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目次 - 日本貿易振興機構

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目次 - 日本貿易振興機構
2011 年 12 月 22 日作成
日本貿易振興機構(ジェトロ)
海外調査部アジア大洋州課
インドネシアのバリ島で 11 月 17~19 日、東アジア首脳会議をはじめ、ASEAN を中心と
した一連の首脳会議が開催されました。同会議には米国とロシアが初参加したことが注
目されました。東アジア首脳会議・関連会合のポイントおよび各国での報道ぶりなどを
レポートします。
目次
1.
東アジア大の地域的 FTA に向けて作業部会設置へ(総論) .................................2
2.
大洪水からの信認回復が目的(タイ) ....................................................................4
3.
広域経済連携は ASEAN を中心に(マレーシア) .................................................6
4.
ASEAN 議長国として存在感強める(インドネシア) ...........................................8
5.
リー首相、アジアの広域 FTA の必要性を強調(シンガポール) ..........................9
6.
中国牽制で ASEAN と米国の思惑が一致との見方も(中国) ............................ 10
7.
ASEAN との早期 CEPA 締結に意欲(インド) ................................................... 11
8.
アジア地域の安全保障にくさび(米国) ............................................................. 13
9.
エネルギー分野での協力に関心(ロシア) .......................................................... 16
資料 1:第 6 回東アジア首脳会議議長声明(骨子) .......................................................... 17
資料 2:ASEAN 連結性に関する東アジア首脳会議(EAS)宣言(仮訳) ...................... 20
資料 3:互恵関係に向けた原則に関する東アジア首脳会議(EAS)宣言(仮訳) ........... 22
【開催された主な会合】
11 月 17 日
第 19 回 ASEAN 首脳会議
11 月 18 日
第 14 回 ASEAN+3 首脳会議
第 3 回米国・ASEAN 首脳会議
第 14 回日本・ASEAN 首脳会議
第 3 回日本・メコン地域諸国首脳会議
第 14 回韓国・ASEAN 首脳会議
11 月 19 日
第 4 回国連・ASEAN 首脳会議
第 6 回東アジア首脳会議
第 9 回インド・ASEAN 首脳会議
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1
1. 東アジア大の地域的 FTA に向けて作業部会設置へ(総論)
2011 年 11 月 24 日 バンコク発
インドネシアのバリ島で 11 月 17~19 日、東アジア首脳会議をはじめ、ASEAN を中心
とした一連の首脳会議が開催された。この中で、東アジア大の地域的自由貿易協定(FTA)
について、物品貿易の自由化など 3 分野に関する政府間の作業部会設置が決まった。交渉
開始に向けた検討が正式に進められることになる。ミャンマーが 2014 年に ASEAN の議長
国になることにも合意し、今後の同国の投資環境改善が期待される。東アジア首脳会議に
は、米国とロシアが初めて参加したが、経済分野について両国からの目立ったコメントは
なかった。
<ASEAN 主導の地域的 FTA 实現に大きな進展>
今回の東アジア首脳会議と関連会合で最も大きな進展があったのは、ASEAN を中心とし
た東アジア地域の経済統合についてだ。8 月に開催された ASEAN 経済相会合と関連会合で
は、日本と中国が物品貿易の自由化、サービス貿易、投資ルールの 3 分野に関する作業部
会の創設を提案。それを受けて、ASEAN 内で地域的 FTA の「テンプレート(自由化やル
ールのあるべき姿の詳細)
」に関する検討を進め、11 月の首脳会議に進捗状況を報告するこ
とになっていた。
今回の東アジア首脳会議では、ASEAN 首脳会議の場で「テンプレート」のベースになる
ASEAN の 考 え る 地 域 経 済 統 合 の 枠 組 み ( ASEAN Framework on Regional
Comprehensive Economic Partnership)が提示された。また、ASEAN+3 首脳会議と東
アジア首脳会議で、日本と中国が共同で提案した 3 分野に関する作業部会の設置が決定さ
れたことは、12 年以降の ASEAN++FTA(注)の交渉開始に向けた検討を加速する上で、
非常に大きな進展だった。特に、物品貿易自由化に関する作業部会は、「12 年の早い時期」
に設置される方向だ。
こうした進展の背景には、11 月 12~14 日に行われた APEC 閣僚会議や非公式首脳会議
での環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の進展、また、19 日にバリ島で開かれた日
中韓首脳会議で、日中韓 FTA の共同研究を年内に終了し、早期の交渉入りを目指す方向性
が確認されたことなどによって、ASEAN 主導の地域的 FTA 形成に向けた ASEAN 側の政
治的な意思が高まっていることが挙げられる。18 日の ASEAN+3 首脳会議や 19 日の東ア
ジア首脳会議で、複数国の首相が ASEAN の中心性を保ちながら地域的 FTA を進める重要
性について言及したのは、こうした動きの表れだろう。
ASEAN++FTA が实現すれば、ASEAN、中国、インドという巨大な生産拠点・新興市
場を包含する点で、TPP や日中韓 FTA 以上に、在アジア日系企業のサプライチェーンに大
きな影響を及ぼすことが想定される。現地進出日系企業にとっては、特に関税やサービス
の自由化、原産地規則の統一化などの進展が注目されよう。
<ミャンマーが 3 年後の ASEAN 議長国に>
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バリで最も脚光を浴びた国の 1 つは、ミャンマーだった。11 年 9 月以降、より顕著にな
った政治犯の釈放などの民主化への動きは、国際社会から高い評価と注目を集め続けてき
た。日本政府もそれに応えるかたちで、10 月の日・ミャンマー外相会談でバルーチャン水
力発電所の補修に向けた協力を玄葉光一郎外相が表明し、また、同月末には日本の経済産
業省とミャンマー国家計画・経済開発省間で副大臣級の政策対話を開催するなど、前向き
に対応してきた。
17 日の ASEAN 首脳会議で、ミャンマーがかねてから望んでいた 14 年の ASEAN・東ア
ジア首脳会議プロセスの議長国を務めることが決定したことは、国際社会に同国の民主化
に向けた努力を大いにアピールした。また、続く 18 日の米・ASEAN 首脳会議でもオバマ
大統領がミャンマーの民主化に向けた努力を歓迎するとともに、12 月初旬にクリントン国
務長官をミャンマーに派遣すると発表したことで、「ミャンマーの改革姿勢は本物」「欧米
による経済制裁が緩和される機運が高まってきた」といった雰囲気が醸成された。
「米国議会のミャンマーへの不信感は、そう簡単には払拭(ふっしょく)されない」(米
