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1/1冊(6.9MB) - 経済産業省・資源エネルギー庁

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1/1冊(6.9MB) - 経済産業省・資源エネルギー庁
海域地質環境調査技術高度化開発
成
果
報
告
書
平成 24 年 3 月
独立行政法人
産業技術総合研究所
海域地質環境調査技術高度化開発
目
次
第1章 はじめに
1-1 研究の背景
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
1-2 研究の目的
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
1-3 研究の全体計画
1-4 本年度の研究内容
第2章 沿岸域地質構造評価技術の開発
2-1 平成 24 年度以降の研究計画
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
11
3-2 泥水脱水フィルター試験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
73
3-3 海上掘削調査実施に向けた検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
81
第3章 海上掘削調査技術の開発
3-1 海底下地下水流動解析
第4章 おわりに
4-1 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
93
4-2 海外動向の調査
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
94
1 本報告書で使用した単位一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
96
2 評価委員会報告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
97
付 録
1
第1章
は
2
じ
め
に
1-1 研究の背景
平成 17 年 8 月,
経済産業省資源エネルギー庁は,
地層処分基盤研究調整会議を招集した。
核燃料サイクル開発機構(現,日本原子力研究開発機構),原子力環境整備促進・資金管理
センター,電力中央研究所,産業創造研究所,放射線医学総合研究所に加えて産業技術総
合研究所が構成機関として名を連ね,第 2 次取りまとめ以降の処分研究の進捗状況につい
て情報交換等をおこない,基盤研究開発の計画的かつ効率的な推進を目指した。傘下に組
織された地質環境ワーキングでは,わが国特有の地質環境に関する議論が行われ,堆積岩
地域と結晶質岩地域の基礎研究に関しては精力的な研究開発が実施されているものの,沿
岸域というカテゴリーに関しては充分な知見が集積されているとはいえないという結論に
達した。沿岸域の地質環境については,内陸地域に比べて調査の実績が少なく,海水の影
響や塩淡境界の分布を考慮する必要があるため,研究開発の余地が大きいと考えられるこ
とが理由の一つである。地下水流動に限れば,内陸域と同様の水理地質構造(断層などの
不連続構造,低透水性構造)や動水勾配などに加えて,塩淡境界や海底湧水を把握するた
めの調査技術の整備,海水と淡水との密度勾配による流動や移流場から拡散場への移行,
海水準変動の影響などに着目した解析技術の開発等が重要とされており,物理探査につい
ても,作業効率や解析技術などの改良・高度化が図られるべきとされている。これを受け,
資源エネルギー庁は平成 18 年 3 月の地層処分基盤研究開発報告会において,沿岸域に関す
る調査技術高度化の必要性を強調している。
しかし,沿岸域(とくに浅海域)では,これまでは物理探査などの調査が困難であるこ
とから断層等の地質構造調査が十分になされてこなかった。沿岸域に潜在する断層は,地
質学的な安定性を欠くばかりでなく,深層地下水の流路として核種の選択的な移行経路に
なる可能性がある。沿岸域が処分場の候補地となる可能性がある以上,沿岸域に係る調査
法や既存データの再解析法の適用性や信頼性を向上させる必要があると考えた。そのよう
な背景の中,本委託事業「海域地質環境調査技術高度化開発」は,原子力発電環境整備機
構(NUMO)の強い要請を受け,平成 19 年度より開始している「沿岸域塩淡境界・断層評
価技術高度化開発」の発展的な研究課題として,前述の全体計画のうち「地質環境特性調
査評価技術」における要素技術の開発・改良・高度化研究の一つとして位置付けられた。
1-2 研究の目的
我が国においては,これまでの原子力エネルギー利用に伴い既に放射性廃棄物が発生し
ており,この処理処分対策を着実に進める必要がある。高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 等 の 地
層 処 分 に つ い て は 、「 原 子 力 政 策 大 綱 」 等 に 沿 っ て 、 国 、 研 究 開 発 機 関 等 が 、
それぞれの役割分担を踏まえつつ、密接な連携の下で、基盤研究開発を着実
に進めていくこととしている。
3
高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 等 の 地 層 処 分 に お い て は 、天 然 の 岩 盤( 天 然 バ リ ア )
と人工的なバリア(人工バリア)から構築される多重バリアシステムによっ
て長期的な安全確保がなされる。この処分システムの成立性や安全性に係る
信頼性を一層高めていくためには、天然バリアである深部地質環境の状況把
握と将来変化に係る調査評価技術の信頼性向上が重要である。これらを踏ま
え、本委託事業では、特に沿岸域領域での調査評価技術に着目して、沿岸域
海底下の特徴的な地質環境や地下水環境の調査評価手法の高度化開発を行う
ことを目的とする。
1-3 研究の全体計画
高レベル放射性廃棄物等の地層処分において、処分システムの成立性や安
全性を評価するうえで、海底下深部の地質構造や地下水等の状況を、海上ボ
ーリング調査によって把握するとともに、その長期的な変遷を評価する必要
がある。本委託事業では、特に、ボーリング調査を用いた評価技術を対象と
して、地下水の長期的な流動解析を含めた要素技術の高度化開発を行い、沿
岸域海底下の地質環境の総合評価手法を構築する。
具体的には、これまでの国内外における関連研究開発の成果、また、資源
エネルギー庁の関連委託事業で開発してきた手法や要素技術を活用しつつ、
(1)沿岸域地質構造評価技術の開発
(2)海上掘削調査技術の開発
のそれぞれについて、既往の知見等に基づく課題整理と計画策定を踏まえ、
要素技術の開発・改良、実際の沿岸域フィールドにおける体系的な適用試験
と総合評価を実施し、沿岸域での一連の地上からの調査技術と解析評価手法
として体系化を図る。さらに、将来的に処分事業を開始した場合に地下水が
移動する範囲等を的確に評価し、将来的な安全研究にも資する。
1-4 本年度の研究内容
本研究は,平成 23 年 3 月 11 日 14:46 に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
の影響を考慮して,研究計画を策定している。平成 23 年度から4ヶ年にわたる研究の内容
を以下に示す:
(1)沿岸域地質構造評価技術の開発
本開発項目では、物理探査技術を駆使して、沿岸域(海域から陸域にわた
る領域)の連続的な水理地質評価を念頭に、地質構造を3次元的に調査評価
4
する技術を開発する。このため、電磁探査や地震探査等による統合解析手法
を体系化するとともに、既存データに対する再評価、沿岸域での実証試験を
通 じ て 高 精 度 な 地 質 構 造 評 価 の 確 立 を 図 る 。平 成 23 年 度 に お い て は 将 来 的 な
研究計画を立案する。
(2)海上掘削調査技術の開発
本開発項目では、既往の関連情報も踏まえ、水理地質構造を評価するため
の掘削方法、地質・地下水試料採取方法、海底下地下水環境モデルの構築方
法に関する体系的な研究を実施し、海上掘削を用いた水理地質調査技術を確
立するとともに、本事業で開発した要素技術を将来的に活用するための技術
移 転 マ ニ ュ ア ル 等 の 作 成 を 念 頭 に 置 く 。 特 に 平 成 23年 度 に は 既 往 の 情 報 を ふ
まえた上で、沿岸域の海底下水理地質モデルを構築し、地下水流動解析を実
施することで、掘削地周辺の地下水環境の推定や掘削適地の評価を行う。
表 1-1 研究の全体計画(過年度は実績)
開発項目
地質構造
研究題目
海域物理探査手法
評価技術
H23 年度
H24 年度
H24 以降の
地震探査
計画・立案
沿岸域地質構造
H25 年度
モデリング
海上掘削
海上掘削
市場調査
地下水流動解析
沿岸域海底下地
沿岸海底下水理
下水流動解析
地質モデリング
H26 年度
とりまとめ
海上掘削
海上掘削
調査技術
とりまとめ
現段階における調査研究の内容と課題:
・
「沿岸域塩淡境界・断層評価技術高度化開発」において,沿岸海底下には淡水領域が存在
することが海域の電磁探査により観測された。この淡水領域の成因は直下の地下水の安定
性を大きく左右するものであり,処分場建設に大きな影響を与える。従って,この領域の
地下水環境を調査することが求められる。
・浅海域はこれまで,物理探査等の調査が難しく断層を含む地質構造を判断することが困
難であった。地震探査や電磁探査を駆使した物理探査技術・解析技術の高精度化により海
陸接合を図る必要がある。
5
・海底下のボーリングにおいて,塩水の侵入を排除して浅深度のコアリングを実施する技
術や地下水サンプリングを実施する手法を確立し,同時に掘削中のモニタリング手法につ
いても構築する必要がある。
6
第2章
沿岸域地質構造評価技術の開発
7
2.沿岸域地質構造評価技術の開発
2-1 平成 24 年度以降の研究計画
本項目では、物理探査技術を駆使して、沿岸域(海域から陸域にわたる領域)の連続的
な水理地質評価を念頭に、地質構造を 3 次元的に調査評価する技術を開発する。このため、
地震探査、電磁探査等による統合解析手法を体系化するとともに、既存データに対する再
評価、沿岸域での実証試験を通じて高精度な地質構造評価の確立を図る。本事業では沿岸
域をテストフィールドとし、沿岸海底下の詳細な地質構造を明らかにするための2次元・
3次元の調査・解析を行う。本年度は、特に海陸を接合する2次元地震探査を実施し、沿
岸海底下の水理地質モデルを作成する。これにより、地質構造ひいては(潜在)断層との
関係を明らかにする。また、将来的に海上掘削を実施する際の適地評価や、支持層の深度
評価にも貢献する。
平成 23 年度:海域物理探査に関する文献調査
平成 24 年度:海陸接合2次元地震探査を実施
平成 25 年度:海域補足調査の実施、掘削適地を評価するための総合解析を実施
平成 26 年度:沿岸海底下の3次元海底下水理地質モデルを構築するための技術移転マニュ
アルの作成
この目標は:
浅海域における反射法地震探査の適用性評価
地質構造、潜在断層の評価
8
海陸接合の反射法地震探査の測定概念図:
長さ約 5km の受信ケーブル(Ocean Bottom Cable, OBC)を海岸線から
沖に向かって海底に沈める。陸域にも受信器を約 2km にわたり設置する。
振源(エアガン)を曳航した船が海底受信ケーブルに沿って移動しなが
ら発振する。陸上でも振源車から発振する。それによって、海陸の連続
した反射断面を深度 2km 程度まで求めることができる。
9
第3章
海上掘削調査技術の開発
10
3-1 海底下地下水流動解析
3-1-1 緒言
高レベル放射性廃棄物等の地層処分においては、天然の岩盤(天然バリア)と人工的な
バリア(人工バリア)から構築される多重バリアシステムによって長期的な安全確保がな
される。この処分システムの成立性や安全性に係る信頼性を一層高めていくためには、天
然バリアである深部地質環境の状況把握と将来変化に係る調査評価技術の信頼性向上が重
要である。このうち、海底下地下空間は、沿岸域に原子力発電所が多く立地すること、沿
岸域深部の塩水域は自然災害による地上からの影響を受けにくいこと、淡水地下水に比べ
流れが遅く、生物圏までの到達時間が長いこと、溶存酸素が少なく腐食が起こりにくい環
境(還元環境)であること等から、処分適地の一つとして挙げられている(長谷川ほか,
2001)。
沿岸域海底下の地質環境は重要性を認識されつつも、内陸地域に比べて調査の実績が少
なく、特に地下水に関するデータは殆ど存在しない。このため、従来から地質環境の長期
変動や気候変動が浅海域の地下水流動システムに影響を及ぼしうることが懸念されていた
ものの、その検証は行なわれておらず、未だに海底下地下空間における体系的な地下水流
動の調査評価手法は確立されていない(前川、2010)。
これを受けて、幌延沿岸域では 2007 年度より、沿岸域特有の地下水流動状況を把握する
ため、ボーリング調査や物理探査などが実施されてきた。昨年度は、ボーリング孔から得
られた水質解析結果や海底電磁探査などの結果から、幌延沖の浅海域海底下に沖合約 7km
まで淡水性地下水領域が拡がっている可能性が指摘された(産業技術総合研究所、2011)。
実際、このように,海底下において取り残されているかのように存在する地下水は世界中
で発見されており、この形成プロセスに関して2つの仮説が考えられている。一つは氷期
に涵養された地下水が長い時間を経て海底下に到達するパターンであり、もう一つは氷期
に大陸棚に涵養された地下水が海水に置換されないまま残存するというパターンである
(Meisler et al., 1984; Cohen et sl., 2010)。このような成り立ちを考えると、海底
下地下空間における地下水流動の形成プロセスを解明することは現在の地下水流動環境を
把握することに繋がるだけでなく、過去の地下水流動環境を復元する指標となり得る。そ
して、過去の地下水流動環境をモデル化することにより、将来の地下水流動環境の予測を
より論理的に説明することができ、地層処分事業において有益な基礎情報を提供できるも
のと考えられる。
本研究では、幌延沿岸域、磐城沖沿岸域、東京湾沿岸域を対象に、地下水流動シミュレ
ーションを実施し、海底下に残存する淡水性地下水の流動状況を評価し、長期的に安定と
なる水理地質条件を抽出するとともに、最終処分場の適地選定に資する評価手法を確立す
ることを目的とする。
11
3-1-2 既存研究
従来の水文学では、沿岸域の地下水を合理的に確保することを目的として、揚水に伴う
塩水侵入現象を把握することが研究されてきた(例えば、Henry, 1959;
Schaefer and
Walker, 1981)。一般的に、海洋起源の塩水性地下水と陸水起源の淡水性地下水は、両者の
境界付近に混合帯を形成し、最終的に海へと流出することが知られている(Kohout, 1960;
Cooper et al.,1964)。この海へと流出する地下水のうち、海底から直接流出する成分は海
底湧水等と呼ばれ、海洋の水質を左右するほどに十分な量の地下水が流出していると言わ
れている(Church, 1996)。海底下を流れる地下水は水深 200~3,000m の深海においても分
布することが知られ(Manheim and Paull, 1981; Paull et al., 1984)、陸域から深海ま
で連続する大規模な地下水流動系の一部を構成することが示唆される。近年では、グロー
バルな物質循環を解明することを目的として、数多くの海底湧水に関する調査・研究が行
われている(例えば、谷口, 2001)。
一方、北米のニュージャージー沖(Hathaway, 1979)や南米のスリナム沖(Groen et al.,
2000)では、古くから石油資源探査等によって、陸域からかなり離れた海底下に大規模な
淡水性地下水塊が発見されてきた。Meisler et al.,(1984)や Cohen et sl.,(2010)は、こ
れらの淡水性地下水の存在は、最終氷期に涵養した地下水が海水準の上昇した現在におい
ても塩水へと置換されずに残存したものであると想定した。この残存形態については2つ
の形成プロセスが提唱されている。一つは、氷期に涵養された地下水が高いポテンシャル
を保ったまま、長い時間を経て海底下に到達する場合、もう一つは、氷期に大陸棚に涵養
された地下水がその後も海水に置換されないで残っている場合である。最近の地下水学の
研究では、このような海水準変動や気候変動などの長期的な水理条件変化が現在の地下水
環境に影響を及ぼしていると広く考えられている(Ge et al., 2003; Sanford, 2010)。
特に沿岸域では、陸域地下水流動系の末端部に位置することから、世界各地で淡水による
洗い出し及び補給の履歴が多く記録されている(図 3-1-1、表 3-1-1)。ただし、米国地質
調査所によって数十年にわたり研究されてきた北米の大西洋沖沿岸域以外で、体系的な研
究は行われておらず、海底下地下水の決定的な形成メカニズムの解明がなされていない。
本邦沿岸域においてもこの取り残された地下水の存在の可能性が指摘されており(田中,
1999;徳永, 2004;酒井ほか, 2008)、今後の実態の解明が求められている。
海底下の地下水環境の把握においては、海底における地下水のデータは殆ど存在せず、
その評価範囲・期間が大きいため、一般に数値解析(シミュレーション)手法が用いられ
てきた。2000 年代以降、海水準変動を考慮した地下水流動の研究事例が多くみられ、海底
下の地下水流動特性について、感度解析によって定性的な要因分析が様々行なわれてきた。
Kooi et al.,(2000)は、断面二次元モデルを構築し、地形勾配や地質物性、海水準変動
速度をパラメータとして、海底下地下水環境に与える影響を検討した。この結果、海底下
12
の淡水性地下水の発生を予知するためには、
(1)地形/海底地形の勾配が小さいこと、
(2)
厚い帯水層の上部に厚い粘土性堆積物が存在すること、などの条件が必要であることが分
かった。また、登坂(2002a, 2002b)では、国内沿岸部の堆積岩地域を対象とした水平方
向 70km×深度方向約 7km の断面二次元モデルを構築して、海水準変動、地殻変動の考慮の
有無が与える影響を考察した。12 万年サイクルで繰り返す海水準変動を考慮した場合の塩
淡分布は、海底下において十分に塩水と淡水の置換が進まず、塩淡境界面の形状は
Ghyben-Herzberg 的形態と比較して,かなり異なることが示された。すなわち、実サイトに
おける塩淡分布の評価を行う際に、海水準変動等を考慮しない静的条件下を設定すること
は現実的でないということとなる。なお、地盤隆起と海水準変動を重ね合わせて水理境界
条件を設定する「相対的海水準変動」の解析設定法の概念は、この後の多数の解析事例の
参考とされている。しかしながら、地下水流動解析は当然、モデルの再現性が成り立つ上
で初めて信頼性のある結果を提供するため、調査地点が限られる中でも、多様な地下水情
報をそのモデルに反映させることが重要である。例えば、磐城沖沿岸域で掘削された 500m
のボーリング調査では、水質分析、岩石・鉱物分析、同位体分析を用いて、水質形成機構
が検討され、深度 150m 以深は低速度環境にある古海水であるという結論がなされた(産業
創造研究所,2002)。当時の解析的検討ではこのような水質形成機構を十分に考慮されるこ
とがなかったが、近年では、地下水年代分布を推定する解析手法も確立してきており(Goode,
1996;長谷川, 2009)
、より信頼性の高い解析が可能であろう。
3-1-3 方法
(1)研究対象地域の選定
研究対象地域は、現地調査データが充実していることや国内において過去に深部地下水
流動解析が行われたこと、また地質条件が類似していることを前提として、「幌延沿岸域」
「磐城沖沿岸域」
「東京湾沿岸域」を選定した。各対象地域の位置図、自然条件の比較を図
3-1-2、表 3-1-2 に示す。以下に、各地域の概要について明記した。
1)幌延沿岸域
北海道北部地域では、天北炭田、天北油・ガス田と呼ばれ、白亜系~新第三系に胚胎
