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コミュニティ・アライアンス戦略再考

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コミュニティ・アライアンス戦略再考
コミュニティ・アライアンス戦略再考:
日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
佐 々 木 裕 一
1.はじめに
1)が中心と
本稿では,ユーザーの生成したコンテンツ(UGC=User Generated Contents)
なる UGM(User Generated Media)サイトの収益実態や採用収益モデルを記述し,分析す
る。またバリュー・コンパイリングの収益モデル(佐々木・北山,2000)がそれらの中に含
まれるかを考察し,日米 UGM サイトの 2010 年時点でのコミュニティ・アライアンス戦略
の徹底性の差異について述べる。なおここでの UGM にはミクシィやフェイスブックといっ
たソーシャルグラフを基盤とした SNS(Social Networking Service)と,価格 .com やクッ
クパッドや @cosme のような「場」における不特定多数での情報共有からスタートしたサ
イトの双方が含まれる。
筆者は,企業がコミュニティ・アライアンス戦略を採用し,オンライン・コミュニティと
対等な関係を結び,巧みな収益化モデルを構築することで,リナックス開発者コミュニティ
が生み出した情報価値を経済価値へと変換することが可能になったことを示した(佐々木・
北山,2000)
。だがリナックスの事例には大きな特徴,すなわち収益化に有利な条件が存在
した。それはコミュニティの生み出す情報価値には明示的な機能的価値が含まれていた点で
ある。つまりコミュニティの生産物はネットワーク OS であり,これは体系的な知識であり
明示的な価値を持つ。それゆえにリナックス関連企業の収益化が可能となった可能性は高い。
したがって本研究では,それ自身で明示的価値あるいは機能的価値を持つわけではない
UGC が発信される UGM が分析対象となっている。たとえばある商品についての評価情報,
日記,あるいは有名人についてのゴシップ情報などは「断片的な」情報(野口,1974)であ
る。よって任意の個人ないしは集団にとっては価値を持つだろうが,一方でそれについてま
ったく価値を見出さない者も存在する。これらの情報をネット上に発信することは,リナッ
クスのソースコードを書くよりも容易であり,ゆえにその量も近年増えてきたが,価値の特
定が一意には難しい類の情報でもある。にもかかわらず,それらを生み出すコミュニティと
アライアンスすることで関連企業は果たしてその情報価値を経済価値に変換可能なのか,そ
してその具体的方法はどのように変化してきたのか。この実態を記述することが本稿での課
題の 1 つである。
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コミュニティ・アライアンス戦略再考:日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
いま 1 つの課題は,コミュニティ・アライアンス戦略という,こんにち一般化した方策が,
各 UGM においてどれだけ徹底されているかを考察することである。コミュニティ・アライ
アンス戦略の要諦となる収益モデルは前出のバリュー・コンパイリングモデルであったが,
果たしてそれが UGM サイトの採用する収益モデルに含まれるのかを,日米 UGM サイトの
事例を通じて考察する。そして 2010 年時点では,コミュニティ・アライアンス戦略の徹底
ぶりに,両者で差があることを明らかにする。
ではこの後に続く本稿の構成を述べておく。第 2 章では情報の分類とその収益化モデルに
ついて概念レベルで述べる。ついで第 3 章では,第 2 章で見た概念レベルでの収益化モデル
と UGM サイトの実際の収益モデルを対応づけ,実データを見る上での分析視点を提示する。
そして第 4 章で対象サンプルについて触れた後,第 5 章と第 6 章では 2010 年の日米 UGM
サイトの収益実態と収益モデルについて詳述し,第 7 章ではそれらを比較分析する。最後の
第 8 章では以上をまとめ,結論を述べる。
2.理論的背景
2. 1. 野口による情報の分類
情報の収益化について早期に論じたのは野口(1974)である。野口は経済的考察の対象と
なる情報を「直接あるいは間接に個人の効用に影響を与え,かつ,その利用のためになんら
図 1 野口による情報の分類
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コミュニケーション科学(39)
かの資源または労働力の特別の投入が必要とされるような情報」とし,それらを図 1 のよう
に分類した(野口,1974:26)
。
野口の分類軸は大きく 2 つある。一つは不確実性を減らすか/減らさないか,という分類
軸であり,前者に分類されるものを「Shannon の情報」,後者に分類される情報を同一内容
の反復消費にも価値があることから「サービス財的情報」と野口は呼んだ。いま一つの軸は,
前述の「Shannon の情報」を分類するもので,一つの完結した体系を持つ知識か/部分
的・断片的な情報か,という分類軸である。野口は前者を「プログラム情報」,後者を「デ
ータ情報」と呼んだ。
ここから野口の関心は情報が商品として売買可能か,というところに進むが,突き詰める
と,情報を秘匿することやその拡散を防ぐことでその価値を担保すれば,情報は商品として
売買可能であるというのがその結論であった。つまり「情報の希少性」がその経済的価値を
決定する上での中心的概念であった。
2. 2. 情報の収益化 5 モデル
野口の「情報の希少性」という概念を援用しつつ,その価値が一意に特定されにくい「デ
ータ情報」も十分考慮し,また「情報の希少性」のみならずその情報を運ぶ「媒体の希少
性」という概念を取り入れて情報の収益化モデルを整理したのが佐々木・北山(2000)であ
る。そのモデルは 1970 年代とは異なる,一般人における情報生産/情報複製/情報流通の
いずれのコストもが低下した実情が反映されたものでもある。
そのモデルは図 2 のように 5 つに整理された。分類軸は大きく 2 つで,情報の経済価値の
源泉を希少性に求めるか/求めないか,が第 1 の軸。第 2 の軸は,希少性を情報に付与する
のか/メディアに付与するのか,であった(佐々木・北山,2000:147)。以下簡潔に 5 つを
説明する。
「A. 情 報 希 少 性 モ デ ル」で は,情 報 自 身 に 希 少 性 を 付 与 し 課 金 す る。DRM(Digital
Rights Management)技術で権利が守られた電子ファイル形式での音楽販売などがこのモデ
ルに該当する。
「B. 情報周縁希少性モデル」では,情報やサービスの安定的供給など,情報の流通など情
報の周縁に付随する希少価値に対価を求める。オンライン雑誌の定期購読やプログラム情報
であるソフトウェアを貸し出す ASP サービスなどが該当する。
「C. 直接メディアモデル」では,情報を運ぶメディアの限定的・身体的特性などにより,
メディアに対して希少性を付与する。
「A. 情報希少性モデル」を採用せずに,音楽を無料で
配布し,希少な機会であるコンサートで収益をあげたり,音楽を CD にパッケージ化して収
益化したり,ソフトウェア販売後のアフターサービスでの収益をあげたり,回数が限定され
るセミナーへの参加費で収益を上げるなどの手法が該当する。
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コミュニティ・アライアンス戦略再考:日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
図 2 佐々木・北山による情報の収益化 5 モデル
「D. 間接メディアモデル」では当該の価値評価の対象となる情報とは別の情報(ただし
関連した情報)を運ぶメディアの持つ希少性に対価を求め,広告やアフィリエイトのモデル
がこれに該当する。ここで特徴となるのは,このモデルでは情報の発信者に対して報酬を直
接的に支払うことが不可能な点である。これは「D. 間接メディアモデル」が,経済学者が
n 面性市場と呼ぶもので,
「売り手」と「買い手」の 2 集団のみが市場で結び付けられてい
るのではなく,3 つ以上の集団が市場に関与しているからである。この概念は Rochet and
Tirole(2003)
,Eisenmann et al.(2006)など以降,異なる主体を結びつける IT サービスに
おけるプラットフォーム事業者についての研究で使われる重要な概念となったが,広告モデ
ルでは二面性市場が形成されている。
最後に「E. 編集価値モデル」である。
「編集価値」ということばを用いているのは,ある
情報を受け取った人間が別の情報と関連づけ編集することによって,うまく意味を与えられ
たという意味合いからである。つまり「E. 編集価値モデル」は経済価値の源泉を希少性に
求めずに,ある情報の刺激によって人間の内部に生まれる価値に対価を求めるモデルである。
具体的な収益化の方法としては寄付(投げ銭)やパトロナージュといった形が想定されるが,
それらは情報の持つ本来的な価値を収益化しようとする発想に基づくものである。
2. 3. 「編集価値モデル」
+
「直接メディアモデル」=バリュー・コンパイリングモデル
佐々木ら(2000)は,コミュニティ・アライアンス戦略を採用した企業としてレッドハッ
トの収益モデルを分析し,それが「E. 編集価値モデル」
+「C. 直接メディアモデル」である
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ことを示した。
リナックスのカーネルは希少性を持たない誰もが利用可能な財である。したがって,その
希少ではない情報の価値に払われる対価は「E. 編集価値モデル」である。ただしレッドハ
ットは 1999 年の IPO 当時にすでに 200 人ほどの従業員を抱える組織であり,その固定費は
