Comments
Description
Transcript
カオスニューロンモデルにおける結合系の同調現象
カオスニューロンモデルにおける結合系の同調現象に関する研究 教科・領域教育専攻 生活・健康系コース 馬 越 1 はじめに 顕 ある.この周期的同調現象は,化学反応系や対流 系のみならず,心臓の拍動をはじめとする生物リ 我々のまわりには,自然システムとしての脳や 生態系,人工システムとしての経済や交通システ ムなど多くのシステムが存在する.これらのシス テムを理解するためのアプローチとして,取り扱 いと現象の解析がより容易な構成要素に分解して その要素の性質を解明し,そのうえでそれら各要 素レベルでの法則を重ね合わせて,それによりシ ステム全体を再構成するという要素還元論的な研 究手法がこれまでに用いられてきた.この手法は 解の重ね合わせもまた解であるという線形理論体 系と強く結びついた考え方である.しかし,現実 のシステムは,非線形性を持つ多種,多様な要素 から構成されていたり,それら要素間には多くの 動的に変化する非線形相互作用の存在が認められ る.そのような場合,これら要素間の相互作用か ら全体の秩序が発生・創発される,と同時に各要 素はこの上位の全体的構造から逆に影響(制約) ズムなどのモデルとしての可能性が検討されてい る.これと並んで,非線形力学系ではカオスとい う現象が知られてきた.カオスとは,決定論的シ ステムにおける非周期で不規則な挙動を指し,そ の動きは初期条件の微少な差異に敏感に依存する ので,そこでの長期予測は不可能になるというも のである.この現象はこれまでに,生物,生体, 気象,社会現象などあらゆるところに豪い出され ている.そして現在,カオスの性質をもつ非線形 振動子(カオス振動子と呼ばれる)の結合系の挙 動特性が調べられ始めている.上記のリミットサ イクル振動子の場合と違ってカオスの場合は個々 の挙動が複雑なので,一般にカオス振動子が互い に同調することは難しいと思われる.しかし,幾 つかの具体的な結合系モデルにおいて,ある条件 のもとで互いが同調するカオス同調現象が観測さ れている. を受けるというような,複雑な関係性が部分と全 体の間に出現する.このような状況下で,要素還 上記のような動きを受けて本研究では,神経生 元論的なアプローチには限界があるという認識に 理学上の現象説明への寄与という点も視野に入れ, 立って,新たな手法を模索するという動きが「複 単独でカオス性をもちうるカオスニューロンを構 雑系の科学」である. 成要素とし,その結合系の挙動特性について調べ これまでに,従来の線形振動子に非線形項を付 ることにする.単一ニューロンレベルでのカオス 加して非線形振動子とし,そのような振動子を多 の存在は,神経軸索の生理学的知見をもとに構成 数結合してできる系の動的性質について活発に されたポジキンーバクスレイ(Hodgkin−Huxley) 研究がなされてきた.そして,特徴的な挙動とし 方程式の理論的考察からもほぼ定量的に裏づけ て振動子集団における周期的同調現象の存在が確 られている.つまり,脳神経系はニューロンとい 認された.これは,時間的な振動状態(リミット う「カオスダイナミクスを有したカオスデバイ サイクル)に入った非線形振動子が互いに引き込 ス」で構成された大規模・複雑システムとして捉 み合い,次第に全体が同期していくという現象で えられる必要がある.従来のマカロックーピヅヅ (McCulloch−Pitts)型の形式ニューロンモデルで 4 まとめ は,実際の生物のニューロンを単純化し過ぎて 本研究では,神経系の非線形力学的研究の新し おり,そのためにカオスの生成に寄与するファク い試みとして,単一でカオス性をもちうるカオ ターが捨て去られていると考えられるからであ スニューロンを構成要素とし,その結合系の同調 る.また,視覚をはじめとする感覚情報の処理過 現象について計算機実験を通して詳しく検討し 程や認識過程において,神経系の細胞群が同調に た.その結果,カオスニューロン結合系には,従 近い現象を示すことがわかってきている.このよ 来のリミットサイクル振動子の結合系には見られ うな状況は,具体的なニューロンモデルに基づく なかった,カオス同調の存在が確認された.それ 結合系の同調現象に関する検討の必要性を示唆す は,個々のニューロンの挙動は非周期的な不規則 るものである. 性を保持したままで,互いに引き込み合い完全に 2 論文の構成 本論文は次に示す5つの章で構成されている. 第1章 序論 第2章 カオスニューロンモデルとその結合挙 動 第3章 2結合系の同調現象の分析 第4章 連続時間差分化による定式と多結合系 の同調分析 第5章 結論と今後の課題 3 論文の概要 同調していくという現象である. また,離散時間カオスニューロンモデルの結合 系を,時間測度パラメータを用いて差分時間モデ ルとして定式化し,その場合の2結合系,相互結 合型の多結合系,および1次元1方向の多結合系 における同調・非同調現象について分析した.こ の定式化では,発展方程式内の全パラメータは翁 島測度によって連動するので,連続時間の離散化 度合に応じた結合系の挙動特性を調べることが できた.1次元1方向結合系では,結合系の同調 化に焦点を絞って具体的なモデルを構成した.結 第2章では,本研究で扱うカオスニューロンモ 合による影響の出発点となる左端点の2ニューロ デルに関して簡単に説明するとともに,単一カオ ンがまず同調し,その同調状態が信号方向(右) スニューロンの挙動および2ニューロンの結合時 へ伝わってゆくという逐次同調化の仕組みであ に受ける影響について,その基本的性質を計算機 る.計算機実験では,ランダムな初期値をもつ各 実験を通して提示する.第3章では,第2章で触 ニューロンが順次カオス同調へと引き込まれてい れた2結合系の同調現象について体系的に調べを く様子が確認できた. 進めるために,まずモデル設定とそこでの同調条 今後の課題としては,本研究で得られた結果と 件について明確にする.その上で,挙動特性の定 神経生理学上の振動現象に関する知見との接点を 量的な評価尺度を導入して計算機実験を実施し, 見いだすことが挙げられる.特に,カオス同調の 2結合系の挙動の性質の分析を行う.第4章では, 現象は決定論的な方程式系に特有なものであり, 離散時聞カオスニューロンモデルの結合系を,時 生理学上での存在の可否は興味深いところであ 間測度パラメータを用いて差分時間モデルとして る.また,1次元1方向結合系は,その構造から 定式化し,その場合の2結合系における同調・非 信号伝送システムへの応用が可能であると考えら 同調現象について分析する.さらに,相互結合型 れる.具体的には,結合系に信号源を付加し,そ の多結合系や1次元1方向の多結合系についても の信号をカオス同調状態に乗せる駆動一応答型の 検討を行う.最後に第5章では,本研究の結論と 秘匿通信の可能性が挙げられる. 今後の課題について述べる. 主任指導教官 西村 治彦 修士論文 カオスニューロンモデルにおける 結合系の同調現象に関する研究 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 教科・領域教育専攻 生活・健康系(技術)コース M99851G馬越顕 目次 3 第1章 序論 カオスニューロンモデルとその結合挙動 6 2.1 ニューラルカオスとカオスニューロンモデル 6 2.2 単一カオスニューロンの挙動 10 2.3 2結合カオスニューロンの挙動 15 2.3.1 結合効果の実験事例 15 第2章 2.3.2 分岐図による結合挙動の評価 第3章 3.1 3.2 、 23 25 2結合系の同調現象の分析 2結合系モデルの設定と評価尺度. 25 . 3.1.1 モデル設定と同調条件. 25 3.1.2 挙動特性の評価尺度 。.........。.. 9. 29 実験結果とその分析 ......。. 31 3.2.1 同調条件成立[α一(ん1一ん2)=0]の場合 31 . 37 3.2.2 同調条件不成立[α一(ん1一ん2)≠0]の場合 3.2.3 相互結合が異符号の場合..。. . . 41 連続時間差分化による定式と多結合系の同調分析 43 4.1 差分時間モデルとしての定式化 43 4.2 2結合系の挙動分析 _。..._。........ . 46 4・2・1 (i)α+ん=o(ω22=ω¢ゴ=一1)の場合.. 46 第4章 4.2.2 (h)α+ん≠0(ωIF−0.8,ω毎=一1)の場合 . 4.2.3 (ii)α+ん≠0(砺=一1,ω乞ゴ=一〇.4)の場合. 1 51 54 4.3 相互結合系の挙動分析... . 57 4.3.1 (i)α+ん=0(鞠二で吻=一1)の場合. 58 4.3.2 (i)α+ん≠0(ω¢1=一1,砺ゴ=一〇.4)の場合 61 4.4 1次元1方向結合系の挙動分析 .... 64 4.4.1 逐次同調化の機構.. 64 4.4.2 同調条件について........。.. 66 第5章 結論と今後の課題 73 謝 辞 75 付 録 76 A. 差分時間モデルでの単一ニューロン挙動例........ 76 B. 差分時間モデル[2結合系(i)]の逐次更新の場合の挙動. 77 C. 外部制御による同調化としての解釈........ 78 79 参考文献 2 第1章 序論 我々のまわりには,自然システムとしての脳や生態系,人工システムとしての 経済や交通システムなど多くのシステムが存在する.これらのシステムを理解す るためのアプローチとして,取り扱いと現象の解析がより容易な構成要素に分解 してその要素の性質を解明し,そのうえでそれら各要素レベルでの法則を重ね合 わせて,それによりシステム全体を再構成するという要素還元論的な研究手法が これまでに用いられてきた.この手法は解の重ね合わせもまた解であるという線 形理論体系と強く結びついた考え方である.