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報告書 - 岩手県
平成 26 年度県民協働型評価推進事業報告書 「川下から見る森林経営」 提言の要旨 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅰ はじめに:報告書の目的と方法 Ⅱ 木材需給統計から見た日本と岩手の林業の現状と課題 Ⅲ 調査結果 Ⅲ-1 アンケート調査 ・・・・・・・・・・・・・・・ 15 Ⅲ-2 ヒアリング調査 ・・・・・・・・・・・・・・・ 25 Ⅲ-3 ワークショップの結果 ・・・・・・・・・・・・ 52 Ⅳ 提言 (資料) ・・・・・・・・・・・・ 1 ・・ 3 6 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 木材市場アンケート調査票 ・・・・・・・・・・・ 67 岩手大学・財政学研究室 2014 年 9 月 30 日 提言の要旨 1 木材流通及び加工に関する統計の整備と実態把握を行う。 2 木材流通について (1)県は、山元の情報(山の状況、立木の数や質、種類、森林認証の有無等) を登録してもらい、川上・川中・川下が共有できるような「森林データベース」 を管理・公開する。 (2)原木の仕分け機能について。運送コスト削減のため山元土場での仕分け を進める。また、良質材に関しては、盛岡木材流通センターに産地・材質等の わかる密度の濃い情報プラットフォームを設置して地方市場と結ぶとともに、 一部製材機能を併設することにより、岩手県木材市場の高機能化・全国化を図 る。 (3)木材のストック管理について。適正ストックの管理を、情報データベー スによる管理、物的在庫管理、リスクマネジメントの面から政策的関与を検討 する。 3.木材加工業について (1)「大きな流れ」への対応としては、一定の品質の材を安定供給するため、 県産材に対する品質保証制度の採用、木材加工業の協同化及びストック管理政 策を推進する。 (2) 「小さな流れ」への対応としては、森林所有者~消費者をつなぎ「素材業 者」 「製材業者」 「加工業者」 「建設業者」の流れを統括する「木材コーディネー ター」の育成と、それを可能にする「木材加工ネットワーク」を育成する。 4.流通におけるリスク管理を行うために、立木の段階での情報管理やストッ クヤード等における物的在庫の管理を推進する。 5.カスケード利用に役立つ木質バイオマス事業を推進するため、一定圏域を 目安として熱利用施設を普及・確保する。また、そのための方策の一つとして、 LCC を考慮した低利融資制度の新設を検討する。 6.森林認証ポイント制度を導入し、認証が木材価格に反映される仕組みにす ることを通じて、持続可能な森林管理と事業として成り立つ林業の両立を目指 す。そのための財源の一つとして、 「いわての森林づくり県民税」の使途の見直 しを検討する。 1 2 Ⅰ はじめに:報告書の目的と方法 (1)報告書の目的 この提言は、中山間地域の産業である林業を振興することによりその地域の 「しごと」を産業として成り立たせることを目的に取りまとめを行った。 国産材の木材価格は、外国産材の輸入自由化が全面的に認められて以降、為替 相場の影響を受け価格の乱高下を繰り返してきた。そのため安価な外国産材に対 抗するべく山元でのコストカットが進められてきたが、低い価格で木材を販売し ても収益が上がらず、山元の総収入が減少し続けてきた。 このような状況の中で、林業を産業として成り立たせるためには、①木材の単 価を上げて木材を出来るだけ高く売ること、②木材の売る量(製材用・単合板用・ チップ用、や木質バイオマス燃料を含めた「総量」)を増やすこと、以上 2 点が 重要なポイントになると考える。 岩手県は総土地面積のうち約 77%を森林が占めており豊かな森林資源を有して いるが、広大な県土ゆえに、価値ある立木の情報管理や木材販売の適材適所がで きていない。また、バイオマス資源である木材の流通におけるリスクが高く、そ のリスク負担が山元に集中している。他方、国の林業政策の政策対象が近年まで 川上だったために、県の林業関係の統計や指標の量や正確さを見ても、木材の出 口である川下を正確に捕捉できていない状況にある。 以上のような状況を踏まえ、「川下から見る林業」をテーマに据え、流通や価 格について第三者の視点で木材が最終消費される川下から順を追って調査を実 施してきた。 この提言が中山間地の産業である林業のさらなる振興と、林業が産業として成 り立つための施策推進に有益な知的貢献が果たせれば望外の喜びである。 なお、最後になりますが、評価の実施にあたってご協力いただいた岩手県農林 水産部林業振興課、岩手県森林組合連合会をはじめとする関係者のみなさま、ア ンケート調査にご協力いただいた県内外の事業者のみなさま、視察・ヒアリング に丁寧に対応いただいた他自治体、団体の関係者のみなさまに厚くお礼を申し上 げます。 (2)評価の手法 ① アンケート調査 木材流通や木材需要を把握するため、岩手県森林組合連合会の共販所の入札 参加事業者を対象にアンケート調査を実施し、その結果について分析した。 ② ヒアリング調査等 3 (ア) 県担当課ヒアリング 県の林業政策についての現状を確認するためヒアリング調査を次の とおり実施した。 ・担当課:林業振興課 (イ) 専門家ヒアリング 評価活動の実施に当たって、専門性を補完するため、林業に関する専 門家にヒアリング調査を次のとおり実施した。 ・岩手大学農学部 伊藤幸男准教授 (ウ) 県内の関係団体ヒアリング 県内の林業の現状を確認するため、関係団体および事業者にヒアリン グ調査を次のとおり実施した。 ・岩手県森林組合連合会 ・釜石地方森林組合 ・釜石市農林課 ・岩井沢工務所 (エ) 先進地ヒアリング 先進的な事例について調査するため次の通り先進地視察を実施した。 <木材生産> ・日吉町森林組合 <木材流通関係・住宅建設関係> ・住友林業株式会社 ・物林株式会社 <木材加工> ・協同組合高知木材センター <川上~川中~川下をつなぐ> ・NPO 法人サウンドウッズ ・京都府森林組合連合会 <行政機関> ・高知県林業振興・環境部 ・京都府林務部 ③ 文献調査 評価活動の実施に当たって、林業に関する理解を深めるため文献調査を次 4 のとおり実施した。 ・梶山恵司『日本林業はよみがえる―森林再生のビジネスモデルを描く』 日本経済新聞出版社 (2011/1/19) ・速水亨『日本林業を立て直す~速水林業の挑戦~』日本経済新聞社 (2012/8/22) ・岩手・木質バイオマス研究会「新たな地域づくりと木質バイオマスの 普及に関する政策提言」 (2011/7) ・林野庁「国産材の加工・流通・利用検討委員会」資料 ・農林水産省「木材需給報告書」各年版 ・岩手県「岩手県林業の指標」各年度版 ④ ワークショップ(「評価報告書(案) 」についての関係者意見交換会) 岩手県内の林業に関わるみなさまにお集まりいただき、提言作成に向けた ワークショップを実施した(2014/9/24)。 5 Ⅱ 木材需給統計から見た日本と岩手の林業の現状と課題 (1)日本と岩手県の木材需給 図表Ⅱ-1 木材供給量の推移 単位:千m3 注1 「輸入その他」は、 「輸入木材製品・その他」と「輸入薪炭材」の合計。 注2 供給量は丸太換算材積であり、丸太以外の形態で輸入されたものについては、換算率を用いて丸太材積 に換算した値である。 (出所)農林水産省「木材需給報告書」より作成。 図表Ⅱ-2 岩手県における主要樹種別素材生産量の推移 単位:千m3 (出所)農林水産省「木材需給報告書」より作成。 6 図表Ⅱ-1は、1965 年~2012 年までの日本の木材供給量(国内生産量+輸入量)の 推移を示している。国内生産量は、1965 年の 56,616 千 m3 から急速に減少し 2002 年 に 16,920 千 m3 と底を打ったあと、漸増傾向に転じ 2012 年には 20,318 千 m3 となって いる。この間、木材輸入量は急増したが、1996 年に 90,447 千 m3 とピークを迎えた後 は減少傾向に転じ、2012 年には 51,870 千 m3 となっている。一方、輸入木材の内訳は 大きく変化した。木材輸入が拡大した当初、そのほとんどが丸太輸入だったが、丸太輸 入量は、1970 年にピークである 43,289 千 m3 となった後は急速に減少し、現在では、 木材輸入の大半は木材製品となっている。2012 年の輸入量の順位は、1 位:木材チッ プ(19,400 千 m3) 、2 位:製材品(11,835 千 m3) 、3 位:合板(6,734 千 m3)で、4 位が丸太(5,970 千 m3)である。 つまり、日本国内における木材供給をめぐる国際競争は、国内木材需要の総量が減少 傾向にある中で、国産丸太と輸入丸太との間ではなく、国産丸太を用いて生産された木 材製品と輸入木材製品との間で行われていると言える。 したがって、今後の林業振興を考えるうえでは、国内における木材加工、木材製品生 産が重要であり、さらに、素材生産~木材加工~木材製品製造~消費を、川下の視点で 一体的に考える必要がある。 また、岩手県内の素材生産は主として「すぎ」 「からまつ」 「広葉樹」からなる(図Ⅱ -2)。 図表Ⅱ-3 需要部門別素材生産量の推移(全国) 単位:千m3 (出所)農林水産省「木材需給報告書」より作成。 7 図表Ⅱ-4 需要部門別素材生産量の推移(岩手) 単位:千m3 (出所)農林水産省「木材需給報告書」より作成。 また、需要部門別素材生産量の推移を見ると、この 10 年間における素材生産量の増 加は、合板向け生産の増加によって主導されていたことがわかる。なかでも岩手県にお ける合板用素材生産の伸びは大きい(2011 年は、東日本大震災により県内の合板工場 が被災したために減少) 。 図表Ⅱ-5によれば、岩手県における素材生産に占める合板用の割合は、2001 年の 0.5%から 2010 年の 27.9%へと急増した。その一方で、製材用の割合は、2001 年の 49.6%から 36.1%へと減少した。全国では、製材用素材生産の割合が 61.5%であるの に対し、岩手県は合板用に偏した生産拡大であった。そのことは、生産量の拡大にもか かわらず、販売額と林業収入の伸びに結びつきにくい構造を生んでいる。 図表Ⅱ-5 年次 2001 2010 2001 2010 岩手県 全国 需要部門別素材生産量の推移(全国・岩手、2001 年・2010 年) 製材用 千 m3 % 496 49.6% 454 36.1% 11,766 74.6% 10,582 61.5% 合板用 千 m3 % 5 0.5% 351 27.9% 182 1.2% 2,490 14.5% 木材チップ用 千 m3 % 499 49.9% 453 36.0% 3,826 24.3% 4,121 24.0% 計 千 m3 1,000 1,258 15,774 17,193 % 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% (出所)農林水産省「木材需給報告書」より作成。 木材生産~流通~消費は、大量生産~大量消費の「大きな流れ」と、住宅の注文生産 に代表されるような「小さな流れ」が併存するかたちで存在している。林業の振興を目 指す場合、両方の流れにそれぞれ対応する必要があり、 「大きな流れ」に対しては規格 8 に合った材の安定供給を進める必要があり、 「小さな流れ」に対しては生産側と需要側 の情報を「つなぐ」ことにより個別的なニーズに対応できるようにすることが必要であ る。 ただ、岩手県の現状は、合板用の「大きな流れ」に偏する傾向にあるので、情報の生 産・共有化とあわせて、 「仕分け機能」を強化することにより用途(需要)別生産と「良 い値」での販売を目指すことが重要である(図表Ⅱ-6参照)。 図表Ⅱ-6 需要部門別素材価格(全国・岩手、2013 年) 単位:円/m3 製材用素材価格 (すぎ中丸太) 全国 岩手 11,500 10,900 合単板用素材価格 (すぎ丸太) 10,000 - 木材チップ用素材 価格 (針葉樹丸太) 4,300 4,800 木材チップ用素材 価格 (広葉樹丸太) 8,100 9,000 (出所)農林水産省「木材需給報告書」より作成。 (2)木材・木材製品価格 【素材価格】 図表Ⅱ-7 製材用素材価格の推移(1984 年~2012 年) 単位:円/m3 注1 なら大丸太の価格は、「木材需給報告書」では 2006 年までしか調査されていない。 注2 すぎ中丸太、ひのき中丸太、からまつ中丸太は、径 14~22cm,長 3.65~4.0m。なら大丸太は、径 40~ 48cm,長 2.4m 上。米つが丸太は、径 30cm 上,長 6.0m 上。 (出所)農林水産省「木材需給報告書」より作成。 図表Ⅱ-7から、製材用素材価格は次のような傾向にあることが分かる。 9 ①国産材に関しては、各樹種ともおしなべて価格が低下してきている。 ②ただし、樹種によって価格低下の程度は異なり、 「ひのき」価格の暴落に比べ「す ぎ」「なら」の下落水準は相対的に小さい。また、「からまつ」は、安定から上 昇気味に推移している。 ③他方、輸入材に関しては、製材用素材の代表の一つである「米つが」の価格は 80 年代から今日まで大きな変化は見られない。そのため、比較する丸太の寸法 が異なるため単純に比較することは出来ないが、90 年代始めからは国産「すぎ」 価格を上回り、2007 年には国産「ひのき」とも価格水準が逆転し、2012 年現 在では、国産針葉樹丸太価格は、輸入米つが丸太価格を下回るようになってい る。 ④岩手県の人工林の主要樹種は「すぎ」 「からまつ」だが、 「なら」等の広葉樹も多 く生産していることから、近年の素材価格の動向は、岩手県林業にとって相対 的に有利に働いている。 「なら」の価格は、農水省「木材需給報告書」では、2006 年度までしか調査 されていないので、岩手県森林組合連合会共販所の落札価格で補足しておく。 2014 年 1 月~3 月の取引状況は、 「なら」11,663 本、材積 1,927m3、総落札金額 69,198,376 円で、平均落札単価は 35,903 円/m3 だった。 「すぎ」の 3 倍程度の 単価となっており、広葉樹が岩手県の林業経営にとってより重視されるべきだろ う。 図表Ⅱ-8 都道府県別素材価格(すぎ中丸太、2012 年) 単位:円/m3 年平均 最高値月価格 年平均 最高値月価格 全国 11,375 12,200 和歌山 11,550 13,400 青森 10,983 11,000 岡山 11,817 12,800 岩手 12,425 12,600 徳島 11,817 12,800 宮城 11,308 11,700 愛媛 11,017 12,100 秋田 10,300 11,000 高知 11,642 12,800 福島 11,275 11,700 福岡 11,958 12,600 栃木 12,408 13,800 熊本 12,250 13,400 新潟 13,058 13,900 大分 10,517 11,500 静岡 11,008 11,900 宮崎 11,000 12,200 三重 11,392 12,500 鹿児島 11,808 13,400 奈良 13,858 15,000 (出所)農林水産省「木材需給報告書」より作成。 