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公共交通ネットワーク再構築の技術
市町村内バス路線等の改善と制度活用に向けた勉強会@青森 (2014.05.28) 0.はじめに ■ 地域公共交通政策は「何のために」必要か? 地域公共交通の「確保維持」を図るために・・・ 公共交通ネットワーク再構築の技術 制度は「使えるサービス」を 実現するために活用すべし 福島大学 准教授 ・ 採算の取れない生活交通の確保維持は、高齢社会では必須? ・ 利用者減(→収入減)と財政逼迫で、公的補助も限界? ・ こうした課題の下で、何を考え、行動すればよいのか? 【欠損補助を重視?】 前政権の「事業仕分け」で必要性を評価 【コミバス・市町村バスの拡大?】 患者送迎から100円バスまで 【デマンド型交通(DRT)の推進?】 ここ数年で全国的に拡大 経済経営学類 吉 田 樹 (東北運輸局「地域公共交通東北仕事人」メンバー) e127@ipc.fukushima-u.ac.jp 「欠損補助」「コミバス」「デマンド」の3点セットの実施が 市町村の地域公共交通政策なのか? 本当に、そこしか関与できないのか? そもそも、何が「できる」かを考えていますか? 1.地域公共交通は なぜ衰退したのか? 1.地域公共交通は なぜ衰退したのか? ■ 長期的な「バス離れ」が続いた ■ 断ち切れなかった「悪循環」 ・ 乗合バスの年間輸送人員: 1970年以降、長期的には減少傾向にあり、40年間で6割減 * 年間輸送人員 101 億人 (1970) → 38.4 億人(2010) * 一人あたり年間利用回数 99 回 (1970) → 31 回 (2010) 「バス」は、マイカーに対抗すべく、利便性向上を図ったのでは なく、「廃止」「減便」「値上げ」により魅力を低下させていった。 ( 120 年 間 100 輸 80 送 60 人 員 40 億 20 ) 人 98.6 100.7 全国計 3大都市圏 その他地方 57.6 56.6 42.4 26.2 16.3 41.0 44.1 0 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 年度 ・ 規制緩和(2002年)以前の乗合バス事業; 長年にわたり、交通事業者による「独立採算原則」の下で運営 労働集約型産業である乗合バス事業は、縮小均衡的な運営 により「広く、薄く」ネットワークを維持してきた。 「利用者減⇒廃止・減便⇒利用者減」の悪循環に陥りがち ■ 規制緩和後の政策動向 ・ 地域協議会(2002~;国庫補助路線)、地域公共交通会議(2006~;主に 市内路線・市町村運営有償運送)、地域公共交通総合連携協議会(2007 ~; 地域公共交通活性化・再生法に基づく法定協議会)など「協議会ブーム」 地域公共交通をマネジメントする責務は地方行政へ こうした流れのなかで交通政策基本法が施行された 1.地域公共交通は なぜ衰退したのか? 1.地域公共交通は なぜ衰退したのか? ■ 地域公共交通を支えるのは誰か? ■ 地域公共交通の課題は「変化」しつつある ◆ 補助路線; 多額の赤字を背負うリスクは避けられるが、利潤を あげることはできず、経営上のインセンティブとなりにくい。 ◆ その結果、自社の「商品」である、路線やダイヤを改善する取り 組みが遅れ、「広告」である路線図等の提供も十分ではない。 行政(市町村) ◆ 不採算バス路線や、コミュニティバスやデマンド交通の運行費を 補助しているが、「投資」にはなっていない。 地域(市民) ◆ そもそも、公共交通に意見し、改善に資する「場」がない。 事業者、行政、地域の「責任分担」が明確になっていない 「利用者減」の傾向は変わったか? 平成23年までは、各県とも明らかに漸減傾向。 平成24年は、「被災三県」に限らず、青森県でも増加に転ずる。 25.0% 対前年比年間輸送人員増加率 交通(乗合バス)事業者 20.0% 乗合バス輸送人員の対前年比増減 15.0% 10.0% 5.0% 0.0% ‐5.0% 平成24年平成23年平成22年平成21年平成20年平成19年平成18年平成17年平成16年平成15年 ‐10.0% ‐15.0% 国交省「自動車輸送統計調査(年報)」より ‐20.0% 青森 岩手 宮城 秋田 山形 福島 全国 自治体間の「政策の差」は、集客成果に影響する 1.地域公共交通は なぜ衰退したのか? 2.交通政策基本法の施行 ■ 深刻化する「乗務員不足」の問題 ■ 交通政策基本法(2013.12.4施行)と地域公共交通の 個々の従業員・運転者が受け持つ仕事量の増加 10万キロあたり従業員数 10万キロあたり運転者数 1980年度 7.1人(実数207,675人) 3.4人(実数100,312人) 2009年度 3.2人(実数 97,363人) 2.5人(実数 74,644人) 年 度 全産業平均に比べて長い労働時間と低賃金⇒労働力不足 ・ もともと長い労働時間 (全産業男子に比べ 約250時間長い) ・ 低くなった年間所得 (全産業男子に比べ 約 50万円低い) 岩手 宮城 福島 平成24年 平成22年 平成20年 保有者数 平均年齢 保有者数 平均年齢 保有者数 平均年齢 12,071 60.8 12,388 60.4 12,519 60.3 20,744 60.2 20,961 59.6 21,253 58.9 17,836 60.8 18,191 60.2 18,421 59.9 「乗務員不足」が、地域交通を守れない一因になりつつある (交通に関する施策の推進に当たって基本的認識) 第二条 交通に関する施策の推進は、交通が、国民の自立した日 常生活及び社会生活の確保、活発な地域間交流及び国際交流並 びに物資の円滑な流通を実現する機能を有するもの・・・以下略 ① 移動により達成される活動=「交流」を支える地域公共交通 > モノ・サービスの調達という「帰結」は一緒だが、自らが移 動」して調達できる「機会」の大切さ(「移動の価値」)。 ② 移動手段が「使える」こと=「定住」に結び付く地域公共交通 > 地域公共交通サービスの「品質」が重視される 地域公共交通を「収益事業」ではなく「公益事業」として 位置付けることが交通政策基本法における論点。 それでは、「実務」ではどう対応するか? 3.「おでかけ」の機会を拡げる政策 3.「おでかけ」の機会を拡げる政策 ■ ポイント① 「おでかけ」の品質保証 【事例】足利市生活路線バス再編の「改善指標」 「おでかけ」を可能にする地域公共交通の性能保証が肝要 ・ 公共交通が運行されていても、「通学できない」「買物に行けな い」「通院できない」では、意味がない 某市山間部の例 1時間に1本の頻度 12:50 14:20 15:20 16:16 ・・・ 「1時間に1本で折り返し可能 なダイヤ」を組んでおり、スー パー・病院・高校に行けない。 公的支援 = 「おでかけ」の機会を広げる「投資」として 市民のお役に立てるものでありたい 足利赤十字病院 へのアクセス *外来受付時間内 8:35~11:20に到着できる 範囲 路線再編後にアクセス 可能になったエリア 路線再編前からアクセ ス可能であったエリア 公共交通で「お出かけ」できる範囲を 拡大することがポイント 3.「おでかけ」の機会を拡げる政策 3.「おでかけ」の機会を拡げる政策 【事例】足利市路線再編後の推移 ■ ポイント② 「地域間幹線」の品質保証 ・ 乗車人員の増加;運行開始後32ヶ月連続で対前年比増を更新 ・ 運送収入の増加;運行開始当初の2倍に >高齢者「以外」の利用者が増加基調⇒運送収入の増加 利用者数は、運行開始当初の1.5倍 地方部の典型的な路線網 地域間幹線バス 地域鉄道、BRT 地域間幹線と市内路線が並行し 公的支援の「二重投資」の可能性 > 地域間幹線は、県や事業者 任せ。市町村は関与できな いと思い込んでいる。 > 県や事業者も、既存路線を そのまま維持する以外のソ リューションを持たない場合 も多い。 市内路線 (コミバス等) 幹線と時刻が合わなければ 通学に「使えない」 市内路線と時刻が合わなければ 通院に「使えない」 3.「おでかけ」の機会を拡げる政策 3.「おでかけ」の機会を拡げる政策 ■ ポイント② 「地域間幹線」の品質保証 【事例】 栃木県大田原市のバス路線再編 路線網再編の視点 地域間幹線バス 地域鉄道、BRT 地域間幹線と市内路線が有機的に カバーし合う路線体系に 通院可能圏域、通学可能圏域の 拡大で、「交流」「定住」の促進 市内路線 (コミバス等) 市内路線の負担減少分を増便や 他地域への運行にも投資可能に 地域間幹線の品質向上が「おでかけ」の機会を拡げる 東野交通と大田原市営バス(市町 村有償)の一体的再編 ・ 東野交通バスと廉価(200円均 一)な大田原市営バスがほぼ同 じ経路を運行し、いずれも不採 算で財政支援を投入 ・ 地域公共交通総合連携計画に 基づき、「幹線」を東野交通に一 本化(運賃は上限200円に)。市 営バスは支線と循環路線に特 化し、増便も。 同等の財政支援でサービス水準の向上が可能に しかも、東野交通路線は、地域間幹線系統に「復帰」 3.「おでかけ」の機会を拡げる政策 3.「おでかけ」の機会を拡げる政策 【事例】 栃木県大田原市のバス路線再編 ■ コミュニティバスと路線バスの典型的関係(N県S市の昔) 同じ場所にあるはず・・・ ほほえみバス(コミュニティバス) 「臥竜公園入口」 N電バス(通常の路線バス)「竜ヶ池」 ちなみに、1日12往復なのに・・・ ほほえみバス(コミュニティバス) 9時15分発 「S駅」方面行き N電バス(通常の路線バス) 市町村と交通事業者の「パートナーシップ」が鍵を握る 9時14分発 「S駅」行き 4.有機的な地域公共交通網形成の考え方 4.有機的な地域公共交通網形成の考え方 ■ 有機的なネットワーク形成と責任分担 ■ 広域バス路線とコミュニティバスとの結節点 1.広域市町村圏で「公共交通拠点」を設定 ・ 拠点の段階構成→LOSの確保目標(品質) > 都道府県・定住自立圏のイニシアティブ ・ 拠点のサイン計画、案内所等の機能 > 拠点市や事業者の役割が大きい 小規模市・町 地域鉄道 2.都市内の「幹線軸」を設定 ・ 一定水準のLOSの確保 (品質)→ 投資 > 拠点や事業者の役割 剣吉駅前、名川 分庁舎前など イオン下田、下田駅前など 五戸駅前など ハートフルプラ ザ、階上庁舎前、 赤羽など 金ヶ沢、西越局前 など サンモール田子 路線バス 周辺町村 3.拠点から集散する域内(フィー ダー)サービスの設定 ・ おでかけ可能な範囲の確保 > 各自治体・地域の役割大 広域市町村圏の中心市 幹線鉄道 三戸中央病院、三戸町役 場、三戸営業所など 十文字、道の駅なんごう、 下洗口など はっきりしていない拠点(結節点)を明確にする議論が必要 4.有機的な地域公共交通網形成の考え方 4.有機的な地域公共交通網形成の考え方 ■ ポイント③ 鍵となる「ターミナル」 ■ ポイント③ 鍵となる「ターミナル」 それぞれ結ぶ? ・ 各地点は最短経路 で結ばれるが、非 効率なネットワーク になる。 ターミナル(ハブ)に路線を集約 A団地 D団地 B高校 Fマート C病院 環状に結ぶ? ・ 一見、効率的なネッ トワークだが、目的 地まで迂回を強いら れる。 ・ 例えば、C病院をターミナル化 ・・ 各路線ともC病院へ「毎時50 分着」「毎時00分発」であれば、C病院を介して全地点へ > 単に路線を集めるだけでは意味がない > 鉄道も「路線」・・ バスだけでネットワークを考えるのは非効率 E温泉 A団地 A団地 D団地 D団地 B高校 Fマート C病院 E温泉 B高校 Fマート C病院 E温泉 4.有機的な地域公共交通網形成の考え方 4.有機的な地域公共交通網形成の考え方 ■ ポイント④ 「幹線軸」の品質保証 ■ 「横川目線」専用のリーフレットも作成 岩手県交通「横川目線」の例(北上市) ・ 本数はそれなりにあるが、使うた びにいちいち調べないと、時刻が 分からない。→ 「使われない」 ・ 北上市地域公共交通会議との協 働で、昼間時等間隔運行と終バ スの繰り下げを実施 「覚えやすい時刻」で それなりの高頻度サービスを 提供することがポイント しかし、「事業者任せ」では 改善が図られない 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 00 15 40 35 15 00 50 40 30 00 00 00 15 以前 25 45 45 25 55 30 35 30 00 30 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 20 20 00 現在 20 40 30 30 30 30 30 30 30 30 30 30 55 30 実施前 2,665人/週 → 実施後 3,210人/週(2割UP!) 4.有機的な地域公共交通網形成の考え方 4.有機的な地域公共交通網形成の考え方 【事例】北上市「公共交通ビジョン」の目標と責任分担 ■ 「競争から共創」の第一歩・・・八戸駅線共同運行化 「都市構造をつくる幹線交通」と「生活を支える支線交通」が有機的 に結ばれた交通ネットワーク 「横川目線」を市内 の幹線エリアに位置 づけ30分等間隔運 ・ 八戸駅⇔中心街(三日町)間を運行する、2事業者22系統の運行 計画を、八戸市の調整下で一体的に設定し、「効率的な運行の 実現」と「分かりやすさ・便利さ」の両立を目指す (運行ダイヤ) *八戸駅発平日時刻 (従前) 9:03* 9:17 9:28* 9:31* 9:40 9:43* 9:46* 9:59 ⇒ 2社が 112.5往復/日を運行 行へ増便のために 公的支援を「投資」 (現在) 9:00 9:10* 9:20 9:30* 9:40 9:50* 10:00 ⇒ 2社が 90.5往復/日を10分間隔で運行 (08年4月~) ⇒ 2社の 定期券共通化+のりば共通化 支線的なエリアは、 【効果】 両事業者ともに「乗客増」「黒字化」達成(2008年度) (乗車人員) 135万4千人 → 144万1千人 乗客 6.4%増 (収支) 1,567万円の「赤字」 → 2,556万円の「黒字」 地域住民との協働を 前提としたセーフティ ネットを構築 4.有機的な地域公共交通網形成の考え方 4.有機的な地域公共交通網形成の考え方 ■ さらなる「事業者連携」で公共交通の品質向上 ■ 「八戸市公共交通再生プラン」による「幹線軸」の明示 【Step1】 2008.4.1~ ・ 八戸駅線等間隔・共同運行化の実施 ⇒ 利用者増・乗車効率向上・収支率向上の効果 ・ 同計画に基づき、7区間を「幹線軸」として設定 ⇒ 事業者間・系統間で「一体的な運行計画の設定」を求める 高頻度サービスを提供する区間を明確に示す「品質保証」によ り、将来の都市構造へのインパクトに期待。 【Step2】 2010.7.31~ ・ 終バス後の乗合タクシー「シンタクン」登場 「事業者ごと」「モード(交通機関)ごと」の施策ではなく、合わせ技 の取り組みによって、地域公共交通の「品質保証」が可能になる。 トータルで人口減でも(東北は仙台周辺以外はほぼ人口減少局面)、 幹線軸の減少幅は抑えることで集約的な都市構造へ 5.路線再編とターミナルの形成 5.路線再編とターミナルの形成 【事例】複雑な市街地の運行経路(以前の北上市) ■ 北上市中心街⇒北上駅方面のバス時刻表(改正前) ・ 市街地の「一丁目一番地」である「さくら野百貨店」周辺の停留所 が「本通り2」「本石町1」「新穀町」の3か所に分散 ・ 中心街⇒北上駅間は 平日70便/日のバス が運行されている。 ・ 停留所が「分散」して いるため、1時間に1 ~2本運行されている ようにしか見えない。 既存路線を活用して、 いわゆる「まちなか循環 バス」と同様な機能を追 加コストを掛けずに求め ることはできないか? 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 本通2丁目 本石町1丁目 新穀町 46 14 08 11 14 14 11 14 11 11 11 16 13 39 48 56 51 54 28 36 54 06 14 24 04 09 34 12 14 34 14 19 29 19 04 54 44 54 23 44 35 34 49 35 35 44 48 34 58 43 26 36 36 48 24 36 36 54 06 04 5.路線再編とターミナルの形成 5.路線再編とターミナルの形成 ■ 市街地の運行経路を統一化(2011年10月1日~) ■ デパート(さくら野百貨店)店内にターミナル機能 ・ さくら野百貨店周辺の停留所を「まちなかターミナル」に集約 北上駅~まちなかターミナル の運行経路を2経路に統合、 市内のすべての路線が北上 駅・まちなかターミナルを通 過するように設定。 