国情報筋)という見方も依然として根強いものの、日本は政府機関・企業双方で情報を共
有しつつ、できるところから協力関係を強化していくべきだろう。バリでは、日・ASEAN
首脳会議や日・メコン首脳会議で野田佳彦首相が「ダウェー深海港の開発に向けて、
ASEAN・東アジア経済研究センター(ERIA)も活用しつつ、開発可能性調査を行う」と
表明した。
また、日・ミャンマーの首脳会談と経済相会談では、テイン・セイン首相やティン・ナ
イン・ティン国家計画・経済開発相から、重工業・労働集約型産業の双方への日本からの
投資に対する期待が表明された。こうした良いモメンタムを生かしていくために、日・ミ
ャンマー2 国間で協力に向けた対話を継続・拡大するとともに、官民による日・メコン協力
の枠組みを活用すべきだろう。
<米国とロシアが参加、変わらぬ日本の重要性>
今回の東アジア首脳会議での政治的な注目点は、米国とロシアが初めて参加することだ
った。特に、安全保障面で米国がどのように中国を牽制するか、経済面で米国やロシアが
既存のイニシアチブに対してどのような対応をとるか、という 2 点は大きな焦点だった。
安全保障面では、米国の参加による海洋安全保障などへの好影響は高く評価されよう。
一方で、経済面に関しては、オバマ大統領が「既存のイニシアチブを尊重する」ことを東
アジア首脳会議で話した程度にとどまり、また、ロシアもラブロフ外相が代理出席したこ
とから、両国の参加が経済面での協議に与えた影響は限定的なものにとどまった。
そうした中、今回の会合の中では、日本の ASEAN 経済共同体(AEC)实現に向けたイ
ニシアチブの重要性が、
あらためて認識されたといえる。日・ASEAN 首脳会議では、ASEAN
域内外の連結性強化に向けた日本政府のサポートが高く評価され、ASEAN 日本人商工会議
所連合会(FJCCIA)と ASEAN 諸国の経済相や ASEAN 事務局の対話(11 年 7 月)や、
ASEAN 諸国の経済相による日本訪問(「ロードショー」、12 年 4 月ごろに予定)が、産業
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界の ASEAN 統合プロセスへの巻き込みの一環として高い評価を受けた。
また、12 年の日・ASEAN 経済相会合までに策定することになっている、今後 10 年の日・
ASEAN 経済関係を定めたロードマップの策定作業もこれから加速化していこう。今後もこ
うした取り組みを継続し、
日系企業の要望を AEC に的確に反映していくことが求められる。
(注)ASEAN++FTA とは、日本、中国、韓国、インドなど ASEAN のパートナー国との
FTA、いわゆる ASEAN+1・FTA を統合させた地域大の FTA を目指す構想を意味する。
(田村英康)
2. 大洪水からの信認回復が目的(タイ)
2011 年 12 月 16 日 バンコク発
大洪水発生後、東アジア首脳会議をはじめとする一連の会合は、インラック首相にとっ
て国際会議へのデビューとなった。出席を決断したのは、大洪水で揺らぐタイへの国際社
会の信認を回復するためだ。首脳会議に関する報道は、洪水関連以外は低調だったが、イ
ンラック首相が「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉に参加することを検討する」
と言及したことは、驚きをもって受け止められた。
<国際会議デビュー>
10 月に中部アユタヤ県で工業団地が次々と大洪水に見舞われて以降、インラック首相は
洪水対策に専念するとして、恒例の ASEAN 諸国歴訪などの外遊を次々と延期した。8 月の
首相就任後、初めての国際会議の舞台となるはずだったハワイでの APEC 首脳会議も、キ
ティラット副首相・商務相が代理で出席した。
雨期から乾期に移り、洪水に改善傾向がみえてきたことで、インラック首相は ASEAN 首
脳会議と東アジア首脳会議への出席を決断、国際会議デビューを果たした。一連の首脳会
議出席は、大洪水で揺らいでいるタイに対する国際社会の信認を回復することが主な目的
だった。
インラック首相は東アジア首脳会議の開催地インドネシア・バリ島から、通信回線を通
じて朝の定例ラジオ番組に出演し、
「バンコク中心部は洪水から救われた」と宣言した。ま
た、ASEAN および東アジア首脳会議、2 国間首脳会談の場で、洪水が収束しつつある現状
と政府の包括的な産業救済策、今後の復旧計画、長期的治水計画などを自ら説明し、信認
維持・回復に努めた。
政府系メディア MCOT は、首相が「東アジア首脳会議出席は成功」と語ったと伝えた。
「ASEAN 首脳会議で、ASEAN として洪水防止、軽減、救済、復旧・復興などでの災害リ
スク管理と、その軽減の面で地域協力強化に合意した」(11 月 21 日)とし、首脳会議出席
の成果を洪水に苦しんできた国民に示した。
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しかし一方、国内、特にバンコク北部で、巨大土のうの撤去を求めた住民がいたるとこ
ろで幹線道路を封鎖するなどの行動を起こしたこともあり、一連の首脳会議の報道は洪水
関連を除き低調だった。
<洪水関連以外では事实関係を淡々と報道>
实際、メディアの多くは会議の主なトピックを取り上げたにすぎない。
11 月 21 日のタイニュースサービス(TNS)は「タイは、国際社会の中で ASEAN がさら
に先取りした役割を担うことを支援する」と題した記事を掲載した。その中で、ASEAN 首
脳会議では、世界各地で経済が減速していることから、ASEAN として経済統合に向けた取
り組みを加速する必要性がさらに高まっているとし、2015 年の ASEAN 共同体構築に向け
3 本柱のブループリントについて实行の加速化の約束をあらためて確認したことを報じた。
また、官民パートナーシップ(PPP)を含め、ASEAN 連結性基本計画は ASEAN の競争
力と統合に貢献することになるため、同計画の实行を促進する必要があるという認識を首
脳間で共有したことも報じている。
そのほかにも、東アジア首脳会議に米国とロシアが初めて参加するに際し、「ASEAN の
中心性」の強化を訴えているほか、ミャンマーの民主化と社会経済改革に向けた取り組み
を歓迎するとともに、14 年のミャンマーの議長国就任を支持すること、ミャンマーに対し
今後も前向きなモメンタムを維持することに期待すること、などを伝えている。
またインラック首相は、ASEAN 首脳会議に合わせ、各国首脳に対し 17~18 年の国連安
全保障理事会非常任理事国への立候補に対する支援を求めた。
<TPP への言及には驚きの声>
洪水関連を除き、ほぼ事实関係だけが報道されている中で、TPP についてはメディアが
取り上げている。これまでタイ政府は「内需刺激策」「国内格差の是正」など内向きの政策
に重点を置き、対外通商政策の方針すら示してこなかった。その中で、TPP について首相
が言及したことで、関係者から驚きの声が上がった。
「ネーション」紙や政府系メディアの MCOT は、これまで米国はタイに対し「TPP に参
加を検討するよう要望してきた」とし、オバマ大統領とインラック首相との会談で、首相
が「タイは TPP 交渉に参加することを検討する」と発言したことをスラポン外相の話とし
て伝えた。また、
「いつとは言わなかったが、米国は満足していた。これは、尐なくともス
タート地点に立っている。ただし、その手続きには尐し時間がかかる」と同外相の言葉を
伝えた(
「バンコク・ポスト」紙 11 月 20 日)。
ジェトロのインタビューに対し、タイ政府通商筋からは「洪水からの復興後を見据えて、
東アジアやアジア太平洋地域での経済統合に積極的に加わっていく必要がある。そうした
観点から APEC と ASEAN 首脳会議は非常に良い機会となった」とのコメントが寄せられ
た。
タイは、米国以外にも日本、中国、ベトナムと首脳会談を行った。タイ外務省によると、