一方、都道府県別の素材価格を、岩手県の代表的な樹種である「すぎ」について比較 したのが図表Ⅱ-8である。この表から次のことが言える。 ①岩手県の「すぎ」中丸太価格は、全国平均よりも高値が付いている。 10 ②とは言え、吉野杉ブランドで知られる奈良県に比べれば価格水準は低く、年平均 価格で 1,433 円、最高値月価格で比較すれば 2,400 円の開きがある。 ③丸太価格は、全国的には(特に西日本で)、秋から冬の時期に高く夏には安くな る傾向があるが、岩手県など東北地方では年間を通した価格変動が比較的小さい。 したがって、次の対策を取ることによって、より高値での販売を期待することができ るのではないか。 ①仕分け機能を強化し、品質管理と「適材適所」とブランド化をすすめること。 ②上記を支える物流の改善を図るため、川上~川中~川下の適切な場所にストック 機能を整備し、適時販売を目指すこと。 ③また情報流改善を図るため、川上~川中~川下の各地点における情報の生産・蓄 積・共有・発信を行い、各段階のステイクホルダーをつなぐこと。 【木材製品価格】 図表Ⅱ-9 木材製品価格の推移 単位:円/m3 年 1990 2000 2012 すぎ正角 61,700 47,400 42,700 すぎ正角 (乾燥) ひのき正 角 60,400 62,400 120,200 75,700 64,600 ひのき正 米つが正 角(乾燥) 角 93,700 81,400 米つが正 角(防腐処 理、乾燥) 55,600 49,500 74,900 注:製材品の寸法は、米つが正角(防腐処理材・乾燥材)を除いて、いずれも厚 10.5cm,幅 10.5cm,長 3.0m。 米つが正角(防腐処理材・乾燥材)は厚 12.0cm,幅 12.0cm,長 4.0m。 (出所)農林水産省「木材需給報告書」より作成。 11 木材製品価格の推移には次のような傾向が見られる(図表Ⅱ-9) 。 ①輸入材である「米つが」正角価格は安定ないしはやや上昇気味に推移している一 方で、国産木材製品価格は 90 年代以降おしなべて低下傾向にある。 ②樹種別に見ると、ひのき製材品はすぎ製材品に比べて価格低下が激しい。これは 素材価格と同じ傾向である。 ③乾燥材と未乾燥材を比較すると、当然のことながら乾燥材の方が高いが、乾燥― 未乾燥の価格差が拡大してきている。その結果、 「すぎ」正角価格では、この 10 年 間、未乾燥材価格が安定ないし低下しているのに対し、乾燥材価格は上昇している。 価格低下が続いてきた製材品は、この 10 年来、安定へと転じた。ただし、市場は需 要に応じた質を求めており、その結果が、「すぎ乾燥材」価格の上昇や「米つが(防腐 処理、乾燥材)」の高価格での評価として示されているのであろう。したがって、ただ 供給すれば良いのではなく、高品質で需要に即応した供給体制を整備することが重要で ある。 (3)木材加工業の現状 ~製材業~ 木材加工業のうち製材業の工場数はこの 25 年間で激減し、全国でも岩手県でも 1984 年時に比べ 1/3 以下となった。工場の規模拡大も見られるとはいえ、総出力数も大幅に 減少しており、小さい製材工場から順に脱落してきたと言うべきだろう(図表Ⅱ―10、 11 参照)。原木輸入がなくなってきたことも原因と考えられるが、今日では、各地域で 需用側のニーズにあった製材ができなくなる状況が生じているおそれがある。 林業振興のためには、木材生産だけではなく木材加工業なかでも製材業の維持が重要 である。 図表Ⅱ-10 製材工場の規模別工場数と総出力数(全国) (出所)農林水産省「木材需給報告書」より作成。 12 図表Ⅱ-11 製材工場の規模別工場数と総出力数(岩手) (出所)農林水産省「木材需給報告書」より作成。 (4)木材流通 岩手県内における木材流通(素材、木材製品等)の現状のうち統計類から知ることが できるのは、残念ながら図表Ⅱ-12 までである(岩手県「平成 22 年度版岩手県林業の 指標」より作成)。生産・需要量はある程度わかるが、流通過程については木材市場取 扱量が把握されるだけで、その他の流通は、合板工場等の木材加工業への直送や商社に よる仲介等が考えられるが、その実態は不明である。なお、農林水産省「木材需給報告 書」も資料の出所はほぼ同じであり、同様の結論までしか得られない。川下(需要側) のニーズと結びついた林業経営を進めるためには、その出発点としてその中間に当たる 流通過程の統計整備が求められる。 13 岩手県における木材生産・流通・需要のフロー(2009 年、千 m3) 図表Ⅱ-12 木材市場取扱量 104 総数 製材品出荷量 255 国産材 外材 219 1,419 建築用材 総供給量 113 1,233 1,120 1,189 木材需要(県内) 素材生産量 14 469 土木建設用材 製材 13 811 456 内針葉樹材 14 420 木箱仕組板・梱包用材 420 100 0 木材チップ 244 ? 378 344 その他は? 内広葉樹材 単合板 工場残材等から 素材から 4 126 442 568 木炭生産量(千t) 木材チップ生産量 5 117 257 家具建具用材 県外移入 計 82 3 186 (間伐材流通量) 47 その他 県外移出 634 113 (間伐実施状況) 257 外材輸入 (間伐材生産量) 製材・加工材 34 2 原材料 175 丸太 (間伐材未利用量 14 Ⅲ 調査結果 「川下」から見た木材生産・加工・流通の課題とそれに対する対策を検討するため、 次の調査を実施した。 ○ 木材市場アンケート調査 岩手県森林組合連合会が設置・運営している共販所(原木市場)で入札に参加している 事業者を対象として、入札事業者の事業内容、木材市場の利用状況、市場に対する評価 等を聞いた。 ○ 岩手県内外の事業者等に対するヒアリング調査 木材生産から消費に至る、川上~川中~川下をうまくつなぐことにより、事業として成 り立ち、かつ持続可能な林業を岩手県で成立させるための方策を検討する、という観点 から、県内外の各地で行われている様々な取組みや木材流通の現状を知るため訪問調査 を行った。調査結果は以下の通りである。 Ⅲ-1 木材市場アンケート調査 (1)調査方法等 調査対象:岩手県森林組合連合会の共販所(盛岡、一関、遠野、陸前高田、宮古、二戸、 久慈、浄安、釜石、東磐の各木材市場)の入札参加事業者を対象に、郵送法により調査 した。 調査時期:2014 年 7 月 14 日に郵送し、8 月 22 日までに返信により回収した。 郵送数・回答数: 郵送数 159 有効回答数 回答率 86 54.1% (2)調査結果 *集計結果表のパーセントは、有効回答数に対する割合。 ①あなたの事業所の所在地をお書き願います。 岩手県 34 39.5% 岩手県以外 51 59.3% 1 1.2% 無回答 15 <岩手県内の市町村> 盛岡市7、二戸市3、大船渡市3、奥州市、北上市、久慈市、宮古市、滝沢市、遠野市、 八幡平市、花巻市、岩泉町2、紫波町2、矢巾町2、岩手町、雫石町、住田町、西和賀町、 平泉町、洋野町、山田町 <岩手県外の県> 秋田県 16、山形県5、福島県5、宮城県4、青森県3、新潟県3、埼玉県2、静岡県2、 岐阜県2、岡山県2、長野県、愛知県、福井県、京都府、兵庫県、島根県 ○岩手県外の事業者が入札参加者の多数を占める。東北 6 県が多いが、西日本からの買 い付けも見られる。 ②あなたの事業所の業種をお教えください。 合計 製材所 岩手県内事業所 岩手県外事業所 46 53.5% 22 64.7% 23 45.1% プレカット・集成材工場 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% ハウスメーカー 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 工務店 6 7.0% 1 2.9% 5 9.8% その他 33 38.4% 11 32.4% 22 43.1% 無回答 1 1.2% 0 0.0% 1 2.0% 上の表で「製材所」に区分した事業者の中に、他の業種も兼営しているとの回答が 10 件あった。兼営の内訳は下のとおり(ただし、2つの事業を兼営している事業者が 1 件 あったため、合計は 11 件となっている)。 プレカット・集成材工場 2 ハウスメーカー 1 工務店 1 その他 7 <「その他」の内容> 川上:素材生産7、木材流通11、銘木2 川中:製材所・木工工場4、単板1、チップ製造2、建築材料製造・販売4 川下:建築設計・施工2、家具・工芸品・楽器7 ○入札参加業者は、製材所が最も多いが、その他もかなりの部分を占める。特に、県外 からは、木材流通事業者、工芸品製造業者など、良質材・特殊用途材を求める動きが見 られる。 16 ③木材購入先を、下の選択肢から多い順に並べて番号で記入してください。 多い( )→( )→( )→( 多い順(1) 木材流通市場 その他 多い順(4) 合計 21 6 1 73 14 12 7 40 24 26 18 4 72 7 6 8 13 34 52.3% 24.4% 7.0% 1.2% 84.9% 8.1% 16.3% 14.0% 8.1% 46.5% 27.9% 30.2% 20.9% 4.7% 83.7% 8.1% 7.0% 9.3% 15.1% 39.5% その他 山元、素材業者から直接 多い順(3) 7 山元、素材業者から直接 商社 多い順(2) 45 商社 木材流通市場 )少ない <「その他」の内容> 立木6 森林組合・県森連4、国有林2 外国の業者、外材業者3、木材流通業者6 製材工場 ○流通市場参加者を対象とした調査のため当然とは言えるが、木材購入先は、第 1 に、 木材流通市場、次いで山元・素材業者から直接購入する場合が多い。商社を通じた購入 はあまり多くない。 ④購入先別に、木材のおもな用途を教えてください(複数回答可) 。 木材流通市場で入手した木材 木材流通市場以外から入手した木材 建築用構造材 54 62.8% 49 57.0% 建築用内装材 48 55.8% 39 45.3% 家具・装飾品 27 31.4% 25 29.1% 8 9.3% 13 15.1% 12 14.0% 15 17.4% 2 2.3% 2 2.3% 16 18.6% 12 14.0% 合板パルプ・紙 チップ・燃料 きのこ原木 その他 ○木材流通市場で入手したか市場以外から入手したかによって用途に大きな違いはな いが、市場入手木材は、どちらかといえば建築材や家具・装飾品に使われることが多く、 合板、パルプ、チップ等に使われる割合は少ない。木材市場参加者が木材市場に求める のは、相対的に良質な木材だと言えよう。 17 ⑤岩手県内の木材流通センターを利用される理由は何ですか(複数回答可) 。 合 計 岩手県内事業者 岩手県外事業者 距離、立地上便利だから 32 37.2% 19 55.9% 12 23.5% 木材の質が高いから 37 43.0% 11 32.4% 26 51.0% 木材の価格が安いから 9 10.5% 2 5.9% 7 13.7% 必要な木材に関する情報が得られるから 36 41.9% 14 41.2% 22 43.1% その他 16 18.6% 2 5.9% 14 27.5% ・必要な原木丸太がそろっているから、購入できるから ・必要な木材(樹木種)が入手できるから ・必要な木材の入手が市場からのみ ・良質の松丸太があるから ・特殊な材料が比較的揃いやすいから ・他からの入手が困難、ほとんどない ・他に無い(??的に) ・必要な物を必要な分だけ購入できる ・量的に入手しやすい(必要な量を集めやすい) ・必要な量だけ買えるから ・木材の量がまとまる ・量が多いから。担当者が努力してくれる。 ・○○さんなどの対応がありがたい ・利用が少ない ・他の素材業者からの入荷に合わせて都合がよい ・適材があった時買入 「木材の質が高いから」、「必要な木材に関する情報が得られるから」「距離、立地上便利だか ら」が、岩手県内の木材市場が利用される主な理由となっている。岩手県外の事業者につい ては、「質の高さ」「必要な木材に関する情報」が大きな要因となっている。さらに県外事業者 は、「その他」の理由をあげた回答が多いが、そこでは、必要な樹種や特殊な材が入手できる こと、まとまった量を確保できること、また、担当者の努力が評価されている。 木材市場については、①良質で多様な樹種をまとまって確保すること、②市場に出される木 材に関する情報の提供が、需要者から求められている。 18 ※⑤で「4」を選ばれた方は、木の入荷情報をどのようにして得ているのかもお教え ください。 合計 岩手県内事業者 岩手県外事業者 岩手県森林組合連合会のホームページ 11 32.4% 4 30.8% 7 33.3% 流通センターからの連絡 27 79.4% 10 76.9% 17 81.0% 4 11.8% 2 15.4% 2 9.5% その他 回答者数 34 13 21 ○県内・県外事業者を問わず、情報の入手方法は、多くが「流通センターからの連絡」 であり、センター職員の努力の成果が見られる。他方、ホームページの活用度合いが低 いという問題点も感じられる。 ⑥現在市場に運ばれる木材の大きさはある程度統一されていますが、規格外のサイズの 木材を欲しいことがありますか。 合計 岩手県内事業者 岩手県外事業者 よくある 17 19.8% 5 14.7% 12 23.5% たまにある 26 30.2% 12 35.3% 13 25.5% ない 38 44.2% 16 47.1% 22 43.1% 5 5.8% 1 2.9% 4 7.8% 無回答 製材所 よくある 工務店 その他 無回答 7 15.2% 0 0.0% 10 30.3% たまにある 18 39.1% 2 33.3% 6 18.2% ない 20 43.5% 2 33.3% 16 48.5% 1 2.2% 2 33.3% 1 3.0% 無回答 1 ○規格外の木材に対する需要は、「よくある」「たまにある」を合わせると 50%にのぼ り無視できない状況と言える。とりわけ県外事業者、「その他」事業者の「よくある」 との回答が多く、木材市場の機能と取扱量の拡大を目指すためには対応策の検討を要す る。 ※⑥で「1」「2」を選ばれた方は、規格外の木材としてどのようなものが欲しいか もお教えください(長さ、材径、樹種、用途など)。 ・10~12m、φ40cm 上、杉 つまり長伐・太物 ・10m~15m 位、径は大きい程よい、60~80~100~1200 ・5m、6m、7m材 ・7~8 以上、社寺仏閣用などの特殊材 ・曲線丸太製材の製材をして木材の素材を生かして使いたい。社寺建築において破風材、蛯虹深 19 等が特に大変。参考 6000×φ700~750 破風虹深、3300×φ900(﨔、桧、杉等) ・栗丸太、桂丸太、桐丸太、そのた広葉樹丸太、6000 の長さの材料(定尺は 3000、4000 が多い) ・けやき、松などで社寺に利用の場合、寸法はその時々 ・広葉樹専門なので良材を求む ・材径が大きいほど良い ・材径の太いもの ・社寺、文化財、在来工法の場合、8m~13m 位の長尺物の大径木。