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福井市林業水産業振興プラン(本編)

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福井市林業水産業振興プラン(本編)
福井市林業水産業振興プラン
平成23年2月
福井市
【
序章
目
次
】
はじめに
1.
策定の趣旨
02
2.
計画期間
02
第1章
林業
第1節
森林・林業の現状と課題について
1.
森林のはたす役割
04
2.
日本の林業の歩み
06
3.
森林・林業の現状
09
4.
森林・林業の課題
18
第2節
森林・林業の振興について
1.
林業振興のための理念
20
2.
林業振興のための目標と方針
21
第2章
水産業
第1節
水産業の現状と課題について
1.
水産業を取り巻く環境
42
2.
水産業の現状
44
3.
水産業の課題
52
第 2節
水産業の振興について
1.
水産業振興のための理念
54
2.
水産業振興のための目標と方針
55
第3章
プランの実現
1.
林業の指標
70
2.
水産業の指標
71
序章
はじめに
1.
策定の趣旨
わ が 国 に お け る 林 業 水 産 業 は 、こ れ ま で 木 材 や 魚 介 類 な ど の 安 定 供 給 は も
と よ り 、地 域 経 済 に お け る 雇 用 の 確 保 な ど の 面 で 、一 定 の 役 割 を 果 た し て き
ま し た 。し か し な が ら 、近 年 、林 業 水 産 業 を 取 り 巻 く 情 勢 は 、従 事 者 の 高 齢
化 、後 継 者 不 足 、価 格 の 低 迷 、消 費 の 減 退 な ど 厳 し い 状 況 に あ り ま す 。こ う
し た 中 、活 力 あ る 林 業 水 産 業 の 発 展 に は 、担 い 手 の 育 成 、安 定 的 な 経 営 、消
費の拡大などの課題をかかえています。
福 井 市 で は 、 平 成 18年 2月 に 美 山 町 、 越 廼 村 、 清 水 町 と の 合 併 に よ り 、 森
林 面 積 は 16,410haか ら 31,921haに 、漁 港 も 6カ 所 か ら 9カ 所 に 増 加 し ま し た 。
市 域 の 6割 を 占 め る 森 林 と 9つ の 漁 港 を 有 す る 本 市 に お い て 、林 業 の 振 興 を 図
る こ と が 、ひ い て は 本 市 沿 岸 の 漁 場 の 保 全 に も 繋 が り 水 産 業 の 振 興 に も 寄 与
す る も の と 考 え ら れ ま す 。こ の た め 、本 プ ラ ン で は 林 業 と 水 産 業 と い う 産 業
の 振 興 を 図 る 観 点 か ら 、 1つ の プ ラ ン と し て 策 定 す る も の で あ り ま す 。
本 プ ラ ン は 、 本 市 の 5 年 先 、 10 年 先 を 見 据 え た 基 本 的 な 計 画 で す 。 国 や
県 の 計 画 と も 整 合 を 図 り な が ら 進 め て 行 き ま す 。な お 、将 来 の 経 済 情 勢 の 変
化などに対し、状況によっては見直しを行うことも検討します。
2. 計 画 期 間
林業
目 標 年 次 ・・・・・平 成 32 年 度 ( 平 成 23 年 度 か ら 10 年 間 )
森 林 整 備 の 取 り 組 み に つ い て は 、長 期 間 に わ た る 継 続 的 な 施 策 が 必
要 で あ る た め 、 国 や 県 は 計 画 期 間 を 10 年 間 と し て お り ま す 。
本 市 に お い て も 同 様 に 定 め 、国 や 県 と 連 携 し た 取 り 組 み を 行 う 必 要
があります。
水産業
目 標 年 次 ・・・・・平 成 27 年 度 ( 平 成 23 年 度 か ら 5 年 間 )
水 産 業 を め ぐ る 情 勢 の 変 化 に 的 確 に 対 応 す る 必 要 が あ る た め 、国 や
県は計画期間を 5 年間としております。
本 市 に お い て も 同 様 に 定 め 、国 や 県 と 連 携 し た 取 り 組 み を 行 う 必 要
があります。
-2-
第1章
林業
第1節
1.
森林・林業の現状と課題について
森林のはたす役割
日本の国土の 3 分の 2 は森林となっており、世界有数の森林国です。日
本 の 森 林 は 、古 来 よ り 動 物 の 狩 猟・木 の 実 の 採 集・木 々 の 伐 採・た き ぎ の 収
集 な ど の 場 と し て 利 用 さ れ 、歴 史 的 に も 文 化 的 に も 重 要 な 役 割 を 担 っ て き て
い ま す 。森 林 の 働 き は 多 岐 に わ た っ て お り 、魚 介 類 を 育 む 豊 か な 海 づ く り に
も 貢 献 し て い ま す 。こ の よ う に 現 在 の 私 た ち の 生 活 に お い て も 様 々 な 恩 恵 を
もたらすなど、森林は必要不可欠な存在です。
図 1-1-1 森 林 の多 面 的 機 能
①生 物 多 様 性 保 全 機 能
④水 源 かん養 機 能
②地 球 環 境 保 全 機 能
③土 砂 災 害 防 止 /土 壌 保 全 機 能
⑧物 質 生 産 機 能
⑤快 適 環 境 形 成 機 能
⑦文 化 機 能
⑥保 健 ・レクリエーション機 能
植 物 プランクトン
藻場
-4-
機能
森 林 の働 き
①
生物多様性※保全機能
遺 伝 子 保 全 、生 物 種 保 全 、生 態 系 保 全
②
地球環境保全機能
地 球 温 暖 化 の緩 和 (CO 2 吸 収 、化 石 燃 料 代 替 )
地 球 気 候 システムの安 定 化
③
土砂災害防止機能
(土 壌 保 全 機 能 )
※
表 面 侵 食 防 止 、表 層 崩 壊 防 止
その他 土 砂 災 害 防 止 、雪 崩 防 止 、防 風 、防 雪
④
水 源 かん養 機 能
洪 水 緩 和 、水 資 源 貯 留 、水 量 調 節 、水 質 浄 化
⑤
快適環境形成機能
気 候 緩 和 、大 気 浄 化 、快 適 生 活 環 境 形 成
⑥
保 健 ・レクリエーション機 能
療 養 、保 養 、行 楽 、スポーツ
⑦
文化機能
景 観 ・風 致 、学 習 ・教 育 、芸 術 、宗 教 ・祭 礼
伝 統 文 化 、地 域 の多 様 性 維 持
⑧
物質生産機能
木 材 、食 料 、工 業 原 料 、工 芸 材 料
【資料:日本学術会議答申「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的機能の評価について」】
森 林 は 、木 材 を 生 産 す る だ け で な く 、水 源 か ん 養 な ど の 多 面 的 機 能 を 有 し
て い ま す 。林 業 は 、森 林 が こ う し た 機 能 を 十 分 発 揮 で き る よ う に 、育 成 し 管
理していく上でますます重要になってきています。
図 1-1-2 木 を育 て利 用 する一 連 のサイクル
木 材 は、利 用 するために伐 採 し、その跡 地 に再 植 林 し、下 草 刈 りや間 伐 といった手 入 れを
行 い、年 月 をかけて育 てるというサイクルを守 ることによって再 生 産 されます。
【出 典 :2007 年 ジュニア農 林 水 産 白 書 】
※ 生 物 多 様 性 ・・・い ろ い ろ な 生 物 が 存 在 し て い る 様 子 。生 態 系 の 多 様 性 、種 に お け る 多 様
性、遺伝子の多様性など、各々の段階で様々な生命が豊かに存在すること。
※ 水 源 か ん 養 ・・・雨 水 を 吸 収 し て 水 源 を 保 ち 、 あ わ せ て 河 川 の 流 量 を 調 節 す る こ と 。
-5-
2.
日本の林業の歩み
日 本 人 は 古 来 よ り 木 を 植 え 育 て 、そ の 木 を 巧 み に 使 い 、風 土 に 適 し た 日 本
固 有 の 木 造 建 築 物 を 多 数 創 造 し て き ま し た 。戦 後 か ら 高 度 経 済 成 長 期 に か け
て は 、木 材 価 格 は 高 騰 し 、日 本 中 が 意 欲 的 に 造 林 を 行 っ て い ま し た 。し か し 、
その木材価格も現在では下落し、林業で生計をたてている林家※はわずかで
す 。 昭 和 20 年 代 か ら 現 在 ま で の 林 業 の 変 遷 を 年 代 ご と に た ど る と 、 以 下 の
とおりです。
( 1) 昭 和 20 年 代
日本の戦後復興のため、建築材としての木材の
《木 を植 えている様 子 》
需要が増加しました。その後、政府の「拡大造林
政策」もあって伐採跡地への大植林ブームが巻き
起 こ り 、「 ス ギ ・ ヒ ノ キ を 植 林 す れ ば 山 の 値 段 が 3
倍の価値になる」とも言われました。このころは
林業が儲かる産業と期待されていました。
( 2) 昭 和 30 年 代
高 度 成 長 期 を 迎 え 、宅
図 1-2-1 日 本 の木 材 需 要 量 (用 材 ※ )の推 移
地開発など建築ラッシ
ュ が 続 き 、木 材 需 要 が 大
き く 増 加 、 昭 和 30 年 に
は木材自給率※が 9 割以
木材需要
の増加
上 あ り ま し た 。木 材 が 不
足し国産材の供給が追
いつかなくなったため、
昭 和 35 年 か ら 丸 太 材 輸
入 が 完 全 自 由 化 さ れ 、昭
和 39 年 か ら は 木 材 の 輸
入全面自由化が行われ
ました。
パ ル プ・チ ッ プ 用 材 は 印 刷 用 紙 の 堅
調 な 需 要 の た め 、増 減 が あ ま り な い
り ん か
※ 林 家 ・・・山 林 を 所 有 す る 世 帯 の こ と 。
※ 用 材 ・・・製 材 品 や 合 板 、 パ ル プ ・ チ ッ プ 等 の 原 料 と し て 用 い ら れ る 木 材 の こ と 。
※ 木 材 自 給 率 ・・・用 材 の 供 給 量 ( 丸 太 換 算 ) に 占 め る 国 産 材 の 割 合 。
-6-
( 3) 昭 和 40 年 代
昭 和 40 年 代 も 木 材 需 要 が 増 加 し 続 け 、 安 く て 資 源 量 の 豊 富 な 外 材 の 輸 入
が拡大しました。昭和
44 年 に は 外 材 が 初 め て
図 1-2-2 日 本 の木 材 供 給 量 (用 材 )と
自 給 率 (丸 太 換 算 )の推 移
国産材の供給量を上回
り 、木 材 供 給 の 中 心 が 国
木材自給率(用材)
パルプ・チップ用材自給率
製材用材自給率
合板用材自給率
国産材の供給量
が 50%を 割 る
木材自給率
昭 和 30 年 以 降 最 低 水 準
産材から外材になりま
し た 。昭 和 48 年 秋 の 第
1 次 石 油 危 機 後 に は 、木
材需要が大幅に減少し
ました。
そ の 後 、景 気 回 復 と と
もに山村の過疎化が進
みました。福井県では
「 グ リ ー ン 県 政 」と し て
積極的に拡大造林が進
められました。
外材の
自由化
( 4) 昭 和 50 年 代
昭 和 50 年 代 前 半 の 景 気 回 復 に 伴 い 、 木 材 需 要 は 増 加 傾 向 を た ど り 、 安 価
な 外 材 が 大 量 に 輸 入 さ れ ま し た 。 し か し 昭 和 54 年 に は 第 2 次 石 油 危 機 の 影
響 に よ り 、木 材 需 要 が 大 幅 に 減 少 し ま し た 。外 材 価 格 が 下 落 し 始 め 、年 々 上
昇していた国産材も外
図 1-2-3 日 本 の木 材 価 格 と素 材 生 産 費 等 の推 移
材下落の影響を受け、
昭 和 55 年 を ピ ー ク に 下
落に転じました。昭和
※
50 年 代 後 半 に は 足 場 や
※
※
電柱、枕木等が、鉄や
コンクリートなどの二
木材価格最高値の年
次製品に代わりまし
た。
木 材 価 格 は 昭 和 55 年 に 最 高 値 を 記 録 後 、 現 在 そ の 4 割 に ま で
下 落 。こ れ に 対 し 、素 材 生 産 費・運 材 費 は 、ほ ぼ 横 ば い 状 態 で
あ る 。こ の た め 、丸 太 の 売 上 か ら 素 材 生 産 費・運 材 費 を 差 し 引
い た 粗 収 入 は 、 昭 和 55 年 の 2 割 程 度 ま で 減 少 し て い る 。
-7-
ま た 、 福 井 県 で は 昭 和 56 年 冬 の 56 豪 雪 で 嶺 北 を 中 心 に 森 林 が 壊 滅 的 打
撃 を 受 け ま し た 。こ れ ら の 結 果 、林 家 の 経 営 意 欲 が 低 下 し 山 離 れ に 拍 車 が か
かり、林業就業者数が減少していきました。
※ ス ギ 中 丸 太 ・・・直 径 が 14cm 以 上 30cm 未 満 の 丸 太 。た だ し 、こ こ で は 、農 林 水 産 省「 木
材 価 格 」 に お け る 「 径 14.0cm~ 22.0cm の ス ギ の 中 丸 太 」 を 示 す 。
※ 素 材 生 産 費 ・・・伐 採 か ら 林 道 端 の 山 土 場 ま で の 搬 出 価 格 。
※ 運 材 費 ・・・山 土 場 か ら 市 場 ・ 工 場 等 ま で の 運 搬 価 格 。
( 5) 平 成 元 年 以 降 ~ 現 在
平成 3 年のバブル景気
図 1-2-4 日 本 の林 業 就 業 者 数 ※ 及 び高 齢 化 率 ※ の推 移
の 崩 壊 や 、そ の 後 の 景 気
後退等により木材需要
林 業 の高 齢 化 率
量は減少傾向をたどり
ま し た 。 平 成 12 年 に 木
材 自 給 率 が 昭 和 30 年 以
林業就業者数
全 産 業 の高 齢 化 率
降 最 低 水 準 の 18.2% を
記録しました。その後、
国産材供給量が増加傾
向で推移したのに対し
外材輸入量が減少した
の で 、木 材 自 給 率 が 上 昇
し始めました。
現 在 、木 材 価 格 は 昭 和
林業就業者数の減少要因は、木材価格の下落による森林
所有者の経営意欲の低下や林業生産活動の停滞、人手を
要する植付や下刈などの造林作業の事業量の減少など。
55 年 の ピ ー ク 時 の 4 割 に ま で 下 落 し 、 林 家 の 生 産 意 欲 が 低 下 し 、 木 材 生 産
《第 60 回 全 国 植 樹 祭 》
が 減 少 し て い ま す 。ま た 、高 齢 化 や 山 離 れ に よ
って自己の所有する森林がどこにあるのかわ
からない林家が増加しています。
こ う し た 中 、 平 成 21 年 6 月 に は 福 井 市 の 一
乗 谷 朝 倉 氏 遺 跡 を 式 典 会 場 と し て 、 第 60 回 全
国 植 樹 祭 が 開 催 さ れ 、緑 化 へ の 気 運 が 高 ま り を
みせています。
※ 林 業 就 業 者 数 ・・・林 業 に 就 業 し て い る 者 の 数 ( 国 勢 調 査 の 統 計 で 把 握 さ れ る 者 の 数 )。
※ 高 齢 化 率 ・・・林 業 就 業 者 の う ち 、 65 歳 以 上 の 割 合 。
-8-
3.
