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セミナー概要はこちら (PDF:275KB)
平成 20 年度 農林水産省委託事業
農林水産物・食品
輸出オリエンテーションの会
輸出促進セミナー(東海会場)の要約
○主催者挨拶/東海農政局次長
釘田博文氏
近年、世界的な日本食ブームの広がりや、アジア諸国等における経済発展に伴う富裕層の
増加により、高品質な国産農産物、農林水産物の輸出促進のチャンスが拡大している。農
林水産物・食品の輸出促進は農林漁業者や食品産業事業者にとり、新たな可能性に富んだ
需要の開拓による生産品目の再編、あるいは生産量の拡大につながり、経営に対する意識
改革を通じた主体性と創意工夫の発展が期待されている。政府としては、この機をとらえ、
農林水産業、あるいは食品産業のさらなる発展を目指し、農林漁業者や関係団体等の取り
組みにより、農林水産物・食品の輸出額を平成 25 年度までに 1 兆円規模に拡大するとい
う目標を掲げて、その達成に向け国内外の輸出促進サポーターとの商談会の提供、あるい
は日本食材等の海外への情報発信、さらには品目別のきめ細かな輸出支援策を進めている
ところだ。去る 6 月には東京都において、農林水産物等輸出促進全国協議会が開催され、
官民が連携した農林水産物・食品の総合的な輸出戦略が創られたところである。農林水産
省でも各種の輸出促進に関する支援策を策定しており、本日の農林水産物・食品輸出オリ
エンテーションの会もその 1 つだが、本年度はさらなる充実をはかるために、農林水産物・
食品の試食会の実施も予定している。現在の世界的な経済危機や円高の問題もあり、輸出
がそう簡単なことではないと実感しているが、本日のこの会が 1 つの契機になって、短期
的には難しい面もあるかもしれないが、やや長い目で輸出に向けた取り組みというものを
育てていただければ大変ありがたい。
○基調講演/「ドバイマーケットの最新事情」/株式会社コスモトレードアンドサービス
松宮良平氏
<ドバイの国情と最新事情>
今回の講演で、中東への輸出の難しさと可能性を皆さに知っていただければ幸いだ。まず
私の紹介だが、2002 年の 4 月から 2007 年 9 月まで約 5 年間ドバイに駐在し、日本食の輸
入と販売を担当した。販売は主にホテルの高級レストラン、スーパーマーケット(カルフ
ール、スピニーズ、その他インド系およびアラブ系)で、2007 年 9 月に日本に帰国し、
今また中東への輸出、日本食の輸出を手掛けている。ドバイにはオイルマネーが非常に入
ってきており、いろいろな建物、不動産、ビル、証券等への投資が非常に盛んになってい
る。オイルマネーのほとんどは、政治と文化中心のアブダビと、このドバイに入ってきて
いるというのが現状だ。ドハイのあるアラブ首長国連邦(以下 UAE)は、非常に昔からイ
1
ランとの貿易が盛んなところで、人口 6,000 万人のイラン、2,000 万人のサウジアラビア、
その他中近東のハブ的な位置にある人口 410 万人の国だ(北海道と同じ広さ)。そのうち
自国民は 72 万人(20%未満)で、それ以外の外国人のうち最も多いのがインド人(120
万人)、次いでパキスタン人(45 万人)、後はイラン人、フィリピン人、ヨーロッパ人(イ
ギリス人が中心)、スリランカ人、エジプト人ほか約 180 か国の地域の人々がいろいろな
仕事、出稼ぎでここに住んでいる。1 人当たりの GDP が 4 万 2349 ドルで日本よりも多く、
成長率が 16.5%と非常に金持ちの勢いのある国である。この UAE は 7 つの首長国に分か
れ、そのうちの1つであるドバイは埼玉県と同じぐらいの大きさで、人口は約 145 万人、
うち UAE 人が 29 万人(20%)、その他インド人、パキスタン人、イラン人が多い非常に
国際的な街だ。1995 年のドバイの人口は 70 万人だったが、10 年後に 1.7 倍、120 万人に