小さくなかった。ゆえにレッドハットは,リナックスカーネルを他の主要ツールと束ね,ま
とまった OS パッケージとして販売するサブスクリプション事業とリナックス OS を導入す
る際のコンサルティングなどのサービス事業を法人に対して大々的に展開した。インストー
ルしやすく安定的な OS パッケージ,信頼でき高い技術力を持つレッドハット社員の提供す
るサービスが希少であることからこれらはいずれも「C. 直接メディアモデル」ということ
になる。つまり大きな固定費を補完するため,個人から寄付を募るような純粋な「E. 編集
価値モデル」ではなく,
「E. 編集価値モデル」を混入させた「E. 編集価値モデル」
+「C. 直
接メディアモデル」を営利企業であるレッドハッドは採用したのである。
佐々木らは,この「E. 編集価値モデル」
+「C. 直接メディアモデル」をバリュー・コンパ
イリングモデルと呼んだが,これはコンピュータの世界で「ソースコードを 0 と 1 のみで表
現されるバイナリーコードに変換する」という意味で使われる「コンパイル」という用語を
「多様なコンテキストを内包する編集価値を,計量可能な一元的な尺度を持つ経済価値へと
変換する」と読み替え,またバイナリーコードを完全にはソースコードに戻せない,すなわ
ち「経済価値によるインセンティブをネットワーク・コミュニティに与えても,必ずしも編
集価値が高まることはないという不可逆性の意味も込めてのものであった。
さらにこの事例で重要だったのは,レッドハットが有力な独立のリナックス開発者に対し
て給与を払う代わりに一定時間を同社のサービス開発に割いてもらう契約を締結したことで
ある。その給与はけして高額ではなく,リナックス開発へ割く時間をいたずらに奪わないよ
う配慮されていたが,これこそがコミュニティとの対等性を示すものであった。このことか
ら経済価値によるインセンティブがまったく無用ではないことがわかる。全てのコミュニテ
ィ関与者に経済的報酬を与えるのではなく,貢献の大きい一部の者に,その活動を推進する
ための必要コストとして,余剰とはならない程度の経済的報酬を還元することはむしろ有用
である。前述の不可逆性はあるものの,その限界を理解し,一部に経済的報酬を与えること
で,レッドハットはコミュニティ・アライアンス戦略の徹底性,すなわちコミュニティとの
対等さを表明し,コミュニティにおいて継続的な情報価値の生産が可能となるよう努めてい
たのである。
3.UGM サイトの収益モデルとバリュー・コンパイリングモデル
ではここからは UGM サイトを対象とし,その収益モデルを記述し,その中にバリュー・
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コミュニティ・アライアンス戦略再考:日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
コンパイリングモデルが含まれるか否かを検討していく。なお本稿の「収益モデル」は,
Rappa(2001)の定義にしたがい,
「企業が価値連鎖の中で自身を特徴的に位置づけること
によって,収益を得る方法」と捉えることにする2)。
表 1 は 2005 年の日本の UGM サイトの集客力と収益,表 2 は同じく採用収益モデルを示
したものである。表 2 の白い丸はそのサイトが採用している収益モデルを,黒い丸はそのサ
イトから最大の収益をもたらす収益モデルを示している。なお表 2 に登場する収益モデルリ
ストは 2010 年に存在したものとなっているため,2005 年の状況を示した表 2 には,1 つの
サイトからも採用されていない収益モデルも存在する。また表の一番右にある「発信者還
元」はサイト運営者が収益を得るものではなく,UGM サイトの重要な資産となる UGC の
発信者に対して報酬が還元される仕組みが導入されているか否かを示している。
以下,表 2 に従い,大分類である「広告・アフィリエイト型」「UGC パッケージ型」
「派
生型」
「ポイント販売と手数料」
「UGC/UGM と直接関係なし」の 5 つを概説し,その後小
分類に該当する収益モデルの詳細説明を行う。
3. 1. UGM サイトの収益モデル枠組
「広告・アフィリエイト型」は UGC が持つ価値ではなくサイトの集客力を基礎として収
益化するモデルである。厳密に言えば UGC に価値があるからこそサイトは集客力を得る。
したがって「広告・アフィリエイト型」の価値の源泉も UGC の価値にあると言える。だが,
UGC と何らかの関係を有するモノやサービスを消費者が購入するという前提がこのモデル
にあること,すなわち二面性市場が成立している点をここでの条件としている。
「UGC パッケージ型」はユーザーの投稿した UGC の持つ価値を何らかの形でパッケージ
化し,明示的価値を付加して収益化するモデルである。
「広告・アフィリエイト型」との 1
つの違いはサイトに集客力がさほどなくても収益化が可能になる点にある。議論になるのは
ここに含まれる「EC」と「実店舗販売」である。というのもこれらは UGC と何らかの関係
を有するモノやサービスを消費者が購入することで,はじめて UGC の価値が収益化される
ものだからである。ただしこの 2 つのモデルでは,UGC を参考にして商品購入をする個人
が UGC への対価もサイト運営者に対して支払っており,広告主が支払っているわけではな
い。つまり二面性市場は成立しておらず,ゆえに「UGC パッケージ型」に分類される。
「派生型」は「UGC パッケージ型」のように UGC の価値を収益化するものではなく,
UGM サイト運営を通じて派生的に考えられた収益モデルである。また「ポイント販売と手
数料」は UGM サイト独自のポイント(擬似通貨)を導入し,これの発行手数料や流通手数
料を得るものである。留意すべきは「通貨」ゆえ,複数の収益モデルでの支払にこれが使わ
れる点である。最後の「UGC/UGM と直接関係なし」は UGM サイト運営とは別事業と考
えれば良い。
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*1 2005 年 3 月から会員登録制度を導入したため小さい数字になっている
*2 goo, Biglobe などパートナーサイトを含む総計
*3 質問と回答の合計投稿件数
*4 ログイン UU 数
*5 「旅行記」数
*6 グリー内および外部ブログの合計
*7 開発子会社含まず,外部監視会社含む
表 1 2005 年 UGM サイト 集客・収益実態
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表 2 2005 年 UGM サイト 採用収益モデル
コミュニティ・アライアンス戦略再考:日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
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3. 2. UGM サイト収益モデルの詳細
UGM サイトの収益モデルの大きな枠組の理解を終えたところで,UGM サイトの収益モ
デル詳細を記述し,それらと情報収益化 5 モデルとの対応を示していく。
3. 2. 1. 広告・アフィリエイト型
広告やアフィリエイトは,時期を問わず,すべての UGM 運営者の頭にまず浮かぶ収益モ
デルであるが,ここでは 7 つに分けた。このうちテキストを含む「バナー広告」は表示回数,
「メール広告」は配信数が重要な基準になる。また「タイアップ広告」は商品情報やその開
発思想などを詳細に紹介したり,表現的にもビジュアルなものを利用した雑誌の記事広告に
近い。その表現力の豊かさから表示回数以上の価値を持つとされ,ブランディング広告とし
て利用されることが多い。ここまでは次の運用型に対して予約型と呼ばれ,事前に広告枠を
購入するものである。
「インプレッション・アドネットワーク」と「PPC(Pay Per Click)広告」の 2 つは運用
型広告(電通,2013)である。運用型広告とは「膨大なデータを処理するアドテクノロジー
を活用したプラットフォームにより,広告の最適化を自動的にもしくは即時的に支援するよ
うな広告手法のこと」だが,このうち表示回数によって価格が決まる広告を配信するものを
「インプレッション・アドネットワーク」
,クリックにより初めて広告主に支払いが生じる広
告を配信するものを「PPC 広告」とした。
「フィーチャーフォン広告」とはフィーチャーフォンに表示される広告を指している。細
かくは表示回数が重要なものとクリックが重要なものとに細分化できるが,ここでは両者を
まとめて「フィーチャーフォン広告」としている。
最後の「アフィリエイト」であるが,これは UGM サイトから別サイトへユーザーが移動
し,資料請求や商品購入した場合に一定比率の金額が UGM サイトに支払われるものである。
成果報酬型という点では「PPC 広告」と同じだが,報酬が広告クリック以上の成果を得た
後に初めて支払われる面から通常の広告とは分けた。なお携帯端末向けの「アフィリエイ
ト」もここに含まれる。
3. 2. 2. UGC パッケージ型
UGC パッケージ型は,主に法人から収益を得るものと,主に個人から収益を得るものと
いう観点から,以下の 12 に分類した。
3. 2. 2. 1. 主に法人から収益を得るもの
「ライセンス」は UGC に書かれた製品アイディアおよびデザイン等の知的所有権をサイ
ト運営者が保有し,同商品の販売金額の一部をライセンスフィーとして得るモデルである。
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これは空想生活に特有のものである。
「UGC 販売」は UGC を他サイトなど第三者に提供するものである。ほとんどの場合は
UGC 単体ではなく,配信先サイトで表示しやすい形態に加工し,安定的に他サイト配信す
るサービスとして月額料金で対価をもらうようになっている。OK ウェブが早い時期から
Q & A コンテンツを「教えて goo」に提供していたものがそれである。
「アクセスログ等データ販売」はユーザーによるアクセスログを第三者に提供するもので
