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「主権免除法担当者試案」に関する意見募集の結果について 第1 意見数
「主権免除法担当者試案」に関する意見募集の結果について 第1 意見数 13件(4団体,個人9名) 第2 意見の概要 「主権免除法担当者試案」(以下「試案」という。)に対して寄せられた意見につい て,試案の各項目ごとに整理して取りまとめた(記載のない項目は特段の意見が寄せ られなかったものである。)。 なお,以下において「国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約(仮 称)」は,条文を引用する場合には「条約第○条」と,それ以外の場合には「本条約」 ということにする。 1 試案第1(適用範囲)(条約第1条関係) 明確化のため,「裁判権」を「日本国の裁判権」とした方が望ましいとの意見があっ た。 2 試案第2(定義)(条約第2条関係) (1) 第2の1(裁判所の定義) 明確化のため定義規定を設けることが望ましいとの意見があった。 (2) 第2の2−1(国等の定義) 本条約の内容を正確に反映したものであるとの意見があった。 (3) 第2の3(私法上の取引の定義等) 甲案に賛成するものはなく,乙案に賛成するものが3件あった。 なお,乙案に賛成するものの中に,乙案の①から③までの例を含め可能な限り具 体的な例示を掲げるべきであるとする意見や条約第2条1(ⅲ)のようなバスケット 条項の追加を検討すべきであるとの意見があった。 (4) 第2の4(「私法上の取引」の判断基準について) 明文規定を設けないのであれば,立法解説等で取引行為の性質を基準に判断する ことを基本とすることを明らかにすべきであるとの意見があった。 3 試案第3(影響を受けない特権及び免除) (条約第3条関係) 本条約で規定されていることを改めて確認することはよく,試案第3の2において 国家元首の人的免除のみについて言及しているのも適切であるという意見があった。 また,試案第3の4について,本条約に該当する規定がないこと,国民の裁判を受 ける権利を害するおそれがあること等の理由から,国内法にこれに該当する規定を設 1 けることには反対であるとの意見があった。 4 試案第5(裁判権からの免除) (条約第5条,第6条関係) (1) 第5の1 試案第5の1は,条約第5条と異なり,将来の実定国際法の発展によって免除の 例外を新たに認める余地を残していないが,立法政策としてこれを是認しうるとす る意見があった。 (2) 第5の2 甲案に賛成するもの,乙案に賛成するもの及び意見が分かれたとするものがそれ ぞれ1件ずつあった。 5 試案第6(裁判権の行使に対する明示の同意)(条約第7条関係) 日本の裁判所を管轄裁判所とする合意があるなどの場合に,裁判権の行使に対する 明示的な同意があったといえることを条文上明らかにすべきであるとの意見や試案第 6の1①の「国際約束」は「国際的な合意」とする方が適切であるとの意見があった。 6 試案第7(裁判手続への参加等の効果)(条約第8条関係) 試案第7の1②の括弧内の「措置」には,裁判手続に参加することも含まれると解 されるから, 「措置」は他の文言で置き換えることを検討すべきであるとの意見や外国 等が,裁判手続において試案第7の2①及び②に定める行為のみを行うことは,実際 にはないと考えられることから「外国等が,裁判手続において次のことのみを行う場 合」という文言を修正すべきであるなどの意見があった。 7 試案第8(反訴)(条約第9条関係) 別訴を提起して併合を求めた場合も試案第8の対象となるのか明確にすべきとの意 見があった。 8 試案第 10(雇用契約)(条約第 11 条関係) 内定取消しが,③の「個人の採否」に該当するのか,④の「終了の効力に関する訴 えに該当するのか疑義があるため,可能な限り明確にすべきとの意見や有期雇用契約 の雇止めが,③の「更新の有無」に該当するのか,④の「終了の効力に関する訴えに 該当するのか疑義があるため,可能な限り明確にすべきとの意見があった。 9 試案第 11(不法行為等)(条約第 12 条関係) 条約第 12 条に忠実であるとの意見があった。 2 10 試案第 12(財産の所有,占有及び使用)(条約第 13 条関係) 遺贈,時効取得,負担付贈与等の取扱いに疑義が生じる可能性があるので,適用範 囲を明確にすべきであるとの意見があった。 11 試案第 15(船舶)(条約第 16 条関係) 「支援船」の文言が曖昧であるとの意見があった。 12 試案第 17(外国等の財産に対する保全処分又は民事執行からの免除)(条約第 18 条 及び第 19 条関係) 試案 17 の2①及び②について,執行機関が認定に困難を来たさないよう十分明確に 規定すべきであるとの意見,試案第 17 の1は,本条約と異なり,同意に当たって財産 を特定することを要件としているように読めるが,立法政策としてこれを是認しうる とする意見,試案 17 の 1②について,当事者が仲裁判断に服する旨の合意という意味 での単なる「仲裁合意」では,試案第 17 の1の同意としては不十分であるとの理解は, 本条約の解釈としては正しいが,投資紛争解決の方法として仲裁の重要性が高まって いることに鑑みると,本条約に準拠した規定を設けることが投資家保護に欠けないか 検討する必要があるとの意見,試案第 17 の1②に当事者が合意により準拠した仲裁規 則も含まれることを明確にした方が良いとの意見,試案 17 の2②について,条約第 19 条(c)に合わせて「立証された場合」という文言を明示する方が明確化に資するとの意 見があった。 13 試案第 18(裁判権の行使に対する同意が保全処分又は民事執行に及ぼす効果) (条約 第 20 条関係) 日本の裁判所への管轄合意のみで,裁判手続からの免除放棄と強制執行手続等から の免除放棄の双方が確保されることが望ましいとの意見があった。 14 試案第 19(特定の種類の財産)(条約第 21 条関係) 試案 19 の 1③について,中央銀行の資産の取扱いについて本条約の内容を正確に反 映したものであるとの意見,国際決済銀行の資産についても中央銀行の資産と同一の 免除特権を認めるべきであるとの意見,条約第 21 条1(a)で例示されている「銀行勘 定」について国内法でも明示して明確化を図るべきであるとの意見,この試案がソブ リン・サムライ債の発行国に対して,債権者が訴訟を提起して勝訴した場合に,当該 債権者がニューヨーク連邦銀行や日本銀行に存在する発行国の経済的取引に使用され る資金に対する差押え認められる可能性を途絶しないかとの意見があった。 15 その他 3 主権免除にかかわる紛争が裁判所に提起された場合,被告となる外国等は我が国の 主権免除法ではなく,そのもととなった本条約に基づいて主張するものと思われ,原 告・被告間で主張するところの根拠条文が異なることが懸念されるとの意見,たとえ 私法上のこととはいえ国家の主権を他国の主権下に委ねることには反対であるとの意 見,予見可能性を高めるという観点から主権免除法制を整備するという点には賛成で あるが,国内法案が本条約の批准を前提としている点には賛成することができないな どの意見があった。 第3 今後における取扱い 提出された意見については,法制審議会主権免除法制部会における審議の参考資料 として使用する。 4