しかし,現実のシステムは,非線形 性を持つ多種,多様な要素から構成されていたり,それら要素法には多くの動的 に変化する非線形相互作用の存在が認められる.そのような場合,これら要素間 の相互作用から全体の秩序が発生・創発される,と同時に各要素はこの上位の全体 的構造から逆に影響(制約)を受けるというような,複雑な関係性が部分と全体 の間に出現する.このような状況下で,要素還元論的なアプローチには限界があ るという認識に立って,新たな手法を模索するという動きが「複雑系の科学」で ある[1][2]. これまでに,従来の線形振動子に非線形項を付加して非線形振動子とし,その ような振動子を多数結合してできる系の動的性質について活発に研究がなされて きた.そして,特徴的な挙動として振動子集団における周期的同調現象の存在が 確認された.これは,時間的な振動状態(リミットサイクル)に入った非線形振 動子が互いに引き込み合い,次第に全体が同期していくという現象である.この 周期的同調現象は,化学反応系や対流系のみならず,心臓の拍動をはじめとする 生物リズムなどのモデルとしての可能性が検討されている[3]. これと並んで,非線形力学系ではカオスという現象が知られてきた.カオスと は,決定論的システムにおける非周期で不規則な挙動を指し,その動きは初期条 3 件の微少な差異に敏感に依存するので,そこでの長期予測は不可能になるという ものである.この現象はこれまでに,生物,生体,気象,社会現象などあらゆると ころに重い出されている[4].そして現在,カオスの性質をもつ非線形振動子(カ オス振動子と呼ばれる)の結合系の挙動特性が調べられ始めている.上記のリミヅ トサイクル振動子の場合と違ってカオスの場合は個々の挙動が複雑なので,一般 にカオス振動子が互いに同調することは難しいと思われる.しかし,幾つかの具 体的な結合系モデルにおいて,ある条件のもとで互いが同調するカオス同調現象 が観測されている[1]. 上記のような動きを受けて本研究では,神経生理学上の現象説明への寄与とい う点も視野に入れ,単独でカオス性をもちうるカオスニューロンを構成要素とし, その結合系の挙動特性について調べることにする同[6][7].単一ニューロンレベル でのカオスの存在は,神経軸索の生理学的知見をもとに構成されたポジキンーバ クスレイ(Hodgkin−Huxley)方程式の理論的考察[8]からもほぼ定量的に裏づけら れている.つまり,脳神経系はニューロンという「カオスダイナミクスを有したカ オスデバイス」で構成された大規模・複雑システムとして捉えられる必要がある. 従来のマカロヅクーピッツ(McCulloch−Pitts)型の形式ニューロンモデルでは,実 際の生物のニューロンを単純化し過ぎており,そのためにカオスの生成に寄与す るファクターが捨て去られていると考えられるからである.また,視覚をはじめ とする感覚情報の処理過程や認識過程において,神経系の細胞群が同調に近い現 象を示すことがわかってきている.このような状況は,具体的なニューロンモデ ルに基づく結合系の同調現象に関する検討の必要性を示唆するものである. 以下,第2章では,本研究で扱うカオスニューロンモデルに関して簡単に説明す るとともに,単一カオスニューロンの挙動および2ニューロンの結合時に受ける 影響について,その基本的性質を計算:機実験を通して提示する.第3章では,第 2章で触れた2結合系の同調現象について体系的に調べを進めるために,まずモ デル設定とそこでの同調条件について明確にする.その上で,挙動特性の定量的 な評価尺度を導入して計算機実験を実施し,2結合系の挙動の性質の分析を行う. 第4章では,離散時間カオスニューロンモデルの結合系を,時間測度パラメータ 4 を用いて差分時間モデルとして定式化し,その場合の2結合系における同調・非 同調現象について分析する.さらに,相互結合型の多結合系や1次元1方向の多 結合系についても検討を行う.最後に第5章では,本研究の結論と今後の課題に ついて述べる. 5 第2章 カオスニューロンモデルとそ の結合挙動 ここでは,本研究で扱うカオスニューロンモデルに関して簡単に説明するとと もに,単一カオスニューロンの挙動および2ニューロンの結合時に受ける影響に ついて,その基本的性質を計算機実験を通して提示する. 2.1『ニューラルカオスとカオスニューロンモデル 現実の脳神経系から得られるデータの時系列解析を通して,カオスの存在が数 多く観測されている[9].しかも,イオンチャネル,イソアワモチやヤリイカの巨 大神経,ラットの自己刺激時の海馬錐体細胞の活動,ウサギの丁丁脳波,ヒトの 様々な状態での脳波など,神経系から取り出された神経細胞一本の電気的応答か ら神経回路網の集合体である脳全体の活動状態まで,いくつかの階層レベルで確 認されている.これら神経系に現れるカオスは総称してニューラルカオスと呼ば れている[10]. 図2.1は実際の神経細胞(ニューロン)の概略を図示したものである.個々の神 経細胞は,樹状突起を経て多くの神経細胞からの信号を受け取り,その信号に反 応した細胞体から発せられる電気的信号(インパルス)が軸索を経て神経終末か ら他の細胞へ送信される構造となっている.現在,この単一ニューロンレベルで のカオスの存在は,神経軸索の生理学的知見をもとに構成されたポジキンーバク スレイ(Hodgkin−Huxley)方程式の理論的考察[8]からもほぼ定量的に裏づけられ ている.つまり,脳神経系はニューロンという「カオスダイナミクスを有したカ オスデバイス」で構成された大規模・複雑システムとして捉えられる必要がある. 従来のマカロックーピッツ(McCulloch−Pitts)型の形式ニューロンモデルでは,実 6 際の生物のニューロンを単純化し過ぎており,そのためにカオスの生成に寄与す るファクターが捨て去られていると考えられるからである。 一←イシナプス Cンパルス 止一JL ○ 細胞体 樹状突起 軸索 神経終末 図2.1神経細胞(ニューロン)の基本構成 合原ら[11][12][13]はこのような状況の中で,カオスを含む実際のニューロン の応答性を記述できる比較的単純なモデルとしてカオスニューロンモデル(以降, カオスニューロンと呼ぶ)を提案した.このカオスニューロンの関係式は,実際の ニューロンにみられる不応性効果(ニューロンの発火(興奮)状態が続くと,それに 応じてニューロンが発火(興奮)しにくくなる性質)とアナログ的な入出力特性,お よび時間に対する履歴性効果を考慮し, め ω(四十1)=!(・(孟)一αΣ翫(オー・)一θ) Tコ0 で与えられる .ただし, 雌) 8(孟) :時刻孟におけるニューロンの状態値(0≦ω≦1) :時刻オにおける入力刺激の大きさ α :不応性項のスケーリング・パラメータ(α≧0) ん :不応性の時間減衰定数:履歴性パラメータ(0<κ<1) θ :しきい値 7 (2.1) である.また,入出力関数の!は アω一、+i.,β (2功 で定義される.この関数は図2.2に示すようにS字に近い(sigmoid)形をしており, εはその傾きのパラメータである.このとき(2.1)式の∬は[一1,+1]の連続値をと ることになる・ε→0の極限では(2.2)式は (2.3) !ω = 5オepω となる.ここで,5gπは符号関数 卿ω一{ず1il:1雅; である.このときニューロンの状態値∬は0,1の離散値となる. f(y) f(y) 1 1 \ε→大 0.5 0.5 一一一一皿 一一一一一一一一 『『一触 一一一一レ 一 一一一一一一一 一一一一}一 ε→0の極限 ε→小 y 0 0 図2.2ニューロンの入出力関数八の 時間とともに指数関数的に減衰(鳶の7乗で)しながらニューロン状態値∬が重 ね合わされる形,Σ1=o解ω(孟一7)での履歴効果の記述法は,南雲一佐藤の神経モ デルにおいて最初に導入されたものである.そして,この性質が(2.1)式の応答特 性にカオスが出現することを許容することになる. (2.1)式右辺の関数∫の括弧内に対して オ 雛十1)=5ω一αΣ翫(孟一丁)一θ γ=0 8 (2.4) y とおくと,5(オ)が一定であるとき,(2.1)式は ッ(孟+1)=願孟)一α!(ッ(孟))+α (2.5) ∬(オ十1)= !(ツ(f十1)) (2,6) の関係式に変形できる.ただし,α=(5一θ)(1一紛である.(2.5)式の〃に対する 発展方程式は,廊+1)の決定に妖0)∼∬(のの全情報を要する∬に対する(2.1)式 と比較して,雛+1)の決定に1つ前の時刻のッωのみで済むようになっている. そこで,本論文におけるシミュレーションでは(2.5)と(2.6)式を用いることにす る.なお,ニューロンの状態値(出力値)∬に対してこのッのことを以後,ニュー ロンの内部状態と呼ぶことにする. 9 2.2 単一カオスニューロンの挙動 (2.5),(2.6)式に従うカオスニューロンにはん,α,α,εの4つのパラメータが存 在する.そこで,これらの値をん=0.7,α=1.0,α=0.39,ε=・0.01と設定し,オ=0 での初期値g(0)=0.2から時間発展させた後のb2000∼2200における内部状態 yの様子を時系列表示したのが図2.3である.時系列変化の構造としては,全体的 には類似のパターンが繰り返し現れているものの,そこに周期性は存在せず非周 期的なゆらぎを保持している. k=0.7,α=1.0,a=0.39,ε=0.01 1 yo 一1 2000 2100 2200 t 図2.3単一カオスニューロンの内部状態値の時系列変化(非周期挙動の例) また,同様に鳶=0.7,α=1.0,α=0。50,ε=0.01の場合の内部状態ッの経時変化 を表示したものが図2.4である.α値の設定が違うだけで,時系列変化としては2 値を振動する周期2の完全な周期挙動になっているのがわかる.この他にも,カ オスニューロンでは,パラメータ設定を変更することにより,複雑な非周期変化 から単純な周期変化,および平衡安定収束まで様々な挙動が現れることが確認さ れている.