岩手県森連の伐採方法は非常 に助かる ・樹種(タブノキ、シオジ、ツバキ、ハクウンボク、エゴノキ、オヒョウニレ、カマツカ、ズミ) ・スギ…5.0~10.0・和 40(化粧桁材)、ヒノキ…6.0~7.0・和 20~24(化粧柱) ・杉丸太の長尺材を12mに伐採して欲しい ・その都度 ・長尺な丸太 ・当社は神社・仏閣用材を主に取り扱っているため原木は特に規格に拘る必要なし。職人が原木 のよさを生かすのみ。 ・特殊材 ・特殊材注木材にて、ケヤキ、ナラ、太径木策、建築用(造作用) ・長さ、材径 ・長さ、材径、樹種 ・長さ、樹種 ・長さ 2m40cm ・長さ4m~6m、巾150~300mm、青森ひば、和風住宅 ・長さが 3.00 と 4.00 ・根曲り材、または大径木、欅、桧、杉 ・太めの材 ・松、大径木(銘木) ・松材、小屋梁の上引材 ・構造用長尺材(杉、赤松) ・今は長さが 2m と 4m だ、私達は 3.65m が必要 ・樹種 ・杉材以外の樹種 ・長さ、材径、樹種 ○大径木、適切な長さ、樹種等に対する要望が多く見られた。岩手県森連の対応を評価 する意見もあったが、特殊な需要への個別的対応と情報提供がさらに望まれる。 20 ⑦入手した木材は、平均してどのくらいの期間あなたの事業所内にストックとして置い てありますか。 合計 製材所 工務店 その他 10 日以内 3 3.5% 1 2.2% 0 0.0% 2 6.1% 1 ヶ月以内 8 9.3% 4 8.7% 1 16.7% 3 9.1% 2~3ヶ月くらい 31 36.0% 17 37.0% 2 33.3% 12 36.4% 1 年以内 19 22.1% 15 32.6% 1 16.7% 3 9.1% 1~3年 12 14.0% 4 8.7% 2 33.3% 6 18.2% 3 年以上 3 3.5% 0 0.0% 0 0.0% 3 9.1% 10 11.6% 5 10.9% 0 0.0% 4 12.1% 無回答 無回答 1 ○入手した木材を事業所内でストックとして置いてある期間は、最も多い回答は「2~ 3ヶ月くらい」だが、それ以上長期にストックしているという回答が約 40%ある。木 材加工事業所にとって、在庫投資が一定の負担となっていることが想像される。 ⑧木材の乾燥をどこで、どのように行っていますか(複数回答可) 。 自分の事業所 自分の事業所 他の事業者に委 で(天然乾燥) で(人工乾燥) 託(天然乾燥) 他の事業者に委 乾燥しない 託(人工乾燥) その他 53 28 3 15 14 5 61.6% 32.6% 3.5% 17.4% 16.3% 5.8% ⑨購入した木材をストックしておく場所は十分ありますか。 十分ある 35 40.7% ある程度ある 38 44.2% あまりない 7 8.1% まったく足りない 2 2.3% 無回答 4 4.7% ⑩必要なときに必要な木材が手に入らなくてお困りになることはありますか。 よくある 14 16.3% ときどきある 38 44.2% ほとんどない 26 30.2% ない 4 4.7% 無回答 4 4.7% ○原木市場での入札に参加している事業者の場合、自分の事業所で乾燥(天然または人 工)まで行っている事業者が多く、ストックしておく場所もある程度は確保されている ようだ。ただ、「必要なときに必要な木材が手に入らなくて困ること」は、「よくある」 「ときどきある」を合わせると 60.5%にのぼる。 21 ○したがって、多様な木材需要に随時対応できるようにするためには、川上~川下のど こかにストック(在庫)を持っていることが好ましい。ただし、それは必ずしも物的在 庫には限られない。山元情報というかたちで、「在庫」情報を生産・提供することも考 えられる。そのことは、問 13 の記述回答にある「大径木や高齢木などの希少価値が高 い原木は立木の段階での情報提供システムがほしい」との意見にも示されている。 ⑪岩手県内の木材流通センターは買い手の様々な需要に対応できていると思いますか。 1.よくできている 2.ある程度できている 3.あまりできていない よくできている 13 15.1% ある程度できている 59 68.6% あまりできていない 9 10.5% できていない 1 1.2% 無回答 4 4.7% 4.できていない ○買い手の需要に対する対応という点では、木材流通センターは概ね高い評価が得られ ている。 ○ただ、問 13 の記述では、①立木段階での情報提供や原木の産地証明、②仕分けの精 度向上、③製材機能の付加、④運搬コスト、などの対応を求める声があった。 ⑫今年の夏から電子入札に移行するようですが、便利な入札方法だと思いますか。 1.思う 2.思わない 3.わからない 思う 15 17.4% 思わない 22 25.6% わからない 43 50.0% 6 7.0% 無回答 ○電子入札については、まだよく知られていないのが現状である。そのなかで、「材の 写真があれば遠方の会社は助かる」という意見や、 「PC のディスプレイに木材の質感を 出せるのか不安」という声があった。電子入札の目的を事務の効率化のみに終わらせる のではなく、原木情報の提供を工夫することにより、岩手の原木市場をより全国的な需 要に対応する市場に成長させる機会としたい。 ⑬流通市場以外のことも含め、困っていること、問題点、希望することなどがあればお 教えください。 ・(⑫について)私は現物を見て入札する ・(⑫回答3について)慣れると良いと思う ・一般的に入手が容易な素材はともかく、大径木や高齢木などの希少価値が高い原木は立木の段 22 階での情報提供システムがほしい。 ・岩手県内木材市場はほとんど利用していません ・運賃コストのアップ ・企業秘密故御協力できかねます。SORRY!! ・原木の産地証明を要求される件数が多くなっている。契約書に添付するようなシステム作りも 考慮してはどうか。※発行を請求したら手数料を請求受け納入したが本来なれば原木について回 るのが筋と思うが? ・国有林の生産請負が始まると素材業者が一斉にその作業に入るので、原木の市場で素材不足に より価格高騰。必要な材も獲得しづらい。 ・材木の質の低下 ・出材の際の仕分けと選別の精度を上げてほしい。原木を「商品」として大切に扱ってほしい。 ・震災直後、全国の学校家具を納品している会社から一方的に契約解除され非常に困っておりま す。岩手には豊富に木材がありますから、岩手で生産して全国に家具や木工品を提供するシステ ムを確立したいと思っています。どうかご協力ください。 ・製材場が少なく、製材が困難 ・製材を木材流通センターで特殊材だけでも対応できるように願いたい。 ・選別を細やかに ・電子入札でも良いが、材の写真があれば遠方の会社は助かる ・電子入札について。木材の電子入札は、ネットが構築された 20 年前から希望していたが、本 来、遠方の会場に足を運ぶ事が大変であるための物で、PC のディスプレイに木材の質感を出せ るのか不安です。 (事務所の仕事が増える。)つまり、現地での下見は必須なので、買い方のメリ ットはないと思われる。 ・当社は、山形県の米沢市にあるので岩手県の木材流通センターまでは年に 1 回~2 回くらいし かいくことができなので、電子入札になれば遠隔地へ行かなくても良いが、反面、木材(丸太) を購入するための下見ができなくなるので、木材の良し悪しは必ず見なければわからないので悩 む。また、岩手県から丸太を運搬する場合、山形県米沢市までの運賃が高いのと、業者があまり いない。 ・当社は購入した代金はすぐに支払いを済ませていますが、流通センター出入りの運送会社に運 搬をお願いしていますが、なかなか日程の調整がつかないのか、到着まで日数がかかっているよ うな気がします。 ・荷物がある程度まとまらないと運べない ・年間で赤松の桁(丸太和 22~24cm)3m で 4000 本、4m で 6000 本、5m で 3000 本くらい使用する ので、なんとか岩手県でまとめたい。 ・冬の木でない木は、来た時期できたなくなり、商品としてよくない。きのこ原木なら良いので しょうが。 ・冬の除雪(椪の上など)が不十分であること ・木材のプロが少なすぎること。我々は県外からの買付が主ですので木材のことを理解し、説明 23 できる人材が少ないのは困る ・山で働く人の高齢化が問題 ・流通センター内で大割する製材機を可動してほしい。各製材所の製材機が小型化している事と 職工が力量不足が目につく ・若手人材不足、経費による資金圧迫(燃料費、設備費) ・国有林はある程度広葉樹を生販売すべき(従来のように)国は民間(広葉樹)に更新伐を進め ているヌナラ材??としてナラの伐採を進めているが国は消極的 ・国有林素材公売で販売する山元土場の林道が狭く 2.5t 車で積込み出来ない場所が有る(運賃 が割高になる) ・私共の市場は高品質材(杉、赤松)を大量に取り扱いますが岩手県、青森県、新潟県などの同 業者とも連携し注文材への対応をしています。外材、集成材などと比較して納期の問題もありま すがスピード感をもって納入、安定供給に取り組んでいます。 ・長尺材、大径材の入手がむずかしい、末口約 70、3 本ほどほしい、社寺建築に使用する ・廃材の処理 24 Ⅲ-2 A ヒアリング調査結果 県内の関係団体ヒアリング (1)岩手県森林組合連合会・盛岡木材流通センター 所在地:岩手県紫波郡矢巾町煙山第2地割 164 訪問日:2014 年 5 月 12 日(月) <業務概要(木材流通に関して)> 県内の地方森林組合が出資して組織される連合会で、県下全森林組合の情報を把握し てバックアップを行う。役員(森林組合長が兼務)は 11 人で、職員は 24 人。 また、木材流通センターの運営・管理を行う。共販所では集荷した素材を選別して購 入者が木材を入札しやすいように工夫している。また、自らも素材を生産している。 <聴取結果の概要> 販売 共販所では取扱量 20 万㎥で、流通センターに持ち込まれて競りにかけられる木材を 取扱う。一般販売では取扱量 1 万㎥で、森林組合の作業班が伐り出して工場へ直送する。 民間事業者の流通に関しては、組合が関与していないためデータがない。現在その分 野の詳細なデータを取り扱っている機関は存在しない。 取扱量 取扱量は H15 年に極端に減少した。要因は、B 材の増加によって山から合板工場への 直送が多くなったことだ。それ以降は増加傾向にあり、要因は立木が太り伐採量が増え たこと、震災の影響で合板工場運営が厳しくその分が共販場に回ってきたこと。つまり 伐採量の関係ではなく流通の問題が大きく関係している。 生産・流通の計画 計画的な生産計画は存在しておらず、そもそも県内の立木の情報を把握していないた め計画を立てることは不可能。 流通に関しては北上プライウッド(合板工場、北上市で 2015 年 2 月稼働予定)とは 年間 10 万㎥の協定締結を予定しているが、現状の山元の生産量では実現困難。伐採量 が成長量より少ないことは明らかだから、キャパは十分にあるといえる。しかし、高齢 化、路網の不整備、小規模分散型の山を所有する小規模零細な農家林家には計画的な伐 採が困難なことなどが問題となっている。 集荷 センターごとの素材集荷範囲の取り決めがないため、圏域ごとに木材の質に差が生じ ている。盛岡は全県、若干は県外からも単価が高いものであれば出荷されているが、盛 岡以外の地方センターには単価が低いものが入る傾向にある。 25 入荷 買い手は全国から集うが、出荷者は県内の事業者が多数を占めている。 HP ではだれでも価格情報が閲覧可能だから逐一木材の情報は発進していないが、過 去の傾向をもとに常連さんに特別いい木の情報を伝えることはある。 8月から電子入札が開始される。A・B 材等おおかたの丸太は、事前に見て FAX 入札 するケースが多いから画像で事足りると考えている。入札結果の集計は手作業でやって いたので締め切り後5~6時間かかっていたが、Web なら早く処理が行える。当面はシ ステムの構築に従事し、写真などの詳細の仕組みは落ち着いてから整える。 運搬は購入者が手配するのが一般的だが、運送会社の紹介は考えている。 情報だけのやり取りも想定している。つまり木材流通センターに持ち込まずに生産者 と購入者を商品の情報のみで繋ぐというもの。このシステムが完成すれば産地直送が可 能になり、運搬費などのコストを大幅に抑えられる。このシステムは小岩井農場で実施 されており、土場は小岩井農場に設置し、入札は盛岡センターに委託(代金を回収)され ているが、落札者は直接小岩井農場に取りに行くというものだ。 これを全県的な取り組みとすればコスト面でも作業効率面でも非常に有意義な流通 が実現できる。そのためには、市町村単位またはその他地域ごとにストックポイントを 作ることが必要だ(山で立木の段階で選別できればストックポイントは不要となる)。 <現状の問題点・要望について> 市民のニーズに応えるためには市町村の裁量が大切。そのための政策の仕組み作り をしてほしい。 林道を、切り出しが行われる現場近くまでトラックが入れる程度に整備してほしい。 従来通り補助金で支援するなら、増額する必要がある。 <参考になったこと> 木材流通の全体像を把握するために、工場の生産量などの情報の把握が必要。 多様なニーズに応えるために、立木段階での情報の管理が必要。 入札は盛岡市場に集中し、ストックポイントから直送すれば運送コストが削減可能。 山の近くに土場を設ける必要がある。 入札箱 26 (2)釜石地方森林組合、釜石市農林課 【釜石地方森林組合】 所在地:岩手県釜石市鵜住居町第 3 地 8 番地 3 訪問日:2014 年 6 月 23 日 <業務概要> 組合員数 1,650 人。山の管理行い、木材生産も手がけている。林業経営改善のために 集約化を行い、また、新日鉄、釜石市役所との協力のもとバイオマス事業を行っている。 2013 年度の売り上げはトータルで 21,626m3 あり、合板工場が約 6 割を占めている。 売り上げの一部には業務提携をしている釜石市内の林業事業体に売り渡している分の 手数料や、三陸国道事務所で発生している木材の販売の手数料も含まれている。 <聴取結果の概要> ●市場と流通について 合板工場に販売する木材は、岩手県森林組合連合会が全県から量を集めて送っている。 現在は主に宮古のホクヨープライウッドへ送られているが、今後は 2015 年に稼働する 北上プライウッドへの対応をしていく。A 材は住田に行き、共販は小径木の B 材の取 引が多い。運ぶ際にトラック 1 台に満たなければいろんな木が混ざって市場に送られて くる。8 割方の材は山元の土場から工場へ直送するといった直送方式がメインとなって いる。また、仕分けは山元で行われており、市場はあくまでもストックヤード的な位置 づけとなっている。土場に関しては、6~10 ヘクタールに一カ所必要となり、木を切り ながら作っていく。場所は集落から借りる。 北上プライウッドが始まれば 10 万 m3/年の木材が必要となるため、大きな土場も必 要となる。県内でストックヤードを作って安定的な供給が必要となるため、地域の森林 組合間での調整が重要となってくる。 また、売るための戦略として 4~6 月に生産する量を少なくしており、お盆明けに売 ると高い値がつく。その理由は、夏場に置いておくと虫やカビが入るためである。 ●木質バイオマス事業について(実証実験を含む) 実証実験によれば、一本の木から取れるバイオマス量は、割合で見ると丸太の約 5 割 の量、一本の木からは約 3 割の量という結果となった。