CPD の認定制度 ・法では技術士の ・自主研修を含む CPD ・弁護士研修センターへの申請による 資質向上の責務 の認定 認定 を規定(努力規 定) 技術士会入会の義務化 ・技術士会への加 ・弁護士の弁護士会入会は法令で規定 入は任意 ・入会(登録)の義 務化・法制化の可 能性検討 ・弁理士:個人の能力アップ以外は無 ・費用は自己負担。 ・CPD の費用の見直し 料。登録・管理費用は無し 登録・証明書発 ・透明性の検討 行 5 千円(非会 員) ・弁理士:法に懲戒の種類(戒告、2 ・技術士法第 36 条 ・罰則等の在り方 ・倫理委員会の組織 年以内の業務停止、業務の禁止)が あり、会則で 3 委員会(倫理・法・ 強化検討 トラブル)が調査 ・建築士法では新たな罰則規定有 67 技術士会への加入による社会的責任 と信頼の保持 ・法に左記の明記 が無い ・入会の義務化・法 制化の可能性検討 技術士管理 ・技術士法第 54 条 ・活動内容の見直し ・日弁連では会員の指導・連絡・監督・ など 研修、研究・普及・登録を実施 会の役割等 中小企業向け補助金、助成金制度の把 ・技術士会にロビ 握 イスト不在 ・情報処理技術者には経産省の政策が 周知されている ・ロビイストの設置 ・弁理士:会費 2 万円/月 ・会費の見直し検討 (会員増加方法と リンク) ・活動内容の見直し など ・広報、人材情報提 供 ・会費 2 万円/年 ・弁理士:会員の指導・連絡・監督・ ・同左 研修、研究・普及・登録(事務局 60 名) ・広報、人材情報提供、出版 (2)課題抽出 事 項 1 資格の取得促進 ①資格の必 要性 ②試験方 法・内容の 見直しの必 要性 主な課題 ・技術士の必要性 の社会的認知度 向上 ・資格取得の動機 付け ・一次試験のコン ピュータ試験化 ・一次試験の難度 の適正化 ・JABEE 課程修了生 と一次試験合格 者とのレベルの 整合性 ・二次試験の合格 率の部門間不整 合の適正化 ・共通科目の出題 範囲が広範 ・筆記試験合格の 翌年まで有効化 ・資格者若年化 ・実務経験、実務 知識を有効に発 揮できる試験方 式 ・一次試験の免除 資格の追加 ・技術士の資質維 持・向上 改善のポイント 改善の方向性 ・名称独占資格の在り方 ・技術士の活用方法の ・社会的ニーズの把握 検討・提言・PR(特 に建設部門以外、自 治体) ・試験の適正化・円滑化 (受験者の負担軽減) ・若年化の受験要件 ・他の専門資格試験との 試験項目の共有化 ・共通科目の出題範囲の 特定 ・一次試験、二次試験の 免除の対象と範囲の拡 大 ・産業別資格試験合格者 の取込み ・資質試験の導入 68 ・コンピュータ試験導 入の迅速検討(DB の 整備) ・一次試験、二次試験 の内容や方法等の適 正化のための検討 (JABEE 課程修了生 とのレベルの検証を 含む) ・筆記合格の持越し検 討 ・口頭試験を東京以外 でも実施する方向で の検討(受験者の負 担軽減)及び地方で の受験環境の整備に ついての検討 ・共通科目の出題範囲 の公表 ・試験の一部免除資格 の拡大についての検 討 ・二次試験における口 頭試問など 2 活用促進 ③受験費用 ・一次 11,000 円 ・二次 14,000 円 ・費用の適正化 ④資格者の 増加方法 ・法改正の検証 ・法改正の目的(国際相 ・法改正後の資格者の 互承認のための技術士 増加状況と未達成へ 増加)の達成度 の対応検討 ・技術士活用によ る企業価値の評 価を上げるよう な仕組み ・企業内における技術士 ・ロビイストによる各 の位置づけ 省庁への働きかけ ⑤大学・ JABEE との 連携 ・技術士補、二次 試験への誘導で の連携 ・JABEE の検証 ・技術士補の位置づけ・ ・大学、JABEE との連 活用(補の名称、役割、 携のための検討会議 の設置と検討(特に 権限の見直しと活用) ・JABEE の有効性 補対応) ①登録方法 ・PE としての個人 登録 ・事務所登録の必要性 ・個人登録の可否の検 (弁理士では所在確認 討 のための事務所登録) ・技術士会への加入義 ・技術士会への加入及び 務の可否の検討 事務所登録の必要性 ②資格の活 用方法 ・建設以外、自治体 ・活用を要望するのでな ・部門ごとに活用場面 く技術士会、技術士が の設定と提言 などでの活用 自ら売り込む ・総合技術監理部門 ・SCOT(サイエンス・コラボ・ティーチ の活用 ャー)事業等への受け皿 ・他専門資格との共 有 ・現在の科学技術に 部門を合わせる ・法曹界への働きか け ・省庁の政策、指針 ・ロビイストの設置 の継続的チェッ ク ③業務独占 の可能性 ・費用の見直し検討 ・業務独占 ・技術士会内にロビイ ストの専任体制 ・業務独占の項目、場面 ・業務独占の可能性検 設定(品確法での活用、 討 倫理技術者の活用) (企 ・職業法の可能性検討 業のテクニカルアドバイザーな (社会資本整備基本 ど) 法など) 69 3 資質向上・公益確保 ①CPD の義務 ・CPD の義務化に伴 化の必要性 う更新制度導入 ・他の協会、民間団 体の CPD との相互 認証による CPD 内 容の充実 ・公務員技術士の拡 大 ・CPD の内容の学協会間調 ・CPD 義務化(法制化、 整・統一化 技術士会指導など) ・CPD の量(時間)から質 の可能性検討 ・土木学会、建コン協 (内容)へ) ・技術士の力量担保 などとの CPD 基準の ・公益確保業務の充実 調整会議(建設系 CPD 連絡協議会との 連携) ・産業別資格における CPD との相互認証 ・公務員技術士の処遇 ・支援の仕組みづくり ②CPD 費用等 ・CPD 費用の透明性 ・CPD 登録と会員増 ・CPD 費用の見直し ・届け出制による自 ・認定組織による自主研 ・CPD 認定の条件整備 主勉強会 修の申請受理と評価 ③倫理・罰則 ・倫理規定、罰則規 ・技術士の活用の切り札 ・倫理・罰則規定の適 規定 定の厳正化 (倫理観ある技術者) 正化を検討 ・倫理委員会の厳格な 対応・仕組み 4 日本技術士会の役割 ①会員の増 加方法 ・会員の義務化・会 ・品確法対応には、登録 ・会員及び技術士全体 員の加入義務化 者の会員化・組織化が にとって魅力ある技 ・認知度が低い 必須(CPD の確実性) 術士会活動の在り方 ・調査活動・政策提 ・CPD の確実な実施と認 ・技術士会への加入の 言 証 在り方(強制加入の ・社会への情報発信 是非) ・認知度の向上(PR) ・情報発信の体制 ②会費 ・会費 2 万円/年の ・会費の値下による組織 ・会費の値下げ検討 (例 値下 化向上 えば、目安 12,000 円=土木学会) ・会員であることの必 要性とその権限に見 合う会費 ③APEC エン ジニア ・活用促進 ・名刺以上の位置づけ ・APEC 以外の相互 ・活用の要点整理 認証拡大 ・APEC エンジニアの位 置づけ ・活用具体策検討 ・相互認証の拡大と活 用 ④国及び自 治体等の 施策のウ オッチ ・ロビイスト活動 ・技術士会内にロビイ ストの専任体制 ・ロビイストの設置 70 (3)海外の資格制度に関して参考となる事項等 米国及び欧州における技術者制度に関し、日本の技術者制度の改善のための検討や反映さ せるべきものとして、次のように参考となる事項等としてあげられる。 対比項目 参考となる事項等 技術士法の目 米国では、公衆の安全、健康および公共の福祉増進を図ることを技術士法 的 (Professional Engineer Law)の目的(Purpose)とすることが最初に定め られている。一方、わが国の技術士法では、科学技術の向上と国民経済の発 展に資することが目的とされており、公共の安全,環境の保全その他の公益 に関しては、それを害することのないように努めなければならないという責 務としての記述となっている。 米国の場合には、公衆の安全、健康および公共の福祉増進に関る事業には 技術士(PE)の活用は必須事項であり、それに関る技術士には当然のこと として、高い倫理観が求められる。一方、わが国の場合は、科学技術の向上 と国民経済の発展を目的としており、技術士の活躍の場は広そうに見える が、反って技術士活用の必然性は低くなっている。 英国では技術者資格が法律による認定されているわけではないが、 EC-UK が全分野を包括的に管理・指導・促進を行っている。仏でも法的な 資格はないが、歴史的背景かつ独特の教育制度のもとでグランゼコール卒業 生等、エリート技術者の権威は高いが、国際的ではないと思われる。独では 州法で公共事業における技術資格要件が定められている。いずれの国でも社 会の要求を受けて高い技術者倫理や社会に対する責任(安全、安心、健康) を技術者の資質として強く求めている。 試験実施の委託機関である NCEES は資格取得者を増やすことの関心は 高いが、 全米の技術士資格者の団体である NSPE や各州の免許局 (Licensing Board)などは、技術士の能力維持・向上を図ることで、技術士の社会的地 位向上や公衆の安全、健康および公共の福祉増進を実現することの方に関心 が高い。 英国の CEng(チャタードエンジニア)は国際的にも認知され、香港、豪 州、米国の資格認定者も多い。歴史的、社会的な背景もあると思われるが、 Civil 分野の CEng 資格取得には必ずしも学歴要件を固定せずいくつかのル ートを設けている。 仏の CNISF は中国技術者との交流を深めたいとの方針があるようであ る。技術を国際市場での問題としてとらえ、国益の観点からのアプローチは 妥当と思われる。 独でも若い世代の技術離れが深刻であり、VDI(2006 年は設立 150 周年 記念)などはかなり大規模にセミナー・キャンペーン等を行い技術への関心 を国民にアピールしている。キャッチフレーズを“Let’s make things!”とし、 また innovation(革新性)もキーワードになっている。 技術士活用の 連邦政府機関では、全米の技術士資格者の団体である NSPE を技術士の 場(1) 代表組織と位置付けており、公衆の安全、健康および公共の福祉増進に関る 科学技術政策立案などの公的な場(例えば、委員会などで)へ、技術士が委 員として参加することを要請している。