森林・林業の現状
(1)福井市の地勢
福井市の地形は、市中央部の福井平野を挟むように西は国見岳、金毘羅山、
高尾山などの丹生山地を隔てて越前海岸を望み、東は剣ケ岳、飯降山、一乗山
などの 500~800m 級の山々に囲まれています。福井市内を足羽川と九頭竜川が
東から西に、日野川が南から北に流れ、3 河川が合流して日本海に注いでいます。
図 1-3-1 福井市全域
国見岳
市境
高速道路
国道
金比羅山
剣ケ岳
高尾山
一乗山
飯降山
【出典:福井市GIS デジタルオルソ画像】
(2)福井市の森林面積
平成 18 年 2 月の市町村合併により、森林面積は、31,921ha に倍増し、福井市の
総面積の 6 割を占めています。また、福井県の森林面積の 10%にあたります。
¾ 福井市の総面積・・・ 53,617ha
森林面積・・・ 31,921ha(総面積の 59.5%)
福井県の総面積・・・418,954ha
森林面積・・・312,354ha(総面積の 74.6%)
【資料:平成 20 年度 福井県林業統計書(数値は、平成 20 年 3 月 31 日時点)】
-9-
(3)福井市の森林構成
森林は、国有林と民有林※から構成されており、福井市の民有林の面積は
31,844ha で、森林全体の 99.8%となっています。福井市の民有林における人工
林 ※ 面積は 19,355ha で、民有林全体の 60.8%となっています。
本市の森林に一番多い樹種はスギであり、人工林における面積は 17,907ha
であり、人工林の 92.5%を占めています。
図 1-3-2 民有林における森林構成
無立木地
521ha
(1.6%)
竹林
304ha
(1.0%)
広葉樹
10,937ha
(34.3%)
図 1-3-3 人工林の樹種構成
その他 47ha(0.2%)
クロマツ 407ha(2.1%)
その他
825ha
ヒノキ 420ha(2.2%)
アカマツ 574ha(3.0%)
民有林面積
天然林 31,844ha
スギ 17,907ha(92.5%)
11,664ha
針葉樹
人工林
727ha
19,355ha
針葉樹
(2.3%)
19,308ha
広葉樹
(60.6%)
47ha(0.1%)
【資料:平成 20 年度 福井県林業統計書(数値は、平成 20 年 3 月 31 日時点)】
面積(ha)
2,500
2,000
図 1-3-4 民有林におけるスギ人工林の齢級別面積と材積
面積(ha)
利用間伐対象
(8~12 齢級)
7,360ha(41%)
材積(m3)
材積(m3)
800,000
700,000
600,000
500,000
1,500
400,000
1,000
300,000
200,000
500
100,000
0
0
齢級 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
※
主伐
除間伐
【資料:森林簿(数値は、平成 21 年 3 月 31 日時点)】
¾ 除間伐対象である 11~60 年生(3~12 齢級 ※ )のスギ人工林…12,123ha 67.7%
¾ 主伐対象である 61 年生(13 齢級)以上のスギ人工林…5,599ha
31.3%
福井市のスギ人工林の約 7 割が、除間伐を必要としている森林である。
※
※
※
※
民有林・・・個人や会社などが所有する私有林と県や市などが所有する公有林をあわせたもの。
人工林・・・苗木を植えたり種を蒔くなど、人の手をかけてつくられた森林のこと。⇔天然林。
齢級・・・林齢を 5 ヵ年でくくった単位(林齢 1~5 年生までを 1 齢級)のこと。
除間伐・・・育成の対象となる樹木の生育を妨げる不要な木を伐り除く「除伐」と混みすぎた
人工林の育成木を抜き伐りする「間伐」を組み合わせて実施すること。
- 10 -
(4)森林整備 ※ の推移
福井市の森林整備量は、平成 21 年度実績で面積計 785.6ha、作業道・作業路
延長計 18,328m となっており、平成 12~21 年度の 10 年間の間伐実施率 ※ は
26.4%、実施面積は 3,200ha となっています。
福井市の主な森林整備は除間伐ですが、県の間伐実施率約 50%・搬出率約
30%と比べると福井市の値は低くなっています。
図 1-3-5 福井市における森林整備量の推移
面積(ha)
1,000
延長(m)
20,000
計 785.6ha
800
17,500
15,000
12,500
600
10,000
400
除間伐
410.6ha
除間伐
230.9ha
除間伐
398.6ha
200
除間伐
405.9ha
除間伐
451.7ha
7,500
5,000
2,500
0
H17
植林
H18
雪起し
H19
下刈り
H20
除間伐
0
H21 (年度)
枝打ち
作業道
作業路
【資料:林業水産課調べ】
福井市における森林整備は、主に除間伐であり、全体の約 50%を占めている。
材積(m3)
30,000
図 1-3-6 福井市における間伐材積と搬出率
25,000
22,546
75%
20,000
15,000
10,000
100%
26,799
17,051
50%
11,108
24%
5,000
22%
16%
3,589
2,623
3,669
0
H18
間伐材積(m3)
H19
18%
H20
搬出間伐材積(m3)
25%
4,732
0%
H21 (年度)
搬出率(%)
【資料:林業水産課調べ】
搬出率が低く、森林資源が有効に活用されていない。
※ 森林整備・・・森林施業とそのために必要な林道などの施設の作設、維持を通じて森林を育成すること。
※ 間伐実施率・・・10 年間の間伐実施面積の合計を間伐対象面積で割った値のこと。
- 11 -
(4-参考)
や ま も と りゅうぼく か か く
図 1-3-7 全国のスギ山元 立木 価格 ※ ・林業労働者日額賃金の推移
(円/m3)
25,000
22,707円/m3
20,000
15,000
10,000
7,690円
5,000
0
S40
S45
S50
S55
S60
H元
全国スギ山元立木価格(円/m3)
H5
(円)
18,000
16,000
14,000
13,830円
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
3,369円/m3 2,000
0
H10 H15 H19 (年)
林業労働者日額賃金(円)
【資料:(財)日本不動産研究所「山林素地及び山元立木価格調」、労働統計調査「林業労働者職種別賃金調査」】
図 1-3-8 造林(植林~主伐)モデル
【資料:林業水産課調べ】
¾
植林から主伐までの施業内訳
植林:1 回、下刈:4 回、雪起こし:9 回、枝打ち:5 回、除間伐:6 回
主伐:1 回
¾
造林(植林~主伐)にかかる費用(1ha 当たり)
施業費用:17,772,000 円、所有者負担費用:12,375,000 円
(主伐は、施業地が林道から 200~1,000m の場所での伐採・搬出・運材
費用を計上したもの(600 本/ha、0.95m3/本)。主伐以外は施業にかかる
補助がある。)
※ 山元立木価格・・・森林に生立している樹木(立木)の価格(値段)のこと。一般には、原木市場の
価格から、伐採、搬出などに必要な経費を控除して計算され、利用材積1m3 当たりの価格(円/
m3)で表される。つまり、伐採、搬出に経費がかかるほど山元立木価格は下がることとなる。
- 12 -
(5)林家などの推移
福井市の 1ha 以上の山林を所有する林家戸数は、平成 17 年時点 2,561 戸で、
昭和 55 年時点より約 2 割減少しています。本市の林業労働力 ※ は、平成 17 年
時点 1,014 人で、昭和 55 年時点より約 8 割減少しています。
図 1-3-9 福井市の林家などの推移
(戸)
6,000
5,000
※
林家
5,159
林業労働力
※
(人)
6,000
代理申請者
5,000
4,000
4,000
3,360
3,000
2,754
2,659
3,000
2,561
2,363
2,000
2,000
1,128
1,000
0
S55
H2
1,014
187220
1,000
190
0
H12
H17
(年)
【資料:農林業センサス、代理申請者は林業水産課調べ】
林家戸数、林業労働力も減少傾向にあるが、自己所有森林を自ら整備している意
欲のある所有者もいる。
※ 林家・・・図 1-3-9 では、保有山林が 1ha 以上の世帯。
※ 林業労働力・・・過去 1 年間に自分の家の林業や他で雇われて林業の作業に従事した世帯員のこと。
※ 代理申請者・・・自己所有森林を自ら整備し、森林組合を通して補助を申請している人のこと。
(6)松くい虫被害状況の推移
福井県における松くい虫の被害は、昭和 59 年度に被害材積が最大となりまし
たが、その後の被害対策により、被害面積は 1,000ha 未満に抑えられています。
面積(ha)
8,000
7,000
図 1-3-10 福井県の松くい虫被害面積・量の推移
S59 が被害量のピーク
被害面積
被害量
材積(m3)
60,000
50,000
6,000
40,000
5,000
30,000
4,000
3,000
20,000
2,000
10,000
1,000
0
0
S54 S56 S58 S60 S62 H元 H03 H05 H07 H09 H11 H13 H15 H17 H19 H21 (年度)
【資料:県 県産材活用課】
被害対策の実施により、松くい虫被害面積・量は年々減少傾向にある。
- 13 -
(7)木材の推移
福井県における木材需要量は年々減少しており、平成 20 年で 152,000m3 と
なっています。木材需要の約 70%以上を製材(住宅用)が占めています。
図 1-3-11 福井県における木材需要量の推移
(材積:千m3)
600
100%
500
木材需要量に占める
国産材率 ※上昇
400
合板外材
木材チップ外材
木材チップ国産材
製材外材
製材国産材
国産材率
80%
60%
300
40%
200
20% 総計:152千m3
100
製材用計:110千m3
0%
H18
H20 (年)
【資料:平成 20 年度 福井県林業統計書】
0
H6
H8
H10
H12
H14
H16
外材の需要が減少しており、国産材率が上昇している。
(戸)
10,000
図 1-3-12 住宅着工数の推移
福井市(戸)
福井県(戸)
100%
市内着工率(%)
8,000
80%
6,000
60%
4,497
4,000
県内の
約4割
が市内
で着工
40%
2,000
20%
1,759
0
H6
H8
H10
H12
H14
H16
H18
0%
H20 (年度)
【資料:建築統計年報】
表 1-3-1 工法別住宅着工戸数(平成 19 年)
木造軸組工法 ※
福井県
戸数
2,905
割合
56%
ツーバイフォー工法※
戸数
割合
585
11%
その他
戸数
1,721
割合
33%
表 1-3-2 福井県の住宅 1 戸当たりの使用木材割合(平成 21 年 9 月調べ)
県産材(m3)
使用材
割合
7.9
使用場所
外材(m3)
27%
柱、下地材(垂木、貫)など
国産材(m3)
割合
14.2
48%
横架材(梁・桁)、床材など
割合
7.3
25%
計(m3)
29.4
柱材など
【資料:県 県産材活用課調べ】
※ 国産材率・・・木材需要量に占める国産材の割合。
※ 木造軸組工法・・・建築構造の木構造のひとつであり、在来工法とも呼ばれる。主に柱や梁といった
軸組で支える工法。
※ ツーバイフォー工法・・・北米の木造住宅の一般的な工法で、枠組壁工法とも呼ばれる。「約 2 イン
チ×約 4 インチ(ツーバイフォー)
」材を主な基本構造材とすることが、名前の由来である。
- 14 -
(7-参考)
図 1-3-13 福井県内の木材(原木)の流れ
【資料:平成 21 年県産材活用課・森づくり課】
○
福井県が平成 21 年度にショッピングセンターにおいて一般県民を対象におこなっ
たアンケート調査(回答数:県民 1,050 人)より、福井市民 (345 人)を抽出
図 1-3-14 アンケート結果
年齢別構成
市民 13.9%
0%
17.1%
19.1%
20%
40%
15.4%
12.2% 13.0% 9.3%
60%
80%
100%
20歳未満
20代
30代
50代
40代
60代
70代以上
質問:今後、家を建てるなら、どのような家を建てますか。
木造
市民
67.5%
0%
20%
40%
12.2%
60%
18.3%
80%
100%
在来以外の木造住
宅
鉄筋コンクリート・鉄
骨造り
その他
質問:もしあなたが木造で家を建てる場合、福井で育った木を使って家を建てたいと思いますか。
市民
63.5%
0%
20%
14.8%
40%
60%
80%
※ A材・・・曲がりがなく、通直な原木:住宅用。
※ B材・・・曲がり材など:集成材用、合板用。
※ C材・・・合板などにも利用できない低質材:チップ用。
- 15 -
思う
思わない
わからない
21.7%
100%
(8)林産物の推移
福井市における特用林産物 ※ の生産は、えのきたけが主品目となっています。
図 1-3-15 福井市における特用林産物の生産量の推移①
(kg)
600,000
29,801
500,000
生しいたけ(菌床)
えのきたけ
ひらたけ
木炭
きのこ類計
441,829
400,000
300,000
373,029
200,000
100,000
16,627
18,000
(年度)
H21
【資料:林業水産課調べ】
0
H17
H18
H19
