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橡 - Kyushu University Library
都 市 ・建 築学研究
J. of Architecture
九州大学 大学院 人間環境学研 究院紀 要
and Urban
Design, Kyushu
University,
第8号,2005年7月
No.8, pp. 123--128, July.
住 宅 の省 エ ネ ル ギ ー改 修 に関 す る研 究
Study
on Housing
細 木
翼*1,萩
Tsubasa
Hiroto
Improvements
原 智 子*1,高
HOSOKI,
TAKAGUCHI
for
口 洋 人*2,渡
Tomoko
and
Energy
Saving
辺 俊 行*2
HAGIHARA,
Toshiyuki
WATANABE
Althoughthe populationof Japan is going to decrease in 2006, the energy consumptionof residentialsector is
predictedto increase.Thereforeit would be very importantto reduce the energy consumptionof existing houses.
This study defines housing improvementsfor energy saving as repair work to reduce energy consumption of
residentialbuildings.This paper aims to clarify the actual situationof housing repair works for energy saving in
Fukuokaand its savingeffect.The results of our analysisare as follows;
1) For the spreadof energyserving improvements,expressingenergysaving effectsin number is effective.
2) Techniquewith high cost performance is preferable,since large-scaleinvestmentis hard to be made for the
repair construction.
Keywords: Housing Improvement,
Energy Saving Hearing Investigation,
Insulation,
Annual Heating and Cooling Loads
住 宅 改 修,省
エ ネ ル ギ ー,ヒ
ア リン グ調 査,断
熱 化,年 間 暖 冷 房 負 荷
1.はじめ に
図1に 示す よ うに,新 設工事 が停 滞す るなか,修 繕工
事 が建設市場全 体に 占める割 合は90年 度以 降徐 々 に高 ま
り,2003年 度 には23.0%に 達 してい る1).ま た図2に 示
す よ うに現在 の 日本 には既 に5千 万戸 に上る住宅 ス トッ
クが存在 し2),1968年 以降 は総住 宅戸数 が世帯数 を上回
る状況 が続 い てお り,そ の差 は拡 大 し続 けて いる.ま た
国内総人 口は2006年 を ピー クに,減 少 に転ず るこ とが予
測 され てい るこ とか ら,住 宅の改修 工事 が 占め る割合 は
今 後 も増加 し続 け る と考 え られ る.一 方 で,住 宅にお け
るエネル ギー消費 量 は依然 と して増加傾 向 にあ り,今 後
図1日
本 にお ける修 繕工事 の推移1)
図2日
本 の総 住宅 数及 び総 世帯数2)
は改修 の機 会 を活 用 し,既 存の住 宅ス トックの熱 的性能
を高 めて,環 境配 慮型 に変 えて い くこ とが重要 な課題 と
いえ る.
本 研究 は,住 宅 のエネル ギー 消費量 の抑 制 を 目的 とし
た改修 工事 を省 エネル ギー改修(以 下,省 エネ 改修)と
定義 し,住 宅 の省 エネ改修 の現状 とそ の効 果 について 明
らかにす るこ とを 目的 とす る.
本 報 では福 岡 市にお け る改修 工事 な らび に省 エネ改修
工事の現状 を把握 す るた めに行 った,福 岡市内 の改修 工
空間 シ ステム専 攻修 士課程
都市 ・建築 学部 門
2005
事 を手が ける業者8社 に対す るヒア リング調査結果及 び,
数 値 シ ミュ レー シ ョンを用 いて行 った省 エネ改修 手法 の
年 間暖冷房 負荷 削減効果(以 下,年 間 を省 略)の 検 討結
果 につい て示す.
