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学校卒業後を見据えての学童期・家族の立場から

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学校卒業後を見据えての学童期・家族の立場から
学校卒業後を見据えての学童期・家族の立場から
サンフレンズ八王子
代表
岡田美知子
こんにちは。サンフレンズ八王子の代表をしております岡田美知子と申します。宜しくお
願い致します。サンフレンズ八王子と申しますのは、多摩養護学校に通っていて、南大沢地
区に住んでいる子ども達とその母親達で立ち上げた施設です。南大沢は新しくできた町です
ので肢体不自由の施設が一つもありませんでした。近くで卒後に通える場所が欲しいと言う
目的で立ち上げました。立ち上げた時にはみんなまだ学童でしたので、週2回の活動を起こ
すことに精一杯で、内容は後から整えてというようなスタートでした。ここに簡単なサンフ
レンズ八王子の経過を書かせて頂いておりますけれども、このような経緯をもって、現在、
卒業生3名が毎日通所しておりまして、4名の学童が週3日、放課後活動として合流して活
動しています。
今日は家族の立場からということですので、今までお話を伺わせて頂いた方々とちょっと
立場が違うと思いますが、私たち親は、学童期に限らず、乳児期、幼児期、成人と一生通じ
て、子どもを見守る立場にありまして、どの時期も非常に大切に思います。特に学童期をよ
りよく過ごさせようと思いますと、やはりその前の幼児期が非常に大事で、母親が現実を見
つめる強さと、そこから前向きに立ち向かっていく、心の整理というものが幼児期の間にで
きていると学童期も有意義にいくのではないかと思います。
サンフレンズ八王子は、発足した時に小学部2年生から高等部2年生までの、年齢差と肢
体不自由の障害とはいえ、そのあり方もいろいろ違いもありました。一つの施設を作り上げ
るにあたって、親たちが最初話し合ったのは、ただ行くとこがあればいいというのではなく、
子ども達一人ひとりが生き生きと自分らしく生きていける場所にしたいということでした。
ですから最初から活動の中身を決めてしまうのではなく、いろいろな活動を取り入れてみて、
子ども達の様子を見ながら残す活動、残さない活動に整理してきました。身体の不自由な子
どももやれること、工夫が必ず必要なことを整理する一方で、将来、地域で子どもが生活し
ていくことに一番大事なことは何かということも頭に置いてきました。子どもの社会性やコ
ミュニケーションの成立などはとても大事な柱です。肢体不自由の子どもは重度であればあ
るほど、表現に制限がありますので、わりと簡単に周りの人から、
「あっ、この子は解ってい
ない」と判定付けられてしまうことがあります。実は重度の子もいろいろな情報をキャッチ
して、傷ついたり、諦めたりして、コミュニケーションチャンスを逸していることが多いと
思います。いろいろなところへ連れて行き、いろいろ刺激を受け、コミュニケーションがで
きるような環境作りにまず心がけました。地域に根ざすことはサンフレンズ八王子の現在進
行形の課題ですけれども、同年代とのお子さんとの関わりがもう少しあればと思います。ス
クールバスで自宅と学校の往復が主な生活となり、自宅に帰ってしまうと、もう外に出かけ
る気力や体力に限界があり、どうしても地域が抜け落ちてしまっていることを卒業してみて
感じました。放課後活動として地域で活動している分、しないよりはずっと地域が身近には
あったと思いますが、同年代の幼なじみ的な人間関係がもう少しあったら良かったらと思い
ました。小さいお子さんから「なんで歩けないの?」と聞かれることがあるのですが、たい
ていのお母さんがそんなこと聞いて悪いと思われるのか、制止されることがあります。私た
ちは正しい情報を小さいお子さんにもちゃんと伝えたいと思っているので、情報を正しく伝
えられる場があったらいいなと思いました。コミニュケーショに関しても簡単にこの子は解
っていないと判断されるのではなく、自分の思いを伝えること、自分は水ではなくリンゴジ
ュースが飲みたいとか、飲みたいものが飲めるうれしさを味わえたり、生活の質の向上につ
ながったりする工夫をどの子も試みて、身につけさせてあげる、このような取り組みをぜひ
学童期にしてあげて欲しいと思います。卒後の生活のなかでこれが成立するかどうかは、そ
