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Valeur de amour_Annotation2

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Valeur de amour_Annotation2
注釈集
1 プロテスタント
○
「反抗する者、抗議者」の意。16 世紀の宗教改革以後、キリスト教徒の中で
ローマカトリックの教義や免罪符による救済に異議を唱えて、新たに分離した
宗派を作ろうという動きが活発になり、北部ヨーロッパやイギリス、北アメリカ
の諸王がこれらの存続を認めることによって成立した宗教的姿勢あるいはその
信徒のこと。
教義の中心は信仰によってのみ救われるという「義認」と、拡大解釈されつつ
ある信仰の根拠を今一度聖書を唯一の物としようという「聖書主義」の二点で
ある。
2 使い古しの酵母
○
シャンパーニュ方式でスパークリングワインを造るときには酵母を添加するが、
その目的は二次発酵を促すためとビスケットのような風味をつけるためである。
そして熟成期間が終わると早々に栓を抜いて酵母を吹き飛ばす。
3 封建家臣
○
国王や領主から封土を与えられる代わりに戦闘要員などの忠勤奉仕を約束する
中世社会に典型的な主従関係のこと。一時期のフランスとイギリスのように国王が
他国王を家臣とする例もある。
さらに中世ヨーロッパの封建家臣は契約事項さえ守れば複数の主人を持とうと、
戦争中に期日切れで兵を引き上げるとしても咎められる事はなかった。
(引き留めておくには別途、金を払わなければならない。)
1 / 21
4 インド洋
○
十六世紀から東洋ではポルトガル人とオランダ人の間で、香辛料貿易の利権を
はじめとする熾烈な商業戦争が繰り広げられていた。
5 ウドン粉病
○
ウドン粉病菌の感染によっておこる植物の病害。
多くの作物や樹木の茎・葉・果実などを粉を散らしたように白くする。
ちなみにヨーロッパ大陸にウドン粉病が入ってきたのは 19 世紀半ばに
イギリスからであったので、18 世紀を設定としている本作では使用しない。
6 ぼやける
○
ワイン用語。バクテリアに汚染された、はっきりしないワインを指す。
7 白ワイン呑み
○
ワインの世界では甘口白から入って最後に重い赤の呑み手となるのが一般的と
されているので白ワインの呑み手は軽視されがちだが、あえて辛口白ワインの
うんちくを語ると、すべてを制覇した人とみなされて尊敬される。
8 手厚く葬られる
○
自殺者と異端者の死体は埋葬を拒否され、灰になるまで焚葬された後、
ローヌ河にばらまかれる辱めを受ける。
9 罪の分配
○
ヨーロッパでは市民への見せしめを兼ねて公開処刑をスタイルとしていた。
2 / 21
罪人は処刑場まで橇(そり)で市中を引き回され、処刑後の死体は数週間から
数か月の間、市門に吊るされたまま晒された。
処刑自体は市民にとって興業となり得るほどの快楽であったが、
放置された死体はその腐敗臭と罪悪感から不快でしかなかった。
10 蛍石
○
フッ化カルシウムから成るガラス光沢を有する鉱物。
パワーストーンとして「愛と平和」を意味する。
11 ジャコウジカの臭い袋
○
ジャコウジカの雄のへそ下には袋状の器官があり、十一月の発情期にはここから
強い臭いを放ってメスを呼び寄せる。
この分泌物を乾燥させてムスクの原料とする。
12 アルテミスが放った大イノシシ
○
ギリシア神話。カリュドーン王オイネウスは収穫後の感謝の祈りで神々に犠牲を
供したが、アルテミスの分を忘れてしまった。
女神は起こって大イノシシを遣わして復讐した。
13 玉
○
馬・牛・イノシシ・シカ・イヌなどの腹の中に生ずる石のような物のこと。
灰色または褐色で、内には黒毛・褐毛が満ちている。石糞。
3 / 21
14 ヒキガエルの宝石
○
有害生物と信じられていたヒキガエルの頭の中にあると考えられた石状の物質。
