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畜産の研究 第70巻 第05号 (立ち読み)

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畜産の研究 第70巻 第05号 (立ち読み)
2016年5月1日発行(毎月1回1日発行)ISSN2189−9991 CODEN:CKNKAJ
畜産 の研 究
Sustainable Livestock Production and Human Welfare
2016
第70巻・第 5 号
目 次
産業
家畜伝染病対策において使用される消毒薬が
動物
環境に及ぼす影響(1)………………………山崎浩一
345
日本養豚学会の近況と第 104 回大会開催報告
………………………祐森誠司・押田敏雄・丹羽美次
351
実践飼料学の失敗と成功(9)
―品質管理半世紀の軌跡から―……………本澤清治
359
妊豚用飼料の栄養問題…………………………大成 清
365
飼料学(133)―飼料添加物(feed additives)―
……………………………………岡野圭介・石橋 晃
379
千葉南房総におけるイノシシ罠猟について
∼狩猟塾に参加して∼
………………………坂田亮一・近田康二・押田敏雄
385
Dr.Ossy の畜産・知ったかぶり(59)
畜産の機械化・電化について⑥……………押田敏雄
393
ピラール大学における卒論指導の一環としての
統計学の講義 2 ……………………………冨田健太郎
新刊
農学基礎シリーズ「草地学の基礎」
紹介
維持管理の理論と実際…………………………………
399
364
畜産界ニュース………………………………………………417 ∼ 424
株式会社
養賢堂
358
畜産の研究
第70巻
第5号
(2016年)
385
千葉南房総におけるイノシシ罠猟について
~ 狩 猟 塾 に 参 加 し て ~
坂田亮一 1・近田康二 2・押田敏雄
1
麻布大学獣医学部 (Ryoichi Sakata)
2
(社)中央畜産会 (Koji Chikada)
3
東京農業大学客員教授・麻布大学名誉教授 (Toshio Oshida)
1,3
1 . は じ め に
本年 3 月に 1 泊 2 日で,イノシシ猟の基礎を学ぶという狩猟塾に参加しました。ここでは実
際に罠に掛かったイノシシを処理し,その肉が自分たちの口に到るまで普段できない体験を致
しましたので,その概要をここに報告致します。
場所は千葉県房総半島,集合と宿泊場所は『自然の宿「くすの木」』南房総市和田町上三原
1244-1 で,小学校の廃校を利用し,地元第三セクター方式で宿泊と食事ができる施設として稼
動しています(図 1)。そのホームページ
1)
では,
「平成 9 年 12 月 20 日にオープンしました自然
の宿くすの木は,豊かな自然に恵まれた環境の中で,自然体験・調理加工体験・竹細工づくり
などを体験できる施設として,多くの人に利用されています」と紹介されています。
今回の狩猟塾体験の主催者は戎井新栄(えびすい しんえい)さん(図 1)。愛称えびちゃん,と
して地元でも有名な罠猟ハンターです。今回は,
「猟師えびちゃんの狩猟塾
2016 春」に 14 名
が参加しました。
全国各地の就業支援事業としても,
「 イノシシ
被害に困窮する農家,狩猟初心者,ジビエに興
味を持つ料理人などを対象とし,プログラムと
してイノシシが生息する山林を猟師と歩き,罠
の構造,設置,解体実習を行う。参加者の受講
後の進路として,実際に罠を使い獣害を軽減し
た人もいる。参加する上で大切なこととして,
殺生に対する覚悟や理解が求められる。興味が
ある人への一言として,自分の畑を守りたい,
お肉も自給自足したい,という人にお薦め」と,
この塾のことが掲載されています 2)。
2 . い の し し 捕 獲 現 場 で
ワイヤーを使った「くくり罠」や「箱罠」で
捕らえられたイノシシは,参加者たちが解体し
ます。これがこの塾の決まりです。
図1
自然の宿「くすの木」で
中央が戎井 氏, 左は同行の 三木 氏(麻布大 学院
生),右が坂田。
386
畜産の研究
第70巻