する石炭・石油・天然ガスを対象とした多くの炭鉱(試錐、物理探査など)が実施されて
きた。ここでの対象地域は北海道北部に位置する天北地域に相当し、豊富町・幌延町・天
塩町・遠別町の東に位置する宗谷丘陵から西側の日本海(武蔵堆)にかけての範囲を検討
の対象とした。古第三紀から現在まで継続する堆積域である天北堆積盆は、堆積物の厚さ
が総計 8,500m に達し、基盤となる白亜系(蝦夷類層群、函淵層群)、蛇紋岩を不整合にお
おう古第三系堆積岩類(曲渕層、羽幌層)、白亜系と古第三系を不整合におおう新第三系堆
積岩類(下位から宗谷層・鬼志別層・増幌層・稚内層・声問層)および新第三紀末から第
13
四紀にかけての堆積岩類(下位から勇地層・更別層・段丘堆積物・沖積層)が分布する。
(福
沢ほか,1992;新里ほか,2007)
。
産業技術総合研究所(2010)は、
幌延沿岸域に深度 1,000m に及ぶボーリング調査を実施し、
採取したコア試料を利用して、透水試験や一般水質試験、同位体分析等を実施してきた。
これによって、深度 500m 付近に塩淡境界が存在し、それより下位は拡散域が形成されてい
ることが分かった。このような水質区分は地質境界に依存せず、地下水特有の区分を見せ
ることが示された。地下水年代に着目すると、次のようにその特徴が整理されている。深
度 150~345m の地下水はδD とδ18O の特徴から氷期に涵養された地下水であることが推定
され、ピストン流を仮定した粒子追跡法から 2.5~3.7 万年前に涵養された地下水であると
考えられた。深度 346~467m では、δD がやや重い傾向を示すことから、一つ前の間氷期(約
8~12 万年前)に涵養されたものと予想された。深度 503~783m の地下水は、水質が漸移帯
の傾向を示し、一次元拡散方程式によって、その傾向が概ね再現できることから、8~130
万年の地下水年代を持つものと考えられた。最後に、深度深度 783m 以深の地下水は、Cl 濃
度の傾向から地層堆積時に取り込まれた地下水がそのまま残っているものと考えられ、130
万年以上の地下水年代を持つものと予想された。また、浅海域においては、海底電磁探査
法が適用され、幌延沖の浅海域海底下に沖合約 7km まで淡水性地下水領域が拡がっている
ことが示唆された。
2)磐城沖沿岸域
常盤炭田はかつて石油・天然ガスの採掘場であったため、多くの地質構造や地下水に関
するデータが蓄積されている。ここでの対象地域は福島県東部沿岸域に位置する磐城地域
に相当し、南相馬市~広野町にかけての沿岸域と東側の太平洋にかけての範囲を検討の対
象とした。地質構造は後背地の山地(第三系の基盤岩地域)から沿岸丘陵地帯(第三系堆
積岩類、炭田も含む)、そして沖積低地、海岸平野へと比較的単調な地形要素をなし、地
質構造も大局的には海域部に向かって単斜構造をなしている(小原、1995)。海底地形の
特徴として、大陸棚の幅が広いため、最終氷期には沖合方向に約 20km にもわたる地域が陸
地化していたものと考えられる。
産業創造研究所(2002)は、磐城沖沿岸域において深度 500m(立孔)と深度 450m(斜孔)
に及ぶボーリング調査を実施し、採取したコア試料を利用して、透水試験や一般水質試験、
同位体分析等を実施した。塩濃度を考慮した水理ポテンシャルは海側の方が高いことから、
深部では海から陸へとゆっくりと流動する地下水が存在することが示された。また、岩盤
中の塩淡分布は深度 100~150m の新第三紀鮮新統中に漸移帯を形成され、これより深部の
地下水は深度に応じて地下水年代が古くなり、水-岩石反応が進行するような、低流速帯を
形成することがわかった。さらに、幌延沿岸域と同様に、水質区分境界と地質地盤特性が
不整合であることや、第四系シルト層の上下で水質特性(主に、塩化物イオン濃度)が大
きく異なることが示されている。
14
3)東京湾沿岸域
本州の中央部に位置する関東平野は、日本列島のなかで最大の平野である。東京湾を含
む関東平野南部地域では、1950 年代から天然ガスの調査や採取のためのボーリングが数多
く行われ、1970 年代以降は地震観測、地盤沈下観測、地殻応力測定等を目的とした調査観
測井も多数実施されている(鈴木、1980)
。関東地方南部の地質は、先新第三紀層の基盤岩
の上位に新第三紀鮮新世~中新世の安房層群、その上位に第四紀更新世~新第三紀鮮新世
の海成層である上総層群が堆積し、これを第四紀更新世の上総層群が覆っている(佐々木
ほか、2006)
。
人口や産業の集中する当該地域においては、多くの地下水問題を抱えてきたという背景
から、様々な研究者によってその地下水構造が明らかとされてきた。東京湾は大規模な盆
状構造を呈しており、関東平野周辺の山間部に端を発する深部地下水の流出口となってい
る可能性が指摘されている(丸井ほか、2001)
。
(2)地形・地質概要
1)幌延沿岸域
a. 地形
対象地域の位置する北海道北部には標高 200~300m の宗谷丘陵が南北に分布する。宗谷
丘陵は,南北に走る 2 本の主要な構造線である大曲-豊富断層と幌延断層によって、西部、
中部、および東部に 3 分割される(長尾,1960;小疇ほか編,2003)。西部にはサロベツ原
野や原野を取り巻く丘陵・台地が位置する。中部は大曲-豊富断層と幌延断層とに挟まれ
た地域であり,南へ向かって次第に東西幅が狭くなり,標高 100~300 m の丘陵が分布する
(安江・石井 2005)
。
サロベツ原野の東側は豊富丘陵、幌延丘陵、北西部にはアチャル台地、南は北川口丘陵
で画され、原野中心部に丸山台地が位置する。サロベツ原野西側は豊徳台地が位置し、海
岸沿いにはサロベツ沿岸砂州・砂丘列が分布する。
サロベツ原野と丘陵の境界付近には,サロベツ撓曲帯が分布し,撓曲変形により海成段
丘面が上下方向に変位している(中田・今泉編、2002)
。大曲-豊富断層は稚内市街地南方
付近から豊富丘陵の東方を経て幌延町雄信内付近で天塩川を横断する北北西-南南東走向
の断層である(安江・石井 2005)
。
サロベツ原野の南を一級河川天塩川が日本海に流下する。天塩川は延長 256 ㎞で、北海
道士別市南東に位置する天塩岳に源を発し、名寄盆地を北に流れ、音威子府村で西向きに
流れる。日本海に流下する直前で南に向きを変え、浜堤に沿って 8 ㎞ほど流れ、日本海に
流下する。対象域のほとんどは天塩川流域に含まれ、北川口丘陵の南側の一部が遠別川流
域に、対象域内の稚内市域が声問川流域に含まれるのみである。
b. 地質
15
対象地域は北海道の地帯構造区分における空知―エゾ帯の最北部に位置する天北堆積盆
地の西部に位置する。天北堆積盆地では、白亜系を基盤として、古第三系から第四系まで
の堆積物が累重発達している。地表では大局的に見て東部に白亜系が露出し、西に順に上
位の地層が累重する。天北堆積盆地では断層・褶曲軸といった地質構造も南北性で、断層
は東傾斜の逆断層が卓越する。主要な断層は大曲断層と幌延断層が挙げられる。背斜構造
の多くは西旧東緩の非対称な横断形態を持つ。地層の変形度は一般に堆積盆地東部ほど激
しく西に緩やかになる。褶曲帯の最前線は概ねペンケ構造と遠別沖構造を結ぶ線上にあり、
それより西方では新生界は東傾斜の単斜構造をなし、礼文―樺戸帯を構成する基盤岩類の
高まりに向かって薄化する(石油公団、1998)
。
本地域では白亜系、古第三系、新第三系、第四系が累重する。以下に概要を述べる。
Ⅰ.白亜系:
蝦夷累層群と総称され、下位より下部蝦夷層群、中部蝦夷層群、上部蝦夷層群、および
函淵層群からなる。対象地域周辺の既往坑井では基礎試錐「遠別」
(深度 1477.7m)
、基礎試
錐「天北」
(深度 3625m)
、北川口 SK-1(深度 3030m)、増幌 SK-1D(深度 3111m)で函淵層群が
確認されている。
① 下部蝦夷層群
調査域南東方の地表に露出し、砂岩を主とする下部と泥岩を主とす
る上部から構成され、層厚 1000m 以上を示す。
② 中部蝦夷層群 対象地域周辺の地表では砂岩、泥岩、および砂岩泥岩互層よりなり、
層厚は 1000m~2000m である。
③ 上部蝦夷層群 主に泥岩からなり砂岩、凝灰岩薄層を挟む。層厚は地表では約 1500m
~2000m であり、北川口 SK-1 で 700m 以上、基礎試錐「天北」で 500m 以上、基礎試
錐「遠別」で 250m が確認されている。
④ 函淵層群 主に砂岩・シルト岩からなり、礫岩・石炭を伴う。層厚は地表では 400m
~800m を示し、北川口 SK-1 では 752m、基礎試錐「天北」では 925m、基礎試錐「遠
別」では 370m であった。
Ⅱ.古第三系:
下位より羽幌層、曲淵層からなる。
① 羽幌層
凝灰質砂岩~砂質凝灰岩を主とし、泥岩・石炭を伴う。幌延断層以西の地
下のみに分布し、地表には露出しない。基礎試錐「天北」及び増幌 SK-1D で層厚約
650m、北川口 SK-1 で 230m、基礎試錐「稚内」では下面をとらえていないが、1200m
以上の層厚を示した。
② 曲淵層
主に泥岩・シルト岩からなり、砂岩・凝灰岩を伴う。層厚は地表では北部
で最大 350m を示すが、南方に薄化尖滅する。既存坑井においても同様に増幌 SK-1D
で層厚 2058m を示すが、北川口 SK-1 および基礎試錐「遠別」では欠如する。
Ⅲ.新第三系:
下位より宗谷層、鬼志別層、増幌層、声問層からなる。
16
① 宗谷層 砂岩・泥岩を主とし、凝灰岩・石炭を挟む。対象地域東方に最大約 350m の
層厚で露出する。既存坑井のうち奥目梨 SK-1 で 608m、増幌 SK-1D で 93m の層厚を示
すが、これらより西の坑井では欠如する。
② 鬼志別層 既存坑井では泥岩が卓越し、基礎試錐「天北」
(117m)、と増幌 SK-1D(294m)
を除き、層厚 700m~1000m と厚く分布するが、東方の露出地では急激に薄化し、一
般に数十 m の厚さを示すにすぎなくなると共に、砂岩・シルト岩を主とし、礫岩・
泥岩を挟む。幌延断層東部では増幌層が不整合で下位の宗谷層を直接覆っており(掃
部、1991)、少なくとも一部では鬼志別層は分布しないことが明らかとなっている。
幌延断層以西では、地表では鬼志別層の露出はない(石油公団、1991)
。
③ 増幌層
砂岩・礫岩・泥岩からなり、泥岩中からは海緑石を多産する。地表での最
大層厚は約 200m に達する。既存坑井での最大層厚は基礎試錐「浜勇知」で 3005m に
達する。また、増幌 SK-1D では欠如する。
④ 稚内層 珪質泥岩からなり、泥炭岩を挟在する。地表での最大層厚は約 450m である
が、既存坑井では奥目梨 SK-1 で 205m、遠別で 160m であるが、その他坑井では 570m
~1023m を示す。
⑤ 声問層 珪藻質泥岩からなる。地表及び既存坑井を通じてその層厚は約 600m~800m
である。既存坑井では基礎試錐「稚内」
、増幌 SK-1D、奥目梨 SK-1、基礎試錐「遠別」
では欠如している。
Ⅳ.第四系:
下位より勇知層、更別層、丸山層、沼川層からなる。以下、第四系として一括する。
① 勇知層ほか 礫岩・砂岩・シルト岩・火山灰などからなる。地表での層厚は約 900m
である。坑井では北川口 SK-1 で層厚 23m の第四系が確認された以外は、欠如してい
る。
2)磐城沖沿岸域
a. 地形
磐城地域の位置する福島県浜通り地区は阿武隈山地の東に位置する。阿武隈山地は西縁
を阿武隈川と棚倉破砕帯、東縁を双葉断層と太平洋で境された山地である。阿武隈山地は
その全域にわたって著しい定高性が認められ、従来から隆起準平原と考えられてきた(地
質調査所 1994)
。
阿武隈山地の東縁には双葉断層が分布する。双葉断層の両側の地形は対照的で、西側の
阿武隈山地側には標高 500m~700m の比較的小起伏な山地が広がるのに対し、断層の東側は
標高 200m 以下(ほとんどが 100m 以下)の低平な丘陵及び段丘からなる。両者の境界はほ
ぼ双葉断層と一致して極めて直線的であるが、崖地形は明瞭ではない。また、双葉断層に
平行して西約 8 ㎞の位置に畑川破砕帯が通り、この破砕帯を境に西側の山地高度は東側よ
り約 100m 高くなっている(地質調査所 1994)
。
17
主要な河川としては北から新田川、小高川、高瀬川、熊川、富岡川、紅葉川、井出川、
木戸川があり、阿武隈山地に源を発し太平洋に注ぐ。高瀬川・木戸川の上流域の阿武隈山
地では山地の起伏が小さい為、勾配が小さく、谷底には沖積低地が発達する。中流部にあ
たる山地東縁部の双葉断層と畑川破砕帯の間では深い渓谷を形成している。また、双葉断
層より下流では再び勾配が小さくなり、沖積平野及び数段の河岸段丘が発達する(地質調
査所 1994)
。
b. 地質
本地域では白亜系、古第三系、新第三系、第四系が累重する。以下に概要を述べる。
調査地の地質は大局的に畑川破砕帯以西、畑川破砕帯~双葉断層(破砕帯)間、双葉断
層(破砕帯)以東の3つに区分できる。
畑川破砕帯以西では白亜紀の阿武隈花崗岩類と変成岩・超苦鉄質岩・斑れい岩類が分布
する。
浪江・富岡地区の畑川破砕帯~双葉断層間では先デボン紀の八茎変成岩に対比される変
成岩類、古生代の堆積岩および火山岩を原岩とする変成岩類、白亜紀前期貫入岩類などか
ら構成されている。これらの地表での分布域はすべて双葉断層以西に限られ、双葉断層以
東では新第三系の下に伏在する。
(地質調査所
1994)。調査地北部の原町・大甕地区では
先デボン紀の助常変成岩類、石炭・二畳系の相馬古生層及びジュラ-白亜系の相馬中村層
群、白亜紀の高倉層と貫入岩類などから構成されている。これらのうち相馬中村層群だけ
が双葉断層に沿ってその東側に分布しており,そのほかはすべて双葉断層以西に分布して
いる。
(地質調査所、1990)
双葉断層以東には第三系が分布する。ここでは柳沢ほか(1989)における常磐炭田北部
の層序区分を引用する。常磐炭田では基盤岩(変成岩類、花崗岩類及び古生界)を不整合に
覆って、下位より白亜系の双葉層群、古第三系の白水層群、新第三系の湯長谷・白土・高
久・多賀・仙台層群の各層群が累重している。これらの層群はそれぞれ不整合で画されて
いる。海岸及び河川沿いにはこれらを不整合に覆って段丘堆積物及び沖積層が分布する。
白水層群は下位より石城・浅貝・白坂の 3 層に区分される。石城層は礫岩・砂岩・泥岩
及び石炭層からなる。本層の下部には特徴的な堆積輪廻が発達し、上部は主として砂岩か
らなる。浅貝層は細粒砂岩からなり、浅貝型の軟体動物群化を産する。最上部の白坂層は
灰色の泥岩である。
湯長谷層群は下位より滝・五安・水野谷・亀ノ尾・平の 5 累層からなる。滝層は炭層を
挟む砂岩・泥岩及び凝灰岩からなる。五安層は浅海成の砂岩で滝層が発達しないところで
は、下位層を直接不整合で覆う。水野谷層は砂岩と泥岩の互層からなり、上位の亀ノ尾層
に漸移する。亀ノ尾層は特徴的な薄葉理泥岩からなる。最上部の平層は下部は砂岩、中部
は泥岩、上部は斜交葉理のある砂岩から構成され、安山岩質の火砕岩を挟む。
白土層群は中山層一層からなる。本層は礫岩・凝灰質泥岩・凝灰質砂岩からなる。
18
高久層群は下部の礫質粗粒砂岩からなる上高久層、中部の細粒砂岩の沼ノ内層、及び上
部の泥岩からなる下高久層から構成される。
多賀層群は無層理の珪藻質泥岩ないし砂質泥岩からなり、一部に斜交層理の発達した砂
岩を挟む。双葉地域で多賀層群に含まれるのは南磯脇層だけである。
仙台層群は主に常磐炭田北部に分布し、四倉層、広野層及び富岡層からなる。四倉層は
模式地の仙台層群下部(亀岡・竜の口層に)、広野層及び富岡層は模式地の仙台層群上部(向
山・大年寺層)に相当する。四倉層は基底部が礫岩から主部は砂質泥岩からなる。広野層
は最下部が粗粒な砂岩から主部は珪藻質の砂質泥岩からなる。富岡層も同じく砂質泥岩か
らなり、広野層とは境界部に挟まる砂岩層ないし砂岩泥岩互層の下限を持って分けられる。
常磐炭田北部の双葉地域では NNW-SSE 方向に走る双葉断層帯に沿って白水・湯長谷・白
土の諸層群が急傾斜して撓曲帯を作り、これらを仙台層群が不整合に覆っている。仙台層
群は下位層との接触部では双葉断層帯に平行の走行で急傾斜するが、撓曲帯を離れると急
速に緩傾斜となり、緩い波曲を伴いながら、3-5°の傾斜で東に傾いている(柳沢ほ
か,1989)。
第四系は主として段丘堆積物と沖積層からなる。沖積層は河川に沿って谷を埋めて分布
しており、太田川の下流部では 10~25m の厚さをもつ(地質調査所 1990)
。
(3)水理地質構造モデルの構築
本研究では、シミュレーションを断面2次元解析と3次元解析の2段階に分けて実施し
た。断面2次元解析では、地質・地下水の調査データが揃っている代表断面を設定し、水
理パラメータが海底下地下水の形成に及ぼす影響を評価した。一方、3次元解析では、断
面2次元解析で得られたある一定の解析条件や水理パラメータにて計算を行い、湾の形状
や陸上涵養域の規模などの地域性の影響や海底下地下水の空間的な拡がりを評価した。た
だし、東京湾沿岸域については十分な調査データが揃わなかったため、断面二次元解析を
省略した。本研究のモデルの構築においては、浅海域~海域における地質構造をより正確
に反映するため、石油公団が過去に実施してきた海上基礎物理探査などの海域調査データ
を積極的に取り込んだ。モデルの成果として、地質構造を地層(群)区分で分け、各層(群)
の境界面データをメッシュデータ形式にて整理した。
1)幌延沿岸域
地震探査結果から認められた構造を図 3-1-3、図 3-1-4、図 3-1-5、図 3-1-6 に示した。
また、対象地域の地質構造は以下のように整理できる。
① チカップ、ユークル、稚咲内、北川口、遠別沖の各背斜構造の西方に南北に連なる
沈降域がある。
② 稚咲内背斜の東側に沈降域がある。
③ 規模の大きな断層として、大曲断層及びユークル背斜の西翼を通る断層があり、と
もに北北西―南南東走向の東傾斜の逆断層である。
19
④ 正断層は北川口背斜軸部で認められる(石油公団、1998)
。
⑤ 日本海海域では天売島から礼文島、サハリン島西岸にかけて 30~70 ㎞程度の幅を持
った大陸棚が見られる。大陸棚外縁からは比較的緩い傾斜の大陸斜面が広がり、利
尻舟状海盆、天売舟状海盆、石狩海盆が分布する。利尻島南西方には東西 70 ㎞、南
北 80 ㎞の武蔵堆(最浅部 水深 10m)がある(石油公団、1989)
。
⑥ 調査海域並びに沿岸陸域の地質構造は、南北を基本としており、堆積盆地の配列は
その地質構造に規制されている(石油公団、1989)
。
⑦ 隈根尻-礼文層群からなる構造的高まりの苫小牧リッジ(正谷、1979)は石狩~苫
小牧地域ではグリーンタフ地域のほぼ東縁に位置している。この位置より西方では、
新第三紀初期以降、大量の塩基性~酸性火山岩が噴出しており、東方の石狩-天塩
帯では、白亜紀以降の厚い堆積物が堆積している。
⑧ 対象地域の堆積盆地は苫小牧リッジの東に天北堆積盆地、西に利尻堆積盆地が位置
する。天北堆積盆地の主体は北北西-南南東方向に約 80 ㎞、東北東-西南西方向に
30 ㎞の大きさを持つ。利尻堆積盆地は南北方向の伸びを持つ長さ約 100 ㎞、幅約 10
㎞の堆積盆地である。利尻堆積盆地の南西に武蔵堆(最浅部 水深 10m)がある。
⑨ 日本海側の音響基盤の上面を ST-d、SG-c ホライゾンとし、音響基盤を ST-E 層とす
る。ST-E 層は先第三系に対比される。武蔵堆では海底面に露出する。
⑩ ST-c ホライゾンの下位の地層ユニット(ST-D 層)で古第三系に相当する。本層の分
布は天北堆積盆地に限られる。
⑪ ST-b ホライゾンから ST-c ホライゾン間(ST-C 層)
、及び SG-b ホライゾンから ST-d
ホライゾン間(SG-C 層)の地層ユニットで、新第三系(宗谷層・鬼志別層・増幌層)
相当層である。苫小牧リッジ上では堆積物は 0.3 秒程度と薄く、日本海盆の深海底、
武蔵堆において欠如する。
⑫ ST-a ホライゾンから ST-b ホライゾン間(ST-B 層)
、及び SG-a ホライゾンから SG-b
ホライゾン間(SG-B 層)の地層ユニットで稚内層・声問層相当層である。苫小牧リ
ッジ西方では下位層の凹凸を埋積するように堆積しており、武蔵堆では欠如する。
⑬ ST-a および SG-a ホライゾンの上位層が ST-A(SG-A)層である。勇知層及びその上
位層に相当する。
対象地域の地質境界面を作成するにあたって、地質区分は表 3-1-3 のとおりに従った。