そして,複雑な非周期変化の多くがカオス性を有している(カオスか どうかの厳密な確認は通常,第3章で述べるリアプノブ指数を用いて行われる.). 10 k=0.7,α=tO,a=0.50,ε=0.01 1 yo 一1 2000 2100 2200 t 図2。4単一カオスニューロンの内部状態値の時系列変化(2周期挙動の例) パラメータαの違いがカオスニューロンの挙動に与える影響を図2.3と図2.4の ように1つ1つ直接比較するのではなく,αに対する全体的な様相を把握する方法 として分岐図の作成が有効である.それについて具体的に説明すると,まず図2.5 の上段の経時変化のデータ(図2.3と同じもの)200点(・印)に対して,中断を 経て下段のように時間軸の幅を縮めつづけていくと,内部状態gの200点の経時 データは垂直線上の領域に重ね打ちされた状態になる.次に,同様の操作を,異 なる各α値のときの経時データに対して行ない,αの値を横軸にとってその結果全 体をα依存性として示したのが分岐図となる. 図2.6は,ん=0.7,α=1.0,ε=0.01の条件の下でカオスニューロン挙動のαに 対する分岐図を求めたものである.経時データとしては各αともにオ=2000∼2200 の200データである.非周期(カオス)挙動の場合にはデータ点は互いに同じ値 をとらない(すなわち,重ならない)ので垂直線分上を埋める形になり,周期挙 動の場合には同じ値を繰り返す(すなわち,重なる)ので,周期分の数の点だけ の出現になる.先の図2.3の場合のαニ0.39付近では非周期性(カオス性)の領 域が,先の図2.4のα=0.50の前後では2周期振動の領域がそれぞれ確認できる. 11 さらに,α=0.28付近での3周期振動をはじめ,α値の変化に対してカオスニュー ロンの挙動は大きく変化することがわかる. 12 に=0.7α=1.Oa=0.39ε=α01 1 >、0 −12000. l ■ t @ 2100 // ゆゆ ,盟00 」口●P 圏 ,ρ ,φ コ ゆ ・ ρ’ ・ o” ロ グ ’ リリ 1 ノ 〉、0 一杢000 2100/2200 ロ ジ l t ,/’ ’ ψ 置 輻 ’ ’ 巳 ,’ ■ ,o . ρ’ ’ ’ 1’’/ ロ チ ロ ゆ 三1三 〉、0鉾.. ∴て・ 滋 一1 t 図2.5分岐図作成のための時系列データの重ね打ち表示の概念図 13 k=0.7,α=1.0,ε=0.01 1 墨 ピ 蓄 華 5 2’ 隆 盤 yO } .裂 … 5 ・鞭 ’蓬』 a値の刻み幅=1/512 一1 0 1 a 図2.6カオスニューロンのaに対する分岐図 (経時データォ=2000∼2200に対する) 14 2.3 2結合カオスニューロンの挙動 2.2節では,単独のカオスニューロンの挙動について説明した.次章以降でこの カオスニューロンの結合系の同調・非同調現象について研究を進めるに当たり,こ こでは,2つのカオスニューロンが互いに結合された場合の挙動への影響とその 基本的性質について調べることにする. 具体的には,2つのカオスニューロン#1,#2間の結合項として相手のニュー ロン状態値と自己のニューロン状態値との差,∬2(の一∬1(オ)=!(〃2(オ))一ア(ッ1(オ)) および∬1(の一層2(孟)=!(ッ1(切一!(〃2(孟))を採用し,(2.5)式の単独の場合の発展 方程式を拡張すると ㌢・(二十1)一掬・(オ)一α!(ツ・(オ))+・+9・(!(〃・(オ))一ノ(ッ・(孟)))(2・7) 〃・(診十1)一斗・(オ)一αノ(〃・(オ))+・+9・(!(〃・(オ))イ(〃・(オ)))(2・8) のようになる.ここで,g1, g2は結合係数である.また,二つのニューロンは同 一とし,パラメータん,α,α,εは互いに共通であるとする. 2.3.1 結合効果の実験事例 シミュレーションでは,κ=0.7,α=1.0,ε=0.01,α=0.39とし,初期段階では カオスニューロン#1と#2を無結合で互いに独立に時間発展させ,オ=1000以降に 結合をスイッチ・オンするようにした.図2.7に示すように,無結合時(g1=g2=0) の単独ニューロン挙動は図2.3と同様の典型的な非周期(カオス性)状態にあり, #1と#2で初期値が異なる(y1(0)=0.2,g2(0)=一〇.3)ために両ニューロンの 内部状態差(ッ1(オ)一ッ2(オ)〉は最下段に示すようにその変化に全く規則性が見られな い.次に,図2.8は,g1=g2=一〇.1の値でオ=1000以降に結合をスイッチ・オン した場合の経時変化を見たものである.結合前には不規則であった#1,#2の それぞれの動きに,結合後は次第に規則性が現れ周期的な動きに転じている.2 ニューロン差(〃1一〃2)から周期8に近いことがわかる.このときの2ニューロン 値差の経時変化をさらに長時間にわたりトレースしたものが図2.9である.長時間 を経過しても周期8に近い動きは非周期的なゆらぎを保持し続けており,しかも 15 その状態が時間的に一様のものではなく,オ=1700および2000前後で激しく変動 する間欠性の現象も生じている.図2.10は,結合後周期8に近い動きを示す#1, #2の動きが互いに半周期分(45卸時間)ずれていることに着目して,その分を シフトした形の2ニューロン値差(〃1(の一〃2¢一4))を示したものである.このよ うに時間のずれに配慮することで,結合後の両者間のゆらぎを保持した周期的挙 動および時折生じる大きな乱れの存在がよくわかる.そして,今の場合,図2.11 に示すようにこのような状況が消失することなく維持され続けることが確認され ている. g1=g2=一〇.1に代わって結合係数をg1=g2=一〇.4とし,その結合をスイヅ チ・オンする前後にわたる経時変化を見たのが図2.12である.2ニューロン値差 (g一g2)は,結合のスイッチ・オン後に急速にゼロに近づき,#1と#2の2ニュー ロンの動きは次第に引き込み合い完全に同調していくことがわかる.しかも,それ ぞれのニューロンの挙動は,いずれかの値に収束したり,振動状態になるのではな く,非周期的な挙動を保持したままである.つまり,このときの結合挙動としては, 互いのニューロンはカオス同調の状態を示唆している.図2.12の2ニューロン値 上(面一g2)をさらに長時間トレースしたものが図2.13であるが,この結果から今 の例の場合は,一度完全に同調した後はg1=g2=一〇.1の場合のように間欠的に, 再び同調を崩すことは起こっていない.このことは発展方程式の上からも理解す ることができる.両者が完全に同調すれば馳一ッ2=0,すなわち!(ッ1)一!(〃2)ニ0 であるから,このときには(2.7),(2.8)式において結合項が0になる.そして,こ の時点からニューロン#1と#2は同じ初期値で単独に同じ方程式に従う軌道を もつことになるわけである. 16 無結合状態(g1=g2=0) k=0.7α=1.Oa=0.39 1 ε=0.01 0 メ ー1 900 1100 1000 t 1 y2(0)=一〇.3 0 弐 一1 900 1000 1100 t 1 弐 Lo > 一1 900 t 1000 1100 図2.7無結合(g1=g2=0)での2ニューロン値とその差の経時変化 17 91=92・=一〇.1 k=0.7α=1.Oa=039ε=0.01 1 ∫0 一1 900 1000 1100 1000 1100 1000 1100 t 1 y1(0)=一〇.3 弐0 一1 900 t 1 弐 10 玄 一1 900 tトーレ結合 図2.8結合前後の2ニューロン値とその差の経時変化 ¢=1000で結合:g1=g2=一〇.1の場合) 18 91=92=一〇.1 1 ヂ・ ∫ 一1 1000 2000 t 図2.9図2.8の2ニューロン値差の長時間表示¢=500∼2500) 91=92=一〇.1 1 守 凌 ⊥o ま 一1 1000 2000 t 図2.10時間ずれを考慮した2ニューロン値差の長時間表示 19 91=92=一〇」 1 1 守 ㌔ や0 『L1 0 t 5000 t 10000 t 15000 t 20000 t 25000 1 〒 忌 や0 『L1 5000 1 〒 ㌔ ヤ0 『L1 10000 1 〒 ㌔ 〒0 『L1 15000 _1 芝 羊。 二 一1 20000 _1 芝 羊。 二 一1 25000 図2.11 t 30000 図2.10のさらなる長時間表示(f=30000まで) 20 91=92=一〇.4 k=0.7α=1.Oa=0.39ε=0.01 1 ∫0 一1 900 1000 1100 1000 1100 t 1 y1(0)=一〇.3 弐0 一1 900 t 1 弐 10 ∫ 一1 1 900 1000 t ト→レ結合 図2.12結合前後の2ニューロン値とその差の経時変化 ¢=1000で結合:g1=g2=一〇.4の場合) 21 1100 91=92=一〇.4 1 Il・ 会 10 玄 111/ ’1 一1 1000 2000 t 図2.13図2。12の2ニューロン値差の長時間表示¢=500∼2500) 22 2.3.2 分岐図による結合挙動の評価 2.3.1節では特定の結合係数の事例に注目して,その性質を分析したが,ここで は結合係数値の広い範囲で評価を行うために2.2節で述べた分岐図を導入する.図 2.14は,結合係数がg1=g2(=g)の条件で結合した場合の,結合強度gに対する2 ニューロン値差(ッーッ2)の分岐図である.この図におけるg=g1=g2=一〇.1の あたりでは空白のバンド中に黒い歯状の部分が8箇所現れており,図2.8の経時変 化における2ニューロン値差の挙動が周期8に近く,多少のゆらぎを保持している とした状況が反映されている.また同様に,図2.12のときのg=g1=g2=一〇.4 のあたりでは,2ニューロン値差は0となっており,完全に同調していることがわ かる.そして,結合強度gの変化により,2ニューロン値差は様々な状態をとるこ とが全体的に把握できる. さらに,結合係数の関係がg1=一g2(=g)の場合の結合強度gに対する分岐図 を図2.15に示す.