第5号
(2016年)
前夜が雨だったことで期待できると聞い
ていましたが,運よくイノシシ 2 頭が箱罠
に掛かっていました。箱罠を設置して 2 週
間目のことです。鉄枠の中のイノシシは,
止め刺しのために鼻(上顎)と前足の 2 点を
ワイヤーで固定し,狙いを定めます。まさ
にのど元一刺し,槍を使います(図 2 と 3)。
ワイヤーは狩猟用の強固なもので,まずイ
ノシシに噛ませて鼻をくくります。その固
定の場面には間に合いませんでしたが,こ
れまでの参加者から,You Tube や Facebook
図2
戎井ハンターとの初対面は,箱罠に掛かった
イノシシの止め刺し現場。到着直後から罠場
に直行。
図3
ワイヤーの口輪を噛ませ,足も固定し,止め
刺しを行う。
図 4
足にくくったロープを引っ張り,イノシシ
を沿道まで。
でその時の動画が克明に投稿されています。
「放血」をスムーズにするために心臓の上
を狙って一突き,鋭い槍で止め刺しに入る
と,イノシシの勢いがガクッと落ち鮮血が
地面に流れます。
今回のイノシシは,生体重が 26kg と 29kg
で生後 1 年位のメスでした。捕殺後,その
まま後肢のロープを引っ張って沿道に止め
た軽トラックまで運びました(図 4)。軽量
だから良かったものの,重量級のオスなど
の運搬は大変,状況に寄っては現場で埋葬
の場合もあるそうです。
「参加する上で大切なこととして,殺生
に対する覚悟や理解が求められる」と先に
記しましたが,現場を去るときに,参加者
皆でイノシシに合掌を致しました。大変印
象的な場面でした。家畜と同じく,その魂
を我々に捧げてくれたことに感謝と畏敬の
念を持ち,一かけらの肉も残さずに大切に
頂かないとなりません。
3 . イ ノ シ シ の 解 体
収穫したイノシシは軽トラックの荷台に積まれ(図 5),そのまま戎井ハンターの自宅に直送
し,軒下に設置された解体場に運び込まれます。その前に,写真のように“ミ”とカタカナ(南
房総のミ)と算用数字が水性ペンキでイノシシの体表に書かれます(図 6)。その意味は戎井ハ
ンターが今シーズンになって,ここで何頭目の得物かというナンバリングです。今回で 60 頭目
と 61 頭目になります。尻尾が有害鳥獣捕獲の証明として切り取られ,役所に提出されて定額の
報償金が支払われるそうです(図 7)。
393
D r. O s s y の 畜 産 ・ 知 っ た か ぶ り ( 5 9 )
畜 産 の 機 械 化 ・ 電 化 に つ い て ⑥
押 田 敏 雄
1
1 東京農業大学客員教授・麻布大学名誉教授(Toshio Oshida)
家畜の飼養管理で日々,絶対に避けて通れない関門が幾つかあります。給餌・給水,ふん尿
処理,乳牛では搾乳・牛乳処理などがあります。農作業の中でも「ふん尿処理」は 3K(「きつい」,
「汚い」,「危険」)的な仕事の代表とされます。
牛,豚のふん尿処理では固液分離が常識となっていて,尿汚水は固形分を可能な限り除去(固
形分はそのまま堆肥化)して,活性汚泥法などで浄化処理(余剰汚泥などは脱水ケーキとして堆
肥化)する方法が一般的で,広く普及しています。一方で,ふんについては,尿・尿汚水,遊び
水などが混ざらないようにして,集め,堆肥化する方法が一般的となっています。
今回は堆肥化に関与する機械・施設について触れてみましょう。
家 畜 ふ ん の 堆 肥 化 の 意 義 と 原 理
羽賀(2012)は堆肥化の意義として,①汚物感のない使いやすい有機肥料を作ることであり,
堆肥化することによって,臭気が低減し,物性がベトベトからサラサラに変化し,病原菌や寄
生虫(虫)が死滅する。②土壌や作物に良い効果を及ぼす有機肥料を生産することで,堆肥化に
より,生ふん中の有機物が十分に発酵・腐熟し,有害物質や雑草種子が分解・死滅し,肥料成
分をほど良く含む悪臭の少ない堆肥が得られる。③堆肥の流通利用で,家畜ふんが有機資源リ
サイクルに貢献することが,可能となり,耕畜連携による環境保全型農業の実現に繋がる
と
しています。
堆肥化とは,適正に制御された条件下で,微生物が家畜ふん中の有機物を好気的に分解・変
化させて悪臭の少ない良質な有機質肥料を生産することです。つまり,堆肥化には適正に制御