ある。同一セッション中にどの商品が参照されているか,すなわちユーザーから見てどの商
品とどの商品が競合商品になっているかというデータは早い時期から価格 .com によって販
売されていた。ここでは自然言語の UGC ではなく,ユーザーの残したアクセスデータも
UGC であると解釈されている。
4
4
「法人向け分析 ASP」は「アクセスログ等データ販売」の発展形のサービスである。すな
わち UGC の内容やユーザー行動履歴を分析するソフトウェアを ASP として月額などの定額
料金で法人に対して提供するもので,顧客数が多ければ成立するモデルである。後述の「法
人向け ASP」は UGM サイトが利用しているウェブアプリケーションのみを提供するものだ
4
4
が,「法人向け分析 ASP」は UGC のテキストマイニングや先述のアクセスログ等データの
分析を可能にするデータとソフトウェアが一体となったサービスを安定的に提供するもので
ある。
4
4
「調査・コンサルティング」は「法人向け分析 ASP」の機能をよりカスタマイズし,人手
を介して提供するサービスである。具体的には UGM サイトの会員に向けてのアンケート調
査や UGC に対するテキストマイニング,あるいは分析結果に基づく施策の提案作業までを
行なう。UGM サイトの初期(2001 年ごろ)から存在する労働集約的なサービスである。
「実店舗販売支援」とは人気のある UGC やランキング情報を商品陳列方法などとともに
4
4
実店舗に提供し,店舗の販売支援をするものである。
「法人向け分析 ASP」同様,
「調査・
コンサルティング」よりも定型的なサービスであるが,これは法人顧客のマーケティング費
用ではなく,より大きな財布である販売促進費用から収益を得ようという発想から生まれた
ものである。@cosme が早期に採用し,レビュージャパンやクックパッドでも後に採用され
るようになる。
3. 2. 2. 2. 主に個人から収益を得るもの
「定額個人会費」は個人ユーザーの UGM 利用について月額利用料を得るものである。課
金手段が整備された携帯電話端末からのサイト利用が増えるに従い採用サイトが増加し,ま
た PC からのアクセスでも,無料ユーザーでは享受できない高度な検索サービスなどの利用
について対価を得るケースが増えていった。
「出版」は UGC を紙の書籍としてパッケージ化し販売するものである。はてなが手がけ
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るような「はてなダイアリー」への投稿を特定個人にカスタマイズして販売するタイプとク
ックパッドのように人気のレシピを『100 万人が選んだ大絶賛おかず』という既製品として
広い層に販売するタイプがある。
「EC」と「実店舗販売」の 2 つは UGM サイト運営者が自ら商品販売を実施し,UGC の
効果で商品販売量を嵩上げしようというモデルである。これは販売そのものの市場に UGM
サイトが乗り出すものであるから,うまく行けば収益は大幅に増加する。ただし商品販売チ
ャネルが EC,実店舗のいずれであっても薄利多売の小売業なので収益性では劣る。
「イベント」は期間限定で UGC の売買や会員同士の交流する物理的な場を提供するもの
で,入場料や出店料が収益になる。10 年には「ニコニコ動画」と「pixiv」で採用されるよ
うになった。
「会員間手数料」は 10 年の「ミクシィ年賀状」のみが該当する。これは会員住所をミクシ
ィが管理し,年賀状を送りたい相手として指定されたユーザーが年賀状の受け取りを承認し
た場合に紙の年賀状が送られるサービスで,ミクシィは住所提供の手数料を得る。
3. 2. 3. 派生型
「法人向け ASP」とは UGM サイトで利用されているウェブアプリケーションと同じもの
あるいは類似のものを法人向けに販売するものであり,またその導入時のコンサルティング
サービスもここに含む。広告市場が未整備だった 00 年代初頭には採用する UGM サイトの
多い収益モデルであった。
「UGM サイトコンサルティング」は主として大手企業が UGM サイトを運営する際に留
意する点をコンサルティングするもので,サイト構築に関連したコンサルティングではなく
サイト運営上のノウハウやどのようなデータをマーケティング上活用すべきかといったノウ
ハウの伝授を指す。
「都度課金バーチャルグッズ」は 07 年後半以降,莫大な収益を生むようになったものであ
る。「定額個人会費」との大きな違いは「都度」という点にある。
「都度課金バーチャルグッ
ズ」では,断片的な情報である UGC ではなく,野口(1974)の言うところのサービス財的
情報と認識されたバーチャルグッズに価値を見出した個人が対価を支払う。その製作費と複
製費が低いため,いくつかの企業は非常に高い収益率を誇るようになった。
「SAP 決済手数料」は「都度課金バーチャルグッズ」からはさらに派生した収益モデルで,
大きな集客力を得たサービスが自らプラットフォームとなり,ソーシャルアプリケーション
の提供者にマーケティングや流通経路,決済などの仕組みを提供し手数料を得るものである。
表中ではグリーとミクシィのみが採用している。
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3. 2. 4. ポイント販売と手数料
「ポイント販売と手数料」は,サイト独自のポイント(擬似通貨)を販売し,発行手数料
ないしはポイントが流通するたびに手数料を得るものである。対象サイトの中では,人力検
索はてなでユーザーが質問時に購入するものとして同社によって導入され(2001),後に価
値ある UGC 投稿者に対して,はてなサービス内で「投げ銭」としてポイントを渡せるよう
にもなった(2004)
。この場合,ポイントは UGC の価値への支払いに,すなわち「UGC パ
ッケージ型」の収益モデルにおいて使われている。
ただしに後には,グリーやミクシィなどのバーチャルグッズ購入時に事前に購入したポイ
ントで支払うという形態が広く普及した。この場合のポイントは「派生型」収益モデルと連
動したもので,支払われるポイントは UGC の持つ価値への対価とはなっていない。
ポイント(擬似通貨)自身は汎用性ある支払手段であるため,何がポイントの対価になっ
ているかを個別に見ていく必要がある。表では,UGM サイトがポイントの発行あるいは流
通の手数料を得ていれば,当該サイトが「ポイント販売と手数料」の収益モデルを採用して
いるとし,逆にポイントからの手数料収入がなければ,ポイントによる支払いが可能な収益
モデルのみに白い丸を付している。
3. 2. 5. UGC/UGM と直接関係なし
最 後 の 3 つ は UGC や UGM 運 営 と は 直 接 関 係 の な い 収 益 モ デ ル で,表 の 左 に あ る
「UGM 関連事業」売上から除外されるものである。
「受託システム開発」は情報システム開発を受託型で主として法人に提供するもの。
「受託
制作・プランニング」は広告等の制作物や製品デザイン,マーケティングコンサルティング
などを受託型で主として法人に提供するものである。
「パッケージアプリ開発」は 10 年ごろから採用企業が登場するが,これはミクシィ,グリ
ー,モバゲー,フェイスブックなどで提供されるゲーム等アプリの開発,あるいは iPhone
やアンドロイド OS 搭載のスマートフォンなどへ提供されるアプリの開発を指す。なお自社
UGM サイト利用のためのアプリ提供は UGM 事業と関連するためここには含まれない。
3. 3. 具体的収益モデルと概念との対応,およびバリュー・コンパイリングモデルの有無
3. 3. 1. UGM サイトの収益モデルと情報の収益化 5 モデルとの対応
ではバリュー・コンパイリングモデルの有無の検討へと進むために,UGM サイトの具体
的な収益モデルと情報の収益化 5 モデルとの対応を確認する。
「広告・アフィリエイト型」は UGC とは別の情報を運ぶメディアの持つ希少性に対価を
求めるモデルであるから,すべて「D. 間接メディアモデル」となる。繰り返しになるが,
二面性市場が成立している点に特徴がある。
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「派生型」のうち「A. 情報希少性モデル」は「都度課金バーチャルグッズ」である。ただ
しこれは UGC ではなく,サービス財的情報を販売するものである。
「B. 情報周縁希少性モ
デル」に該当するのがバーチャルグッズを安定的に供給するサービスから対価を得る「SAP
決済手数料」
,それにプログラム情報を安定的に供給する「法人向け ASP」である。また
「UGM サイトコンサルティング」は希少な社員がサービスを提供する「C. 直接メディアモ
デル」である。
「派生型」ゆえ,いずれも UGC の持つ価値とは異なるものがその源泉にな
っていることが改めて確認できる。
では「UGC パッケージ型」に含まれるものを見てみよう。
「A. 情報希少性モデル」にあ
た る の は「ラ イ セ ン ス」
,
「UGC 販 売」
,
「ア ク セ ス ロ グ 等 デ ー タ 販 売」で あ る。た だ し
「UGC 販売」については,他サイトへ安定的に配信するサービスとして対価を得るケースが
多く,その場合は「B. 情報周縁希少性モデル」となる。その「B. 情報周縁希少性モデル」
には前述の「UGC 販売」の他,
「法人向け分析 ASP」
,それと個人が安定的なソフトウェア
や特定機能の利用を期待する「定額個人会費」が該当する。
数で最多なのが「C. 直接メディアモデル」に分類されるものである。分析・提案能力を
持つ社員の希少性に依拠する「調査・コンサルティング」
,UGM 運営企業の持つ希少なノ
ウハウに依拠する「実店舗販売支援」
,そして紙メディアに UGC を載せた「出版」が該当
する。また「EC」と「実店舗販売」も個人が UGC を参照しつつ関連商品の購入が可能な希
少な場を提供することからここに分類され,これは UGC そのものを購入できたり,会員同
士が交流できる希少な場を提供する「イベント」や「会員間手数料」にも当てはまる。