それは有毒な動物のすべてが頭の中で生み出す解毒剤であり、人間がこれを身に
着けていると毒を予防するとされた。
15 審問
○
ローマ法王が任命した異端審問官によって執行される、拷問をメインとした
誘導尋問的な取り調べのこと。その性格上、男性や子供を含め魔女と糾弾された
者たちは逮捕された時点で有罪の確定を悟った。
ちなみに魔女狩りは十八世紀にも散発的に見られたが、
実質一六八〇年に終息する。
16 リヴィエール
○
ボルドー人は十七世紀以来、ジロンド河のことをこう呼ぶようになり、
続くドルドーニュ河とを境界として河の向こうの人々を田舎者と呼んだ。
17 地代の取り立て
○
十八世紀初頭から領主への地代の滞納または未払いが増加し続けた。
それは農民のみならず市民や貴族にも見られ、中には所有する四分の三の土地が
本来の収入をもたらさない地域もあった。
18 豚のエサ同然の値で完済
○
前述の滞納者は数十年分の滞納の末、減免まで要求する図太さで、少量の穀物を
納めて貨幣は一スウ(銅貨)たりとも支払わないという者もいた。
4 / 21
19 蛾とこうもり
○
コウモリのエサとなる蛾は食べられるのを回避するためにコウモリの発する
超音波を探知する能力を手に入れた。
その能力を人間が利用すれば果樹を食害する蛾を撃退することが出来る。
20 エントランス
○
ロココ様式を採用した牡丹のような大花を描いた天井とバラの花とつたを
一列だけ配したオフ・ホワイトの壁面、そして絨毯にも花柄をあしらった
華やかな空間を一灯のシャンデリアが引き締めることによって宮殿のような
豪奢な雰囲気に仕上げられている。
ちなみにロココ様式はゴシック様式から新古典主義に移行する過渡期に生まれた
様式で「ルイ十五世様式」の別名が示すように 1715 年ごろ起こってロココ美術
の女王と称されるポンパドール侯爵夫人による全盛期を経て、
マリー=アントワネットによって流行が塗り替えられるまで続いた。
その特徴はゴシックの堅苦しさへの反動から曲線を多用した軽やかで繊細な装飾
が採用され、言語的な意味で言えば「ロカイユ(rocaille)=岩窟」という蔑称を語源
とする装飾過剰で俗悪趣味的ともいわれるが、ヴェルサイユ宮殿の装飾に使われた
り、服装に関しては巨大なハットにプリーツに覆われたストマッカ―(胸飾り)、
そして横に幅広のスカート(パニーア・スタイル)という、現代人が 18 世紀の貴婦人
をイメージする際に典型的なファッションであるなど我々になじみの深い様式で
ある。
21 レリーフ入りの水差し
○
1673 年にイギリスの素人ガラス研究家によって発明された鉛クリスタルガラス
に、ボヘミアで古くから水晶彫りに使われていた技術を応用したグラヴィール
技法によって彫刻を施されたもの。
小さな銅板をトップにしたグラインダー(研削盤)でカメオに描かれるよりも
5 / 21
さらに繊細な逆浮彫を彫刻する。ここでは淑女の胸像が描かれている。
22 刺繍
○
十七世紀のリボンの時代が終わり、後にロココと呼ばれる時代には特に紳士服に
刺繍が流行し、アビ(ジュストコール)やジレ(ウエストコート)などの上着には
金糸、銀糸、多彩な絹糸などを使って華やかな刺繍が施された。
23 豊穣
○
西洋で結婚は大地の花嫁が太陽の花婿に愛されることによって豊穣をもたらす
ものと考えられている。故に白馬に乗った王子様や『シンデレラ』や『眠れる
森の美女』など、男性原理の結婚観を描いた作品が多く生まれるのである。
24 シャトー・オー・ブリアン
○
「最高のブドウ園」の意。
大見得を切って話す癖のある彼には随所にこのような掛け声をかけるシーンが
見られる。
ワイン的にはボルドーの五大シャトーのひとつ。
なで肩のボトルにやわらかくて香り高い飲み口から地味なイメージだが
通の評価は高い。
25 サン・テミリオン
○
古代ローマ時代からブドウ栽培がなされ、中世にはサンティアゴ・デ・コンポ
ステーラへの巡礼者が旅の途中で立ち寄ってこの町のワインをたたえて有名と