また、NSPE ではそういう場への参 加により、公衆の安全、健康および公共の福祉増進に技術士が寄与すること を最も重要な活動の一つと位置付けている。 わが国では、行政機関の委員会の場へ技術士の参加が要請されることは極 めて少ない。 資格取得促進 71 技術士活用の 試験実施の委託機関である NCEES の活動は、多くのボランティアの技術 場(2) 士によって支えられており、これらの現場の第一線で活躍している技術士の 意見を取り入れた試験問題の作成、合格基準策定が行われるなど、技術士の 関与が非常に大きい。 わが国では、技術士試験問題の作成、採点、口頭試験には、技術士以外の 学識経験者や公務員等の委員が過半数を占めている。 技術士活用の 米国では、業務独占資格として技術士資格が求められる場合には、技術士 場(3) の印章(Seal)の捺印が求められる一方、設計図書の瑕疵に対する技術士個 人に対する責任が重い。 わが国では、設計図書等の技術士の成果品の瑕疵に対する技術士個人の責 任の程度はないに等しい。 技術士試験 米国では、一次試験に相当する FE 試験の受験者の多くは工学系 4 年制大 学の 4 年生であり、所要の実務経験の後に二次試験に相当する PE 試験を受 験する受験者の平均年齢は 20 代後半である。また、技術士はエンジニアと して一人立ちする資格ととらえられている。 わが国では、20 代での受験者の合格は以前から少なく、一次試験および 二次試験の合格者の平均年齢は 30 代および 40 代である。これは、我が国で は技術士は豊富な経験を有するものとされており、試験においても実務経験 を必要とする問題が出題されるためと考えられる。 また、米国では数名の PE の推薦が資格取得の条件になっている。また筆 記試験やインタビューのほかに、インタビュアーの前で本人が 15 分間のプ レゼンをする義務が課せられている(土木分野)。 技術士資格更 米国では、技術士の能力維持・向上を図るため、定期的な資格の更新制度 新及び CPD 義 を導入するとともに、更新には所定の時間の CPD を受講していることを義 務付け 務付ける州が増加している。 欧州(イギリス,フランス、ドイツ)においては、資格の更新制度は採用 されておらず、CEng に対し Competence の維持を求めている以外には CPD も義務付けられてはいない。 英国の EC-UK の定める UK-SPEC では、CEng は技術専門職のエリート であるとの観点から、確立した技術を使用し、さらに創造性や革新性のある 技術を通じた問題解決能力やリーダーシップ能力を求めている。米国でも Competence の有無が問われているが、これを単に優位性または有能性との みとらえるのではなく社会において技術をもとに問題の解決策を提示でき る「力量」とでもとらえるべきと考える。この competence を資格要件とし てどう具体的に求めるか、重要な課題である。 72 (4)課題改善の方向性についての考察 本報告書を取りまとめるにあたり、凡そ次のような課題と改善の方向性が考えられ、考察とし て記した。また、ヒアリング等をとおして得られた各委員の所感等についても考察として記した。 科学技術創造立国を目指すわが国にとって、また科学技術に対する社会の安全や安心の確保の 観点から、高度の専門能力と倫理観を備え、かつ継続的に資質の向上に取り組んでいる技術者を 育成・確保していくことが肝要である。 技術士法には公益確保や資質向上等についての義務が規定されており、上記のような役割や期 待を担う技術者として、技術士を活用することが不可欠であるとの企業・官庁・教育機関を含め 社会的認識(合意)の形成が必要と考える。 そのため、技術士制度の目的、技術士の役割等を明確にするとともに、技術士法あるいは業法 に技術士の積極的な活用について明示することについて検討していくことが必要と考える。少な くとも、国民の安全に係る業務については技術士が関与することが望まれる。 また、技術士を広く積極的に活用していくにあたっては、社会に対して技術士の品質を保証す るシステムが必要と考える。資質の向上については、日本技術士会が主体となり技術士 CPD の 推進に取り組んでいるが、全ての技術士に対し実効性のある CPD を推進し、それを管理してい くためのシステムを構築していくことが必要と考える。 技術者倫理については、日本技術士会は技術士倫理要綱を定めているが、これを全ての技術士 に対して拘束力を有し、この要綱に反した場合には資格の剥奪も含め罰則を強化するよう見直す ことが必要と考える。 社会のニーズに的確に対応していくためには、有資格者の数を確保することが肝要である。受 験要件や試験の一部免除など資格取得のメカニズムとともに、試験の方法や内容などの見直しに ついて検討することが必要と考える。 また、大学等の教育の段階における優秀な技術者の育成・確保に対する取り組みは重要なファ クターであり、教育現場における技術士制度に対する理解を定着させることが必要と考える。 なお、技術士は個人に着目した資格であり、その活用や処遇は個々人の努力によって実績を重 ねていくことによりおのずから評価されていくものである。資格を有しているからといって、そ の活用を業法等により制度化することはなじまないとの意見もある。 日本技術士会が社会に対しタイムリーに提言等を行うような活動により、技術士の社会的なス テータスの向上を図り、よって技術士資格の取得の意義や意欲の醸成を図るような方策も重要と の意見もあった。 ○考察(その1) 昨今、種々の業界において科学技術に関する国民の安全・安心を損なうような事件や不祥事が 多発している。これらの事件や不祥事の多くは、企業倫理、技術者倫理の欠如に起因するもので あり、科学技術創造立国を目指すわが国にとって、また、環境問題や先端技術への取り組みなど にあって国際的なリーダーシップを発揮すべきわが国にとって、高度の専門能力に加え倫理観を 備えた技術者の養成・確保は重要な施策の一つである。 そのためのは、専門能力と技術者倫理を備え、かつ継続的な資質の向上に取り組む技術者であ る、技術士に対する社会の信頼を醸成するとともに、企業・国・地方自治体・教育現場において 技術士の積極的な活用及び技術士資格の取得促進を図ることが肝要と考える。 技術士制度及び技術士の位置づけ(目的、定義、役割等)を明確にするとともに、技術士法あ るいは業法に技術士の積極的な活用について明記すること、また、全ての技術士に対して資質の 維持向上が図られていることを検証する仕組みの構築、技術者倫理に反した場合の罰則の強化に ついて資格の剥奪等をも含め検討していくことが必要と考える。 このように、技術士の明確な位置づけと積極的活用の明示、及び技術士としての使命・義務を 明確にすることにより、技術士に対する社会の信頼が醸成され、技術士を活用している企業等が 73 社会的評価を受けることができるよう、また、学生及び卒業生に対する技術者としてのキャリア アップの道筋を明確に示すことができ、わが国の唯一の資源である人材を養成・確保することが 期待できる。 また、技術士制度の改善とともに優れた技術者として技術士の養成、確保を図ることにより第 3期科学技術基本計画の柱としてあげられている人材育成について貢献していくことが期待でき る。 ○考察(その2) これまでに検討においてでてきた課題の多くは、既に幾度となく議論されてきたことである。 その中でもヒアリングの過程では、次の点を再認識した。 ①技術士の活用は要請でなく自らの提案で 技術士法第 2 条(定義)に明記している技術士は、明確な役割(対象業務)が与えられてい ない。したがって、技術士が活用側の使い勝手にゆだねられていることから、活用が進まない という事情がある。 活用促進を図るためには、国交省以外の官庁や民間へ要請する前に、 「技術士がどんな資格で どんな場面で有効か」を使用者の立場になって技術士が自ら活用場面を想定して提案していく ことが必要であろう。その場合には、次の点を強調していくことが重要と考える。 (公益確保) 昨今の官製談合、データ隠し、事故の頻発を考えると、技術士法には「公益確保の責務」 (第 45 条の二)が明記され、試験では倫理に関する試験(筆記、口頭)を実施しており、高い倫理 観を備えた技術者であることを求めており、これらの点から技術士は有効な技術者資格である。 ちなみに、他の資格、例えば一級施工管理技士、電気主任技術者や情報処理技術者では、倫理 の試験までは行っていない。 なお、日本建設業団体連合会(日建連)は、名古屋市発注の地下鉄談合事件で会員企業が起 訴されたことに触れ、再発防止の徹底に努める考えを表明している(下記の建設工業新聞記事 参照) 。 法令違反企業の罰則強化 会員資格停止など検討(2007.3.26 建設工業新聞) ・ 今回の事件がどのような背景で起こったなども含め、コンプライアンス(法令順守)の研 究を行うとともに、不祥事を起こした会員企業に対する罰則強化を検討する。 ・ 日建連の定款には、名誉を汚し、信用を失う行為に対し除名という措置を盛り込まれてい るが、積極的にペナルティを与えることを想定していないため、厳重注意、役所の退任、 会員としての活動自粛、会員資格停止など中間的な措置が規定されていない。 ・ 不祥事に対し厳しく対応する観点から、罰則内容をきめ細かく制度化する。 現在、日本技術士会の倫理委員会では、倫理要綱の見直しを進めており、ガイドラインも作 成しようとしているが、現状の定款・細則、倫理規則は次の通りであり、日建連と類似の観が ある。上述の作業に加えて、倫理委員会による検討・実行が技術士の活用、地位向上に必須と 考える。 74 (社)日本技術士会定款(1999.9.3) 第11条 会員は、法又は本定款に違反し、本会の秩序又は信用を害し、その他技術士の品位を 失うような行為をしたときは、別に定める倫理委員会の議決に基づき、総会の 議決によって除名することができる。 (社)日本技術士会細則(2007.1.19) 第6条 準会員が本会の秩序又は信用を害し、準会員としての品位を失うような行為のあったと きは、倫理委員会の議決に基づき、理事会の議決を経て、会長が準会員たることを取消す ことができる。 倫理審査規則(2005.5.11) (審査結果) 第14条 小委員会は、審査手続を終了したときは、倫理委員会に対しつぎの区 分による審査結果を報告する。 (1) 定款第11 条による処分に相当する。 (2) 細則第6 条による処分に相当する。 (3) 前2 号の処分には至らないが戒告に相当する。 (4) 前3 号のいずれにも該当しない。 (資質向上) かつ、技術士法には、 「資質向上の責務」 (第 47 条の 2)が明記されている。この点について は、CPD の義務化が技術士活用の鍵となろう。そのためには、ヒアリングの際に指摘された点 であるが、学協会間で異なる CPD 基準(CPD の考え方、CPD 時間の目安など)を統一化が必要で ある。また、CPD において他の機関との相互認証システムをさらに推進、拡大していくことも 望まれる。 現在の CPD は、時間管理が中心であるが、質の管理への移行時期にあると考える。例えば、 海外の技術者協会のように、自己研修と組織研修、社内研修と社外研修、専門研修と共通研修 の比率の設定や、倫理研修を必修にして年間当たりの目安の研修時間を設定したり、能力アッ プの計画と実績チェックなどである。CPD の実施結果として能力の向上が客観的に評価できな いといけないとの意見もある(下記の公共工事の CPD 評価への指摘参照) 。 継続教育(CPD)の評価について 継続教育制度は、施工者にまだ十分に普及しておらず、また各認定機関によって内容や単位の 取り扱いが異なる。CPD を評価項目とすることは賛成であるが、導入にあたっては運用の考え 方を整理しておく必要がある。 運用上の留意事項及びモニタリングの必要性について委員会報告に書き加えることとする。 各認定機関は、講習会への参加だけで単位を認定するのではなく、講習会により得られた知識 を例えば試験により認定する等、CPD の信頼性を高める必要がある。 : 「第 11 回 公共工事における総合評価方式活用検討委員会」 (H19.3.2 小澤一雅委員長)の 議事録概要(公共工事)より ②活用場面の例示 建設部門から見ると技術士の新たな活用場面としては、次の検討が考えられる。 品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)の試行に伴って総合評価方式の導入(価 格だけでなく技術による業者選定)が本格化しつつあり、特に自治体においては、総合評価の 審査ができる技術士の活用が考えられる。 自治体には技術職員が少ないことから、技術顧問への総合技術監理部門の活用が考えられる。 第三者品質評価制度の品質評価業務の管理技術者等への技術士、特に総合技術監理部門の活 用が考えられる。 ③技術士補の位置付けを明確に 技術士補は、技術士資格を取得するための一つのルートとして設定されているが、活用とい う観点では、中途半端な位置付けにある。 75 技術士補は、その業務を技術士のもとで行うこととされているが、実際の業務においては技 術士補でなければならないような業務を実施するよう活用されている状況にはない。 技術士と同様に技術士補の役割や活用場面を明確にしていく必要がある。また、 「二級技術士」 など活用しやすいネーミングが必要である。なお、一次試験の受験要件に実務経験が無い点も 活用を難しくしているとの意見がある。 ④大学、JABEE との連携推進 特に技術士補の活用にあたっては、大学との連携が重要である。JABEE で認定された一次試 験合格者についてもこの連携の中で検討していく必要があろう。JABEE 認定の学生には、在学 中に実務経験をさせて技術士へと誘導して行くなど仕組みを作って行くことが有効と考える。 部門の意見の中に、JABEE コース修了者の名簿がないため指導や支援をしたくともできない ので JABEE 関係者や大学との連携が必要との指摘があった。また、修了者が自分の立場をよく 理解していない場合が見受けられるので JABEE 認定のプログラムに技術士制度についての講義 が必要との意見もあった。さらには、JABEE コース修了者の能力チェックも必要との厳しい指 摘もあった。 上述のほかに、JABEE 認定のカリキュラムについては、一次試験の受験範囲との整合が必要 であろう。 大学ほかとの連携を図っていくためには、大学、JABEE との検討会議(連絡会議)の設置が 必要と考える。 ⑤費用の見直し 技術士は、登録時に既に複数の学協会に所属している人が多く年間の金銭負担も多大である。 今回のヒアリングでも費用についての意見があったことを考えると、受験費用、CPD の登録・ 証明書費用、会費などの負担軽減に取り組む、あるいは費用の妥当性の説明(説明責任)が必 要と考える。 口頭試験については、部門から指摘がでていることだが、現在東京 1 箇所でしか実施されて いないが、受験者の負担軽減の観点から考えると、面接官ついての問題が多々あろうが筆記試 験と同様な箇所での実施も検討する時期にきていると考える。 ⑥他の資格との関係 技術士は、技術者資格として高難度だが倫理と専門的能力を備えた最高の資格であり、他の 資格者を統合する、あるいは他の資格を通して技術士資格を取得するフローの構築をめざして はいかがと考える。 ⑦日本技術士会の役割 上述の検討、推進のための日本技術士会の役割は極めて大きく、組織の充実(例えば、ロビ イストとして技術士を常駐させる、人員確保など)などが望まれる。 特に、技術士の活躍の場を広げていくには、支部の意見にもあるように“ものづくり産業” を主管する経済産業省への PR がかかせないことであり、この活動も日本技術士会の重要な役割 であろう。 ○考察(その3) 考察(その 2)に追加して次のような点があげられる。 (資質向上) 活用先を中堅・中小企業と考えた場合、技術士の資質の問題は大きい。技術士は「企業の役 に立つ」立場であらねばならないが、技術士を活用しているある機関の担当者から次のような 所感も述べられている。すなわち企業側から見て役に立たない技術士もいることを意味してい る。 ・押しつけではなく、先ずは企業側をヒアリングする態度であって欲しい ・ 「批評家」のようになり企業に前向きなアドバイスをしないことがある ・企業にとっての優先度よりも自分の得意分野のテーマを重要に考えるきらいがある 76 ・マネジメントと技術のバランスが求められる ・技術士仲間だけではなく、大学・研究機関・提携先・販路等についてのネットワークに期 待したい この点については、技術士試験の口頭試問等で技術士として相応しいかどうかの人物のチェ ックが必要であり、CPDのテーマに取り上げられて然るべきである。 中小企業では技術面だけではなく経営面での支援を要請されることがある。その場合でも他 部門(例えば、経営工学、情報工学等)の技術士とタイアップすることによって技術士のみに よる骨太な支援が可能であることを再認識したい。 (技術士の活用) 国の公共工事以外の政策に目を転じてみると、 「新経済成長戦略」 (経産省)のような重要な 政策の中でも技術士の位置づけが定義されていない。 新経済成長戦略( 『新経済成長戦略』 (平成18年6月 経済産業省) )の中で、経験豊富な技術 士を活用すべき人材育成に関する次のような箇所に技術士の活用が示唆されていない。 ・第2章第2節 3.高度な部品・材料産業、モノ作り基盤技術を担う中小企業の強化 ○中小ものづくり高度化法に基づく施策を始めとした主要な施策 (人材育成)高専等を活用した中小企業の技術者の育成を支援する。産学連携による 実践的人材育成プログラムの開発を支援する。 ・第3章第2節 3.地域におけるモノ作り中小企業の振興 ○人材育成 高専等と地域中小企業の連携による中小企業の技術者の育成プログラムを実施し、充 実させる。 また、第 2 章第 3 節で謳われている「IT生産性向上運動」は、 「ITの戦略的導入のための 行動指針」や「IT 経営力指標」をベースとしていることから、明らかにITコーディネータ 等の活躍場面を創出すると考えられるのに対し技術士(情報工学部門、経営工学部門)を想起 させる文言はない。 今後、上記のような施策・政策を感性豊かにキャッチし技術士自身が提案をしていく姿勢が 望まれる。また、その活動のキッカケ作りを行うと共に技術士の多数の意見を集約し大きなパ ワーに仕立て上げる「ロビイスト」も日本技術士会に必要である。 (技術士の登録情報) 今後技術士の地位向上・知名度 UP の具体策を進める上でCPDの重要性は高く、全ての技術 士に対し CPD 実施促進とその実施状況を管理できるよう、技術士会が技術士の登録情報を把握 できるような仕組みを構築することが望まれる。 なお、現状は情報処理技術者の登録制度はないが、経産省産業構造審議会の下で報処理技術 者試験についても合格者を把握・管理するべく議論されている。 (他の資格試験との関係) 技術士は、技術者資格として高難度だが倫理と専門的能力を備えた最高の資格であり、他の 資格者を統合する、あるいは他の資格を通して技術士資格を取得するフローの構築をめざして はいかがと考える。例を挙げれば高度情報処理技術者、繊維製品品質管理士がある。 「高度情報処理技術者」の中の「テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験(NW)」 の場合、 「役割と業務」として「ネットワークシステムを計画・設計・構築・運用する業務に従 事し、次の役割を果たす。 」としてある。 (http://www.jitec.jp/1_11seido/h13/nw.html) (1) ネットワーク管理者として、情報システム基盤であるネットワーク資源を管理する。 (2) WAN/LAN に対する要求を分析し、効率性・信頼性・安全性を考慮した設計・構築・運用 を行う。 (3) 個別システム開発の各工程(計画・分析・設計・運用・保守)において、ネットワー ク関連の技術支援を行う。 