2.九州北 部にお ける住 宅改修 工事の傾 向
2.1ヒ ア リング調査概 要
福 岡市 で住 宅の改修工事 を手が ける業者8社 に対 して
ヒア リン グ調査 を行 った.対 象 とした のは主 に工事費用
500万 円以上 の大 規模 改修 を含む 改修 工事 を取扱 う業者
図3改
修 工事費用 と件 数の割合
で ある.各 社 の改修 工事費別 年間 工事件数 の割 合 を図3
に示す.大 規模 改修 を扱 う業者 で も,件 数 別で は小 口の
表1省
エネ改修 手法及び,そ の取扱 状況
図4省
エネ改修 に関す る発注主の意識
修繕 工事 の割合 が多い.ヒ ア リング調査 は改修工事動 機,
箇 所,省 エネ改修 に関す る取 り組 み等 について,作 成 し
た回答用紙 に基 づいて行 った.調 査期間 は2004年10月
∼ll月 で ある.
2.2ヒ ア リング調査 結果
福 岡市 にお ける改修 工事 の現 状 につ いて行 った ヒア リ
ング調査 よ り,得 られた回答結果 の一部 を示 す.
【
改修動機 】改修 規模 に よ り改修動機 の傾 向 は異 な るも
のの,工 事費が数 百万 円規 模の大規模 改修 が行 われ る際
の動機 としては 「
中古住宅 を購入 した」 「
孫 と同居 を始 め
た」等 の ライ フステー ジの変化 に よる動機 が大部分 を占
めてい る とい う回答結果が4社 か ら得 られ た.ま た最近
の傾 向 として健康,安 全 な室内環境 を得 る こ とを 目的 と
して 内装材 を 自然 素材へ変 更す る改修 工事 が増加 してい
るとい う回答 を3社 か ら得 た.
【
改修費 用】新築 の場合 は ロー ンを組 む ことが一般 的で
あ るが,改 修工事 の際 には ロー ンの審査 が厳 しい ことな
どか ら工事費が数 百万 円規模 の大規模 改修 で も費用 の支
払 い は一括 で済 ま され る傾 向がみ られ,省 エネ改修 に よ
る工事費 増大が どの程度 まで受 け入 れ られ るか が課 題 と
な る.
【
工事費 の増大 】新 築 に比べて改修 工事 におい ては施工
段 階 において不測 の 出費 が生 じや すい とい う指摘 があ る
が,本 調査 で も当初 の見積 も りよ りも2∼3割 程度 工事金
額 が大 き くなって しま うこ とがあ るとい う回答 を3件 か
ら得 た.ま た見積 も りが予 算 を上 回 る場 合には 工事資金
を借 りてまで 当初 の工事 を行 うよ りは改修 箇所 を減 らす
場合 が多い とい う回答 も2社 か ら得 られ た.
【
改修物 件築年数 】小規模 な修繕 工事 の需 要は新 築直後
か らあ り,住 宅改修 業界で は築7年 頃か ら住 宅を大規模
な改修対 象 と して捉 える ものの,実 際 に改修 が行 われ る
のは築15∼25年 の建 物が多 い.ま た築25年 以 上経つ と
住 宅の金銭 的価値 が無 くな るせい もあ り,大 規模 改修 よ
りも建替 え を選ぶ発 注者 がほ とん どで ある ことが分か っ
た.
2.3省 エ ネ改修 に対す る取 り組 み
表1に 住宅 の省 エネ化 に効果 があ る と考 え られ る部位
別 の改修 手法 と,各 手法 に対す る改修業者 の認識,工 事
取扱い状 況 につ いて示す.開 口部 の複層 ガ ラスへ の仕 様
変 更は8社 の うち7社 で行 われ てお り最 も普及 してい る
省 エネ改修 手法 であ る といえ る.他 に も高気密サ ッシの
取 り付 けな ど開 口部の省 エネ改修 は比較 的取 り扱 ってい
る業者 が多い.し か し開 口部の断熱 改修 は結 露対策 と し
て行 われ る場 合が多 く,暖 冷房負荷 の削減 とい った手法
の省 エネル ギー性 は認識 され てい ない場合 も多い.ま た
手 法の省 エネル ギー性 が認識 され ていて も外 断熱や 蓄熱
図5改 修工事の際に発注主が重要視する事柄
体利 用等,工 事費用 が大 き くな る手 法は実施 され に くい
傾 向にあ るこ とが分 かった.