なった。
水はけの悪い同地では主にメルロ種とカベルネ・ブラン種(ともに赤)が栽培され、
隣接するポムロールとともに高級赤ワインが作られる。
6 / 21
26 アントル・ドゥー・メール
○
サン・テミリオンからジロンド河を挟んで南に位置するブドウ農園地域の名称。
ソーヴィニヨン・ブラン種、セミヨン種、ミュスカデ種などが栽培され、
安価な白ワインが作られる。
対するソーテルヌはガロンヌ河を挟んだ高級白ワインの産地であるグラーブ地区
に位置し、特に甘口白ワインについてはハンガリーのトカイワイン、ドイツの
トロッケンベーレンアウスレーゼと並ぶ三大デザートワインに数えられるほど
優秀な産地である。
そのような高品種と安物ワイン種をブレンドしようと思えば男性優位にして
品質を落とすか、あるいは有名な「シャトー・ディケム」に見られるような
セミヨン種 80%、ソーヴィニヨン・ブラン種 20%の配合にするよりないという
見解から彼を見下したもの。
ちなみに彼に設定されたブドウ品種は名にも表れているように、ゲヴュルツト
ラミネール種である。
これはアルザスの白品種でレイシ、スミレ、バラ水の香りを持つエキゾチックで
スパイシーな風味の個性的なワインを産し、一口で大好きになるか大嫌いになるか
に分かれるといわれる。
これも 19 世紀にアルザスに持ち込まれた品種。
27 尻の操
○
魔女のセクト(宗派)に入信すると、もれなく老若男女入り乱れての近親相姦的
オルギー(乱交)がついてくる。
28 海
○
海は男性の冒険心を掻き立てる未知なる存在であると同時に涙の象徴でもあるので
これに臆して逃げ出す者は真の男ではない。
7 / 21
29 禁猟区
○
封建領主たちはあちこちに一族専用の狩場を持っていた。
ちなみに猟の解禁日は通常十一月からで五月や六月には鳥猟を行うものだが、
解禁日に向けて娘に練習させておこうという父の判断からこの時期に狩りを
やらせている。
30 無帽の男
○
当時、帽子(作業帽を除く)をかぶるのは紳士以上の者に限られていた。
31 三角貿易
○
十八世紀のボルドーは西欧の砂糖供給の 90%を担っており、その仕入先として
西インド諸島のサント=ドミンゴ島と取引するために西アフリカの奴隷をその
対価としたもの。
32 オランダの艀(はしけ)商船
○
十六世紀末にフランスがイギリスからボルドーを奪還して以来、ドルドーニュ河
以東の後背地との貿易が好都合となり、艀を使ってアジャン地方やケルシー地方
産の小麦がまず下流のボルドーへもたらされ、新大陸のアンティル諸島との
商取引が始まってからは長期航海の最大の敵である壊血病の予防に不可欠な
サン=タナトン産の西洋すももの取引が拡大、奥地産のブドウの人気も出て
イギリスやネーデルランド(オランダ)などからも、上流地方で不足しがちな食塩
や塩漬けのタラやイワシやニシンなどをその対価に押し寄せた。
ちなみにポムロールは奥地の対象ではないので艀貿易と直接の関係はないが、
船を使った交易の対比的な意味合いと、自身の取引の利益率を暗に示すために
引用している。
8 / 21
33 しかつめ顔で…地獄行き
○
新約聖書『ルカ伝』にあるらい病患者ラザロの逸話より。
「あわれ大金持ちは地獄に堕ちて、紫の衣を着て火炎の中で苦しみ悶えている」
とある。
キリスト教の教義は清貧を推奨しているので拝金主義者への態度は冷たい。
34 天使に道を譲る
○
西洋で沈黙することを「天使が通り過ぎた」と表現するのをもじったもの。
35 臆病風に背を押されて・・・
○
英語のことわざ、
「臆病者は現実の死を迎えるまでに何度でも死ぬ」より。
36 遅霜
○
ブドウ栽培において 5 月に襲われる霜のこと。葉の茂ったブドウの木は特に
傷みやすくなっているため、現代の農園ではたびたび石油ストーブと送風機を
使って霜を予防する。
37 オーク
○
カシワ、ナラ、カシなどのブナ科ナラ属の樹木の総称。材は堅く、木目も美しい
ので家具や造船に使われる。