対する技術士の情報工学部門の選択科目の一つ「情報ネットワーク」では、 「ネットワーク通 信技術、情報ネットワークアーキテクチャ及びプロトコル、ネットワークセキュリティ、ネッ 77 トワークプログラミング及び分散処理、インターネット、モバイル技術並びに情報ネットワー クの運用に関する事項」についての技術が求められ、 「テクニカルエンジニア(ネットワーク) 試験(NW)」と殆ど内容が同一である。 また、 「繊維製品品質管理士」の認定試験の出題範囲は以下の通りとなっており技術士の繊維 部門に対比される。 (http://www.tes-shikaku.jp/tes02/tes02_01.html) ・繊維に関する一般知識 1)繊維の種類と性質 2)糸、布地等の種類・製造・性質 3)染色・加工 ・家庭用繊維製品の製造と品質に関する知識 1)衣料品等の企画・設計、製造 2)衣料品等の要求項目と消費性能および試験法 3)品質管理と品質保証 ・家庭用繊維製品の流通、消費と消費者問題に関する知識 1)消費者行動とその調査方法 2)消費者問題と消費者政策 3)経済の変化と衣料の流通・消費 4)衣料品等の消費と消費者苦情、環境問題 対応する技術士の繊維部門の選択科目の一つ「繊維二次製品の製造及び評価」では、 「アパレ ルその他の繊維二次製品の企画、設計、準備、縫製、成型、仕上げ、検査及び消費科学的評価 の方法及び設備に関する事項」についての技術が求められるとしてあり、 「繊維製品品質管理士」 とやはり殆ど内容が同一である。 このように高度情報処理技術者、繊維製品品質管理士のいずれも技術士一次試験の専門科目 を免除するに足る知識と実務経験を有していると評価できるものと考えられ、検討すべきもの として挙げられる。 逆に、この両分野及びバイオテクノロジーの分野(産業)等において求められるのは、技術 士の「選択科目」のような狭い領域ではなく当該技術部門全般に知見を持ち、尚かつマネジメ ント力のある人材とされており、純粋に技術を追求する志向の人材は企業において処遇に困る との意見も聞かされている。 「スペシャリストかゼネラリストか」は、一企業や一産業のことではなく国内全般に指摘でき る問題である。然るべき規模以上の企業においては一定の年齢に達すると誰もが管理職に就かさ れいつの間にか技術と縁遠くなってしまう。このことは「社会問題」として捉える必要がある。 省庁の枠を超えて取り組む課題である。 そうしなければ長年技術を培う人材が存在しなくなり、 「科学技術基本計画」で謳われている「人 材育成」も、 「新経済成長戦略」の「リタイアメント技術者の活用」も画餅に帰してしまうであろ う。 もちろん上述の検討、推進のための日本技術士会の役割は極めて大きく、組織の充実(例えば、 ロビイストとして技術士を常駐させる、人員確保など)などが望まれる。 ○考察(その4) 今年度は特に、2007 年問題として団塊世代の 60 歳定年によるベテラン人材の減少と同時に少 子高齢化や学生の理科離れや科学技術への関心の低下が注目されている時期にあたっている。ま た、製造業におけるものづくり労働者の確保難やものづくり技術の継承に対して、危機感が高ま っており、企業、地域産業、ひいては我が国産業の競争力強化の実現を目指す上で、設計・開発や 生産現場での中核的役割を担う人材の枯渇が懸念されている。 学校教育機関と産業界との橋渡し可能な技術士がその一翼を担う立場にあると考えられる。現 状の技術士制度は名称資格に留まっている。また、試験制度や試験内容等に力点が置かれており、 78 活用についての議論は少ない。 考察(その 2)に追加して次のような点があげられる。 建設部門以外の技術士では、独立技術士の場合には企業の嘱託・コンサルタント、公的機関の アドバイザー・登録専門家、セミナー講師、大学非常勤講師、知的財産関係業務、海外(技術指 導)業務、技術調査・市場調査、ISO 審査員(審査機関の契約審査員) 、裁判所・損保機関の技術 調査・鑑定、IT 関連技術援助、著作活動、NPO、技術士会・県技術士会へのプロジェクトチームへ の参画等々多様な活動実態がある。 技術士にふさわしい業務を整理することも活用場面の PR として考えられる。また、企業内技術 士の処遇や評価については特に配慮がなされていないことや、公益に係る公務員技術士の資格者 が少ないなどについても活用場面の PR 例示が必要である。 他の資格との関係において、例えば技能士資格(厚生労働省管轄) 、非破壊検査技術者(文部科 学省所管)は業務遂行上の必要資格であり、産業界では位置付けが明確で活用されているが、こ れら資格と技術士資格間には関連付けがない。 ○考察(その5) ① 技術士資格試験と他の資格試験との学科試験における一部の共有化、試験内容の一部共有 化と試験システムの見直しが望まれる。 ② 技術士法第 2 条(定義)に明記している技術士は、明確な役目を与えられていない。その 定義を明確にする必要がある。 ③ 技術士の活用に対しては、自らの PR に負うところが大きい。この点についてもその行動 におけるガイドラインをもうける必要がある。 ④ 業務独占としての役割を見つけ出す必要がある。 (法的なバックアップも考える) ⑤ CPD を通して高度な専門知識の維持と最新情報、最新技術の習得を図る。また、CPD にお いて他の機関との相互認証システムを更に推進する。 ⑥ 他の専門技術資格取得に際し、技術士資格取得者に対する資格取得優遇処置は何であるか を整理し、PR する。 ⑦ 倫理規定の整備と徹底をはかるために倫理研修を徹底する。 ⑧ CPD を時間管理から質の管理に移行するための具体策の検討 ⑨ 技術士補の権限、役割の明確化と名称の再考(わかり易い名称への改称)を考える。 ⑩ 大学、JABEE との連携推進を考える。 ○考察(その6) 現在の科学技術基本計画では、研究者と技術者に分類されていますが、その定義はなく、内容 からすると技術者は研究能力がない技能者的人材とも理解されます。 現に、主要大学の工学部長には研究者を養成しており、技術者養成のJABEE は関係ないと 公言している人もいます。 研究する場合、科学者の研究は「なぜか」を追及し、技術者の研究は「人類に役に立つものを 実現するための研究」であり、目的が異なります(両方必要ですが) 。 従って、評価も、後者が「役に立つか」 「安全か」 「文化に合っているか」などとなるのに対し、 前者では「正しいか」 「厳密か」 「追試可能か」などと異なります。 確かに「技術者」には幅があり、技能者的技術者から高度な研究能力をもった技術者まで必要 ですが、現在、特に要求されているのは、研究・開発能力のある高度な技術者です。 現状では、目的意識、職業意識のない研究者を多数養成し、無駄なことになるし、危険でさえ あります(研究者倫理は、科学者倫理と技術者倫理など専門家倫理でカバーすべきことで、一般 的な研究者倫理の確立は容易でありません) ついては、今後の方向、課題として以下のような点が考えられる。 79 ・ 「技術者」 「技術士」の定義と役割を明確にすること。 ( 「科学者」や「研究者」も関連してで てきます) ・安全な社会を実現するには専門家倫理が不可欠であり、科学技術に関連して社会の認識を深 めること。 ・イノベーションを実現するには研究・開発能力を持ち、技術倫理をわきまえた高度な技術者 が必要であり、技術士として処遇できるようにすること(技術士に幅を持たせる場合、例え ば、フェローなど技術士の中を分類した名称を新たに設けること) 、またこれらの「技術士」 が社会から評価され、優れた人材が育つ工夫を講じること。 80 (5)課題と方向性のまとめ 課題とその解決の方向性について、主要なものを整理すると次のとおりである。 なお、ヒアリング等では種々の意見等が出され、ここに示した主なものの中に含まれてい ないもの、また、ここに示した方向性と必ずしも一致しない意見等があったことを承知して いただきたい。 主要な課題 (今後検討すべき課題等として 考えられるもの) 「資格の位置づけ」 (活用促進) ①技術士制度の目的、技術士の定義 と役割の明確化 ・技術士の役割や活用等について 技術士法あるいは業法に規定 ②技術者個人のメリット、業界及び 企業のニーズに対応した資格制 度 ③活用を図るために十分な技術士 の数の確保 ④総合技術監理部門の位置づけの 明確化(活用促進) ⑤技術士補の位置づけの見直し(活 用促進) 方向性(主なもの) (今後の検討にあたって 目標あるいは配慮すべき点など) ①技術士制度の目的、定義、技術士の役割を明確にする とともに、技術士の活用について技術士法あるいは 業法に規定し、社会の認識を定着させる ・科学技術創造立国の実現のため、また技術に対し安全 で安心な社会の実現のために、技術的専門能力と倫理 観を有し、かつ資質向上に取り組んでいる技術者であ る技術士を活用 ・少なくとも、国民の安全に係る業務については技術士 が関与する ・ 「資質向上・公益性確保」を充実することが必要 ②企業が技術士を積極的に活用していることが、社会的 に高い評価を受けるような仕組みについて検討(業 界のルールに導入するなど) ③企業の求める技術者像とのマッチング、技術士資格の 取得の促進と有資格者数の確保 ④総合技術監理部門の位置づけについての検討と活用 促進(市町村への PR、高度プロジェクトの責任者) ⑤技術士補の位置づけの見直しについての検討 「資質向上・公益性確保」 ①技術士=技術的専門能力に加え ①資質向上と公益性確保の義務は、上記の「資格の位置 て、倫理観を有し、かつ能力と資 づけの明確化」の重要な要素 質の向上に取り組んでいる技術 ②CPD が担う役割の確立及び効果の検証等 者であることの周知・徹底 ・CPD が能力の維持向上に寄与していることを検証 ・安全・安心な社会を実現するに する仕組み ・CPD 登録とその評価システムの構築 は倫理が不可欠 ②資質向上に CPD が果たす役割 ・倫理を CPD の必須とすること ③CPD の実効性の確保 ・他の学協会との CPD の評価・登録システムとの整 ④倫理に関する罰則等の厳正化 合性 ⑤教育現場の支援(公益性確保) ③CPD の義務化の必要性を検討 ・全ての技術士に対し CPD を義務化し、これを技術 士会が管理する仕組み ・CPD 義務化に伴う更新制度の導入の可否 ④全ての技術士に対する倫理要綱の徹底とその罰則等 に関する仕組みの構築について検討 ⑤技術者倫理や公益性確保についての教育現場への支 援 ・教育カリキュラムやプログラムへの組込み 81 ・技術士による出張講座等 「資格取得促進」 ①資格取得の動機付け ・技術士資格について認識がな い、理解されていない ・技術士資格が必要とされていな い (他の資格があれば業務のうえ で不都合はない) (企業の人材育成に取り入れら れていない) ②技術士試験の目的、試験方法、レ ベル、合格率等についての明確な 方針が定かでない ・何のための資格で、そのために 試験で何を確認するのか ・試験の内容、部門や選択科目が、 携わっている実務とマッチン グしない ③活用を図るための十分な数の確 保 ④受験機会の拡大 ・受験者の負担軽減 ・JABEE 修了生の二次試験受験 のための支援が不十分 ・他の資格を有している場合の試 験の一部免除の拡大 ⑤技術者としての意識の醸成のた めの大学との連携(優秀な学生の 確保。