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ベトナムとの間では、災害防止・管理、特にラオスとカンボジアを含めたメコン川の水管
理・協力は極めて重要との認識で一致した。また両国は世界の 2 大コメ輸出国の立場から、
食料安全保障分野で協力することでも合意している。一方、中国との会談では、ハイレベ
ルでの相互訪問、タイの対中国農産品輸出増加、中国投資家のタイ投資促進、高速鉄道プ
ロジェクト实施などの分野での 2 国間関係向上で合意した。
<東アジアの一体化が米国をアジアに関与させるカギ>
「ネーション」紙(11 月 21 日)は米国と東アジアとの関係について、米国のアジア基金・
米国政治科学協会のワラヤ・ジャリヤッドハム研究員による「東アジアの興奮の後に来る
ものは」と題する寄稿を掲載した。
この中で同氏は「米国がアジアに戻ってきた」としてアジア各国の歓迎ぶりを伝えるが、
これは欧州の財政・金融不安や中東の混乱など、そして米国内では金融不安と 12 年の大統
領選挙が新たな成長の源として海外での復活を急がせているとし、米国がアジアに焦点を
当てているのは实際的な理由、計算が働いているためと分析している。
しかし、大統領選の結果次第では、米国のアジアへの関心が薄れるとの懸念も指摘して
いる。米国の視線を引き続き東アジアに引き止めるには、東アジア自身が一段と強くまと
まることが重要で、米国民にとって、永続的な東アジアへの関与が本当の利益につながる
と思わせることが重要だ、と締めている。
(助川成也)
3. 広域経済連携は ASEAN を中心に(マレーシア)
2011 年 11 月 25 日
クアラルンプール発
バリ島で開催された東アジア首脳会議(EAS)と関連会合について、国内ではオバマ米
大統領とナジブ首相の会談が大きく取り上げられた。広域的な包括的経済連携の推進につ
いては、日本と中国が共同で提案した貿易・投資の自由化に関する作業部会の設置が報道
された。
<イスラム国としてのマレーシアの役割を評価>
オバマ大統領は 11 月 18 日、ナジブ首相との会談で、アフガニスタンでの復興協力など
国際問題の中でイスラム国としてマレーシアが果たしている役割について感謝するととも
に、今後両国で世界平和と安定のために協力していくことを望む、と述べ、当地紙も見出
しにして大きく取り上げた。
また、オバマ大統領は、大量破壊兵器などの拡散防止構想(PSI)へのマレーシアの参加
を求めた。これに対しマレーシア側は、PSI に参加するしないにかかわらず、核兵器拡散防
止については関連法を施行し、いかなる戦略的物資もマレーシアを経由しないようになっ
ていることを強調した。マレーシアは、兵器や兵器になり得る機器・設備などの輸出・積
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み替え・通過を規制する法律「戦略貿易法(Strategic Trade Act 2010)」を 2011 年に施行
したばかりだ。
経済関係では、マレーシアに対して、引き続き環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参
加するよう要請し、ナジブ首相は、TPP はマレーシアと米国との自由貿易協定(FTA)拡
大の面で重要だとの見解を示した。マレーシアは、TPP 交渉参加国とはペルーと米国を除
き、既に FTA を締結している。従って、マレーシアにとって TPP は米国の参加が大きな意
味を持っている。米国とは 2 国間で FTA 交渉を進めていたが、政府調達で合意できずに交
渉は中止、TPP の枠組みの中で進めることに方向転換して 10 年 10 月、正式に TPP 交渉参
加国になった。
<ASEAN を軸に 3 つの作業部会を設置>
ベルナマ国営通信(11 月 20 日)によると、ムスタパ国際貿易相は広域経済圏について、
これまで ASEAN が中心となって経済圏を拡大していくプロセスを維持してきたことを強
調し、今回の ASEAN 首脳会議ではこの流れを踏まえて、広域経済連携のための ASEAN の
枠組みを作ることに合意したと発表した。具体的には、ASEAN+3 と ASEAN+6 を考慮す
るとしている。
また同相は、日中共同で提案した貿易・投資の自由化に関する作業部会について、物品
貿易、サービス貿易、投資の 3 分野で設置されることを明らかにし、これら 3 つの作業部
会は、経済統合の手順に関して具体的な研究を行うこと、作業部会への参加は、対話国が
招待される形式になる予定だと説明した。またこれらの作業部会が、12 年 11 月に開催され
る第 21 回 ASEAN 首脳会議までに具体的な枠組み・手順について決定するとコメントして
いる。
広域経済圏の連携に関しては、同相が決定事項について述べたとの紹介にとどまり、特
に肯定的、または批判的な論調は現時点ではみられない。一方で、広域経済圏の核となる
ASEAN 経済共同体(AEC)の实現について「ニュー・ストレーツ・タイムズ」紙(11 月
21 日)は「域内経済の統合は決してたやすいものではない。15 年の AEC の实現まで 3 年
しか残っておらず、明確なブループリント、目標、タイムスケジュールがあるが、これら
の行動計画を具体的に实行に移していくことが今後は非常に重要だ」と指摘。AEC 实現に
向けて、残された時間が限られてきた中で、すべての関係者が真剣に取り組むことの重要
性を強く訴えた。
(手島恵美)
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4. ASEAN 議長国として存在感強める(インドネシア)
2011 年 11 月 29 日
ジャカルタ発
バリ島で 11 月 17~19 日に、東アジア首脳会議や、ASEAN を中心とした多くの関連会
合が開かれた。インドネシアは 2011 年の ASEAN 議長国として一連の首脳会議を取り仕切
り、存在感を強めたと評価する声が多い。
<ミャンマーの 2014 年 ASEAN 議長国決定を根回し>
今回の東アジア首脳会議には米国、ロシアが初めて参加し、ASEAN 加盟 10 ヵ国に日本、
中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの計 18 ヵ国の首脳らが参加した。
一連の会議では、アジア地域最優先の戦略を鮮明に打ち出した米国と、アジア地域での権
益、影響力の拡大を急ぐ中国が主導権争いを展開したが、報道などではインドネシアは
ASEAN の中心性維持という基本姿勢の下、バランスを保ったかじ取りをしたとの評価が多
い。米国、中国を牽制しながら、ASEAN の利益を守る姿勢が評価されたようだ。米海兵隊
のオーストラリア駐留に対して、インドネシアは「地域に緊張と不信の悪循環を招きかね
ない」と批判し、一部の加盟国が南シナ海問題を抱える中国との関係では、中国を強く刺
激することは避けつつ ASEAN の利益確保に注力した。
ASEAN 首脳会議は、懸案となっていたミャンマーの 14 年 ASEAN 議長国就任を決定し
た。長期にわたり軍事政権が続いたミャンマーが議長国に就任するのは初めてのことだ。
民主化の進展が評価された格好だが、米国は一層の民主化を求めており、さらなる改革の
進展が欠かせない。ミャンマーの議長国就任は、インドネシアが米国との事前調整などで
その道筋をつけたとの見方が多く、インドネシアが果たした役割は大きい。
一連の首脳会議の期間中に、米国のボーイングがインドネシアの格安航空最大手のライ
オン航空との間で 200 億ドル超の大型受注の合意書を交わした。ボーイングにとっては過
去最大の受注規模で、計 230 機の売買契約だ。調印式にはオバマ大統領も立ち会い、イン
ドネシア訪問の具体的な成果を示した。この受注について、米国は 10 万人の雇用創出効果
があると試算しているようだ。
<日本は ASEAN 支援の継続を約束>
日本が参加した一連の首脳会議や記者会見での野田佳彦首相の発言などについては、事
