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第1部 第2章

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第1部 第2章
第1部
第5節 農村女性・高齢農業者の活動の促進のための取組
(農業就業人口に占める女性の割合は半分以下に低下)
平成 22(2010)年における農業就業人口(261 万人)のうち女性は 130 万人となり、
平成 17(2005)年と比べ3割減少しています(図2- 90)。農業就業人口に占める女性
の 割 合 は、 昭 和 55(1980) 年 の 62% を ピ ー ク に 年 々 低 下 し、 平 成 17(2005) 年 に は
53%となっていましたが、平成 22(2010)年には半分以下(49.9%)に低下しました。
平成 17(2005) 年から平成 22(2010) 年にかけて、 年齢別に女性農業就業人口の変
化をみると、男性と比べて、特に 30 ~ 50 歳代、70 歳前後での減少が大きくなっていま
す(図2- 91)。この背景としては、30 ~ 50 歳層については、他に就業先があること、
農作業の機械化が進んだこと等により、若い世代の女性がかつてに比べて農業に就業しな
い傾向が続いてきたこと、70 歳前後の層では体力低下や多様な地域活動への参加等が主
なものと考えられます。
図2−90 農業就業人口の男女別割合
女性農業就業人口
855万人
女性 58.8
39.7
60.3
695万人
45
(1970)
38.8
61.2
634万人
50
(1975)
37.6
62.4
493万人
55
(1980)
38.3
61.7
430万人
60
(1985)
40.6
59.4
323万人
平成2
(1990)
41.0
59.0
284万人
7
(1995)
42.7
57.3
237万人
12
(2000)
44.2
55.8
217万人
53.3
179万人
17
(2005)
46.7
22
(2010)
50.1
0
10
20
30
49.9
40
50
60
70
80
第2章
男性 41.2
40
(1965)
昭和35年
(1960)
130万人
%
90 100
資料:農林水産省「農林業センサス」
図2−91 男女年齢別農業就業人口の推移
(女性)
万人
8
(男性)
平均年齢
平成17(2005)年 63.2歳
平成22(2010)年 66.0歳
万人
8
7
7
6
6
5
5
4
4
3
2
平成17年
(2005)
0
15歳 25
3
2
平成22年
(2010)
1
35
45
平均年齢
平成17(2005)年 63.2歳 平成22(2010)年 65.6歳
55
65
75
1
85
95
0
15歳 25
35
45
55
65
75
85
95
資料:農林水産省「農林業センサス」(組替集計)
273
第5節 農村女性・高齢農業者の活動の促進のための取組
事 例 女性の新規就農者確保の取組
し か お い ちょう
北 海 道 鹿 追 町 で は、 平 成 10(1998) 年 よ り、
産業研修生として年間 10 人(酪農7人、畑作3人)
北海道
の女性を全国から募集して、 受け入れています。
研修生は、女性専用研修滞在施設に宿泊しながら、
鹿追町
町内の受入農家において、 酪農研修(4~3月)
では搾乳や乳牛の飼養管理、畑作研修(4~ 10 月)
宿泊施設内の様子
では大豆、ビート等の栽培管理や収穫、出荷等の研修を行っています。
同町では、北海道の自然や農業に憧れた若者が農業体験・研修を行うため全国から集ま
っていましたが、女性については農家で生活するうえで戸惑いを感じている人が多かった
こと等から、後継者対策の一環として研修施設を整え、女性研修生の受入れを始めました。
この 12 年間に 118 人が研修を修了し、 そのうち 26 人が町内で農業に従事しています。
近年の研修は、農家での個別研修だけでなく、全体研修としてソーセージや豆腐等の加工
等を加えるなど、幅広い農業技術、知識を習得するための研修内容となっています。
平成 22(2010) 年度には、 定員を上回る 18 人から研修生の応募があるなど、 農業を
