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訴訟以外の紛争解決手続きについて

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訴訟以外の紛争解決手続きについて
2014 年 10 月 23 日 ロイヤリング講義
講師:弁護士 近藤信久先生
議事録作成者:伊豆倉瑛司
訴訟以外の紛争解決手続あれこれ
0、はじめに
弁護士の近藤と申します。宜しくお願い致します。
まず自己紹介をさせていただきますと、私は平成元年に大阪大学法学部を卒業しまして、その後弁護
士になり、今年で 19 年目になります。その間、平成 16 年から 4 年間ほど、大阪簡易裁判所の方で、調
停主任を務めておりまして、その関係で ADR とか、そういう方面に興味を持ちました。
ロイヤリングの機会に講義させていただこうと思い、今回でもう 10 年目になります。毎年 1 回阪大に
来ているのですけれども、10 年の間にだんだん大学の施設や設備が変わっていくなぁと思って、年 1 回
のこの機会を楽しみに来ております。
1、紛争解決の方法の種類
今日お話しさせていただくのは、ADR(Alternative Dispute Resolution)についてです。これは代替
的紛争手続という訳が一般的になされています。訴訟以外の紛争解決手続について、どこかを掘り下げ
て説明というよりも、どんな手続があるのか、その手続の概要を見ていただこうかなと思います。手続
を見ていただくと同時に、それに関わっている仲裁委員や調停委員は、どんなことを思いながら手続に
関わっているのか、ということも伝えられたらいいなと思っております。
まず紛争解決の方法の種類についてです。もめごとが起こったときにどうやって解決するかというの
は、普通に考えると、自分たちで話合いをして解決するのが一番手っ取り早い。お金もいらないし、話
が面倒にもならない。法律用語でいうと相対交渉などと言いますけれども、これが一番良いし、回りを
巻き込んだりもしない。
訴訟や ADR が何故あるかというと、そういう風にはなかなか上手くいかないからですね。離婚や交通
事故にしてもそうですけれども、どちらがどれだけ悪いとか、そういうことが問題になったりすると自
分達だけでは意見が食い違ってしまって、なかなか解決が出来ない。それを解決するのに、第三者がど
のように関わっていけるのか、というところで訴訟や ADR という方法があります。
2、ADR 法
今から 7 年ぐらい前になりますが、平成 19 年 4 月、日本の司法制度改革の一環として、「裁判外紛争
解決手続の利用の促進に関する法律」が施行されました。通称 ADR 法と呼ばれますが、ここの第 1 条に
書いてあるのは、どういう目的でこの法律を作ったかということです。
「第1条
この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、裁判外紛争解決手続(訴訟手続によらず
に民事上の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を
1
図る手続をいう。以下同じ。)が第三者の専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決
を図る手続として重要なものになっていることにかんがみ、裁判外紛争解決手続についての基本理
念及び国等の責務を定めるとともに、・・・」
ポイントとしては、
「専門的な知識」というところと、「迅速な解決を図る」というところ、あと「実
情に即した」というところでしょうか。
「専門的な知識」を反映した解決について補足します。訴訟では裁判官が訴訟を指揮して、紛争につ
いて当事者が色々と主張する中から自分で判断する、という手続になっております。しかしながら裁判
官といっても、例えば建築とか医療、そういう分野について専門的に勉強したわけではないし、まして
や自分で手術をしたことがあるわけでもない。雨漏りしたときに本当に建物に欠陥があったのかそれと
も管理が悪いからそうなったのか、医療分野で事故が起こったときに本当にミスがあったのか、分から
ない部分がどうしてもあります。そういう場合に法律分野だけでなくて色々な技術に関しての専門家を
関与させようというのが目的となるわけです。
それから「迅速な」というのは、訴訟のように証拠能力や手続を厳格にするのではなくて、手続を割
とフレキシブルにやりながら、迅速に解決案を見つける方法を作るというのが制度目的となっておりま
す。
3、どのようなものがあるか
ADR の中にもいくつか種類がありまして、ADR をやっている機関すべてに共通するわけではないの
ですけれども、大きく分けると「あっせん」
「調停」「仲裁」の 3 種類になります。
「あっせん
第三者(あっせん人)が当事者の間に入って、双方の話し合いが円滑に進むように努