实関係を淡々と伝える報道が多かった。11 年 3 月に東日本大震災があったにもかかわらず、
野田首相が ASEAN 支援の継続を約束するなど、ASEAN を軸とした広域との関係強化、経
済連携を進める意向を示したことを評価する報道もあった。
ユドヨノ大統領は、東アジア地域が世界の経済センターとなりつつある中でも、ASEAN
の中心性が揺らぐことはなく、枠組みは拡大しても ASEAN が地域で重要な存在であり続け
るとの見方を示している。今後、さらに重要性を増す東アジア地域で、インドネシアのか
かわり方が注目されよう。
(塚田学)
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5. リー首相、アジアの広域 FTA の必要性を強調(シンガポール)
2011 年 11 月 25 日
シンガポール発
11 月 17~19 日に開かれた東アジア首脳会議(EAS)など一連の会合について、当地で
はミャンマーの 2014 年の ASEAN 議長国就任や今後の改革進展を期待する報道が目立って
いる。EAS に出席したリー首相は、ASEAN 経済共同体(AEC)でのサービス・投資分野
の交渉加速やアジアの広域自由貿易協定(FTA)の必要性を強調した。
<ミャンマーの議長国就任を歓迎>
当地紙は、ASEAN 首脳会議で、14 年の ASEAN 議長国にミャンマーが選出されたこと
を大きく報じている。クリントン米国務長官や国連の潘基文(バン・ギムン)事務総長が
相次いでミャンマーを訪問する意向を示したこともあり、今後、ミャンマーの改革が進展
することへの期待を示した報道が目立つ。
リー首相もミャンマーのテイン・セイン大統領との会談で、最近の改革姿勢を評価する
とともに、ASEAN 議長国就任を歓迎した(「ストレーツ・タイムズ」紙 11 月 18 日)。
<米国とロシアの参加を重視>
リー首相は当地紙のインタビューの中で、今回の東アジア首脳会議で最も重要な点は、
初めて米国とロシアが参加したことだとし、「議題がやや広がったが、広域的・戦略的課題
と個別具体的な協力の双方にバランスのとれた会議だった。ただし、これまで積み上げて
きた個別具体的な協力を無視することはできない」とコメントした(「ストレーツ・タイム
ズ」紙 11 月 20 日)
。これは、米国の参加により、南沙諸島問題など安全保障に関する議題
が広く議論されたことを指摘するとともに、経済課題の重要性を強調したものと理解され
る。
経済面での交渉については、ASEAN が 15 年に完成を目指す AEC 实現に向け、特に「サ
ービスに関する枠組み協定(AFAS)
」と「ASEAN 包括的投資協定(ACIA)」の交渉加速
を求めた(
「ビジネス・タイムズ」紙 11 月 18 日)。AFAS は ASEAN のサービス貿易の自
由化を、ACIA は投資保護や投資自由化をそれぞれ交渉する枠組みだ。GDP の約 6 割をサ
ービス産業が占めるシンガポールは、金融や航空サービスなどサービス分野の自由化に強
い関心を示している。
加えて、ASEAN と周辺国の広域 FTA を意味する「ASEAN++FTA」
(ASEAN と対話
国の日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドなどによる広域 FTA)
についても、交渉加速とともに既存の ASEAN+1 の FTA を超えた質の高い協定とする必
要性があると指摘した。
このほか、シンガポールは今回の会合で ASEAN 統合イニシアチブ(IAI)プログラムに
今後 4 年間で 5,000 万ドルを拠出することを表明した。同プログラムは、ASEAN 後発 4
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ヵ国と ASEAN 先行 6 ヵ国の域内格差是正のため、ASEAN 後発 4 ヵ国に政府関係者向け
の研修コースを設置したもので、拠出金は同コースの充实に活用される(「ストレーツ・タ
イムズ」紙 11 月 18 日)
。
(椎野幸平)
6. 中国牽制で ASEAN と米国の思惑が一致との見方も(中国)
2011 年 11 月 28 日
北京発
11 月 17~19 日に行われた東アジア首脳会議と関連会合について、新華社は淡々と報じ
ているが、識者は「米国や ASEAN には中国牽制の意図もあった」とみている。
<東アジアの地域統合推進の基礎固め>
新華社は 11 月 19 日、今回の一連の会合について、「ASEAN 一体化のプロセスでカギに
なるステップだ。米国・ロシアという新メンバーを迎え入れ、東アジアの発展モデルの構
築の最中に行われた」と位置付け、
「首脳会議が採決した共同声明、到達した共通認識は、
ASEAN 共同体の発展と協力の方向性に影響する」と報じた。また、首脳会議は「相互の信
頼、相互の尊重、互恵の関係、共同発展の理念に基づき、対話・協力・発展を重視し、ポ
ジティブで建設的なもので、東アジアの地域統合推進の基礎を固めた」と報じている。
11 月 17 日の ASEAN 首脳会議については、ASEAN 共同体バリ宣言を採択し、ASEAN
共同体建設の重要性を改めてうたい、ほかの地域との連携強化を通じた国際社会へのさら
なる貢献に意欲を示したと総括した。
18 日の ASEAN+1、ASEAN+3 首脳会合では、戦略的協力、経済貿易面の連携、食料安
全保障、防災救済、テロ対策など、広範囲にわたる議論を行い、共通の認識を得たとして
いる。また、議論の焦点として、アジアの金融の安定を保障する外貨の備蓄と、国民生活
にかかわるコメの備蓄を挙げた。
11 月 19 日の東アジア首脳会議では、財政・金融、エネルギー、教育、伝染病、災害管理
など 5 大分野での協力について議論した、と紹介。ASEAN 主導の ASEAN+1、ASEAN+3
を主な協力の枠組みとして堅持し、東アジア連携のモデルを構築し、地域の良好な発展を
維持していくことが強調されたと報じた。
<中国のプレゼンス拡大が周辺国の不安招く>
識者の間には、東アジアの連携には複数のフレームワークが併存・重複しているとの認
識がある。また、いずれも東アジアの連携と地域統合の促進を目的としているもので、択
一的とはみていない。
今回、東アジア首脳会議に米国とロシアが参加した点について識者は、成長センターで
あるアジアとの関係強化を望む両国と、中国を牽制することでアジアのパワーバランスを
平衡させようとする ASEAN の思惑が一致したものとみている。
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中国社会科学院アジア太平洋研究所・李向陽所長は米国について、「(参加は)アジア回
帰戦略の 1 つの重要な構成要素。米国は東アジア首脳会議を通じ、新たな政治上の盟友を
探し出すことに期待を寄せている。これにより、中国を牽制しようとしている」とみてい
る。同研究所社会文化室の許利平主任は「今、ASEAN が米国の東南アジア回帰を歓迎する
のは、中国の勢力が域内で大きくなりすぎている現状と趨勢(すうせい)を踏まえたもの」
とし、中国のプレゼンス拡大が周辺国の不安を招いているとの見方を示した。(「第一財経
日報」電子版 11 月 21 日)
東アジアの経済連携は、複数の ASEAN+1 の自由貿易協定(FTA)交渉が争って進めら
れてきたが、近年は日中韓の連携が注目を集めている。ASEAN から日中韓に注目が移る中、
中国の研究者の間には、アジアの経済統合を推進するに当たり、ASEAN に脅威を抱かせな
いことがカギとの声がある。
<1 番の勝者は日本、との指摘も>
現代国際関係研究院グローバル化研究センターの劉軍紅氏は東アジア首脳会議について、
海洋安全保障問題についての共通認識、FTA についての ASEAN+3 から+6 への拡大、FTA
推進に関する産官学共同研究の早期完成、の 3 点をその成果として挙げた。
また、a.多国間の枠組みで中国を牽制し、b.ASEAN+3 から ASEAN+6 の FTA 建設を推