体験してみたい、将来農業にかかわりたいという女性がふえています。
(農村女性は農産物の加工や販売等多方面で活躍)
食品加工、流通・販売、都市との交流等をはじめと
図2−92 女性の起業活動の推移
件
10,000
9,641
平成 20(2008)年度には 9,641 件となっています(図
8,000
2- 92)。活動主体をみると、グループ活動による経
6,000
グループ
活動
5,565
した農村女性の起業活動の件数は、年々着実に増加し、
営が全体の6割程度、個人経営が4割程度になってい
ます。また、その活動内容(複数回答)については、
4,000
食品加工7割、農産物直売所等の販売 ・ 流通6割が多
2,000
くなっています。グループにおける1人当たり年収を
み る と、10 万 円 未 満 が 36 %、10 ~ 30 万 円 が 30 %
と、零細な経営体が多くなっています。一方、全体で
5 千 万 円 以 上 売 り 上 げ て い る 経 営 体、20 歳 代 の 若 い
0
6,039
4,660
個人経営
4,076
1,379
平成 10 年
(1998)
20
(2008)
資料:農林水産省「農村女性による起業活
動実態調査」
世代の個人経営で1千万円以上売り上げている事例も近年見受けられます。
今後、経営改善につなげていく取組としては、「売れる商品の開発」や「販路開拓」等
をあげる活動主体が多くなっており、これら取組をさらに推進していく必要があります。
ただし、「現状維持」をあげる活動主体も多く、またその6割は売上額 300 万円未満にな
っています。このことから、小規模でも生きがいや楽しみ、地域に貢献したいという意識
で取り組むなど必ずしも経営の発展を求めているだけではない農村女性の起業活動に対す
る意向もうかがえます。
(農村女性の役員登用等は依然として不十分)
男女共同参画基本計画 1 において、あらゆる分野で指導的地位にある女性の割合を平成
32(2020)年までに少なくとも 30%程度とする目標が設定されています。農業分野にお
いては、就業人口の半数を女性が占めている一方、農業委員会、農協等では、女性役員等
の登用目標が設定されているものの、依然として登用割合が低い水準にとどまっています
(表2- 34)。
1 男女共同参画基本計画(第 2 次)(平成 17(2005)年閣議決定)
274
1
の方針、労働時間・休日、農業面の役割分担等を明確にする「家族経営協定 1」の締結が
第1部
農業経営の面では、女性農業者も含め経営にかかわるすべての家族について、農業経営
推進されています(表2- 35)。家族経営協定を締結している農業経営体は増加傾向にあ
り、平成 20(2008)年には4万戸となっていますが、このうち女性が農業経営の方針決
定に参画しているものは 77%となっています 2。この家族経営協定の締結により、農家女
性が金融機関に個人の口座をもったり、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)
に配慮した働き方が可能となり、農業経営や社会活動に参画しやすくなったりしています。
表2−34 農業委員会及び農協の
女性の登用目標等
登用目標等
現 状
農業委員会
1農業委員会当
たり複数の女性
農業委員の選出
を目指す
複数の女性委員
がいる農業委員
会の割合
31.3%
農業協同組合
女性のJA運営参
画目標を、理事
等は2名以上と
します
複数の女性役員
がいる農協の割
合
24.5%
表2−35 家族経営協定の取決め内容
(上位 5 項目、複数回答)
農業経営の方針決定
90.4%
労働時間・休日
88.4%
農業面の役割分担
(作業分担、簿記記帳等)
79.3%
労働報酬(日給、月給)
72.7%
収益の配分(日給、月給
以外の利益の分配)
46.7%
(農村女性のさらなる活躍に向けた取組が必要)
女性農業者の7割は、農協の役員、農業委員等になって、地域や各団体の方針を決定す
る場に「参画したくない」 としています 3。 その理由としては、「自身の農業を行うのに
精一杯なため」58%、「農政や地域農業に関する知識が不足しているため」34%、「考え
たことがない」33%となっています。