増加するなど、非常に急激な発展をしているのが分かる。男性が女性の約 3 倍おり、非常
に単身の労働者が多い首長国とも言える。ドバイの在留邦人は 2008 年 4 月現在で約 2,500
人。中東では最大の日本人コミュニティを作っており、日本企業約 220 社のほとんどが、
フリーゾーンという経済特区にあるジュベル・アリ・フリーゾーンに事務所を構えている。
<ドバイ経済と食品マーケットの実状>
ドバイの経済の特徴としては、経済特区の設立、港湾の開発、空港の開発、そしてイベン
ト・観光の振興が上げられる。最初の経済特区の特徴は、外資が 100%で会社が設立可能
なことだ(通常はスポンサー制度があり外資は半分未満の資本比率でなければならない)。
スポンサーは不要で法人税(もともと UAE は法人税がない)もなければ、外国人労働者
の雇用の制限もない。現在、ジュベル・アリ・フリーゾーンには 1,500 社の外国人企業が
進出している。その他の経済特区としては、インターネットシティ、メディアシティ、ド
バイインターナショナルファイナンスシティなどがある。港湾関係もラシード港、ジュベ
ル・アリ・フリーゾーン・、ジュベル・アリ港を作って開発しており、エミレーツ航空は
(中部国際空港にも乗り入れて直行便あり)59 か国 84 都市に空路を持っている。また、
イベントは、毎年ガルフフードという国際食品の展示会を開催し、競馬ドバイカップなど
も行われている。現在ドバイは不動産を中心に、サウジ人、クウェート人、イラン人らの
オイルマネーが集まりやすいような環境を作っている。
食品関係のマーケットは全部含めて約 4,000 億ドル(輸入)。日本からの輸入が、飲料を
抜いて約 10 億円である。非常に難しいのは、イスラム教の関係から酒と豚については非
常に規制が厳しくて、原材料に入っていると輸入ができないこと。また、動物性油脂があ
ると、ハラール証明が必要となることだ。通関上も、関税を払えばそれで通関は通るが、
その後にドバイ当局のフードコントロールという検査にパスしないと販売できない。この
フードコントロールでは必ずアラビア語と英語の表記がされているか、原料にアルコール
酒精が含まれていないか、豚由来の動物性油脂が入っていないか、原材料に許可されてい
2
ない人口着色料が含まれていないか等がチェックされる。アラビア語表記は、去年の 1 月
より義務化された。今、非常に寿司ブームで、枝豆もよく売れている。どこの日本食レス
トラン行っても、枝豆で通じる。また、アメリカのノブという高級レストランがアトラン
ティスホテルに進出し、高級食材を使った日本食が流行っている。今後、フードコートに
あるファーストフード的な日本食と、ホテルにある非常に高級素材を使った日本料理とい
う 2 つに、今後ドバイの日本食のマーケットが分かれていくと思う。
○パネルディスカッション/「名古屋を拠点としたアジア輸出戦略」
1.自己紹介と事業紹介
石 井 氏
ジェトロ名古屋貿易情報センターの石井です。東海地方は非常に食も豊かな地
域という印象を持っている。今日のパネルディスカッションは、ざっくばらんに進めたい
ので、まずはパネリストの方々から自己紹介や事業紹介をお願いしたい。
大 山 氏
私ども神戸屋食品の仕事は、総合卸問屋(ホールセラー)である。約 19 年バ
ンコクで食品の卸をやっている。取扱いアイテムは約 1,500~1,700 アイテム前後で、売
上の 70%はレストラン関係、ホテル、ゴルフ場など一般の業務筋が多く、残りの 30%が
スーパー、デパートだ。総合卸なので冷凍、チルド、一般グロサリー、その他飲料、果物、
野菜、お米、牛乳やお酒など、一応すべての食品、食材を扱っている。現在、弊社のタイ
のお店は約 12 店あり(チェンマイから南のパタヤまで)、小さなお店ではあるが、一応配
送できるようになっている。タイは暑い国なので、弊社の取り扱いのメインとしては、や
はり冷凍倉庫、チルド、グロサリーになるが、すべて全温度帯でコントロールしている。
