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「大和証券グループ津波復興基金」 2009
公益信託アジア・コミュニティ・トラスト 「大和証券グループ津波復興基金」 2009-10 年度助成事業報告 2010 年 7 月 31 日 公益信託アジア・コミュニティ・トラスト事務局 (特定非営利活動法人アジア・コミュニティ・センター21) 公益信託アジア・コミュニティ・トラスト 「大和証券グループ津波復興基金」 2009-10 年度助成事業報告 (実施期間:2010 年 1 月∼2010 年 12 月) 目次 目次 1 「大和証券グループ津波復興基金」の概要と 2009-10 年度助成事業の概要 2-3 「大和証券グループ津波復興基金」2009-10 年度助成事業 各事業の報告 4-32 2009-10 年度助成プロジェクト一覧 5 交換レート表 6 津波の女性被害者の自立と開発プログラム (スリランカ) 7‐17 津波被害者の子どもを対象にした教育支援と精神ケア(インドネシア) 18‐26 被災した身体障がい者の若者、孤児の職業訓練と経済的自立支援事業(インド) 27‐32 地図 33-35 1 「大和証券グループ津波復興基金」の概要と 2009-10 年度助成事業の概要 2004 年 12 月 26 日にインドネシア・スマトラ島沖で発生した地震による津波被害地域におけ る救援・復興支援を目的として、公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(以下「ACT」とす る)内に設定された「大和証券グループ津波復興基金」の概要は次のとおりです。 1.「大和証券グループ津波復興基金」の概要 平成 17 年(2005 年)3 月 9 日 株式会社 大和証券グループ本社 金10,000,000円※ インドネシア、スリランカ、インドにおいてスマトラ沖地震被災地域におけ る社会生活の基盤の再建を長期的、継続的に支援するために以下の事業を行 う。 (1) 子どもの心のケア(保健医療) (2) 子どもに対する教育機会の提供(教育、青少年の健全育成) (3) マイクロファイナンス事業を通した経済・生活基盤の再建(社会開発) 特別基金受託者 住友信託銀行株式会社 ※ このうち、100 万円は、同基金の「特別寄附に関する契約書」第8条に基づき、調査費用(旅 費等現地実地調査費用、報告書作成費用を含む)として、ACT 事務局(アジア・コミュニテ ィ・センター21)に対して支払われた*。 設定日 寄付者 金額 事業内容 *2005 年度分は 2005 年 3 月、2006 年度分は 2006 年 3 月、 2007 年度分は 2007 年 3 月、2008 年度分は 2008 年 3 月、2009 年度分は 2009 年 3 月、2010 年度分は 2010 年 3 月に完了。 2.対象国と事業分野、2009 年度助成事業の該当分野 ※1 実施国 スリランカ インドネシア 実施団体 Wilpotha IPPA ACEH 子どもの心のケア ◎ 子どもの教育支援 ◎ マイクロファイナンス ◎ 助成額 242 万円 ※2 215 万円 ※3 大和証券基金からの 2009 年度助成総額:675 万円(3 件) インド SSSPT ○ ◎ 218 万円 ※4 ※1 上記 3 事業への助成は、2009 年 12 月 25 日開催の ACT 運営委員会において決定した。 各事業の実施期間(予定)は、スリランカ、インドネシア、インドの事業のいずれも 2010 年 1 月∼2010 年 12 月。 ※2 スリランカ事業助成決定額 242 万円のうち、分割送金額(第 1 回目)180 万円は 2010 年 3 月に送金した。第 2 回目 62 万円は 2010 年 8 月に送金予定。 ※3 インドネシア事業助成決定額 215 万円のうち、分割送金額(第 1 回目)166 万円は 2010 年 3 月に送金した。第 2 回目 89 万円は 2010 年 8 月に送金予定。なお、このほかに ACT 内特別基金「スマトラ地域日本・インドネシア友好基金」より 40 万円を助成する。 ※4 インド事業助成決定額 218 万円のうち、分割送金額(第 1 回目)140 万円は 2010 年 3 月 に送金した。第 2 回目 78 万円は 2009 年 8 月に送金予定。 2 3.2009-10 年度助成事業(実施期間 2010 年 1 月∼12 月)の概要 2010 年7月末現在、2009 年度助成金により 3 ヵ国(スリランカ、インドネシア、インドネシ ア)で以下の 3 事業が実施されています。 国 ス リ ラ ン カ イ ン ド ネ シ ア イ ン ド 事業名、実施団体名、実施地名 津波の女性被害者の自立と開発プログラム (5 年目) ウィルポタ女性貯蓄運動 ゴール県 実施期間 2010 年 1 月∼2010 年 12 月 津波被害者の子どもを対象にした教育支 援と精神ケア(5 年目) インドネシア家族計画協会(IPPA)アチェ 支部 アチェ・ブサール県ロク・ンガ地区 実施期間 2010 年 1 月∼2010 年 12 月 被災した身体障がい者の若者、孤児の職業訓 練と経済的自立支援事業 (新 3 年計画の 3 年目) 社会サービス養蚕プロジェクト・トラスト タミルナドゥ州ナガパッティナム県 実施期間 2010 年 1 月∼2010 年 12 月 事業概要 助成額 過去 4 年間に設立された女性組織 25 団体とそのメンバー計 813 人を対象 に、組織の法人化、管理者研修、技術 向上訓練、融資・貯蓄活動の推進、製 品の市場開拓、組織の政策提言活動 を支援する。 津波の被災地域に暮らす子どもを対 象に、住民ボランティアによる心理ケ ア、創造性開発活動、公立学校教師 を対象にした心理ケアワークショップ、 村の自立を目指した経済活動推進を 行う。 津波被災者の中でも支援が届きにく い、身体に障がいをもつ若者 80 人を 対象に、職業技術訓練(縫製、刺しゅ う)、零細規模融資の提供、医療機関 への照会などを行う。 242 万円 合計(3 ヵ国、計 3 件) 215 万円 ※1 218 万円 675 万円 ※1 同事業には、このほか ACT 内特別基金「スマトラ地域日本・インドネシア友好基金」より 40 万円を共同助成した。 事務局の事業モニタリングは 2010 年 6 月∼7 月に実施した。 3 2009−10 年度助成 津波復興事業 (実施期間:2010 年 1 月∼12 月) 各事業の報告 「津波の女性被害者の自立と開発プログラム」 (スリランカ) 「津波被害者の子どもを対象にした教育支援と精神ケア」 (インドネシア) 「被災した身体障がい者の若者、孤児の職業訓練と経済的自立支援事業」(インド) (事業の開始時期順) 4 公益信託 アジア・コミュニティ・トラスト スマトラ島沖地震・津波被災地復興支援事業 2009−10年度助成プロジェクト一覧(事業実施期間:2010 年 1 月∼12 月) 「大和証券グループ津波復興基金」からの助成額合計:675 万円 「スマトラ地域日本・インドネシア友好基金」からの助成額:40 万円 5 交換レート表 通貨名 日本円 US ドル US ドル USD.1=86.885 円 − スリランカルピー 1 円=1.2956 ルピー USD.1=LKR. 112.57 1 円=IDR. 103.4356 USD.1=IDR.8,987 INR.1=1.8664 円 USD.1=INR. 46.551 (LKR) インドネシアルピア (IDR / Rp.) インドルピー (INR / Rs.) 2010 年 7 月 29 日 のレート (情報: 「Bloomberg.co.jp マーケット・データ」) 6 2009-10 年度事業中間報告(実施期間 2010 年 1−12 月) 津波ACT1−2009-10 継続 大和証券グループ津波復興基金 分野:社会開発、青少年の育成 国名:スリランカ [事業名] 津波の女性被害者の自立と開発プログラム(5年目) [実施団体名] ウィルポタ女性貯蓄運動 (現地語および英語団体名称:Wilpotha Kantha Ithurum Parishramaya (Women’s Savings Effort, Wilpotha)) [実施期間] 2010 年 1 月∼2010 年 12 月 [実施国・地域] スリランカ民主社会主義共和国 南部州ゴール県 [受益者数] 女性 813 人(家族を含めると計約 4,065 人) (過去 4 年間に支援した 16 女性組織および別財源で支援した 9 女性組織) [事業予算額] 261 万円 [2009-10 年度助成額] 242 万円 事業概要 【事業の実施背景】 本事業は、津波に被災し、夫や家族を亡くし、一家の新しい担い手となっているスリラ ンカ南部州ゴール県の女性たちが新しい生計手段であるビジネスに関する技術を身につけ、 ビジネス資本を提供して生活を立て直し、自立した女性組織を設立することにより、女性 の経済的自立と相互扶助、生活、女性の権利、政策に関連する提言活動を行うことができ る環境をつくりだすことを目的に、2005 年度より開始された。 これまでに支援した世帯数(支援対象の女性の世帯数)は、初年度(2005 年8月∼2006 年7月実施)は 225 世帯、2 年目(2006 年 12 月∼2007 年 11 月)は初年度の受益者に加 え、新たに 200 世帯、3 年目(2008 年 1 月∼12 月)は 200 世帯、4 年目(2009 年 1 月∼ 12 月)は 115 世帯にのぼる。これらの受益者は、いずれも津波被災者用に新しく整備・建 設された再定住地域の住民である。 各組織では、組織ごとに管理している回転基金から提供する個人/グループ・ビジネスを 行うための融資、貯蓄活動を推進しており、毎月最低 1 回の会合を開催している。 <ACT 助成事業対象地域の女性組織の現在> 本事業を通じ、対象地域(3 地区)内で、計 17 の女性組織が設立されたが、うち 2 組織 が合併し(Jayasekarawatta と Godagama South)、2010 年 6 月末までに継続運営されて いる女性組織の数は 16 組織(ヒッカドゥワ地区 7 組織、アクメーマナ地区 5 組織、ハバラ ドゥワ地区 4 組織)、メンバー総数は 513 人*となった。 また、全 16 組織のグループ基金の貯金額(事業からの助成金を除くメンバーの貯金、メ ンバーの融資返済利子、グループ・ビジネスの一部収益など)は、合計で 3,262,540 ルピ ー(約 251.8 万円)となり、前年同月の 2,244,018 ルピー(約 173.2 万円)から 1,018,522 ルピー(約 78.6 万円)増えた(P.16 参照)。 *上下水道などが整備されていない高地に移住させられた、或いは遠隔地で子どもの教育や雇用の機会がないな どの理由で引っ越したメンバーがいるため、各年度の対象人数の合計より少ない人数となっている。 7 <過去に設立された女性組織の特徴> 本事業 4 年目(2009 年 1 月∼12 月)までに毎年新規の組織が設立されていくうちに、 さまざまな変化と発展があった。たとえば、1 年目、2 年目に設立された組織は個人ビジネ スへの融資・貯蓄が活動の中心となっていたが、3 年目以降に設立された組織のいくつかは、 グループ・ビジネス(祭事用調理器具やテント・椅子などの貸し出し、メンバーの商品を 販売する朝市を毎週主催など)や自治体と直接交渉し、コミュニティ・ホールを自立運営 できるよう働きかけ、住民のニーズに沿った橋の建設を訴え実現させるなど、地域の活性 化に大きく貢献するグループ・ビジネスを行うなど、組織としての活動がより活発化して いる。 <カナダ支援で設立された女性組織> このほか、実施団体の「ウィルポタ女性貯蓄運動」(WSE)では、2006∼2008 年に、カナダ国際 開発庁(CIDA)およびカナダ MATCH からの支援でヒッカドゥワ地区に計9つの女性組 織が設立され、2010 年 6 月末現在で、7 女性組織(設立された 9 組織のうち 2 組織は解散) 、 メンバー数 272 人、貯蓄額合計 896,242 ルピー(約 69.1 万円))となっている(P.17 参照) 。 なお、解散した 2 組織(Ranliya Kantha Samithiya―MPDL Monroviawatta および Diriya Kantha Samithiya−John Keels housing)は、それまでの預金と利子額をメンバーに分配 して残務整理を行ったうえで解散した。 <過去 4 年間の活動の結果、特定された問題と課題> 実施団体は、4 年目の中間期(2009 年 8∼9 月)に、各女性組織メンバーと評価を行った 結果、メンバーおよびグループのビジネス活動の質の向上、各女性組織の再活性化、組織 マネジメントの強化、組織の自立などの課題があげられ、さらに近い将来に組織が外部支 援なしに自立運営していくための活動が現在最も必要とされているという結論に達した。 その後、4 年目後半(2009 年 10∼12 月)には、女性組織についての情報収集を目的と した世帯調査が開始され、また将来有望で革新的なビジネスを行っている女性たちを特定 するため、ACT 支援事業でトレーニングを受けた受益者のビジネスについての情報収集が 行われた。 また、2010 年初頭にスリランカの法人組織法の独立した女性組織としてこれら設立され た女性組織を登録することを目指し、スリランカ法人組織法についての勉強会や組織運営 についての話し合いが各女性組織で行われた。その結果、2009 年 11 月末に次のような問 題が特定された。 特定された問題・課題 ニーズと問題 問題改善・解決のための対策と活動 No. 1. 基金額が不足しているために、メンバーに提供で 各女性組織に融資を提供(女性組織の融 きる融資が限られている回転基金がある。 資能力の向上)することでメンバーの個人 ビジネス支援を行う。 2. メンバーが生産した商品を販売できる安定した市 既存の市場に女性組織をつなげ、コヤ・ロ 場が確保されておらず、製品を仲買人に安く買い ープや食品加工品などの製品の市場開拓 (民間企業への紹介)をする。 叩かれがちである。 3. 女性組織が法人格をもっていないために、外部の 女性組織を独立した法人とするため、スリラ グループに取り込まれてしまうおそれがある(これ ンカ法人組織法下に、女性組織を登録す までに、いくつかの政府機関や NGO が、女性組 る。 織を取り組み、あたかも彼らが組織化したグルー プのように見せようとしたことがある)。 4. 法的基盤がないために、金融機関や支援グルー 銀行口座を開設し、地元で可能な金融機 プ、政府などから支援を受けられない。 関を女性組織に紹介する。また、その他の サービス・セクターにつなげる。 5. ほぼ全ての被災者に再建住居・土地の権利証が 組織としての政策提言およびロビー活動に 8 6. 7. 8. 9. 10. 11. 与えられていないため、無担保の状態である。 上下水道、道路など公共道路などのインフラ設備 が整っていない場所がある (飲料水パイプが通っ ていても、何日も配水されないことがある)。 多くの再定住地域ではコミュニティ・ホール(公民 館)が建設され、移住者に使用のために渡された ものの、いくつかの場所では自治体事務所が鍵を 保管しているために、コミュニティ会合を開くのに メンバーの住居を使わなければならないことがあ る。 津波の被災者が伝統的な村の真中に移住させら れた。地元の村の人々は新しく移住してきた人々 に嫌がらせをするなどして、対立が生まれている。 女性たちが非常に悪質な嫌がらせを受けたケー スもああり、彼女たちは当局に何度もうったえた が、対策がまったくとられていない。 学校建設が不足している地域があり、子どもたち を学校に通わせるために(津波被災前に住んで いた)以前の居住地域に戻らなければならなくな った。 適切なリーダーシップ技術や組織マネジメント技 術を身につけていない(組織運営ができるレベル までにはきたが、ほとんどの女性たちは組織を運 営・管理するのに慣れていない。津波に被災する 前は、彼女たちはこのような役割を果たす経験を したことがなく、日々の家事や生計を立てるための 仕事をしていたに過ぎなかった)。 女性組織の運営メンバーは十分な会計処理の知 識をもっていないため(ほとんどは中学卒業程度 の教育レベル)、法人組織法で義務とされている 会計帳簿処理の能力向上が必要である。 関するトレーニングを実施し、政策立案者 に問題の改善・解決をうったえられるように する。 女性組織のリーダーを対象に、リーダーシ ップ技術トレーニングを実施する。 簿記、帳簿付け、その他の会計処理、銀行 口座の管理方法などに関するトレーニング を実施する。 【事業の実施目的と目標】 これらの問題を解決するため、政策立案者や政府・自治体に対して、多くのサービスを受 けられるよう、そして社会的環境を変えるような政策提言活動が必要という結論に達した。 5 年目(2010 年 1∼12 月)は、過去 4 年間に ACT の支援で設立された 16 の女性組織と、 実施団体が 2006∼2008 年に別財源(カナダの CIDA および MATCH)により同じゴール県 内で設立した 7 組織の合計 23 組織を対象に、次の活動を実施する。 <長期達成目標> (2010-2014 年)23 の女性組織が自立し、社会経済的問題を解決するため の能力を向上させ、1 年内(2010 年内)に独立した法人組織を設立する。 2010 年 12 月までに各組織の基金が 75,000 ルピー(57,888 円)となる。 女性組織が他の女性たちを支援し、自立のための開発モデル実践する仲介支援を行う。 メンバーが安定した収入を得る生計向上活動を行い、より多くの利益を得る。 メンバーの貯金額が各人月 200 ルピー(154 円)以上になる。 ACT 支援の 16 女性組織のグループ基金が合計 224 万ルピー(約 172 万円)、ほか 7 組織が合計 93 万ルピー(約 71 万円)まで増加し、自立運営できるようになる。 9 <2010 年末までの達成目標> 1. 女性組織が独立した法人として社会に認知される。メンバーに対して開かれた法人と なり、法的に有効な定款を策定する。 2. 収入向上を促進するための十分な融資をメンバーが受け、収入レベルが向上する(メ ンバーの貯金額が増加し、融資返済率が 99%以上になる) 。 3. メンバーが質の高い製品(布地絵付け、製靴、その他の製造技術向上)とサービスを 提供し、民間の業者、市場につなげる(John Keels、Cargill、 や Hayleys Co. Ltd などの国内のスーパーマーケット・チェーンとの取引が実現する) 。 4. 女性組織が法人として正確な会計帳簿と記録をつける(毎年、決算報告書を法人登録 局に提出する) :運営管理者とメンバーを対象としたトレーニングと、簿記・会計トレ ーニング 5. メンバー間の団結が強化され、役割と責任を分担する。 6. 女性組織が共同で、生活環境改善と必要な設備、インフラ整備など、政策立案者に対 するロビー活動を行う。 :リーダーを対象にした政策提言およびロビー活動についての トレーニング 7. 組織リーダーが共同で活動をモニターして進捗状況を評価し、共に学びあい、運営を 改善し、女性組織が独立して運営されるようになるよう準備を行う。 8. メンバーによる内部評価を行い、女性組織が影響を受けている弱点やその他の問題が 特定され、解決される。 9. ゴール県内に女性組織 23 団体の上部団体が設立され、共に取り組む目標を設定する。 【事業の活動計画】 実施チームは次の内容で構成されている。 *シニア・プロジェクト・コーディネーター(1 名、事業全体の実施責任者) *フィールド・ファシリテーター(2 名、シニア・プロジェクト・コーディネーターを補佐) ―女性組織の中から選ばれる(期間:1 年間)。 WSE の CEO 兼シニア・プロジェクト・コーディネーター フィールド・コーディネーター フィールド・コーディネーター ボランタリー・リーダー(複数) ボランタリー・リーダー(複数) (各女性組織の運営管理者) (各女性組織の運営管理者) 【グループ1】女性組織 10 団体 【グループ 2】女性組織 13 団体 (Hikkaduwa 地区: ACT 支援 7 団体、 (Hikkaduwa 地区:過去カナダ支援 4 過去のカナダ支援 3 団体) 団体、Akmeemana 地区:ACT 支援 5) 、 Habaraduwa 地区:ACT 支援 4) 10 2010 年 1∼12 月の実施スケジュール (計画) 活動内容 No. 1. 期間 1 年間(2010 年) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 WSE スタッフおよびフィール ド・スタッフのオリエンテーシ ョン(役割・責任の明確化) 2. 女性組織の法人登録 3. 女性組織の融資能力強化を目的 とした女性組織へのローン提供 4. 5. メンバーのビジネス産品の市場 SY IY チェーンへのリンク B B ビジネス技術開発トレーニング の実施 6. 簿記トレーニングの実施 7. 書類棚の提供* 8. リーダーシップ・トレーニング 9. 提言活動、ロビー活動について のトレーニングの実施 10. 女性組織リーダーグループ会合 11. 内部評価 12. ゴール県内女性組織 25 団体の上 部組織設立と製品展示会の開催 ** *各女性組織で書類を保管するための書類棚 **メンバーの製品展示し、業者との取引機会を提供することを目的とした展示会を開催する 【これまでに実施した活動内容】 本年の活動の大きな柱は、全 23 女性組織の法人登録を行い、独立した法人として自立する ための運営・管理能力を向上させることである。そのために各組織の管理担当者(理事長、 事務局長、会計担当)を対象とした各種トレーニングを行うとともに、各組織共通の会計基 準に沿った帳簿フォーマットを決定し、各組織で導入が始まった。 対象地域住民で新規メンバーとして女性組織に入りたいという希望は多いが、ほとんどの 組織では今年の一般総会で、新規メンバーは入れないことを決定したため、メンバー数は昨 年とほぼ同じとなった。2010 年 6 月末現在の全 23 組織のメンバー総数は 799 人(うち ACT からの継続支援組織 527 人、カナダ支援完了組織 272 人)。 なおメンバーとなる主な条件は、①津波に被災した女性、②家族に稼ぎ手がおらず、収入 源がないこと。 女性組織の貯金・融資活動は、さらに発展している。ACT からの過去 4 年間の支援で設立 された 16 組織のメンバーによる貯金額の合計(*)は、2009 年 6 月末の 2,244,018 ルピー(約 173.2 万円)から 2010 年 6 月末現在で 3,262,540 ルピー(約 251.8 万円)に増加した。 カナダから過去に設立支援を受け、今年から本事業の支援対象として加わった 9 組織の貯 金額合計(*)は、931,225 ルピー(約 71.8 万円)であったが、うち 2 組織が解散したため、 2010 年 6 月末現在の合計額は 896,242 ルピー(約 69.17 万円)となった。 *本事業で支援した融資額を除く。 11 1. スタッフの役割・責任分担についてのオリエンテーション・ワークショップ コーディネーター3 名(シニア 1 名、フィールド担当 2 名)が、本年度事業開始前に準備 した活動計画について話し合いを行った。ゴール県を担当するコーディネーター補佐(研修 生)として選ばれたフィールド・ファシリテーター2 名の担当地域は以下のとおり。 