された条件が必須で,その点が自然界における腐敗や分解とは大きく異なります。
堆肥化の主役は好気性微
生物で,微生物は分解しやす
い有機物(易分解性有機物)か
ら分解を始め,その時に高温
で発熱し,ふんに含まれる水
分を蒸発させ,結果的にサラ
サラで悪臭のない堆肥が生産
されます。堆肥と乾燥ふんは
易分解性有機物がより多く分
解しているか,残存している
図1
生ふん,乾燥ふん,堆肥の違い(羽賀原図:2012)
かの違いにあります(図 1)。
394
畜産の研究
第70巻
第5号
(2016年)
家 畜 ふ ん の 堆 肥 化 の 条 件
堆肥化の条件として,羽賀は①栄養分,②水分,③空気(酸素),④微生物,⑤温度,⑥時間
を挙げています(表 1)。
表1
堆肥化を進める条件(羽賀 2012 を一部改変)
条 件
栄養分
水分
空気
微生物
温度
時間
目 安
ふんには栄養分 豊富 (BOD 数万 mg/kg以 上) 、C/ Nは
窒素過多
60~ 65%程度に調整、通気性の確保、容積 重0.5kg/L
を目安
通気性を考慮した堆 積。 撹拌 や切 返し 。強 制通 気は
50~300L/min/m 3
ふんには微生物が豊富。必要に応じて戻し堆肥
60℃以上で数日間の保持が目安
家畜ふんのみでは2ヶ 月、 作物 残渣 混合 時は 3ヶ 月、
木質資材混合時は6ヶ月が目安
要するに,家畜ふんを発酵させるには通気性を考えて,水分を 60~65%程度に調整しまが,
これは水分を下げること自体が目的ではなく,通気性を良好にするための一手段として,ふん
を乾燥させたり,各種の敷料を混ぜ入れることによって通気性を向上させ,好気性菌がより活
発に働ける状況を作っているのです。
視点を変えれば,ふんの水分が非常に高い状態であっても,通気性が保証されれば,問題なく発
酵します。ふん尿混みの高水分液体発酵で,液状コンポスト処理と呼ばれるものですが,著者は 1975
年にこの原理を発表しています。つまり,水分調整ではなく,通気性・物理性の調整が重要となり
ます。したがって,オガクズやモミ殻は水分調整資材ではなく,物性調整資材と考えるべきです。
家 畜 ふ ん の 堆 肥 化 処 理 方 式
家畜ふんの堆肥化は高水分状態で行う場合と低水分状態で行う場合とがあります。一般的に
言う「堆肥化」とは低水分状態で行われるものを言います。いわゆる高水分発酵とか,腐熟化処
理とか,液状コンポスト処理とか呼ばれるものは高水分状態で行われます。
表 2 に家畜ふんの堆肥化処理方式の概略を示します。
表2
区
家畜ふんの堆肥化処理方式(中央畜産会)
分
名
無通気型
堆積方式
通気型
称
堆肥盤
堆肥舎
堆肥舎
バック
バック
通気型堆肥舎
通気型堆肥舎
直線型堆肥化装置
(単列・複列)
堆肥化(発酵)処理
開放型
円形型堆肥化装置
回行型堆肥化装置
(楕円形)
撹拌方式
密閉型
実用上の呼称
堆肥盤
開放・直線型堆肥化装置
(単列・複列)
開放・円形型堆肥化装置
開放・回行型堆肥化装置
(楕円形)
縦型堆肥化装置
密閉・縦型堆肥化装置
横型堆肥化装置
密閉・横型堆肥化装置
399
ピラール大学における卒論指導の一環としての
統計学の講義 2
冨 田
1
健 太 郎
1
元パラグアイ国立ピラール大学農牧地域開発学部客員教授 (Kentaro Tomita)
1.は じ め に
引き続き,パラグアイのピラール大学における卒論指導の中の統計学教育の実情を報告して
いく。繰り返し記した事項であるが,表題にもあるように,筆者は国立ピラール大学に配属と
なり,農牧および地域開発学部において 9 名の卒業論文指導を依頼された。そして,同任地に
おける学生卒論指導を通じた野外での基礎データー輩出功績により,同学部客員教授に就任し
たことは既に記したが,これは,配属先側が筆者の責任ある行動を評価してくれた証の一つで
あり,相手側が冷静な立場で見ていたというように解釈してよかろう。
さて,卒論実験を計画・実施するに当たっては,学生たちにとっては栽培作物や牧草類の特
性の他,その栽培圃場の土壌特性,さらには実験計画のたえの統計学(分散分析法)を理解し
ておかなくてはならず,卒業論文は正しく学生に対する総合教育であるといえる。