広 岡 氏
伊勢丹シンガポールより参加させていただいている。私はシンガポール伊勢丹
で約 8 年間主に日本のフェアの企画担当をしている。シンガポールは東京 23 区とほぼ同
じ広さで、今から 36 年前に伊勢丹の海外 1 号店として出店し、現在は島内に 4 店舗を構
えている。売上の規模は約 240 億円、食品は本店的位置にあるスコッツ店の地下 1 階にあ
り、主なお客様は人口の約 75%を占める中華系シンガポール人である。スコッツ店の食品
の売上は約 30 億円程度で、うち 4 割が日本食。品揃えは精肉、肉加工品を除いては、ほ
ぼすべて日本食を扱っている。現在の主な青果物を除いた日本食の物流ルートは神戸から
の船便で、年間約 24 本程度の日本の催事を開催しており、毎月約 20 名程度の実演、試食
販売の方々が日本から来店している。なかでも人気の物産展は、北海道フェア、続いては
九州フェアだ。特に北海道フェアでは今は 1 億円程度の売上を記録しており、5 年前と比
較すると、約 10 倍の売上になる。この数字からも現地のお客様の日本食の認知度、購買
力が著しく伸びていると言える。
松 宮 氏
コスモトレードはコスモ石油の関係の関連会社であり、アブダビにはサミット
トレーディング(日本食輸出入、日本食のケータリング会社)、ドバイにはヤマト(日本食
3
輸出業。主に高級ホテルとスピニーズ、カルフール等に卸売)がある。また今年、カター
ルにもムサシトレードインターナショナル(日本食輸入・ホールセール)を設立した。
2.各国の市場の特徴と東海地域の食品について
<各国の市場の特徴と人気食品>
石 井 氏
日本食は我々が感じるよりも、非常にアジアに浸透しているように感じる。先
週、出張先の上海でも地下の食堂街で関東煮、つまりおでんを売っていた。お寿司が有名
なのは周知の通りだが、パネリストの先生方からも、おでんが最近売れていることを聞い
た。そうした各々の市場の特徴などを教えていただきたい。
大 山 氏
今現在、タイで新潟フェアを行っているが、話が出たおでんが一番の売上金額
を示している。フェアの場所はバンコクのマーケットホール(約 130 平米)で、売上では
1 番がおでん、2 番がソフトクリーム、3 番がたこやき、4 番、5番が寿司(寿司は 2 店)、
6 番がラーメン、その次がお好み焼きという具合に、日本の縁日でよく目にするような食
材が、東南アジアでは非常に人気になってきている。タイの市場は、昔の市場と、モダン
トレードという大型店(カルフールやロータス等)の 2 極化が進んでいる。とくに大型店
はタイ全土に入ってきている。なお、ソフトクリームは大型店舗のロータスなどでは、特
にアメリカ系の安い食材が入ってきており、日本円では 30 円ぐらい。我々がプロモーシ
ョンを行う日本のものは約 240 円の値段になってしまうが、味と美味しさが全く違い、特
にバニラや抹茶は売れる。チョコレートなどは欧米方が安くて美味しいので人気だ。
広 岡 氏
売れ筋は日本産のフルーツや生珍味。ホタテに目をつけ、乾燥ホタテなどの食
べ方が分からないお客様にホタテの炊き込みご飯の作り方のレシピを付けて商品を紹介し
たりしている。また、お餅も豆菓子とか餡子が入った和菓子、動きのある商品が非常にシ
ンガポールのお客さんは好きなので、タイ焼きを機械を持って来て実演販売したり、そば
やうどんなども、その場でゆがきながら大きなザルに山盛りにして、どんどん試食をして
食べてもらいながら買っていただいている。その他日本酒や梅酒なども人気があるが、生
産者の方々の地道な宣伝活動、試食活動の中で定着してきたものだ。最近では、健康ブー
ムのため、もろみ酢や黒酢などもよく売れる。もろみ酢は水と割り、黒酢は牛乳と混ぜる
とヨーグルトみたいになるので、お子様も飲めると言って買う人もいる。
石 井 氏
イスラム圏は、非常に宗教上厳しく統制をされているようだが、例えば、日本
食品の実演販売、試食なども行うのか。