このように見てくると,UGM サイトの収益モデルには,寄付に代表される純粋な「E. 編
集価値モデル」は含まれていないことがわかる。であるならば,次に確認すべきはレッドハ
ットと同様の「E. 編集価値モデル」+「C. 直接メディアモデル」のようなバリュー・コン
パイリングモデルが,ここで挙げた UGM サイトの UGC パッケージ型の収益モデル中に存
在するかである。
3. 3. 2. UGM サイトにおけるバリュー・コンパイリングモデルの有無とコミュニティと
の対等性
レッドハットが巧みな収益モデルを採用したことは既述のとおりだが,同社が「E. 編集
価値モデル」の要素を収益モデルに混入させたのは,リナックスが誰にも利用可能な希少性
を持たない情報財であったからである。もしそれが希少性を持てば,そして資本の論理でそ
の財が生産可能なものであれば,彼らはコミュニティを買収するという選択肢を持ち得たは
ずである。つまり情報に希少性のないことが,意思決定を費用と便益の問題に帰着させ,限
定的ではあっても合理的に判断する企業組織(Simon,1976=1989)をして「E. 編集価値
モデル」を採用させたと言える3)。
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コミュニティ・アライアンス戦略再考:日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
ところが意思決定者がより不合理である個人の場合は,仮に情報が希少性を持っていても
(UGM サイトの場合,通常 UGC の商用利用権はサイト運営者に帰属しており,UGC はそ
の意味で希少性を持つ)
,希少性とは関係のない情報の価値,すなわち編集価値に対する対
価が支払われる場合がある。
たとえば「定額個人会費」の場合,安定的に高度な検索機能を利用するために毎月料金を
支払うというよりも,UGC が生産される場を運営してくれている企業に対して寄付的にそ
れを支払っているという個人も存在するだろう。その場合「定額個人会費」は「E. 編集価
値モデル」+
「B. 情報周縁希少性モデル」の収益モデルとして解釈可能である。
また「ポイント販売と手数料」によって,ポイントが価値ある UGC 投稿者へとその閲覧
者から渡る場合もあるし,自分のお気に入りのコンテンツを創出した会員の作品を購入する
ために「イベント」への入場料を支払うという個人も存在するだろう。この時のポイント授
与や作品購入は,支払った個人から見て編集価値を感じる情報を引き続き創造して欲しいと
いう寄付的な要素を持つ。したがって,ここでの「ポイント販売と手数料」は「E. 編集価
値モデル」
+
「B. 情報周縁希少性モデル」
,「イベント」は「E. 編集価値モデル」
+「C. 直接
メディアモデル」として解釈可能である。このように,少なくとも個人による支払の理由は
企業によるそれよりも多様で,時に不合理である。だが不合理であるがゆえに情報の持つ編
集価値が重んじられる。つまりバリュー・コンパイリングモデルは UGC サイトの収益モデ
ル中に含まれることになる。
であるならば,議論を再び戻し,
「法人向け分析 ASP」の一部には,UGC に編集価値を感
じる法人がおり,それゆえ UGM 企業に対価を払っているケースが想定されるという立論も
可能であろう。つまり希少性を有していても UGC の持つ編集価値に対価を払う法人は存在
し,その場合,
「法人向け分析 ASP」と,先ほどの例に挙げた「定額個人会費」
「ポイント
販売と手数料」「イベント」には何ら差がないという議論である。
この点についての筆者の考えは,法人企業が UGC に編集価値を感じているケースも個人
と同様に存在するというものであるが,この見解は,UGM サイトの収益モデル中にバリュ
ー・コンパイリングモデルが含まれているというここでの結論を覆すものではない。
さらに,その上で,ここで強く主張したいのは,UGC パッケージ型の収益モデルによっ
て,UGM サイトが個人から収益を得ている場合に限り,UGM サイト運営者をして情報生
産者に報酬が還元されることを考えせしめるようになる,という点である。これは UGC 生
4
4
4
4
4
4
産者であり,サイト運営の重要な資産を投稿してくれる個人からも収益を得てしまっている
という事実への配慮ゆえで,
「法人向け分析 ASP」のような法人から収益を得る UGC パッ
ケージ型の収益モデルによってでは,運営者はこのように考えるには至らない。別言すれば,
コミュニティとの対等性に UGM サイト運営者が思いをめぐらせるためには,UGC パッケ
ージ型の収益モデルによって個人から収益を上げていることが 1 つのメルクマールとなるの
16
― ―
コミュニケーション科学(39)
である。
たとえばクックパッド創業者の佐野陽光は 2010 年にこう語っている。
定額個人会費のビジネスが自社の売上で最大となったのは嬉しい限りです。一度泣く
泣くやめたこともあるわけですから。そもそも生活に密着したサービスを提供して,コ
インで払えるような金額でユーザー課金をやりたいと言ってきましたから本当に嬉しい
です。(中略)
ただ今はレシピを書いてくれる人からもお金をもらうだけの状態なので,理想的には
自分がお世話になっているレシピを書いてくれた人に,読んでいるだけの会員からお金
が還元されるモデルを導入したいのです。必ずしも良質ではないレシピをお金目当てで
量産するケースが出てこないようにするなどのルールづくりが難しく,まだそこには行
けていない状況ですが,少しずつ進めていきたいと考えています。(佐野陽光:2010 年
5 月 27 日)
またサイト運営を通じて実感したイラストをめぐる文化を念頭に,ピクシブ代表取締役社
長の片桐孝憲もかく語っている。
サイト運営を通じてイラストをめぐる文化を感じ,そういう文化が生まれる場をわれ
われは提供しているという自覚が強く出てきました。それでお金のもらい方も(法人か
らの)広告偏重ではだめで,ユーザー側からももらうようにしたほうが良いと考えるよ
うになりました。それによってピクシブを支えてくれるユーザーと真剣に向き合うとい
う発想です。
そのひとつの形がイベントでした。これはユーザー同士が出会い,場合によっては取
引も発生し,さらにピクシブへの投稿やサイトでのコミュニケーションが活性化するの
で意味のあるものです。ただし年に数回しかできません。そこでピクシブが主力サービ
スにしていくべきは CtoC(Consumer to Consumer)のマーケットプレイスだろうと考
えるようになりました。これは日常的にイベントが行われているようなものです。ユー
ザー同士がイラストの売り買いを出来る仕組みで,これによってイラストで生計を立て
られる人が増えれば良いし,少なくともユーザーの気持ちの部分のいくらかを金銭的に
やりとりできれば良いと考えるようになりました。
(片桐孝憲:2010 年 3 月 1 日)
以上は,「UGC パッケージ型」の収益モデルによって個人から収益を得ている UGM サイ
トにおいて,バリュー・コンパイリングモデルの採用が意識され,さらに UGC 生産者への
報酬還元の検討が行われるようになっている事例である4)。
17
― ―
コミュニティ・アライアンス戦略再考:日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
つまりコミュニティ・アライアンス戦略の徹底性を見る上では,レッドハットのように情
報生産への貢献者の一部に経済的報酬が還元されているか否かというわかりやすい事実はも
ちろん,不合理な個人から収益を得る「UGC パッケージ型」収益モデルが,当該 UGM サ
イトにおいて採用されているか否かという分析視点も持ちあわせておかねばならないのであ
る。
4.対象サンプルとデータ
分析視点を得たところで,2010 年の日米 UGM サイトの収益実態と採用収益モデルのデ
ータを見てゆく作業へと移行しよう。データは表 3 から表 5 に日本の UGM サイトについて
のものを,表 6 と表 7 に米国の UGM サイトについてのものをまとめた。
2010 年の日本については,19 サイト(集客等のデータについては「みんなの就職」も加
えた 20 サイト)が対象となったが,これは本研究開始当初の 2001 年に,大きな集客力を持
つ 16 の UGM サイトを選定し,継続観察を第一義にいくつかの新規開設サイトを加えてい
った結果である5)。一方,米国については 6 サイトを対象としたが,これは 2 次資料の入手
が容易な公開企業(2012 年までの)を中心に選定した。
日本の UGM サイトについてのデータはインタビューを中心に集めた。これは 2001 年に
公開企業はゼロで,また研究の関心は UGM サイトが時間とともにどう収益モデルを変えて
いくのかにあり,かつ収益モデルについての運営者の意図についても把握したかったためで
ある6)。なおデータには多くの推定値が含まれていることもここで断っておく。米国の
UGM サイトについては 2 次資料を中心にデータを収集し,不明点などは IR 部門へのメー
ルと電話による照会を行い,補足した。
5.2010 年の日本の UGM サイト収益分析
5. 1. 売上規模と収支,運営人数,1 人あたり月商
表 4 から,対象 20 サイトを運営するすべての企業が UGM 関連事業からの収益を得てい
ることがわかる。その規模はレストランガイドの 1200 万円からグリーの 352 億円の間に収
まっており,05 年のレストランガイドの 24 万円から価格 .com の 21 億円までという状況か
ら大きく伸びている。05 年の対象サイトとの重複が 15 あるが,そのすべてが 05 年よりも
収益を伸ばしており,新たに対象に加えた 05 年以降に誕生した 5 サイトも収益を発生させ
たので,全 20 サイトが 5 年間で増収を果たした。
年商で最大は 352 億円(6 月期)のグリーで,表中にはないが,10 年にはほぼ同業態とな
った DeNA のモバゲータウン事業の年商 327 億円(3 月期)と双璧をなした。これに続くの
18
― ―
*1 有料会員数
*2 パートナーサイトを含む総計
*3 パートナーサイトも含めた Q と A の合計件数