また、チップ用とバイオマス用 の区別について、釜石地方森林組合の場合、広葉樹は北上に運びチップ用に、針葉樹は 新日鐵釜石に運びバイオマス用としている。さらに、県内のバイオマス賦存量も調査し ており、推計を出している。 木質バイオマスの利用に関しては運送コストが一番の課題となるが、運送コストに関 する実証実験を行っており、距離別に一日何回運送可能かを評価した上で、運送コスト に見合う範囲を推定している。それによれば、半径 50km 圏内が、経済的に見て木質バ 27 イオマス原料の運搬可能な範囲だとのことである。 運搬コスト 未使用資源 3.32t/台 規格外(丸太) 14.80t/台 平均 7.18t/台 距離別運送回数 運送距離 回数 10km 4~6回 20km 3~4回 30km 2~3回 40km 2回 50km 1回 ●現状の問題点・要望について 国に対してだが、固定価格買取制度の適用を電気だけでなく熱にも範囲を広げてほし いとのことであった。また、所有者に収益を還元しており手元にあまり残らないため現 場で働く人の社会保険料にお金を回せず、若い人たちの林業への参入をより困難にして いる。社会保障制度の整備も視野に入れてほしいとの要望もあった。 <参考になったこと> ①木材販売総量を拡大するためにはカスケード利用が重要である(木をまるごと売る) 。 そのための手法の一つとして木質バイオマスのエネルギー利用があるが、その際には 運送コストが一番の問題となる。先に述べたとおり、実証実験によれば運搬可能な範 囲は、直線運送距離で半径 50km 圏内であったから、カスケード利用を推進するため には、半径 50km ごとに木質バイオマス・エネルギー利用施設を確保する必要がある。 ②仕分け機能をどこで担うべきか。釜石地方森林組合では、山元で仕分けを行い合板工 場等に直送するのが主要な流れとなっている。その一方で、市場には仕分け機能があ まりなくストックヤード的な役割を担っているようである。 ③ストックヤードはどこに作るべきか。例えば、北上プライウッドでは年間 10 万 m3 の木材原料を安定的に供給する必要があるが、そのためのストックヤード(在庫投資) をどこに確保するかという問題がある。 28 【釜石市役所】 所在地:岩手県釜石市只越町 3 丁目 9 番 13 号 訪問日:2014 年 6 月 23 日 <業務概要> ●釜石市が行っている林業政策のうち聴取した事業内容 ・緑のシステム創造事業 森林資源を伐採し、木材や燃料として利用されるまでの過程において資源を余すこと なく利用(カスケード利用)することで、地域の森林や林業の活性化を図ることを目的 とし、様々な分野に対する波及効果を期待するものである。年間約 5,000 トンのバイオ マス資源を利用し新日鐵釜石で発電事業を行っており、固定価格買取制度の導入で需要 が増えた。 ・スマートコミュニティ 電力供給のポテンシャルを活かし、また、エネルギーを地域振興に活かすことを目標 とした取り組みであり、様々な事業を行っている。 小学校の木質バイオマスボイラー導入に関して、ボイラー本体のコストがかかるため 断念せざるを得なかった。ランニングコストは問題ないため、導入さえできれば採算は 取れるとしている。現在は、駅前の観光施設への導入を目指している。また、市街地に は都市ガスがきているが北部には回ってきていないため、安全面との兼ね合いを考え現 在検討中である。 新日鐵釜石において、木質バイオマスでは発電のみ行っており、余熱でコージェネレ ーションを行おうとしたが、使い先が足りず断念した。 <聴取結果の概要> ●釜石地方森林組合と連携した取組について 週に一度、岩手県と釜石地方森林組合、新日鉄釜石、市役所で情報交換会を行ってお り、内容としてはバイオマスの供給調整や新しい取り組みに向けた話し合いである。ま た、釜石地方森林組合と連携し、A・B 材をすべて木質バイオマスにすると、コストが 抑えられるかどうかといった実験を行う予定である。 ●復興住宅建設における県(市)産材利用の状況について 2013 年度は、復興住宅建設が大槌町で 91 棟分建てられたが、利用木材のうち 6 割は 釜石森林組合で出荷し、市産材は 8 割を超える。 地場の木材を使った家を建てると補助金の給付があるが、住宅メーカーは規格住宅建 設のため、補助金は利用されていない。 29 ●岩手県に対する要望等 制度の見直しが厳しくなり作業道を作り直しにくくなっているため、3級林道並みの 規格で自由に作らせてほしいとのことであった。 <参考になったこと> ①緑のシステム創造事業において、カスケード利用するために新日鐵釜石で発電事業を 行っており、地域の森林や林業の活性化を図ろうとしている。 ②スマートコミュニティにおいて、木質バイオマスで発生した熱の利用法としてボイラ ーの導入を行おうとしたが多額の初期費用のために断念している。しかし、ランニング コストでは採算がとれているということから、ライフサイクルコストでみた場合の融資 制度等を考える必要があるのではないか。 30 (3)有限会社 岩井沢工務所 所在地:〒020-0015 岩手県盛岡市本町通 1-15-29 訪問日:2014 年 5 月 19 日(月) <調査先の業務概要> 新築、増改築、リフォーム、外構工事といった建築一式を主な業務とし、修繕工事、 設計施工を請負うこともあれば、古民家の増改築や古材販売も行う。積極的な県産材利 用に取り組んでいる。 <聴取結果の概要> (ⅰ)木材流通の現状についての意見 ・切り出した木の良し悪しに関係なく、トラックに積んで工場に運んでしまう場合が多 い。逐一仕分けをして市場と工場とに分けて運ぶ方が手間とコストがかかってしまう。 尚且つ需要者側のニーズが届いていないこともあり、切り出された木の大半がまとめて 安く工場へと出される現状にある。また、運ぶことを考えたときに、寸法の基準はトラ ックの大きさになっているため、規格外の木材需要に対応できていない。 ・「大きな流れ」に対応した木材の規格化に伴って、製材所の機械も受け入れられる寸 法が決まっている。様々なニーズが存在する「小さな流れ」に対応した製材所が必要で ある。製材所が市場から買い、工務店の注文に応じて製材するのが一般的だが、岩井沢 工務所では必要に応じて原木市場に直接買いに行くこともある。 ・原木市場に出ている木材は、それだけ高い品質の木材である。それらは県外に買われ ていく場合も多く、地元で良質な木材があるならば、もっと地元で流通、利用させるべ きである。外材と比較しても外材の方が手に入りやすい現状にある。 (ⅱ)県への要望 需要に対して製材の供給が追い付いていない。安定的な供給をするためにも在庫を置 いておけるストックヤードを設ける必要性がある。 <参考になったこと> ①質の見極め、仕分けの出来る能力が求められる。但し、質が良くても寸法が不適当で あれば需要に応えられない。また、供給が追い付かないとはいえ、物的在庫はリスク と解するのが一般的だ。伐採後の木材を管理するのではなく、立木の段階で情報を押 さえておく必要がある。よって立木時点での情報登録を行うべきではないか。山を所 有・管理する川上から立木の情報提供を受け、それを収集し、アクセス可能な状態で 管理が行える主体が必要だろう。 ②安定供給と運搬コストを鑑みて、山元近辺に木材仕分け機能を持った集積場所(山元 土場)を配置することはできないか。山元からの直送では仕分けが適切に行われない 31 場合があり、一方で仕分けを市場に委ね、全て山から運び出していては採算が取れな い場合もある。これらに該当する場合は中領域単位での中間土場の設置が求められる のではないか。 ③川中(製材等)にかかるコスト比率が一番大きいので、外材との競争にあたっては、 そこをいかに下げられるかが焦点になる。加えて、立木価格を保つためには、他との 差別化を図った「小さな流れ」がどれだけ確保できるかが課題となる。 岩井沢工務所の作業場で説明を聞く。 32 B 県外の先進地ヒアリング 【木材生産関係】 (4)日吉町森林組合 所在地:京都府南丹市日吉町殿田尾崎8番地1 訪問日:2014 年 8 月 7 日(木) <調査先の業務概要> 同組合のプランナーが町内の森林を調査して「森林プラン」を作成し、林分ごとに 所有者へ届けている。「森林プラン」とは、必要とする施業やそれに要する費用とと もに現況写真や見取り図などが貼付してあり、その森の経営プランを参考記載してあ る上、所有者が注文書の欄にサインをすればそのまま施業注文書となる形式のもの。 ・12 名(うち 8 名チェーンソー、4 名はオペレーター)が現場作業に従事しており、 作業員の平均年齢は 36 歳で、全員町外からの転入者とのことだった。 ・森林所有者の利益を大前提にしているため、基本的には間伐を行い、皆伐は行って いない。 ・管内は 10,700ha。うち 9,700ha を所有者からの委託を受けて管理している(人工 林 40%) 。年間 250ha の間伐を実施し、15,000m3 の材の搬出している。 ・組合は、所有者への作業提案と受託を行っており、木材の買い取りは行っていない。 <聴取結果の概要> ■「森林プラン」について ・京都府が作成している森林簿をもとに、組合の作業員が山に入って間伐のために木 の材径などの情報を把握し見積もりを取る。この見積もりを森林プランとして所有者 に送る。 ・木材の質は登録情報としてまだ森林プランに入っていないが、一度施業してあれば 要望に応じた木の情報は認識している(現在は GIS の実験中)。木材の値段を下げる 要因は多様にあるため、今後木の質等の情報も登録していきたい。 (根性質による瘤) ・森林プランのデーターベース化はしていない。データとして管理。 ■「森林プラン」は他の地域で応用的利用は可能か、その条件について ・「森林プラン」は間伐のための見積もりであるため、山に詳しい方や木材の質を見 極める力がある方がいればどこでもできると考えている。 ■山から大型工場までの流通について 33 ・基本的には山元土場から工場へ直送している。職員が行き先ごとに仕分けを行って いるが、現場に応じて山元に土場をつくり、切り出した材を集積、選別している(ト ラック 5 台に集積できる量)。 ・例外的に山元外の土場からトレーラーで、というケースも 1 カ所ある。しかし、運 賃が二重に発生している。 ハーベスタによる伐採作業 フォワーダからトラックに積み替えて搬出 ■仕分けについて ・仕分けの基準は径級や質。チップ工場(C 材)と、合板工場、集成材、ラミナ(A、 B 材)と、市場(AA、AAA)へとそれぞれ仕分け、運搬される。 ・「森林プラン」に木材の価格を反映せず、作業費のみを反映させていて、仕分けは 選別費として作業費に含まれている。また、木材の販売価格が上がった分は所有者に しっかり還元する仕組みになっている。 ・仕分けのノウハウは必要。原木市場へ調査に行ったり直送工場での価格を職員に知 らせたりと、全職員が仕分け出来るような組合内での努力を行っている。 山元土場での仕分け 34 ■原木市場の役割について ・ここでは原木市場の役割は小さい。本来、原木市場の役割は小さいはずだが、他の 地域では仕分け機能を持っている現実がある。それは単に人手やお金が足りないから ではなく、面倒だからではないか。 ・現在、50 年生前後の木材を扱っているため、競りにかけるほどの木は出てこない。 一方で原木市場がないと高価な材(トリプル A 等)は捌けない現状がある。 ■課題 ・山側はマーケティングをしっかりできていないため、原木市場に依存しているのが 現状。マーケット自体は存在していて独自の市場開拓は可能なはずだが、買い手は質 が安定していて自分の目で見て買える原木市場へ行ってしまう現状がある。 <参考になったこと> ①山で実際に作業に従事する職員が木材の品質を見極め仕分ける能力を有していて、 山元土場で適切な仕分けが行われていること。また、組合として仕分け能力を高める ための努力を行っていること。 ②現場に応じて山元に土場を作り、一定量の木材が集積した時点で工場等に直接搬送 していること。 ③森林プランの作成を通して、持続可能な森林経営が行われている。現在はこの森林 プランには、立木の質は盛り込まれていないが、一度施業し、その後も一定の間隔で 行われる施業によって、職員の間で立木の質の情報が共有されていること。 35 命・ 的0すい 主 ″ 一 部 伽ヽ 鞘 学 部 淋丸朝V﹂ 回=S耕﹁ 弱 一 い や 希洲慰掛加 x ,ヽ ﹁一 ︵ゝ 一 耶 球 い 丼 革 3 十 ≡十 C + S 岬部 ぎ 淋 鵬 辞 船 十 6 ︶十 6 ︶十 Q す+ 3≡ 博的 舜 一 姉 州 ︵ 中tuさ ︶ 一 引 湿 白 十操 誨 岬 ぞ ︶ 一 鴨 誦帥 ヽ︼ ﹁ 卜 0 ユ雪 , ф ︼﹁り ”ミ0 静 推 樹 ロ コ 劇 c 図 コ \ r o E や3 x 的 o ぷ ︶x N o +千羊や や0︺ X ュ 0 一鴨 ぺ 革 ﹃母 母終 む ヽ対 氏 出 卜 G町 卜 磯 や対 瑞 靴 ヽ い ミト S 一 卜 ふ 玉 消 机 尊 品 耶≡ 単 t打 半心 付・ 、 載母ミ 踊も 増当 ヽ きSSヽ準 ヽ常 s 杓薄き め 体粕 韓 ヽヽ ヽも喘ぜ せ革 い品 じさ や t丼 ヽこ ︻ャ 与 ポ氏 ﹁叫■ ヽ母競 ←罵館もヽ職叫帥せ sヽ 執 中牡 やべ■ヽヽ 仲率 ヽ! F艶町式\ご ヽ>篭町おト ミ郎半も 分 軽津ゝ難 鶏基ミ苺ヽ■何“ 弓卜︼ 剛ぶ 軒 岬珊 紺 石酎u辞 拙 戦副 ︿■ c鮒ギS ︻′諦 癖 β 付 副 ︶再当 ン はさ いm障付研聾 3蝉 F叫キ 。鞠〓 f 一 X 一﹂ OQ ざ ︶x 卜 o FЧ □ くも ざ ︶x 旬 o ︱ 0ヽ一﹃い0一一 ・ヽ0いいヽ﹁ω”︶ す00 命岬 臣OCH O●〇 と﹂ い0ヽ ooф Q! 職〇ヽ﹁ ∞的〇 ω︻ω・ 000 椅〇ヽ・ ф的0 可Nい﹂ヽ0 一 も0 酷 一 ヤ L∝い ︲ やN∝ ぃ。一 判。ト O00 や00・ ︼ ヽ ︼時︻ 的︼ 的∞0 ﹁0い・ 00時 N的0﹂的い ︶ ヽ・ お 卜● 卜 ф命ф 印q い﹃ω々 фいい リユ0, 0いふ a︺︶ 命や﹁〇〇〇 副口 辞 一︺ 切0や ︺ い 一い 職 加曲 コ 器 ヽ﹁ 避 筒 当 ユ︼ 境ф □ ︲ H お ︻ f 引 キ 潮 叫 軒 戦 ′ 闘 い ■ 章 謹 い 輝苗 付部むA闘削 C″部卜ゆ 再静 ︲ ど写ヽ再商 当 c′潮 部 臣 樟け写■ 苺 干留 料 出 母 首 石︻針ぶ耐 爵 9汁郎竺 r M 辞 cr学 ■ 打陣 亨 付け企 ■ 0● ユ0的 研 ヤ 一﹃い0い0 命︼ o卜 ヽ出“ こ r “耐 理 ゆ x ゅ塁 ざ▼ ユg コ 一x 恭 蝉 H x 加 F ヽ 十 S 聖 ゆ ぶ︶X 一 “耐 B面 高 逆 掛 S t樹 ︵ ωO G . 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達・製造・流通等を手広く行うグローバルネットワークを展開している。その他、住宅 事業は勿論のこと、緑化事業やまちづくり事業、生活サービス事業、海外事業等がある。 川上から川中、川下までの各領域を対象とする事業部門を有し、業務を行っている。 ・約 45,808ha(国土の約 900 分の 1)の社有林を持ち、山林環境事業部門がそれを管 理している。また、住友林業フォレストサービス株式会社という子会社が国産材の流通 を扱っており、国産材商社としても住友林業は国内最大手である。 但し、住宅事業部門(年間約 9000 棟の住宅建築)は別の部門であり、そこで使用す る木材はほぼ外部から購入しているため、社有林を含めた国産材流通を扱う部門と、住 宅事業部門とは木材売買の取引関係にない。よって社の部門間で木材の値決めは行って いない。 <聴取結果の概要> (ⅰ)使用する木材の取引先について ・国産材の調達は、長年培ってきた信頼関係、人間関係によるもの。住宅事業部門の中 に資材調達をしている部署があり、一定期間、安定した量を安定した価格でという契約 を結んで調達されている。 ・流通コスト面から見ても、木材の調達と住宅建築は地域内完結が基本。住友林業とし て集成材工場を持っていなくとも各地域の集成材工場、プレカット工場へ注文し、それ が現場に届く仕組みになっている。垂直統合型では無いので、必ずしも子会社で行って いるというわけではない。岩手県内の取引先には、けせんプレカット事業協同組合、三 陸木材高次加工協同組合がある。住宅着工数が多いのは東京・名古屋・大阪圏だが、そ こでは地域内完結とは言い難くエリア内完結としている。 (ⅱ)木材の価格形成について ・現在、木材は国際商品であり、価格決定要因は為替レートと世界市場価格である。今 の国産材価格は、外材との競争が成り立つ価格になっており、ほぼ同等と言える。外材 が高くなれば国産材に買い手が流れ、外材が安くなればそちらに流れていく。消費税の 増税に伴う駆け込みにより住宅着工数が増えた去年は、実際に円安により外材価格が相 37 対的に上がり、尚且つ木材利用ポイントもあったため国産材の需要が高くなった。 ・木材価格には季節変動がある。夏場の価格が低い原因は虫の侵入、カビが生え易いこ とにある。虫への対処は伐採後すぐに運び出し、山に置いておかないようにするしかな い。秋と冬に価格が上がるのは住宅建築需要が増えるためである。年度末(3 月末)ま でに引き渡しをして代金回収するとなると、当然 1~3 月の竣工が多くなる。そのため、 には秋口から丸太を要するようになり、12 月にピークを迎える。その後は内装工事が 始まるので需要と価格は再び下がっていき、梅雨時期に最安となる。住宅建築需要を均 すような操作はできないので、結局年度という 1 つの切れ目を基準に動くことになる。 住宅着工数は木材需要と関係してくるので、為替に次ぐ価格決定要因と考えられる。 (ⅲ)住友林業から見た木材供給・流通の現状課題について ・国産材需要が高まった際、需要に見合った供給ができなかった。工場が供給できなか ったというより、原木の無いことが原因。山から伐採・搬出する作業が追いついておら ず、働き手の高齢化が問題の 1 つと考えられる。 ・住友林業の場合、主要構造材は、マルチバランス工法 1だと 7 割は国産材で残り 3 割 は外材を用いている。外材を用いる理由は性能(強度)であって、国産材の供給量不足 ではない。100%国産材の家を建てたいという注文を受ければ建てることは可能だが、 その分コストはかかることになる。 ・国産材の性能は、外材と競争できるくらいまでの技術開発ができているため、それを 利用すれば追いついている。しかし、外材と同じ品質を求めるならば、樹種が問題にな るため、追い抜くことは難しい。 (ⅳ)木材ストックについて ・在庫を一定量保有して木材供給を安定させるという在庫機能については、住友林業で は基本的に在庫を持たない考えだ。買ったものが数か月後に購入価格よりどう上下する かは分からないため、在庫は機能というよりリスクと考えている。仮にストックを抱え たとして、その調整機能を誰が負うのかが問題になる。また、在庫機能と天然乾燥を並 行する場合を考えてみても、供給量をフラットにするためには実際に使えるだけの量を 確保する必要があり、より多くの在庫を抱えなくてはならず、現実的とは言えない。 (ⅴ)木材の証明について ・工場から納品された材がどこの原木であるかというトレーサビリティははっきりして いるが、揃ったデータを作成してはいない。但し、調べることは可能なので、施主に求 められれば伝えることもできる。 ・森林認証は業界の雰囲気によるもので、ニーズというより認証材を利用することが当 1 伝統的な木造軸組構造に最新技術を組み合わせて(集成材、木質パネル、高温乾燥等を用いる)強靭な 構造躯体をつくる工法とされている。 38 然になっている。価格には反映されず、日本ではあまり気にしていない人が多い。住友 林業では 100%ではないにせよ出来るだけ森林認証材を購入している。その他の場合で も合法材であることを確認してから購入している。 <参考になったこと> ①国際商品である木材の価格は為替に左右される。外材が高くなれば国産材に人は流れ、 外材が安くなれば外材に流れていく。買い手が安い方を選んで買おうとするのは当然 の心理である。現在、中国の木材需要が高くなっており、外材も中国に集まる傾向に ある。相対的に外材価格が上がり、国産材需要の増加が想定されるため、増加した需 要にも対応できる安定した供給システムが早急に求められる。安定供給に求められる のは一定量のストックだが、物的在庫にはリスクが伴う。そこで必要になるのはリス クマネジメント能力であろう。需要と供給を踏まえたリスクの分析・予測・調整を行 うことで、リスク自体を最小限に抑えるべきと考えられる。 ②種類が違えば当然性質も違う。強度等考慮したうえで構造材として使いやすいのは外 材である。岩手県で多いのはスギであるが、性質上、構造材に生かすには弱点が多い ため難しい。板物としての利用はされるが、住宅1棟のうちの比率を考えると少ない。 大きい柱や太い梁にすれば利用できるが、求められる材は太いものになり、値段の問 題も出てくる。一方、無垢ではなく集成材 2であれば構造材としても利用可能だとい う。構造材としての集成材利用も検討・推進する余地があるだろう。 ③国内外で価格にあまり差がない以上、相対的に外材と比べて安くなれば買い手の需要 がある。しかし、供給が応えられないのが現状である。工場ではなく、山元での伐採・ 搬出が追いつかない。働き手の高齢化が一因と考えられる。だが、追いつかないとい うことは、伐採可能な木はあるわけで、山元(川上)の情報を、川中・川下と共有す ることで計画的に安定した供給が図れるのではないか。 ④認証材は普及しつつあるが、現状では、価格形成には影響を与えていない。森林管理 のあり方や木材の質に見合った価格が実現されるよう、認証材の差別化を図り、生産 側の生産意欲、消費側の購買意欲を高める方策を検討すべきである。 2ここでいう集成材は CLT(Cross Laminated Timber)を指す。ひき板を並べた層を、板の方向が層ごと に直交するように重ねて接着した大判のパネルのことで、杉の弱点を補完、構造材としての利用を可能に する。技術革新中。 39 (6)物林株式会社 所在地:東京都江東区新木場 1-7-22 新木場タワー 訪問日:2014 年 8 月 5 日(火) <聴取先の業務概要> 素材を購入して工場に原料として提供をし、生産された製品を購入・販売する。 従業員数 125 名。JK ホールディングス株式会社のグループ会社。北海道・東北を中 心に事業展開しており、北日本各地に支店、事務所を置いている。 <聴取結果の概要> 県内での木材流通 岩手県での素材年間取扱量は 6 万 m3 で、そのうち岩手県産材は 3 分の 1(1 万 5 千 から2万 m3)。岩手県産材だけで県内取扱量を 100%まかなえない要因は、各自治体と の付き合い方、岩手県産材の供給量不足、遠方へ売る県産材もあることがあげられる。 商社を含めた日本全体の木材流通 工場への素材供給量は森林組合よりも業者の方が圧倒的に多い。なぜなら、森林組合 の素材取扱量は組合員の作業範囲に規定されるが、業者は多方面から仕入れて大量に取 扱うからだ。 また、森林組合と商社が担う役割は全く別物である。工場への素材安定供給が求めら れる場合は、工場と独自に契約を結ぶのが主流。地域森林組合とは協定や契約を締結す る場合もあるが、森林組合を介する取引は行っていない。 木材・製材品(国産及び外国産)の価格 <国産材> 国産材価格決定要因は二つある ① エンドユーザー(一般消費者)が価格決定者。エンドユーザー価格から引き算方 式で下流から上流までの価格が決定する。 ② 季節変動による影響。素材供給量の増減、害虫などの季節特有の問題によっても 価格は変わってくる。 商社と木材加工所とで②のような市況情報をやり取りし、①を前提に取引価格の調節 をする。製材価格の変動や原木価格の変動幅は非常に大きいが、価格変動の緩衝は全体 で行いつつも商社の負担が大きいという。 素材での在庫は基本的に持たない。納入待ちのものは一か月程度のランニングストッ クとして抱える。 <外材> 外材に関しては出す側との交渉で価格を決定する。 40 輸入製材品は半年から 1 年ほどのストックをもつ。国内の工場などからの発注がある ことを前提に、国内商社のストックからその発注内容に沿って供給される。ストックが 可能な理由は、ほとんどが製材品の形で入荷されるため保管が容易だからだ。 製材品は圧倒的に輸入品が多い(輸入品の入荷形態はほとんど製材品) 。 選択の判断基準は第一に安定的供給能力、第二に価格である。輸入品と国産材とでは 樹種が異なるため一概に比較できないが、国内で製材品全取扱量をまかなえない要因は、 工場規模が小さいための製材品供給力不足、素材の安定供給力不足、価格などが挙げら れる。また、素材生産量が少ないため仕分け・運搬コストが高いことや土場づくりが困 難なことから、木材価格が適正なものでないことも問題だ。 現状の問題点・要望について 県産材使用者のみに補助金が交付されると、県産材縛りや県外への出し渋りが問題に なる。公正な競争を実現するためにも、濫用されやすい補助金制度は考え直すべきだ。 運賃補助も対象事業者が限定されており望ましくない。事業内容を交付基準とすべき だ。 <参考になったこと> 県産材も、製材品の状態であれば長期間ストックでき、安定供給可能性がある。小 規模工場による製材品供給能力不足を解決するには、工場の連携によるネットワー クの形成が必要。また、ストックヤード確保のための支援策を検討する必要がある。 41 (7)協同組合高知木材センター 所在地:〒781-0112 高知県高知市仁井田新築 4517 番地 8 訪問日:2014 年 8 月 6 日(水) <調査先の業務概要> ・消費と生産の取次ぎを主な業務とし、消費者から共同受注し、依頼された製品の生産 を県内製材所に発注する。製品の共同出荷をすることで、円滑な流通と効率化を図って いる。組合員数は 47、素材業者が 6 割を占めるが 3、森林組合、材木店も組合に参加し ており、川上から川下までの事業者で成り立っている。 ・品質保証、販売責任は木材センターが負っており、木材版トレーサビリティを実施す るために、川上から川下までの関係者による研究チームにつくり、平成 23 年に「こう ち木の家普及推進協議会」が発足した。 <聴取結果の概要> (ⅰ)木材のトレーサビリティについて ・住宅産業の変化への対応が遅れ大型化できなかった中小・零細製材所は、価格ではな く品質に特化した競争をめざし、差別化をはかるための方法として木材版トレーサビリ ティを 4 年前に始めた。委員会を立ち上げて調査を始めたが、地域材に関する規定がな いため、県内産・県外産に関係なく一括して国産材として取り扱われている実態を知り、 林業家、森林組合、製材業、木材市場、小売店、工務店による研究チームを組織した。 ・トレーサビリティが効果を発揮するためには、土佐材は良質な木材だというイメージ を作ることが必要だった。「こうち木の家ネットワーク」が始めて木材トレーサビリテ ィを導入した時は、木が山元から丸太になるところまでを追い、手書きの証明書を現場 で材に直接貼っていた。しかし、1 本 1 本に貼るには数があまりにも膨大で、しかも加 工過程で証明書が剥がれてしまい追跡できなくなるという問題点があった。 ・トレーサビリティで証明されるのは産地、製材所、森林組合、木材問屋までの情報だ が、あわせて含水率、強度も表示し、良質な土佐材だということを示している。今は、 生産・加工・流通過程で携わった各事業者に証明書を提出してもらい、それらを建築の 最終段階である工務店でまとめ、最後に 1 棟分の証明書として発行している。ただ現時 点では、トレーサビリティの付与が価格には反映していない。 (ⅱ)木材価格について ・工務店に土佐材を押し付けるのではなく、使用する木材によって住宅の差別化を図り、 住宅価格に上乗せできるような仕組みを作る必要があるだろう。 3製材業者数は高知県全体で約 100 社、半分以上は協同組合高知木材センターに参加している。 42 ・組合員の意見をまとめるのが大変な場合もあるが、これからはトレーサビリティの仕 組みが重要だと考えている。 ・工務店にとって、品質が担保された木材というのは前提条件だし、土佐材の品質は認 知されている。だが、設計士が土佐材を使おうとしても、工務店が安い外材や身近な材 にして欲しいと言うことがある。 (ⅲ)木材の乾燥について ・組合員の乾燥工場を利用して乾燥を行っている(和歌山方式)。木材を在庫として保 管している間に天然乾燥も行う、という考え方については、預かり品として置いておく 間にも天然乾燥は進むが、それは現実的でない。天然乾燥に対する評価がないため、す べて人工乾燥しないと工務店で認知されない。 (ⅳ)国や県への要望 ・県は、政策を立案するにあたって、仮説を検証するための調査を十分行っていない。 当事者と話し合いをしながら政策をつくるべきだ。そうしないと、あとで修正が必要に なったり、また修正が難しいという事態も生じる。担当者の異動によって関係がリセッ トされてしまうのも問題だ。 ・国は、林業の「大きい流れ」と「小さい流れ」を区別できおらず、それらを一緒に扱 おうとしているのが問題。大手企業だけではなく、「小さな流れ」の事業者の話にも耳 を傾けてほしい。情報のソースに偏りがあれば、政策の方向性も偏ってしまう。 <参考になったこと> ①現在のトレーサビリティは、紙(証明書)の統合で行っている。生産・加工・流通の 各段階で発行された書面を取りまとめ、証明書として施主に渡している。デジタルな データによる管理は行われていない。木材を、立木段階から最終消費までの各プロセ スにわたって追跡するのは多大なコストがかかる。 ②そこで、1 つの組織が全段階を追うのではなく、立木段階での情報は山元が提供する というように、各段階の事業者がそれぞれの情報を提供し、それが集約、統合管理、 共有されるシステム(情報土場)をつくるようにすればどうか。そうすれば、情報生 産のためのコストは分散・削減されるうえ、山から消費者に至る木材流通の全体像が 可視化されるのではないか。 ③また、現状ではトレーサビリティが販売価格に反映されていないが、品質を保証する 付加価値として市場で評価されるようにすべきだろう。 