める。あっせん人は解決案を示すことはなく、あくまで当事者同士の交渉によって紛
争の解決を図る。
調停
中立的な第三者(調停人)の仲介により、紛争当事者が自律的に紛争を解決する手続。
調停人が解決案(和解案)を示すのが通例で、両当事者が合意することにより解決を
図る。
仲裁
書面による当事者間の合意(仲裁合意)に基づき、中立的な第三者(仲裁人)の判断
(仲裁判断)に服することで紛争を解決します。仲裁判断は、法律により確定判決と
同一の効力が認められている。」
あっせんは、あっせん人が当事者の間に入って双方の話し合いが円滑に進むように努めることです。
あっせん人は、こうしたらいいのではないか、これで解決すべきなのではないか、等の提案を自らする
ことは、一般的にはありません。もめている当事者同士の話し合いを聞きながら、お互いに考え直した
り譲歩したりできる点はどこなのか、という話合いを促す機会を設ける、というのがあっせんです。
これに対して調停というのは、話合いという手続ではあっせんと同じですが、あっせんは第三者が 1
人で関わるというのが多いのに対し、調停では第三者は通常複数で関わります。その第三者が調停委員
会を作ったりして、こうしたらどうだろう、というのを提案するというのが通例となっています。
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ただ、あまりに当事者同士の紛争での感情のぶつかり合いが激しいと、このあたりでまとめられるの
ではないかという調停案を示すのすらなかなか難しい。調停案を示すという段階に至らずに終ってしま
うこともあります。というのも、当事者に解決案を示すと、例えば裁判所の調停委員がこんな解決案を
示したのだから、それに従わないお前が悪い、というような利用のされ方をしてしまう危険性がありま
す。ですので、そのあたりは様子を見ながら注意深く調停案を示す方がいいのではないかな、と個人的
には思っております。
「仲裁」というのはあっせんや調停とは種類が違いまして、まず書面による当事者同士の合意をしま
す。これは紛争が起こる前、契約時の場合もありますし、紛争が起こってからでも合意をすることは可
能です。これがあってから始まる手続が仲裁で、もし自分に不利な判断であっても仲裁人が示してくれ
た判断には従うということを最初に合意してしまってから行う手続ということになります。仲裁判断は
確定判決と同一の効力が認められているので強力ですし、判決とは違って仲裁判断が出てしまえば不服
申立もできません。そこは納得したうえで手続を進める必要があるかと思います。
以上の 3 つと訴訟にどのような違いがあるかということを図表化すると以下のようになります。
あっせん
調 停
仲 裁
訴
手続開始に相手の同意が必要か
○
○
○
×
第三者を選ぶ自由があるか
△
△
○
×
解決策の提示があるか
×
△
○
○
解決案受け入れの自由があるか
-
○
×
×
解決策を相手に強制できるか
-
×
○
○
訟
手続開始に相手の同意が必要かという点については、訴訟だけが相手の同意を要せず開始できます。
訴状を提出すれば裁判所がそれを相手に送ってくれるので、相手が訴訟は嫌だと言っても強制的に訴訟
に持ち込めるのに対して、あっせん・調停・仲裁はあくまで相手がその手続で良いと言わなければ始ま
らないということになっています。
第三者、つまり間に入ってくれる人を選ぶ自由があるかという点についてですが、あっせん・調停に
ついては申立をしたときに機関から指定される場合が多いので△になっています。自由に選ばせてくれ
る機関もあります。仲裁の場合はどの人に判断してもらいたいか等、当事者が自由に選ぶことが出来ま
す。
解決策の提示があるかという点については、先ほど申しましたように、あっせんには原則的にはなく、
調停では機関によって提示するものもありますし、提示しないものもあります。仲裁については仲裁判
断を求めることになるので提示されますし、訴訟についても判決・和解案等で提示されることになりま
す。
解決策受け入れの自由があるかという点についてですが、受け入れの自由があるのは調停の場合のみ
です。仲裁の場合は当事者が受け入れを拒否することは出来ません。訴訟の場合は控訴や上告といった
不服申立の手段はありますが、分類すると解決策受け入れの自由はないということになります。
解決策を相手に強制できるかという点については、強制執行という意味ではないのです。仲裁判断の
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場合は最初にどんな判断であろうと応じるということを宣言してもらっているので、提示された判断は
強制できることになります。訴訟の判決も同じく強制できます。これに対して調停の場合は判断を相手
に強制できるわけではありません。
4、ADR の機関
では、ADR を行う機関にはどのようなものがあるのかを具体的に見ていきましょう。
【行政型】
①公害等調整委員会
