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展望台

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展望台
展望台
防衛産業の将来展望
昨今の防衛産業を取り巻く環境変化を踏ま
え、今、防衛産業に求められていること、それ
に対するわれわれの意気込みなどを述べたいと
思います。
われわれを取り巻く環境変化としては、科学
技術の発展に伴う装備品の技術動向の急速な変
化があります。
第一にネットワーク化の進展です。情報通信
技術の急速な発展を背景に、各種装備をネット
ワークで連接し、情報を共有することで、一元
的な指揮統制のもと、陸・海・空の装備を統合
した運用が進んでいます。第二にサイバー攻撃
への対処、宇宙空間の利用や NBC(核、生物、
化学)兵器などの新たな脅威・多様な事態への
水谷 久和
対応があります。第三にゼロカジュアルティへ
の対応が先進国を中心に求められており、精密
誘導兵器や無人機の活用により人的被害を極小
化することが趨勢となっています。こうした三
つの動向に対する一つの答えとして、ロボット
の活用や無人化が進んでおります。科学技術の
発展が新たな装備を生み出し、それを凌駕する
ための装備開発が新たな技術革新につながると
いう意味で、防衛産業の有する技術力こそが抑
止力の本質であるとも言うことができ、技術力
2
防衛技術ジャーナル April 2015
が今まで以上に重要になってきています。
般民生部門の収益が向上する中、防衛事業の相
次にわが国の防衛装備調達を巡る環境として
対的な低収益性を向上させ、防衛産業の魅力を
は、わが国の防衛予算はここ数年増勢に転じて
高めていくことも防衛産業の裾野の拡大、先進
はおりますが、長期的な正面装備予算の減少と
民生技術の取り込みのために必要と考えます。
米国からの最新の装備品導入に伴う国内の開発
海外市場については、防衛装備移転三原則で
機会の減少で、防衛生産・技術基盤は徐々に弱
は、防衛装備移転はあくまで「我が国の安全保
体化しています。わが国の防衛産業はいわゆる
障に積極的な意義がある場合」にのみ認め得る
防衛専業メーカーはほとんどなく、大手企業の
ものであるとされておりますので、企業が世界
一部門が最先端装備を開発・生産しています。
中に防衛装備を販売して回るような事態は考え
民生部門で培った基礎的な技術力の高さが高性
られません。あくまでわが国の安全保障に積極
能で経済的な防衛装備取得につながっており、
的な意義のある国際共同開発・生産に、企業と
防衛技術はこの民生技術と深く結びついている
しても協力していくというのが基本スタンスだ
ために、防衛装備予算の減少に対しても欧米の
と思っています。
ような産業再編は起こらず、個々の企業の中で
防衛産業に求められることは、いつの時代
民生技術では補えない防衛固有技術・技能の伝
も、最先端で高い経済効率性を持った、国土・
承や防衛産業からの撤退などの問題が発生して
国情に合致した装備品を提供していくことであ
います。
ると思っています。
こうした事態を踏まえ、政府は昨年6月、
「防
当社は、防衛事業の一元的遂行による技術力
衛生産・技術基盤戦略」で契約改善や研究開発
向上と迅速な意思決定を狙いに、防衛・宇宙ド
ビジョン策定などの諸施策を打ち出されました
メインを発足して、すでに1年半が経ちまし
が、防衛生産・技術基盤の向上のために重要な
た。陸・海・空の先進統合防衛システムの提案
のは、何よりも地道な研究開発の積み重ねと実
や防衛・宇宙事業としての一貫した運営など、
際のモノづくりです。企業自らの経営努力も必
着実な手応えを感じています。また新たな宇宙
要ですが、防衛装備の主な納入先は防衛省です
基本計画への対応として宇宙安全保障への取り
ので、防衛事業の透明性・独立性の向上が求め
組みを強化しています。
られる中、防衛生産・技術基盤を維持するため
海外事業としては既存事業の延長として
の固定費負担、生産が中断した場合のコスト負
SM-3blk2A 日米共同開発などに加え、政府方
担など、企業単独では解決できない課題も多い
針に従い、欧米の防衛産業と協力し新規事業を
のが現状です。
開拓し、世界最先端の装備の開発・生産に取り
契約制度改善については検討が進められてい
組んでいきたいと思います。当社としまして
ますが、企業努力や技術的先進性、リスク等を
は、最先端技術力とコスト競争力を武器に自衛
適正・公平に評価して、防衛産業の努力が価格
隊の各部隊にわが国安全保障に資する装備品を
に適切に反映される仕組みを構築頂きたいと思
提供していくととともに、国際的な装備・技術
います。防衛装備庁発足と同時に米国のような、
協力により技術を通して世界の平和・安全保障
開発から量産までライフサイクルを通じたプロ
に積極的な貢献を果たしていくことも将来ビ
ジェクト管理手法の導入が計画されています
ジョンの一つとして捉え、積極的に取り組んで
が、米国と日本では予算規模や調達の仕組みも
参ります。
大きく異なりますので米国のものを単純に移管
するのでなく、日本流にカスタマイズし、企業
の技術革新とコスト効率性を引き出せるような
(三菱重工業株式会社 ドメイン CEO
防衛・宇宙ドメイン長 取締役常務執行役員)
仕組みを構築していただきたいと思います。一
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