H20
図 1-3-16 福井市における特用林産物の生産量の推移②
(kg)
40,000
生しいたけ(原木)
30,000
6,650
乾燥しいたけ(原木)
80
20,000
まいたけ
かんたけ
742
山菜類
3,700
672 ぎんなん
H21 (年度)
【資料:林業水産課調べ】
14,900
10,000
0
H17
H18
H19
H20
市内で生産される特用林産物はきのこ類が多く(95%)、生産量 1 位のえのきたけは、
県内で生産される量の 99.9%を占める。
※ 特用林産物・・・食用とされるきのこ類・木の実・山菜類などのほか、非食用である木炭・竹
材・うるしなど、森林から生産されるもののうち木材を除いたものの総称のこと。
(9)森林公園利用者の推移
福井市には、3 つの森林公園が整備されています。
図 1-3-17 福井市の森林公園利用者数の推移
(人)
25,000
国見岳森林公園
SSTらんど
リズムの森
20,000
19,243
15,000
10,000
リ:3,546
5,000
国:3,233
0
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21 (年度)
【資料:林業水産課調べ】
森林公園の利用者数は、近年増加傾向がみられる。
- 16 -
福 井 市 の 森 林・林 業 に は 、前 述 の よ う な 現 状 が あ り ま す 。さ ら に 、そ の 他
の事柄も含めて整理すると、以下のようになります。
環 境 面 に お い て は 、間 伐 を 必 要 と し て い る 森 林 が 多 く な っ て き て い ま す が 、
間 伐 実 施 率 が 低 く 、未 整 備 森 林 が 増 加 し て い ま す 。さ ら に 、減 少 傾 向 に あ り
ま す が 松 枯 れ 被 害 な ど に よ り 、森 林 の 機 能 が 低 下 し て い ま す 。ま た 、ク マ や
シカなどの野生鳥獣による森林被害が拡大するおそれがあります。
z 手入れ不足の人工林が多い
z 松枯れやナラ枯れ被害がなくならない
経済面においては、林道や作業道などの路網整備に時間と費用がかかり、
作 業 現 場 ま で の ア ク セ ス が 悪 く 、労 務 費 が か さ み 、森 林 整 備 を し て も 採 算 が
と れ な く な っ て い ま す 。ま た 、木 材 価 格 が 低 迷 し て い る こ と も あ り 、間 伐 材
の 搬 出 率 が 低 く な っ て い ま す 。さ ら に 、小 規 模 林 家 が 多 く 生 産 効 率 が 低 く な
っ て い ま す 。市 民 の 多 く は 福 井 で 育 っ た 木 で 家 を 建 て た い と 思 っ て い ま す が 、
需要に応じた仕組みが確立されていません。
z 林道や作業道などの整備に時間がかかる
z 生産性の効率が低い
z 福井市産材の利用促進施策がない
z 間伐材が有効に利用されていない
z 特用林産物の生産量が増えない
人 材 面 に お い て は 、木 材 価 格 が 低 迷 し て い る た め に 森 林 所 有 者 の 意 欲 が 低
下 し 、林 業 の 担 い 手 が 減 少 し て い ま す 。ま た 、木 材 を 日 常 生 活 で 利 活 用 し な
く な っ た 現 代 に お け る 市 民 は 、森 林・林 業 と 関 わ る 機 会 が 減 少 し て お り 、森
林に関心のない世代が増加しています。
z 林業の新規担い手が増えない
z 林業の担い手が定着しない
z 森林・林業と関わる機会が減少している
z 森林・林業体験施設の機能が低下している
- 17 -
4.
森林・林業の課題
福 井 市 の 森 林・林 業 を 取 り 巻 く 現 状 か ら 、今 後 、福 井 市 が 取 り 組 む べ き 課
題が次のようにまとめられます。
課題
環境
・ 未 整 備 森 林 の増 加
・ 森 林 の機 能 低 下
森林・林業
経済
人材
・ 森 林 所 有 者 の意 欲 の低 下
・ 木 材 価 格 の低 迷
・ 林 業 労 働 力 の減 少
・ 森 林 整 備 の不 採 算 性
・ 森 林 に関 心 のない世 代 の増 加
- 18 -
第2節
1.
森林・林業の振興について
林業振興のための理念
林 業 は 、森 林 か ら 木 材 な ど を 生 産 す る 産 業 で あ る ば か り で な く 、そ の 生 産
活 動 を 通 し て 、森 林 の も つ 水 源 か ん 養 や 山 地 災 害 の 防 止 な ど の 多 面 的 機 能 の
発 揮 に 貢 献 す る も の で す 。ま た 、市 民 の 生 活 は 、森 林 の 恩 恵 を 受 け て 成 り 立
っており、この次の世代にとっても、森林は必要不可欠な存在です。
し か し 、人 が 人 為 的 に 植 え た 人 工 林 に つ い て は 、き ち ん と 手 入 れ を 行 な わ
な け れ ば 、森 林 の 多 面 的 機 能 が 十 分 に 発 揮 さ れ ま せ ん 。さ ら に 、優 良 な 木 材
を 生 産 す る た め に は 、森 林 の 手 入 れ を お ろ そ か に す る こ と は で き ま せ ん 。そ
の た め に も 、生 業 と し て の 林 業 を 育 て 、次 世 代 に 林 業 を つ な い で い く 必 要 が
あ り ま す 。こ の こ と が 様 々 な 機 能 を も つ 森 林 を つ く り 育 て て い く こ と に な り
ます。
福 井 市 で は 、福 井 豪 雨 の 経 験 を 活 か し て 、近 年 問 題 視 さ れ る 集 中 豪 雨 や 地
球 温 暖 化 な ど の 環 境 面 に 対 応 す べ く 、森 林 の 多 面 的 機 能 が 発 揮 さ れ る 豊 か な
森 林 づ く り を 目 指 し 、そ の 担 い 手 で あ る 林 業 を 育 み 、未 来 へ 引 き 継 い で い き
ます。
福井市の森林・林業における将来へ向けての理念
も
り
『未来へ引き継ぐ 福井の森林 づくり』
- 20 -
2.
林業振興のための目標と方針
林業振興のための理念として掲げた『未来へ引き継ぐ
も
り
福井の森林づく
り 』を 実 現 す る た め 、以 下 の と お り 、3 つ の 目 標 と 9 つ の 方 針 を 設 定 し ま す 。
目標 1
健全な森林をつくる
~森林整備の推進~
方針 1
伐って育む森林づくりをすすめる
方針 2
森林の手入れにかかる経費の削減をはかる
方針 3
林業就業者の育成と確保をはかる
方針 4
森林病害虫や野生鳥獣による森林への被害防止をはかる
目標 2
森林資源を使う
~木材の有効活用~
方針 5
福井市産材を主とした県産材の地産地消をすすめる
方針 6
間伐材の利用をすすめる
方針 7
特用林産物の生産をすすめる
目標 3
森林に親しむ気運を高める
~森林・林業の重要性の普及啓発~
方針 8
森林や林業についての理解の浸透をはかる
方針 9
森林にふれあう場の整備をすすめる
- 21 -
目標 1
健全な森林をつくる~森林整備の推進~
森林のもつ水源かん養や山地災害の防止などの多面的機能を十分に発揮
させるためには、適切な間伐などの手入れが実施されなければなりません。
間 伐 は 、成 長 の 過 程 で 過 密 と な っ た 森 林 の 立 木 の 密 度 を 調 整 す る た め に 行 わ
れ る 作 業 で あ り 、人 工 林 に と っ て 重 要 な 作 業 で す 。し か し 、福 井 市 の 間 伐 実
施 率 は 26% で 、 間 伐 が 必 要 な 人 工 林 の 大 半 は そ の ま ま 放 置 さ れ て い る の が
現状です。
健 全 な 森 林 を つ く り 、森 林 の 多 面 的 機 能 が 発 揮 さ れ 、市 民 が 快 適 な 生 活 環
境などの恩恵を享受するためには、森林整備を推進することが重要です。
- 22 -
方針 1
伐って育む森林づくりをすすめる
人工林の材積は年々増えており、量的には充実していますが、質的には荒廃
しているのが現状で、手入れ不足が最大の問題です。手入れ不足の人工林を減
少させるため、伐って育む森林づくりを推進していきます。
施策 1
伐ってすすめる森林整備
人 工 林 が 適 正 に 管 理 さ れ て い る と 、日 光 が 地 表 ま で 届 き 、下 層 植 生 が 豊 か
に な り 、土 壌 が 保 全 さ れ ま す 。し か し 、間 伐 が 実 施 さ れ な い 人 工 林 は 、木 が
混み合い、日光が林内に入らず、下草が育たなくなり、土壌が露出します。
人 工 林 に お い て 間 伐 が 実 施 さ れ な け れ ば 、森 林 の も つ 土 壌 保 全 機 能 や 洪 水 緩
和機能などは発揮されません。
福 井 市 の 人 工 林 の 大 半 は 間 伐 が 実 施 さ れ て お ら ず 、そ の 機 能 の 低 下 が 懸 念
されます。
[取 り 組 み ]
z
間伐や枝打ちなどを行うために、国・県・市の制度を有効かつ効果的に
活 用 し て 支 援 を 行 い ます。
z
民有林についても所有者へ広報などにより働きかけ、森林整備を推進し
ます。
《間 伐 が実 施 されていない人 工 林 》
《間 伐 が実 施 されている人 工 林 》
《枝 打 ちが実 施 されていない人 工 林 》
《枝 打 ちが実 施 されている人 工 林 》
- 23 -
し か し 、福 井 市 の 森 林 所 有 者 は 、小 規 模 な 林 家 が 多 く 、ま た 市 外 へ の 転 出
な ど に よ り 、個 々 の 所 有 者 が 効 率 的 な 森 林 整 備 を 単 独 で 実 施 す る こ と は 困 難
な状況にあります。また、林業の採算性の悪化により所有者の施業※意欲が
低 下 し て い ま す 。 こ の た め 、 主 伐 の 時 期 を 80~ 100 年 に 延 ば す 長 伐 期 施 業
に 切 り 替 え 、複 数 の 所 有 者 の 森 林 を と り ま と め る 集 約 化 ※ を 行 う こ と に よ り 、
施 業 に か か る 所 有 者 の 費 用 負 担 を 軽 減 し 、利 益 が 還 元 さ れ る よ う な 仕 組 み を
作ることが重要です。
今 後 は 、所 有 者 か ら の 施 業 依 頼 を 待 つ だ け で な く 、森 林 組 合 な ど の 林 業 事
業体※自らが所有者に提案していく「提案型集約化施業」を普及・定着する
必 要 性 が あ り ま す 。ま た 、森 林 所 有 者 が 自 分 の 土 地 の 境 界 を 知 ら な い と い う
問題も顕在化してきており、境界を明確にする必要があります。
[取 り 組 み ]
z
林業事業体の協力を得ながら、森林施業プランナー※などが原価計算を
行って作成した施業プランを基に所有者の施業意欲を引き出し、
「提案型
集約化施業」に取り組みます。
z
森 林 整 備 を 実 施 す る 際 に は 、GPS な ど を 用 い て 境 界 を 明 確 に し 、正 確 な
地図が作成されるように支援します。
A:施 業 提 案 書 B:施 業 報 告 書
期待される効果
【出 典 :提 案 型 集 約 化 施 業 資 料 】
良 質 な 木 材 生 産 に 必 要 で あ る 間 伐 の 実 施 が 進 み 、森 林 の
多面的機能が発揮される
※ 施 業( 森 林 施 業 )・・・主 に 木 材 生 産 を 目 的 に 、森 林 に 対 し て 造 林 、保 育 、伐 採 な ど 様 々
な働きかけをすること。
※ 集 約 化 施 業 ・・・複 数 の 森 林 所 有 者 の 隣 接 す る 林 地 を と り ま と め 、一 括 し て 効 率 的 に 森 林
施業を行うこと。
※ 林 業 事 業 体 ・・・他 者 か ら の 委 託 ま た は 立 木 の 購 入 に よ り 造 林 、伐 採 な ど の 林 内 作 業 を 行
う森林組合、素材生産業者などのこと。
※ 森 林 施 業 プ ラ ン ナ ー ・・・森 林 の 現 在 の 状 況 に 即 し た 路 網 計 画 や 間 伐 方 法 な ど の 森 林 施
業の方針、利用間伐などの施業の事業収支を示した施業提案書を作成し、それを森林
所有者に提示して、合意形成することができる技術者のこと。
- 24 -
方針 2
森林の手入れにかかる経費の削減をはかる
森林所有者が意欲的に森林の手入れに取り組むためには、費用負担を減らす
ことが重要です。採算性を上げて森林所有者の意欲を向上させるため、森林の
手入れにかかる経費の削減を図っていきます。
施策 2
林内路網の整備
林 道・作 業 道・作 業 路 か ら 構 成 さ れ る 路 網 は 、森 林 整 備 な ど を 効 率 的 に 行
う た め の 施 設 で 、林 業 の 最 も 重 要 な 生 産 基 盤 で す 。路 網 は 、そ れ ぞ れ の 役 割
や 利 用 形 態 に 応 じ て 適 切 に 組 み 合 わ せ 、現 地 の 条 件 を 考 慮 し て 整 備 し て い く
こ と が 重 要 で す 。 福 井 市 で は 、 林 道 ・ 作 業 道 を 併 せ た 路 網 密 度 が 24.1m/ha
