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岐阜県 カーボン・オフセット ガイドライン

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岐阜県 カーボン・オフセット ガイドライン
岐阜県
カーボン・オフセット
ガイドライン
(イベント版)[Ver.1]
岐阜県環境生活部
平成 23 年7月
イベントにおけるカーボン・オフセットの考え方について
ガイドラインの目的
イベントの実施にあたっては、イベントの目的、種類等がどのようなものであっても、
環境配慮の観点から、まずは二酸化炭素など温室効果ガスの排出を削減する努力が必要
です。しかし、削減努力してもなお発生する二酸化炭素を何らかの形で埋め合わせをし
ようとする考え方がカーボン・オフセットで、我が国においてもこの取組みが広まりつ
つあります。
本ガイドラインは、県が企画・参画して行うイベント(県が主たる構成員となる実行
委員会が開催するイベントを含む。)について、カーボン・オフセットを行う場合の考
え方や具体的な実施手順、温室効果ガスの算定方法等についてとりまとめたものです。
1.カーボン・オフセットを実施するイベント
(1)カーボン・オフセットとは
カーボン・オフセット(carbon offset)とは、市民、企業、NPO/NGO、自治
体、政府等社会の構成員が、自らの経済活動や生活などを通じて排出された温室効
果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困
難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量
等を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を
実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせることをいいます
(図1)。
※ 「カーボン・オフセット」=「二酸化炭素(カーボンダイオキサイド:carbon dioxide)
」 +
「相殺する(オフセット:offset)
」
図1
カーボン・オフセットとは
①自分の活動(ある活動範囲
(バウンダリ))での排出量
削減努力
支援(クレジットを購入す
る / プロジェクト実施する)
削
減
努
力
②どうして
も減らせな
い排出量
+CO2
④埋め合わせ
=オフセット
削減・吸収量
(クレジット)
削減努力
1
③別の場所
での
削減・吸収
量
-CO2
(2) カーボン・オフセットの意義
イベントにおけるカーボン・オフセットの意義には次のようなものがあります。
・イベントの開催に伴う地球環境への負荷を効果的に低減できる。
・イベント参加者や地域社会に対して環境配慮への取組みの普及啓発効果が期
待できる。
・イベントの社会的価値や主催者の地球温暖化への取組み姿勢を県内外に向け
て発信することができる。
(3) ガイドラインが対象とするオフセットイベント
カーボン・オフセットを実施するイベントは、イベントの目的、規模、種類に
応じ次の2つの判断基準を目安とします。(このガイドラインでは、カーボン・
オフセットを実施するイベントを、
「オフセットイベント」といいます。
)
イベントの目的
イベントの規模・種類等
判断の目安
オフセットの理解促進や環
境配慮のためのイベント
-
規模・種類等を問わず実
施
上記の他大規模なイベント
千人以上の参加者を見込む
会議・イベント等
人数等から算出した概
算が5t-CO2あれば
実施
※ 本県のイベントで初めてカーボン・オフセットを実施した「第30回全国豊かな
海づくり大会」は、大会関係者約3500名、開催による排出CO2を約40t
-CO2(概算事前算定)と見込みました。
(4) オフセットイベントの基本的留意事項
オフセットイベントは、イベントの目的、種類、開催場所、参加者の範囲など
イベントごとに内容は様々であり、オフセットの取組みに対する信頼性を確保す
るため、実施に際してイベント開催担当者がオフセットイベントに共通する事項
やオフセットイベントの流れを理解する必要があります。
2.オフセットイベントの基本的なフロー
(1) オフセットイベントの基本的なプロセス
オフセットイベントは、基本的にまず、イベント前に自らの温室効果ガスの排出
量を認識し、次に主催者、参加者等による排出削減努力を行います。さらに、削減
努力によっても避けられない排出量を把握し、最後に実際の排出量の全部又は一部
に相当する量をクレジットによりオフセットします。また、一環して参加者を含め
た県民への情報提供に努めます。具体的には、表 1 に示した 7 つのステップに分
けられます。
2
表1
STEP1