なお、地震探査結果を深度に変換するために、基礎試錐「天北」における速度検層結果か
ら速度と深度をプロットし関係式を求めると、深度=1400(m/sec)×時間の関係式が求め
られた。同様に地質毎で求めた値から、勇知層で 1000(m/sec)、稚内層で 1100(m/sec)、
鬼志別層で 1300(m/sec)
、古第三系で 1400(m/sec)として深度を求めた。
2)磐城沖沿岸域
20
対象地域では昭和 61 年度に海上基礎物理探査「南三陸~鹿島沖」が行われている。また、
東京電力により福島第一、福島第二原子力発電所敷地全面海域において、海上音波探査が
おこなわれている。地震探査結果から認められた構造を図 3-1-7 に示した。また、対象地
域の地質構造は以下のように整理できる。
① 大陸棚外縁の水深は 150~180m であり、
調査範囲での大陸棚の幅は 40 ㎞程度である。
水深は最大で 2200m 程度である。
② 調査地の約 60 ㎞沖合に南北に延びる基盤の高まりが分布し、阿武隈リッジと呼ばれ
ている。幅は 30 ㎞で頂部は高原状を呈しその深度は 2sec 程度である。
③ 阿武隈リッジを境界とする東西の堆積盆について、陸側に Inner Basin、外洋側に
Outer Basin が分布する。
④ 調査地海域では北北東~南南西のトレンドを持った断層の系列が卓越している。ま
た、これとは別に陸上でみられる双葉断層群と同様の北北西~南南東のトレンドを
持つ断層の系列も認められる。
⑤ 阿武隈リッジでも 1.0~2.4sec 程度の堆積層が認められる。
⑥ Inner Basin と阿武隈リッジとの境界は北側ほどはっきりした断層が見られる。双葉
沖 M-86-8 測線での Inner Basin と阿武隈リッジとの境界は断層が不明瞭であり、
Outer Basin との境界の断層もあまりはっきりしていないが東落ち正断層が多数み
られる。Inner Basin 堆積層は成層した堆積構造を呈しており、その最大の厚さは双
葉沖付近で約 4.4sec である。基盤の運動や断層に伴う比較的大きな褶曲構造が阿武
隈リッジ周辺や阿武隈山地側などの堆積盆の端部にみられるほか、堆積盆の中部で
もゆるい褶曲構造が見られる。
⑦ 阿武隈リッジと Outer Basin の境界は、阿武隈リッジが優勢な地域では比較的顕著
な断層を境界に持つ。
対象地域では平面分布図は地質図のみで陸域の地質下面等高線図などは存在しないため、
地質図の他、産業施術総合研究所(2002)、柳沢ほか(1989)の他、東京電力株式会社(2008a),
東京電力株式会社(2008b)、東京電力株式会社(2008c)の断面図とボーリング(深度 1000m)
資料から検討した。資料の分布には偏りがあり、特に深部については誤差が含まれる。
海域については海上基礎物理探査「南三陸~鹿島沖」において時間構造図が 6 ホライゾ
ンについて作成されている。ここから陸域との連続性を考慮し、A+B、C+D、E、F の 4 層に
区分した。
A,B 層:陸域の第四系が薄く、広域での A,B の区分が難しいことから A+B で区分した。
C,D 層:多賀層群が C,D に跨って堆積することから C+D で評価し、D の下面を多賀層群の
下面に対比した。
また、東京電力株式会社(2008a)において沖合 30 ㎞程度の範囲で 13 断面図が作成されて
おり、これも参考とした。
21
これらの結果より、対象地域の地質境界面を作成するにあたって、地質区分は表 3-1-4
のとおりに従った。
なお、地震探査結果を深度に変換するために、基礎試錐相馬沖、常磐沖の坑井速度検層
結果から速度と深度をプロットし関係式を求めると深度=1100(m/sec)×時間の関係式が
求められた。同様に地質毎で求めた値から、第四系~鮮新統(A+B 層)で 750(m/sec)、多
賀層群(C+D 層)で 850(m/sec)
、古第三系(E 層)
、白亜系(F 層)で 1100(m/sec)とし
て深度を求めた。
3)東京湾沿岸域
東京湾沿岸域においては、上記2地域のように石油公団が国内石油・天然ガス基礎調査
を実施した事例がない。ここでは、サンコーコンサルタント株式会社(2006)が、東京湾東
部地域を対象として作成した深部帯水層三次元グリッドを使用し、陸海接合の水理地質構
造モデルを構築した。本データは北緯35度~36度30分、東経139度~141度の
範囲の“広域モデル”と北緯35度~36度、東経139度30分~140度30分の範
囲の“湾岸域モデル”が存在するが、計算効率の観点から湾岸域モデルを選定した。地質
境界面の境界区分は地表面・上総層群上面・三浦(安房)層群上面・先新第三紀層上面に
設定されており、領域内で先新第三紀層上面分布が包括されるように深度 5km までを解析
対象とした。
(4)地下水流動解析コード
本研究では、塩濃度や地下水年代を連成して計算できること、世界中で利用されており
汎用性があること、長期にわたる非定常解析においても安定的な結果が得られること等か
ら、解析コードに米国地質調査所(USGS)が開発したプログラム SEAWAT2000 を選定した。
SEAWAT は地下水流動解析プログラムである MODFLOW と溶質輸送解析プログラムである
MT3DMS を連成させたプログラムであり、塩濃度の変化に応じて流体密度を適宜変更し、地
下水流動の駆動力に反映させることが可能である。本プログラムは、90 年代後半の初期バ
ージョンの公開以来、世界中の塩水化問題に適用されており、現在でも多くの研究者が利
用している(例えば、SWIM、2010)
。本プログラムの基礎方程式を式 3-1-1~2 に示す。

   K f



f
 h 
f

f

 
h f
 C
z   S
f t   C t   q s
 
 
 
N
q
C
   D  C     vC  s C s   Rk
t

k 1
式 3-1-1
式 3-1-2
 : 流体密度、 f : 淡水密度、K f : 透水係数テンソル、h f : 等価淡水水頭、S f : 比貯留係数、
 : 間隙率、C : 溶質濃度、q s・C s :ソース/ シンク項、D : 水理学的分散係数、Rk : 反応項
22
地下水年代のシミュレーションは、無次元変数の地下水年代が輸送方程式や保存則に支
配されるという仮定の下、任意の時間における地下水年代の空間分布を知る手法である
(Goode, 1996)
。これによって、拡散や分散、ミキシング、イオン交換反応などの物理現
象が地下水年代に与える影響を考慮する事が出来、水質形成機構を踏まえた地下水年代の
推定が行えるものと考えられる。
A
q
F
 1    A    D  A 
t


式-3
A : 平均滞留時間、q : 固有流動ベクトル、 : 含水率、
D : 拡散係数テンソル、F : 滞留時間の内部発生源、 : 流体密度
(5)数値解析モデルの構築
モデルの離散化は、計算効率の観点から、断面二次元モデルの水平方向を 1km メッシュ、
三次元モデルの水平方向を 2.5km×2.5km とし、深度方向はそれぞれ地表面から 100m 間隔
のメッシュに分割した。各対象地域の解析範囲と解析グリッド数の一覧を図 3-1-8~10、表
3-1-5 に示す。また、解析条件として、ここでは飽和流れを仮定した。計算時間として、一
回の計算の中で、解析期間を 12 万年、時間ステップを 800 年と設定し、最終計算結果を次
の計算の初期条件として与えることで、周期的な海水準変動を表現することとした。地下
水流動解析の解析ソルバーは Preconditioned Conjugate-Gradient(PCG)を選択した。MT3DMS
の Solution Scheme は Finite Difference を選択し、クーラン数を 0.5、解析ソルバーに
SSOR 法を選択した。
構築した断面二次元数値解析モデルの断面図と三次元数値解析モデルの鳥瞰図と断面図
をそれぞれ図 3-1-11~15 に示す。
(6)物性パラメータの設定
幌延沿岸域と磐城沖沿岸域における断面二次元モデルの透水係数及び間隙率の設定は表
3-1-6~7 に示すようにいくつかのパターンを設定した。既存研究によって明らかとされて
いるパラメータを基本としたが、将来の一般的な評価に向けて、本邦透水係数及び間隙率
データベースが提示する統計値などを採用して感度分析を行った。また、3 次元モデルにつ
いては、既存研究による値を重視し、表 3-1-8 のように設定した。比貯留係数、縦分散長、
横分散長、分子拡散係数は 0.0001(/m)、100(m)、20(m)、10-9(m2/s)とした(伊藤ほか、2010;
日本地下水学会、2010)
。
(7)初期条件、境界条件の設定
本研究では、浅海域の地下水流動システムの形成において重要と考えられる海水準変動
に着目して、その影響評価を試みた。海水準変動曲線の設定は、核燃料サイクル開発機構
(1999)を参考に、海退から海進が現海水準-120m~+5m の一定の振幅で繰り返し起こるもの
23
と仮定し、海退時に 5m/4000 年、海進時に 5m/800 年の速度で海水面が上下するよう海底部
に変動固定水頭境界を設定した(図 3-1-16)。また、安定的な解を得られるという観点から、
側方境界と底部境界は不透水境界として設定している。
海水の塩濃度および流体密度は 35kg/m3、1025kg/m3 と仮定した。水頭と塩濃度の初期条
件は登坂(2002)を参考にモデル全体が海水に満たされた状態から始めることとし、地下水
年代はモデル全体を 0 年と設定した。SEAWAT2000 は、グリッドの流体密度に応じて等価淡
水水頭に換算されるため、境界条件の設定は淡水地下水流動解析と同等に設定すればよい。
例えば、現在の海域において固定水頭値を与える場合は、通常はゼロを与えれば良いこと
になる。
3-1-4 結果
(1)現地データとの検証結果
現地の地下水質・地下水年代などを再現するように、海水位・涵養量を対象としたスコ
ーピングアナリシス(境界条件の感度解析)、透水係数・間隙率を対象としたパラメータ
スタディ(物性値の感度解析)を行った。
1)幌延沿岸域断面二次元モデル
① 現海水位が長期的に維持される場合(静的境界条件)
(a)地表面に地下水位を固定したケース
第一層の陸域に地表面標高の淡水水頭を、海域に現海水位 EL. 0m 相当の等価淡水水頭
を与え、塩水飽和状態からのウォッシュアウトの過程を計算した。1000 年ごとに変化して
いく塩濃度の計算結果と DD-1 孔にて観測された塩濃度プロファイルとで比較を行った。計
算結果は、ほぼ定常状態を迎える1万年後においても、地下深部まで淡水が到達せず、現
地での結果を再現していないといえる(図 3-1-17)
。また、海底電磁探査の結果と比較して
も、淡水性地下水塊の形状が大きく異なることが分かる(図 3-1-18)
。
(b)地下水涵養量を増加させたケース
(a)のケースは閉じた系の中で最大の涵養量を与えたことに相当するが、ここでは他流
域からの地下水涵養があることを想定して、陸域に地下水涵養量 0.1mm/day を便宜的に与
えた。この涵養量は、(a)のケースにおける第一層から第二層への鉛直流動量(地下水涵養
量に相当)の 10 倍程度に相当する。計算結果は、ほぼ定常状態を迎える 2.4 万年後におい
ても、拡散域の形状が大きく異なることが分かる(図 3-1-19)。また、海底電磁探査の結果
と比較しても、淡水性地下水塊の形状が大きく異なることが分かる(図 3-1-20)
。
② 12 万年周期の海水準変動が周期的に起こる場合(動的境界条件)
ここでは、すべてのケースで地表面に地下水位を固定して計算を行った。
(a)Case0(既往文献により示されたパラメータを採用した場合)
24
DD-1 孔においては深度 500m 程度まで、活発な地下水流動の影響を受け、塩濃度は低い
傾向にある。また、縄文海進の影響を受けて、深度 450m 付近に塩濃度のピークが存在する。
深度 500~900m の区間では、遷移領域へと移行し、地下水年代も増加する(滞留的となる)。
深度 900~1400m の区間では、
周期的な海水準変動を受けても地下水年代が変化しなくなり、
表層の水位変動の影響を受けない状態となる。深度 1400m 以深では、塩濃度が一定となり、
拡散現象も生じない(図 3-1-21)
。一方、海底下の地下水について、淡水性地下水塊が沖合
20km 程度まで連続する結果となり、概ね比抵抗断面の結果と整合している。また、流速は
沿岸部の微高地で最も高く、10m/year であった。海底下の地下水は 0.01~0.1m/year のオ
ーダーで地下水流れが発生している。さらに、海底下に存在する淡水性地下水の地下水年
代は、周期的な変動を受けても 10 万年以下であった。これは、12 万年周期の海水準変動ご
とに海底下の地下水がウォッシュアウトされている可能性があることを示唆している(図
3-1-22)
。本研究で設定したパラメータの中では、最も良好な結果を与えた。
(b)Case1(全国データベースから平均間隙率を採用した場合)
定常状態(各周期の現海水準における計算場の塩濃度誤差が5%以内になるとき)を形
成するまで、708 万年要した。浅層部(沖積層~更別層)の塩濃度プロファイルの形状は
Case0 と比較してより塩濃度の濃い状況が形成された。また、漸移帯の兆候は Case0 と比較
して約 100m 深く位置から始まる状況となった。地下水年代は、深度 550m から上昇傾向を
みせ、深部においては約 45 万年程度となった。
(c)Case2(全国データベースから平均間隙率を採用し、第四系のみ低間隙率にした場合)
定常状態(各周期の現海水準における計算場の塩濃度誤差が5%以内になるとき)を形
成するまで、708 万年要した。浅層部(沖積層~更別層)の塩濃度プロファイルの形状は
Case0 と比較してより塩濃度の濃い状況が形成された。また、漸移帯の兆候は Case0 と比較
して約 100m 深く位置から始まる状況となった。地下水年代は、深度 550m から上昇傾向を
みせ、深部においては約 40 万年程度となった。
(d)Case3(全国データベースから平均間隙率を採用し、第四系のみ高間隙率にした場合)
定常状態(各周期の現海水準における計算場の塩濃度誤差が5%以内になるとき)を形
成するまで、708 万年要した。浅層部(沖積層~更別層)の塩濃度プロファイルの形状は
Case0 とほぼ相違がないが、深層部の漸移帯の形状がより拡がった。地下水年代は深度 500m
から上昇傾向をみせ、深部においては約 55 万年程度となった。
(e)Case4(全国データベースから平均透水係数を採用した場合)
定常状態(各周期の現海水準における計算場の塩濃度誤差が5%以内になるとき)を形
成するまで、84 万年要した。Case0 と比較して、全体的に透水係数が大きいことが原因し
て、深部まで淡水性地下水が侵入するという結果となった。このとき、深部の地下水年代
は 55 万年程度を示す。
(f)Case5(全国データベースから平均透水係数を採用し、第四系のみ 1/10 倍にした場合)
25
定常状態(各周期の現海水準における計算場の塩濃度誤差が5%以内になるとき)を形
成するまで、96 万年要した。第四系の透水係数が低くなった場合、深度 1500m 以浅の塩濃
度分布に変化がみられた。これは縄文海進時の海水被りの影響が小さくなることによる影
響と考えられる。また、深部の地下水年代は Case2 と比較して、5 万年程度古く計算される。
(g)Case6(全国データベースから平均透水係数を採用し、第四系のみ 10 倍にした場合)
定常状態(各周期の現海水準における計算場の塩濃度誤差が5%以内になるとき)を形
成するまで、84 万年要した。このケースは Case2 と大きな相違はみられなかった。
(h)Case7(全国データベースから非火山堆積岩の平均透水係数を一律に採用した場合)
定常状態(各周期の現海水準における計算場の塩濃度誤差が5%以内になるとき)を形
成するまで、60 万年要した。計算塩濃度プロファイルの結果は、観測結果と大きく異なり、
現実的な設定でないことが確認された。
(i)Case8(全国データベースから非火山堆積岩の平均透水係数の 1/10 倍を一律に採用し
た場合)
定常状態(各周期の現海水準における計算場の塩濃度誤差が5%以内になるとき)を形
成するまで、168 万年要した。浅層の淡水域を再現できないものの、拡散域の終点は概ね一
致している。しかし、地下水年代が深部にわたって、10 万年以下と比較的若く、現実的な
設定でないことが確認された。
(j)Case9(全国データベースから非火山堆積岩の平均透水係数の 10 倍を一律に採用した
場合)
定常状態(各周期の現海水準における計算場の塩濃度誤差が5%以内になるとき)を形
成するまで、36 万年要した。Case6 と比較して、定常状態に至るまでの時間が早いが、濃
度分布の形状は概ね同等である。
2)磐城沖沿岸域断面二次元モデル
ここでは、すべてのケースで地表面に地下水位を固定して計算を行った。
① 現海水位が長期的に維持される場合(静的境界条件)
計算結果は、ほぼ定常状態を迎える1万年後においても、地下深部まで淡水が到達せ
ず、現地での結果を再現していないといえる。特に、幌延地域と比較して塩水が侵入しや
すい傾向にある。
② 12 万年周期の海水準変動が周期的に起こる場合(動的境界条件)
(a)Case0(既往文献により示されたパラメータを採用した場合)
塩濃度プロファイルの観測結果と比較した場合、計算結果は地下深部まで淡水性地下
水が拡がってしまっているという結果となった。
(b)Case1(全国データベースから平均間隙率を採用した場合)
26
塩濃度プロファイルの観測結果と比較した場合、計算結果は地下深部まで淡水性地下水
が拡がってしまっているという結果となった。塩水/淡水の遷移領域の末端は深度 4300m 程
度に及ぶ。
(c)Case2(先新生代の地層のみ、全国データベースから最小透水係数を採用した場合)
塩濃度プロファイルの観測結果と比較した場合、計算結果は地下深部まで淡水性地下水
が拡がってしまっているという結果となった。塩水/淡水の遷移領域の末端は深度 2300m 程
度に及ぶ。
(d)Case3(先新第三紀の地層のみ、全国データベースから最小透水係数を採用した場合)
塩濃度プロファイルの観測結果と比較した場合、計算結果は地下深部まで淡水性地下水
が拡がってしまっているという結果となった。塩水/淡水の遷移領域の末端は深度 1500m 程
度に及ぶ。
(e)Case4(先第四系の地層のみ、全国データベースから最小透水係数を採用した場合)
塩濃度プロファイルの観測結果と比較した場合、計算結果は地下深部まで淡水性地下水
が拡がってしまっているという結果となった。
(f)Case5(先第四系の地層を全国データベースから最小透水係数を採用し、第四系を既
往文献値の 1/10 倍にした場合)
Case4 とほぼ同等の結果を得て、塩濃度プロファイルの観測結果と比較した場合、計算結
果は概ね再現性を確保しているものと考えられる。本研究で設定したパラメータの中では、
最も良好な結果を与えた。動的境界条件にて完全塩水状態から計算開始後 108 万年間の
H11-DS 孔での塩濃度プロファイル及び地下水年代プロファイルの経時変化を図 3-1-23 に示
す。また、動的境界条件にて計算開始 84.4、88.4、92.4、94、96 万年後の塩濃度および地
下水年代の分布を示したものを図 3-1-24~25 に示す。塩濃度は海進海退を通して周期的な
変動を起こしており、海底下の淡水性地下水が存在する箇所は概ね若い地下水年代を持つ
ことが示される。
(2)海底下地下水流動の予測評価
構築した地下水流動解析モデルを用いて予測解析を実施し、地下水ポテンシャルや塩濃
度、地下水年代の三次元分布状況を示した。
1)幌延沿岸域
幌延沿岸域における、計算開始 24.4、28.4、32.4、34、36 万年後の地下水ポテンシャル・
塩濃度・地下水年代の三次元分布図を図 3-1-26 に示す。塩濃度の三次元分布図によれば、
海岸線よりも海側へ淡水性の地下水が張り出している様子が示されている。これらの地下
水は凡そ 10 万年以下の年代を示し、海水準ごとにウォッシュアウトが起こっているものと
考えられる。
2)磐城沖沿岸域
27
磐城沖沿岸域における、地下水ポテンシャル、塩濃度、地下水年代の三次元分布図を