の子の人生のあり方自体に影響する大切なことと思います。
サンフレンズ八王子において学校や家庭ではできない場面設定があり、しかも継続して取
り組めたことはとても良かったと思っています。親も家庭では見抜けなかった一面が、その
放課後活動で見えてきて、意外に「この子ってこういうものが好きだったのだ」とか、親の
前で見せる姿とは違う一面を見たりできました。重度だけれども、ちゃんとよくみるとどこ
かで自己主張がみられたり、解ってあげられるようになったり、子ども達一人ひとりの新し
い一面を知ることができました。子ども同士もスクールバスのなかだけ一緒だった間柄から、
地域でともに行動することでお互いがもっと近い存在となり、仲間意識も芽生えてきました。
八王子市から補助金をいただけるようになり、決まった場所ができたことで、ボランティア
さんや非常勤さんを募集することができたことで、親以外の方達と過ごせるようになったこ
とも大きな収穫でした。そこからも少しずつではありますが人間関係が広がっていくものと
思います。このような体験は親達にとっても、子ども達にとってもとても貴重なものとなり、
子どもの卒後の人生を考えるのにとても役立ちました。また、パソコン導入から、点字入り
の名刺を作りが生まれ、織機導入から手織りの作品つくりが生まれ、卒業した成人の毎日に
生かされてきまして、ホームページ作りなど最初からは創造できなかった活動へと発展して
きました。
写真で活動をご紹介します。これは(写真4参照)、草木染めをしているところですけれど
も、草木染めは最初親がやってみたいということで始めたのですが、結構子どもはこれを楽
しみにしていまして、水に布を浸したり、色の変化をみんなで楽しんだり、最初活動ででき
た草木染めの作品がお店で売れたり、社会参加につながってきたりしたことも最初は想像も
していなかったことでした。
この写真(写真5参照)も草木染めです。次お願いします。これ(写真6参照)も草木染
めです。結構、みんなこうやってでき上がったら喜んでいます。藍染めしたところです。お
願いします。この写真(写真参照)は陶芸をやっているところですけれども、電動ロクロを
使っています。電動ロクロは土がぐるぐる回りますので、子どもに、土の重さとか、粘りと
か、土の感触がとてもよく伝わります。いつも手を握ることが多い子も、開いて、ちょっと
リラックスしています。次の写真(写真8参照)の彼女は土のある場所をちゃんと自分の目
で確かめて手を伸ばしています。写真(写真9参照)はパソコンで名刺作りをしているとこ
ろです。これは(写真 10 参照)点字を打っているところです。一枚一枚差し込んでで、彼女
は上手に力加減を調節しながら打ってくれています。こちら(写真 11 参照)は手織りですけ
れども、草木染めで染めた毛糸や布を織ったりしたのがきっかけでした。彼は一生懸命織っ
ています。
このように体験が広がり、卒後の生活にもつながっています。また、肢体不自由児の障害
では形態別調理が必要なお子さんが多くいますので、その調理の勉強をしたり、親や職員さ
んの勉強の場であったり、いろいろな場をこのサンフレンズ八王子は担ってくれています。
もし、他で得られないものがあったとしたら、これらを継続して積み重ねができる場を得ら
れたことが非常に大きかったです。
課題も多くあります。なかでも地域に根ざすことの難しさを感じています。これは相手が
あっての話ですので、地域の方に不快感を与えてはいけないと思い控えめになってしまうの
ですが、これからの課題として時間をかけて取り組んで行きたいと思います。もう一つは、
親、家族からみて、これは最大の課題だと思いますが、親亡き後の子ども達の人生への心配
です。親が突然もしものことがあった時に、子どもの生活が一変して変わるのではなく、親
が元気なうちに少しずつ準備をして、理想言えば、スープの冷めない距離で子どもの人生を
見守っていられたらと思っています。
それを図にしてみました(図4参照)。サンフレンズ八王子とグループホームを中心に様々
な機関が横の連携を取っていただいている図です。このなかで「家族の支え」の部分が徐々
に「サポートセンター」が担ってくれるようになると思いました。ここでは障害者同士がお
互いに助け合って、ピアカウンセリングとか、情報交換や交流の場となればと思っています。
不勉強ななかで考えたので、もっといい方法があるかもしれませんが、これからの課題は、
子どもの日中活動する場とプライベートな場の両方が必要であり、それを取り巻く行政、医