*4 PC サイトのみ
*5 PC とモバイルの単純合計
*6 「旅行記」数
*7 ㈱ループス・コミュニケーションズ齋藤徹氏ブログより UU 数を逆算 http://techwave.jp/archives/51593418.html なお素データはネットレイティングスとビ
デオリサーチ
*8 ログインユーザー数
*9 ボイス,日記,フォト,さらにコメント,イイネ! ボタンによるフィードバックなどの総計
*10 1 日平均
― サービス提供なし
表 3 2010 年 UGM サイト 集客実態
コミュニケーション科学(39)
19
― ―
*1 開発子会社含まず *2 新規サービス開発も含む
表 4 2010 年 UGM サイト 収益実態
コミュニティ・アライアンス戦略再考:日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
20
― ―
コミュニケーション科学(39)
が 120 億円(3 月期)のミクシィで,107 億円(3 月期)の価格 .com までが年商 100 億円を
超えた。以下 63 億円(9 月期)のニコニコ動画,32 億円(7 月期)の @cosme,22 億円(4
月期)のクックパッドとなった。逆に年商が 1 億円未満のサイトは,収益の小さい方からレ
ストランガイド(1200 万円)
,フォト蔵(4000 万円)
,newsing(4300 万円)
,レビュージャ
パン(9200 万円)であった。
05 年からの年商増加額は,グリーとミクシィの 10 年年商とほぼ一致し,それぞれが 1 位
と 2 位を占めた。つまりこの 5 年間の収益面での成長牽引役は 00 年までに開設された老舗
UGM サイトから 04 年に開設された SNS サイトへと移った。
以下価格 .com の 85 億円,@cosme の 22 億円,クックパッドの 21 億円という年商増加額
の並びは 10 年の年商順位と同じである。ちなみに 5 年間での年商増加額の中央値は 6 億円
で,これははてなのものである。その結果,はてなの年商は 7 億 4000 万円(12 月期)とな
ったが,10 年においても単独の UGM サイトで年商 10 億円を超えるのは容易ではないこと
がわかる。ただし株式上場を目指さず,3 億円程度の年商で一定の利益(営業利益率 15∼20
%)を出すことは 05 年よりも容易となっている。
収支的には 20 サイト中 18 サイトが黒字化し,05 年の 19 サイト中 14 サイトが黒字化と
いう状況よりもやや改善した程度という見方ができるだろう。つまり「チープレボリューシ
ョン」によってコスト構造が 05 年前後に大幅に改善された UGM サイトが,主に広告によ
って収益を伸ばし,中には大幅な増収により極めて高収益な事業構造を創り出したものもあ
る,というのが 05 年から 10 年までだと言えよう。
また収益増に応じて,UGM 関連事業担当者数も大きく増加した。50 名以上となったのが,
多い順に,グリー(421 名)
,ミクシィ(320 名)
,ニコニコ動画(275 名),@cosme(192
名),価格 .com(135 名)
,クックパッド(90 名),OK ウェブ(71 名),はてな(60 名)で,
05 年の @cosme(102 名)
,価格 .com(75 名)
,OK ウェブ(55 名)の 3 サイトのみという
状況とは大きく異なっている。
1 人あたり月商では 1170 万円を超えるグリーが他を圧倒している。05 年に 360 万円で首
位だった価格 .com が 725 万円で 2 位となり,続いてミクシィの 384 万円,食べログの 350
万円となった。20 サイトの中央値は 165 万円のウィメンズパーク,151 万円の @cosme の
中間となるので,200 万円を超えるフォト蔵,レビュージャパン,ニコニコ動画などのこの
指標は悪くない。なおここにフォト蔵やレビュージャパンといった集客力の大きくないサイ
トが入ってくるのは運営人数の少なさゆえである。また 200 万円超のニコニコ動画が 10 年
1―3 月期で初めて四半期の黒字化を果たしたことから動画配信のためのシステム運用コスト
の大きさが見えてくる。
なお 1 人あたり月商 94 万円の関心空間が「限りなくゼロに近い赤字」であることを踏ま
えると,この数値の損益分岐ラインは 80 万円から 100 万円あたりにあると考えられる。こ
21
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コミュニティ・アライアンス戦略再考:日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
れは 107 万円の newsing,112 万円のベビカム,119 万円のフォートラベルのいずれもが黒
字でありながら,営業利益率は「10% 程度」「10% 未満」と発言していることからも妥当だ
と思われる。規模が大きく成長したサイトがここでは多く対象となっているので,05 年の
60 万円から 70 万円という数字に比べると,さすがに 20 万円程度上昇している。その中で,
1 人あたり月商 113 万円のはてなは,この金額でありながらエンジニアの一定割合が新規サ
ービス開発に投入されており,動画を扱うニコニコ動画とは逆に人件費を除いたシステム関
連コストの小さい様子が窺える。
5. 2. 採用された収益モデル
5. 2. 1. 全体像
表 5 のとおり,20 サイトで採用された収益モデル数は,レストランガイドと e マンショ
ンの 3 から @cosme の 12 の間に収まり,その平均は 7.9 となった。これらは 05 年(表 2)
の全 19 サイトにおける採用数 1 から 10,平均 4.4 に比べていずれも上昇している。また 20
サイトのうち 05 年にも調査対象であった 15 サイトに限った数値は,採用数は同じく 3 から
12 に収まり,平均は 7.3 となった。
興味深いのは,この 5 年間を生き抜いた 15 サイトに限った平均値よりも全体の平均値の
方が大きい事実である。これは新たに 10 年に調査対象に加えた 5 サイトのうち,食べログ,
ニコニコ動画,pixiv の 3 サイトが非常に大きな集客力を持つようになった成功事例で,採
用収益モデル数が多いからとも解釈できる。だが残りの 2 サイトであるフォト蔵と newsing
が件の 3 サイトに比べて採用収益モデル数で極端に少ないかといえばそうでもなく,ともに
全体平均をわずかに下回る 7 となっている。したがって歴史の浅いサイトの方の採用収益モ
デル数が多いという事実は,ネット広告事業環境が成熟し,PPC 広告やフィーチャーフォ
ン広告へと商品の幅も広がり,それを UGM サイトが開設から間がなくとも容易に採用でき
る環境が整ったからと理解すべきであろう。つまり 10 年は,UGM サイトにとっては一定
の集客力を獲得することだけに注力すればよいという環境になっていたことを意味している。
5. 2. 2. 多くのサイトに採用された収益モデルと中心的収益モデル
次に多くのサイトで採用されていた収益モデルという観点で表 5 を見てみよう。最も多く
が採用する収益モデルは広告で,20 サイトのすべてが採用している。これは 05 年の 19 サ
イト中 15 サイトが採用していた状況以上である。広告をブレークダウンして見ても,メデ
ィアビジネスとして未成熟なフィーチャーフォン広告が 12 サイトとやや少なく,12 年以降
普及するインプレッション・アドネットワークが 3 サイトと少ないものの,それ以外のもの
は 16 サイト以上で採用されている。05 年に広告モデルを採用していなかったレストランガ
イドがアドネットワークのバナー広告と PPC 広告を,また集客力にほぼ依存しない収益モ
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表 5 2010 年 UGM サイト 採用収益モデル
コミュニケーション科学(39)
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コミュニティ・アライアンス戦略再考:日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
デルを中心に据える空想生活までもが PPC 広告を採用したように,小さな収益ではあるも
のの人手をほとんどかけずにそれが上乗せできる面から,広告が 05 年以上に必須で手軽な
収益モデルになってきたと見ることができる。
ただし広告をブレークダウンした単位で見た場合に,広告を主力の収益モデルに据えてい
るサイトは,10 年では 20 サイト中 6 社にとどまり,19 サイト中 10 サイトという 05 年の状
況から幾分変化を見せている。興味深いので,05 年に広告を主力収益モデルとしていた 10
サイトのうち,10 年にもデータが捕捉できた 9 サイトについてここでは具体的に記述して
みよう。
05 年にバナー広告を主力としていた 3 サイトのうち,クックパッドは「定額個人会費」
,
グリーは「都度課金バーチャルグッズ」といずれも個人から対価をもらう収益モデルを主力
とするようになった。翻ってミクシィは 10 年には PC バナー広告からフィーチャーフォン
広告へと主力のモデルを変化させたが,依然インプレッション型の広告が主力である。
続いてタイアップ広告を主力としていた 3 サイトについて見ると,@cosme は「@cosme
ストア」という直営店運営による「実店舗販売」
,09 年にブックオフの 100% 子会社となっ
たレビュージャパンは書評を POP として実店舗へ販売する「UGC 販売」といずれも実店舗
と結びついた収益モデルを主力に据えるようになった。一方でベネッセコーポレーションが
運営し,「既存事業への貢献インフラとしての性格が強くなった」ウィメンズパークは依然
としてタイアップ広告が主力である。
また 05 年に PPC 広告を主力としていた 3 サイトについては,5 年間でほとんど集客力を
伸ばせなかった関心空間が「法人向け ASP」を主力とすることを余儀なくされた一方で,e