進し、c.ASEAN のインフラ建設をコントロールするとの 3 点を目標としてきた日本が、今
回の一番の勝者との見方を示した(
「第一財経日報」電子版 11 月 21 日)。
(箱崎大、張敏)
7. ASEAN との早期 CEPA 締結に意欲(インド)
2011 年 11 月 29 日 ニューデリー発
東アジア首脳会議(11 月 17~19 日)について国内の報道ぶりは総じて控えめだったが、
早期のインド・ASEAN 包括的経済連携協定(CEPA)実現への努力、中国とのさらなる関
係強化、原子力責任法に関する米国の懸念払拭(ふっしょく)などについて、主要経済紙
が取り上げた。
<ASEAN にサービス・投資協定締結を提案>
政府は外交指針として、1991 年の経済開放以来、
「ルックイースト政策」を掲げている。
ASEAN はこの政策の下で、最重要地域の 1 つだ。マンモハン・シン首相は今回の東アジア
首脳会議で、長引く世界的な景気低迷を受け、
「インド・ASEAN のさらなる関係強化が急
務だ」とし、2012 年 3 月までに ASEAN との間でサービスと投資にかかわる協定を締結す
ることを提案した。
さらに、安全保障、対テロ対策、災害対策などの分野でも双方の協力関係をさらに強固
なものにする必要性を強調した。インド・ASEAN の自由貿易協定(FTA)は 10 年 1 月に
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発効しているが、政府は当初から CEPA へのアップグレードを強く希望しており、今回の
提案はこの交渉進展を促す狙いがあるとみられる。
<中国との関係強化を確認>
シン首相は中国の温家宝首相と会談し、アジアの発展のために互いに力を合わせて「最
良の関係」を築くことを確認した。さらに「インドと中国は、アジアの成長を牽引する立
場にあり、われわれは 2 国間関係にとどまらず、世界経済の発展を語る上でも関係を強化
すべきだ」と述べた。これに対し、温家宝首相は「両国が互いの関係を強化する余地は十
分にある。世界最大の人口を誇る 2 つの国が力を合わせて発展の努力をすれば、21 世紀が
アジアの時代になることは間違いない」と応じた。
直近の中国との関係では、インドが 10 月 12 日にベトナムとの間で南シナ海での石油・
天然ガスの共同開発に関する協定に署名をしたことに、中国が不快感を表明していた。南
シナ海の南沙諸島で、中国とベトナムが領有権をめぐり対立しているためだ。实務面では、
国営インド石油ガス公社(ONGC)とベトナム国営の石油会社ペトロベトナムは、石油資
源の開発で 3 年間の長期提携契約を結んでおり、インド政府は「南シナ海の海域が完全に
中国に属しているというような明確な定義はないため、(この問題は)国連海洋法条約にの
っとって解決されるべきだろう」との認識を示している。
<原子力責任法に関する米国の懸念に配慮>
政府は、国内での原子力発電所の開発に際し、原子力設備供給者の責任を規定した原子
力責任法を 10 年 8 月に制定した。この法律に基づいて具体的な規則が策定され、11 年 11
月 16 日に公表された。同規則では、一定の条件の下、設備の保証期限や保証額の上限など
が定められているが、米国企業から同法が「供給者側に不利なものだ」として懸念の声が
上がっていた。
シン首相は、今回の首脳会議で米国のオバマ大統領と会談し、
「法律は既に制定されてお
り、具体的な規則も決められた。しかし、同規則の議会審議の前に 30 日間の猶予があり、
米国企業の懸念も踏まえて議論する用意はできている」とし、米国企業の懸念に対処する
考えを表明した。
(西澤知史)
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8. アジア地域の安全保障にくさび(米国)
2011 年 11 月 28 日 ニューヨーク発
ホノルルでの APEC 首脳会議に続き、インドネシア・バリ島で 11 月 19 日に開催された
東アジア首脳会議(EAS)でオバマ大統領は、アジアとの関係強化に向けたコミットメン
トを明らかにした。経済関係の強化に焦点を当てた APEC のときと異なり、EAS では南シ
ナ海領有権問題への関与を表明して中国の軍事的影響力の拡大を牽制するなど、安全保障
問題を優先した。これらのコミットメントが実現するかどうかは未知数だが、手薄となっ
ていたアジア地域の安全保障にくさびを打ち込んだという意味では成果を残したといえる。
<経済関係強化から安全保障重視にシフト>
オバマ大統領は 11 月 19 日の第 6 回 EAS に、米国大統領として初めて参加した。11 月
12、13 日にホノルルで開催された APEC 首脳会議に参加後、16 日にはオーストラリアを
訪問。ギラード首相との首脳会談やオーストラリア議会での演説を済ませてバリ島に入る、
まさにアジア一色の週となった。
APEC では、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の「大枠」合意の発表をはじめ、環
境製品の関税引き下げに関する主張や、情報通信機器関税の撤廃を目指す WTO の情報技術
協定(ITA)におけるアジア・太平洋諸国の指導的役割の確認など、实質的な経済関係の強
化が目的だった。
他方、オーストラリア訪問時には米海兵隊のオーストラリア駐留の約束、EAS では中国
の軍事的影響力の拡大で揺れる南シナ海領有権問題に関する、航海の自由や国際法順守の
主張など、アジア地域の安全保障への米国のコミットメントの表明を優先した。
<オーストラリアに海兵隊派遣へ>
オーストラリアでの首脳会談や EAS でのオバマ大統領の主張のほとんどは、中国を意識
したものだった。近年、南シナ海を中心としたアジア地域での中国の軍事的影響力拡大へ
の動きが著しいといわれる。ブッシュ前政権は 2001 年の 9・11 同時多発テロ以降、対中東
政策を最優先させ、続くオバマ政権はイラクの戦後処理やアフガニスタン問題に追われて
きたために、アジアの安全保障問題は「長い間手薄になっており、その間に中国が軍事的
影響力を強めてきた」
(ワシントン DC の専門家)との見方がある。
石油やガスなどのエネルギー資源が海底に眠り、さらには巨大なシーレーンとしてコン
テナ船が行き交う南シナ海の領有権をめぐり、中国、ベトナム、フィリピンなどの対立が
続いている。今回の EAS に参加した 18 ヵ国のうち、16 ヵ国の首相がこの問題の解決を主
張したことからも各国の高い関心がうかがえる。
オバマ大統領はアジア訪問中、中国を牽制する姿勢を終始崩さなかった。オーストラリ
アではギラード首相に対し、12 年に 250 人、6 年以内に 2,500 人に上る海兵隊のオースト
ラリア派遣を約束した。オーストラリアにとっては、第二次世界大戦時以来の規模の米軍
駐留になるという。
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EAS では海洋安全保障を重視し、南シナ海での脅威や、合法的な経済活動を阻害するよ
うな軍事行動などを強く非難し、航空の自由や国際法の順守、紛争処理のための協力的な
外交プロセスの利用などを主張した。その上で、02 年に結ばれた南シナ海に関する行動宣
言への支持を再確認するとともに、法的拘束力のある行動規範の策定に期待を示した。
また、南シナ海をめぐり利害関係のある国と 2 国間による問題解決を好む中国を牽制す
るかたちで、ASEAN 海洋フォーラムといった地域的な海洋協力の枠組みへの EAS 加盟国
の取り組みを歓迎した。
<米・ASEAN5 ヵ年行動計画を採択>
また、オバマ大統領はアジア諸国に対し、海洋上の安全維持能力の強化のための地域海
洋警備などへの訓練、支援、機材の供給、海洋領域に関する東南アジア諸国の情報の評価・
共有能力を引き上げるための施設、機材、技術支援供与に向けて動いた。
まず、11 月 18 日には ASEAN 諸国との 2 ヵ国・地域間協議を開催。政治と安全保障、
