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(2.渓流釣り編)(ページ49~64)(PDF形式 5625 キロバイト)
49 【遊漁期間】 第一章 特に定められている魚種 ★にじます・いわな・やまめ 釣りを楽しむみなさんへ 自 然 の 中 で 楽 し め る こ と に 渓 流 釣 り の 醍 醐 味 が あ り ま す 。ル ー ル を 守 り 、自 然 の め ぐ み に 感 謝 し な が ら 、安 全 に 釣 り を 楽 し ん で く だ さ い 。 佐梨川流域 4/1~ 9/30 ま で 奥只見地域 4/21~ 9/30 ま で ★こい・ふな 6/10~ 6/20 以 外 の 期 間 ★うぐい 釣りに関するルール 佐梨川や奥只見地域の魚は、魚沼漁協協同組合が稚魚や卵を放流し たり、流域の環境を整えたりすることで維持されています。 佐梨川流域 5/11~ 5/20 以 外 の 期 間 奥只見地域 5/25~ 5/31 以 外 の 期 間 ★かじか 4/10~ 5/10 以 外 の 期 間 このため、この地域で釣りをするには、漁協等で決められた釣りに 関するルールを守る必要があります。 【禁漁区間】 また、この地域には個人や企業の土地も含まれています。現地の立 奥只見地域 北ノ又川「石抱橋」から上流全域 て看板や所有者の注意に従って行動してください。 【危険立入禁止区域】 【遊漁料】 奥只見地域 奥 只 見 湖 ダ ム 堰 堤 上 流 500m 釣りをするには遊漁料が必要です。近くのコンビニや釣具店、釣り 奥 只 見 湖 南 沢 取 水 路 注 水 口 の 中 心 か ら 半 径 50m 宿、魚沼漁業協同組合等で遊漁券を購入の上、釣りをお楽しみくださ ※その他 奥只見ダム堰堤下流の只見川の定められた箇所 い。現地で監視員から購入する場合は加算されます。 【釣った魚のリリース】 小さな魚はリリースしてください。リリース対象は次のとおりです。 遊漁料 地域 佐梨川流域 1 日券 2,100 円 ( 1,050 円 ) 年券 9,000 円 奥只見地域 1,050 円 ( 525 円 ) 4,725 円 対象魚種 こ い 、ふ な 、う ぐ い 、に じ ま す 、 いわな、やまめ、うなぎ、 かじか こ い 、ふ な 、う ぐ い 、に じ ま す 、 いわな、やまめ、わかさぎ ★いわな・やまめ・にじます・こい ★ふな・うぐい ★かじか 全 長 15cm 以 下 全 長 7cm 以 下 全 長 6cm 以 下 【詳しくは・・・お問い合わせ先】 ※ 2008 年 現 在 。( 金 額 ) は 、 現 地 購 入 の 場 合 の 加 算 額 。 な お 、 小 中 学 生 は 無 料 で す 。 ※遊漁に使用できる道具は、竿かヤスです。ただし、ヤスはかじかに限ります。 50 魚沼漁業協同組合 電 話 ( 025) 792-0261 〒 946-0021 新 潟 県 魚 沼 市 佐 梨 1105-16 安全のルール 【基本的事項】 安全に関する基本的な事項は、このガイドの「川あそび編 【動植物の採取は原則禁止です】 第一章 川 あ そ び の 前 に 」( p.2 - 5) を ご 一 読 く だ さ い 。 こ の 地 域 の 大 部 分 は 、越 後 三 山 只 見 国 定 公 園 内 に 含 ま れ て い ま す 。こ の ため、動植物の採取は原則禁止です。 【胴長には注意】 毎年、全国各地で釣りによる死者が出ています。その原因は様々で す が 、川 に 流 さ れ て 上 が っ て こ ら れ な く な っ た ケ ー ス が 多 く あ り ま す 。 