( 平 成 21 年 度 末 時 点 ) で す が 、 国 が 目 指 し て い る ト ラ ッ ク の 走 行 が 可 能 な
林 道・作 業 道 の 整 備 レ ベ ル 30~ 50m/ha の 目 標 に 向 け て 取 り 組 む 必 要 が あ り
ます。
[取 り 組 み ]
z
作業現場への効率的なアクセスの確保や木材運搬コストの低減のため、
林内路網の整備を推進します。
z
簡易で耐久性のある作業道などの整備を支援します。
《トラック等 の通 行 が可 能 な構 造 の作 業 道 》
《林 内 走 行 車 (下 写 真 はフォワーダ)の通 行 が可 能 な構 造 の作 業 路 》
期待される効果
林内路網の整備が進み、施業経費が低減される
- 25 -
施策 3
林業生産性の向上
林 業 の 作 業 に お い て 、森 林 か ら 重 量 物 で あ る 丸 太 を 生 産 す る 工 程 を 機 械 化
す る こ と が 生 産 性 の 向 上 に つ な が る と 言 わ れ て い ま す 。立 木 の 伐 倒 、木 寄 せ 、
枝払い・玉切※、林道沿いの土場への運材という工程に各種高性能林業機械
を 有 効 に 活 用 し て い く こ と が 重 要 で す 。ま た 、高 性 能 林 業 機 械 の 導 入 は 、林
業従事者※の労働環境の改善や労働安全の確保といったことからも重要で
す。
[取 り 組 み ]
z
生産性の効率化や労務費の軽減のため、高性能林業機械の導入を支援し
ます。
z
高性能林業機械の導入に伴い、オペレーターの操作技術の向上や伐採か
ら搬出までの一連の作業が改善されるよう、広報に努めます。
《高 性 能 林 業 機 械 -スイングヤーダによる集 材 》
《高 性 能 林 業 機 械 -グラップルによる木 材 の積 み込 み》
期待される効果
林業の生産性が向上し、施業経費が低減される
※ 玉 切 ・・・木 の 特 徴 に 合 わ せ 、 規 定 の 寸 法 に 切 断 し て 丸 太 に す る こ と 。
※ 林 業 従 事 者 ・・・広 く 一 般 に 林 業 に 従 事 し て い る 人 の こ と 。
- 26 -
方針 3
林業就業者の育成と確保をはかる
森 林 整 備 を 積 極 的 に 実 施 し て い く た め に は 、林 業 に 携 わ る 人 材 の 育 成 が 必
要です。人材の育成と確保を図っていきます。
施策 4
担い手の育成
林業就業者※数は、林業生産活動の停滞や、人手が必要な植林や下刈など
の 造 林 作 業 の 事 業 量 が 減 少 し て き た こ と か ら 、減 少・高 齢 化 傾 向 に あ り 、将
来 へ の 担 い 手 の 育 成 が 必 要 で す 。ま た 、よ り 専 門 的 な 知 識 を 習 得 し た 林 業 の
担い手を持続的に確保していくことも重要です。
林 野 庁 は 、新 規 就 業 者 向 け に 、林 業 に 必 要 な 基 本 的 な 技 術 の 習 得 を 支 援 す
る「緑の雇用※」事業を実施しており、福井市内の林業事業体からも新規就
業 者 が 研 修 に 参 加 し て い ま す 。さ ら に 、効 率 的 で 安 定 的 な 林 業 経 営 を 目 指 す
た め に 、 施 業 の 集 約 化 を 進 め て お り 、「 森 林 施 業 プ ラ ン ナ ー 育 成 研 修 」 を 実
施しています。
[取 り 組 み ]
z
林業事業体が新規就業者の育成のために、
「 緑 の 雇 用 」事 業 を 活 用 し て 取
り組む技術力や資質向上の研修を支援します。
z
ふくい農林水産支援センターなどが実施する研修制度を活用して、林業
に携わる人材の育成に取り組みます。
《「緑 の雇 用 」事 業 による現 場 研 修 》
期待される効果
林業の担い手が増え、森林整備がすすむ
※ 林 業 就 業 者 ・・・林 業 従 事 者 の う ち 、 林 業 に 就 業 し て い る 人 の こ と 。
※ 「 緑 の 雇 用 」事 業 ・・・林 業 就 業 に 意 欲 を 有 す る 若 者 等 に 対 し て 、3 年 間 に わ た る 段 階 的
な研修(基本研修・技術高度化研修・森林施業効率化研修)を実施して、林業に必要
な基本的な技術の習得をめざす事業のこと。
- 27 -
施策 5
担い手の安定確保
雇 用 面 に つ い て 、林 業 の 作 業 形 態 で は 労 働 日 数 が 天 候 に 大 き く 影 響 を 受 け
る た め 、林 業 従 事 者 の 雇 用 は 日 給 制 が 大 勢 を 占 め て い ま す 。ま た 、労 働 面 に
ついては、高性能林業機械の導入や路網整備が実施されていることにより、
以 前 に 比 べ 従 事 者 の 労 働 環 境 は 改 善 さ れ て き て い ま す 。し か し 、林 業 に お け
る労働災害の発生率を示す死傷年千人率※は他産業に比べると、全産業平均
の 約 13 倍 あ り 、 高 い の が 現 状 で す 。 担 い 手 が 持 続 的 に 就 労 し て い く た め に
は、安全で適正な就業環境の整備が求められています。
[取 り 組 み ]
z
林業就業者の身分保障と労働力の安定確保のための退職金制度などを支
援します。
z
労働災害の防止に向けて、林業事業体に対する安全指導の徹底に取り組
みます。
z
林業経営安定のため、経営母体である林業事業体の経営基盤の強化に対
して支援します。
《安 定 確 保 のための支 援 を受 けて現 場 で働 く林 業 就 業 者 》
期待される効果
林業の担い手の就業環境が改善される
※ 死 傷 年 千 人 率 ・・・1,000 人 当 た り 1 年 間 に 発 生 す る 労 働 災 害 に よ る 死 傷 者 数( 休 業 4 日
以上)を表したもの。
- 28 -
方針 4
森林病害虫や野生鳥獣による森林への被害防止をはかる
松 く い 虫 に よ る 被 害 だ け で な く 、今 後 は ナ ラ 枯 れ や ク マ・シ カ に よ る 皮 剥
ぎ 被 害 な ど に 対 応 す る 必 要 性 が あ り ま す 。美 し い 森 林 景 観 の 保 全 や 森 林 の 多
面 的 機 能 を 維 持 す る た め 、森 林 病 害 虫 や 野 生 鳥 獣 に よ る 森 林 へ の 被 害 防 止 を
図っていきます。
施策 6
森林病害虫への対応
福 井 市 内 に は 、約 1,770ha の 松 林 が あ り 、防 風・防 潮 や 土 砂 崩 壊 防 止 な ど
に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い ま す 。福 井 市 で は 、越 前 加 賀 海 岸 国 定 公 園 に 指 定
されている海岸部を中心に松くい虫被害※の拡大防止に努めています。被害
量 は 、 昭 和 59 年 に ピ ー ク を 迎 え た 後 、 減 少 し て き て い ま す が 、 毎 年 被 害 が
報告されており、終息には至っていません。また、近年はナラ枯れ※による
ミ ズ ナ ラ や コ ナ ラ の 被 害 が 福 井 市 内 の 森 林 で 報 告 さ れ て き て い ま す 。ミ ズ ナ
ラ や コ ナ ラ は 、ド ン グ リ が な る 木 の 種 類 で 、集 団 枯 損 す る と 、ク マ な ど 野 生
生物の餌不足や森林の保水力の低下などが問題となってきます。
[取 り 組 み ]
z
松くい虫被害やナラ枯れなどの森林被害を減らすため、空中散布や樹幹
注入などにより、予防と駆除を行います。
《松 くい虫 被 害 予 防 のため空 中 散 布 》
期待される効果
《ナラ枯 れの被 害 木 》
美しい森林景観や水源のかん養等多面的機能が維持される
※ 松 く い 虫 被 害 ・・・マ ツ ノ マ ダ ラ カ ミ キ リ に よ っ て 運 ば れ た 体 長 約 1mm の 線 虫 で あ る マ
ツノザイセンチュウがマツの樹体内に侵入することにより引き起こされるマツの伝染
病(マツ材線虫病)によるもの。
※ ナ ラ 枯 れ ・・・大 量 の カ シ ノ ナ ガ キ ク イ ム シ が ナ ラ・カ シ 類 な ど の 幹 に 穴 を あ け て せ ん 入
し 、体 に 付 着 し た「 ナ ラ 菌( ブ ナ 科 樹 木 い ち ょ う 病 菌 )」を 多 量 に 樹 体 内 に 持 ち 込 む こ
とにより発生する樹木の伝染病である。これによりミズナラやコナラなどが集団的に
枯損する被害が報告されている。
- 29 -
施策 7
野生鳥獣への対応
福 井 市 内 で は 野 生 鳥 獣 に よ る 森 林 被 害 と し て 、ク マ に よ る 樹 皮 剥 ぎ が 知 ら
れ て き ま し た が 、近 年 の シ カ の 生 息 域 拡 大 に よ り 、新 た な 地 域 で シ カ に よ る
森林被害が発生するおそれがあります。シカによる被害が問題となるのは、
樹皮や幼齢木の枝葉の食害などの植林木に対する直接的被害だけではあり
ま せ ん 。群 れ で 行 動 す る 習 性 か ら 、下 層 植 生 が 食 い 尽 く さ れ 、土 壌 が 露 出 す
る 、シ カ が 好 ま な い 単 一 な 下 層 植 生 に な る 、な ど の 状 況 が 発 生 し ま す 。そ の
た め 、土 壌 流 出・生 物 多 様 性 の 喪 失 な ど 、森 林 の 多 面 的 機 能 へ の 影 響 も 懸 念
されます。
[取 り 組 み ]
z
クマ・シカなどの獣類の侵入を防ぐ侵入防護柵や樹皮剥ぎを防ぐテープ
巻きなどの被害防止策への支援を行います。
z
間伐材を搬出することが困難な奥地の森林では、クマ・シカなどの獣類
の侵入を防ぐために間伐材を残置し、障害物となるように活用します。
z
山村地域の集落周辺の森林では、明るい森林にし、人と獣類の生活空間
の緩衝帯となるように除伐などの森林整備に取り組みます。
z
生息数の増加を防ぐため、シカの有害駆除に取り組みます。
《クマによる被 害 を受 けたスギ林 》
《クマによる樹 皮 剥 ぎ》
《シカによる食 害 》
《シカによる食 害 により枯 れたスギ》
期待される効果
野生鳥獣による森林被害が軽減され、危害の防止につながる
- 30 -
目標 2
森林資源を使う~木材の有効利用~
福 井 市 の 人 工 林 に お い て 、 主 伐 対 象 ( 61 年 生 以 上 ) の ス ギ 林 は 現 在 3 割
あ り 、10 年 後 に は 、4 割 に 増 加 し ま す 。ま た 、利 用 間 伐 対 象( 36~ 60 年 生 )
の ス ギ 林 は 現 在 4 割 あ り 、 10 年 後 に は 5 割 に 増 加 し ま す 。 し か し 、 近 年 の
福 井 市 内 に お け る 間 伐 材 の 搬 出 率 は 2 割 で 、多 く は 利 用 さ れ ず に 林 内 に 放 置
さ れ て い ま す 。木 材 は 、人 間 が 利 用 す る こ と の で き る 資 源 の な か で 唯 一 再 生
産 可 能 な 資 源 で 、炭 素 を 貯 蔵 で き る 資 源 で す が 、有 効 に 利 用 さ れ て い な い の
が現状です。
森 林 資 源 を 使 う た め に は 、木 材 の 需 要 を 創 出 し て 、そ の 資 金 が 森 林 に 還 元
さ れ る こ と が 重 要 で す 。森 林 の 整 備 が 進 み 、森 林 の も つ 多 面 的 機 能 を 保 全 す
るためには、木材を有効利用することが重要です。
- 31 -
方針 5
福井市産材を主とした県産材の地産地消をすすめる
福 井 県 に お け る 木 材 需 要 量 の 7 割 は 製 材 用 で あ り 、住 宅 用 に 多 く 使 わ れ て
い ま す 。福 井 県 が 実 施 し た ア ン ケ ー ト で も 市 民 の 6 割 が 福 井 で 育 っ た 木 で 家
を 建 て た い と 思 っ て い ま す 。森 林 整 備 を 推 進 す る と と も に 、市 内 や 県 内 で 育
った木の利用を推進していきます。
施策 8
福井市産材の家づくり
地 域 で 育 っ た 木 で 家 を 建 て る こ と は 、そ の 土 地 の 湿 度 や 降 水 量 、日 照 時 間
な ど の 気 候 風 土 の 面 か ら み て 適 し て い る と 言 わ れ て い ま す 。ま た 、ウ ッ ド マ
イレージ※を考えると環境面からも地域で育った木で家を建てることは有効
で す 。現 在 、県 内 に お け る 木 造 軸 組 工 法( 在 来 工 法 )の 住 宅 の 割 合 は 全 国 平
均の 2 割高い 6 割で、柱や垂木には県産材が使用されています。
[取 り 組 み ]
z
市産材を使用した住宅の建設促進に取り組みます。
z
県産材住宅コーディネーター※と連携して、市民に市産材を使った家づ
くりの働きかけを行います。
z
市産材であることを証明するため、伐採届の提出などで管理することを
推進します。
《市 産 材 を活 用 した家 づくり》
期待される効果
市産材の活用につながり、使用量が増える
※ ウ ッ ド マ イ レ ー ジ ・・・木 材 の 量 と 木 材 の 産 地 か ら 消 費 地 ま で の 輸 送 距 離 を 乗 じ た も の 。
距離が長いほど、輸送にかかる燃料や二酸化炭素の排出量が多くなるため、環境への