松 宮 氏
以前、寿司の実演をやった。魚はハラールとは関係がないため、どんな魚でも
輸入できる。かにかまぼこやとびっこが非常に売れている。寿司ブームであり、ヨーロッ
パの方が皆さん寿司を食べているので、地元の人もこれはヘルシーだということで食べる。
大 山 氏
タイは回転寿司だけはうまくいかなかったようだが、レストランの数がタイ全
土で 700 から 800 ぐらいあるので(その約 70%がバンコク)、寿司ブームはこうしたレス
4
トランの力が相当大きかったと思う。今現在は、タイ独自の寿司に切り替わりつつあると
ころもあり、ピンからキリまであるが、寿司ブームは今のところ一向に衰える気配はない。
なお、地元の人は寿司を作るのは苦手で、やはりどこかの店に食べに行くのが一般的だ。
広 岡 氏
シンガポールも鮮魚カウンターの 3 分の 1 はお寿司のカウンターになっていて、
日本人向けと生のお刺身が大好きな方向けの高級なお寿司のセットと、現地人向けのお寿
司を 1 つ 1 つをセロファンでパックし、20 種類ぐらい並べて自身で好きなものをセットで
きるものもあり、寿司は完全に定着している。
<東海地域の食品の現状>
石 井 氏
マニラに駐在をしていたが、一番ポピュラーだった巻き寿司は、マンゴーをの
りで巻いたマンゴーロールだった。
次に東海地域の食品の話をしたい。パネリストの皆様方に聞いてみたところ、あまり東海
地域の食品は入ってきていないとのことであったが、それはなぜだと思うか。
松 宮 氏
ミツカンの酢は使われており、八丁味噌やのりも、高級日本食レストランでは
使っていたようだが、ずっと続けてというのは記憶にない。
広 岡 氏
静岡県に関しては、県のサポートがあり、マスクメロン、青島ミカン、生わさ
びなどを取扱っている。生わさびはそのまま置いていては売れないので、県の方が来てく
ださり、マグロの解体ショーと一緒に隣でわさびをすりながら、これとつけると美味しい
ですよという宣伝をしながら、定期的に年に 3 回ぐらい販売した。そうするとチューブの
わさびではなく、これが本当のわさびだと認識し、時々、生わさびは売っていないのかと
聞いてくる。こうした宣伝活動はやはり必要だ。
大 山 氏
ミツカンや盛田醤油など、ナショナルブランドの中には、東海地域の商品があ
るが、たまたま我々のシッパーの出荷元が横浜にある関係で、魚介類であれば築地が中心
になってくる。シッパー自身がどれだけのネットワークを持っているかによって、大きく
変わってくる可能性があるのではないか。
<各国の食の嗜好>
石 井 氏
フィリピン人は、わさびのような鼻にツンとくる辛さを好む。地元のお寿司屋
さんに行くと、大量のわさびが用意されておりビックリするが、本当に国が違うと同じ東
南アジアでも嗜好がだいぶ違ってくると思う。その辺りについてはどうか。
広 岡 氏
シンガポールも本当に同じで、わさびと醤油だったら、わさびをつける割合の
方が多いというぐらい、辛いものが大好きだ。シンガポールの場合は、こちらからお客様
にいかにうまく商品を宣伝するかが重要である。例えば、シンガポール人はホタテが大好
きだが、刺身だけでなく、ボイルホタテ、乾燥ホタテ、チーズが入った珍味など、あらゆ
るホタテの商品を集めて、試食もどんどんしながらフェアを行ったら、大盛況だった。そ
5
の他、お茶なども、大きなザルに山盛りにして、きれいな日本の和紙で包装した丸い缶カ
ンを用意し、詰め放題をしたらよく売れた。いかにうまくお客様に楽しんでもらうかが一
番重要だと思う。また、シンガポールの方は、並ぶのが大好きで、人が並んでいないと集
まってこない。中には何があるのかわからず並んでいる人もいる。
大 山 氏
タイでは、わさびが売れるようになるには時間がかかった。最初はナショナル
ブランドの商品をもってきたが、売れ行きが芳しくなかった。テストの結果、タイの人は
ピリッとして刺激のある、鼻にツンとくるぐらいのものを要求しているとわかったが、メ