胴 長 を 着 用 し て い る 渓 流 釣 り の 人 を 見 か け ま す が 、川 の 中 で 転 倒 す る と 、胴 長 の 中 に 水 が 入 り 込 み 、そ の 重 み で 浮 き 上 が れ な く な り ま す 。 このため、できるだけウエットスーツなどの着用をおすすめします。 自然へのルール 大自然のめぐみに感謝して、つつましく釣りを楽しみましょう。 釣った魚のお持ち帰りは ほどほどに・・・。 【ゴミを持ち帰りましょう】 特に、釣り糸や釣り針は、川に暮らす生き物だけではなく、川遊び を楽しむ人たちにとっても脅威になります。 【車でのマナー】 車のアイドリングは控えましょう。 ま た 、車 の ク ラ ク シ ョ ン や ラ イ ト に 敏 感 な 野 生 動 物( イ ヌ ワ シ な ど ) が 生 息 し て い る 地 域 で す 。こ れ ら の 生 き 物 の 生 息 環 境 を 脅 か す こ と の ないように、十分に注意してください。 51 (p.56) 第二章 渓流釣り事情 佐梨川 (p.57) (p.58) (p.55) 佐梨川は、越後三山の一つ駒ケ 岳 に 源 が あ り ま す 。 長 さ は 約 18km 佐 梨 川 のなかで、比 較 的 簡 単 に 釣 りができる場 所 を、「やさしいおすすめ釣 り場 」 として、P.55-58 に詳 しい地 図 を掲 載 しました。 で、途中、桑ノ木沢、道行沢、長 瀬沢、灰の又川、栃尾又川、折立 又 川 、芋 川 沢 な ど の 支 流 を あ わ せ 、 魚野川に合流します。 魚野川では、アユ釣りの光景が よく見られますが、佐梨川とその 支流では、イワナやヤマメを対象 とした渓流釣りが盛んに行なわれ ています。佐梨川は、岩壁に挟ま れた渓谷の区間が長いため、川へ の出入りや川の中での遡行が難し い川です。このような困難を乗り 越えて釣れたときの喜びはまた格 別といえましょう。 52 佐梨川本流 宇 津 野 堰 堤 上 流( お す す め 釣 場 2 ) 東湯之谷小学校の近くにあ 佐梨川は、渓谷が深く、所々にダムや堰堤があるために、下流から る 堰 堤 か ら 、上 流 200m ほ ど の 上流まで通しで遡行することは困難です。ある区間を遡行しては、一 区間がポイントとして知られ 旦川を出て、また別の区間で遡行、という釣りになります。佐梨川で て い ま す 。堰 堤 下 の 淵 に は 小 型 は餌釣りが主流ですが、ルアーやフライフィッシングもできます。 の イ ワ ナ が い ま す 。堰 堤 か ら 上 渓 流 釣 り が よ く 行 な わ れ て い る 区 間 に つ い て 紹 介 し ま す 。こ の 中 で 、 流 で は 、 ま れ に 40cm ほ ど の イ 比 較 的 簡 単 に 釣 り が で き る 4 か 所 に つ い て は 、「 や さ し い お す す め 釣 ワナが釣れることもあるよう り 場 」 と し て 、 p.55-58 に 詳 し い 地 図 を 掲 載 し た の で 、 参 考 に し て く です。 ださい。 栄橋上流(おすすめ釣場3) 湯之谷発電所ダム下流 下 折 立 の 栄 橋 か ら 、上 流 300 発 電 所 あ た り か ら 、ダ ム の 下 m ほ ど の 区 間 で す 。こ こ は 、川 流 ま で の 約 1 km の 区 間 で す 。 に 比 較 的 入 り や す い の で 、釣 人 渓 谷 が 深 い で す が 、崖 を 無 理 や も多くいます。 り 上 り 下 り し な が ら 、遡 行 し ま す 。