公害紛争処理制度に関する総務省のパンフレットから抜粋させていただきましたが、その中に公害等
調整委員会という組織があります。そこで公害に関する苦情を受け付けています。
例えば大気汚染では、工場からの煙や粉塵で家屋・車・洗濯物等が汚れるとか、車からの排気ガスで
息苦しい、焼却場の煙の中に有害物質が含まれているおそれがある、等です。
他に騒音では隣のスーパーの室外機がうるさくてイライラする、振動では工事現場のトラックの出入
りや作業機械のせいで家が揺れ壁にひびが入る、悪臭では食品加工工場から魚の腐ったようなにおいが
漂っていて気分が悪くなる、等です。このような悩みが時々あると思うのですけれども、そういうこと
があったら都道府県や市町村に窓口があるので、申出をしてくださいというものです。
紛争処理に関してはこれも、調停と裁定という 2 種類があります。裁定というのはどちらかというと
仲裁に似た手続で、調停というのは先ほど申しました調停と同じものです。
調停の場合、例えば、工場からの煙や粉塵で家屋・車・洗濯物等が汚れるといった場合には、調停申
立書としては、その工場を経営している企業を相手で、被害を受けている者が申立人として、話し合い
の間に入ってくださいという申立をすると、調停委員会が調停期日を開いてくれて、解決案を提示して
くれたりとか、互いに合意を促してくれたりします。
例えばこの手続で今までどのようなものが解決されてきたかというと、古いところで言いますと水俣
病とか、大阪空港周辺の住民 2 万人が損害賠償の調停申立をしたとか、静岡県富士宮市の 130 人がゴル
フ場の建設中止を求める調停申立をしたとか、東京都世田谷区の住民 325 人が小田急線の騒音被害の責
任を巡る裁定申立をしたとか、香川県豊島の住民 438 人が産廃撤去を求める調停申請をしたとか、尼崎
大気汚染訴訟の和解条項の誠実な履行を求めるあっせん申請を住民 21 人がしたとか、そのようなことが
ありました。
生活環境紛争処理委員会
八尾市では生活に関する紛争処理に関して、生活環境紛争処理委員会という組織を作って、もめごと
についてそこで話し合いの仲介をするという仕組みを作っています。私は八尾市の住民ではないのです
けれども、そこの委員をさせていただいているものですから、資料をつけました。
八尾市の場合では、和解の仲介や調停について、生活環境紛争処理委員会が担当しています。具体的
にどのような手続になるのかというと、まず市の職員が苦情を聞いて、現場に行ってどのような問題が
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あるのかをレポートしてきて、市の中で色々と話し合って、それでも市の職員だけではなかなか難しい
ということになると、その委員の中に私のような弁護士だけでなくて大学の教授であるとか一級建築士
の方とか色々な方がおられて、それぞれのもめごとに応じて委員が選ばれて、一生懸命解決案を示すと
いうことをやっています。大学の教授は、こういう公害に関する専門家の方でどういう解決策があるの
かというのを一生懸命考えておられる。一級建築士の方も解決案を実現させるために、例えば騒音であ
ればどのぐらいの費用がかかるのかということを一生懸命考えておられる。当事者にとっては、そこま
で一生懸命に考えてもらえるということで、納得感はあるのかなという感想を持っています。
先ほど自己紹介で、簡易裁判所で調停主任を 4 年間務めていたと言いましたが、弁護士として訴訟だ
けをやっていると、悩んでいる人になかなかフィットしないということがあります。訴訟という手段だ
けを考えるとかかるコストが大きすぎるのではないか、とか、正面から訴訟をやっていると負ける可能
性があるのではないか、とか考える。もし訴訟で負けたら、それまでに訴訟費用や弁護士費用、時間も
かかっているわけですから余計に腹が立つということになったりする。
そんな場合に、予め色々な紛争解決の窓口を知っておくとより依頼者のニーズに合った方法を紹介で
きるのではないか、という利点も考えて、個人的ながら調べたりもしております。
②労働委員会・都道府県労働局の紛争調整委員会
今度は市民の生活や公害といった問題から離れて労働の問題を見ていきます。裁判所では労働審判と
いう手段もあるのでそういう方式を利用する方も多いのですけれども、それだけでなくて、労働委員会
や都道府県労働局の紛争調整委員会という組織もあります。労働委員会というのは、個人の問題につい
ては関わる機関ではなく、労働組合と企業の間の関係に関わってきます。
それに対して紛争調整委員会は個人の、労働組合が関わらないケースでの紛争のあっせんを行います。
紛争当事者間の調整を行い、話し合いを促進することにより、紛争の解決を図ります。紛争調整委員会
は弁護士や大学教授、社労士等で構成されます。都道府県ごとに窓口があって、申立があったときには
指名されたあっせん委員が紛争解決に向けてあっせんを実施します。特徴と言われていることは ADR に
