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News Letter vol.1

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News Letter vol.1
2008年10月18日発行
横須賀芸術劇場開館15周年記念オペラ
C.モンテヴェルディ
H.パーセル
「タンクレーディとクロリンダの戦い」
「ダイドーとイニーアス」
横須賀でしか
味わえない舞台が
今、ここに誕生する!
来年2月に迎える横須賀芸術劇場開館15周年。劇場では、この秋よりさまざまな記念公演をお届けしていますが、そ
の頂点ともいえるのが、オリジナル制作オペラ「タンクレーディとクロリンダの戦い」と「ダイドーとイニーアス」です。今、世
界中で人気のバロック・オペラ2作品を豪華キャストと横須賀芸術劇場ゆかりの演出家 彌勒忠史氏の演出でお贈りしま
す。
一体どのような舞台が創られるのか?このニュースレターでは、これから1月まで毎月その魅力をご紹介して参ります。
どうぞお楽しみに!
300年以上のときを越えても、決して色あせることのない二つの「愛と死」の物語
~音楽評論家 寺西基之~
横須賀芸術劇場は開館15周年を記念して、オペラを制作
上演する。選ばれた作品は、モンテヴェルディの「タンク
レーディとクロリンダの戦い」とパーセルの「ダイドーと
イニーアス」。この2作を知っている人は、かなりの音楽通
といってよい。前者は厳密には本来オペラとして書かれた
ものではないが、 2作とも17世紀のバロック時代を代表す
る作品である。通常ならばホールの節目の年を記念するオ
ペラの演目となると、 「カルメン」や「アイーダ」や「トゥー
ランドット」といった、ロマン的な華麗壮大なオペラが相
場と考えがちだが、そうではないこうしたバロック・オペ
ラを敢えて取り上げようというところに、横須賀芸術劇場
の独自性が示されている。
その下敷きにはこれまで同劇場が小劇場で開催してき
た“オペラ宅配便シリーズ”がある。このシリーズは、オ
ペラは親しみやすいものであることをアピールするため
に、小劇場の空間を生かした小規模のオペラを取り上げて
きたが、その中心軸の一つとなってきたのが小人数で上演
できるバロック・オペラだった。シリーズの企画・演出を担
当してきた彌勒忠史が、わが国有数のカウンターテナー歌
手として特にバロック音楽を専門分野としていることが、
特にそうした路線に繋がったのだが、その成果は大きく、
彌勒独自の斬新なアイデアとも相侯って、バロック・オペ
ラを聴衆に身近なものとしてきた。
バラの花と天上の光をあしらったチラシの
デザインは、幕切れを予感させる!?
“官能、愛、死など色々な象徴を含んでいるの
が花びらだと思います。今回の演出でもお客様
の目に焼きつくようなシーンを残したいと思っ
ています。”(演出 彌勒忠史)
演出家としての彌勒忠史は過去のオペラを今日の日本で
上演することの意味を深く考察している。彼は「なぜ日本
人である自分が、イタリア発祥の舞台芸術であるオペラを
演出・上演するのか」ということを自問し、 「日本人である
からこそ、宗教や伝統のしがらみにとらわれず、オペラの
美的価値を別方向から再発見し、それを表現できる」とい
う考えを持って、演出を手掛けてきたという。バロック音
楽の様式と精神を知り尽くした上で、それをいかに現代の
日本人に生きたものとして伝えるか、そうした姿勢に基づ
いた思い切った上演手法がこれまで成果を生み出してき
たことは間違いない。
今回の15周年記念オペラ公演はまさにこれまでシリーズで培ったことの発展として位置付けられており、彌
勒ならではの独創的な視点に立った、きわめて興味深いものとなりそうだ。 「タンクレーディとクロリンダの