また,調 査 対象 とした全業 者か ら,住 宅 の省 エネ化 を
主 な動機 とした改修 工事 は行 われて いない とい う回答 を
得 た.し か し,8社 の うち5社 で は開 口部 や内装 の改修 の
際 に,省 エネ 改修 を行 うな どの追加提案 を行 っていた.
しか し,い ず れの業者 で も実施件 数 は少 な く現 状で は省
エネル ギー を動機 とす る改修 は一般的 には普及 してい な
い といえ る.
省 エネ 改修 に対 す る発注 主の意識 に対す る業 者の見解
につい ての回答結果 を図4に 示 す.発 注 主は省 エネ改修
に対 して興味 を持 ってい る と認識 して い る業者 が多い も
のの,普 及 させ るには業 者側 か らの働 きか けが必 要で あ
るとい う意 見が多 くみ られ た.図5,6は
図6省
複数 の選 択肢の
エネ改修普及の ために必要 な事 柄
※調査対象件数は8件
中か ら当てはま る項 目5つ に順位 をつ ける順位 尺度に よ
る設 問 の回答 結果で ある.図5に
発 注主 の省 エネ改修 に
ヒア リング調査結果 を行 った結果,本 報 では福 岡市に
対す る意識 につ いて の業者 の見解 を示す.発 注主 が実際
の改修 の際 に重 要視す る要素 は工事費用や住 人 の健康 で
お け る住宅 の省 エネ 改修 について以 下の現状 を把握 した.
あ るこ とが分 かる.仕 上 げの美 しさや耐久性 に対 す る要
1)発
注主 には省 エネ 改修 に対 す る関心はみ られ るもの
求 も高 いが優先順位 はや や劣 り,省 エネ性 の向上や 地球
の,実 際 の工事 の際に は優先順 位 は低 く,現 時点 で
環境 へ の配慮 に至って は,現 時点 では改修 工事 の動機 に
は省 エネル ギー を主 な動 機 と した 工事件数 は少 ない.
はなってい ない ことが分か る.図6に
省 エネ改修普 及に
2)開
対す る業者 の見解 を示す.税 金面 での優 遇措 置や 工事の
際 の公 的支援 金制度 な ど,資 金 面 での政策的 な援助 の必
普及 してい る省エネ 改修 手法で ある とい える.
3)断
要性 を感 じてい る業者が多 い.教 育機 関で の啓蒙活動 や
られ た少 数 意見 を以下に示す.
熱 材の張替 えな ど,経 済 的負担 が大 き くな る手法
は行 われ に くく,工 事費 の増 大 は省 エネ改修 普及 の
業者 自身の意識 改革が必要で ある との回答 もみ られ る.
その他,省 エネ 改修 に対 しての見解 と して業者 か ら得
口部の複層 ガ ラスへの仕様 変更 は,現 時 点で最 も
妨 げ となってい る.
4)省
エネ 改修普及 のた め には,そ の省 エネル ギー効果
を具体 定期 に発注 主に示 す必要が あ る.
以上 の ヒア リング調査 結果 か ら省エネ 改修 の効果 を定
1)追 加 工事 の際,工 事費の増加 分 として許容 され るの
は最大 で も2∼3割 程度 までであ る.
2)省
エ ネ改修 も含 めた,提 案型 の改修 工事 は業者側 か
らの勧 めで行 われ る ことが多い.
3)太
陽光発電パ ネル の設 置 な どの省 エネ改修 を行 う場
合,初 期投 資に対 す る現実的 な回収年 数 を提 示 しな
い と発 注主の納得 を得 られない.
量的 に表す ことの必要性 が示 された.
住宅 にお ける省 エネ 改修 の効 果は気候 やそ の手法 に よ
って,さ ま ざまで あるが,次 章では福 岡にお け る省エネ
改修 の効 果 につ いて暖冷房 負荷 に着 目し,比 較 的実現 が
容 易 な各省 エネ 改修手法 につ いて数値 シ ミュ レー シ ョン
を用い て検討 を行 う.