北上駅~まちなかターミナル の区間に含まれる9か所の 停留所に停留所ナンバリング を施す ・ さくら野百貨店店舗内に、 ① バスカードの販売 ② バス路線案内(液晶画面 による接近表示システム) ③ 待合(街愛)スペース の機能を委ねたターミナル 34 54 44 54 44 54 49 49 59 6.「地域密着」でモビリティを確保する 6.「地域密着」でモビリティを確保する ■ 地域公共交通の「支え方」は多様である ■ 地域公共交通の確保・維持・改善・・・地域にできること 発意段階 行政発意 市民発意 (例)交通計画で交通空白地域 の解消を位置づけ 調整段階 (例)地域住民組織、NPO等が 公共交通運行を提案 地域住民との調整 行政単独事業 計画段階 交通政策との調整 市民・行政連携事業 知恵 運行計画提案 チカラの努力 施設管理・運転 カネの努力 負担金・利用促進 ・ 施設整備・広告物の制作 ・ 自らが運転・運行管理 チカラ の努力 市民単独事業 知恵の努力 運行計画の提案 (意見聴取も含まれる) 運営段階 ・ 地域における移動ニーズを把握し、生活 に「使える」経路・時刻・サービスを考える の努力 地域公共交通の 確保・維持・改善 カネ の努力 運営主体の組織化 ・ 乗って支える(運賃収入) ・ 乗らない人も支える工夫 負担金支出・利用目標設定 行政が運営主体 市民が運営主体 「知恵」「チカラ」「カネ」を地域で「マネジメント」するには? 6.「地域密着」でモビリティを確保する 6.「地域密着」でモビリティを確保する ■ 「地域発」で公共交通を考えるプロセス ■ 「地域発」で公共交通を考えるプロセス Step1 課題の共有 ・ 地域の「お出かけ」に関する課題を共有するため に、まず集まる(地域内外、老若男女問わず) ・ 近隣地域も含めた公共交通サービスの現況を把 握すること(まずは、自ら乗って確かめる) Step4 運行開始 ・ 決定した運行計画(運行主体・経路・時刻・運賃)に 基づき、運行を開始 > 運行開始に向けては、道路運送法に基づく許 可等が必要になる場合が多く、運行事業者や 市町村の協力が必要になる 【注】 「先進事例」から学べることは意外と少ない? Step2 「お出かけ」ニーズ の把握 ・ 地域住民の「お出かけ」に関して、どのような活動 に「困っている」かを明らかし、需要を「数える」 Step3 移動手段をつくり 守る(確保・維持する) 方法を考える ・ 地域で困っている「お出かけ」ニーズに応える移動 手段の提供方法を検討する(①⇔②) ① 運行する時間帯や目的地の整理 ② 資金と相談しつつ運行形態・運行主体の決定 > 地域での集会(ヒアリング)やアンケート調査等 Step5 継続したカイゼン Step6 次世代にバトンタッ チできるか? ・ 運行開始後も、継続したモニタリングを行い、適宜 カイゼンを図ることが必要 > 運行開始後も議論できる体制が必要 ・ これまでの取り組みを次世代に引き継ぐことができ るか? > 地域での生き方や地域づくりと一体に公共交 通を考えることが必要 > これ以降、特に「翻訳者」の役割が重要になる 6.「地域密着」でモビリティを確保する 6.「地域密着」でモビリティを確保する ■ 山形市明治・大郷地区「スマイルグリーン号」の例 ■ 検討プロセス(1) 山形市明治・大郷地区 ・ 山形市の北端(山形駅より10km)に位置 ・ 東西2~3km、南北5kmの範囲に約 3,000人が居住(947世帯) ・ 約10年前に路線バス(山交バス)が 廃止された後、山形市が「地域交流 バス明治線」を週1日運行 ・ エリア内にスーパー・CVS・医療機 関・中学校・高校が立地せず 地域住民からは、週複数日の運行 に増便を求める声が強かった 19年11月 ① 明治地区町内会連合会との勉強会の開催 明治地区町内会連合会の役員,やまがた福祉移動サービスネッ トワークに山形市、首都大学(吉田(当時))をメンバーに地域公共交 通に関する勉強会を開催.新しい交通サービスの導入に向けた 調査の考え方と地域交流バス明治線の試乗調査の実施を提案. 19年12月 ② 地域交流バス明治線の試乗調査 明治地区町内会連合会の役員が地域交流バス明治線の試乗調査 を行い,感想や改善点,乗客の移動実態などを整理する. 20年 2月 ③ グループヒアリングの実施 参加者の移動実態や日常の外出に関して困っている点を把握 20年 6月 ④ 新しい交通サービスの運営形態に係る協議の開始 グループヒアリングの結果を踏まえ,これからの進め方や,山 形市と明治地区との責任分担の考え方について議論を交わし始 める.隣接する大郷地区と合同での協議とすることを提案. 20年 7月 ⑤ 移動実態調査の実施 地域住民全般の移動実態について,全戸配布のアンケート調査 により把握. 6.「地域密着」でモビリティを確保する 6.「地域密着」でモビリティを確保する ■ 検討プロセス(2) ■ 地域住民自らがサービス水準を決める 20年 8月 ⑥ 新しい交通サービスの導入に向けた「準備会」の設置 新しい交通サービスの導入に向け,各町内会の役員有志によ る「勉強会」としての組織から,「準備会」に移行した. 20年 9~ ⑦ 市内交通事業者(貸切バス・タクシー)への聞き取り調査 明治・大郷地区における交通サービスの運行に必要となるマイ 11月 クロバス車両もしくは小型車両(乗車定員11人未満)を所有す る交通事業者への聞き取り調査を実施. 20年12月 ⑧ 運行方式の決定・運行事業者の選定 新しい交通サービスの運行方式を,小型車両によるデマンド 型交通とし,運行事業者を選定(地域住民代表による面接に より2社から選定)した. 21年 2月 ⑨ 大郷明治交通サービス運営協議会の設置 新しい交通サービスを運営する組織として,上記の協議会を設 置.