本稿では,筆者もこのピラール大学において初めて学習する機会に恵まれたスプライト法の
計算方法を,担当学生一名の卒論結果の一部を用いて解説していく。
念押しとなるが,ここで,読者にお詫びしなければいけないことがある。それは,前報で解
説した Arreglo en parcelas divididas の他,本誌で紹介する Arreglo en frenja は,ご承知の通り,
ともにスペイン語であり,実は,養賢堂から出版されていた『応用統計ハンドブック』にはそ
の方法は記述されていない。野外科学的実験を取り組むに当たって,パナマやパラグアイ等に
おいて修得した知識であり,実際,どう日本語で訳して良いか分からない。とくに,Arreglo en
frenja は翻訳に苦しむ部分があるが,そんなことは考えず,本稿でその計算方法を詳細に報告
していく。
2.卒 論 指 導 内 容 に つ い て
前報でも記したが,実際,学生 9 名に対する卒論指導内容は,作物・野菜類・牧草・乳牛の
生乳生産というように,広範囲に及んだものであり,貴重な経験を積ませてもらったことに感
謝している。ここで強調したいことは,農牧林生産の基本は『土壌』にあるということである。
もちろん,この『土壌』と相互関係にあるものとして,『水』も挙げられるのは当然である。
とくに,高降水量が観察される天水依存地帯での農牧林生産にとっては,水資源が豊富である
と考えることができるが,乾燥地域かつ低水量地帯では,水質も大きく影響する要因であるこ
とを付記しておく(今回のエクアドルのアンデス乾燥地帯赴任によって得られた教訓である)。
したがって,その地域の土壌の理化学的特性を十分考慮した上で,これの低投入による改良
を実施,生産性・品質向上に努めることであると自負している。もちろん,低投入という概念
400
畜産の研究
第70巻
第5号
(2016年)
は,持続可能な生産システムの構築を意味しており,無視できない事項である。
このシリーズ(統計教育の実情)の後,畜産に関連する部分における卒論の成果を報告して
いくが,前報ではトマトの成果であったが,本稿ではキャベツの成果を取り上げる。野菜類で
の成果での解説であり,畜産に関係ない部分もあると考えられがちであるが,農牧生産という
概念の下,牧草栽培試験においても,この野外での分散分析法を活用することは珍しいことで
はないので,このように理解してただき,ご勘弁願いたい(学生卒論指導も含めて,同ピラー
ル地区で種々の実験に取り組んできたので,次報から取り上げたい)。
3.キ ャ ベ ツ 栽 培 試 験 ( 2 品 種 ×4N) を 事 例 と し て 活 用
二因子法のスプライト法の事例としては,キャベツ栽培試験の成果を用いて解説する。エン
ティソル土壌における 2 品種 (Corazón de Buey Gigante および Chato de Quintal)×4N (0, 100,
200, 300kgNP2O5/ha)という施肥水準であり,この卒論を実施した学生は,Fani Meza である。
彼女は筆者が担当した 9 名の学生の中で優秀であり,理解力の乏しい学生に対する指導にも協
力をしてくれた。
4.ス ト ラ イ プ 配 置 法
二因子法というのは,下にも簡易的に示しているように,メイン処理区 A の他にサブ処理区
B を設け,反復 n を導入した形で比較検討する場合に採用される方法であり,これは,前報で
報告したスプリットースプライト法と同じである。この方法は,筆者も学生卒論指導において,
初めて扱った解析処理である。
二因子法の配置表のモデルに関しては,スプリットープロット法と同じなので前報を参考に
してもらうとして,表 1 にスプライト法における各処理区の自由度の決定法である。
ファクター
水準
メイン処理区:A = 2
a1 a2
サブ処理区:B = 4
b1 b2 b3 b4
i = 1…….,a
j = 1…….,b
k = 1…….,n
反復:n = 3
表1
スプライト法のモデル(自由度の決定)
*
本誌紹介卒論例
自由度
n -1
反復
2
a -1
1
ファクターA
( a - 1) ( n - 1)