経済と貿易、社会・文化協力面での協力プロジェクトの米・ASEAN5 ヵ年行動計画を採択
した。経済と貿易面では、a.米・ASEAN 貿易投資枠組み作業計画を通じた ASEAN 諸国と
の協力作業、b.ASEAN の連結性を構築するためのインフラ事業の進展、c.ASEAN シング
ルウインドーのパイロットプログラムでの協力、などを約束した。
このほか、インドネシア・ライオン航空への 230 機のボーイング 737(総額約 217 億ド
ル)
、シンガポール航空への 8 機のボーイング 777(総額約 24 億ドル)
、インドネシア・ガ
ルーダ航空への 50 台のゼネラル・エレクトリック(GE)製エンジン(総額約 13 億ドル)
の売却に関する契約を結ぶなど、総計 250 億ドルに上るビジネス契約に立ち会い、米国の
輸出倍増計画に貢献する实利的な活動も行った。
<メディアは大統領の対中強硬姿勢を評価>
国内のメディアはオバマ大統領の中国を牽制する動きに歓迎ムード一色となった。「ニュ
ーヨーク・タイムズ」は EAS 開催翌日の 11 月 20 日、
「米国が中東情勢に過去 10 年間も引
っ張られた後、オバマ大統領はついに太平洋地域のパワーとしての米国の立ち位置を再び
確立させ、アジア諸国やオーストラリアといった同盟国に対して中国の経済・軍事勢力を
牽制していくことを説得した」との記事を載せた。似たような記事は、
「ワールドポリティ
クスレビュー」の 22 日付紙面でもみられた。同紙は「EAS では(オバマ大統領は)ブッシ
ュ前政権がほとんど無視してきたアジアだけでなく、地域の多国間制度作りへの米国の再
コミットメントを目に見えるかたちで強調した」と報じている。
「ウォールストリート・ジャーナル」
(11 月 21 日)は「EAS では 18 ヵ国のうち 16 ヵ国
が領有権問題について主張し、中国を防戦一方に追いやった」と、米国を中心とした多国
間による中国への牽制姿勢の効果をたたえた。
オバマ政権は人民元問題、中国で氾濫する模倣品や海賊版といった知的所有権問題など
への取り組みが遅く、またイラクの戦後処理やアフガン問題への対応に追われ、中国のア
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ジアでの軍事影響力拡大を許しているとして、議会から中国に対し「弱腰だ」と評される
こともあった。しかし、今回のアジア訪問に対するメディアの反応を見る限り、尐なくと
も「弱腰」のイメージを一部払拭(ふっしょく)したといえる。
<アジア重視が本格化するかどうかは未知数>
安全保障面だけでなく、経済面でも中国包囲を目指すような動きが目につく。現在 9 ヵ
国が交渉を進める TPP は「国家所有企業(SOE)や過去にない保護水準の知的財産権や労
働規定など、中国が受け入れにくいものになっており」(ワシントン DC の中国専門家)
、
米国が常に「ルール順守」を求める中国を牽制する効果が出ているとの見方がある。東ア
ジア包括的経済連携協定〔CEPEA、ASEAN+6(日中韓、インド、オーストラリア、ニュ
ージーランド)
〕や東アジア自由貿易協定〔EAFTA、ASEAN+3(日中韓)〕といった、米
国抜きで進むアジアの経済連携の動きを牽制するような米国の姿勢は、尐なくとも報道ベ
ースでは取り扱われていない。それは、
「TPP を軸としたアジアへの経済的関与にシフト」
(ワシントンの通商専門家)しているためとの声が聞かれる。
しかし、オバマ政権のアジアへのコミットメントが实現するかどうかは未知数だ。オバ
マ大統領の動きが、12 年の大統領選を意識したものだからだ。ロムニー氏ら共和党の大統
領候補たちや共和党指導部だけでなく、中国製品の輸入を警戒する労働組合を支持基盤に
持つ民主党議員からも、対中強硬姿勢が求められている。国民にもその傾向がみられる。
ジャーマン・マーシャル・ファンド世論調査(11 年 9 月時点)によると、国民の 51%が
欧州よりもアジアが重要とみており、63%は中国を経済的脅威、47%は軍事的脅威として
いる。また、最近の CBS 世論調査では、国民の 61%が中国の経済的拡大は米国にとって悪
いニュースと答えている。最新の Real Clear Politics の世論調査によると、オバマ大統領
の支持率は 44%となり、就任以来最低の水準まで下がっている。国民から支持を得やすい
対中強硬姿勢は「手っ取り早いポイント稼ぎ」
(前述の通商専門家)というわけだ。
政府の債務上限が 11 年 7 月に引き上げられた代わりに、議会は今後 10 年間で約 1 兆ド
ルの政府支出削減を決定し、新たに組織された超党派委員会が 1 兆 5,000 億ドルの追加的
削減について議論を続けてきた。だが、民主党と共和党の対立により議論は進展をみせず、
超党派委員会は 11 月 21 日に「交渉決裂」を宣言した。削減策が成立しなかったため、13
年から尐なくとも計 1 兆 2,000 億ドルの連邦政府支出について強制削減が实施されること
になる。最大の削減対象は防衛費だ。オバマ大統領はアジアの安全保障を重視すると主張
するが、予算の裏付けがなければどこまで進められるかは分からない。
实現のほどは未知数だが、オバマ大統領の中国を牽制する姿勢は、手薄だったアジア地
域の安全保障にくさびを打ち込むという意味では成果を挙げたといえよう。米海兵隊のオ
ーストラリア駐留に関する発表に対し、中国外交筋は強く非難する声明を出した。しかし、
EAS で中国は、米国の援護射撃を受けた多くの小国によって牽制され、
「フィリピンやベト
ナムに普段みせる姿勢よりは控えめな発言」(ワシントン DC の専門家)だったという。勢
いを増す TPP の動きに対して「中国には焦りがみられる」(前述の中国専門家)といった
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声も出ている。
(水野亮)
9. エネルギー分野での協力に関心(ロシア)
2011 年 11 月 28 日 モスクワ発
インドネシア・バリ島で 11 月 19 日に開催された第 6 回東アジア首脳会議に、ラブロフ
外相が参加した。当初、メドベージェフ大統領が出席する予定だったが、12 月 4 日に予定
されている下院選挙の情勢を考慮し、急きょラブロフ外相が代理出席した。
<オブザーバーから正式メンバーに>
ロシアの東アジア首脳会議への正式な参加は今回が初めて。2005 年に開催された第 1 回
の同会議にオブザーバーとして参加した後、正式に参加する意向を示しており、今回それ
が实現した。
東アジアでのロシアの戦略的目的について、同相は「同地域の平和、安定、相互依存の
強化、安定した経済成長を保障することだ」と語り、東アジアが大きな可能性を秘めてい
る地域で、国家間の対立も尐なく、安全保障や協力に関する首脳レベルでの戦略的対話の
場として、東アジア首脳会議の重要性を強調した(ロシア外務省プレスリリース 11 月 19
日)
。
<シベリアと極東地域の発展に期待表明>
同会議でラブロフ外相は「ロシアは今後も東アジア首脳会議の枠組みでの協力を継続し
ていく」と発言し、ロシア側の具体的な計画として、同地域のエネルギー安全保障や、持
続的な経済発展のためのエネルギー天然資源供給の拡大、エネルギー分野での協力、石油
加工や液化天然ガス製造のためのインフラ整備、エネルギー効率化の向上を挙げた(同プ
レスリリース)
。
会議後、同相は「ロシアの参加は有益で、参加決定は正しかった。世界経済や世界政治
の中心がアジア太平洋地域に移りつつあり、ロシアも参加することが重要だ。ロシアは、
地理的にだけではなく、経済的にも、政治的にも東アジアの一部を構成している」と語り、
同会議への参加により、シベリアと極東地域の発展を含めた国家現代化の課題解決が進展
することに期待を寄せた(政府系紙「ロシア新聞」11 月 21 日)。
(宮川嵩浩)
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資料 1:第 6 回東アジア首脳会議議長声明(骨子)