戦い」では、バロック初期の声楽様式と日本の伝統芸能とに相通じる特徴に着目し、異なる文化にまたがる共
通項を浮び上がらせる舞台作りが企てられ、 「ダイドーとイニーアス」では人間の二面性を表現するために、
一人の歌手に二役を割り当て、そこにバリ=ヒンドゥーの世界観を結び付けるという。彌勒マジックが17世紀
西欧のバロック・オペラをいかに今日の私たちにアピールするものにするのか、楽しみでならない。これら2作
品に表現された、いつの時代にも普遍的な人間の愛と死の問題が、生き生きと表現されることだろう。
選ばれた歌手たちの顔触れがまたすごい。実力とスター性を兼ね備えた第一線の若手をずらり構えて適材適
所に配したその陣容はまことに豪華で、このキャスティングを見ただけで足を運ぼうという気になる人も多
いだろう。改めていうまでもなく、オペラは声の良さと表現力だけで成功に結び付くわけではない。もちろん
声と歌唱表現力は重要だが、演出を理解した上での優れた演技力、さらにアンサンブル能力など、すべての面
での技量が全員揃っていないと、舞台芸術としての一つのまとまった舞台にならない。その点、今回の彌勒に
よる人選は光ったものがある。
オーケストラは“宅配便シリーズ”でおなじみの古楽合奏団トロヴァトーリ・レヴァンティが担当。内外の
様々な古楽オーケストラでも活躍する名手たちで構成される精鋭集団だ。斬新な舞台に対して、バロック当時
の古楽器を採用したオーケストラはそぐわないのではと思われるかもしれないが、バロック音楽は、当時の楽
器と奏法に即して書かれてあるので、それで演奏してこそ生気を帯びてくるのだ。特にリコーダーとバロッ
ク・オーボエの名手、江崎浩司の指揮が、このオケからそうした作品に内在するドラマと生命力を引き出して
くれるだろう。劇場専属のアマチュア合唱団の横須賀芸術劇場合唱団も上演に華を添える。
横須賀芸術劇場がこれまで培った経験とノウハウを結集して制作する今回の記念オペラは、日本におけるバ
ロック・オペラ上演に一つの大きな足跡を残すものとなるだろう。
Who‘s Who?
このコーナーでは、毎月記念オペラの出演者や制作陣をご紹介していきます。
今回は、演出の彌勒忠史(みろくただし)さんです。
カウンター・テナーとして、またオペラ演出家として活躍、さらに
は「イタリア貴族養成講座(集英社新書)」など執筆活動もしている
彌勒さんは、こんな人です!
<歌舞伎役者を夢見た大学時代>
歌舞伎の研究から女形に引かれ、暇を見つけては歌舞伎座の幕見席に
通った大学時代。「歌舞伎役者になりたい!」と真剣に考えた時期が
あったという。伝統芸能と無縁に育った身には無理があると、その夢は
あきらめた。
<人生の転機>
「自分の能力を発揮できる舞台芸術がないだろうか?」と模索してい
るうちに、衝撃的な出来事が。
かの名テノールのマリオ・デル・モナコの熱唱する姿をテレビで見て、
「これだ!」と直感的に思ったそう。それから、千葉大学大学院卒業後、
東京藝術大学を受験しなおし、「演技と歌唱が一体化し、人を魅了す
る」オペラ歌手の世界へ踏み込んだ。
<カウンター・テノールに開眼>
デル・モナコになるべく最初は、テノールを歌っていた彌勒さん。け
れども卒業後に入った古楽演奏の名門楽団「バッハ・コレギウム・ジャ
パン」で、アルトのパートを歌う米良美一(あの「もののけ姫」の歌で
有名)との出会いにより、カウンター・テノールというパートに目覚め
た。YMOやアース・ウィンド&ファイアをこよなく愛した中学時代に
ファルセットを使っていた彌勒さん、クラシックでもファルセット(
裏声)を使えることに目からウロコの想いだったのでは・・・
~カウンターテナー~
カウンターテナー(テノール)は、
男性が裏声(ファルセット)や極