町内会組織だけでは「ノウハウ」が継承されないため. 21年 4月 ⑩ スマイルグリーン号運行開始 新しい交通サービスの愛称を「スマイルグリーン号」に定め(地元の 小学生が決めた)運行開始. ① 車両小型化による増便 ・ ワゴン車両の活用で、運行委 託費を縮減し、週2日の運行へ ② デマンド交通の特性を活かす ・ 停車地を倍増させ、歩行がつ らいお婆ちゃんの自宅の前に 設置する工夫も ・ 予約制による「安心感」。顔な じみの乗務員が迎えに行く。 # 一番の評判は「加藤さん」 地区レベルのサービス水準は「会議室」では決められない 6.「地域密着」でモビリティを確保する 6.「地域密着」でモビリティを確保する ■ 大郷明治交通サービス運営協議会の設置 ■ 乗車人員の推移 運営スキーム ・ サービスの最低保障分(週1日の運行)を定額で市が「補助」 > 車両の小型化による経費低廉化により増便を図る > 運行計画の設定は、協議会の責務 ・ 人材の継続性; 町内会の役員は流動的→協議会の必要性 ・ 乗車人員の増加; 2年目(平成22年度)は、前年度比40%増 3年目(平成23年度)も、さらに前年度比12%増 ・ 4年目は伸びが止まる; 「バスの上にも3年」をどう乗り越える? 市町村は、地域のモチベーションを持続させる仕掛けを創る 6.「地域密着」でモビリティを確保する 6.「地域密着」でモビリティを確保する ■ 地域に親しまれる「地域車」を目指して ■ 地域に親しまれる「地域車」を目指して ・ 年度初日の運行は、公民館前駐車場でセレモニー ・ 乗客5,000人達成記念セレモニー(2012年3月21日) 地域公共交通は「お茶の間に明るい話題」も運ぶ 6.「地域密着」でモビリティを確保する 6.「地域密着」でモビリティを確保する ■ 回数券は地元小学校児童の絵を採用 ■ 行政・事業者・地域の三位一体で「おでかけ」を守る 三位一体の契機となる「場づくり」、市域 全体の交通サービスとの調整・連携。 交通事業者は「輸送のプロ」の視点 で地域の取り組みをサポート 運行主体 市町村 事業者等 地域公共交通を 改善し 三方良し おでかけを守る キー パーソン 翻訳者 三者の「言語」を斟酌し、三位一体の 文化を作り上げる仕事人(外部人材) 地域 「口を出す」「利用する」「自ら動く」 地域住民の「おでかけ」環境を整備 7.さまざまな運行形態と運行主体 7.さまざまな運行形態と運行主体 ■ さまざまな地域公共交通 ■ 運営・運行主体と道路運送法許可の関係 ・ 地域公共交通は、「路線バス」に限らず、小規模需要に対応し た様々な種類がある。 ・ 各々のシステムには、導入に向く地域条件(適材適所)が存在 しており、システムの特性を知ることが極めて重要。 利用者不特定 鉄道 タクシー 路線バス コミュニティバス 利用者特定 乗合タクシー デマンド型交通 (DRT) 過疎地有償運送 ハンドブックの対象範囲 福祉有償運送(STS) マイカー 個別・私的(輸送密度小) 乗合(輸送密度大) 【運営主体】 運行計画(時刻表・運行経路・運賃等)の決定主体 【運行主体】 利用者を輸送する主体 運営主体 運行主体 交通事業者 交通事業者 道路運送法の許可(登録) 4条(通常の乗合バス) 4条(コミュニティバス・DRT等) 市町村 交通事業者 (地域公共交通会議) 市町村 地域組織 NPO等 交通事業者 4条(コミュニティバス・DRT等) 地域・NPO等 79条(過疎地・福祉有償運送) 79条(市町村運営有償運送) ■ 定時定路線(路線定期運行)とデマンド型(区域運行) 【定時定路線】 決められた時刻・運行経路に基づいて運行する (例) 路線バス・コミュニティバス 【デマンド型】 利用者の事前予約に応じて時刻・運行経路を設定 7.さまざまな運行形態と運行主体 8.デマンド交通(DRT)の「勘どころ」 ■ 運行形態の類型化(使用車両×ルート) ■ デマンド交通(DRT)をなぜ導入するのか? ① 路線バスの代替手段として財政負担を減らすため 使用車両 運行経路 (ルート) 固定 不定 中・大型 (車両定員11人以上) 小型 (車両定員11人未満) 一般の路線バス コミュニティバス 乗合タクシー (定路線型) デマンド交通(DRT) 使用車両 需要が大きく、1台の車両で捌ききれないこと(積み 残し)が多い場合には、非効率になる 運行経路 需要が小さく、面的なエリアをカバーする場合には 運行経路を固定しない方法が可能になる 生活交通の運行形態を選択するとき、「需要」と「運行エリア の広がり」に着目する必要がある。 ・ 長野県安曇野市など、「財政負担が減った」と称される事例もあ るが、採算が取れないことには変わりない。 ② 「空気を運ぶバス」を解消するため ・ 事前予約に応じて運行されるため、誰も乗車しない場合は運休 できるが、存在に気付かれない懸念もある。 ③ 交通空白地域を解消するため ・ ドア・トゥ・ドアに近いサービスを面的にカバーできるが、「予約」 の障壁、BF化されていない小型車両を利用する障壁がある。 デマンド交通は、生活交通サバイバル時代の 救世主たる「万能選手」なのか? 8.デマンド交通(DRT)の「勘どころ」 8.