工学部の教授等に対する資 格取得奨励。 ) ①技術士制度についての業界、企業等における理解促進 (上記「技術士の位置づけ」と関連する) ・科学技術に対する安全・安心の確保は、専門能力に 加えて倫理観を有し、かつ継続的に資質の向上に 取り組む技術士が不可欠 ・安全確保に対する企業の社会的責任という観点か ら、企業の人材育成プログラムへの組み込み ②技術士資格の目的の明確化(上記「技術士の位置づけ」 と関連する) ・技術者個人のメリット、業界及び企業のニーズとの マッチング ・他の資格を有している技術者が、さらに上位の資格 として技術士資格を目指すような仕組みの構築 ③活用の促進(上記「技術士の位置づけ」と関連する) ・産業界等に対する技術士の活用促進の要請 ・技術士の活用について技術士法あるいは業法に規定 ・活用を図るための十分な数の確保、など ④−1 受験の要件及び試験一部免除の対象範囲の拡大 などについて検討、例えば、 ・他の資格の有資格者に対する試験の一部免除の拡大 (他の資格との関係発展を含む) ・顕著な実績を有する技術者に対する一次試験免除及 び二次試験(一部)免除 ・工学部教授に対する一次試験(一部)免除 ④−2 試験の方法等の改善 ・一次試験のコンピュータ試験化(試験問題の DB 化) ・筆記試験の持ち越し ・口頭試験箇所の拡大、地方での受験環境の整備 ・JABEE 修了生に対する支援(企業内での監督者の 理解促進) ・一次試験の試験科目の位置づけと科目免除等につい ての検討(JABEE 修了生と一次試験合格者の同等 性の評価を含む) ④−3 部門や選択科目の見直しにあたっての検討の段 階で、企業や産業界の意見を的確に反映できる仕組み (試験問題作成、口頭試験等の試験委員に多くの技術 士を採用することを含む) ⑤優秀な学生が優れた技術者を目指すような大学での 取り組みとの連携(工学教育には技術士の有資格者 が担当することの推奨を含む) 82 「技術士会の役割」 ①会員の増加 ②技術士登録情報(CPD の管理な ども含め)の的確な把握 ③技術士会からの社会への情報発 信 ④技術士制度に対する多様なニー ズに技術士会として対応できる 仕組みと体制の整備(上記②③に 加え、倫理要綱の徹底、若い技術 者の参画、フェロー会員制度の設 置など) ①入会することの意義やメリット ②全ての技術士の CPD の実施状況等の管理(CPD に 関する入会義務化などを含め技術士登録情報の管 理) ③社会への提言等 ・社会の動きに敏感に反応(タイムリーな提言) ・国や自治体の審議会委員等への活用 ④−1 倫理審査機能の強化(全ての技術士を対象とす る仕組みについての検討) ④−2 若い技術者の参画機会の拡大 ④−3 技術士会のフェロー会員設置 ④−4 上記活動を展開していくための会の体制整備 83 お わ り に 技術者の育成は、資源を持たないわが国が科学技術創造立国を標榜するうえでの最重要課題 であり、第 3 期科学技術基本計画においても人材育成に重きを置くことがが基本姿勢となって いる。 また、昨今、企業倫理や技術者倫理に反した事件や不祥事が多発しており、社会は真のプロ フェッショナルを求めている。 このような状況のなか、高等の専門的応用能力を有し、かつ、倫理の確保を責務とする技術 士が広く社会に貢献していくためには、技術士制度にどのような課題があるか、また課題解決 にはどのような方向性があるか、調査・分析を行うことができた。 今回の調査・分析は、海外を含む多数の関係団体等へのヒアリング等を 2 ヶ月で実施しなけ ればならないとの制約もあり、 必ずしも十分に議論を尽くすことができなかった部分もあるが、 この報告書が技術士制度の改善のための今後の検討に役に立てば幸いである。 最後に、今回の調査・分析にあたり、多忙な年度末の時期にもかかわらず、委員としてご協 力をいただいた各位、及びヒアリングに対応いただいた関係先の方々にこの場を借りて厚く感 謝申し上げます。 平成 19 年 3 月 31 日 竹下 功 社団法人 日本技術士会 専務理事・事務局長 (本件委託調査・分析の実施責任者) 84 (添付)参考データ等 建築士法等の改正 (国土交通省ホームページから引用) 85 弁理士法(抜粋) (登録)第17条 弁理士となる資格を有する者が、弁理士となるには、日本弁理士会に備 える弁理士登録簿に、氏名、生年月日、事務所の所在地その他経済産業省令で定める事 項の登録を受けなければならない。 2 弁理士登録簿の登録は、日本弁理士会が行う。 弁理士法第 5 章 弁理士の責任 (懲戒の種類)第 32 条 弁理士がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、経 済産業大臣は、次に掲げる処分をすることができる。 一戒告 二 2 年以内の業務の停止 三業務の禁止 (懲戒の手続)第 33 条 何人も、弁理士に前条に該当する事実があると思料するときは、経 済産業大臣に対し、 その事実を報告し、 適当な措置をとるべきことを求めることができる。 2 ・・・報告があったときは、経済産業大臣は、事件について必要な調査をしなければならな い。 3 ・・・経済産業大臣は、弁理士に前条に該当する事実があると思料するときは、職権をもっ て、必要な調査をすることができる。 4 ・・・経済産業大臣は、前条の規定により戒告又は 2 年以内の業務の停止の処分をしようと するときは、行政手続法・・・・の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、 職聞を行わなければならない。 5 ・・・前条の規定による懲戒の処分は、相当な証拠により同条に該当する事実があると認め た場合において、審議会の意見を聴いて行う。 (調査のための権限)第 34 条 (登録抹消の制限)第 35 条 (懲戒処分の公告)第 36 条 中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則(抜粋) (登録)第 4 条 経済産業大臣は、前条第 1 項の申請があったときは、当該申請者及び添付 書類の記載事項を審査し、当該申請者が法第 11 条第 1 項各号のいずれかに該当する 者であると認めたときは、次条の規定により登録を拒否する場合を除くほか、第 7 条に規定する事項を中小企業診断士登録簿に登録し、かつ当該登録を受けた者に様 式第 3 による中小企業診断士登録証を交付する。 (登録の消除)第 15 条 経済産業大臣は、中小企業診断士が次の各号のいずれかに該当する に至ったときには、登録を消除するものとする。 2 登録の有効期間が満了し、かつ、第 9 条第 2 項において準用する第 3 条第 1 項に 規定する登録の申請をしなかったとき。 (中小企業支援法) (目的) 第1条 この法律は、国、都道府県等及び独立行政法人中小企業整備機構が行う中小企業支援 事業を計画的かつ効率的に推進するとともに、中小企業の経営診断等の業務に従事す る者の登録制度を設けることに等により、中小企業の経営資源の確保を支援し、もっ て中小企業の振興に寄与することを目的とする。 (中小企業支援事業の実施に関する基準を定める省令) 第4条 経営の診断又は経営に関する助言は、中小企業診断士その他の中小企業の経営方法 に関する専門的な知識及び経験を有する者がこれを担当するものとし、かつ、近年に おける新たな経営方法の開発の成果を活用すること等により、診断又は助言を依頼し た者の必要に即して適切に行うようにするものとする。 86 労働安全衛生法(抜粋) (登録)第 84 条 労働安全コンサルタント試験又は労働安全衛生コンサルタント試験に合格 した者は、労働省に備えるコンサルタント名簿又は労働衛生コンサルタント名簿に、 氏名、事務所の所在地その他労働省で定める事項の登録を受けて、労働安全コンサ ルタント又は労働衛生コンサルタントとなることができる。 (登録の取消し)第 85 条 2 労働大臣は、コンサルタントが次条の規定に違反したときは、 その登録を取り消すことができる。 (義務)86 条 コンサルタントは、コンサルタントの信用を傷つけ、又はコンサルタント全 体の不名誉となるような行為をしてはならない。 2 コンサルタントは、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはなら ない。コンサルタントでなくなった後においても、同様とする。 (義務)81 条 労働安全コンサルタントは、労働安全コンサルタントの名称を用いて、他 人の求めに応じ報酬を得て、労働者の安全の水準の向上を図るため、事業場の安 全についての診断及びこれに基づく指導を行うことを業とする。 2 労働衛生コンサルタントは、労働衛生コンサルタントの名称を用いて、他 人の求めに応じ報酬を得て、労働者の衛生の水準の向上を図るため、事業場の衛 生についての診断及びこれに基づく指導を行うことを業とする。 