共通するのですが、迅速・簡便、費用不要、合意の効力、非公開等が挙げられます。
話し合われて解決した事例を挙げます。一つ目は退職金に係る事案です。事業主は労働者 A と B の退
職に際し、退職金制度がないことを踏まえ、退職金の支給を口頭で約束し、支払交渉を行ったが、度重
なる交渉で感情的な対立も激しくなり、金額の隔たりも大きく、当事者同士の話し合いが不可能な状況
になったため、事業主及び労働者があっせん申請を行った、という事案です。この事案では AB それぞ
れにいくらかの退職金を支払うことで合意が成立しました。事業主は「労働者の業務成績に対してどの
くらいの退職金を支払ってよいか見当がつかない上、労働者との度重なる交渉で、仕事も手につかない
ほど、精神的に疲労していた。公正中立な立場で、迅速に話し合いをつけてくれ、仕事にも集中できる
ようになって感謝している」とコメントしています。また労働者の方も「話し合いがつかず、退職金が
きちんと支払われるか心配だったが、納得できる金額で話し合いがつき、感謝している」とコメントし
ています。
二つ目は整理解雇に関わる事例です。会社から事業縮小を理由として整理解雇の通告を受けた労働者
が申請人となって、賃金数ヶ月相当分の補償金の支払いを求めてあっせん申請を行ったという事例です。
結果数万円の解決金を支払うことで合意が成立しており、労働者は「この制度を利用して無事解決金を
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受け取ることができ、感謝している」とコメントしています。
このように、お互いの納得できないところや譲歩できるところはどこなのかを調整出来て解決できれ
ば、訴訟等で長々と争うよりも紛争当事者にとっては良い解決となる、ということが言えるのではない
かと思います。
どのように申立をしたらいいのかという点ですが、弁護士が関わらないと申立書の記入さえ難しいと
いうのでは折角無料でも制度を設けた意味がないので、あっせん申立書の記入というのは比較的簡単に
出来るようになっています。いつ入社して、どういう仕事をしていて、何を理由としていつ解雇を通告
されたのか、何故あっせんを求めるのか、ということを記入します。例えば、解雇の理由として経営不
振と言っているがそんな解雇をしなければならないという状況にもないと思うし、しかも私が何故解雇
されなければならないのか説明もしてくれない、本当は復職したいのだけれどもそれがダメなら補償金
が欲しい、ということを書けば、申立ができます。その申立を聞いて調停委員に入った弁護士や社労士
が事情の聞取りをして、和解案や調停案を作成していってくれる、ということになります。
③建設工事紛争委員会
労働ではなくて建築紛争に関わる ADR で、建築工事紛争審査会というのがあります。建築紛争の場合
も医療事故と同じで、ミスがどこにあるのかというのが分りにくいです。単に雨漏りというのは欠陥現
象と言いまして、欠陥の原因ではないのですね。
住宅の欠陥訴訟をやりますと、裁判官からどこが欠陥原因なのか特定せよ、と言われます。どういう
ことかというと、どんな原因で雨漏りが起こっていて、その原因を作ったところは建築会社の不注意な
のかどうかというところまで訴える側は特定しなくてはいけなくて、結構これは大変なのですね。です
から、建築工事紛争の場合は、一級建築士の方を探してきて、基本的には医療の場合と同じように専門
家に協力してもらうことになります。訴訟の場合ですとそういう風に大変なものですから、こういうと
ころもそれなりに、紛争の内容によっては利用していけばよいのではないかな、と思っております。
建築工事紛争審査会というのは、工事に雨漏り等の欠陥があるのに補修してくれないとか、工事代金
を支払ってくれないといった建設工事の請負契約をめぐる紛争について、和解や話し合いの間に入った
り解決案の提示をしたりする機関です。取り扱う範囲は、請負契約に関わる問題、しかもその契約の当
事者同士の問題に限定しています。ですから、例えば建売住宅の売買に関する紛争とか、工事に伴う近
隣との紛争といった事例については、ここでは扱ってくれないということになります。
紛争解決手段については、やはりあっせん、調停、仲裁の 3 種類があります。解決の効果について、
あっせん・調停については民法上の和解の成立がしたとされるのに対して、仲裁判断の場合は当事者間
において確定判決と同一の効力を有することになります。これが強制執行力の有無にも関わってきます。
これは、相手が約束を破った場合に、あっせん・調停・仲裁の結果の書面をどう使えるかという点です
が、あっせん・調停についてはそのままでは使えなくて訴訟をする必要がありますけれども、仲裁につ
いては裁判所による執行決定を得れば強制執行を行うことが出来ます。ですから、国家の力を借りて強
制的に実現することが可能になっています。