負荷が大きい。
※
県 産 材 住 宅 コ ー デ ィ ネ ー タ ー ・・・建 築 士 や 建 築 大 工 で 、県 産 品 活 用 推 進 セ ン タ ー が 実 施
する研修を終了し、福井県から認定され、住宅の提案や相談に応じる者。
- 32 -
施策 9
福井市産材のブランド化
木 材 を 扱 う 工 務 店 や 消 費 者 側 か ら は 、木 材 の 曲 が り や 狂 い 、割 れ が お き に
く い 品 質・性 能 の 確 か な 木 材 が 求 め ら れ て い ま す 。機 械 に よ る 人 工 乾 燥 材 も
生産されていますが、生産量が少ないのが現状です。
[取 り 組 み ]
z
森林所有者や伐採業者に働きかけて、葉枯らし※などの天然乾燥に取り
組みます。
z
適期伐採※や葉枯らしなどを促進し、色・艶の良い高品質な製品の生産
に取り組みます。
《林 内 における葉 枯 らし乾 燥 》
期待される効果
品質が向上し、市産材の価値が高まる
※ 葉 枯 ら し ・・・伐 採 し た 木 を 枝 葉 の つ い た ま ま 一 定 期 間( 通 常 数 ヶ 月 程 度 )林 内 に 放 置 し 、
残した枝葉からの水分蒸発によって材の含水率を低下させる方法。時間をかけて、水
分が木から抜けていくので、色・艶の良い材が生産される方法として、また、搬出す
る材を軽くする方法として古くから行われていた。
※ 適 期 伐 採 ・・・家 造 り に 適 し た 樹 木 を 、最 適 な 季 節 に 伐 り 出 す こ と 。別 称 、旬 伐 り 。福 井
の ス ギ に つ い て は 、 9~ 11 月 に 伐 採 す る の が よ い と 言 わ れ て い る 。
- 33 -
施 策 10
公共施設での木づかい
子どもたちが毎日通う学校や市民が訪れる交流施設などの公共施設に木
材 が 利 用 さ れ る こ と は 、市 民 が 身 近 に 木 造 建 築 物 と 接 し 、木 の 良 さ を 理 解 す
る 上 で も 大 切 で す 。木 材 を 利 用 し た 施 設 は 、木 材 の 持 つ や わ ら か さ・あ た た
か さ・高 い 調 湿 性 な ど の 特 性 に よ り 、ぬ く も り の あ る 学 習 や 潤 い の あ る 生 活
環 境 を 実 現 す る 上 で 大 き な 効 果 が あ る と さ れ て い ま す 。 平 成 22 年 10 月 1
日に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行され、
地方公共団体においても木材利用拡大に向けての取り組みが求められてい
ます。
[取 り 組 み ]
z
小中学校、公民館など、市民が利用する公共施設において、福井市産材
を含む県産材の利用を積極的に推進します。
《県 産 材 を活 用 した公 共 施 設 づくり》
期待される効果
木 材 の 良 さ が PR さ れ 、 木 材 需 要 の 拡 大 に つ な が る
- 34 -
方針 6
間伐材の利用をすすめる
森 林 の 手 入 れ を 実 施 す る と 間 伐 材 が 発 生 し ま す が 、福 井 市 で は 約 8 割 が 林
内 に そ の ま ま 放 置 さ れ て お り 、有 効 に 利 用 さ れ て い な い の が 現 状 で す 。搬 出
経費を抑え、搬出率を高めるとともに、間伐材の利用を推進していきます。
施 策 11
搬出して使う間伐材
人 工 林 の 適 正 な 管 理 の た め に は 間 伐 が 必 要 で あ り 、今 後 福 井 市 内 の 森 林 に
お い て 森 林 整 備 が 進 む と 、多 く の 間 伐 材 が 発 生 し ま す 。森 林 資 源 を 有 効 に 活
用 し 、森 林 所 有 者 に 資 金 を 還 元 す る た め に 、利 用 で き る 間 伐 材 は 搬 出 を 促 進
す る こ と が 重 要 で す 。近 年 、福 井 市 内 に は 大 規 模 集 成 材 工 場 が 、近 県 に は 合
板 工 場 が 進 出 し て き て お り 、そ の 工 場 が 近 隣 か ら 木 材 を 調 達 し よ う と し て い
ることから、県内では間伐材の需要が増えてきています。
[取 り 組 み ]
z
搬出経費の負担軽減のため、間伐材の搬出を支援します。
z
間伐材の太さにあわせて、市場や集成材工場などに供給し、利用を推進
します。
z
公共工事において、間伐材の利用を推進します。
z
木質ペレットなどの木質バイオマスエネルギーの利活用を検討します。
z
固定観念にとらわれない新たな間伐材の利活用方法を検討します。
《搬 出 された間 伐 材 》
《間 伐 材 を使 用 した転 落 防 止 柵 》
期待される効果
《間 伐 材 を使 用 した魚 礁 》
間伐材が有効に活用され、収益が増える
- 35 -
方針 7
特用林産物の生産をすすめる
森 林 か ら 生 産 さ れ る も の は 、木 材 だ け で な く 、山 の 恵 み の き の こ 類 や 炭 な
ど の 特 用 林 産 物 も あ り 、福 井 市 内 で は き の こ 類 の 生 産 が 盛 ん で す 。地 域 の 活
性化のため、特用林産物の生産を推進していきます。
施 策 12
生産の拡大
特 用 林 産 物 の 生 産 は 、木 材 生 産 と と も に 林 業 振 興 に と っ て 重 要 で あ り 、地
域 経 済 の 振 興 や 就 業 の 場 の 確 保 と い っ た 面 で も 重 要 と 考 え ら れ ま す 。近 年 の
健康ブームで低カロリーのきのこ類が脚光を浴びており、生産者にとって
は 、消 費 拡 大 の 機 会 と な っ て い ま す 。お が 屑 な ど も き の こ 類 の 菌 床 の 材 料 と
し て 有 効 活 用 さ れ て い ま す 。ま た 、炭 に つ い て は 多 孔 質 と い う 特 性 を 活 か し
た 、土 壌 改 良 材 や 床 下 調 湿 材 な ど 最 近 注 目 さ れ て き た 使 用 方 法 も あ り 、利 用
拡大が望めます。
[取 り 組 み ]
z
きのこ類の生産について、施設などの整備を支援します。
z
炭類や山菜など他の特用林産物について、地域の特性にあわせて支援し
ます。
《エノキタケの生 産 》
《菌 床 シイタケの生 産 》
《原 木 シイタケの生 産 》
《木 炭 の生 産 》
期待される効果
木材の有効利用につながり、生産が増える
- 36 -
目標 3
森林に親しむ気運を高める~森林・林業の重要性の普及啓発~
現 代 の 日 常 生 活 に お い て は 、生 活 様 式 の 変 化 に よ り 、森 林 や 林 業 を 身 近 に
感 じ る 機 会 が 失 わ れ て お り 、森 林 や 林 業 か ら 受 け て い る 様 々 な 恩 恵 を 実 感 す
ることが困難になっています。しかし、森林のもつ公益的機能※に対する期
待 は 内 閣 府 の「 森 林 と 生 活 に 関 す る 世 論 調 査 」か ら も 年 々 高 ま っ て き て い る
ことがわかります。
木材の生産機能にとどまらず、公益的機能をもつ森林を社会全体で支え、
森 林 を 育 成 し て 管 理 し て い く た め に は 、森 林 組 合 な ど の 事 業 者 は も と よ り 市
民も森林や林業、木材利用についての意義や大切さを理解し、関心を深め、
守り育てることが重要です。
※ 公 益 的 機 能 ・・・森 林 の も つ 多 面 的 機 能 の う ち 、 地 球 環 境 保 全 機 能 、 土 砂 災 害 防 止 機 能 、
水源かん養機能などの公共の利益に関する機能のこと。
- 37 -
方針 8
森林や林業についての理解の浸透をはかる
市 民 の 多 く が 都 市 部 に 居 住 し て お り 、山 村 地 域 に 居 住・就 労 し て い る 市 民
は少なく、日常生活の中で森林や林業と関わる機会が少なくなっています。
森 林 や 林 業 、木 材 の 利 用 に つ い て の 学 習 会 や イ ベ ン ト を 実 施 し 、森 林・林 業
の重要性の普及啓発を図っていきます。
施 策 13
森林や林業に親しむ機会の創出
近 年 、学 校 で は 総 合 学 習 の な か で 、子 ど も た ち が 環 境 や 森 林 に つ い て 学 習
す る 機 会 を 増 や し て き て い ま す 。森 林 や 林 業 、木 材 利 用 に つ い て の 理 解 や 関
心を深める取り組みは未来の森林・林業を考える上でも重要です。
[取 り 組 み ]
z
森林づくりへの参加意欲を高めるために、森林や林業についての学習会
やイベント、パネル展などの実施に取り組みます。
z
グリーンツーリズム※など山村地域での体験活動を通して、都市部の住
民が森林に親しむイベント開催を推進します。
《森 林 や林 業 について学 ぶ学 習 会 》
《森 林 や林 業 について紹 介 するパネル展 》
《枯 れた松 林 を再 生 する植 林 活 動 》
《植 栽 された木 を守 る草 刈 体 験 》
期待される効果
森林や林業の重要性が理解され、関心をもつ市民が増える
※ グ リ ー ン ツ ー リ ズ ム ・・・農 村 や 漁 村 で の 長 期・短 期 滞 在 型 休 暇 。都 市 住 民 が 農 家 な ど に
ホームステイして農作業を体験したり、その地域の歴史や自然に親しむ余暇活動。
- 38 -
方針 9
森林にふれあう場の整備をすすめる
市 民 が 気 軽 に 訪 れ 、森 林 を 身 近 に 感 じ る 場 所 と し て 、森 林 公 園 や 散 策 路 な
ど が あ り ま す 。広 く 森 林 に ふ れ あ う 場 を 提 供 す る た め 、森 林 公 園 な ど の 整 備
を推進していきます。
施 策 14
森林や林業に親しむ施設の整備
近年、高齢化の進行や健康ブームに伴い、森林浴※などによる森林の活用
が 進 ん で い ま す 。ま た 、森 林 が 心 身 に も た ら す リ フ レ ッ シ ュ 効 果 な ど に 期 待
が高まっています。
学 校 の 総 合 学 習 に お い て 、森 林 や 施 設 を 利 用 し た 森 林・林 業 体 験 活 動 に 取
り組む学校もあります。
[取 り 組 み ]
z
自然体験、散策、レクレーション活動を行える森林公園などの整備を推
進します。
《森 林 散 策 の場 の整 備 》
《森 林 公 園 の整 備 》
《レクレーションを楽 しむ子 どもたち》
期待される効果
森林にふれあえる場が提供され、森林に親しめる
※ 森 林 浴 ・・・健 康 法 と し て 、 森 林 の 中 に 入 り 、 す が す が し い 空 気 に ひ た る こ と 。
- 39 -
第2章
水産業
第1節
水産業の現状と課題について
1. 水 産 業 を 取 り 巻 く 環 境
福 井 市 の 沿 岸 は 、屈 曲 が 少 な く 外 洋 に 面 し た 延 長 約 45km の 海 岸 線 で あ り 、
越 前 加 賀 海 岸 国 定 公 園 特 別 地 域 に 指 定 さ れ て い ま す 。鷹 巣 漁 港 か ら 北 側 は 砂
浜 が 連 な り 、南 側 は 奇 岩 や 断 崖 の 続 く 岩 礁 帯 の 地 域 で す 。福 井 市 内 中 央 に は 、
一 級 河 川 の 九 頭 竜 川 、足 羽 川 、日 野 川 が 流 れ 、北 部 で 合 流 し て 隣 接 す る 坂 井
市を通って日本海に注いでいます。
た か
す
な が は し
す ご
う
あ ゆ か わ
し ら は ま
お
に ゅ
う
お お
み
ぐ み ざ き
本市には、北から鷹巣、長橋、菅生、鮎川、白浜、大丹生、大味、茱崎、
い
く ら
居倉の 9 漁港があります。そのうち他港から寄港可能な第 2 種漁港は鷹巣、
白 浜 、茱 崎 の 3 漁 港 で 、残 り の 6 漁 港 は 地 元 漁 業 者 の み が 利 用 す る 第 1 種 漁
港となっています。
こ の よ う に 、地 形 的 制 約 や 漁 港 の 規 模 も 小 さ い こ と か ら 、主 と し て 漁 船 漁
業 を 個 人 で 営 む 漁 業 者 が 大 勢 を 占 め て い ま す 。本 市 内 の 漁 業 種 類 は 、底 曳 網
漁業、定置網漁業、いか釣り漁業、刺網漁業、一本釣り漁業などです。
また、内水面漁業※については、鮎釣りをはじめ県内外からの釣り客によ
る遊漁が専ら中心となっています。
鷹 巣 漁 港( 県 管 理 )
鷹 巣 漁 港( 県 管 理 )
長橋漁港
長橋漁港
菅生漁港
菅生漁港
鮎川漁港
鮎川漁港
白浜漁港
白浜漁港
大丹生漁港
大丹生漁港
大味漁港
大味漁港
九頭竜川
茱崎漁港
(
(県
県管
管理
理)
)
日野川
足羽川
居倉漁港
居倉漁港
C 2010 google-画 像 ○
C 2010 TerraMetrics, 地 図 データ○
C 2010 ZENRIN
○
※
内 水 面 漁 業 ・・・河 川 ・ 湖 沼 な ど で 行 う 漁 業 及 び 養 殖 業
- 42 -
《 鷹 巣 漁 港 北 側 ( 砂 浜 )》
《 鮎 川 漁 港 周 辺 ( 岩 礁 )》
《大丹生漁港》
《 足 羽 川( 朝 谷 町 付 近 )》
- 43 -
2. 水 産 業 の 現 状
( 1) 漁 獲 量 と 生 産 額 の 推 移
