...

観光振興が広島県経済に及ぼす影響

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

観光振興が広島県経済に及ぼす影響
本調査研究レポートは,広島経済同友会からの依頼により,
中国電力株式会社経済研究センターが実施したものです
2004 年度調査研究レポ−ト
観光振興が広島県経済に及ぼす影響
平成 17 年 3 月
広島経済同友会
地域経済委員会
要
旨
1.広島県観光の現状と課題
広島県の入込観光客数は,しまなみ海道が開通した 1999 年には 4,138 万人を記録したが,そ
の後は 4,000 万人を下回る水準で推移している。この背景には,通過型の観光地が多いこと,観
光地間の連携が不足していること,交通インフラの整備が不十分であるといった問題がある。ま
た,観光関連産業の規模も小さい。今後も成長が期待されている観光に関して,広島県経済の活
性化のため,観光振興を図っていくことが重要な課題である。
2.観光が地域経済に及ぼす経済効果
観光産業はすそ野の広い産業である。宿泊費や土産物代といった観光客の直接的な消費支出の
みならず,様々な品物の流通に伴い広範な産業に波及効果をもたらし,地域経済に及ぼす影響も
大きい。広島県では,2004∼2005 年度にかけて大型観光キャンペーンが実施されており,目標
達成(入込観光客数 10%増,一人当たり観光消費額 10%増等)を前提に同キャンペーンの経済
効果を試算した。この結果,同キャンペーンを実施しない場合と比べた増分は年間で約 856 億円
となり,広島県の経済成長率を 0.5%程度押し上げ,雇用誘発効果も大きいことが確認された。
3.広島県の観光振興に向けて(提言)
広島経済同友会では,2003 年 3 月に「提言
観光都市ひろしまに求められる機能」として対策
を提言している。今回の調査を踏まえ,広島県の観光振興に向けて,さらに以下の項目に取り組
むことを提言する。
経済効果からみた観光振興のあり方としては,
「イベントの効果を最大限発揮させることにより
観光客数の増加に取り組む」,「魅力ある食・土産などを開発することにより観光消費の増加に取
り組む」,「イベントなどに関連する都市型サービス産業の育成に取り組む」ことがある。
アンケート・ヒアリング調査等からみた観光振興のあり方としては,
「観光資源に磨きをかける
とともに,広域連携に取り組む」,
「『広島ブランド』の確立を図る」,
「PRを推進し,国内外から
の観光客の誘致に取り組む」,
「ハード・ソフト両面からホスピタリティ(受け入れ体制)の向上に取
り組む」,「観光関連の推進組織における一層の連携と役割分担の明確化を図る」
,「交通インフラ
の整備を引き続き推進していく」ことがある。
今後は,広島県の観光振興にかかわりを持っているすべての関係者が,さまざまな調査機関な
どが実施する観光に関するアンケート調査において,広島県の経済力に見合うトップ 10 に選ばれ
ることを目標(現状は 20 位前後)に,これらの項目に取り組んでいくことが望まれる。
目
はじめに
次
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
1.広島県の産業構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
2.観光ニーズと国の観光振興策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
3.広島県の観光振興策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
4.広島市の観光振興策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7
本レポート作成までの委員会における活動内容
第1章
第2章
観光振興の必要性と観光振興策
広島県における観光の現状と課題
1.広島県への観光客数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
2.広島県の観光資源 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
11
3.広島県の観光産業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
20
第3章
観光が地域経済に及ぼす経済効果
1.わが国経済に及ぼす経済効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
2.観光が地域経済に及ぼす経済効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
3.広島県大型観光キャンペーンの経済効果試算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第4章
28
アンケート・ヒアリング調査の結果(概要)
1.アンケート調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
35
2.ヒアリング調査等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
37
第5章
広島県の観光振興に向けて(提言)
1.観光都市ひろしまに求められる機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
41
2.経済効果からみた観光振興のあり方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41
3.アンケート・ヒアリング調査等からみた観光振興のあり方
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42
・・・・・・・・・・・・・
45
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
46
4.今後の目標∼観光県としてトップ 10 に選ばれることを目標に!
おわりに
資料編
1.「観光振興が広島県経済に及ぼす影響」に関するアンケート調査結果
・・・・・・・・・ 48
2.講演録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55
3.都道府県の好印象度と訪問意向に関する調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65
はじめに
産業構造や国民意識の変化にともない,産業としての観光の成長性が注目されている。かつて,
リゾートブームとその崩壊を経験したことにより,近年では,歴史や自然など地域固有の資源を
活用したまちづくりや地域の活性化を目指す取り組みが各地で行われている。
広島県においても,官民それぞれにおいて観光振興についての機運が高まりつつある。2003 年
度には,広島経済同友会が「広島三昧倶楽部」を主催し,広島県への観光客増加を目指す取り組
みを実施した。また,2004 年度からは広島県が大型観光キャンペーンを実施中であり,さらに
2005 年度には JR のデスティネーションキャンペーンとのタイアップなどが計画されている。ま
た,広島市では,観光のみならず勉学,研究,ビジネスなどさまざまな来訪者(ビジターズ)の倍増
を目指している。
観光振興に関しては,これまでにも行政,経済団体,シンクタンクなどにより,さまざまな視
点から調査,分析が行われ,具体的な提案もなされている。本委員会では,既存の分析結果など
も参考にしながら,あらためて観光振興の必要性と観光振興策(第1章)を確認し,広島県における
観光の現状と課題(第2章)を整理した。そして,観光が地域経済に及ぼす経済効果(第3章)の定量
的な分析結果ならびに関係する委員会も含めたアンケート調査やヒアリング調査(第4章)などを
踏まえて,広島県における今後の観光振興策に向けた提言(第5章)をとりまとめた。
今回の調査に関して,勉強会やアンケート,ヒアリング調査等にご協力いただいた方々に感謝
を申し上げるとともに,本稿が広島県における観光振興の一助となることを期待する。
1
本レポート作成までの委員会における活動内容
○第1回委員会(2004 年 6 月 3 日)
・勉強会「広島県の観光振興策について」
講師
広島県商工労働部
産業振興総室長
平田
修
氏
○第2回委員会(2004 年 7 月 1 日)
・勉強会「広島市・ビジターズ倍増に向けて∼千客万来の広島の実現」
講師
広島市企画総務局
都心活性化推進室長
糸山
隆
氏
○第3回委員会(2004 年 9 月 9 日)
・勉強会「観光の経済効果について」
講師
中国電力(株)研究開発部門
経済研究センター副長
広実
孝
氏
○アンケート調査(2004 年 10∼11 月)
・都市機能委員会,1500 万人委員会,本委員会の委員を対象
○第4回委員会(2004 年 11 月 11 日)
・調査報告書(案)についての検討
○ヒアリング調査(2004 年 11 月 29 日)
・(有)平田観光農園
代表取締役
平田
克明
氏
○ヒアリング調査(2004 年 11 月 30 日)
・(有)石亭
代表者
上野
純一
氏
・(株)やまだ屋
代表取締役社長
中村
靖富満
氏((社)宮島観光協会会長)
○講演会(2004 年 12 月 2 日)
・テーマ「観光による地域振興と地域づくり」
講師
(株)電通関西支社
営業統括局プロジェクト開発室
プロジェクト1部長
○第5回委員会(2005 年 1 月 25 日)
・調査報告書(案)についての検討
○第6回委員会(2005 年 2 月 14 日)
・調査報告書(案)についての検討
2
德永
眞一郎
氏
第1章
観光振興の必要性と観光振興策
1.広島県の産業構造
広島県は,これまで自動車や機械,鉄鋼,造船などの多様な製造業による「ものづくり県」と
して発展してきた歴史があり現在でも,ものづくりが県内生産や就業の場として重要な役割を担
っている。しかし,統計的に見ると,ものづくりを代表する製造業への就業者は実数,シェアと
も低下傾向にあり,代わってサービス業(第1図)が伸びている。製造業の低下は,プラザ合意(1985
年)以降の円高対策などに加え,近年では経済発展が目覚しい中国をはじめとするアジア諸国への
製造業の海外進出による産業空洞化が影響しているものとみられる。また,サービス業の進展は,
経済社会の発展や成熟化に伴う国民的ニーズの変化を反映した必然的な流れであり,広島県のみ
ならず全国的な傾向(第2図)でもある。
第1図 就業構造の推移(広島県)
(万人)
45
(%)
30
サービス業
製造業
サービス業シェア(右目盛)
製造業シェア(右目盛)
40
25
35
30
20
25
15
20
15
10
10
5
5
0
0
1955
60
65
70
75
80
85
90
95
2000年
資料:総務省「国勢調査報告」
第2図 就業構造の推移(全国)
(万人)
2000
(%)
30
サービス業
製造業
サービス業シェア(右目盛)
製造業シェア(右目盛)
1800
25
1600
1400
20
1200
1000
15
800
10
600
400
5
200
0
0
1955
60
65
70
75
資料:総務省「国勢調査報告」
3
80
85
90
95
2000年
2.観光ニーズと国の観光振興策
所得水準の向上や余暇時間の増大などに伴い,レジャー・余暇生活に力点を置きたいというニ
ーズ(第3図)は,継続的に高まっている。また,(財)社会経済生産性本部の調査によると,余暇活
動の中でも海外旅行,国内旅行という観光(第4図)に対するニーズ(潜在需要)が高い。
第3図 生活の力点をおきたい分野
(%)
40
35
レジャー・余暇生活
住生活
食生活
耐久消費財
30
25
20
15
10
5
03年6月
02年6月
01年9月
97年5月
99年12月
96年7月
95年5月
94年5月
93年5月
92年5月
91年5月
90年5月
89年5月
88年5月
86年5月
87年5月
85年5月
84年5月
83年5月
82年5月
81年5月
80年5月
79年5月
78年5月
77年5月
76年5月
76年11月
75年5月
75年11月
74年1月
74年11月
73年1月
0
(注)1.耐久財とは,自動車,電気製品,家具など耐久消費財の面。
2.99 年度以前は単数回答。01 年度以降は複数回答で聞いており,以前の調査と直接比較できない。
資料:国土交通省「平成 16 年版 観光白書」
第4図 余暇活動の潜在需要
海外旅行
36.6
11.3
17.9
国内観光旅行(避暑,避寒,温泉など)
オートキャンプ
6.2
9.7
音楽会,コンサートなど
陶芸
2.7
23.6
9.4
8.8
8.8
8.6
料理(日常的なものを除く)
水泳(プールでの)
スポーツ観戦(テレビは除く)
7.9
観劇(テレビは除く)
7.5
ピクニック,ハイキング,野外散歩
7.0
0
57.7
10.3
10
19.9
潜在需要
参加率
18.6
11.8
31.2
20
30
40
50
60
70 (%)
資料:国土交通省「平成 16 年版 観光白書」
国民ニーズと経済状況を反映した国の観光振興策を振り返ってみると,バブル景気時代の「総
合保養地域整備法(リゾート法)」(1987 年 6 月)が挙げられる。税制・金融面での優遇措置などが
用意され,中国地域でも竹原,三原,尾道などを対象とした広島県の瀬戸内中央リゾート構想(1989
年)をはじめ,5 県すべてでリゾート構想が策定された。バブル景気とサービス経済の進展下での
地方においては,リゾート誘致が地域振興の切り札であった。しかし,バブル崩壊による平成不
況期にはリゾートブームは失速し,中止となった開発も数多い。また,一部の大型リゾート開発
が引き起こした環境問題や,地域外の外部資本とノウハウに依存する開発手法の限界も認識され
たことなどから,その後は,地域の資源を活かしつつ,環境も維持しながら持続可能な発展を目
指す動きが現われ,観光とまちづくりを一体とする考え方が現在の主流となっている。
4
最近の国の観光振興策は,「観光立国懇談会報告書」(2003 年 4 月)やそれを受けてとりまとめ
られた「観光立国行動計画」(2003 年 7 月)(第5図)に見られるように,「住んでよし,訪れてよ
しの国づくり」を基本理念としつつ,観光の経済波及効果に着目し,外国からの観光客誘致とそ
のための環境整備が重視されている。その中で,2010 年に訪日外国人旅行者1千万人(現在の約
2倍)の目標を掲げ,「ビジット・ジャパン・キャンペーン」(第6図)が展開されている。
第5図 観光立国行動計画の主要事項
資料:国土交通省ホームページ
第6図 ビジット・ジャパン・キャンペーンの概要
資料:中国運輸局ホームページ
5
3.広島県の観光振興策
広島県においては,観光は心のリフレッシュ効果の提供,文化や相互理解を深める交流効果,
経済効果,地域づくりやまちづくりの促進など多様な役割と効果を持つことから,ストックの活
用と創造による観光振興によってソフトな産業構造の構築を目指している。
このため,ものづくり産業の集積に加えて,人を呼び込み,動かす手だてとしての観光振興施
策(第1表)を推進している。
第 1 表 広島県の主な観光振興施策
(1)創る∼観光資源の開発とブラッシュアップ
・広島FMP(フェスティバルマーケットプレイス)
広島港観音マリンリゾート地区10.8haにおいて,民間活力を利用した新たな賑
わいを創出(2005年3月オープン予定)
・観光地宣言!事業
自らが観光地としての魅力付けや受入体制の整備等を行おうとする地域の取り
組みを支援する補助事業
[3市でのモデル事業(2003∼2005年度)]
呉市:呉の新ヒストリーエリア(入船山記念館,呉市立美術館,アレイから
すこじま周辺)整備(駐車場の整備等)
竹原市:町並み保存地区整備(憧憬広場整備等)
尾道市:駅周辺整備(共通サインの整備等)
1.総合的観光振興
・その他県内各地での町おこし町づくり
施策の展開
(2)繋ぐ∼旅行商品化・ルート化の推進
・旅メニュー(ひろしまベストルートガイドほかのパンフレット)の作成,PR
・島めぐり航路事業(せとうちおさんぽクルーズ)
宮島・鞆間の瀬戸内海の7島を2隻の乗り降り自由な高速船でめぐるクルーズ
(2004年は9月18日(土)∼11月21日(日)の土日)
(3)発信する∼広報・宣伝活動の推進
・観光ホームページのリニューアル(コンテンツの充実,システムの効率化等)
A4サイズで印刷可能な散策イラストマップや動画映像
外国語版パンフレットの情報提供(英語,ハングル,中国語) 等
・広島ゆめてらす(首都圏での観光案内とアンテナショップ)
・各地での観光キャンペーン活動(イベント参加,ブース出展等)
・東アジア経済の発展,航空路線の開設等を契機として,趨勢的に増加が見込まれ
る国際観光ニーズへの積極的プロモーション
「ひろしま」の知名度向上及びブランドイメージの形成
2.国際観光の推進
韓国・台湾を主要ターゲットに観光地「ひろしま」の知名度向上を図る
広島,山口,愛媛3県で「瀬戸内」の知名度向上を図る
外国人観光客数の目標 : 2005年 48万人 2007年 73万人
・国のビジット・ジャパン・キャンペーンとの連携事業(海外の旅行エージェント・
マスコミ等の受け入れによる来訪促進事業等)
3.大型観光キャン
ペーンの実施
「ええじゃん広島県」をキャッチフレーズ に,JRグループとタイアップした全国
規模のキャンペーンを2004∼2005年度に行う(県,市町村,観光事業者,旅行会社等
官民一体の事業)
資料:広島県商工労働部(2004 年 6 月)
6
4.広島市の観光振興策
広島市では,観光客だけでなく,さまざまな目的(勉学,研究,ビジネス,買い物等)の来訪者(=
ビジターズ,市民の外出も含む)を増やして,広島市の活性化を図る「ビジターズ倍増に向けて∼
千客万来の広島の実現」(2004 年 5 月)を取りまとめた。この中で「ひろしまビジターズ・インダ
ストリー戦略(VI 戦略)」として, 2001 年の来訪者約 3,700 万人を 2010 年には 7,000 万人に倍
増させることを基本目標に,①来訪者の視点で都市機能を充実,②市民が主役の観光・交流の促
進,③既存産業の交流産業化,④担い手の意識改革と連携の強化,の4つを基本方針としている。
そして,行政,市民,NPO,企業などがそれぞれの立場でできることから実行するもの(実施中の
ものも含む)として 37 のアクション・プログラム(第2表)を提案している。
第2表 ひろしま VI 戦略・アクション・プログラム
今ある都市空間・機能集積の活用,伝統・特性を生かした祭・イベントの展開
1.都心の魅力と
賑わいづくり
(1)ひろしま街角アーティスト (2)平和大通り活性化(朝市の常設化等)
(3)広島城歴史空間活用 (4)旧日銀広島支店の保存活用 (5)屋台ストリート
(6)ひろしまの夜景づくり (7)祭り・イベントの充実(アニメーション等)
(8)デルタに観覧車(民間投資が前提)
2.「水の都ひろしま」
づくり
太田川デルタ,瀬戸内海の活用∼水の都ひろしま推進計画(2003年10月)
(9)水辺のオープンカフェ (10)水辺のコンサート (11)船上レストラン
(12)航路の拡大(雁木タクシー等)
地域固有の資源の活用
3.地域の魅力
再発見
(13)「見て歩き資源」を市民活動で発掘 (14)ぶらぶら歩きマップ
(15)広島紹介ランチョンマップ (16)広島魅力百選 (17)ビューポイントガイド
(18)広島カテゴリー別(寺院,紅葉,つくり酒屋,食等)ツアー
(19)広島魅力発見隊(駅前市場まわり) (20)駅前市場を「市の立つ街」に(新名所づくり)
(21)広島交通博物館 (22)産業・体験観光(修学旅行誘致等)
(23)山を守り名所にする市民運動(ボランティア育成,林業体験学習等)
(24)海の魅力再発見(クルージング,港の倉庫活用,無人島活用等)
(25)空き家,空き地バンク (26)借景観光(広島起点の広域観光ルート開発)
原爆ドーム・平和公園以外のイメージ開拓と口コミ情報活用(市民による広島自慢)
(27)国内外への広島セールス(JRデスティネーションキャンペーンとの連携,ホームページ
4.広島情報のPR
の充実,フィルム・コミッション活動,修学旅行・外国人観光客・コンベンション等の誘致等)
(28)広島うりこみ隊(市民による広島セールス) (29)「食の特産品」ブランド化(「広島かき
PR観光リーフレット」作成,「とれとれ広島の地魚の店」HPによるPR,「お好み焼き食べくら
べ談義」の開催等) (30)広島ファンクラブ(広島ゆかりの人的ネットワーク等)
来訪者への気遣い(居心地のよさ)と,わかりやすく移動しやすい街づくり
(31)ホスピタリティ広島運動(ボランティア活動との連携,広島をよくする意見・情報の収集
等) (32)平和のホスピタリティ(レストハウスでの生花・折り鶴販売,案内の充実,平和
5.ビジターズの
イベント等) (33)平和グッズ (34)ビジターズ相談窓口(店舗,ホテル,ガソリンスタ
受け入れ環境づくり
ンド等を活用した街角案内所の設置等) (35)乗りやすい公共交通(路面電車のLRT
化等) (36)自転車都市ひろしま(駐輪・走行環境整備等) (37)デルタの杜を育てる
(公共施設や民間施設の緑化等)
資料:広島市「ビジターズ倍増に向けて」(2004 年 5 月)
7
また,VI 戦略のシンボル・プロジェクトとして,2005 年秋頃に市内の 8 区のさまざまな魅力
を自慢し合うまちを舞台としたイベントである「ひろしま八区覧会・八区物館」(第3表)を開催
する。市民や NPO,企業などの自主的な活動を促し,地域の歴史や自然など隠れた魅力を掘り起
こすとともに,その成果や活動を広く PR する。そして,開催後も,こうした自主的な活動が続
き,魅力的な住環境や景観づくりなどのまちづくり活動やコミュニティ活動を促進する契機とな
ることを目指している。
第3表 ひろしま八区覧会・八区物館の実施概要
八区覧会インフォメーション(開催内容,交通手段等)
1.八区物館の設置
(旧日銀広島支店)
各種展示(お宝,手作りマップ等)とイベント(お宝鑑定・品評会等)
情報紹介(ギネス記録,日本一,オンリーワン等) など
街並みを使った地域イベント,商店街等のイベント,伝統芸能・祭りの実演
歴史めぐりの街歩き,自然観察の山歩き
2.まちを舞台にした八区覧会
(市内各地での実施例)
企業・工場の見学,体験や特産品の展示・直売
街角花壇作りや植樹など地域の風景づくり活動
個人・企業・商店などの収蔵品の公開 など
八区にちなんだカテゴリー化
「広島88個所めぐり(寺院)」 「秋の広島18景(紅葉の名所)」
3.カテゴリー別八区覧会
(観光ルート化,商品化の実施例)
「酒めぐり8選(つくり酒屋)」 「旬の味覚88選(食)」 「裏通りの名店88選」 等
産業観光・体験できる場所を集めて「見よう。触れよう広島の産業」
ハイキングコースを集めて「でかけよう。広島の里山」 など
資料:広島市「ビジターズ倍増に向けて」(2004 年 5 月)
8
第2章
広島県における観光の現状と課題
1.広島県への観光客数
広島県への入込(訪問)観光客数(第4表)は,ここ数年 4,000 万人前後で推移している。このうち
広島市が約 900 万人台で約4分の1を占める。次いで,年による変動はあるものの福山,宮島,
尾道が 200∼300 万人で続いている。県外からの観光客(第7図)が県内客をやや上回っており,
地域別(第8図)では近畿からが多く,山陽,関東が続いている。
第4表 広島県および県内上位 10 自治体(2003 年)への入込観光客数
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
(万人,%)
2003年
*1
広島県
3,622.0
4,138.0
3,860.2
3,761.3
3,934.8
(前年比)
( 94.3 )
30.4
78.3
( 114.2 )
31.7
74.2
( 93.3 )
36.4