Ms. Diana(グループ 1 担当):Hikkaduwa 地区 10 組織 (ACT 継続支援 7 組織、カナダ支援完了 3 組織) Ms. Malini(グループ 2 担当) :13 組織 (Hikkaduwa 地区:カナダ支援完了 4 組織、Akmeemana 地区:ACT 継続支援 5 組織、 Habaraduwa 地区:ACT 支援 4 組織) 2. 女性組織の法人登録 各女性組織の法人登録の準備は、当初想定したスケジュールよりも遅れている。登録申請 用書類の準備と署名をする者として選ばれた女性メンバーたちの中には、書類に個人の収入 や資産状況を記載することに漠然とした不安を抱えており、 「このプロセスはネガティブな影 響をもたらすものではない」と彼女たちに納得させるまでに時間と労力を要した。さらに、 女性組織の法人登録ができなくなるような誤った情報が女性メンバー間に流布するなど負の 影響を与えないよう、すべてのメンバーと会合を何回か持つ必要があった。 またこの間、ある女性組織のリーダーが、独立した法人組織として登録することを計画し ていると話したところ、登録申請はやめたほうが良いと言った銀行員が何人かいた。法人格 を持つことがその存在を確固たるものにし、法人として登録されれれば社会的認知度も向上 するということに対してもっと自信をもつようにする必要がある。 以上のような経緯で、法人登録申請に否定的になったメンバーを説得するのに 3 ヶ月近く がかかった。その後、申請書類をすべてそろえて提出した際、法人登録局がスリランカ中央 銀行発行の女性組織の預金残高証明書類書類を要求してきた。2010 年 6 月末現在、実施団体 (WSE)は中央銀行からの推薦状を取り付ける準備を進めている。さらに政府公認の監査人 が女性組織の銀行口座を監査することになっている。 今後の申請手続きは NGO 関係に詳しい現地の弁護士に依頼することになった。依頼先の 弁護士は通常費用の 5 分の 1 の値段(2,000 ルピー/組織 x 23 組織=46,000 ルピー(約 35,500 円))で行うことを約束し、費用は実施団体(ACT からの助成金)と各女性組織の折半で負 担する。 3. 女性組織のグループ基金強化を目的とした融資の提供 女性組織のグループ基金からメンバーへの融資能力を高めることを目的とした、組織への 融資。2010 年 6 月末までに、対象 23 組織中 8 組織(下記参照)に各 25,000 ルピー(約 19,300 円)、合計 32.5 万ルピー(約 25 万円)を融資した。融資を受けた組織は実施団体(WSE) に返済する。返済期間は 10 ヶ月間、は利子月利 6%である。 本事業よりグループ基金へ融資を受けたグループ(2010 年 1 月∼6 月) Hikkaduwa 地区 Samagi、Kantha Rekuma、Ekamuthu Prarthana、Pubudu、Maheema Akmeemana 地区 Eksath、Diriya、Haritha Kusum 、Tsunami Sinha Habaraduwa 地区 Pragathi、Sahana、Udara、Isuru 12 4. メンバーのビジネス産品の市場チェーンへのリンク この活動は女性組織が法人登録されるまで延期されることになった。当初計画では、法人 登録し、いくつかの市場チェーンにリンクさせることになっていた。女性組織が法人登録さ れたらすぐに、市場チェーンとの会合をもつ予定。 5. ビジネス技術開発トレーニング 専門家による指導で、以下の 7 種類の職業技術トレーニングを実施した。 1.製靴 (4 回実施:2010 年 3 月 11-12 日、6 月 13・20 日、6 月 8-9 日、6 月 14-15 日 参加者数合計 59 人) 2.線香製造 (2 回実施:2010 年 3 月 3 日、3 月 4 日 参加者数合計 35 人) 3.ソフト・トイ(布製ぬいぐるみ等)製造 (3 回実施:5 月 23 日、24 日、29-30 日 参加者数合計 51 人) 4.布地絵付け (3 回実施: 4 月 26-29 日、5 月 11-14 日、6 月 3-6 日、参加者数合計 52 人) 5.蚊帳づくり(1 回実施:6 月 29-30 日 参加者数 13 人) 6.美容技術(1 回実施 参加者数 5 人) 7.洋服・T シャツ製造(2 回実施:5 月 10・12 日、18・20 日 参加者数合計 24 人) 6. 簿記トレーニング 女性組織の事務局・監査担当者計 70 人を対象に、4ヶ所で簿記トレーニングを実施した。 女性組織事務局担当者の簿記トレーニング 概要 開催年月日、開催場所 参加者数 講師氏名 2010 年 2 月 20 日 Ms. Nirosha Sumudini 19 人 Daluwatumulla コミュニティ・センター 2010 年 3 月 14 日 Ms. Nirosha Sumudini 18 人 China Village コミュニティ・センター 2010 年 3 月 26 日 Monroviawatta House 20 人 Ms. Nirosha Sumudini 2010 年 2 月 3 日 Galagodawatta House 13 人 Ms. Nirosha Sumudini 7. 書類棚と帳簿の提供 (各女性組織で書類を保管するための書類棚) 全女性 23 組織のうち、22 組織にそれぞれ書類棚(費用は各組織と折半)と新しい会計基 準に沿った帳簿を提供した。1 組織(Samagi 女性組織:ヒッカドゥワ地区ダルワトゥムッラ 副地区)には書類棚が以前からあったため、帳簿のほかに会合時に必要な事務机・イスを購 入した。 8. リーダーシップ・トレーニング 各女性組織の事務局担当者を対象に実施。 開催年月日、開催場所 2010 年 5 月 22 日 Thelwatta コミュニティ・センター 2010 年 5 月 23 日 Harithagama コミュニティ・センター 参加者数 22 人 11 人 13 講師氏名 Upali Magedaragamage, (Sociologist, HRD trainer) Ms. Karunawathie Menike (WSE) Ms. Nirosha Sumudini 9. 政策提言、ロビー活動トレーニング 女性組織の法人登録申請を優先したため、この活動は延期されている。 10. 女性組織リーダーの会合 計 2 回(2010 年 4 月 1 日:58 人、2010 年 4 月 2 日:32 人)の各組織のリーダー合計 90 人を集めた会合を開催した。 また、この会合では法人化の重要性と申請プロセスについて十分な共通理解が得られなか ったため、翌月にさらに 2 回(2010 年 5 月 29 日:32 人、30 日:18 人)のワークショップ を開催した。 11. 内部評価 2010 年 6 月末までに 1 回の内部評価を行うはずであったが、法人登録申請活動を優先した ため、実施できなかった。県レベルの女性組織の法人登録が完了次第、予定していた 2 回を 1 回にまとめた評価活動を 2010 年末までに実施する予定。 12. ゴール県内女性組織 25 団体の上部組織設立と製品展示会の開催 (メンバーの製品を展示し、業者との取引機会を提供することを目的とした展示会の開催) この活動は下期(2010 年 7 月∼12 月)に実施する予定。 【実施期間中に直面した問題点と課題】 ①法人登録申請 法人登録申請書類がすべてそろった後、ある女性組織で当初申請者となっていた 8 人の 女性メンバーが、各自の個人資産と経済状況を記載した宣誓供述書の提出を求められたと ころ、個人情報が漏れて所得税などの税が別に課せられるのではないかといううことを恐 れ、申請に消極的になってしまった。実施団体は彼女たちが恐れているようなことは起こ らないと説得するのに時間がかかった。 また、女性組織リーダーの中には複雑なプロセスで、法的に縛られるソサエティ法下で の法人登録をする必要があるのかと銀行関係者から言われた者もいた。このことについて も実施団体では女性組織が法人格を取得することにより得る利益について説明した。 ほとんどの女性たちは教育を十分に受けておらず、法人化も法人運営の経験もまったく ないことから、なぜ組織が法人格をもつべきなのかを女性たちが理解し、説得することは 非常に難しかった。しかしこうした一連の出来事も、女性たちにとってある意味ではトレ ーニングとなった。 ②長雨と洪水 2010 年 5 月 14 日より、とくにスリランカ南西部において、局地的大雨によって 14 件 で洪水、地すべりが発生した。これにより 50 万人が被災し、17,000 人が避難、20 人が死 亡した。対象地域では Paraganwatta、Kathaluwa、Mirihanawatta、Koggala の各地区 の住民が床上浸水や地滑りなど被害を受けた。 14 ③津波警報 2010 年 6 月 12 日にマグニチュード 7.6 の地震があり、スリランカでは真夜中に津波警 報が発令された。事業関係者の現地への連絡で、ほとんどの住民が高地など安全な場所に 避難した。警報は 3 時間後に解除されたが、住民たちはその夜も次の日も精神的ショック を受けたため、次の日に予定されていたプログラムはキャンセルされた。 ④政府女性局からの圧力 スリランカ政府女性局が、ある女性組織に対し、女性局の指導監督のもとで組織の会計処理 をするようにと言われた。さらに組織の預金を引き出す際は、女性局の許可を求めよ、という ことであった。この要請に対し、実施団体(WSE)では法的根拠と女性組織の権利についての 会合を開き、その女性組織は女性局の要請を断った。 このように、女性組織を運営し、預金をもつことを奨励しない政府職員が多くいたが、政府 は独立した法人格を持つ女性組織の基金や活動をコントロールする権限はないという共通理 解を図った。 【実施団体代表者名】Ms. H.H.A.D. Karunawathie Menike, Chairperson / Project Coordinator 【実施団体・活動概要】農村開発と女性の自立と生計活動を行うスリランカの現地 NGO。1978 年設 立。団体の運営母体は執行委員会で、2 年に 1 回一般総会で選挙される。執行委員 7 名、スタッフ数 10 名。プロジェクト事業部、サービス事業部、女性銀行、トレーニング事業部、小規模事業部がある。 提携先は、 スリランカ全国 NGO 協議会(NNGOC)、 全国住民組織フォーラム(NFPO)、女性とメディア、ス リランカ(政府)女性局、スリランカ全国女性共同体、アジア開発文化フォーラム(ACFOD)、アジア文化開発 ネットワーク(ANCAD)。代表者は、アショカ財団フェロー(2004 年∼)、「女性の企業家最優秀大統領賞」を 受賞。 ◆モニタリング実施(2010 年 7 月) 過去の実施事業とパートナー(ドナー機関) 実施年 財源・パートナー 事業名 助成額 (スリランカ・ルピー) 2006-2007 安全な水と衛生 英国高等弁務官事務所 LKR. 3,490,750(約 270 万円) 2004-2005 農村水道供給事業 アジア開発銀行 LKR. 1,200,000(約 92 万円) 2004 AusAID(オーストラリア政 家をなくした女性の貧困 LKR. 2,286,988(約 176 万円) (2 年間) 削減 府海外援助プログラム) 2005-2006 乾燥地帯農業(3 年間) ケア(CARE) LKR. 1,423,000(約 109 万円) 2005-2007 平和・貧困削減(3 年間) CHA LKR. 650,000(約 50 万円) 2006-2007 MATCH International ( カ 津波被災者の生計復興 LKR. 3,571,260(約 275 万円) ナダ) 2006-2007 CIDA(カナダ) 津波被災者の生計復興 LKR. 6,102,100(約 470 万円) 2006 コミュニティ・ホール建設 UNDP LKR. 700,000(約 54 万円) 2007 小型タンク修繕 IUCN LKR. 2,048,194(約 158 万円) 2007 分解可能なかばん開発・ CEPA LKR. 337,000(約 26 万円) 環境保全 2007 村落コミュニティ開発 John Keels(企業 CSR) LKR. 837,600(約 64 万円) 2009 平和プログラム FLICT LKR. 633,363(約 48 万円) 2009 収入向上 IUCN LKR. 449,000(約 34 万円) 2009 コミュニティ開発 John Keels(企業 CSR) LKR. 140,553(約 10 万円) 15 【参考資料】女性組織の概要(2010 年 6 月末現在) ①ACT 支援により設立された女性組織の概要と貯蓄額 地区名 副地区名 No. (DS)* (GN Devision)* 1 Hikkaduwa 女性組織名称 設立年月 メンバー数 2009 年 6 月末 2010 年 6 月末 貯金額合計(*1) 貯金額合計(*1) (グループ基金) (グループ基金) 1. Daluwatumulla Samagi 2005 年 9 月 72 人 Rs.739,625 Rs.876,110 2. Thelwatte Kantha Rekuma 2005 年 12 月 32 人 Rs.238,189 Rs382,547 3. Godagama South Ekamuthu 2006 年 1 月 24 人 Rs.61,380 Rs.82,739 Prarthana 2 4. Ampitiyawatte Pubudu 2007 年 1 月 28 人 Rs.323,575 Rs.554,085 5. Godagama North Prapathi 2007 年 3 月 27 人 Rs.115,442 Rs.266,170 6. Kuruppukanda Samagi 2007 年 3 月 13 人 Rs.84,983 Rs.142,064 7. 48A, Thotawila – Sirikandurawatte Gam danawwa 2007 年 5 月 45 人 Rs. 81,160 Rs.94,760 Akmeem 1. Ihalagoda East – China Housing Eksath 2008 年 5 月 51 人 Rs.95,930 Rs.136,240 ana 2. Ihalagoda East Diriya 2008 年 4 月 42 人 Rs.308,300 Rs.355,805 3. Ankokkawila Pihillakanda Shakthi 2008 年 11 月 22 人 Rs. 23,024 Rs.48,250 4. Pilana – Haritah village Haritha Kusum 2008 年 11 月 35 人 Rs.48,400 Rs.74,150 5. Pilana – Sinha Samajaya –(Redcross) Tsunami Sinha 2008 年 11 月 21 人 Rs.37,560 Rs.49,650 1. Kathaluwa East Pragathi 2009 年 3 月 52 人 Sahana 2009 年 3 月 19 人 Rs.15,470 Rs.41,132 3. 114 A – Koggala Modaragoda Udara 2009 年 4 月 20 人 Rs.13,870 Rs.28,248 4.Wellathota -Paraganwatte Isuru 2009 年 6 月 24 人 Rs. 9,250 Rs.15,505 527 人 Rs.2,244,018 Rs.3,262,540 (約 173.2 万円) (約 251.8 万円) (*2) (*2) – Kadirgarmer Housing 3 Habarad uwa Rs,124,985 Mirihanawatte 2. Katahaluwa East Kabalana 合計 16 地区 16 組織 *1 貯蓄額には WSE が提供した融資額(ACT からの助成金)は含まれない。 *2 2010 年 7 月 29 日のレート:1 円=1.2956 スリランカ・ルピー。 * 行政区分。DS: Devisional Secretariat(県の下の行政区分)GN: Grama Niladhari Division (DS の下の行政区分) 。 16 CIDA および MATCH(以上カナダ)が支援した女性組織の概要(ゴール県、2006∼2008 年)*4 地区名 副地区名 女性組織名称 メンバー数 No. (DS)* (GN Devision)* 1 Hikkaduwa 2009 年 6 月末 2010 年 6 月末 貯金額合計(*5) 貯金額合計(*5) (グループ基金) (グループ基金) Surekum 32 人 Rs.72,350 Rs.89,178 Mallika 22 人 Rs. 59,500 Rs. 72,948 Vimukthi 40 人 Rs. 98,450 Rs. 118,970 Diriya 48 人 Rs.122,000 Rs.149,778 Ranliya 21 人(*7) Rs. 72,625 解散 6. Monroviawatta Kakukanda village Suhada 60 人 Rs.125,000 Rs.138,750 7. Monroviawatta GUS Housing Rantharu 40 人 Rs.118,300 Rs.126,000 Rs.83,000 解散 30 人 Rs.180,000 Rs.200,618 272 人 (解散前 310 人) Rs.931,225 Rs.896,242 (約 71.8 万円) (約 69.1 万円) (*6) (*6) 1. Galagodawatte Tobacco Housing 2. Galagodawatte Mallika Housing 3. Galagodawatte Irish Housing 4. Galagodawatte Salvation Housing 5. 49 B. Panwila Monrovia estate – PDL Housing 合計 17 人 8. John Keels Housing Diriya 9. Monroviawatta Minnesota Housing Sabashwari 9 地区 9 組織 (*7) *4 2008 年度で CIDA および MATCH からの支援は終了した。 *5 貯蓄額には実施団体(WSE)が提供した融資額(CIDA、MATCH Canada からの助成金)は含まれない。 *6 2010 年 7 月 29 日のレート:1 円=1.2956 スリランカ・ルピー。 *7 解散した「Diriya」組織のメンバー2 人は他の組織に移った。PDL Housing WO のメンバーの多くは、再建設住宅をリースして(2 人は売って)沿岸地域に戻っていったため、解散した。 2 組織のいずれも、これまでの貯金、グループ基金をメンバー間で等分して残余財産の整理を行ったうえで解散した。 * 行政区分。 DS: Devisional Secretariat(県の下の行政区分)GN: Grama Niladhari Division (DS の下の行政区分) 。 17 2009-10 年度事業中間報告(実施期間 2009 年 1−12 月) 津波ACT2−2009-10 継続 大和証券グループ津波復興基金 スマトラ地域日本・インドネシア友好基金 分野:教育、保健医療 国名:インドネシア [事業名]津波被害者の子どもを対象にした教育支援と精神ケア(5年目) インドネシア家族計画協会(IPPA)アチェ支部 [実施団体名] (英語名称:Indonesia Planned Parenthood Association (IPPA) Aceh) [実施期間] [実施国・地域] [受益者数] 2010 年 1 月∼2010 年 12 月 インドネシア共和国 ナングル・アチェ・ダルサラム州 アチェ・ブサール県 ロク・ンガ地区ヌサ村、プカン・バダ副地区 ヌサ村:子ども 180 人(特別なケアが必要な子ども 14 人を含む)、住民ボラン ティア 4 人 ロク・ンガ地区プカン・バダ副地区の公立学校 15 校 [2009-10 年度助成額] 255 万円 (大和証券グループ津波復興基金 215 万円、スマトラ地域日本・インドネシア友好基金 40 万円) 事業概要 【事業の実施背景】 本事業では、2009 年 12 月までの4年間、アチェ・ブサール県の北西に位置するロク・ン ガ(Lhok Nga)地区ヌサ村(Nusa)を拠点に、長年の紛争に加え、2004 年末に発生した 地震・津波に被災し、深刻な心の問題を抱える子どもたちのために、専門家の監督のもと、 訓練を受けた住民ボランティアが中心となり、子どもの日常的な心のケアのサービスを提 供するとともに、学習支援を行った。 実施 2 年目は、特定した 3 歳∼15 歳までの子ども 135 人の半数を対象とし、対象外の子 どもの一部は本事業での活動に一部参加したものの、個別のモニターは行われなかったこ とから、子どもの両親らはこの状況を憂慮し、自分たちの子どもも支援対象とするよう求 めていた。そこで、3 年目(2008 年 1∼12 月)は、支援対象者となる子どもの数を 135 人に 拡大し、発達状況に関するモニターと文書化を定期的に行うとともに、特に発達障害が深刻な 14 人の子どもには精神科医による指導を受けてきた住民ボランティアが中心となり心理ケア、 年齢と発達段階に応じた教育支援活動を行ってきた。 4 年目(2009 年 1∼12 月)は、ヌサ村での活動に加え、周辺地域に支援対象を拡大し、 プカン・バダ副地区の公立学校 10 校と連携し、教師を対象とした児童の心理テストとケア 活動に関するワークショップを開催した。 ヌサ村のほとんどの家庭では、いまだに安定した収入を得るべく奮闘しているものの、再 建された家で日常生活をおくっている。村は現在、新しく清潔な家と緑の稲田を通る舗装 された道路で、整然としており、一部の農民は、稲の栽培に再び取り組み始めている。 一方で、津波に被災した後、この村にも家の再建設や設備、現金など多くの支援が流れ込 んだが、貧困はまだ存在し、貧血や栄養不良に苦しむ女性や子どもが多くいる。本事業の 3 年目に行った女性の家計予算作成トレーニングでは、家計収入の運営と収入を増加させる 方法を見つけることの重要性についての意識を向上させた。 18 【5 年目の実施計画】 5 年目(2010 年1∼12 月)は、ヌサ村での活動でのほかに、深刻な津波被害を受けた地域 のひとつであるプカン・バダ副地区(Peukan Bada)の公立小学校 10 校の教師を対象とし たトレーニングを実施し、教師を通じて生徒のトラウマ的影響を治療するだけでなく、生徒 たちが直面している問題を教師が理解し、よいサポートの方法を学ぶことを目的とする。 子ども自身、両親、地域社会が、特定の問題と治療活動の両方を満たす子ども支援のアプ ローチに統合することにより、問題をより効果的に解決する。さらに、両親が家庭でどのよ うに子どもと接するか、また家庭への収入をどのように管理し、向上させるかについての知 識と理解を深めるような両親への支援も行う。また学校においては、より親しみやすいアプ ローチで児童を支援し、指導するための教師の能力向上活動を行う。 【事業の実施目的と目標】 <長期達成目標> (2010-2015 年) 本事業の活動が、地域社会により自主的に運営される。村コーディネーターをヌサ村住 民から選任し、村での活動を仲介することにより、村民が外部からの支援に依存する体質 を減らす努力をする。 ・ 地域固有の強みを見つけ出し、前向きな見通しがもてる経済活動を行うビジネス・ユニ ットなどの村社会の繁栄のための努力を行う。 ・ 事業実施地域の子どもに対する接し方や教育、ケアなどに関する行動変容が起き、より 良い状態になる。 ・ とくに Lhoknga および Peukan Bada 地区の教師の間に強い信頼関係と連携を構築 し、学校や周辺環境が責任を持って活動を継続する。 ・ 両親、地域社会、村民が本事業を支持し、積極的に参加し、外部の支援に依存せずに自 ら地域固有の強みを開発し、発展させるようになる。 実施団体の事業実施体制は、統括責任者 1 名(実施団体専務理事)、プロジェクト・マネジ ャー1 名、総務・会計担当 1 名、フィールド・スタッフ 2 名、プロジェクト・リーダー(事 業全体の助言・指導を行う外部専門家)1 名の、計 6 名で構成される。 受益者数の内訳 ①子ども: ヌサ村 ヌサ村の子どもの数はで、そのうち創造性開発活動に参加するのは特別な支援が必要 な子どもは 14 人(2010 年 6 月末現在)。村の住民組織「PAUD」が主導する創造性 開発活動には 50 人が登録され、うち 27 人が定期参加している(2010 年 1 月時点)。 特別なケアが必要な子ども 12 人に対して個別の心理ケア活動を行い、モニターする。 個別のケアとともに、2009 年 11 月から開始されている子どもの日記活動*を通じて、 過去に受けたトラウマ経験を特定、理解し、それが自分の生活にどのような影響を与 えているかを把握する。 *「Amnanesa ストーリー」とよばれる手法。幼少期、成長期の子どものセラピー治療の一環で、子ど もの洞察力、自身の認知を高める助けとなる。 プカン・バダ副地区の学校教師と児童 少なくとも 5 人の教師が各校から参加し、教師 1 人が 1 クラス 10∼30 人の児童を担 当する。 児童を支援し、ケア活動を行うのは 15 校。うち、2008 年から参加しているのは 5 校 (Lhoknga 高校、Lhoknga 中学校、Peukan Bada 中学校、ヌサ小学校、Nusa Al-Hidayatullah 幼稚園)。さらに小学校 10 校が 2009 年から参加している。 5 年目のトレーニングには小学校教師 60 人、Lhoknga 中学校教師 10 人、Lhoknga 高校教師 10 人が参加することを目標とする。 19 ②大人向け: ヌサ村で家計経済について学び、参加しているのは 20∼30 人。 コミュニティでの対話:対話に参加するのは村の中心人物 17 人。ヌサ村の世帯合計 数は、220 世帯。 2010 年 1∼12 月の実施スケジュール (計画) No. 活動内容 1 ヌサ村コーディネーターの採用 2 住民ボランティア・ワークショップ 3 ヌサ村の子どもの創造性開発活動 4 教師のワークショップ 5 教師のモニタリング・評価活動 6 有機肥料の製造トレーニング(ヌサ村) 7 「Honest Small Shop」の設置(ヌサ村) 8 ヌサ村住民の対話集会 9 ヌサ村ビジネス・ユニット支援活動 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 2010 年 6 7 月 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 (回転基金) 10 フィールド・スタッフのモニター・評価活 動 11 教師とのモニターとグループ・ディスカッ ション 【これまでに実施した活動内容】 2010 年の活動の柱は、①複雑な状況にある子どもたちについての知識や理解を深めるた めの能力向上(ヌサ村、Peukan Bada 副地区提携校)、②ヌサ村全体の財政状況を向上さ せるための住民組織を通じた世帯収入の向上活動など、地域との連携した活動である。 <ヌサ村> ヌサ村では、特別なケアが必要な子どもたちが日々の出来事や経験を日記につける活動 を通じて子ども 14 人の状況をモニター・ケアする活動を続けている。住民ボランティア 4 人が、14 人の子どもを分担し、日常的な会話、両親との面談、日記活動の推進、子どもの 記録、モニター活動を行っている。子どもたちは、2010 年より日々感じたことや出来事を 日記につけており、村のほかの子どもたちが自ら希望して参加するなど、活動が広まって いる。そのほか、住民ボランティアは、村内で自発的に設立された貯金・融資を目的とし た住民組織会合のファシリテーションを行っている。 <プカン・バダ副地区> プカン・バダ副地区(Peukan Bada)における活動は 2 年目に入った。本事業の支援対 象地としてこの地域を新たに加えた理由は、5 年前に起こった津波がいまだに学童に深い トラウマを残すなどの影響を与えているからである。2009 年、2010 年に実施した 10 校の 教師対象のワークショップ、その後のモニター・記録活動を通じ、多くの子どもたちが特 別のケアを必要としているという事実が認識された。 同地区で活動を始めた 2009 年、特別なケアが必要と特定された子どもの数は 5 校で合計 14 人であった。その後、継続ワークショップを実施した結果、2010 年に特定された子ど もの数は、5 校で合計 53 人に増加した。 20 特定された子どもたちの主な症状は、コミュニケーションが困難、読解力が低い、教師 の物まねをしたり、礼を失した態度をとる、同級生の邪魔をする、投石行動などである。 2010 年 6 月末までにトレーニングを受けた教師は 10 校の合計 33 人で、特別なケアが必 要であると特定された 53 人のうち、うち 21 人に対して集中的に教師がモニター活動を続 けている。これまでに実践しているケア方法は、ブレイン・ジム(左右の脳バランスを安 定させるエクササイズ) 、耳マッサージ、ホメオパシー(同毒療法)のほか、ボランティア の助けを借りて子どもたちの感情を表現させるなどの活動である。 1. 事業の情報共有・意見交換、ヌサ村コーディネーター、フィールド・スタッフの採用 2010 年 1 月に、実施団体スタッフ間で前年度事業の振り返りと 2010 年事業の活動内容に ついての情報共有および意見交換を目的とした会合を実施した。 またヌサ村住民ボランティアのなかから村コーディネーター(男性)を 1 名、フィールド・ スタッフ(2 名)のうち、新たに 1 名(ヌサ村住民ボランティア出身の女性)を採用した。 ヌサ村コーディネーターは他の住民ボランティアを指導し、ヌサ村での活動全体をコーデ ィネーションし、村での会合を含む子どものモニタリング活動など住民ボランティアや関連 グループとの連携を構築する。 フィールド・スタッフは、ヌサ村およびプカン・バダ副地区の提携校との連絡調整、子ど ものデータ収集、ケア、モニタリングの進捗確認、教師との会合などを担当する。 2. 事業の活動計画についての会合 2010 年 2 月に以下の活動を行った。 プカン・バダ副地区の小学校教師を対象にした継続ワークショップ、特別なケアを必要 とする子どもを担当する教師の月次会合、子どもの記録方法についての情報共有と意見 交換会合 ACT 助成期間における事業活動の情報共有、事業担当スタッフと実施団体との契約書案 の作成 ヌサ村住民ボランティア対象の 2010 年事業の情報共有・意見交換会合 ヌサ村およびプカン・バダ副地区の小学校 10 校の特別なケアが必要な子どものプロフィ ールと記録作成の方針策定 3. 子どもの創造性開発活動 2010 年 3∼6 月に、ヌサ村とプカン・バダ副地区の特別なケアが必要な子どもを対象にし た創造性開発活動では、10 代の子どもにはリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健 康)やジェンダー問題についての情報共有と意見交換を行った。 <ヌサ村> ヌサ村では、特別なケアを必要とする子どもたちが続けている日記活動では、子どもたち が毎日感じたことや経験したことを活字にして表現し、変化する日々の状況に自らを見つめ なおし、順応させていくとともに、お互いの感情を共有し、問題を軽減させている。 そのほか、村の青少年が主体的に運営する「Honest Smallshop(正直な小店舗)」の実施 計 画 に つい て 村コ ー ディ ネ ー ター と 子ど も たち に よ る検 討 会合 が 行わ れ た 。「 Honest Smallshop(正直な小店舗)」は、村の青少年が自ら商品の買い付け、販売、陳列などを行う。 住民ボランティアが子どもたちを信頼し、商品の売買における現金の支払い、釣り銭のやり とりなどを行わせ、モニターする。店舗運営により得られる利益は店舗の運営費に使われ、 回転させる。この活動を通じて、子どもたちに正直なふるまいを教え、不正直な行いや物を 盗むような行動を防ぐ。 21 店舗は多くの子どもたちが集まる「Alquran Reciting Room(TPA)」(コーラン朗読部屋) の近くに設置することを想定していたが、既存の店舗を活用する方法も検討されている。 <プカン・バダ副地区> リボンを使った造花や傘への刺繍(アチェでの伝統行事に使われる装飾)などの装飾活動。 4. ボランティア、教師対象ワークショップ 2010 年 2∼3 月に、ヌサ村とプカン・バダ副地区で開催するワークショップのスケジュー ル調整と参加者を確定し、2010 年 4 月 20 日、21 日に次の内容で開催した。 <ヌサ村> 住民ボランティアを対象とした能力向上ワークショップでは、各自がケアを担当する子ど もの支援、ケアの方法、子どもの年齢に応じた成長のフォローアップ方法について学ぶとと もに、特別なケアが必要な子どものモニター過程において住民ボランティアが直面した問題 の対処方法について話し合った。 <プカン・バダ副地区> 同地区の提携 10 校を対象としたワークショップは 2010 年も引き続き実施された。問題を 抱える子どもたちを適切な方向に導き、学業に専念できるようにするため、子どもたちが自 信を取り戻すためのカウンセリング方法について、集中訓練を行った。 またこのワークショップは、感情のコントロール方法やグループ・カウンセリングの方法 など、教師たち自身にとっても有用なものとなった。これまでに実施したワークショップの 結果、問題を抱えているのは子どもたちだけでなく、教師にもあるということが判明したた め、自ら被災した経験をもつ教師とその家族のための治療にもなりうるものとなった。ワー クショップには継続して子どものケアにあたってきた教師 33 人(下表参照)が参加した。 プカン・バダ副地区の対象学校概要とワークショップ参加者数 (児童数と教師数は 2009 年当時) No. 学校名* 児童数 教師数 「ワークショップ1」参加教師数 1 SD I Peukan Bada 158 18 4 2 SD II peukan bada 102 10 1 3 SD Lamge-ue 80 13 3 4 SD lamteh 20 10 3 5 SD Lam Isek 26 7 3 6 SD Lambaro Nidjid 141 15 2 7 SD Lam Awe 17 6 4 8 MIN Lamteungoh 30 11 5 9 MIN Lampisang 92 16 3 10 MIN Peukan Bada 96 17 5 10 校 762 名 *SD=小学校、MIN=イスラム教系小学校 123 名 33 名 5. モニタリングと評価活動 <ヌサ村> 特別ケアが必要な子どものモニターと記録の確認は、ヌサ村住民ボランティアにより定期 実施されている。 <プカン・バダ副地区> 22 2010 年 6 月 9 日に、開催。特別なケアが必要な子どもの記録、モニターを積極的に行って いる教師 32 人が参加した。会合では、子どもの成長・発展状況、教師が直面している問題な ど、それぞれが最新の情報を持ち寄って情報・経験を共有するとともに、子どものに関連す る学習プロセスの方法について教育現場で実践するかについて話し合った。 このほか、ロク・ンガ中学校・高校の教師が特定した子どもの記録方法についての質疑応 答を目的とした会合も 2010 年 6 月に開催した。 <精神科医によるモニター活動> 精神科医(Dr. Ruhil Zahrina)が、2010 年 4 月 22 日にプカン・バダ副地区の 4 校を訪問 してモニターを行った。 訪問校は Lam Awe 小学校、、Lam Siek 小学校、、 Lampageu 小学校、 、 Peukan Bada 第1小学校。 ヌサ村では、子どもの日記活動による子どもの発育状況確認、子どもが日常生活で感じた ことを記録できる方法について指導することを目的とした評価会合を 2010 年 4 月 22 日に実 施した。 <実施団体による定期モニター、評価活動> ヌサ村住民ボランティアが担当する子どもの発育状況のモニターおよび日記活動の支 援についての会合を毎週実施。 ヌサ村コーディネーターによる住民ボランティアの支援活動:2009 年 11 月の住民会 合のフォローアップ(家庭菜園活動、天然薬草の活用など) 。 事業指導監督者によるモニター・評価活動 2010 年 6 月 8∼11 日の 4 日間に、次の活動を行った。 実施団体スタッフとの会合 Lamgeue 小学校訪問。ホメオパシー(同毒療法)についての説明(2010 年 4 月に訪問 した精神科医の指導で、特別ケアが必要な子どもへの同療法の必要性を提案されたた め。) 子どものケアとモニター・記録を続けているプカン・バダ副地区対象校の教師との会合 ロク・ンガ中学校・高校の訪問とワークショップ参加教師へのインタビュー ヌサ村とプカン・バダ副地区の活動で直面した問題について話し合うことを目的とした 実施団体スタッフとの会合 ヌサ村の特別なケアが必要な子どもとの会合 これまでに実施した活動についての意見交換と評価 6. ヌサ村の住民対話集会と貯金・融資活動を行う住民組織の設立 住民の日常生活やその過程で直面した問題について話し合った 2009 年 11 月の会合とその 後の進捗を確認・評価することを目的に、ヌサ村の女性住民を対象に 2010 年 4 月 27∼29 日 に開催した。 この対話集会で、多くの住民が家内制手工業(テンペ・チップス、キャッサバ・チップス、 ケーキの製造、ゴミのリサイクル、など)を行っているが、限られた資金で個人的に行って いるため、収入が十分でないときはビジネス活動を中止し、余裕資金があるときに行うとい う状態であることが分かった。 このため、各自が行っているビジネスを共同で行い、ビジネス資本をメンバーに提供する ため、村の女性たちの主導で貯金・融資活動を行う住民組織「Phonna Sapeu Pakat」が設 立された。現在のメンバー数は 23 人。 この組織はメンバーが運営し、必要に応じて本事業実施団体の(IPPA ACEH)が側面支援 する。本事業で確保されている予算は、住民組織に直接提供するのではなく、住民組織の基 金がメンバーからの貯金と融資返済利子収入などである程度確立し、組織が適切な形で運営 23 されてから支援金として提供する予定である。 これまでの何度もの住民組織との会合での話し合いに基づき、次のような内容で運営され ることが同意された: ・ メンバーの当初出資金は 10 万ルピア(約 966 円)/人で、3 回に分割して支払う。 ・ 義務貯金額は 5 万ルピア(約 482 円)/人。 ・ ボランティア貯金はメンバー各自の支払い能力に応じて行う。 ・ 組織の規定、融資メカニズム、組織図、貯金・融資の帳簿は組織メンバーが策定・運営・ 管理する。 【実施団体の自己評価】 <ヌサ村> ① 特別なケアが必要な子どもたちが 2010 年より日記活動を開始し、現在も継続している。 子どもたちは日常的に日記をつけることに楽しみを発見し、仲間と内容を共有したがる ようになった(他の子どもたちも参加するようになった)。 また、子どもたちは、村に 移住してきた新しい住民や訪問者と親しく接するようになっている。 ② 以前は、本事業では子どもたちを支援「対象」としてとらえていたが、現在では、子ど も共同運営店舗のアイデアなど、子どもが自ら計画段階から参加するようになっている。 ③ ある男子は、以前に本事業で複雑な心理状況で特別なケアが必要であると特定されたが (現在は Lhoknga 小学校に在籍) 、現在では唐辛子の栽培を始めるなど、積極的な改善 を見せている。このような行動の変化によって、子どもたちが家庭を助ける家族の一員 となっていくことが期待される。また、この男子は Bukittinggi の有機農業ワークショ ップにも参加したため、将来的にヌサ村で農法の実践をし、普及していくことも期待さ れている。 ④ ヌサ村の住民対話集会では、家計収支の安定化が主な議題となり、その結果を受けて貯 金・融資組合が設立されるなど、住民が主体的に活動を行うという積極的姿勢が強化さ れている。 このほかにも、意見交換の結果、庭を家庭菜園や薬草の栽培などに活用していないこと に気づいた住民たちが、自助努力で作物の種、肥料などを近隣住民で助け合って調達す る活動が始まった。さらに、 (津波後放置されていた)農場を回復させて、家計支出を軽 減させるアイデアが住民から提案され、同意を得た。自家栽培することで家庭食料を調 達することで、貯金にまわし、それが子どもたちの教育や発展に活用することができる。 このように、住民が自らの能力改善を図り、村を自分たちの手で運営・発展させること ができるという意識を啓発されたことで、家庭経済も向上させることができる。 ⑤ 本事業で継続実施している村の子どもたちとの会合や支援活動が両親の理解・協力を得 られており、活動に自ら参加し、自分の子どもについて相談に来る親たちがいる。ある 親は夜尿症に悩む娘の(Putri という 9 歳女子)ためにホメオパシー薬を希望した。以上 のことから、子どもを支援する本事業の活動の重要性と活動から得られる利益を認識し ていることがわかった。 <プカン・バダ副地区> ① 学校教師がワークショップでトレーニングを受けたの結果、特別なケアが必要な子ども を特定し、ケアを実践できるようになった。教師たちは日常的に授業前や、生徒の集中 力が散漫になったときにブレイン・ジムなどを行っている。 ② 教師によるモニターとケア活動の結果を受け、ホメオパシー薬(「Ignatia」および 「Chalifos」)を提供した結果、Lamsiek 小学校の特別なケアが必要な子どもたちの症状 が、行動や学業成績の向上などの面で、大幅に改善された。 ③ 2010 年の活動の結果、同地区で特別なケアが必要と特定された子どもの数は 53 人にの ぼり、2009 年に特定された 14 人から大幅に増加した。これらは学校教師と、学校を訪 24 問し観察・診断した精神科医によって特定・収集されたものである。その後の子どもの 観察記録はワークショップ参加教師(とくに担任教師)と実施団体スタッフの側面支援 により、継続的に行われている。 【実施期間中に直面した問題と改善法、今後の見通し】 <ヌサ村> ① これまで支援してきた子どもたちの中で、10 代に成長した子どもたちは学校内外の活 動が忙しくなるなどでモニターすることが難しくなってきている。思春期に入った子 どもの何人かは日常生活について住民ボランティアから聞かれ、モニターされること を避けるようになった。 ⇒改善案: 10 代に成長した特別ケアが必要な子どもたちには新しい性格が表れている。こうした 子どもたちのニーズは変化しているため、年齢の低い子どもたちとは分けて集中してケア を行う。また、共同店舗活動など、子どもが自ら責任を与えられ活動を運営していくなど の方法をとる。 ケアを受け成長した子どもたちが、将来的に村のボランティアとなり、ケアが必要な他 の子どもたちを特定し、モニターする活動に参加していくことを期待している。彼らのも つ自己体験と知識は必ずモニターに役立つ。 ② ケアが必要な子どもの両親が発育状況をモニターすることができるよう、トレーニン グを提供する。 <プカン・バダ副地区> ① 多くの教師が他の学校に異動したため、担当していた子どものモニター活動を続ける ことが困難になった。 ② 何人かの子どもが転校したことによりモニターとケア活動に支障が出た。たとえば、 Lamsiek 小学校で特定されたある児童は Peukan Bada 第 1 小学校に転校したため、 それまでの担当教師がモニターすることが難しくなってしまい、また転校先の担任教 師はワークショップに参加したことがないため、モニターすることが困難となった。 ③ これまで積極的にモニターとケア活動に参加していた教師たちが、教師数が不足して いるという理由で学校長から理解を得られず、実施許可を受けられないということが あった。 ⇒改善案: トレーニングを受けた教師たちが、特別なケアが必要な児童の特定と記録活動にこれま で以上に積極的に参加することが求められる。学校長が反対し、実施に困難が見られる場 合は、積極的に参加したい教師を本事業のボランティアとして採用し、モニタリング・プ ロセスに参加してもらうことも検討する。 ④ 実施団体スタッフと Rezky 医師(本事業指導監督者)が、ホメオパシー(同毒療法) の効能と、提供の仕方を教師と両親に細かく説明したにも関わらず、数校の教師は実 践することにためらっている。 ⑤ 忙しく、他に優先する仕事があるという理由で、子どもの発育状況について記録を定 期的につけていない教師が数人いる。そのため、フィールド・スタッフが教師から聞 き取り、代わりに記録をつけている。 ⑥ 自分たちの子どもが特別なケアが必要であるとみなされたくないため、子どものモニ タリングをやめるように言ってきた両親がいた。 ⑦ 子どもたちがより良い教育環境で成長できるよう、両親と学校教師との間に連携体制 を確立する。 25 【団体代表者名】Dr. H. Abdul Wahab (支部理事長)、(支部事務局長は Ms. Asmawati Achmad) 【団体・活動概要】 インドネシア家族計画協会(Indonesian Planned Parenthood Association (IPPA))は、多くの女性が出産 時に新生児とともに死亡するなど、当時の女性(妊婦)の健康状態を憂慮した産科医/婦人科医、宗教 指導者、弁護士、ソーシャル・ワーカーなどにより、1957 年 12 月 23 日にジャカルタに設立された NGO。 IPPA アチェ支部は 1967 年設立。IPPA は国際家族計画連盟のメンバーで、本部はジャカルタ。各州レベ ル(アチェを含む 26 支部)と県レベルに支部がある。 現在まで、IPPA では継続的にリプロダクティブ・ヘルス・サービス、家族計画プログラムやその他の社会 問題についての情報普及を行い、人々をエンパワーするプログラムを通じ、人道的活動を行っている。 1967 年の第 1 回大会において、IPPA はインドネシア政府に対して人口問題と家族計画問題に取り組 む特別機関の設立を提案した。1968 年にはインドネシア政府が LKKBN を設立し、後の 1970 年に BKKBN(全国調整機関:The National Coordinating Board)に改称された。 IPPA アチェ支部では、以下のような活動を行っている。IPPA アチェ支部の執行理事会(任期 2004 年 ∼2007 年)は、理事アドバイザー5 名、理事 10 名で構成。事務局スタッフ数 6 名。 * 青少年情報・サービスセンターの運営(リプロダクティブ・ヘルス、性病、HIV/エイズ、麻薬などの情報 提供) * リプロダクティブ・ヘルス・サービス(情報ネットワークの構築と女性特に母親を対象にしたサービスの 提供) * 女性のエンパワメント(経済活動、ジェンダーの平等と構成、リプロダクティブ・ヘルス、就学前教育に 関する家庭(女性とその配偶者)の強化) * その他の人道的活動(人道支、モバイル保健情報の提供・サービス。