福 井 市 沿 岸 の 漁 獲 量 及 び 生 産 額 は 、 平 成 元 年 に 2,533 ト ン 、 10 億 6,700 万
円 で し た が 、 平 成 21 年 に は 994 ト ン 、 4 億 1,900 万 円 と 、 そ れ ぞ れ 61% の
減少となっています。主な要因としては、平成 7 年まで漁獲量の大半を占め
てきた「まき網漁業」が無くなったことが挙げられます。
図1-2-1 福井市沿岸の漁獲量と生産額の推移
図 1-2-1
福 井 市 沿 岸 の漁 獲 量 と生 産 額 の推 移
3,000
漁獲量(漁業種類)
1,200
まき網
2,500
採貝・採藻
生
800
800 産
額
一本釣
(
(
漁 2,000
獲
量
1,000
1,500
600
600 百
1,000
万
400
400 円
)
)
㌧
延縄
刺網
いか釣
定置網
底曳網
500
200
200
その他
生産額
全漁業
0
0
H元
H3
H5
H7
0
H9 H11 H13 H15 H17 H19 H21 (年)
資料:福井市・越廼漁業協同組合 業務報告書
61%減 少
漁獲量
平成元年 2,533 トン ⇒ 平成21年 994 トン
生産額
平成元年 1,067百万円 ⇒ 平成21年 419百万円
61%減 少
- 44 -
( 2) 漁 獲 魚 種 の 構 成
福井市沿岸で漁獲される主な魚種について、魚種ごとに漁獲量の変化をみ
る と 、 平 成 11 年 に 199 ト ン の 漁 獲 が あ っ た 「 す る め い か 」 は 、 平 成 20 年 に
は 73 ト ン と 、 63%の 減 少 と な っ て い ま す 。
ま た 、 平 成 10 年 ま で ほ と ん ど 漁 獲 の 無 か っ た 「 さ わ ら 類 」 が 、 平 成 11 年
に 2 ト ン の 漁 獲 が あ り 、 平 成 20 年 に は 83 ト ン と 急 激 に 漁 獲 量 が 増 え て き て
います。
なお、「あじ類」、「ぶり類」は漁獲量に変動はあるものの、福井市沿岸
の主要な漁獲物となっています。
図1-2-2 福井市で漁獲される魚種の構成の変化
1,500
魚種別
漁 1,000
獲
量
92t 6.8%
(
するめいか
199t 17.6%
126t 11.2%
ぶり類
402t
29.5%
あじ類
424t
37.6%
380t
27.9%
)
㌧
500
0
H11
1
73t 6.5%
83t 7.4% さわら類
244t
21.8%
その他
さざえ
たこ類
するめいか
さわら類
まだい
ひらめ
ぶり類
さば類
あじ類
244t
21.8%
H16 ※
2
H20 ※
3
(年 )
資料:福井農政事務所『福井県漁業の動き』、福井農林統計協会『データは漁業を読む』
漁獲量
63%減 少
するめいか
平成11年 199 トン ⇒ 平成20年 73 トン
(17.6%) ( 6.5%)
急増
さわら類
※
平成11年 2 トン ⇒ 平成20年 83 トン
( 0.2%) ( 7.4%)
H16、 H20 デ ー タ は 、 す る め い か 漁 獲 量 か ら 県 外 水 揚 数 量 を 差 し 引 い た 漁 獲 量
- 45 -
( 3) 市 場 単 価 の 推 移
福 井 市 沿 岸 で 漁 獲 さ れ る 主 な 魚 種 に つ い て 、福 井 市 中 央 卸 売 市 場 で の 市 場
単 価 ※ の 推 移 を み る と 、比 較 的 価 格 の 高 か っ た「 ひ ら め 」、「 ま だ い 」、「 ぶ
り ※ 」の 単 価 が 下 落 し て い ま す 。平 成 10 年 と 平 成 21 年 の 市 場 単 価 を 比 較 す
る と 、「 ひ ら め 」は 2,382 円 /kg が 1,988 円 /kg( 17% の 減 少 )と な り 、「 ま
だ い 」で は 1,238 円 /kg が 817 円 /kg( 34% の 減 少 )に 、「 ぶ り 」で は 1,043
円 /kg が 357 円 /kg( 66% の 減 少 ) に 減 少 し て い ま す 。
図1-2-3 福井市の魚種別市場単価の推移
3,000
魚種別
市 2,500
ひらめ
まだい
あじ
さば
ぶり
するめいか
たこ
さざえ
(
場
単 2,000
価
1,500
)
円
/ 1,000
㎏
500
0
H10
H12
H14
H16
H18
H20
(年)
資料:福井市中央卸売市場年報
市場単価
17%減 少
ひらめ
平成10年 2,382円/㎏ ⇒ 平成21年 1,988円/㎏
34%減 少
まだい
平成10年 1,238円/㎏ ⇒ 平成21年 817円/㎏
※
ぶ り
※
※
66%減 少
平成10年 1,043円/㎏ ⇒ 平成21年 357円/㎏
市 場 単 価 ・・・市 場 で の 卸 売 取 引 価 格 を 、 魚 の 重 さ 1 ㎏ 当 た り で 割 り 返 し た 単 価
ぶ り ・・・成 長 過 程 で 名 前 が 変 わ る 魚 (出 世 魚 )で 、わ ら さ 、は ま ち 等 を 含 ま な い 約 80 ㎝・
5 ㎏以上の「ぶり」のみ
- 46 -
( 4) 漁 業 者 数 と 年 齢 構 成 の 推 移
福 井 市 内 の 男 性 漁 業 者 数 は 、 昭 和 63 年 の 273 人 か ら 平 成 20 年 の 110 人
と 、 こ の 20 年 間 で 60%も 減 少 し て い ま す 。
ま た 、 年 齢 構 成 に お い て も 、 65 歳 以 上 の 高 齢 者 が 漁 業 者 全 体 に 占 め る 割
合 は 、昭 和 63 年 の 16% か ら 平 成 20 年 の 61% に 大 幅 に 増 加 し 、漁 業 者 の 高
齢化が著しく進行しています。
図1-2-4 男性漁業者数と年齢構成の推移
100
1
300
6
65
80 5
0.8
歳
以
60 上
0.6
の
0.4
40 割
合
20
0.2
%
60
00
)
0
S63
H5
H10
H15
)
120
(
人
(
240
漁
業
者 180
数
漁業者数
65歳以上
50~64歳
30~49歳
29歳以下
65歳以上%
65歳以上割合
---●
●
高齢者
(%)
H20 (年)
資料:漁業センサス 報告書
60%減 少
漁業者数
昭和63年 273人 ⇒ 平成20年 110人
45%増 加
※
高齢化率
※
昭和63年 16% ⇒ 平成20年 61%
高 齢 化 率 ・・・漁 業 者 の う ち 、 65 歳 以 上 の 占 め る 割 合
- 47 -
( 5) 河 川 の 遊 漁 状 況 の 変 化
本市の中心部を流れる足羽川における遊漁料※収入の推移をみると、平成
17 年 は 363 万 円 に ま で 落 ち 込 み 、 平 成 14 年 の 収 入 の 約 16% に ま で 大 き く
減 少 し ま し た 。こ れ は 、平 成 16 年 の 福 井 豪 雨 災 害 の 復 旧 工 事 に よ る 影 響 で 、
釣り客が激減したことを示しています。
そ の 後 、 平 成 21 年 に は 1,699 万 円 と な り 、 現 在 は 平 成 13 年 当 時 の 水 準
まで回復してきています。
図1-2-5 足羽川漁協の遊漁料収入と鮎放流量の推移
9,000
遊 20,000
漁
料
収 15,000
入
7,200
10,000
3,600 ㎏
鮎放流量
1,800
5,000
0
遊漁料
)
)
千
円
放
5,400 流
量
(
(
25,000
0
H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 (年)
0
資料:足羽川漁業協同組合 事業報告書
遊漁料※収入
470%増 加
平 成 17 年 363 万 円
※
⇒
平 成 21 年 1,699 万 円
遊漁料・・・娯楽として釣りや漁を行う際に支払う料金
- 48 -
( 6) 漁 獲 物 の 流 通 状 況
平 成 20 年 の 福 井 市 で 水 揚 げ さ れ た 漁 獲 物 に つ い て 、 県 内 外 へ の 出 荷 状 況
を 金 額 ベ ー ス で み る と 、 生 産 額 全 体 の 94% が 県 内 向 け に 出 荷 さ れ 、 県 外 へ
出 荷 さ れ た の は 6% と な っ て い ま す 。
平 成 20 年 度 に 福 井 市 中 央 卸 売 市 場 に お い て 入 荷 さ れ た 漁 獲 物 の う ち 、 県
内 産 は 25% で 、 そ の う ち 7% が 福 井 市 産 と な っ て い ま す 。
図1-2-6 福井市産漁獲物の流通状況
平 成 20 年 福 井 市 産福井市
漁 獲 物 の県 内 外 出 荷 状 況
(生産金額ベースで算出)
6%
県内
県外
94%
資料:福井市漁協 買人別統計表及び福井県漁連 越前支所越廼出張所 取扱高表
平成20年度 中央卸売市場入荷状況
(入荷重量ベースで算出)
7%
18%
75%
市内産
市外産
県外産
資料:福井市中央卸売市場 データ
- 49 -
( 7) 魚 の 消 費 量 の 推 移
福 井 市 の 1 世 帯 当 た り の 年 間 魚 介 類 の 消 費 量 の 推 移 を み る と 、 平 成 12 年
以 降 36 ㎏ ~ 41 ㎏ ほ ど で 推 移 し て お り 、 特 に 平 成 19 年 以 降 は 減 少 傾 向 を 示
し て い ま す 。 支 出 金 額 に つ い て み る と 、 平 成 12 年 に 魚 介 類 で 6 万 7 千 円 だ
っ た も の が 、 平 成 21 年 に は 5 万 3 千 円 と 減 少 し て い ま す 。 全 国 平 均 も 同 様
に、消費量、支出金額ともに減少傾向にあります。
一 方 、 福 井 市 の 肉 類 の 消 費 量 と 支 出 金 額 は 増 加 し て お り 、 平 成 12 年 の 支
出 金 額 6 万 3 千 円 、消 費 量 35.3 ㎏ が 、平 成 21 年 に は そ れ ぞ れ 、6 万 8 千 円 、
43.1 ㎏ と な っ て い ま す 。
肉類の消費が進み、魚介類の消費が減少しています。
図1-2-7 1世帯当たり魚介類・肉類の
消費量と支出金額の推移
100
80
購入数量
全国 魚介類数量
市 肉類数量
(
(
消
費
量
市 魚介類数量
60 支
出
金
額
40
75
50
㎏
)
25
20
)
千
円
市 魚介類支出額
支出金額
-
●
-
市 魚介類支出額
全国 魚介支出額
魚介類支出額
- ●- 全国
市 肉類支出額
- ●- 市 肉類支出額
00
0
H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 (年)
資料:総務省『家計調査年報』(二人以上の世帯)
消費量
10%減少
魚介類 平成12年 39.9 ㎏ ⇒ 平成21年 35.8 ㎏
( [全国] 平成12年 44.2 ㎏
18%減少 [全国] 平成21年 36.3 ㎏ )
22%増加
肉 類 平成12年 35.3 ㎏ ⇒ 平成21年 43.1 ㎏
- 50 -
福 井 市 の 水 産 業 に は 、前 述 し た よ う な 現 状 が あ り ま す 。さ ら に 、そ の 他 の
事柄も含めて整理すると、以下のようになります。
生 産 面 に お い て は 、漁 業 者 の 減 少 や 高 齢 化 の 進 行 、水 産 資 源 の 減 少 な ど に
よ り 、漁 獲 量 が 減 少 し て い ま す 。市 場 で の 価 格 低 下 や 漁 業 経 費 の 増 加 、大 型
ク ラ ゲ に よ る 被 害 な ど が 漁 業 経 営 を 圧 迫 し て い ま す 。さ ら に 漁 業 者 の 高 齢 化
が 進 む 中 、漁 港 施 設 整 備 の 遅 れ が 就 労 負 担 を 大 き く し て い ま す 。ま た 、人 口
減少による地域の活力低下といった現状もあります。
z 漁場機能が低下して漁獲量が減っている
z 魚価が安くて所得が安定しない
z 燃油高騰・大型クラゲ被害などで経営が苦しい
z 漁港施設の近代化が進んでいない
z 漁村地域の人口減少で活気が足りない
z 優れた遊漁の場がありながら誘客に活用していない
流 通 面 に お い て は 、小 さ な 流 通 規 模 の 中 で 、特 色 の あ る 水 産 物 も 見 ら れ な
いため、市場での価格の安定性や収益が上がらないのが現状です。
z 水産物のブランド品が見当たらない
消 費 面 に お い て は 、簡 単 に 調 理 が 可 能 で 食 べ や す い 食 材 を 好 む 家 庭 が 増 え 、
そ れ が 魚 介 類 の 消 費 量 が 減 っ て き て い ま す 。そ れ に よ り 家 庭 で 魚 を さ ば く こ
とが減り、魚をさばける人も減ってきています。
z 魚介類の消費量が減っている
z 魚をさばける人・食べ方を知っている人が減っている
- 51 -
3. 水 産 業 の 課 題
福 井 市 の 水 産 業 を 取 り 巻 く 現 状 か ら 、今 後 、福 井 市 が 取 り 組 む べ き 課 題 が
次のようにまとめられます。
課 題
生産
〇漁 獲 量 ・生 産 額 の減 少
〇市 場 単 価 の低 下
〇漁 業 者 の高 齢 化 ・後 継 者 不 足
流通
〇県 内 ・市 内 流 通 にとどまる
消費
〇魚 介 類 の消 費 減 少
- 52 -
第2節
1.