イベントの企画
STEP2
体制づくり・役割分担
STEP3
事前算定
STEP4
提供情報の整理・事前公
表
STEP5
イベントの実施
STEP6
事後算定・評価
STEP7
クレジットの無効化
【計画の作成】
・ オフセットの目的の確認及びオフセットの主体の決定
・ 温室効果ガス及びその他環境配慮についての項目の洗
い出し
・ 削減対策の計画[事前、開催時、事後]
・ データ収集のタイミング・算定方法等の確認
【体制づくり・役割分担】
・ 体制・役割分担の整理・確認
【算定の計画作成】
・ 算定範囲と収集データの決定
【排出量の概算】
・ 入手可能なデータでの算出
【発信情報の整理】
・ 基本情報(算定範囲、クレジットの種類・量)の確認
【発信方法・媒体】
・ イベントの趣旨を踏まえた発信方法、媒体の決定
・ 問合せ対応の確認
【イベント中の環境配慮行動の実施】
・ 温室効果ガスをできるだけ出さない取組み
・ 上記以外の環境配慮の取組み
【イベント中の情報発信・収集】
・ 来場者へのアピールの方法
・ 事後算定・評価のためのアンケート実施
【排出量の算定】
・ 実績値データの収集
・ 収集データに基づく排出量の算定
【その他】
・ 改善点の検討・評価等
・ オフセットを取り入れたことの報告
【クレジットの無効化】
・ クレジットの調達と登録簿上での無効化へのクレジッ
ト移転
・ オフセット完了にともなう追加的情報発信の実施
(2)個別のステップの概要
ステップごとの具体的な手順については以下のとおりです。
① イベントの企画(STEP1)
a. 計画の作成
ア.オフセットの目的の確認及びオフセットの主体の決定
「イベント計画全体の中でオフセットをどのような目的で実施するか」を明
確にします。
(例)
・ イベント参加者の環境に対する関心を高めるため
3
→ ゲームを取り入れたり、看板、印刷物に記載したりすることにより環境
配慮やオフセットへの理解・協力を促す。
・ イベントでの環境配慮をアピールするため
→ オフセットを行うということを大きく取り上げることにより、環境配慮
に関するコンセプト強化や参加者へのアピールを行う。
次に、クレジットを購入する者など環境価値を得る者が、主催者(県)か、参
加者かを企画段階で決定しておきます。
合わせて、オフセット・クレジットを購入する財源についても、主催者負
担か、寄付などを募るのか、参加費などとして徴収するのか等の調達方法に
ついても決定しておきます。
イ.温室効果ガス及びその他環境配慮についての項目の洗い出しと削減対策の
計画
イベントの際、どこで温室効果ガスを排出することになるのか、また温室効
果ガス排出に直接関係をしなくても環境に配慮する点を洗い出して整理しま
す。そのうえで、イベントの事前、開催時、事後の各時点で、どのような温室
効果ガスの削減対策を実施するのか計画を立てます。
(例)
・ 電気の使用、ゴミの排出
・ 駐車場の整備、バリアフリー化
ウ.データ収集のタイミング・算定方法等の確認
イベントの計画段階で、オフセットの手順(事前・事後のデータ収集と算定
やオフセットの範囲、情報の発信、クレジットの調達・無効化の実施など)や
タイミングをあらかじめ組み込んでおくことでスムーズに取り組むことがで
きます(図2)
。
オフセット実施の情報発信については、イベント全体のプレスリリースなど
のタイミングとあわせておくことも重要です。
図2
<イベント時の作業の整理>
※各作業に必要な期間はあくまでも参考例であり、余裕を持って取り組むには事前作業
4
に 2 か月以上かかることもあります。
② 体制づくり・役割分担(STEP2)
イベントの関係者が多岐にわたる場合には、イベントの開始から終了まで、関係
者間で協力体制を確立し、役割分担を明確にしておくことが必要です。
体制は、主催者だけではなく、協力団体(事業者、NPOなど)の担当スタッフ
も加えたものとし、企画から実施、事後評価までを円滑に行うマネジメントが求め
られます。
また、温室効果ガス排出量の算定、クレジットの調達などには、専門家(イベン
ト企画運営会社やカーボン・オフセットプロバイダなど)との連携体制も事前に検
討するとよいでしょう。このような連携体制を通じて、参加者や社会全体への協力
要請やアピールを行っていくことになります。
<役割分担の主な事項>
・
・
・
・
・
・
オフセットに関する全体の取りまとめ
情報発信・問合せの対応窓口
CO2削減の取組み
事前・事後の算定のための情報収集・計算作業
クレジットの調達・無効化
最終評価と報告
③ 事前算定(STEP3)
a.算定の計画作成
排出量算定の主要なものとして、以下の事項があげられます。これらのうち、全
部を対象とするか、一部を選択して対象とするかは、イベントの規模、特性、趣旨
などを考慮しながらイベント主催者が決定します。そのうえで、入手可能なデータ
