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Multi-functional Pyrolyzer® Technical Note
( PYA3-018 )
発生ガス分析(EGA)-MS法によるポリブチレンテレフタレート
樹脂中に含まれる赤リン難燃剤の定量分析
[背景] プラスチック製品に添加された赤リン難燃剤の定量分析において、樹脂からの赤リンの分離回収が困難であることから、前処
理を行わずに樹脂と赤リンを同時に熱分解して分析する熱分解GC/MS法1)およびEGA-MS法2)が報告されている。熱分解により赤リ
ンはリン4量体(P4)となり、分子イオンピーク(m/z 124)が強いMSスペクトルを示す(図1)。このため樹脂試料のパイログラムおよび
サーモグラムからP4 ピークを容易に判別でき、ピーク面積値から赤リンの定量分析が可能である。本報では試料の昇温加熱を行う
EGA-MS法を用い、ポリブチレンテレフタレート(PBT)に添加された赤リン難燃剤を定量分析した事例について紹介する。
[方法] 分析システムはマルチショット・パイロライザー(EGA/PY-3030D)をGC注入口に直結して使用した。試料は赤リン難燃剤を
5.6 wt%含有するPBT樹脂を粒径50-100 μm程度に粉砕したものを試料カップ内にはかり取り、EGA-MS測定を行った。赤リン難燃
剤の定量値は、m/z 124を抽出して得たEGAサーモグラム上のピーク面積値を用い、赤リン難燃剤標品を試料と同一条件下で測定
し作成した検量線から算出した。
[結果] 赤リン難燃剤含有PBTのEGAサーモグラムを図2に示す。285-550ºCの範囲に主ピークが観測され、この平均MSスペクトル
にはPBT由来のフラグメントイオンに加えてP4 の分子イオンm/z 124が観測された。このイオンをEGAサーモグラムより抽出したとこ
ろ360-510ºCの範囲にピークが観測され、このピーク面積値と検量線から求めた試料中の赤リン難燃剤の定量値は5.9 wt%(n=5)
であり、仕込率5.6 wt%および熱分解GC/MS法により得られた定量値 6.1 wt%に近い値が得られた。また、試料量あたりのEGAサ
ーモグラム上のピーク面積値(m/z 124)の再現性はRSD=1.9%(n=5)と良好であった。以上の結果から、EGA-MS法により樹脂中
に添加された赤リンの定量が可能であることが分かった。
MSスペクトル
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
124
P
P
P
熱分解
P
P
P
リン4量体
(P4)
赤リン
62
93
31
30
60
90
120
[m/z]
図1 赤リンの熱分解生成物とMSスペクトル
x106
6
平均MSスペクトル
(285-550ºC)
4
149
TIC
x 40拡大
124
54
39
121
65
76
2
40
m/z 124
203
93 104
80
0
100
166
120
160
200
200
240 [m/z]
300
400
500
図2 赤リン難燃剤 5.6 wt%含有PBT試料のEGAサーモグラム
600
[ºC]
熱分解炉温度: 100-600ºC ( 20 ºC/min ), GCオーブン温度: 300ºC
EGA チューブ: 不活性化金属チューブ, L=2.5 m, i.d.=0.15 mm, カラム流量: 1 mL/min He, スプリット比: 1/50, 試料量: 0.2 mg
1) M. Iida, K. Miyatake, A. Kimura, Anal. Sci. 2008, 24, 539-542; 2) 第20回高分子分析討論会講演要旨集、石村ら、講演番号II-17, 2015
Keywords : EGA-MS、難燃剤、赤リン、定量分析
使用製品 :
多機能パイロライザー, F-Search
応用分野 :
検査、品質管理
関連テクニカルノート :
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