イ ワ ナ や ニ ジ マ ス な ど が 釣 れ 、 ま れ に 50cm ク ラ ス の イ ワ 上折立から大湯橋 ここは上級者向けの区間と ナ も 釣 れ る こ と が あ る よ う で す 。特 に 解 禁 後 の 春 に は 県 内 外 か ら の 釣 い え ま す 。渓 谷 が 狭 く 深 く な っ 人がみられます。 て い る 場 所 が あ る た め 、泳 い だ り 、崖 を 上 っ た り 下 り た り し な 白山大橋上流(おすすめ釣場1) け れ ば な ら ず 、よ ほ ど の 慣 れ た 白 山 大 橋 か ら 上 流 300m ほ ど 人 以 外 は 危 険 で す 。こ の よ う な の 区 間 が 狙 い 目 で す 。川 幅 が 広 困 難 な 場 所 で あ る た め に 、魚 は く 、バ ッ ク ス ペ ー ス が 取 れ る の 大 き く 数 も 出 ま す 。イ ワ ナ や ヤ で 、フ ラ イ フ ィ ッ シ ン グ も で き マ メ 、時 に は 魚 の つ か み 取 り で ま す 。イ ワ ナ 、ヤ マ メ は 、大 き 逃げ出したニジマスも釣れる な も の は 釣 れ ま せ ん が 、数 は な よ う で す 。ル ア ー や 餌 釣 り が 主 かなかでます。 流です。 53 佐梨川支流 大湯温泉脇(おすすめ釣場4) 大 湯 公 園 か ら 温 泉 街 の「 あ わ せ 湯 橋 」 付 近 ま で の 約 300 支 流 で は 、折 立 又 川 、長 瀬 沢 、栃 尾 又 川 な ど が 人 気 の よ う で す 。い ず れ m の 区 間 で す 。温 泉 街 の 脇 で も 沢 沿 い に 林 道 が あ り 、ア ク セ ス の よ い 川 と い え ま す 。堰 堤 の 下 な ど も 狙 す が 、意 外 と 数 が 多 く 、時 に い目になっています。 は 30cm く ら い の イ ワ ナ も 釣 れ ま す 。川 に 入 り や す く 釣 り や す い 区 間 な の で 、初 心 者 や 女 性 に 最 適 で す 。な お 、温 泉 街の饅頭屋の「若松屋」さんでは、無料で渓流釣りの道具を貸し出し てくれます。初めての方も、手ぶらできた方も、気軽に釣りを楽しむ ことができます。 (要確認、若松屋 025-795-2535) 折立又川 長瀬沢 54 やさしい おすすめ釣り場 1 白山大橋上流 DATA 特徴: 川幅が広く、バックスペースが取れるので、フライフィッ シングに向いている。数もそこそこ釣れる。 対象魚種: イワナ、ヤマメ ②白山大橋から上流 ①白山大橋から下流 ③猿跳橋下流右岸から下流 白山大橋 蓑和田河川公園 ③ W.C P 佐梨川 ④ ① ② ④猿跳橋下流右岸から上流 W.C W.C P ① トイレ 駐車場 写真撮影位置 お食事・お土産 「心亭」 ※トイレ、駐車場使用 の場合はお店に許可 を得てください。 国道352号 川に入りやすい場所 P 猿跳橋 0 50 250(m) 55 やさしい おすすめ釣り場 2 宇津野堰堤付近 DATA 特徴: 堰堤下流は河川改修済みの区間 で単調だが、小さな淵では小型が釣 れる。堰堤上流にはまれに40cmくら いのイワナが釣れることもある。 対象魚種: イワナ、ヤマメ ①長瀬橋から上流 ③堰堤上流 釣人がいる ②堰堤のようす 国道352号 東湯之谷小学校 ① トレーニングセンター 長瀬橋 佐梨川 ② ③ 小平沢橋 ④ ⑤ 川幅が狭く、危険 堰堤 川に入りやすい場所 W.C P ① トイレ 駐車場 写真撮影位置 0 50 250(m) ④トレーニングセンター付近から下流 56 ⑤トレーニングセンター付近から上流 やさしい おすすめ釣り場 3 栄橋上流 DATA 特徴: 人が比較的多い区間ではあるが、それなりに 釣れ、川に入りやすい。 