71.2
( 97.4 )
34.3
70.5
( 104.6 )
37.4
84.5
3,895.1 【18.0】
( 99.0 )
34.9
59.2
925.9
958.1
925.2
923.3
925.9
923.1 【31.9】
( 90.5 )
16.1
37.2
( 103.5 )
16.7
34.9
( 96.6 )
17.0
34.3
( 99.8 )
17.3
34.1
( 100.3 )
18.3
34.6
福山市
209.6
290.3
269.9
277.9
270.7
303.8 【38.8】
宮島町
266.9
246.3
241.1
240.4
260.9
263.8 【13.3】
尾道市
202.0
333.8
261.7
234.8
232.6
239.7 【10.4】
147.6
126.4
133.7
135.0
188.0
145.0 【18.6】
廿日市市
32.9
31.1
32.6
33.9
31.9
三次市
99.6
95.9
98.3
98.9
112.0
117.4 【18.0】
庄原市
36.5
39.2
44.2
72.6
91.5
100.0 【13.6】
瀬戸田町
129.6
299.2
175.1
113.4
100.4
81.2
【5.9】
東広島市
47.8
50.8
50.4
59.8
81.5
79.5
【4.7】
ねんりんピック
スポレク,呉市
市政100周年
再掲:外国人観光客
修学旅行生
広島市
(前年比)
再掲:外国人観光客
修学旅行生
*2
呉市
*3
(参考)
県内主要イベント
しまなみ海道
開通
国民文化祭
その他の出来事
9.11テロ
(注)1.【】内は宿泊率・・・宿泊率(2003 年)は,宿泊者数/入込観光客数×100
2.福山市は 2003 年 2 月に新市町と内海町と合併(2002 年実績:内海町 27.2 万人,新市町 8.4 万人)
3.廿日市市は 2003 年 3 月に佐伯町と吉和村と合併(2002 年実績:佐伯町 25.1 万人,吉和村 56.0 万人)
資料:広島県「平成 15 年 広島県入込観光客の動向」(2004 年 6 月)
9
( 99.7 )
18.0
31.7
131.6
SARS
【7.9】
第8図 県外入込観光客の出発地別構成
第7図 入込観光客における県外客の割合
(万人)
2600
(%) (%)
60 25
県外客
県内客
県外客の割合(右目盛)
2400
20
55
2200
2000
15
50
1800
10
1600
45
1400
5
山陽
四国
近畿
関東
1200
40
1000
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 年
山陰
九州
中部
その他
0
95
96
97
98
99
00
01
02
03 年
資料:広島県「広島県入込観光客の動向」
資料:広島県「広島県入込観光客の動向」
外国人観光客は,ここ数年では 35 万人前後となっており,このうち半数の約 18 万人が広島市
を訪れている。また,地域別(第9図)ではアメリカが最多で,次いでアジア(韓国,中国)からの来
訪者が多い。
第9図 外国人入込観光客の出発地別構成比
(2003 年)
国籍不明
30.9%
欧州
12.9%
旧ソ連邦地域
0.6%
(参考)国別内訳
米州
27.2%
アメリカ
韓国
中国
ドイツ
オーストラリア
イギリス
台湾
カナダ
フランス
タイ
アジア州
24.1%
大洋州
4.3%
資料:広島県「平成 15 年 広島県入込観光客の動向」(2004 年 6 月)
観光客数(人)
84,017
33,466
18,812
12,908
12,380
11,670
9,414
5,426
4,954
4,084
前年比(%)
-15.1
34.5
-8.0
1.8
5.3
23.3
3.3
15.8
9.9
-7.4
統計からみた課題として,①各種のイベント等が開催された時期は,関係する地域への観光客
数が増加しているが一過性にとどまっていること,②広島市,福山市以外での宿泊率が低いこと,
③将来のリピーターとして有望な修学旅行生は減少傾向にあること,④近年,国の重点施策にも
なっている外国人観光客は横ばいにとどまっていること,などがあげられる。
10
2.広島県の観光資源
(1)観光資源の分布状況
観光資源は観光客のニーズ(見る,食べる,遊ぶ,学ぶ等)や観光資源そのものの特性などにより,
さまざまなカテゴリーに分類することができる。ここでは,(財)中国産業活性化センターによる「中
国地域の広域観光ルートの開発調査報告書」(2001 年 3 月)に記載されている広島県の観光資源を
中国地域全体の観光資源とあわせて紹介する。
同報告書では,観光資源を①自然・環境(第 10 図),②休養・保養(第 11 図),③スポーツ・レ
クリエーション・観光施設系(第 12 図),④歴史遺産・伝統文化(第 13 図),⑤芸術・文化(第 14
図),⑥産業観光・体験・学習(第 15 図)の6つに分類している。
中国地域全体での大まかな分布状況は,いずれの資源も広島県を含めて全域にほぼ均等に分布
しているが,休養・保養資源は温泉が豊富な山陰側に比較的多く,芸術・文化資源は岡山県(倉敷
美観地区)と島根県(松江城下町)での集積が厚い。
広島県については,しまなみ海道や多島美,朝鮮通信使や水軍などに代表される瀬戸内海の自
然と歴史,原爆ドームと厳島神社の2つの世界遺産,広島市での都市観光,中国山地でのスポー
ツ・体験などが特徴的な観光資源となっている。
第 10 図 自然・環境資源
資料:(財)中国産業活性化センター「中国地域の広域観光ルートの開発調査報告書」(2001年3月)
11
第 11 図 休養・保養資源
資料:(財)中国産業活性化センター「中国地域の広域観光ルートの開発調査報告書」(2001年3月)
第 12 図 スポーツ・レクリエーション・観光施設系資源
資料:(財)中国産業活性化センター「中国地域の広域観光ルートの開発調査報告書」(2001年3月)
12
第 13 図
歴史遺産・伝統文化資源
資料:(財)中国産業活性化センター「中国地域の広域観光ルートの開発調査報告書」(2001年3月)
第 14 図
芸術・文化資源
資料:(財)中国産業活性化センター「中国地域の広域観光ルートの開発調査報告書」(2001年3月)
13
第 15 図
産業観光・体験・学習資源
資料:(財)中国産業活性化センター「中国地域の広域観光ルートの開発調査報告書」(2001年3月)
また,代表的な味(郷土料理,産品等)(第 16 図)や特産品・伝統工芸品(第 17 図)も広島県内各地
に分布している。
第 16 図
広島県の代表的な味の分布
資料:(財)中国産業活性化センター「中国地域の広域観光ルートの開発調査報告書」(2001年3月)
14
第 17 図
広島県の代表的な特産品・
伝統工芸品の分布
資料:(財)中国産業活性化センター「中国地域の広域観光ルートの開発調査報告書」(2001年3月)
(2)観光地評価
(財)日本交通公社の「観光資源評価台帳」(第5表)では,観光資源を SA 級,A 級,B 級などに
分類評価しているが,広島県は SA 級が 2 ヶ所,A 級が 4 ヶ所,B 級が 24 ヶ所の計 30 ヶ所とな
っている。
第5表 評価別の主要観光資源と資源数(B級以上)
自然資源
SA
A
人文資源
B
SA
A
B
主な観光資源(A級以上)
SA…厳島神社,広島平和記念資料館
A…宮島,原爆ドーム,三段峡,瀬戸内海
広島
0
3
12
2
1
12
鳥取
0
3
19
0
0
13 A…大山,浦富海岸,鳥取砂丘
島根
1
2
26
1
1
23
岡山
0
1
14
0
7
山口
1
0
13
0
1
全国
16
200
765
21
162
SA…出雲大社,隠岐諸島
A…神魂神社,三瓶高原,国賀海岸
A…吉備津神社,閑谷学校跡,西大寺会陽
20 後楽園,倉敷美観地区,大原美術館
瀬戸大橋,瀬戸内海
SA…秋芳洞・秋吉台
18
A…錦帯橋
(広島県 B級資源)
自然資源
人文資源
道後山
比婆山連峰
帝釈峡
三段の滝
江の川
音戸の瀬戸
鞆の浦
生口島
仙酔島
浄土寺
明王院
西国寺
千畳閣
耕三寺
福山城
縮景園
竹原町並み
鞆町並み
尾道山手地区
の町並み
宮島の管弦祭
しまなみ海道諸橋
江田島
弥山原始林
比婆山のブナ純林
896
(参考) 観光資源の評価基準
ランク
SA級
基準・内容
代表資源名
わが国を代表する資源で,かつ世界にも誇示しうるもの。わが国のイ 富士山 摩周湖
メージ構成の基調となりうるもの。
法隆寺 姫路城 等
A級
SA級に準じ,その誘致力は全国的で,観光重点地域の原動力とし
て重要な役割を持つもの。
芦ノ湖 天橋立 清水寺
高山の街並み 等
B級
地方スケールの誘致力をもち,地方のイメージ構成の基調となるも
の。
筑波山 浜名湖
高山の朝市 等
C級
主として,県民およびその周辺地域住民の観光利用に供するもの。
身延山(山梨県) 広島城跡
石神井池(東京都) 等
以下
D級∼
地域住民の利用。
資料:(財)日本交通公社「観光資源評価台帳」(2000 年3月)
15
B級以上の観光資源を得点集計したもので見ると(第 18 図),広島県は全国で 30 位と下位に位
置しており,広島県の観光地としての魅力度は低いものとなっている。なお,全国的に見ると,
京都府と北海道が群を抜いて高い水準にある。一方,中国地域では島根県が 13 位と比較的上位に
位置しているものの,他の県の順位はそれほど高くない。
第 18 図
(ポイント)
250
観光資源からみた県別魅力度
自然資源
人文資源
200
150
100
50
徳島
埼玉
福井
佐賀
香川
千葉
宮崎
茨城
石川
高知
大分
山口
鳥取
愛知
秋田
福岡
広島
神奈川
兵庫
長崎
宮城
熊本
愛媛
岡山
三重
山形
岩手
和歌山
静岡
新潟
大阪
岐阜
山梨
栃木
島根
滋賀
富山
群馬
福島
青森
沖縄
鹿児島
東京
長野
奈良
北海道
京 都 0
(注)上記の数値は,SA級を5点,A級を3点,B級を1点として点数集計したもの。
資料:(財)日本交通公社「観光資源評価台帳」(2000 年3月)
また,同公社では,アンケート調査による各観光地への来訪経験と来訪意向をもとに,独自の
指標を作成し,主要な観光地をカテゴリー別にポジショニング(第6表)も行っている。これによ
ると,広島県の主要観光地である広島,宮島,尾道,しまなみ海道は成熟型に位置付けられてお
り,新たな魅力づくりが必要とされている。
第6表 観光地のカテゴリー
高
ー
リ
ピ
〈潜在型〉
〈 発展型〉
松江 川越
北山崎 塩原
酒田 上野
高松 長浜
など
網走
白神山地 白馬
上高地 那須
黒川温泉 志賀高原
箱根 和倉
西表島 など
ト
〈 成熟型〉
指
松島海岸 小豆島
数
伊香保 しま なみ海道
広島
寸又峡
尾道 明石海峡大橋
など
熱海
発展型
すべての旅行者から評価が高く,加えて来訪経験者からの評
価が未経験者の評価を上回る。まさに旅行者の志向に沿っ
た優良な観光地である。旅行市場の動向を絶えずウオッチし
ながら,いっそう魅力の高い観光地づくりを進めていくことが
必要である。
潜在型
来訪経験者からの評価は高いにも関わらず,総合的な評価
は伸び悩んでいる観光地である。今後,来訪者数を増加させ
ていくためには,プロモーションの強化によって観光地として
の知名度を高めていくことが必要である。
成熟型
全般に来訪意向があまり高くなく,さらに一度来訪経験のある
者からの意向が低いという,ブームが沈静化した観光地であ
る。リピーターおよびリターナーを増加させるための新たな魅
力づくりが必要である。また,適正な需要量を安定的に確保
していくことを考えていく必要がある。
イメージ
先行型
総じて評価は高いものの,来訪経験者からの評価が未経験
者の評価に比べて低く,実際の魅力以上に好イメージがもた
れている観光地である。このままでは,徐々に来訪意向が低
下し,来訪者数が減少していくことも想定されるので,あらた
めて魅力づくりに関する検討を始めることが必要である。
〈 イメージ先行型〉
札幌 白川郷
富良野 宮古島
長崎 阿寒湖
萩 四万十川
加賀温泉郷 など
低
低 来訪意向指数 高
(注)来訪意向指数…各観光地に対する来訪意向をもとに算出した評価得点。値が大きいほど旅行者の 行きたいという意向が強い 観光地である。
リピート指数…その観光地に「行ったことがある人の来訪意向得点」と「行ったことがない人の来訪意向得点」の差。値が大きいほど イメージより実際
のほうがすばらしい 観光地,マイナス値が大きいほど 実際に行ってみると期待したほどではなかった 観光地である。
資料:(財)日本交通公社「旅行者動向 2003」(2003 年7月)
16
(3)認知度
観光客からみた広島県の認知度に関しては,(財)中国産業活性化センターが「中国地域の広域観
光ルートの開発調査報告書」(2001 年 3 月)において,首都圏・関西圏の住民を対象に実施したア
ンケート調査が参考になる。本調査は中国地域全体を対象にしたものであるが,
「中国地域で思い
つく市町村・観光地」(第 19 図)では,県別に再集計すると広島県は約 3 割を占め中国地域ではト
ップとなっている。特に,世界遺産の厳島神社がある宮島と原爆ドーム関連,平和都市ヒロシマ
としての認知度が高い。
第 19 図 中国地域で思いつく市町村・観光地
門司・下関関連
1.7%
松江関連
2.1%
秋吉台関連
2.8%
岡山関連
3.0%
(n=1624,複数回答)
なし
13.0%
鳥取関連
17.6%
倉敷関連
15.2%
しまなみ関連
3.7%
萩・津和野関連
4.4%
出雲関連
5.6%
広島関連
11.4%
宮島関連
13.2%
原爆ドーム関連
6.2%
(注)「倉敷関連」とは,美観地区やチボリ公園など倉敷市周辺に関連する記述を集計した計を指す。
資料:(財)中国産業活性化センター「中国地域の広域観光ルートの開発調査報告書」(2001年3月)
また,「中国地域で思いつく特産品」(第 20 図)の中から広島県分を見ると,もみじ饅頭,牡蠣
が 1 割を超えており,お好み焼,しゃもじが挙げられている。
第 20 図
中国地域で思いつく特産品
なし
19.0%
しゃもじ
1.4%
かき(牡蠣)
11.2%
その他
13.5%
備前焼
1.6%
萩焼
2.6%
ぶどう
2.7%
(n=1714,複数回答)
もみじ饅頭
14.5%
梨
8.5%
ふぐ
5.7%
もも
7.7%
きび団子
6.2%
お好み焼
5.4%
資料:(財)中国産業活性化センター「中国地域の広域観光ルートの開発調査報告書」(2001年3月)
17
なお,同調査では中国地域の観光イメージ(第 21 図)は,瀬戸内海・日本海などの「自然関連」
や原爆・世界平和などの「歴史関連」が多いが,
「イメージなし」が約3割でトップになっており,
イメージが希薄な地域という印象を持たれている。
第 21 図
中国地域のイメージ
(n=1582,複数回答)
自然関連
26.4%
イメージなし
28.7%
歴史関連
14.0%
社会基盤関連
1.5%
マイナスのイメージ
4.1%
味覚関連
5.9%
その他
7.0%
温泉関連
6.5%
総体的な雰囲気
5.9%
(注)「自然関連」とは,海や山,川など自然環境に関する記述を集計した計を指す。
資料:(財)中国産業活性化センター「中国地域の広域観光ルートの開発調査報告書」(2001年3月)
(4)広島地域(広島市とその周辺)への来訪経験と満足度
中国電力(株)経済研究センターが,大阪・福岡で実施したアンケート調査によると,広島地域へ
の来訪経験(第 22 図)は全体で 20∼30%程度となっている。訪問場所(第 23 図)については,
「平
和公園」及び「宮島」が全体の6割程度を占め圧倒的に多いのに対し,
「広島城」や「フラワーフ
ェスティバル」などは低い水準にとどまっている。また,
「アニメーションフェスティバル」につ
いても回答割合は非常に低く,2001 年時点では 広島のアニメ というものがほとんど認知され
ていないことがわかる。
第 22 図
広島地域への来訪経験
(n=580)
第 23 図
18∼29
男
性
(n=140)
平和公園
ある
ない
無回答
30∼49
広島地域での訪問場所
宮島
お好み村
50歳以上
広島城
18∼29
市民球場
女
性
30∼49
フラワー
フェスティバル
50歳以上
行った
行かなかった
無回答
アニメーション
フェスティバル
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90 100
(%)
資料:中国電力(株)経済研究センター
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90 100
(%)
資料:中国電力(株)経済研究センター
「テーマパークと広島県観光に関するアンケート調査」(2001年8月)
「テーマパークと広島県観光に関するアンケート調査」(2001年8月)
18
同調査によると,宮島,平和公園,お好み村などの満足度(第 24 図)は総じて高く,特に宮島は,
「満足」
「まあ満足」を合計すれば9割近い観光客が満足している。しかし,上位の 3 拠点での満
足度に比べ,それ以外の拠点での満足度は高いといえず,多くの観光客を満足させられるような
場所は少ないといえる。
第 24 図 広島地域での訪問場所における満足度
宮島 (n=82)
平和公園 (n=91)
お好み村 (n=41)
広島城 (n=20)
満足
まぁ満足
普通
やや不満
不満
無回答
市民球場 (n=15)
フラワー
フェスティバル (n=12)
アニメーション
(n=3)
フェスティバル
0
10
20
30
40
50
60
70
資料:中国電力(株)経済研究センター「テーマパークと広島県観光に関するアンケート調査」(2001年8月)
80
90
100
(%)
なお,広島観光での不満な点(第7表)として,観光地での価格の高さ,混雑していて騒々しい,
刺激や新鮮味に欠けており楽しくない,といった点があげられている。
第7表 広島観光についての不満な点
台風で厳島神社の見学ができなかった
ロープウェイの代金が高い
周辺環境とのイメージがマッチしていない
平和公園
道路沿いでうるさい
昔ながらのお好み焼が少ない
お好み村
混雑しており,あまりおいしくなかった
原爆ドームのイメージが強すぎて観光というイメージにならない
フラワーフェスティバルは単なるお祭りさわぎ
もう一度行ってみたいとは思わない
その他 刺激がなく楽しくない
汚い感じがする
混雑していて騒がしい
新鮮味に欠けており,訴求力が平凡
宮島
資料:中国電力(株)経済研究センター「テーマパークと広島県観光に関するアンケート調査」(2001年8月)
以上のように,広島県には豊富な観光資源が分布しているものの,交通の便がよい瀬戸内海側
に温泉が少ないことや,ランドマークとなるような自然景観がないことなどから,観光客からみ
たイメージは単一あるいは希薄なものとなっている。しかし,瀬戸内海ひとつをみても,かつて
の朝鮮通信使が絶賛し,幕末や明治期にシーボルトやリヒトホーフェン(ドイツ人地理学者)な
ども高く評価しているわが国有数の観光資源である。また,アニメーションフェスティバルにつ
いては,本年は広島経済同友会がアニメーションビエンナーレと連携して実施するなど新たな試
みもなされている。したがって,各地における観光資源を歴史的評価や現代的意義で再認識し,
地域イメージを確立するとともに,県・市など行政の施策においても重視されている情報発信を
効果的に行うことが課題である。
19
3.広島県の観光産業
(1)観光産業の特徴
現在の産業分類では,観光産業あるいは観光業という単独の分類は無いものの,観光産業は観
光活動を行う人々(観光客)に対して,それらの活動をサポートするためのサービスを提供する産業
(第8表)と位置付けられる。これらの観光産業は,通常地元客にもサービスを提供しており,観
光客へのサービス提供の割合は各業種により異なっている。
第8表 観光産業の業種内訳と観光比率
観光産業
旅客輸送業
業種(事業所統計分類)
観光比率(%)
鉄道業
48.0
道路旅客運送業
19.5
水運業
3.5
航空運輸業
75.5
100.0
旅行業
百貨店,その他の各種商品小売業,
6.0
婦人・子供服小売業,靴・履物小売業,
各種食料品小売業,酒小売業,食肉小売業,
鮮魚小売業,乾物小売業,野菜・果実小売業,
菓子・パン小売業,料理品小売業,
小売業
その他の飲食料品小売業,
陶磁器・ガラス器小売業,その他のじゅう器小売業,
医療品・化粧品小売業,書籍・文房具小売業,
スポーツ用品小売業,がん具・娯楽用品小売業,
楽器小売業,写真機・写真材料小売業,
時計・眼鏡・光学機械小売業
食堂・レストラン,そば・うどん店,すし店,
飲食店
10.0
喫茶店,その他の一般飲食店,料亭,
バー・キャバレー・ナイトクラブ,酒場・ビアホール
旅館,
その他の宿泊所
旅館,簡易宿所,会社・団体の宿泊所,
他に分類されない宿泊所
劇場・興行場,興行団,競輪・競馬等の競走場,
娯楽業
85.0
83.5
競輪・競馬等の競技団,スポーツ施設提供業,
体育館,ゴルフ場,ボウリング場,テニス場,
公園・遊園地,マリーナ業,遊漁船業
社会教育施設
博物館・美術館,動物園・植物園・水族館
100.0
(注)観光比率は,ある産業の総売上高(付加価値額)に占める観光関連と認められる金額の割合で,(社)日本観光協会
「観光産業の市場規模Ⅱ」(1996 年 3 月)による。
資料:(社)中国地方総合研究センター「多様な厚みと広がりのある観光産業」(中国地域経済白書 1999)
観光産業はすそ野が広く,上記の観光客に直接,物やサービスを提供する産業のみならず,食
料品製造業,卸売業,リネンサプライ業など間接的にかかわる産業も多い。さらに近年では,主
として「体験観光」を行う農林漁業や,
「産業観光」の対象としての製造業などにおいても,新た
に観光分野とのかかわりが生じてきている。
20
(2)従業者数
前述のように,観光産業の実態を正確に把握することは難しいが,観光比率をもとに広島県の
観光産業に従事している従業者数を算出すると,約 4.1 万人である。全従業者に占める割合(第 25
図)を見ると,全国を 0.7 ポイント下回る 3.0%であり,全国でも下から3番目に位置するなど低
い水準にとどまっている。
第 25 図 都道府県別にみた観光関連産業従業者比率(2001 年)
(%)
6
5
(全国値: 3.7%)
4
3.0
3
2
1
埼玉
愛知
広島
大阪
愛媛
徳島
富山
岡山
香川
茨城
神奈川
東京
福岡
宮崎
島根
山形
福井
滋賀
山口
青森
秋田
新潟
宮城
佐賀
岐阜
兵庫
群馬
熊本
福島
奈良
鹿児島
岩手
高知
静岡
鳥取
京都
大分
栃木
三重
長崎
和歌山
北海道
石川
長野
山梨
沖縄
千葉
0
(参考)全産業および観光関連産業の従業者数
北海道
千葉
(単位:人,%)
東京
鳥取
島根
岡山
広島
山口
福岡
36,585
7,545
7,091
3,897
2,814
3,981
3,512
5,197
2,960
5,234
5,274
897
1,114
3,070
254
915
1,052
716
752
955
建設業
285,592
111,799
163,692
505,840
29,512
43,758
74,867
117,533
71,259
195,108
製造業
249,095
156,820
305,935 1,097,984
49,438
55,660
186,514
257,403
121,462
285,535
農林漁業
鉱業
産
業
分
類
別
宮城
15,019
7,818
12,415
39,274
1,476
2,486
4,826
8,221
4,835
12,486
運輸・通信業
183,047
78,801
165,569
560,509
14,573
17,426
57,297
89,106
46,665
154,517
卸・小売業,飲食店
757,018
347,931
649,353 2,654,384
75,657
90,916
239,537