そしてこの木には様々な逸話もある。
・妖術使いはこの木の下で秘密のまじないを唱える。
・この木の近くには天使が舞い降りてくる。
・カラスが留まり「死人が出るぞ」と鳴き立てるので「弔いの木」
9 / 21
とも呼ぶ。
・ほかの木に比べて雷に打たれる確率が高く「雷神の木」という名を持つ。
38 オリーブの小枝
○
嘆願する者や保護を求める者は、羊毛で包んだオリーブの小枝を持つのが習慣
だった。
39 ブドウを得損ねたキツネ
○
イソップ童話中の『キツネとブドウ』に描かれている話で、高い所にあってブドウ
を取り損ねたキツネは去り際に「あのブドウは酸っぱい(まだ熟れてない)」と
言った。
40 だれる
○
ワイン用語。酸が不足したワインのことで時間が経つにつれて悪くなる。
41 コキュ・ド・ノワ
○
「くるみの実の殻」の意。
沿岸航路上で拿捕(だほ)された船を再利用するために買い戻すこと。
一般に 50t 以下の中小型船がその対象とされ、購入者は保険をかけて新たな航海
へ漕ぎ出すのである。
ちなみに航海に掛ける保険は 40t の小型船がポルトガルから出航してその保証
を期待する場合、年 6400 リーブルの支払いをしなければならず、
50t の三本マスト船では年 8000 リーブルかかった。
10 / 21
42 サンドウィッチ
○
十八世紀に海軍大将のジョン・モンターギュ・サンドイッチ伯が大好きなトランプ
を中断することなく食事ができるようにと召使に命じて作らせたのが始まり
とされるが、似たような食べ方は古く古代ローマから存在しており、ロシアや
ドイツなどでも前菜やソーセージを挟んだものとして既に存在していた。
フランスではオムレツや卵を挟むのが流行した。
43 クラビコード
○
16~18 世紀にヨーロッパで使用されたピアノの前身となる鍵盤楽器。
キーボードのような箱型の本体に脚が付いていて、5 オクターブの音が出せる。
ただし音量は極めて小さく家庭向き。
その前のハープシーコードに比べて強弱の変化が付けられるようになったため、
奏法に個性が現れるようになった。
上流の乙女は昔から家庭教師に楽器や詩を習う習慣があったが、
このクラビコードも彼女たちのたしなみのひとつとなった。
44 彫刻の削りカス
○
投資家たちは主に領主的諸賦課(地代、不動産売買取引税、相続税、生産物賦課)
による収入を目的に、複数の農村小教区のわずかな土地(6~60 ヘクタール)を
買い漁った。
しかもその土地というのは農作に適さない荒蕪地や寒冷地などの封土であったので
教区の農民たちには災難の訪れであった。
45 化け物
○
イギリスにはその昔、生まれ損ない(奇形児、不具者)の見世物小屋があった。
仕入れ先は主にアフリカで、時に国産の者もいた。
11 / 21
46 スペ
○
「souper=夜食をとる。特に芝居が跳ねた後に食べる夕食」の意。
フレンチのコースで一番最初に出される皿は昼食は前菜、夕食はスープ(soupe)
と決まっている。
ちなみにとろみの付いたポタージュ(potage)はバターを多用するようになった
18 世紀にできた語。
47 エクセレント
○
欧米で使われるヴィンテージワインの評価として政治的に正しい表現の一。
5 段階あって exceptional(例外的)→outstanding(傑出)→excellent(優秀)
→good(良好)→fair(並み)の順。
48 バシリスク
○
オンドリの体に蛇の頭と尾を持つとされる化け物。オンドリの産んだ卵が糞の山で
孵化してできた個体で、視線や体臭や毒の息によって相手を死に至らしめる
恐るべき能力を持つ。
倒し方としては視線を合わせないように鏡に映して攻撃するとか、背後からガラス
の球を被せて自滅させるとか、オンドリの鳴き声を聞かせるなどの方法があるが、
イタチは唯一の天敵とされる。
49 マデラ化
○
コルクを開けて二、三日放置した結果として酸化が進みすぎ、マデラ酒のような
匂いを発するワインのこと。