ルアーやフライで釣る人が多い。 対象魚種: イワナ、ヤマメ ①栄橋から上流 ②ゴルフ場付近から下流 国道352号 栄橋 佐梨川 ③ 老人ホーム 南山荘 ② ① W.C ゴルフ場 クラブハウス P マレットゴルフ場 ゆのたに荘 向橋 W.C ※駐車場、トイレを使用する場合は、 管理人の許可を得てください 川に入りやすい場所 W.C P ① トイレ ③ゴルフ場付近から上流 駐車場 0 50 250(m) 写真撮影位置 57 やさしい おすすめ釣り場 4 DATA 大湯温泉脇 特徴: 大湯公園から「あわせ湯橋」付近までは、釣りやすい区間で、女性や初心者に最適。数 もそこそこ多く、まれに30cmほどのイワナが釣れることもある。 対象魚種: イワナ、ヤマメ 大湯橋 特記事項: 温泉街の饅頭屋「若松屋」さんでは、無料で渓流釣りの道具を貸し出してくれる。手ぶ らで来ても手軽に釣りができるとはありがたい。 (要確認、若松屋025-795-2535) 大湯公園 P 0 W.C P W.C 日帰り入浴施設 ユピオ 50 250(m) 大湯公園 川に入りやすい場所 W.C ① 階段 あわせ湯橋 大湯公園 トイレ 駐車場 P ① 写真撮影位置 大湯公園 ③ ② 国道 35 2号 ④ 若松屋 W.C ⑤ 若松屋さん店先の貸し釣り道具(無料) ⑤堰堤の下流 堰堤 ①大湯公園から上流 58 ②淵を狙う釣人 ③温泉街から下流 ④あわせ湯橋から下流 只見川流域 第三章 渓流釣り事情 只見川 只見川流域は、釣りのメッカといわれるほど、釣人たちに 人気があります。 奥只見湖には、源流を尾瀬ヶ原に持つ只見川のほかに、片 貝沢、大津岐川、中ノ岐川、恋ノ岐川、北ノ又川などのすば らしい川が流入しています。 これらの川では、イワナ、ヤマメ、サクラマス、ニジマス などが釣れます。川で生まれた魚の一部がダム湖に下ること で、大きくなり、再び川に帰ってきます。このため、川では しばしば大物が釣れることがあります。渓流釣りもさること ながら、周辺の雄大な景色もまた大きな楽しみです。 ダム湖では、ボートに乗ってのルアー釣りが盛んです。 59 北ノ又川 石 抱 橋 か ら 上 流 は 、魚 資 源 保 ※ 川 沿 い の 林 道 は 入 口 に ゲ ー ト が あ る の で 、関 係 者 以 外 は 車 で の 進 入 は できません。 護 の た め 全 面 禁 漁 な の で 、湖 か ら石抱橋までの間での釣りに 恋ノ岐川 な り ま す 。ル ア ー 釣 り や フ ラ イ 穏やかで歩きやすい沢です。 釣 り で 、イ ワ ナ 、ヤ マ メ 、ニ ジ なんといっても景色が美しく、 マ ス な ど が 釣 れ ま す 。す ぐ 近 く 途 中 で テ ン ト 泊 を し て 、写 真 を に 駐 車 場 や ト イ レ が あ り 、歩 き 撮ったりしながらゆったりと や す い 区 間 な の で 、女 性 や 子 供 遡 行 す る 人 も い ま す 。国 道 か ら でも安心して楽しめます。 2km ほ ど 上 流 に 清 水 小 屋 が あ っ て 、こ こ か ら 上 流 が 釣 り 場 と し 中荒沢川 てよく利用されているようで キャンプ場の脇を流れてい す。 る の で 、子 供 や 女 性 で も 気 軽 に 釣りを楽しむことができます。 