図 3-1-27 に示す。幌延沿岸域と同様に、海底下に淡水性の地下水が存在しうる可能性が指
摘される。特に、モデル領域南部では、地下水年代が 12 万年以下の比較的若い地下水が広
く分布する様子が分かる。これは、当該地域の基盤が南方に向かって傾斜していることが
原因と考えられる。
3)東京湾沿岸域
東京湾沿岸域における、地下水ポテンシャル、塩濃度、地下水年代の三次元分布図を図
3-1-28 に示す。幌延沿岸域、磐城沖沿岸域と比較して、海水準変動ごとに頻繁に塩水と淡
水の入れ替わりが起こるため、現海水準条件下において、海底下に淡水性地下水が残りに
くい状況にある。東京湾内は比較的水深が浅いため、房総半島など周辺の高いポテンシャ
ルの影響を受けて、地下水流動が活発となり、浅層部では若い年代の地下水が点在してい
る可能性がある(図 3-1-29)。
3-1-5 考察
(1)境界条件の設定法について
沿岸域の淡水性地下水の分布を再現するためには、海水位を超長期間で一定に設定し
た場合(静的境界条件)では説明できず、超長期間における海水準変動(動的境界条件)
を考慮する必要があることが分かった。
(2)海底下に取り残される淡水性地下水の形成要因について
海底下の淡水性地下水は、超長期の海水準変動を経験しても水頭値が特別高くなく、地
下水年代が比較的若いことから、海水準の低かった氷期に大陸棚に涵養された地下水は、
海進後に海水への置換が遅れるというプロセスによって形成されている可能性がある。
(3)海底下に取り残される淡水性地下水の性状について
海底下の淡水性地下水の計算年代は、長期間にわたって常に 12 万年以下を示したこと
から、現在の海底下の淡水性地下水領域は、次の氷期に向けてウォッシュアウトされてし
まう可能性があり、長期的に安定な領域とは言えない。また、海底下の淡水性地下水の形
状は、動水勾配が小さくなることや天水による涵養期間が短くなることから、沖合に向け
て薄く形成される傾向にある。ただし、差分法は表層部の境界条件の影響を色濃く受ける
ため、計算結果が示す範囲については慎重に取り扱う必要がある。
(4)巨視的パラメータや解析範囲の与え方について
感度解析によれば、新第三紀より古い地層に一様に透水係数を与える場合、1×
10-9(cm/sec)以下に設定しない限り現在の深部塩水を再現できないことが分かった。また、
深部地下水の計算年代が比較的若く計算されてしまうことは、現在のモデルの限界を示し
ており、浅部地下水と深部地下水を分けて議論する必要があるものと考える。
28
3-1-6 まとめ
過去の調査資料や本研究のシミュレーション結果は、世界中の沖合海底下に淡水性古地
下水が存在する可能性を指摘している。この海底下淡水性古地下水の形成プロセスは、氷
期に涵養された地下水が長い時間を経て海底下に到達した場合と、氷期に大陸棚に涵養さ
れた地下水が海水に置換されないまま残存している場合の2通りが想定されており、海水
準変動や気候変動、隆起・沈降・侵食といった長期地質変動事象の影響を受けていること
が考えられる。したがって、海底下地下水環境の成因や存在量を把握することは、現在の
地下水流動評価に有用であるだけでなく、将来にわたる地下環境の安定性を評価する上で
も重要である。
地層処分事業において、浅海域地下は有望な処分地の一つである。しかし、これまで浅
海域の地下環境を調査した事例が少ないため、モデルの検証のための現地データが不足し
ている。海底下地下水環境を把握するための前提として、沿岸域深部ボーリング孔を用い
た水質プロファイル及び浅海域MT法は非常に有用であることがわかった。今後は、海底
ボーリング掘削や物理探査などモデル構築に有用であると考えられる現地調査を継続して
実施する必要があり、本研究によって提示した海底下地下水流動解析手法はこれらの調査
を効率的に行う上でも有用である。
29
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35
図 3-1-1 長期地質変動の影響を受けた地下水が発見された地域。
36
37
Location
Water quality
Water quality
9 Florida, U.S.A.
10 Suriname Coast
17 Olkiluoto, Finland
Water quality, Isotope(stable)
84
0.01~
~350mbsl
~1,000mbsl
Water quality, Isotope(stable, radioactive)
16 Äspö, Swedish
>47
~400mbsl
Water quality, Isotope(stable, radioactive),
Noble gas
15 Sellafield, United Kingdom
>98
50~100mbsl
Electro Magnetotellurics
400mbsf
346~467mbsl
~250mbsl
~80km (from S.L.), 300~350mbsf
~120km (from S.L.), 320~326mbsf
~120km (from S.L.), ~400mbsl
~100km (from S.L.), ~200mbsl
100~200mbsf
100~200mbsf
4~10km (from S.L.), 170~350mbsl
~5km(from S.L.), 350~600mbsl
~1km (from S.L.), ~530mbsl
~10km (from S.L.), ~1,000mbsl
Extent Area
14 Kujyukuri Coast, Chiba
0.8~1.2
0.1~8.8
30~200
Age(Ma)
Water quality
>84
>74
97
63
21
97
≒100
95
53-99
99
5-58
53-89
approx.
dilution
of seawater
(%)
13 Bousou Island, Chiba
12 Horonobe Coast, Hokkaido
11 Iwaki Coast, Fukushima
Water quality
8 New Jersey, U.S.A.
Water quality, Isotope(stable, radioactive),
Noble gas, Electric resistivity
Water quality, Isotope(stable), Electric
resistivity
Water quality, TDEM sounding
7 Nantucket, U.S.A.
Water quality
5 The Seikan Tunnel
Water quality, Electric resistivity
Water quality
4 Ube Coal Mine, Yamaguchi
6 Tokyo Aqualine
Water quality
Water quality, Isotope(stable, radioactive),
Noble gas
Water quality, Isotope(stable), Electric
resistivity
Method
3 Miike Coal Mine, Fukuoka
Ikeshima/Sakito/Matsushima Coal Mine,
2
Nagasaki
1 Kushiro/Taiheiyou Coal Mine, Hokkaido
No.
表 3-1-1 海水準変動の影響を受けたと考えられる地下水の調査事例一覧。
Eichinger et al.(2010)
Laaksoharju et al.(2008)
Bath et al.(2006)
丸井(1999)、光畑(2006)
楡井(1988)
(独)産業技術総合研究所(2010)
(財)産業創造研究所(2002)
Groen(2000)
Johnston(1983), Morrissey et al.(2010)
Hathaway et al.(1979), Robb(1984)
Kohout et al.(1977), Marksamer(2007)
尾内ほか(1998)、佐野ほか(1996)、酒井ほ
か(2008)
関(1980, 1981)、田中(1999)
岩沢・植田(1961)
菊池ほか(1971)
小野ほか(2004)、林ほか.(2005)
佐藤ほか(1980)、馬原ほか(2006)
Reference
38
Location
North Sea coasts of Yorkshire and Lincolnshire,
United Kingdom
0.011
0.018
Water quality, Isotope(stable, radioactive)
Water quality, Isotope(stable, radioactive)
Water quality, Isotope(stable, radioactive)
Water quality, Isotope(stable, radioactive)
Water quality, Isotope(stable, radioactive),
Noble gas
Water quality, Isotope(stable, radioactive)
Water quality, Isotope(stable, radioactive),
Noble gas
25 Caen region, France
26 Vendèe, France
27 Valras and Agde coastal area, France
28 Island of Mallorca, Spain
29 Iberian Peninsula, Spain
30 Island of Gran Canaria, Spain
31 Aveiro, Portugal
≒100
40
>76
>21
>97
>96
Water quality, Isotope(stable, radioactive),
Noble gas, Electric resistivity
24 Zeeland, The Netherlands/Belgium
0.012~0.015
0.009~0.013
0.0075
0.025~0.1
≒100
0.007
0.1
~0.35
0.0001~0.01
0.011~
Age(Ma)
Water quality, Isotope(stable, radioactive)
>99
>97
97-99
approx.
dilution
of seawater
(%)
21-79
Water quality, Isotope(stable, radioactive),
Noble gas
Water quality, Isotope(stable, radioactive)
Water quality, Isotope(stable, radioactive),
Noble gas
Water quality, Isotope(stable, radioactive),
Noble gas
Method
Water quality, Isotope(stable, radioactive)
22
Thames Estuary and north Kent, United
Kingdom
Coastal southern and eastern England facing
23
the English Channel, United Kingdom
21 East Midlands, United Kingdom
20
19 Southwestern Jutland, Denmark
18 Gulf of Finland, Estonia
No.
~300mbsl, ~8km(Inland)
~250mbsl
60~90mbsl
120mbsl
40km(Inland)
6km(Inland)
inland
450mbsl
94~200mbsl, ~1.8km(Inland)
500mbsl
~120mbsl, ~15.5km(Inland)
100~300m(G.L.)
~50km(Inland)
Extent Area
Edmunds et al.(2001)
Edmunds et al.(2001)
Edmunds et al.(2001)
Edmunds et al.(2001)
Hinsby et al.(2001)
Vaikmae et al.(2001)
Reference
Condesso et al.(2001), Loosli et al.(2001)
Manzano et al.(2001)
Manzano et al.(2001)
Manzano et al.(2001)
Dever et al.(2001)
Dever et al.(2001)
Dever et al.(2001)
Walraevens et al.(2001), Lebbe(1999)
。
表 3-1-1 海水準変動の影響を受けたと考えられる地下水の調査事例一覧(つづき)
図 3-1-2 研究対象地域。黒点線は大陸棚外縁の分布を示す(日本第四紀地図、1987)
。
表 3-1-2 研究対象地域の自然条件比較。
地域
幌延沿岸域
磐城沖沿岸域
後背地の流域規模
広い
狭い
一級河川の存在
あり(天塩川)
なし
湾の形状
大陸棚の勾配
海域表層地質
海底堆積物
海岸の隆起速度(/1万年
間)
直線的(海側に凹)
緩やか(0.24%)
更新統
あり
直線的(海側に凹)
やや緩やか(0.6%)
鮮新統
あり
1.2~4.56m(三陸海
岸北部)
広域地下水流動解析に関
する代表的な文献
2.4m(羽幌)
1)今井ほか(2001)
2)産業創造研究所
(2005/2006)
3)前川ほか(2010)
4)伊藤ほか
(2010)
39
1)小原(2001/2001)
2)産業創造研究所
(2002)
東京湾沿岸域
非常に広い
あり(江戸川・多摩川
等)
内湾
緩やか
更新統
厚く堆積
5.33m(三浦半島~房
総半島)
1)山本ほか(2007)
2)吉澤ほか(2011)
サロベツ撓曲帯
豊富丘陵
宗谷丘陵
兜沼撓曲
アチャル台地
サロベツ原野
豊徳台地
豊富撓曲
円山台地
幌延丘陵
沿岸砂州
天塩川
砂丘列
北川口丘陵
天塩撓曲
図 3-1-3 北海道北部の地形と地質構造(安江・石井(2005)
)
。活構造及び及び主要な地質
断層については、杉山ほか(1987)、小池・町田編(2001)、中田・今泉編(2002)を参考。陰
影図は国土地理院発行の数値地図 50m メッシュ標高を使用して作成。
40
武蔵堆
利尻堆積盆
地
天
北
苫小牧リ
堆
ッジ
積
盆
地
図 3-1-4 北海道西部海域 テクトニックマップ(石油公団、1989)
。
41
図 3-1-5 天北浅海域 稚内層基底時間構造図(石油公団、1998)
。
42
利尻堆積盆地
天北
苫小牧リッジ
武蔵堆
堆積
盆地
図 3-1-6 北海道西部海域 ST-bホライゾン(稚内層基底)
等時間構造図(石油公団、1989)
。
43
表 3-1-3 地質境界面データ作成位置と地質境界面メッシュデータ作成に用いた資料及
び内容。
地質層序
海域(石油公団、1989)
浅海域~陸上(石油公
団、1998)
勇知層ほか第四系
勇知層下面(ST-A
陸上(柳田、1998;今
井ほか、2001)
解釈ホライゾン a 上位
層,SG-A 層)
声問層
稚内層下面
解釈ホライゾン a~b
(ST-B 層,SG-B 層)
声問層上面あり
相当
稚内層
稚内層下面(c)
解釈ホライゾン b~c
相当
稚内層上面あり(上面
やその他坑井資料を参
考に稚内層下面等高線
を推定)
増幌層
宗谷層下面(宗谷層は
増幌層下面(d)
今回の等高線作成範囲
内にほとんど分布しな
鬼志別層
解釈ホライゾン c~d
相当
い。)
鬼志別層下面(e)
(ST-C 層)
解釈ホライゾン d~e
相当
宗谷層
(上下面やその他坑井
資料を参考に下面等高
線を推定)
解釈ホライゾン e~f 相
当
曲淵層
古第三系下面(天北堆
積盆地のみ分布)
解釈ホライゾン e~f 相
当
(ST-D 層)
曲淵層下面(f)は納沙
布岬付近のみデータあり
羽幌層
解釈ホライゾン f~g 相
当
白亜系
ST-E 層
先第三系上面あり(浅
海域データが空白なこ
と、白亜系上面を把握す
る坑井が少ないことか
ら、ここでは白亜系上面
は作成していない。)
44
図 3-1-7 海域の地質構造概念図(左図)と時間構造図 e ホライゾン(右図)
(石油公団、1986)
。
45
表 3-1-4 地質境界面データ作成位置と地質境界面メッシュデータ作成に用いた資料及
び内容。
年代
層序(柳沢ほか、1989)
海域(石油公団、1986)
海域(東京電力株式会
社、2008a)
第四紀
沖積層
沖積層(A)
段丘堆積物
袖玉山層(A)
段丘堆積物(Q)
海域のみ B 層
鮮新世
仙台層群
多賀層群上部(B)
仙台層群上部(C)
(資料 6 により仙台層
仙台層群下部(D)
群と多賀層群が区分さ
れるようになっており、そ
れ以前の表記と考えられ
る。)
新第三紀
後期中新世
多賀層群
中期中新世
多賀層群中部(C)
多賀層群上部(E)
多賀層群下部(D)/
多賀層群下部(F)
高久層群(D)
前期中新世
漸新世
高久層群
高久層群(E)
高久層群(G)
白土層群
白土層群(E)
白土層群(G)
湯長谷層群
湯長谷層群(E)
湯長谷層群(H)
白水層群
白水層群(E)
白水層群(I)
古第三
紀
始新世
暁新世
大洗層(E)
双葉層群
那珂層群(F)
双葉層群(J)
白亜紀
双葉層群(F)
高倉層・郭公山層・高
倉山安山岩類
阿武隈変成岩類・火
相馬中村層群
成岩類
鹿狼山層
古生界
高倉山層
相馬古生層
時代未詳古生層
変成岩類
46
図 3-1-8 幌延沿岸域の解析範囲と解析グリッド。
47
図 3-1-9 磐城沖沿岸域の解析範囲と解析メッシュ。
48
図 3-1-10 東京湾沿岸域の解析範囲と解析メッシュ。
49
表 3-1-5 研究対象地域の解析範囲。
項目
UTM原点座標(西側)
断
面 解析範囲
二
次
元
幌延沿岸域
磐城沖沿岸域
X=468,076 m
Y=4,957,865 m
X=474,000 m
Y=4,106,000 m
水平方向(X)
86,000 m
117,000 m
深度方向(Z)
5,000 m
5,500 m
水平方向(X)
86
117
深度方向(Z)
50
55
X=478,750 m
Y=4,943,750 m
X=491,250 m
Y=4,106,250 m
東京湾沿岸域
解析グリッド数
UTM原点座標(南西側)
解析範囲
三
次
元
解析グリッド数
X=363,750 m
Y=3,873,750 m
経度方向(X)
97,500 m
47,500 m
87,500 m
緯度方向(Y)
67,500 m
62,500 m
110,000 m
深度方向(Z)
5,000 m
5,000 m
5,000 m
経度方向(X)
39
19
36
緯度方向(Y)
27
25
44
深度方向(Z)
50
50
50
50
Boring DD-1
(D=1,000m)
EL. -120m
EL. 0m EL. +5m
沖積層~更別層
勇知層
海側
声問層
稚内層
5km
基盤
増幌層
鬼志別層
86km
図 3-1-11 幌延沿岸域の断面二次元水理地質構造モデル。
各解析グリッドは水平方向 1km、鉛直方向 0.1km で同じ大きさに設定している。
51
山側
図 3-1-12 幌延沿岸域の三次元水理地質構造モデル。
各解析グリッドは水平方向 2.5km×2.5km、
鉛直方向 0.1km で同じ大きさに設定している。
52
Boring H11DS
(D=500m)
EL. +5m EL. 0m
EL. -120m
山側
A層
海側
B層
C層
5.5km
D層
E層
F層
117km
図 3-1-13 磐城沖沿岸域の断面二次元水理地質構造モデル。
各解析グリッドは水平方向 1km、鉛直方向 0.1km で同じ大きさに設定している。
53
図 3-1-14 磐城沖沿岸域の三次元水理地質構造モデル。
各解析グリッドは水平方向 2.5km×2.5km、
鉛直方向 0.1km で同じ大きさに設定している。
54
図 3-1-15 東京湾沿岸域の三次元水理地質構造モデル。
各解析グリッドは水平方向 2.5km×2.5km、
鉛直方向 0.1km で同じ大きさに設定している。
55
56
Wakkanai F.