このときにも,2ニューロン値差(ツール2)は多様な依存性を示 すものの,ッ1−g2がゼロとなる完全同調の領域は見られない. 23 t=2000∼2200 k=0.7α=1.Oa=0.39ε=0.01 弐 Lo 》 一1 一〇.4 −0.2 0 0,2 9(=91=92) 図2.142ニューロン日差の結合強度gに対する分岐図(g1ニg2=gの場合) k=0.7α=1.Oa=0.39ε=0.01 t=2000∼2200 裂 Lo > 一1 茄 g(=a=一92) 0石 図2。152ニューロン値差の結合強度gに対する分岐図(g1=一g2=gの場合) 24 第3章 2結合系の同調現象の分析 ここでは,前章で触れた2結合系の同調現象について体系的に調べを進めるた めに,まずモデル設定とそこでの同調条件について明確にする.その上で,挙動 特性の定量的な評価尺度を導入して計算機実験:を実施し,2結合系の挙動の性質 の分析を行う. 3.1 2結合系モデルの設定と評価尺度 3.1.1 モデル設定と同調条件 前章では,入出力関数は(2.2)式で定義されたsigmoid関数を用い,ニューロン 状態∬には発火時には1,非発火時には0の[0,1]を対応させてきた.しかしなが ら,本論文の以降では,発火時と非発火時のニューロン状態の数理モデル上の対 称性に配慮し,発火時には1,非発火時には一1になるように新しいニューロン状 態Xを X=2∬一1 (3。1) に変更することにする.このとき,新しい入出力関数F@)は X≡17(〃) = 2∬一1 == 2ア(㌢)一1 = オαη’ん(9/2ε) で与えられる.この関係を図示すると図3.1のようになる. 25 (3.2) f(y) F(y) 1 一 @ 一 一 『 一 一 @ 0.5 o 一 y 一 一 一 一 一 一 一 一 一 _ 1 曹 } 曽 一 一 一 一 曽 _ 一 0 一 y 一 一 一 一 一 一 @ 一 一 一 一 一 朧 喋 一 一 『 } 一 一 一 一 一 一 ㎜ 凶 司 図3.1ω:[0,1]からX:卜1,1]へのニューロン状態値の変更 次に,この変更でカオスニューロンの発展方程式(2.5)がどのようになるかを見 ることにする.(3.1)式から Fω+1 アω=2 (3.3) であるので,これを(2.5)式に代入すると, y(孟十1)=切(孟)一α!(シ(オ))+α F(〃(の)十1 =吻(オ)一α 十α 2 一吻(孟)一号聯))一号+・ = ん雪(オ)一α’F②(孟))十α’ (3.4) となる.ただし,α’=α/2,α’=一α/2+αである.そこで,新たにα’をα,α’を αと再定義すると, 〃(オ十1)=1吻(孟)一αF(ッ(オ))十α X(の=F(〃(の) (3,5) (3.6) となり,(2.5),(2.6)式と同じ形の発展方程式がニューロン状態Xに対して成立する. 2結合系としては,#1と#2ニューロンの自己結合の係数をともにん1,相互 結合の係数をともにん2とおくと,結合系の発展方程式は次のようになる. g1(オ十1)=1吻1(オ)一αX1(オ)十α十ん1×1(の十ん2×2(孟) (3.7) 〃2(孟十1)=鞠2(オ)一αX2(オ)+α+ん、X2(孟)+ん2X、(オ) 26 (3.8) 一α 凾Q(t) y1(t) @ X1(t) hl h2 h2 h1 一α X2(t) 図3.2カオスニューロンの2結合系モデル 図3.2は(3.7),(3.8)式に基づいて,カオスニューロンの2結合系のモデルを図示 したものである.結合係数ん1,ん2において,ん1が正の時には自己興奮,負の時に は自己抑制として作用し,ん2が正の時には相互興奮,負の時には相互抑制として 作用することになる.2.3節で扱った(2.7),(2.8)式はん2=一ん1=んの時の自己抑 制・相互興奮結合(ん>0のとき)または自己興奮・相互抑制結合(んく0のとき)に 相当している. 2結合系の引き込み現象を解析する準備として,同調条件についてできるだけ 明確にしておく必要がある.そこで,(3.7)式と(3.8)式の差,すなわち2ニューロ ン値差 〃1(オ十1)一92¢十1)=16(〃1¢)一一ツ2(の)一(α一(ん1一ん2))(X1¢)一X2(の) (3.9) を取り上げる.このとき,右辺第2項の一(α一(ん一ん2))(X1(の一X2ω)の存在に 注目すると,以下の(i),(i)の場合への類別が可能となる. (i)この右辺第2項がゼロとなる場合,すなわちα一(ん一ん2)=oの場合. このとき,(3.9)式は ツ・(オ十1)一〃2(オ+1)=砲、(舌)一92(オ)) (3.10) となり,時刻オの時の2ニューロン値差のた倍が,時刻オ+1の時の2ニューロン 値差となる.つまり,時間発展するに従って,2ニューロン値差はんの級数倍にな 27 ることを意味し,んがんく1のときには時問発展とともに2ニューロン値差が指数 関数的に0に収束する.よって,完全同調のための十分条件となっている. (n)右辺第2項がゼロにならない場合,すなわちα一(ん一ん2)≠0の場合. このときには,(3.9)式の右辺第2項の寄与の程度によって,2ニューロン値差 の変化が左右されることになる.パラメータの設定に応じて完全同調に至るかど うかが決まってくる. 28 3.1.2 挙動特性の評価尺度 これまでにも明らかなように,2結合系が同調状態にあるかどうかの識別には, 2ニューロン値差を評価するのが有効である.さらに,その状態がカオス性を有 するかどうかを定量的に評価するためにはりアプノブ指数[14][15]の導入が必要 になる・この指標は,カオスの特徴である初期値敏感性(決定論的に発展する系に 対する初期条件の微少な差異が,時間とともに指数関数的に拡大される性質)を検 出できる.図3.3は微少な差異の存在が基準とする軌道のその後にどのような変 化を及ぼす可能性があるかを図示したものである.時刻オ。において,対象とする 系の発展方程式の基準軌道ッ(オ)に微少な差異吻[剣を加える.時間発展にともなっ て,差異が減少し基準軌道に戻る場合には〃(オ)は平衡安定であり,差異が増加し 基準軌道から大きく離れていく場合には差異敏感なカオス性を持つ.そして,差 異の増減がない場合には周期性を持つ. y(to)+d [to】 饗こ・_ノ/ \基準軌道 y(to) t to 図3.3微少差異によるその後の軌道変化の概念図 この性質を定式化するために,微少差異吻圏の時刻tでの発展形をパラメータλ を用いて ’ 吻国=吻圖θλ(古一孟0) 29 (3.11) の形に表現すると,時間発展(f→大)とともに,λ<0のとき吻→0(平衡安定 性),λ>0のとき吻→増大(カオス性),そしてλ=0のとき吻=吻[姻(周期性 )となり,λの正負によって系の挙動の特性が評価できる.このパラメータλがり アプノブ指数と呼ばれる評価尺度であり,(3.11)式をλに対して解くと λ「≡孟。1・鵬 (3・2) が得られる.系が離散時間系の場合はオ=オ。+ηと記述できるので λ一章1・嶋1鴇} (3・3) となる. カオスニューロンモデルでの実際の計算手順としては,#1ニューロンの内部 状態〃1(オ)に対してg1(オ)+吻[0]を考え,それを(3.7)式に代入すると ッi(オ十1)=砲、(オ)+吻[0])一αF(〃、(の+吻[0])+α 十ん1F(ッ1(オ)十(1ッ[0])十ん2F(ッ2(孟)十dg[OD 17(g十(12ノ)=孟αγzん((2ノ十4g)/2ε) (3.14) (3.15) となり,15卿時間後@=1)の吻[1]=1〃i(オ+1)一㌢1¢+1)1が得られる.計算 機実験では,この13オepごとの評価を経時的に繰り返し丁回行い,その平均から (3.13)式に相当するリアプノブ指数 λ一÷書b鵜 (&・6) を求める.なお,吻[0]=10−8とした. 30 3.2 実験結果とその分析 シミュレーションでは,んニ0.7,α=0.1,ε=0.01とし,(3.7),(3.8)式において, カオスニューロン#1と#2を互いに初めから結合した状態で時間発展させた. 3.2.1 同調条件成立[α《ん1一ん2)=0]の場合 3.1.1節で述べた同調条件が成立する場合の例として,α=0,ん1=ん2(=ん)の ときの挙動について調べることにする.α=0,ん1=ん2ニ0.1とし,#1と#2の 初期値を〃1(0)=0.8,ッ2(0)=一〇.6で時間発展させた結果を図3.4に示す.上図 によると個々のニューロンは,時間発展とともに初期値で与えられた差が次第に なくなり,ともに一定の値に収束している.下の図からニューロンの差が級数的 にゼロに近づいていることがわかる.ニューロンの挙動としては静止(平衡安定) するので,狭い意味では同調状態とは呼ばない.次に,α=0,ん1=ん2ニー0.4の 場合を図3.5に示す.この場合は,個々のニューロンは周期2の振動状態に落ち着 いていく.その際,両者の差は級数的になくなり同調していくことがわかる.さ らに,α=0,ん1=ん2=一〇.25の場合を図3.6に示す.この場合も下の図からわ かるように,2ニューロン階差は級数的に減少する.しかし,両ニューロンは,上 記の2例のように一定値に収束したり振動状態に落ち着いたりせず,不規則で非 同期的な挙動を示すことがわかる.つまり,この場合にはカオスニューロンの2 結合系は,カオス同調を起こしている. 以上のような結果に対して,その同調・非同調および動的状態の特性を全体的 に把握できるように結合強度h依存性として表したのが図3.7である.上段の図 はニューロン#1の内部状態値影1④に対する時刻孟=2000∼2200の200データを 用いた分岐図である.そのときのッ1に対するリアプノブ指数λが中段に示してあ る.そして,2ニューロン値差の孟=2000∼2200の間の200データを用いた分岐 図が下段の図である.ここでの,ん=0.1,一〇.4,一〇25の場合がそれぞれ図3.4, 図3.5,図3.6の結果と対応している.