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仁科加速器研究センター

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仁科加速器研究センター
平成22年度独立行政法人評価委員会
理研作業部会ヒアリング資料
評価項目:Ⅰ-3 最高水準の研究基盤の整備・共用・利用研究の推進
(1)加速器科学研究
仁科加速器研究センター
RIKEN Nishina Center for Accelerator-Based Science
(RNC)
平成23年6月17日
センター長 延與 秀人
I-3-(1) 加速器科学研究
仁科加速器研究センターの研究目的等
仁科加速器研究センターの研究施設
1.設立 平成18年4月1日
2.目的
1)加速器科学の総合的推進
RIビームファクトリー(和光)
原子核とそれを構成する素粒子の実体
とその本質を究め、更に農業、医療等
産業へ応用する技術開発を行う。
世界最高強度の重イオン加速器
2)「RIビームファクトリー」の整備・運営
平成9年度より建設を進めてきた次世代
加速器施設「RIビームファクトリー」の整備
を推進し、同施設を国際共用に供する。
3)「国際協力研究」の推進
米国BNL研究所、英国RAL研究所との国際
協力研究を進め、加速器科学の推進に寄
与する。
理研BNL研究センター(米国)
世界最高エネルギーの
重イオン衝突型加速器
世界唯一の偏極陽子衝突
理研RAL支所(英国)
世界最高強度(パルス)
のミューオンビーム
1
I-3-(1) 加速器科学研究
第2期中期計画ロードマップ
平成20年度
①RIビームファクトリー
基幹実験設備の整備
分散整合BL
平成21年度
平成22年度
分散整合
実現
RI・電子散乱装置(SCRIT)
新入射器システム
電子リング
整備完了
平成23年度
平成24年度
~
<整備予定>
超低速RIビーム生成装置
偏極RIビーム生成装置
稀少RIリング
※東日本震災の影響等について
・加速器施設への影響は軽微
・平成23年度上半期に、加速器施設の
検査運転を実施し、問題箇所の修理を実
施
整備完了
中期目標と
究極の目標
多種粒子測定装置(SAMURAI)
核図表の拡大
新たに生成された不安定
核の特性解明
大きさ、形状、寿命
高励起状態の観測
魔法数喪失等の異常構造の探索
元素合成反応
質量
(応用研究)
物質科学
核変換基礎データ
外部利用の促進、
研究機関との連携強化
特筆
業績
1,2
原子力廃棄物消滅処理への貢献や産業
利用への寄与
・
平成22年4月より、RIBF担当副センター長としてW.Henning氏を、
共用促進・産業連携部長として酒井英行氏を外部より迎える。
②スピン物理研究
陽子スピン構造の解明
③ミュオン科学研究
ミュオン利用技術開発
ミュオン物性研究
・新同位元素の大量発見
・不安定核の特性解明
⇒元素誕生の謎の解明
⇒究極の原子核モデルの構築
・超重核探索の推進
⇒超々重元素、安定の島の探索
・超低速・偏極RIビーム生成
⇒不安定核特性の精密測定
⇒特異な核構造を利用した基礎物理
長期的には国際協力研究はJ-PARCに集約する。RAL
支所は次期中期期間で終了することを決定。
国際標準で運営される共用施設
(Synergetic-use Laboratory)への変貌
・陽子構造の解明(反クォーク偏極)
⇒質量の起源解明、宇宙創世期再現
・超低温ミュオンビーム開発
⇒標準模型の破れの探索
⇒新しい表面物性研究手法
・ミュオン触媒核融合技術開発
⇒科学的/工業的Break Evenへ
2
I-3-(1) 加速器科学研究
中期計画ロードマップと
国際競争
平成
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
H27
H28
H29
H30
H31
西暦
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
第二中期計画期間
実験
開始
第三中期計画期間
整備
完了
建設
開始
RIBFが優位な期間