デマンド交通(DRT)の「勘どころ」 ■デマンド交通; DRT(Demand Responsive Transport) ■ デマンド交通の導入に向く地域条件 ・ ルート(運行経路)が固定されていない → 予約の入った停車地(ミーティングポイント)を結んで運行 終点 ◎路線型よりも面的に広がったエリアを効率的にカバーできる ◎バスよりも停車地(ミーティングポイント)を密に設置できる ( 一定距離・一定時間あたりの需要) 始点 高 一般の路線バス コミュニティバス 高 低 低 ① 需要密 度 停車地 予約あり ・通常の路線バスやコミュニティバスに比べて、デマンド交通は ① 少需要に対応する場合であるほど ② 面的な運行エリアに対応する場合ほど 導入適性が高まる 線的 面的 ② 運行エリアの広がり デマンド型交通 (DRT) DRT) 面的 線的 *色の濃い部分=導入適性が高くなる ×路線バス並みの需要を捌くのには不向き(エリアの拡がりにもよる・・) 8.デマンド交通(DRT)の「勘どころ」 8.デマンド交通(DRT)の「勘どころ」 ■ デマンド交通(DRT)の2つの可能性 ■ カバーする移動携帯と運行方式 Bed to Bed Door to Door STS(福祉輸送) タクシー 線的に分散 面的に分散 面的に分散 面的に分散 目的地 集約 集約 線的に分散 面的に分散 路線固定型 (Fixed) 起終点固定型 (Semi-Dynamic) 起終点固定型 (Semi-Dynamic) 起終点不定型 (Dynamic) イメージ DRT 停留所 to 停留所 居住地 路線バス 輸送密度(相乗り)低 輸送密度(相乗り)高 (1) 人口低密度地区における路線バスの代替手段 (2) 個別輸送(福祉輸送) 可能な旅客が相乗りし、供給量拡大と効率化を図る ■ デマンド交通の運行方式 路線固定型 (Fixed) ひとえに「デマンド交通」といえども カバーする移動形態と対応する運行方式は多様である ■ デマンド交通は、生活交通の「救世主」なのか 経路 固定 *路線不定期運行 時刻 予約受付方法 固定 起点出発時刻 (乗客がある場 以前に予約 合のみ運行) 固定 迂回経路の停 路線迂回型 (Route Deviation) 固定 迂回経路あり 起終点固定型 (Semi-Dynamic) 起終点を固定 起点出発時刻 その間を 起点出発時刻 (終点到着時 予約に応じて 以前に予約 刻)のみ固定 運行 起終点不定型 (Dynamic) 路線迂回型 (Route Deviation) 8.デマンド交通(DRT)の「勘どころ」 8.デマンド交通(DRT)の「勘どころ」 運行イメージ 運行 方式 非固定 (迂回経路は予 留所を通過する 約が入ったとき 前までに予約 のみ運行) 非固定 任意の時刻に 予約受付 需要量と運行方式に見合った予約・配車方式を選択したい 予約・配車システム「ありき」で運行形態を決めるのは問題 ・ 市域全体をデマンド交通で網羅し、「先進的」と謳う自治体も ① 地域特性による「向き」「不向き」がある(適材適所) ② 公共交通の「軸」が描けない(賑わいに作用しにくい) # 走っているかどうか分からない・・・一見さんお断り? ③ 来訪者には使えない(事前予約の情報をどう知らせる?) ■ 予約・配車システムは、生活交通の「救世主」なのか ・ 路線やスケジュールの設定をシステムに「お任せ」すれば、それ なりのサービスが提供される。だから「楽」。しかし、そのままでは 「使える」公共交通へのカイゼンが図られない。 ← システムから得られるデータこそ貴重。でも「活用されない」 ← システムは、「使っている人」には最適化されるが・・・ 9.地域公共交通の「制度」を活用する 9.地域公共交通の「制度」を活用する ■ 地域公共交通会議は何のために開く? ■ 八戸市地域公共交通会議の検討体制 ・ コミュニティバスやデマンド交通の導入や変更があるとき「だけ」 開催するのでは、意味がない。 【地域公共交通会議】 (2006年10月の道路運送法改正により創設/原則市町村が主宰) ・ 地域の実情に応じた乗合輸送(法4条)の態様に関する協議 → 事業者に委ねる不採算路線から、市民・行政・事業者の三 位一体で「つくり」「育てる」生活必需路線へ ・ 地域の実情に応じた乗合輸送の運賃・料金等に関する協議 → 規制(総括原価方式)にとらわれない発想が可能に ・ 市町村有償運送(法79条)に関する協議 地域公共交通の全体を「マネジメント」する場として活用 「制度」を使いこなし、「やりたいこと」を「計画的に」推進 ・ 道路運送法に基づく「協議」と、活性化・再生法に基づく「計画」 策定機能を併せ持つ機能を有する(二法協議会) ・ 本会議のほか「分科会」を設置し、事業者間調整や新たなプロ ジェクトの企画、進行管理を実施。 *年間乗車人員(運賃支払者);676.7万人(H24) H22=618.2万人 八戸市地域公共交通会議 武山泰・八戸工大教授ほか17人で構成 路線バス事業 連絡調整分科会 ・ 毎年15回は集まっている ・ ラウンドテーブル型の議論 プロジェクト型分科会 (例)災害時公共交通対策検討分科会 南郷コミュニティ交通 小型乗合交通ビジネスモデル化 バスマップ企画(東北運輸局活プロ) 9.公共交通の「協議会」をどう活用するか? 9.公共交通の「協議会」をどう活用するか? ■ 地方行政が不採算サービスのマネジメント主体に ■ 生活交通サバイバル戦略と「忘れられた」連携計画 ・ 地域公共交通; 生活に身近な存在 ⇔ 被規制産業 活性化・再生総合事業の廃止 ① 乗合バス事業の規制緩和(2002年2月) ・ 「連携計画」策定を後押しした財政支援措置であった「活性化・再 生総合事業」の廃止 ← 事業仕分け、省内事業レビュー ・ 需給調整規制の撤廃(事業者による内部補助を前提としない) ⇒ 地方行政が不採算路線の必要性を判断する主体に ② 改正道路運送法(2006年10月) cf. 有償運送運営協議会 ・ 地域公共交通会議制度の創設 ⇒ 既存の不採算サービスに「欠損補助」以外のカードを付与可 ⇔ コミバスやDRTの新設・改変のみに活用(セレモニー型) ③ 地域公共交通活性化・再生法(2007年10月) ・ 地域公共交通総合連携計画の策定可能に ⇒ 「事業法」による公共交通行政から、初めての「政策法」に。 