マンションとはてなの 2 サイトは,成果報酬型という点では同類だが,より販売への貢献が
問われるアフィリエイトを主力収益モデルとするようになった。
9 サンプルではあるが,この「個人課金」
「実店舗連動」
「広告から販売促進へ」という
UGM サイトの収益モデルのポートフォリオ変更は象徴的である。筆者なりに解釈すれば,
それはインターネット利用人口とサイトでの利用時間の伸びの鈍化,そして成熟しつつあっ
たディスプレイ広告市場という環境変化に対応し,新機軸を打ち出した状況である。これは,
サイト運営のシステムコストが大幅に低下し,広告収益だけでサイトの継続的運営が可能に
なり,多くの経営者が安
感を味わっていた 05 年の状況とは大いに異なる。収益的な成長
余力とユーザーを惹きつけるサービス開発への投資余力を示し,後から生まれるサイトも含
めた中でのプレゼンス維持が可能であることを示す必要に迫られたのが,10 年という年で
もある。
5. 2. 3. 収益モデルの多角化
順序が前後するが,収益モデルのポートフォリオ変更以前に行われたのが収益モデルの多
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― ―
コミュニケーション科学(39)
角化である。このうち採用サイト数が 7 ないしは 8 と多く,かつ 05 年よりも採用サイト数
が増加したのが「UGC 販売」
「定額個人会費」「出版」
「法人向け ASP」の各収益モデルであ
る。
まず「UGC 販売」であるが,05 年の 19 サイト中 3 サイトから 10 年には 20 サイト中 8
サイトと大幅に採用サイト数が増えた。これは UGC がユーザーを呼ぶ,あるいは販売を促
進するコンテンツとしてその価値を認められるようになったからである。ただしほとんどの
ケースで UGM サイトよりも集客力を持つポータルサイトや ISP へとコンテンツ提供をする
ため,このモデルは大きな収益を生まない。したがってこれを中核モデルとしているのは,
売上規模の小さいレストランガイドと 09 年にブックオフの 100% 子会社となり書評を実店
舗での POP として提供するようになったレビュージャパンのみである。
このような小額の収益上乗せという性格を持つのが「出版」と「法人向け ASP」である。
前者は 05 年の 19 サイト中 5 サイトから 10 年には 20 サイト中 8 サイトと採用サイトが増え
たが,主力の収益モデルとしているサイトは 1 つもない。また後者についても,05 年の 19
サイト中 5 サイトから 10 年には 20 サイト中 8 サイトと採用サイト数が増えたものの,OK
ウェブが提供するヘルプデスク用のアプリケーションと,空想生活が提供する Design To
Order による製品開発支援ソフト以外は大きな収益を生むに至っていない。すなわちこの 5
年のうちに,新たな収益源として自社サイトで利用しているソフトウェアを「法人向け
ASP」として提供し始めたサイトの収益は,すべて小さなものに留まっている。
これに対し,05 年の 19 サイト中 4 サイトから 10 年には 20 サイト中 7 サイトと採用サイ
ト数が増え,中にはそれを主力の収益モデルに据えるサイトも存在するようになったのが
「定額個人会費」である。この要因は携帯電話端末での課金が定着したこと,またフリーミ
アムという原則無料でありながらプレミアムサービスについてはユーザーが利用料を支払う
モデルが PC 向けのサービスでも浸透し始めたことなどがあるだろう。すなわち「ウェブサ
ービスは無料」という常識がしだいに崩れてきたことが影響している。ただしこれを主力の
収益モデルと据えているのは,サービスを極めて高い頻度で利用するユーザーの多いクック
パッドとエンターテインメント性が高く動画提供サービスゆえに回線容量に希少性が存在す
るニコニコ動画のみであり,
「定額個人会費」を中心的な収益モデルに据えることが可能な
サイトには条件があると言える。加えてグリーが「定額個人会費」から都度課金へとメニュ
ーを広げることでより高い収益性を実現したこともここで指摘しておこう。
さらにここで記述が必要なのは,05 年の 19 サイト中 7 サイトから 10 年には 20 サイト中
6 サイトと比率的に減少した「調査・コンサルティング」である。これはベビカムにおいて
相変わらず中核事業となっているが,労働集約的なビジネスゆえに独自性を持ったとしても
3 億円以上の収益を生むのは難しい。このためグリーや空想生活といった,よりスケーラブ
ルな別の収益モデルを中心に据えたプレイヤーはもちろん,@cosme やウィメンズパークで
25
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コミュニティ・アライアンス戦略再考:日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
もその重要度は下がっている。すなわちこの収益モデルは,10 年の UGM サイト運営の歴
史を経て,より効率的な他の収益モデルによって淘汰されつつある。ただし,非常に大きな
集客力を得ることに成功した一部のサイトが,サイトに蓄積されるデータ分析作業を顧客に
4
4
任せ ASP 形式で分析ツールを提供する「法人向け分析 ASP」としてこの「調査・コンサル
ティング」のモデルを発展させる動きも見せている。価格 .com,クックパッド,@cosme
と採用サイト数は 20 社中 3 社と少ないが,13 年以降に一般化していく「ビッグデータ」ビ
ジネスの先駆けである。
5. 3. まとめ
このようにビジネスとしての UGM が試行錯誤され始めてから 10 年以上を経ると,20 ほ
どのサイトを見るだけでもその多様さが理解できる。それでも 10 年の UGM サイトは集客
力と収益モデルの 2 つの観点から 5 つに分けることができるだろう。
(1)一定の集客力を持ち,広告・アフィリエイト中心で収益モデル数が 5 から 7 という
UGM(ウィメンズパーク,フォートラベルなど)
(2)大きな集客力を強みに広告・アフィリエイト以外に収益モデルを多角化し,収益拡大を
目指す UGM(@cosme,グリー,ニコニコ動画など)
(3)集客力が一定程度まで届かずに,収益モデルを多角化し広告収益不足分を補塡する
UGM(ベビカム,関心空間)
(4)人手を介さない PPC 広告などを中心にすえ,収益モデルは少なく低コスト運営を徹底
する UGM(e マンション)
(5)集客力に依存しない独自収益モデルを中心に据える UGM(空想生活,レビュージャパ
ン)
本稿では集客力の大きな UGM を中心に扱っているが,ウェブ上に存在する UGM サイト
全体を見れば,数で最も多いのは(4)だと考えられる。また,仮に時間軸を導入すれば,
(1)は(1)のままで終わるものと(2)に進むものとに分かれるが,10 年のスナップショ
ットを撮れば上述のようになるだろう。
6.2010 年の米国 UGM サイト収益分析
続いて表 6 と表 7 に基づき,米国 UGM サイトの収益実態と採用収益モデルを記述してい
く。
6. 1. フェイスブック(facebook.com:2004 年 2 月サイト開設)
フェイスブックの 10 年年商は,上場準備のための S―1 書類によれば,19 億 7,400 万ドル
26
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コミュニケーション科学(39)
(約 1777 億円,1 ドル=90 円換算以下同様)
,このうち広告からの収益は 18 億 6800 万ドル
と 94.6% を占めた(Facebook,2012)
。広告商品のほとんどが表示回数ベースの料金体系だ
が,一部クリック課金のものも含まれており,キャンペーンと連動したタイアップ広告以外
はフェイスブック自身が広告主に提供する情報システムによって購入可能となっていた。つ
まり採用収益モデルはバナーではなくインプレッション・アドネットワークで,かつこれが
最大の収益源であった。なお広告商品はすべて PC 向けでスマートフォンを含めたモバイル
広告販売は 2012 年に入ってからである。
残りの 5.4% の収入(1 億 600 万ドル=約 95 億円)は,S―1 書類では「その他の収入」に
分類されたが,このうちほとんどは本稿での SAP 決済手数料に該当する。なおここにはフ
ェイスブックアプリとしての認証料収入も含まれており,売上の約 10% はゲーム開発企業
のジンガからであった。他に個人ユーザーからの収益として,フェイスブック・クレジット
の販売(ただし手数料収入はなし)
,e コマースのギフトショップでの販売があり,採用収
益モデル数は 6 であった。
6. 2. ツイッター(twitter.com:2006 年 7 月サイト開設)
ツイッターの 10 年年商は 2820 万ドル(約 25 億円)であった(Twitter,2013)。この段
階では,広告商品はキーワード検索結果の最上位にキーワードと関連するツイートが表示さ
れるプロモーティド広告と「話題のトピック」欄に表示されるプロモーティドトレンドのみ
で,タイムライン上に広告が挿入されるプロモーティド・ツイートの提供開始は 2011 年 8
月であった。いずれも表示回数ベースの商品で,広告主がツイッター社のシステムを利用し
て出稿するのでインプレッション・アドネットワークに分類される。またフェイスブックと
異なりモバイル向けの広告もすでに提供されていた。
もう一つの収益源は検索エンジンサービスにツイートをリアルタイムでインデックス化す
ることを認める契約の販売である。Bloomberg(2009)によれば,Google から年間 1500 万
ドル,Microsoft から年間 1000 万ドルを得ているとのことだったが,上場前の S―1 書類
(Twitter,2013)によって,全社売上に匹敵するこの額はやや過大評価であることが判明し
た。ただし収益モデルとしては同書類に明記されており,本稿ではアクセスログ等データ販
売と UGC 販売の 2 つに分類した。結果,採用収益モデル数は 4 となった。
6. 3. イエルプ(yelp. com:2004 年 1 月サイト開設)