度に高いテノールの声を使って女
声のアルトからメゾソプラノの音
域を歌うパートをさす。ヨーロッ
パでは古くから歴史を作ってきた
男性による声域で、カストラート
(去勢歌手)のレパートリーを引
き継いで演奏することが多いので、
1500年台末期から1600年台初期のマ
ドリガーレから、オペラが誕生し
たころの音楽作品の演奏がメイン
となる。
<そしてイタリアへ・・・>
その後99年、イタリア政府奨学生としてイタリアに渡り、本格的にカウンター・テナーに転向した。その結
果イタリア国内外でオペラや演奏会に出演するだけでなく、イタリア国立フレスコバルディ音楽院で古楽講
師を務めるまでに。カウンターテナーとして活動を始めてから、在伊中にボローニャ大学DAMSにて演出
学を学び、専門であるバロック以前の作品を中心に古典派モーツァルトのオペラまで演出を手がける。
<横須賀芸術劇場との出会い>
横須賀芸術劇場で演出家として迎えたのは、‘03年からのオペラ宅配便シリーズ。小難しく、知識や教養が
ないと楽しめないと思われがちなオペラをより“分かりやすく”“気軽に楽しんでもらいたい”とヨコス
カ・ベイサイド・ポケット(小劇場)で始めたこのシリーズ、彌勒流の斬新で分かりやすい演出は、毎回大好
評を博している。その特徴は、作家や作曲家の意図には忠実に、そしてさらに“遊び”を取り入れた演出。
舞台上にボクシング・リングや秋葉系メイドが登場するも、音楽を犠牲にすることは決してない。オペラゆ
えの品格を持った遊びで“いとをかし”の世界を実現しているのだ。
<15周年記念オペラにむけて>
さて、今回の記念オペラでは、“2つの悲劇=2つの愛と死の物語”を取り上げた。彌勒さんは、「悲劇を
ただ悲しい物語として描くのは好きではありません。最後に何らかの光が差し込む方が良いと思っています。
そのために、お客様があっと驚くような印象的なシーンをお見せします」と熱く語る。
豊かな知識と好奇心、経験に基づいた彌勒忠志さん演出の「タンクレーディとクロリンダ
の戦い」 「ダイドーとイニーアス」にどうぞご期待下さい!
イギリス・バロック音楽を代表する作曲家パーセルの「ダイドーとイニーアス」は、ウィリアム3世とメアリー女王
の戴冠祝賀上演のために作曲された、彼唯一の完成されたオペラである。ギリシャ悲劇を題材としており、カルタゴ
の女王ダイドーとトロイの王子イニーアスの悲恋を描いている。
横須賀芸術劇場開館15周年記念オペラ
「タンクレーディとクロリンダの戦い」「ダイドーとイニーアス」(原語上演・字幕付き)
2009年 2月 8日(日)15:00開演 よこすか芸術劇場
チケット料金S席8,000円 A席6,000円 B席4,000円 C席:2,000円(友の会会員10%引き、学生割引あり、託児あり)
指揮:江崎浩司 演出:彌勒忠史 管弦楽:トロヴァトーリ・レヴァンティ 合唱:横須賀芸術劇場合唱団
出演:(タンクレーディとクロリンダの戦い) 宮本益光(タンクレーディ)、鈴木慶江(クロリンダ) 、望月哲也 (テスト)
(ダイドーとイニーアス)
林 美智子(ダイドー/女魔法使い)、与那城 敬(イニーアス/水夫)、
國光ともこ(ベリンダ)、澤村翔子(第2の侍女/第1の魔女)、
上杉清仁(第2の魔女/偽りの使者)
美術:荒田 良
照明:西田俊郎
衣装:友好まり子 振付:花柳珠千鶴、森田守恒
助成:(財)地域創造、(財)ロームミュージックファンデーション
舞台監督:八木清市
制作:(財)横須賀芸術文化財団
チケットのお求めは・・・横須賀芸術劇場電話専用ダイヤル
046-823-9999
(劇場友の会専用ダイヤル046-823-7999)
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