実験
開始
FAIR@GSI
建設
開始
建設
開始
SPIRAL2@GANIL
第四中期
諸外国の類似施設の台頭と競争すべく、10年後
を見据えた加速器増強計画を立案する必要あり。
完
成
FRIB@MSU
実験
開始
実験
開始
3
I-3-(1) 加速器科学研究
平成22年度計画
成果一覧(1/2)
計画に基づく成果
想定外の成果
(計画を上回る成果/中期計画外の成果)
(1)加速器科学研究
①RIビームファクトリー
(ア)整備・共用の推進
平成22年度においては、多種粒子測定装置の整備を継
続するとともに、基幹実験設備に係わる要素技術を開発
する。また、RI・電子散乱装置(SCRIT)、新入射器システ
ムを稼働させ、実験に着手する。実験課題については、
年2回国際的に公募を実施し、外部有識者により構成さ
れる課題選定委員会により選定する。さらに、外部利用を
促進するために必要な体制について検討するため、外部
有識者により構成される共用促進委員会を開催する。
(イ)利用研究の推進
平成22年度においては、未知のRI探索実験を行い核図
表の拡大を図り、不安定核の寿命や励起状態を明らかに
する研究と原子核の魔法数喪失といった異常構造の探索
を継続するとともに、原子核の大きさを解析する研究に着
手する。
○国際公募にて実験課題選定を行うとともに、実験
課題の優先度設定を新たに行った。
○共用促進委員会を開催し、国際開放の促進や施
設利用の受益者負担に関して検討を行った。
○外部利用者のための制度の導入とその窓口とな
るユーザーズオフィスの整備を図った。
○ビームタイムの効率的執行を進め、有効な実験
可能時間は平成21年度の20日に比べ、平成22年
度においては69日を達成した。
○フランスとの共同実験としてRIBFに特殊測定装
置を持ち込み、酸素-24の二重魔法性(陽子、中性
子とも魔法数)の大きさを調べる実験を行った。
○KEKと研究協定を締結。重イオン研究分野での
国内アクテビティをRIBFに集約する体制が整った。
○SAMURAI施設利用の国際協力体制を構築した。
○欧州連合の保有する大型ガンマ線測定器を
RIBFでの研究に生かすべく、国際協力体制の構築
を開始した。
○多種粒子測定装置の整備を継続し、新入射器シ
ステム、SCRITの動作試験に成功し、実験開始に
向け準備をしていたが、東日本大震災の影響によ
り、3月の予定を中止せざるを得なくなった。
○マグネシウム原子核の大きさが複数の同位体で
著しく変化する現象、シリコン-42の中性子数28で
の魔法数喪失現象などの観測に成功した。
○質量数110近傍領域で、新たに18種もの中性子
過剰原子核の寿命測定に世界で初めて成功し、超
新星爆発の元素合成はこれまでの想像以上に速
い証拠をつかんだ。
○中性子過剰硫黄同位体の大強度ビームの生成
に成功した。
○10種以上の新アイソマー核の発見に成功した。
○質量数110近傍領域で、新たに18種にお
よぶ不安定核の半減期を世界で初めて測定
したが、この領域の8時間で得られた18種の
新データは、過去世界で取得した20年分の
データ量に相当する。
4
I-3-(1) 加速器科学研究
平成22年度計画
成果一覧(2/2)
計画に基づく成果
想定外の成果
(計画を上回る成果/中期計画外の成果)
②スピン物理研究
平成22年度においては、高度化したミュオン同定・検出装
置を駆使して、素粒子(Wボソン)の生成をミュオンへの崩
壊過程において確認し、反クォークの偏極度に関する新
たな知見を獲得する。さらに、専用解析システム(CCJ)を
用いて実験により得られる膨大な測定データを解析し、
クォークやグルーオンを結びつける強い力「強い相互作
用」を理論計算する格子QCD専用機を駆使した陽子スピ
ン構造の計算結果との比較を行う。
○米国DOEと共同で開発・建設を進めて来たシリ
コン衝突点飛跡検出器が完成した。
○Wボソンの電子崩壊を捉え、反クォークの偏極
度を測定することを可能とした。
○Wボソンのミュオン崩壊を捉えるための測定器
の増強を図った。
○専用解析システム(CCJ)の処理能力強化を行