401,430
190,106
739,306
金融・保険業
70,966
26,698
53,927
393,617
7,329
9,407
21,574
33,617
16,150
65,218
不動産業
40,583
15,698
34,505
227,194
1,983
2,706
8,568
17,638
6,345
33,962
サービス業
810,874
312,726
669,166 2,891,053
85,178
108,887
244,184
381,518
199,129
691,724
公務
131,308
39,403
231,972
12,264
15,877
27,010
45,736
27,184
71,340
2,585,361 1,106,136 2,132,282 8,608,794
電気・ガス・水道
69,515
280,478
352,019
鉄道業
4,815
2,685
4,484
20,974
889
305
1,207
2,160
1,008
3,531
道路旅客運送業
7,735
2,471
3,902
22,689
462
679
1,274
2,928
1,404
5,771
合計
水運業
航空運輸業
観 旅行業
光 小売業
産 飲食店
業 旅館,その他宿泊所
娯楽業
社会教育施設
合計
観光産業比率
868,941 1,358,115
686,847 2,255,385
48
23
23
397
2
12
70
168
128
72
705
378
9,505
12,491
5
2
78
129
14
1,602
4,683
2,233
3,006
36,126
363
362
1,104
2,063
679
4,683
17,034
7,486
15,881
40,625
1,697
2,125
5,413
8,382
4,634
15,638
17,456
7,265
17,260
71,344
1,550
1,669
4,835
8,240
3,808
17,375
44,436
15,211
28,169
55,808
5,483
5,949
8,263
11,531
9,083
17,844
15,929
3,402
38,197
34,690
1,156
1,172
5,789
5,053
4,269
10,994
2,458
823
1,398
3,442
162
444
446
409
552
898
115,300
41,976
121,825
298,586
11,769
12,720
28,479
41,063
25,579
78,408
4.5
3.8
5.7
3.5
4.2
3.6
3.3
3.0
3.7
3.5
(注)観光産業については,各産業の実数に第8表の観光比率をかけて算出した値。
資料:(財)日本観光協会「観光関連産業の市場規模Ⅱ(推計編)」,総務省「事業所・企業統計調査報告」
以上のように,広島県の全産業に占める観光産業のウエイトは比較的低い水準にとどまってい
る理由には,観光関連以外の産業での集積が多いという面もある。しかし,製造業などで事業所
数や従業者数が減少傾向にあることなどを考えると,観光産業のウエイトを高めていくことが,
今後の広島県にとっての課題である。
21
第3章
観光が地域経済に及ぼす経済効果
1.わが国経済に及ぼす経済効果
国土交通省「平成 15 年版観光白書」によると,2001 年の日本国内での旅行・観光消費額は 20.6
兆円と推計(第 26 図)され,生産波及効果は 48.8 兆円,付加価値効果は 25.8 兆円と推計(第 27 図)
されている。生産波及効果 48.8 兆円は,「1999 年度産業連関表延長表」(経済産業省)の国内生産
額 906 兆円の 5.4%,付加価値額 25.8 兆円は 2001 暦年名目 GDP506 兆円の 5.1%に相当する。ま
た,雇用効果 393 万人は,2000 年の就業者数 6,661 万人の 5.9%を占めている。
このうち観光産業の付加価値額は 10.4 兆円で GDP の 2.1%に相当し,雇用者数 181 万人は就
業者数の 2.7%を占めている。観光産業は,他産業と比較した付加価値額ウエイトで見ると,一般
機械 2.0%,輸送用機械 2.0%,電気業 1.9%などに相当する規模であることに加え,付加価値効果
よりも雇用効果が高いことが特徴となっている。
第 26 図
旅行消費額の推計(2001 年)
訪日外客
旅行
国内旅行17.3兆円(69.4%)
海外旅行6.2兆円(24.8%)
宿泊旅行
日帰り旅行
12.4兆円
(49.9%)
4.9兆円
(19.5%)
訪日 海外旅行
外客 ( 国内関連分)
1.5兆円 1.9兆円
(7.5%)
(7.5%)
海外旅行
(海外分)
4.3兆円
(17.3%)
国内関連総消費額20.6兆円(82.7%)
総旅行消費額24.9兆円(100.0%)
資料:国土交通省「平成 15 年版観光白書」
第 27 図 旅行・観光産業の経済効果(2001 年)
家 計
商品の購入の増加を
通じて生産を誘発
家計を迂回した
誘発生産効果
13.5兆円
雇用者所得の増加
原材料等の購入
の増加を通じて
生産を誘発
旅行・観光
消費額
20.6兆円
生産波及効果
(合計)
48.8兆円
誘発生産効果
14.7兆円
直接生産効果
(売上高)
20.6兆円
付加価値
効果
10.4兆円
雇用創出
効果
181万人
付加価値
効果
25.8兆円
資料:国土交通省「平成 15 年版観光白書」
22
雇用創出
効果
393万人
(参考)経済(波及)効果とは
建設投資や消費活動を行った場合,直接的には建設業や商業などの売上増となるが,建設業や
商業の活動を行うための原材料の仕入れが増えれば原材料を製造販売する企業の売上も増加する。
また,これら企業の利益上昇を背景に,そこで働く人の収入が増えれば,消費支出の増加にもつ
ながる。これらの効果をすべて合計したものが経済効果となる。したがって,建設投資や消費活
動があった場合,建設業や商業だけでなく,関連する多くの産業・企業が売上を増やし,県の経
済を大きく底上げすることになる。
一次効果
直接効果
間接効果
関連産業の生産増
観光客の消費
土産物
飲食
宿泊
交通費
他
農産物
海産物
加工食品
光熱費
・
・
・
食料品製造
小売業
飲食店
ホテル・旅館業
運輸業
等の生産増
農産物
金属
樹脂
・
・
食料品
食器
調理用具
光熱費
・
・
営業余剰
雇用者所得
税金など
原材料費を差し
引いた後に残る
部分(利益)
窯業
染料
薬品
・
営業余剰
雇用者所得
税金など
原材料費を差し引い
た後に残る部分
(利益)
二次効果
消費支出等の発生
食料品
衣料品
電気製品
雑貨
光熱費
交通費
通信費
などへの支出増
食料品産業
繊維・衣服産業
電気機械産業
その他製造業
電気・ガス・水道業
運輸業
通信業
などの生産が増加
関連産業の生産増
(同上)
経済効果は関連する産業の生産活動の活発化であるため,それらの産業での求人が増えるな
どの雇用機会が発生することもあり,これは雇用効果と呼ばれる。
なお,経済効果は,ある時点での産業構造(産業間のつながりなど)が不変であることを前
提としたものであるため,これが変化すれば効果も変わってくる。また,現実には経済効果が
各産業間でスムーズにつながっていく(波及していく)とは限らず,途中で経済波及が中断す
ることも十分に考えられる。したがって,経済効果として算出される数値は最大限の効果があ
った場合のものであることを留意する必要がある。
23
2.観光が地域経済に及ぼす経済効果
(1)イベント・テーマパークなどの経済効果
観光客が旅行・観光を行うと,その地域の観光施設,交通機関,宿泊施設,飲食業・土産物店
などへの直接的な消費支出(第 28 図)のみならず,原材料の調達を通じて地域の広範な産業・雇用
に波及することから,地域経済に及ぼす効果が大きい。このため,観光客を増加させる方法のひ
とつとして,全国各地でさまざまなイベントの開催やテーマパークの開設などが行われている。
これらの経済効果(第 9 表)は,それぞれの規模や期間等により差異はあるものの,一定の経済効
果の推計値が各機関により公表されている。
広島県においてはこれまでのイベント等のうちアジア競技大会(94 年),大河ドラマ「毛利元就」
放映(97 年),しまなみ海道開通(99 年)などについて,いずれも 500 億円を超える大きな経済効果
が推計されている。
第 28 図
広島県の観光消費額
(億円)
3000
(円)
6000
2500
5500
2000
5000
1500
4500
観光消費額
一人当たり観光消費額(右目盛)
1000
4000
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 年
資料:広島県「平成 15 年 入込観光客の動向」(2004 年 6 月)
24
第 9 表 主要なイベント,観光などによる経済効果一覧
効果測定の対象(施設,イベント等)
イ
ベ
ン
ト
・
祭
り
主な対象地域
時期
はこだてクリスマスファンタジー
函館市
-
冬季アジア競技大会青森
青森県
03年
会津若松市 市制100周年記念事業 会津若松市
99∼00年
サッカーW杯
横浜市他
02年
善光寺御開帳
長野県
03年4-5月
愛知万博
愛知県
04年3-9月開催
山陰・夢みなと博覧会
鳥取県
97年7-9月
国民文化祭「夢フェスタとっとり」
鳥取県
02年
波及効果(億円)
推計主体
104 日本銀行函館支店
86 青森県
131 福島経済研究所
横浜市 161
あさひ銀総合研究所
埼玉県 172
1035 長野経済研究所
14435 日本政策投資銀行東海支店
730 山陰経済経営研究所
68 鳥取大学 霜田教授
アジア競技大会広島
広島県
94年10月開催
623 中国電力経済研究センター
スポレク広島2002
広島県
02年10月開催
58 広島地域社会研究センター
国民文化祭「ひろしま2000」
広島県
00年11月
197 広島地域社会研究センター
2001ねんりんぴっく広島
広島県
01年10月
116 広島地域社会研究センター
ひろしまフラワーフェスティバル
広島市
-
113 ひろぎん経済研究所
呉市 市制100周年記念事業
呉市
01∼02年
長崎市4大祭り
長崎市
-
323 日本銀行長崎支店
大河ドラマ「徳川慶喜」
茨城県
98年放映
240 日本交通公社
大河ドラマ「葵∼徳川三代∼」
静岡県
岐阜県他
00年放映
138 静岡経済研究所
59 呉市
石川県
02年放映
786 日本銀行金沢支店
京都府
04年放映
170 日本銀行京都支店
和歌山県
95年放映
大河ドラマ「毛利元就」
広島県
山口県
島根県
97年放映
広島県 564
山口県 276 中国地方総合研究センター
島根県 97
大河ドラマ「武蔵MUSASHI」
山口県
03年放映
148 日本銀行下関支店
テ パ ユニバーサル・スタジオ・ジャパン
大阪府
01年開業
マ ク 倉敷チボリ公園
岡山県
97年7月開園
665 岡山経済研究所
伊香保温泉
群馬県
-
467 群馬経済研究所
新潟県スキー観光
新潟県
-
水木しげる記念館
境港市
03年3月開館
コンベックス岡山
岡山県
-
115 岡山総合展示場
02年
42.5 中国電力経済研究センター
ー
ー
大河ドラマ「利家とまつ」
テ
レ 大河ドラマ「新撰組!」
ビ 大河ドラマ「八代将軍吉宗」
ワールドカップサッカーのキャンプ効果 広島市
そ
の
他
105 社会経済研究所
関西域内 4534
三和総合研究所
全国 6508
932 新潟県
26.7 とっとり政策総合センター
愛媛県
99年5∼11月
535 いよぎん地域経済研究センター
広島県
年間
840 ひろぎん経済研究所
中国・四国
99年5∼8月
リバーウォーク北九州
北九州市
03年4月開業
北九州博覧祭2001
北九州市
00年7∼11月
1991 北九州博覧祭協会
日蘭400周年
長崎県
00/1∼01/3
534 日本銀行長崎支店
しまなみ海道
資料:新聞情報,推計団体のホームページ
25
663 中国電力経済研究センター
(中国296,四国367)
438 日本銀行北九州支店
(2)宮島観光の経済効果
宮島は広島県の代表的な観光地として全国的な知名度も高い。典型的な観光地として宮島観光
の経済効果を試算した。
まず,宮島観光の特徴(第 29 図)を見ると,宮島への観光客数は広島アジア大会をピークに減少
傾向にあったが,2002 年以降はテロなどの影響で海外旅行が減少し,国内旅行が増えたことを反
映して宮島の観光客も増加している。また,過去に台風で厳島神社が被害を受けた際には,観光
客数がかなり減少している。
宮島町観光課によれば,
「宮島=厳島神社」というイメージを持つ人が多く,自然豊かな観光地
であることや,宮島自体の風土に興味があって訪れる人は少ない。このため,観光客の多くは日
帰りもしくは1泊程度で,しかも,宮島町内に宿泊する観光客は全体の3割程度にとどまってい
る。また,宮島への立寄客の半数近くは滞在時間が2時間以下となっている。
第 29 図 宮島の観光客数の変化と観光客の特徴
(宿泊日数)
(観光客数の推移)
(万人)
350
(%)
15
3泊
15%
広島アジア大会('94)
不明
1%
日帰り
25%
同時多発テロ('01)
10
300
大河ドラマ
「毛利元就」('97)
250
5
2泊
24%
0
200
150
-5
台風19号('91)
世界遺産
登録('96)
100
台風18号('99)
伸び率(右目盛)
50
1泊
35%
(宿泊場所)
-10
宮島
32%
-15
観光客数
-20
0
85 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 年
(立寄客の滞在時間)
5時超 4.5%
1時間
以下
10.2%
0
2時間以下
36.7%
20
3時間以下
28.1%
40
60
5時間以下
20.4%
80
(注) 立寄客とは,日帰り客に加え,宮島町内で宿泊しなかった
観光客の合計。
資料:宮島町観光課「観光入込み動態調査(2002 年)」
26
100
(%)
その他
68%
次に,経済効果算出の前提は,以下のとおりとした。
①2003 年の観光客数と観光客の立ち寄り先(第 30 図)の結果をもとに,各観光拠点への入場者
数を推計。これに入場料を乗じて観光拠点への支出額とした。
②宿泊費は周辺のホテル・旅館の平均単価と日数(第 29 図)をもとに算出。
③飲食費は観光客の全員が島内で昼食をとると仮定。土産物については商店街への立ち寄り
率と広島市への観光客の平均消費額で算出。
第 30 図 宮島の観光客の立ち寄り先
厳島神社
商店街
五重塔
千畳閣
紅葉谷公園
ロープウェイ
水族館
大聖院
宝物館
0
20
40
60
80
100
(%)
資料:宮島町観光課「観光入込み動態調査(2002 年)」
この結果,2003 年の入込観光客による経済波及効果(第 10 表)は,約 200 億円と算出され,観
光客が 10%変動した場合の影響は 20 億円となる。したがって,2004 年の台風 18 号で厳島神社の
一部が倒壊したが,これで仮に観光客が 10%減少した場合,宮島町としては約 20 億円(付加価
値では約 10 億円)のマイナス効果(町内総支出は 9.2%の減少)が推計される。
第 10 表 経済波及効果の試算結果
(単位:億円)
食費
宿泊費
施設利用料
みやげ物代
計
経済効果
付加価値
03年実績
18.5
86.4
8.0
18.2
131.1
196.6
98.3
10%減
16.6
77.8
7.2
16.3
118.0
176.9
88.5
差額
1.8
8.6
0.8
1.8
13.1
19.7
9.8
(注)各項目で四捨五入しているため,各項目の計は合計値と一致しないことがある。
27
3.広島県大型観光キャンペーンの経済効果試算
広島県では 2004∼2005 年にかけて大型観光キャンペーンを実施しており,特に 2005 年秋には
JR 旅客 6 社及び各輸送機関とタイアップした重点事業が実施されることになっている。この間,
広島県への観光客を増やすために各種のイベントなどが計画されており,それによる広島県経済
への波及効果が期待されるところである。
このため,広島県大型観光キャンペーンによる経済波及効果を試算した。
(1)広島県の観光客数の動向
広島県における観光客数はこれまで何らかのイベントがあれば一時的に盛り上がるものの,総
じて横ばい傾向で推移(第 31 図)してきた。また,エリア別の入込観光客数の割合を見ると,平和
記念公園(広島市)や宮島がある広島湾地域への観光客が最も多く,次いで福山市,尾道市など
を含む瀬戸内海東部地域となっており,これらの地域(エリア)が広島県での観光の重要ポイン
トになっていることは間違いない。
第 31 図 広島県の入込観光客数の動向
(広島県の入込観光客数の推移)
(万人)
400
350
(広島県のエリア別入込観光客の割合)
(万人)
1100
大河ドラマ
宮島町
「毛利元就」('97)
呉市
しまなみ海道
尾道市
開通('99)
広島アジア大会
福山市
('94)
広島市(右目盛)
900
300
中部台地地域
6.7%
1000
広島国体('96)
250
800
200
呉市市制100年
700
記念イベント('02)
150
600
瀬戸内海中部地域
7.6%
芸北地域
10.1%
広島湾地域
39.4%
備北地域
12.3%
呉ポートピア
開園('92)
100
500
50
400
瀬戸内海東部地域
24.0%
80 85 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 年
資料:広島県「広島県入込観光客の動向」
今回の大型観光キャンペーンでは,各地の観光スポットにおいてさまざまなイベントが開催さ
れることになっており,それぞれの観光エリアの特徴に応じたコンサート,祭り,舞台,展覧会
などのイベントによる観光客の大幅増が見込まれている。
28
(2)経済効果算出のための前提条件
①観光客数
広島県の観光全体を見た場合,観光客の訪問地点が多岐にわたっており,また,観光客のとり
うるルートの特定も難しいことから,県全体の平均的な観光消費と観光客数から算出する方法が
考えられる。しかし,この方法では非常に粗い推計結果となる。少なくとも,観光消費の内訳を
細分化できなければ,経済効果の算出は難しいといえる。したがって,ここでは広島県の観光エ
リアをいくつかに区分し,エリア別の観光客数や観光消費額に加え,主要観光スポットの状況や
交通手段,宿泊施設の状況などを加味しながら推計を行った。
広島県をいくつかのエリアに分割してその特徴(第 11 表)を見ると,観光客数,観光消費額のい
ずれをとっても広島市,宮島町など重要な観光スポットがある広島湾地域が群を抜いている。県
外客についても,明らかに広島湾地域のウエイトが高く,地域経済の活性化にとって重要な入込
観光客(県内客+県外客)のほとんどは広島湾地域に集中していることがわかる。
第 11 表 広島県のエリア別入込観光客数と観光消費額(2003 年)
観光客数
広島市
宮島町
広島湾地域
大野町
計
呉市
瀬戸内海中部 蒲刈町
地域
竹原市
計
福山市
瀬戸内海東部 三原市
地域
尾道市
計
三次市
庄原市
備北地域
三和町
計
八千代町
芸北町
芸北地域
吉和村
計
東広島市
甲山町
中部台地地域
世羅町
計
県
計
(万人)
1,017
265
66
1,741
227
28
71
433
449
292
130
1,361
173
122
64
590
76
55
49
439
189
93
34
412
4,976
県内客
(万人)
103
54
29
415
70
15
21
184
81
35
38
399
93
80
53
367
38
47
32
304
69
60
25
223
1,891
県外客
(万人)
820
210
28
1,119
75
1
30
111
161
205
13
535
24
21
6
112
37
5
15
90
10
15
5
37
2,004
地元客
(万人)
94
1
9
207
82
12
20
139
207
52
79
426
56
22
4
110
1
3
1
46
109
18
3
152
1,080
県外客の割 観光消費額
合
一人当たり
(%)
80.6
79.3
42.4
64.3
33.0
3.3
42.0
25.6
35.8
70.2
10.0
39.3
14.0
16.8
9.3
19.0
48.8
8.6
31.5
20.4
5.4
15.7
15.8
9.0
40.3
(億円)
1,172
139
38
1,417
55
4
23
110
249
99
18
475
78
33
9
162
26
6
11
112
120
8
4
173
2,449
(万円)
1.15
0.52
0.57
0.81
0.24
0.16
0.32
0.26
0.55
0.34
0.14
0.35
0.45
0.27
0.14
0.28
0.34
0.11
0.21
0.25
0.64
0.09
0.11
0.42
0.49
(注)各項目で四捨五入しているため,各項目の計は合計値と一致しないことがある。
資料:広島県「広島県入込観光客の動向」
なお,既に述べたように表中の観光消費額はそのままでは利用できない。観光客が総額でどれ
だけの消費支出をしたのかといったことはわかるものの,消費支出の内訳が不明であるためこの
ままでは経済効果を算出することは難しい。したがって,ここでの観光消費額は,エリア別・項
目別の観光消費額を算出する際の基準値として利用する。
29
②前提条件としての観光消費額の推計
(交通費)
県外客など比較的遠距離からの訪問客による経済効果を把握する場合,観光消費額の大部分は
交通費と宿泊費が占めることになる。
県外客,県内客によらず,宿泊客と日帰り客では交通手段が異なっているとみられ,交通費に
も差(第 12 表)が出てくる。これは,観光旅行における主な利用交通手段別の全国平均単価である
ため,地域特性を反映することは難しいものの,今回の推計ではこの数値を交通単価として利用
する。
第 12 表 宿泊・日帰り別に見た利用交通手段別平均交通単価(2003 年度,全国)
(円)
宿泊旅行
日帰り旅行
鉄道
バス
船舶
航空機 自家用車
その他
平均
15,870
11,436
13,320
30,330
5,810
7,760
9,990
3,264
4,535
5,676
15,222
1,877
771
2,220
(注)表中の「鉄道」とは JR と私鉄の平均値であり,「バス」は路線バスと貸切バスの平均値である。
なお,「その他」とはタクシー,自転車などを示す。
資料:(社)日本観光協会「観光の実態と志向」
主な利用交通手段別及び宿泊,日帰り別の入込観光客数については,広島県の観光統計である
「入込観光客の動向」と,(社)日本観光協会の「観光の実態と志向」における中国地域の利用交通
手段別の観光旅行者数(宿泊,日帰り別)をもとに推計できる。
(飲食費)
飲食に関しては,日帰り客よりも宿泊客の単価が大きくなると思われる。飲食費を算出する場
合,飲食費の平均単価,飲食回数,飲食した観光客数といったデータが必要になるが,ここでは
以下のような前提を置いた。
・日帰り客は必ず昼食をとる。夕食に関しては半日程度で帰ることのできる近隣観光も考
慮して,日帰り客の半数がとる。
・宿泊客は宿泊回数+1の昼食,宿泊回数分の夕食をとると考えた。例えば,1 泊 2 日の
旅行客の場合,昼食を 2 回,夕食を 1 回となる。なお,朝食は宿泊費に含まれているこ
とが多いため,算定対象外とする。
・宿泊客の宿泊日数によって食事回数が変わってくる。2003 年実績については(社)日本観
光協会「観光の実態と志向」より中国地域を目的地としたデータ(1 泊 2 日:75.9%,
2 泊 3 日:16.7%)を利用した加重平均によって食事回数を算出する。3 泊以上はウエイ
トが小さいため算定対象外。
・飲食単価についてはエリア別の飲食店の状況などを考慮してエリア内平均値を求める。
30