只見川 放流が盛んに行なわれている 尾 瀬 口 船 着 場 付 近 の「 ハ ヨ 止 め の 滝 」の 周 辺 で 大 物 が 釣 れ る こ と が あ る こ と も あ り 、数 は 多 く 釣 れ ま す 。 よ う で す 。船 着 場 か ら 上 流 ま で は 、釣 り 人 の 姿 が ま ん べ ん な く 点 在 し ま す 。 民 宿 や 奥 銀 山 キ ャ ン プ 場 、鷹 巣 キ ャ ン プ 場 を 拠 点 と し て 釣 り を 楽 し む 人 も 中ノ岐川 た く さ ん い ま す 。上 流 で 釣 る 人 は 、帰 り に 渋 沢 温 泉 に 立 ち 寄 る と い う 楽 し 川 沿 い に 林 道 が あ る た め 、比 み 方 も あ り ま す 。支 流 の 大 白 沢 も 魅 力 の 沢 で 人 気 が あ り ま す 。大 白 沢 へ 行 較 的 入 り や す い 沢 で す 。花 こ う 岩の白い河床と青い水とのコ ン ト ラ ス ト が 美 し く 、そ こ に 佇 んでいるだけでも楽しくなり ま す 。雨 池 橋 か ら 大 滝 ま で の 1 キロほどの間で大イワナが釣 れ る こ と が あ る よ う で す 。そ の 先 の 本 流 や 各 支 流 も 、大 物 が い たり、数が多かったりして楽しめます。 60 く た め に 、「 か ご 渡 し 」 を 使 っ て 只 見 川 本 流 を 渡 る 人 も い る よ う で す 。 奥只見湖 疑似餌を使ったトローリ ン グ が 人 気 で す 。イ ワ ナ は 稀 に 70cm く ら い の 大 も の が 釣 れることもあるようです。 (魚沼市 桜井昭吉さん撮影) 61 奥只見 川のめぐみの物語 1.奥只見の鱒 只見川流域で銀が発見されて以来、奥只見は銀を採掘する大勢の人 たちで賑わうようになりました。でもその以前から、湯之谷村の人た ちは、山を越えて奥只見に入っていました。それは、秋になると大量 に川を上ってくる鱒(サクラマス)を採るためです。奥只見流域で鱒 漁が盛んに行なわれていたのは、江戸時代頃から昭和初期にかけてと いわれています。 鷹ノ巣 星周一さん宅のヤス 写 真 上 壁 に か け ら れ た ヤ ス( 下 は 熊 獲 り 用 の 槍 ) 写真下 ヤスの歯の部分 鱒は、日本海から阿賀野川を遡上してやってきました。只見川やその 支流の北ノ又川、中ノ岐川、恋ノ岐川、大津岐川、さらにこれらの支流 など、大小様々な沢に鱒がのぼってきました。只見川では、尾瀬の手前 の「三条の滝」下流まで上ってきたといわれています。漁師たちは、ヤ スや手網、筌、簗など、様々な道具を使ってこれらを獲っていました。 ヤ ス は 、淵 に 潜 む 鱒 を 突 い て 捕 獲 す る 道 具 で 、水 中 に 潜 っ て 突 い た り 、 岩の上から突いたりしました。鷹巣の星周一さん宅には、昔先祖が使っ ていたヤスが今でも大切に保存されています。長さ2m以上の長いヤス で 、 突 き 刺 す 歯 の 部 分 は 長 さ 約 20cm、 幅 約 15cm の 巨 大 な も の で す 。 こ 紅葉の北ノ又川 (長岡市 高田道夫さん撮影) 62 れほどの大きなヤスを使わなければならない鱒というのは、一体どれだ けの大きさだったのでしょうか。 3. 明 治 時 代 に は 、 北 ノ 又 川 で は 毎 年 2000 匹 程 度 、 只 見 川 で は 1000 匹 程度が捕獲されていたといわれています。獲った鱒は、身を塩漬けに 北ノ又川と開高健 北ノ又川の石抱橋のたもとに石碑が建っています。 「 河 は 眠 ら な い 」と 刻まれた大きな字は、作家で釣師の開高健によるものです。 