農村女性は、今後、農業生産だけでなく、農業・農村の6次産業化の担い手としての活
躍が大きく期待されます。このため、農村女性に対して農業経営に必要な知識・技術の習
得支援や情報提供等を行うとともに、男性をはじめ農村地域社会の関係者が社会通念・慣
習等にとらわれないよう意識を変革していくことが重要です。
また、特に若い女性農業者にとっては、同世代の女性の仲間が近くにおらず、悩みを相
談できる相手がいないなどの課題もあります。農業は、子育てが一段落すれば経営に参画
できるなど、女性農業者にとってワーク・ライフ・バランスのとりやすい職業であるとい
えます。 このようなことから、 若い女性農業者を支えるため、 例えば、JA グループによ
る未就学児親子や妊婦、祖父母等を対象にした「子育て広場」の開設、子育て期間中の農
業後継者の交流機会の設定等の取組を進めていくことも必要です。
1[用語の解説]を参照
2 農林水産省「家族経営協定に関する実態調査」
(平成 21(2009)年5月公表)
3 農林水産省「農家における男女共同参画に関する意向調査」(平成 20(2008)年 12 月公表)、農協の女性役員 204
人を対象として実施したアンケート調査(回収率 64.2%)
275
第2章
資料:農林水産省「家族経営協定に関する実態調査」
資料:農林水産省作成
注:1)農業委員会の目標は全国農業委員会会長会議決定 (平成 21(2009)年 5 月公表)
(平成22(2010)年5月27日)、現状は平成 20(2008)
年10月1日現在
2)農業協同組合の目標は第 25 回 JA 全国大会決定
(平成21(2009)年10月8日)、現状は平成20(2008)
事業年度末現在
第5節 農村女性・高齢農業者の活動の促進のための取組
事 例 女性農業者の取組
‫׻‬றറ
(1)農 村 女 性 の 栽 培 技 術 習 得 に よ る 経 営 意 欲 の 向 上
は びき の し
൯ۢ‫ۀ‬
પ
大阪府羽 曳 野 市 は府内有数のいちじく産地ですが、その生産農
޸
家の多くは、高齢の経営主を中心として、他産業に従事する後継
റ
者夫婦が手伝うという形態となっています。
ఛ໴‫ۀ‬
Юэ๝ࠅ
経営主の高齢化が進行するなか、 平成 10(1998) 年、 栽培技
ཋұߤ‫ۀ‬
術や経営を学びたいと考える後継者の妻 14 人が羽曳野市いちじ
く部会女性グループ「K.U. レディース」を結成しました。同グル
ープは、栽培技術を学ぶほか、生果として販売できない小さいい
ちじくを有効利用するため、ジャム等への加工や販売方法の学習
に取り組み、 平成 14(2002) 年からジャムの試験販売を開始し
ました。
平成 20(2008) 年には、 加工場を整備して、 食品営業許可を
ジャム製造の様子
取 得 し て い ま す。 年 間 売 上 高 は 200 万 円 に 伸 び、 ま た、 ジ ャ ム
等の販売を通じて、いちじく産地の宣伝に努めるなど、産地の活性化にも貢献しています。
今後は、販売量に応じたいちじくの計画的な生産と冷凍保存を行うとともに、インター
ネット販売等によるジャムの販路拡大を図ることとしていますが、このような取組のなか
でも、女性同士の和を大切にした活動としたいと考えています。
(2)農 家 女 性 に よ る 農 産 物 直 売 所 経 営
さ
が
し
みつ せ むら
福岡県
佐賀市
佐賀県佐 賀 市 (三 瀬 村 )の女性農業者である合瀬マツ
ヨ氏は、米・野菜の専業農家に嫁いだのち、自ら店を経
佐賀県
営したいと考えるようになりました。 就農後 20 年目の
昭和 63(1989) 年に、 所有していた農地沿いに国道が
通り、三瀬トンネルが開通したことを契機に、自ら生産
した農産物を売ることができる農産物直売所の設立に踏
み切りました。
設立後の4、5年間は、品数も少ない状態でしたが、
農産物直売所での売行きが好調だったこともあり、徐々
に 出 荷 し た い と い う 県 内 外 の 農 家 が ふ え、 現 在 は 800
戸の農家と契約し、品数も大幅に増加しています。販売
に当たっては、POS システムを導入して、店頭の商品が
農産物直売所の外観
切れることがないように商品管理に気を配っています。