3.住宅の省 エネルギー改修 の効 果
3.1計 算概要
多 数室室温変動 ・熱負荷 計算 プ ログラムTrP3)を用 いて
数値 シ ミュ レー シ ョンを行 った.図7に 計算 に用いた標 準
住 宅モデル を示す.立 地 は福 岡市東 区 とし,気 象 条件 に
は標 準年拡張 アメダス気 象データ4を用 いた.空 調設定温
度 は暖 房18℃(暖房期 間注1):11/13∼4/14),冷房27℃(冷房
期 間注2):4/15∼11/12)と
し 全館 終 日空調 を行 うもの とす
る.空 調期 間 につい ては 日平均外気 温 度を15項 で単純 移
図7標
準モデ ル平面[単 位:mm]
動 平均す るこ とで平滑化 し,15℃ 以下 とな る 日を暖房期
間,そ れ 以外 を冷房期 間 と して いる.表2に 各部位 の仕様
表2各
部位 の仕様
を示す.開 口部 は全 て単板 ガ ラス普 通サ ッシ,ま た窓 の
内側,外 側 ともにカー テ ン等 の 日射 遮蔽 物は ない もの と
す る.断 熱 材 は第Ⅳ地域 において新 省エネ ル ギー 基準 を
満 たす厚 さとした.
本 章で検討す る省 エネ改修 手法を表3に 示す.今 回 は
表3省
エネ 改修 手法
主に断熱,遮 熱改修 の ほかに外壁 色の変 更に よる 日射 吸
収 率の変化 につ いて検討 してい る.
3.2開 口部省エ ネ改修
開 口部 の 断 熱 性 を 高 め る省 エ ネ 改 修 を行 っ た場 合
(CASE1∼3) の各ケー スの暖 冷房 負荷 を図8に,標 準 モデ
ル か らの暖冷房 負荷 削減 率 を表4に 示す.開 口部の断熱性
能 の 向上 が暖 房 負荷 に与 え る影響 は大 き く,CASE1で
26.8%,CASE2で39.3%削
断熱 性 を高 めたCASE3で
減 され る.南 面のみの開 口部 の
も21.4%の暖房 負荷 の削減 効果
が得 られ た.断 熱 強化 を行 うこ とに よ り冷房負荷 は増加
す るが,壁 体 の断熱性 が新省 エネ基 準程 度の場合,開 口
部 のみ の断熱強化 が暖 冷房負 荷全 体の増加 を招 く恐れ は
ない と考 え られ る.
3.3外 壁省エネ改修
外 壁 の 省 エ ネ 改 修 に よ る 日射 遮 蔽 を行 っ た 場 合
(CASE4,5)の
暖 冷房負荷 の計算 結果 を図9(a)に,標
準モ デルか らの暖 冷房 負荷削減 率を表5に 示す.庇(庇 の
出:1.Om),ベ
ランダを設 置 した場合,暖 房 負荷 は若干増
図8開口 部の省エネ改修後の暖冷房負荷
表4開 口部の省エネ改修後の標準モデルか らの負荷削減率
加す るものの,冷 房 負荷削減 へ の影 響が大 きい ため,暖
冷房 負荷はCASE4で2.7%,CASE5で5.(Y・
削減 され る.
日射 の影 響 を受 けやす い南 面 リ ビン グの み の暖 冷房 負
荷 を図9(b)に
が約11.0%,冷
示 す.CASE4,5と
もに暖冷 房 負荷
房 負 荷 だ け では約19.0%と 住 宅全 体 で
み る よ り大 き な削減 効 果 がみ られ た.実 際 の住 宅 で は
1年 中全 室 終 日暖冷 房 す るケー ス は あま りみ られ な い
ので,遮 熱 改修 で も大 きな効果 が得 られ る.
3.4複 合的省エ ネ改修
開 口部の断熱改修(CASE2)と
併せて外壁,外 構 部の
省 エネ改修 を複 合 的に取 り入 れ た場 合 につ いて検討 を行
う.CASE6∼8の
暖 冷房 負荷削 減 効果 につ いて検 討 を行
った.