Masuporo F.
Onishibetsu F.
③
④
⑤
⑥
Yuchi F.
Koetoi F.
Wakkanai F.
Masuporo F.
Onishibetsu F.
Base
②
③
④
⑤
⑥
⑦
参考文献
Quaternary
Alluvial Sarabetsu F.
①
Pre Neogene
Neogene
Neogene
Neogene
Neogene
Neogene
時代
Formation
Pre Neogene
Neogene
Neogene
Neogene
Neogene
Num
参考文献
Koetoi F.
②
Base
Yuchi F.
①
⑦
Quaternary
Alluvial Sarabetsu F.
Neogene
時代
Formation
Num
0.300
0.300
-8
-9
1.14 × 10
5.00 × 10
1.00 × 10
同左
0.381
-6
9.07 × 10
7.41 × 10-5
7.41 × 10-5
7.41 × 10-5
-5
7.41 × 10-5
7.41 × 10-5
7.41 × 10-5
-5
梅田(1996)
4.41 × 10-5
4.41 × 10-5
7.41 × 10
7.41 × 10-5
7.41 × 10-5
7.41 × 10
9.83 × 10-5
9.83 × 10-4
同左
Case5(第四系低透水係数)
Hydraulic Conductivity (cm/s)
Case4(平均透水係数)
Hydraulic Conductivity (cm/s)
産業創造研究所(2006,2007)
伊藤(2010)
0.300
0.574
1.00 × 10
0.437
-7
7.31 × 10
-9
0.400
-8
1.00 × 10
Porosity (-)
-4
Hydraulic Conductivity (cm/s)
Case0(基本)
同左
4.41 × 10-5
7.41 × 10
-5
7.41 × 10-5
7.41 × 10-5
7.41 × 10-5
7.41 × 10-5
9.83 × 10-3
Hydraulic Conductivity (cm/s)
Case6(第四系高透水係数)
核燃料サイクル機構(1999)
佐藤ほか(1999)
土木学会岩盤力学委員会(2006)
0.069
0.193
0.193
0.193
0.193
0.193
0.215
Porosity (-)
Case1(平均間隙率)
萩原ほか(2004)
3.80 × 10-4
3.80 × 10
-4
3.80 × 10-4
3.80 × 10-4
3.80 × 10-4
3.80 × 10-4
3.80 × 10-4
Hydraulic Conductivity (cm/s)
Case7(非火山堆積岩_平均透水係数)
同左
0.069
0.193
0.193
0.193
0.193
0.193
0.060
Porosity (-)
Case2(第四系低間隙率)
解析ケースである。感度解析ケースの第 3~9 行目は感度解析項目の変更設定値を示す。
同左
3.80 × 10-5
3.80 × 10
-5
3.80 × 10-5
3.80 × 10-5
3.80 × 10-5
3.80 × 10-5
3.80 × 10-5
Hydraulic Conductivity (cm/s)
Case8(非火山堆積岩_低透水係数)
同左
0.069
0.193
0.193
0.193
0.193
0.193
0.359
Porosity (-)
Case3(第四系高間隙率)
同左
3.80 × 10-3
3.80 × 10-3
3.80 × 10-3
3.80 × 10-3
3.80 × 10-3
3.80 × 10-3
3.80 × 10-3
Hydraulic Conductivity (cm/s)
Case9(非火山堆積岩_高透水係数)
Case0 は既往研究によるモデル設定値を採用した基本ケースであり、Case1~3 は間隙率の感度解析ケース、Case4~9 は透水係数の感度
表 3-1-6 幌延沿岸域断面二次元モデルにおいて設定した透水係数と間隙率。
57
F
E
D
Pre Paleogene
Paleogene
Neogene
Neogene
Neogene
Quaternary
時代
Pre Paleogene
参考文献
先新第三紀
中新世後期相
当
中新世中期相
当
中新世前期~
古第三紀相当
鮮新世相当
B
Formation
第四系相当
C
Neogene
参考文献
先新第三紀
A
Num
F
E
D
C
鮮新世相当
B
Quaternary
時代
中新世後期相
Neogene
当
中新世中期相
Neogene
当
中新世前期~
Paleogene
古第三紀相当
第四系相当
Formation
A
Num
-3
-3
同左
5.25 × 10-9
5.25 × 10-9
梅田(1996)
3.16 × 10-7
3.16 × 10-7
5.00 × 10
-5
1.00 × 10
5.00 × 10-5
-4
1.00 × 10-4
1.00 × 10
Vertical
1.00 × 10-4
1.00 × 10-4
1.00 × 10
Horizontal
Hydraulic Conductivity (cm/s)
Case3(先新第三系_最小透水係数)
-4
1.00 × 10-6
1.00 × 10-5
小原(1996)
産業創造研究所(2002)
1.00 × 10-5
1.00 × 10-5
5.00 × 10
-5
5.00 × 10-5
同左
-4
1.00 × 10-4
1.00 × 10
Vertical
1.00 × 10-4
1.00 × 10
-4
1.00 × 10-4
1.00 × 10
Horizontal
Hydraulic Conductivity (cm/s)
Case0(基本)
同左
同左
-3
5.25 × 10-9
3.16 × 10-7
4.27 × 10
-8
4.27 × 10-8
4.27 × 10-8
1.00 × 10
Horizontal
同左
5.25 × 10-9
3.16 × 10-7
4.27 × 10
-8
4.27 × 10-8
4.27 × 10-8
1.00 × 10
Vertical
Hydraulic Conductivity (cm/s)
-4
核燃料サイクル機構(1999)
佐藤ほか(1999)
土木学会岩盤力学委員会(2006)
0.069
0.078
0.193
0.193
0.193
0.215
Porosity (-)
Case1(平均間隙率)
Case4(先第四系_最小透水係数)
0.300
0.300
0.450
0.450
0.500
0.550
Porosity (-)
ケースである。感度解析ケースの第 4~9 行目は感度解析項目の変更設定値を示す。
-4
5.25 × 10-9
1.00 × 10-5
1.00 × 10-4
1.00 × 10
同左
5.25 × 10-9
1.00 × 10-5
5.00 × 10-5
5.00 × 10-5
1.00 × 10-4
1.00 × 10-4
Vertical
-4
5.25 × 10-9
3.16 × 10-7
4.27 × 10
-8
4.27 × 10-8
4.27 × 10-8
1.00 × 10
Horizontal
同左
5.25 × 10-9
3.16 × 10-7
4.27 × 10-8
4.27 × 10-8
4.27 × 10-8
1.00 × 10-5
Vertical
Hydraulic Conductivity (cm/s)
Case5(先第四系_最小透水係数、第四系_低透水係数)
梅田(1996)
同左
-3
1.00 × 10-4
1.00 × 10
Horizontal
Hydraulic Conductivity (cm/s)
Case2(先新生代_最小透水係数)
Case0 は既往研究によるモデル設定値を採用した基本ケースであり、Case1 は間隙率の感度解析ケース、Case2~5 は透水係数の感度解析
表 3-1-7 磐城沖沿岸域断面二次元モデルにおいて設定した透水係数と間隙率。
表 3-1-8 三次元モデルに設定した透水係数と間隙率。
幌延沿岸域三次元モデル採用値
Num
Hydraulic Conductivity
(cm/s)
Formation
A
第四紀~勇地層
B
声問層~稚内層
C
増幌層~鬼志別層
D
先古第三紀
1.00
1.00
1.00
1.00
× 10-4
× 10-6
× 10-8
× 10-9
Porosity (-)
0.215
0.193
0.193
0.069
磐城沖沿岸域三次元モデル採用値
Num
Formation
Hydraulic Conductivity (cm/s)
Horizontal
Vertical
時代
Porosity (-)
A
第四系相当
Quaternary
1.00 × 10 -4
1.00 × 10-5
0.215
B
鮮新世相当
Neogene
4.27 × 10 -8
4.27 × 10-8
0.193
Neogene
4.27 × 10 -8
4.27 × 10-8
0.193
Neogene
4.27 × 10 -8
4.27 × 10-8
0.193
Paleogene
3.16 × 10 -7
3.16 × 10-7
0.078
Pre Paleogene
5.25 × 10 -9
5.25 × 10-9
0.069
中新世後期相
当
中新世中期相
当
中新世前期~
古第三紀相当
C
D
E
F
先新第三紀
東京湾沿岸域三次元モデル採用値
Num
Formation
時代
Hydraulic Conductivity
(cm/s)
Porosity (-)
A
第四系・下総層群
Quaternary
9.83 × 10 -4
0.215
B
上総層群
Quaternary
9.83 × 10 -4
0.215
C
安房(三浦)層群
Neogene
4.27 × 10 -8
0.193
D
先新第三紀層
Pre-Neogene
5.25 × 10 -9
0.069
58
20
4ky*25
0
0.8ky*25
Sea level (GL m)
-20
-40
-60
-80
-100
-120
-140
0
20
40
60
Time (ky)
80
100
120
図 3-1-16 海域に設定した海水準変動曲線。
12 万年を超えるシミュレーションが行われる場合は、再度、先頭(E.L. 0m)から水位変
動が始まるものとした。
59
Cl/Cl0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
0
①Alluvial Sarabetsu F.
100
200
300
400
500
600
700
②Yuchi F.
Depth (m)
800
900
1,000
1,100
1,200
1,300
1,400
④Wakka- ③Koetoi
nai F.
F.
1,500
1,600
1,700
1,800
1,900
2,000
Calculation
0y
3000y
6000y
9000y
1000y
4000y
7000y
10000y
2000y
5000y
8000y
Observation
図 3-1-17 静的境界条件(涵養量約 0.01mm/d)にて完全塩水状態から定常状態(計算開
始後 10,000 年)になるまでの DD-1 孔での塩濃度プロファイルの径時変化(幌延沿岸域断
面二次元モデル)。計算結果は深部まで淡水が到達せず、現地観測結果との再現性が低い。
60
電磁探査結果
0
0.75
Depth(km)
地下水流動解析結果
C/C0
1.00
-0.5
0.50
-1.0
0.25
-1.5
70
60
80
86
0.00
X(km)
図 3-1-18 電磁探査による比抵抗断面と静的境界条件(涵養量約 0.01mm/d)にて定常状
態となった時(計算開始 10,000 年後)の地下水流動解析による計算塩濃度分布との比較(幌
延沿岸域断面二次元モデル)。海岸線より西側において、地下水流動解析結果は淡水領域の
分布を再現できていない。
61
Cl/Cl0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
0
①Alluvial Sarabetsu F.
100
200
300
400
500
600
700
②Yuchi F.
Depth (m)
800
900
1,000
1,100
1,200
1,300
1,400
④Wakka- ③Koetoi
nai F.
F.
1,500
1,600
1,700
1,800
1,900
2,000
Calculation
0y
3000y
6000y
9000y
12000y
15000y
18000y
21000y
24000y
1000y
4000y
7000y
10000y
13000y
16000y
19000y
22000y
Observation
2000y
5000y
8000y
11000y
14000y
17000y
20000y
23000y
図 3-1-19 静的境界条件(涵養量約 0. 1mm/d)にて完全塩水状態から定常状態(計算開
始後 24,000 年)になるまでの DD-1 孔での塩濃度プロファイルの径時変化(幌延沿岸域断
面二次元モデル)
。涵養量が多くなったことで、浅層の塩濃度分布は再現性が上がるが、拡
散場での再現性は低い。
62
電磁探査結果
0
0.75
Depth(km)
地下水流動解析結果
C/C0
1.00
-0.5
0.50
-1.0
0.25
-1.5
70
60
80
86
0.00
X(km)
図 3-1-20 電磁探査による比抵抗断面と静的境界条件(涵養量約 0.1mm/d)にて定常状
態となった時(計算開始 24,000 年後)の地下水流動解析による計算塩濃度分布との比較(幌
延沿岸域断面二次元モデル)。陸域における淡水領域が拡大するものの、海岸線より西側に
おいて、地下水流動解析結果は淡水領域の分布を再現できていない。
63
Cl/Cl0
0.6
0.8
0
100
100
①Alluvial Sarabetsu F.
0
200
300
400
400
500
600
600
700
700
800
800
900
1,100
Depth (m)
1,000
1,200
1,300
1,000
1,100
1,300
1,500
③Koetoi
F.
1,400
1,500
1,700
1,900
2,000
Calculation
0.000E+00 y
3.640E+05 y
8.440E+05 y
1,600
1,700
1,800
④Wakkanai F.
1,800
4.000E+03 y
4.840E+05 y
9.640E+05 y
1.240E+05 y
6.040E+05 y
1.084E+06 y
1,900
2,000
Calculation
0.000E+00 y
3.640E+05 y
8.440E+05 y
2.440E+05 y
7.240E+05 y
Observation
500
1,200
1,400
1,600
Groundwater age (ky)
200
300
400
300
500
900
100
200
②Yuchi F.
Depth (m)
0
1.0
①Alluvial Sarabetsu F.
0.4
②Yuchi F.
0.2
④Wakka- ③Koetoi
nai F.
F.
0.0
4.000E+03 y
4.840E+05 y
9.640E+05 y
1.240E+05 y
6.040E+05 y
1.084E+06 y
2.440E+05 y
7.240E+05 y
Prediction
図 3-1-21 動的境界条件にて完全塩水状態から計算開始後 108 万年間の DD-1 孔での塩濃
度プロファイル及び地下水年代プロファイルの経時変化(幌延沿岸域断面二次元モデル)。
塩濃度の観測値と地下水年代の予察結果は、産業技術総合研究所(2011)による検討結果を
参考とした。深度 500m 以浅は、活発な地下水流動の影響を受け、塩濃度が低く、地下水年
代が若い傾向にある。深度 500~900m では、塩濃度・地下水年代とも、漸移領域へと移行
する。
深度 900~1400m では、
周期的な海水準変動を受けても地下水年代が変化しなくなり、
表層の水位変動の影響を受けなくなる。深度 1400m 以深では、塩濃度が一定となり拡散現
象も生じない。
64
電磁探査結果
0
Depth(km)
0.75
-0.5
0.50
-1.0
0.25
-1.5
50
60
70
80
86
0.00
X(km)
Velocity(m/year)
0.20
0
Depth(km)
0.15
-0.5
-1.0
0.10
-1.5
0.05
50
60
70
80
86
0.00
X(km)
Age(ky)
240
0
180
Depth(km)
地下水流動解析結果(塩濃度)
地下水流動解析結果(流速)
地下水流動解析結果(地下水年代)
C/C0
1.00
-0.5
120
-1.0
60
-1.5
50
60
70
80
86
0
X(km)
図 3-1-22 電磁探査による比抵抗断面と動的境界条件にて完全塩水状態から 244,000 年
後の地下水流動解析による計算結果との比較(幌延沿岸域断面二次元モデル)。淡水性の地
下水塊が沖合 20km 程度まで確認され、概ね電磁探査結果と整合する。海底下の地下水は 0.01
~0.1m/year のオーダーで流動し、周期的な海水準変動を受けても、およそ 10 万年以下の
地下水年代を示す。
65
0.0
0.2
0.4
Cl/Cl0
0.6
0.8
1.0
0
0
100
Groundwater age (ky)
200
300
400
500
0
100
100
200
200
300
300
Depth (m)
500
600
500
600
700
700
800
800
900
900
1,000
1,000
Calculation
0.000E+00 y
4.000E+03 y
1.240E+05 y
2.440E+05 y
3.640E+05 y
4.840E+05 y
6.040E+05 y
7.240E+05 y
8.440E+05 y
9.640E+05 y
Observation
⑤ E layer
400
⑤ E layer
Depth (m)
400
Calculation
0.000E+00 y
3.640E+05 y
8.440E+05 y
4.000E+03 y
4.840E+05 y
9.640E+05 y
1.240E+05 y
6.040E+05 y
1.084E+06 y
2.440E+05 y
7.240E+05 y
Prediction
図 3-1-23 動的境界条件にて完全塩水状態から計算開始後 108 万年間の H11-DS 孔での塩濃
度プロファイル及び地下水年代プロファイルの経時変化(磐城沖沿岸域断面二次元モデル)
。
塩濃度、地下水年代の観測値および予測値は、産業創造研究所(2002)による値を採用した。
66
0
C/C0
1.00
Depth(km)
塩濃度_84.4万年後
1.0
2.0
0.75
3.0
0.50
4.0
0.25
5.0
0.00
0
10
20
30
40
50
60
X(km)
70
80
90
100
110
0
C/C0
1.00
Depth(km)
塩濃度_88.4万年後
1.0
2.0
0.75
3.0
0.50
4.0
0.25
5.0
0.00
0
10
20
30
40
50
60
X(km)
70
80
90
100
110
0
C/C0
1.00
Depth(km)
塩濃度_90.4万年後
1.0
2.0
0.75
3.0
0.50
4.0
0.25
5.0
0.00
0
10
20
30
40
50
60
X(km)
70
80
90
100
110
0
C/C0
1.00
Depth(km)
塩濃度_94.0万年後
1.0
2.0
0.75
3.0
0.50
4.0
0.25
5.0
0.00
0
10
20
30
40
50
60
X(km)
70
80
90
100
110
0
C/C0
1.00
Depth(km)
塩濃度_96.0万年後
1.0
2.0
0.75
3.0
0.50
4.0
0.25
5.0
0.00
0
10
20
30
40
50
60
X(km)
70
80
90
100
110
図 3-1-24 動的境界条件にて計算開始 84.4、88.4、92.4、94、96 万年後の塩濃度の分布図
(磐城沖沿岸域断面二次元モデル)
67
Depth(km)
地下水年代_84.4万年後
0