他機関と連携) ◆モニタリング実施(2010 年 7 月) 過去の実施事業とパートナー(ドナー機関) 実施年 財源・パートナー 事業名 助成額 (インドネシア・ルピア) 2005-2007 バンダ・アチェにおける緊急 大韓民国政府 Rp. 296,697,800 救援(IRH) (約 286 万円) 2006-2007* ベルマーク財団 アチェ・ブサール県奨学金 Rp. 108,060,000 提供 (約 104 万円) リプロダクティブ・ヘルス情報 2007 International Rescue Rp. 236,905,000 普及 Committee (IRC) (約 229 万円) 2007-2008 妊娠中絶に関わる保健サー フォード財団 Rp. 235,000,000 ** ビスの提供 (約 227 万円) *2008 年∼2009 年も実施 **2009 年も実施 ほか、2007∼2012 年 国際家族計画連盟(International Planned Parenthood Federation : IPPF/本部・ロンドン) 26 2009-10 年度事業中間報告(実施期間 2010 年 1−12 月) 津波ACT3−2009-10 継続 大和証券グループ津波復興基金 分野:教育、社会開発 国名:インド [事業名] 被災した身体障がい者の若者、孤児の職業訓練と経済的自立支援事業 (新3年計画の3年目) [実施団体名] 社会サービス養蚕プロジェクト・トラスト (現地語名称:Social Service Sericulture Project (SSSP) Trust) [実施期間] 2010 年 1 月∼2010 年 12 月 [実施国・地域] インド タミルナドゥ州ナガパッティナム県 [受益者数] 80 人(主に、津波で被災した身体障がいを持つ若者) [年間予算総額] 255.3 万円(1,357,650 インド・ルピー) [2009-10 年度助成額] 218 万円 【事業の実施背景】 タミルナドゥ州ナガパッティナム県の津波による死亡者数は、11,324 人にのぼった。 インドの津波被災地域(沿岸部)での復興事業は、住居建設、漁業再開、ボートの修繕・ 提供、収入創出、子どもの教育支援、被災者の若者を対象とした職業訓練、水・衛生プロ グラムの実施、漁業コミュニティの女性への零細融資、家族や親族を亡くした被災者への 心理カウンセリング等、政府や海外援助機関から資金援助を受けて行うというのが主体で あった。 ナガパッティナム県リハビリテーション・センター担当者によると、県内で登録済みの 障がい者数は 18,000 人いるという。障がい者障がいをもつ若者はハンディキャップをも つために、漁業や魚介類を販売することはできない。そして、読み書きができないものは、 コンピューター・ソフトウェアなどの技術習得は難しい。このように支援対象からはずさ れがちな若者に目を向け、経済的自立をはかる支援によって他人への依存度を軽減しつつ、 若者たちが将来直面する問題に対処できるよう、自信を備えることが必要である。 初年度(2005 年 12 月∼2006 年 11 月)は 75 人の若者を対象にロウソクづくり、ジュ ート製かばんの製造、貝製小物の製造についての職業技術訓練を実施し、2 年度(2007 年 1 月∼2007 年 12 月)は、48 人を対象に縫製、コンピューター教育、ロウソクづくり の技術訓練を実施した*。 職業訓練の開始前には意識啓発トレーニングを行い、同じ境遇と問題を抱える仲間とと もに学び合うことで、自宅に閉じこもりがちで、将来に大きな不安を抱えている若者たち の将来的な自立に向けての自信回復・向上を促進した。さらに、若者たちが自治体や政府 による障がい者対象プログラム(職業訓練、公営バスの無料定期券、45 歳以上の障がい 者年金受給資格など)から将来的に支援を受けられるようにするため、参加者全員に ID カードを発行した。 *農村地域向上・エンパワメント・トラスト(TRUE、本部トリチー県)が実施。 新 3 年計画の 1 年目(2008 年 9 月∼12 月)は、社会サービス養蚕プロジェクト・トラ スト(SSSPT)が引き継ぎ、前年度からの継続受益者 36 人、新規受益者 44 人の計 80 人を対象に、技術トレーニング(コンピューター基本操作、縫製、刺しゅう、ロウソクづ くり)を実施したほか、受益者が行うさまざまなビジネスへの零細規模融資を 77 人に対 して行った。 27 【5 年目の実施計画】 本事業は 35 歳までの年齢グループの中から職業技術訓練を受けた人々が、持続的な収 入を得て、家族の負担となり続けるのではなく、両親を助けることができるようになるよ う、彼らの能力を改善するために行う。 5 年目(2010 年 1 月∼12 月)の受益者 80 人は、意識啓発トレーニング、キャリア・ ガイダンス、カウンセリング、仕立てと刺繍などの技術訓練を受ける。さらに、過去 2 年度で設定された回転基金から小規模店舗、花、果物、野菜販売、小麦粉挽き・販売など のビジネスを開始するための融資を提供する。 また、受益者を政府や関係機関によるサービスに適切にリンクさせ、無料のバス定期券 やその他のサービスを自治体から受ける仲介を行い、彼らの生活が改善され、持続的にな るようにする。 【事業の実施目的と目標】 <実施内容と目的> 1. 職業技術訓練を通じて障がいをもつ被災者の若者の能力を向上させる。 2. 意識啓発、キャリア・ガイダンス、カウンセリングを行い、彼らの精神的な恐れ を取り除く。 3. 近隣に住む受益者の家族が自助グループを組織化することにより、マイクロ・ク レジットや貯蓄環境などの経済的支援を通じた生計向上を推進する。 4. 障がい者に健康管理、医療支援を提供する。必要に応じて、専門医の診療を受け られるようにする。 <長期達成目標> 2015 年 12 月末までの 7 年間に、合計で少なくとも 580 人(今回の受益者数 80 人、 以降年間新規受益者数 100 人)の受益者が持続可能な収入を得て威厳ある人生をおく ることができるようにする。 受益者の内訳 5 年目(2010 年 1 月∼12 月)の対象者は 80 人(前年度からの継続 40 人、新規 40 人を想定) 意識啓発と組み合わせた職業訓練およびキャリア・ガイダンス、カウンセリング対象者:60 人 生計開発活動のためのマイクロ・クレジット提供(前年度の受益者 60 名および新規 20 人) 実施体制 プロジェクト・ディレクター オフィス・アシスタント 1 名 (トレーニング、総務担当) プロジェクト・コーディネーター 1名 フィールド・オーガナイザー/マ イクロ・クレジット監督者 1 名 アシスタント 1 名 技術訓練講師 2 名 その他活動実施チーム 28 【5 年目の実施計画】(2010 年1月∼12 月) 本事業は、津波の被害を受けたナガパッティナム県内の障がい者 80 人(前年度からの 継続 40 人、新規 40 人を想定)を対象に、職業技術訓練と零細規模融資の提供する。融資 を受けた受益者は、雑貨店、花・果物・野菜の販売、粉挽きと小麦粉販売、果物・野菜・ 花の移動販売、量り売り、カゴ製作・販売、自転車修理、コヤ・ロープ製造・販売、軽食 製造・販売、そのほかコンピューター・オペレーター、タイピスト、縫製、刺しゅうなど の専門技術職など収入向上ビジネスを開始する。 また、彼らがもっている精神的な恐れや自信のなさを取り除くための意識啓発ワークシ ョップを実施する。さらに、訓練を受けた職業技術に付加価値をつける技術向上訓練、自 営ビジネスなどについてのキャリア・ガイダンスなどを行う。 受益者が自営ビジネスを開始するにあたり、彼らが返済することができる零細規模の融 資をソフト・ローン(長期低利貸付)として提供する。融資にあたっては、定期的なモニ タリングと技術およびマーケットへのリンケージを行う。 受益者が融資額の 50%を返済したのち、商業銀行の融資サービスを受けられるように する。また、45 歳以下に毎月給付される年金を含む、タミルナドゥ州や中央政府による 様々な復興支援サービスと合わせた支援を行うことにより、高利貸しからの借金をせずに 家族が日々の生活苦から抜け出し、適度な生活をおくることができるようにする。 2010 年 1∼12 月の実施スケジュール (計画) No. 活動内容 1月 2 基礎調査、事務所の整備 1. 職業技術訓練(縫製、刺しゅう訓 2. 練)、意識啓発、キャリア・ガイ ダンスの実施 回転基金からの融資 3. モニタリング・評価 4. 2010 年 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 【これまでに実施した活動内容】 1.基礎調査、事務所の整備 支援対象者の基礎調査を行い、80 人を本年度の受益者として選定する。選定基準は、 ナガパッティナム周辺の津波被災地域に住み被災した 15∼40 歳の者(35 歳としていたが、 40 歳に引き上げた)。継続受益者については、過去の受益者リストとプロフィールをもと に、対象としてふさわしい成果をあげている者を選ぶ。 本年は、対象地域をより遠くの海岸沿いの地区に広げ、受益者選定を目的とした基礎調 査の実施、データ収集を行った(2009 年 12 月∼2010 年 2 月)。 調査にあたったのは次の 4 名。 1. Mr.Pandian 、2. Ms.Benitta 、3. Ms.Vijayalakshmi、4. Ms.Nalayini 調査チームは合計 287 世帯を訪問調査し、うち本事業の受益者としてまず 54 人を選定 した(受益者リストは添付資料参照) 。選定基準は、15∼40 歳の海岸沿いに居住する身体 障がい者で、政府より障がい者認定カードの交付を受けた者。少なくとも、受益者の 90% が津波の直接被災者。本事業の回転基金から融資を受け、収入向上活動を積極的に行う意 思がある者。 29 2.職業技術向上訓練、意識啓発ワークショップ、キャリア・ガイダンス 技術訓練後にすぐにビジネスを始めることができる縫製、刺しゅう技術訓練を行う。 技術訓練と平行して、参加する若者の精神的不安を取り除き、やる気と自信を持たせる 意識啓発トレーニングやキャリア・ガイダンス、カウンセリング(就職指導・相談)を行 った。 これまでの実施過程で、事務所併設のトレーニング・センターに通うことが困難な受益者が多 いことが課題であったため、受講生の自宅から近い場所にトレーニング・センターを開設すること にした。2010 年 4 月からトレーニング実施地の選定を開始し、事務所に併設されているトレーニ ング・センターのほか、2010 年 5 月 16 日と 18 日に計 2 ヶ所のトレーニング場を開設した。 トレーニング受講者として 30 人を選定し、うち 2 人を除いた全員がこの技術トレーニ ングを受けて同様のビジネスを開始している。なお、昨年度に縫製訓練を受けた受益者は、 今回刺繍トレーニングを、昨年刺しゅう訓練を受けた者は縫製トレーニングを受けている。 <受講生の選定基準> 15∼40 歳で、少なくとも 6 ヶ月間技術トレーニングを受け、その後に収入向上を目的として同様 のビジネスを行う意思がある者。 <トレーニングの実施期間> 2010 年 5 月∼12 月 <訓練補助費の提供> 訓練生には補助費として 20 ルピー/人・日を支給。 <融資> 縫製・刺繍ビジネス開始資本として、回転基金より各自 1 万ルピーを融資した。 (1) ナガパッティナム地区トレーニング・センター(事務所併設のセンター) 講師:Ms.Prameela (昨年のトレーニング講師。ナガパティナム県政府より縫製・刺繍訓練講 師として資格証を受けている。) トレーニング時間:月∼金曜日の午前 10 時∼午後 1 時 (2) Kameswaram 地区トレーニング・センター 講師:Ms.S.Vimala(縫製、刺繍の経験豊富) トレーニング時間:月∼金曜日の午後 2 時∼5 時半 (3) Seruthur 地区トレーニング・センター 講師:Ms. K.Selvi(縫製、刺繍の経験豊富) トレーニング時間:月∼金曜日の午後 2 時∼5 時半 3.