CASE2とCASE6∼8の
暖冷房 負荷 の結果 を図10に,
図9外 壁の省エネ改修後の暖冷房負荷
表5外 壁の省エネ改修後の標準モデルからの負荷削威率
図12増
表8増
図10複
表6複
築モデル への省エネ改修 後の リビング暖 冷房負荷
築 モデルへの省 エネ改修後の リビング負荷削減 率
合 的な省エネ改修 後の暖冷房負 荷
合的 な省エネ改修 後のCASE2か
らの負荷削減率
減率 が得 られ た.断 熱 化 に加 え 日射遮 蔽,壁 体の 日射 吸
収率 の低 下 を組 み合 わせて行 うこ とが暖 冷房負 荷削減 に
効果的 であ るこ とが示 され た.
3.5蓄 熱体 利用省エネ改修
標準モデル(CASE3仕
モデル(図11参
様)の リビングを増築 した増築
照)を 用い,増 築部 をフ ロー リングに し
た場合 と,土 間床 に した場合 を比較 し,蓄 熱体 利用 に よ
る暖冷房 負荷 削減効果 につ いて検 討 を行 った.土 間床以
外の各部位 の仕様 は表2に 示 した標準モ デルの仕様 と等
しい もの とす る.表7に
図11増
築モデル平 面[単 位:mm]
改修手法 を示 す.図12に 各 改修 後 の リビング暖冷房 負荷
の計算結果 を,表8に
表7増
築モデル への省エネ改修 手法
増 築モデル に組 み込んだ省エネ
増築 モデル の リビングか らの暖冷
房 負荷削減 率 を示す.増 築モデル とCASE12を
比較す る
と,土 間床 を設 置す る ことで,暖 冷房負荷 は15.1%削 減
され てい る.庇 やカー テ ンを用 いて 日射 を遮 る こ とで,
冷 房 負 荷 は 大 幅 に 削 減 され る が,日 射 遮 蔽 物 の な い
CASE12で
も冷房 負荷が17.7%削 減 されてい る ことか ら,
土間床 の夜 間冷 気の 蓄熱 による冷房負荷 削減効 果が大 き
い こ とがわ か る.し か し,庇 がない場合(増 築 モデル,
CASElO,12,14)で
は,土 間床仕 様 の方 が暖 房 負荷 は小 さ
く,庇 を設置 した際 には暖冷房 負荷全 体でみ る と効率 的
に負荷 を削減 で きて いない場 合 もある.こ の ことか ら,
蓄熱 体を利 用す る際 には,庇 の よ うに固定的 な 日射遮 蔽
CASE2か
らの暖冷房 負荷削減率 を表6に 示 す.CASE2
と比較す るとCASE6∼8は
いずれ も暖房 負荷,冷 房 負荷
のいずれ も削減効果 がみ られた.ま た表5と 表6を 比較
した場合 には,庇 を設 置 した際の暖冷房 負荷 削減率 は開
口部 がペ アガ ラス仕様 の場 合に,よ り高い暖 冷房 負荷 削
方法 よ り,カ ーテ ンやパ ー ゴラ等 を用 いた季節 に よって
調節可能 な 日射 遮蔽方法 が効果的で あ ることが わかる.
3.6空 調期 間の検討
省エネ 改修 に よる空調 稼働 時間の変化 につ いての検討
を行 った.表9にCASE1∼8の
標 準モデル に対す る リビ
ングの年 間暖冷房 稼働 時間の削減 率 を示す.こ こでの空
表9標
準モデル に対す る リビングの暖 冷房稼働時間 削減率
表10増
築 モデルに対す る リビングの暖 冷房 稼働時間 削 成率
調 稼働時 間は,冷 房期 間において室温が27℃ 以 上,暖 房
期 間 にお いて18℃ 以下 になる時間の累計 と同義 であ る.