そして,ん=一〇.25のカオス同調の場合 のリアプノブ指数はλ=0.6>0になっている.また,3.1.1節で述べた同調条件 31 α一 iん一ん2)=0がどの場合にも成立しているので,2ニューロン値差(跳一〃2) は常にゼロに収束し,んの値に関係なく完全に同調することが実験的にも確認で きた. 32 1 α=Oh=h=0.1 k=0.7a=0」 ε=0.01 y1/ / ! 〉・0 ノ / 1y2 y1(0)=0.8 y2(0)=一〇.6 一1 0 t 50 1 弐 10 ∫ 一1 0 t 50 図3.4(3.7),(3.8)式による2結合系の時間発展(α=0,ん1=ん2=0.1の場合) 33 α=Oh=h=一〇.4 k=0.7a=0.1 ε=0.01 1 y1 詑 ll 〉・0 !桝 !y2冒1 甘 y1(0)=0.8 y2(0)=一〇.6 一1 0 t 50 1 弐 10 玄 一1 0 t 50 図3.5(3.7),(3.8)式による2結合系の時間発展(α=0,ん1=ん2=一〇.4の場合) 34 α=Oh=h=一〇.25 k=0.7a=0.1 ε=0.01 1 y1 ム lM 〉・0 Aハ!1 ノ ほロ 1y2 ぞ セ y1(0)=0.8 y2(0)=一〇.6 一1 0 t 50 1 弐 10 ∫ 一1 0 t 50 図3.6(3.7),(3.8)式による2結合系の時間発展(α=0,んFん2=一〇.25の場合) 35 α=Oh=h=h 1 k=0.7a=0.1 ε=0.01 .;÷i i 玄0 t=2000∼2200 −1 一〇.5 0 0.5 0 0.5 2 ぺ0 −2 一〇.5 2 弐 10 玄 y1(0)=0.8 y2(0)=一〇.6 一2 一〇.5 h 0 0.5 図3.72結合系の状態分岐図とリアプノブ手直数(α三・,ん、一ん、一んの場合) 36 3.22 同調条件不成立[α一(ん1一ん2)≠0]の場合 この場合の例としてα=0.5,ん1=一ん2=一んと設定したときの図3.7に対応す る結果を図3.8に示す.下段の図からわかるように,2ニューロン値差は一様にゼ ロに収束するとは限らず,結合強度ん次第で様々な結果が見受けられる.例えば, ん=0の近傍ではλ>0で(〃1一〃2)が非収束の領域が,また,ん=0.25の近傍で はλ>0で(〃一〃2)がゼロ収束の領域が存在する.前者の領域の具体例として, 結合強度をん=一〇.05としたときの時系列表示を図3.9に示す.この結果らわか るように,各ニューロンは時間発展とともにそれぞれのカオス挙動を続けており, 両者が同調状態に入っていく様子はない.続いて,後者の領:域の例として結合強 度をん=一〇.2としたときには,図3.10に示すように,各ニューロンはカオス挙 動を維持しながらも徐々に同調状態に入っていくのが確認できる. α=0.5,ん1=一ん2=一んという関係の下でのこの後者の例の場合には,α一(ん一 ん2)=0.5+2ん=0.5−0.4=0.1≠0であり,同調条件を満足していない.しかし ながら,同調条件[α一(ん1一ん2)=0]は3.1.1節でも指摘したように十分条件であ り,この条件が成立しなくても同調が生じる可能性は排除できない.特に今の場 合,0.5+2ん=0すなわち,ん=一〇.25においてだけ同調条件が成立するという事 情があるので,その周辺の領域で,いわゆる引き込みの現象によってカオス同調 が出現しているものと解釈される. 37 α=0.5h=一h=一h 1 k=0.7a=0.1ε=0.01 玄0 .t=2000∼2200 −1 一〇.5 0 0.5 0 0.5 2 ぺ:0 −2 一〇.5 2 \ r:裂 10 ヌ y1(0)=0.8 y2(0)=一〇.6 一2 一〇.5 h 0 0.5 図3.82結合系の状態分岐図とリアプノブ指数(α篇0,ん1=一ん2=一んの場合) 38 α=0.5h=一h=0.05 k=0.7a=0.1ε=0.01 1 yl lll ll 、{ 三 ロ 5卍 〉・0 /{l ほ 向向 @ 1’ 1…llll li ii{ { y2 y1(0)=0.8 y2(0)=一〇.6 一1 0 100 200 1 弐 10 玄 一1 0 100 200 t 図3.9(3.7),(3.8)式による2結合系の時間発展(α蕊0.5,ん1=一ん2=0.05の場合) 39 α=0.5h=一h=0.2 k=0.7a=0.1ε=0.01 1 y1 〉、0 111 1i y2 y1(0)=0.8 一1 0 100 y2(0)=一〇.6 200 1 弐 10 ∫ 一1 0 100 200 t 図3.10(3.7),(3.8)式による2結合系の時間発展(α=0.5,ん1=一ん2=0.2の場合) 40 3.2.3 相互結合が異符号の場合 ここまでは(3.7),(3.8)式に従う2結合系の性質について検討してきたが,その 場合の相互結合の係数はともにん2という同符号の設定であった.そこで,相互結 合が異符号の 〃1(か十1)=んg1(オ)一αX1(オ)十α十ん1×1(オ)一ん2×2(オ) 〃2(オ十1)=栂2(オ)一αX2(オ)十α十ん1×2(孟)十ん2×1(舌) (3.17) (3.18) の場合についても調べておく.図3.11はん=0.1,α=0,ε瓢0.01とし,α=0, ん1=ん2=んの条件でんに対する依存性を調べたものである.結果からは,λ>0 でッ1一〃2がゼロ収束というカオス同調の領域は得られなかった.また,各種のパ ラメータ値を変更して同様の検討を行ったが,この異符号の相互結合の場合には カオス同調の存在は認められなかった. なお,(3.17),(3.18)式においてん=α=α=0の場合の従来型の結合振動子の性 質については,Tonnelierら[16]によって詳しく調べられている.ここでのモデル はそのカオスニューロンへの拡張となっている. 41 α=Oh=h=h k=0.1 a=0 ε=0.01 0.2 ∫0 −0.2 一〇.1 0 0.1 一〇.1 0 0.1 0 ペー2 0.2 弐 10 ∫ y1(0)=0.8 y2(0)=一〇.6 一〇.2 一〇.1 h 0 0.1 図3.11(3.17),(3.18)式による2結合系の状態分岐図とリアプノブ指数 (α=0,ん1=ん2=んの場合) 42 第4章 連続時間差分化による定式と 多結合系の同調分析 本章では,離散時間カオスニューロンモデルの結合系を,時間測度パラメータ を用いて差分時間モデルとして定式化し,その場合の2結合系における同調・非 同調現象について分析する.さらに,相互結合型の多結合系や1次元1方向の多 結合系についても検討を行う. 4.1 差分時間モデルとしての定式化 Nニューロンで構成されるニューラルネットワークの発展方程式としては 讐一一鮒書噛価 (4.1) の相加型のものがよく知られている[17].これをオ=πムォとしてオイラー法で差 分化すると ガ 跳(η十1)一(レμムオ)9・(η)+Σ(ω・ゴムオ)xゴ(η)+δ・ムオ (42) ゴ篇1 となる.ここで, ん = 1一μムオ (4.3) α=一砺ムオ (4.4) ん=ω¢ゴム孟 (¢≠の α = わ歪△孟 (4.5) (4。6) とおくと,(4.2)式は ガ 跳(η十1)=鰯η)一αx・(η)+・+んΣxゴ(η) ゴ≠¢ 43 (4.7) と表され,2ニューロン(1>=2)の場合には’ 〃1(η十1)=鳶ッ1@)一αX1(η)十α十んX2(η) (4.8) シ2@・十1)=ん影2(η)一αX2@)・十α十んX1@) (4.9) が得られる.これは前章の2結合系の発展方程式(3.7),(3.8)における自己結合項 と不応性項を1つにまとめた 〃1(オ十1)=んッ1(オ)一(α一ん1)X1(の十α十ん2×2(オ) (4.10) ッ2(オ十1)=ん〃2(オ)一(α一ん1)X2(の十α十ん2×1(オ) (4.11) に対して(α一ん1)を新たなαとして,ん2をんとして再定義したものに他ならない. (4.8),(4。9)式のモデルを図示をすると図4.1のようになる. y1(t) 一α @ @ X1(t) 一α h y2(t) h X2(t) 図4.1連続時間差分化によるカオスニューロン2結合系モデル 不応性による一αが自己抑制として働き,相互結合のんは,正の時には相互興奮, 負の時には相互抑制となる. 以降,本章では,この連続時間ニューラルネットワークとの対応に基づいて,発 展方程式(4。7)内のパラメータ傷α,α,んをそれぞれ(4.3)∼(4.6)式の時間測度 △孟を変化させることで連動させることにする.すなわち,連続時間の離散化度合 44 に応じて結合系の挙動がどのような影響を受けるかを調べる.なお,このような 時間測度△孟に関わる検討は単一ニューロンの挙動に対しても可能である[18].具 体例としては付録A参照のこと.しかしながら,本研究の関心はニューロン間の 相互作用にあるので,単一の場合については本編では扱わないことにする. 45 4.2 2結合系の挙動分析 (4.8),(4.9)式の差をとると, g1(γz十1)一団2(η一ト1)=κ(μ1(η)一ッ2(η))一(α十ん)(X1(π)一X2@)) (4.12) となる.ここで,第3章のときと同様に,(4.12)式において右辺第2項が存在しな い,すなわち同調条件成立(α+ん=0)の場合と,存在する,すなわち同調条件 不成立(α+ん≠0)の場合に着目し,以下の3例の結果を報告する. (i)砺=ω乞ゴ=一1(α+ん=(一賜+ωのムオ=o)の場合 (11)ω%=一〇.8,物=一1(α+ん=(一ω%+ωのムオ=一〇.2△のの場合 (皿)賜;一1,ω勿=一〇.4(α+ん=(一揖+ωのムオ=0.6△のの場合 なお,他のパラメータについては(i)∼(血)のいずれに対しても,μ=1,6F−o.4, ε瓢0.01とする.このとき,ん=1一ムォ,α箕一〇.4ムオとなる. 4●2●1 (i)α+ん=o(賜=ω2ブ=一1)の場合 この場合には2ニューロン値差(貌一g2)が刻々ん倍で級数的に減少すること になる.