(宿泊費)
宿泊費については,各エリアでの宿泊施設の最低単価をもとに,エリア別の平均宿泊単価を算
出し,エリア別の宿泊客数に乗じることで求めることができる。
実際に宿泊する際にはより単価の高い部屋などを利用することもあると思われるものの,団体
旅行などの場合,宿泊料金が割引になることが多いため,最低単価を算定対象としてもそれほど
問題はないものとみられる。
なお,エリア別宿泊施設の平均単価の算出については,各エリアに存在している主要な宿泊施
設の最低単価を,各宿泊施設の収容人員によって加重平均することで求めることができる。主要
な宿泊施設の抽出にあたっては,広島県観光連盟の「広島県観光便覧」を参考にしたが,この中
で,いわゆる若年者向けの研修施設(青年の家)などは対象外とし,あくまで一般的なホテルや
旅館,民宿などを算定の対象とする。
(土産物代)
日帰り客,宿泊客にかかわらず地元客でない入込観光客の場合には,何らかの土産物を購入す
ることが多いとみられる。土産物単価については,(社)日本観光協会「観光の実態と志向」におけ
る平均的な土産物代や,広島県の各エリアにおける主要な土産物の平均単価などをもとに,エリ
ア別に見た一人当たりの土産物単価を推計する。また,宿泊客は日帰り客に比べ周遊する観光拠
点が多いため,その分土産物単価も高くなるとみられ,宿泊客の土産物単価は日帰り客の単価よ
りも高めに設定する。
③観光消費額の調整
以上より主要項目別の観光消費額は推計できるが,県内エリア別観光消費額は「広島県入込観
光客の動向」で公表されている。2003 年の実績値を推計する際に,県が公表している数値をもと
に推計結果を多少調整している。
大型観光キャンペーンによる観光客の増加分についても,2003 年の観光消費額の調整値をもと
に推計することとなる。
(3)大型観光キャンペーンによる経済効果の算出
①大型観光キャンペーンによる観光客の増加
大型観光キャンペーンによる経済効果を算出するためには,観光客の増加分を推計する必要が
ある。すなわち,例年の平均的な入込観光客数に対してどれだけ観光客数が増加したのかが,今
回の観光キャンペーンによる経済効果の大小に大きくかかわってくることになる。
なお,広島県は,今回の大型観光キャンペーンによって入込観光客が例年の 10%増になること
を見込んでいる。また,10%増の対象となっているのは 2002 年の観光客数とのことなので,2002
年の入込観光客数 3934.8 万人の 10%である 393.48 万人が増分として考えられていることになる。
ここでは,この 393.48 万人を 2003 年のエリア別入込観光客数によって按分しエリア別の入込
観光客数の増加分を推計する。ただし,各エリアにまったく同じように 10%の増加があるわけで
はないとみられる。特に宿泊客の受け入れなどについては宿泊施設をはじめとした各種施設が整
備されていることが条件となるため,エリアによって受け入れ能力にはある程度の限界があるも
のとみられる。今回のキャンペーンでは,広島県全体として 2002 年の 10%増の観光客は見込め
31
るものの,各エリア別の入込観光客数は過去最大値との大幅な乖離はないものと想定し,80 年以
降のエリア別入込観光客数の最大値によって 10%増の観光客をエリア別に再配分した。
②大型観光キャンペーンによる観光消費単価の上昇
広島県では大型観光キャンペーンによって,観光客の消費単価そのものも 10%上昇することを
見込んでいる。
単純に交通費や宿泊費などがそのまま 10%上昇すると仮定することも可能だが,より現実的に
考えた場合,すべての消費項目が同率で上昇することはありえない。したがって,ここでは以下
の前提のもとに消費単価の上昇分を算出した。
・観光客の消費単価を引き上げる際に最も効果的なのは,宿泊日数を増やすことであろう。
宿泊日数が 1 日増えればそれだけでかなりの増加となる。ただ,キャンペーンによって
大幅に宿泊客を増やす(宿泊客の比率を高める)ことは難しいとみられ,2003 年実績に
おける宿泊客の 1 泊 2 日 75.9%,2 泊 3 日 16.7%の構成比が,1 泊 2 日 60%,2 泊 3 日
40%になることを想定した。
・宿泊日数が増えればその分飲食回数も増えるため,自動的に飲食費も増えることになる。
飲食単価は特に変えていないものの,回数の増加によって飲食費が増加する。
・宿泊日数が増えれば,交通費も増えるとみられる。交通費については 2003 年の数値に
対して 5%程度の上昇になると仮定した。
・土産物も多く購入する確率が高まるため,土産物代も 2003 年の数値に対して 5%上昇す
ると仮定した。
このような前提をもとに観光客の消費単価を算出すると,2003 年の数値に対してほぼ 10%増と
なることから,消費単価の上昇分を把握するための前提条件としては問題ないものとみられる。
これにより,2003 年の観光客数による広島県経済の観光消費支出額と大型観光キャンペーンに
よって観光客数及び観光消費単価が 10%増加した場合の観光消費支出額を推計し比較(第 13 表)
した。各項目別に見ると,単価設定やエリア別の特性の違いなどもあり,増加率が異なっている
ものの,観光消費額全体としては約 20%程度の増加が見込まれることになる。
第 13 表 広島県の観光消費支出額推計
交通費
飲食費
宿泊費
土産物代
(億円)
計
2003年実績
822
479
569
534
2,405
観光キャンペーンが行わ
れた場合
932
634
647
697
2,910
(注)各項目で四捨五入しているため,各項目の計は合計値と一致しないことがある。
32
③経済効果
2003 年と大型観光キャンペーンが行われた場合の観光消費支出額を前提として,95 年の広島
県産業連関表をもとに経済波及効果を算出(第 14 表)した。
大型観光キャンペーンが実施され,計画通りに入込観光客数と消費単価がいずれも 10%程度上
昇した場合,広島県全体での年間の経済波及効果は 4,925 億円となる。2003 年実績ベースの経済
波及効果に比較すると,大型観光キャンペーン実施による経済波及効果の上乗せ分は 856 億円と
なり,これが大型観光キャンペーンによる経済効果ということになる。
雇用誘発効果についても,大型観光キャンペーンが実施された場合,広島県全体で 9,157 人の
新たな雇用機会が生じるほどの効果があるということになる。
また,大型観光キャンペーンを背景とした観光客や観光消費額の増加に伴う経済波及効果によ
って,広島県の経済成長率は 0.5%程度押し上げられることになる。
今回は,入込観光客の増加分がすべて過去の観光客と同じような行動パターンをとるという仮
定のもとでの推計だが,例えば,県内各地がタイアップしたキャンペーンなどによって宿泊客や
長期滞在客などが増加すれば,経済効果はさらに高まることになる。
いずれにしても,観光客による観光消費が県経済にとってかなり重要なウエイトを占めている
ことが今回の推計結果からも判断できる。
第 14 表 広島県の大型観光キャンペーンによる経済波及効果
(億円,人)
1次効果
直接効果
ー
0
3
年
実
績
ベ
間接効果
製造業
347
商業
運輸業
サービス業
その他
ス 計
ャ
キ 製造業
商業
ン
ペ 運輸業
ー
サービス業
ン
実 その他
施 計
2次効果
合計
148
69
223
123
822
137
1,014
雇用誘発効果
564
3,130
155
501
8,113
48
1,007
8,444
204
234
1,452
17,744
0
278
268
546
4,637
2,405
891
774
4,070
42,068
394
185
82
661
3,656
253
153
186
592
9,537
932
164
57
1,153
9,625
1,331
244
281
1,856
22,835
0
341
322
663
5,572
2,910
1,087
928
4,925
51,225
製造業
47
36
14
97
526
商業
差
し 運輸業
引 サービス業
き
その他
31
30
31
91
1,424
110
27
10
146
1,181
317
40
47
405
5,091
0
63
53
117
935
505
197
154
856
9,157
計
(注)各項目で四捨五入しているため,各項目の計は合計値と一致しないことがある。
33
(4)広島県大型観光キャンペーンによる経済効果まとめ
広島県には広島湾地域を中心に県外からの宿泊客なども来訪しているため,観光消費額は 2,400
億円に上る。今回の試算では 2003 年の観光消費支出による経済波及効果は 4,000 億円程度とな
るなど,観光消費が広島県経済に与える影響はかなりのものがあるといえる。県内総支出ベース
では経済波及効果の県経済におけるウエイトは 2.3%となり,仮に観光客数がゼロになれば,広島
県の経済成長率は 2.3%も低下してしまうということになる。
また,大型観光キャンペーンによって観光客数及び観光消費単価がそれぞれ 10%上昇した場合
には,すでに述べたように広島県の経済成長率は 0.5%程度押し上げられることになる。ただし,
これは大型観光キャンペーンによって当初の計画通り観光客や消費単価が増加することを想定し
たものであり,観光キャンペーンを実行すれば必ずこれだけの効果があるというわけではない。
今回の広島県大型観光キャンペーンと同様に,JR のデスティネーションキャンペーンとタイア
ップして行われた各県の観光キャンペーンによる入込観光客の増減状況(第 15 表)を見ると,テー
マパークの開園や大規模な博覧会が同時に開催された場合を除き,入込観光客数が 10%を超える
ような伸びとなっている事例はない。観光キャンペーンが実施されたにもかかわらず入込観光客
がマイナスになっている自治体もある。
広島県においては 1984 年に「SunSun ひろしま」を開催した際に入込観光客数が 8.2%の伸び
を記録している。したがって,今回の大型観光キャンペーンによる入込観光客の 10%増という目
標はそれなりに妥当なものだといえるが,他県の事例も含めて判断するならば,計画通りの観光
客や観光消費額の増加を達成するためにはかなりの努力が必要になるものとみられる。
いずれにしても,観光客の増加によってかなりの経済効果が期待できるため,今後,広島県経
済の活性化のために,観光振興をいかに図っていくかが重要な課題になってこよう。
第 15 表 主要各県における JR のデスティネーションキャンペーンと
タイアップした観光キャンペーンによる効果
84年
97年
98年
2000年
2001年
2002年
2003年
広島県
鳥取県 ※
島根県 ※
岡山県
(チボリ除き)
岡山県
山形県
山梨県
山口県
(きらら博除き)
北海道
北海道
茨城県
鳥取県 ※
島根県 ※
入込観光客数 前年比増減率
主要イベント
(%)
(万人)
2757.0
8.2 SunSunひろしま
1058.7
1.4 山陰・夢みなと博覧会
2080.1
2.2 古代出雲文化展
2737.3
11.5 チボリ公園開園
2499.3
1.8 大型観光キャンペーン
2725.6
-0.4 大型観光キャンペーン
3768.6
-1.3
5935.2
4.2
2550.4
20.1 山口きらら博開催
2299.0
8.3
14396.6
5.4
14333.4
-0.6
3199.9
10.5 W杯,高校総体など
917.5
4.4 水木しげる記念館開館
2516.4
-0.3
(注)鳥取県,島根県は山陰の観光キャンペーンとして合同で行っている。
資料:新聞情報など
34
第4章
アンケート・ヒアリング調査の結果(概要)
1.アンケート調査
(1)調査の概要
本委員会では,広島県の観光が抱える問題点や課題などについて,幅広い意見を集めるために
アンケート調査を実施した。本委員会のほか,観光との関連が深い都市機能委員会,1500 万人委
員会の委員を対象に実施(2004 年 10∼11 月)し,29 名から回答があった。
質問項目は,
「問1.広島県の観光の現状に関して,問題と思っておられること」
,
「問2.問題
点の克服に向けて必要と考えられること」,「問3.広島県の観光振興に関する具体的なアイディ
ア」,「問4.その他,広島県の観光振興に対する提言」の4項目であり,すべて自由回答とした
(注:アンケートの回答全文は(資料1)に記載)。
(2)調査結果
①広島県の観光が抱える問題点
アンケート調査で多くの方が指摘(第 32 図)していた問題点は,「観光資源」と「交通」に関連
したものであった。
「観光資源」関連では,世界遺産に指定されている厳島神社(宮島),原爆ドーム(平和記念公
園)は有力な観光資源であるもののそれ以外に集客できる観光資源が少ないことや,宮島や平和
記念公園も比較的短時間での周遊が可能であり,通過型の観光地となっているとの指摘があった。
その他にも,
「それぞれの観光地が独立している」,
「観光ゾーンという視点の欠如」など観光地間
の連携不足が問題点として挙がっているほか,
「住民自身が観光拠点についてよく知らない」,
「観
光資源を棚卸し,広島の魅力を県民が共有する必要がある」との意見もあった。
「交通」関連では,高速道路網の整備や広島空港へのアクセスの整備が不十分であること,観
光地間を結ぶ交通網の不備,広島市内の駐車場や駐輪場の不足など交通インフラに関する項目が
問題点として挙がっていた。
他の意見では,
「ホスピタリティ」関連(公共交通網が分かりにくい,案内板が少ない等),
「情
報発信」関連(PR が不足している等),「推進体制」関連(各推進組織が独自に取り組んでおり,
一体感がない等)に関連する意見が複数挙がっていたほか,「観光に携わる者の問題意識が低い」
点などを指摘する意見もあった。
第 32 図 広島県の観光が抱える主な問題点
「観光資源」関連
「交通」関連
「推進体制」関連
「ホスピタリティ」関連
「情報発信」関連
0
2
4
6
8
10
12
14
16
(件)
(注)自由記入様式であったため,複数の問題点を挙げる回答もあり,問題点は回答者数(29 名)を超えている。
なお,上記区分での集計は事務局の判断による。(第 33 図も同様)
35
②問題点の克服に向けた課題と対策
当然のことながら,問1で挙がった問題点に関連した課題や対策が大半であったが,最も意見
(第 33 図)が多かったのが,観光にかかわる行政機関と民間企業の連携など「推進体制」に関する
ものであった。具体的には,行政と交通機関,旅行会社など官民の連携や旅行会社・運輸会社な
ど観光事業者間の連携などを求める意見が挙がっていたほか,観光振興を推進する新たな組織の
設立といった一歩踏み込んだ意見もあった。また,連携や役割分担の調整に際しては,リーダー
シップをとる存在が必要であるとの意見もあった。
「交通」関連では,広島空港からのアクセスや高速道路網の整備,既存空港の有効活用(定期
便の増便,広島西飛行場を活用した周遊ルートの設定など)
,主要観光地以外への定期バスの運行,
観光地間の交通アクセスなどの改善を求める意見が多く見られた。
「観光資源」関連では,既存資源の活用と新規資源の開発という2つの視点からの意見があっ
た。既存資源の活用としては,
「海や川などに囲まれている点を活かす」,
「カープ,サンフレッチ
ェ,広響等のイベント活用」といった意見があったほか,
「食」を観光資源として活用する意見も
挙がっていた。新規資源の開発では,新しい観光施設の建設やイベント等の開発などが挙がって
いる。
「情報発信」関連では,テレビや旅行会社などを活用した情報発信の強化,「ホスピタリティ」
関連では,案内板や使いやすいトイレの設置などによるホスピタリティのレベルアップ,などの
意見があった。
他の意見では,
「広島に行かないと手に入らない,味わえない,体験できないといった,広島な
らではの
広島ブランド
の確立」の必要性を指摘する意見があったほか,外国人観光客の誘致
を積極的に進めるといった意見が挙がっている。
第 33 図 問題点の克服に向けた主な課題と対策
「推進体制」関連
「交通」関連
「観光資源」関連
「情報発信」関連
「ホスピタリティ」関連
0
2
4
6
8
10
12
(件)
③観光振興に関する具体的なアイディア
交通アクセスの改善や観光資源の充実,食に関するものなど幅広い分野でのアイディアが挙が
っている。
交通網やインフラ整備の関連では,
「観光用循環バスの運行」や「ループシップの就航」など交
通アクセスの改善につながるアイディアのほか,「ウォーターフロントの開発」「広島駅前の早期
整備」などインフラ整備に関するアイディアがあった。
観光資源関連では,「新球場・ドーム球場」や「瀬戸内海を眺望できるタワー,モニュメント」
36
など中核的な観光施設の建設や,体験型ツアーの企画,新たな観光コース(美術館めぐり等)の
設定などの意見があったほか,
「特産品で構成したメニューによる食事」
「屋台村」
「新しい名物料
理の創作」などのように「食」に関連した観光資源の開発というアイディアも多く見られた。
その他では,情報発信に関するアイディア(広島市内などで無料配布されている飲食店情報誌
を大都市圏でも配布するなど)や「宮島を観光特区にする」「豪華客船でのカジノ等の運営」
「映
画ロケの誘致と観光とのタイアップ」といったアイディアがあった。
④その他
中央省庁や大企業の出先機関が多く,支店経済とも呼ばれる広島には,転勤などにより他地域
から移り住む人も多いが,これらの人は地元の人にはわからない強みや弱みを知っている。また,
地域には,観光振興や地域活性化に対して熱い情熱や強力なリーダーシップを持った人もいる。
このような人的資源を上手く活用し,また,地域の活力に不可欠な若者の希望や意見を反映して
いくことが観光振興につがなるという意見があった。
2.ヒアリング調査等
(1)ヒアリング調査の概要
上記アンケート結果を踏まえ,実際に観光産業にかかわる事業を行っておられる方の意見や要
望,取り組みなどを聞くためヒアリング調査を行った。対象は,①従来から広島県を代表する観
光地である「宮島」,②近年観光客が増加している「備北地域」において観光産業に携わり,それ
ぞれの地域で観光振興に関してリーダー的な役割を果たしておられる3名の方にヒアリング調査
を実施した。
(2)ヒアリング結果の概要
①宮島
(2004 年 11 月 30 日に実施した「(有)石亭 代表者 上野 純一 氏」
,
「(株)やまだ屋 代表取締役社長
中村 靖富満 氏((社)宮島観光協会会長)」へのヒアリング概要。
)
宮島には,厳島神社以外にも歴史を体感できる観光資源が多数あるが,これまで有効に活用で
きていない部分もあった。このため,これまでの観光は往復2時間といったケースが多かった。
このような現状を打破するために,埋もれている観光資源を活かし,宮島にいかに滞在しても
らうかという視点でこれまで取り組みを進めてきた。具体的には,夜の宮島の魅力を発信するた
め,10 数年前に「ソン・エ・ルミエール」という夜のイベントを実施したほか(かなり費用がか
かることなどから現在はやめている),最近は夜に屋形船を出し,船で鳥居の下をくぐらせるとい
った取り組みも行っている。今後も,厳島神社に対して参拝時間の延長などの働きかけも考えて
いるほか,もみじ饅頭を作る,宮島彫りや牡蠣の殻打ちといった体験を取り入れたプログラムを
作ることで宮島の良さを知ってもらい,できるだけ長く宮島に滞在してもらえるようにしたい。
最近は古い建物を活かそうとする動きもある。古い建物が多く残っている町屋通りという裏通
りがあり,そこで古民家に雛を展示する「雛めぐり」というイベントを開催(商工会女性部や町
の女性会が中心となりこれまで4度開催)している。また,古い建物を活用したギャラリーもで
き,若い芸術家の間では憧れの対象となっている。これまでの線の往復では足を運ばなかった場
37
所にも観光客が来ることで,観光客が島内に長時間滞留することから経済効果にもつながる。
ただ,古い建物がなくなっているという問題もあるため,居住している人に住居の価値を見直
させる仕掛けを作り,これらの資産を残していくことが重要である。また,
(音戸町で行われてい
る)学生が制作したオブジェの展示会の開催なども建築資産の有効な活用法であり,実施を検討
している。古い建物以外にも,歴史民族資料館にある貴重な資料や,もうすぐ誕生から 100 年に
なるもみじ饅頭などを上手く活用して情報発信したい。ただ,これらの取り組みは個人だけでは
無理であり,企業にはメセナ的な後押しで協力してもらえるとありがたい。
これまでの観光は,人と人との出会いではなく,物との出会い,施設との出会いになっている。
宮島でいえば,厳島神社と五重塔を見て帰るというものである。
「そこに行けば求めるものがある」
という心理がリピーターにあることを考えると,お客さまとのからみ方を強める必要がある。お
客さまとのからみ方を強め,現場のスタッフと地域が議論することで,地域のホスピタリティに
対する意識を高めていく作業を恒常化することが重要である。ただ,全体でレベルアップしよう
とすると時間がかかる。特定の地域,特定の事業者が突出すれば,それがやがて面になり全体の
底上げにつながることから,リーダーシップも重要である。
世界遺産に指定され,欧米の観光客が目立つようになったが,欧米の観光客は宮島をリゾート
と捉えており,滞在期間が長いなど,日本人やアジアからの観光客とは観光スタイルが異なって
いる。そのため,看板や宿泊施設を整備する必要がある。
広島は重厚長大型産業で栄えてきた地域であるため,人の出入りでお金が動くという意識が希
薄であり,観光振興への取り組みが不十分であった。また,観光振興にかかわる組織は多いが,
それぞれの組織がばらばらにやっている感じがある。観光協会も,宮島のように民間色が強いと
ころから,首長が会長となっているところもあるなど温度差が激しい。このため,県の観光連盟
などが中心となり,調整などをすることも重要である。
②備北地域
(2004 年 11 月 29 日に実施した「(有)平田観光農園 代表取締役 平田 克明 氏(2004 年 2 月 観光カリ
スマ選定)」へのヒアリング概要。)
三次市など備北地域はもともと観光拠点が少ない地域であり,観光農園を始めた 20 年前には周
辺に観光施設がほとんどなかった。その後も,
(平田氏が立ち上げにかかわった)三次ワイナリー
などの観光施設ができたが,それぞれの施設は小規模なものが多く,1箇所で1日楽しめるわけ
ではない。また,観光施設への公共交通機関によるアクセスもほとんどないという問題がある。
こうした問題を克服するには,まず,短時間でリーズナブルに移動できる仕組みが必要であり,
道路の整備は難しいにしても,公共交通網や低料金で利用できる交通手段を整備する必要がある。
備北地域では,観光地の連携に向けて「やまなみルートバス」を実験的に運行させた。目標人数
の達成はできなかったが,観光客の増加につながった。このような行政区域を越えた取り組みは,
民間の立場からすれば当たり前であるが,行政の立場からすれば画期的であり,立ち上げ時には
しがらみがあった。このような取り組みを上手く実施するためには,リーダーシップをとる人の
存在が重要となる。
これまで観光振興策などの策定や実施は,行政が中心となってきた。しかし,行政が企画した
ものにはニーズに合わないものもあるし,地域に縛られる部分がある。このため,施策計画など
の策定は,実際に観光産業に携わっている者が行う必要がある。第3セクターにもかかわらず三
38
次ワイナリーが上手くいっているのは,農家や酒販業者など直接メリットのある者が中心になっ
て取り組んだからである。当観光農園で実施しているアンケートを見ると,観光客の約7割が友
人,知人からの口コミで来ており,満足した顧客が最大のセールスマンであることを物語ってい
る。顧客を満足させるのは事業者がやることである。ただ,民間では限界もあることから,民間
主導としながらも官民で連携し,行政や観光協会は民間ではできない部分をサポートする体制が
理想である。例えば,連携などを考えた場合には,県観光連盟のようなところが中心となって進