43 <川上~川中~川下をつなぐ> (8)NPO 法人サウンドウッズ 所在地:兵庫県丹波市氷上町賀茂 72-1 訪問日:2014 年 8 月 7 日(木) <訪問先の業務概要> NPO 法人サウンドウッズでは、木材利用を推進して森を育てると同時に森と街をつ なぐ役割としての木材コーディネーターを育成し、建築や家具などの木材利用の機会を 増やすための活動を行っている。その中の人材育成を行うのが「森活塾」である。 森活塾では、森林林業分野と木材製造流通分野、木材利用分野という三つの分野、す なわち、林業経営の全般の知識を持つ、 「木材コーディネーター」の育成を行っている。 受講者の業種は様々であり、森林所有者や建築家などの林業経営に携わる人はもちろん のこと、中には林業経営に携わっていない一般の人も受講しているとのことであった。 森活塾で林業経営全般の知識を身につけている人材を育成することで、エンドユーザ ーが地域の木を意識し、距離をできるだけ近くし、林業経営における適材適所を図るこ とを目標としている。 <聴取結果の概要> ●現在の日本の林業経営について 現在の多くの日本の森林は戦後造林による不均質さがあり、使う側は市場の仕分け後 にどの品質がどれだけあるかがやっと把握できる状況にある。ゆえに、不安定で計画性 が無く、使う側にしてみるとリスクが高く、買い手がエリアの見極めを行わなければな らないということになる。その結果、森林所有者への還元が困難になり、日本の森林資 源の枯渇へとつながる恐れが出てくる。よって、森林所有者への収益還元ができる流通 を確立していかなければならないということになる。 現在のエンドユーザーにとどいている木材価格でも森林所有者に還元できる分はあ るはずだが、木材流通は多段階に分かれているため各々の段階でリスクの担保をかけて しまい、結果として森林所有者に還元できないことになる。また、各々が利益追求する のではなく、一括したサプライチェーンの管理を行うことでエンドユーザーにもっと安 く木材を提供することにもつながる。 山元では現在大量流通している木材住宅の規格に合わせて木材を出荷しなければな らないため、手間や制約が生じ、必然的に川下の木材価格が高くなってしまっている。 メーカーが作る住宅は均質な材による構造ですべて集成材という仕組みになっており、 これでは適材適所を図れず、森林所有者への還元も不十分となってしまう。 原木の価値としては低くても、建築パーツとして評価することで高い価値を得られる ものもある。よって、一つ一つの立木の価値を見出し、できるだけ製材利用をしつつも 44 製材で調達できないものは集成材で利用するなど適材適所を図る必要がある。 ●今後の活動の展開 現在、自治体で国産材などの自分の地域の木材を利用するために、公共施設を地元の 木材で建てるなど公共事業でモデル的に行われてきている。地域の製材所は自由な生産 が可能な体制やノウハウがあり、これからは木材コーディネーターなどの育成した人材 を活用し、事業のサポートをしていき、森林所有者の意志に沿ったフォローアップをし ていく。 また、製材品と立木の価格差やリスク還元の考え方も見直していく必要があり、どこ かの段階にストック兼仕分け機能を持たせることが必要である。さらに、メーカーなど の大きな流れも確保しつつ、地域の製材所における規格外にも対応できるような、様々 な製材技術も残していかなければならない。 現在の木材の流通状況は使う側に対して小回りのきくものとなっておらず、大きな流 れをくむ規格に合わせた材が多く流通しているために建築コストがかかっている。規格 に合わせた材は原材料としてのコストはかからないが、一定規模を成り立たせるための 手間や建築コストはものすごくかかってしまうことになる。 建築コストの削減のために、有るものと無いものの把握をしておかなければならない。 モノとしてのストックはあるだけでコストがかかるため、立木の状態での管理が必要と なる。しかし、単木では難しいので、現在は実験的にエリア管理を行っているとのこと であった。また、利用を前提とした森林調査も行っていかなければならない。この調査 結果としての情報は原木市場にはあるが、本来必要である製材所には正確なものは無い という状態である。こういったことは製材の考え方がある森林組合であればできるとの ことだった。 今後の課題としては、教える側の人材が不足しているため、教える側の育成も行わな ければならないということである。徐々に全国的に木材コーディネーターのような人材 の育成に力を入れ始めているため、教える側の人材の確保は必須であるといえる。 <参考になったこと> ①仕分けとストックについてである。現在の日本の森林資源は品質の把握ができていな いため、木材の適材適所を図るためにも森林調査をするなど管理をしていかなければな らない。 ②リスクの担保についてである。木材は完璧な価値の保障ができないため、木材流通の 各々の段階でリスクを担保するために製品の価格が不必要に高騰してしまっている。そ のため、流通過程のすべての段階で加工される木材の情報を共有する必要性が出てくる。 ③木材コーディネーターについてである。これは前述の情報共有の必要性にも通じてく ることだが、木材の流通のすべての段階で情報を共有するためには誰かが情報を伝達し たり、どこかに山林の情報をストックし管理したりしなければならない。これらを行う 45 ためには林業経営のすべての知識を持った木材コーディネーターの役割が必要となる。 ④吉野のように一定の品質が保証されている森林もあるが、戦後植林された森林の多く は品質にばらつきが多い。そこで、森林施業データを蓄積することにより、森林エリア 単位で木材の品質を提供することが可能になり、立木価格の保持にも役立つ。「森林デ ータベース」作成に意義があると感じられた。 事務所外観 製材所内観 製材機械 代表の安田哲也さん(左)と 副代表の能口秀一さん(右) 46 (9)京都府森林組合連合会、京都府農林水産部林務課 所在地:京都市中京区西ノ京樋ノ口町 123 訪問日:2014 年 8 月 8 日(金) <調査先の業務概要> ・京都府森林組合連合会は、森林林業経営高度化プラン(23 年) 、森林林業経営イノ ベーション事業(24~26 年度)に取り組んでいる。 ・京都府内には組合系統の共販所はない。京都市に「株式会社 南丹市に「株式会社 北桑木材センター」、 八木木材市場」それから綾部市に「京都丹州木材市場」の3つ の民間原木市場がある。 <聴取結果の概要> ■ストックヤードについて ・ストックヤードは現在構想段階にある。京都府ではストックヤードを産地直送の場 と想定していて、価格調整の場ではなく、ある程度ロットを束ねることで価格交渉力 を高くするための場と考えている。 ・以前は原木市場にストックヤードの役割を持たせようとしたが、距離によって運搬 費がかかるため、中間土場や山元に土場を作る必要がある。 ■工場への運搬について ・京都市内にある工場は距離が近すぎるため、1 カ所のストックヤードに集めるより も山から直接送った方が、運送費が抑えられる。したがってストックヤードの必要性 がない。 ・府外の工場に送る場合は、ストックヤードに集めてまとめて運送した方がコストを 抑えられる。 ・山元で選別した方が、効率が良い。土場で選木が徹底できないと均質化が図れない。 ・木材ポイントや為替の影響で 2013 年 12 月をピークに価格が高くなった。 ・工場と府森林組合が協定を結んでいる。府森林組合が計画し調整を行っているが、 契約ではないため、山側は1円でも利益を出すために、原木市場の価格が高いときは 市場に持って行こうとする。したがって結局安定供給につながらない。また工場も製 品を出荷ができない場合は在庫を抱えたくないため、木材の買い取りを止める場合が ある。 ・機械が高度化したため、木の性質が無視されつつある。木が変質(カビるなど)して しまうためストックヤードに置いておくのが難しい。したがってストックヤードにリ スク負担をさせる結果になってしまう。 ・広葉樹は多用途で使用できるため、今後さらに需要が伸びる可能性がある。 ・FIT で未利用材を使おうとしても運搬コストが高い。FIT は未利用材の利用法とし 47 ては画期的だが、買い取り価格が低くなってしまう。関西は国有林が少なく民有林が 多いため、大きな供給は出来ない。 ■「京都林業ルネサンス事業」 (27 年度から本格実施)について ・川上(山側)→川中(市場)→川下(製材所)と捉えていて、3 者の間にボトルネ ックが存在するという問題意識がある。 ・業種によって木材ニーズが変化しており、ボトルネックをなくし情報共有のために、 川上から川下を繋がなければならない。 ・伐採する時点で木材の質を把握しておく必要がある。情報管理(どこにどんな木が あるか把握する)の必要性が生じる。しかし予算がかかる(GIS を使うと京都府内だ けで 12 億) 。 ・一方で、情報管理によって、木材価格によって「伐り控え」が起こる。 ・商売として「質の把握」に可能性はある。 ■環境にやさしい京都の木の家づくり支援事業(緑の交付金)について ・府内産を使って家を建てると工務店に上限 40 万円の補助を出す(府独自の財源)。 ・木をより実感してもらうため内装材の場合にも交付することにした。 ・認定方法はトレーサビリティを重視(京都府内だけで流通したものだけ認定)してい て、京都府温暖化防止センター(NPO)が認証証明を発行。 ■「木材加工ネット」について ・木材組合連合会が行っていて、小さい製材所を束ねて得意不得意を補いながら何で も作れるようにして安定供給を目指すネットワークを 4 つ作る。3 年目の今年やっと 動き出した。 ・無垢の JAS 材を供給できる工場は国内でも少ない。 ・KTS 材(=JAS 材と同じ規格)は製材所等が独自で認定を行っている。 ・地域ごと(近い場所同士)でネットワークを作る。 ・木材コーディネーターもいるが、木材アドバイザーがネットごとに指導している。 木材コーディネーター・アドバイザーは木材連合会の会員(製材業者)で、あくまで も半公共人として活動。 ・入札があり、落札した業者(建築業者)が発注したものを加工ネットが受けて、コ ーディネーターが各製材業者に割り振る。 ・実績は昨年で 8 件(全部公共建築) ・公共建築は規模が大きいので 1 つの小さい業者だけでは出来ない。だからネットワ ークで分担しながら取り組む。 48 <参考になったこと> ①運送先までの距離に応じて運賃コストが変わるため、運送先を想定したストックヤー ドを設置することが必要なこと。 ②川上から川下までの流通過程では複数の業種が流通に関わっているが、その業者ごと に木材のニーズが異なっており、業種から業種へと流通する過程でのボトルネックが存 在していて、情報共有がスムーズでないこと。 ③府の独自財源で行っている緑の交付金は、府内産木材の消費促進のために、消費者で はなく、工務店に補助金を出していること。 ④木材加工ネットのような小さな製材所を束ねた組織を作ることで安定供給を実現す ることができること。 49 50 51 Ⅲ―3 県民協働型評価ワークショップ (「評価報告書(案) 」についての関係者意見交換会) 日 時:2014 年 9 月 24 日(水) 場 所:岩手県庁 12 階 特別会議室 参加者:岩井沢工務所 岩井沢賢一 代表取締役社長 岩手大学農学部 岡田秀二 教授 岩手大学農学部 伊藤幸男 准教授 岩手森林組合連合会木材部 田口清治 岩手森林組合連合会木材部 米澤健 盛岡市林政課 高橋山雄 部長 共販グループ長 課長 岩手県林業振興課 砂子田博 主任主査 岩手県林業振興課 高橋忠幸 主任主査 岩手県政策推進課 多賀聡 主任主査 岩手県政策推進課 大森弘道 主事 <ワークショップで出された意見> 森林が森林でなくなる可能性があるから「いわての森林づくり県民税」による事業 を行っているので、予算の転換はできない。 森林は「経済財」であると同時に「環境財」である。地球環境問題を解決するため には森林が必要で、森林保全や森林の様々な機能を十全にしていくことが大切。あ くまでも木材生産はそのうちのひとつにすぎない。 森林環境税の本来の目的や県民の理解等を鑑みて慎重な議論が必要。 トレサビリティーや情報管理は、どの段階から管理されるのか。 「いわての森林づくり県民税」事業で行われた範囲での立木の情報管理はしっかり なされている。情報管理やトレサビリティーの核になりうるのではないか。 現在は山元への補助金が多く、消費者に対する補助金があまりない。消費される場 面での木材の単価が上がることで、その分の利益が山元に還元されることが理想。 現在は合法木材も存在しているが、今後の林業を考えていくためには森林認証を進 めていく必要があるので、森林認証ポイントを導入してほしい。その上で補助金の 流れを考えていくことや財源を森林環境税に拘らない検討も必要になる。 「まじめにやっている部分にそれなりの結果が得られるような施策」が望まれる。 木質バイオマス事業は実験結果の半径 50km の範囲にとらわれない考え方が必要。 ゴミ焼却とバイオマス焼却を組み合わせるような林業の枠を超えたバイオマス供 給の構想が必要。 情報管理と認証制度を有機的に繋げることが望まれる。 木材は顕微鏡で見ると穴だらけ。木材を単に燃やすだけでなく、その穴を有効的に 52 利用することが重要。技術開発により、素材として利用できる川下産業の支援と育 成していくことが必要。 木材の流通を把握していないのでは、適格な政策が打てないのではないか。岩手県 で伐り出した木を使いたいが、木がどこで流通しているのかが分からない。 商売のために大体でいいから木の流通の情報を把握したい。 現在は木材コーディネーターの仕事を県森林組合連合会がやってくれている。 森林経営計画が情報把握の基礎になる。森林経営計画をしっかりやることが必要。 県内の森林経営計画の進捗状況は 30%未満。急いで作業を進めるべきだ。 木は生物であるから地域の材を地域で使うべきだ。それが流通コストを下げ、質を 保証していく。 ~ ワークショップ終了後に文書でいただいた意見(要約) ~ 木材流通及び加工に関する統計の整備と実態把握については、その通りだと思う。 近年の円安により、中国など外国からの木材買い入れ圧力が強まっており、国内消 費だけでなく木材輸出方策(原木と製品共に)をからめて林業施策を論ずる必要が ある。 森林データベースに関しては、県で構築し誰もが利用できるものとして、森林認証、 合法木材証明や県産材証明を包含したものになれは、ありがたいと感じた。 盛岡木材流通センターと地方市場との連携は、すでに始まっており、9月からWE B入札を開始している。合法性、産地、材質などの情報がないので、今後情報の密 度を濃くする必要がある。市場で販売する丸太に関しても上記森林データベースの どの個所の産地なのか分かるように出来ればと思う。 立木の段階での情報管理は必要。森林経営計画制度により、計画的に伐採するよう な施策はあるが、森林所有者(管理者)と登記簿上の所有者が異なっている場合も あり(相続登記未了により)、市町村によっては、相続税は徴収するが、相続登記 が完了していなければ、伐採を認めない、というケースもある。これに関しては、 法制度の問題になるので、そういった部分のご提言もお願いしたい。 また、森林所有者は現金による立木の売買を好む傾向があり、森林組合等が詳し く調査したデータを参考にして、素材業者により高く販売する場合が多いので、計 画的な伐採は難しい面がある。 