の項目を決定していきます。
○ エネルギー消費
○ 来場者の移動
○ 物品の製作・利用
・開催中のエネルギー使用
・主催者、出演者の移動
・配布する印刷物、ノベルティ、
・設営時のエネルギー使用
・一般来場者の移動
会場設営資材など
・撤収時のエネルギー使用
○ 廃棄物
※ 電力・燃料など
・イベント開催中発生するごみ
b.排出量の概算
オフセットの対象となるイベント実施に係る温室効果ガス排出量(事前の概算
値)は、それぞれ対象とする活動の[活動量]×[排出係数]を合計することにより算
出することとなります。この場合の活動量については、同じイベントの前年度参
加者数や類似イベントの電気使用量の実績などを参考にして決定する固有のデー
5
タを用います。排出係数は、国等が示した原単位(標準値)を用いることとしま
す。実際の算定にあたっては、別添1「温室効果ガス排出量の算定方法」を参照
のうえ、算定項目のデータを集約するためのシート(別添2「オフセット・イベ
ントシート」
)を活用すると便利です。
このように算定したCO2排出量をもとに、適当なCO2排出削減量やオフセッ
ト量の目安を決めていきます。なお、この算定の方法は、「カーボン・オフセット
の対象活動から生じる GHG 排出量の算定ガイドライン」に示された方法のなかで
は中程度の精度での算出レベルに該当します。
さらに、算出した結果についての信頼性を確保するためには、第三者による検証
を実施することが望ましいとされています。しかし、本ガイドラインによるオフ
セットイベントは、商品やサービスの提供によって経済競争上の優位をめざすもの
ではないため、当面、第三者検証を受けることはせず、オフセットに関する情報提
供を積極的に行い、透明性を確保する等により説明責任を果たすこととしていきま
す。
④ 提供情報の整理・事前公表(STEP4)
a.発信情報の整理
カーボン・オフセットの手段の1つとしてクレジットの購入がありますが、参加
者に「CO2 削減に貢献した」ということを理解していただくために、以下の内容
等について参加者に情報提供するなど公表することにより、信頼性の構築を図る必
要があります(図3、4)
。
・
・
・
・
・
カーボン・オフセットに関する説明
イベントを行う際に実施する削減努力
算定方法・算定量
カーボン・オフセットの対象となる範囲(バウンダリ)
カーボン・オフセットの実施に使用するカーボン・クレジットの種類と量、ク
レジットを生み出したプロジェクトの内容
・ 費用負担者の明確化(主催者が負担するのか、参加者が負担するのか)
b. 発信方法・媒体
カーボン・オフセットを実施する目的を明らかにし、その趣旨を広報する意識を
持ち、情報発信の効果的な方法・媒体の選定を行うことも必要です。
6
図3
図4
7
⑤ イベントの実施(STEP5)
a. イベント中の環境配慮行動の実施
会場の設営、使用、撤収など様々な場面において、イベントの企画の段階で洗い
出した環境配慮の取組みを実践します。
実践段階においても「エネルギーの無駄遣いをしていないか?」、
「丌要な資材を
作成していないか?」など環境配慮に関する取組みを具体的にチェックし、内容を
見直します。その際、温室効果ガスを排出するもの、しないもの全てについて取り
組むこととします。
b. イベント中の情報発信・収集
ア.CO2 削減努力に関する参加者への呼びかけ
イベント主催者・関係者だけでなく、一般の参加者・来場者にも誰が負担
するかに関わらず CO2 削減への取組みを実施していただくことが重要です。
出演者が具体的な意義や取組方法を呼びかけたり、ノベルティなどを活用し
て取組みを呼びかけたりするなど、イベントの趣旨にあわせて周知します。
イ. カーボン・オフセットに関する情報発信
看板・パネルの設置、チラシの配布、アナウンスなどを通じて、参加者・
来場者に主催者の取組みを紹介し、参加者・来場者への協力を促します。
募金などにより、参加者・来場者に費用負担をしていただく場合には、主
体的な参加意思を高めることが重要です。
ウ. アンケート等の実施
排出量の算定のデータ収集に関し、より正確性を持たせるため、アンケート
等を実施することが考えられます。
例えば、来場者の移動に伴う CO2 排出が主要な要因であると考えられる場
合には、来場者に交通手段や起点を確認することにより、算定の根拠とするこ
とができます。
⑥ 事後算定・評価(STEP6)
a. 排出量の算定
電気使用料の伝票やアンケート結果など収集する情報に漏れがないよう留意し
ながら具体的な実績データをもとに、改めて排出量の算定を行い、オフセット量
を決定し、クレジットを調達します。
その後、事前算定との比較を行い、適切なオフセット量を算出し、事前算定との
差引きをします。