療、コーディネーター、移動、介護機関等、横の連携が周りにあればと考えました。
図4 サンフレンズ八王子とグループホームを中心とした連携
私たち親と肢体不自由の子とはいつも一緒にいることが多いので、親の想いがそのまま子
どもの想いと勘違いしがちなのです。子どものほんとに幸せな卒後を考えると、いずれ最終
的に施設入所が必要になるかもしれませんが、地域で暮らしていける生活も選択肢として残
してやりたいと感じました。地域のなかで障害のある人もない人も共に暮らしていける社会
を基本理念に新しい福祉制度が始まっているのですが、ほんとにそういう理念通りの社会に
なっていくかどうかは、制度ができたからできるものではなく、これからの人作りなり、環
境作りなりをしていく作業がなければいずれ制度倒れになってしまうのではないか、ととて
も心配しています。
そういう意味でやっぱり地域のお子さんとも、幼い時から交流をしていたり、正しい情報
を伝えたりできる機会が必要です。将来介護される側とする側の関係だけではなく、障害が
重くてもその子はその子なりの個性や性格がちゃんと伝わるような人間関係が成り立ってこ
そ、本当の意味で「障害のある人もない人も地域で共に暮す」ことになるのではと思います。
子ども達はもっと住みよいのではないかと思いました。そのためには各機関の横の連携を是
非とも図って頂きたい。縦割り行政がだんだん是正されてきていると思うのですが、もっと
サンフレンズ八王子の
楽しく豊かな活動
写真4:草木染
染液に入れる前に水にぬらしています
写真5:草木染
水にぬらした布を染液に入れています
写真6:草木染
藍染をしています
写真7:陶芸
電動ロクロで回る土に触れています。土が手
にからんでくれ、最初はドキッとするけど慣れ
てくるとにぎっていた手も開いてリラックス
写真8:陶芸
電動ロクロの方に自分で手を伸ばして
手を開いていられるようになりました
写真9:パソコン名刺作り
マウスを使うのも大変だけど、
マウスでやりたい意欲は上手に
その場でクリックできます
写真10:名刺に点字
1枚1枚点字を打っています
力のいれ具合も一番上手です
写真11:手織り
染めた毛糸や古布など色々
なものを織っています
もっとこのような集まりの中にいろいろな機関の方が集まるように、細かなことでも議題
を決めて話し合って頂ければと思います。そういうことをやれるのはやっぱり学童期ではな
いかと思いますので、是非学校や、島田療育センター、医療、福祉施設、家族を交えて、も
っともっと話し合える場を作っていけたらと思いました。
以上です。ありがとうございました。
座長:ありがとうございました。それではご質問とか、コメントなどお願いしたいと思いま
が、いかがでしょうか。多摩養護の校長先生。よろしければ一言。
質問:私も何度かサンフレンズにはボランティアで参加させて貰いました。一緒に汗をかく
ことの大切さと言うのでしょうか、そういうところで理論づけしていくようなところを私
は大事にしていて、後で渡邉先生の方から、この学童期の支援のあり方について理論的な
裏付けがあると聞いておりますので楽しみにしております。私もこの時期、計算してみる
と、学校のシェアー時間は 16 パーセントで、84 パーセントはご家庭にいると言うことです。
そのなかで何をするのかということがすごく大きな課題として残っています。今、就労支
援というか、移行支援の問題も制度として整備されてきているところです。私が今やって
いるのは、先ほどの学校関係の方から発表ありました個別の指導計画、就学段階の移行の
部分を改善検討しているところなのです。近々一応検討したものを発表するところまでき
いています。トータルにやっぱり生活のなかで、学童期の時期をとらえ直すきっかけにな
ればと思っています。あの岡田さんのおっしゃったところで、どうしてもウイークポイン
トって言うのでしょうか、学齢期は学齢期の育ちのなかできっと思いを馳せている部分が
あろうかと思うんですね。かなり卒業生も出だしていますし、そういった生活をフィード
バックしながら学齢期へまた見直してみるというところが必要かなと今感じました。以上
です。
座長:突然お話をお願いして申し訳ございませんでした。他に質問、コメントございません
でしょうか。それではどうもありがとうございました。
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