図4.2∼図4.4は,それぞれ時間測度ムォがムオ=0.02,0.2,0.4のときの ニューロン状態の経時変化(ηムォ=10まで)であるが,いずれの場合もg1一〃2 は0に一様に収束していく.しかし,ッ1,〃2個々の挙動は決して一様ではなく,図 4.2では収束,図4.3ではカオス,図4.4では周期2の振動という形を維持して互 いに引き込み合い同調していくのがわかる. 図4.5はこのようなムォごとの個々の挙動をムォ依存性として全体的にその性質 を提示したものである.ニューロン状態X1, X2およびXrX2のデータとして は,第3章ではオ=・2000∼2200の200データであったが,ここでは十分発展後の オニ200000∼200200を用いている.また,λはニューロン#1のりアプノブ指数で あり3.1.2節で述べた処法によって内部状態gに対して計算されたものである.同 調条件が働いているので全ての範囲で同調(X1−X2→0)が成立している.λ>0 のカオス同調領域も広く存在している. 46 1 △t=0.02 y1 〉・0 α=△th=、一△t y2 y1(0)=0.8 y2(0)=一〇.6 一1 0 250 500 n 2 弐1 L >’0 −1 0 250 500 n 図4.2差分時間モデルの2結合系での時聞発展(α+ん=0で△孟=0.02の場合) 47 1 △t=0.2 α=△th=一△t 1 y1(0)=0.8 〉・0 俺 へ し ’ 7 ヨ ノ y2(0)=一〇.6 ノ1’▽ マ ・ y2 一1 0 n 50 2 N1 》 1 ド 〉・0 一1 0 n 50 図4.3差分時間モデルの2結合系での時間発展(α+ん=0でムオ=0.2の場合) 48 1 △t=0.4 α=△th=一△t 1 y1(0)=0.8 y2(0)=一〇.6 >0 y2 一1 O n 25 n 25 2 N1 》 1 >0 −1 0 図4.4差分時間モデルの2結合系での時間発展(α+ん=0でムオ=0.4の場合) 49 1 >ぞ0 −1 0 0.2 0.4 0 0.2 0.4 0 0.2 0.4 1 ね ×0 −1 1 ぺ0 −1 2 α=△th=一△t ね × 10 ズ t=200000∼200200 一2 0 0.2 0.4 △t 図4.5差分時間モデルの2結合系でのニューロン状態の分岐図とリアプノブ指数 (α+ん=0の場合) 50 4・2・2 (i)α+ん≠0(ω26=一〇.8,’吻=一1)の場合 この場合には(4.12)式の右辺第2項が存在するため,ッー〃2は常に0に収束す るとは限らない.すなわち,(X1−X2→0)の保障はない.実際,図4.6の結果か らムォが0.25付近を境にX1−X2に違いが生じ,ムォの小さい側で同調が失われて いるのがわかる.この境界に近いカオス同調領域のムオ=0.27における場合の時 間発展を示したのが図4.7である.内部状態の〃1と肋は互いに引き込み合いなが ら同調状態へと入っていくが,(i)の場合のようなん倍の繰り返しによる級数的 な一様収束にはなっていない. 51 1 :\ >ξ0 −1 0 0.4 0.2 1 ね ×0 −1 .、 D謝 0 0.2 0.4 0 0.2 0.4 1 ぺ0 −1 2 α=0.8△th=一△t ね × 10 ズ t=200000∼200200 一2 0 0.2 0.4 △t 図4.6差分時間モデルの2結合系でのニューロン状態の分岐図とリアプノブ指数 (α+ん=一〇.2ムオ≠0の場合) 52 1 △t=o.27 α=0.8△th=一△t y1 y1(0)= .8 y2(0)=一〇.6 〉・0 9 柵 Ψ へ八、贈》 〆… ’1 “ , ℃、 ‘ ‘弱 一1 0 50 100 n 2 弐1 L >’ O 一1 0 50 100 n 図4.7回分時間モデルの2結合系での時間発展 (α十ん=一〇.2ムオ≠0で△孟=027の場合) 53 4’2●3 (iii)α+ん≠o(ω2¢=}1,吻=一〇・4)の場合 この場合にも(4.12)式の右辺第2項の影響でニューロン状態は複雑な様相を示 すことになる.図4.8からは,カオス同調の領域が減少する一方で,カオス非同調 の領域(ムオニ0.4付近のバンド等)の出現が確認できる.そこで,ムオ=0.39のと きのニューロン状態の時間発展を示したのが図4.9である.内部状態の駒とツ2は 引き込み合つって同調に至るということなく,それぞれのカオス挙動を維持し続け ている. ところで,これまでのところでは発展方程式によるニューロンの状態更新に際 して,#1と#2の2ニューロンが同時に行う並列更新を採用してきた.状態更 新の方法としてはこの他に,1時刻に1つのニューロンだけが行う逐次更新があ る.この更新方法を採用した場合にはニューロン問の同調という概念自体の成立 が難しく,実際の実験結果からも同調は確認できていない(付録B参照). 54 1 〉ぞ0 一1 0 0.2 0.4 0 0.2 0.4 0 0.2 0.4 1 乏0 一1 1 ぺ0 _1 2 ● α=1.0△t × 10 ズ 一2 ・ go 8 ’ h=一〇.4△t ね .∴ 鷹 o一■■● ● 壕=i ・ 螺 「 . o t=200000 ∼200200 0 ’蕩 ..”≧ o鞘■零, . 鞠 o . ●● .● ‘6 0.4 0.2 △t 図4.8差分時間モデルの2結合系でのニューロン状態の分岐図とリアプノブ指数 (α+ん二〇.6ムオ≠0の場合) 55 1 △t=0.39 y1 α=△th=一〇.4△t y1(0)=0.8 2(0)一一〇.6 〉・0 サ 1 11 l 窄 1 y2 一1 0 50 100 n 2 N1 > 1 >・0 一1 0 50 100 n 図4。9差分時間モデルの2結合系での時間発展 (α+ん=0・6△孟≠0で△bO.39の場合) 56 4.3 相互結合系の挙動分析 これまでは結合系の基本となる2結合系について調べてきたが,続いて,多結 合系について検討を進めることにする.一般に,多結合系の結合様式としては様々 な形が考えられるが,ここでは4.1節の差分時間モデルの発展方程式(4.7)の結合 項んΣダ荊Xゴ@)を取り扱う・この場合,全てのニューロンが互いにんの強度で結 合しあうことになる.図示すると図4.10のように表される. ● ● ● 図4.10相互結合型の多結合系 Nニューロンから成る相互結合系の(4.7)式の#乞と#ブの発展方程式 ツ6(η十1)=鳳@)一αX¢(π)+α+ん(X、(η)+…+XN@)) (4.13) (ただし,X¢(η)は含まない) 〃ゴ@+1)=椥ゴ(η)一αXゴ(η)+α+ん(X、(η)+…+XN(η)) (4.14) (ただし,Xゴ@)は含まない) の差をとると 跳(η十1)一防(η十1)=16(腕(π)一防@))一(α十ん)(X乞(η)一Xゴ@)) (4.15) となる.この形は4.2節の2結合系の場合の#1と#2に対する(4.12)式と同じで ある.つまり,個々のニューロン間の1対1の同調条件は,右辺第2項が存在し ないこと,すなわちα+ん寓0となる.(4.15)式は,α+ん=0のとき,1対1で の同調が全てのニューロン間に起こることを保障するので,結局,多結合系全体 が同調することを意味する. 57 以下では同調条件が成立する場合としない場合に大別して, (i)鞠=ω¢ゴ=一1(α+ん=o)の場合 (茸)賜=一1,賜=一〇.4(α+ん=0.6△のの場合 について,それぞれ3結合系と4結合系の2例の結果を報告する.なお,他のパ ラメータについては(i),(i)のいずれの場合も,μ箪1,δ歪=一〇.4,ε=o.01と する.このとき,ん=1一ムォ,α=一〇.4ムォとなる. 4’3’1 (i)α+ん=o(’砺=ωη=一1)の場合 この場合の3結合系,4結合系に対する挙動特性の結果を図4.11,図4.12に示 す.2結合系の場合の図4.5と同様,ムォの全範囲でニューロン値差瓦一Xゴが全 て0に収束しており,どちらの場合も全ニューロンが完全に同調に至っていること がわかる.そして,それぞれのニューロンの状態X乞とリアプノブ指数λの様子か ら,その同調がムォに応じて収束,振動,カオスの状態をとることがわかる. 58 1 多 α=△th=一△t メ「0 旺㌔」’=ら品 t=200000∼200200 塾あ鴇 −1 0 1 0.2 0.4 0.2 0.4 0 0.2 0.4 0 0.2 0.4 0 0.2 0.4 0 0.2 メ 乏0 瞠・:芦き晶 塾弓墨 −1 0 1 メ 迎0 , 羅奉 −1 1 ぺ0 −1 2 乏 しO × 一2 2 {・ 覧、 0.4 △t 図4.11差分時間モデルの3結合系での分岐図とリアプノブ指数 (α+ん=0の場合) 59 1 .A α=△th=一△t 曹0 × t=200000∼200200 一1 0 1 0.2 0.4 0,2 0.4 0.2 0.4 0 0.2 0.4 0 0.2 0.4 0 0.2 0.4 0 0.2 0.4 0 0.2 ’ 創0 × 一壌 0 霊 .A ・,0 × 一1 0 1 戸 寸0 × 一1 1 ぺ0 −1 2 乏 しO × 一2 2 螺 ㌧0 × 一2 2 サ 覧。 × 一2 0.4 △t 図4.12差分時間モデルの4結合系での分岐図とリアプノブ指数 (α+ん=0の場合) 60 4・3・2 (i)α+ん≠0(鞠=一1,ω2ブ=一〇・4)の場合 この場合の3結合系,4結合系に対する結果は図4.13,図4.14のようになる.ど ちらの場合も,個々のニューロン状態瓦はよく似た分岐図を呈しているが,ニュー ロン値差XrXゴの分岐図からは非同調の領域(3結合系の場合はムオ=0.3付近 に,4結合系の場合は△孟=0.2付近に)が確認される.また,同調条件α+ん=0 が成立しないこの場合でもλ>0で凡一Xゴ→0となるカオス同調状態が存在し 得ている.この状況についても2結合系のときと同様である. 61 1 α=△th=一〇.4△t ズ0 t=200000∼200200 −1 1 0 0.2 0.4 0 α2 0.4 0 0.2 0.4 0 0.2 乏0 −1 1 ズ0 −1 1 ぺ0 −1 2 0.4 ●{ 乏 しO × 一2 2 0 0.2 0 0.2 0.4 ぎ。 