イエルプは飲食店を主たる対象とするユーザーによる評価が集積するサイトであるが,12
年 3 月の上場への準備資料(S―1 書類)によれば,その 10 年年商は 4773 万ドル(約 42 億
9000 万円)であった(Yelp !,2011)
。収益源は「広告」と「その他」で,広告は表示地域の
狭いローカル広告と逆に広いブランド広告に分かれ,前者が 3375 万ドル(71%),後者が
27
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表 7 2010 年米 UGM サイト 採用収益モデル
表 6 2010 年米 UGM サイト 集客・収益実態
コミュニティ・アライアンス戦略再考:日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
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コミュニケーション科学(39)
1204 万ドル(25%)であった。ローカル広告について表示回数で料金の決まるものと検索
連動の PPC 広告があり,一方ブランド広告は自動車や金融,消費財などのグローバル企業
が広告主で,すべてが表示回数によって料金の決まるものであった。外部のインプレッショ
ン・アドネットワークも利用していたが,社員数とその職種から広告代理店経由での広告枠
販売が中心と推測される。なおスマートフォンも含めたモバイル広告の提供は 10 年時点で
は行なっていない。
S―1 書 類 で の「そ の 他」は 192 万 ド ル(4%)ほ ど で そ の 中 身 は 2 つ で あ っ た。1 つ は
Yelp Deals といわれる主にローカル店舗が割引情報をイエルプ会員にメールで配信するシス
テムの利用料である。店舗の売上に対する手数料ではなく,システムを利用した情報配信へ
の対価を得ているため,表 7 では法人向け ASP に分類した。もう 1 つはイエルプを経由し
てオープンテーブルなどのレストラン予約システムを使って予約がなされた場合,その成果
報酬をもらうアフィリエイトで,合計 6 つの収益モデルを採用していた。
6. 4. アンジーズ・リスト(angieslist.com:1999 年サイト開設)
アンジーズ・リストは病院などの医療・健康関連サービス,家屋リフォームや自動車整備
などを主な対象とするユーザーによる評価が集積するサイトである。イエルプと異なる点は
「失敗すると高くつく」サービス事業者を対象としている点,そして会員のみがそのレビュ
ーを閲覧できる点である。つまり検索エンジン結果に同サイトのレビューは現れず,このた
めテレビ広告による会員獲得を狙っている点にも特徴がある。
11 年 11 月の上場への準備資料によれば,その 10 年年商は 5904 万ドル(約 53 億 1000 万
円)であった(Angie s List,2011)
。収益は Membership と Service Provider に分かれ,約
60 万人の個人会員からの収益である前者が 2510 万ドル(43%),一定の基準を満たした登
録事業者向けの広告販売である後者が 3390 万ドル(57%)であった。広告はアンジーズ・
リストのウェブサイト,会員向けの電子メールや紙のアンジーズ・リスト・マガジンに掲載
され,想定配信数や掲載期間による料金体系のものであった。またスマートフォンも含めた
モバイル広告は提供されていなかった。
採用収益モデル数は 4 となり,唯一,UGC パッケージ型のうち個人から収益を上げるモ
デルを採用する UGM サイトであった。
6. 5. トリップアドバイザー(tripadvisor.com:2000 年 11 月サイト開設)
トリップアドバイザーはホテルや観光地に関するユーザーレビューを集積するサイトであ
る。当初は独立事業者であったが,譲渡を重ね 11 年 12 月に旅行予約サイトのエクスペディ
アの子会社として株式公開を果たしている。
その 10 年年商は 4 億 8460 万ドル(約 436 億円)であった(TripAdvisor,2012)。このう
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コミュニティ・アライアンス戦略再考:日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
ち 3 億 8400 万ドル(79%)を占めるのが PPC 広告で,「
(ホテルなどの)値段を調べる」と
いうリンクのクリック時にページ遷移先のホテルなどからの収益が発生するものが典型であ
る。また大型ホテルチェーンや航空会社などのナショナル/グローバルブランドが主に利用
する表示回数によって料金が決まる広告からの収益は 7200 万ドル(15%)で,外部インプ
レッション・アドネットワークも利用していた。加えて額は小さいが,旅行客が旅先で携帯
端末を利用する機会は多いため 10 年中にすでにモバイル端末向け広告展開が始まっていた。
他には宿泊日直前に在庫処分的に販売されるホテルの部屋の成約段階で収益が発生するア
フィリエイト,また外部サイトへのトリップアドバイザーのレビューコンテンツ販売のモデ
ルも採用しており,対象 6 サイト中最大の 8 つの収益モデルを採用する UGM サイトであっ
た。
6. 6. Open Table(opentable.com:1999 年サービス開始)
。
オープンテーブルはレストラン向けに予約システムを提供する企業で,09 年 5 月にナス
ダックに株式公開を果たした。ただし予約したレストランでの食事がなされた数日後に予約
客へレビュー投稿を促す仕組みを 00 年代半ばに整え,一般向けのレビューサイトも持つよ
うになっている。
その 10 年年商は 9900 万ドル(約 89 億 1000 万円)で(OpenTable,2011),予約システ
ムの初期インストール料と予約システムの月額使用料(Subscription:52%,法人向け ASP
に分類),さらに予約システムを通じてユーザーがレストランを訪れた場合に発生する手数
料(Reservation:48%,SAP 決済手数料に分類)がほぼ半々の収益を生んでいた。10 年は
北米市場の Subscription が対前年で 18% 伸び,Reservation はそれを上回る 52% の伸びを
見せたが,これは個人ユーザーによるレビューサイト利用が活発化した結果である。ただし
レビューサイトからの収益としては,地元向けのレストランディレクトリサービスや雑誌・
新聞社などのレストラン紹介ページなどを顧客とするアフィリエイト収入は存在したものの,
最も一般的であるレビューサイトからの広告収入は,サイトが一定の PV を持つにもかかわ
らず存在しなかった。その結果,採用収益モデル数は 3 に留まった。
7.2010 年の UGM サイト日米比較分析
7. 1. 売上規模と収支,1 人あたり月商
ツイッター以外は公開企業を対象としていることもあり,米国 UGM サイトの 2010 年売
上規模は日本の対象企業より大きい。しかし世界規模でアクティブユーザーが 5 億人以上
(2010)おり,年商 1700 億円以上のフェイスブックを別格とすると,トリップアドバイザー
の 436 億円はグリーの 1.2 倍ほどで,他サイトは 25 億∼90 億円の間にある。しかもシステ
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コミュニケーション科学(39)
ム販売が中心のオープンテーブルを除けば上限は 60 億円ほどまで下がる。そしてこの上限
は 107 億円の価格 .com より小さく,10 年にすでに株式公開していたクックパッドの約 3 倍,
12 年に公開するアイスタイル(@cosme)の約 2 倍,ニコニコ動画とほぼ同等である。つま
りさほど大きな数字ではない。
収支については米国ではイエルプとアンジーズ・リスト,それにツイッターが赤字で,こ
の 3 サイトの収益規模を勘案すると,20 サイト中 2 つのみが赤字という日本の状況とは大
きく異なっている。
10∼12 月の四半期収益を 3 で除した数値を 11 月収益として,それに近い時期の社員数か
ら 1 人あたり月商を求めることが可能であるが(表 6)
,小さい方からアンジーズ・リスト
が 92 万円,ツイッターが 97 万円,イエルプが 120 万円であった。日本の UGM サイトでは
この損益分岐ラインは 80∼100 万円であったが,イエルプはそれを上回ったものの赤字であ
った。逆に 1 人あたり月商が大きいのはフェイスブックの約 1030 万円で,これはグリーの
約 1170 万円は下回るものの,価格コムの約 720 万円を上回っている。米国サイトでは,ト
リップアドバイザーの約 350 万円が続くが,これは日本でも高い水準となる。
7. 2. 採用された収益モデル
米国 6 サイトでの採用収益モデル数はオープンテーブルの 3 からトリップアドバイザーの
8 の間に収まり,平均は 5.2 となった。これは日本の 7.9(20 サイト)を下回る。しかもシ
ステム販売が中心的収益モデルでレビューサイトからの収益がアフィリエイトのみというオ
ープンテーブルを除いても,平均は 5.6 にまでしか上昇しない。さらに公開企業を中心とし
た米国サイトに日本の対象サイトを近づけるよう売上規模の大きなものに限ると,日本の
UGM では最低でも 8 つの収益モデルを採用しているのでこの差は逆に開く。したがって採
用収益モデル数では日本の UGM サイトの方が多いと結論づけてよい。
この差をさらに分析すると,まずもって UGC パッケージ型の採用収益モデル数の日米差
が際立つ。日本では UGM パッケージ型の収益モデルを 3 以上持つサイトが 20 のうち 10 あ
るが,米国ではゼロである。日本の場合,クックパッドとニコニコ動画の定額個人会費,
@cosme の実店舗販売といった中心的収益にまで育っている UGM パッケージ型のものが複
数あり,それが日米の UGM サイトの売上規模の差をさほど大きくしていない理由の 1 つで
ある。
さらに興味深いのは,広告・アフィリエイト型の採用収益モデル数についても日本の平均