Age(ky)
300
1.0
2.0
225
3.0
150
4.0
75
5.0
0
0
10
20
30
40
50
60
X(km)
70
80
90
100
110
0
Age(ky)
300
Depth(km)
地下水年代_88.4万年後
1.0
2.0
225
3.0
150
4.0
75
5.0
0
0
10
20
30
40
50
60
X(km)
70
80
90
100
110
0
Age(ky)
300
Depth(km)
地下水年代_90.4万年後
1.0
2.0
225
3.0
150
4.0
75
5.0
0
0
10
20
30
40
50
60
X(km)
70
80
90
100
110
Depth(km)
地下水年代_94.0万年後
0
Age(ky)
300
1.0
2.0
225
3.0
150
4.0
75
5.0
0
0
10
20
30
40
50
60
X(km)
70
80
90
100
110
0
Age(ky)
300
Depth(km)
地下水年代_96.0万年後
1.0
2.0
225
3.0
150
4.0
75
5.0
0
0
10
20
30
40
50
60
X(km)
70
80
90
100
110
図 3-1-24 動的境界条件にて計算開始 84.4、88.4、92.4、94、96 万年後の地下水年代の分
布図(磐城沖沿岸域断面二次元モデル)
68
経過
地下水ポテンシャル
塩濃度比
地下水年代
年数
(青:-340m、赤:989m)
(青:0、赤:0.6)
(青:0ky、赤:>12ky)
24.4
28.4
32.4
34
36
図 3-1-26 動的境界条件にて計算開始 24.4、28.4、32.4、34、36 万年後の地下水ポテン
シャル・塩濃度・地下水年代の分布図(幌延沿岸域三次元モデル)。塩濃度分布は濃度比 0.6
以下を、地下水年代分布は深度-500m 面を表示している。
浅海域に淡水性地下水塊が残りうる状況にある。これらの地下水は凡そ 10 万年以下の年
代を示し、海水準変動ごとにウォッシュアウトが起こっているものと考えられる。
69
経過
地下水ポテンシャル
塩濃度比
地下水年代
年数
(青:-83.2m、赤:531m)
(青:0、赤:0.6)
(青:0ky、赤:>12ky)
24.4
28.4
32.4
34
36
図 3-1-27 動的境界条件にて計算開始 24.4、28.4、32.4、34、36 万年後の地下水ポテン
シャル・塩濃度・地下水年代の分布図(磐城沖沿岸域三次元モデル)
。塩濃度分布は濃度比
0.6 以下を、地下水年代分布は深度-500m 面を表示している。
浅海域に淡水性地下水塊が残りうる状況にある。また、基板面形状が南に傾斜している
事から解析領域南部に若い地下水が発生しやすい可能性が示唆される。
70
経過
地下水ポテンシャル
塩濃度比
地下水年代
年数
(青:-728m、赤:255m)
(青:0、赤:0.6)
(青:0ky、赤:>12ky)
24.4
28.4
32.4
34
36
図 3-1-28 動的境界条件にて計算開始 24.4、28.4、32.4、34、36 万年後の地下水ポテン
シャル・塩濃度・地下水年代の分布図(東京湾沿岸域三次元モデル)
。塩濃度分布は濃度比
0.6 以下を、地下水年代分布は深度-500m 面を表示している。
東京湾内は海水準変動ごとに頻繁に塩水と淡水の入れ替わりが起こるものの、房総半島
など周辺の高い地下水ポテンシャルの影響を受けて、比較的若い地下水が恒常的に存在す
る傾向にある。
71
図 3-1-29 動的境界条件にて計算開始 36 万年後の地下水年代の三次元分布図(東京湾沿
岸域三次元モデル)
。地下水年代分布は 1 万年より若い年代の部分を表示している。
72
3-2 泥水脱水フィルター試験
3-2-1 諸言
現在、ボーリング掘削等で発生する濁水処理には、凝集沈殿方式による処理を行い、放流
基準値以下にして河川や下水等に放流する方法がある。しかしながら、凝集沈殿方式では、
凝集剤等の薬剤を使用するため、河川等の環境への影響が懸念される。
本開発は,このような課題の解決のため,ろ過の原理を応用したコンパクトで薬剤を
使用しない濁水処理装置ならびに同装置から発生する泥土の削減(有効利用)に寄与す
る泥水脱水装置の確立を目指すものである。
3-2-2 システムの概要
システム全体の概念図を図-1に示す。濁水は,①ヤシ繊維フィルタによる1次処理,
②特殊ステンレスフィルタによる2次処理,③2次処理水の清濁分離を行った後,放流
される。また,④濁水処理の際に発生する泥土は,泥水脱水装置により処理される。こ
の構成の詳細は以下のとおりである。
① ヤシ繊維フィルタによる1次処理
濁水の1次処理として,ノッチタンクに天然のヤシ繊維フィルタを装備したヤシ繊
維フィルタ濁水処理装置により,原水のSS濃度(浮遊物質量)3000mg/L程度の濁水を
SS :1000mg/L以下にまで処理する。
リターン
処理水SS濃度:設定値以上
沈砂池
原水SS濃度:
3000mg/L以下
一次処理
二次処理
ヤシ繊維フィルタ
濁水処理装置
ステンレスフィルタ
濁水処理装置
処理水SS濃度:
1000mg/L以下
清濁分離
装置
発生泥土
泥土脱水装置
図-1 工事濁水処理システムの概念図
73
放流
処理水SS濃度:
設定値以下
ヤシ繊維フィルタ濁水処理装置とは,図―2に示すように,ノッチタンクの中央付近
に水平かつ連続的に配置されたヤシ繊維フィルターにより工事濁水を処理する装置で
ある。つまり,ノッチタンクに流入した工事濁水(原水)は,連続的に配置されたヤシ繊
維フィルターの下面から上方にフィルターを通過すことにより処理される。また,工事
濁水の処理流量は,ヤシ繊維フィルターの設置数により濁水処理面積を増減させること
によって調整可能である。このように,濁水処理面積の調整を可能とし,且つ濁水処理
面を水平とすることによって,本装置は以下の特長を有する。
1.装置の小型化
ヤシ繊維フィルターの設置数を調整することにより,
幅広い流量への対応が可能となる。つまり,水平に配置されたヤシ繊維フィルターの
設置数を増大させることにより,大流量の工事濁水にも対応可能となるため,沈砂池
等での1次処理に比較して,30~50%の省スペース化が図れる。
2.フィルターの交換頻度の低減
濁水の通過面を下から上にすることで,フィルター下部に補足された土粒子は自然
沈降するため,フィルターの目詰まりや交換頻度を低減させることができる。
原水(濁水)
隔壁板
処理水
ヤシ繊維フィルター
泥土
隔壁
隔壁板
板
フィルター面積の調整が可
能
図-2 ヤシ繊維フィルタ濁水処理装置の概念図
泥土脱水装置とは,袋状に加工された綿製の特殊布材に高含水比の泥土を充填するこ
とによって,脱水・減容化を図る袋式の脱水装置である。袋は通常,単体で吊り下げる
ことによって脱水・減容化を図る。
本装置の概観を写真―1に、本装置の特長を以下に示す。
1.従来のフィルタープレス等の加圧脱水装置に比較して,大幅なコスト縮減と省ス
ペース化が図れる。
2.脱水処理の過程において脱水剤等の薬剤を一切使用しないため,脱水ケーキの有
効利用が広がる。
74
写真-1 泥土脱水装置
②特殊ステンレスフィルタによる2次処理
1.ある一定流量(設定処理流量)に調整された濁水(原水)をステンレスフィルタ濁水処理装
置に加圧通水する。
2.通水(フィルター洗浄)直後、フィルター孔径より小さな土粒子はフィルターを通過するた
め、処理水(ろ過水)の清澄度は低い。
3.時間の経過とともに、フィルター孔径より大きな濁水中の土粒子からフィルタ表面に捕捉
され「ケーキ層」が形成される。
4.ケーキ層は液体が通過できる多孔構造のため、結果的に粒子捕捉率を向上させ、処理
水(ろ過水)の清澄度は徐々に高くなる。
5.ケーキ層は通水時間の経過とともに厚くなり(圧力損失が高くなり)、濾過水の清澄性はさらに
高くなるものの処理水量は徐々に減少する。
6.流入側と流出側の圧力差(差圧)がある一定値を超えると、内蔵された自動洗浄装置によ
りケーキ層は全て洗浄され、ステンレスフィルタはフレッシュな状態となる。
7.上記、1~6の工程を繰り返す。
このように本装置に流入した濁水のSS濃度および処理水の流量は、時系列的なサイクルをも
って処理されることになる。
75
写真―2 ステンレスフィルタ濁水処理装置
ステンレスフィルタ
ケーキ層
流入
流出
(原水)
(処理水)
図-3 濁水処理の原理
3-2-3 実験結果
実証実験は,濁水の一部を濁水処理システムに導入して約1ヶ月間実施した。実験条
件を表-1に示す。なお,ステンレスフィルタの目幅は,図―4に示す実工事濁水の粒
径加積曲線および予備実験の結果から25μmを採用し,設定処理流量は予備実験の結果
から得られた最適処理流量を中心に3~5ケース設定した。
表-1 実験条件
原水の SS 濃度 (mg/L)
100~2200
実工事濁水の d(50)〔μm〕
設定処理流量 (m3/h)
17.2
2.0~8.0
ステンレスフィルタ目幅〔μm〕
25
ステンレスフィルタろ過面積〔m2〕
0.15
ヤシ繊維フィルターろ過面積〔m2〕
2.0
76
120
100
80
60
40
20
0.1
1
10
100
粒子径(μ m)
1000
0
10000
通過質量百分率(%)
現場実工事濁水
図-4 粒径加積曲線
① ヤシ繊維フィルタ濁水処理装置(1次処理)
図-5は,ヤシ繊維フィルタ濁水処理装置に流入する原水および処理水のSS濃度の経
時変化(10日間)を示したものである.図から,ヤシ繊維フィルタ濁水処理装置により,
SS: 2000mg/L程度の濁水をSS:1000mg/L以下にまで処理可能であることがわかる。また,
原水と処理水のSS濃度の挙動はほぼ一致していることから,高濃度および低濃度の実工
事濁水に対して適用可能であることがわかる。
② ステンレスフィルタ濁水処理装置(2次処理)
図-6は,1次処理後の濁水のSS濃度を500 および1000mg/L近傍とした場合の処理水
の分離率と設定処理流量の関係を示したものである。なお,処理水の設定値を
SS:25mg/L(環境基準値)以下とした。図から,濁水のSS濃度500および1000mg/L近傍とも,
設定処理流量が増大するにつれて分離率は低減し,予備実験における模擬濁水に対する
結果とほぼ一致することがわかる。
一方,図-7は,設定処理流量とSS:25mg/L以下に設定した場合の分離流量との関係
を示したものである。図-7も予備実験と同様の特性を有しており,分離率は設定処理
流量が増大すると共に減少するものの,分離流量は一定のピークを示し,最適な設定処
理流量が存在することがわかる。
77
2500
SS濃度(mg/L)
原水
処理水
2000
1500
1000
500
0
11
2
53
4
95
6 137
(日)
8 17 9 10 21
図-5 SS 濃度の経時変化
0.6
分離率
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0.00
原水SS濃度500mg/L近傍
原水SS濃度1000mg/L近傍
1.00
2.00 3.00 4.00 5.00
設定処理流量(m3/h)
6.00
7.00
図-6 設定処理流量と分離率の関係
分離流量(m3/h)
3
2.5
原水SS濃度500mg/L近傍
原水SS濃度1000mg/L近傍
2
1.5
1
0.5
0
0.00
1.00
2.00 3.00 4.00 5.00
設定処理流量(m3/h)
6.00
図-7 設定処理流量と分離流量の関係
78
7.00
③ 泥水脱水装置
泥水脱水装置の基本性能を把握するために,実現場のヤシ繊維フィルタ濁水処理装置
から排出された泥土を用いた泥水脱水実験を行った。実験は容量2m3の袋に初期含水比
446%の泥土を充填させて実施した。測定項目は含水比とコーン指数で,実験は15日間実
施した。図―8は,材令と含水比の関係を示したものである。図から,実験開始から材
令5日程度で含水比に大きな低下がみられる。図―9に含水比とコーン指数との関係を
示す。図中の曲線は実験的に対象土の含水比を低下させた場合の含水比とコーン指数の
実測値である。
ここで,図―8および9を用いて,泥土のコーン指数(qc)が第4種建設発生土の要求
強度(qc:200kN/m2)に達するまでの材令について考察を加える。図―9の実線から要求
強度(qc:200kN/m2)に対応する含水比は概ね67%であり,図―8から含水比が67%とな
る材令は,概ね5日となる。つまり,要求強度(qc:200kN/m2)が発現するまでの要求日
数は概ね5日目となる。同様の手法で含水比をコーン指数に変換し,材令とコーン指数
の関係を示したものが図―10である。なお,図中のマーカは材令3日と5日経過後の
実測値をプロットしたものであり,実線との相関性は高いことがわかる。
含水比(%)
160
140
120
100
80
60
40
20
0
0
5
10
15
経過日数(日)
図-8 材令と含水比の関係
79
含水比とコーン支持力の関係
2500
2500
コーン指数(kN/m2)
コーン支持力 qc (kN/m2 )
2000
200
01500
150
0
1000
100
0
500
500
2
200kN/m
0
0
30
30
コーン指数 qc(kN/㎡)
80
35
40
40
45
50
55
50
60
含 水 比 w (%)
65
60
70
75
70
80
図-9 含水比とコーン指数の関係
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
(日)
15
図-10 含水比とコーン指数の関係
3-2-4
結語
今回,ろ過の原理を応用したコンパクトで凝集剤等の薬剤を使用しない濁水処理シス
テム実験を行った。実験の結果,本システムは原水のSS濃度3000mg/L以下の濁水に対す
る十分な処理性能を有することを確認した。また,濁水処理の際に発生する泥土につい
ても第4種建設発生土の要求強度まで脱水可能であることを確認した。今後は,実機に
よる濁水処理システムを構築し,システム全体の性能を確認すると共に,早期の現場導
入を図る予定である。
80
3-3 海上掘削実施に向けた検討
3-3-1 緒言
地層処分の成立性や安全性を評価するためには,海底下深部の地質構造や地下水等の状
況を,海上ボーリングによる調査で把握する必要がある。また,沿岸域海底下の地質環境
を体系的に把握するには,これまで研究を行ってきた沿岸域での調査との総合評価を図る
必要がある。例えば,浜里試験地で実施している一連の沿岸域研究では,海底下に淡水地
下水が分布することが海陸接合の電磁探査によって明らかになっており,地下水流動解析
による解釈から,このような海底下淡水領域は,浜里試験地特有の地下水現象ではなく,
日本全国に分布する可能性が示唆されている。よって,地層処分の地下水評価の観点から
は,海上ボーリングによる調査によって,海底下地下水の長期的な流動および拡散の評価
に資する原位置情報の取得が期待される。すなわち,これまでデータの空白域であった浅
海域の海底下において,地下水流動解析に必要な初期塩分濃度,初期水頭,帯水層の水理
特性,物質輸送特性に関する原位置情報が提供されるのが望ましい。これらの原位置情報
を取得するためには,コアリング,地下水サンプリング,揚水試験やトレーサー試験等の
水理試験,モニタリングが必要であり,海上ボーリングにも陸上と同等の掘削調査技術が
求められる。しかし,海上ボーリングは,これまでの施工例が陸上に比べて極めて少ない
ため,地層処分のための地質構造・地下水調査を前提とした掘削法が明確にされていない。
例えば,海上ボーリングの仮設工は,表 3-3-1 に示すように,海底の水深によって工法が異
なり,地点特性に応じた設計が必要になることが知られている。また,地層処分の調査で
必須となるオールコアボーリング,掘削水の管理,水理試験は,従来の海上ボーリングで
必ずしも行われておらず,これらを計画に含めるためには,非効率な海上作業を考慮に入
れた概念設計が必要となる。そこで,本節では,海上ボーリングの実現可能性を事前に確
認するために,浜里試験地沖を対象とした概念設計を実施し,仮設設置・ボーリング・仮
設撤去にかかる工期を算出した。なお,検討対象とする仮設工法には,浅海域での適用を
前提として,桟橋または SEP(自己昇降式作業台船)が採用されるとした。
3-3-2 方法
(1) ボーリング深度の設定
高レベル放射性廃棄物の処分深度は,法令で深度 300m 以深とすることが定められてい
るだけであり,本検討でボーリング深度を設定する根拠が他に存在しないものの,実際の
処分深度は,地下水シナリオによる核種の漏洩リスクを含め,総合的に判断されると考え
られる。そこで,モデルケースとして,浜里試験地沖を例とすれば,地下水の流動域と拡
81
散域の境界が深度約 500m 付近に存在し,深度 800m 以深では遺留水(流動も拡散もしな
い安定的な水塊で占められていることが分かっている。これらの深度は,水理地質モデル
を作成する上で重要な深度と見なすことができることから,本調査では,ボーリング深度
について 500m と 1000m の 2 ケースを検討することとした。
(2) 桟橋の概念設計条件
プラットフォームへの要求性能は,ボーリングの最大深度(1000m)に対する余裕を加え,
深度 1200m 程度の掘削を可能とする仕様を想定した。桟橋用のプラットフォームにおける
ボーリング機器の配置例は,図 3-3-1 に示すとおりであり,必要面積を 18m×25m とした。
プラットフォームへのアプローチとなる桟橋幅は 6m とし,図中下部の⑱に接続する。桟橋
の施工法は,クローラークレーン(日立住友 SCX550 相当)を用いた手延べ式とし,材料は H
型鋼杭を用いることとした。
支持杭間隔は桟橋部分が 8m,プラットフォームが 6m とする。
また,桟橋を打設する海底の底質は,任意の場所で十分な深さを有し,N 値=15(砂質土)で
一定と仮定した。
陸側の工事始点は,現実の道路配置から設定し,海岸線を挟む地形断面を 50m 単位で仮
定することとした。浜里試験地沖では,最寄りの道路が標高 G.L. 8m の道道 106 号線とな
り,図 3-3-2 に示すように,海岸線まで約 100m のアプローチが必要で,50m おきに標高
が 5m 下がる断面地形となった。
プラットフォームの海面からの高さは,建設地周辺の波浪データから設定することとし
た。浜里試験地沖の場合,波浪データが入手できた最も近い地点は稚内であり,2001~2009
年における最高波平均値は約 3m であるものの,11~3 月の冬季には最高波最大値が 10m を
超える場合があることから,概念設計用の暫定値として 10m とした。
(3) SEP の概念設計条件
プラットフォームへの要求性能は,桟橋と同様に,深度 1200m のボーリング掘削を可能
とする仕様とした。ただし,SEP の場合,作業空間の大きさは,調達可能な SEP の仕様に
左右される。国内で調達可能な SEP は,1980 年代の瀬戸海峡大橋の工事をピークとして,
売却,廃船によって数が減少しており,現時点では表 3-3-2 に示す 5 艘のみである。そのう
ち星都,星都Ⅱは,組立台船であるため波高の大きい外洋での工事には不向きとされる。
よって,本調査で利用可能な SEP は,むつ,ASO,くろしおの 3 艘であり,ここでは ASO
の利用を前提とする。その際のボーリング機器の配置例は,図 3-3-3 に示すとおりである。
ただし,限られた作業空間を有効利用するために,図 3-3-4 に示すような張出架台を SEP
両側に設け,コア保管室などを設置することとした。
82
浜里試験地沖を想定した SEP の設置位置は,同地の概略海底標高が,沖 100m で 10m,
沖 5km で 30m,沖 10km で 50m と推定されることから,沖 5km の位置とした。また,作
業員往復等の拠点港は,天塩港とした。
(4) ボーリングの概念設計条件
ボーリングの概念設計は,軟岩地域と硬岩地域の 2 種類の地質を想定して実施すること
とした。軟岩地域では,深度 0~100m に底質,深度 100m 以深に軟岩が分布し,同様に,
硬岩地域では,深度 0~100m に底質,深度 100m 以深が硬岩とすると仮定した。なお,軟
岩と硬岩の区分は,地質調査の岩分類における軟岩Ⅰ以下を軟岩,軟岩Ⅱ以上を硬岩とし
た。なお,この規準によれば,浜里研究地沖は軟岩地域に分類される。
ボーリング工法は,大深度掘削に対応可能なワイヤーライン工法を用いることとして,
軟岩地域を想定したケーシングプログラムを,図 3-3-5 のように設定した。ボーリングに求