めるべきである。
広島県では(備北地域など)内陸部への観光客が増加しているが,これは人々のニーズが多様
化していることが影響している。温泉を楽しむ,自然を楽しむなどいろいろなジャンルの観光を
提供することが重要である。また,海外や県外から来た観光客に対しては,日本の特色,広島の
特色などを感じられるものが重要な観光資源になる。神楽や自然なども重要なソフトであり,東
京ディズニーランドのようなインパクトはないが,都会の人や外国人にとってそれに劣らないほ
どの魅力がある。これらのソフトを活かすためには,都会や外国の人に対して情報発信すること
も必要であるが,これまでは十分な PR ができていない。また,神楽を毎日 3 回上演して,いつ
来ても観ることができる体制にするといった受け入れ態勢の整備も必要である。観光にはいくつ
かの要素(「癒し」など)があるが,今後は「学び」の要素が重要になってくる。
(3)講演会
(2004 年 12 月 2 日に開催された広島経済同友会幹事会における(株)電通関西支社 德永 眞一郎氏の講
演要旨。講演録は(資料2)参照)
少子高齢社会や人口減少といった社会構造の変化を考えた場合,観光を軸とした集客交流産業
の振興が一つの特効薬になると期待されており,これまで観光振興に消極的であったわが国も,
「ビジット・ジャパン・キャンペーン」などで国策として観光振興に力を入れつつある。
観光産業を振興することによる地域のメリットには,①すそ野の広い産業であり,広範な経済
波及効果がある,②人的サービス業であり,高い雇用創出力が期待できる,③環境負荷の低い産
業である,④良好な地域情報の発信,地域ブランドの形成に役立つ,⑤地域魅力への気づき,郷
土愛の醸成につながる,などがある。このうち,④でいうブランドは「モノやサービスが持つ情
報価値的な側面を最大化ないし極大化したもの」と定義され,ブランドのおもしろさと怖さは,
豊後水道で獲れる関鯵・関鯖などに現れている。広島には地域ブランドを形成する要素がたくさ
んあるが,マーケットを意識した上でそれらをうまく汲み上げ,他地域と差別化するための戦略
的なイメージを構築し,提供することが重要である。また,⑤は地域に住んでいる人間が,地域
の魅力に気づいて愛着や誇りや自信を持っていくことであり,観光振興の最大の値打ちであると
思う。
地域振興を進めていく上では,いくつかのポイントがある。まず,
「資源・インフラの整備」で
ある。観光に来てもらうためには,イベントなどのデスティネーションや鉄道などのインフラ整
備が必要であり,
「広島アニメーションビエンナーレ」も上手く育てていけば有力なデスティネー
ションになる可能性がある。次に「マーケティングと商品開発」では,マーケットが何を期待し
ているか絶えずチェックし,マーケットに応じた見直しをする必要がある。また,
「食べる」こと
は観光魅力を支える大きな要素であり,計り知れないポテンシャルがある。兵庫県の出石町は,
皿蕎麦を売り物にして人口の 100 倍に近い観光客を集めているが,京阪神と山陰地方の間にある
39
立地を見極めて,通過客に的を絞るなど割り切った戦略・戦術で成功を収めている。
「戦略的イメ
ージ形成と情報発信」も重要である。観光満足の本質に先行するイメージ蓄積の確認があるが,
プロモートをかける前に良好なイメージを形成することが重要となる。逆説的な成功例である「日
本三大がっかり(高知・はりまや橋,札幌・時計台,那覇・守礼の門)」の例をみても,戦略的な
情報発信やイメージ形成が大事であることがわかる。また,観光のニーズが「see 型観光」から
「do 型観光」に変化していく中で,体験価値や体感価値を高めてリピーターを獲得するためには,
地域でのもてなしなど「ホスピタリティの向上」も重要であるといえる。
大規模なデスティネーション整備などが難しいことから,既存の観光資源をスポットの当て方
で新しくしたり,それらをうまくつなげることで総合力を高めることが重要になってくる。公的
サービスにはさまざまな制限や制約があり,行政による観光施策も縦割りになりがちであるが,
民間はこれらを機能補完していくことが求められており,広域的かつ横断的な仕掛けを提言し,
活動するなどの役割が期待されているといえる。
40
第5章
広島県の観光振興に向けて(提言)
1.観光都市ひろしまに求められる機能
広島経済同友会では,2003 年 3 月に「提言 観光都市ひろしまに求められる機能」を代表幹事
名にて公表している。これは「広島都市圏の観光入込客年間 1,500 万人を実現させる会(略称 1500
万人委員会)」の創設にあたり,何が必要で,何に優先順位をもって取り組むべきかを提言したも
のである。この中で今後取り組むべき対策として挙げられている項目は,以下のとおりである。
①現状を危険水域と認識し県,市,商工業者一体となって危機意識を共有する
②観光振興は,広域的に連携し,他の政策に優先する意識改革を
③観光振興の施設での営業運営は民間にゆだねる
④整理すべきイベントとしての「祭り」
⑤急務な都心部の観光振興施設の入り込み客数の改善
⑥広島観光コンベンションビューローの体力,戦力アップ
⑦入り込みのきっかけとなるイベントの提案
これらの提言は,広島経済同友会の会員が観光振興方策を考え,また,1,500 万人の来訪者実
現のために意識し,かつ実行していくべき内容となっている。地域経済委員会では,これらの主
旨を踏まえた上で,各種イベントや代表的な観光地における経済効果について定量的に分析を行
うとともに,関係する委員会へのアンケート調査やヒアリング調査などから得られた結果をもと
にして,広島経済同友会会員も含めて,観光に携わる行政,関係機関・団体等において,今後の
広島県の観光振興に向けて取り組むべき内容を次項に取りまとめた。
2.経済効果からみた観光振興のあり方
(1)イベントの効果を最大限発揮させることにより観光客数の増加に取り組むこと
イベントの開催により観光客数(宿泊者も含めて)が増加し,地域への経済波及効果や雇用誘発
効果が大きいことから,イベントは観光振興策の目玉とされている。しかし,これまでのイベン
トの結果を見ると,観光客の増加は一過性にとどまっているケースが多い。
このため,広島県の大型観光キャンペーンにおいても,開催期間中は計画どおりの観光客数を
確保する必要がある。また,本キャンペーンやイベントの終了後もリピーターの確保や口コミな
どによる新たな観光客の増加に知恵を集めることが重要である。さらに,イベント終了後にリピ
ーターなどの確保が見込まれないことがイベント開催前に予想されるのであれば,後年度に負担
を伴うことが少ないイベント内容とするなど,イベントの企画力が重要となる。
(2)魅力ある食・土産などを開発することにより観光消費の増加に取り組むこと
観光客数が増加しても,地域にお金が落ちなければ経済波及効果は限定的となる。観光客数の
増加が地域の産業活動(コミュニティ・ビジネスも含めて)に結び付くことが重要である。
41
このため,地域の特色を活かした魅力的な食事,飲料,土産品に加え,体験なども提供するサ
ービスの開発をこれまで以上に行うことが,観光消費の増加にとって重要となる。
今回の広島県の大型観光キャンペーンでは,前項(1)の観光客数の増加とともに,本項の観
光客の消費単価増も見込んでいる。この実現の一方策として,本キャンペーン事業において,新
しい土産品や食事メニューの開発コンクールなどを実施することを通じて広くアイディアを募る
仕掛けが必要である。
(3)イベントなどに関連する都市型サービス産業の育成に取り組むこと
観光とは一見無縁のようであるが,イベントにおいてはソフト部分にあたる企画,デザイン,
設計,広告などが観光客を集めるツールとして不可欠な要素になっている。イベントの経済効果
を広島県内にとどめる(県外に流出させない)ためには,上記のようないわゆる都市型サービス産
業が県内,中でも都市部に集積していることが条件になる。
広島県,広島市とも高次都市機能の充実強化を施策に掲げ,その実現方策として都市型サービ
ス産業の振興などに取り組んでいるところであるが,今後とも観光振興も視野に入れた施策の一
層の充実が望まれる。同時に,この分野の産業は首都圏一極集中が進んでいることから,ある程
度の経済効果が流出してしまうことはやむを得ないが,今回の大型観光キャンペーンでのイベン
トなどを契機として,県内企業・産業の育成・支援に視点を置いた施策がより必要となる。
3.アンケート・ヒアリング調査等からみた観光振興のあり方
(1)観光資源に磨きをかけるとともに,広域連携に取り組むこと
県内には,世界遺産の原爆ドームや厳島神社のほかにも,酒都西条の酒蔵通り,竹原の伝統建
物群,呉に新しく作られる大和ミュージアム,福山の鞆のまちなみ,尾道の寺めぐり,三次のワ
イナリーや古墳群,三原の筆影山からの瀬戸内海の眺望など,有力な観光資源が多数存在する。
しかし,いずれも観光に必要な時間は1∼2時間程度で済むことから,単独の観光資源としては
限界があり,観光地としても通過型にとどまっているというのが共通の認識である。
このため,前述の「提言
観光都市ひろしまに求められる機能」における②の提言と重複する
が,広島都市圏と周辺の集客能力を持つ地域との連携したモデルコース作りを行うことにより,
都市間の広域連携を実現することが必要である。今回の広島県の大型観光キャンペーンや広島市
の「ひろしまビジターズ・インダストリー(VI)戦略」などを契機として,野球,サッカー,コン
サートなどのイベント内容の向上や,個々の観光資源に歴史・文化などの背景も組み合わせ,見
せ方も含めて磨きをかけるとともに,一層の連携を促進していくことが重要である。また,事業
者によるこのような取り組みに対して,広島県を中心に各市町などが協力していく必要がある。
さらに,県境を越えた中国地域内での広域連携については,中国経済連合会などが中心となって
活動している中国地域観光推進協議会における広域観光ルート商品の開発成果等も活用しながら,
関係者が連携していくことが必要である。
(2)「広島ブランド」の確立を図ること
近年,関鯵・関鯖に代表されるように地域の名前を冠したブランド産品がマーケットにおいて
42
威力を発揮している。広島市の VI 戦略においても,食の特産品ブランド化を掲げ,お好み焼,牡
蠣,黒鯛(チヌ),小いわし,広島菜漬などを全国的に知名度を持つブランドとするための取り組
みを進めることとしている。この他にも,めばるほか瀬戸の小魚の煮付け,おこぜの唐揚,全国
の駅弁の中でも人気が高いあなご飯などは,広島県を代表する食文化であり,来訪者への接待の
ポイントとなるものと考えられる。特産品の開発については,関鯵・関鯖に匹敵するような,広
島に行かないと手に入らない,味わえない,体験できないなどといった「広島ブランド」を確立
することが重要である。
このため,広島県においても大型観光キャンペーンを契機として,ブランド確立のための専任
部署を設置し,各市町や事業者と一体となって「広島ブランド」品の実現を推進していく必要が
ある。また,広島県の施策では,韓国・台湾を主要ターゲットに観光地「ひろしま」の知名度向
上を図ることが掲げられている。他地域では,地域名そのものがブランドとなり成功している温
泉地などがあるように,広島も世界に通用している「平和都市ひろしま(ヒロシマ)」ブランドを
一層活用していくことを基本としつつ,例えば,宮島については,外国人,特に欧米からの観光
客は宮島を観光地としてよりもリゾート地として見ることから,瀬戸内海と一体となったリゾー
トとしてのブランドを確立していくという方法もある。また,宮島の弥山は冬でも安全に登れる
ことから,中高年に好まれている登山やハイキングの対象として登山ブランドとすることも有望
と考えられる。
このほか,スポーツ面からは,カープ,サンフレッチェ,都道府県対抗男子駅伝などがあり,
さらに,文化・芸能面からは,県内各地で実績がある神楽,広島国際アニメーションフェスティ
バル,広島アニメーションビエンナーレなども将来のブランドとなる可能性を秘めている。今後,
広島県としてどのような地域ブランドを確立していくのかについて,行政のみならず事業者など
も含め,幅広く検討していくことが重要である。
(3)PRを推進し,国内外からの観光客の誘致に取り組むこと
首都圏や近畿圏の主要駅において,広島県の観光パンフレットやポスターをあまり見かけるこ
とがない。
このため,今回の大型観光キャンペーンを最大限活用して,PRを図ることが重要である。本
キャンペーンの実施により中央を含む各マスコミ,放送局などの注目が広島に集まるなか,上手
に情報発信することでマスメディアもさまざまな番組化の取り組みがしやすくなる。広島県にお
いては関係市町などと連携し,本キャンペーン期間中はPRの専任部署を設置し,記者クラブな
どへ情報発信を行う必要がある。また,東北の仙台駅では常設ブースを設置し,各地域が持ち回
りで観光PRを行っている。このように,広島県においても,都市部の各駅や中心場所などに情
報発信のための常設ブースを設置し,各地域が持ち回りでPRを行うことも必要である。持ち回
りであることから常に新鮮な情報の提供が可能となる。
この他にも,関西・関東などの主要駅でのインパクトのある広告の掲示や,県内で無料配布さ
れている飲食店情報誌などを東京や大阪でも入手できるようにすることに加え,東京広島県人会
などとの連携を通じた日常的なPRも強化していく必要がある。また,全国各地のデパートなど
で行われる広島県物産展と連携して観光PRを推進していく方法や,土産品・名産品の中に広島
県の共通観光リーフレットなどを入れる方法も考えられる。さらに,広島市の VI 戦略にあるとお
り市民による広島セールスが重要であるが,現実的には,出張などで首都圏はじめ他地域さらに
43
は海外を訪問することが多いビジネスパーソンによる「広島うりこみ隊」(広島県の大型観光キャ
ンペーンのPR等も含めて)をまず官民一体となって組織化することから始める必要がある。
これらを活用して,瀬戸内海クルーズ,県北でのスキーと温泉とをセットにしたツアー,広島
市内の観光と宮島の温泉での宿泊とのセットなど特色ある商品を国内はもとより,台湾,韓国,
中国など今後とも増加が見込まれているアジア諸国をターゲットに売り込み,海外からの観光客
誘致を推進していく必要がある。
(4)ハード・ソフト両面からホスピタリティ(受け入れ体制)の向上に取り組むこと
広島市内や郊外へのバスのネットワークは素晴らしいが,観光客の視点から見ると分かりにく
い面がある。
このため,ハード面では,主要施設の所在地や目的地の方向などに関する表示・案内板など,
今回の大型観光キャンペーンを契機に改善すべき事項を確実に実施していくことが必要である。
その際に,外国人向けの交通案内や表示に加え,クレジットによるキャッシングサービス(特に休
日でも)を取り扱っている金融機関の案内表示などの整備も一緒に行うことが重要である。この他
ハード面では,駅,バスセンターなどの公共施設における清潔なトイレの設置や,各種施設での
バリアフリー化が未整備なものについての整備を促進する必要がある。
一方,観光の形態は個人,小グループでの旅行が現在の主流であり,また,観光ニーズも癒し,
感動,好奇心を満足させることなどのウエイトが高まっている。各種情報誌やホームページなど
の発達により,観光客(特に個人や小グループでの旅行者)は訪問場所について十分な知識を持ち
あわせている場合が多い。そのような旅行者に感動や驚きを与えるには,受け入れ側でのもてな
しの心や知識レベルの向上が不可欠である。そして,地元の人の対応が,その観光地の評価を左
右し,その後のリピーターや口コミによる観光客の動向にも影響を与えることを認識しなければ
ならない。
このため,ソフト面では,公共交通機関(タクシー,バスなど)や宿泊・飲食などの各事業者は,
その責任において観光客と第一線で接する従業員への教育を徹底することが求められている。本
来,ホスピタリティは,観光客のみならず地域住民に対しても同様に行われるべきものであるが,
観光客増加の視点からは福島県で実施されている「会津ぐるっとカード」(一定区域内での JR,
バスなどの公共交通が乗り放題のほか,各種割引サービスが受けられるもの)が参考になる。この
ようなカードを活用すれば,観光客を特定しやすいことに加え,受け入れ側での統一感も出やす
くなる。
また,観光客のニーズの多様化を反映して,ボランティアが地域のイメージを作る時代になっ
ている。行政ならびに事業者は,ボランティアとのパートナーシップの確立と,観光客に感動を
与えるボランティアガイド育成への支援が重要である。本キャンペーン期間中のみならず終了後
も継続して,広島県をはじめとする行政ならびに事業者は,ボランティアをはじめ市民レベルで
の連携と人材育成を通じて,ホスピタリティの向上に取り組む必要がある。
(5)観光関連の推進組織における一層の連携と役割分担の明確化を図ること
観光に携わっている行政機関(中央省庁の出先機関も含めて)や民間事業者などで組織される観
光推進機関にはさまざまなものがあり,また,それぞれが異なる視点で観光振興に取り組んでい
ることから,地域全体としての観光振興への取り組みの一体感が欠如している面がある。海外か
44
らの観光客誘致を目的として現在行われている台湾への観光PRのように,広域連携の観点から
中国地域5県の官民が一体となって推進している場合もあれば,いくつかの組織を統合すること
によってレベルの高いパンフレットを数多く作成できたり,PRのためのキャンペーンを広範囲
に実施できる場合も考えられる。 しかし,少なくとも今後の広島県の売り物とする観光テーマや
ブランドについては,大きな方向性では一致させておくことが重要である。
このため,官民の役割分担を再確認し,事業内容が重複,類似している組織については必要に
応じた組織の再編を検討する必要がある。基本的には,事業により直接メリットを受ける事業者
が中心(民間主導)となり,行政・観光協会などは民間ができない部分をサポートする体制が理想
である。また,各推進組織間の調整を含め,リーダーシップをとって観光振興を推進していく母
体(ないしコーディネーター)の設置を検討すべきである。さらに,民間主導であろうと行政主導
であろうと,地域においてリーダーシップを持って取り組んでいる人やNPOと連携して観光振
興に取り組んでいくことも必要である。
(6)交通インフラの整備を引き続き推進していくこと
交通インフラは,観光のみならず全ての産業活動のベースとなるものではあるが,広域連携の
観点からも,高速道路網や広島空港への軌道系を含めたアクセス整備,広島市内の駐車場・駐輪
場の整備など交通インフラに関する課題は多い。
このため,広島県をはじめとする行政においては,現在計画中の建設・整備計画を確実に実施
していくことが必要である。
また,観光地間(とりわけ従来の主要観光地でない地域との間)における公共交通手段(主として
バス)の確保が観光客にとっては重要である。
このため,大型観光キャンペーン期間中に各地で行われるイベントなどと連携して,主要観光
地以外でも,定期バスや観光用循環バスの運行などに弾力的に対応すべきである。さらに,それ
らの海版ともいえるループシップの就航などを事業者と行政が一体となって推進していく必要が
ある。
4.今後の目標∼観光県としてトップ 10 に選ばれることを目標に!
観光県としての広島県に対する評価は低い。2003 年に(株)電通九州が全国を対象に実施したア
ンケート調査において,
「広島県の好印象度」は 22 位,
「訪問意向」は 19 位となっている。また,
同年,(株)電通・(株)電通北海道が首都圏を対象に実施したアンケート調査では,
「広島県の好印
象度」は 23 位,「訪問意向」も 23 位という結果となっている(詳細は(資料3)参照)。
大型観光キャンペーンが事業者,行政,県民の全県的な取り組みとして行われ,観光客,来訪
者にやさしい広島県を実現することにより,今後,さまざまな調査機関などが実施するアンケー
ト調査において,広島県の経済力に見合う上位 10 位以内に入ることを共通目標として,観光にか
かわる全ての関係者の知恵を結集することが望まれる。
45
おわりに
観光は,宿泊・交通などの直接的な産業主体のみならず,農林水産業や製造業などにも幅広く
関連していることから地域に及ぼす経済波及効果が大きい。また,観光は地域資源を活用したま
ちづくり,地域おこしにも密接にかかわっていることから,行政や地域住民など幅広い主体に直
接的,間接的に関係している。
本委員会における試算では,広島県の大型観光キャンペーンが広島県に及ぼす経済効果は,波
及効果まで含めると直接需要の 1.7 倍程度となり,広島県の経済成長率を 0.5%程度押し上げると
ともに,雇用誘発効果も大きいことが確認された。しかし,観光はブームや外的な要因に左右さ
れ,地域外の需要に依存する不安定な面を持っている。また,観光の形態も個人,小グループで
の旅行が主流となり,さらに,観光ニーズも癒し,感動,好奇心を満足させることなどに移って
いることから受け入れ側での対応も必要になっている。
広島県の観光を振興していく上での当面の重点課題としては,2005 年度に本格実施される大型
観光キャンペーンの効果を経済的な面から最大限に波及させることにある。さらに,中長期的な
課題としては,これらのキャンペーンの成果や今後も継続的に実施される広島アニメーションビ
エンナーレなどの中から,コアとなる地域ブランドを確立していくことがあげられる。
観光振興に取り組んでおられる関係機関・団体等における活動と相互の連携が一層促進され,
広島県が全国各地や世界から選ばれる観光県となることが共通の目標となるように今後とも努力
していきたい。
46
資
料
47
編
1.「観光振興が広島県経済に及ぼす影響」に関するアンケート調査結果
※表中の番号は回答者を示す。
問1.広島県の観光の現状に関して,問題と思っておられることをご記入ください。
1
歴史的建造物に依存。広島県の観光スポットと言えば,宮島,原爆資料館,尾道等歴史的建物に依存しており,近
代的で魅力ある観光スポットが見受けられない。観光振興は歴史に頼ることも必要であるが,話題性があり,魅力も
あり,継続性のある観光資源を創造しなければ,観光客のニーズは掴めない。
2
宿泊したい場所が少ない。
3
・観光ポイントの紹介不足。
・観光ポイントを短時間で結ぶ交通網の不備。
・観光地を結ぶアクセスが不十分なので,気軽に移動しにくい。
・情報発信が足りない。
4
・広島市で言えば四季を通じたイベントが少ない。札幌,仙台は四季折々にイベントを工夫して存在感を高めてい
る。
・交通インフラの整備(空港・鉄道・高速道/乗り換えアクセスも含め)。
・イベントと地域間の連携。
5
・ 広島の旬,催事 をコトにしてPRすること(体験も含め)。
・ 川の街 広島,カープと広島,サンフレッチェと広島。
・何度も足を運んでみたいと思わせるような観光スポットや名所,イベントが思い浮かばない。
・みやげ物を購入する場所がない。また,これといったみやげ物も少ない(もみじ饅頭だけでは…)。
・平和公園周辺,紙屋町・八丁堀といった市内中心部において,駐車場や駐輪場が不足している。
・公共施設(バスセンター,駅,市民球場等)に気軽に使いやすいトイレ(洋式,清潔)が少ない。
6 ・体の不自由な人に対する意識・配慮(バリアフリーの観点)に乏しい。例えば,歩道点字ブロック上への駐輪が多
い,エレベーターや下りエスカレーターが設置されている駅が少ない。
・駅前などに主要施設の所在地や目的地の方向等に関する案内表示が少ない。
・市内バスに乗っても,案内が不親切(地元向けの乗車案内に終始しており,観光客を意識した案内はなし)である
ほか,運転手の運転が荒い。
7
・交通網や観光スポット等に関する情報量の不足。
・観光に関する官民の連携不足。
8
・観光地のリストアップ。 ・観光地の内容,マップの広告宣伝の不足。
・交通網の整備不良。 ・英語等外国語表記の不足。 ・観光地における受け入れ態勢の未整備。
・広島においては,修学旅行等年々減少傾向にあると聞くが,どこに原因があるのか正しい究明をしていないのでは
ないか?