ーカーさんはなかなかそれを商品化しなかった。商品化後は相当売れたが、マーケット調
査を行い、そしてやはり東南アジア向けの商品を作る必要を感じた。
松 宮 氏
中東はイスラム教で酒を飲まないのでチャイを飲む。そうすると、甘いスイー
ツが非常に好まれる。イラニアンスイーツという非常に甘いお菓子が至る所で売られてい
る。この前、日本からシュークリームを買って行ったら、あんな柔らかい皮は初めてだと
言って、ドバイの大グループのオーナーのところまでお土産が行ってしまい、どうしたら
輸入できるのかという話になった。しかし、アルコールがちょっと入っていることと、冷
凍技術の面で頓挫してしまった。こうした甘いものが非常に好まれるのは中東全体に言え
ることだと思う。なお、スイーツは、お茶飲みながら、また食後にも食べるし、ラマダン
中も必ず、デイツという干し柿みたいに甘いものを食べる。ただあまり甘いものを食べる
ので、糖尿病が非常に多い。また肉類など食べ物も西洋化しており、心臓や血管と血液の
病気の方も多いので、ヘルシーな日本食がちょっと注目されているようだ。
石 井 氏
シンガポール、タイでの甘いものの輸入状況はどうか。
大 山 氏
上に醤油やゴマ、餡子をつけたような団子や大福関係がよく売れる。最近では
中にクリームが入ったようなものも入れているが、試食をしていただくことも、パッキン
グも非常に重要だと感じている。タイの人も非常に日本のお菓子を好んで食べ、ライスケ
ーキもヒット商品になっており、日本のお菓子は売れ筋の 1 つになっている。
広 岡 氏
日本のお菓子はほぼすべてのナショナルブランドを取り扱っている。チョコレ
ートと言っても、日本のチョコレートっていうのは非常に美味しく、季節バージョンもあ
る。ただ、あまり甘すぎるのは苦手なようなので、タイ焼きの餡子も、甘さ控え目の餡子
であれば受ける。今、探しているのは、甘さ控えめで、美味しいスイーツ。例えば、お茶
屋さんなんかが作る抹茶を使ったスイーツ、こだわりのお茶っぱを使ったスイーツなど、
こだわりのスイーツがあったらよい。
<一次産品の実績と現状>
石 井 氏
次は果物、野菜などの生鮮食料品の輸入の実績を教えていただきたい。
大 山 氏
一次産品は 2007 年の 11 月に JTEPA を締結し、最近になってそれを利用する
ことにより、例えばナシ、カキ、リンゴは関税が 0%になった。そういう影響を受け、こ
6
れら3品とリンゴは相当量動くようになってきた。また、カキは非常にタイの人に好まれ
る。ただ、やはり期間が短いので、少しでも安く提供しようと考えたら、輸送手段をよく
検討せざるを得ず、そうなると持ってくる場所が自ずと限定されてしまう。ちなみに、カ
キは海外にくる場合、やはり 10 月末から 11 月、12 月が限度で、飛行機での輸送なので
どうしても割高になる。いくら関税ゼロでも円高とバーツ安が重なり結構高いものになる
が、タイの方は非常に楽しみに待っている。新潟フェアでは、13 日間のフェア中の約 8
日間でカキが売り切れた。楽しみな食品だとは思う。
広 岡 氏
シンガポールも現在は、農林水産省のサポートのもと、日本の野菜と果物の常
設コーナーを設けて販売している。月の売り上げが 1,200 万円程度でフルーツなら売れ筋
はふじリンゴ、巨峰、ミカンなどが定番だ。九州のあまおう(イチゴ)、甘藷(サツマイモ)
進物用の静岡のマスクメロンやミカン、また、文字が入ったリンゴなども旧正月時期に販
売している。野菜で人気なのは、エノキなどのキノコ類、甘味のあるカボチャ、サツマイ
モなどのイモ系だ。葉物は価格が高い割に味の違いがわかりにくいので現地の人には難し
い。
松 宮 氏
農水省から委託されている、常設方店舗(アンテナショップ)をドバイで 2 店
舗、アブダビで 1 店舗行っている。一番売れたのがモモ。かなりサイズが大きいものだ。
非常に値段が高くても、ああいう綺麗なモモはないので売れたようだ。ナシでもリンゴで
も大きなものが売れる。その他、静岡産メロンも動きが良い。メロン、モモ、ナシもテイ