められる仕様は,地層処分研究のための必要性から,オールコアリング,掘削泥水のトレ
ーサー管理(アミノ G 酸),水理試験用仕上げを前提とする。水理試験実施の前には,スクリ
ーン区間設定のための検層が行われ,爆破方式でスクリーンが設置されるものとする。ま
た,試験区間周辺の掘削泥水は,水理試験前に極力除去される必要がある。
日掘進量の深度補正は,コアリングに関しては(社)全国地質調査業協会連合会「全国
標準積算資料 土質調査・地質調査 平成 20 年度改訂歩掛版」,
拡孔深度補正に関しては
(社)
全国鑿井協会「さく井・改修工事標準歩掛資料(平成 15 年度版)」に従う。海上掘削に伴
う作業ロスの修正係数は,
(社)全国地質調査業協会連合会「全国標準積算資料 土質調査・
地質調査 平成 20 年度改訂歩掛版」に基づいて設定する。修正係数は,櫓高(m)に対す
る係数と作業スペースによる能率低下に対する係数との和で表される。作業ロスの要因は,
①水深(櫓高)の増加による作業ロス(ロッド昇降等)
,②作業面積が狭いために生じる作
業能率の低下,が考えられている。
3-3-3 結果
幌延沖をモデル地点として,桟橋,SEP の概念設計を実施し,設置日数と撤去日数を実
稼働日数で計算した結果を,表 3-3-4 に示す。桟橋の施工日数は,施工機械による鋼材の日
当たり施工能力から求められた。SEP の設置日数は,回航準備,回航,天塩港接岸,資材
搬入及び仮設,曳航・設置・掘削準備の工程毎に計算された。同様に,撤去日数は,天塩
港曳航準備,天塩港接岸,ボーリング機器搬出,回航,艤装解除の工程毎に求めた。
浜里試験地沖をモデル地点としたボーリング工の工期は,表 3-3-5 のとおりである。500m
孔,1000m 孔の両孔とも,SEP 利用時の方が桟橋利用時より工期が長くなっているが,こ
83
れは SEP 特有の資材搬入,仮設,曳航等が 15 日考慮されたからであり,これを差し引い
た海上作業日数は,桟橋,SEP の両仮設工法で大差ない日数となった。
3-3-4 結言
本調査では,海上ボーリングの実施可能性を確認するために,概念設計と工期の試算を
行った。概念設計では,沿岸域から海域の地下水調査を想定して,深度 500m または 1000m
のボーリング孔を,桟橋または SEP を用いて掘削することとした。その結果,500m 孔の
掘削であれば,実稼働日数で,桟橋方式が 265 日,SEP 方式が 260 日で施工可能と示され
た。ただし,これらの工期は,実際の暦を考慮せず累積日数で検討されており,全体工期
を計算する際には,海上作業等による稼働率低下を地点毎に検討する必要がある。例えば,
幌延沖であれば,冬季の稼働率が極端に低下することを考慮する必要がある。
84
表 3-3-1 海上ボーリングにおける仮設工の比較
海上ボーリングの仮設工は,海底の水深によって工法が異なり,地点特性に応じた設計
が必要になる。
足場
形式
足場種類
桟橋式
固定
足場
浮体式
足場
自己昇降式
作業台船
構造形式
特徴
適用水深
・陸上の始点からクローラ―クレーンによる手延べ式で設
H型鋼(鋼管) 置可能
杭方式桟橋 ・資機材の搬入を陸上から行うことが可能
・冬季等の荒天時の養生が課題となる。
大型SEP
・海底が急傾斜で合ったり、起伏が多いところでは使用困
難
・明石海峡大橋で急潮流、大水深での実績がある。(水深
50m、潮流最大4.5m/s)
・明石海峡大橋で使用された大型SEPは廃船・売却により
使用不可。
・現在使用可能な大型SEP“SEP「くろしお」”ほか3~4隻
程度
・超大型SEPとして石油リグ(掘削足場)用のもの
(HAKURYUU-10他)があり、水深120m程度で稼働してい
るが、使用料が高価なため対象からは除く。
作業条件
~10m
作業時:風速10m/s以下
10m~
30m
曳航時:風速15m/s以下
潮流 1.5kt以下
波高H1/3=1.5m以下
据付・撤去時:
風速10m/s以下
潮流 1.0kt以下
波高H1/3=0.75m以下
作業時:風速10m/s以下
潮流 1.5kt以下
波高H1/3=3.0m以下
○
↓
SEP船
を選定
×
×
×
ブイ式
足場
スーパーブイ
方式
・海底面が傾斜あるいは起伏のある場合でも使用可。
・設置・移設・撤去等の仮設工事が簡単
・ボーリング深度は100m程度の実績がある。中型タイプで
はボーリング深度100m~300mまで対応可。
・ボーリング資機材を搭載したまま、最大波高7.5m最大風
速40m/s(水深30m、潮流2kt時)まで放置可。
15m~
100m
作業時:風速10m/s
波高H1/3=1.0m以下
ブイの動揺傾斜角3度以
下
退避:水深30mのとき
風速40m/s以上
波高Hmax7.5m以上
潮流2kt以上
半潜水式
足場
セミサブ
方式
・明石海峡大橋で使用実績があるが現存しない。
・石油リグ用のもの(HAKURYUU-5他)があり、水深100m
~300mで稼働しているが、使用料が高価なため対象から
は除く。
50m~
300m
曳航時:風速25.8m/s以下
係留時:風速15.4m/s以下
波高Hmax=1.5m以下
潮流2.0kt以下
85
○
3m~
60m
円筒式
足場
・船に掘削機器等を取り付けたタイプです。
・掘削作業時には数個の錨で係留するか、DPS(Dynamic
ドリルシップ型 Positioning System)で位置制御して行う。
・大水深での稼働(1500m以深)と高移動性。
・使用料が高価なため対象からは除く
適否
作業時:風速10m/s以下
波高H1/3=1.0m以下
視界1.0km以上
ガイドパイプ撤去基準
波高H1/3=4.0m以上
最大波高H=7.0m以上
台船避難基準
風速 15m/s以上
波高H1/3=1.5m以上
・ガイドパイプ長を調整するだけで広い範囲の調査ができる
円筒・台船
が、大深度のボーリングには向かない。
組合方式
・海象荒天時は30分程度で海域にガイドパイプのみを残し
(傾動自在工法) た状態で遊離できるため作業の安全性を確保できる。
・海底面が傾斜あるいは起伏のある場合でも使用可。
船型
概略図
~
曳航時:風速25.8m/s以下
2500m
×
図 3-3-1 海上ボーリングにおけるプラットフォームの必要面積(桟橋利用時)
図 3-3-2 桟橋設計のためのモデル地形断面図
陸側の工事始点は,現実の道路配置から設定し,海岸線を挟む地形断面を 50m 単位で仮
定した。浜里沖では,最寄りの道路が標高 G.L. 8m の道道 106 号線となり,海岸線まで約
100m のアプローチが必要で,50m おきに標高が 5m 下がる断面地形となった。
86
表 3-3-2 国内で調達可能な SEP 船の一覧表
星都,星都Ⅱは,組立台船であるため波高の大きい外洋での工事には不向きとされる。
よって,本調査で利用可能な SEP は,むつ,ASO,くろしおの 3 艘となる。
船体主要寸法
所 有 者
所在港
船 名
排
水
ト
ン
数
(t)
長
(m)
幅
(m)
深
(m)
スパット
水
最
大
作
業
水
深
(m)
(m)
喫
長
位置決め
係留装置
スパット昇降装置
本
さ
径
又
は
辺
長
昇
降
方
式
(m)
(m)
(本)
押
上
力
押
上
速
度
ウ
イ
ン
チ
ア
ン
カ
ー
(t)
(m/min)
(台)
数
製
造
年
損料
製 造 所
(t)
(供用1日
あたり)
(円)
33
40 φ 1.2
4 パッド&リングバー方式
1600 0.15
4
2.1 2009 淡共
1,310,000
3.0 2.00
31
38 φ 1.2
4 パッド&リングバー方式
1600 0.15
4
2.1 1992 辻産業
1,240,000
4.2 2.30
40
50 φ 2.3
4 油圧強制ピン嵌合式
3600 0.40
4
5.0 2011 GUSTO
2,450,000
21.8
2.6
1.1
20 30.0 φ 1.2
4 パッド&リングバー方式
1600 0.15
4
2.0 1997 協和機工㈱
933,000
21.8
2.6
1.3
20 30.0 φ 1.2
4 パッド&リングバー方式
1600 0.15
4
2.0 1997 協和機工㈱
933,000
第一建設機工㈱ 西宮港
SEP"むつ”
1,200 35.0 22.0
第一建設機工㈱ 西宮港
SEP”ASO”
1,000 34.0 20.0
第一建設機工㈱ 西宮港
SEP”くろしお”
2,350 48.0 25.0
㈱横山基礎工事 相生港
星都
770 33.0
㈱横山基礎工事 相生港
星都Ⅱ
790 33.0
3.2 1.56
87
34000
20000
図 3-3-3 海上ボーリングにおけるプラットフォームの必要面積(SEP 利用時)
88
図 3-3-4 海上ボーリングにおけるプラットフォームの張出架台(SEP 利用時)
限られた作業空間を有効利用するために,張出架台を SEP 両側に設け,コア保管室など
を設置する設計とした。
89
図 3-3-5 ケーシングプログラム(軟岩)
ボーリング工法は,大深度掘削に対応可能なワイヤーライン工法を用いることとした。
90
表 3-3-4 幌延沖を仮定した実稼働日数による桟橋,SEP の工期
表 3-3-5 幌延沖を仮定した実稼働日数によるボーリングの工期
91
第4章
おわりに
92
4-1 おわりに
平成 23 年度「海域地質環境調査技術高度化開発」は東日本大震災の影響を受け,予察
的な研究にとどまったが,以下の成果を上げることができた:
・堆積平野の沿岸海域には,そこに海底湧出地下水があるように,淡水地下水領域がある
ことが物理探査により観測されている(産業技術総合研究所による「沿岸域塩淡境界・断
層評価技術高度化開発」
)
。本研究課題では,これを解析的に証明した。
・また,地質境界と水理境界が一致しないことが同様に示されているが,これを解析的に
考察し,動的初期条件を使うことで海水準変動を繰り返す沿岸域の地下水環境を解明する
ことができた。
・今後は,本評価手法の信頼性をより一層高めるために、以下のような解析手法を実施し
ていく必要がある。
様々なパターンの境界条件(海水準変動、涵養量変動)による反応を確認。
超長期の解析及び解析範囲の拡大とメッシュ細分化。
不飽和帯や水温変化を考慮したモデルの構築。
93
4-2 海外動向の調査報告
2011 GSA Annual Meeting in Minneapolis (9–12 October,2011)
Minneapolis, Minnesota, USA
(ミネソタ州ミネアポリスにある、コンベンションセンターで開催)
10/9(日)
:水文地質学Ⅰのセッション&地下水資源開発に関するセッション;様々な地区
での地下水の状況や GIS を用いたディスプレイ方法などを紹介していた。
10/10(月)ポスター発表。アブストラクトは以下の通り。
http://gsa.confex.com/gsa/2011AM/finalprogram/abstract_192313.htm
ヤッカマウンテンのセッション:新しいデータが出ていない印象を受けた。地層処分の研
究を進めるというよりも、むしろ今までの成果が何に役立つか(CO2 貯留など)を模索し
ていた。その後、再びポスター会場へ。アイダホ大学のフォルナギ博士のグループが、レ
ーリー波(地震波)をフーリエ変換することによって、貯留係数を精度よく導く手法を実
際に適用していた。フォルナギ氏の説明を聞くが難解。Shih(2009)の論文を読むように勧
められる。アブストラクトは以下の通り。
http://gsa.confex.com/gsa/2011AM/finalprogram/abstract_196300.htm
10/11(火)海底下地下水についてのセッション:アブストラクトは以下の通り。
http://gsa.confex.com/gsa/2011AM/finalprogram/session_28698.htm
以下の研究が重要と考えられる
・Henderson et al.,(2010), Hydrogeology Journal:海底地下水に関する一般的知見
・IODP New Jersey shallow shelf expedition
・Adkins et al.,(2002):大陸棚の淡水資源量を報告している
・Poag(1998)
、ICDP&USGS(2005):チェサピーク湾での深部地下水調査。クレーターの
中心部を約3キロ掘削研究。拡散場における有効拡散係数は 3.3×10-11m2/s が用いられて
いた。Cl/Br 比や、地層水(化石水)の Cl や酸素 18 などが紹介。
・Plummer et al.,(2012), Hydrogeology Journal:ヘリウムと炭素 14 について(印刷中)。
・Paleomap Project, (1998):古環境のマッピングプロジェクト
オールドドミニオン大学のホワイテーカー博士らが新しい地下水位予測方法として、月
別有効涵養モデルを紹介。共著のマクリード氏より説明を受ける。簡便で優れた手法であ
ると思われる。アブストラクトは以下の通り。
http://gsa.confex.com/gsa/2011AM/finalprogram/abstract_197712.htm
10/12(水)ベルリン工大との打ち合わせ(PP 試験)
94
付
録
95
1 本報告書で使用した単位一覧
3-1 海底下地下水流動解析
項目
単位
透水係数
cm/sec
弾性波速度
m/sec
比貯留係数
1/m
流体密度
kg/m3
分散長
m
分子拡散係数
m2/s
地下水位・地下水頭
m
塩濃度
kg/m3, %
地下水年代
ky, Ma
地下水流速
m/year
地下水涵養量
mm/day
3-3 海上掘削調査実施に向けた検討
項目
単位
長さ,深さ,標高,高さ
m, km
風速
m/s
潮流の速度
kt(knot, =0.514m/s)
発電機容量
kVA
容積
m3,L
重量,力
t
速度
m/min
96
2 評価委員会報告
平成 23 年度「海域地質環境調査技術高度化開発」評価委員会
1.総 評
2.第 1 回評価委員会 次第
3.第 1 回評価委員会 議事録
4.第2回評価委員会 次第
5.第2回評価委員会 議事録
6.評価報告書(まとめ)
7.評価報告書(各委員記入分)
97
報告書目次
平成 23 年度「海域地質環境調査技術高度化開発」評価委員会
総
評
我が国の地層処分問題において欠くことのできない課題と位置づけられ、本研究を遂行
する意義は大きい。特に地下水研究における成果は大きい。堆積平野沿岸域において、海
底下に淡水地下水領域が存在することが解析的に求められた。これは、既存の地下水研究
において、堆積平野の沿岸海底下に海底湧出地下水が存在することが確認されていたこと
と合致し、さらにその下位の塩水地下水が長期的に安定した環境であることを証明するも
のであり、本事業への貢献は大きいと考える。
本年度は東日本大震災の影響により、現地調査が中止された経緯があり、研究計画が頓
挫している。重要な研究であるだけに、次年度以降加速していただきたいと考えます。
今後とも、成果を社会に発信しつつ研究を進めていただきたい。
98
2011/12/02
独立行政法人 産業技術総合研究所 受託事業
海域地質環境調査技術高度化開発
平成 23 年度 第 1 回 運営評価委員会
日時:平成 23 年 12 月 2 日
15:30~17:00(予定)
場所:産業技術総合研究所
つくば第 7 事業所 810 会議室
住所:茨城県つくば市東1-1-1
議事次第
1.産総研プロジェクトリーダー ご挨拶
2.資源エネルギー庁 ご挨拶
3.事業の報告
4.質疑応答
5.その他
99
平成 23 年 12 月 5 日
平成 23 年度「海域地質環境調査技術高度化開発」第1回運営評価委員会
議事録
日 時:平成 23 年 12 月 2 日 15 時 30 分~
場 所:産業技術総合研究所 第七事業所本館 810 号室
(茨城県つくば市東一丁目1‐1)
委員出席者:登坂、杉田、今村、平山、土(敬称略)
オブザーバー:三原、弥富(敬称略)
産総研出席者:丸井・内田・井川・越谷・伊藤・小原・楠瀬・樽沢
事務局出席者:三宅、細川
配布資料: 第1回運営評価委員会 議事次第
参加者名簿
プロジェクト概要説明資料
資料1.海底下地下水流動評価
資料2.平成23年度出前授業について
資料3.海域評価のケーススタディ
資料4.今後の研究計画
議事
1.産総研プロジェクトリーダー 挨拶(丸井)
本プロジェクトの研究スケジュールを説明した。本年度は特に、技術を中心に議論
を行うため、会議の運営及び評価を地下水学会にお願いした。本プロジェクトの研究
方針に対する委員からのご支援およびご指導をお願いした。
2.資源エネルギー庁ご挨拶(三原)
海域地質環境調査研究は平成 23 年度から4年間で計画をしている。本研究プロジェ
クトでは、海域における調査技術を確立し、NUMO が処分事業を行う際に有用となる
調査マニュアルを作成することを狙っている。海域地下環境を把握するためには、具
体的にどのような調査項目が必要となってくるか等を示して欲しい。
100
3.事業の報告と審議
3-1. プロジェクト概要説明/丸井
海域地質環境調査技術高度化開発に関して、研究開発の目的・概要・本年度の状況、
を報告した。物理探査と地下水研究を相互に連携させ、処分地に適した地下の“真の”
安定環境を把握することを目的に、本プロジェクトを実施していくことを確認した。
3-2. 海底下地下水流動評価/小原
海底下地下水流動評価に関する目的と方針、結果の速報、今後の展開を報告した。
本年度から新たに設定された研究項目であるため、海底下に存在する淡水性地下水の
成因と量を推定した上で、処分研究におけるこの地下水の水文学的意味や、評価の全
国展開に向けたロードマップを説明した。
<質疑応答>
(今村)深度 5km 以深は海水ではないかもしれないことが物理探査や水質解析から示さ
れているが、深部の条件設定は今のままで良いのか?
(小原)評価期間が数万年から数十万年であることや深度 300m 以深でかつなるべく浅
い領域を対象としているため、本解析では考慮しないこととした。我々はあく
まで海底下の比較的浅い領域に存在する淡水性地下水を対象としており、深部
流体とは流動場として異なっていると理解している。また、解析上で設定する
場合は何らかの境界条件を設定する必要があるが、深部の淡水性地下水の成因
や空間分布が不明なことからその設定が乱暴になる可能性がある。ただし、試
解析という位置付けとして、今後実施していくことは価値があるものと思われ
る。
(今村)塩分濃度の断面解析結果図がハーモニカ状(不連続)になっているが、計算結
果に問題はないか?
(小原)海底地形の微妙な高低差によって、涵養域・流出域の小さな流動系が現れてい
る。表層のメッシュ分割を細分化することで、この現象はよりきれいに表示で
きるものと考えている。
(平山)沿岸域地下水流動評価で使用されたパラメータと違いがあるが?
(小原)沿岸域では地質をさらに細分化したモデルを利用しているため、同じ値ではな
い。大局的なモデルとしては、JAEA 等で過去に検討されたパラメータ値を利用
しているため、問題ないと考えている。ただし、沿岸域研究と比較して条件設
定などに整合性が出てくるよう、注意していきたい。
(丸井)本研究項目では全国的な評価を見据えているため、条件設定には苦慮している。
委員の方にも改善案等があれば、お示し頂きたい。
101
(今村)透水係数・分散係数等の設定の考え方が、国民に理解頂けるよう注意すること
が重要である。
(杉田)海底下の淡水性地下水領域が沖合へと薄くなっていくのは何故か?
(小原)沖合に向けて鉛直方向の動水勾配が小さくなっていることが原因の一つと考え
ている。
(今村)涵養時間の違いもこのような結果に影響を与えているのではないか?
(小原)その通りである。
(登坂)陸域の涵養量が 0.01mm/日と設定されているが、その根拠は何か?
(小原)陸域は完全飽和状態を想定した固定水頭を設定し、そこから発生する流動量を
集計したところ、0.01mm/日となった。これは、地形勾配や浅部地層の透水係
数値からも妥当な値と考えている。
(登坂)陸域涵養は不飽和帯を加味し、丁寧に設定する必要がある。有限要素法に切り
替える前に、差分法で不飽和地下水流動を組み込むことが望まれる。
(小原)了解した。
(登坂)初期条件の設定は過去に日本列島が海に沈んでいた頃から開始し、数千万~数
億年にわたる地質プロセスを加味した計算を行うことが望まれる。
(小原)了解した。
3-3. 平成23年度出前授業について/小原
本年度、稚内北星学園大学と問寒別小中学校にて出前授業を行ったことについて報
告した。
<質疑応答>
(三原)授業内容に関して、何らかの評価を受けているか?