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④国民生活センター紛争解決委員会
今度は消費者問題についての紛争を解決する機関についてです。前から全国に消費生活センターとい
う機関がありまして、こんな被害に遭ったのだ、と相談すると、業者に対して消費生活センターからあ
っせんをしてくれていました。2009 年に設置されたのが、あっせん以外に新たに ADR を実施する機関、
国民生活センター紛争解決委員会です。消費者被害が多数にのぼり、しかも国民にとって重大な被害を
及ぼすような手口もあるという状況の中で、そういう紛争を国民生活センター紛争解決委員会で扱う、
ということになりました。ただ、どういう被害であっても全部扱うというほどの人員も機能もないので、
扱う事件としては以下 3 つの要件を満たすものに限られています。
①同種の被害が相当多数の者に及び、または及ぶおそれがある事件に係る消費者紛争
②国民の生命・身体・財産に重大な危害を及ぼし、または及ぼすおそれがある事件に係る消費者紛争
③これらのほか、争点が多数であり、または入り組んでいるなど事件が複雑であること。その他の事
情により紛争解決委員会が実施する解決手続によることが適当であると認められる消費者紛争
これらにあてはまるものを、紛争解決委員会が扱い、和解の仲介や仲裁をしています。もし仲裁で判
断したものを守ってくれない場合には、ここに申立をすればちゃんと守るように勧告までしてくれると
いう仕組みになっています。
【民間型】
①総合紛争解決センター
次の総合紛争解決センターは弁護士会を含めた団体が作った機関です。ここの特色は、今までのもの
と違って、結構幅広くどんな紛争でも扱っているということです。扱う手続としては今までとそれほど
変わらず、和解あっせんと仲裁という 2 つの手続があります。申立の時の手数料は一律 10500 円です。
紛争が解決したときの手数料は、紛争解決額 100 万円未満までは 15750 円で、紛争解決額に応じて額は
上がっていきます。
②日本商事仲裁協会(JCAA)
・ICC(国際商業会議所)国際仲裁裁判所
今まではどういうもめごとか、建築・労働・公害等、そういう種別で違ってきたのですけれども、日
本商事仲裁協会は違って、
「商売」という一括りになっています。日本国内の紛争でもここに申立をすれ
ば当然、間に入ってくれて解決案を提示してくれるのですけれども、ここが多く利用されるケースとい
うのは、海外との取引のケースです。
日本の会社と海外の企業との紛争の場合、日本国内の場合とは違って、難しい問題が出てきます。例
えば、日本の裁判所がそもそも使えるのかという問題、それから日本の法律を基準にできるのかという
問題です。それらについては寧ろ裁判所を利用するよりも、こういう仲裁を利用した方が解決にとって
メリットがある、と一般的には言われています。
何故かというと、商事仲裁の特色として「国際的強制力」が働く、ということが挙げられます。裁判
の場合、判決を外国で執行することは、各国の法制度上必ずしも容易ではありませんが、仲裁の場合に
は、ニューヨーク条約によってその判断を外国で執行することは容易であると言われています。例えば、
海外企業との紛争について日本で裁判を起こして、日本の裁判所が判決を出してくれたが、相手の企業
はアフリカの企業であったような場合。日本の裁判所が出した判決をアフリカに持って行って、アフリ
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カ企業のアフリカにある財産を差押え出来るか、という問題が起こり、ここはなかなか難しかったりし
ます。それに対して、仲裁の場合は、ニューヨーク条約が締結されていればそれにより、寧ろ判決より
も仲裁判断の方が相手国で強制執行しやすい、というところがあります。
海外企業との間で商取引について紛争が起こった場合は、この日本商事仲裁協会(JCAA)や国際商業
会議所(ICC、本部:パリ)を仲裁機関として使うことが最初から契約書で定められているケースも多く
あります。例えばベトナムの企業ならベトナムの裁判所の方が、日本企業なら日本の裁判所の方が納得
できる判断が出来るでしょうが、ただそれを言い合ってしまいますと、互いに契約すらできなくなって
しまいますので、互いにここなら信用できるからもめごとが起こったらここに仲裁してもらいましょう
という合意を、契約時点でしておいて、万が一互いに意見が合わなくなった時に備える、ということに
しているということです。
調停手続きの流れとしては、相談→調停の申立て→相手方の応諾→調停人の選任→調停期日→調停案
(和解案)→調停成立 となっています。
当事者が提出する書類のサンプルも載せていますが、これもそれほど難しい内容ではなくて、調停申
立書は弁護士のような代理人をつけなくても自分で記入できるように書式が揃えられています。
③CAS(スポーツ仲裁裁判所)
今度はまた紛争の種類が変わりますが、スポーツについてどういう仲裁があるかということです。新