ここでは生みの時に開けた涙のボトルを流し切らずに放置し、
12 / 21
今再び同じボトルの涙を流すのか、という意味。
50 テロワール
○
定義としては「ブドウ園とワインの性格を決定するための気候と土壌と地形の
組み合わせ」のこと。
51 ロマンス
○
8 月はブドウの実が色づく時期であると同時にその糖分が劇的に増える時期でも
ある。そして男性を太陽とするならば淡い恋のロマンスは乙女の艶やかさを激増
させるのに有効である。
52 オーク
○
ワインを熟成させる樽の香りが移ったもの。ピノ・ノワールやシャルドネとの相性
がよく、特によく感じられる。
ヴィンテージワインのへの格付けを期待する醸造家は備長炭と言われるくらい
樽の内側を強く焦がして、より強い香りを付けようとする。
そこでズルい醸造家は安ワインにオークの削り屑を混ぜたり、
樽香液を垂らして高級ワインに見せかけようとするので注意が必要。
ちなみにオークは一般に木の王者とみなされ、力の象徴とされるが、
大地の女神の聖樹であり豊穣の女神に捧げられた木である処から女性にとって
知性の木とした。
53 虫
○
甘口白ワインの最高峰と言われる貴腐ワインを造るときにはブドウをわざと
過熟させて「ボトゥリティス・シネレア(貴腐菌)」というカビを付ける。
13 / 21
このカビがブドウの皮に開ける穴は水は通るが果糖の分子は通らないという
絶妙の大きさで、この穴から水分が抜けて干しブドウ状になることでブドウの
糖度が上がる。(=貴腐化)
ブドウ農家は貴腐化したブドウを一粒ずつ手作業で選別したり、ジュースを
絞るときにも水分が無いのでわずかしか絞れないなど、気の遠くなるような
手間暇と希少性からその値段も高い。
54 腐った卵
○
十分に空気に触れていない、セラーのワイン(ゲヴュルツト)を瓶詰めにするとき、
抗酸化剤として硫黄(父)を添加すると、腐った卵のような臭いの硫化水素(子)が
発生する。
55 ポーランド式社交界
○
出席者の領地を転々と移動しながら各領地の食糧を食い尽くしてゆく集まり。
彼はさらに洒落て、邸にある物はすべて彼女の目に触れて彼女色に染め変えられる
だろうと言っている。
56 道化
○
道化は世界を滑稽にとらえ、自分の見たいように見ることが出来るので彼ら以上
に幸福な人間はいない。
57 サンザシ
○
五月祭(5 月 1 日)の早朝にサンザシの葉に置いた露で女性が顔を洗うと、
肌が美しくなり、そばかすも治癒すると信じられている。
また向こう一年以内に未来の夫と巡り合えるとも信じられ、
同日に家の戸口に飾られる。
14 / 21
58 二枚舌
○
四弁花のパンジーを基準とすると五弁花は二枚舌。
さらにバラは萼片 5 枚と花弁 5 枚で二枚舌の倍ほど嘘つき。ユリは六弁花。
59 白ユリ
○
ユリの花はキリスト教で純潔の象徴であり、フランスの紋章にも採用されている。
60 ボロニアの石
○
錬金術が最盛期を迎えた 17 世紀の初めにイタリアのボローニャ郊外の
パデルノ山で初めて採取された重昌石の一種。
原石を強く熱するなどの加工を加えたのちに太陽に当ててしばらく置くと
光をため込んでおける性質を持つようになり、暗闇で石炭を熱したときのような
赤い光を放つ。
61 六弁花のサクラソウ
○
ヨーロッパの言い伝えで、花弁が六枚のサクラソウを見つけると
近いうちに恋人が現れると云われる。
62 アッサンブラージュ
○
品種、テロワール(生育環境)、年代の違うブドウで造られたワインをブレンドして
新たなアロマを持ったワインを生み出すこと。
地方によってルールが異なり、ボルドーの場合は認証を受けた同じ原産地で
造られたワインしかブレンドすることが出来ない。
15 / 21
63 神の血の添加と酵母と砂糖の添加
○
シャンパーニュの二次発酵を促すために瓶詰めにしたワインに添加する物で
「リクゥール・ド・ティラージュ」という。
ここではそれを婚約の成立に必要な教会での誓いと両親の承諾と友人の保証に
掛けたもの。
64 ブーッ!