梯子を外された「サバイバル戦略」と「忘れられた」連携計画 ・ 地域公共交通関連の国交省予算(219.5億円)を包括した「サバ イバル戦略」を「元気な日本復活特別枠」に提案 ⇒ 305億円に ・ 交通基本法の推進に関わる財政支援措置としての色彩があった が、同法の成立が遅れ、結局は「交通空白地域対応」に重点化 ⇒ 連携計画を策定するインセンティブが薄れてしまった 連携計画の策定団体は、24年度末で510団体で、24年度新 規は18団体のみ。改定が行われず、「放置された」計画も。 財政支援がなければ計画は不要・・・これでいいのか? 9.公共交通の「協議会」をどう活用するか? 9.公共交通の「協議会」をどう活用するか? ■ 全体計画(地域公共交通網形成計画)が求められる理由 ■ 交通政策基本法における位置づけ 生活交通ネットワーク計画 ・ 地域間幹線、地域内フィーダー・・・縦 割り型の補助事業計画に止まる ⇒ 「出口戦略」が議論されず、単なる 「書類づくり」に終始する可能性 全体計画(地域公共交通網形成計画) ・ 「何を目指して」地域交通政策を進めるのか、そのための道標や 責任分担を議論して進める(連携計画にはパブコメも) ⇔ 「総合事業」の廃止で、期限切れ計画続出+新規計画低調 対症療法では太刀打ちできない地域交通の現状だからこそ 全体計画(形成計画)が重要。次を担う担当者 へのメッセージにもなり、政策の継続性にも有効! (地方公共団体の責務) 第九条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、交通に関し、国と の適切な役割分担を踏まえて、 その地方公共団体の区域の自然 的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務 を有する。・・・以下略 (交通関連事業者及び交通施設管理者の責務) 第十条 交通関連事業者及び交通施設管理者は、基本理念の実 現に重要な役割を有していることに鑑み、その業務を適切に行うよう 努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する交通に関する施 策に協力するよう努めるものとする。・・・以下略 求められる地方公共団体の地域公共交通「政策」 求められる交通事業者と行政の「パートナーシップ」 9.公共交通の「協議会」をどう活用するか? 9.公共交通の「協議会」をどう活用するか? ■ 地域公共交通活性化・再生法の改正(2014.5.14成立) ■ 広域バス路線も「地域公共交通会議」で話題にできる 広域バス路線の「使いこなし方」は、各市町村の地域公共交通 会議でも議論できる(これを議論しなければもったいない!) 県単位、ブロック(例:三八分科会、定住自立圏)単位の協議会は、 各市町村の提案を集約し、「調整」する場である。 ■ 求められる「県」と「中心市」のリーダーシップ 「コミバス」「デマンド」単体ではなく、面的(全体的)な ネットワーク再構築に対する支援制度の拡充 立地誘導(都市再生特措法・中活法とのセット)を 支える公共交通への支援強化(ハード整備) ① 活性化・再生法改定(14/5/14成立)を踏まえた動きを ⇒ 都道府県も連携計画(形成計画)の策定主体に ⇒ 各市町村の「地域公共交通会議」を広域化させる「ボトム アップ」の発想で、「全体計画」を取りまとめたい。 ② 県と市町村の役割分担で、広域バス路線活性化の具体策を ⇒ 広域バス路線の再構築・活性化に向けた「インセンティブ」 が必要 ⇔ 「補助要件の拡大=インセンティブ」の誤解 9.公共交通の「協議会」をどう活用するか? 10.よくあるご質問 一挙公開! ■ 「思い込み」の脱却でネットワーク強化(茨城・五霞町) ■ 陥りやすい「落とし穴」? フィーダー系統① 始発駅の南栗橋駅(埼玉県久 喜市)と工場群、町内をつなぐ ⇒「県跨ぎ」フィーダー系統に フィーダー系統② フィーダー①と起終点は同一。主な 停留所も一緒だが、団地、スーパー 、病院、クリニックを経由する。 五霞・幸手線(朝日バス) 広域バス路線だが、「廃止代替 バス」ということで国庫補助を受 けられないとの「思い込み」 ⇒ 地域間幹線系統に ◆成功事例だけでなく、失敗した事例や陥り易いポイントなども講 義願いたい。(I県T市) ① バスの利用者減の要因は、マイカーと少子高齢化である。 ② 市町村の協議会(地域公共交通会議等)は、コミバスやデマ ンド交通の導入、変更の時に開催するものである。 ③ 市町村の協議会では、地域間幹線や黒字路線の議論はで きない。 ④ 自治体バスは、幅広いエリアを「広く、薄く」運行させ、交通 空白地域の解消を目指すことが望ましい。 ⑤ デマンド交通は、ドア・ツー・ドアで運行するものである。 ⑥ 学識者が言うことを実践すれば、うまくいくと思う。 長期を見据えつつも、「現場起点」で物事を考える 10.よくあるご質問 一挙公開! 10.よくあるご質問 一挙公開! ■ スクールバスとの混乗 ■ 何から始めればよいか? ◆ スクールバスを利用した一般混乗を検討していますが、その際のデメリットを ご教示頂きたいです。(I県O町) ① いわゆる「混乗」といっても、様々な形態がある。 【間合い活用】 車両台数・運行時間の制約が前提になるため 広く、薄く運行しようとすると、「使えない」サービスに 【混乗化】 「スクールバス」という名称のままで、一般旅客は 気兼ねなく乗車できるのか? ② 学校の位置と、医療機関・商業施設の位置関係を考えたい。 ◆ 公共交通施策に取り組みたくても、どのようにすれば分からない場合の手順 やポイントについて御教示いただきたい。(I県) ① まず、乗車して「バスのなかで何が起こっているのか?」を観 て、課題を把握する(乗客の顔ぶれ、乗務員の接遇、車内の清潔さ・・・) ② 「どのようにすれば分からない」にもいろいろな段階がある 【新任担当者】 仕組みの理解、ネットワークづくり > 公共交通の図書・ハンドブック、セミナーの参加 【首長や上司の理解が薄い】 市内外に相談相手をつくる 交通事業者との連携を深める 【サービス改善の技法】 専門家の知恵の活用、視察 > 視察は、「先進事例」の外形を見るのではなく、「中 身」を観たい(それがないとほとんど意味がない) 10.よくあるご質問 一挙公開! 10.よくあるご質問 一挙公開! ■ 何から始めればよいか? ■ どこまで公共交通を確保する? ◆ 公共交通以外の業務を兼務していることにより、思うように公共交通施策に 取り組めない自治体職員が、比較的スムーズに取り組める有効な利用促進 策について御教示いただきたい。(I県) ① 吉田が新任担当者であれば、(自分の理解促進のためにも) 事業者・モード横断型の「バスマップ」を作ってみる。 > 役場内だけで作成するのではなく、ワークショップ型の議 論で「使える」マップを作るとよい(人的ネットワーク) > マップを製作しているうちに、「なぜ、このサービスが存在 しているのか?」「ここを変えれば、よくなるのでは?」と いう発想も浮かんでくる。 ② 利用促進(MM)は、「広く、薄く」図るのではなく、サービスの 改善と合わせて、ターゲットを絞って実施することが効果的。 ◆自治体運行バス等の運行計画の見直しを検討する場合、シビルミニマムの観 点から住民のニーズをどの程度まで汲み取ることが妥当か御教示いただきた い。(I県) ① 討議の重要性 > 地域公共交通会議 議の実質化が有効 (例)秋祭りのブースに 出展して、広く意見 を集めた事例 ② 行政が「できること」 「できないこと」を明 確にし、地域や事 業者とリスク分担 10.よくあるご質問 一挙公開! 10.よくあるご質問 一挙公開! ■ 既存交通機関との連携(路線再編) ■ 既存交通機関との連携(契約インセンティブ) ◆ 市において、平成25年度から市営交通の検討を考えている。市内タクシー・ バス会社との連携の仕方や問題解決方法について、事例を交えて教示願い たい。行政と民間の棲み分けの仕方(バス停設置・時間の拘束など)はいくつ かあるが、市町村:タクシー・バス会社の関係、タクシー・バス会社同士の関 係を円滑また友好的に行えるような方法は?(T県Y市) ① 市がバスを直営(自家用)しなければならない理由は? > 一見、経費が安いように見えるが、行政職員の負担、事 故リスクへの備えを「自前」でやっているだけに過ぎない。 > 地域公共交通会議の活用で、特区的な扱いも。 ② 地域公共交通網形成計画(法定計画)の策定は必須 > 市と事業者が連携する事業、あるいは事業者間調整が 必要な事業については、法定計画に位置づけを ③ 常に行政と事業者が同じテーブルにつく文化を 10.よくあるご質問 一挙公開! ■ ターミナル、モードの選択 ◆ 公共交通機関ターミナルの整備について、成功例、失敗例(費用をかけた割 には機能していないなど)があればご教示願いたい。(T県M市) ① 乗り継ぎ方式を想定するのであれば、支線(フィーダー)のみ を利用して何も「用足しできない」状況は避けたいところ。 ② ターミナルの整備=建物の整備ではない。 ◆ 地域特性に合わせて、多様な輸送形態の中から最適な輸送形態を選択する 上で、最も重要なポイントについて教示願いたい。(T県) ① 人口密度に加え、集落の拡がりや道路の形状がポイント > 人口低密度でも、概ね一本道に集落が分布しているので あれば、路線型でも対応できる。 ② 骨格となる路線(鉄道も含む)を明確にする ③ デマンド交通は、あくまで「道具」のひとつにすぎない。 ◆ 市から運行事業者へ委託契約をするという形が一般的だと思われるが、定額 の契約では、運行事業者のサービス改善に繋がりにくい。運行事業者が自ら 努力し、利用者が増えたり、サービスが改善した場合にインセンティブを支払 うなど、運行事業者が自らサービス改善していくような事例は?(T県M市) ① このあとの会議で議論されるであろう「地域間幹線」の「事前 算定方式」は、インセンティブを付与した方式。 ② 「地域間幹線」にせよ、「地域内フィーダー」にせよ、国の補 助制度は「協調補助」が前提ではなくなった。 > 県、市町村が独自に制度設計して構わない。 ③ そもそも、運行費補助自体が「事業者の意欲」を掻き立てる 性質のものか? > 運行費補助は、あくまで「いまの路線を維持する」ことが 目的。投資的な財政支援に重点を置くことも一考。 11.さいごに ① 公共交通づくりは「おでかけ」の機会を拡げる投資である ◆ 「赤字だから補助する」論理ではなく、市民の暮らしに「使える」 サービスを提供するための投資として、公共交通政策を考える。 ⇒ 次世代に向けたメッセージとしての「全体計画」 ② 「カタチ」ではなく、「しくみ」から創る ◆ 「先進事例」のカタチを真似するのではなく、三位一体で「おでか け」を守る文化(=パートナーシップ)を創ることが肝要。 ③ 地域公共交通づくりは、地域づくりの「学校」である ◆ 地域公共交通は、「現場の近さ」が特徴。まちづくり・地域づくりの 「第一歩」として活用することができる。 「存在感」ある地域公共交通を創りあげる「覚悟」 「いいな」と思えることをやり抜く「突破力」が必要!