スティングを行い販売しているが、王様の購買人が買いにくるところでは、高くて珍しい
果物を根こそぎ買っていくこともある。ただ、エア代が高いのが課題だが、それをカバー
してでも、売れるものを持っていくしかない。
石 井 氏
食品輸出の場合、ターゲットとなるのは、富裕層になってくる。今の話のよう
に王族系など、地域によってはそういった方々に対してアピールしていくことはかなり重
要ではないかと思う。日本のものは、サイズが大きい、きれい、パッケージも美しいので、
何かその辺が、キーワードになっていくのではないか。価格が高いところからはじめて、
富裕層向けで最初はいくが、最終的にはやはり一般に受けるものとなり、世界スタンダー
ドになって、初めてその値段が普及することによって、価格も落ち着いてくると思う。
3.アドバイスとまとめ
石 井 氏
次に、この地域のこんなものが売れるのではないか、この辺をもうちょっとア
ピールしたら可能性が拡がるのではないかということを伺いたい。
大 山 氏
商品を海外に輸出するという話になってくると、シッパーを通す場合もあるし、
また直接海外にこられて、マーケット調査をすることなども、1 つ大きなポイントになっ
てくると思う。また場合によっては、催事に参画されて商品をアピールするというような
形も考えられる。こうした地道な取り組みが必要になってくるのではないか。
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広 岡 氏
例えばフェアを開催するにしても、単独で 1 社 2 社だけで来られるのではなく、
10 社くらいまとめて一緒に来られて、皆さんで東海をアピールする。それが一番お客様に
とって印象的なのではないか。実はもう 8 年ぐらい前から、単独で地道に名古屋からシン
ガポールに 1 年に 1 回か 2 回ぐらい来てくれる天むす屋さんがある。売り上げは決して高
いわけではないが、新米フェアをするからと連絡をすると来てくださる。初めから儲ける
ことは難しいし、小売の方も、生産者の方も、少しずつ一緒に育てていくことが、非常に
重要なことだ。まずは来ていただいて、市場を見ていただいて、じゃあ次はどういうふう
にすれば売れるのかを一緒に考えて、初めて商品が育っていくのではないか。
松 宮 氏
中東は、アルコールや動物性油脂など、いろいろ規制があるので、あまり添加
物を入れない商品、単純にその素材を美味しくいただけるような商品が非常にありがたい。
私たちも 1 個 1 個全部原材料を調べて確認するのは、非常に時間がかかるからだ。一度、
納豆のカラシの中にアルコールが入っており輸入話が頓挫したことがある。色素なども、
なるべく天然のものだと助かる。
石 井 氏
各国でいろいろ大きな食品見本市開かれているが、ある県が生産者を募って、
県のブースをつくり出展した。そこに知事もお見えになって、トップセールスをした。ま
た、産地の環境などもパネルで紹介したりビデオを流したりしたので、ニュースになり、
新聞、テレビもインタヴューに来て、結構盛り上がったと聞いている。地域の同業者で、
協議会などのグループをつくり、それで一緒に海外出展をすれば数のパワーもあると思う。
別に異業種でもかまわないと思うし、テーブルセッティングをし、試食をしていただきつ
つメニュー、レシピを配ると、かなりアピール力もあるのではないかと思う。
最後に、パネリストの方々から一言頂戴したい。
大 山 氏
ターゲットとして中間富裕層を狙えるものでなかったら、なかなか商品は育た
ない。昨今の円高、バーツ安に加え、韓国の通貨が半分になると、韓国の商品が今後タイ
に入ってくるという可能性が大いにある。非常にその辺を心配している。そういうことで、
やはり、東南アジアに出すためには、戦略的商品を作り上げることが必要だと思う。
広 岡 氏
商品の定番化のために一番重要なことは、商品の価値をお客様に分かっていた
だくこと。各産地のこだわりの商品は、値段だけではナショナルブランドに勝てない。こ