第 6 回東アジア首脳会議(EAS)を,ユドヨノ・インドネシア大統領の議長の
下,2011 年 11 月 19 日にインドネシア・バリで開催。

EAS の共同の取組を強化する米国とロシアの EAS への参加を歓迎。

2005 年のクアラルンプール宣言及び 2010 年のハノイ宣言におけるコミットメ
ントを強調。ASEAN が他の EAS 参加国と緊密に連携しつつ,原動力となるこ
とを強調。EAS を首脳主導のフォーラムとして強化。

国際法の原則と規範の優位及び関連する多国間の枠組みを活用する必要性に基
づき,民主的で公正な世界秩序を推進するとの決意を再確認。

地域の平和,安定,繁栄の維持・促進のための EAS の意義を確認。
「バリ原則」
と呼ぶ「互恵関係に向けた原則に関する EAS 首脳宣言」を採択。
エネルギー・環境

第 5 回 EAS エネルギー大臣会合の成果を歓迎。

緩和と適応に関する知識やベストプラクティスの共有,温室効果ガスの削減に
つながる共同開発や互恵的な協力プロジェクトの推進を通じた環境問題や気候
変動問題に関する協力強化を継続することに合意。東アジア低炭素成長パート
ナーシップの提案を評価と共に留意し,日本の 2012 年 4 月に国際会議を開催す
るとの決定を歓迎。

2011 年 3 月 15~16 日に北九州市で開催され,環境的に持続可能な都市に関す
るベストプラクティスやイニシアティブについて議論した「第 2 回環境的に持
続可能な都市ハイレベルセミナー」の成果に留意。
金融

金融部門における協力強化の重要性を強調。財務大臣に対し,2012 年に開かれ
る第 2 回 EAS 財務大臣会合で EAS における金融協力を更に検討するよう指示。

G20 首脳による世界経済のリスクへの対応のための重要なステップ及び APEC
首脳による力強く,持続可能で,バランスの取れた成長を支持するとの決意を
歓迎。

世界で最も活発な経済をまとめる重要な地域のフォーラムとしての EAS の建設
的な役割を認識。
防災

地域の迅速な対応能力や人道的支援の強化の観点から,防災分野の協力を継続
するとの決意を再確認し,インドネシアと豪州による提案を支持。外務大臣及
び関係大臣に対し,同提案のフォローアップのために必要な措置をとるべく,
協調することを支持。
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
ASEAN 防災人道支援調整センター(AHA センター)の正式な開所を歓迎し,
同センターの本格的な活動開始を含む ASEAN 防災・緊急対応協定(AADMER)
の 2010 年~2015 年の活動計画に対する EAS 参加国の貢献を奨励。日本による
東日本大震災の経験と教訓を共有するための国際会議を明年開催するとの提案,
及び 2015 年の国連防災会議を主催するとの提案を歓迎。あり得べき防災協力と
して,二国間の災害対応協定を活用するとの数カ国による発表にも留意。

ASEAN 地域フォーラム災害救援实働演習(DiREx)などの災害救援实働演習
の定期化を奨励。3 月に行われたインドネシアと日本の共催による DiREx の成
功に留意。

研修,教訓及びベストプラクティスの共有のためのワークショップ,人的交流
を通じた EAS 参加各国の能力向上のための努力を奨励。

第 19 回 ASEAN 首脳会議で採択された「洪水の予防,緩和,救済,復旧・復興
に関する ASEAN 首脳声明」を歓迎。
教育

教育の重要性を強調。教育に関するミレニアム開発目標の達成及び教育の質と
順応性の向上のために一層協力することに合意。EAS 参加国間の教育及び研修
に関する協力を歓迎。

2011 年 7 月 18 日に行われた第 1 回 EAS 非公式教育大臣会合の实質的な成果に
満足しつつ留意。EAS 教育大臣会合を 2 年に一度開催し,より包括的な協力を
推進するための EAS 協力行動計画を策定するとの計画を歓迎。「東アジア・サ
イエンス&イノベーション・エリア」構想の下,
「e-ASIA 共同研究プログラム」
を实施するとの日本のイニシアティブを歓迎。
世界の保健問題及び感染症

鳥インフルエンザ予防に関する協力をより広範な世界の保健と感染症を含む協
力へと拡大することで一致し,情報共有,医療品備蓄の維持,医薬品やインフ
ルエンザワクチンの共有へのコミットメントを継続。
連結性

ASEAN 連結性マスタープラン(MPAC)の効果的な实施は ASEAN のみなら
ず,東アジア地域に恩恵をもたらすとの認識を共有し,「ASEAN 連結性に関す
る EAS 首脳宣言」を採択。既存の五つの優先協力分野と共に ASEAN 連結性を
EAS の協力分野に含めることに合意。

アジア総合開発計画の進展及び MPAC の实施に対する東アジア・ASEAN 経済
研究センター(ERIA)の支援を歓迎。
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他の戦略的協力分野
経済統合

経済分野の協力強化の重要性を再確認し,地域の格差是正に向けた EAS として
の取組強化の重要性を強調。

貿易投資の自由化に向けて東アジア自由貿易圏構想(EAFTA)及び東アジア包
括的経済連携構想(CEPEA)の下に三つの新たな作業部会を設置するとの日本
と中国の建設的な共同提案を歓迎。同共同提案を考慮し,物品貿易,サービス
貿易,投資に関する ASEAN プラス作業部会を設置するとの ASEAN の決定を
歓迎。特に,物品貿易に関する作業部会を 2012 年早期に設置し,原産地規則,
関税品目表,税関手続に関する ASEAN プラス作業部会の結果をフォローアッ
プすることに留意。
国際貿易

自由市場推進のための WTO の重要な役割を認識。APEC 首脳会合における,
地域の経済統合強化,貿易拡大,グリーン成長の推進,規制の収斂及び協力に
向けて具体的行動をとるとの決定を歓迎。G20 及び APEC で示されたコミット
メントに則り,保護主義を抑止するとのコミットメントを再確認。
地域・国際情勢

2011 年 7 月の EAS 参加国外相協議の開催を歓迎し,このような EAS の枠組み
での外相レベルの会議を定期的に開催することを指示。
海洋協力

海賊,海上における捜索救援,海洋環境,海上安全保障,海洋の連結性,航行
の自由,漁業及びその他の協力分野を含む,海洋協力の促進の重要性を認識。
既存の ASEAN 海洋フォーラム(AMF)を土台として,機会を利用し,海洋問
題に係る共通の課題に対処すべく,EAS 参加国間の対話を奨励。AMF の将来
の会合の際に,より広範な東アジア地域の国を含めた形で,拡大された AMF を
開催するとの提案に前向きに留意。
軍縮及び核兵器の不拡散

核軍縮,核不拡散,原子力エネルギーの平和的利用の分野の推進のための EAS
を含む地域及び国際的な取組を支持。ASEAN と核兵器保有国との間で,核兵器
保有国の東南アジア非核兵器地帯条約議定書への加盟を可能とする交渉が妥結
したことを歓迎。

地域の平和と安定を維持するとの精神の下,2005 年の六者会合共同声明や関連
する国連安保理決議に従った形で朝鮮半島の非核化を平和的に实現することへ
の全面的な支持を再確認。当事者による最近の対話を歓迎し,六者会合再開に
向けた環境醸成に資する,六者会合当事者間の二者間の対話の継続を支持。こ
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の関連で,当事者間の対話と協議に向けた雰囲気作りのために ARF を活用する
ことの有用性を再確認。