電気事業法(抜粋) (主任技術者) 第四十三条 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運 用に関する保安の監督をさせるため、経済産業省令で定めるところにより、主任技術者 免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならない。 2 自家用電気工作物を設置する者は、前項の規定にかかわらず、経済産業大臣の許可 を受けて、主任技術者免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任することが できる。 3 事業用電気工作物を設置する者は、主任技術者を選任したとき(前項の許可を受け て選任した場合を除く。 )は、遅滞なく、その旨を経済産業大臣に届け出なければならな い。これを解任したときも、同様とする。 4 主任技術者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の職務 を誠実に行わなければならない。 5 事業用電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者は、主任技術者がその保安の ためにする指示に従わなければならない。 (主任技術者免状) 第四十四条 主任技術者免状の種類は、次のとおりとする。 一 第一種電気主任技術者免状 二 第二種電気主任技術者免状 三 第三種電気主任技術者免状 四 第一種ダム水路主任技術者免状 五 第二種ダム水路主任技術者免状 六 第一種ボイラー・タービン主任技術者免状 七 第二種ボイラー・タービン主任技術者免状 2 主任技術者免状は、次の各号のいずれかに該当する者に対し、経済産業大臣が交付 する。 一 主任技術者免状の種類ごとに経済産業省令で定める学歴又は資格及び実務の経験 を有する者 87 二 前項第一号から第三号までに掲げる種類の主任技術者免状にあつては、電気主任技 術者試験に合格した者 3 経済産業大臣は、次の各号のいずれかに該当する者に対しては、主任技術者免状の 交付を行わないことができる。 一 次項の規定により主任技術者免状の返納を命ぜられ、その日から一年を経過しない 者 二 この法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反し、罰金以上の刑に処せられ、そ の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者 4 経済産業大臣は、主任技術者免状の交付を受けている者がこの法律又はこの法律に 基づく命令の規定に違反したときは、その主任技術者免状の返納を命ずることができる。 5 主任技術者免状の交付を受けている者が保安について監督をすることができる事 業用電気工作物の工事、維持及び運用の範囲並びに主任技術者免状の交付に関する手続 的事項は、経済産業省令で定める。 (免状交付事務の委託) 第四十四条の二 経済産業大臣は、政令で定めるところにより、主任技術者免状(前 条第一項第一号から第三号までに掲げる種類のものに限る。 )に関する事務(主任技術者 免状 の返納に係る事務その他政令で定める事務を除く。以下「免状交付事務」という。 ) の全部又は一部を次条第二項の指定試験機関に委託することができる。 2 前項の規定により免状交付事務の委託を受けた指定試験機関の役員若しくは職員 又はこれらの職にあつた者は、当該委託に係る免状交付事務に関して知り得た秘密を漏 らしてはならない。 (電気主任技術者試験) 第四十五条 電気主任技術者試験は、主任技術者免状の種類ごとに、事業用電気工作物 の工事、維持及び運用の保安に関して必要な知識及び技能について、経済産業大臣が行 う。 2 経済産業大臣は、その指定する者(以下「指定試験機関」という。 )に、電気主任 技術者試験の実施に関する事務(以下「試験事務」という。 )を行わせることができる。 3 電気主任技術者試験の試験科目、受験手続その他電気主任技術者試験の実施細目 は、経済産業省令で定める。 88 89 2.情報処理の促進に関する法律(抜粋) (情報処理技術者試験) 第七条 経済産業大臣は、情報処理に関する業務を行う者の技術の向上に資するため、情 報処理に関して必要な知識及び技能について情報処理技術者試験を行う。 2 経済産業大臣は、独立行政法人情報処理推進機構に、情報処理技術者試験の実施に関 する事務(以下「試験事務」という。 )を行わせることができる。 3 経済産業大臣は、前項の規定により独立行政法人情報処理推進機構に試験事務を行わ せるときは、その旨を官報で公示しなければならないものとし、この場合には、経済産業 大臣は、試験事務を行わないものとする。 4 情報処理技術者試験を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める額の受験手 数料を納付しなければならない。 5 独立行政法人情報処理推進機構が試験事務を行うときは、前項の規定による受験手数 料は、独立行政法人情報処理推進機構に納付するものとする。この場合において、納付さ れた受験手数料は、独立行政法人情報処理推進機構の収入とする。 6 経済産業大臣は、不正の手段によつて情報処理技術者試験を受け、又は受けようとし た者に対しては、合格の決定を取り消し、又はその試験を受けることを禁止することがで きる。 7 独立行政法人情報処理推進機構は、試験事務の実施に関し前項に規定する経済産業大 臣の権限(情報処理技術者試験を受けることを禁止することに限る。 )を行使することがで きる。 8 独立行政法人情報処理推進機構が行う試験事務に係る処分(試験の結果についての処 分を除く。 )又はその不作為については、経済産業大臣に対し行政不服審査法(昭和三十七 年法律第百六十号)による審査請求をすることができる。 9 前各項に定めるもののほか、情報処理技術者試験に関し必要な事項は、経済産業省令 で定める。 第三章 独立行政法人情報処理推進機構 第一節 総則 (この章の目的) 第八条 独立行政法人情報処理推進機構の名称、目的、業務の範囲等に関する事項につい ては、この章の定めるところによる。 (名称) 第九条 この法律及び独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号。以下「通則法」と いう。 )の定めるところにより設立される通則法第二条第一項に規定する独立行政法人の名 称は、独立行政法人情報処理推進機構とする。 (機構の目的) 第 十条 独立行政法人情報処理推進機構(以下「機構」という。 )は、プログラムの開発 及び利用の促進、情報処理に関する安全性及び信頼性の確保、情報処理 サービス業等を営 む者に対する助成並びに情報処理に関して必要な知識及び技能の向上に関する業務を行う ことにより、情報処理の高度化を推進することを目的 とする。 90 情報処理技術者試験区分 情報処理技術者試 験の対象範囲 ITスキル標準(ITSS)スキルフレームワークと職種 ( 『ITスキル標準−IT サービスのプロフェッショナル育成の基盤構築に向けて−』より抜粋) 情報処理技術者試験に対応 ITコーディネー タ等に対応 評価・認定方策なし 91 1.弁護士法(抜粋) 第一章 弁護士の使命及び職務 (弁護士の使命) 第一条 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。 2 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制 度の改善に努力しなければならない。 (弁護士の職責の根本基準) 第二条 弁護士は、常に、深い教養の保持と高い品性の陶やに努め、法令及び法律事務 に精通しなければならない。 (弁護士の職務) 第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、 非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関す る行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。 2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。 第二章 弁護士の資格 (弁護士の資格) 第四条 司法修習生の修習を終えた者は、弁護士となる資格を有する。 (認定の申請) 第五条の二 前条の規定により弁護士となる資格を得ようとする者は、氏名、司法修習 生となる資格を取得し、又は検察庁法第十八条第三項の考試を経た年月日、前条第一号 若しくは第三号の職に在つた期間又は同条第二号の職務に従事した期間及び同号の職 務の内容その他の法務省令で定める事項を記載した認定申請書を法務大臣に提出しな ければならない。 2 前項の認定申請書には、司法修習生となる資格を取得し、又は検察庁法第十八条第 三項の考試を経たことを証する書類、前条第一号若しくは第三号の職に在つた期間又は 同条第二号の職務に従事した期間及び同号の職務の内容を証する書類その他の法務省 令で定める書類を添付しなければならない。 3 第一項の規定による申請をする者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納 めなければならない。(研修の指定) 第五条の四 法務大臣は、研修の内容が、弁護士業務を行うのに必要な能力の習得に適 切かつ十分なものと認めるときでなければ、第五条の規定による研修の指定をしてはな らない。 (資料の要求等) 第五条の五 法務大臣は、認定に関する事務の処理に関し必要があると認めるときは、 申請者に対し必要な資料の提出を求め、又は公務所、公私の団体その他の関係者に照会 して必要な事項の報告を求めることができる。 (法務省令への委任) 第五条の六 この法律に定めるもののほか、認定の手続に関し必要な事項は、法務省令 で定める。 (弁護士の欠格事由) 第七条 次に掲げる者は、第四条、第五条及び前条の規定にかかわらず、弁護士となる 資格を有しない。 