また、農産物直売所には、地元農産物を使用したおでんやうどん等の
食事を提供するレストラン、豆腐加工場が併設されており、安くて新鮮
な農産物を求めて福岡市の中心部(車で約 40 分) からも客が訪れてい
ます。
同農産物直売所では、 年間来客数が 30 万人、 年間売上げが7億円に
まで伸びているほか、地元出身者を中心に 20 ~ 70 歳代の 28 人(うち、
女性 22 人) を従業員として雇用しており、 地域の雇用創出にも大きく
貢献しています。今後、さらに、三瀬村の活性化につながる意欲的な事
女性農業者
業を展開したいと考えています。
276
高齢農業者は、多くの地域で農業生産や地域維持のため、主体となって活躍しています。
第1部
(高齢農業者の活動の促進も必要)
例えば、農林漁業者3人以上から構成されているなどの高齢者グループが全国各地で活動
しており、平成 19(2007)年にはその数は 6 千となっています(図2- 93)。活動内容
としては、生産・加工販売、伝統文化・技術の伝承または交流等が多くなっています。
なかには、他産業との連携や定年帰農者のアイディアを活用しての活動、耕作放棄地の
解消や都市住民との交流、リハビリ農園の運営といった地域の課題を解決しようとする活
動等、今後の高齢農業者グループの活動のモデルとなり得る新たな動きもみられます。
このようななか、高齢農業者が生涯現役でいきいきと農村社会で活躍できるように、高
齢農業者のもつ豊かな農業経験と農業集落維持等の知恵を新たな農村資源と捉え、次世代
に円滑に引き継いでいくためにも、高齢者グループによる起業や地域活動、地域内外での
助け合い活動の促進や、労力低減に向けた技術開発等を一層進めていくことが重要です。
なお、 農作業を行っている人は、 行っていない人に比べて、「糖尿病、高脂血症等、 生
活習慣病の危険因子の保有率が低い」、「運動機能、精神的状態は比較的良好」等の傾向が
あり、日常の農作業が疾病予防に有益に作用し、高齢農業者自身の健康維持にも役立って
いる可能性があるとの研究報告があります 1。こうした面からも高齢者の活動を今後とも
支援していく必要があります。
図2−93 農山漁村高齢者活動グループ数(地域別)
1,179
1,200
1,284
全国 6,066
1,277 その他
伝統文化・技術の
伝承または交流活動
1,000
800
主に農作業体験
指導活動
695
600
476
400
200
0
557
主に労働力
補完活動
430
主に生産・加工販売活動
108
北海道
60
東北
関東
北陸
東海
近畿
中国・四国
九州
沖縄
資料:農林水産省「高齢者グループ活動調査」(平成 19(2007)年 11 月公表)
注:関東は山梨県、長野県、静岡県を含む
事 例 高齢農業者によるリハビリ農園の取組
に い み し
か み く ま た に うしお
鳥取県
岡山県新 見市の「新見市上 熊谷 潮 地区集落営農組合」は、耕作放棄地
新見市
や休耕田を活用して、リハビリ農園活動に取り組んでいます。
兵
同組合に所属する高齢農業者が中心となり、病院、福祉施設等と連携
庫
岡山県
お く びっちゅう し ろ あ ず き
県
し つ つ、 患 者 や 障 害 の あ る 人 と とも に、「奥 備 中白 小 豆」 等 を 栽 培 し て 広
島
県
います。この小豆は、県内の限られた地域で栽培される地域特産品で、
作付けが難しく継承者もいないため、栽培が途絶えることが危惧されて
いましたが、この取組により「白いダイヤ」といわれた希少品種の存続に貢献することが
できました。
また、同組合は、収穫物を地域の病院や福祉施設等に供給するとともに、病院食の新メ
ニューの開発にも取り組んでいます。こうした取組により、病院患者や障害者の社会復帰
や社会参加の可能性が広がるとともに、高齢農業者の活動機会の拡大につながりました。
1 農業工学研究所「農作業が有する高齢者の疾病予防に関する検討」
(財)日本農村医学研究会日本農村医学研究所「農
、
村高齢者の健康支援推進事業報告書」(平成 21(2009)年)
277
第2章
グループ数
1,400
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