(事前にクレジットを調達している場合、調達量に丌足があったときには丌足分のク
レジットを補てんすることになります。
)
8
b. その他
ア.改善点の検討・評価等
事後算定を行い計画段階の CO2 排出量(事前)と実際の CO2 排出量(事
後)を比較することにより、
ⅰ イベント開催により発生した環境負荷量の実際の量の把握
ⅱ 排出削減の取組みの適切さ
ⅲ 算定方法の精度
について検証していきます。この作業を通して目的の達成度や事前の算定方
法が適切であったか等、今後イベントを実施する際に改善すべき点などを検討
するとともに、イベント全体の評価を行います。
また、イベントの実施後、報告書や HP などを活用して、カーボン・オフセ
ットを実施した結果についてより詳細な情報を積極的に公開していくことが
重要です。
イ.オフセットを取り入れたことの報告
本ガイドラインが対象とするイベントにおいてカーボン・オフセットを実
施した場合は、オフセットイベントの開催が終了した段階で、イベントの概
要、算定した排出量(事前・事後)
、クレジットの調達及び無効化の予定等オ
フセットイベントの概要について報告してください(報告先:環境生活部
清流の国ぎふづくり推進課)
。
⑦ クレジットの無効化(STEP7)
クレジットを購入し、クレジットの無効化の手続きを行います。
無効化とは、一度オフセットに引き当てられた炭素クレジットが、他に引き当て
られることのないように、適正な処理を行うことをいいます。イベントの主催者が
カーボンクレジットを調達先から購入し、国などが管理する登録簿上で無効化のた
めの口座に移転させることにより手続が完了します。
無効化はイベントの実施後、半年から 1 年以内に実施することとされています。
※
国などが管理する登録簿
環境省の J-VER 制度に基づいて発行されるクレジットを管理・記録するため、
(社)海外環境協力センター・気候変動対策認証センターにオフセット・クレ
ジット登録簿システムが設置されています。オフセット・クレジットの利用者は、
この登録簿システムに口座を開設し、クレジットの発行、保有、移転及び無効化
等の手続きを行います。
3.クレジットの調達等について
(1)オフセットに使用するクレジット
カーボン・オフセットに使用される主なクレジットは表2のとおりですが、
9
図5
本ガイドラインで対象とするオフセットイベントでは、原則として県内から創出
されたオフセット・クレジット(J-VER)を充てるものとします。
また、実際購入にあたってはオフセットイベントの目的にあったプロジェク
トによる J-VER を選択するように努めます。なお、オフセットによるクレジ
ットの購入は t-CO2単位で行われることになり、端数が生じた場合は切り上
げします。
10
表2
クレジットの種類
概
要
備
考
オ フ セ ッ ト ・ ク レ ジ ッ ト 環境省が国内で行われる ※都道府県が認証
(J-VER)
温室効果ガス排出削減・ する「都道府県J吸収量のうち、一定基準 VER」もある
※VER:Verified Emission を満たし、発行されたク ※現在、県内の複数
Reduction
レジット
のプロジェクトに
おいて今年度認証
取得・発行予定
国内クレジット
京都議定書目標達成計画
で規定された、大企業等
が技術・資金等を提供し
て中小企業等が行うCO
2 の排出削減量を認証し
て発行されるクレジット
グリーン電力証書
太陽光発電等の自家消費
分等により得られた電力
の環境付加価値
京都メカニズムクレジット
京都議定書に規定された
メカニズム
(2) クレジットの価格
クレジットは、上記のとおり様々な種類があり、価格もそれぞれ異なってい
ます。実際には需要と供給に基づき決定されており、実勢価格について、環
境生活部清流の国ぎふづくり推進課で随時把握することとします。
(3) イベント全体を委託する場合の取扱い
イベントを委託する際、仕様書にカーボン・オフセットを実施する旨を明確
にして、オフセットの項目を加えることとします。
11
◆ 参考となるガイドライン等
1
2
我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針) 環境省
カーボン・オフセットイベントの手引き(Ver.1.0) カーボン・オフセット推進ネ
ットワーク
3 カーボン・オフセットの取組に対する第三者認証機関による認証基準(Ver.1.1) 環
境省
4 カーボン・オフセットの対象活動から生じる GHG 排出量の算定方法ガイドライン
(Ver.1.1) カーボン・オフセットフォーラム
5 交通・観光カーボン・オフセットガイドライン(Ver.1.2) 交通エコロジー・モ
ビリティ財団
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