一 禁錮以上の刑に処せられた者 二 弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者 三 懲戒の処分により、弁護士若しくは外国法事務弁護士であつて除名され、弁理士 であつて業務を禁止され、公認会計士であつて登録を抹消され、税理士であつて 業務を禁止され、又は公務員であつて免職され、その処分を受けた日から三年を 92 経過しない者 四 成年被後見人又は被保佐人 五 破産者であつて復権を得ない者 第三章 弁護士名簿 (弁護士の登録) 第八条 弁護士となるには、日本弁護士連合会に備えた弁護士名簿に登録されなければ ならない。 (登録の請求) 第九条 弁護士となるには、入会しようとする弁護士会を経て、日本弁護士連合会に登 録の請求をしなければならない。 (登録換の請求) 第十条 弁護士は、所属弁護士会を変更するには、新たに入会しようとする弁護士会を 経て、日本弁護士連合会に登録換の請求をしなければならない。 2 弁護士は、登録換の請求をする場合には、所属弁護士会にその旨を届け出なければ ならない。 2.司法試験法(抜粋) (目的) 第一条 1 司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応 用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験とする。 2 裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第六十六条の試験は、この法律により行 う。 (司法試験の種類) 第二条 司法試験を分けて、第一次試験及び第二次試験とする。 (第一次試験) 第三条 第一次試験は、第二次試験を受けるのに相当な教養と一般的学力を有するかどうかを 判定することをもつてその目的とし、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に定 める大学卒業程度において一般教養科目について短答式(択一式を含む。以下同じ。) 及び論文式による筆記の方法により行う。 (第一次試験の免除) 第四条 1 次の各号の一に該当する者に対しては、第一次試験を免除する。 一 学校教育法に定める大学において学士の学位を得るのに必要な一般教養科目の学 習を終わつた者 (第二次試験) 第五条 1 第二次試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその 応用能力を有するかどうかを判定することをもつてその目的とし、次条に定めると ころによつて、短答式及び論文式による筆記並びに口述の方法により行う。 2 第二次試験は、第一次試験に合格した者又は第四条の規定により第一次試験を免除 せされた者に限り、受けることができる。 (第二次試験の試験科目等) 第六条 1 短答式による試験は、次の三科目について行う。 一 憲法 93 二 民法 三 刑法 2 論文式による試験は、短答式による試験に合格した者につき、次の六科目につき、 次の六科目について行なう。 一 憲法 二 民法 三 商法 四 刑法 五 次の科目のうち受験者のあらかじめ選択する一科目 民事訴訟法 刑事訴訟法 六 次の科目のうち受験者のあらかじめ選択する一科目。ただし、民事訴訟法及び刑事 訴訟法は、前号において選択しなかつた場合に限り、選択することができる。 民事訴訟法 刑事訴訟法 行政法 破産法 労働法 国際公法 国際私法 刑事政策 3 口述試験は、筆記試験に合格した者につき、その者が論文式による試験において受 験した六科目について行う。 4 司法試験管理委員会は、試験科目中相当と認めるものについて、司法試験管理委員 会規則で、その範囲を定めることができる。 5 第二次試験においても、知識を有するかどうかの判定に偏することなく、理解力、 推理力、判断力等の判定に意を用いなければならない。 6 筆記試験に合格したものに対しては、その申請により、次回の司法試験の筆記試験 を免除する。 (司法試験の施行) 第七条 司法試験は、毎年一回以上行うものとし、その期日及び場所は、あらかじめ、官報を もつて公告する。 (受験手数料) 第十一条 1 司法試験の各試験を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める額の受験手 数料を納付しなければならない。 2 前条の規定により納付した受験手数料は、司法試験を受けなかつた場合においても 返還しない。 (司法試験考査委員) 第十五条 1 司法試験は、法務大臣が、司法試験管理委員会の推薦に基き、試験ごとに任命する 司法試験考査委員が行う。 2 司法試験考査委員に対する報酬は、法務大臣が、大蔵大臣と協議して決める。 3.司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律(平成 14 年法律第 138 号) (司法試験の受験資格等) 第四条 司法試験は、次の各号に掲げる者が、それぞれ当該各号に定める期間において 94 三回の範囲内で受けることができる。 一 法科大学院(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第六十五条第二項に規 定する専門職大学院であつて、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするもの をいう。)の課程(次項において「法科大学院課程」という。)を修了した者 その修了の日後の最初の四月一日から五年を経過するまでの期間 二 司法試験予備試験に合格した者 その合格の発表の日後の最初の四月一日から 五年を経過するまでの期間 2 前項の規定により司法試験を受けた者は、その受験に係る受験資格(同項各号に規 定する法科大学院課程の修了又は司法試験予備試験の合格をいう。以下この項 にお いて同じ。)に対応する受験期間(前項各号に定める期間をいう。以下この項におい て同じ。)においては、他の受験資格に基づいて司法試験を受けること はできない。 前項の規定により最後に司法試験を受けた日後の最初の四月一日から二年を経過す るまでの期間については、その受験に係る受験資格に対応する受 験期間が経過した 後であつても、同様とする。 (司法試験予備試験) 第五 条 司法試験予備試験(以下「予備試験」という。)は、司法試験を受けようと する者が前条第一項第一号に掲げる者と同等の学識及びその応用能力並びに法律 に 関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とし、短答式及び論 文式による筆記並びに口述の方法により行う。 2 短答式による筆記試験は、次に掲げる科目について行う。 一 憲法 二 行政法 三 民法 四 商法 五 民事訴訟法 六 刑法 七 刑事訴訟法 八 一般教養科目 3 論文式による筆記試験は、短答式による筆記試験に合格した者につき、次に掲げる 科目について行う。 一 前項各号に掲げる科目 二 法律実務基礎科目(法律に関する実務の基礎的素養(実務の経験により修得さ れるものを含む。)についての科目をいう。次項において同じ。) 4 口述試験は、筆記試験に合格した者につき、法的な推論、分析及び構成に基づいて 弁論をする能力を有するかどうかの判定に意を用い、法律実務基礎科目について行 う。 5 前三項に規定する試験科目については、法務省令により、その全部又は一部につい て範囲を定めることができる。 95 新司法試験に伴う新しい法曹養成制度の導入スケジュール 96 新司法試験受験資格 97 ○考察(参考) 委員会として、問題点をどう捉えているか、それに対してどういう処方箋をもっている か(現状をある程度容認して即効性のあるもの、大きなパラダイムシフトが必要で時間は かかるが理想的にはこうあるべきというものなど)をまとめる作業が必要であると、次の ような課題の提案があった。この提案について議論し集約するにはいたらなかったが、資 格活用上の課題として、参考まで、以下に示す。 設計基準・示方書がこれまでの仕様設計法から性能設計に移行しております。一般的な 認識では、設計の自由度が増すので技術者の能力発揮に繋がり、結果的に地位向上にもな る、との認識もあろうかと思います。ただし、性能規定を満たしていることを発注者がど う判断すべきか難しいという理由で、みなし性能規定(このように設計すれば性能を満た しているということを示すマニュアルみたいなものですが)が同時並行で作られています。 みなし性能規定でも扱いきれないようなものを審査するものとして、第三者機関による認 証制度のようなものを設けるという動きもあるようです。 ここまでくると、結局前の仕様設計時代となんら変わることもなく、技術者の能力の必 要性も高まることは無いだろうというのが、感想です。 処方箋としては、役所が性能規定を満たしていることの判断ができないことを心配して いる点に対しては、 『技術士による判断を必要とする』仕組みに変えるように促すべきだと 思います。第三者機関による技術認証の部分ですが、多分委員会と称して『学識経験者と 行政経験者』を集めたものが林立するものと思われますが、本来その場の議論で主役とな るのはまさに『技術士』であるべきです。大学の先生に比べられると、今の技術士じゃ役 不足なんて技術士(技術士を代表する団体を含めて)自身が思っているのであれば、問題 は制度や社会の問題ではなく、技術士自身の問題に帰着してしまいます。役所の発注制度 自体にも建前上は技術力重視とされていても、個人の技術力が本当の意味で発揮される仕 組みとはほど遠いと思いますので、そちらの面からも改善が求められると思います。 