い、新しい飛跡検出器の生み出す大量なデータに
対応できるようにした。
③ミュオン科学研究
平成22年度においては、ミュオンを物質に注入し、物質局
所の磁場の大きさや揺らぎを実時間で測定するミュオンス
ピン緩和法(μSR法)を用いた物質内部磁場構造解析に
より、超伝導体(鉄ヒ素系、ニッケル系アンチペロブスカイ
ト型)の超伝導発現機構と磁性との相関を解明する。さら
に、表面界面物理研究を目指した超低エネルギーミュオ
ンビームの強度増強及び新エネルギー基礎研究である
ミュオン触媒核融合の反応率増大に必要な技術を開発す
る。
○鉄砒素系酸化物高温超伝導体のμSR実験で
その超伝導と磁性の発現機構の関連性を解明し
た。
○超低速ミュオンビーム強度増強のため、熱ミュ
オニウムのイオン化効率を100倍に増加するレー
ザーシステム、高効率の熱ミュオニウム発生材料
の開発を行った。
○ミュオン触媒核融合反応率増大に向けた高圧
固体標的の第1段階として高圧固体D2(重水素)
標的の製作を行った。
○三角形格子スピン構造をもつ有機磁性分
子の磁性発現機構の解明とレーザー光学ス
ピン導入法で半導体中に励起した電子スピ
ンの振る舞いの観測の成功は、年度計画を
超えた成果である。
5
I-3-(1) 加速器科学研究
特筆すべき業績1(RIビームファクトリー)
平成23年2月1日:プレスリリース
「超新星爆発の元素合成は想像以上に速い」証拠をつかむ
-18個もの中性子過剰原子核の寿命測定に世界で初めて成功-
○世界最高性能RIBFの8時間計測で、重元素合成過程の経路の測定に初めて踏み込む
(過去20年分相当のデータ取得に成功)
○質量数110近傍のRIは、標準的な理論予想に比べ2~3倍以上速く崩壊
○超新星爆発の際の元素合成が予想以上に速く進んだことを示唆
核図表における寿命測定箇所と測定結果
6
I-3-(1) 加速器科学研究
特筆すべき業績2(RIビームファクトリー)
平成22年12月中性子過剰硫黄同位体の大強度ビームの生成に成功
中性子数N=28での本格的魔法数研究の幕開け
○平成22年12月、SRCで加速された48Caビームを利用して、大強度44Sビームの生成に成功。
従来の300倍の強度。
44
○ Sビームを2次標的に照射し、42Si(陽子数=14、中性子数=28)の励起準位をガンマ線で観測
○過去、欧米の研究所での観測例は、第一励起準位のみ
○RIBFでは第一励起準位の高統計情報を取得。
第2、第3励起準位の観測にも成功。圧倒的な統計量を誇示。
○集団性や単粒子軌道観測を通した、N=28の魔法数の研究が今後、本格化。
RIBF(日)(2010)
GANIL研究所(仏)(2007)
42Si
X300
ビームエネルギー 核子当り60MeV
強度
125個/秒
ビームエネルギー 核子当り200MeV
強度
40,000個/秒
7
I-3-(1) 加速器科学研究
自己評価 : A
(理由)
①RIビームファクトリー
・共用の推進では、国際的に実験課題を公募するとともに実験課題の優先度設定を新たに行い、さら
に外部利用者のための制度や窓口の整備を行い、広く外部研究者への開放し中期計画を達成した。
・施設整備については、多種粒子測定装置の整備を継続するとともに、RI・電子散乱装置、新入射器シ
ステムを稼働させ、年度計画を達成した。
・施設運営では、大幅なビームタイムの効率化に成功した。
・研究の推進では、施設の高度化や運転技術の向上を図るとともに、中性子過剰硫黄同位体の大強
度ビームの生成成功、魔法数喪失現象などの観測成功や、新たに18種もの中性子過剰原子核の寿
命測定に世界で初めて成功するなどの世界的にインパクトのある研究成果を上げた。
②スピン物理研究
・米国DOEと共同で開発・建設を進めて来たシリコン衝突点飛跡検出器を完成させるとともに、Wボソ
ンの電子崩壊を捉え、反クォークの偏極度を測定することを可能させるなど、世界的にインパクトのあ
る研究成果を上げた。
③ミュオン科学研究
・三角形格子スピン構造の有機磁性分子の磁性発現機構の解明、レーザー光学スピン導入法で半導
体中に励起した電子スピンの振る舞いの観測の成功、鉄砒素系酸化物高温超伝導体のμSR実験で