9
・観光に限らず,広島県経済は年々減少しているのでは?例えば,支店が営業所,営業所が出張所に格下げ傾向
にあると聞く。
・広島の海。他県に比べ海岸部に歴史上の観光地があるのに,それぞれが独立しており,有機的に結合していない
10 (例:宮島があるから呉があり,呉があるから原爆ドームがある)。
・広島の山間地域。歴史の割には語られないし,語ろうとしない。交流の気配・機運が見られないのは残念。
11
・広島市民自身が市内または周辺の観光拠点についてよく知っていない。
・原爆ばかりが強調されている。
12 宮島以外に集客施設がない。
・広島市に関して言えば,原爆資料館・ドーム,厳島神社等,歴史的に価値のある名所・観光地は多くあるが,家族・
13 グループで気軽に楽しめるレジャー的要素の強い観光地は多くない。
・また,各観光地の交通等の連携についても密接とは言いがたい。
観光資源を棚卸し,広島の魅力を県民が共有する必要がある(宮島,原爆ドームの世界遺産/広島カープ,サンフ
14 レッチェ広島,JTサンダース等のスポーツチーム/広島風お好み焼き,もみじ饅頭等のみやげ物/フラワーフェス
ティバル,原爆の日,都道府県対抗男子駅伝等のイベント)
広島県には「厳島神社(宮島)」「尾道」「瀬戸内海」といった観光名所,観光資源が豊富であるが,それらをつなげた
15 「観光ゾーン」の視点が不足しているのではないか。広島市に来ると,「厳島神社(宮島)」「平和公園(原爆ドームを
含む)」だけで,尾道,倉敷,さらには錦帯橋,萩方面を含まないと観光には充分ではない。
48
・広島駅から主要な観光地(縮景園,平和公園,宮島等)への定期観光バスは運行しているが,市内近郊にも「西条
の酒蔵通り」「竹原市の重要伝統的建物群保存地区」等,あまり観光客に知られていない観光地もあり,その地区へ
16 運行している観光バスがない。
・広島市内の公共交通網は観光客にとって分かりづらい。
・平和公園周辺に観光者用(普通乗用車)の駐車場が少ない。 ・県内の交通網が整備されていない。
17 広島空港,広島西飛行場,宇品港の3つのゲートウエイとしての周辺整備と有効活用。
18
観光キャンペーンは毎年,実施されているが,主催者が異なっているので,統一的な宣伝が行われず,印象が薄く
感じられる。
19
祭り。フラワーフェスティバル以外の歴史・伝統のある祭り。
東照宮(通りご祭礼),宮島(管弦祭)。
20
バス等の案内板が不親切で,市民でさえどのバスに乗れば確実に目的地へ到れるかなど,また,老人などの乗客の
身になって考えられていないのでわかりやすいものを考えていくこと。
・観光に携わる方々の問題意識および取組み姿勢が低いことが問題と思われます。例えば北海道や沖縄などでは,
ベースとなる製造業が振るわないこともあり,観光への取組みが熱心です。旅行会社などとタイアップしながら様々な
イベントを企画したり,おみやげとしての商品開発や観光案内板の設置,PR活動など様々なことに積極的に取り組
んでいます。広島県においても,行政はもちろんのこと,旅館業者や輸送業者,菓子メーカー等が観光にもっと積極
的に取り組んでいくことが必要と思われます。
21 ・観光の推進組織がばらばらで,一体性に欠けることも問題のように見えます。県や市,さらに中経連や同友会,さら
に運輸局などがそれぞれ観光について取り組んでいるようですが,互いにもっと連携をとって推進母体を決めて活
動されれば更に効果がでるように思えます。
・広島県内には全国的にも知れわたっているAクラスの観光地が宮島,原爆ドーム以外にないという点も問題です。
これら以外にも広島には様々な景勝地があるし,また神楽のような歴史的な芸能もあるので,もう少し宣伝,PRに工
夫してみてはどうかと思います。
22
県・市・経済団体が各々,独自に展開しており,広島県としての一体感がない。観光連盟,コンベンションビューロー
等各団体間の連携も今一つの感がある。要はバラバラの感が否めない。
原爆ドーム,宮島は広島県に観光客を誘致するには魅力的なスポットであるが,1日あれば見て回れるため2∼3日
23 の滞在とはなり難い。その他の広島県内の都市も観光スポットとしての魅力はあるが,いずれも通過型の観光スポッ
トになっている。
従来,広島の観光といえば,平和公園・宮島が中心で,マンネリ化が進み,観光客が減少しているのが現状である。
24 フラワーフェスティバルと同様に,夜のイベントの創出により,県外の観光客が広島に滞在する話題性のあるイベント
が必要である。
・どこに行っても駐車場が少ない。
・タクシー運転手の質が悪い。
25
・原爆のイメージが強すぎて,暗い観光(二度見たくない)。
・行政は観光と思っているが,民間サイドはあまり興味がないのでは。
26
・駅などへの案内所の整備。 ・タクシー運転手のホスピタリティ。 ・平和公園の駐車場整備。
・夜のにぎわい演出(広島市)。 ・空港から広島市へのアクセス。
・高速道路網の充実(1号∼5号の早期完成)。
27 ・広島空港へのアクセスの充実(山陽道の事故などによる閉鎖,台風の影響による閉鎖時などの対応。代替案の確
立,JRとの連携など)。
広島県,広島市,各種観光に関連する諸団体がそれぞれ同じように広島の観光について真剣に考えられています
が,かなり多くの部分で重複しているように感じています。委員会のメンバーも意外と同じ顔ぶれであるケースが少な
28
くありません。各種団体の活動の垣根をもう少し低くして,共同で観光に関しての取組みができないでしょうか?ま
た,広島県の観光のテーマ(売り)は今後何でいくのかの方向性を一致させておく必要があると思います。
平和公園は1時間あれば十分。宮島は参拝など2時間あれば周遊できる。いずれも長く滞在できる観光地となって
29 いない。社会見学には良いが,旅の楽しさである非日常的な観光要素,賑わいがない。神社,史跡めぐりはすでに
観光タイプとしては成熟しており,他の観光素材をもってないと観光振興につながらない。
49
問2.問題点の克服に向けて必要と考えられることをご記入ください。
・魅力があり,話題性もある観光スポットの建設。観光スポットが少なく,新しく近代的で感動を与えるスポットの建設
(超最先端技術の粋を集結した多目的ドーム球場・全国的にも珍しい近代的イベント会場・美しい瀬戸内海を活用
1
した観光資源開発)。
・民間と行政が知恵を出し合い,本格的プロジェクトを発足させ,具体化に向け官民が一体となり取り組む。
2
海の見える温泉地の開発。
3
・目的(観光・食・健康)に応じたモデルコースの設定。
・交通網の整備(空港∼市内,観光用循環バス等)
・広島空港から広島市へのアクセス整備を急ぎたい。現状では山陽自動車道で事故が起きると身動きできなくなる。
・関西・関東などのJR主要駅にインパクトのある広告を出し,旅行会社とタイアップした企画旅行を積極的に展開した
4
い。
・冬場はカキ祭りといった具合に広島の四季の特色を活かしたイベントを企画したい。
5
・広島西空港の発着を起点として,中・四国,九州地区とのアクセスを整備し,お客様の行動を円滑にする。西回り,
東回りとかの周遊コースの設定。
・世羅台地の農産物と収穫体験など 地産地消 のPRとタイアップさせるなど コト化 が必要。
・自治体を挙げての村(町)おこし企画が弱い。地域住民と行政のタイアップが必要。
・広島に行かないと手に入らない,味わえない,体験できないといった,広島ならではの 広島ブランド を確立してい
くことが大切。そのためにも,個人的な利害を超えて,広島のため,地域発展のためといった大義の下で議論を重ね
ていく必要がある。
6
・使い易い清潔なトイレやバリアフリー,案内表示などの問題を克服していくためには, ホスピタリティー をレベル
アップすることが求められる(電車やバス,タクシーの運転手など観光客と接する機会の多い職種では不可欠と思わ
れる)。
7
・旅行会社・運輸会社など観光業者間の連携が促進される仕組みづくり。
・観光振興に関する行政機能の民間への委託。
8
・同友会・商工会議所での最近の活動は評価に値する。 ・行政・交通機関との協力体制の確立。
・官民一体となった観光広島委員会の設置。 ・国内・国外でのTVCMなど。
・宮島線のJR,広電の関係施設にはすべて英語表記をつける。
9
・正しい原因究明。 ・旅行会社との連携。
10
・広島の海。アクセスの悪さを是正し,一日で回れるようにする。スピードの時代に対応していない。観光船でPRす
れば客は増える。単発でPRしても合理的でない。
・広島の山間地域。三次には3千基の古墳,西条の町並み,竹原の歴史…,挙げれば良いところが豊かな割にPR
していないし,アクセスが悪い。
12 新しい観光施設,イベント等の発掘。
13
・人口100万人という都市規模を考えた場合,外部から見れば広島市は有望な市場と考えられるため,市場の潜在
需要を効果的にPRすることによる新たな民間資本(観光施設の誘致等)の導入。これに加えて,カープ,広響,サン
フレッチェ等のイベント活用。
・強いリーダーの存在と観光振興策への市民合意。
観光客を日本人に絞ると,将来的に伸びる要素は少ないと思われる。例えば,中国を含めアジア諸国の人をター
ゲットに考えれば,ビジネスチャンスは大きく広がる(宿泊施設,交通機関,中華街,通訳,土産物等)。具体的に
14 は,カープのキャンプ地を中国上海で実施し,中国人の選手をスカウトして育成すれば,応援ツアー等も期待できな
いだろうか。これらのビジョンを掲げれば,ドーム球場の採算問題も解決するのではないか。せっかく10数年前にア
ジア大会のために大きな投資をしたのだから,そろそろ回収する計画もいるのではないだろうか。
フラワーフェスティバル(5月)のあり方,実施内容に疑問を抱いている(2年前に初めて広島に来て,フラワーフェス
15 ティバルを見たが,「フラワー」のイメージとは程遠く,2度と見る気になれないのが実感。他県の人にはすすめられな
い。広島市の住民もそう思っているのではないだろうか?)。
50
・テレビ等を利用し,馴染みの薄い観光地をPRする。
16 ・主要観光地以外にも観光バスを試験的に運行させてみる。
・現在計画中の路線の整備を進める。
17 整備をいくらしても利用客が増えなければ意味がないので,定期便を増やすことを考える。
18
広島県観光連盟等が中心となって,今後の観光における官民の役割分担調整や地域間の連携など,観光立県を
目指す体制を確立してほしい。
19 政・教分離の考え方で行政が手を出せない。「祭り委員会」を民で立ち上げる必要あり。
20
全市民が平和文化都市の市民として,空念仏ではない日常生活における温かいホスピタリティ,清潔,賑やかでも
騒音(迷惑な)のない平安な都市であるべきという態度,気持ちをもつこと。
21 リーダーシップをとって観光振興を推進していく母体を確立することが重要ではないかと思われます。
22 県・市・経済団体それぞれが連携し,組織を一本化して広島県観光省をつくる位の気概で取り組んでいって欲しい。
23
海に面し,川が多い割にはウォーターフロントが市民の憩いの場として開放されておらず,観光スポットとしても整備
開発すればよいのではないか。例えば,ニューヨークは世界のビジネスの中心であると同時に,マンハッタン島は南
端にバッテリーパーク,北側にはセントラルパークがあり,セントラルパーク内には動物園まであり,市民の憩いの場
であるとともに観光のスポットとなっている。
24
・道路交通網の整理。バイパス・南道路にしても,計画通り進まない。常に中途半端であり,行政に問題がある。
・歩行者天国の実施。暴走族の問題でストップになったが,イベントは歩行者天国にすべきである。
・根本はやはり人間の質の問題だと思うので,やはり人づくりという観点からの教育問題。
25 ・原爆のおかげで世界的には名前が売れているのだから,明るい平和のイメージへの転換。
・わかりやすい交通網をつくる。
26 推進母体(おそらく各市町村)を明確にして年次計画を作成,実行すること。
・(高速道路網の)早期着工,完成。
27 ・(広島空港とのアクセスにおける)緊急時の連絡網の徹底と代替指示の明確化(広島県?),交通対策会議の開
催,JRとの連携・協力体制を確立させる。
これまでは,世界遺産で保ち続けていた知名度も他県で新たに世界遺産が認定されるとどうしても新しいものに関
心が奪われてしまい,広島としても影響が少なくないと思われます。やはり,宮島や平和公園(原爆ドーム)だけに頼
るのではなく,新たな広島観光のイメージを創り上げることが必須かと思います。例えば,「瀬戸内の海と島々」を中
心とした壮大で穏やかな自然を体感・満喫できる県:広島というようなイメージを県外の方に浸透させることが重要か
と思います。海を売り物にすると仮定しますと,海までの交通網の整備・充実や,観光船のダイヤ・運賃の調整等を
早急に行う必要があるかもしれません。また,あるアンケートによれば,旅行未経験者に旅行をするとした時の目的を
28
聞いたところ,70%以上の方が美味しいものを食べることを目的としたいと答えています。やはり,グルメが充実して
いないと観光客の増加は見込めないのかもしれません。広島においても,イメージとしては,カキ,松茸,瀬戸内の
魚,そしてお好み焼きと,かなり多彩なものが連想されますが,実際にどこで何を食べると良いのか,判断する材料
(ツール)が不足しているかと思います。特に広島に慣れていない方にとっては非常に街自体も分かりづらいような気
がします。お好み焼きMAPのような広島初心者にとっても安心して活用できる情報源を提供すると面白いかもしれま
せん。
平和公園は観光振興素材として考えてはいけない。宮島も世界文化遺産のわりには集客力は弱い。いずれも観光
イメージとしては 暗い 。広島は新しい観光振興の視点に立って考えなければならない。広島県は山に囲まれてお
29 り,良い観光素材が散らばってはいるが,周遊コースが組めるほど線でつながらない。幸い広島は海と川に囲まれて
いる。観光のコンセプトで人を呼び込む 賑わい をつくる。海に川に背を向けるのではなく,海に川に向かって 賑
わい をつくる。そこに新しいアイデアが生まれはしまいか。
51
問3.広島県の観光振興に関する具体的なアイディアがあればご記入ください。
外国人観光客の誘致。外国人観光客を増やすためには,海外の旅行会社,業者へのPRを強化するとともに,広島
を訪れるメリット(ホテルと協議し格安宿泊プラン,土産物の割引券など)を強力にアピールする。また,体験型ツアー
1
の企画(田舎の古い民家に宿泊など)を行い,話題性があり,比較的格安な価格で旅行できる広島を印象づけたら
外国人旅行者も徐々に増加するのではなかろうか。
2
広島特産品ばかりで構成したメニューによる(おもてなしのできる)食事。
3
・目的(観光・食・健康)に応じたモデルコースの設定。
・交通網の整備(空港∼市内,観光用循環バス等)
4
宮島と平和公園だけではもうインパクトに乏しい。グルメ時代の当節,広島特産のカキ,広島菜,小イワシなど瀬戸の
小魚を,季節を工夫してアピールしたい。例えばカキなら「カキ屋台」を設け,そこに行けば広島カキが堪能できるよ
うにしたい。現状では,カキを食べよう,食べさせようと思ってもすぐに思い当たる店,場所が浮かばない。
5
・宮島とお好み焼き(体験),宮島とカキ筏。
・蒲刈と塩,みかん。
・映画のロケ(釣りバカ日誌の誘致等)と観光のタイアップ企画。
広島県は,広島市内など都市部がある一方,瀬戸内海沿岸や島嶼部では柑橘類が栽培され,県北部にはスキー場
もある。都市部と自然を併せ持つ「日本の縮図」ともいえる。こうした広島の特徴を活かし海外からの観光客を積極的
6
に誘致する。※各所間の移動時間を短くするための交通網の整備(陸が困難であれば,小型飛行機の運航なども
検討に値する)や地域間の連携は欠かせない。
・瀬戸内海を周遊する豪華客船の就航と船内におけるカジノ等の運営。
・カキやお好み焼きなどの広島名物を味わえる屋台街等の設置。
7
・宮島を中心とした観光ルートの設定と徹底的なPR(世羅町では,県外での知名度アップのため,近県のバス会社・
JR等への観光情報の売り込みや,他県の県人会を利用したPRなどに注力している)。
・大人の街,悪く言えば中高年の街。福岡,東京,大阪はいずれもターゲット年齢が低い。子育て,働き盛りの年代
10 向けに各種イベントを企画してはどうか。
・平和都市,どこか暗い。平和とは明るく活気のあること。核反対ではなく,交流の促進という打ち出し方にすべき。
・市民に観光についてPR,周知する。
11 ・100円観光バスを走らせる。
・美術館めぐりなどのコースを作る。
12 瀬戸内海を眺望できるタワー,モニュメントを広島市内に設置(採算性の検討が必要)。
・市内観光地および広域観光地(呉,瀬戸田さらには四国等)と交通面・PR面等での官民一体となった連携強化。
13 ・家族・グループで楽しめる都市部への中核的な観光施設の誘致(ドーム球場,他都市の例でいえば福岡のキャナ
ルシティ,下関の水族館等)。
過去の歴史問題において,アジア諸国に強い反日感情があることも事実であり,平和都市「HIROSHIMA」として
14 は,現球場の跡地にアジアの被災者(戦没者)の供養塔(または記念碑)を建立し,世界中に平和の願いを発信して
はどうか(ドーム球場を貨物ヤード跡地に建設することが前提)。
・広島∼西条∼三原∼竹原∼呉を回る「ループトレイン」が運行することとなったが,瀬戸内海という素晴らしい観光
資源をもっと活かし,時間を短縮できるような,海版のループシップ「観光船(広島∼三原等航路)」を就航させ,宮
島も含めた(一日観光ができる)瀬戸内海観光が必要ではないか(観光ルートに組み入れる。現在は単体・乗り継ぎ
が多く,魅力がない)。
15
・現在でも実施しているかは定かではないが,隣県の山口県,岡山県,さらには,しまなみ海道でつながっている四
国との連携協力による「点」ではない「面」としての観光PRが有効と思う。
・口コミで観光に出かけたいという人を増やすこと,リピーターを増やすことが重要であり,場合によっては,観光客に
抽選で「宿泊無料券を贈る」とか,旅館・ホテルと協力した「宿泊割引券発行」とかの方策も必要ではないか。
52
16 広島のシンボルとなるものをつくる(広島市民球場のドーム化)。
国際都市広島として外国人観光客の誘致。ただ,広島だけでなく他県との広域ネットワークを構築し,数パターンの
17 観光ルートを設定する。提携他県と協力し,外国人観光客誘致のための積極的営業活動と外国旅行社の広島事務
所進出について優遇策を設定し積極的に勧誘する。外国人専用の観光案内所の設置。
18 広島県としては,全国に誇れる瀬戸内海の多島美をもっとPRできる内容を検討すればよいと思う。
19 広島城の中で大本営跡の再建(明治時代の広島市の歴史物がない)。
20
毎日毎夜のイベントを公共施設,ホテルなどに広告する。あわせて美術館催事(デパート等で行われる美術展も含
め)を広告する(連絡場所,電話番号も)。
・平和公園の近くなどの観光客が集まる市内中心部に観光物産センターのようなものを設置してみてはいかがでしょ
うか。その場合,単なる地場産品の展示場のようなものではなく,各種みやげものや絵はがき,ひろでんの図柄をプ
リントしたTシャツや様々なグッズなどを置いた賑やかで活気のある店がよいと思われます。
・また,新しい名物料理を創作してみてはいかがでしょうか。旅行者の立場で考えてみると,観光地に行ったら多少
21 お金がかかっても,そこでしか食べられないような名物料理を食べてみたいという欲求があると思われます。お好み
焼き,つけ麺にかわる名物料理の創作を提案します。創作の仕方としては,例えば同友会なりが,名物料理になりそ
うな料理を公募し,優勝者には1年間JR駅構内の一等地において無料で料理店を営業できるなどの特典を与える
など,インセンティブを与える方法などはいかがでしょうか。このような特典があれば,我こそはと思う料理人が現れる
かもしれません。
上海,台湾,韓国等に広島県事務所を設け,継続的なインバウンドの誘致に取り組むべきだ。上海で旅行業者を数
22 社訪問したが,広島の知名度は高いが,観光地としてのアピール,情報が全く知られていないことを感じた。アジア
からのインバウンド客を積極的に取り込むべきと考える。
23
・広島平和記念公園を市民の憩いの場として開放すること。
・観光スポットとなりうるウォーターフロント開発をすること。
広島新球場を早期に実現する。10/30の奥田民生氏の市民球場コンサートは3万人もの集合があり,東京,京都な
24 ど県外のお客さまが多く広島に経済効果が大であった。カープの試合以外のイベントにより,県外の集客が高くなる
のでは。
25 宮島を観光特区にして,ラスベガスやマカオのようにできないものでしょうか。
・入込み客を増やす空港アクセスの軌道系整備。
26 ・広島駅前整備の早期化。
・問1の各項目の実行に向けた条件整備。
27
広島県単独の観光PRが少ないように思う。観光地としての表示が少ない(外国人向けだけでなく,国内客に対して
も)。看板・観光案内所の充実も。
何より広島に関する情報発信を首都圏,近畿圏に行うことが重要かと思われます。宣伝活動や広報活動をもっと積
28 極的に展開して,いろいろな人の目につくように展開するべきかと思います。例えば,広島で無料配布されている飲
食店情報誌を東京や大阪でも入手できるようにすると意外と活用されるかもしれません。
ある民間の方のグループで,宮島口の開発を真剣に考えておられる。JR宮島口∼桟橋∼海路∼厳島神社を参道と
考え,そこに(宮島口中心)新しい街並み,賑わいをつくるプランである。参拝・見学だけの参道でなく,足止めさせる
29
に十分な仕掛けづくりを考えておられる。世界文化遺産を生かして通過型から滞在型の観光振興を官民一体となっ
て取り組んではどうだろうか。
53
問4.その他,広島県の観光振興に関するご提言があればご記入ください。
酒都西条の整備による観光客誘致。日本の三大銘醸の一つで酒蔵が中心部に集中しており,これの整備,活用に
より魅力ある観光地に育て上げる事ができるのではないだろうか。そのためには,酒造りメーカーの協力が不可欠で
1
あるが,行政も相応の支援をする必要がある。九州日田市豆田町,飛騨高山,金沢,古き日本の良き地域に似た町
並みづくりを試みたらいかがか。
3
・女性を呼ぶための目玉が必要。
・JRに自転車持込み可とする。
瀬戸内海の自然,多島美も,ただ「自然が素晴らしい」とPRするだけでは,よほどの自然派でないと何度もやってこ
ない。瀬戸内海の素晴らしさは,部分だけでは感じ取れない。もっとスケールというか広範囲にわたる瀬戸内海のPR
4
作戦が必要だ。そのためには瀬戸内7県(大分,兵庫含む)が連携した観光戦略・プランが考えられてもいい。きめ
細やかさと大胆さのリスクが欠かせない。
5
平和公園と宮島からの脱却。ないものとして観光立地をどう考えるかにかかっている。
3つのモノ,すなわち,「よそ者」「若者」「ばか者」を上手く活用してほしい。
・広島は 支店経済の街 とも言われており,他地域から当地域に移り住んでいる人も多いと思う。こうした「よそ者」か
ら地元の人にはわからない広島の良さ,また,不便な点や改善点を聞き出し,観光振興にも役立てていってほしい。
6 ・活気あるところには「若者」が必ず集まっている。広島の若い人達も何かを求めているはずで,若い世代の希望や
声を反映させていくことも必要と思う。
・広島を活性化したいとの熱い情熱と強力なリーダーシップを持った人は必ずいるはず。こんな「ばか者」を集め,観
光振興・地域活性化に向けたリーダーや旗振り役を任せてはどうか。
・バス網は素晴らしい。しかし,観光的観点から見ると,非常に分かりづらい。観光用ガイド版(電車+バス)が有効と
思う。
10
・アメニティーの時代。山の美しさ,水のおいしさ,人情の豊かさ,をキーワードに広島県全体を語るべき。レジャー施
設のないところが逆に売りの時代。
旧来型の行政主導の箱物中心の町おこしではなく,地域の歴史的産業や文化を掘り起こした,市民中心の運動を