ミャンマーにおける最近の重要かつ前向きな進展を歓迎し,この関連で力強い
モメンタムを維持することの重要性を強調。

ASEAN 事務局の EAS に対する支援に留意し,事務局の能力向上にコミット。

2012 年にカンボジアで行われる第 7 回 EAS に期待。
(出所)外務省ホームページ
資料 2:ASEAN 連結性に関する東アジア首脳会議(EAS)宣言(仮訳)
(2011 年 11 月 19 日,バリにおいて)
我々,東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国,オーストラリア連邦,中華人民共和国,イ
ンド共和国,日本国,大韓民国,ニュージーランド,ロシア連邦,アメリカ合衆国の国家
元首及び行政府の長は,第 6 回東アジア首脳会議の機会に,
ASEAN 連結性マスタープランの採択に関する 2010 年のハノイ宣言及び東アジアにおける
より広範な地域枠組み内部及び ASEAN 域内の統合を補完し支 援する,ASEAN 域内の連
結性を強化するとの考えを明確にした,ASEAN 連結性に関する 2009 年の ASEAN 首脳声
明を歓迎し,
東アジア首脳会議の 5 周年記念のハノイ宣言や ASEAN 連結性マスタープランに対する支
援,支援の实施に向けた ASEAN との連携の意図を想起し,
貿易,投資,インフラ,観光,人的交流,文化交流の強化を通じた域内の連結性強化がす
べての東アジア首脳会議参加国に裨益し,域内の格差是正,異文化理解の促進のみならず,
東アジア地域における共同体構築に向けた継続中の取組を補完し,一助となることを認識
し,
物理的連結性・制度的連結性・人的連結性という三本柱すべてに関して,東南アジアにお
ける大陸部と島嶼部間の連結性や ASEAN 加盟国間での域内の相互連 結性の進展にも同様
に重点を置きつつ,ASEAN 連結性マスタープランを効果的かつ時宜を得た形で实施するこ
とへの支援を再確認し,
ASEAN 連結性は,東アジアにおける連結性強化の進展に向けた,第一歩であることを認識
し,
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以下の通りここに宣言する。
1. ASEAN 連結性を,他の優先協力分野に加えて,EAS における鍵となる協力分野
の一つに含める。
2. 特に,資源や専門知識の動員,情報共有,物理的連結性・制度的連結性・人的連
結性の 3 分野で EAS 参加国が参加し得る協力プロジェクトの特定について,連
結性に関するイニシアティブにおける ASEAN と EAS 参加国との協力を支援し,
促進する。
3. ASEAN 連結性マスタープランの下のプロジェクトの实施を支援するための資源
を動員するため,地域における官民パートナーシップ(PPP)開発アジェンダの
発展を支援するとともに,二国間協定及び地域・国際金融機関を活用して取り組
む。
4. シンポジウム,ワークショップ,セミナー,経済ミッション,研修といったアウ
トリーチや広報活動を通じて,潜在的な利益や経済的な機会を含む,ASEAN 連
結性マスタープランに対する官民双方の普及啓発を促進する。
5. 新しい革新的な資金源を通じた具体的かつ融資可能な PPP 案件を含む ASEAN
連結性マスタープランの下の主要優先案件への官民双方の関与を奨励する。
6. 教育,生涯学習,人材育成,イノベーション,起業家精神,文化交流及び観光関
連等の,人的連結性に関する関与及び協力を一層促進する。
7. ASEAN 連結性マスタープランを効果的に实施することで ASEAN 連結性の優先
性を維持しつつ,「アジア総合開発計画」等のイニシアティブを適切に 関連し
て,ASEAN を越えた連結性を拡大し,ASEAN と EAS 参加国との間のより一層
の結びつきを発展させる「ASEAN 連結性マスタープランプラ ス」の将来的な可
能性を検討する。
2011 年 11 月 19 日,インドネシア・バリにおいて,EAS 参加国の国家元首及び行政府
の長によって採択された。
(出所)外務省ホームページ
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資料 3:互恵関係に向けた原則に関する東アジア首脳会議(EAS)宣言(仮訳)
(2011 年 11 月 19 日,バリにおいて)
我々,東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国,オーストラリア連邦,中華人民共和国,
インド共和国,日本国,大韓民国,ニュージーランド,ロシア連邦,アメリカ合衆国の国
家元首及び行政府の長は,第 6 回東アジア首脳会議の機会に,
国連憲章の目的と諸原則,東南アジアにおける友好協力条約及びその他の確立された国際
法の諸原則に対するコミットメントを再確認し,
2005 年の東アジア首脳会議に関するクアラルンプール宣言を想起し,東アジア首脳会議
(EAS)の広範なビジョン,原則,目的,形態を設定した同宣言の重要性を再確認し,
EAS の優先分野や,東アジア自由貿易圏構想(EAFTA)及び東アジア包括的経済連携構想
(CEPEA)の研究を含むその他の広域地域経済連携に関する取組の進展と協力に向けて一
層努力するとの EAS5 周年記念のハノイ宣言におけるコミットメントを想起し,
共通の関心と懸念を有する広範な戦略的,政治的及び経済的諸問題について,東アジアに
おける平和,安定及び経済的繁栄を促進することを目的とした対話を行うための首脳主導
のフォーラムとしての EAS の共通ビジョンを強調し,
確立された原則,目的,形態に基づき,EAS を強化することを希求し,
ASEAN が,
EAS の他の参加国と緊密に連携しつつ,
EAS の推進力となることを再確認し,
EAS が,ASEAN+1,ASEAN+3,ASEAN 地域フォーラム(ARF),拡大 ASEAN 国防
相会議(ADMM+)などの他の相互強化プロセスを含む,進化する地域枠組みの不可分の
一部であることを再確認し,
ロシア連邦及びアメリカ合衆国の東アジア首脳会議への参加を歓迎し,
海洋に関する国際法が,地域の平和と安定の維持のために必須の規範を含むことを認識し,
平等,パートナーシップ,協議及び相互尊重の原則を維持しつつ,我々各国間の協力の一
層の促進と現在の友好関係の強化のため,平和的な環境を形成すること,及びこれにより
この地域及び世界全体の平和,安定及び繁栄に貢献することを希求し,
EAS 参加国は友好かつ互恵関係に向けた以下の原則に依拠することをここに宣言する。
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
独立,主権,平等,領土保全,国家的同一性のための相互尊重の強化

国際法の尊重

相互理解,相互信頼,友情の強化

善隣,パートナーシップ,共同体構築の促進

平和,安定,安全保障,繁栄の維持・促進

他国の内政への不干渉

国連憲章に整合的な形での,武力による威嚇及び他国への武力行使の放棄

穏健派の意見の増進等を通じた,民族的,宗教的,文化的な伝統・価値の多様性及
び見解や立場の多様性の認識及び尊重

経済的打撃や自然災害に直面した際を含む,地域の回復力の強化

基本的自由の尊重,人権の促進・保護,社会的正義の促進

相違や紛争の平和的解決

EAS 内部及び他の地域枠組みとの互恵的な協力の強化
2011 年 11 月 19 日,インドネシア・バリにおいて,EAS 参加国の国家元首及び行政府
の長によって採択された。
(出所)外務省ホームページ
※東アジア首脳会議以外の会合の議長声明、合意文書等は以下の ASEAN 事務局のホー
ムページから閲覧可能。
URL:http://www.aseansec.org/26719.htm
※本レポートは、ジェトロのニュースサービス「通商弘報」で 2011 年 11 月 24 日から 12 月 16 日に
かけて掲載された記事をまとめております。通商弘報では、70 ヵ所を超えるジェトロ海外事務所の
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