超伝導と磁性の発現機構の関連性を解明など、世界的にインパクトのある研究成果を上げた。
・熱ミュオニウムのイオン化効率を100倍に増加するレーザーシステム、高効率の熱ミュオニウム発生
材料の開発を行い、年度計画を達成した。
8
I-3-(1) 加速器科学研究
仁科加速器研究センター・マネージメント(1/2)
„
研究系の強化。RIビームファクトリーから世界的
インパクトのある研究成果を創出。22年4月:準
主任2名、23年4月:主任2名。
„ 共用促進と産業連携の強化。 RIビームファクト
リーを国際標準の共用施設(Synergetic-Use
Laboratory)と変貌させる。
★施設基盤系、応用研究系に若手チームリー
ダー等を積極登用。施設共用支援体制を強化。
★RIBF担当副センター長としてW.Henning氏(元
独GSI所長、元米ANL物理部長を歴任)を採用、
国際的なレベルでの運営体制の確立へ(22年4
月)。
★共用促進・産業連携部長として酒井英行氏(前
東大教授、日本原子核物理コミュニティ代表)を
迎え、外部視点からの共用体制の充実を図る(2
2年4月) 。
„ 世界を見据えた研究開発計画の策定
★諸外国の類似施設の台頭と競争すべく、10年
後を見据えた加速器増強計画の立案開始。海外
アクティビティの将来像を構築。
„ 研究支援体制の見直し
★研究室秘書を廃止、共通秘書室を設置。研究
支援を強化、事務管理体制を強化。
仁科加速器研究センターの組織図(平成22年度)
外国籍
著名研究
者の採用
センター長
センター長
副センター長
副センター長
RIBF施設共用コーディネーター
RIBF施設共用コーディネーター
特別顧問
特別顧問
アドバイザリー・カウンシル
アドバイザリー・カウンシル
共用促進委員会
共用促進委員会
実験課題採択委員会
実験課題採択委員会
安全審査委員会
安全審査委員会
マシンタイム委員会
マシンタイム委員会
運営調整会議
運営調整会議
広報委員会
広報委員会
理論研究部門
理論研究部門
川合理論物理学研究室
川合理論物理学研究室
中務原子核理論研究室
中務原子核理論研究室
肥山ストレンジネス核物理研究室
肥山ストレンジネス核物理研究室
新研究室
橋本数理物理学研究室
橋本数理物理学研究室
素粒子物性研究部門
素粒子物性研究部門
延與放射線研究室
延與放射線研究室
岩崎先端中間子研究室
岩崎先端中間子研究室
理研BNL研究センター(USA)
理研BNL研究センター(USA)
RAL支所(UK)
RAL支所(UK)
RIBF研究部門
RIBF研究部門
櫻井RI物理研究室
櫻井RI物理研究室
森田超重元素研究室
森田超重元素研究室
玉川高エネルギー宇宙物理研究室
玉川高エネルギー宇宙物理研究室 新研究室
加速器基盤研究部
加速器基盤研究部
実験装置開発室
実験装置開発室
実験装置運転・維持管理室
若手チーム
実験装置運転・維持管理室
リーダー配置
応用研究開発室
応用研究開発室
新部長配置
共用促進・産業連携部
共用促進・産業連携部
安全業務室
安全業務室
9
I-3-(1) 加速器科学研究
仁科加速器研究センター・マネージメント(2/2)
効率的なビームタイム計画
RIBFビームタイム運営
H22年度RIBF実験の消化日数は昨年度の3.5倍に向上
より効率的なビームタイム計画の策定によ
り実験時間を拡大し、成果創出へ!
加速器運転技術の向上、同一ビームを利用した
実験の集中化等により、加速器の調整時間を大
幅に効率化することで、より効率的なビームタイム
計画を実現
RIBF利用促進
・RIBF関連研究会の公募制の
導入(9月)
・RIBF外部利用者制度の本格運用
を開始(1月)
RIBF利用支援
RIBFユーザーズオフィス開設(10月)
所外利用者のための一元的利用窓口
広報活動
・サイエンスアゴラ出展(11月)
・RIBF施設見学
H22年度登録者数70名(手続き中含む)
○○大学 (仁科センター)
RIBF外部利用者ICカード
10
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