聞記事の抜粋ですけれども、2008 年にサッカーの我那覇和樹選手が J リーグともめた時に訴えた、とい
う記事です。川崎フロンターレのチームドクターから受けた点滴治療が J リーグにドーピング規程違反
とされ、それを不服としてスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴しました。
「裁判所」とついていますけれ
ども、国の機関ではありません。スポーツ専門で、国際オリンピック委員会が 1984 年に設立しました。
ドーピング検査結果に納得できない、選手選考に問題がある等の訴えを受け付けています。
スポーツ選手としては、スポーツを専門的にはやっていない裁判所の裁判官に判断されるよりも、ス
ポーツ選手が関わっていて自分たちの気持ちを分かってくれる機関で判断してもらいたいという思いが
あって、こういうところが利用されたりしています。
日本スポーツ仲裁機構(JSAA)
公益財団法人日本スポーツ仲裁機構についてですが、ホームページ上にスポーツ仲裁人のリストが掲
げられておりまして、やはり弁護士が多いですが大学の教授も入っていたりします。
昨年のテコンドー協会の内紛でもここが利用されました。全日本テコンドー協会(Y)が、熊本県テコ
ンドー協会の組織運営を問題視し、県協会所属選手の大会出場資格の無期限停止を決定したため、県協
会所属選手の 1 人(X)が Y の決定を不服として、仲裁を申立てた、という事件です。その際の JSAA
は、判断基準として、
「日本においてスポーツ競技を統括する国内スポーツ連盟については、その運営に
一定の自律性が認められ、その限度において仲裁機関は、国内スポーツ連盟の決定を尊重しなければな
らない。仲裁機関としては、①国内スポーツ連盟の決定がその制定した規則に違反している場合、②規
則には違反していないが著しく合理性を欠く場合、③決定に至る手続に瑕疵がある場合、または④国内
スポーツ連盟の制定した規則自体が法秩序に違反しもしくは著しく合理性を欠く場合において、それを
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取り消すことができると解すべきである」という基準を前提としました。そのうえで、Y の「県協会の
正会員が不在で県協会が正常に機能していないこと、Y の個人登録制度のもとでの個人登録がなされて
いないこと等を挙げて、本件決定は不当なものとはいえない」という主張に対し、
「X の登録更新の申請
がなされた等の事実が認められる本件事情のもとでは、Y が X による個人登録がなされていないことを
理由として、自己が主催する競技会への X の参加を拒むことは許されない。また、県協会の正会員が不
在である等の事実があるとしても、それらを理由に、X のような競技者の参加を認めないとした本件決
定は、著しく合理性を欠く」ものであると判断して、本件決定は取り消しました。
【司法型】
①民事調停
②家事調停
家事調停については他の先生がお話になられたそうなので、ここでは扱いません。
私の方は簡易裁判所での調停、民事調停についての資料を持ってきました。調停申立書は、簡易裁判
所に備え付けで置いてあるものですが、申立をする場合にはこの空欄を埋めていくことになります。
「申
立ての趣旨」というのは、結論としてどのようなことを決めてほしいか、ということを書きます。
「紛争
の要点」は、傷害の場合でも交通事故の場合でも損害賠償額を含め具体的に書くこととなりますが、交
通事故の場合は、損害賠償額を被害者側で確定するのが難しいときもありますので、申立人が相手方に
支払うべき損害賠償額を確定することに関しての調停を申立てることもできます。
調停の場合は代理も可能で、必ず弁護士が代理人にならなければならないということではありません。
親族であるとか、社員であるとか、もめごとについてきちんと代理できる人、事情に詳しい人であれば、
裁判所は代理人として普通は認めることになっています。
調停についての申立てがなされると、裁判所は申立書と同時に照会書というものを相手方に送ってい
ます。申立書に誤っている箇所がないか、何故申立人と折合いがつかないのか、被申立人としてはどの
ように処理してほしいか、等を書いてもらいます。これは、調停委員が第 1 回の調停を始めるにあたっ
て、申立人の言い分だけ聞いているとどこが問題になるのかちょっと見えないことがあるので、大体ど
ういうところで対立が生じているのか、ということを、相手の言い分を聞きながら捉えていくために行
っています。照会書は基本的には申立人には見せないという扱いになっています。
交通事故の場合は、調停のための資料として、事故証明書や実況見分調書、事故状況説明図、診療明
細書、休業損害証明書等の書類を送付するよう事務連絡がなされます。
5、日本には裁判より互譲による解決に親しむ風土があるといわれている
弁護士川口冨男氏は、定年退官されるまで裁判官をずっとやっておられて、定年退官された後に調停