14 支援することが重要と思う。例えば,広島は浄土真宗安芸門徒が多く,寺町の盆灯篭もひとつの独特の文化ではな
いか。また,モルテン,ミカサは世界ブランドであるが,広島に本社があることを知らない人は多いと思う。
17
中国,台湾,韓国等の近隣諸国とスポーツ,文化,経済等(少年,高校,大学,一般,各種団体)の定期交流を図る
ことにより,空港,宇品港の利用増加につながり,観光客の増加にもつながる。
20 駅,停留所,海外から訪れる人にわかりやすい表示板。地図に日本語以外,英,中,韓語をつける。
県,市,経済団体など観光振興のための活動をしているところがあるが,いずれも個別に活動を行っていて,規模が
23 小さく期間限定であり,効果が薄いと考えられる。一致協力して活動すれば効果も期待できるのではないか。アジア
大会誘致の際のようになれば,活性化されるのではないか。
25 遠来の客があった時,ぜひ連れて行ってあげたいと自分自身がすぐに思い描ける様な場所を探したいものです。
26
・都市間の広域連携。
・広島県は観光政策に本腰を入れていないのではないか。観光振興を重点施策として行動すべきである。
27 広島県だけの観光振興にとどまらず,隣県との協力で中国地区の観光振興と考え,PRを強化する。
54
2.講演録
(日時:2004 年 12 月 2 日
場所:広島商工会議所)
観光による地域振興と地域づくり
―「産めよ増やせよ」から「呼べよ集めよ」へ ―
(株)電通関西支社
営業統括局プロジェクト開発室
プロジェクト1部長
德永
眞一郎
(講演レジュメ)
Ⅰ.なぜ「観光」なのか
―
少子高齢化社会,人口減少時代の活力創造
Ⅱ.「観光貧国」ニッポン
Ⅲ.集客交流産業の振興に向けて
1.地域にとってのメリット
・広範な経済波及効果
・高い雇用創出
・環境負荷の低い産業
・良好な地域情報の発信,地域ブランドの形成
・地域魅力への気づき,郷土愛の醸成
2.振興のポイント
・資源・インフラの整備
・マーケティングと商品開発
・戦略的イメージ形成と情報発信
・ホスピタリティの向上
ご紹介いただきました電通の德永と申しま
集めよ」という形にシフトしているのではない
す。本日は広島を代表する経済人の皆様の前で
か,と。観光というものが今日,国益を担いつ
お話する機会を頂戴し,誠にありがとうござい
つあるという認識もあって,勝手なサブタイト
ます。司会の方から過分なご紹介をいただきま
ルをつけさせてもらった次第です。
したが,私は必ずしも観光を専門的にやってい
さて本日は,大きく3つのブロックでお話を
るわけではございません。イベントとかシテ
させていただきますが,冒頭,観光をめぐる時
ィ・プロモーションとか,平たくいえば 人集
代的要請や社会的背景といったものについて,
め にかかわることにずっと従事してまいりま
私なりに考えていることを少しお話します。
したので,今日はそういったキャリアの中で経
レジュメに「少子高齢化社会,人口減少時代
験したことの一端をお話し,皆様の観光に関す
の活力創造」と書いておりますが,これからの
る研究の一助とさせていただければと思って
社会構造の推移に目をやりますと,やはり観光
おります。
を軸とした集客交流産業の振興というのが,一
お手元にレジュメをお配りしております。事
つの特効薬になっていくだろうと考えており
務局からは「観光による地域振興と地域づく
ます。
り」というお題を頂戴したのですが,私の方で
まず少子高齢化ですが,現在たいへんな勢い
勝手に『「産めよ増やせよ」から「呼べよ集め
で少子化が進展していることは,皆さんよくご
よ」』というサブタイトルをつけさせていただ
承知の通りかと思います。厚生労働省の予想を
きました。「産めよ増やせよ」はその昔の国策
上回るというか,期待を裏切る形で,非常に早
的なスローガンですが,いまやそれが「呼べよ
いスピードで少子化が進んでいます。先頃
55
「1.29 ショック」なんていう言葉がありまし
思います。つまり,交流人口を増やすことによ
た。1人の女性が一生の間に産むお子さんの数
って,実質人口の減少分を補っていくというこ
が 1.3 人を下回ったということです。自然減が
とが,観光をはじめとした集客交流産業に期待
ありますから,当然のことながら 2.1 人ないと
される大きなミッションなのです。
人口が減っていくわけですが,全国平均で 1.29
もちろん,生産を効率化するとか産業構造を
人。東京都では 1.0 人を下回りました。行政単
高度化するとかは,別次元の議論としてあるわ
位でいちばん少子化が激しいのは東京の渋谷
けですが,人口が減っていく中で活力を維持す
区で,なんと 0.5 人を割っているといいます。
るためには,経済人口を創出しやすい集客交流
加速度的に子供の数が激減する時代に突入し
産業に期待が寄せられるということなのだと
ているわけです。厚生労働省は当初,日本の人
思います。開発余力の高い産業分野であること
口ピークを 2008 年と予測しておりましたけれ
もあるでしょうが,今日観光がにわかに脚光を
ども,どんどん前倒しして,いまは 2006 年,
浴び始めたのは,そういう日本社会の人口構造
つまり来年を境に日本は人口減少社会に突入
の大変貌が背景にあります。
するとしています。
もう一つに高齢化です。日本はこれから,す
V字回復で出生率が持ち直すということも,
ごい勢いで高齢化社会に突入をしていくこと
可能性としてはなくはないのですが,かたや高
になります。すでに存在している皆さんがお歳
齢化という現象を支えながら一気に少子化が
を召していくわけですから,不可避の現象とし
回復しますと,日本社会としては上も下も重た
て向き合わなければなりません。世の中ではよ
くなるということになるわけです。つまり,明
く「2007 年問題」なんていういわれ方をしま
日あさって産まれるお子さんは,労働力として
す。これまで日本を引っ張ってきた「団塊の世
期待しうる,あるいはマーケットとして期待し
代」が卒業を始める,これが 2007 年になるわ
うるまでに,少なくとも 15 年や 20 年はかか
けです。昭和 22 年から 24 年生まれの皆さん
ります。高齢化とあいまって,ダブルで負担が
です。日本社会の牽引役として,時代時代の波
増え,これはこれで困った現象が起きることに
頭として,社会の動きを引っ張ってこられた
なります。このような人口構成がこれから進ん
「団塊の世代」の皆さんが卒業されていく。
でいくわけです。「そう遠くない将来に日本人
ちょっと数字をご紹介しますと,今日この時
は甲子園球場に収まるくらいの数になってし
点ですでに成人人口の半数以上は 50 歳以上の
まう」というようなことをいう学者もいらっし
シニアです。2010 年,これから5年後ですが,
ゃいますが,いずれにしても確実に人口が減る
シニア人口は 5000 万人を超えます。それから
ということなのです。
2015 年,いまから 10 年後ですが,4人に1
人が 65 歳以上の高齢者ということになります。
一般に人口が減れば国力が衰亡するといわ
れますが,人口減少に耐えながらいかにして活
2030 年,いまから 25 年後,四半世紀後には
力を維持し続けるかということが,当面の日本
3人に1人が 65 歳以上のお年寄りという,人
の最大課題の一つになります。減った人口をど
類がこれまでに経験したことのない超高齢化
う補うかとなりますと,外国人労働力を受け入
社会に日本は突入をしていくことになるので
れるとか,女性労働力を活用するとか,あるい
す。
は高齢者や障がい者の皆さんにどんどん社会
昔は多産多死だったんですが,それが一転し
参画していただくということになるわけです
て少産少死,つまり産まれてくる子供も少ない
が,観光を中心とした交流産業というものが注
し,お亡くなりになる方も少ない社会になりま
目される必然や背景も,そこにあるんだろうと
す。先行する多産時代がまだ多く残っているに
56
もかかわらず,一挙に少子化時代が下に滑りこ
ーマンです。いまの感覚からいいますとすごく
んできています。とんでもなく頭でっかちの社
違和感があると思うんですが,当時の日本社会
会が急速に形成されて,そこにいびつな軋みや
は,50 がらみの夫婦というのはあんなもんだ
歪みが生じてくるというのが,少子高齢化社会
と,違和感は感じなかったんですね。だから漫
のいちばんの問題構造です。ですから多産多死
画として成立しているんです。いまの 50 そこ
が少産少死に移行しきってしまった後の時代
そこの夫婦像は,少なくともああじゃないでし
には,全体にスケールダウンして,それなりに
ょう。もっともっと元気です。ですから,悲観
安定感のある社会がくるのかもしれませんが,
的な話ばかりを申し上げましたが,年配の方も
しばらくの間は多産時代がまだまだ残ってお
変わってきておられますから,必ずしも悲観す
り,そこへ一気に少子化が進みますから,頭で
べきじゃない。
っかちの人口構造,逆三角形のいびつな社会構
もう一つ例を挙げましょう。JRさんが国鉄
造が続いていくということになります。
時代に「フルムーン」というキャンペーンをお
2015 年には4人に1人はお年寄りと申し上
やりになりました。ご記憶だと思うんですが,
げましたが,どういう社会になるのか,ちょっ
上原謙さんと高峰美枝子さんが登場する CM
と例を申し上げましょう。皆さんがお乗りにな
が話題になりました。あれは夫婦あわせて 88
る電車にシルバーシートというものがありま
歳なんです。ということは 44 歳平均なんです
すが,これが座席の中に占める割合は,だいた
よ。いまの感覚からすると,あの 44 歳の夫婦
い 15 パーセントから 20 パーセントくらいで
像というのはないと思うんです。でも,当時は
す。そこで質問ですが,今の比率で計算すると,
夫婦あわせて 88 歳,あの二人で違和感はなか
2015 年にはシルバーシートをどれくらい用意
ったんです。その後,JASがJALと一緒に
しなければならないでしょうか。答えは 100
なる前に,夫婦で 100 歳というキャンペーン
パーセントです。100 パーセントにしても,な
をおやりになりました。今度は夫婦で 100 歳
おかつ元気な方にはつり革を持ってもらわな
ですから 50 歳平均です。その時に起用された
いといけないという時代になるわけです。それ
のが沢田研二さんと田中裕子さんのご夫婦。こ
くらい年配の方が増えてくる時代が,もうそこ
れは違和感はないと思うんです。
我々の意識や見方も変わりましたし,当事者
にきているということなのです。
悲観的な話ばかり申し上げましたけど,昔の
も変わってきてますから,年配の方が増えるこ
お年寄りと変わってきていますから,必ずしも
と自体はそれほど悲観すべきことではないの
悲観すべき話ばかりではないんです。例えば
だろうと思っています。生きがいも非常に強く
「サザエさん」という漫画を皆さんご存知だと
持っていらっしゃるし,実際に要介護者といわ
思うのですが,磯野波平は何歳だと思われます
れる方々も,後期高齢者の中で1割ぐらいしか
か。頭もちょっと薄いですし,どう考えても
いらっしゃらない。肉体的にもまだまだお元気
60 を過ぎているという感じだと思うんです。
な方が増えていらっしゃいます。よくいわれる
奥さんの磯野舟に至っては,今の感覚からいう
ことですが,預貯金の7割は高齢者がお持ちだ
と 70 がらみのおばあちゃんの雰囲気だと思う
とかというようなこともあって,そういう方々
んです。ところが,彼は福岡県出身の 54 歳の
に活性化していただくということが,これから
現役のサラリーマンなんです。あの漫画は戦後
の日本社会の活力を生み出すためには非常に
ほどなく連載がスタートしましたが,当時は
大切なことになっていきます。
55 歳定年制です。時折寿司折りを持って一杯
もう一つおもしろい話をしますと,私は今
機嫌で帰ってきますから,まさに現役のサラリ
48 歳です。肉体年齢は 48 ですが,気持ちはそ
57
れより若くありたいと思っています。だいたい
始めましたが,先進諸国の中では非常に遅れた
皆さん実際の年齢よりは気持ちの年齢を若く
スタートだったと思います。
お考えなんですが,男性よりも女性の方がその
小泉首相も「ビジット・ジャパン・キャンペ
開きが大きいんです。男が5歳くらいしかサバ
ーン」で,2010 年に外国人観光客 1000 万人
を読まないとすると,女性は 10 歳くらいサバ
を目指したいという掛け声をかけておられま
を読みます。しかも年を重ねるごとにその幅が
すが,国策としての観光振興が遅まきながらス
大きくなるようで,気持ちの上でも非常に若い
タートしたということだと思います。国際比較
方が多いということは,それはそれでたいへん
の中でも,日本は決して観光産業が活発ではな
いいことだと思います。
いことがうかがえると思います。インとアウト
ちょっとシニアのことを長く話しすぎまし
がアンバランスであるということは,皆さんよ
たが,そのシニアがもっとも興味を持っている
くご存知だと思います。国際情勢とか景気動向
事柄は3K,3つのKです。何かというと,ま
によって統計数字はいろいろとバラツキが生
ず「健康」です。当然お年寄りですので「健康」
じるんですけど,だいたい日本から外へ出てい
です。それから「経済」です。年金その他の「経
かれるお客さんが1千 700∼800 万人くらい
済」。それから3つ目のKが「観光」なんです。
いらっしゃるにもかかわらず,入ってくるお客
つまりシニアの最大の関心事の一つが「観光」
さんは 300 万人とか 400 万人という,著しい
なんです。シニアの生活や意識について調査を
インとアウトのアンバランスがあるわけです。
しますと,いろんな趣味がでてきます。人生経
ですから,こと観光に関していうと,日本はず
験も豊富な年齢層にふさわしく,それはもうい
っと輸入超過状態が続いているということに
ろんな趣味がでてくるんですが,その中でも非
なるわけです。これだけインとアウトのバラン
常に高いポイントを獲得するのが「観光」です。
スの悪い先進国はどこもありませんし,世界に
ですから,今後ボリュームゾーンを形成してい
目を向けても,これだけ両者の比率がいびつな
くシニア層の最大関心事である「観光」に焦点
のは,何カ国もないんです。国際観光収支でみ
を絞っていくということが,産業的にもすごく
ても,皆さんが外へ出て使うお金は世界第3位
可能性も高いし,そういう方々が生き生きと過
なんですが,入ってきて使っていただくお金は
ごしていただくためのキッカケづくりにもな
24 位と,非常に差があるのが現状です。世界
って,大変いいことではないでしょうか。こう
では自国の人口以上に外から観光客を引く国
いう席でいうには少し品がない表現になりま
はたくさんあるわけで,フランス,スペイン,
すが,観光を軸に「持っては死ねません」キャ
イタリアなどはそうです。さながら日本が1億
ンペーンをやるということなのです。景気浮揚
3000 万人からの入り込みを達成している状態
の6割を個人消費が担っているといわれる中
ということになりますが,そのような国は世界
で,やはりシニアの皆さんに生き生きと動いて
にはいくつもあるのです。また,中国がこの
もらうということが,社会としてもとても重要
10 年くらいでかなり外国人観光客を引くよう
で,その消費の幹に観光という鉱脈があるんだ
になりました。中国はいま非常に伸びがいいん
ろうと思います。
ですが,WTOという世界の観光組織の予測で
しかしながら,レジュメに『「観光貧国」ニ
すと,そう遠くない将来,2020 年に入り込み
ッポン』と書いたように,国も地方自治体も,
客が1億 3000 万人を超えて,世界最大の観光
観光についてこれまで積極的な手を打ってこ
国になるだろうといわれています。それぐらい
なかったというのが現状だと思います。ようや
の勢いで,中国はどんどん伸びてきています。
く最近になって,国も自治体も観光に力を入れ
広島空港も東アジアと航路を結んでいらっ
58
しゃいますが,中国をはじめとして,やはり東
それから,一般的に「環境への負荷が低い」
アジア諸国の観光動向を意識しながらの戦略
業種が多いと思われますので,時代の思潮とい
構築が必要なんだろうなと思います。2008 年,
いますか,今日のトレンドにもマッチをしてい
2010 年にはそれぞれオリンピック,万博もあ
るといえるのではないかと思います。
りますので,それとの連携なのか対抗なのか,
さらに,
「良好な地域情報の発信」,昨今話題
いろいろ戦略上の選択があると思うんですが,
の「地域ブランド」の形成というものに役立つ
東アジアの観光マーケットを意識した形で国
ということがいえます。我々からしても,ちょ
際観光を組み上げていくということも,一つの
っと当惑するくらい地域ブランド論というの
視点として必要だと思います。
は花盛りといいますか,期待度が高まっていま
いずれにしても,これまで日本はあまり観光
すが,そもそも「ブランド」とはなんでしょう。
に力を入れていなかったことは事実です。それ
皆さんもファッション等々で「ブランド」とい
ではどのように観光産業を振興していくのか
う言葉には馴染んでおられると思うんですが,
ということなんですが,地域にとってのメリッ
私なりの定義で申しますと,「モノやサービス
トと思われるものを,いくつかレジュメに列記
の物的有用性や本来の使用価値ではなくて,そ
させていただきました。
れがもつ情報価値的な側面を最大化ないしは
まず「広範な経済波及効果」です。直接的に
極大化したものである」と。いい方を変えれば,
は交通とか宿泊・飲食ということになるわけで
消費満足が商品本来の物的有用性とか使用価
すが,集客交流産業というように枠を広げて考
値ではなくて,情報価値や心理的価値,さらに
えた場合,とてもすそ野の広い産業になってい
はイメージ価値によって構成されているのが,
きます。すそ野が広い産業という意味では自動
ブランド化現象
車産業なんかが代表的ですし,広島も自動車産
こういう難しい話をしてもわかりにくいの
業とは当然ご縁が深いわけですけど,観光を軸
で,いちばん端的にブランドのおもしろさとい
とした集客交流産業も,産業的なすそ野の広が
うか,怖さというものを物語っている例をお話
りが期待できます。
しします。大分県の関鯵・関鯖です。同じ豊後
なのです。
それから「高い雇用創出力」。人的サービス
水道でとれる鯵や鯖ですから,モノは一緒なん
業ですから,やはり雇用創出が期待できます。
ですが,愛媛県で揚がるとあまり値が高くつか
従来は地域振興の定番的なメニューとして,大
ない。ところが反対側の大分県で揚がると東京
きな工場なんかを誘致してきたわけですが,フ
でもびっくりするぐらいの高級魚として取引
ァクトリーオートメーションが進んでいます
される。こんな理不尽な話は本来ないわけです。
から,かなり大きな工場を引っ張ってきても,
これがブランドというものが持っている可能
実際にそこで働いている方は 10 人とか 20 人
性でもあるし怖さであるし,ある種空しさであ
とかいうことは,よくある話です。昔のように
るのかもしれません。そういう非常にあやうい
生産ラインにたくさん人が並んで働くという
側面は確かに持っているんですが,ただ消費者
ようなことでは,なくなってきている。そうい
の側が,そういう使用価値や物的有用性だけで
う状況がある中で,ロボットにサービスしても
はなくて,そこに価値を見出して買うというの
らっても観光は楽しくないわけで,人と人との
が,良くも悪くも消費の今日ということなんで
ふれあいとか,face to face のコミュニケーシ
しょう。地域プロモーションにおいても,地域
ョンがあって,初めて観光が成立します。そう
のブランド価値をどう設計するかということ
いう意味で,雇用創出力が期待できるというこ
が,求められていくんだと思います。
広島に関していいますと,カタカナの「ヒロ
とが挙げられます。
59
シマ」というイメージももちろんあるでしょう
たり,いろいろあろうかと思いますが,当然そ
が,地域ブランドを形成していく上での要素や
ういったものが必要です。大阪も,USJが開
資産をたくさんお持ちだと思います。全国に
業し,それで観光客は増えました。一定のデス
3200 ぐらい自治体がありますけど,地域のブ
ティネーションや資源の整備,これは必要です。
ランドをつくっていくときの要素や資産とし
あと鉄道とか道路とか空港とか,あるいはホテ
て挙げるものは,味噌とか緑とか,そういうも
ルとかコンベンション施設,そういったインフ
のが大半を占めます。そんな中で,広島はたく
ラ整備も必要だと思います。
さんのものをお持ちですから,そういったもの
実は今日こちらにお邪魔する前に,当社の広
をうまく汲み上げることで,新たな地域ブラン
島の営業所に寄ったんですが,「広島アニメー
ド構築の道筋が開けるはずだと思います。
ションビエンナーレ」を同友会でおやりになっ
ただ,ここで一言だけ申し上げておきたいの
たと聞きました。別に持ち上げて申し上げるわ
は,地域ブランドと地域広報は違うということ
けではないんですが,こういった事業を地域の
です。よく,わが町は「水と緑と歴史の町」と
経済団体が主導して開催するというのは,とて
いったりしますが,水や緑や歴史が至るところ
も素晴らしいことだと思いました。アニメーシ
にある以上,それは地域広報であって,地域ブ
ョンにかかわるもともとの地域資産をうまく
ランドではないんです。
「わが町はこうありた
膨らましていかれたそうですが,将来的にも可
い」という一人称の表明ではなくて,マーケッ
能性のあるプロジェクトじゃないかと思いま
トを意識した上で,他地域と差別化するための
す。といいますのも,先ほどアジアの話もしま
戦略的なイメージをどう構築し,提供できるか。
したが,アニメーションは日本が世界に誇るコ
そこがやはり,従来の地域広報といわれるもの
ンテンツの一つですから,こういったものをう
と,地域ブランドというものの違いだと思いま
まく育てていければ,広島の新たな集客資源,
す。要は買っていただくためにどうするかとい
有力なデスティネーションになる可能性があ
うことだと思います。
ると期待しております。
その次に,「地域魅力への気づき,郷土愛の
次に「マーケティングと商品開発」と書きま
醸成」と書いていますが,私は観光というもの
した。ともすれば観光資源や観光商品というの
の最大の値打ちは実はここにあると思ってい
は,ある種の思い込みに陥りがちです。例えば
ます。もちろん観光産業が振興されて地域が潤
広島であれば,「牡蠣がある」「宮島がある」,
うことはいいことなのですが,やはり住んでい
あるいは観光資源というには語弊があります
らっしゃる皆さんが地域の魅力をもう一遍掘
が「原爆の体験や教訓がある」。地元にいらっ
り起こして,それに気付いて愛着や誇りや自信
しゃると,そういう目で最初から見てしまう。
をもっていくこと,これが観光振興の最大の値
しかしながら,やはりマーケットは何を期待し
打ちだと思っています。それが,中長期的な地
ているのかということを絶えずチェックして
域の底力みたいなものを形成していくんです。
いく必要があります。皆さんがぜんぜん気がつ
最後に「地域振興のポイント」というものを
かないところに,観光商品としての新しい可能
少しお話ししたいと思います。一番最初に「資
性が潜んでいるというケースがたくさんある
源・インフラの整備」と書きました。いうまで
のです。
もないことなんですが,やはり観光に来ていた
例えば,青森県や北海道に台湾のお客さんが
だくためにはいろんなデスティネーションを
たくさん旅行されるんですが,その理由はりん
整備する必要があります。それはテーマパーク
ご狩りができるということと,雪が降るという
であったり,博覧会であったりイベントであっ
ことです。我々日本人は,四季があることは当
60
たり前ですから,特段それが観光の魅力になる
子分母の関係をそのまま当てはめると,人口