水産業の振興について
水産業振興のための理念
水 産 業 は 、海 や 川 か ら 魚 介 類 を 採 捕 し 、動 物 性 た ん ぱ く 質 や 貴 重 な 栄 養 を
含 む 食 料 を 市 民 に 供 給 す る 産 業 で あ り 、健 康 で 豊 か な 市 民 の 生 活 を 支 え て い
ます。
しかし、前節で述べたように、現在、福井市の水産業は、漁業者の減少、
高 齢 化 な ど の 課 題 を は じ め 、漁 獲 量 、生 産 額 が 減 少 す る な ど 、様 々 な 問 題 に
直 面 し て い ま す 。こ の よ う な 状 況 を 踏 ま え 、今 後 を 見 す え た 福 井 市 の 水 産 業
の あ り 方 を 模 索 し て い か な け れ ば な り ま せ ん 。そ し て 、将 来 に 向 か っ て 持 続
力 の あ る 産 業 と し て 、水 産 業 を 育 て て い く こ と が 急 務 で あ り 、次 世 代 に 福 井
市の水産業を受け継いでいく必要があります。
生 産 量 が 減 少 す る 中 、福 井 市 の 水 産 業 の 振 興 を 図 る た め 、海 や 川 か ら 得 ら
れ る 恵 み を 利 活 用 し 、新 た な 養 殖 技 法 や 未 利 用 水 産 物 の 活 用 、付 加 価 値 を 高
め る 加 工 技 術 な ど 創 意 工 夫 に 取 り 組 み 、水 産 物 の 生 産 及 び 消 費 の 拡 大 に つ な
げることが重要です。
福井市の水産業における将来へ向けての理念
『福井の恵みを活かした水産業の再興』
- 54 -
2.
水産業振興のための目標と方針
水 産 業 振 興 の た め の 理 念 と し て 掲 げ た『 福 井 の 恵 み を 活 か し た 水 産 業 の 再
興 』を 実 現 す る た め 、以 下 の と お り 、3 つ の 目 標 と 6 つ の 方 針 を 設 定 し ま す 。
目標 1
力強い漁業生産力の向上を図る
~生産の向上~
方針 1
持続的な水産資源の利用をめざして
方針 2
漁業生産額向上をめざして
方針 3
漁業経営の安定と就労環境の改善をめざして
方針 4
活気ある漁村地域の創造をめざして
目標 2
魅力ある福井市の水産物を創出する
~流通の促進~
方針 5
福井市の水産物の特産化をめざして
目標 3
親しまれる魚食普及を推進する
~消費の拡大~
方針 6
食生活における魚食普及拡大をめざして
- 55 -
目標 1
力強い漁業生産力の向上を図る
~生産の向上~
福 井 市 の 漁 業 は 、個 人 で 漁 業 を 営 む 零 細 な 経 営 体 が ほ と ん ど で あ り 、漁 業
者 の 減 少 や 高 齢 化 が 進 み 、漁 獲 量 も 減 少 す る 中 で 、生 産 を 維 持 し て い く こ と
が 課 題 で す 。そ の た め 、限 ら れ た 水 産 資 源 の 有 効 利 用 と 漁 業 者 の 収 益 確 保 を
図りながら、漁業生産の向上を目指していきます。
- 56 -
方針 1
持続的な水産資源の利用をめざして
漁 場 環 境 の 悪 化 が 漁 獲 量 減 少 の 要 因 の ひ と つ と な っ て い ま す 。持 続 的 な 水
産 資 源 の 利 用 を 図 る た め 、漁 場 環 境 の 保 全 や 水 産 資 源 の 保 護 、増 殖 を 推 進 し
ていきます。
施策 1
漁場環境の保全
漁 場 環 境 を 良 く す る こ と に よ り 、多 く の 魚 介 類 が 集 ま り 生 息 し 、漁 獲 量 の
維 持・増 加 に つ な が り ま す 。漁 場 の 永 続 利 用 の た め に は 、漁 場 環 境 の 保 全 が
必要です。
[取 り 組 み ]
か い て い こ う う ん
z
生息環境を保全する漁場の海底耕耘※の実施を支援します。
z
間伐材魚礁※の設置や岩のり場の整備を行い、漁場造成を推進します。
《海 底 耕 耘 》
《魚 礁 設 置 》
日 本 海 の 沿 岸 は 、冬 の 荒 天 の 後 に 多 く の 漂 流 ゴ ミ が 漂 着 し ま す 。漁 業 の 弊
害にもなり、漁場環境が悪化します。
ま た 、豊 か な 森 林 と 川 が 海 を 育 む と 言 わ れ て お り 、森・川・海 が 一 体 と な
った環境保全が重要です。
[取 り 組 み ]
z
漁 場 環 境 の 保 全 の た め 、海 岸・河 川 の 清 掃 活 動 や 植 樹 活 動 を 支 援 し ま す 。
《海 岸 清 掃 》
期待される効果
《漁 業 地 区 市 民 の植 樹 活 動 》
良好な漁場となり、水産資源が確保される
※
海 底 耕 耘 ・・・有 機 物 が 堆 積 し た 海 底 を 、 耕 耘 器 具 を 曳 い て 耕 し 、 土 質 環 境 を 改 善 す る
※
魚 礁 ・・・魚 介 類 の 生 息 、 繁 殖 の た め に 海 底 に 設 置 さ れ る 構 造 物 ( 人 工 魚 礁 )
- 57 -
施策 2
稚魚・稚貝の放流
福 井 市 の 漁 獲 量 は 減 少 傾 向 に あ り 、本 市 沿 岸 で は 、以 前 か ら 水 産 資 源 の 保
護 や 増 殖 を 図 る た め 、魚 介 類 の 稚 魚・稚 貝 を 放 流 し て い ま す 。漁 業 対 象 と し
て 重 要 な 魚 介 類 が た く さ ん 獲 れ る よ う に す る た め 、ま た 、獲 り 尽 さ な い よ う
にするためには、稚魚・稚貝放流が必要です。
[取 り 組 み ]
z
ひらめ・まだい・あわびなどの放流を支援します。
z
生残率向上につながる効果的な育成や放流の手法を調査・研究します。
《ひらめの放 流 》
福 井 市 内 に は 、九 頭 竜 川・足 羽 川・日 野 川 と い っ た 大 き な 河 川 が 流 れ て い
ま す 。こ れ ら の 河 川 で は 、内 水 面 漁 業 に お い て 重 要 な 鮎 や さ く ら ま す( や ま
め )な ど が 生 息 し て い ま す 。多 く の 釣 り 人 が 集 ま る 魅 力 的 な 河 川 と な る よ う 、
淡水魚を守り、増やしていく取り組みが必要です。
[取 り 組 み ]
z
鮎やさくらます(やまめ)などの淡水魚の稚魚放流を支援します。
《鮎 の放 流 》
期待される効果
《さくらますの放 流 》
魚介類が増え、水産資源が確保される
- 58 -
方針 2
漁業生産額向上をめざして
漁 業 生 産 額 を 向 上 す る た め に は 、未 利 用 水 産 物 の 活 用 や 鮮 度 保 持・衛 生 管
理による品質の確保などを価格に反映させるように取り組んでいきます。
施策 3
養殖技法と未利用水産物加工技術の開発
福 井 市 の 漁 業 は“ 獲 る ”漁 業 が 主 で あ る た め 、漁 業 収 益 は 冬 期 の 天 候 や 市
場 の 魚 価 に 大 き く 左 右 さ れ ま す 。漁 業 者 が 年 間 を 通 じ て 安 定 し た 収 入 を 確 保
で き る よ う に 、県 や 漁 協 、大 学 等 の 関 係 団 体 と 連 携 し 、あ わ び な ど の 養 殖 技
法 に つ い て 調 査 研 究 を 行 い 、“ 育 て る ” 漁 業 に 取 り 組 み ま す 。
[取 り 組 み ]
z
福井市沿岸で取り組み可能な養殖技法の調査研究を行います。
《あわびの養 殖 試 験 》
《あわびの養 殖 試 験 》
未利用水産物の加工法を開発する取り組みを推進します。
[取 り 組 み ]
z
海藻などの未利用水産物を活用する取り組みを支援します。
《海 藻 (あかもく)の利 用 試 験 》
《未 利 用 海 藻 の調 査 》
期待される効果
漁獲量が安定し、収入の増加につながる
- 59 -
施策 4
漁獲物の品質向上
消 費 者 は 安 全 で 新 鮮 な 水 産 物 を 求 め て い ま す 。こ の ニ ー ズ に 応 え て 魚 価 向
上につなげるため、滅菌冷海水※の活用など、優れた衛生・品質管理設備の
導入が必要です。また、活〆処理※技術を活用したり、ばふんうにを短期飼
育 し て 実 入 り の 向 上 を 図 っ た り す る な ど 、漁 獲 物 の 価 値 を 高 め る 取 り 組 み を
推進します。
[取 り 組 み ]
z
優れた衛生・品質管理設備の導入を支援します。
z
ば ふ ん う に の 実 入 り の 向 上 な ど 、品 質 向 上 を 図 る 取 り 組 み を 支 援 し ま す 。
《滅 菌 冷 海 水 装 置 の例 (石 川 県 七 尾 市 )》
《シャーベット状 の氷 》
《衛 生 ・鮮 度 保 持 システム例 (㈱昭 和 冷 凍 プラント)》
《衛 生 管 理 の例 (漁 獲 物 は専 用 台 に載 せ、床 面 から離 して汚 染 を防 ぐ)》
《ばふんうにの肥 育 試 験 》
期待される効果
《ばふんうにの身 入 り状 況 確 認 》
市場での評価が上がり、魚価が高くなる
※
滅 菌 冷 海 水 ・・・紫 外 線 や オ ゾ ン で 処 理 し た 冷 却 海 水
※
活 〆 処 理 ・・・漁 獲 後 、 直 ち に 脊 髄 神 経 を 抜 き 取 る な ど 、 鮮 度 を 保 つ 処 理
- 60 -
方針 3
漁業経営の安定と就労環境の改善をめざして
漁 業 者 の 減 少 と 高 齢 化 が 進 む 中 で 、経 営 の 安 定 と 安 全 で 快 適 な 就 労 環 境 が
必 要 で す 。漁 業 経 営 の 安 定 と 就 労 環 境 改 善 を 図 る た め に 、漁 業 経 費 の 負 担 軽
減や漁港施設などの整備を推進していきます。
施策 5
漁業経費の負担軽減
燃 油 や 漁 具 資 材 の 価 格 高 騰 に よ り 、漁 業 経 営 は ま す ま す 厳 し く な っ て き て
い ま す 。漁 船・漁 具 の 改 修 や 購 入 に か か る 経 費 、不 漁 時 の 漁 業 経 営 を 補 償 す
る漁業共済制度の加入経費など、漁業経営や新規就業の負担を軽減します。
[取 り 組 み ]
z
漁船・漁具の改修や購入、漁業共済加入などの負担軽減を支援します。
《漁 具 の改 良 》
期待される効果
施策 6
《大 型 クラゲによる漁 業 被 害 》
経営が安定し、漁業が続けられる
漁港施設・漁業関連施設の整備
漁 業 者 の 減 少 や 高 齢 化 が 進 む 中 、安 全 で 使 い や す く 快 適 な 漁 港 施 設 の 整 備
が、漁業者の就労負担の軽減や労働意欲の向上につながります。
[取 り 組 み ]
z
防 波 堤 、係 留 施 設 や 荷 捌 施 設 、漁 具 倉 庫 な ど の 整 備・補 修 を 推 進 し ま す 。
《防 波 堤 の延 伸 工 事 》
期待される効果
《漁 具 倉 庫 の新 設 》
労 働 環 境 が 改 善 し 、 安 全 性 ・快 適 性 が 確 保 で き る
- 61 -
方針 4
活気ある漁村地域の創造をめざして
漁 業 は 後 継 者 不 足 と 高 齢 化 が 進 行 し て お り 、漁 村 地 域 の 活 気 を 取 り 戻 す 必
要があり、都市・漁村地域の交流を図っていきます。
施策 7
漁村地域の活性化
漁 村 に は 、美 し い 自 然 や 古 く か ら 受 け 継 が れ て き た 伝 統・文 化 が あ り ま す 。
し か し 、一 般 に は あ ま り 知 ら れ て お ら ず 、漁 村 地 域 の 魅 力 を 伝 え き れ て い ま
