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まちのシンボル-綱島の象徴-

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まちのシンボル-綱島の象徴-
シリーズ わがまち港北 第 208 回
まちのシンボル
3 月 13 日、綱島桃まつりが綱島市民の森桃の里広
場で開催されました。当日は曇り空でしたが、幸い
雨に見舞われることはなく、会場である桃の里広場
は多くの人で賑わっていました。親から子へと継い
でいけるようなお祭りが欲しいとの願いから、平成
9 年(1997 年)に始まった桃まつりは今年で 20 回の節
目を迎えました。綱島の桃は、戦前には岡山を抜い
て日本一の収穫量を誇ったこともありましたが、現
いけのや
在桃農家は綱島東の池谷家のみとなっています。そ
して桃畑のすぐそばでは、相鉄東急直通線の新綱島
駅(仮称)の工事が進んでいます。
池谷さんが開会式のご挨拶の中で、これから進ん
で行く綱島の新しいまちづくりに触れながら「桃作
り・桃の文化は、これに共感してくれる方の協力が
ないと続けていくことが出来ないものであり、これ
が新しいまちのエッセンスになるはずだと確信して
いる」との主旨のお話をされたのが、筆者にはとて
も印象的でした。
桃は綱島の歴史的なシンボルとして、今もまちづ
くりや地域振興に活かされています。また鶴見川や
温泉なども同様に、綱島地域の歴史と切っても切り
離せないまちの象徴といえるでしょう。
さて、綱島には文化のシンボルとして地域から新
たに生み出されたものがあります。それは彫刻です。
綱島の商店街は「水と花と彫刻文化のある街」をコ
ンセプトとして掲げています。自然の象徴である水
と花に対して、彫刻は綱島の文化の象徴として、ま
ちの重要な要素となっているようです。綱島の彫刻
はパデュ通りがあるモール商店街を中心として、12
点が設置されています。
綱島モール商店街周辺は、かつて温泉旅館街でし
た。しかし交通網の発達に自動車の普及、レジャー
の多様化などもあり、旅館街は衰退の道を辿ってい
きます。その後、旅館街は地域生活に密着した商業
地区を目指す新しいまちづくりの中で、モール商店
街として生まれ変わることとなりました。モールは、
遊歩道や、歩行者専用区域を設けた商店の通りとい
う意味です。
この新しいモールの建設にあたって、再開発協議
会や商店会では昭和 55 年(1980 年)に、シンボルと
して彫刻を設置することを決めます。その後、地元
役員や専門家、横浜市職員らをメンバーとする「綱
島彫刻設置委員会」が組織されます。「綱島に文化
-綱島の象徴-
の香りと息吹を」を合言葉に彫刻についての勉強や
市内外への野外彫刻の視察なども行い、この場所に
ふさわしい彫刻はどういうものか、真剣に討議が重
ねられました。そしてその結果、昭和 57 年(1982
いっしきくにひこ
年)12 月に、一色邦彦氏に作品の制作を依頼するこ
ととなります。それから彫刻名称の募集や制作者の
一色邦彦氏の作品展等の催しを経た後、昭和 58 年
(1983 年)10 月 8 日、彫刻の除幕式が行われました。
イトーヨーカドーの正面、パデュ中央広場に設置さ
れている「舞い降りた愛の神話」がその彫刻です。
この彫刻設置と台座の制作に携わった建築家の
み さ わ ひろし
三沢 浩 氏は、彫刻が置かれた中央広場を「楽しく歩
け、坐れ、語れる」、直線上の長いモールの核とい
うべきものと述べています。また、当時の横浜市の
さ と う やすへい
都市計画局長佐藤安平氏は「綱島に設置された彫刻
のまわりに人びとが集い、語らい、そして綱島の誇
りとなり、多くの人々に末永く愛され、すばらしい
文化が育つことを願うものであります」と記してい
ます。現在そのまわりには人ではなく自転車が並ん
でいるのがちょっと残念ですが、関係者のそうした
熱い思いの中で誕生した広場と彫刻であることを、
心に留めて置きたいものです。
現在、彫刻は 12 点設置されていますが、全ての彫
刻が一度に置かれた訳ではありません。そのうちの
4 点は第 3 回横浜彫刻展(ヨコハマビエンナーレ'93)
で奨励賞を受賞した作品です。横浜彫刻展は横浜市
が「文化的環境づくり」「魅力のある街づくり」の
一環として実施した野外彫刻展です。あらかじめ設
置する地域を決めて作品を募集し、優秀な作品を市
内各所に設置しました。第 3 回横浜彫刻展は設置地
域を鶴見区として作品を募集しており、入選作品 15
点のうち、11 点は鶴見区に設置されましたが、奨励
賞の 4 点は綱島モール商店会が購入して設置したそ
うです。
野外彫刻は、横浜彫刻展のように行政が進めるま
ちづくりの一環として設置されたケースもあります
が、綱島の彫刻設置は地域が主体となって進められ
たことも 1 つの特色となっています。
綱島では、4月2日に綱島公園桜まつり、9日には鶴
見川の河川敷で菜の花まつりがあります。お祭りへ
向かう道すがらや帰り道、ちょっと寄り道して綱島
の彫刻文化に触れてみてはいかがでしょうか。
記:林 宏美(公益財団法人大倉精神文化研究所研究員)
大倉山講演会「福澤諭吉の経営思想と門下生の企業者活動」
日時:4 月 16 日(土)14:00~15:30
会場:大倉山記念館ホール
主催:公益財団法人大倉精神文化研究所
問合せ:045-834-6637
(楽・遊・学
定員:先着 80 名 入場無料 当日直接会場へ
平成28年4月号)6
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