(丸井)生徒から感謝の手紙を頂いた。
(登坂)地学の授業を生徒に関心を抱いてもらうには、頭に残るような授業内容が必要
だが?
(小原)水の性質に関する実験では授業後に生徒から質問があり、興味を持って頂けた
のではないかと自負している。
(井川)川の流れを理解するために、実際に流速を測ってみるなど実践型の授業となる
よう心掛けた。
(登坂)岩石中の黒曜石を見つけるという内容なども面白いものと思われる。
(三原)生徒にとって、内容が難しくないか?
102
(小原)基本的にシラバスに沿った授業を展開している。
3-4. 海域評価のケーススタディ/伊藤
海上掘削を用いた水理地質調査技術の確立と将来的なマニュアル作成を目的とし、
海上ボーリングの概念構築の方針について報告した。
<質疑応答>
(今村)桟橋方式の設置はどのくらいの距離を想定しているか?
(伊藤)沖合 200m、水深 10m 程度を想定している。
(三原)櫓を海に設置して、掘削することは出来ないのか?
(伊藤)1000m 級のボーリング掘削を想定した場合は、この2方式が適当であると考え
ている。
(平山)SEP 方式はどのくらいの距離を想定しているか?
(伊藤)SEP 方式はどこでも適用可能であるが、本検討では沖合 5km、水深 30m を想
定した。
(登坂)SEP 方式は石油掘削で用いられている技術と同じものか?
(伊藤)似たようなものであるが、今回の報告では土木掘削等で用いられている技術を
参考としており、石油掘削技術よりかなりコストを抑えることが可能である。
(登坂)ボーリングの孔径はどの程度を想定しているか?
(伊藤)最終径は 100~150mm、坑口は 300~500mm 程度を想定している。
(登坂)JAMSTEC の「ちきゅう」をレンタルすることは考えていないか?
(伊藤)使用の際のコストが大きすぎるため、本研究計画にはそぐわないと考える。た
だし、本番の事業では使用が検討されることも十分に考えられる。
3-5. 今後の研究計画/伊藤
海域地質環境調査技術高度化開発に関して、今後の研究計画を報告した。
<質疑応答>
(平山)塩水域であれば、処分適地であるということか?
(伊藤)塩水/淡水の区分が直接処分適地に当たるという事ではない。地下水の不動領
域を見つけることが必要である。
(平山)一般に受け入れられる議論とするためには、
「どういう領域であれば適地である」
と単純に示すことが重要であると思われる。
(伊藤)了解した。
103
(登坂)表現方法に関しては「動いていない」ではなくて、
「極めて流速が遅い」という
べきである。
( 土 )流速の議論の際は、評価期間を示すことが重要である。
(伊藤)了解した。
( 土 )こういう調査をすればこういうことが分かるという対応表を示して欲しい。
(伊藤)了解した。
(登坂)処分地は陸上地下に作るか海底下に作るかは決まっていないため、調査の動機
づけはどちらにも受け入れられるような表現が望ましい。
(伊藤)了解した。
(三原)陸上掘削調査と海底掘削調査で何の違いがあるか?
(伊藤)サンプリング時のコンタミを評価する上で難しい点がある。陸上調査では掘削
水にトレーサーを入れて評価することも可能であるが、海上調査ではそれが困
難である。また、遮水技術に関しても課題である。
(登坂)海外の地層処分事業で浅海域の海上に掘削した事例は存在しないのか?
(伊藤)文献調査を実施中である。
(登坂)陸上からのコントロールボーリングで対応できないか?
(今村)石油掘削で用いられるコントールボーリングは反力が必要となり幌延沿岸域では
難しいものと思われるが、土質用のボーリング技術を適用することなども考えて
おく必要がある。
(伊藤)その場合、地下水のサンプリングが困難になる可能性がある。
(今村)鋼管を立ち上げる等の土木技術が適用できる可能性があるため参考にされたい。
(伊藤)頂いた意見を含めて、様々な条件を検討していきたい。
(弥富)既存の多くの技術を取り上げて、実現可能性・環境影響・コスト等の様々な側面
から総合的に評価されることを望んでいる。
4.総合討論
(登坂)本プロジェクトは物理探査とボーリング調査と数値解析に整合性のある結果を
示すことが重要である。
(杉田)ボーリング調査では事前に環境影響評価を実施するのか?
(伊藤)アセス対応としては考えていないが、一般的な海底調査を実施することは考え
ている。
104
5.事務局連絡(三宅)
第二回の評価委員会は、東京で 2 月 2 日 10 時~を予定している。具体的な案内は追
って連絡する。
以上
105
(添付資料)会議写真
写真 1
報告状況①
写真 2
報告状況②
写真 3
閉会挨拶
106
2012/02/02
独立行政法人 産業技術総合研究所 受託事業
海域地質環境調査技術高度化開発
平成 23 年度 第 2 回 運営評価委員会
日時:平成 24 年 2 月 2 日
14:00~17:00(予定)
場所:東京国際フォーラム
G505会議室
住所:東京都千代田区丸の内3丁目5−1
議事次第
1.産総研プロジェクトリーダー ご挨拶
2.資源エネルギー庁 ご挨拶
3.事業の報告
4.評価作業
5.その他
107
平成 24 年 2 月 8 日
平成 23 年度「海域地質環境調査技術高度化開発」第 2 回運営評価委員会
議事録
日 時:平成 24 年 2 月 2 日 14 時 00 分~
場 所:東京国際フォーラム
G505 会議室
(東京都千代田区丸の内 3 丁目 5-1)
委員出席者:登坂、杉田、今村、平山(敬称略)
オブザーバー:弥富(敬称略)
産総研出席者:丸井、小原、潮田、樽沢
事務局出席者:三宅、平山
配布資料: 第 2 回運営評価委員会 議事次第
参加者名簿
評価コメント票
第 1 回運営評価委員会議事録(案)
議事
1.事務局長ご挨拶(三宅地下水学会事務局長)
開会の宣言ならびにご挨拶、配布資料の確認
2.前回議事録確認(三宅地下水学会事務局長)
3. プロジェクトリーダーご挨拶(産総研丸井地下水グループ長)
4. オブザーバーご挨拶(資源エネルギー庁弥富廃棄物等対策室長補佐)
5. 事業成果の説明(平成 23 年度成果報告書の説明)
6. 質疑応答
1) 海底下賦存地下水流動解析
平山委員:境界条件やパラメータの設定方法に関する質問と結果の見方・意義付けに関
するコメント
登坂委員:すべての領域を飽和として計算することに対するコメント(不飽和領域を設
けることの物理性)と初期条件(すべて塩水で飽和されたと考えること)に
ついてのコメント
平山委員:パラメータはより現実的な値で計算すべきとコメント
108
登坂委員:異方性を考慮すべきとのコメント
2)海上ボーリング調査実施に関する検討
平山委員:海上ボーリングの意味づけについて確認
登坂委員:桟橋で特許を取る、代船は使用後漁礁とするなどコメント
今村委員:杭打ち代船の利用についてのコメント
3)全体を通して
弥富氏:事業の展開を考えると海上ボーリングによる調査を事前にシミュレートする
ことは重要、社会的な問題等もあろうが、科学技術的な見地から調査をして
いただきたいとコメント
以上
109
(添付資料)会議写真
写真 1
報告状況①
写真 2
報告状況②
写真 3
報告状況③
110
111
委員A
委員B
委員C
委員D
長期的な海水準の影響を受けた沿岸域
の地下水の形成機構の解明に有用なシ
ミュレーションと掘削事業である。地層処
分の候補地においては、地下水の動向
の正確な予測は不可欠であり、本事業
の目的は妥当で、また、国の関与が必
要と考えられる。
地層処分の適地選定に当たり、地下水
流動に関わる評価・検討は、根幹となる
事項である。そのためのデータ取得とし
ての調査技術や、海域地下の地下水流
動の研究は、地層処分の適地選定に大
きく寄与するものと思われる。また、沿
岸域の地下水流動に繋がる、浅層を含
めた広域の水の流動を解明するもので
もあることから、地下水学あるいは水環
境学全般への波及効果も期待できる。
わが国だけでなく、海外での地下水関連
のプロジェクトにも資すべく、さらに研究
を深めていただきたい。
委員E
1 事業の目的・政策的位置づけの妥当性
肯定的意見
(1)国の「原子力政策大綱(平成17年10
月)」に示されたとおり、地層処分に関す
る技術開発のうち基盤研究開発につい
ては、国の事業として適当であり、国が
関与すべき事業である。地層処分事業
の最初の課題である地点選定を達成す
るためには、地質環境の調査・評価技
術が重要である。このうち、内陸部に関
する調査・評価技術については、これま
でJAEAを中心に、積極的な技術開発が
行われてきたが、有望な候補地の1つで
ある沿岸域に関する調査・評価技術に
ついては、あまり十分ではなかった。ま
た、事業者が示した研究開発ニーズに
も対応しており、本事業はニーズに合っ 基盤的技術開発事業であり、国が行う
ていると言える。本事業は個別の技術 べきものと考える
開発であり、原子力政策大綱に示され
た役割分担に従っており、適切である。
(2)本事業の目的は、地層処分技術の
信頼性向上に向けたものであり、原子
力政策大綱に示された方向性と合致し
ており、政策的位置づけは明確である。
沿岸海底下の調査・評価技術の開発に
ついては、これまで、十分に行われてい
ないので、先進性があると言える。本事
業で開発された技術については、地層
処分事業や規制での活用が期待される
ことから、社会的・経済的意義は大き
い。
海域地下の地下水の調査・解析手法に
関わる研究であり、沿岸域塩淡境界・断
層評価高度化開発に比べて、より基礎
的な研究に位置づけられると思われる。
沿岸域塩淡境界・断層評価高度化開発
との関係を明確にし、重複部分がある場
合は効率化を図ることが望ましい。
改善すべき点
2 研究開発等の目標の妥当性
肯定的意見
改善すべき点
(1)本事業では、物理探査と海上ボーリ
ングに関して、地層処分事業で必要とさ
れる技術レベルを目標として設定してお
り、適切かつ妥当である。指標について
は、指標が設定しにくい内容で、必ずし
も明確でないが、専門家によるレビュー
を受けており、十分である。
(2)幌延の沿岸域を研究対象としている
内容については、深地層施設で得られ
たデータ、知見を有効に活用して進めら
れており、適切かつ妥当な活用を行って
おり、実績もある。研究開発の実施に当
たっては、深地層施設の研究主体であ
るJAEAと緊密に連携を図っているととも
に、地元との協調も円滑である。
1. 沿岸海底下賦存地下水流動解析
は、動的境界にすることにより、現象の
説明が概ねよくできており、目標を達成
している。
2. 地下水年代の解析は面白い方法で
地層処分の適地選定において、沿岸域
あり、実際の地下水年代との比較や処
沿岸域地質構造評価技術開発の目標・ の地下水流動の把握のための、調査・
分環境の安定性の評価の上で有用な情
指標は明確です。
解析手法の研究であり、具体的な目標
報を与えている。
が設定されていると考える。
3. 海上ボーリング実施のための検討
については、工期・費用評価のための
FSと考えれば、おおむね目標水準を達
している。
海上ボーリングに関して、幌延の沿岸域
を研究対象とできなくなる可能性がある
との情報があり、その場合、深地層施設
との連携が十分に行われるのか懸念さ
れる。
研究対象とする場所が幌延とは違う場
所になっても、深地層施設で得られた知
見やデータの活用は可能であり、その
仕組みを構築していただきたい。
1. 不飽和・飽和流を取り扱っていない
ので、境界面の扱いや実際の計算結果
には、幾分疑問が残る。せっかく、良好
な解析結果が得られているので、信頼
性を増すためにも。不飽和領域の計算
もおこなっておいたらよいと思う。
2. 海上ボーリングについては、特にあ
りませんが、稼働率の推察が難しいの
で、処分評価等の大きな後れを招かな
いように慎重な検討が必要である。
得られた成果としては、沿岸域の物理探
査計画の立案手法、沿岸域の海底下水
理地質モデルの構築手法、地下水環境
の評価手法である。
得られた成果は、設定された目標に達し
ており妥当である。
1. 海底下の淡水域の評価を海水準変
動を考慮することによって、ほぼ定性
的、定量的に評価している。また地下水
地下水の数値解析には様々な曖昧さが
成果はまだ、preliminaryな段階で、今
地下水の研究については、3地域にお 滞留時間も深部においては、実測値と
あるが、自然の境界条件、初期条件、パ
後、より有益な成果が得られることが期 いて解析結果を提示しており、課題や今 整合的であり、今後処分環境の評価に
ラメータ設定など多少見直し、沿岸域・・
待される。
後の展開についても考察されている。
役立つ。論文発表すべきである。
の報告書と整合させてほしい
2. 海上ボーリング実施の工期・工程に
関するFSを実施した。
3 成果、目標の達成度の妥当性
肯定的意見
改善すべき点
目標以外の成果に付いては、確認して
いない。論文の発表、特許の出願、国際
標準の形成、プロトタイプの作製等につ
いても、確認していない。
海上掘削調査技術の開発に関しては費
用に対して十分な成果があるように、そ
の目的を十二分に吟味していただきた
い。現段階の計画より、より多くの目的
をもたせた掘削が可能のように感じまし
た。
中間報告段階でもあり、沿岸域塩淡境
界・断層評価高度化開発に比べて、図
表等に改善すべき点が散見された。こ
れらについては、本委員会の中で個別
に指摘している。最終報告書をとりまと
めるにあたり、誤解を招かないような図
表及び文章表現に、ブラッシュアップす
ることをお願いする。
4 事業化、波及効果についての妥当性
肯定的意見
改善すべき点
事業化に向けた技術移転等に関して、
評価委員会に事業者をメンバーに加え
ている事や事業者への報告書の提出等
を行っており、努力している。
地層処分のための基礎研究であり、将
来の事業化ための前段階として、本研
究の成果は妥当と判断する。また、従
来、定性的に評価されていた沿岸域の
地下水について、具体的な成果が得ら
れたことから、地下水学全般への波及
効果は大きい。
事業化に向けた技術移転等についての
方策は、上記だけでは十分でないので、
更なる具体的方策を構築すべきである。
地層処分に関わる事業工程の中で、本
研究が、どのような位置にあるのかが、
不明(工程について、本委員は十分に
理解していない点をご容赦願う)。事業
工程全体に対して、遅延を招かないか
を精査し、我が国のエネルギー政策に
支障がないよう、必要に応じて研究の速
度を上げる等の措置を講じていただきた
い。
5 研究開発マネジメント・体制・資金・費
用対効果等の妥当性
肯定的意見
改善すべき点
6 総合評価
(1)計画、スケジュール、実施者は妥当
である。
(2)事業体制、運営は適切かつ妥当で
ある。
(5)変化への対応は適切に行われてい 基本的にしっかりしたマネージメントがさ
る。
れていると感じた
(6)研究基盤整備も確実に行われてい
る。
(7)情報公開も適切に行われている。
資金配分、費用対効果については、判
断できるに足る十分な情報を得ていな
い。
所定の目標到達がなされており、研究
全体のマネジメントが適切に行われてい
ると考える。
今回、中間段階ではあるが、図表等に
改善すべき事項等が散見された。これら
は、個々の研究者の課題と考えられる。
当委員会が、各位の資質向上にも寄与
できれば、幸いである。
肯定的意見
本研究は、地層処分事業の喫緊の重要
なニーズ二適合しており、極めて有用で
ある。
十分に貢献しているとの印象を持った
成果に付いては、地層処分の技術開発
に大きく貢献すると期待される。
塩淡境界の移動は、沿岸域に処分地を
選んだ際には、物理化学環境が変化す
るので、その評価は非常に重要である。
本事業は研究として有用であり、地層処 今回の研究では、海底下の淡水域生成
分技術の開発に十分に貢献する内容及 のメカニズムを解析的に評価し、処分環
び成果と考える。今後、さらに研究を進 境の評価にとって有用であった。地下水
め、国内外の地層処分に寄与すること 年代(滞留時間)の解析も、処分地の評
を期待する。
価を行ううえで重要である。今後も信頼
性を増すために、不飽和流動の追加、
境界条件の取扱い等研究開発をすすめ
てほしい。
地層境界と流動場とは異なるとしている
が、はぎとり法では、地層境界でモデル
化している。また、透水係数等のパラ
もう一方の報告書との整合性を保つよう 2つの研究の関連性をより、明確にご説
メータが、モデルによって異なる点が
考慮してほしい
明いただきたかったです。
あった。研究全体の中で、各研究テーマ
の位置づけや、相互の関係について、
留意してほしい。
改善すべき点
7 今後の研究開発の方向性に関する提言
長期的な海水準の影響を受けた沿岸域
の地下水の形成機構の解明に有用なシ
ミュレーションと掘削事業である。地層処
分の候補地においては、地下水の動向
の正確な予測は不可欠であり、本事業
の目的は妥当で、今後、地層処分技術
の開発に貢献していると考えられる。
沿岸海底下の調査・評価技術について
は、これまで重要性が認識されてきた
が、原位置での実施はなかなか実現で
きなかった。このため、本研究の意義は
非常に高く、事業者からの期待も大きい
ので、今後とも、着実に推進していただ
きたい。研究開発の方向性としては、物 継続すべきと考える
理探査、海上ボーリングを最大限活用し
て、地下水のみにとらわれず、地質、地
質構造、地化学、力学等の地質環境の
評価・調査技術の全体を含む内容とな
ることが望ましい。
今後、2つの研究の関連性を明確にして
本研究を継続することにより、シミュレー
ションと野外調査が統合され、陸に近い
地層処分において有効かつ重要であ
海域における地下水の形成機構や動態
り、本研究の方向性を、大幅に変更する
が、より明らかになることが期待されま
必要はないと考える。
す。地層処分地の選定ばかりでなく、科
学的にも新規性のある有用な結果が得
られると考えられます。
8 個別研究テーマに関するコメント
海域地質構造探査技術(物理探査)
地質・地下水環境評価技術(地下水)
物理探査と連携した沿岸海底下の淡水
域の存在に関する研究成果は、画期的
であり、今後の事業に役立つと考えられ
る。海上ボーリングに向けた諸検討も順
調に進められている。
沿岸海底下については、データもなく、
技術的開発要素も多い。成果の一つ一 解析の設定に関して多少見直して良い
つが事業に役立つと考える。
報告書にしてほしい
第一段階の成果として、十分な結果が
得られています。シミュレーションに関し
ては浸透値など、パラメータの意味を吟
味し、精度をより上げていくことが望まれ
図表等について、改善点が散見された。
ます。
十分に実用化は可能と考える。
掘削技術に関しては費用に見合う成果
が得られるよう、位置や方法に関してさ
らなる吟味をお願いしたいです。
海域地質環境調査技術高度化開発
平成 23 年度成果報告書
平成 24 年 3 月 30 日
編著者
発行
丸井敦尚・内田利弘・小原直樹・伊藤成輝・越谷賢・
井川怜欧・上田匠・横田俊之・楠瀬勤一郎・町田功・
樽沢春菜・吉澤拓也・西崎聖史・古宇田亮一
(独立行政法人
発行者
独立行政法人
産業技術総合研究所)
産業技術総合研究所
地圏資源環境研究部門
発行所
独立行政法人
http://unit.aist.go.jp/georesenv/
産業技術総合研究所
〒305-8567 茨城県つくば市東 1-1-1 中央第7
電話
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産業技術総合研究所
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copyright AIST、 2004
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