せ ん 。都 市 部 市 民 と 漁 村・漁 業 者 の 地 域 間 交 流 の 場 を つ く る こ と に よ り 、漁
村地域の魅力が伝えられ、地域の活性化につなげていくことが重要です。
[取 り 組 み ]
z
漁村地域の魅力を伝えるイベントなどの開催を支援します。
《こしの魚 まつりの魚 介 類 直 販 》
《こしの魚 まつりの魚 つかみ体 験 》
ま た 、海 や 魚 と ふ れ あ う 体 験 の 場 を 設 け る こ と で 、市 民 に 地 元 水 産 業 へ の
理解を促進していきます。
[取 り 組 み ]
z
稚魚放流や定置網漁などの漁業体験への取り組みを支援します。
《定 置 網 漁 業 の体 験 》
《ひらめ放 流 体 験 》
期待される効果
多 く の 人 が 訪 れ 、漁 村 地 域 と の 交 流 を 通 し て 活 気 が で る
- 62 -
施策 8
遊漁による誘客
福 井 市 に は 、釣 り を 楽 し め る 九 頭 竜 川・足 羽 川・日 野 川 な ど の 河 川 が 流 れ 、
磯 釣 り や 船 釣 り の で き る 海 が あ り ま す 。人 気 の あ る 鮎 や さ く ら ま す 、く ろ だ
い や あ お り い か の 釣 り 場 な ど の 情 報 を 発 信 す る こ と で 、市 外 か ら 多 く の 釣 り
客を呼び込むことができ、観光にもつながります。
[取 り 組 み ]
z
人気のある釣り場や釣りマナー※について、ホームページ等を利用した
情報発信を推進します。
《九 頭 竜 川 の鮎 釣 り風 景 》
《足 羽 川 の鮎 釣 り風 景 》
《ルアーフィッシングによるさくらます》
《海 での船 釣 り》
期待される効果
※
多くの人が訪れ、観光にもつながる
釣 り マ ナ ー ・・・駐 車 場 、 ゴ ミ 問 題 、 釣 り 方 な ど の 釣 り を す る 上 で の マ ナ ー
- 63 -
目標 2
魅力ある福井市の水産物を創出する
~流通の促進~
福 井 市 の 水 産 物 は 、流 通 規 模 が 小 さ い う え に 、特 産 品 と し て の ブ ラ ン ド 力
も 不 足 し て い ま す 。そ の た め 、創 意 工 夫 を 凝 ら し 、福 井 市 の 水 産 物 を 魅 力 あ
る も の に し て い く 取 り 組 み が 必 要 で す 。福 井 市 で 水 揚 げ さ れ る 水 産 物 を 使 い 、
美 味 し さ 、安 心 、手 軽 さ な ど 、消 費 者 の ニ ー ズ に 応 じ た 商 品 を 創 出 し 、福 井
市 の 水 産 物 の 良 さ を 県 内 外 に PR し て い き ま す 。
- 64 -
方針 5
福井市の水産物の特産化をめざして
現 在 、福 井 市 の 水 産 物 は 知 名 度 の 高 い ブ ラ ン ド 品 や 特 産 品 に は 至 っ て い ま
せ ん 。ブ ラ ン ド 力 の あ る 新 た な 水 産 加 工 品 を 創 出 し 、需 要 の 拡 大 を 図 る た め 、
素材の良さを活かして消費者ニーズに即した水産加工品開発を促進してい
きます。
施策 9
新たな地元水産加工品の創出
福 井 市 で 漁 獲 さ れ る 主 な 魚 介 類 は 、あ じ や ぶ り な ど の 大 衆 魚 で す 。水 産 物
の 価 値 を 高 め て い く た め に は 、創 意 工 夫 を 凝 ら し た 加 工 を 施 し 、魅 力 あ る 水
産物を創っていくことが重要です。
[取 り 組 み ]
z
地元水産物を使い、創意工夫を凝らした加工品の開発を支援します。
z
水 産 加 工 品 を 普 及 さ せ る た め 、 イ ベ ン ト な ど を 活 用 し た PR に 取 り 組 み
ます。
《いかの塩 漬 け「汐 いか」》
《さばの糠 漬 け「ぬかちゃんさば」》
《わかめふりかけ「もみわかめ」》
《福 井 市 農 林 水 産 認 定 加 工 品 (ふくいの恵 み) ※ 》
期待される効果
※
福井の魚が有効活用され、ブランド品が生まれる
水 産 物 認 定 8 品 目( 平 成 22 年 12 月 現 在 )・・・一口アジみりん、もみわかめ(ふりかけ・粉わか
め)、こしのぬかちゃんさば・あじ・さばすづけ・いか、国見汐いか
- 65 -
目標 3
親しまれる魚食普及を推進する
~消費の拡大~
現 代 の 消 費 者 は 、食 べ や す い 食 材 を 好 む 傾 向 が あ り 、簡 単 に 調 理 が 可 能 で 、
な お か つ 新 鮮・安 全 で 栄 養 価 の 高 い 食 材 を 求 め て い ま す 。こ の よ う な 消 費 者
ニ ー ズ に 対 応 し た 販 売 の 工 夫 や 、毎 日 の 食 生 活 で 魚 食 が 取 り 入 れ ら れ る よ う
に、市民に魚食普及を推進していきます。
- 66 -
方針 6
食生活における魚食普及拡大をめざして
近 年 、食 の 簡 便 化 志 向 等 を 背 景 と し た 食 生 活 の 変 化 に 伴 い 、魚 離 れ が 進 ん
で い ま す 。消 費 者 ニ ー ズ に 応 え つ つ 魚 介 類 の 消 費 拡 大 を 目 指 す た め 、美 味 し
い 食 べ 方 や 新 し い 食 べ 方 を 提 案 す る な ど 、魚 食 普 及 活 動 を 支 援 し て い き ま す 。
施 策 10
地元水産物の消費拡大
地 元 で 水 揚 げ さ れ た 新 鮮 な 水 産 物 の 販 売 を 市 民 も 望 ん で い ま す 。地 元 水 産
物の消費拡大を図る取り組みを推進します。
[取 り 組 み ]
z
関 係 団 体 と 連 携 を 図 り 、 直 売 な ど の 活 動 に 対 し 、 PR に 取 り 組 み ま す 。
《こしの魚 まつりでの直 売 》
期待される効果
施 策 11
福井の魚の良さが伝わり、地魚の消費が進む
魚食普及活動の推進
家 庭 で 魚 料 理 を す る 機 会 が 減 り 、料 理 方 法 な ど を 知 ら な い 人 が 増 え て い ま
す 。美 味 し い 食 べ 方 や 新 し い 食 べ 方 を 知 っ て も ら う こ と が 、魚 食 普 及 に つ な
が り ま す 。ま た 、忙 し い 毎 日 を 送 る 人 達 は 魚 料 理 を 敬 遠 し が ち で す 。休 日 に
は健康にも良い魚を食べる習慣の普及を図ります。
[取 り 組 み ]
z
学校給食での地元水産物の活用や公民館・学校等での魚の捌き方・料理
教室を開催するほか、旬の魚を用いた料理方法の情報を提供します。
z
「休 日 は 魚 を 食 べ る 日 」の 提 案 や 、 魚 は 健 康 な 身 体 を つ く る 礎 と な る 食 材
で あ る こ と の PR に 取 り 組 み ま す 。
《魚 の捌 き方 教 室 》
期待される効果
《福 井 新 聞 記 事 》
(平 成 22 年 7 月 14 日 )
魚食が見直され、魚介類の消費が進む
- 67 -
第3章
プランの実現
1.
林業の指標
目 標 ご と に 具 体 的 な 指 標 を 設 定 し 、そ の 目 標 値 の 達 成 に 向 け て 取 り 組 み を
す す め 、『 未 来 へ 引 き 継 ぐ
目標 1
も
り
福井の森林づくり』を実現していきます。
健全な森林をつくる~森林整備の推進~
指標
《森林整備の面積》
現在
5 年 後 (平 成 27 年 度 )
10 年 後 (平 成 32 年 度 )
786ha/年
1,000ha/年
1,300ha/年
(11 ペ ー ジ 参 照 )
目標 2
森林資源を使う~木材の有効活用~
指標
《搬出間伐材の量》
現在
5 年 後 (平 成 27 年 度 )
10 年 後 (平 成 32 年 度 )
4,732m3/年
6,500m3/年
8,000m3/年
(11 ペ ー ジ 参 照 )
目標 3
森林に親しむ気運を高める~森林・林業の重要性の普及啓発~
指標
《森林・林業関係イベント参加者数》
現在
5 年 後 (平 成 27 年 度 )
10 年 後 (平 成 32 年 度 )
934 人 /年
1,500 人 /年
2,000 人 /年
- 70 -
2.
水産業の指標
目 標 ご と に 具 体 的 な 指 標 を 設 定 し 、そ の 目 標 値 の 達 成 に 向 け て 取 り 組 み を
す す め 、『 福 井 の 恵 み を 活 か し た 水 産 業 の 再 興 』 を 実 現 し て い き ま す 。
目標 1
力強い漁業生産力の向上を図る ~生産の向上~
指標
《漁業生産額》
現在
5 年 後 (平 成 27 年 度 )
419 百 万 円
480 百 万 円
( 44 ペ ー ジ 参 照 )
目標 2
魅力ある福井市の水産物を創出する ~流通の促進~
指標
《新たな水産加工品の創出数》
5 年 後 (平 成 27 年 度 )
商品化して販売できるもの
3 品目
目標 3
親しまれる魚食普及を推進する ~消費の拡大~
指標
《魚介類の消費量》
現在
5 年 後 (平 成 27 年 度 )
41 ㎏ / 年 (1 世 帯 )
36 ㎏ / 年 (1 世 帯 )
( 50 ペ ー ジ 参 照 )
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福井市林業水産業振興プラン策定委員会 名簿
番号
役職名
委 員 名
所
属
分 野
1
委員長
原田
政美
福井県立大学 経済学部経済学科 教授
水産業
2
副委員長
宮澤
國明
独立行政法人森林総合研究所 森林農地整備
センター 福井水源林整備事務所 所長
林
3
委
員
岩村
健一
福井県漁業協同組合連合会 専務理事
水産業
4
委
員
大石橋節子
福井県フォレストサポーターの会
林
5
委
員
大橋
信一
福井県魚商協同組合連合会 代表理事
水産業
6
委
員
北﨑
壽男
越廼漁業協同組合 代表理事組合長
水産業
7
委
員
國枝多喜雄
福井市森林組合 代表理事組合長
林
業
8
委
員
久 保
栄
藤島製材企業組合 代表理事
林
業
9
委
員
杉本
英夫
あぐりパークほんごう 代表
林
業
10
委
員
豊嶋美代子
福井県消費者グループ連絡協議会 会長
水産業
11
委
員
中村
光子
福井市食生活改善推進員連絡協議会 会長
水産業
12
委
員
西山
珠美
株式会社 住まい工房
林
13
委
員
平野
仁彦
福井市漁業協同組合 代表理事組合長
水産業
14
委
員
山川
和弘
株式会社 山川かまぼこ 代表取締役社長
水産業
15
委
員
山田
和幸
有限会社 山田銘木店 取締役専務
林
業
16
委
員
渡辺
一夫
美山町森林組合 代表理事組合長
林
業
オブザーバー
木下
仁徳
福 井 県 農 林 水 産 部 水 産 課 参 事 (水 産 企 画 )
水産業
オブザーバー
勇上
俊昭
福井農林総合事務所 林業部長
林
(委員は五十音順)
業
業
業
業
福井市林業水産業振興プラン策定委員会の経過
平成22年
7月26日
策定委員の委嘱、市長よりプランの策定依頼
第1回福井市林業水産業振興プラン策定委員会
第1回林業部会・第1回水産業部会
平成22年
8月24日
第2回林業部会・第2回水産業部会
平成22年10月
4日
第3回林業部会・第3回水産業部会
平成22年11月
1日
第2回福井市林業水産業振興プラン策定委員会
平成22年11月
5日
福井市林業水産業振興プラン策定委員会から市長に
「福井市林業水産業振興プラン(案)報告書」の提出
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