2
誤差A
b -1
3
ファクターB
( b - 1) ( n - 1)
6
誤差B
( a - 1) ( b - 1)
3
交 互 要 因 AB
(a-1) ( b - 1) ( n - 1)
6
誤差C
abn - 1
23
トータル
注釈:本誌紹介卒論例は,筆者にとっての卒論指導学生の一人である Fani Meza が実施した実験から取り上げたもの
で,ファクターA は 2 品種,ファクターB は 4N 水準,反復は 3 連であり,それぞれの数字を用いて計算した。
413
【農業畜産情報】
韓 国 に お け る 高 病 原 性 AI お よ び 口 蹄 疫 の 発 生 状 況
農水省 HP より
韓国において高病原性 AI および口蹄疫が継続して発生しています。畜産農家をはじめ十分な警戒をして
ください。
(参考情報)韓国農林畜産食品部公表情報/農林畜産食品部プレスリリース(2016 年 3 月 28 日 18 時 00 分付け)
高病原性 AI 及び口蹄疫防疫対策の推進状況
出典 URL:http://www.mafra.go.kr/list.jsp?&newsid=155447864&section_id=b_sec_1&pageNo=1&year=2016&listcnt
=10&board_kind=C&board_skin_id=C3&depth=1&division=B&group_id=3&menu_id=1125&reference=2&parent_
code=3&popup_yn=N&tab_yn=N(機械翻訳等に基づく仮訳)
《主な内容》
◈ 京畿道利川市の種あひる農場の予察検査の過程で,農林畜産検疫本部の精密検査の結果,高病原性
AI(H5N8)感染(3 月 26 日)
❍その農場で飼育されている種あひる 11,000 羽は 3 月 26 日に殺処分・埋却
◈ 高病原性 AI 確定後,「AI 緊急行動指針」に基づく防疫措置を実施
❍危機警報は,「家畜疾病危機管理マニュアル」に基づき「注意」の手順を維持
◈「家畜防疫審議会」を開催(3 月 26 日)し,一時移動停止命令(Standstill),搬出禁止などの高病原性 AI
の発生に伴う防疫措置案を審議
❍14 班 28 人で中央合同点検班を構成し畜産農家など 69 か所を点検
◈ 追加発生を事前に遮断するため,
「ビッグデータ基盤リスク分析」,疫学関連系列事業所属の農家におけ
る斃死畜検査などの推進
◈ 口蹄疫は,今年の1月 11 日,全羅北道金堤市での発生以降,計 20 か所で発生
❍農家の申告ではなく,事前の予察過程で 13 件確認,30,000 頭殺処分
❍忠清南道全体の豚農場及び全国脆弱地域を対象にした官民合同一斉検査を進行中であり,忠清南道の
農家 70%程度を検査し,NSP 抗体 24 件検出
❍忠清南道発生の 4 つの市・郡と隣接する 8 つの市・郡においても豚の移動時の事前検査を実施
1. 高病原性 AI の発生状況及び防疫対策
(発生状況)農林畜産食品部は,京畿道利川市の種あひる農場の予察検査の過程で,3 月 26 日,高病原性
H5N8 型鳥インフルエンザ(AI)と最終確定診断されたと明らかにした。
京畿道畜産衛生研究所が 3 月 23 日に試料を採取し,種卵検査の過程で 3 月 25 日に種卵が斃死したため,
当日に農林畜産検疫本部に精密検査を依頼し,同日,検疫本部は H5N8 型 AI ウイルスを検出,3 月 26 日に
高病原性 AI で確定診断された。
高病原性 AI と確定診断された 3 月 26 日に,その農場で飼育されている種あひる 11,000 羽の殺処分及び
埋却措置が完了した。
*500m 以内なし,3km 以内 3 農家 60,000 羽(ブロイラー22,000 羽,鶏 38,000 羽)
,3~10km 34 農家 1,223,000 羽(産
卵鶏 347,000 羽,ブロイラー312,000 羽,種鶏 408,000 羽,うずら 120,000 羽,地鶏 25,000 羽,キジ 5,000 羽,肉用
あひる 6,000 羽)
(初動防疫)3 月 25 日に H5N8AI ウイルス検出後直ちに,防疫本部の初動防疫チームを投入し,農場などの