ビジネス開始のための融資提供 ビジネス開始・継続支援をすることを目的に、本年度は過去に ACT からの支援で設定され た回転基金から零細規模融資を提供する。 選定基準は、①15∼40 歳の海岸沿いに居住する身体障がい者で、政府より障がい者認定カ ードの交付を受けた者、②本事業の回転基金から融資を受け、自営で収入向上のためのビジ ネスを行う者、③女性を優先対象。 事業開始時期に融資対象として選定した 54 人に対し、一人あたり 8,000∼15,000 ルピ ー(約 14,930∼28,000 円)、合計で 548,000 ルピー(約 102 万円)を回転基金から融 資した。 54 人のうち、22 人が前年度からの受益者で、残りの 32 人が今年から新規対象となっ た。21 人が男性で、33 人が女性。 融資期間は、15 ヶ月。第 1 期の融資提供者は 2010 年 6 月∼2011 年 9 月の間に返済予 定。第 2 期の融資提供者は、2010 年 7 月∼2011 年 10 月の間に返済予定。 全受益者が融資および利子額を返済した後の基金額は、合計で 637,080 ルピー(約 119 万円)となる予定(利子収入合計 74,160 ルピー(約 13.8 万円) 。うち 50%にあたる 37,080 ルピー(約 6.9 万円)が管理費となる予定) 30 4. その他支援 本事業の進捗状況については、ナガパッティナム県庁担当職員からの要請で、毎週 2 回、 本事業スタッフが県リハビリテーション・オフィスに赴き、情報共有(および県の障がい者 支援プログラムの情報収集)を行っている。 ・ 【実施団体の自己評価】 ・ 本事業の活動は予定どおり順調に実施し、成果をあげている。刺しゅうおよび縫製技術 トレーニングを受けた受益者たちは、縫製ビジネスを開始し、家計を助けるような生計 活動を行っている。 ・ 本事業の活動は、実施対象地の身体障がい者のリハビリテーションという政府の社会福 祉サービスを補完している。 ・ 残りの 26 人の受益者については、2010 年 8 月末までに特定し、支援を実施する予定で ある。 【実施期間中に直面した問題、今後の見通し】 直面した問題 1. ACT が求める受益者の選定基準を厳密に実行して受益者を特定することが難しかった。 目標対象者数(80 人)を達成するため、対象区域を海岸沿いの広い範囲まで広げた。 受益者は各地に散らばっており、政府や他の助成機関から(返済義務のない)助成金を 受けることができるスキームが多く、利子返済を求める本事業の融資プログラムに対し て、ローンでなく、返済しなくてもよい助成金にしてほしいと要請する者もいた。 2. また、受益者の交通事情を鑑みて、それぞれ 10 ㎞近く離れた場所に、 (縫製、刺しゅう の)トレーニング・センター2 ヶ所を開設しなければならなかった。 問題への対処 タミルナドゥ州政府による、障がい者を対象にした民間銀行との連携による支援スキーム は、生計開発、教育、技術トレーニングなど数多くある。したがって、障がい者支援に取 り組む NGO にとって、同様の内容で活動を行うことは、現実的に実行可能であるとはい えない。今後は、マーケティングの可能性が高い業種でのある種の生産ユニットを設立す ることが、対象地域の受益者の確固たる開発のために適切な代替手段であると考えている。 【実施団体代表者名】Mr. A.Joseph Selvaraj, Chairperson Mr. V. Venugopal, Executive Truestee 【実施団体・活動概要】 社会サービス養蚕プロジェクト・トラスト(現地語名称:Social Service Sericulture Project (SSSP) Trust)は、1995 年に設立された非営利団体(法人格は「Public Charitable Trust(公益信託*)」)。タミル ナドゥ州ディンディグル県(Dindigul District)に本部を置く。カースト制度、宗教、人種の差別なく、社会の 主流から取り残され、虐げられた人々や民族の利益のための総合農村開発プロジェクトを実施している。 社会的弱者、とくに農村地域の女性を対象に、農民グループ、自助グループ(SHG)、女性グループな どの組織化を行い、有機農業、ミミズ堆肥製造(月産 12 トン)、養蚕など収入向上に結び付く持続可能な 農業の推進を行っている。 *インドの「公益信託」(Charitable Trust)は、所得税局(Income Tax Department)の認可を得て設立され、 (公益信託自身の)税金の支払額控除のほか、寄付者は課税所得額から公益信託への寄付額を差し引く ことができる。 ◆モニタリング実施(2010 年 6 月) 31 過去の実施事業とパートナー(ドナー機関) 実施年 ドナー機関名 事業名 2004-2007 カリタス・スウェー デン カリタス・フィンラ ンド インド政府バイオ テクノロジー局 ディンディガル県 Authoor 地区の女 性 450 人の持続可能な収入向上 飲料水供給と公衆トイレ設置によるコ ミュニティ・ベースの渇水緊急救援 総合生命工学アプローチを通じた持 続可能な養蚕による女性の収入向上 Manos Unidas (スペイン) カリタス・フィンラ ンド 農民レベルの持続可能な農村技術 による総合有機農業の普及 持続可能性と環境保護を目的とした 生命工学アプローチを採用した農民 の技術向上 2005-2006 2008-2010 2007-2009 2008-2010 32 事業実施 期間 4 年間 1 年間 3 年間 3 年間 3 年間 助成額 (インドルピー) Rs. 6,030,054 (約 1,125 万円) Rs. 1,869,245 (約 348 万円) Rs. 1,696,000 (約 316 万円) Rs. 2,431,650 (約 453 万円) Rs. 3,560,570 (約 664 万円) 地図 33 スリランカ インドネシア 34 インド 35 スリランカ「津波の女性被害者の自立と開発プログラム」 (5 年目:実施期間 2010 年 1 月∼12 月) 活動のようす 製靴トレーニングは計 4 回実施され、計 59 人が参加した(2010 年 3 月、6 月) 蚊帳づくりの方法についての職業技術トレーニング(13 ソフト・トイ(布製ぬいぐるみ等)製造トレーニングは 人参加、2010 年 6 月) 2010 年 5 月に計 3 回実施し、51 人が参加した 23 女性組織の事務局担当者計 33 人を対象に実施したリーダーシップ・トレーニング(2010 年 5 月) 女性組織の法人化についての会合のようす(4 月) 。メニケ 4 月の法人化会合の後、不明点、疑問点について質疑応答 氏の話に聞き入る参加者(2 ヶ所で計 90 人が参加) のためのワークショップを 5 月に再度開催した ハバラドゥワ地区の「サハナ」グループの事務所前(メン 「サハナ」グループ(09 年 3 月設立)のリーダー(中央) バー自宅に併設) 。すべての組織に看板が掲げられている とメンバー(計 19 名) 帳簿を見る河口 CSR 室長(左、2010 年 7 月) 。全女性 ドアマットを編むメンバー。Rs.50∼60/枚(販売額) 。1 組織で新会計基準での統一フォームを使用している 枚作るのに、1.5(上級者)∼4 時間かかる 「プラガシ」グループ(09 年 3 月設立、52 人)のメン 夫(56 歳無職) 、1 人息子(5 歳)の家族の稼ぎ手として バーは 2 万ルピーの融資を受け唐辛子粉砕機を購入。河口 縫製とケーキ製造を生業とする女性 室長のスイッチでこの日初めて運転を開始した ターメリック(Rs.650/袋) 、チリ(Rs.500)などスパイ ミサンガ(腕輪)を編む「イスル」グループ(09 年 6 月 ス小売。3 人息子(漁業)を女手ひとつで育てた 設立、24 人)メンバー。約 50 円/本。12 通りある インドネシア「津波被害者の子どもを対象にした教育支援と精神ケア」 (5 年目:実施期間 2010 年 1 月∼12 月)活動のようす Lam Awe 小学校の特別なケアが必要な男子児童と話す 「ブレイン・ジム」 (左右の脳バランスをとるエクササイ 精神科医のルヒル・ザーリナ氏(右) ズ)をする小学生たち ジャカルタの NGO 関係者をファシリテーターに招き、開催したヌサ村の住民対話集会(2010 年 4 月) 。これが契機と なり、貯金・融資活動を行う住民組織が設立された アチェ伝統の傘の刺繍づくりに励む小学 6 年生女子 プカン・バダ副地区の 10 校教師による四半期会合 教師会合で児童への接し方について話す教師たち ケアが必要な子どもをケア・モニターする教師の記録 ヌサ村担当コーディネーター(中央)のファシリテーショ ンで子どもたちがつけている日記を朗読する Lam Geue 小学校の子どもに話しかける精神科医のルヒ ル女史(右から 2 番目) 。津波で肉親を亡くし、親の再婚 等家族関係の変化が子どもに影響しているケースも多い プカン・バダ第 1 小学校の 3 年生女子(10 歳)は日雇い労働者の父母と4人のきょうだいで、川沿いの貧しい地域に住 んでいる。 「b」と「d」の見分けがつかないなど読み書きができなかったが教師の個人指導で兄弟の名前が書けるように Lam Isek 小学校教師(右)に療法について説明するプロ ヌサ村で開催した 10 代の子どもを対象にした生殖とジ ジェクト・マネジャー(左) ェンダーについてのワークショップの様子 2010 年 4 月 20 日、21 日に開催したプカン・バダ副地区の教師 33 人が参加。自ら被災した経験をもつ教師とその家 族のための治療にもなりうるものということが理解され、自らも体験を思い出して教師たちが涙する場面もあった インド「被災した身体障がい者の若者、孤児の職業訓練と経済的自立支援事業」 (新 3 年計画の 3 年目:実施期間 2010 年 1 月∼12 月)活動のようす 2010 年は、ナガパッティナムの海岸沿い地域 3 カ所(赤 2010 年 6 月 25 日開催した受益者約 40 人との会合では 丸部分)を中心に、受益者を特定した 受益者から融資スキームについて提案があった Kameswaram 地区トレーニング・センター開所式(5 2010 年 12 月までの 6 ヶ月間、平日午後 2 時∼5 時半 月中旬) 。中央左は実施団体理事長のジョセフ神父 に縫製と刺繍の技術訓練を受ける女性たち Seruthur 地区トレーニング・センター。講師は本事業か 事務所が併設されているナガパティナム市内のトレーニン ら融資を受けている Selvi さん(左から 2 番目) グ・センターでの訓練のようす 2010 年 6 月までに 54 人を特定した。融資提供前に本 2010 年 6 月の ACT 事務局によるモニタリングではほと 人と保証人となる家族と契約を交わす んどの受益者の自宅を訪問した サムスルキプリヤさんは昨年の融資で大型調理器具貸し出しのビジネスを、今年の融資では新たに縫製ビジネスを始めた。 チュリダール(右上写真の赤い服)は刺しゅう入りで 1 枚 60 ルピー(約 110 円)で販売。現在 4 枚注文を受けている 初年度から参加しているチャンドラさんは調理中の火傷により障がいを負い、数度の手術を乗り越えた。母親と魚の販売を しながら、縫製技術を習得しビジネスを始めた。複雑なパターン入りのサリーの上着は 80 ルピー(150 円)で売れる 融資平均額1万ルピー(約 1.8 万円) 。受益者の希望によ 働き者のパンディアンさんは移動販売から自分の店を市場 り返済期間は 1 年間から 15 ヶ月に延長された に持つまでになった。利益は 1 日 100∼250 ルピー 今年から参加したカンナンさんは朝7時から夜10時まで エジルクマールさん(25 歳)は津波で家を失った。セメ 店をほぼ1人で切り盛りしている。日収は 100 ルピー ント塀・タイル製造を家族と営んでいる。 「障がい者を 10 ∼15 人雇用できるようになりたい」と語った