バイオマス利用については、熱利用が必要であることがかねがね言われているが、 近年セルロースナノファイバーの利用に関する研究や実証が進み、製紙会社を中心 として試験販売も行われているようだ。この研究は、日本、アメリカ、欧州が競っ ているが、岩手県内にこの研究を行っている機関はなく、取り残される恐れがある。 本県には、関東自動車も新日鉄もあるから、是非、この研究に取り組んでもらいた い。そうでないと、また原料供給県に終わってしまう。 53 Ⅳ 提言 1 木材流通及び加工に関する統計の整備と実態把握を行うべき。 【現状】 ①現状の林業統計は、川上のデータ(林業経営体等)については詳しいが、生産された 素材の流通に関しては、森林組合共販所以外の流通がどのようになっているかを含めた 流通の全体像がわからない。 ②製材品についても、生産量・出荷量に関するデータはあるが、原料の入手先、製品の 販売先は把握されていない。 ③製材工場等木材加工業の事業所に関するデータが網羅的に把握されていない。 (参考)「岩手県林業の指標」に掲載されている統計項目は以下のとおり 【提言】 これからの林業振興政策を考えるとき、林業経営のみならず、木材の流通・加工部面 を対象とした政策を実施することが求められる。そのためには、まず木材流通・加工に 関する実態を正確に把握することが出発点となろう。しかし、林業統計のほとんどは農 林水産省所管の統計法に基づく統計に依存している。そのため、【現状】で述べたよう な不足を埋めるためには、次のような岩手県独自の統計調査を加える必要があろう。 ①素材生産量調査に加えて、その販売先に関する調査を行い、素材流通の実態を把握す ること。 ②木材製品の流通に関しては、農林水産省が5年に1回の「木材流通構造調査」を実施 している。しかし、集計は全国単位でしか行われていないので、県別の集計を行うこと。 ③農林水産省の「木材統計調査」では製材所を対象とした調査はサンプル調査に留まる。 一方で、「経済センサス」は、原則として全事業所を対象とした悉皆調査である。した がって、岩手県の林業関係部門では、各省の領域を超えてデータを収集するとともに、 林業関係全事業所の把握に努めるべきである。 (参考)「岩手県林業の指標」に掲載されている統計項目は、次ページ以下のとおり。 54 平成24年度版 岩手県林業の指標 掲載指標一覧 1 本県林業の地位(全国対比) 1-1 森林資源 1-2 造林 1-3 林産物 1-4 林道網 1-5 林業労働 1-6 林業所得 2 森林づくり (1) 森林計画 2-1-1 森林計画区域及び計画期間 2-1-2 流域圏別・市町村別森林面積総括表 2-1-3 流域圏別民有林面積・蓄積 2-1-4 流域圏別・市町村別民有林面積 2-1-5 流域圏別・市町村別民有林蓄積 2-1-6 流域圏別・齢級別森林面積 2-1-7 森林施業計画認定実績 (2) 造林 2-2-1 樹種別・施行主体別造林実績 2-2-2 経営主体別造林実績 2-2-3 施行主体別・資金別造林実績 2-2-4 広域振興局等別・市町村別・造林種別造林実績 2-2-5 樹種別広葉樹造林実績(森林整備事業) 2-2-6 樹種別育成天然林整備実績(森林整備事業) 2-2-7 国有林野における分収造林に係る造林実績(森林整備事業) (3) 間伐 2-3-1 間伐実施状況 2-3-2 樹種別・齢級別間伐実施状況 2-3-3 広域振興局等別間伐材の生産・流通量 2-3-4 広域振興局等別間伐材の主な用途別利用状況 2-3-5 広域振興局等別間伐材の樹種別・取扱別流通量 2-3-6 間伐対象森林の現況 (4) 育種 2-4-1 広域振興局等別精英樹選出状況 2-4-2 流域圏別気象害抵抗性等次代検定林設定実績 2-4-3 広域振興局等別指定採取源(普通母樹・母樹林)指定実績 2-4-4 採種穂園の現状と生産実績 2-4-5 経営体別・経営規模別苗畑現況 2-4-6 樹苗需給状況 2-4-7 広域振興局等別樹苗需給実績 (5) 公有林等 2-5-1 実施主体別分収造林実績 (6) 県有林 2-6-1 流域圏別県有林面積とha当り蓄積 2-6-2 県有林の林産物収穫実績 2-6-3 事業種別県有林面積・蓄積 2-6-4 流域圏別・広域振興局等別・市町村別県有林面積・蓄積 (7) 市町村、財産区、一部管理組合 2-7-1 市町村、財産区、一部事務組合の管理形態 2-7-2 流域圏別・経営体別公有林面積・蓄積(直営林) (8) 林道 2-8-1 民有林林道現況 2-8-2 林内道路現況 2-8-3 災害復旧事業実績 (9) 保安林 2-9-1 流域圏別保安林面積 2-9-2 広域振興局等別・流域圏別・単位区域別民有保安林面積 (10) 治山 2-10-1 民有林治山事業年度別計画と実績(国庫補助事業) 2-10-2 年度別・事項別民有林治山事業の実績(国庫補助事業) 2-10-3 県単独治山事業実績 (11) 林地保全 2-11-1 年度別・種類別林地開発許可実績 2-11-2 広域振興局等別・項目別林地開発許可実績 2-11-3 広域振興局等別・項目別林地開発協議実績 55 (12) 森林保護 2-12-1 森林被害状況 2-12-2 森林被害防除実績(補助) 2-12-3 年次別林野火災発生件数、焼損面積、被害金額 2-12-4 森林国営保険の契約及び支払状況 (13) 流域管理 2-13-1 流域森林・林業活性化センターの設置状況 (14) 国有林野 2-14-1 国有林の森林資源 2-14-2 流域圏別・広域振興局等別・市町村別・林種別国有林野面積・蓄積 2-14-3 流域圏別・広域振興局等別・市町村別・林種別官行造林面積 3 林産物 (1) 素材生産量 3-1-1 素材生産量 (2) 外材入荷量 3-2-1 外材入荷量 (3) 木材需要 3-3-1 県内素材需要量 3-3-2 製材品出荷量(用途別) 3-3-3 製材品出荷量(国産材・外材別) 3-3-4 製材用素材消費量及び製材品出荷量等 3-3-5 製材用素材(国産材)の樹種別、県内材・県外材別需要量 3-3-6 流域圏別・広域振興局等別素材生産量 3-3-7 木材(素材)市場の年間取扱数量 3-3-8 素材需給実績 3-3-9 木材チップ生産量 3-3-10 木材チップ出荷実績 3-3-11 構造別新設住宅着工戸数の推移 3-3-12 間伐材の利用実績 (4) 木材産業 3-4-1 木材加工工場の推移 3-4-2 製材工場の推移(7.5kw以上) (5) 特用林産物 3-5-1 しいたけ生産量 3-5-2 主な特用林産物の生産量等 3-5-3 製炭従事者数 3-5-4 流域圏別・広域振興局等別木炭生産量 4 林業事業体等 (1) 林業事業体 4-1-1 森林組合と組合員の所有面積等 4-1-2 生産森林組合と経営面積等 4-1-3 森林組合の事業実績 4-1-4 森林組合森林造成事業 4-1-5 生産森林組合造林実績 4-1-6 生産森林組合種目別生産販売実績 4-1-7 組織形態別経営体数 (2) 林業従事者 4-2-1 林業従事者数(年間従事日数60日以上) 4-2-2 森林組合作業班 (3) 林業機械 4-3-1 林業機械器具導入実績 (4) 林業経営 4-4-1 保有山林面積規模別林家数 4-4-2 私有林、民有林別造林面積 (5) 入会林野 4-5-1 入会林野等整備の許可(整備完了)実績 5 林業金融 5-1 日本政策金融公庫資金融資実績 5-2 木材産業等高度化推進資金貸付実績 5-3 林業・木材産業改善資金貸付実績 5-4 農林漁業信用基金による債務保証 6 その他 6-1 緑化センター月別利用者数 6-2 普及職員配置状況 6-3 普及指導職員研修実施状況 6-4 緑の少年団の推移 6-5 林業研究グループ等の推移 6-6 研究課題 56 2 木材流通について (1)県は、山元の情報(山の状況、立木の数や質、種類、森林認証の有無等)を登録 してもらい、川上・川中・川下が共有できるような「森林データベース」を管理・公開 する。 必要とされている木材を必要なところに売ることで、木材の適材適所は図られ「出来 るだけ高く売る」ことが実現される。しかし山元では、手間や費用を理由に木材価値の 実現を徹底せずに流通させている場合が多い。市場で価値が認識されるためには、売る ことを前提にした原木の伐採を行わなくてはならない。そのためには、伐採の前、立木 時点からの情報を管理する必要があるのではないか。山元である山の状況、立木の数や 質、種類等の情報はそもそも原木を供給する立場の人間が知っておくべき情報である。 しかし、実際の現場で行われていないのであれば、これらの情報を誰か把握・管理しな ければならない。 また、そういった山元情報は、川上、川中、川下と共有し、連携できるよう、アクセ ス可能な情報の管理が求められる。だが、川中である製材は、川下のニーズを十分理解 することなく、原木に手を加えて製材し、川下へただ出している傾向にあるという。そ のため情報共有の役割を担い得る立場として考えられるのは、公正な立場をとることの できる第三者的位置の機関、もしくは、実際に原木を扱う山元になるだろう。しかし、 山元が情報管理を担った場合、価格変動を懸念した伐り控えも考えられる。加えて、山 元で働く人口の高齢化が著しく、原木の質を見極める能力があったとしても、管理の役 割まで担うことは現実的とは言い難い。 したがって、第三者的な機関が情報管理を担うに相応しいと考えられ、具体的には県 が「情報土場」としての「森林データベース」 (仮称)を整備することを提言する。 *日吉町森林組合(京都府)が作成している「日吉町森林データ」が参考になる。 57 切り0 り留 切り0 いい0 り00 0い0 沸判 重習 離め 杏田甜 丁ゆ︶ ︵ 学じ 副齢 丁ゆ︶ ︵ 葦耐 刈札 ON ﹃や 割麟 早尊 とN ω∞ 詳対 ≡ 剛 ヨ︶ ︵ 頭料希 り0 ﹁0 3卜 章1耐 譜 切〇 やり ﹂時 N切 一時 い00 ω00 ド切 一時 やり ﹂N や0 一時 や∞0 C 000 N ( ヨ ぃ\ コ ) 爵ほ米 H 爵 付ヨ寄 消 封 0 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報プラットフォームを設置して地方市場と結ぶとともに、一部製材機能を併設すること により、岩手県木材市場の高機能化・全国化を図る。 管理された情報をもとに、伐採された原木をどこで仕分けるかが次の論点になる。品 質、価値に見合った評価額で木材を流通させるためには、伐採された原木をそれぞれ等 級ごとに仕分けする必要がある。原木が仕分けされた状態であることを前提に、それを 必要とする買い手の元に見合ったものが送られる。適材適所の木材流通が求められる。 適材適所の流通を目指すにあたって、この仕分け機能は大きな割合を占める。仕分けを 行うには木を見極めるためのノウハウが必要となるが、培われた能力である以上、見極 めることが可能な人材は限られてくる。山元から市場に至るまでの流通において、原木 の仕分け機能を担い得る箇所があるか、以下複数に分けて考察する。 ・山元土場 運搬コストを最小限に抑えることを考慮するならば、山元に最も近い場所に土場 を設置するのが有効である。伐り出してきた原木を最短距離にある山元土場で仕分 けする。仕分けされた原木は、需要者の要望に合わせて山元からそれぞれ工場等へ 直接配送されることになるため、最も運搬コストがかからない、適材適所の流通と 考えられる。 ・中間土場(中領域単位) 山元でおおまかな仕分けをした後、大雑把な階級分けを踏まえて伐採した原木を 中間土場まで運び出す。それから改めて仕分けを行い、工場等へ運搬する方法も考 えられる。山元からやや開けた場所での仕分け作業が可能になり、中間土場として の土地面積が必要になるが、廃校跡のように現在使用されていない敷地等を利用す ることで、新たに場所を設ける必要性は低減する。山元からは離れ、一方で工場と の距離が縮まる立地の場合には、効率的な運搬と解される。 ・原木市場 市場に仕分け機能を持たせる。木材流通量全体に占める原木市場の割合はあまり 大きくないが、市場は良質材の集まる場所としての仕分け機能を持っている。そこ で、市場に仕分け機能を強化し、物流拠点としてだけではなく、同時に情報のプラ ットフォーム化を図る。物流と情報流を分けることが目的である。原木は容量も重 量もあり、実物の流通には当然コストがかかることになる。それに対し、情報の流 通であれば書面ないし電子の受発信で済むため、流通にかかるコストは低く抑えら れる。 59 以上 3 カ所の可能性を鑑みて、仕分け機能はどこに求めるべきか。木材流通にかかる コストにおいて運搬コストの占める割合は大きい。よって、可能な限り山元での仕分け がなされるべきであろう。しかし、伐採量によっては現状で述べた通り、質の良し悪し に関わらずまとめて搬出され、適材適所とは言えない利用のされ方が考えられる。その ため、現在有効に機能している原木市場の仕分け機能を活用するべきである。 現在、岩手県内の原木市場のうち、盛岡市場が中心的な役割を果たしている。特に、 広葉樹はその取引のほとんどを盛岡市場が担っており、県外からの評価も既にある程度 高い。そこで、盛岡市場の機能を高めると共に、情報システムで地方市場と繋ぐことに 注力したい。これにより、地方市場から盛岡市場までの運送費の節約が期待され、尚且 つ機能を高めた市場による仕分けで岩手県産材のブランド化が視野に入れられる。 図表Ⅳ-2-(2)-1 盛岡木材流通センター高度化のモデル図 地方 市場 川下 地方 市場 需要者 地方 市場 盛岡 市場 情報 地方 市場 地方 市場 盛岡木材流通センター市場が情報プラットフォームの核となり、岩手県内各地域の木 材市場を情報で繋ぎ、産地・材質等のわかる密度の濃い情報を提供するとともに、高い 仕分け機能を持つことにより、木の品質が保証される。そのことにより、他との差別化 (ブランド化)を通じた市場シェアの拡大、有利な価格の獲得が期待される。 60 (3)木材のストック管理について。適正ストックの管理を、情報データベースによる 管理、物的在庫管理、リスクマネジメントの面から政策的関与を検討する。 木材の流通で求められるのは情報把握と仕分けに限られない。必要な時に、必要な物 を、必要な量だけというジャストインタイムの社会においては、安定的に供給すること が当然に求められる。安定的な供給のために考えられる方法としては、需要に応じられ る材の状態を常に保っておくこと。つまり、木材の在庫を抱える、ストックを設けるこ とが挙げられる。 ストックの参考事例としては京都府森林組合連合会の事例があげられるが、京都府で はストックヤードを産地直送の場と想定していて、価格調整の場ではなく、ある程度の ロットを束ねることで価格交渉力を高くするための場と考えているという。一方で、在 庫を抱えることはリスクを抱えるという意味合いも含む。価格変動は勿論のこと、木は 置いておく間にひび割れや歪み、カビ等を原因に商品価値を損なうことも鑑みなくては ならない。しかし同時に、このリスクは誰かが担わざるをえないことも事実だ。 ストックを設けるということで考えられる案は 2 つある。第1は、情報データベース を作成・公開することによりバーチャルなストックをつくることであり、第2は、実際 に在庫としてのストックを持つことである。