乏 一2 0.4 △t 図4.13日分時間モデルの3結合系での分岐図とリアプノブ指数 (α+ん=0.6ムオ≠0の場合) 62 1 3 α=△th=一〇.4△t FO × t=200000∼200200 一1 0 1 0,2 0.4 メ 則0 × ..髭 一1 0 1 0.2 0,4 0.2 0.4 メ ・。0 × 一1 0 1 ’ 寸0 × 臨 一1 0 0.2 0 0.2 0.4 壌 ぺ0 −1 2 0.4 =9 躍 LO × 一2 0.2● 0 2 0,4 螺 ㌧0 × 一2 0 2 0.4 .2 野 bO × 一2 0 α2’ 0.4 △t 図4.14差分時間モデルの4結合系での分岐図とリアプノブ指数 (α+ん=0.6△孟≠0の場合) 63 4.4 1次元1方向結合系の挙動分析 4.3節での相互結合型ではなく,ここでは図4.15のような1次元1方向結合系と しての多結合系について考える.このタイプの結合系は,信号伝送などへの応用 に結びつきやすく検討の価値も高いと考えられる. X1(t) X2(t) y1(t) y2(t) X3(t) y3(t) ● ● ● 図4.15 1次元1方向結合系 4.4.1 逐次同調化の機構 ここでは,結合系の同調化に焦点を絞って具体的なモデルを構成することにす る.指針としては,時間発展にともなって同調が進行するように設定するために, 結合による影響の出発点となる左端点の#1ニューロンと次の#2ニューロンが まず同調し,その同調状態が信号方向(右)へ伝わってゆくという仕組みが適当 である. そのようなモデルとしては g1(η十1) = 1吻1(η)一αX2(η)十α十んX1(η) (4.16) 〃¢@+1)=吻歪(η)一αX¢@)+α+んX2・_1(η)σ≧2のとき) (4.17) が考えられる.発展方程式を図で表すと図4.16のようになる.このとき,隣同士 のニューロン値差防一ッ¢+1は, 〃1(η十1)一〃2(γ}十1) = ん(ッ1(η)一〃2(η)) (4.18) 蝋η+1)一〃歪+・(η十1)=た(〃乞(η)一〃乞+・(η))一α(凡@)一X¢+、(π)) +ん(XH@)一瓦(π)) σ≧2のとき) (4.19) 64 となる.(4。18)式から,0<κ〈1の時には時間発展とともに2ニューロン値差 〃r馳がん倍で級数的に0に収束(したがって,XrX2→0)していくことがわか る.それにともなって,ッ2一〃3に対する(4。19)式では右辺第3項ん(X1(π)一X2(η)) が0になる.しかしながら,右辺第2項の存在が残るため,#1と#2の同調が 順次,信号方向ニューロンの同調を誘発していく保障はない.右辺第2項の不応 性(α)による影響の程度が,全体の同調への引き込みの可能性を左右することに なる. y1(t)X1(t)hy、(t)X・(t)hy、(t)X・(t)h... 一α 一α 一α 図4.16逐次同調化を指向したカオスニューロンによる1次元1方向結合系 20ニューロンの場合にμ=1(ん=1一ムォ),砺=一〇.5(α=0.5ムオ),ω乞ゴ= 1.5(ん=1.5ムオ),砺=一〇.4(α=一〇。4△の,ε=0.01とし,時間測度△孟=0.18で 追跡したときの1方向結合系の時間発展の様子が図4.17である.2,5,10,15,20番 目のニューロンと1番目とのニューロン三差を示したものであるが,ランダムな 初期値をもつニューロンが順次同調していく様子が分かる.同時に,図4.18はこ れらニューロンの状態値X2,X5,Xlo,X15,X20自身の経時変化を追ったものである が,それらの動きは非周期的な不規則性を維持しており,カオス同調となってい ることがわかる. さらに,上記の場合のムォ依存性について調べたものを図4.19に示す.続く図 4.20,図4.21は,ω歪ゴ=ωゴ1=1。0(ん=1.0ムオ),ω勿=ωゴ¢=0・5(ん=0.5△のと, 図4.19の場合から結合強度を弱めた場合である.これらの結果からは,同調しな い領域が次第に広がる傾向が見られる.いずれにしても,(4.16),(4.17)式による 1方向結合系がカオス同調を含む様々な同調を生起できることが確認された.各 ニューロンの状態値蕩とその差&一Xゴについては,十分に時間発展した後の 65 π=200000∼200200の200データ,リアプノブ指数λは20番目のニューロンのも のを用いている.同調条件は成立していないものの,このときにはムォ=0.27あ たりを除いてほぼ全域で同調に至っていることがわかる. 4.4.2 同調条件について ところで,(4.19)式に関する考察からも明らかなように,右辺第2項一α(X¢(π)一 瓦+1(η))が存在しなければ同調条件が成立することになる.そのためにα=0と おくと,(4.16),(4.17)式は (420) 〃、@+1)=掬、(η)+んX、(π)+α 跳(η十1)篇糠@)+んx琶一、(π)+α (¢≧2のとき) (4.21) のように簡素化される(ただし,これらのニューロンはカオスニューロンとは言えな い).この場合にμ=1(κ=1_ムォ),うF_0.4(α=_g.4ムォ),ω勿=_1(ん=_ムォ), ε=0.01とし,挙動特性のムォ依存性を調べたのが図4.22である.ニューロン値 差XrX15およびX1−X20はムォにかかわらずゼロに収束し,同調条件がうまく 作用している.△孟=0.1付近と0.5前後の領域にはカオス同調の出現も見られる. 問題は発展方程式(4.20),(4.21)のモデルがもはやカオスニューロン結合系として の形式を失ってしまっていることであるが,外部からの制御入力による帰結とし て捉え直すことは可能である.これについては付録C参照のこと. 66 2 h==1.5△t ε=0.01 副 10 ズ 一2 2 k=1一△t α=0.5△ta=一〇.4 0 200 400 600 0 200 400 600 0 200 400 600 0 200 400 600 0 200 400 600 / 10 ズ 一2 2 9 × 10 ズ 一2 2 專 × 10 ズ 一2 2 呂 × 10 ズ 一2 n 図4.17(4.16),(4.17)式による1次元1方向結合系の時間発展 (△孟=0.18のときのニューロン値差表示) 67 k=1一△tα=0.5△ta=一α4△th=t5△tε=0。01 1 乏0 一1 0 200 400 600 0 200 400 600 0 200 400 600 0 200 400 600 0 200 400 600 1 ズ0 一1 1 む 〉ぞ0 一1 1 の ヌ「0 一1 1 む 乏0 一1 n 図4.18(4.16),(4.17)式による1次元1方向結合系の時間発展 ((ムオ=0.18のときのニューロン状態表示) 68 1 20結合 ズ0 h=1.5△t 一1 1 0 0.5 0 α5 1 0 0.5 1 0 0.5 1 0 0.5 1 0.5 1 .1 k霊1一△t α=0.5△t a=一〇.4△t ε=0.01 芝。 一1 1 邊。 一1 1 ぺ0 司 2 {・ モ2 2 委 しO × t=200000∼200200 一2 0 △t 図4.19(4.16),(4.17)式による1次元1方向結合系の状態分岐図と リアプノブ指数(ん=1.5ムオの場合) 69 1 20結合 〉ぞ0 h=1.0△t ≡ 3’ 一1 1 0 0.5 1 0.5 1 0 0.5 1 0 0.5 1 0.5 1 0.5 1 ミ. 芝。 1灘 翠 葦 k=1一△t α=0.5△t a=一〇.4△t ε=0.01 ド 3二 一1 0 1 癬 委。 ≡ }写 i1 3二 一1 1 ぺ0 司 2 {・ 覧2 2 0 覧 罫 蓬 × 華 LO t=200000∼200200 9藷 一2 0 △t 図4.20(4.16),(4.17)式による1次元1方向結合系の状態分岐図と リアプノブ指数伍=1.0△孟の場合) 70 1 20結合 メ「0 h=1.0△t 一1 1 0 0.5 1 0.5 1 0.5 1 0.5 1 k=1一△t α=0.5△t a=一〇.4△t ε=0.01 芝o 一1 0 1 罫。 一1 0 1 ぺ0 一1 0 2 ・ 隔 一 顧 「 一 軸 くii’ , , i:・ 撃 Bg 芥。 o ・ , ● . , ●.9 U零・ ズ . ・ ● .・ 1・. ・ ー2 り . E■ 20 ●A一 o 一 1:9 0.5 ” . @ @ .1 1・ 、聖1: i8: 剰。 1曹 .聖3 ・ 8 5・. ズ ● ・・ ・ , P● ● t=200000∼200200 P・ ー2 0 ∴・・、ψ. 18: ・ 0.5 1 △t 図4.21(4。16),(4.17)式による1次元1方向結合系の状態分岐図と リアプノブ指数(んニ0.5ムオの場合) 71 1 20結合 更0 h=一△t 一1 1 0 0.5 1 k=1一△t α=O a=一〇.4△t 芝。 ε=0.01 一1 0 0.5 1 0 0.5 1 0 α5 1 0 0.5 1 0.5 1 1 爵。 一1 1 ぺ0 一1 2 {・ 覧2 2 鎗 」0 × 一2 t=200000∼200200 0 △t 図4.22(420),(4.21)式による1次元1方向結合系の状態分岐図と リアプノブ指数(ん=ムオの場合) 72 第5章 結論と今後の課題 本研究では,神経系の非線形力学的研究の新しい試みとして,単一でカオス性 をもちうるカオスニューロンを構成要素とし,その結合系の同調現象について計 算機実験を通して詳しく検討した.その結果,カオスニューロン結合系には,従 来のリミヅトサイクル振動子の結合系には見られなかった,カオス同調の存在が 確認された.それは,個々のニューロンの挙動は非周期的な不規則性を保持した ままで,互いに引き込み合い完全に同調していくという現象である. 具体的には,まず2結合系のモデル設定とそこでの同調条件について明確にし, そのうえで2結合系の同調・非同調および動的状態の特性を分岐図とリアプノブ 指数を用いて全体的に評価した.