○
フランス人が「やれやれ」とか「ちくしょう」などの意味を込めてやるしぐさ。
65 クープ型のグラス
○
結婚式の乾杯や洒落たパーティーでシャンパンを出すときに定番となっている
シャンパングラス。
広くて浅い口は泡をすぐに飛ばしてしまい、味わうには適さない。
66 石灰入り
○
ぶどう酒に石灰分を入れると甘口が辛口になり泡立つので、不正商人がよく
使った。人体には有害。
美術館で絵画を眺めながらシャンパンを味わうという集まりもその昔には
あったらしい。
それは 1667 年にルイ 14 世がルーヴル宮のサロン・カレで開いた美術展覧会
が始まりで、隔年で開かれるようになって「サロン」という語にその意味が
付加されたことで定着し、特に 19 世紀以後、パリに同じ趣旨のサロンが続々と
創設された。
ちなみに現在でも 7 種類のこうしたサロンが残っていて毎年の春秋に
16 / 21
開かれている。
67 ブーケ
○
「アロマ」とセットでワインの香りを表現する言葉。
一般にアロマはブドウ品種特有の香り、あるいはそのブドウが生育した
土壌環境の手掛かりを示す香りを指し、
ブーケはグラスを揺らして空気と触れ合わせることで出てくる複雑な熟成香を
指すが、厳密にはワイン一本当たり千種類ともいわれるアロマ分子の束がブーケで
ある。
テイスターは訓練された五感を駆使して数秒の間に繰り広げられる香りの
ドラマを解析し、果実や花や香辛料など豊かな言語的表現によってそのシナリオを
翻訳する。
68 ハイメン
○
ギリシア・ローマ神話の婚礼の神。ヒュメナイオス。
一説として、彼はアテナイの美少年でその姿は女性に見まがうほど美しかったが、
ある美少女への片思いを募らせるまま、彼女の後を付けるばかりのおくてな少年
であった。
ある日少女たちがデーメーテールに供物を捧げるべくエレウシースへ訪れた
ところ、海賊たちに襲われてヒュメナイオスもろとも誘拐されてしまった。
人気のない岸辺に連れてこられて怯える少女たちに勇気を励まされた彼は、
海賊たちが寝静まるのを見計らって一人ですべてを退治し、一足早く
アテナイへ帰還、心配する意中の人の両親に彼女を妻にもらう条件で少女たちの
返還を約束し、かくして恋を実らせた。
これを記念して結婚式で彼の名が叫ばれる習慣が出来、
そこから結婚の行列を導く神としてのヒュメナイオスが生み出された。
彼の掲げる婚礼の松明は二人の行く道を照らす。
17 / 21
69 ビズ
○
欧米人がよくやる頬を合わせてエアキスをする挨拶のこと。
このとき音を出さないのは無礼とされる。
70 ヴィンテージ
○
ブドウを収穫した年が明記されたシャンパーニュのこと。
さらに毎年違うワインの出来を点数や星の数によって評価するものをも示唆。
71 すすぎのワイン
○
「rincette=グラスをすすぐという口実でさらに一杯余分に飲むワイン」の意。
72 角
○
妻を寝取られた夫の額には角が生えると言われる。
73 ルミュアージュ
○
二次発酵を終えたシャンパーニュから添加した酵母を取り出すための一連の作業
のこと。
ボトルの口が下斜めに向くようにセットしたワインを毎日少しずつ回して
振動によって酵母の残滓が口へ寄せ集まるようにする。
(手作業なら二か月~四年、機械なら八日)
→その後デゴルシュマンへ。
すぐに取り出さないのは死んだ酵母の細胞が自己分解によってワインに
ビスケットのような風味を付けてくれるからであり、
それはシャンパーニュ方式で作られたことの品質証明ともなるからである。
風味は熟成期間に比例して強くなる。
18 / 21
74 デゴルジュマン
○
ルミュアージュ後の酵母を取り出す作業のこと。
ボトルの中の圧力によってビンの口に集まったワインと酵母を氷結させてから
ボトルを上に向けて手早く栓を抜き、
「リクゥール・デクスペディシオン」
(ワイン+シロップ)を添加して氷結物を吹き飛ばす。
→最後にスパークリングワイン独特の栓をして針金で固定する。
75 花嫁に捧ぐビスケット
○