各省 エネ 改修 手法 を行 うこ とによ る空調稼 動時間 の変化
は概ね暖 冷房負荷 の変動 と等 しし傾 向がみ られ る.開 口
部 の断熱 化に よ り暖房 稼動期 間は20∼30%削 減 され,冷
房 稼働時 間の増加 は遮熱対 策 を併 用す る ことで軽減 で き
る.表10にCASE9∼15の
増築 モデル に対す る リビング
の年間暖 冷房稼働 時間 の削減率 を示 す.蓄 熱 体の利用 に
よ る暖冷房 負荷 削減効果 は大 きい ものの,熱 容量 の大 き
な蓄熱体 は室温 の変動 を抑 制 し,日 中の室 内温度 の上昇
も緩 やか になるため暖房稼働 時間でみ る とCASE12は
増
築 モデル よ りも1.5%増 加す る とい う結果がみ られ た。
本研 究 で検 討す る省 エネ 改修手法 はいずれ も空調機 の
使用 を前提 と してい るが,暖 冷房負 荷 を削減 す るのみ で
な く,空 調稼 働時 間の抑制効果 も大 きい手法 は住 まい手
の省 エネ行 動 を誘 導す るタイプの省 エネ改修 手法で あ る
といえ る.
4.お わ りに
新 築 と異 な り改修 には,大 規模 な投 資が され に くく,
注1)実 質 暖 房稼 働 時 間 は,暖 房期 間3,672時 間 中2,479時 間(標
準 モ デ ル)
また改修箇所 も既存建 物の条件 に よ り制約 され るこ とが
多 い.さ らに省 エネ 改修 に対す る関心が一般 的に低い こ
注2)実 質 冷 房 稼 働 時 間 は,冷 房 期 間5,088時 間 中3,552時 間(標
準 モ デ ル)
とを考慮 に入れ る と,省 エネ 改修 は,変 更規模 が小 さく
て も,効 果 を発揮す るものが好 ま しい.
そ のた め本報 で は住 宅の質 を高 めるための改修 と して
比較 的容易 に導入可能 と考 え られ る手 法の効果 につい て,
数値 シ ミュ レー シ ョンに よる検討 を行 った.そ の結果,
南面 開 口部 の断熱化や庇 の設置 な どが暖 冷房負荷 削減 に
効 果 的で ある ことを示 した.蓄 熱 体 の利 用は,省 エネル
ギー効 果は大 きい ものの大規模 な改修 にな るた め,導 入
促 進 のた めには費用対効 果や快適性 等 に関す る具体的検
謝辞本研究 の一部 は,21世 紀COEプ
ログラム 「
循環型住 空間 シ
ステム の構築 」(拠 点リーダー:川 瀬 博九州 大学大学院教 授)に
よるもので あ り,ヒ ア リング調査 に当た り福 岡市 内の住宅 改修
業者 の方々 に ご協力 を頂 きま した.こ こに記 して厚 く感 謝 申 し
上げます.
参 考文献
1)国
土 交 通 省:建
2)矢
野 経 済 研 究 所:住 産 業 リサ ー チ ・フ ァイ ル2002.07号
3)林
討 が必 要で あ る.本 報 では主 に暖 冷房負荷 の観 点か ら省
た ときのCO2排 出量削減効果 な どの検討 は今後 の課題で
あ る.
4)赤
∼15年 度
イ コ ン に よ る住 宅 の 多 数 室 室 温 変 動 ・熱 負 荷 計
算 シ ス テ ム に 関 す る 研 究,住
No.19,pp.337・346,1992.
エネ 改修 手法 の効 果 について検討 した が,省 エネ 改修が
住 宅 の耐用年数 に与 える延 長効果や ライ フサイ クル でみ
徹 夫:マ
設 工 事 施 工統 計 平 成2年
坂 裕,ほ か7名:拡
宅 総 合 研 究 財 団 研 究 年 報,
張 ア メ ダス 気 象 デ ー タ,(社)目 本 建 築
学 会,2000.1.
(受 理:平
成17年6月9日)
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