し た り 、卵 や 筋 子 を 樽 に 漬 け 込 ん だ り 、は ら わ た を 塩 辛 に し た り 、様 々 釣 り を こ よ な く 愛 し た 開 高 健 は 、昭 和 45 年 の 夏 に 銀 山 平 を 訪 れ 、長 期 な方法で保存し食料としました。湯之谷の人たちや、明治時代以降に 間滞在しました。そして、釣宿の主人や釣り客らと親交を深めるように この地に入殖(原野を開墾し、生活すること)してきた人たちにとっ なりました。 て、鱒は大変貴重な自然の恵みだったのです。 ところが、昭和初期に、阿賀野川下流にダムができると、ぱったり と鱒はやってこなくなりました。それと同時に、只見川流域では鱒漁 の光景も消えていきました。 昭 和 40 年 代 以 降 の イ ワ ナ の 減 少 に 危 機 感 を も っ た 地 元 住 民 や 都 市 住 民 が 、魚 が 根 絶 や し に な る 前 に 、と 昭 和 50 年 に 結 成 し た の が「 奥 只 見 の 魚を育てる会」です。その永代会長として開高健が就任しました。 育てる会では、放流も行ないましたが、自然の状態で魚が繁殖して増 えなくてはならない、という考えのもと、北ノ又川を、渓流魚の産卵場 所=種川として、禁漁区にするよう運動をおこしました。そして、奥只 2.奥只見のイワナ 渓流魚の代表といえばイワナです。イワナは阿賀野川下流のダムと は 関 係 な く 、 昭 和 40 年 代 く ら い ま で は 、「 う じ ゃ う じ ゃ 」 い ま し た 。 見 の 漁 業 を 管 理 す る 魚 沼 漁 業 組 合 が こ れ に 理 解 を し め し 、昭 和 56 年 に は 北ノ又川の石抱橋から上流を、終年禁漁区間としたのです。さらに、漁 協は石抱橋のたもとに監視小屋を建て、専任の監視員を常駐させ、密猟 者の監視を行なうようにしました。 イワナも、入殖者たちにとって貴重なたんぱく源でした。農作業を終 漁協では、資源保護の目的で毎年奥只見で放流も行なっています。平 え た 後 、 す ぐ 近 く の 沢 に い け ば 、 粗 末 な 釣 竿 で も 1 時 間 く ら い で 20 成 19 年 に は 、イ ワ ナ 63000 匹 、ヤ マ メ 84000 匹 、コ イ 220 匹 、フ ナ 100 や 30 匹 の イ ワ ナ は い つ で も 釣 れ た と い わ れ て い ま す 。 時 に は 、 優 に 匹 、ニ ジ マ ス 160 匹 、わ か さ ぎ 卵 1000 万 粒 が 放 流 さ れ ま し た 。こ う し た 40cm を 超 え る 大 イ ワ ナ も よ く 釣 れ た そ う で す 。釣 り の ほ か に も 、カ ジ 放流事業と種川の保護に カ を 餌 に し た 「 伏 せ 針 漁 」 や 、「 筌 漁 」、 夜 に 寝 て い る イ ワ ナ を ヤ ス で よって、漁業資源は枯渇 突く「夜突き」もおこなわれました。 することなく、育まれて イ ワ ナ は 、昭 和 30 年 代 に 奥 只 見 ダ ム が で き て か ら も ま だ た く さ ん い います。 ま し た 。 と こ ろ が 、 昭 和 40 年 代 に な る と 全 国 的 に 釣 ブ ー ム が 到 来 し 、 奥只見湖やその支流は、秘境の釣天国として、一躍注目を浴びるよう になりました。入殖者たちが、毎日数十匹のイワナを釣っていても減 ることのなかったイワナが、全国からの釣人の到来によってめっきり 数を減らしていったのです。 北ノ又川・石抱橋の ほとりに建つ 「河は眠らない」の碑 63 64