人の協会の会長をなされたりとか、紛争解決センターの理事長をなされたりとか、こういうADRについ
て一生懸命に取り組んでおられる先生です。その先生がエッセイを書いておられて、面白いなと思いま
して、これが必ず正しいと私も思っているわけではありませんが、一つのものの見方として参考になる
かなと思って持ってきました。
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「ギリシャの神々は殺し合いをしますが、日本の神々は争っても、アマテラスがスサノオを出雲の
国に追放したように追放ぐらいですませる。
日本では縄文時代が1万年くらい続いていたところに弥生人が渡航してきたが、弥生人は縄文人
を抹殺せずに共存した
日本の神道は渡来してきた仏教を排斥せずに共存した
相手が起き上がれなくなるまで戦うボクシングと相撲の違い
チェスでは取った駒は生かせないが、将棋では取った駒が味方として活躍」
こうした例から日本では互譲による解決が風土に親しむのではないかと述べていらっしゃいます。
それに対し、アメリカで調停人として働いていらっしゃった、レビン小林久子さんが書かれた『信山
社アメリカの ADR 事情調停ガイドブック』11 頁からの引用です。
「調停は、中国や日本では昔から広く社会の中に行き渡っていますが、アメリカでも植民地時代、
町の長老や教会の神父などによって頻繁に行われていました。しかしアメリカが独立した国として、
その憲法や社会制度が整っていくにつれ利用されなくなり、人々から忘れ去られていったのです。
その調停が、トラブルの解決法として再発見されたのは60年代です。もちろん、再発見と言っても
いつ誰がそれを行ったのかは、はっきりしていません。全米の各地で少しずつ利用が広がってきた
のです。しかし現代の調停は、昔の調停と違い、その概念や実施方法は大変理論的です。まず、調
停の目的は単に事件の決着をつけることではありません。それは紛争の当事者が顔を合わせて話し
合うことによってお互いに理解し合い、その結果、当事者自らがトラブルの和解を見いだすことな
のです。
」
「通常、調停者は白黒の判断を下しませんし、調停の和解は、法的拘束力がありません。しかし、
当事者が和解の合意書にサインした場合、その合意書は拘束力があります。特に最近アメリカでは、
裁判所に直結した調停が多く行われていますが、そこで合意された内容は必ずその場でタイプされ、
当事者と調停人が署名し、その結果拘束力を持つようになっています。現在アメリカのADRの中心
は仲裁から調停に移行していますが、それは調停が最も手軽であるという事実の他に、このような
当事者同士の理解を促すという利点が、重要視されるようになったからです。というのも、事件の
黒白をつけることが目的の裁判や仲裁は、結果として当事者の関係を悪化させてしまうという欠点
があるからです。せっかく裁判に勝っても、長年の得意先やビジネスのパートナーを失っては、何
のための勝利だかわからなくなります」
レビン小林久子さんという方は、調停よりも仲裁の方が良いというお考えの方です。ADR に関しては
調停を重視する方や仲裁を重視する方、色々な考えの方がおられます。
6、民事調停とは?
(1)民事調停は、裁判所で争いを解決する手続の 1 つ
「調停では、裁判官(又は民事調停官)と一般市民から選ばれた2人以上の調停委員が加わって組
織した調停委員会が当事者双方の言い分を聞き、歩み寄りを促し、当事者の合意によって争いを解
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決することを目指す。
法律的な評価をもとにしながらも法律のみにとらわれず、争いの実情に応じた柔軟な解決を図る
ことができる点が特徴。
裁判所で争いを解決する手続きとしては他に訴訟があるが、これは裁判官が争いのある当事者の
言い分を厳格な手続きにのっとって聞き、当事者の提出する証拠を調べ、その上で法律に照らして
当事者の言い分のうちいずれが正しいかを判決という形で白黒をはっきりさせるもの(ただし、和
解勧告もあるが)
民事調停の特徴は、間口が広い(対象が民事紛争全般)
一般市民である調停委員が参加する
調停の履行確保のため、調停調書には裁判上の和解と同一の効力がある」
(2)利用の実情
民事調停の利用数は、年間で約 4 万件、多いときで約 8 万件もの申立があります。統計数値で言いま
すと、解決率はおおむね 6 割前後あります。裁判所の行う調停と民間・行政型 ADR の比較をしてみると、
日本では裁判所の ADR である調停の方が圧倒的に件数の上では多い(平成 23 年度の受理件数:1352 件)
ということになります。
個人的な見解としては、日本ではやはり裁判所の方が一般的に知られている一方で、色々な ADR 機関
があるということはまだ知られていない、信頼度から言ってもやはり裁判所のほうが上なのかな、とい
うことは思います。
