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『シミュレーションゲーム』

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『シミュレーションゲーム』
「人はなぜ失敗するのか」を考える
日本にもあった思考の甘さ
改善されたとはいえ、人口増を吸収する手段
この話しを読んだ時、我が国にも同じよう
『シミュレーションゲーム』
な話しのあったことを思い出した。かつて我
が国の革命期といえる明治維新の時代だが、
幕藩体制を打破し欧米先進国に追いつけ追い
越せと、
「脱亜入欧」が進み、欧米列強に互し
て行ける国力をつけ、富国強兵に邁進した。
“日本の曙”を築くべく明治政府は義務教育、
が教えるもの
農業生産を主体とする日本経済構造は多少
としては、外国の領土を侵略する以外にな
かった。そのため、その後の日本は破局へと雪
崩れ現象となって進まざるを得なかった。最
後は原子爆弾というオマケ付きで多大な犠牲
まで払い敗れ去った。
苦手な将来予測
国民皆兵のための徴兵制を敷いた。国が次に
奨励したのは「生めよ増やせよ地に満てよ」と
明治という時代を評価する時、明治の採っ
いう出産による人口増であった。幕藩体制と
た政策が全て失敗であったとは思えない。第
ろうしゅう
いう旧来の陋習を破るための維新の覇気は、
二次世界大戦後、未曾有の経済繁栄を遂げた
我が国の胎動となり浸透して行った。その結
が、その基盤は初等教育の普及や、工業化社会
果、産業の工業化は進み近代日本の礎は確立
への誘導がある。では、日本は何処で失敗した
されて行った。こう見てくると、明治の政策は
のだろうか。
『人はなぜ失敗するのか』
(ディートリッヒ・
良い事ずくめに見える。しかし、農村での人口
その理由は少し成功を焦り過ぎたことにあ
テルナー著)の一節が日経新聞の「春秋」欄に
は肥大し、農家を継ぐ次男三男の処遇に困窮
るようだ。ディートリッヒ・テルナーの結論
紹介されていた。その例としてモロ族の生活
を生じてきた。明治は日清、日露の大戦を経験
は、採用した対策の副次的な影響を考えず目
水準を向上させるシミュレーションゲームが
し多くの若者を失ったが、それでも人口は膨
先の問題に対処したからだ、という。この種の
載っている。このモロ族というのは半遊牧民
張して行った。大正時代に入り世界での侵略
ゲームでほとんどの人が目先の問題解決にと
で、幼児の死亡率は高く、度重なる飢饉で苦し
戦争が一服すると世界経済は不況に襲われ、
らわれ、同じ失敗をするというが、人間は因果
み、家畜はツエツエバエの被害で悲惨な姿を
軍隊に農家の子弟を吸収する余力も少なく
関係が複雑に絡み合う問題で、将来を見通す
している。この設定でモロ族救済のための手
なった。
のが苦手らしい。
法を問うというのが問題である。
この課題を目の前にした場合、誰しも惨状
打開には井戸を掘ったり、保健サービス向上
などの対策を採ることでゲームを進めるらし
い。ではその結果、保健サービスの向上で幼児
死亡率は下がり、人口が倍増した。ハエの駆除
で家畜も増え、井戸を掘って牧草地も拡大し
た。問題は表面上誠にうまくいったように見
えるが、大変な落とし穴が待っていた。最終的
には、地下水の使い過ぎで井戸は枯れ、飢えた
家畜が草の根まで食べ尽くした。最終的な結
果は悲惨さを増すだけだったというものだ。
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最近の金融破綻も、教育現場の問題も、ゲー
失敗を手本に学習しよう
ムの失敗と同じことだったのではないか。
日本経済は金融破綻に始まり、不況のどん
底を這い回っている。経団連は財界人をリー
ドした競争力会議で、過剰設備、過剰人員の排
除の大合唱。設備の強化やルール無視の新人
採用を決断したのは誰か。勿論、国に助けを求
めている企業経営者自身ではないか。日経連
の夏期セミナーで会長の奥田碩さんは「過剰
な雇用を新しいビジネスに生かすことを考え
るのが経営者。それほどの起業精神を持たな
い経営者は自ら退陣すべきだ」と手厳しい。
バブルに踊る一部の人間を見、乗り遅れて
はならじとハシゴまで架けて乗ったのはよい
が、バブルが醒めて降りる時の事を考えてい
なかった国の救済を願う多くの経営者は、自
分の愚劣な行動を今こそ反省すべきだ。
極東の一隅にある日本国が、自国の将来を
リーダーの選別には良い手段
考えて少子化・高齢化に歯止めをかけようと
ところが世界一の高齢化社会に突入した我
しても、出産だけは「日の丸・君が代」の法制
では、何故に人は失敗を繰り返さねばなら
が国は女性の平均年齢が80歳と少し。男性
化とは違い、おいそれとは国の自由にならな
ぬのか。それは人間が無知だからだと言い
も77歳という考えられないような高齢化。
い。老人には長寿であることの無意味さを自
きってしまうわけにも行かない。それなりに
一方では少子化といわれる出産の減少。総理
覚させるために、長命税でも課すとか、いかに
歴史を振り返り、失敗の積み重ねを分析し、将
府が今年7月に発表した少子化に関する世論
長命が国の成長を疎外するものであるかをT
来図をシミュレーションする。失敗で痛みを
調査によると、30代の女性の2割が「結婚し
Vで毎日流すといったことも、あまり効果は
覚えた人は、二度とそのような状態に至らぬ
ても子どもを持つべきとは思わない」と解答
なさそうだ。人は老い、やがて死に至るという
よう考えを重ねる。巨視的にしかも生態学的
している。子育ては全体の3割以上が「楽しい
ことは、天の采配である。それは分かっていて
な課題をも考慮し、無駄な行動は排除しよう
時とつらい時が同じくらい」と解答していた。
も、自分の命を自ら断つ事は難しい。寝たきり
とする。しかし、幾度も失敗を繰り返す。歴史
特に経済的な理由が多いのも事実で、政府は
老人になろうが、アルツハイマーになろうが、
はそれを証明して見せる。思考のための大い
この少子化・高齢化傾向への移行を、国の持つ
老醜をさらしながら生き続ける。若者達の出
なるサポート役として、コンピューターは進
エネルギーの低迷や経済の活性化にマイナス
産の奨励も、よほどの経済的な補助を厚くし
化を遂げつつあるが、コンピューター大国の
に作用すると、2人目からの出産に対して国
ない限り、
「はい、子どもを増やしましょう」と
アメリカでさえ、ベトナム戦争という愚行を
が助成する事などを考え、何とかして少子化
はなるまい。若者達も過去の我が国の政策の
行い、痛い目に会っている。
を防ごうと方策を考えている。
失敗を十分承知しており、おいしい話しを出
「春秋」の筆者は、
「先を見通すことがリー
してもそうそう飛びつくことはしない。人間、
ダーの条件になるはずだが、日本社会にそう
学習することで進歩するものだ。
いう選抜基準は少ない。国の大臣や、政党の党
首を選ぶとき、候補者全員にモロ族のゲーム
を義務づけ、判断材料にしてはどうか」と結ん
○○BANK
でいる。
破
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綻
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