とは思っていません。ところが日本ほど明快な
130 万人の広島市が1億 3000 万人のお客さん
四季の移ろいがある国はそうそうないわけで,
を受け入れている状態をつくっているという
四季がある,雪が降るということだけでも,わ
ことなんです。出石町の役場は 20 年前までは
ざわざ台湾から飛行機に乗ってお越しになる
木造の小学校のような役場でしたが,いまは蕎
ということが現実にあるわけです。
麦御殿といってもいいような立派な庁舎に建
それと商圏,つまりどこから引くかというこ
て替わっています。私がなぜこの話を申し上げ
となんですが,例えば同じ中国でも,台湾と香
るかというと,「食べる物は強いですよ」とい
港と本土では,お休みのタイミングがそれぞれ
うことと,「やればできる」ということです。
違ったり,また行動パターンもいろいろ違う。
20 年前まで蕎麦屋は3軒か4軒しかなかった
ですから関西にいていつも感じることですが,
んです。それが俄かにこのように成長したとい
関西といえば神社・仏閣だと,もうそこには疑
うことは,やればできるということです。しか
いを入れずに思い込んでしまっているところ
も特殊な食品を提供しているわけではありま
があります。そのあたりを虚心にといいますか,
せん。日本全国どこでもあるものです。彼らの
時代に見合ったというか,マーケットに応じた
どこが賢かったか。いろいろあるんですが,一
見直しをしていく必要があるんだろうなと思
つには自らの立地というものを見極めて,マー
います。
ケティングをやったことだと思います。土地勘
私はとくに,
「食べる」ということは,観光
がない方にはわかりにくいかもしれませんが,
のインセンティブとしてとても強いものを持
城崎温泉は兵庫県の北側にあって,京阪神から
っていると感じています。「るるぶ」という観
行くとちょうど山陰地方へ抜けていく途中に
光情報誌がありますが,あれは「見る」「食べる」
あるんです。出石は何をやったかというと,昼
「遊ぶ」で「るるぶ」なんです。「食べる」とい
ごはんを全部さらったんです。通常,観光振興
うのは,昔から観光魅力を支える大きな要素だ
というと,基本的には泊り客を増やすことで経
ということがいえます。広島には牡蠣があった
済効果を高めるというのが常道的な考え方だ
り広島焼があったり,全国に通用する,流通し
と思うんです。もちろんベーシックにはそうだ
ている食資源がたくさんありますが,そういっ
と思うんですが,出石の場合は泊めるんではな
たもののポテンシャルは本当に計り知れない
くて,通過客に的を絞っているんです。京阪神
ものがあります。
から山陰へ抜けていくときには,丁度あのあた
私がこの話をするときによく事例としてご
りがお昼時になります。帰ってくるときもそう
紹介するのが,兵庫県の出石町です。城崎温泉
なんですけど,そのお昼時に焦点を絞っている。
のそばにある町で,
「いずし」と読むんですが,
観光客のお目当ては皿蕎麦のみ。単品メニュー
皿蕎麦が有名なところです。「誰々さんは 10
ですから,非常に効率がいいんです。しかも「A
枚食べた,誰々さんは 15 枚食べた」と,競い
さんは 10 枚,Bさんは 20 枚」と黙っていて
合いながら食べるのが特徴なんですが,この出
もお互いに競いあって食べてくれるという,ま
石町が蕎麦を売り物にして一躍地域振興を成
さに
し遂げたのです。この 20 年くらいの間に,実
単純に客単価を上げるためには泊めた方がい
際に大成功を収めています。人口は1万 2000
いんですが,そのためには施設もいるし,人件
人なんですけど,年間の観光入り込みはどれぐ
費もかさむ。昼時に的を絞ることによって,非
らいだと思いますか。100 万人を超えるんです。
常に効率のいい観光振興を図ってきたわけで
人口1万 2000 人の町が 100 倍の 100 万人。分
す。それが証拠に,現在では専業・兼業含めて
61
おいしい商品
になっているわけです。
何百軒も蕎麦屋が出石にはありますが,ほとん
逆説的な説明になってしまいましたが,「三大
ど夕方の6時までに閉店します。いい意味での
がっかり」の例を見るにつけ,やはり戦略的な
割り切った戦略・戦術が功を奏する例として,
情報発信やイメージ形成というのが,非常に大
かねがね参考になると思っているところです。
事だと思えてきます。
それから「戦略的イメージ形成と情報発信」。
最後に「ホスピタリティの向上」と書きまし
先ほどのブランドの話とも関係しますが,これ
た。こう書くだけでは当たり前の話なんですが,
も非常に大事なことなんです。フランスにロジ
これからの観光は,従来の絵葉書観光,物見遊
ェ・カイヨワという哲学者がいたんですが,そ
山型の「see 型観光」ではなく,体験・参加型
の人の言葉で「観光とは確認する喜びである」
の「do 型観光」に変わることが予想されます。
という言葉があります。つまり,行って初めて
情報化が進みモビリティも高い日本では,「行
満足する,納得するんではなくて,新聞・雑誌・
ったことがない」「見たことがない」という基
ラジオ・テレビで見た,あるいは教科書で勉強
本的な観光ニーズは,少なくとも国内観光では
した,そういう先行するイメージの蓄積を確か
かなり充足されてきた感があります。先ほど
める,それが観光満足の本質であるという言葉
「確認する喜び」ということを申し上げました
なんです。私は非常に優れた箴言だと思ってい
が,絵葉書観光というのは,行ったらもう終わ
るんですが,そのためには良好なイメージをプ
るわけです。これからはもっと違った,深いも
ロモートをかける前に形成しておくこと,すな
のを求めて皆さん足を運ぶことになります。そ
わち戦略的な情報発信がすごく大切になるん
の時に,地域のもてなしとか,地元の方とのふ
です。
れあいとか,そういうことがすごく大事になっ
この話をする時に引き合いに出す事例なん
てくる,それがホスピタリティです。体験価値
ですが,「日本三大がっかり」というのがある
や体感価値を高めて,
「もっと知りたい」
「また
んです。「日本三景」はどなたもご存知なんで
行こう」と思ってもらうことが大切です。
すが,話には聞いているけど実際に行くとがっ
ホスピタリティの重要性は,観光においてリ
かりするというのが,この「日本三大がっかり」
ピーター確保が鍵になってきていることの証
です。最近,整備が進んで少しがっかり度は減
でもあります。リピーターをいかに獲得するか
ったかもしれませんけれど,まずは土佐の「は
が,勝敗の分かれ目になってきています。テー
りまや橋」。それから札幌の「時計台」。札幌の
マパークでも,リピーター確保のために相当な
時計台もあのアングルしかないんですね。カメ
投資を余儀なくされています。
ラを少しでも横に振ったり後ろに引いたりす
ちょっと脇道にそれますが,テーマパークと
ると,ビルの谷間に埋もれるようになってしま
遊園地はどう違うか。見た目には遊具が並んで
って,我々の知る時計台のイメージとはかけ離
いて似ているんですが,決定的な違いは,遊園
れたものになる。極めて徹底した情報の露出管
地はあくまでも遊具で遊んでいただいて,そこ
理をしていらっしゃる。土佐のはりまや橋と札
でお金を落としていただくというビジネスな
幌の時計台と,もう一つは那覇の「守礼の門」。
んですが,テーマパークの本質は物販業なんで
ただ守礼の門は,最近首里城も復元されて,栄
す。ですから,東京ディズニーランドは大規模
えある「三大がっかり」を返上しているかもし
小売店なんです。法人登記もそうなっているそ
れませんが。さて私は,この3つを腐すために
うです。皆さんお気づきだと思うんですが,い
この話を申し上げたのではありません。むしろ
ろんなアトラクションがあって,そのアトラク
逆で,限られた資産を情報価値としては最大化
ションを見たあとには必ず物販コーナーに足
している点が素晴らしいということなんです。
が向くようになっていますよね。そこでの売り
62
上げ,すなわち物販収入が入場料収入よりも大
んな道筋が見えてくるはずなんです。ホスピタ
きくなかったら,テーマパーク経営はうまくい
リティの向上から変な方向に話が向いてしま
かないんです。ですから,テーマに導かれた物
いましたが,古くからある神社・仏閣なんかも,
販業というのがテーマパークの本質といわれ
観光振興という観点からもう一度見直しをす
ています。東京ディズニーランドで,例えばピ
ると,また違う形で見えてくるんじゃないか,
ーターパンのアトラクションを見て,そこを出
と。お叱りを恐れずにもう一つ申し上げますと,
てきた時に,海賊フック船長の義手なんかが売
お寺の本堂というのはバーチャル極楽だとい
られている。そういったグッズ類は,いままさ
ういい方もできるでしょう。居ながらにして極
にアトラクションを体験して出てきたから買
楽浄土を疑似体験できる。TDLのアトラクシ
いたくなるんであって,例えば広島の百貨店の
ョンと一緒で,あれもバーチャル体験です。
おもちゃ売場にあったら,一日何個も売れない
最後に,今日は民間の企業の皆さんばかりな
と思うんです。そこがテーマパークの一つの本
ので,お願いも含めてぜひやっていただきたい
質だと思います。
ことを申し上げます。観光行政はどうしても府
テーマパークに関してさらにいうならば,日
県単位とか市町村単位で,その枠を出ないんで
本には神社・仏閣という優れたテーマパークが
す。例えば,広島市の観光マップを見せてくだ
古来からあるわけです。ここにお寺さんとか神
さいというと,本当に広島市の観光マップなん
社の関係の方がいらっしゃったら誤解のない
です。当たり前なんですけれども,ちょっと市
ように最初に申し上げておきますが,私は非常
内から外れると,もう白地図になってたりする
に優れたシステムをお作りになっているとい
んです。それはユーザーからしますと非常に不
う意味でこれから申し上げるわけです。神社・
具合といいますか,不親切といいますか,公的
仏閣も,先ほど申し上げましたように入場料収
サービスには諸々の制限や制約がありますか
入ではなくて,むしろ物販収入で成り立ってい
ら,それ自体を私はあまりどうこういうつもり
ます。お寺さんや神社に入る時にお金がいるわ
はないんですが,むしろ民間やそれ以外の機関
けじゃなく,おみくじやお守り,お祓いでお金
が機能補完していくということが必要だし,そ
が落ちる仕組みになっている。しかも,年に何
れがまた民間の役割ではないかなと思ってい
回かお参りに行けるように,あるいは人生の節
るんです。行く側からすれば別に「広島市」観
目節目にお参りに行けるように,リピーター確
光に行くわけではなくて,隣接する観光ポイン
保のシステムがちゃんと出来上がっています。
トも回りたいということが,当然あるわけなん
それからもっといえば,西国何ヶ所といった札
です。自分が行く側に立てばわかる話なんです
所巡りがありますが,これなんか,いうなれば
が,そういう意味でとかく縦割りになりがちな
スタンプラリーですね。重ねて申し上げますが,
観光行政というものに横串を通して,いろいろ
私は非常に完成された優れたシステムだとい
提言をし,活動もしていただけたら,と。例え
うことが申し上げたくてお話ししているんで
ば,東北の三大祭や四大祭ですが,あれももと
す。限られたマーケットを最大化し,共有する
もと別個のものだったのを一緒にしたんです。
ための仕組みができているわけなんです。コン
そうすることによって個々の積み上げよりも
ベンションとかテーマパークというと,なんと
2.5 倍にお客さんが増えたと聞きます。そうい
なく飛びつきがちになりますが,宴会という優
う契機は,むしろ民間からお声を上げてやって
れたコンベンションシステムが日本には昔か
いただいた方が横串が通しやすいんじゃない
らありますし,もともとある資産をどう見直し
かなというところもあります。大規模なデステ
て組み立てるかという試みの中で,もっといろ
ィネーション整備や観光資源開発は,こういう
63
時代なんで,なかなか前には進みにくいと思い
ます。既存の観光資源をスポットの当て方で新
しくし,あるものをうまくつなげて総合力とし
て強めていく。観光コースにしても,関西で外
国からの観光客というと,関空から入って関空
から出るイメージで皆さん議論されがちなん
です。ところが外国人観光客からすれば,別に
関空から入って関空から出たいわけではない
んです。例えば我々がヨーロッパを旅行する時
に,ヒースローから入って,ヨーロッパを回っ
た後にまたヒースローに帰って来なさいとい
われると,非常に束縛感が大きいです。むしろ
ヒースローから入って,効率的に回ってダ・ビ
ンチ空港から帰るという方が,はるかに観光商
品としてのチャームが高まります。広島空港に
入って広島空港から出るんではなくて,広島空
港から入って岡山から出ていただいてもいい
と思うんです。そういった広域的な,しかも横
断的な仕掛けというのは,民間から提言,活動
していける話じゃないかと思うので,是非そう
いったことも念頭においていただいて,今後と
も研究会をお続けいただければと念願してお
ります。
本日はつたない話に最後までおつきあいい
ただき,ありがとうございました。ご清聴に感
謝申し上げます。
64
3.都道府県の好印象度と訪問意向に関する調査
1.「都道府県の好印象度と九州各県のイメージに関する調査」((株)電通九州)
・
・
・
・
調査地域
調査対象者
調査方法
調査期間
:
:
:
:
全国
20 歳以上の男女個人 4000 サンプル
インターネット調査
2003 年 10 月 8 日∼9 日
好印象度ランキング(n=4000)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
26
28
29
30
30
32
33
34
35
36
37
37
39
40
40
42
43
44
45
46
47
北海道
沖縄
京都
東京
長野
神奈川
大阪
福岡
兵庫
静岡
宮城
長崎
奈良
石川
鹿児島
熊本
千葉
愛知
岡山
三重
大分
広島
高知
新潟
富山
岐阜
宮崎
和歌山
岩手
福島
山梨
青森
愛媛
山口
秋田
福井
山形
滋賀
島根
群馬
香川
埼玉
栃木
茨城
鳥取
佐賀
徳島
訪問意向ランキング(n=4000)
人数(人) 割合(%)
1439
36.0
1017
25.4
879
22.0
485
12.1
395
9.9
359
9.0
282
7.1
254
6.4
245
6.1
205
5.1
162
4.1
136
3.4
112
2.8
111
2.8
105
2.6
97
2.4
95
2.4
91
2.3
85
2.1
81
2.0
78
2.0
77
1.9
75
1.9
71
1.8
68
1.7
67
1.7
67
1.7
61
1.5
60
1.5
59
1.5
59
1.5
58
1.5
56
1.4
48
1.2
47
1.2
45
1.1
43
1.1
43
1.1
42
1.1
41
1.0
41
1.0
38
1.0
36
0.9
25
0.6
21
0.5
20
0.5
19
0.5
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
15
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
29
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
41
43
44
45
46
47
北海道
沖縄
京都
東京
長崎
鹿児島
青森
大阪
長野
高知
福岡
奈良
秋田
宮崎
宮城
石川
神奈川
岩手
広島
熊本
香川
新潟
愛媛
富山
山形
静岡
兵庫
和歌山
鳥取
大分
徳島
千葉
山口
島根
岡山
山梨
岐阜
福島
愛知
佐賀
福井
三重
滋賀
群馬
栃木
埼玉
茨城
人数(人) 割合(%)
2453
61.3
2332
58.3
1251
31.3
790
19.8
758
19.0
725
18.1
655
16.4
653
16.3
632
15.8
605
15.1
588
14.7
537
13.4
488
12.2
457
11.4
447
11.2
447
11.2
428
10.7
396
9.9
381
9.5
369
9.2
361
9.0
356
8.9
354
8.9
348
8.7
347
8.7
342
8.6
338
8.5
329
8.2
307
7.7
307
7.7
303
7.6
301
7.5
274
6.9
251
6.3
248
6.2
238
6.0
234
5.9
227
5.7
220
5.5
200
5.0
194
4.9
194
4.9
184
4.6
173
4.3
126
3.2
102
2.6
99
2.5
(注)・好印象度ランキング…現居住地,または通勤・通学している都道府県を除き,好印象の都道府県を2つずつ選択しても
らった結果を集計。1位から47位までの総計は 200%。
・訪問意向ランキング…47 都道府県の中で,今後訪れてみたい地域を複数回答で選んでもらった結果を集計。
65
2.「全国都道府県における地域魅力要素と地域産品ブランドに関する調査」
((株)電通,(株)電通北海道)
・
・
・
・
調査地域
調査対象者
調査方法
調査期間
:
:
:
:
1都3県(東京,神奈川,千葉,埼玉)
20∼69 歳までの男女個人 520 サンプル
インターネット調査
2003 年 10 月 28 日∼29 日
好印象度ランキング(n=520)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
13
15
15
17
18
18
20
21
21
23
23
23
26
26
26
29
29
31
32
33
33
35
36
36
36
39
39
41
42
42
44
45
46
47
北海道
沖縄
京都
長野
神奈川
東京
静岡
大阪
福岡
兵庫
宮城
長崎
千葉
新潟
石川
奈良
山梨
福島
鹿児島
青森
愛知
高知
山形
広島
熊本
秋田
群馬
宮崎
岩手
富山
大分
岡山
埼玉
岐阜
和歌山
栃木
島根
愛媛
茨城
山口
香川
三重
鳥取
徳島
滋賀
福井
佐賀
訪問意向ランキング(n=520)
人数(人) 割合(%)
349
67.1
245
47.1
215
41.3
117
22.5
116
22.3
84
16.2
82
15.8
77
14.8
73
14.0
49
9.4
48
9.2
38
7.3
37
7.1
37
7.1
36
6.9
36
6.9
34
6.5
33
6.3
33
6.3
30
5.8
25
4.8
25
4.8
23
4.4
23
4.4
23
4.4
22
4.2
22
4.2
22
4.2
21
4.0
21
4.0
19
3.7
18
3.5
17
3.3
17
3.3
15
2.9
14
2.7
14
2.7
14
2.7
13
2.5
13
2.5
12
2.3
8
1.5
8
1.5
7
1.3
5
1.0
4
0.8
1
0.2
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
10
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
24
26
26
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
40
42
43
44
45
46
47
北海道
沖縄
京都
長崎
鹿児島
青森
大阪
奈良
長野
石川
高知
宮崎
福岡
秋田
富山
新潟
愛媛
香川
宮城
兵庫
熊本
岩手
広島
山形
鳥取
山梨
徳島
静岡
大分
福島
和歌山
島根
山口
岡山
福井
岐阜
佐賀
神奈川
群馬
愛知
三重
滋賀
東京
栃木
千葉
茨城
埼玉
人数(人) 割合(%)
394
75.8
354
68.1
243
46.7
148
28.5
145
27.9
127
24.4
122
23.5
119
22.9
118
22.7
109
21.0
109
21.0
108
20.8
103
19.8
102
19.6
96
18.5
89
17.1
88
16.9
87
16.7
80
15.4
77
14.8
76
14.6
74
14.2
71
13.7
69
13.3
69
13.3
63
12.1
63
12.1
61
11.7
60
11.5
59
11.3
58
11.2
57
11.0
53
10.2
50
9.6
49
9.4
48
9.2
47
9.0
45
8.7
40
7.7
37
7.1
37
7.1
36
6.9
33
6.3
29
5.6
28
5.4
18
3.5
15
2.9
(注)・好印象度ランキング…現居住地,または通勤・通学している都道府県を除き,好印象の都道府県を 5 つまで選んでも
らった結果を集計。
・訪問意向ランキング…47 都道府県の中で,今後訪れてみたい地域を複数回答で選んでもらった結果を集計。
なお,好印象度と比べ関東地区の評価が低いのは,1都3県居住者を調査対象としているため注意は必要。
66
広島経済同友会
(委員長)
渡部
正
(副委員長) 市川 順一
鈴木 重次
友則 和寿
七川 研二
葉室
力
波若 清暉
山西 泰明
堀口 勝哉
根葉 博文
徳永
修
赤松 治美
奥田 卓三
(運営委員) 上田 栄三
上野 邦雄
上原 和孝
大方 了介
大旗
健
勝矢
博
桂 眞一郎
久保 一志
北爪 茂紀
佐藤
仁
関根
淳
寒川 起佳
田尾
勝
高見貞四郎
竹内 徳将
田中 常雄
津川 隆洋
内藤 博之
中尾 建三
中間 信一
並木 民夫
西原 克彦
畠山 道雄
林
正史
麓
勉
堀内日出夫
前
泰弘
村上
学
山口
茂
山口
道
山本
健
山本 忠義
渡辺理一郎
藤井 寛也
杉原
毅
蔵田 和雄
※ 調査・分析
地域経済委員会(2004 年度)
中国電力(株) 取締役
市川物産(株) 代表取締役社長
(財)ひろぎん経済研究所 理事長
(株)デオデオ 代表取締役社長
西日本旅客鉄道(株)広島支社 執行役員支社長
(株)電通西日本広島支社 専務取締役支社長
中国電力(株)広島支社 支配人支社長
(株)イズミ 代表取締役社長
堀口海運(株) 代表取締役社長
( 呉 )
(有)友文館 代表取締役
(三原)
尾道冷凍工業(株) 専務取締役
(尾道)
赤新工業(株) 代表取締役社長
(福山)
(株)吉舎鉄工所 代表取締役
(備北)
(株)ポッカコーポレーション中四国支店 支店長
住宅金融公庫中国支店 支店長
(社)中国地方総合研究センター 常務理事
(株)大方工業所 代表取締役
大旗連合建築設計(株) 代表取締役
(株)カツヤ 代表取締役
(株)エネルギア・ライフ&アクセス 取締役社長
広島ガスサービス(株) 代表取締役社長
あいおい損害保険(株)中国営業本部 常務役員本部長
広電不動産(株) 代表取締役社長
日本銀行広島支店 支店長
(株)紀陽 代表取締役社長
(株)原色美術印刷社 代表取締役
広島県信用保証協会 会長
キリン木材(株) 代表取締役社長
章栄不動産(株) 代表取締役
(株)フジ 代表取締役専務
戸田建設(株)広島支店 支店長
(株)中尾鉄工所 代表取締役
中間公認会計士事務所 所長
サッポロビール(株)中四国本部 本部長
(株)山口銀行広島本部 常務取締役本部長
三井住友海上火災保険(株) 執行役員中国本部長
(株)山崎本社 代表取締役社長
(株)竹中工務店広島支店 支店長
中国経済連合会 専務理事
(株)広交本社 代表取締役社長
ニッセイ同和損害保険(株)西中国支店 統括支店長
協和木工(株) 代表取締役社長
パリー理美容(有) 代表取締役
中電技術コンサルタント(株) 専務取締役
(株)ワイテック 代表取締役社長
(株)中国新聞社 論説主幹
(有)藤井鋼産 専務取締役
(三原)
向島ドック(株) 代表取締役
(尾道)
今谷印刷(株) 代表取締役社長
(広島中央)
中国電力(株) 研究開発部門 経済研究センター
Fly UP