米国のPE制度に関する関係資料等 ASCE 打合日時:2007 年 3 月 12 日 10 時∼12 時 出席者 Jim O’Brien:Managing Director Melissa V. Prelewicz:P.E, Director, Professional Practice Michael R. Sanio:Director, International Alliances 関係資料 ① 2006-2007 MEMBER RESOURCE GUIDE―FIND YOUR HOME AT ASCE ② Advance your career and profession. With ASCE ③ Continuing Education ASCE Spring/Summer 2007 Catalog ④ AAWRE Certification- The Mark of Excellence in Water Resources Engineering ⑤ DIPLOMATE Water Resources Engineer ⑥ ASCE Guidelines for Engineering Grades ⑦ ASCE Code of Ethics (amended by July 23, 2006) ⑧ COMBATING CORRUPTION IN ENGINEERING AND CONSTRUCTION(他 3 枚) ⑨ ASCE “Raise The Bar” Newsletter March 2007 Vol.4, No.1 ⑩ ASCE Policy statement---Licensure Examination, Combating Corruption, The purpose of the Fundamentals of Engineering Examination 参考資料 ① ASCE News (最新号) ② Civil Engineering The magazine of the American Society of Civil Engineers 98 NSPE 打合日時:2007 年 3 月 12 日 15 時∼17 時 出席者 Lawrence A. Jacobson:Executive Director Arthur Schartz, CAE:Deputy Executive Director and General Counsel 関係資料 ① The Best Engineers Have One Thing In Common And It’s Worth Looking For ② FROM US DEPARTMENT OF LABOR ③ THE YEAR IN NUMBERS ④ Code of Ethics for Engineers 参考資料 ① PE The Magazine for Professional Engineers(最新号) ② Engineering Licensure A path of Opportunity ③ GET LICENSED/GET AHEAD Virginia 州 APELSCIDLA Board 打合日時:2007 年 3 月 13 日 10 時 30 分∼12 時 出席者 S C Harris:P.E. Virginia Board for Architects, Professional Engineers, Land Surveyors, Certified Interior Designers and Landscape Architects ( APELSCIDLA Board) (Manager, Manufacturing Support Systems, Research & Development, Alcoa) Karen W. O’Neal:Deputy director, Licensing and Regulation, Department of Professional and Occupational regulation Mark N. Courtney:Executive Director for APELSCIDLA Board, Department of Professional and Occupational regulation 関係資料 ① Statistics Related to PE License ② APELSCIDLA Board’s Regulations ③ PE Application Forms ④ EIT Application Forms 参考資料 ① DPOR Biennial Report 2004 - 2006(最新号) ② Necessary criteria of qualification for the registration of PE Kajima Associates, Inc 打合日時:2007 年 3 月 14 日 10 時∼12 時 出席者 羽田野健:Engineering Manager 三島孝史:.Electrical Engineer Mike N. Lin, P.E:Supervising Engineer、Kajima Associates, Inc. Georgia 州 Professional Licensing Board 打合日時:2007 年 3 月 16 日 14 時∼15 時 30 分 出席者 J, Darren Mickler:Executive Director Engineers and Land Surveyors Board 関係資料 ① Georgia State Law;Title43.Professions and Businesses Chapter 15. Professional Engineers and Land Surveyors ② Ethics. Amended. 99 National Council of Examiners for Engineering and Surveying 打合日時:2007 年 3 月 19 日 10 時∼12 時 出席者 Ms. Betsy Browne:Executive Director Mr. Jerry Carter:Associate Executive Director 関係資料 ① ホームページの打ち出し(FE,PE の 2006 年の合格率、過去もほぼ同程度)かなりの資料 がホームページを通して公開されている。 参考資料 ① Engineering Program Assessment ② Engineering Licensure A Path of Opportunity ③ NCEES 英国のCE制度に関する関係資料等 ・ECUK ホームページ http://www.engc.org.uk/ ・ICE ホームページ http://www.ice.org.uk/homepage/ ・UK Standard for Professional Engineering Competence (ECUK) ・Your route to membership (ICE) ・工学教育プログラム認定制度に関する基礎調査研究報告書 (1999 年 8 月 国際協力事業団) ・Engineering Education and Professional Development in Germany, France and United Kingdom-Examples for Establishing Continuing Professional Development of Engineers in Japan ( Henri ANGELINO National Institute of Informatics ) ・Research Report 2006 Engineering UK 2006 A statistical Guide to Labour Supply and Demand in Science, Engineering and Technology (The Engineering and Technology Board) 独国の技術者制度に関する関係資料 ・VDI アニュアルレポート Innovation borne of Responsibility The VDI 2006/2007 ・VDI ホームページ http://www.vdi.de/vdi/english/index.php ・Engineering Education and Professional Development in Germany, France and United Kingdom-Examples for Establishing Continuing Professional Development of Engineers in Japan ( Henri ANGELINO National Institute of Informatics ) ・The National Systems of Higher Engineering Education in Europe ホームページ http://www.bath.ac.uk/ewl/ewlbkger.htm 仏国の技術者制度に関する関係資料 ・2006 Situation des ingenieurs (17e enquete du CNISF) ・Engineering Education and Professional Development in Germany, France and United Kingdom-Examples for Establishing Continuing Professional Development of Engineers in Japan ( Henri ANGELINO National Institute of Informatics ) ・2005 Civil Engineering Profession, European Council of Civil Engineers Committee of study on the Formations of engineers のホームページ http://www.cefi.org/plaquet.html#intro ・The National Systems of Higher Engineering Education in Europe のホームページ http://www.bath.ac.uk/ewl/ewlbkfra.htm 100