だわりの素材を使っていても、それをお客様に分かってもらわなければ、なかなか売れな
い。そのためには、定期的にプロモーションや試食販売の機会を作って、商品のファンを
増やしていくしかない。そうしたことを繰り返すうちに、お客様の方から問い合わせがあ
れば、私たちもそれに応えるべく棚に置かせてもらうことで商品は定番化する。
松 宮 氏
添加物を入れないで、単純に素材を美味しくいただけるものであれば、歯ごた
えなども分かり、受け入れてくれる。中東の場合は特にそういうもので勝負していきたい
と思っている。
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4.質疑応答
質問者A
短粒米のそれぞれの国の普及の可能性はどうか。
大 山 氏
タイの場合は、お米の輸出国であり、タイ国内でもコシヒカリやササニシキな
どの日本米がつくられているが、生産量が非常に安定していない。また、保管状況が悪く、
3~4ヶ月経つと商品価値が落ちる。そのため、例えば日系のフジレストランは月に 10
トン日本米を使うが、現状ではオーストラリアから日本米(1キロ約 30 バーツ前後)を
仕入れている。一方、日本から入れたお米は、キロ当たり約 200~300 バーツもするので、
これを一挙に普及させるというは難しい。ただ、お店で美味しいお米を食べたいという動
きもあるので、弊社でも数量が少しずつ増えてはきている。そのような現状下では地道な
マーケットチェックがやはり重要だ。
広 岡 氏
シンガポールも日本からの日本米、アメリカのカリフォルニア産のコシヒカリ
などがメイン。日本からの駐在の方は、カリフォルニア産の日本米(コシヒカリ、アキタ
コマチ)、現地の人はタイ米がメインだ。ただし、シンガポールは食事をつくる習慣がない
ので、炊き込みご飯の素は人気がある。これと一緒に日本のお米を買って帰られる方も結
構いるので、試食販売をすれば売れるとは思う。
松 宮 氏
中東ではバスマティーライスというパサパサの調理米を食べる。カリフォルニ
ア米のアキタコマチ、ヒトメボレは寿司用などで使われる。日本米が美味しいのは分かっ
ているが、3 倍ぐらいの値段だと、どうしてもカリフォルニア米の日本米になると思う。
質問者B
農協に勤めている。農産物の日数のデメリットも含めたお話しを、お願いした
い。
広 岡 氏
いかにうまくタイムロスを防いで日本から持ってくるかが 1 つの課題だ。幸い、
当店は何ルートか確立しているので、日本のある所まで持ってきていただければ、空輸か
もしくは船便で運ぶことはできるが、例えば商品が腐ってしまったときに誰がどう負担す
るのか、そういったところを予めきっちりと話を詰めておかないといけない。ミカンとイ
チゴに関しては、非常に定番で、これからも可能性があると考えている。
質問者C
30 年ほど中東向けの輸出をしている。ドバイに特に興味があるが、通関は時間
を含めて相当難しいものなのか、また有機栽培のマーケットの広がりについても伺いたい。
松 宮 氏
そんなにかからない。空輸であれば、その日着けば、その日にすぐできる。ド
バイの場合は、前もってバーコードで対応しているので、その商品を登録しておけば、次
の時にうまく通関をきることができる。登録するということは、事前審査でラボテストさ
れるということで、一品、約 6 万ぐらいの費用はかかる。また、有機栽培の件だが、富裕
層が住んでる高級な住宅街に、専門店がもうかなりできている。オーガニックも注目され
ているので、市場としては、これからかなり拡がると思っている。
石 井 氏
具体的に、それぞれの地域の特徴をお話しいただいたと思う。パネリストの皆
様には、拍手で感謝の意を伝えたい。何か輸出をされる際に、相談事があれば、ぜひジェ
9
トロ名古屋事務所の方にも来ていただきたい。
以上
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