4.9 に対し,米国は 3.7 で,オープンテーブルを除いても 4.2 にまでしか上昇しない点である。
モバイル広告への取り組みが日本で進んでいる一方,インプレッション・アドネットワーク
については米国の方が積極的に採用されているが,タイアップ広告,メールなどの広告,
PPC 広告が,最低でも 20 サイト中 17 サイトに採用されている日本の事情を鑑みると,米
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コミュニティ・アライアンス戦略再考:日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
国サイトの採用収益モデル数は広告においてもやや少ないと言える。
以上より,広告・アフィリエイト型,UGC パッケージ型ともに日本の UGM サイトの方
が米国のそれよりも採用収益モデル数が多いと結論づけられる。
7. 3. 経営環境面から考えられる日米 UGM サイトにおける採用収益モデル数の差
ではなぜこのように広告・アフィリエイト型,UGC パッケージ型ともに採用収益モデル
数に差が生じているのかを,本論の目的から外れるが,仮説として記しておこう。
まず,広告・アフィリエイト型の採用収益モデル数の少なさの理由であるが,それは米国
UGM サイトには,フェイスブックやツイッターのように自らアドネットワークを提供する
巨大なユーザーベースを持つプレイヤーが存在し,かつそこで提供される広告商品が 10 年
時点で未成熟であったためだろう。このような自社システムを利用すれば広告の販売コスト
が圧縮される。そのうえアドテクノロジーを利用した広告商品市場の伸張余地は大きい。つ
まり今後スケールメリットにより高収益事業となる可能性を十分に秘めている。ゆえに人を
介することで収益性の低くなる他の広告商品を販売するインセンティブはこのようなサイト
では低くなると考えられる。むしろタイアップ広告なども IT を利用してどう収益性を高め
られるかがこのような米国に時折誕生するプラットフォーマーでは長期的には模索されてい
くはずである。
ついで,広告以外の収益モデル開発が米国の UGM サイトで進まない理由であるが,その
1 つとして考えられるのは,米国ではベンチャーキャピタル(VC)の投資規模が大きく,
また資金回収までの期間が長いからである。すなわち,いたずらに収益モデルを増やすこと
なくまずは集客力を高めることに集中し,その後広告事業だけを展開し多額の赤字を垂れ流
さない程度の収益を得れば良いという考え方が浸透しているからである。これは VC による
3 億円以上の投資が皆無で,かつ投資先には短期での黒字化が求められるという 05∼10 年
の日本の状況とは大きく異なる。日本では新興市場上場においても上場時に前期の黒字が条
件になっているが,米国では赤字での上場が可能であることも当然影響しているだろう。
8.結論
本稿では,UGM サイトの収益モデル枠組みを提示し,2010 年のデータに基づき,日米
UGM サイトの収益実態や収益モデルを記述し,また日米の比較分析を行った。その結果,
以下の 3 つの事実が明らかになった。すなわち,
(1)リナックス OS と異なる断片的情報が
生み出される UGM サイトにおいては,日米ともに広告・アフィリエイト型の収益モデルが
基礎になっていること。
(2)広告・アフィリエイト型,UGC パッケージ型のいずれの収益
モデルについても,日本の UGM サイトの方が米国のそれよりも採用数が多いこと。
(3)個
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コミュニケーション科学(39)
人から収益を上げる UGC パッケージ型の採用収益モデル数も日本の UGM サイトの方が多
いこと,である。
そしてこの 3 点目を,第 3 章で論じた,個人の持つ不合理さへと踏み込めている UGM サ
イトとそうでない UGM サイトとの差異に注目すべきという議論と接続すれば,コミュニテ
ィ・アライアンス戦略の徹底性については,総体として日本の UGM サイトの方が米国のそ
れよりも上回っている,ということが導ける。これが本稿の結論となる。
なお筆者のこれまでの研究経験から今後について見通せば,日本の UGM サイトの多角化
した収益モデルと米国 UGM サイトの広告偏重の収益モデルという構図はしばらく続くと考
えられる。だがこの点において注視するべきは,
「(人びとの)情報の共有や消費の方法を書
き換えたい」とし,リナックス開発者コミュニティと同様に,優れた情報生産者を尊敬する
「ハッカーウェイ」を企業文化に持つフェイスブックである(Zuckerberg,2012)。このハ
ッカーウェイは主として優れたプログラムコードを書く社内エンジニアに見られる文化だが,
ザッカーバーグは「私たちは金もうけのためにサービスを作っているのではなく,よいサー
ビスを作るために収益を上げている」とも述べており,ユーザーが発信・共有する情報によ
って,人と人,あるいは人と企業や政府の関係を良好にしたいと考えている。つまり社会的
に意味のある良質な情報がユーザーによって発信・共有されることを願っている。そのよう
なフェイスブックが近い将来,UGC パッケージ型の,それも個人から収益を得る収益モデ
ル(最もインパクトがあるのは定額個人会費)を導入し,フェイスブックに対するコミット
メントの高いユーザーと今よりも真剣に向き合うとすれば,それはコミュニティ・アライア
ンス戦略の徹底性という点からは大きな変化となる。そして,それが利潤と成長を求められ
る公開株式企業として UGM サイトを運営するという現在主流の形態を転換させる契機とな
る可能性もある。
繰り返すと,このシナリオが現実のものとなる確率は,株主に対して意識的な昨今の同社
の行動からは低いと考えられる。だがいずれにせよ,もうしばらく UGM サイトの観察を続
け,UGC 生産の原理7),UGC の価値,そして運営企業の採用収益モデルから導ける,情報
生産者コミュニティと運営企業の対等性といった点について,通時的なまとまった記述を別
の場所で行いたいと筆者は考えている。
謝辞:本稿は東京経済大学の 2011,2012 年度国外研究員として行った研究の一部をまとめ
たものである。ここに記して感謝したい。
注 1)コンテンツと情報とデータは異なる概念である。ただし本論ではその差異を論じることが目的
ではなく収益モデルの記述が中心になるため,実務の場での一般的用法に基づいて各語を用い
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コミュニティ・アライアンス戦略再考:日米 UGM サイトの収益モデルの差異から
る。データ=解釈前の記録,情報=評価・解釈を与えられたデータ,コンテンツ=データと情
報の両方を含みユーザーに提供されるもの,と捉えておけば,論旨を追う上で支障はない。
2)Rappa はこの定義を「収益モデル」ではなく「ビジネスモデル」と呼んでいる。1999 年以降
学術論文誌にも登場することが多くなった「ビジネスモデル」という用語(Osterwalder,
2004)の定義は 2010 年代になっても定まっていない(Al-Debei, 2008 : Lindgardt et al., 2009 :
Osterwalder and Pigneur, 2010 = 2012 など)。だがインターネットビジネスにおいては,その
構成要素である収益モデル(Revenue Model)とその素早い変更が重要であるという見解が広
。
まっている(Lindgardt et al., 2009 : Osterwalder and Pigneur, 2010 = 2012 など)
3)企業組織が意思決定を費用と便益の問題に帰着させることの限界を指摘したものに,今井賢
一・金子郁容(1988)がある。今井らは情報ネットワークの普及により,現場での動的情報の
生成とその裏返しである動的不確実性への対処が企業に求められる時代になり,そのために企
業はネットワーク組織となるべきと主張した。だが現在でも企業の意思決定のほとんどは費用
と便益との比較から行われている。
4)類似のコメントは,@cosme 運営のアイスタイル吉松徹郎 CEO(2010 年 12 月 16 日),ニコニ
コ動画運営のニワンゴ木野瀬友人取締役(2010 年 5 月 31 日)からも聞かれた。このうち後者
は 2013 年 10 月に一般ユーザーに「ユーザーチャンネル」の提供を開始し,個人クリエイター
が他の会員から直接に経済的報酬を得られるようにした。
5)集客力の大きな UGM サイトとして 2001 年の対象に含まれなかったものに 2 ちゃんねるが存
在するが,これは 2001 年に同サイトから取材に応じてもらえなかった事情による。また 2001
年以降に閉鎖(サービス終了)した UGM サイトも複数存在する。
6)本稿では,紙幅の制限から 2005 年と 2010 年のデータのみを扱った。2001 年のデータと各時
期のインタビューデータを合わせた分厚い記述は別の場所で行なう予定である。なお 2005 年
のデータを扱った別稿として,佐々木(2007)がある。
7)レシピ共有サイトではクックパッドが 2013 年時点でも有力であるが,2010 年 10 月にレシピ
投稿によって投稿者に楽天ポイントが付与される「楽天レシピ」が開設され,レシピ投稿数は
3 年間で 71 万件となった。同じ 3 年間でクックパッドでのレシピ投稿数も約 70 万件で,投稿
数で見る限り両者はほぼ拮抗している。また「生活の知恵があつまる情報サイト」である
nanapi でも,「ライフレシピ」と呼ばれる 1000 字程度のさまざまなノウハウの執筆者に 200∼
500 円の対価を支払う仕組みである nanapi ワークスが 2010 年 8 月に導入され,3 年で 9 万
5000 件の投稿がなされた。厳密な調査はしていないが,UGC 投稿に経済的インセンティブが
導入される例が増えてきたのは 2009 年からと思われる。
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