(3)歴史は以下の通り
「江戸時代 内済 名主又は組頭が扱人となって当事者に示談をさせ成立すると内済証文を作り裁
判所(奉行)に提出させた
明治8年
勧解 起訴前の和解に連なるもの
明治23年の民事訴訟法制定により消滅
大正11年
借地借家調停法・・・・調停制度発足
※明治期に欧米の裁判制度が導入され、裁判が基本的な解決手段とされてきたが、大正期に入
ってから産業構造が大都市の工場に重点が移り、大都市の借地借家が増加し、それに関する紛
争が多発。裁判で解決することが困難あるいは不適当ということで導入された。
大正13年
小作調停法
大正15年
商事調停法
昭和7年
金銭債務臨時調停法
昭和15年
鉱業法の一部改正で鉱害賠償の調停
……調停で扱える紛争の種類が増える
昭和17年
戦時民事特別法
……紛争全般を調停で扱えるようになった
昭和26年
民事調停法
調停は今や処理事件件数こそ訴訟に及ばないものの、訴訟と並ぶ民事紛争処理手続として着実
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に司法に根をおろした」
最初は江戸時代に「内済」というものがあって、次に明治 8 年には「勧解」が出来ました。明治の時
に欧米の裁判制度が入ってきた関係で、裁判が基本的な紛争解決手段であるという発想になり、調停は
一時日本ではあまり利用されなくなりました。
調停の利用が再開されるのは大正期に入ってからです。大正期に入ってから大都市に人口が集まるよ
うになりまして、借地借家が増え、それに伴い借家人と大家さんとのもめごとも増えました。そういう
紛争の解決を訴訟でやっていると時間もお金もかかるし、不適当ということになって、大正 11 年には借
地借家調停法ができ、そこから調停が色々な方面に利用され出しました。
(4)調停委員にはどんな人がいる?
「弁護士、元警察官、不動産鑑定士、一級建築士、医師、税理士などの専門家以外に、人形劇団を
している人、保険会社に勤務していた人、鉄鋼メーカーに勤務していた人、マスコミ関係に勤務し
ていた人など様々
調停委員に応募したきっかけは会社の先輩や知人のすすめなどが多いようである」
(5)申立書の書式など
7、
(1)よく取り上げられる例
調停委員の研修でよく取り上げられる題材を紹介します。
「オレンジをめぐって争う姉妹の話
姉妹が1個のオレンジを欲しいと互いに譲らなかったため、仕方なく母親が半分に切って姉妹に
与えた。これは一見公平で合理的思えるが、実は姉はマーマレードを作るために皮が欲しかったの
であり、妹はジュースを作るために中身が欲しかったのだった。
この場合、母親がもっと姉妹の話をよく聞いていれば、姉妹とも完全に満足する解決策が見つけ
られたはずである」
(2)調停のこころ
紛争の当事者の間に入ってもめごとを調整していく調停委員の人たちはどんな思いで関わっているの
か、に関して 1 つの例です。先ほどエッセイを抜粋しました川口先生が自分の思いを龍馬と薩長連合の
話に絡めて書いておられますので、お読みいただければと思います。
(3)調停歴30年アハティサーリ氏に聞く
2008年6月7日の朝日新聞の新聞記事より。もめごとのなかには民事紛争だけではなくて、殺し合いを
も伴った民族紛争もあるわけですが、そこに一生懸命携わって、実績を挙げておられる方の記事です。
この方は、フィンランドの方で、フィンランドの大統領もされていたそうですけれども、色々な紛争に
関わっていって、紛争はどのようにすれば解決できるか、ということに関してこの方の考えを書かれて
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います。
ただ、この方にしても、この人1人だけで紛争解決を実現できるわけではなくて、新聞記事に「地域機
構やNGO活用」とありますように、アハティサーリ氏も非政府組織「危機管理イニシアチブ(CMI)」
という強力な武器を持っています。普段は国際紛争に関するセミナーなどを行っているのですけれども、
いざというときにはそのスタッフが協力して、合意案を手早くまとめるといったことに関わっています。
地域機構というのは、欧州連合(EU)や東南アジア諸国連合(ASEAN)のことを言っていて、実際
合意したとしてもそれが守られないと、何故自分だけ守らねばならないのか、と相手は思うわけです。
それを実現させるためには、私的な力だけでは弱くて、そういう国家や国家連合のようなバックをきち
んと持っておかないとなかなかうまくいかない、というわけですね。
そういう意味では、紛争解決というのは、色々な人脈であるとか、バックであるとか、そういう関わ
りも必要なのだなぁ、と思う次第です。
私の講義は以上で終らせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
以
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