移動を制御するとともに,検疫本部機動防疫機構及び中央疫学調査班を派遣し,移動制御警戒所の設置・運
営,殺処分作業など防疫のための技術的な助言,AI 防疫実施要領及び緊急行動指針などの教育,AI ウイル
スの侵入源を確認するための農場への出入り,出入車両,農場の状況など疫学的に関連した畜産関係者など
の疫学調査を実施した。
414
*
畜産の研究
第70巻
第5号
(2016年)
初動防疫チーム,機動防疫機構,中央疫学調査班:それぞれ 1 班 2 人で構成
(遮断防疫)3 月 26 日,高病原性 AI 感染後,「AI 緊急行動指針」に基づく防疫措置を実施しており,危機
警報は「家畜疾病危機管理マニュアル」に基づき,現行の「注意」の手順を維持するとした。
*
危機警報段階:関心(平時)→注意(発生)→警戒(伝播)→深刻(全国拡散)
申告農場を中心に防疫隊を設定し,家きん,車両などの移動を制御するとともに,全国の家きん(あひる)
移動時の家きん移動承認発行の徹底,畜産従事者の会合,イベントや集会などを控えるよう広報し,関連省
庁は,自治体からの移動制御,殺処分のための人材,抗ウイルス製剤など AI 遮断防疫のために必要な関連
支援を要求された場合に積極的に協力するよう依頼した。
*
管理地域:500m 以内,保護地域:500m~3km,予察地域:3km~10km
(家畜防疫審議会)農林畜産食品部は,3 月 26 日,「家畜防疫審議会(委員長:イ・ジュンウォン食品産業
政策室長)」を開催し,高病原性 AI の発生に伴う防疫措置案を審議したと明らかにした。
京畿道内のカモ類(マガモ等を含む),関連車両,研修会などを対象に,2016 年 3 月 27 日(日)00 時か
ら 3 月 28 日(月)12 時までの 36 時間,一時移動停止命令(Standstill)を施行
*
対象:6,427 か所(農場 115,と畜場 2,飼料工場 12,車両など 6,298)
国民の不便の最小化を図るものとし,対象地域に強力な消毒や防疫措置を実施し,その他地域の養鶏場や畜産関連の
研修会などは自発的な消毒を実施
**
京畿道のカモ類(マガモ等を含む)及び卵については 3 月 27 日から 4 月 2 日まで(1 週間)他の市・道への搬
出を禁止
*京畿道の肉用あひる農場は,京畿道のと畜場でのみと殺許可
発生農家に飼料などを供給し,子あひるの供給を受けている系列事業者に所属するすべてのあひる農家
(99 戸:全羅北道 23,全羅南道 76)について,3 月 28 日から 4 月 8 日までに斃死畜検査などを実施。
(一時移動停止措置命令の施行及び点検)円滑な実施のために,対象農場や畜産関係者等に SMS を送付し,
公告を掲載するなど,発令内容を事前に発信した。
*あひる農場,畜産関係者,畜産施設,畜産車両の所有者等に 2 回発送(53,000 件)
14 班 28 人で中央合同点検班を構成し現場に派遣,3 月 27 日 24 時時点で農家 64 か所,畜産関連施設 5 か
所について移動を一時停止し,防疫遵守事項の履行などを確認した。
*
河南のあひる農家1か所で一時移動停止命令違反書を徴求
3 月 27 日,農林畜産食品部長官は京畿道利川市役所,食品産業政策室長は安城市役所 AI 防疫対策状況室
を訪問し,一時移動停止,搬出制限実施など遮断防疫に積極的に協力してくれるよう依頼して,状況室勤務
者及び防疫業務関係者を激励した。
(今後の展望と追加防疫措置)発生原因は現在検疫本部で疫学調査中であり,発生農家の疫学関連系列事業
者所属の農家などの斃死畜検査で追加検出される可能性がある。
疫学関連系列事業者所属の農家はすべて全羅南道及び全羅北道に位置しており,全羅南道に残存したウイ
ルスが,車両の移動等により発生農場に侵入した可能性を排除することができないため,追加発生の可能性
を最小限にするために「ビッグデータに基づくリスク分析の結果(3 月 28 日)」に基づき,危険地域の消毒
の強化など遮断防疫を強化する一方で,疫学関連系列事業者の消毒,すべてのあひる農場における出荷前検
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