西洋の結婚式では式の最後にキリストのパンと葡萄酒を模してグラスワインに
お菓子を沈めて新郎新婦で飲むという習慣がある。
お菓子は花嫁にあげる。
それから誓いのキスをして楽隊を先頭に行列を組んで夫の家へ向かい、
披露宴が始まるのである。
76 恋の演出家
○
シャンパーニュと恋愛は切っても切れない関係にあり、下心なく女性と
シャンパーニュを飲むのはシャンパーニュに対する冒涜と言われる。
77 クローズした
○
長期保存によって一時的に香りをかぎ分けにくくなったワインの状態。
空気にさらすか時間が経てば開く。
78 シガー
○
16・17 世紀に新世界からもたらされて以来ワインに付き物となった嗜好品。
19 / 21
喫煙が許されるレストランではデザートワインが出た後は葉巻タイム
と認識されており、一本吸い終わるまでの 30 分~1 時間の間はボーイは勘定書を
持ってこないらしい。
その香りは蜂蜜とナッツ、あるいは高級品の場合ハチミツと木の香りがし、
共に白ワインの香りにそっくりと言う。
その独特の香りと紫煙を忌避する人も多い。
別の資料によると葉巻に近い香りはボルドー地方の赤ワインに見られるらしい。
79 ハンガー・デモ
○
フランス革命の先駆けとなった農民たちの運動。
1720 年に財務総監に就任したジョン・ローによる国民の投機熱をあおる
経済政策が不発に終わったことによって起こった金融恐慌を皮切りに国民の政治
に対する不信感は募り、1725 年には凶作が原因で各地で食糧蜂起が頻発したり、
パリに最初のフリーメイソン集会所が出現するなど革命の火種は灯りつつあった。
そこへきて 1730 年ごろからパリで人口増加と物価上昇が始まり、
市民と地方農民の負担が増加、ついに経済難に陥った彼らは安定した生活を
求めて仕事を放り出してパリへ押し寄せ、閉ざされた市門の内外で暴動が繰り
広げられるようになった。
80 シャイロック
○
『ヴェニスの商人』中の富めるユダヤ人。
友人のバッサーニオウの為にした借金を返せないキリスト教徒のアントウニオウ
に肉 1 ポンドの科料を支払えと裁判を起こし、バッサーニオウの結婚相手と
なったポーシアとその侍女の知計によって逆に全財産を取り上げられてしまう。
第四幕第一場で彼は奴隷に対する慈悲について説いている。
20 / 21
81 サルマナザール
○
ワインの大型ボトルの呼び名の一。9,000cc のこと。
ゲヴュルツトは自身の名が呼び間違えられやすいことを気にして、これを相手の
収入に応じて呼び分けるのに採用している。
。
他に「ドゥーブル・マグナム(3,000cc)」、
「ジェロボワム(4,500cc)」
、
「アッペリアル(6,000cc)」
、
「バルタザール(9,000cc)」
、
「ナビュコドノゾール(15,000cc)」があり、すべて聖書に出てくる王の名。
82 聖ヴァンサン
○
一人は 304 年に殉教した修道士で、その遺体がスペインのヴァレンシアから
ブルゴーニュ、シャンパーニュへ運ばれる内にフランスのブドウ栽培人の守護聖人
に叙せられる。
もう一人は映画にもなっている聖ヴァンサン・ド・ポール(1581~1660)で、農民の
家の出でありながらアンリ2世の娘やゴンディ家に仕え、2 つの修道会を創設、
ルイ13世の相談役にまで上り詰めるが、時の枢機卿マザランとの対立によって
宮廷を離れる。
その後フロンドの乱(1648~53)から殉教まで貧者の世話に従事する。1737 年列聖。
後者にはボルドーのラ・ミッション・オー・ブリオンというシャトーの敷地内
教会に安置されている石像から物語が作られており、天よりワインの普及の命を
受けてグラーヴ地区に降り立った聖人は、任務にかまけてしこたまワインを飲み
歩き、教会所有のワイン蔵で酔いつぶれているところを守護天使に見つかって、
彼の報告に怒った天主によって石にされてしまったという。
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