在庫ストックを持つ場所は、一つ目は山元 土場がありうる。しかし、山元土場で置いておけるのは 1 日 2 日程のものであり、急な 需要に対応できるとは断言しがたい。二つ目として考えられるのは、山元と工場の間に ストックヤードを設けることである。大量の木材を安定的に供給することが求められる 合板工場への原木供給などは、こうしたストックヤードの設置が必要になるかもしれな い。 また、現実のストックを持つ場合は、在庫投資リスクを誰が負担するかが問題になる。 リスクは集中させず分散させる、というのが一般には好ましい。その際、県にはリスク を負担することよりも、そのリスクをいかに分散・軽減させるかというリスクマネジメ ントが求められよう。 よってストックに関して県に求められることは、①情報データベースによる管理、② ストックヤード設置のあっせん仲介、③在庫投資に伴うリスクマネジメントへの政策的 関与について検討することである。 61 3.木材加工業について 木材の生産~加工~消費の流れには、大規模生産~加工~大規模消費を基調とする 「大きな流れ」(合板工場や大手住宅メーカーなど)と、小規模の注文生産を基調とす る「小さな流れ」の二つが併存している。林業振興をめざす場合、一定の量とともに適 正な価格での販売が求められるので、「大きな流れ」と「小さな流れ」の両方に対応す ることが求められる。 (1)「大きな流れ」への対応としては、一定の品質の材を安定供給するため、県産材 に対する品質保証制度の採用、木材加工業の協同化及びストック管理政策を推進する。 品質保証制度に関しては、協同組合高知木材センターが実施している、強度・含水量 等の測定、品質保証により「土佐材」のブランド化を図る取組が参考になる。また、製 材事業の協同化による供給力確保という点でも、高知木材センターが参考になる。 ストック管理については、「2 木材流通について」で述べたとおりである。 (2)「小さな流れ」への対応としては、森林所有者~消費者をつなぎ「素材業者」「製 材業者」「加工業者」「建設業者」の流れを統括する「木材コーディネーター」の育成 と、それを可能にする「木材加工ネットワーク」を育成する。 「Ⅱ 木材需給統計から見た日本と岩手の林業の現状と課題」で確認したとおり、岩 手県における木材生産は、この 10 年くらいの間、生産量を拡大させつつ、製材向け素 材生産は停滞・減少し、製材工場数・生産力も減少を続けてきた。そのため、「小さな 流れ」は隅に追いやられつつあるように見える。消費者や消費者に最も近い建設業者(工 務店)のニーズが、加工業者や素材生産者に伝わらず、川上~川中~川下がバラバラに なる悪循環を起こしているのではないか。例えば、規格外の長さ材や特殊な材を必要と しても、入手が困難な場合や出材情報が得にくい場合がある。また、多様なニーズに対 応できる製材所も少なくなっているという。 そこで、森林所有者から消費者までをつなぐ役割を果たせる「木材コーディネーター」 の育成を提言したい。この点については、NPO 法人サウンドウッズ(兵庫県丹波市) の取組が参考になる。 また、多様なニーズに対応できる製材所機能を確保することも必要である。そのため、 一つ一つの製材所では対応できない仕事を連携によって可能にする「木材加工ネットワ ーク」の育成を提言したい。この点については、京都府木材組合連合会が取り組んでい る「木材加工ネットワーク」が参考になる。そこでは、「製材工場の得意分野(柱材、 板材、化粧材 等)を活かし、少量でも、多品種で良質な木材を供給できるきめ細かな 62 京都らしい分業体制の確立を支援」(京都府農林水産部林務課「森林・林業経営高度化 プラン」)することが謳われている。 63 4.流通におけるリスク管理を行うために、立木の段階での情報管理やストックヤード 等における物的在庫の管理を推進する。 流通におけるリスク管理に関して、流通過程の木材の価格変動の要因となる虫やカビ、 ヒビなどの管理や、需給情報の管理をきちんと行うことができれば、今回の提言の目的 である山林所有者の総収入を増やすということにつながる。また現在、木材製品価格の 低下がそれほど大きく変化していないのに対し立木価格が大きく低下し、立木価格と木 材製品価格の間に大きな開きがあるが、この差を解消することにつながる。なぜならば、 リスク管理がきちんと行われていれば流通の各段階でリスク担保のために価格を必要 以上に上げることがなくなりより適切な価格で製品を消費者に提供することができる からだ。さらに、製品自体の価格が必要以上に上昇することがなくなり山林所有者が必 要以上に立木を安く提供する必要もなくなるため、より適切な価格で立木を販売するこ とができる。では、リスク管理とは具体的にどのようなことを意味するのだろうか。 森林資源は均一な質を保つことができる人工物とは違い天然物であるために価格を 決めるのが難しく、確実な質の保証も難しいといえる。したがって、立木を伐り出すと きはもちろんだが、加工などの流通段階においてもいつどのようなタイミングで価値が 変化するか分からない。そのためリスクはどの段階においても伴うことになる。リスク 管理においてはできるだけリスクを軽減し、回避できないリスクは分散を図ることがで きる手段をとる必要である。また、リスク負担者を明確にする必要もある。 リスクを軽減するためには山にどのような質の立木があるかなど立木の段階での情 報が必要である。立木の正確な情報を把握し適切な価値を見出すことができればリスク は減少し、回避できないリスクは分散させることもできるようになる。さらに、各流通 段階で情報の共有ができればどういった質の木材がどの段階で価値が変動するかとい った見通しを立てることもできるようになる。これらの結果として山林所有者により多 く収入としての還元をすることができると考える。 また、在庫を多く抱えれば抱えるほどリスクも大きくなってしまう。在庫を多く抱え てもリスクを大きくしないために在庫をできるだけ抱えないようにして出荷をしてい くということが必要である。物的在庫としてストックヤード等で管理する場合、その担 い手をどの段階にするか検討も必要であるが、そこに公共政策が関与することで合板工 場への原木安定供給などの適正ストックの管理を目指すべきだと考える。これに加えて、 山自体をストックヤードとして使用し、立木の状態で管理していくことも必要である。 立木の状態で管理するためには情報の管理が重要となり、すべての流通段階において情 報を共有するために情報のストックヤードを設けることが必須となる。 64 5.カスケード利用に役立つ木質バイオマス事業を推進するため、一定圏域を目安とし て熱利用施設を普及・確保する。また、そのための方策の一つとして、LCC を考慮した 低利融資制度の新設を検討する。 この提言の目的にある、森林資源を最大限活用し山林所有者の総収入を増やすために はカスケード利用を促進していかなければならない。カスケード利用を推し進めるうえ でも特に有効な手段だと考えられるのは木質バイオマスである。 立木の価値を最大限高めた利用法は製材として使うということであるが、これはいわ ゆる A 材として仕分けされた木の利用法であり、B 材は集成材や合板、C 材はパルプ やチップといった利用法をされていることが多く、その木材の価値に合った利用法を用 いることで、できるだけ無駄が少なくなるようになっている。しかし、仮に製材として 利用されたとしても原木のすべてが加工されるというわけではないため、無駄が全く出 ないというわけではない。よって、その無駄をできる限りなくして森林資源を余すこと なく利用する、すなわちカスケード利用を行う必要があり、その手段の一つとして木質 バイオマスについて検討する。 木質バイオマスを行う際に一番の問題となるのは輸送コストである。木質バイオマス の輸送コストに関しては釜石地方森林組合の実証実験の通り、直線距離で半径 50km 圏 内であれば何とか運搬コストに見合った事業を行うことができるとしている。この実験 結果から、半径 50km 圏内における発電や熱利用の需要を満たすことができるようにな れば木質バイオマスが普及し、よりカスケード利用を推し進めていくことができるだろ う。そのためには、半径 50km 圏を目安に熱供給プラント、つまりボイラーの設置施設 を探す、もしくは設置を促していくことが重要である。 ボイラーの設置には維持費などのランニングコストである燃料費は化石燃料より安 いにもかかわらず、多額の初期費用を要するため導入を断念せざるを得ない状況も見受 けられる。したがって、木質バイオマス・ボイラー普及のために、初期費用だけでなく ランニングコストを含めた、いわゆるライフサイクルコストに見合う低利融資制度を設 けることも検討すべきである。 65 6.森林認証ポイント制度を導入し、認証が木材価格に反映される仕組みにすることを 通じて、持続可能な森林管理と事業として成り立つ林業の両立を目指す。そのための財 源の一つとして、「いわての森林づくり県民税」の使途の見直しを検討する。 これからはより持続可能で健全な林業経営を行うことを念頭に置いて林業を発展さ せていかなければならない。そのために市場で評価される手段(環境政策の経済的手段) を用いることが考えられる。その具体的方策として、森林認証制度の活用を提案したい。 森林認証制度とは、独立した第三者機関が一定の基準等を基に、適切な森林経営や持 続可能な森林経営が行われている森林又は経営組織などを認証し、それらの森林から生 産された木材・木材製品へラベルを貼り付けることにより、消費者の選択的な購買を通 じて、持続可能な森林経営を支援する取り組みのことである4。日本でも制度は導入さ れているものの森林認証がされていることで価格に影響を与える(より高い価格で取引 される)ことはなく、消費者の関心も強くないのが現状である。しかし、森林認証制度 は持続可能な森林管理を保障するものという点で非常に有意義な制度であるといえる。 そこで、森林認証を一つの付加価値とみなし、森林認証木材にポイントを付与し、木 材購入者は貯まったポイントと交換に補助金を給付するという仕組みを提案する。森林 認証制度と森林経営をつなぐという観点から消費者への給付とした。また、補助金は流 動性が低いため、流動性の高いポイント制を組み込むことで県内のみの消費者だけでな く県外の消費者に対しても給付しやすくなる。 森林認証ポイント制度の導入に必要な財源については、 「いわての森林づくり県民税」 の使途を見直すことが考えられる。これは個人・法人の住民税均等割超過課税として徴 収されており、平成 18 年 4 月 1 日から 10 年間を実施期間としている5。この税収の使 途としては林業経営が放棄された人工林を公費で間伐することを主目的としている。し かし、適正な森林管理をすべて税金で賄うことは困難であり、林業と持続可能な森林管 理が両立する道を志向することが好ましいだろう。 森林認証木材の購入者を対象とした補助金に森林環境税の税収を使うことで川上と 川下をつなぐことができ、さらに森林認証制度と森林経営をつなぐことできると考える。 4 5 林野庁 HP http://www.rinya.maff.go.jp/j/seibi/ninsyou/con_1.html 岩手県 HP http://www.pref.iwate.jp/zei/gaiyou/005979.html 66 (資料)木材市場アンケート調査票 2014 年 7 月 木材市場に関するアンケート 用紙表裏に①~⑬の質問があります。あてはまる番号に○を付け、必要箇所にご記入願います。 ①あなたの事業所の所在地をお書き願います。 1.岩手県( 市 町 村 ) 2.岩手県以外( 都 道 府 県) ②あなたの事業所の業種をお教えください。 1.製材所 2.プレカット・集成材工場 5.その他( 3.ハウスメーカー 4.工務店 ) ③木材購入先を、下の選択肢から多い順に並べて番号で記入してください。 多い( )→( 1.木材流通市場 )→( )→( 2.商社 )少ない 3.山元、素材業者から直接 4.その他( ) ④購入先別に、木材のおもな用途を教えてください(複数回答可) 。 <木材流通市場で入手した木材の用途> 1.建築用構造材 2.建築用内装材 5.チップ・燃料 6.きのこ原木 3.家具・装飾品 4.合板パルプ・紙 7.その他( ) <木材流通市場以外から入手した木材の用途> 1.建築用構造材 2.建築用内装材 5.チップ・燃料 6.きのこ原木 3.家具・装飾品 4.合板パルプ・紙 7.その他( ) ⑤岩手県内の木材流通センターを利用される理由は何ですか(複数回答可)。 1.距離、立地上便利だから 2.木材の質が高いから 3.木材の価格が安いから 4.必要な木材に関する情報が得られるから 5.その他( ) ※⑤で「4」を選ばれた方は、木の入荷情報をどのようにして得ているのかもお教えください。 1.岩手県森林組合連合会のホームページ 2.流通センターからの連絡 3.その他( ) ⑥現在市場に運ばれる木材の大きさはある程度統一されていますが、規格外のサイズの木材を欲 しいことがありますか。 1.よくある 2.たまにある 3.ない ※⑥で「1」「2」を選ばれた方は、規格外の木材としてどのようなものが欲しいかもお教え ください(長さ、材径、樹種、用途など)。 ( ) 67 ⑦入手した木材は、平均してどのくらいの期間あなたの事業所内にストックとして置いてありま すか。 1.10 日以内 5.1~3年 2.1 ヶ月以内 3.2~3ヶ月くらい 4.1 年以内 6.3 年以上 ⑧木材の乾燥をどこで、どのように行っていますか(複数回答可) 。 1.自分の事業所で(天然乾燥) 2.自分の事業所で(人工乾燥) 3.他の事業者に委託(天然乾燥) 4.他の事業者に委託(人工乾燥) 5.乾燥しない 6.その他( ) ⑨購入した木材をストックしておく場所は十分ありますか。 1.十分ある 2.ある程度ある 3.あまりない 4.まったく足りない ⑩必要なときに必要な木材が手に入らなくてお困りになることはありますか。 1.よくある 2.ときどきある 3.ほとんどない 4.ない ⑪岩手県内の木材流通センターは買い手の様々な需要に対応できていると思いますか。 1.よくできている 2.ある程度できている 3.あまりできていない 4.できていない ⑫今年の夏から電子入札に移行するようですが、便利な入札方法だと思いますか。 1.思う 2.思わない 3.わからない ⑬流通市場以外のことも含め、困っていること、問題点、希望することなどがあればお教えくだ さい。 アンケートの質問は以上です。 恐縮ですが差支えなければ下記項目への記入もお願い致します。任意ですので、空欄のままで も構いません。 ・事業所名( ・連絡先電話番号( ・記入者お名前( ) ) メールアドレス( ) ご協力いただき、誠にありがとうございました。 68 ) 【執筆者】 井上 博夫 (いのうえ ひろお) 藤田 奈津希(ふじた なつき) 鎌田 憲武 (かまだ のりたけ) 金野 琴子 (きんの ことこ) 野場 胡桃 (のば くるみ) 平成 26 年度県民協働型評価推進事業報告書 「川下から見る森林経営」 2014 年 9 月 30 日 発行 岩手大学人文社会科学部・財政学研究室 〒020-8550 盛岡市上田 3-18-34