その結果,同調条件が成立している場合には2 ニューロン値差は常にゼロに収束し,結合強度の値に関係なく常にカオス同調を 含む同調状態に至ることが確認された.さらに,同調条件は同調のための十分条 件であり,この条件が成立しなくても同調が生じる可能性は排除できず,いわゆ る引き込みの現象によってカオス同調が出現しうることも確認された. 次に,離散時間カオスニューロンモデルの結合系を,時間測度パラメータを用 いて差分時間モデルとして定式化し,その場合の2結合系,相互結合型の多結合 系,および1次元1方向の多結合系における同調・非同調現象について分析した. この定式化では,発展方程式内の全パラメータは時間測度によって連動するので, 連続時間の離散化度合に応じた結合系の挙動特性を調べることができた.その結 果,2結合系と相互結合型の多結合系の場合には,上記の2結合系とほぼ同様の 同調現象が確認された.1次元1方向結合系では,結合系の同調化に焦点を絞っ て具体的なモデルを構成した.結合による影響の出発点となる左端点の2ニュー ロンがまず同調し,その同調状態が信号方向(右)へ伝わってゆくという逐次同 調化の仕組みである.計算機実験では,ランダムな初期値をもつ各ニューロンが 73 順次カオス同調へと引き込まれていく様子が確認できた. 今後の課題としては,本研究で得られた結果と神経生理学上の振動現象に関する 知見との接点を見いだすことが挙げられる.特に,カオス同調の現象は決定論的な 方程式系に特有なものであり,生理学上での存在の可否は興味深いところである. また,1次元1方向結合系は,その構造から信号伝送システムへの応用が可能で あると考えられる.具体的には,カオスダイナミクスによって情報がどのように保 持あるいは消失されるかという情報伝送能力に関するこれまでの研究[19][20][21] をもとに,本研究でのカオス同調時の伝送能力について調べることが挙げられる. さらに,結合系に信号源を付加し,その信号をカオス同調状態に乗せる駆動一応 答型の秘匿通信の可能性も考えられる. 74 謝 辞 兵庫教育大学大学院(生活・健康系技術分野)での2年間の研究におきまして, 懇切丁寧に直接ご指導いただきました西村治彦先生に深く感謝し,心よりお礼を 申し上げます.そして,研究を遂行するにあたり常にご協力いただきました兵庫 教育大学連合大学院の長尾夏樹さんに深く感謝致しお礼申し上げます. さらに,いろいろな場におきまして,貴重なご助言と暖かい励ましをいただき ました技術分野の先生方にはことに感謝致しお礼申し上げます. また,技術分野の院生の皆様方からたくさんのことを学びました.本当にあり がとうございました. 加えて,兵庫教育大学の先生方には,多くのことを教えていただきました.私 の,今後の教育活動において大きな力になることは間違いありません.そして,在 学中に知り合えた多くの大学院生や,学部生,そして留学生の友人の皆様には,常 に学ばせていただき,支えていただいたことに深くお礼を申し上げます. この貴重な2年間で皆様方から学ばせていただいたことは,今後の私の人生の 貴重な参考書とさせていただきます. 最後に,このような研究の機会を与えてくださいました兵庫県教育委員会なら びに兵庫県立白鷺工業高等学校の皆様方に厚く感謝の意を表します. 平成12(2000)年12月20日 75 馬越 顕 A.差分時間モデルでの単一ニューロン挙動例 k=1一△tα=△ta=0.4△tε=1/250 1 〉 0 0 0.1 0.2 0 0.1 0.2 1 ぺ0 一1 △t 76 B.差分時間モデル[2結合系(i)]の逐次更新の場合の 挙動 1 ヌ「0 ℃弗’ 一1 0 0.2 0.4 0 0.2 0.4 0 0.2 0.4 1 騨凹田 闘騰 乏0 、 患 一1 1 ぺ0 一1 2 α=△th=一△t 軸} 躍 .{ ●・・ LO × 論li 一2 t=200000∼200200 0 0.4 0.2 △t C.外部制御による同調化としての解釈 図1に示すような,外部からの制御入力蝋オ)があるカオスニューロンの1方向 結合系[22][23]を考える.各ニューロン状態の経時変化は ツ・@+1)=吻、(η)一αX、(η)+α+鋤、(η) (C.1) 跳@+1)=棚(η)一(α+ん)x信(η)+んx歪一、(π) +α+砺(π) (乞≧2のとき) (C.2) で記述される.#1ニューロンには一αの,#2ニューロン以降には一(α+ん)の 不応性が存在している.このとき,制御則として ψ)一{0(ん+α)剛一x…(η))9;器1 (G3) を設定すると,結合系の同調化へとコントロールできる.(C.3)式を(C.1),(C2) 式に代入すると 〃1(η十1) = 1吻1(π)一αX1(π)十α (C.4) 〃2@+1)=椥2@)一α&_1@)+α σ≧2のとき) (C.5) が得られる.そして,(C.4),(C.5)式は(4。20),(4.21)式と同値関係にある(両者 の一αとんが対応している.)ことがわかる. U2(t) u1(t) X1(t) y1(t) 一α h X2(t) y2(t) 一(α+h) U3(t) h X3(t) y3(t) h ● ● ● 一(α+h) 図1外部制御をもつカオスニューロンの1次元1方向結合系 78 参考文献 [1]井上政治義,秦浩起:カオス科学の基礎と展開一複雑系の理解に向けて一,共 立出版(1999). [2]津田一郎:カオス的脳観,サイエンス社(1990). [3]藤坂博一,山田知司:結合振動二丁の新しい運動状態,数理科学,No.408, pp.52− 58(1997). [4]津田一郎:カオス力学系の情報処理,日本ファジィ学会誌,Vbl.4, No2, pp.220− 228(1992). [5]馬越顕,長尾夏樹,西村治彦:カオスニューロン間の引き込み現象解析,第16 回日本産業技術教育学会近畿支部研究発表会講演要旨集,pp25−26(1999). [6]馬越顕,長尾夏樹,西村治彦:ニューロン結合系における同期・非同期現象と カオス,第43回日本産業技術教育学会講演要旨集,p.33(2000). [7]馬越顕,長尾夏樹,西村治彦:カオスニューロン間における同期・非同期現 象解析,2000年度計測自動制御学会関西シンポジウム講演論文集,pp.130− 133(2000). [8]高橋智晴,合原一幸,松本元:ポジキンーバクスレイ方程式のパルス列刺激に 対する応答性,電子情報通信学会論文誌,J71−A, No.3, pp.744−750(1988). [9]M.A. Arbib(Ed.):The Handbook of Brain Theory and Neural Networks, MIT Press(1995). 79 [10]合原一幸(編著):ニューラルシステムにおけるカオス,東京電気大学出版局 (1993). [11]K.Aihara,T.Takabe and MToyoda:Chaotic Neural Networks, Physics Let− ters A, Vblユ44, pp.333−340(1990). [12]M.Adachi and K.Aihara:Associative Dynamics in a Chaotic Neural Network, Neural Networks, Vbl。10, No.1, pp.83−98(1997). [13]安達雅春,合原一幸:カオスニューロンモデルとそのネヅトワークダイナミ クス,ニューラルシステムにおけるカオス(合原編著),東京電気大学出版局, pp.158−188(1993). [14]川原琢治,ソリトンからカオスへ,朝倉書店,pp.104−112(1993)。 [15]長島弘幸,馬場良和,カオス入門,培風館,pp.105−110(1992). [161A. Tonllelier, S. Meignen, H. Bosch and J. Demongeot:Synchronization and desynchronization of neural oscillators, Neural Networks, V61ユ2, pp.1213− 1228(1999). [17]J.J.Hop且eld:Neurons with graded response have collective computational properties like those of two−state neurons, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, V61.81, pp.3088−3092(1984). [18]L.Chen and K.Aihara:Chaos and Asymptotical St翫bility in Discrete−time Neural Networks, Physica D, Vbl.104, pp.286−325(1997). [19]K.Matsumoto and I. Tsuda:In丘)rmation theoretical approach to Iloisy dy− namics, J Phys. A, Math. Gen. V61.18, pp.3561−3566(1985). [20]K.Matsumoto and I. Tsuda:Extended infbrmation in one−dimensional maps, Phy・i・a. v61.26D, PP.347−357(1987). 80 [21]石山邦彦,合原一幸,伊東晋,宇都宮敏男:カオスニューロンモデルの情報理論 的解析,電子情報通信学会論文誌,J75−A,8, pp.1379−1388(1992). [22]潮俊光:1次元1方向結合のカオスニューラルネットワークにおけるカオス の同期化,信学技報,NLP93−50(1993). [23]潮俊光:1次元双方向結合カオスニューラルネヅトワークのカオスの同期化 と制御,信学技報,NLP93−76(1994). 81